説明

経皮吸収製剤

【課題】ドネペジルの皮膚吸収性に優れると共に、ドネペジルの結晶析出が抑制された貼付剤を提供する。
【解決手段】粘着層中にドネペジル、脂肪酸アミドおよびホウ酸を含有する貼付剤。本発明の貼付剤は、ドネペジルの皮膚吸収性に優れると共に、その薬効に持続性を持たせることができるため、認知症の治療において安定した治療効果を提供する貼付剤となる。また本発明の貼付剤は、溶解性に乏しいドネペジルを含有するにも関わらず、長期保存後においてもドネペジルの結晶が増加することなくドネペジルの経時的な含量安定性に優れるため、医薬品として安全に使用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽度から中度のアルツハイマー型認知症の治療に有用なアセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジル(1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル]メチルピペリジン)を含有する経皮吸収型の貼付剤に関する。更に詳しくは、ドネペジルの経時的な結晶析出が抑制され、長期保存中におけるドネペジルの含量安定性が良好な貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー型認知症の記憶、知能障害は、脳内の神経細胞から出るアセチルコリンが不足して起きると考えられている。アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬は、脳内のアセチルコリンを分解する酵素の働きを抑制してその濃度を高めることができ、軽度から中度のアルツハイマー型認知症に伴う症状の進行を遅らせるのに有用であるとされている。現在、臨床の場で使用されているアセチルコリンエステラーゼ阻害薬としては、塩酸ドネペジルを有効成分とする錠剤がある。
【0003】
このアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の対象疾患である認知症の患者は高齢者が多く、認知症の他に消化管障害を有していたり嚥下能力が低下していたり等の理由から薬物の経口的な服用が困難である患者も多い。そのため、錠剤等の経口投与剤より利用しやすい剤型として、ドネペジルを含む経皮適用製剤、または坐剤等の外用剤が提案されている(特許文献1および2)。
【0004】
これらは、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の経皮投与に関する試みであり、脂肪酸エステル類や脂肪酸アミド類を吸収促進剤として製剤に配合することにより、ドネペジルの皮膚への吸収性を高める試みが同時になされている。
【0005】
しかしながら、ドネペジルは外用剤に一般的に用いられる基剤への溶解性が乏しいという問題を有している。また、ドネペジルの経皮吸収性を改善するために溶解剤または吸収促進剤を外用剤に添加することがあるが、長期保存中にドネペジルの基剤中における溶解状態が不安定となって結晶が析出して、ドネペジルの皮膚吸収速度や皮膚に対する製剤の付着性が低下し、その薬効が持続しなくなるという問題点も指摘されている。この様に、ドネペジルの経皮吸収性を充分に高めると同時に長期保存中におけるドネペジルの結晶析出が抑制された優れた薬効を有する貼付剤は、未だ完成されていないのが実情である。
【特許文献1】特開平11−315016号公報
【特許文献2】WO2003/032960
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ドネペジルの皮膚吸収性に優れると共に、ドネペジルの結晶析出が抑制された貼付剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、ドネペジルを含有する貼付剤の開発において、吸収促進剤として製剤に配合される脂肪酸アミドが、ドネペジルの製剤中での分解を抑制する一方で、ドネペジルの結晶析出を促進するものであることを新たに見出した。さらに本発明者らは、新たに見出された前記の問題、すなわち脂肪酸アミドによるドネペジルの結晶析出を、粘着層中にさらにホウ酸を含有させることで解決できることを見出し、下記の各発明を完成した。
【0008】
(1)支持体の片面に粘着層を有する粘着層中にドネペジル、脂肪酸アミドおよびホウ酸を含有する貼付剤。
【0009】
(2)脂肪酸アミドが、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、オレイン酸モノイソプロパノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸モノイソプロパノールアミドよりなる群から選択される少なくとも1種以上である、(1)に記載の貼付剤。
【0010】
(3)粘着層がアクリル系粘着剤および/またはゴム系粘着剤を含有する、(1)または(2)に記載の貼付剤。
【0011】
(4)アクリル系粘着剤がモノマー単位中にヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルを含む共重合体である、(3)に記載の貼付剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明の貼付剤は、ドネペジルの皮膚吸収性に優れると共に、その薬効に持続性を持たせることができるため、認知症の治療において安定した治療効果を提供する貼付剤となる。また本発明の貼付剤は、溶解性に乏しいドネペジルを含有するにも関わらず、長期保存後においてもドネペジルの結晶が増加することなくドネペジルの経時的な含量安定性に優れるため、医薬品として安全に使用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の貼付剤は、支持体層、粘着層および粘着層の表面を保護する剥離ライナー層が順に積層されている貼付剤である。前記粘着層は、少なくともドネペジル、脂肪酸アミド、ホウ酸および粘着剤を含有する。
【0014】
本発明の貼付剤の粘着層に含まれるドネペジルは、下記式で表される構造を有するアセチルコリンエステラーゼ阻害薬である。
【化1】

【0015】
本発明では、ドネペジルは遊離塩基(フリー)の形態あるいは薬学的に許容される塩の形態のいずれも使用することができるが、遊離のドネペジルを利用することが好ましい。なお本願に言うドネペジルは、遊離の形態並びに塩の形態のいずれの形態にあるドネペジルも含むものとする。前記許容される塩としては、塩酸塩、フマル酸塩、メシル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、酢酸塩などが挙げられる。
【0016】
本発明の貼付剤の粘着層に配合されるドネペジルの量は、薬理効果が得られれば特に制限はないが、粘着層全体を100重量%として5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%であればよい。また、ドネペジルは粘着層中で溶解状態であることが好ましいが、皮膚への付着性や薬効が保たれる限り、一部分散状態で存在していてもよい。
【0017】
本発明で用いる脂肪酸アミドとしては、含窒素型の非イオン性界面活性剤であれば特に制限されないが、これを例示すれば、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、オレイン酸モノイソプロパノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸モノイソプロパノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド等を挙げることができる。
【0018】
後述する様に、本発明の貼付剤の粘着層においてアクリル系粘着剤を使用する場合には、この粘着剤との相溶性に優れるラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、オレイン酸モノイソプロパノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、及び/又はステアリン酸モノイソプロパノールアミドを用いることが好ましい。
【0019】
また、本発明の貼付剤の粘着層に配合される脂肪酸アミドの量は特に制限されないが、粘着層を構成する成分全量に対し0.1〜 20重量%、好ましくは0.2〜5重量%であればよい。
【0020】
本発明の貼付剤の粘着層中に配合されるホウ酸の量は特に制限されないが、0.01〜5重量%、好ましくは、0.1〜1重量%とすればよい。
【0021】
上記の条件下で粘着層にドネペジル、脂肪酸アミドおよびホウ酸を配合することにより、ドネペジルの分解ならびに結晶析出を抑制し、さらに粘着剤層中におけるドネペジルの含量の経時安定性を向上させることができる。またこの様にドネペジルの結晶析出を抑制することによって、ドネペジルの貼付剤からの放出性および皮膚への付着性を向上させることができる。
【0022】
本発明の貼付剤の粘着層を構成する粘着剤としては、皮膚に対する刺激性が少なく、充分な付着性を有するものであれば、いずれも利用することができるが、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤又はシリコーン系粘着剤の一種以上を使用することが好ましい。特にアクリル系粘着剤は、共重合体のモノマー構成成分を組合せることにより粘着層の透湿性および薬物の溶解性を調整し得るため、好適に用いられる。
【0023】
アクリル系粘着剤の具体例としては、(アクリル酸−アクリル酸2−エチルヘキシル)共重合体、(アクリル酸−アクリル酸ブチル)共重合体、(アクリル酸−アクリル酸オクチル)共重合体、(アクリル酸−アクリル酸2−エチルヘキシル−酢酸ビニル)共重合体、(アクリル酸−アクリル酸2−エチルヘキシル−アクリル酸ヒドロキシエチル)共重合体、(アクリル酸−アクリル酸ヒドロキシエチル−ビニルピロリドン)共重合体、(アクリル酸−アクリル酸2−エチルヘキシル−アクリル酸ヒドロキシエチル−ビニルピロリドン)共重合体等が挙げられる。また市販製品であるDURO-TAK 87-2194、87-2510、87-2516(ナショナルスターチアンドケミカル社製)等も利用可能である。特に、モノマー構成単位中の側鎖にヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルを含む共重合体が好ましい。また、必要に応じて架橋剤を加えてもよい。架橋剤としては、アミノ化合物、フェノール化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、有機過酸化物、金属アルコラート、金属キレート等が挙げられる。
【0024】
ゴム系粘着剤の具体例としては、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ブチルゴム、天然ゴム等を挙げることができる。
【0025】
またシリコーン系粘着剤の具体例としては、ポリオルガノシロキサン等のシリコーンゴムを挙げることができる。
【0026】
これらの粘着剤の配合量は、粘着層を構成する成分全体を100重量%として、35重量%〜90重量%の範囲内とすることが好ましく、45重量%〜85重量%の範囲内とすることがより好ましい。
【0027】
本発明の貼付剤の粘着層中には、ドネペジル、脂肪酸アミドおよびホウ酸の他、前記の効果を損なわない範囲内において、必要に応じ吸収促進剤、粘着付与樹脂、可塑剤、酸化防止剤等を適宜配合できる。
【0028】
吸収促進剤としては、従来皮膚での吸収促進作用が認められている化合物のいずれでも良く、例えば炭素数6〜20の脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、アミドまたはエーテル類、芳香族系有機酸、芳香族系アルコール、芳香族系有機酸エステルまたはエーテル(以上は飽和、不飽和のいずれでもよく、また環状、直鎖状分枝状のいずれでもよい)、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、ピロチオデカン、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類(Span系)、ポリソルベート系(Tween系)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系(HCO系) 、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ショ糖脂肪酸エステル類、植物油等が挙げられる。
【0029】
具体的にはカプリル酸、カプリン酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、クレゾール、乳酸セチル、乳酸ラウリル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ゲラニオール、チモール、オイゲノール、テルピネオール、L−メントール、ボルネオロール、d−リモネン、イソオイゲノール、イソボルネオール、ネロール、dl−カンフル、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ショ糖モノラウレート、ポリソルベート20、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HCO−60、ピロチオデカン、オリーブ油が好ましく、特にミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸が好ましい。
【0030】
粘着付与樹脂としては、軟化点が60℃〜150℃のものが好ましく、例えばロジンエステル、水添ロジンエステル、マレイン酸変性ロジンエステル、ポリテルペン樹脂、石油樹脂を用いることができ、具体的にはエステルガムA、AA−G、H、またはHP(荒川化学株式会社製)、ハリエスターL、S、またはP(播磨化成株式会社製)、パインクリスタルKE−100、またはKE−311(荒川化学株式会社製)、ハーコリンD(理化ハーキュレス株式会社製)、フォーラル85、または105(理化ハーキュレス株式会社製)、ステベライトエステル7、または10(理化ハーキュレス株式会社製)、ペンタリン4820、または4740(理化ハーキュレス株式会社製)、アルコンP−85、またはP−100(荒川化学株式会社製)、エスコレッツ5300(エクソン化学株式会社製)、クリアロンK、M、またはP(ヤスハラケミカル株式会社製)等が挙げられ、これらの1種または2種以上を粘着性基剤に配合することができる。
【0031】
可塑剤としては、40℃における溶液粘度が10〜100センチストークスのものが好ましく、例えばアーモンド油、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ラッカセイ油、オレフィン酸、流動パラフィンが挙げられ、これらを1種または2種以上粘着性基剤に配合することができる。
【0032】
酸化防止剤としては、亜硝酸ナトリウム、アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アルファチオグリセリン、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、塩酸システイン、乾燥亜硫酸ナトリウム、酢酸トコフェロール、トコフェロール、d−δ−トコフェロール、ジクロルイソシアヌール酸カリウム、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、チオグリコール酸ナトリウム、チオリンゴ酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、1,3−ブチレングリコール、ベンゾトリアゾール、ペンタエリスリチル-テトラキス、没食子酸プロピル、2−メルカプトベンズイミダゾールが挙げられ、特にジブチルヒドロキシトルエン(BHT)が好ましい。
【0033】
本発明の貼付剤の支持体層には、伸縮性または非伸縮性の支持体を用いることができる。例えば布、不織布、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アルミニウムシート、エチレン−酢酸ビニル共重合体等、又はそれらの複合素材から選択されるが、入浴等を考慮して撥水素材であるか、撥水素材で1面がコーティングされていることが望ましい。また、本発明の貼付剤の支持体の厚みは10μm 〜80μmが好ましい。10μm未満であると貼付剤を皮膚に適用するのが困難な場合があり、80μmを越えると柔軟性が損なわれ、付着性の低下や皮膚一次刺激の要因となり易いためである。
【0034】
さらに本発明の特徴について、実施例により詳細に説明する。これらは本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。なお、実施例において、「%」は全て重量%を意味するものとする。
【実施例1】
【0035】
(アクリル酸2−エチルヘキシル−酢酸ビニル−
アクリル酸ヒドロキシエチル)共重合体 71.0%
ラウリン酸ジエタノールアミド 3.0%
ホウ酸 0.5%
ジブチルヒドロキシトルエン 0.5%
ドネペジル 25.0%
全量 100.0%
ドネペジル、ラウリン酸ジエタノールアミド、ホウ酸及びジブチルヒドロキシトルエン(BHT)をメタノール中でよく混合した後、(アクリル酸2−エチルヘキシル−酢酸ビニル−アクリル酸ヒドロキシエチル)共重合体を含有する粘着剤溶液(固形分42.5%)と混合した。得られた粘着剤溶液をポリエチレンテレフタレート製剥離ライナー上に塗工後、溶剤を乾燥除去し、支持体(厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)と貼り合わせて裁断し、本発明の貼付剤を得た。
【実施例2】
【0036】
(アクリル酸2−エチルヘキシル−酢酸ビニル−
アクリル酸ヒドロキシエチル)共重合体 72.5%
ラウリン酸ジエタノールアミド 1.5%
ホウ酸 0.5%
ジブチルヒドロキシトルエン 0.5%
ドネペジル 25.0%
全量 100.0%
上記の処方で、製法は実施例1と同様にして本発明の貼付剤を得た。
【実施例3】
【0037】
(アクリル酸2−エチルヘキシル−酢酸ビニル−
アクリル酸ヒドロキシエチル)共重合体 73.5%
ラウリン酸ジエタノールアミド 0.5%
ホウ酸 0.5%
ジブチルヒドロキシトルエン 0.5%
ドネペジル 25.0%
全量 100.0%
上記の処方で、製法は実施例1と同様にして本発明の貼付剤を得た。
【実施例4】
【0038】
(アクリル酸2−エチルヘキシル−酢酸ビニル−
アクリル酸ヒドロキシエチル)共重合体 71.2%
ラウリン酸ジエタノールアミド 3.0%
ホウ酸 0.3%
ジブチルヒドロキシトルエン 0.5%
ドネペジル 25.0%
全量 100.0%
上記の処方で、製法は実施例1と同様にして本発明の貼付剤を得た。
【実施例5】
【0039】
(アクリル酸2−エチルヘキシル−酢酸ビニル−
アクリル酸ヒドロキシエチル)共重合体 70.5%
ラウリン酸ジエタノールアミド 3.0%
ホウ酸 1.0%
ジブチルヒドロキシトルエン 0.5%
ドネペジル 25.0%
全量 100.0%
上記の処方で、製法は実施例1と同様にして本発明の貼付剤を得た。
【0040】
<試験例>
1)製剤
下記の比較例1〜5を用意し、貼付剤におけるドネペジルの経時安定性試験、皮膚透過試験ならびに薬物結晶観察試験を行った。
【0041】
・比較例1
実施例1において、ラウリン酸ジエタノールアミド及びホウ酸を処方から除き、その除外した分量だけ(アクリル酸2−エチルヘキシル−酢酸ビニル−アクリル酸ヒドロキシエチル)共重合体の添加量を増加させた以外は、他の成分及び製法は実施例1と同様として比較例1の貼付剤を得た。
【0042】
・比較例2
実施例3において、ホウ酸を処方から除き、その除外した分量だけ(アクリル酸2−エチルヘキシル−酢酸ビニル−アクリル酸ヒドロキシエチル)共重合体の添加量を増加させた以外は、他の成分及び製法は実施例3と同様として比較例2の貼付剤を得た。
【0043】
・比較例3
実施例2において、ホウ酸を処方から除き、その除外した分量だけ(アクリル酸2−エチルヘキシル−酢酸ビニル−アクリル酸ヒドロキシエチル)共重合体の添加量を増加させた以外は、他の成分及び製法は実施例2と同様として比較例3の貼付剤を得た。
【0044】
・比較例4
実施例1において、ラウリン酸ジエタノールアミドをパルミチン酸セチルに変更し、ホウ酸を処方から除き、その除外した分量だけ(アクリル酸2−エチルヘキシル−酢酸ビニル−アクリル酸ヒドロキシエチル)共重合体の添加量を増加させた以外は、他の成分及び製法は実施例1と同様として比較例4の貼付剤を得た。
【0045】
・比較例5
実施例3において、ホウ酸0.5%の代わりにベンジルアルコール2.0%を添加し、余剰の分量の(アクリル酸2−エチルヘキシル−酢酸ビニル−アクリル酸ヒドロキシエチル)共重合体を減少させた以外は、他の成分及び製法は実施例3と同様として比較例5の貼付剤を得た。
【0046】
2)試験方法
下記の3項目について、試験を行った。
【0047】
(イ))経時安定性試験(薬物含量)
実施例1〜5及び比較例1〜5の貼付剤について、所定の期間及び条件にて保存した後、薬物含量を測定した。各サンプル保存前の値をそれぞれ初期値(100%)として、含量の安定性について評価した。
【0048】
含量測定法は、次の通りである。すなわち、ライナーを剥離した後、膏体層を溶解させることのできる溶媒を加えて膏体を溶解させた。その後、薬物を抽出するための溶媒を添加して、振とうによる薬物の抽出を行い、高速液体クロマトグラフィーにより薬物の定量を行った。
【0049】
(ロ)薬物結晶観察試験
実施例1〜5及び比較例1〜5の貼付剤について、室温(25℃)で1ヶ月保存した後に、肉眼及び光学顕微鏡で結晶の観察を行った。結晶がみられないものを○、わずかに結晶が認められるものを△、製剤面積の半分以上が結晶化しているものを×として判定を行った。
【0050】
(ハ)へアレスマウスin vitro皮膚透過試験
皮膚透過性はヘアレスマウス皮膚を用いた皮膚透過試験で評価した。ヘアレスマウス背部皮膚を剥離し、真皮側をレセプター層側にして、37℃の温水を外周部に循環させたフロースルーセル(5cm)に装着した。角質層側に貼付剤を貼付し、レセプター層にはpH7.4のリン酸緩衝溶液(PBS)を用いて、2時間毎に24時間までサンプリングを行った。
【0051】
各時間毎に得られたレセプター溶液について、流量を正確に測り、高速液体クロマトグラフ法により薬物濃度を測定した。流量及び薬物濃度の測定値より1時間当たりの透過速度を算出し、各実施例及び比較例の最大皮膚透過速度を求めた。
【0052】
これらの結果を表1に示す。実施例1〜5は、本発明における脂肪酸アミド及び/又はホウ酸を欠く比較例1〜5に対して、いずれもドネペジルの含量、結晶析出量及びまたは皮膚透過性において優れていることが証明された。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面に粘着層を有する貼付剤の粘着層中にドネペジル、脂肪酸アミドおよびホウ酸を含有する貼付剤。
【請求項2】
脂肪酸アミドが、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、オレイン酸モノイソプロパノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸モノイソプロパノールアミドよりなる群から選択される少なくとも1種以上である、請求項1記載の貼付剤。
【請求項3】
粘着層がアクリル系粘着剤および/またはゴム系粘着剤を含有する粘着層である、請求項1または2に記載の貼付剤。
【請求項4】
アクリル系粘着剤がモノマー単位中にヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルを含む共重合体である、請求項3に記載の貼付剤。

【公開番号】特開2007−217328(P2007−217328A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38831(P2006−38831)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【Fターム(参考)】