経カテーテル弁搬送システムおよび方法
人工弁を患者の心臓に経皮的に搬送するための搬送器具および方法。これらの人工弁は、大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、および/または三尖弁などの自然の心臓弁において、人工弁の最適置換を促進する補完的機能を提供するように構成され得る。搬送器具は、外側搬送シース(52)内に格納された解放シース(154)組立体を含む。その組立体の解放シース構成部品は、人工弁(32)の一部を搬送器具に捕捉し、外側シースの引き込みで、人工弁の完全解放を達成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年8月27日に出願された、「Transcatheter Valve Delivery Systems and Methods」という名称の米国仮特許出願第61/237,373号(代理人整理番号P0035291.00)の米国特許法35 U.S.C §119(e)(1)に基づく利益を主張し、その出願内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は経カテーテル弁を移植するための搬送システムに関する。詳細には、本開示は経皮的に人工心臓弁を移植する搬送システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
疾患、又は欠陥のある心臓弁は、多種多様な種類の心臓弁手術によって、修復または交換することができる。典型的な心臓弁手術は、全身麻酔下で行われる心臓切開外科手術を伴い、その間、心臓が止められ、血流が心肺バイパス装置によって制御される。この種の心臓弁手術は、高侵襲的であり、患者を、例えば、感染症、脳卒中、腎不全、および心肺バイパス装置の使用に関連する副作用など、いくつかの潜在的リスクに曝す。
【0004】
心臓切開外科手術の欠点のために、心臓弁の最小侵襲かつ経皮的置換への関心が高まっている。かかる手術では、患者の皮膚に比較的小さな開口部を作り、そこから弁組立体を挿入し、カテーテルに類似した搬送器具により心臓まで搬送する。この手法は、前述した心臓切開外科手術などの、侵襲性の高い方式の手術よりも、多くの場合好ましい。
【0005】
様々な種類および構造の人工心臓弁が、疾患のある自然のヒト心臓弁を置換するための経皮的心臓弁手術で使用される。どの特定の人工心臓弁の実際の形状および構造も、ある程度、置き換える弁(すなわち、僧帽弁、三尖弁、大動脈弁、または肺動脈弁)に左右される。一般に、人工心臓弁は、置き換える弁の機能を複製するように設計され、それ故、バイオプロテーゼまたは機械的心臓弁人工器官のいずれかと共に使用される弁葉状構造を含む。バイオプロテーゼが選択される場合、置換弁は、弁付きステントを作成するために、拡張可能ステントフレーム内に一定の方法で取り付けられた弁付き静脈部分を含み得る。経皮的移植用にかかる弁を準備するために、一種の弁付きステントが、最初は拡張または非クリンプ状態で提供され、その後、カテーテルの直径にできるだけ近くなるまで、カテーテルのバルーン部の周囲にクリンプまたは圧縮される。他の経皮的移植システムでは、弁付きステントのステントフレームは、自己拡張材料で作成できる。これらのシステムでは、弁付きステントは所望のサイズまで縮小されて、例えば、シースでその圧縮状態に保持される。弁付きステントが患者の体内の所望の位置に置かれた場合などに、この弁付きステントからシースを引っ込めると、ステントが大きな直径へと拡張可能になる。これらの種類のいずれの経皮的ステント搬送システムでも、人工心臓弁の患者の自然組織への従来型の縫合は、通常必要ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
経皮的弁置換術および器具が進歩しているが、心臓弁を最小侵襲かつ経皮的な方法で移植位置に搬送するための異なる搬送システムの提供が継続して望まれている。患者の体内での弁の最適移植位置を確実にするために、弁が展開されたか又は一部展開された時点で、その弁を再配置および/または収縮したいという、継続的な要望もある。さらに、弁および、その弁の搬送システムへの簡単な装着を提供し、患者の体内の所望の位置に到着するとその弁を確実に解放できるようにする、対応する搬送システムを提供する要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の搬送器具は、置換弁を患者の心臓まで搬送するために使用できる。これらの置換心臓弁は、大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、および/または三尖弁などの自然の心臓弁における置換心臓弁の最適置換を促進する補完的機能を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、本開示の置換心臓弁は、逆行性経動脈的(retrograde transarterial)アプローチを用いた(高頻度刺激の有無にかかわらず)経血管的(transvascular)搬送に対して高度に修正可能である。本開示に関連する方法は、必要があるかまたは望ましい場合には、本開示のいくつかの人工心臓弁が相互に上部に、隣接して、または内部に取り付けできるように、複数回繰り返すことができる。
【0008】
本開示の置換心臓弁の挿入方法は、挿入中には圧縮状態でステント構造を保持でき、所望の位置に配置されるとステント構造が拡張できるか又はステント構造を拡張させる、搬送器具を含む。さらに、本開示の搬送方法は、ステントが、ステント搬送器具から少なくとも一部展開された後にそれを除去または再配置するために、回収できるようにする機能を含むことができる。本方法は、順行性アプローチまたは逆行性アプローチのいずれかを用いて、ステント構造の移植を含み得る。その上、本開示の多くの搬送方法では、ステント構造を患者の体内で所望の方向に調整できるようにするため、ステント構造は生体内で回転可能である。
【0009】
本開示の原理によるいくつかの態様は、弁構造が取り付けられたステントフレームを含む、ステント付き人工心臓弁を経皮的に配置するための搬送器具に関連する。その搬送器具は、搬送シース組立体、内側シャフト、ハブ、および解放シース組立体を含む。搬送シース組立体は、遠位端で終了してルーメンを画定する。内側シャフトがそのルーメン内に摺動自在に配置される。ハブは、内側シャフトから突き出て、例えばステントフレームによって形成される1つまたは複数のポストなど、人工心臓弁ステントフレームの一部を解放可能に受けるように構成される。解放シース組立体は、搬送シース組立体および内側シャフトに沿って配置される。この関連で、解放シース組立体は、内側シャフトの周囲に摺動自在に配置された解放シースを含む。この構造で、搬送器具は、装着状態(loaded state)および展開状態を提供するように構成される。装着状態では、搬送シース組立体は、内側シャフト上にステント付き人工心臓弁を保持する。さらに、ステント付き人工心臓弁は、解放シースでハブに連結される。展開状態では、搬送シース組立体の遠位端は、解放シースのように、人工心臓弁から退避させられる。展開状態では、その後、人工心臓弁は、ハブから解放されることが許可される。いくつかの実施形態では、解放シース組立体は、搬送シース組立体を近位に引込め、解放シースをハブに対して自己引込みするように構成される。他の実施形態では、解放シース組立体は、板バネ状本体にできる少なくとも1つのバイアス部材によって解放シースに連結される取り付け基部をさらに含む。これらの構造で、取り付け基部がハブに近位の内側シャフトに固定されて、バイアス部材が搬送シース組立体のルーメンで抑圧されると、そのバイアス部材は折り曲げ状態にされ、解放シースをハブ上で方向付ける。バイアス部材が搬送シース組立体の抑圧から解放されると、そのバイアス部材は、通常状態に自己移行し、それにより、解放シースが引っ込む。
【0010】
本開示の原理によるさらに別の態様は、患者の欠陥のある心臓弁を置換するためのシステムに関する。そのシステムは、前述のとおり、人工心臓弁および搬送器具を含む。人工心臓弁は、ステントフレームおよびそれに取り付けられた弁構造を含む。ステントフレームは、遠位領域および近位領域を画定して、近位領域が少なくとも1つのポストを形成する。システムの装着状態では、解放シースとハブとの間でポストが捕捉される。搬送シース組立体の遠位端が解放シースを近位に超えて引っ込められると、解放シース組立体は、解放シースを自己引込みし、それによりポストがハブから解放されるようになる。
【0011】
本開示の原理によるさらに別の態様は、ステント付き人工心臓弁を患者の移植位置に経皮的に配置する方法に関する。ステントフレームおよび弁構造を有する、径方向に拡張可能な人工心臓弁を積まれた搬送器具が受け取られる。その搬送器具は、その器具の装着状態で、人工心臓弁を内側シャフト上に圧縮配置で含む搬送シース組立体を含む。搬送器具は、内側シャフトから突き出たハブ、およびステントフレームのポストを摺動自在にハブに捕捉する解放シースを含む解放シース組立体をさらに含む。人工心臓弁が、圧縮配置で、装着状態の搬送器具により患者の身体ルーメンから移植位置に搬送される。搬送シース組立体が人工心臓弁から近位に引っ込められる。最後に、解放シース組立体が解放シースをハブに対して自己引き込みすることを含め、ポストがハブから解放されて完全展開の達成が可能になる。
【0012】
本開示は、添付の図を参照してさらに説明され、図中、複数の図における同様の構造は、同様の符号で参照される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】通常の、拡張配置での、本開示のシステムおよび方法で有用なステント付き人工心臓弁の側面図である。
【図1B】圧縮配置での、図1Aの人工心臓弁の側面図である。
【図2A】本発明の原理によるステント付き人工心臓弁搬送器具の分解斜視図である。
【図2B】最終的に組み立てられた、図2Aの搬送器具の側面図である。
【図3A】図2Aの搬送器具で有用なハブ構成部品の側面図である。
【図3B】図3Aのハブの端面図である。
【図3C】図3Aのハブの断面図である。
【図4】図2Aの搬送器具で有用な別の実施形態ハブの側面図である。
【図5】図2Aの搬送器具の解放シース組立体構成部品の一部の斜視図である。
【図6A】図2Aの搬送器具の解放シース組立体構成部品の、通常状態における側面図である。
【図6B】図6Aの解放シース組立体の、圧縮または折り曲げ状態における側面図である。
【図7】図1Bの人工心臓弁を積んだ図2Aの搬送器具を含む、本開示による心臓弁置換システムの一部の断面図である。
【図8A】一部展開状態での、図7のシステムの遠位部の側面図である。
【図8B】ステント付き人工心臓弁の一部展開を含む、患者の生体構造内における図8Aのシステムの搬送を示す。
【図9A】展開のさらに連続的な段階にある、図2Aの搬送器具の単純化した斜視図である。
【図9B】一部展開のさらに連続的な段階にある、図7のシステムの側面図である。
【図10A】展開状態へ移行する様々な段階にある、図2Aの搬送器具の単純化した斜視図である。
【図10B】展開状態へ移行する様々な段階にある、図2Aの搬送器具の単純化した斜視図である。
【図11A】展開状態での、図7のシステムの一部の側面図である。
【図11B】人工心臓弁の搬送器具からの完全な展開および自然弁への移植を含む、図7のシステムの患者の生体構造内に対する位置を単純な形で示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で説明の通り、本開示の種々のシステム、装置、および方法と共におよび/またはその一部として有用なステント付き経カテーテル人工心臓弁は、弁葉組織(tissue leaflet)を有する人工心臓弁または、重合体、金属、または組織工学によって作製された弁葉を有する人工心臓弁などの、多岐に渡る様々な構成を取り得、特に、いずれの心臓弁を置換するためにも構成できる。従って、本開示の種々のシステム、装置、および方法にとって有用なステント付き人工心臓弁は、通常、自然の大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、または三尖弁の置換用、静脈弁としての使用、または、例えば、大動脈弁または僧帽弁の部分などでの、弱ったバイオプロテーゼを置換するために使用できる。
【0015】
概略的には、本開示のステント付き人工心臓弁は、弁構造(組織または合成)を維持するステントまたはステントフレームを含み、そのステントは、通常の、拡張配置を有し、搬送器具内に積み込むための圧縮配置に折り畳み可能である。ステントは、通常、搬送器具から解放される時に、自己展開または自己拡張するように構成されている。例えば、本開示で有用なステント付き人工心臓弁は、Medtronic CoreValve,LLCから商標名CoreValve(登録商標)で販売されている人工弁でもよい。本開示のシステム、装置、および方法で有用な経カテーテル心臓弁人工器官の他の非限定例が、米国公開番号2006/0265056、2007/0239266、および2007/0239269で説明されており、その教示内容が参照により本明細書に組み込まれる。ステントまたはステントフレームは、所望の圧縮率および強度を人工心臓弁に提供するために、相互に相対して配置された、いくつかの筋交いまたはワイヤー断片を含む支持構造物である。概略的には、本開示のステントまたはステントフレームは、弁構造の弁葉(leaflet)が固定される内面積を有する概ね円筒状支持構造物である。弁葉は、当技術分野で周知のように、自己組織、異種移植材料、または合成物質など、様々な材料から形成できる。弁葉は、ブタ、ウシ、またはウマの弁など、同種の生物学的弁構造として提供され得る。代替案では、弁葉は、相互に独立して(例えば、ウシまたはウマの心膜弁葉)提供でき、その後、ステントフレームの支持構造に組み立てられる。もう1つ別の代替案では、ステントフレームおよび弁葉は、例えば、Advance BioProsthetic Surfaces(ABPS)で生産された、高強度ナノ製造NiTiフィルムを用いて達成され得る場合などのように、同時に作ることができる。ステントフレーム支持構造は、通常、少なくとも2つ(一般的には3つ)の弁葉を収容するように構成されるが、本明細書で説明される種類のステント付き人工心臓弁は、3つより多いかまたは少ない弁葉を組み込むことが可能である。
【0016】
ステントフレームのいくつかの実施形態は、圧縮または折り畳み配置から通常の径方向に拡張した配置に自己移行することができるように配置される、一連のワイヤーまたはワイヤー断片であり得る。いくつかの構造では、ステントフレーム支持構造を構成するいくつかの個々のワイヤーは、金属または他の材料で形成できる。これらのワイヤーは、ステントフレーム支持構造が、内径が通常の拡張配置の場合の内径よりも小さい圧縮配置に折り畳みまたは圧縮または縮小できるように配置される。圧縮配置では、弁葉が取り付けられたかかるステントフレーム支持構造は、搬送器具に取り付けることができる。ステントフレーム支持構造は、ステントフレームの長さに対する1つまたは複数の外側シースの相対移動などにより、必要な場合に通常の拡張配置に変化できるように構成される。
【0017】
本開示の実施形態におけるこれらステントフレーム支持構造のワイヤーは、ニッケルチタン合金(例えば、NitinolTM)などの形状記憶材料から形成できる。この材料では、支持構造は、例えば、熱、エネルギー、およびその他同類のものの印加により、または外力(例えば、圧縮力)を取り除くと、圧縮配置から通常の拡張配置に自己拡張可能である。また、このステントフレーム支持構造は、ステントフレーム構造を損傷することなく、複数回、圧縮および再拡張することもできる。さらに、かかる実施形態のステントフレーム支持構造は、材料の単一断片からレーザー切断し得るか、またはいくつかの異なる構成部品から組み立て得る。これらの種類のステントフレーム構造に対して、使用できる搬送器具の一例には、ステントフレームが配置されるまでステントフレームをカバーする格納式シースの付いたカテーテルがあり、配置された時点で、シースは、ステントフレームが自己拡張できるように、引っ込められる。かかる実施形態の詳細については、以下で説明する。
【0018】
前述の理解を念頭に置き、本開示のシステム、装置、および方法で有用なステント付き人工心臓弁30の非限定的な一例を図1Aに示す。参照の基準として、人工心臓弁30の通常、または拡張配置を図1Aに示し、図1Bは、圧縮配置(例えば、外側のカテーテルまたはシース内に圧縮して保持されている場合)の人工心臓弁30を示す。人工心臓弁30は、ステントまたはステントフレーム32および弁構造34を含む。ステントフレーム32は、前述したいずれの形も取ることができ、通常、圧縮配置(図1B)から通常の拡張配置(図1A)に自己拡張可能なように構成される。他の実施形態では、ステントフレーム32は、別の器具(例えば、ステントフレーム32の内部に配置されたバルーン)によって拡張配置に拡張可能である。弁構造34は、ステントフレーム32に取り付けられて、2つ以上(一般的には3つ)の弁葉36を提供する。弁構造34は、前述のいずれの形も取ることができ、例えば、弁構造34を、ステントフレーム32によって画定される1つまたは複数のワイヤー断片に縫合することなどにより、様々な方法でステントフレーム32に取り付けることができる。
【0019】
図1Aおよび図1Bの許容可能な一構成では、人工心臓弁30は、大動脈弁を置換または修復するために構成される。代替として、他の形状も、修復される弁の特定の構造に適合させて、想定される(例えば、本開示によるステント付き人工心臓弁は、自然の僧帽弁、肺動脈弁、または三尖弁を置換するための形状および/またはサイズにできる)。図1Aおよび図1Bの一構成では、弁構造34は、ステントフレーム32の全長未満で延びるが、他の実施形態では、ステントフレーム32の全長またはほぼ全長に沿って延びる。様々な他の構造も許容でき、本開示の範囲内である。例えば、ステントフレーム32は、通常の拡張配置でより円筒状の形状を持つことができる。
【0020】
ステント付き人工心臓弁30の前述の理解を念頭に置き、人工弁30を経皮的に搬送するための搬送器具50の一実施形態を図2Aおよび図2Bに示す。器具50は、ステント付き弁を搬送のために積むことができるが、図2Aおよび図2Bでは、搬送器具50の構成部品をより明確に説明するために、かかるステント付き弁は示されていない。搬送器具50は、搬送シース組立体52、内側シャフト組立体54、保持本体またはハブ56、解放シース組立体58、およびハンドル60を含む。様々な構成部品に関する詳細は、後述する。しかし、概略的には、搬送器具50は、患者の欠陥のある心臓弁を修復するためのシステムを形成するために、ステント付き人工心臓弁(図示せず)と組み合わされる。搬送器具50は、ステント付き人工心臓弁がハブ56で内側シャフト組立体54に連結されて、搬送シース組立体52のカプセル62内に圧縮して保持されている、装着状態を提供する。搬送シース組立体52は、ハンドル60の操作により、人工心臓弁からカプセル62を近位に退避させて、人工弁が自己拡張して内側シャフト組立体54から解放されるように、操作できる。解放シース組立体58は、この解放を達成するように動作する。さらに、ハンドル60は、人工心臓弁の遠位領域が自己拡張できるようになる一方で、人工弁の近位領域がハブ56に連結されたままである、一部展開状態を達成するためにカプセル62を操作するように作動できる。
【0021】
図2Aおよび図2Bに示され、後述される構成部品52〜60の種々の機能は、異なる構造および/または機構で変更または置換できる。したがって、本開示は、以下で例示および説明するように、搬送シース組立体52、内側シャフト組立体54、ハブ56、ハンドル60などに全く限定されるものではない。より一般的には、本開示による搬送器具は、自己展開するステント付き人工心臓弁を圧縮して保持することができる機能(例えば、ハブ56/解放シース組立体58と組み合わせたカプセル62)、および人工弁の一部もしくは完全解放または展開を達成できる機構(例えば、解放シース組立体58と組み合わせたカプセル62の引き込み)を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、搬送シース組立体52は、カプセル62およびシャフト70を含み、近位端および遠位端72、74を画定する。ルーメン76は、搬送シース組立体52によって形成され、遠位端74からカプセル62を通って延び、少なくともシャフト70の一部である。ルーメン76は、近位端72で開いてもよい。カプセル62は、シャフト70から遠位に延び、いくつかの実施形態では、ステント付き人工心臓弁(図示せず)がカプセル62内に圧縮された場合に期待される拡張力に公然と抵抗するために、十分な半径方向または円周方向の剛性を示す、より補強された構造(シャフト70の剛性と比較して)を有する。例えば、シャフト70は、金属編組を埋め込んだポリマー管にできるが、一方、カプセル62は、任意にポリマー被覆内に埋め込まれるレーザー切断金属管を含む。代替として、カプセル62およびシャフト70は、より一様な構造(例えば、連続的なポリマー管)を持つことができる。とにかく、カプセル62は、ステント付き人工心臓弁をカプセル62内に装着時に所定の直径で圧縮して保持するように構成され、シャフト70は、カプセル62をハンドル60に連結するように作用する。シャフト70(およびカプセル62)は、患者の脈管構造を通過するために十分柔軟に構成されているが、カプセル62の所望の軸方向運動を達成するために十分な長手方向剛性を示す。つまり、シャフト70の近位引き込みは、カプセル62に直接伝えられて、対応するカプセル62の近位収縮を引き起こす。他の実施形態では、シャフト70はさらに、回転力または回転運動をカプセル62に伝えるように構成される。
【0023】
内側シャフト組立体54は、ステント付き人工心臓弁をカプセル62内で支持するのに適した様々な構造を持つことができる。いくつかの実施形態では、内側シャフト組立体54は、内側支持シャフト80および先端82を含む。内側支持シャフト80は、搬送シース組立体52のルーメン76内で摺動自在に受け入れられる大きさに形成されて、ハブ56および解放シース組立体58を取り付けるように構成される。内側支持シャフト80は、遠位部84および近位部86を含むことができる。遠位部84は、先端82を近位部86に連結し、近位部86は、内側シャフト組立体54をハンドル58と連結する。構成部品80〜86は、ガイドワイヤー(図示せず)などの補助部品を摺動自在に受け入れられる大きさに形成された連続的なルーメン88(大まかに参照)を画定するように組み合わせることができる。
【0024】
遠位部84は、金属編組を埋め込んだ可撓性ポリマー管にでもよい。遠位部84が、ハブ56およびそれに取り付けられた解放シース組立体58と共に、装着され、圧縮されたステント付き人工心臓弁(図示せず)を支持するために十分な構造的完全性を示す限り、他の構成も許容できる。近位部86は、いくつかの構造において、先頭部90および後続部92を含み得る。先頭部90は、遠位部および近位部84、86間の移行として機能し、それ故いくつかの実施形態では、遠位部84より僅かに小さい外径を有する可撓性ポリマー管(例えば、PEEK)である。後続部92は、ハンドル60への強固な取り付けに適した、より剛性構造(例えば、金属ハイポチューブ(hypotube))を有する。他の材料および構造も想定される。例えば、代替実施形態では、遠位部および近位部84、86は、単一の同質管または固形シャフトとして一体的に形成される。
【0025】
先端82は、身体組織との無傷(atraumatic)接触を促進するように適合された遠位先細外面を有するノーズコーンを形成または画定する。先端82は、内側支持シャフト80に対して固定または摺動自在であり得る。
【0026】
ハブ56は、ステント付き人工心臓弁(図示せず)の対応する機能を内側シャフト組立体54に対して選択的に連結するように作用して、内側支持シャフト80上に取り付けられるように構成できる。ハブ56の一実施形態をより詳細に図3A〜3Cに示す。ハブ56は、搬送器具50が患者の体内でステントフレームを解放するように要求されるまで、ステントフレームを搬送器具50に固定するために使用できる。ハブ56は、ベース円筒部102および、その円筒部102の一端にフランジ104を含む。フランジ104は、少なくとも円筒部102よりも僅かに大きい直径を持つ。円筒部102は、その外周に複数の窪み106を含む。窪み106は、例えば、半球形、もしくは半−半球形にできるか、または別の凹形状を持つことができる。窪み106は、ステントフレームを搬送器具に固定するのに役立つ対応するステントフレームワイヤーの外側突起部と係合するように成形された陥凹部である。すなわち、突起部は、一定数のステントフレームワイヤーの端部(またはポスト)上に提供でき、そこで、これらの突起部は窪み106に収まるか、または係合するように設計されており、突起部も半球形または半−半球形にできる。ステントフレームワイヤーから延びる突起部の数は、好ましくは、ハブ56の円筒部102にある窪み106の数と同じであるが、特定のステントフレーム上で提供されている突起部の数は、対応するカラー(collar)上の窪みの数と異なっていてもよい。
【0027】
各窪み106の形状は、特定ハブの他の窪みと形およびサイズが同じであるか、または類似できる。窪みと係合するステントフレームのステントフレームワイヤー上にある各突起部の形状およびサイズは、係合される窪みと正確または厳密に一致することができる。しかし、突起部は、それが位置付けられる、対応する突起部より、少なくとも僅かに小さいか、かつ/または異なる形状にすることができる。いずれの場合も、各突起部は、構成部品を明確に係合するために、対応する窪み内にしっかりと位置付け可能であるべきである。成形突起部から延びる各ステントフレームワイヤーの太さは、ステントフレームの他のワイヤーと同じであるか、または異なる太さにすることができる。しかし、一実施形態では、ワイヤーの太さは、それらの突起部が窪み106内に位置付けられる場合に、ワイヤーがハブ56のフランジ104の外周を超えて延びないよう、十分な細さであろう。さらに、ステントフレームからの突起部がステントワイヤー配置のクラウン部または他の部分から延びることができ、突起部を持つ追加のワイヤーが既存のステント構造から延びるために提供できるか、または他の構造がかかる突起で提供できると考えられる。
【0028】
本開示の経カテーテルステント付き人工心臓弁搬送器具で有用なハブ56´の別の実施形態を図4に示す。ハブ56´は、その周囲に延びる放射状溝108を含む、概ね円筒状要素である。この実施形態の溝108は、ハブ56´の全周囲に延びるが、ハブ56´は代わりに、相互に間隔をあけた複数の溝を含むことができる。
【0029】
再度、図2Aを参照すると、ハブ56は、前述の説明と異なる、多種多様な他の形を取ることができる。例えば、ハブ56は、ステント付き人工心臓弁30(図1B)の対応する機能(例えば、ステントフレーム32によって形成されたポストまたはワイヤー延長(wire extension))と整合させるように構成された、スロット、バネなどを組み込むことができる。
【0030】
解放シース組立体58は、通常、人工心臓弁30(図1B)をハブ56に選択的に捕捉するように構築される。これを念頭に置き、解放シース組立体58は、取り付けカラーまたは基部150、1つまたは複数のバイアス部材152、および解放シース154を含む。概略的には、取り付け基部150は、解放シース組立体58を内側支持シャフト80に連結する。解放シース154は、ハブ56上に摺動自在に配置されるように形成されて、バイアス部材152が、解放シース154を取り付け基部150に対して、従って、後述のように、ハブ56に対して、長手位置に偏らせるように作用する。
【0031】
取り付け基部150は、内側支持シャフト80に対して、非可動で固定的な取り付けに適した種々の構成を取ることができる。例えば、取り付け基部150は、内側支持シャフト80に結合された輪状またはカラーにできる。内側支持シャフト80に対して固定位置を確定し、バイアス部材152内又はそれによって生成される力に抵抗するのに適した他の構成も想定される。例えば、他の実施形態では、取り付け基部150は省くことができ、解放シース154の反対側の各バイアス部材152の端部が直接内側支持シャフト80に取り付けられる。
【0032】
バイアス部材152は、板バネ状本体またはアームであり、解放シース154の周囲に相互に間隔が空けられている。いくつかの構造では、解放シース組立体58は、少なくとも2つのバイアス部材152を含み、それらは、解放シース154のほぼ反対側に配置され得るが、必要に応じて、相互に異なるように配置されることが可能である。他の構造では、バイアス部材152のうちの1つだけが提供される。さらに他の実施形態では、解放シース組立体58は、3つ以上のバイアス部材152を含み、バイアス部材152の各々は、同一に、または他のバイアス部材152と異なるように構成され得る。いずれにしても、後で詳述するように、バイアス部材152は、形状記憶属性を持ち、通常または自然に、図2Aに示す外側への曲線形状を取ることができ、かつ、外力でより真っ直ぐな形状にすることができる。外力を取り除くと、バイアス部材152は、通常の曲線形状に自己復元(self−revert back)する。他のバネに関連する形状または構造も許容できる。
【0033】
解放シース154は、フランジ104を含み、ハブ56上で摺動自在に受け入れられるように形成された管状体である。解放シース154は、解放シース154およびベース円筒部102とフランジ104の最大外径との間に提供される隙間(例えば、0.001インチ程度以上)によって、ハブ56上を自由に移動するように設計される。いくつかの構造では、図5(別の方法で、基部102内に長手方向スロット158を組み込む代替実施形態ハブ56”のフランジ104上に取り付けられた解放シース154を示す)に最も良く示されるように、解放シース154は、その遠位端162から延び、遠位端に対して開いている、少なくとも1つの長手方向ノッチ160を形成または画定する。解放シース154は、ハブ56で提供される長手方向スロット158の数に対応する複数のノッチ160を含むことができる。ノッチ160は、同一にすることができ、解放シース154がフランジ104上に取り付けられると、ノッチ160の各々が、スロット158の対応する1つに長手方向に位置合わせされるように、解放シース154の周囲に対して配置される。解放シース154がノッチ160の2つ(以上)を形成する実施形態では、2つ(以上)のフィンガー164が隣接するノッチ160によって又は隣接するノッチ160間に形成される。例えば、第1フィンガー164aは、第1および第2ノッチ160a、160b間に画定される。ノッチ160の各々は比較的均一な周方向幅を持つことができるが、拡大された周方向幅が遠位端162にごく隣接して任意で画定される。代替として、ノッチ160は他の形状を持つことができ、さらに他の実施形態では省かれる。
【0034】
再度、図2Aを参照すると、バイアス部材152および/または解放シース154を含め、解放シース組立体58は、金属またはポリマー(例えば、NitinolTM、ステンレス鋼、DelrinTM、および同様のもの)などの1つまたは複数の材料から作ることができる。材料は、例えば、0.002〜0.007インチ程度の厚さを持つが、厚さはこの範囲よりも薄いか、または厚くてもよい。解放シース組立体58は、構成部品に対して可撓性およびバネの半径方向強度(spring−radial strength)の両方を提供するために、例えば、5〜15mm程度の長さを持つことができる。材料は、クローズドセルまたはオープンセル構造のいずれでもよい。
【0035】
人工心臓弁の一部展開および完全展開を容易にする際の解放シース組立体58の操作は、バイアス部材152によって決定されるように、解放シース154の長手位置に基づく。前述の通り、バイアス部材152は、図2Aに大まかに示すように、通常、曲線形状を取るように形成される。バイアス部材152(通常状態)によって集合的に画定される直径は、搬送シース組立体ルーメン76の直径より大きい。従って、解放シース組立体58がカプセル62内(または搬送シースシャフト70内)に配置されている場合、バイアス部材152は半径方向内向きに屈折されて、取り付け基部150と解放シース154との間の長手方向間隔が増加される。この外力を取り除くと、バイアス部材152は、図2Aに示す自然の状態に自己復元し、それにより、解放シース154が取り付け基部150に対して元の長手方向間隔になるよう偏らせる。図6Aおよび図6Bは、この関係を単純化して示す。図6Aは、取り付け基部150と解放シース154との間の第1長手方向間隔L1を確立するバイアス部材152の通常状態を示す。圧縮力を受けると(例えば、搬送シース組立体52(図2A)内に挿入されると)、バイアス部材152は、図6Bに示すように、内向きに変形させられる。取り付け基部150は、空間的に固定されている(すなわち、内側支持シャフト80(図2A)に取り付けられている)ため、変形させられたバイアス部材152は、解放シース154を取り付け基部150から、第1長手方向間隔L1より大きい第2長手方向間隔L1に、無理に離す。圧縮力が取り除かれると、バイアス部材152は、図6Aの配置に自己復元し、それにより解放シース154を取り付け基部150に引き戻す。
【0036】
再度、図2Aを参照すると、ハンドル60は通常、ハウジング170およびアクチュエータ機構172(大まかに参照)を含む。ハウジング170は、アクチュエータ機構172を保持し、アクチュエータ機構172は、搬送シース組立体52の内側シャフト組立体54に対する滑り運動を容易にするように構成されている。ハウジング170は、ユーザーによる便利な処理に適切ないかなる形状またはサイズにもできる。簡易化した一構造では、アクチュエータ機構172は、ハウジング170によって摺動自在に保持されるユーザーインタフェースまたはアクチュエータ174を含み、シースコネクタ本体176に連結される。搬送シース組立体52の近位端72が、シースコネクタ本体176に(例えば、いくつかの実施形態における任意の取り付けボス(boss)178で)連結される。内側シャフト組立体54、特に近位管86は、シースコネクタ本体176の通路180内に摺動自在に受け入れられて、ハウジング170に強固に連結される。アクチュエータ174がハウジング170に対してスライドすると、従って、例えば、後述のように、内側シャフト組立体54から人工弁の展開を達成するために、搬送シース組立体52が、内側シャフト組立体54に対して移動又はスライドする。代替として、アクチュエータ機構172は、図2Aの図で関与するものとは異なる様々な他の形状を取ることができる。同様に、ハンドル60は、キャップ182および/または流体ポート組立体184など、他の機能を包含できる。
【0037】
図7は、患者の欠陥のある心臓弁を置換(または修復)するための本開示によるシステム200の一部を、搬送器具50内のステント付き人工心臓弁30を含めて示す。図7の搬送器具50の装着状態では、カプセル62が人工心臓弁30を囲繞して、図示の圧縮配置で人工心臓弁30を圧縮して保持できるように搬送シース組立体52を配置して、人工心臓弁30が内側シャフト組立体54上にクリンプされ、これにより修復システム200の装着状態を画定する。ハブ56および解放シース組立体58(大まかに参照)は、内側支持シャフト80に取り付けられて、解放シース154が、搬送シースシャフト70内での配置に応じて、バイアス部材152(一部示す)の変形により円筒状体102上を摺動自在に方向付けされる。解放シース154は、円筒状体102に対して所望の位置をより確実にするため、フランジ104に沿って摺動自在に支持され得る。この配置で、その後、人工心臓弁ステントフレーム32の一部(例えば、ポスト202)が、解放シース154でハブ56に捕捉される。
【0038】
装着した搬送器具50は、その後、人工心臓弁30を、欠陥のある心臓弁などの移植位置に経皮的に搬送するために使用できる。例えば、搬送器具50は、圧縮した人工心臓弁30を、大腿動脈への血管切開から患者の下行大動脈へ入り、大動脈弓を経て、上行大動脈を通り、ほぼ中ほどあたりで欠陥のある大動脈弁を越える(大動脈弁修復治療のため)、逆行性方法で移植位置に向かって進むように操作される。人工心臓弁30は、その後、搬送器具50から一部または完全に展開できる。いずれの手順でも、カプセル62(図2A)は、人工心臓弁30上から近位に収縮されるか、または退避させられる。図8Aに大まかに示すように、カプセル62の近位収縮の最初の段階で、遠位端74はステント付き人工心臓弁30に沿って長さのほぼ半ばあたりに配置される。人工心臓弁30の遠位領域210は、こうして、カプセル62の遠位端74に対して「露出され」、自己拡張が可能になる。しかし、遠位端74は解放シース組立体58(図8Aでは隠れている)の遠位であるため、人工心臓弁30の近位領域は、搬送器具50に固定されたままである。図8Bは、自然弁に経皮的に向けられたシステム200および一部関連状態の搬送器具50を示し、図のように、人工心臓弁30は、一部展開または拡張しているが、搬送器具50に連結したままである。
【0039】
搬送プロセスは、搬送シース組立体52をさらに引っ込めることにより継続する。図9A(図中、明確にするため、ステント付き人工心臓弁30が省略されている)に示すように、近位引込みにより、遠位端74がほぼハブ56および解放シース154上に位置付けられている。バイアス部材152(図6B)が、搬送シース組立体52の範囲内に留まっているため、それ故、変形させられた状態で、解放シース154がハブ56上に保持されて、それにより、ステント付き人工心臓弁30の搬送器具50との固定連結が維持される。図9Bは、搬送シース組立体52がさらにもっと引き続き引っ込められ、遠位端74が解放シース154のごく近位に位置付けられている状態を示す。しかし、バイアス部材152がまだ搬送シース組立体52に作用されているか又は搬送シース組立体52よって抑制されているため、ステント付き人工心臓弁30は、解放シース154とハブ56との間に固定されたままである。図のように、この一部展開状態で、ステント付き人工心臓弁30の大部分(例えば、90%)は、拡張状態に向けて自己拡張している。
【0040】
図9Bの一部展開段階(または、一部展開のいずれかの他の連続する前段階)では、臨床医は、移植位置に対して一部展開した人工心臓弁30の所望の評価を実行できる。特に、人工心臓弁30の大部分が、例えば、流入部および流出部の少なくとも一部を含めて、拡張配置にある。従って、本開示の弁置換システムならびに搬送器具および方法は、臨床医が、人工心臓弁30の移植位置に対する正確な評価ができるようにする。臨床医が人工心臓弁30を再配置すべきであると判断するような状況では、カプセル62は、いくつかの構造で、人工心臓弁30上を遠位に戻され、それにより人工心臓弁30をシースに収めるか又は捕捉して、圧縮配置に戻す。代替として、搬送器具50は、人工心臓弁30の再捕捉を達成する他の機能を包含できる。
【0041】
人工心臓弁30の搬送器具50からの完全展開が望れる場合、カプセル62は、バイアス部材152上をさらに近位に引き込まれる。図10Aおよび図10B(人工弁30(図1A)は、説明を簡単にするため、図10Aおよび図10Bからは省かれている)に示すように、バイアス部材152がカプセル62の範囲から順次解放されるにつれて、バイアス部材152は、通常状態に向けて自己復元する。この動作は、次に、図10Aの配置を図10Bの配置と比較して示されるように、バイアス部材152が、解放シース154をハブ56(または、少なくとも円筒状体102)から近位に引き込む。
【0042】
解放シース154をハブ56に対して引き込めると、図11Aおよび図11Bに示すように、ステントフレーム32がハブ56から完全に解放されるのを可能にする。解放シース154がステントフレーム32を超えて近位に自己引込みすると、人工心臓弁30が搬送器具50から(例えば、ステントフレーム32の自己拡張により)完全に解放される。図11Bは、解放された人工心臓弁30が、自然弁に移植されているところを示している。搬送器具50は、その後、患者から除去できる。
【0043】
搬送器具50は、人工心臓弁30のステントフレーム32が搬送シーケンスの事前に計画された段階で搬送器具50から解放されるように構成される。この搬送器具50は、それにより、有利なことに、ステントを搬送器具50から解放する前に、ユーザーが外側シースを弁付きステントから完全に移動できるようにする。さらに、器具50は、弁付きステントを最終的に解放する前に、弁機能が測定できるように、弁付きステントの流出部が開くか又は解放されるようにする。弁機能が最善でないか、かつ/または搬送器具50から完全に解放する前に弁付きステントを再配置したい場合には、弁付きステントが別の位置に移動できるか、または患者から除去できるように、シース内に十分に圧縮されるまで、前述のプロセスステップを逆の順序で実行できる。
【0044】
本開示の搬送器具は、例えば、大動脈弁置換のためのステントの配置を提供する。代替として、本開示のシステムおよび器具は、他の弁の置換のため、および/またはステントが移植される身体の他の部分で使用できる。大動脈弁を置換するために弁付きステントを搬送する際に、本開示の搬送器具は、例えば、逆行性搬送アプローチ(retrograde delivery approach)で使用できるが、搬送器具に一定の改変を加えることにより、順行性搬送アプローチが使用できると考えられる。本明細書で説明するシステムでは、弁付きステントを患者に配置しているが、搬送器具からはまだ解放されていない間に、有利なことに、弁を経由した完全または部分血流を維持できる。この機能は、他の周知の搬送器具で人工心臓弁の移植中に血流が停止またはブロックされた場合に起こり得る合併症を防ぐのに役立つ。さらに、それにより、弁付きステントを最終的に解放する前に、臨床医が、弁葉の開閉の評価、弁周囲リーク(paravalvular leakage)の検査、ならびに弁の冠血流および対象とする生体構造内での適切な位置付けの評価を行うことを可能にする。
【0045】
弁付きステントの経皮的搬送用システムの直径を最小限にすることが望ましい場合が多いため、患者に移植する際に一定の望ましい特徴を有するステントを提供しながら、ステントフレームと搬送器具との連結の質を最適化するように、ステントワイヤーおよび対応する延長要素の数を設計または選択できる。
【0046】
本明細書で提示および説明する搬送器具は、本開示の範囲内で、バルーン拡張可能ステントの搬送用に改変できる。すなわち、このバルーン拡張可能ステントの移植位置への搬送は、本開示の搬送器具の改変版を用いて、経皮的に実行できる。概略的には、これは、前述のとおり、解放シースならびに/または追加のシースならびに/または窪みおよび/もしくは溝を含むカラーを含み得る経カテーテル組立体の提供を含む。これらの器具は、さらに、搬送カテーテル、バルーンカテーテル、および/またはガイドワイヤーを含むことができる。この種の器具で使用される搬送カテーテルは、その内部にガイドワイヤーが摺動自在に配置されるルーメンを画定する。さらに、バルーンカテーテルは、膨張源と流体的に連結されたバルーンを含む。移植中のステントが自己拡張型のステントである場合、バルーンは必要なく、本明細書で説明したとおり、ステントが展開するまで、そのステントを圧縮状態で保持するためのシースまたは他の保持手段が使用されることに留意する。いずれの場合にも、バルーン拡張可能ステントに対して、経カテーテル組立体は、移植位置への所望の経皮的アプローチ用に、適切な大きさに形成される。例えば、経カテーテル組立体は、頸動脈、頸静脈、鎖骨下静脈、大腿動脈あるいは大腿静脈、または同種のものにおける開口部から心臓弁に搬送するための大きさに形成できる。基本的に、いずれの経皮肋間穿通も経カテーテル組立体の使用を容易にするようにできる。
【0047】
バルーンに取り付けたステントでは、経カテーテル組立体は、患者の経皮的開口部(図示せず)から搬送カテーテルで搬送される。移植位置は、ガイドワイヤーを患者の体内に挿入することによって位置付けられ、そのガイドワイヤーは、搬送カテーテルの遠位端から延び、バルーンカテーテルは別の方法で搬送カテーテル内に引き込まれている。バルーンカテーテルは、その後、ガイドワイヤーに沿って搬送カテーテルから遠位に進められ、バルーンおよびステントが移植位置に対して位置付けられる。代替実施形態では、ステントは最小侵襲外科的切開で(すなわち、非経皮的に)移植位置に搬送される。別の代替実施形態では、ステントは、開心/開胸術で搬送される。本開示のステントの一実施形態では、ステントは、ステントの適切な配置の目視確認を容易にするため、放射線不透過性、エコー源性、またはMRIで見える材料を含む。代替として、他の周知の外科的視覚補助器具をステントに組み込むことができる。心臓内へのステントの配置に関して説明した技術は、ステントが配置された解剖学的構造の長さに対して長手方向にあるステントの配置のモニターおよび修正の両方で使用できる。ステントが適切に配置されると、バルーンカテーテルは、バルーンを膨張させるように作動し、このようにしてステントを拡張状態に移行させる。
【0048】
本開示は、ここまで、そのいくつかの実施形態に関連して説明してきた。前述の詳細な説明および例は、明確な理解のためのみに提供されている。それらは限定するものと理解されるものではない。当業者には、本開示の範囲から逸脱することなく、前述の実施形態において多くの変更をなし得ることが明らかであろう。それ故、本開示の範囲は、本明細書で説明する構成に限定されるべきではない。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年8月27日に出願された、「Transcatheter Valve Delivery Systems and Methods」という名称の米国仮特許出願第61/237,373号(代理人整理番号P0035291.00)の米国特許法35 U.S.C §119(e)(1)に基づく利益を主張し、その出願内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は経カテーテル弁を移植するための搬送システムに関する。詳細には、本開示は経皮的に人工心臓弁を移植する搬送システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
疾患、又は欠陥のある心臓弁は、多種多様な種類の心臓弁手術によって、修復または交換することができる。典型的な心臓弁手術は、全身麻酔下で行われる心臓切開外科手術を伴い、その間、心臓が止められ、血流が心肺バイパス装置によって制御される。この種の心臓弁手術は、高侵襲的であり、患者を、例えば、感染症、脳卒中、腎不全、および心肺バイパス装置の使用に関連する副作用など、いくつかの潜在的リスクに曝す。
【0004】
心臓切開外科手術の欠点のために、心臓弁の最小侵襲かつ経皮的置換への関心が高まっている。かかる手術では、患者の皮膚に比較的小さな開口部を作り、そこから弁組立体を挿入し、カテーテルに類似した搬送器具により心臓まで搬送する。この手法は、前述した心臓切開外科手術などの、侵襲性の高い方式の手術よりも、多くの場合好ましい。
【0005】
様々な種類および構造の人工心臓弁が、疾患のある自然のヒト心臓弁を置換するための経皮的心臓弁手術で使用される。どの特定の人工心臓弁の実際の形状および構造も、ある程度、置き換える弁(すなわち、僧帽弁、三尖弁、大動脈弁、または肺動脈弁)に左右される。一般に、人工心臓弁は、置き換える弁の機能を複製するように設計され、それ故、バイオプロテーゼまたは機械的心臓弁人工器官のいずれかと共に使用される弁葉状構造を含む。バイオプロテーゼが選択される場合、置換弁は、弁付きステントを作成するために、拡張可能ステントフレーム内に一定の方法で取り付けられた弁付き静脈部分を含み得る。経皮的移植用にかかる弁を準備するために、一種の弁付きステントが、最初は拡張または非クリンプ状態で提供され、その後、カテーテルの直径にできるだけ近くなるまで、カテーテルのバルーン部の周囲にクリンプまたは圧縮される。他の経皮的移植システムでは、弁付きステントのステントフレームは、自己拡張材料で作成できる。これらのシステムでは、弁付きステントは所望のサイズまで縮小されて、例えば、シースでその圧縮状態に保持される。弁付きステントが患者の体内の所望の位置に置かれた場合などに、この弁付きステントからシースを引っ込めると、ステントが大きな直径へと拡張可能になる。これらの種類のいずれの経皮的ステント搬送システムでも、人工心臓弁の患者の自然組織への従来型の縫合は、通常必要ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
経皮的弁置換術および器具が進歩しているが、心臓弁を最小侵襲かつ経皮的な方法で移植位置に搬送するための異なる搬送システムの提供が継続して望まれている。患者の体内での弁の最適移植位置を確実にするために、弁が展開されたか又は一部展開された時点で、その弁を再配置および/または収縮したいという、継続的な要望もある。さらに、弁および、その弁の搬送システムへの簡単な装着を提供し、患者の体内の所望の位置に到着するとその弁を確実に解放できるようにする、対応する搬送システムを提供する要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の搬送器具は、置換弁を患者の心臓まで搬送するために使用できる。これらの置換心臓弁は、大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、および/または三尖弁などの自然の心臓弁における置換心臓弁の最適置換を促進する補完的機能を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、本開示の置換心臓弁は、逆行性経動脈的(retrograde transarterial)アプローチを用いた(高頻度刺激の有無にかかわらず)経血管的(transvascular)搬送に対して高度に修正可能である。本開示に関連する方法は、必要があるかまたは望ましい場合には、本開示のいくつかの人工心臓弁が相互に上部に、隣接して、または内部に取り付けできるように、複数回繰り返すことができる。
【0008】
本開示の置換心臓弁の挿入方法は、挿入中には圧縮状態でステント構造を保持でき、所望の位置に配置されるとステント構造が拡張できるか又はステント構造を拡張させる、搬送器具を含む。さらに、本開示の搬送方法は、ステントが、ステント搬送器具から少なくとも一部展開された後にそれを除去または再配置するために、回収できるようにする機能を含むことができる。本方法は、順行性アプローチまたは逆行性アプローチのいずれかを用いて、ステント構造の移植を含み得る。その上、本開示の多くの搬送方法では、ステント構造を患者の体内で所望の方向に調整できるようにするため、ステント構造は生体内で回転可能である。
【0009】
本開示の原理によるいくつかの態様は、弁構造が取り付けられたステントフレームを含む、ステント付き人工心臓弁を経皮的に配置するための搬送器具に関連する。その搬送器具は、搬送シース組立体、内側シャフト、ハブ、および解放シース組立体を含む。搬送シース組立体は、遠位端で終了してルーメンを画定する。内側シャフトがそのルーメン内に摺動自在に配置される。ハブは、内側シャフトから突き出て、例えばステントフレームによって形成される1つまたは複数のポストなど、人工心臓弁ステントフレームの一部を解放可能に受けるように構成される。解放シース組立体は、搬送シース組立体および内側シャフトに沿って配置される。この関連で、解放シース組立体は、内側シャフトの周囲に摺動自在に配置された解放シースを含む。この構造で、搬送器具は、装着状態(loaded state)および展開状態を提供するように構成される。装着状態では、搬送シース組立体は、内側シャフト上にステント付き人工心臓弁を保持する。さらに、ステント付き人工心臓弁は、解放シースでハブに連結される。展開状態では、搬送シース組立体の遠位端は、解放シースのように、人工心臓弁から退避させられる。展開状態では、その後、人工心臓弁は、ハブから解放されることが許可される。いくつかの実施形態では、解放シース組立体は、搬送シース組立体を近位に引込め、解放シースをハブに対して自己引込みするように構成される。他の実施形態では、解放シース組立体は、板バネ状本体にできる少なくとも1つのバイアス部材によって解放シースに連結される取り付け基部をさらに含む。これらの構造で、取り付け基部がハブに近位の内側シャフトに固定されて、バイアス部材が搬送シース組立体のルーメンで抑圧されると、そのバイアス部材は折り曲げ状態にされ、解放シースをハブ上で方向付ける。バイアス部材が搬送シース組立体の抑圧から解放されると、そのバイアス部材は、通常状態に自己移行し、それにより、解放シースが引っ込む。
【0010】
本開示の原理によるさらに別の態様は、患者の欠陥のある心臓弁を置換するためのシステムに関する。そのシステムは、前述のとおり、人工心臓弁および搬送器具を含む。人工心臓弁は、ステントフレームおよびそれに取り付けられた弁構造を含む。ステントフレームは、遠位領域および近位領域を画定して、近位領域が少なくとも1つのポストを形成する。システムの装着状態では、解放シースとハブとの間でポストが捕捉される。搬送シース組立体の遠位端が解放シースを近位に超えて引っ込められると、解放シース組立体は、解放シースを自己引込みし、それによりポストがハブから解放されるようになる。
【0011】
本開示の原理によるさらに別の態様は、ステント付き人工心臓弁を患者の移植位置に経皮的に配置する方法に関する。ステントフレームおよび弁構造を有する、径方向に拡張可能な人工心臓弁を積まれた搬送器具が受け取られる。その搬送器具は、その器具の装着状態で、人工心臓弁を内側シャフト上に圧縮配置で含む搬送シース組立体を含む。搬送器具は、内側シャフトから突き出たハブ、およびステントフレームのポストを摺動自在にハブに捕捉する解放シースを含む解放シース組立体をさらに含む。人工心臓弁が、圧縮配置で、装着状態の搬送器具により患者の身体ルーメンから移植位置に搬送される。搬送シース組立体が人工心臓弁から近位に引っ込められる。最後に、解放シース組立体が解放シースをハブに対して自己引き込みすることを含め、ポストがハブから解放されて完全展開の達成が可能になる。
【0012】
本開示は、添付の図を参照してさらに説明され、図中、複数の図における同様の構造は、同様の符号で参照される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】通常の、拡張配置での、本開示のシステムおよび方法で有用なステント付き人工心臓弁の側面図である。
【図1B】圧縮配置での、図1Aの人工心臓弁の側面図である。
【図2A】本発明の原理によるステント付き人工心臓弁搬送器具の分解斜視図である。
【図2B】最終的に組み立てられた、図2Aの搬送器具の側面図である。
【図3A】図2Aの搬送器具で有用なハブ構成部品の側面図である。
【図3B】図3Aのハブの端面図である。
【図3C】図3Aのハブの断面図である。
【図4】図2Aの搬送器具で有用な別の実施形態ハブの側面図である。
【図5】図2Aの搬送器具の解放シース組立体構成部品の一部の斜視図である。
【図6A】図2Aの搬送器具の解放シース組立体構成部品の、通常状態における側面図である。
【図6B】図6Aの解放シース組立体の、圧縮または折り曲げ状態における側面図である。
【図7】図1Bの人工心臓弁を積んだ図2Aの搬送器具を含む、本開示による心臓弁置換システムの一部の断面図である。
【図8A】一部展開状態での、図7のシステムの遠位部の側面図である。
【図8B】ステント付き人工心臓弁の一部展開を含む、患者の生体構造内における図8Aのシステムの搬送を示す。
【図9A】展開のさらに連続的な段階にある、図2Aの搬送器具の単純化した斜視図である。
【図9B】一部展開のさらに連続的な段階にある、図7のシステムの側面図である。
【図10A】展開状態へ移行する様々な段階にある、図2Aの搬送器具の単純化した斜視図である。
【図10B】展開状態へ移行する様々な段階にある、図2Aの搬送器具の単純化した斜視図である。
【図11A】展開状態での、図7のシステムの一部の側面図である。
【図11B】人工心臓弁の搬送器具からの完全な展開および自然弁への移植を含む、図7のシステムの患者の生体構造内に対する位置を単純な形で示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で説明の通り、本開示の種々のシステム、装置、および方法と共におよび/またはその一部として有用なステント付き経カテーテル人工心臓弁は、弁葉組織(tissue leaflet)を有する人工心臓弁または、重合体、金属、または組織工学によって作製された弁葉を有する人工心臓弁などの、多岐に渡る様々な構成を取り得、特に、いずれの心臓弁を置換するためにも構成できる。従って、本開示の種々のシステム、装置、および方法にとって有用なステント付き人工心臓弁は、通常、自然の大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、または三尖弁の置換用、静脈弁としての使用、または、例えば、大動脈弁または僧帽弁の部分などでの、弱ったバイオプロテーゼを置換するために使用できる。
【0015】
概略的には、本開示のステント付き人工心臓弁は、弁構造(組織または合成)を維持するステントまたはステントフレームを含み、そのステントは、通常の、拡張配置を有し、搬送器具内に積み込むための圧縮配置に折り畳み可能である。ステントは、通常、搬送器具から解放される時に、自己展開または自己拡張するように構成されている。例えば、本開示で有用なステント付き人工心臓弁は、Medtronic CoreValve,LLCから商標名CoreValve(登録商標)で販売されている人工弁でもよい。本開示のシステム、装置、および方法で有用な経カテーテル心臓弁人工器官の他の非限定例が、米国公開番号2006/0265056、2007/0239266、および2007/0239269で説明されており、その教示内容が参照により本明細書に組み込まれる。ステントまたはステントフレームは、所望の圧縮率および強度を人工心臓弁に提供するために、相互に相対して配置された、いくつかの筋交いまたはワイヤー断片を含む支持構造物である。概略的には、本開示のステントまたはステントフレームは、弁構造の弁葉(leaflet)が固定される内面積を有する概ね円筒状支持構造物である。弁葉は、当技術分野で周知のように、自己組織、異種移植材料、または合成物質など、様々な材料から形成できる。弁葉は、ブタ、ウシ、またはウマの弁など、同種の生物学的弁構造として提供され得る。代替案では、弁葉は、相互に独立して(例えば、ウシまたはウマの心膜弁葉)提供でき、その後、ステントフレームの支持構造に組み立てられる。もう1つ別の代替案では、ステントフレームおよび弁葉は、例えば、Advance BioProsthetic Surfaces(ABPS)で生産された、高強度ナノ製造NiTiフィルムを用いて達成され得る場合などのように、同時に作ることができる。ステントフレーム支持構造は、通常、少なくとも2つ(一般的には3つ)の弁葉を収容するように構成されるが、本明細書で説明される種類のステント付き人工心臓弁は、3つより多いかまたは少ない弁葉を組み込むことが可能である。
【0016】
ステントフレームのいくつかの実施形態は、圧縮または折り畳み配置から通常の径方向に拡張した配置に自己移行することができるように配置される、一連のワイヤーまたはワイヤー断片であり得る。いくつかの構造では、ステントフレーム支持構造を構成するいくつかの個々のワイヤーは、金属または他の材料で形成できる。これらのワイヤーは、ステントフレーム支持構造が、内径が通常の拡張配置の場合の内径よりも小さい圧縮配置に折り畳みまたは圧縮または縮小できるように配置される。圧縮配置では、弁葉が取り付けられたかかるステントフレーム支持構造は、搬送器具に取り付けることができる。ステントフレーム支持構造は、ステントフレームの長さに対する1つまたは複数の外側シースの相対移動などにより、必要な場合に通常の拡張配置に変化できるように構成される。
【0017】
本開示の実施形態におけるこれらステントフレーム支持構造のワイヤーは、ニッケルチタン合金(例えば、NitinolTM)などの形状記憶材料から形成できる。この材料では、支持構造は、例えば、熱、エネルギー、およびその他同類のものの印加により、または外力(例えば、圧縮力)を取り除くと、圧縮配置から通常の拡張配置に自己拡張可能である。また、このステントフレーム支持構造は、ステントフレーム構造を損傷することなく、複数回、圧縮および再拡張することもできる。さらに、かかる実施形態のステントフレーム支持構造は、材料の単一断片からレーザー切断し得るか、またはいくつかの異なる構成部品から組み立て得る。これらの種類のステントフレーム構造に対して、使用できる搬送器具の一例には、ステントフレームが配置されるまでステントフレームをカバーする格納式シースの付いたカテーテルがあり、配置された時点で、シースは、ステントフレームが自己拡張できるように、引っ込められる。かかる実施形態の詳細については、以下で説明する。
【0018】
前述の理解を念頭に置き、本開示のシステム、装置、および方法で有用なステント付き人工心臓弁30の非限定的な一例を図1Aに示す。参照の基準として、人工心臓弁30の通常、または拡張配置を図1Aに示し、図1Bは、圧縮配置(例えば、外側のカテーテルまたはシース内に圧縮して保持されている場合)の人工心臓弁30を示す。人工心臓弁30は、ステントまたはステントフレーム32および弁構造34を含む。ステントフレーム32は、前述したいずれの形も取ることができ、通常、圧縮配置(図1B)から通常の拡張配置(図1A)に自己拡張可能なように構成される。他の実施形態では、ステントフレーム32は、別の器具(例えば、ステントフレーム32の内部に配置されたバルーン)によって拡張配置に拡張可能である。弁構造34は、ステントフレーム32に取り付けられて、2つ以上(一般的には3つ)の弁葉36を提供する。弁構造34は、前述のいずれの形も取ることができ、例えば、弁構造34を、ステントフレーム32によって画定される1つまたは複数のワイヤー断片に縫合することなどにより、様々な方法でステントフレーム32に取り付けることができる。
【0019】
図1Aおよび図1Bの許容可能な一構成では、人工心臓弁30は、大動脈弁を置換または修復するために構成される。代替として、他の形状も、修復される弁の特定の構造に適合させて、想定される(例えば、本開示によるステント付き人工心臓弁は、自然の僧帽弁、肺動脈弁、または三尖弁を置換するための形状および/またはサイズにできる)。図1Aおよび図1Bの一構成では、弁構造34は、ステントフレーム32の全長未満で延びるが、他の実施形態では、ステントフレーム32の全長またはほぼ全長に沿って延びる。様々な他の構造も許容でき、本開示の範囲内である。例えば、ステントフレーム32は、通常の拡張配置でより円筒状の形状を持つことができる。
【0020】
ステント付き人工心臓弁30の前述の理解を念頭に置き、人工弁30を経皮的に搬送するための搬送器具50の一実施形態を図2Aおよび図2Bに示す。器具50は、ステント付き弁を搬送のために積むことができるが、図2Aおよび図2Bでは、搬送器具50の構成部品をより明確に説明するために、かかるステント付き弁は示されていない。搬送器具50は、搬送シース組立体52、内側シャフト組立体54、保持本体またはハブ56、解放シース組立体58、およびハンドル60を含む。様々な構成部品に関する詳細は、後述する。しかし、概略的には、搬送器具50は、患者の欠陥のある心臓弁を修復するためのシステムを形成するために、ステント付き人工心臓弁(図示せず)と組み合わされる。搬送器具50は、ステント付き人工心臓弁がハブ56で内側シャフト組立体54に連結されて、搬送シース組立体52のカプセル62内に圧縮して保持されている、装着状態を提供する。搬送シース組立体52は、ハンドル60の操作により、人工心臓弁からカプセル62を近位に退避させて、人工弁が自己拡張して内側シャフト組立体54から解放されるように、操作できる。解放シース組立体58は、この解放を達成するように動作する。さらに、ハンドル60は、人工心臓弁の遠位領域が自己拡張できるようになる一方で、人工弁の近位領域がハブ56に連結されたままである、一部展開状態を達成するためにカプセル62を操作するように作動できる。
【0021】
図2Aおよび図2Bに示され、後述される構成部品52〜60の種々の機能は、異なる構造および/または機構で変更または置換できる。したがって、本開示は、以下で例示および説明するように、搬送シース組立体52、内側シャフト組立体54、ハブ56、ハンドル60などに全く限定されるものではない。より一般的には、本開示による搬送器具は、自己展開するステント付き人工心臓弁を圧縮して保持することができる機能(例えば、ハブ56/解放シース組立体58と組み合わせたカプセル62)、および人工弁の一部もしくは完全解放または展開を達成できる機構(例えば、解放シース組立体58と組み合わせたカプセル62の引き込み)を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、搬送シース組立体52は、カプセル62およびシャフト70を含み、近位端および遠位端72、74を画定する。ルーメン76は、搬送シース組立体52によって形成され、遠位端74からカプセル62を通って延び、少なくともシャフト70の一部である。ルーメン76は、近位端72で開いてもよい。カプセル62は、シャフト70から遠位に延び、いくつかの実施形態では、ステント付き人工心臓弁(図示せず)がカプセル62内に圧縮された場合に期待される拡張力に公然と抵抗するために、十分な半径方向または円周方向の剛性を示す、より補強された構造(シャフト70の剛性と比較して)を有する。例えば、シャフト70は、金属編組を埋め込んだポリマー管にできるが、一方、カプセル62は、任意にポリマー被覆内に埋め込まれるレーザー切断金属管を含む。代替として、カプセル62およびシャフト70は、より一様な構造(例えば、連続的なポリマー管)を持つことができる。とにかく、カプセル62は、ステント付き人工心臓弁をカプセル62内に装着時に所定の直径で圧縮して保持するように構成され、シャフト70は、カプセル62をハンドル60に連結するように作用する。シャフト70(およびカプセル62)は、患者の脈管構造を通過するために十分柔軟に構成されているが、カプセル62の所望の軸方向運動を達成するために十分な長手方向剛性を示す。つまり、シャフト70の近位引き込みは、カプセル62に直接伝えられて、対応するカプセル62の近位収縮を引き起こす。他の実施形態では、シャフト70はさらに、回転力または回転運動をカプセル62に伝えるように構成される。
【0023】
内側シャフト組立体54は、ステント付き人工心臓弁をカプセル62内で支持するのに適した様々な構造を持つことができる。いくつかの実施形態では、内側シャフト組立体54は、内側支持シャフト80および先端82を含む。内側支持シャフト80は、搬送シース組立体52のルーメン76内で摺動自在に受け入れられる大きさに形成されて、ハブ56および解放シース組立体58を取り付けるように構成される。内側支持シャフト80は、遠位部84および近位部86を含むことができる。遠位部84は、先端82を近位部86に連結し、近位部86は、内側シャフト組立体54をハンドル58と連結する。構成部品80〜86は、ガイドワイヤー(図示せず)などの補助部品を摺動自在に受け入れられる大きさに形成された連続的なルーメン88(大まかに参照)を画定するように組み合わせることができる。
【0024】
遠位部84は、金属編組を埋め込んだ可撓性ポリマー管にでもよい。遠位部84が、ハブ56およびそれに取り付けられた解放シース組立体58と共に、装着され、圧縮されたステント付き人工心臓弁(図示せず)を支持するために十分な構造的完全性を示す限り、他の構成も許容できる。近位部86は、いくつかの構造において、先頭部90および後続部92を含み得る。先頭部90は、遠位部および近位部84、86間の移行として機能し、それ故いくつかの実施形態では、遠位部84より僅かに小さい外径を有する可撓性ポリマー管(例えば、PEEK)である。後続部92は、ハンドル60への強固な取り付けに適した、より剛性構造(例えば、金属ハイポチューブ(hypotube))を有する。他の材料および構造も想定される。例えば、代替実施形態では、遠位部および近位部84、86は、単一の同質管または固形シャフトとして一体的に形成される。
【0025】
先端82は、身体組織との無傷(atraumatic)接触を促進するように適合された遠位先細外面を有するノーズコーンを形成または画定する。先端82は、内側支持シャフト80に対して固定または摺動自在であり得る。
【0026】
ハブ56は、ステント付き人工心臓弁(図示せず)の対応する機能を内側シャフト組立体54に対して選択的に連結するように作用して、内側支持シャフト80上に取り付けられるように構成できる。ハブ56の一実施形態をより詳細に図3A〜3Cに示す。ハブ56は、搬送器具50が患者の体内でステントフレームを解放するように要求されるまで、ステントフレームを搬送器具50に固定するために使用できる。ハブ56は、ベース円筒部102および、その円筒部102の一端にフランジ104を含む。フランジ104は、少なくとも円筒部102よりも僅かに大きい直径を持つ。円筒部102は、その外周に複数の窪み106を含む。窪み106は、例えば、半球形、もしくは半−半球形にできるか、または別の凹形状を持つことができる。窪み106は、ステントフレームを搬送器具に固定するのに役立つ対応するステントフレームワイヤーの外側突起部と係合するように成形された陥凹部である。すなわち、突起部は、一定数のステントフレームワイヤーの端部(またはポスト)上に提供でき、そこで、これらの突起部は窪み106に収まるか、または係合するように設計されており、突起部も半球形または半−半球形にできる。ステントフレームワイヤーから延びる突起部の数は、好ましくは、ハブ56の円筒部102にある窪み106の数と同じであるが、特定のステントフレーム上で提供されている突起部の数は、対応するカラー(collar)上の窪みの数と異なっていてもよい。
【0027】
各窪み106の形状は、特定ハブの他の窪みと形およびサイズが同じであるか、または類似できる。窪みと係合するステントフレームのステントフレームワイヤー上にある各突起部の形状およびサイズは、係合される窪みと正確または厳密に一致することができる。しかし、突起部は、それが位置付けられる、対応する突起部より、少なくとも僅かに小さいか、かつ/または異なる形状にすることができる。いずれの場合も、各突起部は、構成部品を明確に係合するために、対応する窪み内にしっかりと位置付け可能であるべきである。成形突起部から延びる各ステントフレームワイヤーの太さは、ステントフレームの他のワイヤーと同じであるか、または異なる太さにすることができる。しかし、一実施形態では、ワイヤーの太さは、それらの突起部が窪み106内に位置付けられる場合に、ワイヤーがハブ56のフランジ104の外周を超えて延びないよう、十分な細さであろう。さらに、ステントフレームからの突起部がステントワイヤー配置のクラウン部または他の部分から延びることができ、突起部を持つ追加のワイヤーが既存のステント構造から延びるために提供できるか、または他の構造がかかる突起で提供できると考えられる。
【0028】
本開示の経カテーテルステント付き人工心臓弁搬送器具で有用なハブ56´の別の実施形態を図4に示す。ハブ56´は、その周囲に延びる放射状溝108を含む、概ね円筒状要素である。この実施形態の溝108は、ハブ56´の全周囲に延びるが、ハブ56´は代わりに、相互に間隔をあけた複数の溝を含むことができる。
【0029】
再度、図2Aを参照すると、ハブ56は、前述の説明と異なる、多種多様な他の形を取ることができる。例えば、ハブ56は、ステント付き人工心臓弁30(図1B)の対応する機能(例えば、ステントフレーム32によって形成されたポストまたはワイヤー延長(wire extension))と整合させるように構成された、スロット、バネなどを組み込むことができる。
【0030】
解放シース組立体58は、通常、人工心臓弁30(図1B)をハブ56に選択的に捕捉するように構築される。これを念頭に置き、解放シース組立体58は、取り付けカラーまたは基部150、1つまたは複数のバイアス部材152、および解放シース154を含む。概略的には、取り付け基部150は、解放シース組立体58を内側支持シャフト80に連結する。解放シース154は、ハブ56上に摺動自在に配置されるように形成されて、バイアス部材152が、解放シース154を取り付け基部150に対して、従って、後述のように、ハブ56に対して、長手位置に偏らせるように作用する。
【0031】
取り付け基部150は、内側支持シャフト80に対して、非可動で固定的な取り付けに適した種々の構成を取ることができる。例えば、取り付け基部150は、内側支持シャフト80に結合された輪状またはカラーにできる。内側支持シャフト80に対して固定位置を確定し、バイアス部材152内又はそれによって生成される力に抵抗するのに適した他の構成も想定される。例えば、他の実施形態では、取り付け基部150は省くことができ、解放シース154の反対側の各バイアス部材152の端部が直接内側支持シャフト80に取り付けられる。
【0032】
バイアス部材152は、板バネ状本体またはアームであり、解放シース154の周囲に相互に間隔が空けられている。いくつかの構造では、解放シース組立体58は、少なくとも2つのバイアス部材152を含み、それらは、解放シース154のほぼ反対側に配置され得るが、必要に応じて、相互に異なるように配置されることが可能である。他の構造では、バイアス部材152のうちの1つだけが提供される。さらに他の実施形態では、解放シース組立体58は、3つ以上のバイアス部材152を含み、バイアス部材152の各々は、同一に、または他のバイアス部材152と異なるように構成され得る。いずれにしても、後で詳述するように、バイアス部材152は、形状記憶属性を持ち、通常または自然に、図2Aに示す外側への曲線形状を取ることができ、かつ、外力でより真っ直ぐな形状にすることができる。外力を取り除くと、バイアス部材152は、通常の曲線形状に自己復元(self−revert back)する。他のバネに関連する形状または構造も許容できる。
【0033】
解放シース154は、フランジ104を含み、ハブ56上で摺動自在に受け入れられるように形成された管状体である。解放シース154は、解放シース154およびベース円筒部102とフランジ104の最大外径との間に提供される隙間(例えば、0.001インチ程度以上)によって、ハブ56上を自由に移動するように設計される。いくつかの構造では、図5(別の方法で、基部102内に長手方向スロット158を組み込む代替実施形態ハブ56”のフランジ104上に取り付けられた解放シース154を示す)に最も良く示されるように、解放シース154は、その遠位端162から延び、遠位端に対して開いている、少なくとも1つの長手方向ノッチ160を形成または画定する。解放シース154は、ハブ56で提供される長手方向スロット158の数に対応する複数のノッチ160を含むことができる。ノッチ160は、同一にすることができ、解放シース154がフランジ104上に取り付けられると、ノッチ160の各々が、スロット158の対応する1つに長手方向に位置合わせされるように、解放シース154の周囲に対して配置される。解放シース154がノッチ160の2つ(以上)を形成する実施形態では、2つ(以上)のフィンガー164が隣接するノッチ160によって又は隣接するノッチ160間に形成される。例えば、第1フィンガー164aは、第1および第2ノッチ160a、160b間に画定される。ノッチ160の各々は比較的均一な周方向幅を持つことができるが、拡大された周方向幅が遠位端162にごく隣接して任意で画定される。代替として、ノッチ160は他の形状を持つことができ、さらに他の実施形態では省かれる。
【0034】
再度、図2Aを参照すると、バイアス部材152および/または解放シース154を含め、解放シース組立体58は、金属またはポリマー(例えば、NitinolTM、ステンレス鋼、DelrinTM、および同様のもの)などの1つまたは複数の材料から作ることができる。材料は、例えば、0.002〜0.007インチ程度の厚さを持つが、厚さはこの範囲よりも薄いか、または厚くてもよい。解放シース組立体58は、構成部品に対して可撓性およびバネの半径方向強度(spring−radial strength)の両方を提供するために、例えば、5〜15mm程度の長さを持つことができる。材料は、クローズドセルまたはオープンセル構造のいずれでもよい。
【0035】
人工心臓弁の一部展開および完全展開を容易にする際の解放シース組立体58の操作は、バイアス部材152によって決定されるように、解放シース154の長手位置に基づく。前述の通り、バイアス部材152は、図2Aに大まかに示すように、通常、曲線形状を取るように形成される。バイアス部材152(通常状態)によって集合的に画定される直径は、搬送シース組立体ルーメン76の直径より大きい。従って、解放シース組立体58がカプセル62内(または搬送シースシャフト70内)に配置されている場合、バイアス部材152は半径方向内向きに屈折されて、取り付け基部150と解放シース154との間の長手方向間隔が増加される。この外力を取り除くと、バイアス部材152は、図2Aに示す自然の状態に自己復元し、それにより、解放シース154が取り付け基部150に対して元の長手方向間隔になるよう偏らせる。図6Aおよび図6Bは、この関係を単純化して示す。図6Aは、取り付け基部150と解放シース154との間の第1長手方向間隔L1を確立するバイアス部材152の通常状態を示す。圧縮力を受けると(例えば、搬送シース組立体52(図2A)内に挿入されると)、バイアス部材152は、図6Bに示すように、内向きに変形させられる。取り付け基部150は、空間的に固定されている(すなわち、内側支持シャフト80(図2A)に取り付けられている)ため、変形させられたバイアス部材152は、解放シース154を取り付け基部150から、第1長手方向間隔L1より大きい第2長手方向間隔L1に、無理に離す。圧縮力が取り除かれると、バイアス部材152は、図6Aの配置に自己復元し、それにより解放シース154を取り付け基部150に引き戻す。
【0036】
再度、図2Aを参照すると、ハンドル60は通常、ハウジング170およびアクチュエータ機構172(大まかに参照)を含む。ハウジング170は、アクチュエータ機構172を保持し、アクチュエータ機構172は、搬送シース組立体52の内側シャフト組立体54に対する滑り運動を容易にするように構成されている。ハウジング170は、ユーザーによる便利な処理に適切ないかなる形状またはサイズにもできる。簡易化した一構造では、アクチュエータ機構172は、ハウジング170によって摺動自在に保持されるユーザーインタフェースまたはアクチュエータ174を含み、シースコネクタ本体176に連結される。搬送シース組立体52の近位端72が、シースコネクタ本体176に(例えば、いくつかの実施形態における任意の取り付けボス(boss)178で)連結される。内側シャフト組立体54、特に近位管86は、シースコネクタ本体176の通路180内に摺動自在に受け入れられて、ハウジング170に強固に連結される。アクチュエータ174がハウジング170に対してスライドすると、従って、例えば、後述のように、内側シャフト組立体54から人工弁の展開を達成するために、搬送シース組立体52が、内側シャフト組立体54に対して移動又はスライドする。代替として、アクチュエータ機構172は、図2Aの図で関与するものとは異なる様々な他の形状を取ることができる。同様に、ハンドル60は、キャップ182および/または流体ポート組立体184など、他の機能を包含できる。
【0037】
図7は、患者の欠陥のある心臓弁を置換(または修復)するための本開示によるシステム200の一部を、搬送器具50内のステント付き人工心臓弁30を含めて示す。図7の搬送器具50の装着状態では、カプセル62が人工心臓弁30を囲繞して、図示の圧縮配置で人工心臓弁30を圧縮して保持できるように搬送シース組立体52を配置して、人工心臓弁30が内側シャフト組立体54上にクリンプされ、これにより修復システム200の装着状態を画定する。ハブ56および解放シース組立体58(大まかに参照)は、内側支持シャフト80に取り付けられて、解放シース154が、搬送シースシャフト70内での配置に応じて、バイアス部材152(一部示す)の変形により円筒状体102上を摺動自在に方向付けされる。解放シース154は、円筒状体102に対して所望の位置をより確実にするため、フランジ104に沿って摺動自在に支持され得る。この配置で、その後、人工心臓弁ステントフレーム32の一部(例えば、ポスト202)が、解放シース154でハブ56に捕捉される。
【0038】
装着した搬送器具50は、その後、人工心臓弁30を、欠陥のある心臓弁などの移植位置に経皮的に搬送するために使用できる。例えば、搬送器具50は、圧縮した人工心臓弁30を、大腿動脈への血管切開から患者の下行大動脈へ入り、大動脈弓を経て、上行大動脈を通り、ほぼ中ほどあたりで欠陥のある大動脈弁を越える(大動脈弁修復治療のため)、逆行性方法で移植位置に向かって進むように操作される。人工心臓弁30は、その後、搬送器具50から一部または完全に展開できる。いずれの手順でも、カプセル62(図2A)は、人工心臓弁30上から近位に収縮されるか、または退避させられる。図8Aに大まかに示すように、カプセル62の近位収縮の最初の段階で、遠位端74はステント付き人工心臓弁30に沿って長さのほぼ半ばあたりに配置される。人工心臓弁30の遠位領域210は、こうして、カプセル62の遠位端74に対して「露出され」、自己拡張が可能になる。しかし、遠位端74は解放シース組立体58(図8Aでは隠れている)の遠位であるため、人工心臓弁30の近位領域は、搬送器具50に固定されたままである。図8Bは、自然弁に経皮的に向けられたシステム200および一部関連状態の搬送器具50を示し、図のように、人工心臓弁30は、一部展開または拡張しているが、搬送器具50に連結したままである。
【0039】
搬送プロセスは、搬送シース組立体52をさらに引っ込めることにより継続する。図9A(図中、明確にするため、ステント付き人工心臓弁30が省略されている)に示すように、近位引込みにより、遠位端74がほぼハブ56および解放シース154上に位置付けられている。バイアス部材152(図6B)が、搬送シース組立体52の範囲内に留まっているため、それ故、変形させられた状態で、解放シース154がハブ56上に保持されて、それにより、ステント付き人工心臓弁30の搬送器具50との固定連結が維持される。図9Bは、搬送シース組立体52がさらにもっと引き続き引っ込められ、遠位端74が解放シース154のごく近位に位置付けられている状態を示す。しかし、バイアス部材152がまだ搬送シース組立体52に作用されているか又は搬送シース組立体52よって抑制されているため、ステント付き人工心臓弁30は、解放シース154とハブ56との間に固定されたままである。図のように、この一部展開状態で、ステント付き人工心臓弁30の大部分(例えば、90%)は、拡張状態に向けて自己拡張している。
【0040】
図9Bの一部展開段階(または、一部展開のいずれかの他の連続する前段階)では、臨床医は、移植位置に対して一部展開した人工心臓弁30の所望の評価を実行できる。特に、人工心臓弁30の大部分が、例えば、流入部および流出部の少なくとも一部を含めて、拡張配置にある。従って、本開示の弁置換システムならびに搬送器具および方法は、臨床医が、人工心臓弁30の移植位置に対する正確な評価ができるようにする。臨床医が人工心臓弁30を再配置すべきであると判断するような状況では、カプセル62は、いくつかの構造で、人工心臓弁30上を遠位に戻され、それにより人工心臓弁30をシースに収めるか又は捕捉して、圧縮配置に戻す。代替として、搬送器具50は、人工心臓弁30の再捕捉を達成する他の機能を包含できる。
【0041】
人工心臓弁30の搬送器具50からの完全展開が望れる場合、カプセル62は、バイアス部材152上をさらに近位に引き込まれる。図10Aおよび図10B(人工弁30(図1A)は、説明を簡単にするため、図10Aおよび図10Bからは省かれている)に示すように、バイアス部材152がカプセル62の範囲から順次解放されるにつれて、バイアス部材152は、通常状態に向けて自己復元する。この動作は、次に、図10Aの配置を図10Bの配置と比較して示されるように、バイアス部材152が、解放シース154をハブ56(または、少なくとも円筒状体102)から近位に引き込む。
【0042】
解放シース154をハブ56に対して引き込めると、図11Aおよび図11Bに示すように、ステントフレーム32がハブ56から完全に解放されるのを可能にする。解放シース154がステントフレーム32を超えて近位に自己引込みすると、人工心臓弁30が搬送器具50から(例えば、ステントフレーム32の自己拡張により)完全に解放される。図11Bは、解放された人工心臓弁30が、自然弁に移植されているところを示している。搬送器具50は、その後、患者から除去できる。
【0043】
搬送器具50は、人工心臓弁30のステントフレーム32が搬送シーケンスの事前に計画された段階で搬送器具50から解放されるように構成される。この搬送器具50は、それにより、有利なことに、ステントを搬送器具50から解放する前に、ユーザーが外側シースを弁付きステントから完全に移動できるようにする。さらに、器具50は、弁付きステントを最終的に解放する前に、弁機能が測定できるように、弁付きステントの流出部が開くか又は解放されるようにする。弁機能が最善でないか、かつ/または搬送器具50から完全に解放する前に弁付きステントを再配置したい場合には、弁付きステントが別の位置に移動できるか、または患者から除去できるように、シース内に十分に圧縮されるまで、前述のプロセスステップを逆の順序で実行できる。
【0044】
本開示の搬送器具は、例えば、大動脈弁置換のためのステントの配置を提供する。代替として、本開示のシステムおよび器具は、他の弁の置換のため、および/またはステントが移植される身体の他の部分で使用できる。大動脈弁を置換するために弁付きステントを搬送する際に、本開示の搬送器具は、例えば、逆行性搬送アプローチ(retrograde delivery approach)で使用できるが、搬送器具に一定の改変を加えることにより、順行性搬送アプローチが使用できると考えられる。本明細書で説明するシステムでは、弁付きステントを患者に配置しているが、搬送器具からはまだ解放されていない間に、有利なことに、弁を経由した完全または部分血流を維持できる。この機能は、他の周知の搬送器具で人工心臓弁の移植中に血流が停止またはブロックされた場合に起こり得る合併症を防ぐのに役立つ。さらに、それにより、弁付きステントを最終的に解放する前に、臨床医が、弁葉の開閉の評価、弁周囲リーク(paravalvular leakage)の検査、ならびに弁の冠血流および対象とする生体構造内での適切な位置付けの評価を行うことを可能にする。
【0045】
弁付きステントの経皮的搬送用システムの直径を最小限にすることが望ましい場合が多いため、患者に移植する際に一定の望ましい特徴を有するステントを提供しながら、ステントフレームと搬送器具との連結の質を最適化するように、ステントワイヤーおよび対応する延長要素の数を設計または選択できる。
【0046】
本明細書で提示および説明する搬送器具は、本開示の範囲内で、バルーン拡張可能ステントの搬送用に改変できる。すなわち、このバルーン拡張可能ステントの移植位置への搬送は、本開示の搬送器具の改変版を用いて、経皮的に実行できる。概略的には、これは、前述のとおり、解放シースならびに/または追加のシースならびに/または窪みおよび/もしくは溝を含むカラーを含み得る経カテーテル組立体の提供を含む。これらの器具は、さらに、搬送カテーテル、バルーンカテーテル、および/またはガイドワイヤーを含むことができる。この種の器具で使用される搬送カテーテルは、その内部にガイドワイヤーが摺動自在に配置されるルーメンを画定する。さらに、バルーンカテーテルは、膨張源と流体的に連結されたバルーンを含む。移植中のステントが自己拡張型のステントである場合、バルーンは必要なく、本明細書で説明したとおり、ステントが展開するまで、そのステントを圧縮状態で保持するためのシースまたは他の保持手段が使用されることに留意する。いずれの場合にも、バルーン拡張可能ステントに対して、経カテーテル組立体は、移植位置への所望の経皮的アプローチ用に、適切な大きさに形成される。例えば、経カテーテル組立体は、頸動脈、頸静脈、鎖骨下静脈、大腿動脈あるいは大腿静脈、または同種のものにおける開口部から心臓弁に搬送するための大きさに形成できる。基本的に、いずれの経皮肋間穿通も経カテーテル組立体の使用を容易にするようにできる。
【0047】
バルーンに取り付けたステントでは、経カテーテル組立体は、患者の経皮的開口部(図示せず)から搬送カテーテルで搬送される。移植位置は、ガイドワイヤーを患者の体内に挿入することによって位置付けられ、そのガイドワイヤーは、搬送カテーテルの遠位端から延び、バルーンカテーテルは別の方法で搬送カテーテル内に引き込まれている。バルーンカテーテルは、その後、ガイドワイヤーに沿って搬送カテーテルから遠位に進められ、バルーンおよびステントが移植位置に対して位置付けられる。代替実施形態では、ステントは最小侵襲外科的切開で(すなわち、非経皮的に)移植位置に搬送される。別の代替実施形態では、ステントは、開心/開胸術で搬送される。本開示のステントの一実施形態では、ステントは、ステントの適切な配置の目視確認を容易にするため、放射線不透過性、エコー源性、またはMRIで見える材料を含む。代替として、他の周知の外科的視覚補助器具をステントに組み込むことができる。心臓内へのステントの配置に関して説明した技術は、ステントが配置された解剖学的構造の長さに対して長手方向にあるステントの配置のモニターおよび修正の両方で使用できる。ステントが適切に配置されると、バルーンカテーテルは、バルーンを膨張させるように作動し、このようにしてステントを拡張状態に移行させる。
【0048】
本開示は、ここまで、そのいくつかの実施形態に関連して説明してきた。前述の詳細な説明および例は、明確な理解のためのみに提供されている。それらは限定するものと理解されるものではない。当業者には、本開示の範囲から逸脱することなく、前述の実施形態において多くの変更をなし得ることが明らかであろう。それ故、本開示の範囲は、本明細書で説明する構成に限定されるべきではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁構造が取り付けられたステントフレームを含むステント付き人工心臓弁を経皮的に搬送するための搬送器具であって、
遠位端で終了してルーメンを画定する搬送シース組立体と、
前記ルーメン内に摺動自在に配置された内側シャフトと、
前記内側シャフトから突き出て、人工心臓弁ステントフレームの一部を解放可能に受けるように構成されたハブと、
前記搬送シース組立体と前記内側シャフトとの間に配置され、前記内側シャフトの周囲に摺動自在に配置された解放シースを含む解放シース組立体と、を備え、
前記搬送シース組立体がステント付き人工心臓弁を前記内側シャフト上に保持して、前記解放シースで前記ハブに連結されている装着状態と、前記人工心臓弁が前記ハブから解放できるように、前記搬送シース組立体の前記遠位端と前記解放シースが前記人工心臓弁から退避させられている展開状態と、を提供するように構成されている、
ことを特徴とする搬送器具。
【請求項2】
前記解放シース組立体が、前記搬送シース組立体の遠位端を前記解放シースから近位に引き込んで、前記解放シースを前記ハブに対して近位に引き込むように構成されている、
請求項1に記載の搬送器具。
【請求項3】
前記解放シースが、前記解放シースの前記遠位端から延びる少なくとも1つの長手方向ノッチを形成する、請求項1に記載の搬送器具。
【請求項4】
前記少なくとも1つの長手方向ノッチが、円周方向に間隔を置いた複数の長手方向ノッチを含む、
請求項3に記載の搬送器具。
【請求項5】
前記解放シース組立体が、少なくとも1つのバイアス部材によって前記解放シースに連結されている取り付け基部をさらに含む、
請求項1に記載の搬送器具。
【請求項6】
前記少なくとも1つのバイアス部材が板バネ状本体である、
請求項5に記載の搬送器具。
【請求項7】
前記取り付け基部が、前記ハブに近位の前記内側シャフトに固定されている、
請求項5に記載の搬送器具。
【請求項8】
前記解放シース組立体が、変形させられた状態から通常状態に自己移行可能であって、さらに、前記変形させられた状態での前記解放シースと前記取り付け基部との間の長手方向間隔が、前記通常状態での間隔より大きい、
請求項7に記載の搬送器具。
【請求項9】
前記解放シース組立体が、前記解放シースと前記取り付け基部とを相互に連結させる2つのバイアス部材を含む、
請求項8に記載の搬送器具。
【請求項10】
前記通常状態で、前記バイアス部材によって集合的に画定される外径が、前記搬送シース組立体の前記ルーメンの直径より大きい、
請求項8に記載の搬送器具。
【請求項11】
患者の欠陥のある心臓弁を置換するためのシステムであって、
ステントフレームおよび前記ステントフレームに取り付けられた弁構造を有し、前記ステントフレームが遠位領域および近位領域を画定し、前記近位領域が少なくとも1つのポストを形成する、人工心臓弁と、
搬送器具であって、
遠位端で終了してルーメンを画定する搬送シース組立体と、
前記ルーメン内に摺動自在に配置された内側シャフトと、
前記内側シャフトから突き出て、前記少なくとも1つのポストを解放可能に受けるように構成されたハブと、
前記搬送シース組立体と前記内側シャフトとの間に配置され、前記内側シャフトの周囲に摺動自在に配置された解放シースを含む、解放シース組立体とを備える搬送器具と
を備え、
前記解放シースと前記ハブとの間に捕捉された前記少なくとも1つのポストを含み、前記人工心臓弁が前記搬送シース組立体と前記内側シャフトとの間に保持されている装着状態を提供するように構成された、システム。
【請求項12】
前記解放シース組立体が、前記搬送シース遠位端を前記解放シースから近位に引き込んで、前記解放シースを前記ハブに対して近位に引き込むように構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記解放シース組立体が、少なくとも1つのバイアス部材によって前記解放シースに連結されている取り付け基部をさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つのバイアス部材が板バネ状本体である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記取り付け基部が、前記ハブに近位の前記内側シャフトに固定されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記解放シース組立体が、変形させられた状態から通常状態に自己移行可能であって、さらに、前記変形させられた状態での前記解放シースと前記取り付け基部との間の長手方向間隔が、前記通常状態での間隔より大きい、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記解放シース組立体が、前記解放シースと前記基部とを相互に連結させる2つのバイアス部材を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記通常状態で、前記バイアス部材によって集合的に画定される外径が、前記搬送シース組立体の前記ルーメンの直径より大きい、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
ステント付き人工心臓弁を患者の移植位置に経皮的に配置する方法であって、
弁構造が取り付けられたステントフレームを有する径方向に拡張可能な人工心臓弁を装着し、装着状態で内側シャフト上に圧縮配置の前記人工心臓弁を含む搬送シース組立体と、前記内側シャフトから突き出たハブと、前記ステントフレームのポストを前記ハブに摺動自在に捕捉する解放シースを含む解放シース組立体とを含む、搬送器具を受け取ることと、
前記圧縮配置の前記人工心臓弁を前記患者の身体ルーメンから、前記装着状態の前記搬送器具で前記移植位置に搬送することと、
前記搬送シース組立体を前記人工心臓弁から近位に引き込むことと、
前記解放シース組立体が前記ハブに対して前記解放シースを自己引込みすることを含め、前記ポストが前記ハブから解放できるようにすることと、
を含む方法。
【請求項20】
前記搬送シース組立体の近位方向への引込みが、前記人工心臓弁の遠位部が露わにされるように、前記搬送シース組立体の遠位端を一部展開状態で前記人工心臓弁の遠位端と前記解放シースとの間に長手方向に配置することを含み、さらに、前記一部展開状態が、通常状態に向けて圧縮配置から自己拡張している前記露わにされた遠位部を含み、前記人工心臓弁の近位部が前記解放シースと前記ハブとの間に前記少なくとも1つのポストを捕捉することで前記搬送器具に固定されたままである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記解放シース組立体が、前記解放シースを取り付け基部に連結する少なくとも1つのバイアス部材をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記取り付け基部が前記解放シースに近位の前記内側シャフトに固定され、さらに、前記搬送シース組立体の近位引込みが、前記バイアス部材が通常状態に向けて自己移行して、前記解放シースを前記ハブから引き込むように、前記搬送シース組立体の前記遠位端を前記解放シースの近位に配置することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項1】
弁構造が取り付けられたステントフレームを含むステント付き人工心臓弁を経皮的に搬送するための搬送器具であって、
遠位端で終了してルーメンを画定する搬送シース組立体と、
前記ルーメン内に摺動自在に配置された内側シャフトと、
前記内側シャフトから突き出て、人工心臓弁ステントフレームの一部を解放可能に受けるように構成されたハブと、
前記搬送シース組立体と前記内側シャフトとの間に配置され、前記内側シャフトの周囲に摺動自在に配置された解放シースを含む解放シース組立体と、を備え、
前記搬送シース組立体がステント付き人工心臓弁を前記内側シャフト上に保持して、前記解放シースで前記ハブに連結されている装着状態と、前記人工心臓弁が前記ハブから解放できるように、前記搬送シース組立体の前記遠位端と前記解放シースが前記人工心臓弁から退避させられている展開状態と、を提供するように構成されている、
ことを特徴とする搬送器具。
【請求項2】
前記解放シース組立体が、前記搬送シース組立体の遠位端を前記解放シースから近位に引き込んで、前記解放シースを前記ハブに対して近位に引き込むように構成されている、
請求項1に記載の搬送器具。
【請求項3】
前記解放シースが、前記解放シースの前記遠位端から延びる少なくとも1つの長手方向ノッチを形成する、請求項1に記載の搬送器具。
【請求項4】
前記少なくとも1つの長手方向ノッチが、円周方向に間隔を置いた複数の長手方向ノッチを含む、
請求項3に記載の搬送器具。
【請求項5】
前記解放シース組立体が、少なくとも1つのバイアス部材によって前記解放シースに連結されている取り付け基部をさらに含む、
請求項1に記載の搬送器具。
【請求項6】
前記少なくとも1つのバイアス部材が板バネ状本体である、
請求項5に記載の搬送器具。
【請求項7】
前記取り付け基部が、前記ハブに近位の前記内側シャフトに固定されている、
請求項5に記載の搬送器具。
【請求項8】
前記解放シース組立体が、変形させられた状態から通常状態に自己移行可能であって、さらに、前記変形させられた状態での前記解放シースと前記取り付け基部との間の長手方向間隔が、前記通常状態での間隔より大きい、
請求項7に記載の搬送器具。
【請求項9】
前記解放シース組立体が、前記解放シースと前記取り付け基部とを相互に連結させる2つのバイアス部材を含む、
請求項8に記載の搬送器具。
【請求項10】
前記通常状態で、前記バイアス部材によって集合的に画定される外径が、前記搬送シース組立体の前記ルーメンの直径より大きい、
請求項8に記載の搬送器具。
【請求項11】
患者の欠陥のある心臓弁を置換するためのシステムであって、
ステントフレームおよび前記ステントフレームに取り付けられた弁構造を有し、前記ステントフレームが遠位領域および近位領域を画定し、前記近位領域が少なくとも1つのポストを形成する、人工心臓弁と、
搬送器具であって、
遠位端で終了してルーメンを画定する搬送シース組立体と、
前記ルーメン内に摺動自在に配置された内側シャフトと、
前記内側シャフトから突き出て、前記少なくとも1つのポストを解放可能に受けるように構成されたハブと、
前記搬送シース組立体と前記内側シャフトとの間に配置され、前記内側シャフトの周囲に摺動自在に配置された解放シースを含む、解放シース組立体とを備える搬送器具と
を備え、
前記解放シースと前記ハブとの間に捕捉された前記少なくとも1つのポストを含み、前記人工心臓弁が前記搬送シース組立体と前記内側シャフトとの間に保持されている装着状態を提供するように構成された、システム。
【請求項12】
前記解放シース組立体が、前記搬送シース遠位端を前記解放シースから近位に引き込んで、前記解放シースを前記ハブに対して近位に引き込むように構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記解放シース組立体が、少なくとも1つのバイアス部材によって前記解放シースに連結されている取り付け基部をさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つのバイアス部材が板バネ状本体である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記取り付け基部が、前記ハブに近位の前記内側シャフトに固定されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記解放シース組立体が、変形させられた状態から通常状態に自己移行可能であって、さらに、前記変形させられた状態での前記解放シースと前記取り付け基部との間の長手方向間隔が、前記通常状態での間隔より大きい、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記解放シース組立体が、前記解放シースと前記基部とを相互に連結させる2つのバイアス部材を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記通常状態で、前記バイアス部材によって集合的に画定される外径が、前記搬送シース組立体の前記ルーメンの直径より大きい、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
ステント付き人工心臓弁を患者の移植位置に経皮的に配置する方法であって、
弁構造が取り付けられたステントフレームを有する径方向に拡張可能な人工心臓弁を装着し、装着状態で内側シャフト上に圧縮配置の前記人工心臓弁を含む搬送シース組立体と、前記内側シャフトから突き出たハブと、前記ステントフレームのポストを前記ハブに摺動自在に捕捉する解放シースを含む解放シース組立体とを含む、搬送器具を受け取ることと、
前記圧縮配置の前記人工心臓弁を前記患者の身体ルーメンから、前記装着状態の前記搬送器具で前記移植位置に搬送することと、
前記搬送シース組立体を前記人工心臓弁から近位に引き込むことと、
前記解放シース組立体が前記ハブに対して前記解放シースを自己引込みすることを含め、前記ポストが前記ハブから解放できるようにすることと、
を含む方法。
【請求項20】
前記搬送シース組立体の近位方向への引込みが、前記人工心臓弁の遠位部が露わにされるように、前記搬送シース組立体の遠位端を一部展開状態で前記人工心臓弁の遠位端と前記解放シースとの間に長手方向に配置することを含み、さらに、前記一部展開状態が、通常状態に向けて圧縮配置から自己拡張している前記露わにされた遠位部を含み、前記人工心臓弁の近位部が前記解放シースと前記ハブとの間に前記少なくとも1つのポストを捕捉することで前記搬送器具に固定されたままである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記解放シース組立体が、前記解放シースを取り付け基部に連結する少なくとも1つのバイアス部材をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記取り付け基部が前記解放シースに近位の前記内側シャフトに固定され、さらに、前記搬送シース組立体の近位引込みが、前記バイアス部材が通常状態に向けて自己移行して、前記解放シースを前記ハブから引き込むように、前記搬送シース組立体の前記遠位端を前記解放シースの近位に配置することを含む、請求項21に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【公表番号】特表2013−503009(P2013−503009A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527023(P2012−527023)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/046964
【国際公開番号】WO2011/025945
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(511200797)メドトロニック,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/046964
【国際公開番号】WO2011/025945
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(511200797)メドトロニック,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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