説明

経口バイオアベイラビリティが増大したフェノフィブラート製剤

本発明は、経口バイオアベイラビリティが増大し、設計及び製造が単純であり、食事効果が存在しない、フェノフィブラート製剤を提供する。製剤は、親油性界面活性剤に溶解されたフェノフィブラートを含み、随意に親水性界面活性剤が添加される。製剤は、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症及び混合型脂質異常症等の状態の管理及び治療に効果的に使用され得、また市販製品と比較して、より少ない用量で効果的であり得る。本発明はさらに、製剤の製造方法及び該製剤を含む剤形に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口バイオアベイラビリティが増大した新規なフェノフィブラート製剤、その製造方法及び製剤を含む剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノフィブラート又は2−[4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ]−2−メチル−プロパン酸,1−メチルエチルエステルは、フィブラート系薬剤として知られる脂質調節剤の種類に属し、高トリグリセリド血症患者においては上昇した血清トリグリセリド値を低下させるのに有用であり、高コレステロール血症及び混合型脂質異常症患者においてはコレステロール及びLDL−C値を低下させるのに有用である。
【0003】
物理的には、フェノフィブラートは白色固体であり、水に実質的に不溶性である。経口投与時には、フェノフィブラートは吸収され、活性物質であるフェノフィブリン酸へと代謝され、これは血清排出半減期が約20時間である。難水溶性が、フェノフィブラートの溶解、そしてそれ故、消化管への吸収を制限することが周知である。その難溶性にもかかわらず、フェノフィブラートは「摂食状態(fed state)」で投与された場合には良く吸収され、「絶食状態」ではあまり吸収されないことが報告されている。フェノフィブラートの溶解性及びバイオアベイラビリティを改善するために、フェノフィブラートと共に界面活性剤及び表面安定剤を使用したり、フェノフィブラートの有効平均粒径を減少させるために微粒子化(micronisation)及び噴霧乾燥等の綿密な製造工程を用いたりする等の、種々の試みがなされている。溶解性の増大はまた、有機溶媒、油性物質及びトリグリセリド等の薬剤にフェノフィブラートを溶解させることによって試みられてきた。さまざまな親水性及び疎水性の薬剤が、その目的のために評価されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1は、フィブラートがPEG及びポロキサマー407と密接に結合しているフィブラート組成物を開示する。特許文献2は、ポリグリコール化グリセリドを持つフェノフィブラートを請求する。特許文献3は、中鎖グリセリン脂肪酸エステルに溶解されたフェノフィブラートを開示する。特許文献4は、グリセリン、プロピレングリコール、又はジメチルイソソルビドに溶解されたフェノフィブラートを開示し、特許文献5は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルに溶解されたフェノフィブラートを開示する。
【0005】
特許文献6は、少なくとも一つの親水性界面活性剤と、約10未満のHLB値を有する少なくとも一つの疎水性界面活性剤とを含む担体系を有する、任意の疎水性治療薬のためのカプセル剤形を開示する。その担体系は、水で希釈すると同時に透明な水分散液が得られるような量の界面活性剤を含有する。この目的のためには、親水性界面活性剤の量は、疎水性界面活性剤よりも相当に高くなくてはならない。その明細書中で言及されているように、疎水性界面活性剤は、親水性界面活性剤の約200質量%未満であり、好ましくは、親水性界面活性剤の約10から60質量%である。
【0006】
今までのところで最小有効量のフェノフィブラートを用いた最近の製品の一つは、米国においてライフサイクル・ファーマ社によってフェノグライド(Fenoglide)(登録商標)の商品名のもと発売された錠剤組成物である。それは40mg及び120mgの二つの用量で入手可能である。ライフサイクル・ファーマ社の特許文献7には、フィブラートの固体分散体又は固溶体を含む固体剤形が記載される。組成物は、フィブラートを固体形態で含有する。それは、噴霧乾燥、凝集の制御、凍結乾燥、担体粒子のコーティング及び他の溶媒除去方法等の技術によって調製され、ここでビヒクルは一般的に、融解等の方法によって液体形態にされなければならない固体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第06/107411号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5545628号明細書
【特許文献3】米国特許第6814977号明細書
【特許文献4】米国特許第6719999号明細書
【特許文献5】米国特許第5827536号明細書
【特許文献6】米国特許第6294192号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2007/0026062号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、フェノフィブラートの溶解性の増大に向かって数々の試みがなされてきたが、満足な製品となっているものはわずかである。フェノフィブラートの溶解性を向上させ、市販製品に対してより優れたバイオアベイラビリティを実証し、かつ同時に最少の数の添加剤の使用を伴い、製造が単純であるようなフェノフィブラートの製剤を開発することは有益であるだろう。対象の摂食及び絶食状態の両方において、同様に効果的であり、それ故、食事に関係なく投与され得るフェノフィブラートの製剤があれば、それもまた有益であるだろう。
【0009】
さらに、通常、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症及び関連疾患等の状態の予防並びに治療のための他の心血管作動薬との併用におけるフェノフィブラート活性もまた調査されてきた。例えば、フェノフィブラートと、スタチン系薬剤及びステロール吸収阻害薬(例、エゼチミブ)等の抗高脂血症薬;トルセトラピブ(Torcetrapib)等のコレステリルエステル転送タンパク質阻害薬;コエンザイムQ10等のベンゾキノン、等との併用が、文献において開示されてきた。フェノフィブラートと、HMG−CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)のような抗高脂血症薬との併用は、コレステロール値の低減において相乗効果をもたらし得、かつ併用は、脂質異常症、高脂血症、高コレステロール血症等の状態及び他の関連した状態を治療するのに使用され得る。したがって、本発明の製剤が、スタチン系薬剤のような抗高脂血症薬等の追加の活性薬剤をさらに含み得、かつ体内において治療上有効なレベルを生じさせる適切な薬剤の送達を提供し得ることは、有益であるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、製造及び設計が極めて単純である一方で、予想外に増大したフェノフィブラートのバイオアベイラビリティを示す製剤を見出した。それはまた、フェノフィブラートの食事効果を低減あるいは取り除くことに関して、有望な結果を示した。その上、本製剤の予想外に優れたバイオアベイラビリティは、製剤がより少ない用量で効果的であるという結果をもたらし得、それによって副作用プロフィールもまた改善され得る。
【0011】
したがって、本発明は、親油性界面活性剤に溶解されたフェノフィブラートを含む製剤を提供する。好ましくは、それはまた、本質的に親水性である別の界面活性剤を含み、かつ、親油性界面活性剤と親水性界面活性剤との質量比が1:2〜2:1である。
【0012】
本発明の一態様はまた、経口バイオアベイラビリティが増大したフェノフィブラート製剤の製造方法に関し、該方法はフェノフィブラートを親油性界面活性剤に溶解させ、随意に親水性界面活性剤を添加して混合し、透明又はわずかに濁った溶液を得ることを含む。
【0013】
特定の実施態様は、ニコチン酸、HMG−CoA還元酵素阻害薬、ステロール吸収阻害薬及び胆汁酸吸着薬等の追加の活性薬剤を含有する本製剤及びそれらの調製方法に関する。
【0014】
最後に、本発明の一態様は、本製剤を包含する剤形に関し、好ましくはカプセル剤形であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、ウィスターラットにおける試験製剤A(実施例1A由来)対基準製剤B(市販製品トライコア(登録商標))の、フェノフィブラートの血漿濃度時間プロフィールのグラフィカルな比較を示す。
【図2】図2は、 試験製剤Aを投与された摂食ラット対絶食ラットにおける、実施例4由来のフェノフィブラートの血漿濃度時間プロフィールのグラフィカルな比較を示す。
【図3】図3は、実施例5の試験製剤(130mgのフェノフィブラートを含む)を摂食及び絶食状態において投与されたヒトボランティアの血漿における、フェノフィブリン酸濃度のグラフィカルな比較を描写する。比較は、有意な食事効果の非存在を示す。
【図4】図4は、基準製剤ストルフィブ(Storfib)(登録商標)(145mgのフェノフィブラートを含む)を摂食及び絶食状態において投与されたヒトボランティアの血漿における、フェノフィブリン酸濃度のグラフィカルな比較を描写する。比較は、有意な食事効果の存在を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以上に要約したように、本発明は、親油性界面活性剤に溶解されたフェノフィブラートを含む製剤を提供する。好ましくは、それはまた性質が親水性である別の界面活性剤も含む。最適な結果は、両方の種類の界面活性剤が存在し、かつ親油性界面活性剤と親水性界面活性剤との質量比が1:2〜2:1の場合に得られている。特定の理論に縛られることを望むものではないが、親油性界面活性剤は、フェノフィブラートを、溶解されかつ容易に吸収され得る状態に保ち、一方親水性界面活性剤は、吸収部位でのフェノフィブラートの十分な供給を保証すると考えられている。製剤はさらに、最適な製造及び使用のために必要となり得る他の補助的な添加剤を含み得る。
【0017】
予想外に良い結果を実証した親油性界面活性剤は、プロピレングリコールのエステルという種類に属する。エステルは一般的に、ラウリン酸、カプリル酸、ステアリン酸、リシノール酸、オレイン酸等のような脂肪酸のエステルであり、モノ−及びジ−エステルの両方を含む。いくつかの非限定的な例としては、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、リシノール酸プロピレングリコール、ジステアリン酸プロピレングリコール、ミリスチル酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、イソステアリン酸プロピレングリコール等が挙げられる。それらは好ましくは、製剤の20%w/wから80%w/wの量で使用される。特に好ましい親油性界面活性剤は、モノカプリル酸プロピレングリコールであり、ガテフォッセ社からCapryol 90(登録商標)又はCapryol PGMC(登録商標)の商品名のもと入手可能である。
【0018】
本発明のある実施態様では、親水性界面活性剤もまた使用される。それらは、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとして知られる、非イオン性界面活性剤の独特の種類に属する。この種類は、ソルビトールの部分的脂肪酸エステル及び異なるモル数のエチレンオキシドと共重合したその無水物の系列を含む。これらの化合物の一般名は「ポリソルベート」である。好ましいポリソルベートは、ポリソルベート80等の、20単位のオキシエチレンを含有するものである。Tween80としてもまた知られるポリソルベート80は、ポリオキシル化ソルビタンとオレイン酸との、粘性で水溶性のエステルである。製剤中に、ポリソルベートが80%w/wから20%w/wの範囲で含まれている場合に、満足できる結果が得られる。
【0019】
本発明の別の実施態様では、別の種類の親水性界面活性剤が使用される。それらは、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体として知られる高分子界面活性剤である。この種類は、明確に定義された比率及び位置に親水性及び疎水性部分が存在する種々の薬剤を含み、幅広い親水性−疎水性特性を持つ化合物を提供する。これらの化合物の一般名は、「ポロキサマー」である。本発明のための好ましいポロキサマーは、ポロキサマー108、188、217、238、288、338及び407等の親水性ポロキサマーである。製剤中に、それらが80%w/wから20%w/wの範囲で含まれている場合に、満足できる結果が得られる。
【0020】
他の随意の添加剤が、本製剤の特性を最適なレベルへと改変するために本製剤中に含まれ得る。それらとしては、トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル等の抗酸化剤;クエン酸、酒石酸、フマル酸、酢酸、グリシン、アルギニン、リジン、リン酸水素カリウム等のpH安定剤;他の適切な緩衝剤、保存剤、増粘剤、着色剤、香料等が挙げられる。全体としては、製剤は設計が極めて単純で、最小限の添加剤を利用する。
【0021】
製剤中の活性成分として使用されるフェノフィブラートは、特別に加工されている必要が全くなく、微粉化されていても、微粉化されていなくてもよい。ちなみにそれは、誘導体(例えば、エステル)、塩、プロドラッグ又は活性部分自身もまた包含する。製剤中に含有されるフェノフィブラートの量は、任意の治療有効量であり、一般的に約30mg〜約200mgにわたる。好ましくは、具体的な用量は、40mg、43mg、48mg、50mg、54mg、67mg、100mg、107gm、130mg、134mg、145mg、150mg、160mg及び200mgであり得る。以下に含まれるin vivo研究及び臨床試験は、市販のフェノフィブラート製品と比較して、本製剤が予想外に増大したバイオアベイラビリティを実証することを示しており、それによって市販の経口製品と比較して、より少ない用量で十分な治療効果を呈する。したがって、より少ない一日用量の活性成分が患者に投与され得ると確信され、例えば、130mg、120mg、あるいは100mg用量のフェノフィブラートが、本製剤を通して投与され得る。低減された用量が、悪心、筋肉痛、背部痛及び体の衰弱等の、フェノフィブラートの使用に伴って一般的に見られる副作用の低減につながることが同様に予期される。さらに、in vivo研究及び臨床試験は、本発明の製剤が、食事効果を有意に低減あるいは取り除くことを明らかに実証しており、すなわち、フェノフィブラートの吸収は、患者が製剤を満腹で服用するか又は空腹で服用するかとは相対的に非依存的である。したがって、患者には、製剤を毎日一回、彼の食事に関係なく任意の都合良い時間に服用する、という選択肢が与えられる。これは、有意な食事効果を呈するいくつかの市販の調製物とは対照的である。
【0022】
特定の他の実施態様では、本発明の製剤は、DPP−IV阻害薬、例えば、ボグリボース、アカルボース等のαグルコシダーゼ阻害薬、例えば、メトホルミン等のビグアニド系化合物、例えば、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン等のPPARアゴニストのような抗糖尿病薬;ベラパミル、アムロジピン、フェロジピンのようなカルシウム拮抗薬;エナラプリル、ラミプリル、リシノプリル、キナプリルのようなACE阻害薬;ビタミンE、ニコチン酸、ビタミンB、葉酸、ベタイン、オメガ3脂肪酸、コエンザイムQ10のような脂質及びビタミン;NSAIDs、アスピリン及びクロピドグレルのような血小板凝集阻害薬;ビスフォスフォネート等、の一以上の追加の活性薬剤をまた含み得る。好ましくは、追加の活性薬剤は、ニコチン酸のような他の抗高脂血症薬;アトルバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、メバスタチン、イタバスタチン(itavastatin)、セリバスタチン等のHMG−CoA還元酵素阻害薬(通常スタチン系薬剤として公知);エゼチミブ等のステロール吸収阻害薬;コレスチラミン、コレスチポール、DEAE−セファデックス等の胆汁酸吸着薬、等である。特定の実施態様はまた、例えばフェノフィブラートと、スタチン系薬剤及びエゼチミブ、スタチン系薬剤及びニコチン酸、エゼチミブ及び胆汁酸吸着薬、ニコチン酸誘導体及びステロール吸収阻害薬、α−グルコシダーゼ阻害薬及びスタチン系薬剤、等との三剤の併用を含み得る。
【0023】
HMG−CoA還元酵素阻害薬及びフェノフィブラートは、優遇された作用機序によって機能し、血漿コレステロール値の全体的な低減を生じさせる。フィブラート系薬剤は、肝臓におけるトリグリセリドの合成又は分泌を阻害することによって血清トリグリセリド値及び低密度リポタンパク質結合コレステロール値を低減させ、一方高密度リポタンパク質結合コレステロールを増加させる。HMG−CoA還元酵素阻害薬は、コレステロールの生合成経路における律速酵素であるヒドロキシメチルグルタリルCoA(HMG−CoA)還元酵素を阻害することによってコレステロールの合成を抑制する。例えば、アトルバスタチン及びフェノフィブラートの併用は、いずれかの薬物単独よりも、脂質異常症の患者における複数の脂質パラメータにおいて、より大きな改善をもたらすことがよく報告されている。この相乗的な併用の治療効果を組み入れるために、本発明のある実施態様は、親油性界面活性剤に溶解されたフェノフィブラートを含む製剤であって、追加の活性薬剤としてアトルバスタチンを含有する製剤に関する。製剤は、アトルバスタチンを2mgから100mgの用量範囲で含むが、好ましくは、用量範囲は5〜80mgであり、より好ましくは5〜40mgである。フェノフィブラートは、30mg〜200mg、好ましくは40mg〜160mg、の範囲で含まれ得る。さらに、文献において公知であり、かつ臨床試験において実証されているように、製剤は、各活性成分単独の用量と比較して、より少ない用量で十分な効果を発揮するため、本発明の製剤においては、より低用量のフェノフィブラートを組み入れることが可能である。具体的には、145mg、130mg、120mg、あるいは100mg等の低用量のフェノフィブラートが思索された。製剤はまた、例えば、トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル等のような抗酸化剤;クエン酸、酒石酸、フマル酸、酢酸、グリシン、アルギニン、リジン、リン酸水素カリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、トロメタミン、炭酸水素ナトリウム、リン酸三マグネシウム八水和物、dl−α−グリセリンリン酸マグネシウム水和物、水酸化カリウム、トロメタミン、アンバーライト、炭酸プロピレン、カルボポール等のpH安定剤;他の適切な緩衝剤、保存剤、増粘剤、着色剤、香料等の、随意の成分をさらに含み得る。
【0024】
ちなみに、本発明のフェノフィブラート及び追加の活性薬剤(例えば、スタチン化合物)はまた、各化合物の誘導体(例、エステル)、塩、プロドラッグ又は活性部分自身を包含する。
【0025】
本発明の一態様はまた、フェノフィブラート製剤の製造方法に関する。方法は極めて単純であり、フェノフィブラートを、必要な場合にはわずかな熱の助けを借りて、親油性界面活性剤に溶解し、それに随意に親水性界面活性剤を添加し、さらに十分に混合して透明又はわずかに濁った溶液を得ることを含む。その溶液は、その特性を変化させるために、追加の液体でさらに希釈され得、又は種々の医薬品添加剤で粘度を上げ及び/若しくは安定され得る。典型的には、微粉化されているか又は微粉化されていないフェノフィブラート粒子は、例えばモノカプリル酸プロピレングリコールのようなプロピレングリコールエステル等の親油性界面活性剤に溶解される。これらの界面活性剤は、一般的にその性質は半固体又は粘稠液であり、撹拌によって又は必要な場合にはわずかな熱を加えることによってフェノフィブラートを溶解させるのに使用され得る。約45から55℃の温度まで加熱することで、満足できる結果が一般的にもたらされる。ポロキサマー又はポリソルベート等の親水性界面活性剤が、親油性界面活性剤に随意に添加され、十分に撹拌される。例証として、約0.1%w/wから50%w/wのフェノフィブラートが、約20%w/wから80%w/wの親油性界面活性剤に溶解され、製剤が調製され得る。約80%w/wから20%w/wの親水性界面活性剤が溶液に添加され、透明又はわずかに濁った溶液が得られるまで混合される。抗酸化剤、pH安定剤、緩衝剤、保存剤、増粘剤、着色剤、香料等の他の随意の添加剤が、必要であれば添加され得る。次に、製剤は、適切な剤形に組み入れられ、包装される。
【0026】
したがって、本発明の別の態様は、本製剤を含む剤形に関する。剤形は、当技術分野で公知のものであって、本発明の製剤を含むのに適切な任意のものであり得る。それは、容器中の液状調製物もしくは半固体調製物、又はトローチ剤等であり得る。より好ましいのは、カプセル剤形である。ソフトジェル(Softgel)としてもまた知られる軟質ゼラチンカプセルは、液状又は半固体の充填物を持つ、密封された1粒状のカプセルである。特に好ましいのは、製剤を充填して密閉され得る、これらのカプセルである。
【0027】
したがって、本発明の一態様は、以下の工程を含む、フェノフィブラート製剤の製造方法に関する:
a.フェノフィブラートと、随意に親水性界面活性剤と、を一緒に又は連続して親油性界面活性剤に溶解する工程、
b.混合物をよく撹拌し、必要な場合には熱を加えて、透明又はわずかに濁った溶液を生成する工程、
c.工程bの混合物に、他の添加剤を随意に添加する工程、及び
d.前記混合物を、剤形に組み入れる工程。
【0028】
ある実施態様では、前記方法は以下の工程を含む:
a.フェノフィブラートと、親水性界面活性剤と、を一緒に又は連続して親油性界面活性剤に溶解する工程、
b.混合物をよく撹拌し、必要な場合には熱を加えて、透明又はわずかに濁った溶液を生成する工程、
c.工程bの混合物に、抗酸化剤、pH安定剤、緩衝剤、保存剤、増粘剤、着色剤及び香料からなる群に含まれる1つ以上の他の添加剤を随意に添加する工程、並びに
d.前記混合物を、カプセル剤形に組み入れる工程。
【0029】
別の実施態様では、前記方法は以下の工程を含む:
a.フェノフィブラートと、ポロキサマー及びポリソルベートからなる群から選択される1つの親水性界面活性剤と、を一緒に又は連続してプロピレングリコールのエステルに溶解する工程、
b.混合物をよく撹拌し、必要な場合には熱を加えて、透明又はわずかに濁った溶液を生成する工程、
c.工程bの混合物に、抗酸化剤、pH安定剤、緩衝剤、保存剤、増粘剤、着色剤及び香料からなる群に含まれる1つ以上の他の添加剤を随意に添加する工程、並びに
d.前記混合物を、軟質ゼラチンカプセル剤形に組み入れる工程。
【0030】
さらに、本発明の一態様はまた、一以上の追加の活性薬剤を含むフェノフィブラート製剤の製造方法に関し、方法は以下の工程を含む:
a.フェノフィブラートと、一以上の追加の活性薬剤と、随意に親水性界面活性剤と、を一緒に又は連続して親油性界面活性剤に溶解する工程、
b.混合物をよく撹拌し、必要な場合には熱を加えて、透明又はわずかに濁った溶液を生成する工程、
c.工程bの混合物に、他の添加剤を随意に添加する工程、及び
d.前記製剤を、剤形に組み入れる工程。
【0031】
一態様において本発明は、抗高脂血症薬、好ましくはアトルバスタチン等のHMG−CoA還元酵素阻害薬、を上記方法に組み入れることに関する。従って、本発明はフェノフィブラート及びアトルバスタチンを含む製剤の製造方法に関し、方法は以下の工程を含む:
a.フェノフィブラートと、アトルバスタチンと、親水性界面活性剤と、を一緒に又は連続して親油性界面活性剤に溶解する工程、
b.混合物をよく撹拌し、必要な場合には熱を加えて、透明又はわずかに濁った溶液を生成する工程、
c.工程bの混合物に、抗酸化剤、pH安定剤、緩衝剤、保存剤、増粘剤、着色剤及び香料からなる群に含まれる1つ以上の他の添加剤を随意に添加する工程、並びに
d.前記製剤を、製剤を、カプセル剤形に組み入れる工程。
【0032】
より具体的な実施態様では、30mgから200mgのフェノフィブラートと、5mgから80mgのアトルバスタチンと、がプロピレングリコールの脂肪酸エステルに溶解され、そして、ポロキサマー及びポリソルベートからなる群から選択されるいずれか1つの親水性界面活性剤が、それに添加される。
【0033】
以上に記載された本発明は、以下の非限定的で代表的な実施例から、より明確に理解されるだろう。
【実施例1】
【0034】
【表1】

【0035】
フェノフィブラートが、わずかな熱を使用して、モノカプリル酸プロピレングリコールに溶解された。ポリソルベート80を添加し、十分に混合した。溶液は軟質ゼラチンカプセルに充填された。
【実施例2】
【0036】
【表2】

【0037】
フェノフィブラートが、わずかな熱を使用して、モノカプリル酸プロピレングリコールに溶解された。ポロキサマー407を添加し、十分に混合した。濁った溶液が得られた。溶液は軟質ゼラチンカプセルに充填された。
【実施例3】
【0038】
市販の基準フェノフィブラート製剤、すなわちトライコア(登録商標)、のバイオアベイラビリティと比較した本製剤のバイオアベイラビリティを実証するために、in vivo研究が行われた。
【0039】
ウィスターラット(n=6)(絶食)が、2つの異なるフェノフィブラート製剤で経口処置された。製剤Aは、実施例1Aで提供されている本発明のフェノフィブラート製剤であり、ラットに対して62mg/kg体重の用量であった。製剤Bは、市販商品のトライコア(登録商標)であり、ラットに90mg/kg体重の用量で投与された。
【0040】
血液試料が、0、0.5、1、3、6、9及び12時間の一定間隔で眼窩後洞から採取され、血漿をLC−MS/MSによるフェノフィブリン酸の解析のために提供された。図1は、得られたデータをグラフ形状で表わす。
【0041】
結果は、平均値±標準誤差(n=6)として示され、以下のとおりである:
【0042】
【表3】

【0043】
トライコア(登録商標)がラットに対して90mg/kg体重の用量であったのに対し、フェノフィブラート製剤はラットに対して62mg/kg体重の非常に低用量でも、トライコア(登録商標)と比較して150%の相対的バイオアベイラビリティを実証した。結果はしたがって、驚くほど増大した経口バイオアベイラビリティを持つ本発明の優れたフェノフィブラート製剤を示す。
【実施例4】
【0044】
本発明の製剤を通して投与されるフェノフィブラートの薬物動態に対して、食物の効果がもし少しでもあるとしたら、それを評価するために、さらなるin vivo研究が設計された。摂食及び一晩絶食(12時間)させたラットが、本発明の製剤Aで経口的に処置された。血液試料(400μL)が、上記のように一定間隔で眼窩後洞から採取され、血漿をLC−MS/MSによってフェノフィブリン酸について解析した。図2は、データをグラフ形状で表わす。
【0045】
結果は、平均値±標準誤差(n=5〜6)として示され、以下のとおりである:
【0046】
【表4】

【0047】
結果は、匹敵するAUC、Cmax及びTmax値を示す。摂食及び絶食した状態下でのフェノフィブラート投与後のフェノフィブリン酸の血漿プロファイルには有意な差はなく、食事効果の非存在が示される。
【実施例5】
【0048】
フェノフィブラート130mg及び追加の活性薬剤のアトルバスタチン10mgを含む製剤もまた、バイオアベイラビリティ及び食事効果について評価した。基準製剤は、市販製品のストルフィブ(登録商標)(ランバクシー・ラボラトリーズ社(Ranbaxy Laboratories Ltd.)、インド、によって製造され、フェノフィブラート145mg及びアトルバスタチン10mgを含有する)であった。健康な大人のヒト被験者における非盲検で、釣り合いのとれた、無作為化、2処置(two treatment)、2連続2期間(two−sequence two period)、単一用量、交差比較のバイオアベイラビリティ研究を、摂食及び絶食状態下で実施した。全ての試験対象患者基準を満たした合計12+2人の健康な男性ボランティアを、研究に動員した。
【0049】
摂食及び一晩絶食(それぞれ、摂食及び絶食研究のため)させた男性ボランティアに、試験又は基準製剤のいずれかを投与し、合計21の血液試料を各期間中に被験者から採取した。静脈血試料(各10ml)を、投薬前並びに投薬から0.50、1.0、2.0、4.0、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、9.0、10.0、12.0、14.0、160、18.0、20.0、22.0及び24時間後に回収した。2つの連続した期間の間の投薬完了からは、少なくとも7日間のウォッシュアウトを確保した。評価した薬物動態パラメータは、Cmax、AUC(0−t)、AUC(0−inf)であった。図III及びIVは、得られたデータをグラフ形状で表わす。
【0050】
フェノフィブラートの結果は、摂食及び絶食の両研究について、以下の表に示すとおりである:
【0051】
【表5】

【0052】
試験製剤の場合には食事効果がないことがわかり、ここで薬物動態パラメータは、摂食及び絶食状態の両方において相対的に変化していない。基準製剤は、絶食状態においては、試験製剤と比較してはるかに低い吸収プロファイルを示す。しかしながら、食物の存在下では、基準製剤の吸収は増加し、それによって食事効果が示される。
【0053】
本発明の製剤及び剤形はしたがって、予想外に増大したバイオアベイラビリティ、設計及び製造の単純性並びに食事効果の非存在を実証した。
【0054】
本発明の要旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の系の種々の改変がなされ得る。上記の記載及び実施例は、本発明の種々の態様を例証し、その範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親油性界面活性剤に溶解されたフェノフィブラートを含む、経口バイオアベイラビリティが増大したフェノフィブラート製剤。
【請求項2】
親水性界面活性剤を追加で含み、前記親油性界面活性剤と前記親水性界面活性剤とが質量比1:2から2:1で存在する、請求項1に記載のフェノフィブラート製剤。
【請求項3】
前記親油性界面活性剤がプロピレングリコールの脂肪酸エステルであり、かつ前記親油性界面活性剤が前記製剤の20%w/wから80%w/wの量で使用される、請求項2に記載のフェノフィブラート製剤。
【請求項4】
前記親油性界面活性剤がモノカプリル酸プロピレングリコールである、請求項3に記載のフェノフィブラート製剤。
【請求項5】
前記親水性界面活性剤が、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択されるいずれか1つであり、かつ前記親水性界面活性剤が前記製剤の80%w/wから20%w/wの量で使用される、請求項2に記載のフェノフィブラート製剤。
【請求項6】
前記親水性界面活性剤が、ポリソルベート80、ポロキサマー108、188、217、238、288、338及び407からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項5に記載のフェノフィブラート製剤。
【請求項7】
抗酸化剤、pH安定剤、緩衝剤、保存剤、増粘剤、着色剤及び香料からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項2に記載のフェノフィブラート製剤。
【請求項8】
30mgから200mgのフェノフィブラートと、20%w/wから80%w/wのプロピレングリコールの脂肪酸エステルと、80%w/wから20%w/wの、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択されるいずれか1つの親水性界面活性剤と、を含む、請求項2に記載のフェノフィブラート製剤。
【請求項9】
40mgから160mgのフェノフィブラートと、20%w/wから80%w/wのモノカプリル酸プロピレングリコールと、80%w/wから20%w/wのポリソルベート80と、を含む、請求項2に記載のフェノフィブラート製剤。
【請求項10】
一以上の追加の活性薬剤をさらに含む、請求項2に記載のフェノフィブラート製剤。
【請求項11】
前記追加の活性薬剤が、抗糖尿病薬、心血管作動薬、ニコチン酸、HMG−CoA還元酵素阻害薬、ステロール吸収阻害薬及び胆汁酸吸着薬からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項10に記載のフェノフィブラート製剤。
【請求項12】
前記追加の活性薬剤がアトルバスタチンであり、かつ前記製剤が5mgから80mgのアトルバスタチンと、30mgから200mgのフェノフィブラートと、を含む、請求項10に記載のフェノフィブラート製剤。
【請求項13】
請求項1に記載のフェノフィブラート製剤を含む、経口投与用カプセル。
【請求項14】
フェノフィブラートを親油性界面活性剤に溶解し、随意に親水性界面活性剤を添加し、及び混合して透明又はわずかに濁った溶液を得る、経口バイオアベイラビリティが増大したフェノフィブラート製剤の製造方法。
【請求項15】
約0.1%w/wから50%w/wのフェノフィブラートを約20%w/wから80%w/wの親油性界面活性剤に溶解し、及び約80%w/wから20%w/wの親水性界面活性剤を添加して透明又はわずかに濁った溶液を得る、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
以下の工程を含む、請求項14に記載の方法:
i.フェノフィブラートと、随意に親水性界面活性剤と、を一緒に又は連続して親油性界面活性剤に溶解する工程、
ii.混合物をよく撹拌し、必要な場合には熱を加えて、透明又はわずかに濁った溶液を生成する工程、
iii.工程bの混合物に、他の添加剤を随意に添加する工程、及び
iv.前記混合物を、剤形に組み入れる工程。
【請求項17】
以下の工程を含む、請求項14に記載の方法:
i.フェノフィブラートと、親水性界面活性剤と、を一緒に又は連続して親油性界面活性剤に溶解する工程、
ii.混合物をよく撹拌し、必要な場合には熱を加えて、透明又はわずかに濁った溶液を生成する工程、
iii.工程bの混合物に、抗酸化剤、pH安定剤、緩衝剤、保存剤、増粘剤、着色剤及び香料からなる群に含まれる1つ以上の他の添加剤を随意に添加する工程、並びに
iv.前記混合物を、カプセル剤形に組み入れる工程。
【請求項18】
以下の工程を含む、請求項14に記載の方法:
i.フェノフィブラートと、ポロキサマー及びポリソルベートからなる群から選択される1つの親水性界面活性剤と、を一緒に又は連続してプロピレングリコールのエステルに溶解する工程、
ii.混合物をよく撹拌し、必要な場合には熱を加えて、透明又はわずかに濁った溶液を生成する工程、
iii.工程bの混合物に、抗酸化剤、pH安定剤、緩衝剤、保存剤、増粘剤、着色剤及び香料からなる群に含まれる1つ以上の他の添加剤を随意に添加する工程、並びに
iv.前記混合物を、軟質ゼラチンカプセル剤形に組み入れる工程。
【請求項19】
以下の工程を含む、請求項14に記載の方法:
i.フェノフィブラートと、一以上の追加の活性薬剤と、随意に親水性界面活性剤と、を一緒に又は連続して親油性界面活性剤に溶解する工程、
ii.混合物をよく撹拌し、必要な場合には熱を加えて、透明又はわずかに濁った溶液を生成する工程、
iii.工程bの混合物に、他の添加剤を随意に添加する工程、及び
iv.前記製剤を、剤形に組み入れる工程。
【請求項20】
以下の工程を含む、請求項14に記載の方法:
i.フェノフィブラートと、アトルバスタチンと、親水性界面活性剤と、を一緒に又は連続して親油性界面活性剤に溶解する工程、
ii.混合物をよく撹拌し、必要な場合には熱を加えて、透明又はわずかに濁った溶液を生成する工程、
iii.工程bの混合物に、抗酸化剤、pH安定剤、緩衝剤、保存剤、増粘剤、着色剤及び香料からなる群に含まれる1つ以上の他の添加剤を随意に添加する工程、並びに
iv.前記製剤を、カプセル剤形に組み入れる工程。
【請求項21】
前記親水性界面活性剤がポロキサマー及びポリソルベートからなる群から選択されるいずれか1つであり、前記親油性界面活性剤がプロピレングリコールのエステルであり、かつ、前記剤形が軟質ゼラチンカプセル剤形である、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−526621(P2011−526621A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515736(P2011−515736)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/IN2009/000365
【国際公開番号】WO2010/082214
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(511002353)パナセア バイオテック リミテッド (1)
【Fターム(参考)】