説明

経口B12治療

低ビタミンB12状態の患者におけるビタミンB12濃度を正常化する方法およびかかる患者の治療における被験者間変動を正規化する方法を記述する。MMAおよび/またはホモシステイン濃度を低下させる方法、ならびにそのような変化を生じさせるのに有用な医薬組成物についても記述する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる2010年2月24日出願の米国仮特許出願第61/307,836号の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、一般に、低ビタミンB12状態の患者におけるビタミンB12濃度を正常化する方法およびかかる患者の治療における被験者間変動を正規化する方法に関する。本開示は、また、メチルマロン酸(MMA)および/またはホモシステイン濃度を低下させる方法、ならびにそのような変化を生じさせるのに有用な医薬組成物にも関する。
【背景技術】
【0003】
ビタミンB12は、脳および神経系を正常に機能させるため、ならびに血液の形成のために重要である。ビタミンB12は、身体のすべての細胞の代謝に関与し、特にDNAの合成および調整に影響を及ぼすだけでなく、脂肪酸の合成およびエネルギーの産生にも影響を及ぼす。ビタミンB12の効果については、まだ完全には解明されていない。
【0004】
シアノコバラミンは、安定した、広く利用されているビタミンB12の形態である。ビタミンB12は胆汁中に排出され、一定の腸肝再循環を通過する。吸収されたビタミンB12は、特異的B12結合タンパク質であるトランスコバラミンIおよびIIを介して、様々な組織に輸送される。肝臓はビタミンB12貯蔵のための主要臓器である。
【0005】
ビタミンB12の欠乏症は、不十分な食生活、内因子欠乏症、吸収不良などの腸管障害、胃切除、胃の萎縮症、回腸切除および慢性炎症性腸疾患から発生する。プロトンポンプ阻害剤およびメトホルミンなどの薬剤の慢性的使用もビタミンB12の欠乏症の原因となる。ビタミンB12の欠乏症は、重篤かつ不可逆的損傷を特に脳および神経系に潜在的に引き起こす可能性がある。
【0006】
12欠乏症の従来の治療は、筋肉内(IM)注射である。通常、米国では、最初の1ヶ月間、シアノコバラミンを頻繁に(たとえば、6回から9回)注射した後、医師の処方に基いて維持注射を行う。初期治療期間後または臨床的寛解が発生した後、治療はしばしば1ヶ月に1回のスケジュールで、生涯に渡って継続される。文献には、頻回投与から始まって、頻度を下げた維持投与に移行する様々な治療スケジュールおよび投与量が記載されている。Hvasら著のHaematologica 2006、137:2481〜84頁を参照されたい。
【0007】
経口シアノコバラミンも、ビタミンB12の欠乏症の治療に使われてきたが、患者の多くは反応しない。1つの試験は悪性貧血患者についてで、2つの試験は食品コバラミンの吸収不良患者についてであった。結果は、患者の80〜90%が3ヶ月調査で正常な血清B12濃度を達成し、95%が2.5年の調査で正常化したことを示した。臨床的改善は患者のわずか20〜30%でしか報告されなかった(Andresら著のEur J Intern Med 2003、18:221〜26頁)。1000μg/日の経口B12投与を1週間継続した短期間調査では、高齢患者20名のうち17名において、平均値で0.23μg/L(230pg/ml)のB12濃度の上昇が示された(Kaltenbachら著のAnn Med Interne 2003、154:91〜95頁)。
【0008】
さらに、患者のほとんどまたは全員において、B12の貯蔵を急速かつ信頼性をもって回復または維持する点で、経口B12が非経口B12に匹敵できるかどうかについては、依然として疑問が残る。結果として、米国を含む一部の地域においては、筋肉内注射治療が広く臨床的に使用され続けている。無作為化対照経口B12介入試験の最近の系統的レビューでは、8つの試験における経口B12による介入に対するバイオマーカー反応が調査された(Hoeyら著のAm J Clin Nutr 2009、89(補足):1981S−96S頁)。コバラミン、MMA、ホモシステイン(HC)およびホロトランスコバラミンの反応が評価の対象となった。B12の摂取は、血中B12濃度に変動の大きい作用を引き起こすこと、および性別または年齢のサブグループ分析では、その変動の説明ができないことが判明した。著者らは、論文のいくつかは臨床反応の明確な全容を提供するための情報を十分に報告していないと述べている。Carmel(Food Nutr Bull 2008、29:S177〜S187頁)もB12の介入試験について注釈し、B12補給試験における平均値および群統計への依存は、改善がわずかまたは皆無の人々から成る小集団をしばしば隠す可能性があり、この論文で引用された高齢者におけるB12補給の3つの前向き研究では、普通、反応の悪い被験者についてはそれ以上の調査が行われず、反応が悪い原因が調べられていなかったと述べている。
【0009】
筋肉内注射によるB12の投与は不便であり、投与に医療従事者を必要とするときは比較的費用がかかり、筋肉量が不十分な衰弱した高齢患者には困難であり、苦痛を伴う可能性がある(Butlerら著のFam Pract 2006、23:279〜85頁)。現在の経口B12治療は、依然として、非経口投与よりも信頼性が低いと見られており、非経口投与の場合よりも頻繁な患者監視が推奨されている(Laneら著のAnn Pharmacother 2002;36:1268〜72頁)。したがって、被験者間変動を減少させたビタミンB12欠乏症に対する信頼性および効果がより高い経口治療の必要が引き続き存在している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Hvasら著のHaematologica 2006、137:2481〜84頁
【非特許文献2】Andresら著のEur J Intern Med 2003、18:221〜26頁
【非特許文献3】Kaltenbachら著のAnn Med Interne 2003、154:91〜95頁
【非特許文献4】Hoeyら著のAm J Clin Nutr 2009、89(補足):1981S−96S頁
【非特許文献5】Carmel(Food Nutr Bull 2008、29:S177〜S187頁
【非特許文献6】Butlerら著のFam Pract 2006、23:279〜85頁
【非特許文献7】Laneら著のAnn Pharmacother 2002;36:1268〜72頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、ビタミンB12欠乏症に罹患していて、さらに/またはMMAおよび/もしくはホモシステイン濃度が上昇している患者において、特定のN−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウム(SNAC)およびビタミンB12を含む特定の製剤を経口投与すると、ビタミンB12、メチルマロン酸(MMA)および/またはホモシステインの濃度を驚くほど急速に正常化できる(たとえば、治療の15日以内)ことを発見した。発明者らは、SNAC/ビタミンB12製剤の経口投与を受けたすべての患者が治療に好ましく反応したことも観察した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの態様において、本発明は、ビタミンB12欠乏症に罹患している患者において、N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸(NAC)またはその薬学的に許容される塩(SNACなど)およびビタミンB12を含む1つまたは複数の経口剤形を毎日投与することにより、ビタミンB12の濃度を(たとえば、治療の15日以内に)正常化する方法に関する。1つの実施形態では、患者は不十分な食生活、内因子欠乏症、吸収不良などの腸管障害、胃切除、胃の萎縮症、回腸切除および慢性炎症性腸疾患を原因とするビタミンB12欠乏症に罹患している。
【0013】
別の態様では、本発明は、活性ビタミンB12濃度が低い患者において、NACまたはその薬学的に許容される塩(SNACなど)およびビタミンB12を含む1つまたは複数の経口剤形を毎日投与することにより、ホロトランスコバルミン(活性ビタミンB12)濃度を(たとえば、治療の15日以内に)正常化する方法に関する。
【0014】
さらなる態様において、本発明は、MMA濃度が高い患者において、NACまたはその薬学的に許容される塩(SNACなど)およびビタミンB12を含む1つまたは複数の経口剤形を毎日投与することにより、MMA濃度を低下させる方法に関する。
【0015】
さらにもう1つの態様において、本発明は、ホモシステイン濃度が高い患者において、NACまたはその薬学的に許容される塩(SNACなど)およびビタミンB12を含む1つまたは複数の経口剤形を毎日投与することにより、ホモシステイン濃度を低下させる方法に関する。
【0016】
さらにもう1つの態様において、本発明は、ビタミンB12欠乏症に罹患していて、さらに/またはMMAおよび/もしくはホモシステイン濃度が高い患者の経口治療における被験者間変動を低下させる方法に関する。本方法は、患者ごとに、NACまたはその薬学的に許容される塩(SNACなど)およびビタミンB12を含む1つまたは複数の経口剤形を毎日投与することを含む。1つの実施形態では、本方法は、筋肉内投与で観察されるのと類似またはそれより優れた患者反応率を達成する。
【0017】
さらにもう1つの態様において、本発明は、ビタミンB12による経口治療に対する患者の反応率を改善する方法に関する。本方法は、患者ごとに、NACまたはその薬学的に許容される塩(SNACなど)およびビタミンB12を含む1つまたは複数の経口剤形を毎日投与することを含む。1つの実施形態において、患者は低ビタミンB12またはビタミンB12欠乏症に罹患している。
【0018】
さらにもう1つの態様において、本発明は、(a)ビタミンB12、(b)NACまたはその薬学的に許容される塩(SNACなど)、および(c)葉酸を含む医薬組成物に関する。この医薬組成物は、前記の方法のいずれにおいても使用することができる。
【0019】
さらにもう1つの態様において、本発明は、(a)プロトンポンプ阻害剤(オメプラゾールまたはエソメプラゾール)、(b)ビタミンB12、(c)NACまたはその薬学的に許容される塩(SNACなど)、および任意で(d)葉酸を経口投与することにより、患者においてプロトンポンプ阻害剤により引き起こされるビタミンB12欠乏症を軽減または予防する方法に関する。成分のすべてが同一または別々の剤形であってもよい。1つの好ましい実施形態において、成分(b)、(c)および任意で(d)は、単一の剤形に組み込まれ、プロトンポンプ阻害剤と一緒に投与される(たとえば、同時または15分以内)。もう1つの好ましい実施形態において、成分のすべて(すなわち、成分(a)、(b)、(c)および任意で(d))が単一の剤形に組み込まれる。さらにもう1つの好ましい実施形態は、プロトンポンプ阻害剤による治療を受ける患者において、(i)プロトンポンプ阻害剤による治療を中止し、さらに(ii)(a)プロトンポンプ阻害剤(オメプラゾールまたはエソメプラゾールなど)、(b)ビタミンB12、(c)NACまたはその薬学的に許容される塩(SNACなど)、および任意で(d)葉酸を投与することにより、プロトンポンプ阻害剤により引き起こされるビタミンB12欠乏症を軽減または予防する方法である。
【0020】
さらにもう1つの態様において、本発明は、(a)プロトンポンプ阻害剤(オメプラゾールまたはエソメプラゾール)、(b)ビタミンB12、(c)NACまたはその薬学的に許容される塩(SNACなど)、および任意で(d)葉酸を含む医薬組成物に関する。
【0021】
さらにもう1つの態様において、本発明は、(a)メトホルミン、(b)ビタミンB12、(c)NACまたはその薬学的に許容される塩(SNACなど)、および任意で(d)葉酸を経口投与することにより、患者においてメトホルミンにより引き起こされるビタミンB12欠乏症を軽減または予防する方法に関する。成分のすべてが同一または別々の剤形に含まれるようにすることができる。1つの好ましい実施形態において、成分(b)、(c)および任意で(d)は、単一の剤形に組み込まれ、メトホルミンと一緒に投与される(たとえば、同時または15分以内)。もう1つの好ましい実施形態において、成分のすべて(すなわち、成分(a)、(b)、(c)および任意で(d))が単一の剤形に組み込まれる。さらにもう1つの好ましい実施形態は、メトホルミンによる治療を受ける患者において、(i)メトホルミンによる治療を中止し、さらに(ii)(a)メトホルミン、(b)ビタミンB12、(c)NACまたはその薬学的に許容される塩(SNACなど)、および任意で(d)葉酸を投与することにより、メトホルミンにより引き起こされるビタミンB12欠乏症を軽減または予防する方法である。
【0022】
さらにもう1つの態様において、本発明は、(a)メトホルミン、(b)ビタミンB12、(c)NACまたはその薬学的に許容される塩(SNACなど)、および任意で(d)葉酸を含む医薬組成物に関する。
【0023】
本発明の方法の1つの好ましい実施形態において、N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸またはその薬学的に許容される塩の1日の合計量は、約50〜約250mgであり、ビタミンB12の1日の合計量は約0.5〜約2mgである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例7に記述される被験者について、調査日ごとのコバルミン血清濃度におけるベースライン(PCFB)からの平均(SD)パーセント変化を示す図である。
【図2】実施例7に記述される被験者について、調査日ごとのMMA血漿濃度におけるベースライン(PCFB)からの平均(SD)パーセント変化を示す図である。
【図3】実施例7に記述される被験者について、調査日ごとのホモシステイン血漿濃度におけるベースライン(PCFB)からの平均(SD)パーセント変化を示す図である。
【図4】実施例7に記述される被験者について、61日目の治療によるホロトランスコバルミン濃度とコバルミン濃度とを比較した散布図である。
【図5】実施例7に記述される被験者について、91日目の治療によるホロトランスコバルミン濃度とコバルミン濃度とを比較した散布図である。
【図6】実施例7に記述される被験者について、調査日ごとのコバルミンの平均(SD)濃度の棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
「約」または「およそ」という用語は、当業者の誰かによって決定される特定の値に対して許容可能な誤差の範囲内を意味し、部分的には、その値の測定または算出された方法、すなわち測定系の限界に依存する。たとえば、「約」は、当業での実践により、偏差1以内を意味することも、1を超える値を意味することもある。あるいは、製剤に関しての「約」はプラスまたはマイナスで最大20%、好ましくは最大10%、より好ましくは最大5%の範囲を意味しうる。
【0026】
本明細書で用いられている「SNAC」という用語は、N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウムを意味する。SNACは、N−サリチロイル−8−アミノカプリル酸ナトリウム、8−(N−サリチロイルアミノ)オクタン酸一ナトリウム、N−(サリチロイル)−8−アミノオクタン酸一ナトリウム塩、N−{8−(2−フェノキシベンゾイル)アミノ}オクタン酸一ナトリウム、E414一ナトリウム塩、8−[(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]オクタン酸ナトリウムおよびサルカプロゼートナトリウムとしても知られる。SNACは次の構造を有する:
【化1】

【0027】
本明細書に記述する方法のいずれの追加的な実施形態においても、NACまたはその他のSNACの薬学的に許容される塩は、SNACの代わりに使用され得る。たとえば、NACの二ナトリウム塩を使用してもよい。さらに、SNACの任意の固体形状を使用してもよい。SNACの好ましい固体形状は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公報第2009/0143330号に記載されている。
【0028】
本明細書に記述する方法のいずれの追加的な実施形態においても、SNAC(およびその遊離酸またはその他の薬学的に許容される塩)以外の送達薬剤をビタミンB12と併用することができる。このような送達薬剤は、NACまたはその薬学的に許容される塩と併用するか、またはそれらの代用とすることができる。このような送達薬剤の例としては、以下に限定されないが、N−(10−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)デカン酸(SNADの遊離酸)、N−(8−[2−ヒドロキシ−5−クロロベンゾイル]アミノ)オクタン酸(5−CNAC)、4−[(2−ヒドロキシ−4−クロロベンゾイル)アミノ]ブタン酸(4−CNAB)、8−(2−ヒドロキシフェノキシ)オクチルジエタノールアミン(HPOD)、8−(N−2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾイル)−アミノカプリル酸(4−MOAC)およびそれらの薬学的に許容される塩(たとえば、それらの一ナトリウムおよび二ナトリウム塩)があげられる。「SNAD」という用語は、N−(10−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)デカン酸の一ナトリウム塩を指す。他の適切な送達薬剤は、たとえば、国際公開第96/30036号、国際公開第98/34632号および国際公開第2007/121318号ならびに米国特許第5,650,386号、同第5,773,647号および同第5,866,536号に記載されており、それらのすべてが参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
「ビタミンB12」という用語は、コバラミンとして知られるコバルト含有化合物群に属す一員のいずれをも意味する。ここで、コバラミンはシアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミンおよび5−デオキシアデノシルコバラミンを含むが、これだけに限定されるものではない。1つの実施形態において、ビタミンB12はシアノコバラミンである。
【0030】
本明細書に記述される方法のいずれの特定の実施形態においても、患者の血清ビタミンB12濃度は、約500pg/mL未満である。たとえば、患者の血清ビタミンB12濃度は約400、約350、約300、約250または約200pg/mL未満であり得る。
【0031】
本明細書に記述される方法のいずれの特定の実施形態においても、患者の血漿ホロトランスコバラミン(活性ビタミンB12)濃度は、約100pmol/L未満である。たとえば、患者の血漿活性ビタミンB12濃度は、約50または約25pmol/L未満であり得る。
【0032】
本明細書に記述される方法のいずれの特定の実施形態においても、患者の血清MMA濃度は少なくとも約150nmol/Lである。たとえば、患者の血清MMA濃度は、少なくとも約175nmol/L、少なくとも約200nmol/L、または少なくとも225nmol/Lであり得る。
【0033】
本明細書に記述される方法のいずれの特定の実施形態においても、患者の血漿ホモシステイン濃度は少なくとも約13μmol/Lである。たとえば、患者の血漿ホモシステイン濃度は少なくとも約14μmol/Lである。
【0034】
もう1つの態様において、本発明は、低ビタミンB12またはビタミンB12欠乏症に罹患している患者の経口治療における被験者間変動を低下させる方法に関し、該方法は、患者ごとに、N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸(NAC)またはその薬学的に許容される塩(SNACなど)およびビタミンB12を含む1つまたは複数の経口剤形を毎日投与することを含む。
【0035】
本発明の方法において、NAC(またはその薬学的に許容される塩)およびビタミンB12の経口剤形は、好ましくは少なくとも15日、30日、60日または90日の間、毎日投与する。
【0036】
さらにもう1つの態様において、本発明は、N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸(NAC)またはその薬学的に許容される塩(SNACなど)およびビタミンB12を含む1つまたは複数の経口剤形を各患者に毎日投与することによる、ビタミンB12による経口治療に対する患者の反応率を向上する方法に関する。1つの実施形態において、患者は低ビタミンB12またはビタミンB12欠乏症に罹患している。
【0037】
1つの実施形態において、本明細書に記述される方法のいずれも、筋肉内投与の場合に観察されるのと類似またはそれより優れた患者反応率を達成する。
【0038】
さらなる態様において、本発明は、(a)ビタミンB12、(b)N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸(NAC)またはその薬学的に許容される塩(SNACなど)、および(c)任意で本明細書に記述される方法のいずれかで有用な1つまたは複数の追加の生物学的に活性な薬剤を含む医薬組成物に関する。適切な追加的活性薬剤には葉酸が含まれるが、葉酸に限定されない。1つの実施形態において、医薬組成物におけるNAC(またはその薬学的に許容される塩、たとえばSNAC)対ビタミンB12の重量比は、約25:1〜約500:1である。
【0039】
1つの実施形態において、本発明は(a)ビタミンB12、(b)N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸(NAC)またはその薬学的に許容される塩(SNACなど)、および(c)葉酸を含む経口医薬組成物に関する。ビタミンB12およびSNAC(またはNACのその他の形態)の重量比および量は、本明細書に記載することができる。1つの実施形態において、経口医薬組成物は、ビタミンB12を約0.01mg〜約25mg、SNACを約1mg〜約1400mg、および葉酸を約100〜約1000μg含む。別の実施形態において、経口医薬組成物は、ビタミンB12を約6μg〜約10mg、SNACを約10mg〜約250mg、および葉酸を約100〜約800μg含む。
【0040】
追加の実施形態において、組成物における葉酸の量は、約0.05μg〜約1000μgの範囲である。たとえば、約1μg〜約800μg、約10μg〜約800μg、約100μg〜約800μg、約250〜約800μg、約250〜約500μg、または約400μg〜約800μgである。たとえば、組成物における葉酸の量は、約200μg、約250μg、約300μg、約400μg、約500μg、約600μg、約700μgまたは約800μgとすることができる。
【0041】
本明細書に記述される方法のいずれかの追加実施形態においても、患者は既存の経口ビタミンB12治療(または、たとえば、SNACを含んでいないビタミンB12製剤による経口治療)に反応しなかった患者である。
【0042】
本明細書に記述される方法のいずれのさらなる実施形態においても、本発明は、錠剤の剤形の投与に関する。
【0043】
追加の実施形態において、錠剤などの剤形は、ビタミンB12を約0.01mg〜約25mgおよびSNACを約1mg〜約600mg含むことができる。たとえば、剤形は個々の錠剤にビタミンB12を約0.02mg〜約25mgまたは約0.1mg〜約20mgまたは約0.5mg〜10mgおよびSNACを約10mg〜約200mgまたは約10mg〜約250mg含むことができる。
【0044】
1つの実施形態において、錠剤などの剤形はビタミンB12を約0.5〜約1.5mgおよびSNACを約50〜約150mg含み、たとえば、ビタミンB12を約1mgおよびSNACを100mg含む。
【0045】
他の実施形態において、ビタミンB12対SNACの重量比は約2:1〜約1:700であり、たとえば、約1:2〜約1:600、約1:2〜約1:200、約1:2〜約1:100、約1:3〜約1:20または約1:4〜約1:10などである。1つの実施形態において、ビタミンB12対SNACの重量比は、約1対100である。
【0046】
他の実施形態において、剤形(たとえば、錠剤)は任意で賦形剤、乳化剤、安定化剤、甘味剤、香味剤、希釈剤(リン酸水素カルシウムなど)、結合剤(ポビドンなど)、着色剤および/または可溶化剤、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウムなど)、またはこれらの任意の組合せを任意で含む。適切な賦形剤、乳化剤、安定化剤、甘味剤、香味剤、希釈剤、着色剤および可溶化剤は、Raymond C. Rowe、Paul J.SheskeyおよびPaul J. Weller著のHandbook of Pharmaceuteical Excipients(第4版)に記述されたものが含まれる。
【0047】
たとえば、剤形は約1〜約150mgのリン酸水素カルシウムを任意で含み、約0.5〜約10mgのポビドンを任意で含む。さらなる例としては、リン酸水素カルシウムは約50〜約150mgの量で存在し、ポビドンは約1〜約8mgの量で存在する。特定の実施形態において、リン酸水素カルシウムは約75〜約125mgの量で存在し、ポビドンは約1.5〜約5mgの量で存在する。たとえば、リン酸水素カルシウムは約90〜約100mgの量で存在し、ポビドンは約1.5〜約5mgの量で存在する。例示的な剤形では、リン酸水素カルシウムは約95mgの量で存在し、ポビドンは約2mgの量で存在する。さらなる実施形態において、ステアリン酸マグネシウムは約0.5〜約5mgの量で存在する。たとえば約1〜約3mgの量で存在し、たとえば約2mgの量で存在する。
【0048】
特定の作用理論に拘束されることを意図するものではないが、ビタミンB12の消化管吸収は胃壁細胞から分泌される、内因子タンパク質が十分に存在することに依存すると考えられている。平均的な食事は、正常な消化後に吸収のために利用可能なタンパク質に結合した形態でビタミンB12を約10mcg/日補給する。ビタミンB12は、胃を通過する間に内因子に結合し、回腸末端で遊離が起こり、受容体媒介プロセスを通じて、粘膜細胞に入って吸収される。その後、ビタミンB12はトランスコバラミン結合タンパク質により輸送される。少量(合計摂取量のおよそ1%)であれば単純拡散により吸収されるが、投与量が極めて大量の場合に限れば、この機序が適切である。さらに、SNACにより、ビタミンB12は通常の上記の受容体媒介プロセスを迂回可能になると考えられている。
【0049】
「治療」または「治療法(treating)」という用語は、疾病または疾患に対する予防または防護、すなわち、臨床症状が発現しないようにすること;疾病または疾患の抑制、すなわち臨床症状の阻止または抑制;および/または疾病もしくは疾患の緩和、すなわち臨床的症状の退行を引き起こすことを含め、哺乳類における疾病または疾患の任意の治療を意味する。
【0050】
患者は、以下の症状に起因する可能性のある吸収不良からビタミンB12欠乏症に罹患する可能性がある:(1)アジソン(悪性)貧血、(2)グルテン性腸症もしくはスプルー、小腸細菌過剰増殖を含む胃腸の病変、障害もしくは手術、(3)胃の全摘もしくは部分的切除、(4)裂頭条虫の侵入、(5)膵臓もしくは腸の悪性腫瘍、または(6)葉酸欠乏症。たとえば、患者は(1)食事からのビタミンB12の欠乏、(2)悪性貧血、(3)内因子媒介性吸収の機能不全、胃切除、炎症性大腸炎、加齢による食事からのビタミンB12吸収不全、腸細菌の過剰増殖、プロトンポンプ阻害剤もしくはメトホルミンの慢性使用を原因とするビタミンB12の吸収不良、または(4)熱帯性スプルー、クローン病、慢性アルコール中毒、内因子の産生に影響する腹部もしくは胃の手術など、小腸に影響する症状を患っている可能性がある。B12欠乏症の症状としては、悪性貧血および神経変性が挙げられる。さらに、B12の欠乏状態は、低い認知力、アルツハイマー病、欝および骨の不健康にも関係づけられている。患者は、ビタミンB12欠乏症に通じるプロトンポンプ阻害剤またはメトホルミンなどの特定の薬物を慢性的に使用していることが原因で、ビタミンB12欠乏症に罹患することもある。
【0051】
本発明の方法は、妊娠、甲状腺機能亢進症、溶血性貧血、出血、悪性腫瘍、肝疾患および腎疾患などが原因で、ビタミンB12を正常量を超えて必要とする患者に提供する目的にも有用である。
【0052】
「内因子タンパク質」という用語は、胃壁細胞により産生される糖タンパク質を指す。この糖タンパク質は以降の回腸末端でのビタミンB12の吸収を容易にする。
【0053】
正常な血清ビタミンB12濃度は、通常、たとえば、約200〜900pg/mLの範囲になり、平均正常血漿濃度は約450pg/mLである。たとえば、AHFS Drug Information:McEvoy、G.K.編のAmerican Society of Health−System Pharmacists(2007)を参照されたい。約200pg/mL未満の血清ビタミンB12濃度は、ビタミンB12の欠乏を意味し、約200〜約350pg/mLの血清B12濃度は、高いMMA濃度およびホモシステイン濃度と同時に発生したときは、組織内の貯蔵量が枯渇している兆候と見なすことができる。たとえば、Camel Rら著のHematology Am. Soc. Hematol. Educ. Program、62〜81頁、2003を参照されたい。このような被験者は本明細書に記述する方法によって治療することができる。血清B12濃度が約350〜400pg/mLを下回ったとき、被験者を境界線B12欠乏と見なすことができる。たとえば、Cravens Dら著のJournal of Family Practice、56(1) 62〜63頁、2007;Ramsay,IDら著、Clin Exp. Dermatol.、15(4)、277〜81頁、1990を参照されたい。このような被験者は本明細書に記述する方法によって治療することができる。
【0054】
適切なプロトンポンプ阻害剤としては、以下に限定されないが、オメプラゾール、ヒドロキシオメプラゾール、エソメプラゾール、テナトプラゾール、ランソプラゾール(lansoprazole)、パントプラゾール、ラベプラゾール、ドントプラゾール、ハベプラゾール、パープラゾール(perprazole)、ランソプラゾール(ransoprazole)、パリプラゾール、レミノプラゾール、チモプラゾール、ジスルプラゾール、およびそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。1つの実施形態において、経口剤形には、これらのプロトンポンプ阻害剤のいずれか(オメプラゾール、エソメプラゾールまたはパントプラゾールなど)を約5〜約60mg含む。1つの好ましい実施形態において、経口剤形はプロトンポンプ阻害剤を10、20または40mg含む。もう1つの実施形態において、これらのプロトンポンプ阻害剤(オメプラゾール、エソメプラゾールまたはパントプラゾールなど)のいずれかの毎日の投与量は、1日当たり約5〜約60mgの範囲である。1つの好ましい実施形態において、プロトンポンプ阻害剤の毎日の投与量は、10、20または40mgである。
【0055】
プロトンポンプ阻害剤またはメトホルミンを含む経口剤形は、NAC(またはその塩)およびビタミンB12とは別の層にプロトンポンプ阻害剤またはメトホルミンを含むことができる。これにより、プロトンポンプ阻害剤またはメトホルミンの層は、ビタミンB12/NACの層とは異なる放出(たとえば、即時または徐放性放出)を提供することが可能になる。
【0056】
経口医薬組成物の投与が疾病または疾患に対する有効な治療法になる被験者または患者は、好ましくはヒトであるが、試験もしくはスクリーニングまたは活性実験における実験動物を含め、任意の動物とすることができる。したがって、当業者には容易に理解できる通り、本発明の方法および組成物は、ヒト、ネコおよびイヌの被験動物などのペット、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタの被験動物を含むがこれらに限定されない家畜動物、野生動物(野生に存在するか、または動物園に存在するかを問わない)、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコなどの研究動物、ニワトリ、シチメンチョウ、鳴禽など、すなわち獣医学用途などの鳥類に限定されないが、以上を含む任意の動物、特に哺乳類(たとえば、ヒト)への投与に特に適している。
【0057】
本発明の具体的な実施例について以下に述べる。ただし、本発明は実施例に記載される具体的な詳細に限定されるものでないことを理解すべきである。本明細書の残りの部分と同じく、実施例のすべての部およびパーセント値は、他に特に断られていない限り、重量に基く。
【0058】
さらに、本発明の様々な態様を記述または主張している本明細書中または以降の段落に列挙した数値の範囲、たとえば、特定の一連の特性、測定単位、条件、物理的状態、パーセント値などはいずれも、列挙された任意の範囲内に含まれる数字または範囲の部分集合を含め、その範囲内にある任意の数字を、文字通り参照またはその他の方法により、明示的に本明細書に組み込まれることを意図している。
【実施例】
【0059】
実施例1 N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸およびSNACの調製
N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸およびSNACの調製方法は、以下のステップを伴う:出発原料はサリチルアミドであり、これを変換して、(1,3−ベンゾオキサジン−2,4−ジオン)カルサラムを形成する。第2のステップは、カルサラムのアルキル化を伴う。最後から2番目のステップは、アルキル鎖の末端にあるエチル保護基を脱離し、複素環を環開して、SNACの遊離酸を形成するための加水分解である。最後のステップでは、1%超の化学量論量の水酸化ナトリウム塩基と反応させることにより、SNACの遊離酸のナトリウム塩を形成する。冷却後、遠心分離にかけて沈殿した生成物を単離し、パッキング前に真空乾燥する。表1に、合成機構の工程内管理を示す。
【表1】

【0060】
実施例2 ビタミンB12錠剤の調製
錠剤の成形用ダイおよびパンチが清潔であること、またそれらの表面にステアリン酸マグネシウム粉末をダスティングしてあることを確かめる。ビタミンB12、SNAC、担体、賦形剤、乳化剤、安定化剤、甘味剤、芳香剤、希釈剤、着色剤、可溶化剤を#35のふるいにかけ、密閉した容器に移す。ビタミンB12を50mg計量し、11gの担体、賦形剤、乳化剤、安定化剤、甘味剤、芳香剤、希釈剤、着色剤および/または可溶化剤と完全に混合する。ビタミンB12錠剤を100錠製造し、各錠剤には、0.5mgのビタミンB12および110mgの担体、賦形剤、乳化剤、安定化剤、甘味剤、芳香剤、希釈剤、着色剤および/または可溶化剤を含む。これらの錠剤を対照として使用する。
【0061】
実施例3 ビタミンB12およびSNAC錠剤の調製
ビタミンB12を50mgのおよびSNACを1g計量し、10gの担体、賦形剤、乳化剤、安定化剤、甘味剤、芳香剤、希釈剤、着色剤および/または可溶化剤と完全に混合する。ビタミンB12錠剤を100錠製造し、各錠剤には、0.5mgのビタミンB12、10mgのSNACおよび100mgの担体、賦形剤、乳化剤、安定化剤、甘味剤、芳香剤、希釈剤、着色剤および/または可溶化剤を含む。この工程を繰り返し、ビタミンB12をそれぞれ1.0mg、0.8mg、0.6mg、0.4mgおよび0.2mg含む錠剤バッチを製造する。
【0062】
これらの錠剤に対しては、表2に示すSNAC成分の放出に対する規格がある。
【表2】

【0063】
実施例4 ラットでの試験用錠剤の調製
成分の異なる4種類の錠剤を以下に従って製造した:
【0064】
(1)ビタミンB12を8.8mg、SNACを35mg計量し、完全に混合して、ラット投与用の錠剤にした;(2)ビタミンB12を8.8mg、SNACを35mgおよびカプムルPG−8(プロピレングリコールモノカプリレート)を5mg計量し、完全に混合し、錠剤にした;(3)ビタミンB12を8.8mg、SNACを35mgおよびポビドンを0.9mg計量し、完全に混合して、錠剤にした。上記の4つの工程の各々を繰り返して、さらに錠剤を製造した。
【0065】
実施例5 SDラットへの投与
雄のSDラット(325〜350g)に対して、それぞれビタミンB12を単独に静脈内投与(0.5mg/kg)、実施例4で製造した錠剤により、ビタミンB12を50mg/kgの投与量で単独投与、または200mg/kgでSNACを混合したものを経口投与した。投与した0、3、10、20、30、60、120、240および360分後に血液試料を採取した。RIAを使って、ビタミンB12について血漿試料を分析した。ビタミンB12/SNACの併用投与に続いて得られたモデル非依存の薬物動態(PK)指標を、ビタミンB12の単独投与後に得られたモデル非依存の薬物動態(PK)指標と比較した。表3にその結果を示す。
【表3】

【0066】
実施例6 ヒト被験者での試験用の錠剤の調製
錠剤を、シアノコバラミン、SNAC、コリドン90F、アンハイドラス・エムコムプレス(Anhydrous Emcompress)USP/EP、およびステアリン酸マグネシウム、NF/BP/EP/JPから作製した。各錠剤は表4に示されているように、以下の成分を含む。
【表4】

【0067】
実施例7 オープンラベル無作為化試験
この試験では、本発明の経口ビタミンB12製剤(1mg)および筋内(IM)シアノコバラミン(1mg)の有効性および安全性を、軽度のビタミンB12欠乏症を患う被験者で評価した。
【0068】
試験の設計:
これはB12が欠乏した被験者において実施した、猶予期間30日とするオープンラベル無作為化60日間試験だった。被験者は、試験の開始時に統計学者によって作成された無作為化スケジュールに従って、治療に割り当てられた。無作為化の機構は、バランスの取れた数の男性および女性がそれぞれの治療群に割り当てられるように階層化された。被験者は無作為抽出され、1000μgの経口錠剤を90日間毎日1回投与されるか、または1、3、7、10、14、21、30、60および90日目に1000μgのシアノコバラミンを筋肉内注射で投与された。
【0069】
絶食状態で、朝食の少なくとも1時間前に50mLの水と一緒に、錠剤1錠を自己投与した。筋肉内注射による治験薬投与は、試験の1、3、7、10、14、21、30、60および90日目に、絶食状態で、朝食の少なくとも1時間前に、研究病院で治験スタッフにより実施された。錠剤を受けるように割り当てられた被験者に対しては、治療のコンプライアンスは被験者の日誌記入に基いた。薬力学的評価(有効性変数)のための血液試料を、投与前の基準時点(1日目)ならびに15、31、61および91日目に被験者全員から採取した。試料採取は、最後に投与量を投与したおよそ24時間後、その日の投与量を投与する前に、絶食状態で実施した。
【0070】
原料:
注射用の殺菌済みシアノコバラミン、USP1000μg/mLをそれぞれ1mLのバイアルとして使用した。
【0071】
表5に被験者に投与した錠剤の組成を示す。
【表5】

【0072】
被験者:
成人男女の被験者合計50名が無作為抽出され、治験薬を受けた。錠剤を受けるように無作為抽出された24名の被験者のうち22名(91.7%)が、計画通りに試験を完了した。26名の被験者がB12の筋肉内注射による投与を受けるように無作為抽出され、被験者のうち、26名(100%)が計画通りに試験を完了した。これらの被験者は軽度のビタミンB12欠乏症を患っていた。
【0073】
試験対象患者基準により、有資格被験者は、血清コバラミン濃度が350pg/mL未満と定義されているビタミンB12欠乏症であることが臨床検査室データで示された男女だった。試験に参加するには、被験者は年齢が60歳以上であること;または18歳以上で、以下に限定されないが、消化管手術(たとえば、胃切除術、胃バイパス)、回腸切除、胃の萎縮症、セリアック病、クローン病、またはプロトンポンプ阻害剤の長期の使用(>3ヶ月)、または食事制限(菜食主義または完全菜食主義者)をしているなどの胃腸異常があることが要求された。追加の試験対象患者基準は全般的に健康状態が良好であることであり、この判断の基準は病歴、健康診断、臨床検査、バイタルサイン、ECGおよびコッククロフトとゴールトの式を用いて計算されるクレアチンクリアランスの推定値で求められる正常な腎臓の機能に重要な兆候がないことであったが、これは腎臓機能が損なわれると、ホモシステイン(HC)、メチルマロン酸(MMA)およびホロトランスコバラミンの値が上昇する可能性があるためである(Herrmannら著のClin Chem Lab Med 2003;41:1478〜88頁)。除外基準は、ビタミンB12欠乏症および/または症状を治療するために医療提供者から現在治療を受けている;制酸薬(たとえば、マーロックス(登録商標))を常用している;経口医薬を摂取できない;スクリーニング時において臨床的に重要な検査室値が見つかった;ビタミンB12に対して過敏性またはアレルギー反応がある;最初の試験投与から30日以内に新しい化学物質を伴う臨床研究に参加した;および葉酸値が臨床検査室により提供される基準範囲に満たないことが挙げられる。
【0074】
ビタミンB12欠乏症の診断および治療における交絡因子には、葉酸欠乏症、腎不全およびビタミンB欠乏症が挙げられる。葉酸欠乏症は、総HCの上昇など、B12欠乏症と同じ症状の多くを引き起こす可能性がある。腎不全は血中MMA濃度を上昇させる可能性があり、ビタミンB欠乏症または甲状腺機能低下は、総HCの上昇につながる可能性がある。ビタミンB12欠乏症のこれらの臨床パラメータは、他の原因に起因するとき、B12治療には反応しない。上記の欠乏症を患っている被験者は、本試験から除外された。
【0075】
被験者は試験の1日目に配布された日誌に、併用薬(ビタミン、ハーブ系サプリメントおよび制酸薬を含む)および有害事象を記録した。経口治療を受けるように無作為抽出された被験者は、服薬情報(日付および時刻)ならびに服薬ごとの前後に摂取した食事の時刻も記録した。
【0076】
治療:
1000μgの経口錠剤を50mLの水と一緒に錠剤1錠として、絶食状態で摂取した。一晩絶食した後、朝食の1時間前に、90日間に渡り毎日、1回分を自己投与した。服薬の前後少なくとも1時間は、液体を摂取しなかった。
【0077】
1000μgのシアノコバラミンを1000μg/mLの薬物を含むバイアルから1mLとして筋肉内投与した。治験薬の投与は、治験スタッフにより、研究病院で、試験の1、3、7、10、14、21、30、60および90日目の朝食の少なくとも1時間前に、絶食状態で朝に実施された。
【0078】
血液試料の処理:
血清コバラミン(B12)濃度は、校正範囲を100〜2000pg/mLとして、有効な微粒子酵素アッセイ(MEIA)検知法により測定した。試料希釈手順は、最大4倍の希釈まで有効だった。血清MMA濃度は、校正範囲を5〜200ng/mLとして、有効なLC/MS/MS法で測定した。血漿HC濃度は、校正範囲を2.5〜50μmol/Lとして、有効な蛍光偏光免疫測定(FIPA)検知法により測定した;そして、血漿ホトロランスコバラミン(活性B12)濃度は、校正範囲を8〜128pmol/Lとして、有効なMEIA法を用いて測定した。試料希釈手順は最高32倍の希釈まで有効だった。
【0079】
安全性評価:
安全性評価は、有害事象(AE)、血液学、化学および検尿検査結果、併用薬、バイタルサイン評価、ECGならびに健康診断所見の監視から成る。
【0080】
スクリーニング時および試験から放免される前の試験最終来院時に、安静時の12誘導のECGを記録した。記録するECGパラメータには、心拍数(bpm)、PR間隔(ミリ秒)、QRS期間(ミリ秒)、QT間隔(ミリ秒)、QTc間隔(ミリ秒、バゼットの補正)が含まれた。健康診断はスクリーニング時および試験から外される前の試験最終来院時に実施された。
【0081】
有効性評価:
1次有効性変数は、61日目の血清コバラミン濃度だった。1次有効性結果では、61日目にコバラミン濃度が正常化(350pg/mL)していた各治療群における被験者の割合を比較した。2次有効性変数は91日目の血清コバラミン濃度、61日目および91日目の血清MMA濃度、ならびに61日目および91日目の血漿合計HC濃度だった。
【0082】
2次有効性結果は次の通りだった:91日目にコバラミン濃度が正常化(350pg/mL)していた各治療群における被験者の割合の比較;61日目および91日目の各治療群の被験者の間での血清コバラミン濃度のベースラインからの平均パーセント変化の比較;61日目および91日目の各治療群の被験者の間での血清MMA濃度のベースラインからの平均パーセント変化の比較;61日目および91日目の各治療群の被験者の間での合計血漿HC濃度のベースラインからの平均パーセント変化の比較;61日目および91日目の各治療群の被験者の間での平均初回血清コバラミンの正常化(350pg/mL)の比較。予備的な有効性変数および結果は次の通りだった:61日目および91日目にホロトランスコバラミン濃度が正常化(40pmol/L)していた各治療群における被験者の割合の比較により測定される、61日目および91日目の血漿ホロゴランスコバラミン濃度;61日目および91日目のコバラミン濃度とホロトランスコバラミン濃度との関係。
【0083】
統計分析:
プログラミングおよび統計分析をSAS(バージョン9.1、米国ノースカロライナ州Cary、SAS Institute)を用いて実施した。
【0084】
3つの解析母集団が使われた。包括解析(ITT)母集団には、試験生成物を受け取るかどうかに関わらず、治験に無作為に割り当てられた被験者全員が含まれた。ITT母集団を使う解析は、被験者を無作為抽出して群に割り当てた。治験実施計画書に基づいた解析では、割り当てられた被験治療の少なくとも90%を受け、非欠測ベースラインと61日目血清コバラミン評価を備え、試験対象患者基準をすべて満たし、除外基準にはまったく該当しない、無作為抽出されたすべての被験者が含まれた。主たる解析はITT母集団について実施された。
【0085】
安全性母集団には、試験生成物の投与を少なくとも1回受け、それ以降に安全性評価を少なくとも1回受けた無作為抽出された被験者全員が含まれた。被験者は実際に受けた治療に基いてこの群に含まれる。安全性解析はすべて安全性母集団に対して実施された。
【0086】
1次有効性成果の解析では、61日目の来院時にコバラミン濃度が正常化(すなわちコバラミン350pg/mL)していた各治療群の被験者の割合を比較した。正常化した被験者の数および度数を計算した。(錠剤と筋肉内注射によるB12の)割合の差異の90%信頼区間を計算し、正確な方法を使って提示した。2つの割合(錠剤と筋肉内注射によるB12)の間の差異に対する両側90%正確な信頼区間の下限が−0.15を超えていた場合には、非劣性の結論が出された。
【0087】
すべての2次結果の解析は利用可能なデータのみを用いた(すなわち、治験薬物の初回投与後に発生した欠測データに対する補完は行わない)。2次仮説の試験すべてに対して、p値<0.05は、統計的に有意な結果を意味した。多重度のための調節は行わなかった。ベースラインデータが欠測している被験者に対して、ベースラインからの変化およびベースラインからのパーセント変化を計算するためのベースラインとして、一番新しいスクリーニング値が使われた。
【0088】
ベースラインからの変化(CFB)は(X−B)として定義される。ベースラインからのパーセント変化(PCFB)は、PCFB=100(X−B)/Bとして定義される。但し、Bはベースライン(投与前の1日目)測定値、Xは必要に応じて61日目または91日目の測定値である。
【0089】
91日目にコバラミン濃度の正常化(すなわち、コバラミン350pg/mL)を達成した被験者の割合を、1次解析(すなわち、61日目)について上述したのと同じ方法を使って解析した。61日目および91日目のコバラミン濃度に対するPCFBを、治療群およびベースラインコバラミン測定値を母数効果として、ANCOVAを使って解析した。各結果および各時点ごとに、群間の平均の差異を検定した。61日目および91日目のMMA濃度およびHC濃度のPCFBを、治療群およびベースラインMMAまたはHC測定値を母数効果として、ANCOVAを使って解析した。各結果および各時点ごとに、群間の平均の差異を検定した。
【0090】
1日目から61日目までおよび1日目から91日目までのコバラミンの初回正常化(350pg/mL)までの時間をログランク検定を使って解析した。カプラン−マイヤー曲線、ハザード比およびその95%信頼区間を計算した。ゼロ時間は試験1日目とした。
【0091】
61日目および91日目にホロトランスコバラミン濃度の正常化(40pmol/L)を達成した被験者の割合を1次解析について記述したのと同じ方法を使って解析した。61日目および91日目のコバラミン濃度とホロトランスコバラミン濃度の関係ならびに61日目および91日目のPCFBを調査した。関係をグラフ解析した。
【0092】
結果:
患者の人口統計学データおよびベースライン
合計50名の健康な被験者(男性11名(22.0%)、女性39名(78.0%))が治験薬を受けるために無作為抽出された。平均(SD)年齢は53.2(15.33)歳で、人種は白人40名(80.0%)および黒人10名(20.0%)だった。スクリーニング時の平均(SD)血清コバラミン濃度は経口でビタミンB12を受けるように無作為抽出された被験者間では、B12の筋肉内注射を受けるように無作為抽出された被験者(262.0(54.61)pg/mL)と比較して、類似していた(285.5(54.27)pg/mL)。
【0093】
有効性
61日目(1次有効性結果)および91日目(2次有効性結果)にコバラミン濃度が正常化(350pg/mL)していた各治療群における被験者の割合を表6(ITT母集団)に表示する。結果はどちらの母集団についても比較可能である。
【表6】

【0094】
各治療群の被験者全員が15日目までに血清コバラミン濃度の正常化(すなわち、コバラミン濃度350pg/mL)を達成した。
【0095】
61日目(p=0.1326)と91日目(p=0.4273)の血清コバラミン濃度のベースラインからの平均パーセント変化(PCFB)では、治療群間での統計的差異は存在しなかった。61日目において、コバラミン濃度の平均(SD)パーセント変化は、経口B12治療群および筋肉内注射B12治療群の被験者で、それぞれ452.5(353.19)および714.6(732.11)だった。91日目に、コバラミン濃度の平均(SD)パーセント変化は、経口B12治療群および筋肉内注射B12治療群の被験者で、それぞれ526.9(350.62)および608.9(446.68)だった。結果はITT母集団の場合と治験実施計画書に合致した母集団の場合で同じだった。図1に、ITT母集団の場合の試験日ごとのコバラミン濃度の平均PCFBを示す。図1から分かるように、経口B12群は、驚くべきことに、初回時点(15日目)で正常化したコバラミン血清濃度を示した。これらの被験者は、91日目も含め、91日目に至るまで、試験期間中、正常化した平均血清ビタミンB12濃度を保ち続けた。
【0096】
経口B12群の被験者は、驚くべきことに、初回時点(15日目)で正常化した活性ビタミンB12濃度を示した。これらの被験者は、91日目も含め、91日目に至るまで、試験期間中、正常化した活性ビタミンB12濃度を保ち続けた。
【0097】
61日目(p=0.6179)において、血清MMA濃度の平均PCFBでは、治療群間での統計的差異は存在しなかった。61日目に、MMA濃度の平均(SD)パーセント変化は、経口B12治療群および筋肉内注射B12治療群の被験者でそれぞれ−30.55(26.655)および−28.17(24.754)だった。
【0098】
91日目に、経口治療群は、筋肉内注射B12治療群よりも優れた血清MMA濃度の平均PCFBを示した(p=0.0334)。91日目に、MMA濃度における平均(SD)パーセント変化は、経口B12治療群および筋肉内注射B12治療群の被験者でそれぞれ−39.29(24.939)および−26.58(25.643)だった。図2に、ITT母集団についての試験日ごとのMMA濃度の平均PCFBを示す。経口B12治療群の被験者は、驚くべきことに、初回時点(15日目)で正常化したメチルマロン酸濃度を示した。これらの被験者は、91日目も含め、91日目に至るまで、試験期間中、正常化したMMA濃度を保ち続けた。
【0099】
61日目(p=0.6368)および91日目(p=0.5140)において、血漿HC濃度の平均PCFBでは、治療群間での統計的差異は存在しなかった。61日目に、HC濃度の平均(SD)パーセント変化は、経口B12治療群および筋肉内注射B12治療群の被験者で、それぞれ−21.94(19.034)および−17.49(24.099)だった。91日目に、HC濃度の平均(SD)パーセント変化は、経口B12治療群および筋肉内注射B12治療群の被験者で、それぞれ−14.36(28.375)および−8.805(28.5406)だった。図3に、ITT母集団について試験日ごとのHC濃度の平均PCFBを示す。経口B12治療群の被験者は、驚くべきことに、初回時点(15日目)で正常化したホモシステイン酸濃度を示した。これらの被験者は、91日目も含め、91日目に至るまで、試験期間中、正常化したホモシステイン酸濃度を保ち続けた。
【0100】
61日目および91日目に血漿ホロトランスコバラミン濃度が正常化(40pmol/L)していた各治療群の被験者の割合(予備結果)を表7(ITT母集団)に提示する。
【表7】

【0101】
どちらの治療群の被験者も、どちらの母集団の被験者も全員(100%)が61日目および91日目に血漿ホロトランスコバラミン濃度が40pmol/Lだった。
【0102】
ITT母集団内の各治療群の被験者について、61日目および91日目のコバラミン濃度と比較したホロトランスコバラミン濃度の散布図を図4および図5に示す。一般に、各治療群の被験者では、コバラミン濃度が増加するにつれて、ホロトランスコバラミン濃度が増加することが61日目および91日目で観察された。
【0103】
表5および表6に、それぞれ筋肉内注射および経口治療後のコバラミン、ホロトランスコバラミン、MMAおよびHCの個別データを示す。図6は両方の治療後のベースライン(1日目)、15日目、31日目、61日目および91日目における平均(SD)血清コバラミン濃度の棒グラフである。臨床検査室によってスクリーニングを受けた登録患者全員が、コバラミン値<350pg/mLだった。検証済みのコバラミン方法を使用したとき、Eligen(登録商標)B12の被験者13名および筋肉内注射群の被験者14名は、350pg/mLに対して>または=だった。これらの患者のほとんどは、350pg/mLの10%以内に収まっていた。これらの被験者全員が、61日目にコバラミンおよびホロトランスコバラミンの正常化を示し、91日目にも正常化を維持していた。バイオマーカーであるMMAよびHCは、スクリーニング時に濃度が上昇していた患者で低下していた(筋肉内注射群では、被験者102、103、202、203および239、経口群では被験者101、228、232および233)。低下は、バイオマーカー濃度が正常範囲にある患者のほとんどで観察された。
【表8】

【表9】

【0104】
安全性プロファイル
合計50名の健康な成人男女被験者が本試験中、治験薬を少なくとも1回受けた。全体で、28名(56.0%)の被験者が試験中に少なくとも1件のAEを報告した。報告されたすべてのAEは、治療により発現したAE(TEAE)とみなされた。経口B12および筋肉内注射B12の投与後に、それぞれ13名(54.2%)および15名(57.7%)の被験者が、少なくとも1件のAEを報告した。3名(11.5%)の被験者が重篤な有害事象を報告したが、その3名は全員が筋肉内注射B12を受けていた。AEが原因で被験治療を中止した被験者はいなかった。
【0105】
表10に、本試験の間に報告された有害事象の概要を示す。
【表10】

【0106】
AEが原因で治療を中止した被験者はいなかった。3名の被験者がこの試験中にSAEを経験したが、その3名は全員が筋肉内注射B12を受けるように無作為で割り当てられていた被験者だった。
【0107】
議論:
本試験は、経口および筋肉内注射によるB12治療により、軽度のB12欠乏症の被験者のこの母集団の構成員全員において、15日以内にコバラミン正常化(>350pg/mL)がもたらされたことを示した。さらに、この効果は試験期間の3ヶ月に渡り維持された。試験の母集団には、加齢によるB12欠乏症を患っていると思われていた被験者およびB12吸収に干渉することが知られている潜在的な胃腸の状態があった被験者が含まれていた。被験者全員においてコバラミンが正常化したが、2つの治療法の間には明白な差異が存在した。本試験で使用した標準的な筋肉内投与法は、最初の1ヶ月間に注射を複数回行い、経口B12に比べて、コバラミンの値は高くなった。筋肉内投与の回数を毎月1回に変えた後、2ヵ月目から3ヶ月目までに平均コバラミン値は低下の傾向を示した。対照的に、毎日1回の経口B12治療では、試験の期間全体を通じて、コバラミンの値の改善が見られ、91日目までに、2つの治療群での平均値は同様になった(筋肉内投与および経口B12治療の場合、それぞれ2057±935pg/mLおよび1914±946pg/mL)。本試験でこれまで治験の対象とした患者全員が、SNAC/ビタミンB12に好ましい反応を示した。
【0108】
本発明の原理、好ましい実施形態および作業方法については、明細書で上述した。しかしながら、これらは限定的というよりはむしろ実施例と見なされるべきものであるため、本明細書により保護を受けることを意図した本発明は、開示した特定の形式に限定されるとみなされるべきではない。本発明の精神から逸脱しない限り、当業者により変形および変更を加えてよい。
【0109】
本明細書で引用したすべての特許、特許出願および刊行物の内容は、許可される範囲で、参照により本明細書にそれらの全体が組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB12欠乏症を患い、平均ビタミンB12濃度が約350pg/mL未満である患者のビタミンB12濃度を急速に正常化する方法であって、(i)N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸またはその薬学的に許容される塩、(ii)ビタミンB12、および任意で(iii)葉酸を含む1つまたは複数の経口剤形を少なくとも15日間毎日投与することを含み、N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸またはその薬学的に許容される塩の1日の合計量が約50〜約250mgであり、ビタミンB12の1日の合計量が約0.5〜約2mgであることを特徴とし、患者のビタミンB12濃度が15日以内に正常化されることを特徴とする方法。
【請求項2】
患者の平均ビタミンB12濃度が約200pg/mL未満であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウム100mgおよびシアノコバラミン1mgを含む1つの剤形を毎日投与することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
活性ビタミンB12の正常化を必要とする患者において、活性ビタミンB12を正常化するための方法であって、該患者の活性ビタミンB12濃度が約100pmol/L未満であることを特徴とし、(i)N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸またはその薬学的に許容される塩、(ii)ビタミンB12、ならびに任意で(iii)葉酸を含む1つまたは複数の経口剤形を毎日投与することを含み、N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸またはその薬学的に許容される塩の1日の合計量が約50〜約250mgであり、ビタミンB12の1日の合計量が約0.5〜約2mgであり、患者の活性ビタミンB12濃度が15日以内に正常化されることを特徴とする方法。
【請求項5】
患者の活性ビタミンB12濃度が約50pmol/L未満であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウム100mgおよびシアノコバラミン1mgを含む1つの剤形を毎日投与することを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
メチルマロン酸(MMA)濃度が最低150nmol/Lである高MMA濃度の患者において、MMA濃度を低下させる方法であって、(i)N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸またはその薬学的に許容される塩、(ii)ビタミンB12、および任意で(iii)葉酸を含む1つまたは複数の経口剤形を投与することを含み、N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸またはその薬学的に許容される塩の1日の合計量が約50〜約250mgであり、ビタミンB12の1日の合計量が約0.5〜約2mgであることを特徴とし、患者のMMA濃度が15日以内に正常化されることを特徴とする方法。
【請求項8】
患者のMMA濃度が少なくとも175nmol/Lであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
患者のビタミンB12濃度が約350pg/mL未満であることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウム100mgおよびシアノコバラミン1mgを含む1つの剤形を毎日投与することを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ホモシステイン濃度が少なくとも13nmol/Lである高ホモシステイン濃度の患者において、ホモシステイン濃度を低下させる方法であって、(i)N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸またはその薬学的に許容される塩、(ii)ビタミンB12、および任意で(iii)葉酸を含む1つまたは複数の経口剤形を投与することを含み、N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸またはその薬学的に許容される塩の1日の合計量が約50〜約250mgであり、ビタミンB12の1日の合計量が約0.5〜約2mgであることを特徴とし、患者のホモシステイン濃度が15日以内に正常化されることを特徴とする方法。
【請求項12】
患者のホモシステイン濃度が少なくとも14nmol/Lであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
患者のビタミンB12濃度が約350pg/mL未満であることを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウム100mgおよびシアノコバラミン1mgを含む1つの剤形を毎日投与することを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ビタミンB12欠乏症を患っている患者の経口治療における被験者間変動を低減するための方法であり、患者ごとに、(i)N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸またはその薬学的に許容される塩、(ii)ビタミンB12、および任意で(iii)葉酸を含む1つまたは複数の経口剤形を少なくとも15日間毎日投与することを含み、N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸またはその薬学的に許容される塩の1日の合計量が約50〜約250mgであり、ビタミンB12の1日の合計量が約0.5〜約2mgであることを特徴とする方法。
【請求項16】
以下を含む経口剤形:
(a)ビタミンB12
(b)N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸またはその薬学的に許容される塩;および
(c)葉酸。
【請求項17】
約50〜約250mgのN−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸またはその薬学的に許容される塩、および約0.5〜約2mgのビタミンB12を含むことを特徴とする請求項16に記載の経口剤形。
【請求項18】
以下を含む経口剤形:
(a)プロトンポンプ阻害剤;
(b)ビタミンB12
(c)N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウム;および
(d)葉酸。
【請求項19】
約50〜約250mgのN−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸またはその薬学的に許容される塩、および約0.5〜約2mgのビタミンB12を含むことを特徴とする請求項18に記載の経口剤形。
【請求項20】
以下を含む経口剤形:
(a)メトホルミン;
(b)ビタミンB12
(c)N−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウム;および
(d)葉酸。
【請求項21】
約50〜約250mgのN−[8−(2−ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸またはその薬学的に許容される塩、および約0.5〜約2mgのビタミンB12を含むことを特徴とする請求項20に記載の経口剤形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−520511(P2013−520511A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555099(P2012−555099)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2011/025864
【国際公開番号】WO2011/106378
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(500139958)エミスフェアー・テクノロジーズ・インク (28)
【Fターム(参考)】