説明

組電池

【課題】複数の電池の状態に関する情報を取得するためのケーブルを備える組電池について、ケーブルを熱から保護するとともに小型化及び部品点数の低減を図る。
【解決手段】組電池1は、外装ケースの上面11aに設けられ、電池セル内部の圧力が異常圧になると破断する安全弁13と、バスバー20と外装ケース11間を絶縁し、少なくとも安全弁13を除く外装ケースの上面11a部分を覆うように設けられるカバー部30と、耐熱性を有し、カバー部30で覆われていない安全弁13を内部に形成される排煙用通路61に露出するように内壁面60aが安全弁13に対向して設けられる排煙用ダクト60と、複数の電池セル10の状態に関する情報を取得するために複数の電池セル10に電気接続された端子71から延びる複数の電圧検出線72を束ねてなり、排煙用ダクト60の上方に載置して配線されるケーブル70と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の積層した電池セルを電気的に接続して構成される組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の組電池は、薄い直方体状の電池セルを複数個積層して組み合わせ、電池セルの電極端子をバスバーによって直列接続してなり、各電池セルの側面には、安全弁が設けられている。この安全弁は、電池セルの金属製外装ケースの側面に開口した孔に薄い金属膜を貼り付けて塞いだものである。電池セル内部が異常な高圧状態になった場合に、この金属膜が破断してガス抜きを行うことにより、非水電解質二次電池自身の破裂を防止することができる。
【0003】
また、従来の組電池として、特許文献1とは異なり、安全弁が電池セルケース上面の中央付近、例えば、正極端子と負極端子の間に位置する上面中央に設けられる電池セルを備えるものが知られている。このような構成の組電池は、安全弁から噴き出すガスを誘導して排出するための通路を形成する排出用ダクトを備える。したがって、この排出用ダクトは、積層配置された各電池セルの上面中央を覆うように組電池の積層方向の全長に亘って延設される。
【0004】
この従来の組電池の場合には、電池内部が異常な高圧になったときに電池セル上面の安全弁が破断して高温のガスが電池セルの上面から噴き出すようになる。この排出用ダクト内部の通路には、安全弁が破断したときに高温のガスが流れるため、電圧、温度等の電池に関する情報を制御装置等に入力するために使用されるケーブルは、ケーブルの被覆がガスの熱で溶ける等の不具合が生じないように、排出用ダクトからできるだけ離れた場所に配線されることになる。例えば、ケーブルは、電池セル上面中央を組電池の積層方向の全長に亘って延設される排出用ダクトに対してその両側に所定距離あけて、平行に延びるように設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−346754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようにケーブルを排出用ダクトから離して配置する従来の組電池においては、ケーブルを搭載するためのスペースが大きいため、組電池の体格を小型化することの弊害となる。また、ケーブルを排出用ダクトの両側に配置すると、ケーブルを支持、保護するための部材が多くなるという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、複数の電池の状態に関する情報を取得するためのケーブルを備える組電池について、ケーブルを熱から保護するとともに、小型化及び部品点数の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1は、外装ケース(11)から上方に突出する正極端子及び負極端子からなる電極端子(12)を有する電池セル(10)を複数個積層し、積層方向(X)に隣接する前記電池セル(10)における接続対象となる前記電極端子間をバスバー(20)で接続して通電可能に構成する組電池(1)に係る発明であって、
外装ケースの端面(11a)に設けられ、電池セル内部の圧力が所定圧力以上になるときに破断する安全弁(13)と、バスバー(20)と電池セルの外装ケース(11)間を絶縁し、少なくとも安全弁(13)を除く前記外装ケースの端面部分を覆うように設けられるカバー部(30)と、耐熱性を有するダクト部(60)であって、カバー部(30)で覆われていない安全弁(13)を内部に形成される通路(61)に露出するように内壁面(60a)が安全弁(13)に対向して設けられるダクト部(60)と、複数の電池セルの状態に関する情報を取得するために、複数の電池セルに電気接続された端子(71)から延びる複数の検出線(72)を束ねてなるケーブル(70)であって、ダクト部(60)の上方に載置して配線されるケーブル(70)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、安全弁の破断によって高温のガスがダクト部内の通路を流れたとしても、ケーブルは耐熱性を有するダクト部の上方に載置して配線されることにより、ケーブルを熱から保護することができる。ダクト部の有する耐熱性は、電池セル内部が異常な高圧状態になって、内部のガスが破断した安全弁から噴き出しても、ダクト部が溶けないで破損しない耐熱能力を有することを意味する。さらに、ケーブルはダクト部の上方でダクト部に沿うように配線されるため、ケーブルを配線するためのスペースを小型化できるとともに、ケーブルを配線、支持等するための部材を低減することができる。したがって、熱からのケーブルの保護、小型化及び部品点数の低減が図れる組電池を提供できる。
【0010】
請求項2によると、カバー部(30)は、耐熱性を有する樹脂で形成されていることを特徴とする。この発明によれば、耐熱性を有する樹脂でカバー部を形成することによって、カバー部についても耐熱性を有するため、高温ガスに対するダクト部周辺の耐温度性能を向上させることができる。したがって、熱からのケーブルの保護を向上することができる。
【0011】
請求項3によると、ダクト部(60)は、カバー部(30)よりも高い耐熱性を有することを特徴とする。この発明によれば、ダクト部の耐熱性をカバー部よりも高くすることにより、直接、高温ガスに接触しうるダクト部について耐温度性能を確保するため、高温ガスからのケーブルの保護をより確実なものにできる。
【0012】
請求項4によると、ダクト部(60)は、安全弁(13)が設けられている部位を含む外装ケースの端面(11a)に密着して接触するフランジ部(60b)を備えることを特徴とする。この発明によれば、ダクト部とセル外装ケースの端面との密着度合いをフランジ部によって高めることにより、外部とのダクト部内の通路の遮断性を向上し、電池セル異常時の外部へのガス漏れを防止することができる。
【0013】
請求項5によると、ケーブル(70)は、複数の検出線(72)の導線部(72a)を絶縁して内部に包含する外装チューブ(73)を備えており、外装チューブ(73)の横断面形状は、高さ方向長さが横方向長さよりも短い扁平状であることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、複数の電線を絶縁して収納する外装チューブを扁平状に形成することにより、ケーブルの高さ方向長さを抑制できるので、組電池全体の高さを抑制することができる。また、複数の電池に関する情報を取得するための複数の電線を、外装チューブによって一体に束ねた状態で収納するため、配線に要する工数をさらに低減することができる。
【0015】
請求項6によると、ダクト部(60)の上方に配線されるケーブル(70)をさらに上方から覆い、外部から保護する配線保護部材(80)を備えることを特徴とする。この発明によれば、ケーブルの下方はダクト部によって保護し、ケーブルの上方は配線保護部材によって外部から保護するため、組み付け作業、メンテナンス等における外部からの荷重がかかった場合でも、ケーブルに直接外力が作用することを回避して、亀裂、断線等の不具合を未然に防止できる。
【0016】
上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用する第1実施形態の組電池において排煙用ダクト及び電圧検出線の配置構成を説明するための断面図である。
【図2】第1実施形態の組電池において排煙用ダクト及び電圧検出線の配置構成を説明するための平面図である。
【図3】第1実施形態の組電池において排煙用ダクト及び電圧検出線の配置構成を説明するための一部破断した側面図である。
【図4】第1実施形態の組電池において排煙用ダクト及び電圧検出線の配置構成を説明するために一部拡大した断面図である。
【図5】第1実施形態の組電池においてカバー部とケースの係合に関する構成を説明するために一部拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合わせることも可能である。
【0019】
(第1実施形態)
本発明を適用した第1実施形態の組電池1は、電池パックとも呼ばれ、複数個の電池セル10をその側面を対向させるように並べて積層配置し、隣り合う電池セル10の異極の電極端子同士をバスバー20によって電気的に直列接続して一体にした電池セル10の集合体である。
【0020】
組電池1は、例えば内燃機関と電池に充電された電力によって駆動されるモータとを組み合わせて走行駆動源とするハイブリッド自動車、モータを走行駆動源とする電気自動車等に用いられる。組電池1を構成する二次電池は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン電池、有機ラジカル電池であり、ケース内に収納された状態で自動車の座席下、後部座席とトランクルームとの間の空間、運転席と助手席の間の空間などに配置される。
【0021】
本発明の一実施形態である第1実施形態について図1〜図5を用いて説明する。図1は、第1実施形態の組電池1において排煙用ダクト60及び電圧検出線72の配置構成を説明するための断面図である。ただし、電池セル10については断面で示していない。図2は、組電池1において排煙用ダクト60及び電圧検出線72の配置構成を説明するための平面図である。図3は、組電池1において排煙用ダクト60及び電圧検出線72の配置構成を説明するための一部破断した側面図である。図4は、組電池1において排煙用ダクト60及び電圧検出線72の配置構成を説明するために一部拡大した断面図である。各図において、電池セル10が複数個積層して並ぶ方向をセル積層方向Xとし、直方体状の各電池セル10が水平方向に細長状に延びる方向であってセル積層方向Xに直交する水平方向をYとし、電極端子12が突出する方向を電極端子突出方向Zまたは上方向Zとしている。
【0022】
複数個の電池セル10の集合体である組電池1は、複数個の電池セル10の充電及び放電または温度調節に用いられる電子部品(図示せず)によって制御され、図示しない送風部材による送風を受けて各電池セル10が冷却される。組電池1は、積層配置した複数個の電池セル10をバスバー20により電気的に直列接続してなり、ケース40内に収納されている。また、組電池1は、各電池セル10がケース40内の所定の位置に動かないように設置されて支持される構造でもよいし、バンド等の拘束手段にてセル積層方向Xに圧縮力を受けて拘束されて一体に支持される構造でもよい。なお、上記の電子部品は、DC/DCコンバータ、送風部材を駆動するモータ、インバータによって制御される電子部品、各種の電子式制御装置等であり、例えばスイッチング電源装置であるパワー素子によって調整される電力で作動される部品である。
【0023】
ケース40は、絶縁性を有し、例えばポリプロピレン(PP)、強度向上のためのフィラーやタルク含有のPP等の合成樹脂で形成されている。ケース40には、車両側にケース40をボルト締め等により固定するための取付部、及び機器収納ボックス(ともに図示せず)が設けられている。
【0024】
当該機器ボックスには、(例えば電圧、温度等の電池セル10の状態を監視する各種センサからの検出結果が入力される電池監視ユニット(図示せず)と、電池監視ユニットと通信可能に構成されDC/DCコンバータの電力授受を制御するとともに、送風部材のモータの駆動を制御する制御装置(図示せず)と、各機器を接続するワイヤハーネス等と、が収納されている。
【0025】
電池監視ユニットは、各電池セル10の状態を監視する電池ECUであり、複数の電池セル10の状態に関する情報を検出するために電池セル10側に設置された検出部(端子)から延びる複数の検出線を介して、組電池1に接続されている。検出線は、例えば、電池セル10の電圧、温度等の情報を電池監視ユニットに送信するための通信線であり、端子は、電池セル10の状態に関わる情報を検出する電圧計測素子、温度センサ、その他の各種センサである。
【0026】
積層体を構成する各電池セル10は、例えばアルミ缶等の外殻を構成する外装ケース11を有し、外装ケースの上面11aから上方に突出する正極端子及び負極端子からなる電極端子12を備えている。異極の端子同士であって、隣り合う各電池セル10間で接続される対象となる電極端子12間は、通電性に優れた金属板であるバスバー20によって接続されている。1つの積層体を構成する複数個の電池セル10は、これに対応する数量のバスバー20によって通電可能に直列接続されることになる。換言すれば、組電池1のすべての電池セル10は、平面視で、電流がジグザク状または蛇行状に流れるように各バスバー20を介して電気的に直列接続されている。さらにバスバー20によって通電可能となった積層体の両端に配された各電極端子12は、端子嵌通開口部23A,24Aに嵌まった状態で平板状の電極板20Aに溶接により接合されている。この両端に配された電極板20Aは、電力の供給及び放出が行われる総端子部に接続されている。
【0027】
図1及び図2に示すように、バスバー20は、中央側で外方に突出するように形成されたバスバー凸部22を具備する板状体である。バスバー20は、セル積層方向Xにおけるバスバー凸部22の両側にバスバー凸部22の根元から横方向に延びる端子接続部21を備えている。つまり、バスバー20の縦断面形状は、バスバー凸部22に対応する逆U字状部分と、逆U字状部分から左右に延びる2つの水平部分とから構成される形状である。バスバー凸部22は、例えば、U字状に外方に突出する湾曲状、コの字等の角形に折れ曲がった屈曲状等の凸部である。
【0028】
水平に延びる部分である端子接続部21には、バスバー凸部22に対して一方端側に形成された第1の端子嵌通開口部23と他方端側に形成された第2の端子嵌通開口部24と、が形成されている。第1の端子嵌通開口部23と第2の端子嵌通開口部24には、隣接する電池セル10における接続対象となる電極端子12がバスバー凸部22の両側で嵌まるようになっている。つまり、第1の端子嵌通開口部23と第2の端子嵌通開口部24の形状は、電極端子12の断面形状と同様であり、電極端子12が挿通可能な大きさとなっている。
【0029】
各電池セル10における外装ケースの上面11aには、安全弁13が設けられている。安全弁13は、外装ケースの上面11aに設けられ、電池セル10の内部圧力が異常な圧力になるときに破断するように設定されている。安全弁13は、例えば、電池セル10の外装ケースの上面11aに開口した孔に薄い金属膜を貼り付けて塞いで構成されている。この場合には、電池セル10の内部圧力が異常な圧力になったときに、当該金属膜が破断して外装ケースの上面11aに開口されている孔が開放されて、電池セル10の内部のガスがセル外部に放出されることにより、セル内圧が低下し、電池セル自身の破裂を防止することができる。
【0030】
カバー部30は、バスバー20と電池セル10の外装ケース11とを絶縁し、少なくとも安全弁13及び電極端子12を除く外装ケースの上面11a部分を覆うように設けられている。すなわち、カバー部30には、外装ケースの上面11aを覆うようにカバー部30を装着したときに、安全弁13の対応する位置に安全弁13よりも大きい開口部が形成されている。したがって、安全弁13は、カバー部30を装着した状態では、開口部の内側にあって、カバー部30に覆われないで露出するのである。
【0031】
さらに組電池1は、ダクト内部の排煙用通路61に安全弁13を露出するように設けられる排煙用ダクト60を備えている。排煙用ダクト60は、耐熱性を有する材料で形成する。例えば、排煙用ダクト60は、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエチレン樹脂(PE)、難燃剤を添加した各種樹脂等で形成する。排煙用ダクト60の有する耐熱性は、電池セル10の内部が異常な高圧状態になって内部のガスが安全弁13の破断によって噴き出しても、ダクト部分が溶けないで破損しない耐熱能力を有することである。
【0032】
また、排煙用ダクト60は、カバー部30よりも耐熱性の高い材料で形成してもよい。この場合には、例えば、排煙用ダクト60はポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエチレン樹脂(PE)、難燃剤を添加した各種樹脂等で形成し、カバー部30はポリプロピレン(PP樹脂)で形成すればよい。
【0033】
排煙用ダクト60は、横断面がコの字形状であり、下方を向いた内壁面60aが安全弁13に対向するように設けられている。また、排煙用ダクト60は、水平方向に延びる部分で、排煙用ダクト60を外装ケースの上面11aに設置したときに外装ケースの上面11aと密着して接触するフランジ部60bを備える。
【0034】
フランジ部60bは、排煙用ダクト60と外装ケースの上面11aとの接触部分に相当し、当該接触部分における気密度の向上に寄与する。また、当該器密度を高めるために、フランジ部60bは、排煙用ダクト60の他の部分よりも軟性のある材料で形成してもよく、この場合には排煙用ダクト60を二色成形等により製作することができる。また、フランジ部60bの下面に、軟性のあるパッキン部材を設けてもよい。
【0035】
このような構成の排煙用ダクト60は、安全弁13から噴き出すガスを誘導して排出するための通路を形成する排出用のダクト部である。したがって、この排煙用ダクト60は、積層配置された各電池セル10の上面の中央部を覆い、組電池1のセル積層方向Xの全長に亘って設けられている。したがって、電池セル10の内部が異常な高圧になったときに安全弁13が破断して高温のガスが電池セル10の上面から噴き出した場合、排煙用ダクト60で覆われた排煙用通路61を高温ガスが流れても、排煙用ダクト60の外の部材に高温ガスが触れることを防止できる。さらに高温ガスは、排煙用通路61を流下して、熱によって不具合が生じ得る部品がない場所に排出されるため、高温ガスは当該部品から隔離した空間を流通するのである。
【0036】
カバー部30は、排煙用ダクト60やケース40とは別個の部材であり、少なくとも、電極端子12が挿通する開口部と安全弁13が露出する開口部とを有し、外装ケースの上面11aを部分的に覆う部材である。カバー部30は、絶縁性を有し、例えばポリプロピレン(PP樹脂)、フィラーやタルクを含有するPP樹脂等の合成樹脂で形成されており、バスバー20と外装ケース11とを電気絶縁する機能を有する。
【0037】
さらに、カバー部30は耐熱性を有する樹脂で形成されていることが好ましい。この場合、カバー部30は、例えば、ポリプロピレン(PP樹脂)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエチレン樹脂(PE)、難燃剤を添加した各種樹脂等で形成されている。
【0038】
カバー部30は、その外周縁に、外方に向けて突出する嵌合凸部33aが形成された爪部33を複数個備えている。爪部33は、根元部が固定されており先端が固定されていない自由端となっており、内側に向けて爪部33に外力が作用した場合に、元の姿勢に戻ろうと外側に向けて弾性変形するようになっている。一方、カバー部30が取り付けられるケース40は、その外周縁の爪部33と対応する位置に、上方から挿入される爪部33を収容可能な収容部41を備えている。
【0039】
収容部41は、上端部及び下端部が開口している筒状体であり、上下方向に延びる内壁面のうち一側面がケース40と一体に形成されている。図5は、組電池1においてカバー部30とケース40の係合に関する構成を説明するために一部拡大した斜視図である。
図5に示すように、各爪部33を対応する収容部41に挿入するように、カバー部30をケース40に対して上方から取り付けると、爪部33は、内側に向けて弾性変形して収容部41の内壁面に接触しながら下方に変位する。そして、カバー部30が外装ケースの上面11aに覆うように当接する位置まで下がると、爪部33は最も下方に位置し、嵌合凸部33aが収容部41の下端開口部から下方に飛び出すとともに、外側に向けて開くように復元して収容部41の下端面を押さえてロック機構を形成する。爪部33は、その状態を維持するので、カバー部30はケース40に固定されることになる。
【0040】
組電池1は、電気絶縁性を有し、セル積層方向Xに隣接する電池セル10の間で外装ケースの上面11aよりも上方に突出する位置決め凸部31を備えている。位置決め凸部31は、例えば、電気絶縁性を有する各種の樹脂により形成されており、ケース40の上部開口に蓋をするように外装ケースの上面11aを覆ってケース40に取り付けられるカバー部30に一体に形成されている。つまり、位置決め凸部31は、隣接する電池セル10間に形成されたセル間通路50(電池セル間流体通路)の上方を覆う部分に上方に起立する壁である。位置決め凸部31は、図2に図示するように、セル積層方向Xの厚みが薄く、電極端子突出方向Z(上方向Z)と方向Yの両方向についてセル間通路50に平行となるように延設される壁である。
【0041】
位置決め凸部31は、図2のように、外装ケースの上面11a側でセル積層方向Xに所定ピッチで複数個並んでいる。このようにセル積層方向Xに所定ピッチで複数個並ぶ一組の位置決め凸部31は、外装ケースの上面11a側でさらに方向Yに所定間隔をあけてもう一組配設されている。
【0042】
方向Yに所定間隔をあけて並ぶ、二組の位置決め凸部31、二組のバスバー20、または二組の電極端子12の間には、セル積層方向Xに延びる2列のガイド壁34aを有する配線ガイド部34がカバー部30と一体に設けられている。2列のガイド壁34aは、方向Yに所定の間隔をあけて外装ケースの上面11a側で立設している。両ガイド壁34aの間には、セル積層方向Xに延びる配線通路34bが設けられている。
【0043】
配線通路34bは、外装ケースの上面11aや排煙用ダクト60の上方に設けられる通路であり、電池セル10側のバスバー20に設置された検出部としての端子71から延びる多数の電圧検出線72(検出線の一例)を収容する収容部となっている。配線ガイド部34における2列のガイド壁34aのそれぞれには、セル積層方向Xに所定間隔を設けて配線用開口部34a1が形成されている。配線用開口部34a1は、ガイド壁34aの上端部から下方に向けて矩形状に切り欠いたような形状であり、上端が開口し下端が閉じる形状をなしている。
【0044】
多数の電圧検出線72は、バスバー20の一部にかしめ、溶接、圧着、ばね力を利用した保持による結合等により固定される端子71から延びる通信線である。各電圧検出線72は、図2に図示するように、バスバー20のY方向の端部から中央側に向けて引き回されてバスバー20の上方を通り、配線ガイド部34の配線用開口部34a1から配線通路34bに集合する。
【0045】
集合した電圧検出線72は、一体に束ねられたケーブル70となり、排煙用ダクト60の上方に載置して配線されるように配線通路34bを通って電池監視ユニットまで至る。このように配線ガイド部34は、他の部品と干渉しない電圧検出線72の良好、整然とした配線に寄与し、電圧検出線72を他の部品との接触や外部から作用する外力から保護し、損傷を与えないように配線できる機能を有する。図4に図示するように、ケーブル70は、複数の電圧検出線72の導線部72aを絶縁して内部に包含する外装チューブ73を備えている。外装チューブ73の横断面形状は、高さ方向長さが横方向長さよりも短い扁平状である。したがって、ケーブル70は、いわゆる扁平状のフラットケーブルである。
【0046】
なお、図4に図示するフラットケーブルは、高さ方向に一列に、電圧検出線72、換言すれば導電部72aが並ぶものであるが、ケーブル70の横断形状が高さ方向よりも横方向の長さがながければ、導電部72aが高さ方向に二列以上に並ぶ形態であってもよい。
【0047】
図4に示すように、組電池1は、側方を配線ガイド部34に保護されて配線通路34bに配線されるケーブル70をさらに上方から覆い、外部から保護する配線保護部材としての配線保護カバー80を備える。配線保護カバー80は、ケーブル70が配線通路34bに設置された状態で、上部が開口した配線ガイド部34に蓋をするようにガイド壁34aの上端部に取り付けられることにより、上方からケーブル70を保護する。なお、配線保護カバー80は、例えば、ポリプロピレン(PP樹脂)等の合成樹脂で形成されている。
【0048】
この構成によれば、ケーブル70の下方は排煙用ダクト60によって保護し、ケーブル70の上方は配線保護カバー80によって外部から保護する。このため、組み付け作業、メンテナンス等における外部からの荷重がかかった場合でも、ケーブル70に直接外力が作用することを回避して、亀裂、断線等の不具合を未然に防止できる。
【0049】
各バスバー20は、上方に突出するバスバー凸部の裏面側が位置決め凸部31に対向する姿勢で、第1の端子嵌通開口部23及び第2の端子嵌通開口部24が接続対象の電極端子12に嵌まって配置されている。つまり、接続対象の電極端子12同士をバスバー20によって接続する工程を実施するときには、バスバー凸部22の頂部を上方向Zに向け、端子接続部21を水平方向に保った姿勢で、各バスバー20を、バスバー凸部の裏面側が位置決め凸部31に対向するように位置決めして、電極端子12を第1の端子嵌通開口部23及び第2の端子嵌通開口部24に嵌め込む。この位置決め構造により、バスバー20は、セル積層方向Xについて適切な位置で設置され、接続すべき電極端子12を正確に両嵌通開口部23,24に挿通することができる。
【0050】
また、正極端子及び負極端子は、第1の端子嵌通開口部23と第2の端子嵌通開口部24に嵌められた後、例えばレーザー溶接、アーク溶接等の溶接により、バスバー20の端子接続部21に接合される。
【0051】
さらに、組電池1は、セル積層方向Xに複数個並ぶように設けられて、隣接するバスバー20間にバスバー間凸部32を介在するように備えている。バスバー間凸部32の頂部は、電気絶縁性を有し、位置決め凸部31よりも上方に突出している。つまり、バスバー20を適切な位置に設置しようとするときには、バスバー間凸部32は、セル積層方向Xに隣接するバスバー20間を隔てる隔壁となって介在する。この構成によって、セル積層方向Xについてのバスバー20の変位が規制されるため、位置決めの作用を発揮することができるとともに、隣接するバスバー20同士を隔壁となって隔てるため、両者の接触を妨げてバスバー間の短絡を防止することができる。
【0052】
また、位置決め凸部31に相当する部分は、カバー部30やケース40とは別個の部品からなるもので構成してもよい。この場合、例えば当該部分は、電池セル10の間に設けられる部材であって、電池セル10間のセル間通路50を形成する樹脂製のスペーサ部材と一体に形成することができる。
【0053】
隣接する電池セル10における接続対象の電極端子12間を電気的に接続するときには、カバー部30を取り付けた組電池に対して、バスバー凸部22を上方に向けた姿勢でバスバー凸部の裏面側を位置決め凸部31に対向させるようにバスバー20を近づけ、電池セル10に対して位置決めする。そして、バスバー20の位置を微調整して、当該電極端子12を第1の端子嵌通開口部23及び第2の端子嵌通開口部24に嵌め込む。この工程を組電池1に設置するすべてのバスバー20について行う。バスバー凸部の裏面側を位置決め凸部31に対向させた位置決めにより、バスバー20のセル積層方向Xの位置が規制されるので、各電極端子12を端子嵌通開口部23,24に嵌める工程を迅速に行うことに寄与し、またバスバー20が接触すべきでない部品に触れることを妨げて短絡等の不適切な接続や部品の損傷等を未然に防止できる。
【0054】
さらに、セル積層方向Xに隣接するバスバー20間に相当する位置には、位置決め凸部31よりも上方に高く起立するバスバー間凸部32が存在している。このため、バスバー20を配置するときに、バスバー20を位置ずれさせて配置してしまっても端子接続部21の先端が背の高いバスバー間凸部32に接触することにより、隣接するバスバー20同士を重ならないように、適切な位置に配置することができる。換言すれば、各バスバー20を上方からおおよその位置に置いたとしても、各バスバー20は、背の高いバスバー間凸部32によって他のバスバー20と干渉しないように配置され、さらにバスバー凸部の裏面側と位置決め凸部31との位置決め作用によって電極端子12を適切に接続できる位置に配置されることになる。
【0055】
次に、本実施形態の組電池1がもたらす作用効果について説明する。組電池1は、外装ケースの上面11aに設けられ、電池セル10の内部圧力が異常な圧力になると破断する安全弁13と、バスバー20と外装ケース11間を絶縁し、少なくとも安全弁13を除く外装ケースの上面11a部分を覆うように設けられるカバー部30と、耐熱性を有し、カバー部30で覆われていない安全弁13を内部の排煙用通路61に露出するように内壁面60aが安全弁13に対向して設けられる排煙用ダクト60と、複数の電池セル10の状態に関する情報を取得するために、複数の電池セル10に電気接続された端子71から延びる複数の電圧検出線72を束ねてなり、排煙用ダクト60の上方に載置して配線されるケーブル70と、を備える。
【0056】
この構成によれば、安全弁13の破断によって高温のガスが排煙用ダクト60内の通路を流れたとしても、ケーブル70は耐熱性を有する排煙用ダクト60の上方に載置して配線されることにより、ケーブル70を熱から保護し、ケーブル70の被覆部等の溶融を防止することができる。さらに、ケーブル70は排煙用ダクト60の上方で排煙用ダクト60に沿うように配線されるため、ケーブル70を配線するためのスペースを小型化できるとともに、ケーブル70を配線、支持等するための部材を減らすことができる。したがって、熱からのケーブル70の保護、小型化及び部品点数の低減が図れる組電池1が得られる。
【0057】
また、カバー部30は、耐熱性を有する樹脂で形成されていることにより、カバー部30についても耐熱性を有するため、高温ガスに対する排煙用ダクト60周辺の耐温度性能を向上させることができる。したがって、熱からのケーブル70の保護をさらに高めることができる。
【0058】
また、排煙用ダクト60は、カバー部30よりも高い耐熱性を有することにより、排煙用ダクト60の耐熱性をカバー部30よりも高くして、直接、高温ガスに接触し得る排煙用ダクト60について耐温度性能を確保するため、高温ガスからのケーブル70の保護をより確実なものにできる。
【0059】
また、排煙用ダクト60は、安全弁13が設けられている部位を含む外装ケースの上面11aに密着して接触するフランジ部60bを備えている。これによれば、排煙用ダクト60と外装ケースの上面11aとの密着度合いをフランジ部60bによって高め、外部へのガス遮断性を向上することにより、電池セル10が異常であるときの外部へのガス漏れ防止効果を向上することができる。
【0060】
また、ケーブル70は、複数の電圧検出線72の導線部72aを絶縁して内部に包含する外装チューブ73を備え、外装チューブ73の横断面形状は、高さ方向長さが横方向長さよりも短い扁平状である。これによれば、複数の電線を絶縁して収納するケーブル70の高さ方向長さを抑制できるので、組電池1全体の高さを抑制することができる。また、複数の電池セル10に関する情報を取得するための複数の電線を、外装チューブ73によって一体に束ねた状態で収納するため、組電池1の組立てにおける配線に要する工数をさらに低減することができる。
【0061】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0062】
上記実施形態におけるカバー部30は、複数の電池セル10が収容されるケース40とは別体の部品であり、爪部33と収容部41との係合によってケース40に一体に装着されるものであるが、本発明はこのような形態に限定するものではない。また、カバー部30は、ケース40と一体に形成される部品であってもよい。例えば、カバー部30はヒンジ部によってケース40に連結されている一体成形の部材とする。この場合には、ヒンジ部を支点としてケース40に蓋をするようにカバー部30をかぶせ、ヒンジ部とは反対側に設けた係合手段によって、カバー部30をケース40に固定すればよい。
【0063】
上記実施形態における排煙用ダクト60は、カバー部30とは別個の部材であるが、本発明は、この形態に限定するものではなく、排煙用ダクト60とカバー部30は一体の同一部材であってもよい。
【0064】
上記実施形態における排煙用ダクト60は横断面がコの字形状であり、安全弁13が露出する排煙用通路61は排煙用ダクト60の内壁によって囲まれる形態である。本発明は、この形態に限定するものではなく、例えば排煙用通路61が排煙用ダクト60の内壁のみによって囲まれずに、排煙用ダクト60の内壁とカバー部30とによって囲まれている形態であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…組電池
10…電池セル
11…外装ケース
11a…外装ケースの上面(外装ケースの端面)
12…電極端子
13…安全弁
20…バスバー
30…カバー部
50…セル間通路
60…排煙用ダクト(ダクト部)
60a…内壁面
60b…フランジ部
61…排煙用通路(通路)
70…ケーブル
71…端子
72…電圧検出線(検出線)
72a…導線部
73…外装チューブ
80…配線保護カバー(配線保護部材)
X…セル積層方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装ケース(11)から上方に突出する正極端子及び負極端子からなる電極端子(12)を有する電池セル(10)を複数個積層し、積層方向(X)に隣接する前記電池セル(10)における接続対象となる前記電極端子間をバスバー(20)で接続して通電可能に構成する組電池(1)であって、
前記外装ケースの端面(11a)に設けられ、前記電池セル内部の圧力が異常な圧力になるときに破断する安全弁(13)と、
前記バスバー(20)と前記電池セルの外装ケース(11)間を絶縁し、少なくとも前記安全弁(13)を除く前記外装ケースの端面部分を覆うように設けられるカバー部(30)と、
耐熱性を有するダクト部(60)であって、前記カバー部(30)で覆われていない前記安全弁(13)を内部に形成される通路(61)に露出するように内壁面(60a)が前記安全弁(13)に対向して設けられるダクト部(60)と、
複数の前記電池セルの状態に関する情報を取得するために、複数の前記電池セルに電気接続された端子(71)から延びる複数の検出線(72)を束ねてなるケーブル(70)であって、前記ダクト部(60)の上方に載置して配線されるケーブル(70)と、
を備えることを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記カバー部(30)は、耐熱性を有する樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記ダクト部(60)は、前記カバー部(30)よりも高い耐熱性を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の組電池。
【請求項4】
前記ダクト部(60)は、前記安全弁(13)が設けられている部位を含む前記外装ケースの端面(11a)に密着して接触するフランジ部(60b)を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の組電池。
【請求項5】
前記ケーブル(70)は、前記複数の検出線(72)の導線部(72a)を絶縁して内部に包含する外装チューブ(73)を備えており、
前記外装チューブ(73)の横断面形状は、高さ方向長さが横方向長さよりも短い扁平状であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の組電池。
【請求項6】
前記ダクト部(60)の上方に配線される前記ケーブル(70)をさらに上方から覆い、外部から保護する配線保護部材(80)を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−113896(P2012−113896A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260719(P2010−260719)
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】