説明

経皮送達のためのシステム及び方法

角質層−貫通突起物を有する1個又は複数の電極及び細胞膜をエレクトロポレーションするために電極に電気信号を送達する回路を含んでなる生物学的活性物質を経皮的に送達するためのシステム及び方法。システムは好ましくは、均一な電界を形成する、そしてより好ましくは、球状に又は半球状に対称的な電界を形成するようになっている。本発明の方法は物質の経皮輸送を容易にするための第1の電気信号を適用する工程及び物質の細胞内輸送を容易にするための第2の電気信号を適用する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願に対するクロスレファランス】
【0001】
本出願は2003年11月13日出願の米国特許仮出願第60/520,043号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は概括的に経皮送達システム及び方法に関する。更に特には、本発明は物質の移動を容易にするために電位を利用する経皮的及び細胞内送達システムに関する。
【背景技術】
【0003】
活性物質(又は薬剤)はもっとも好都合には経口又は注射のいずれかにより投与される。不幸なことには、多数の活性物質は、それらが吸収されないか又は血流中に侵入する前に不都合な影響を受け、従って所望の活性をもたないために、経口投与されると完全に無効であるか又は徹底的に減少された効果を有する。他方、投与期間中の物質の修正(modification)を伴わないことを確保しながら、血流中への物質の直接の注入は時々、患者の低いコンプライアンスをもたらす、困難で、不都合で、痛みを伴いそして不快な方法である。
【0004】
「経皮的」の語は本明細書では皮膚層を横切る物質の通過を表わす包括的用語として使用される。「経皮的」の語は、メスで切開する又は皮下用針で皮膚を穿刺するような皮膚の実質的な切開又は貫通を伴わずに、皮膚を通って局所組織又は全身循環系への物質(例えば、薬剤のような治療的物質又はワクチンのような免疫学的活性物質)の送達を表わす。
【0005】
従って経皮送達は原則的に、他の場合には経口で又は皮下注射又は静脈内注入により送達する必要があると考えられる活性物質を投与する方法を提供する。経皮的な物質送達はこれらの分野の改善策を提供する。経皮送達は経口送達に比較すると、消化管の激しい環境を回避し、胃腸の物質代謝を迂回し、第一通過効果を減少し、そして消化酵素及び肝臓の酵素による可能な不活性化を回避する。同様に、アスピリンのような多数の薬剤が消化管に対して副作用を有するために、経皮投与期間中、消化管は活性物質に暴露されない。経皮送達はまた、より侵襲性の皮下又は静脈内の物質送達の選択に対しても利点を提供する。特に、メスで切開する又は皮下用針で皮膚を穿刺するような皮膚の重大な切開又は貫通が必要でない。これは感染及び疼痛の危険を最少にする。
【0006】
活性物質は角質層及び表皮の双方を通って拡散するが、角質層の高度に整列された脂質の二層を通る拡散速度はしばしば、限定する段階である。従って、多数の場合、受動的経皮経路を介する多数の物質、特に高分子の送達速度又は流量は治療的に有効であるためには余りに限定される。
【0007】
受動的拡散の経皮流量を改善するために、活性物質の輸送を補助するために、電気(例えば、イオントホレシス及びエレクトロポレーション)及び超音波(例えば、フォノフォレシス)のような外部のエネルギー源を使用することができる。
【0008】
電気輸送経皮送達装置は概括的に、身体のある部分、典型的には皮膚と密接に接触して配置される2個の電極を使用する。活性電極又は供与電極と呼ばれる第1の電極は身体中に治療物質を送達するために使用される。対電極又は帰還電極(return electrode)と呼ばれる第2の電極は身体を通る第1の電極との電気回路を閉じる。バッテリーのような電気エネルギー源は電極を通して身体に電流を供給する。例えば、身体に送達される治療物質が正に帯電されたカチオンである場合は、陽極が活性電極であり、陰極が回路を完成するために必要な対電極である。送達される治療物質が負に帯電されたアニオンである場合は、陰極が供与電極であり、陽極が対電極である。
【0009】
広範に使用される電気輸送法の電気移動法(electromigration)(イオントホレシスとも呼ばれる)は体表を通る帯電イオン(例えば、薬剤のイオン)の電気的に誘導された輸送を伴う。電気浸透(electroosmosis)と呼ばれるもう1つのタイプの電気輸送は適用される電界の影響下における液体の体表を通過する(例えば、経皮的)流動を伴う。エレクトロポレーションと呼ばれる更にもう1つのタイプの電気輸送法は、高電圧パルスを適用することにより生物学的膜中に一過性に存在する孔を形成する工程を伴う。
【0010】
経皮流量を改善するための他の試みは、角質層を物理的に貫通するために小型の皮膚貫通要素を利用してきた。これらのアプローチの例は特許文献1〜6及び7〜19及び20に開示されている(特許文献1〜20参照)。
【0011】
先行技術において経皮送達を実施するために皮膚の機械的貫通をイオントホレシスと組み合わせることが試みられた。例えば、特許文献21は患者の皮膚を通して物質を送達するための、針と電位の組み合わせを開示している(特許文献21参照)。前記のシステムは角質層を貫通するために使用され、そして更に電極としても使用することができる1本又は複数の針を使用する。同様に、特許文献22は経皮送達及び引き出し(extraction)のためのイオントホレシスと一緒の微細な針の使用を開示している(特許文献22参照)。これらの先行技術のシステムは患者の皮膚を横切って物質を移動させるようになっているが、細胞中への物質の送達を目的とせず、また適用される電界の対称性及び均一性を増加させる手段をも提供していない。
【0012】
従って、先行技術の物質送達システムに対する改善策を提供する経皮的物質送達システム及び方法を提供することが本発明の目的である。
【0013】
従って、生物学的活性物質を送達するための改善された均一性及び対称性をもつ電界を有する経皮的物質送達システム及び方法を提供することが本発明の目的である。
【0014】
適用される電界を使用して細胞膜をエレクトロポレーションし、そして生物学的活性物質の細胞内送達を提供するシステム及び方法を提供することが本発明のもう1つの目的である。
【0015】
適用される電界を使用して生物学的活性物質の経皮送達を改善するためのシステム及び方法を提供することが本発明の更なる目的である。
【0016】
本発明の更にもう1つの目的は球状又は半球状に対称的な電界を形成するように構成されている経皮物質送達システムを提供することである。
【0017】
電界密度を高める経皮的物質送達システムを提供することが本発明のもう1つの目的である。
【特許文献1】欧州特許第0 407063号明細書
【特許文献2】米国特許第5,879,326号明細書
【特許文献3】米国特許第3,814,097号明細書
【特許文献4】米国特許第5,250,023号明細書
【特許文献5】米国特許第3,964,482号明細書
【特許文献6】再発行(Reissue)第25,637号
【特許文献7】国際公開第96/37155号パンフレット
【特許文献8】国際公開第96/37256号パンフレット
【特許文献9】国際公開第96/17648号パンフレット
【特許文献10】国際公開第97/03718号パンフレット
【特許文献11】国際公開第98/11937号パンフレット
【特許文献12】国際公開第98/00193号パンフレット
【特許文献13】国際公開第97/48440号パンフレット
【特許文献14】国際公開第97/48441号パンフレット
【特許文献15】国際公開第97/48442号パンフレット
【特許文献16】国際公開第98/00193号パンフレット
【特許文献17】国際公開第99/64580号パンフレット
【特許文献18】国際公開第98/28037号パンフレット
【特許文献19】国際公開第98/29298号パンフレット
【特許文献20】国際公開第98/29365号パンフレット
【特許文献21】米国特許第6,591,133号明細書
【特許文献22】米国特許第6,256,533号明細書
【発明の開示】
【0018】
前記の目的及び以下に記述され、そして明白になるであろう事項に従うと、本発明に従う生物学的活性物質を経皮的に送達するためのシステムは、物質の細胞内輸送を容易にするために細胞膜をエレクトロポレーションすることができる電界を提供するようになっているマイクロプロジェクション部材を含んでなる。
【0019】
本発明の1つの態様における経皮送達システムは、上面層及び底面層及び、第1の電極の底面層から突き出る複数の角質層貫通マイクロプロジェクションを有する第1の電極、第2の電極、生物学的活性物質を含有する第1の電極と結合された生物学的活性物質の源並びに 細胞膜をエレクトロポレーションすることができる第1及び第2の電極に第1の電気信号を送達するようになっている回路、を含んでなる。従って、第1の電気信号を適用する工程は生物学的活性物質の細胞内送達を容易にする。
【0020】
このような態様における第1の電気信号は好ましくは、約100V/cm〜5,000V/cmの範囲内の電界密度を形成するように構成されている。
【0021】
好ましくは、回路は更に、第1の電気信号の前に、生物学的活性物質の経皮送達を容易にする第2の電気信号を電極に送達するようになっている。
【0022】
更に好ましくは、第2の電極は上面層及び底面層及び、電極の底面層から突き出る複数の角質層貫通マイクロプロジェクションを有する。好ましくは、第1及び第2の電極は実質的に均一な電界を形成する。
【0023】
本発明の1つのアスペクトにおいて、第1及び第2の電極は第1の一体式(integral)のマイクロプロジェクション部材を含んでなる。
【0024】
1つの態様において、第1の電極及び第2の電極は絶縁体により分離されているマイクロプロジェクション部材の区域を含んでなる。好ましくは、第1の電極はマイクロプロジェクション部材の円形の区域を含んでなり、そして第2の電極は円形の区域の周囲の円周区域を含んでなる。
【0025】
より好ましくは、第1の電気信号の送達は球状に対称的な電界及び実質的に均一な電界を形成する。前記の態様において、第1の電極及び第2の電極はマイクロプロジェクション部材の円周の周囲に平行なプレートのコンデンサー構造物を含んでなる。
【0026】
代わりの態様において、第1の電極及び第2の電極は絶縁体により分離された角質層貫通マイクロプロジェクションの交互の列を含んでなる。
【0027】
本発明の更にもう1つの態様において、第1の電極及び第2の電極は別々のマイクロプロジェクション部材を含んでなる。第2の電極は好ましくは、半球状に対称的な電界を形成するように第1の電極に対して配置される。
【0028】
本発明のもう1つのアスペクトは、細胞をエレクトロポレーションするために電界密度を最大にするように構成されている第1のマイクロプロジェクション部材上に配置された絶縁コーティングを含んでなる。絶縁コーティングは好ましくは、電極の底面層上そして角質層貫通マイクロプロジェクションの一部上に配置される。このような態様において、複数の角質層貫通マイクロプロジェクションそれぞれが先端を含んでなり、そして絶縁コーティングは好ましくは、その先端上には配置されていない。
【0029】
本発明の特定の態様において、第1又は第2の電極の1個又は複数のマイクロプロジェクションは患者の皮膚にマイクロプロジェクション部材を固定するように構成されている刺(barb)を含んでなる。
【0030】
もう1つの態様において、本発明のマイクロプロジェクションは約1000ミクロン未満の長さ、そしてより好ましくは約500ミクロン未満の長さを有する。本発明の角質層貫通マイクロプロジェクションはまた、約5〜50ミクロンの範囲内の厚さを有することができる。
【0031】
本発明の特定の態様において、生物学的活性物質はワクチン又は抗原のような免疫学的活性物質を含んでなる。代表的なワクチンはウイルス及びバクテリア、タンパク質主体のワクチン、多糖類主体のワクチン及び核酸主体のワクチンを包含する。ワクチン及び他の免疫学的活性物質の送達に関する更なる詳細は、引用によりそれら全体を本明細書に取り入れている、同時係属出願第60/516,184号及び 年 月 日に出願の第 号[代理人明細書第ALZ5085NP]に認められる。
【0032】
本発明の他の態様において、生物学的活性物質は、それらに限定はされないが、抗生物質及び抗ウイルス剤のような抗感染薬;フェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、ブプレノルフィン及び鎮痛剤組み合わせ物を包含する鎮痛剤;麻酔剤;食欲抑制剤;抗関節炎剤;テルブタリンのような抗喘息剤;抗痙攣剤;抗鬱剤;抗糖尿病剤;下痢止め剤;抗ヒスタミン剤;抗炎症剤;抗偏頭痛調製物;スコポラミン及びオンダンセトロンのような抗乗り物酔い調製物;制嘔吐剤;抗腫瘍剤;抗パーキンソン病薬;止痒剤;抗精神病剤;解熱剤;胃腸及び尿路を包含する鎮痙剤;抗コリン作用剤;交感神経興奮様薬;キサンチン誘導体;ニフェジピンのようなカルシウムチャンネルブロッカーを包含する循環器官用調製物;ベータブロッカー;ドブタミン及びリトドリンのようなベータアゴニスト;抗不整脈剤;アテノロールのような降圧剤;ラニチジンのようなACEインヒビター;利尿剤;全身血管、冠状血管、末梢血管及び脳血管を包含する血管拡張剤;中枢神経系刺激剤;咳及び風邪用調製物;うっ血除去剤;診断薬;副甲状腺ホルモンのようなホルモン;催眠剤;免疫抑制剤;筋弛緩剤;副交感神経遮断剤;副交感神経興奮様薬;プロスタグランジン;タンパク質;ペプチド;精神刺激薬;鎮静剤及び精神安定剤、を包含する主要な治療分野の1つにおける活性物質を含んでなる。
【0033】
本発明の好ましい態様において、生物学的活性物質源はマイクロプロジェクション部材上に配置された生物学的適合性コーティングを含んでなる。適したコーティング調製物に関する詳細は、引用によりそれら全体を本明細書に取り入れている、 年 月 日に出願の同時係属出願第60/516,184号[代理人明細書第ALZ5049]及び 年 月 日に出願の第 号[代理人明細書第ALZ5085NP]に認められる。
【0034】
以下に更に詳細に説明されるように、本発明の生物学的適合性コーティング中に取り入れることができる特に好ましい化合物は界面活性剤、両親媒性ポリマー、親水性ポリマー、生物学的適合性担体、安定剤、血管収縮剤及び/又は経路開放モジュレーターを包含する。
【0035】
本発明の他の態様において、生物学的活性物質源はヒドロゲル調製物を含有するようになっている供与電極に隣接して配置された物質のレザボアを含んでなることができる。適したヒドロゲル調製物に関する更なる詳細は、引用によりそれら全体を本明細書に取り入れている、2003年10月24日に出願の同時係属出願第60/514,387号明細書に認められる。
【0036】
以下に更に詳細に説明されるように、本発明のヒドロゲル調製物中に取り入れることができる特に好ましい化合物は高分子ポリマー網状構造物物、界面活性剤、両親媒性ポリマー、血管収縮剤及び/又は経路開放モジュレーターを包含する。
【0037】
本発明に従う、送達することができる生物学的活性物質はゲルのパックのレザボア内に配置されたヒドロゲル調製物中に、マイクロプロジェクション部材上に配置された生物学的適合性コーティング内に、又はヒドロゲル調製物と生物学的適合性コーティング双方中に含有することができる。更に、コーティング内に生物学的活性物質を含んでなる態様はまた、コーティングを水和して、溶解するために、ヒドロゲルレザボアを使用することができる。
【0038】
本発明はまた、上面層及び底面層及び、第1の電極の底面層から突き出る複数の角質層貫通マイクロプロジェクションを有する第1の電極、第2の電極、生物学的活性物質を含有する第1の電極と結合された生物学的活性物質源、並びに細胞膜をエレクトロポレーションすることができる第1及び第2の電極に第1の電気信号を送達するようになっている回路、を含んでなる経皮送達システムを提供する工程、並びに生物学的活性物質の細胞内輸送を容易にするようになっている第1の電極及び第2の電極に第1の電気信号を送達する工程を含んでなる、生物学的活性物質を送達する方法を含んでなる。このような方法は好ましくは、更に、第1の電気信号の前に、生物学的活性物質の経皮移動を容易にする第1の電極及び第2の電極への第2の電気信号を送達する工程を含んでなる。第1の電気信号は好ましくは、約100V/cm〜5,000V/cmの範囲内の電界密度を形成するように構成されている。
【0039】
本発明の方法はまた、好ましくは、第1の電気信号を繰り返して送達する工程を含んでなる。
【0040】
更に好ましくは、第2の電極は上面層及び底面層及び、底面層から突き出る複数の角質層貫通マイクロプロジェクションを有する。
【0041】
本発明の方法は好ましくは、実質的に均一な電界を形成するための第1の電気信号を送達する工程を含んでなる。
【0042】
1つの態様において、本発明は第1及び第2の電極が第1のマイクロプロジェクション部材を含んでなるシステムを提供する工程を含んでなる。
【0043】
好ましくは、方法は第1の電極がマイクロプロジェクション部材の円形区域を含んでなり、そして第2の電極が円形区域の周囲の円周区域を含んでなるシステムを提供する工程を含んでなる。従って、第1の電気信号の送達は球状に対称的な電界を形成する。
【0044】
あるいはまた、第1及び第2の電極は第1のマイクロプロジェクション部材上の角質層貫通マイクロプロジェクションの交互の列を含んでなり、そこで交互の列が絶縁体により分離されている。
【0045】
本発明のもう1つの態様において、方法は、第1の電極が第1のマイクロプロジェクション部材を含んでなり、そして第2の電極が第2のマイクロプロジェクション部材を含んでなるシステムを提供する工程を含んでなる。好ましくは、第1の電気信号を送達する工程は実質的に均一な電界を形成する。更に好ましくは、第1及び第2のマイクロプロジェクション部材は、第1の電気信号を送達する工程が半球状に対称的な電界を形成するように配置されている。
【0046】
本発明の他の方法は更に、細胞をエレクトロポレーションするために電界密度を最大にするように構成された、第1のマイクロプロジェクション上に絶縁コーティングを配置する工程を含んでなる。好ましくは、第1のマイクロプロジェクション部材上に絶縁コーティングを配置する工程は角質層貫通マイクロプロジェクションの先端を未コートのままで残す工程を含んでなる。
【0047】
本発明の更にもう1つの態様において、方法は生物学的活性物質を経皮送達するようになっている第1の電気信号を電極に送達し、細胞膜をエレクトロポレーションするようになっている第2の電気信号を送達し、そして次に細胞膜を横切って生物学的活性物質を輸送するようになっている第3の電気信号を電極に送達する工程を含んでなる。
【0048】
本発明の1つの好ましい態様において、生物学的活性物質を送達する工程は、ウイルス、バクテリア、タンパク質主体のワクチン、多糖類主体のワクチン、核酸主体のワクチン、タンパク質、多糖類共役物、オリゴ糖、抗原性物質及びリポタンパク質のような免疫学的活性物質を送達する工程を含んでなる。
【0049】
更なる特徴物及び利点は、付記の図面に示されるように、そしてその類似の参照文字が概括的に図面全体の同様な部品又は要素を表わす、本発明の好ましい態様の以下の、そしてより特定の説明から明白になるであろう。
【0050】
本発明を詳細に説明する前に、本発明が特に例示された物質、方法又は構造物に限定されず、従ってもちろん変動する可能性があることを理解しなければならない。従って本明細書に記載されたものと同様な又は同等の、多数の物質及び方法を本発明の実施に使用することができるが、好ましい物質及び方法が本明細書に説明されている。
【0051】
更に、本明細書に使用される用語は本発明の特定の態様を説明する目的のためのみのものであり、限定することは意図されないことを理解しなければならない。
【0052】
別に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は本発明が関与する当業者により一般に理解されるものと同様な意味を有する。
【0053】
更に本明細書に引用されるすべての刊行物、特許及び特許出願物は以上又は以下のいずれでも、それらの全体が引用により本明細書に取り入れられている。
【0054】
最後に、本明細書及び付記の請求の範囲中に使用されるような単数形「a」、「an」及び「the」は文脈が明白に他の場合を指定しない限り、複数の指定物を包含する。従って例えば、「an active agent」に対する意味は2種以上のこのような物質を包含し;「a microprojection」に対する意味は2種以上のこのようなマイクロプロジェクション等を包含する。
【0055】
定義
本明細書で使用されるような用語「経皮的」は局所又は全身治療のために皮膚中へのそして/又は皮膚を通る物質の送達を意味する。本明細書で使用されるような用語「経皮的流量」は経皮送達の速度を意味する。
【0056】
本明細書で使用されるような用語「生物学的活性物質」は治療的に有効量を投与される時に薬理学的に有効な薬剤を含有する物質の組成物又は混合物を表わす。用語「物質(agent)」はまた、そのもっとも広範な解釈をもつことが意図され、任意の治療物質又は薬剤を包含するために使用される。用語「薬剤(drug)」、「治療物質」及び「生物学的活性物質」は所望の通常の有益な効果をもたらすために生存生物に送達される任意の治療的に活性な物質を表わすために互換性に使用される。
【0057】
特に好ましい生物学的活性物質には、限定されずに、免疫学的活性物質、例えば、ウイルス、バクテリア、タンパク質主体のワクチン、多糖類主体のワクチン、タンパク質、多糖類共役物、オリゴ糖、リポタンパク質、一重鎖及び二重鎖核酸、遺伝子治療のためのポリヌクレオチド組み立て物、例えば、mRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム及びsiRNA(RNAi)分子のようなRNA分子、染色体、常用ワクチン、DNAワクチン、免疫原性物質、抗原性物質及びワクチン補助剤が包含される。ワクチン送達の特別の例は、引用によりそれら全体を本明細書に取り入れられている、同時係属出願第60/516,184号及び 年 月 日出願の第 号[代理人明細書第ALZ5085NP]に認められる。
【0058】
タンパク質主体のワクチン及びDNAワクチンに関しては特に、電気輸送は好ましくは、ワクチンのインビボの細胞内送達を提供する。タンパク質主体のワクチンの場合には、皮膚を表わす(skin−presenting)細胞中へのこの送達は、被験体におけるクラスIIのMHC/HLA表示(presentation)分子に加えてクラスIのMHC/HLA表示分子上にタンパク質主体のワクチンのエピトープの細胞の負荷(cellular loading)をもたらす。好ましくは、細胞及び体液の応答がもたらされる。
【0059】
DNAワクチンに関しては、DNA主体のワクチンの皮膚表示細胞中への送達は、DNAワクチンによりコードされたワクチン抗原の細胞の発現及び、被験体におけるクラスIIのMHC/HLA表示分子に加えてクラスIのMHC/HLA表示分子上のワクチンエピトープの負荷をもたらす。更に好ましくは、細胞及び体液の応答が被験体においてもたらされる。あるいはまた、細胞の応答のみがもたらされる。
【0060】
適した免疫学的活性物質には、限定されずに、タンパク質、多糖類共役物、オリゴ糖及びリポタンパク質の形態の抗原が包含される。これらのサブユニットのワクチンには百日咳(組み換えPT accince−無細胞)、破傷風菌(精製、組み換え体)、ジフテリア菌(精製、組み換え体)、サイトメガロ・ウイルス(糖タンパク質サブユニット)、A群連鎖球菌(糖タンパク質サブユニット、破傷風トキソイドを含む糖共役物A群多糖類、トキシンのサブユニット担体に結合したMタンパク質/ペプチド、Mタンパク質、多価タイプに特異的なエピトープ、システインプロテアーゼ、C5aペプチダーゼ)、B型肝炎ウイルス(組み換え体Pre S1、Pre−S2、S、組み換えコアタンパク質)、C型肝炎ウイルス(組み換え体−発現表面タンパク質及びエピトープ)、ヒト乳頭腫ウイルス(カプシドタンパク質、TA−GN組み換えタンパク質L2及びE7[HPV−6から]、HPV−11からのMEDI−501組み換えVLP L1、[HPV−6からの]4価組み換え物BLP L1、HPV−11、HPV−16及びHPV−18、[HPV−16からの]LAMP−E7、レジオネラ・ニューモフィラ(精製バクテリアの表面タンパク質)、髄膜炎菌(破傷風トキソイドとの糖共役物)、緑膿菌(合成ペプチド)、風疹ウイルス(合成ペプチド)、肺炎連鎖球菌(髄膜炎菌B OMPに共役された糖共役物[1,4,5,6B,9N,14,18C,19V,23F])、CRM197に共役された糖共役物[4,6B,9V,14,18C,19F,23F]、CRM1970に共役された糖共役物[1,4,5,6B,9V,14,18C,19F,23F]、梅毒トレポネーマ(表面リポタンパク質)、バリセラ・ゾスターウイルス(サブユニット、糖タンパク質)及びコレラ菌(共役リポ多糖類)が包含される。
【0061】
全体のウイルス又はバクテリアは、限定せずに、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス、風疹ウイルス及びバリセラ・ゾスターのような弱毒化又は死滅ウイルス、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、A群連鎖球菌、レジオネラ・ニューモフィラ、ナイセリア、髄膜炎、緑膿菌、肺炎菌、梅毒トレポネーマ及びコレラ菌のような弱毒化又は死滅バクテリア及びそれらの混合物を包含する。
【0062】
抗原物質を含有する更なる市販のワクチンは、限定せずに、インフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、ハシカワクチン、オタフクカゼワクチン、水痘ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン、百日咳ワクチン及びジフテリアワクチンを包含する。
【0063】
核酸を含んでなるワクチンは、限定せずに、例えばスパーコイルプラスミドDNAのような一重鎖及び二重鎖核酸;線状プラスミドDNA;コスミド;バクテリアの人工染色体(BAC);酵母菌の人工染色体(YAC);哺乳動物の人工染色体及び例えばmRNAのようなRNA分子を包含する。核酸のサイズは数千キロベースまでであることができる。更に、本発明の特定の態様において、核酸はタンパク質様物質と結合することができるか又は例えば、ホスホロチオエート部分のような1種又は複数の化学修飾物を包含することができる。核酸のコード化配列はそれに対して免疫反応が所望される抗原の配列を含んでなる。
【0064】
更に、DNAの場合には、ワクチン構成物中にプロモーター及びポリアデニル化配列もまた取り入れられる。コードすることができる抗原は感染性疾患のすべての抗原性成分、病原体並びに癌の抗原を包含する。従って核酸は例えば感染性疾患、癌、アレルギー、自己免疫及び炎症性疾患の分野に適用を見いだす。
【0065】
ワクチン抗原と一緒にワクチンを含んでなることができる適した免疫反応促進アジュバントはリン酸アルミニウムゲル;水酸化アルミニウム;アルガル・グルカン:β−グルカン;コレラトキシンBサブユニット;CRL1005:x=8及びy=205の平均値をもつABAブロックポリマー;ガンマイヌリン:線状(非分枝)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−α−D−グルコース;Gerbuアジュバント:N−アセチルグルコサミン−(β1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド(DDA)、亜鉛L−プロリン塩錯体(Zn−Pro−8);イミキモド(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン;ImmTherTM:N−アセチルグルコアミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−グリセロールジパルミテート;MTP−PEリポソーム:C5910819PNa−3HO(MTP);ムラメチド:Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH;Pleuran:β−グルカン;QS−21;S−28463:4−アミノ−a,a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール;スクラボ(sclavo)ペプチド:VQGEESNDK・HCl(IL−1β 163−171ペプチド)及びスレオニル−MDP(TermurtideTM):N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン及びインターロイキン18、IL−2、IL−12、IL−15、を包含する。アジュバントはまた例えば、CpG含有オリゴヌクレオチドのようなDNAオリゴヌクレオチドを包含する。更に、IL−18、IL−2 IL−12、IL−15、IL−4、IL−10、ガンマインターフェロン及びNFカッパB調整信号タンパク質のような免疫調整リンフォカインをコードする核酸配列を使用することができる。
【0066】
当業者により認められるように、ほとんど例外なく、alum−アジュバントワクチン調製物は典型的に凍結及び乾燥時に効力を喪失する。本発明のalum−吸着ワクチン調製物の効力及び/又は免疫原性を保存するためには、前記の調製物を更に、引用によりそれら全体を本明細書に取り入れている、2004年9月28日に出願の仮出願第 号[代理人明細書第ALZ5156PSP1]に開示されたように処理することができる。
【0067】
生物学的活性物質はまた、それらに限定はされないが、抗生物質及び抗ウイルス剤のような抗感染薬;フェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、ブプレノルフィン及び鎮痛剤組み合わせ物を包含する鎮痛剤;麻酔剤;食欲抑制剤;抗関節炎剤;テルブタリンのような抗喘息剤;抗痙攣剤;抗鬱剤;抗糖尿病剤;下痢止め剤;抗ヒスタミン剤;抗炎症剤;抗偏頭痛調製物;スコポラミン及びオンダンセトロンのような抗乗り物酔い調製物;制嘔吐剤;抗腫瘍剤;抗パーキンソン病薬;止痒剤;抗精神病剤;解熱剤;胃腸及び尿路を包含する鎮痙剤;抗コリン作用剤;交感神経興奮様薬;キサンチン誘導体;ニフェジピンのようなカルシウムチャンネルブロッカーを包含する循環器官用調製物;ベータブロッカー;ドブタミン及びリトドリンのようなベータアゴニスト;抗不整脈剤;アテノロールのような降圧剤;ラニチジンのようなACEインヒビター;利尿剤;全身血管、冠状血管,末梢血管及び脳血管を包含する血管拡張剤;中枢神経系刺激剤:咳及び風邪用調製物;うっ血除去剤;診断薬;副甲状腺ホルモンのようなホルモン;催眠剤;免疫抑制剤;筋弛緩剤;副交感神経遮断剤;副交感神経興奮様薬;プロスタグランジン;タンパク質;ペプチド;精神刺激薬;鎮静剤及び精神安定剤、を包含する主要な治療分野の1つにおける活性物質を含んでなることができる。その他の適した物質は血管収縮剤、抗治癒剤及び経路開放モジュレーターを包含する。
【0068】
物質の更なる特別の例は、限定されずに、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、成長ホルモン放出因子(GHRF)、インスリン、インスルトロピン、カルシトニン、オクトレオチド、エンドルフィン、TRN、NT−36(化学名:N−[[(s)−4−オキソ−2−アゼチジニル]カルボニル]−L−ヒスチジル−L−プロリンアミド)、リプレシン、下垂体ホルモン(例えばHGH、HMG、デスモプレッシンアセテート、等)、卵胞ルテオイド、aANF、成長因子放出因子(GFRF)のような成長因子、bMSH、GH、ソマトスタチン、ブラジキン、ソマトトロピン、血小板誘導成長因子放出因子、アスパラギナーゼ、ブレオマイシンスルフェート、キモパパイン、コレシストキニン、絨毛性ゴナドトロピン、エリスロポエチン、エポプロステノール(血小板凝結インヒビター)、グルカゴン、HCG、ヒルログ、ヒアルロニダーゼ、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターロイキン、インターロイキン−10(IK−10)、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、グルカゴン、黄体ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRH類似体(ゴセレリン、ロイプロリド、ブセレリン、トリプトレリン、ゴナドレリン及びナプファレリン、メノトロピン(ウロフォリトロピン(FSH)及びLH)のような)、オキシトシン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼ、バソプレッシン、デアミノ[Val4,D−Arg8]アルギニンバソプレッシン、デスモプレッシン、コルチコトロピン(ACTH)、ACTH(1〜24)のようなACTH類似体、ANP、ANPクリアランスインヒビター、アンギオテンシンIIアンタゴニスト、抗利尿ホルモンアンタゴニスト、ブラディキニンアンタゴニスト、セレダーゼ、CSI、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、エンケファリン、FABフラグメント、IgEペプチドサプレッサー、IGF−1、神経栄養因子、コロニー刺激因子、副甲状腺ホルモン及びアゴニスト、副甲状腺ホルモンアンタゴニスト、副甲状腺ホルモン(PTH)、PTH(1〜34)のようなPTH類似体、プロスタグランジンアンタゴニスト、ペンチゲチド、タンパク質C、タンパク質S、レニンインヒビター、チモシンアルファ−1、血栓溶解剤、TNF、バソプレッシンアンタゴニスト類似体、アルファ−1抗トリプシン(組み換え体)及びTGF−ベータを包含する。
【0069】
前記の生物学的活性物質はまた、遊離塩基、酸、帯電又は非帯電分子、分子錯体の成分あるいは非刺激性の薬理学的に許容できる塩のような種々の形態にあることができる。更に身体のpH、酵素、等において容易に加水分解される、活性物質の簡単な誘導体(エーテル、エステル、アミド、等のような)を使用することができる。
【0070】
本発明の物質源、レザボア及び/又はコーティング中には2種以上の生物学的活性物質を取り入れることができ、そして「活性物質」の用語の使用は2種以上のこのような活性物質又は薬剤の使用を全く排除しないことを理解しなければならない。
【0071】
用語「生物学的に有効量」又は「生物学的に有効速度」は生物学的活性物質が製薬学的に有効な物質である時に使用されることとし、そして所望される治療的な、しばしば有益な結果をもたらすために必要な薬理学的に活性な物質の量又は速度を表わす。本発明のヒドロゲル調製物及びコーティング中に使用される活性物質の量は所望される治療的結果を達成するための治療的有効量の活性物質を送達するために要する量であろう。
【0072】
実際に、これは、送達される特定の薬理学的に活性な物質、送達部位、処置されている状態の重篤度、所望される治療効果並びにコーティングから皮膚組織中への活性物質の送達に対する溶解(dissolution)及び放出動態に応じて広くばらつくであろう。
【0073】
本明細書で使用されるような用語「マイクロプロジェクション」は生存動物、特に哺乳動物そして更に特にはヒトの皮膚の角質層を通ってその下の表皮層又は表皮と真皮層中に穿孔又は切開するようになっている貫通要素を表わす。
【0074】
本発明の1つの態様において、貫通要素は1000ミクロン未満の突起物の長さを有する。更なる態様において、貫通要素は500ミクロン未満の、より好ましくは、250ミクロン未満の突起物の長さを有する。マイクロプロジェクションは典型的には約5〜50ミクロンの幅及び厚さを有する。マイクロプロジェクションは針、中空の針、刃、ピン、パンチ及びそれらの組み合わせ物のような異なる形状に形成することができる。
【0075】
本明細書で使用される用語「マイクロプロジェクション部材」は概括的に角質層を貫通するためのアレーに配列された複数のマイクロプロジェクションを含んでなるマイクロプロジェクションアレーを意味する。マイクロプロジェクション部材は薄いシートから複数のマイクロプロジェクションをエッチング又はパンチし、そしてシートの平面からマイクロプロジェクションを折るか又は曲げて、図4に示すような形態を形成することにより形成することができる。マイクロプロジェクション部材はまた、その全体を引用により本明細書に取り入れられる、米国特許第6,050,988号明細書に開示されたような1又は複数の各ストリップの縁に沿ってマイクロプロジェクションを有する1又は複数のストリップを形成することによるような、他の知られた方法で形成することができる。
【0076】
本明細書で使用される用語「電気輸送(electrotransport)」は概括的に、送達又は引き出しが少なくとも一部は電位の適用により誘発又は補助される、体表(皮膚、粘膜又は爪のような)を通る治療物質(帯電した、非帯電の又はそれらの混合物)の送達又は引き出しを表わす。電気輸送法はリドカイン、ヒドロコーチゾン、フルオリド、ペニシリン及びデキサメタゾンを包含する多数の薬剤の経皮投与に有用であることが認められている。電気輸送の一般的な使用はピロカルピンをイオン導入法により送達することによる嚢胞性繊維症の診断における。
【0077】
広範に使用される電気輸送法のエレクトロマイグレーション(イオントホレーゼとも呼ばれる)は体表を通る帯電イオン(例えば物質のイオン)の電気的誘導輸送を伴う。電気浸透(electroosmosis)と呼ばれるもう1つのタイプの電気的輸送は適用される電界の影響下での液体の体表を横切る(例えば、経皮的)流動を伴う。
【0078】
多数の場合に、前記の工程のうちの2種以上が異なる程度で同時に起っている可能性がある。従って、用語「電気輸送」は本明細書において、物質が実際にそれより輸送されている1種又は複数の特定の機序に拘わらず、少なくとも1種の帯電又は非帯電物質又はそれらの混合物の電気的に誘発された又は高められた輸送を包含するための、そのもっとも広範な可能な解釈を与えられる。
【0079】
本明細書で使用される用語[エレクトロポレーション]は概括的に、細胞を短時間の間強力な電界に暴露する工程が細胞膜を一過性に不安定化させることができることを確認する。この効果は誘発された膜透過電位による絶縁破壊(dielectric breakdown)と説明されており、「電気透過性化(electropermeabilization)」とも呼ぶことができる。細胞膜の透過性化状態は好ましくは一過性である。細胞は典型的には、電気的処理が終結後、数分間の次元で不安定化状態に留まる。
【0080】
前記のように、本発明は患者に生物学的活性物質を経皮的に送達するためのシステム及び方法を含んでなる。システムは概括的に活性電極及び供与電極及び、電極に電気信号を供給するための電気回路を包含する。物質の送達のために、生物学的活性物質の源が少なくとも片方の電極に隣接して提供される。一方又は双方の電極がそれらから延伸する複数の角質層貫通マイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材を含んでなる。
【0081】
今度は、本発明に従って使用することができる代表的電気輸送装置を表わす図1を参照する。図1は、押しボタンスイッチ12の形態の起動スイッチ及び発光ダイオード(LED)14の形態のディスプレーを有する電気輸送装置10の透視分解図を示す。装置10は上部ハウジング16、回路基板アセンブリー18、下部ハウジング20、陽極電極22、陰極電極24、陽極レザボア26、陰極レザボア28及び皮膚適合性の接着剤30を含んでなる。上部ハウジング16は患者の皮膚上に装置10を保持する補助をする側部のウィング15を有する。上部ハウジング16は好ましくは、注入成型可能なエラストマー(例えば、エチレンビニルアセテート)からなる。印刷回路基板アセンブリー18は別々の電装品40及びバッテリー32に結合された集積回路19を含んでなる。回路基板アセンブリー18は開口部13a及び13bを通る柱(図1には示されていない)によりハウジング16に固定され、そこで柱の両端はハウジング16に回路基板アセンブリー18を熱結合させるために加熱/融解される。下部ハウジング20は接着剤30により上部ハウジング16に取り付けられ、そこで接着剤30の上面34は下部ハウジング20及びウィング15の底面を包含する上面ハウジング16双方に接着される。
【0082】
回路基板アセンブリー18の下部上に示される(一部)ものはバッテリー32、好ましくは、ボタンセルバッテリーそしてもっとも好ましくは、リチウムセルである。装置10を駆動するために他のタイプのバッテリーも使用することができる。
【0083】
回路基板アセンブリー18の回路の出力部分(図1には示されない)は下部ハウジング内に形成された凹部分25、25’中の開口部23、23’を通ってレザボア26及び28の上部側面44’、44と電気的接触を形成する。順次、電極22及び24がレザボア26及び28の底部側面46’、46と直接の機械的及び電気的接触にある。電極22及び24はそれぞれ、複数のマイクロプロジェクション42’、42(実測で示されてはいない)及びレザボア26及び28からの物質又は塩(図4に関連して下記に説明されるように)の通過を許す開口部を有する、マイクロプロジェクションアレー部材を含んでなる。電極22及び24は接着物30中の開口部29’、29を通して患者の皮膚と接触する。押しボタンスイッチ12を押すと、回路基板アセンブリー18上の電気的回路が前以て決定された長さ、例えば、約10分間の送達期間の間、電極/レザボア22、26及び24、28に前以て決定されたDC電流を送達する。装置は好ましくは、点灯されるLED14及び/又は例えば「ビーパー」からの聴こえる音の信号により使用者に物質送達の開始又はボーラス、間隔の視覚的及び/又は聴覚的確認を伝達する。
【0084】
陽極電極22及び/又は陰極電極24は好ましくは、銀及び/又は銀塩化物、あるいは任意の適した導電性物質からなることができ、そしてレザボア26及び28は好ましくは、ポリマーのヒドロゲル物質からなることができる。電極22、24及びレザボア26、28は下部ハウジング20内に保持される。アニオン性の生物学的活性物質に対しては、陰極のレザボア28が物質を含有する「供与」レザボアであり、そして陽極のレザボア26は生物学的適合性の電解質を含有する。当業者はカチオン性生物学的活性物質によりレザボアが逆転されることを認めるであろう。
【0085】
押しボタンスイッチ12、回路基板アセンブリー18上の電気回路及びバッテリー32は上部ハウジング16と下部ハウジング20の間に接着性に「密封」されている。上部ハウジング16は好ましくは、ゴム又は他の弾性物質からなる。下部ハウジング20は好ましくは、凹部分25、25’を形成するように容易に成型し、開口部23、23’を形成するように切断することができるプラスチック又はエラストマーのシート物質(例えば、ポリエチレン)からなる。集成装置10は好ましくは、耐水性(すなわち、撥水防護性)であり、もっとも好ましくは、防水性である。システムは身体に容易に適合し、それにより装着部位及びその周辺の運動の自由を許す低いプロファイルを有する。陽極/物質のレザボア26及び陰極/塩のレザボア28は装置10の皮膚接触側上に配置され、平常の取り扱い及び使用中の突発的電気短絡を防止するために十分隔離されている。
【0086】
装置10は上面層34及び身体接触面36を有する末梢接着物30により患者の体表(例えば、皮膚)に接着する。接着面36は装置10が平常の使用者の活動中、身体上の定位置に留まり、そしてしかし前以て決定された(例えば、24時間)装着期間後には無理なく取り外させることを保証する接着性を有する。上部接着面34は下部ハウジング20に接着して、ハウジングの凹部分25、25’内に電極及び物質のレザボアを保持し並びに、上部ハウジング16に取り付けられた下部ハウジング20を保持する。
【0087】
押しボタンスイッチ12は装置10の上面側上に配置され、衣類を通して容易に起動される。スイッチ起動時に、本明細書に記載されたような経皮輸送を容易にするようになっている第1の電気信号又はこれも本明細書に記載された細胞内輸送を容易にするようになっている第2の電気信号を起動することができる。あるいはまた、操作を自動化することができる。電気輸送の1つの態様において、聴覚的アラームが物質の送達開始を合図し、その時点で、回路が前以て決定された(例えば、10分間)送達期間中に電極/レザボアに対して前以て決定されたレベルのDC電流を供給する。LED14は送達期間の間中「オン」のままであり、装置10が活性物質送達モードにあることを示す。バッテリーは好ましくは、装着期間全体(例えば、24時間)にわたり、前以て決定されたレベルのDC電流で装置10に連続的に電力を供給するのに十分な容量を有する。
【0088】
代わりの態様において、図2にスキームにより示されるように、本発明のシステムは装置50である。装置50は正方形、楕円形又は円形であろうと本質的に任意の好都合なサイズ又は形状をもつか又は身体の特定の部位に合わせることができる。装置50は柔軟性であり、体表(例えば、皮膚)に容易に適合し、平常の身体運動とともに曲がることができる。装置50はその上にバッテリー54を固定された電気回路52を有する。概括的に、回路52は比較的薄く、そして好ましくは、例えば、フィルム又はポリマーのウェブのような薄い柔軟性の基材56上に印刷された、描写された、あるいはメッキされた導電性経路からなり、例えば、回路52は印刷された柔軟性回路である。更に、電源54に対して、回路52はまた、装置50により適用される電流のレベル、波形、極性、タイミング、等を調節する1個又は複数の電装品を包含することができる。例えば、回路52は1個又は複数の以下の電装品:電流コントローラー(例えば、抵抗器又はトランジスター基材の電流制御回路)のような制御回路、開閉スイッチ及び/又は経時的に電源の電流出力を調節するようになっているマイクロプロセッサー、を含有することができる。回路52はそれぞれ導電性接着物(ECA)の層58が重なっている2個の回路アウトプットを有する。回路52及び/又はECA層58は好ましくは、水不透過性裏打ち層60で覆われている。
【0089】
装置50は括弧62及び64により示された2種の電極アセンブリーを包含する。電極アセンブリー62及び64は電気絶縁体66により相互から分離されて、それとともに単一の自己含有単位装置を形成する。具体的に示す目的で、電極アセンブリー62は時々、「供与」電極アセンブリーと呼ばれ、他方電極アセンブリー64は時々、「対」電極アセンブリーと呼ばれる。電極アセンブリーのこれらの名称は重要ではなく、任意の特定の装置又は示された装置の操作中に逆転される可能性がある。
【0090】
装置50において、供与電極68は物質のレザボア70に隣接して配置され、他方対電極72は電解質を含有する復帰レザボア74に隣接して配置される。電解質68及び/又は72は本発明のマイクロプロジェクション部材を含んでなることができ、そして任意の適した導電性物質から形成される。レザボア70及び74は液体の溶媒を保持するようになっているポリマーマトリックス又はゲルマトリックスであることができる。皮膚のような生物学的膜を通して物質を送達する時は、概括的に水主体の又は極性溶媒、特に水が好ましい。水主体の溶媒を使用する時は、レザボアのマトリックスは好ましくは、物質を保持している水からなり、そしてもっとも好ましくは、ヒドロゲルのような親水性ポリマーからなる。天然又は合成ポリマーのマトリックスを使用することができる。適したヒドロゲル調製物はその全体が引用により本明細書に取り込まれている、同時係属出願第60/514,433号明細書に開示されている。
【0091】
絶縁体66は、電流(すなわち、電子又はイオンのいずれかの形態の流れ)が電極アセンブリー62と64間を直接通過し、それにより装置が取り付けられた身体を短絡することを防止する非導電性そして非イオン伝導性物質からなる。絶縁体66は空気の間隙、非イオン伝導性ポリマー又は接着剤あるいはイオン及び電子の流れに対する他の適当なバリヤーであることができる。
【0092】
装置50は場合によるイオン伝導性接着層により皮膚に接着させることができる。あるいはまた、又はそれと関連して、本発明のマイクロプロジェクションは、装置を皮膚に固定するためのバーブとして構成されることができる。装置50はまた、好ましくは、皮膚に対する装置の適用直前に取り外される、剥離可能な剥離ライナー76を包含する。あるいはまた、装置10は経皮的物質送達装置に通常使用されるタイプの接着剤覆いにより、皮膚に接着させることができる。概括的に言えば、接着剤覆いがレザボア24及び25と患者の皮膚との間の接触を維持するために、装置の周囲の皮膚に接触する。
【0093】
典型的な装置50において、物質のレザボア70は送達されるべき薬剤又は物質の中性の、イオン化された又はイオン化可能な供給物を含有し、そして対レザボア74は例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム又はそれらの混合物のような適当な電解質を含有する。あるいはまた、装置50はレザボア70及び74の双方中にイオン化可能な又は中性の物質の供給物を含有することができ、その方法で双方の電極アセンブリー62及び64が供与電極アセンブリーとして働くと考えられる。例えば、正の物質のイオンは陽極の電極アセンブリーから皮膚を通って送達され、他方負の物質のイオンは陰極の電極アセンブリーから導入することができると考えられる。概括的に電極アセンブリーの合計の皮膚−接触面積は約1cm〜約200cmであるが、典型的には約5cm〜約50cmの範囲内にあるであろう。
【0094】
送達装置50の物質レザボア70及び復帰レザボア74は生物学的活性物質を経皮的に送達するように患者と物質輸送関係に配置しなければならない。通常これは装置が患者の皮膚と密接に接触して配置されることを意味する。医師又は患者の好み、物質送達計画又は美容のような他の因子に応じて、ヒトの身体上の種々の部位を選択することができる。
【0095】
図3は複数の角質層貫通マイクロプロジェクション84を含んでなるマイクロプロジェクション部材82を有する経皮送達システム80を含んでなる本発明の好ましい態様を示す。図3Aはマイクロプロジェクション84上にコートされた生物学的活性物質86を伴うマイクロプロジェクション部材82の詳細図を示す。コーティングは好ましくは、約10ミクロン未満の厚さを有する。更にマイクロプロジェクション部材82は好ましくは、アプリケーター88、例えば、偏った(例えば、バネ駆動の)衝撃アプリケーターの使用により患者に再現性で、均一に適用される。引用により本明細書に取り込まれている2001年10月12日出願のTrautman等の米国特許出願第09/976,673号明細書に記載されたタイプにおいて考察されているこのような装置は本発明のコートされたマイクロプロジェクションアレーを適用するために使用することができる。もっとも好ましくは、コートされたマイクロプロジェクションアレーは10msec未満以内にマイクロプロジェクションアレー1cm当たり少なくとも0.05ジュールのインパクトで適用される。
【0096】
図4は本発明のマイクロプロジェクション部材90の詳細な部分詳細図である。マイクロプロジェクション92は角質層に微細なスリット又は微細な孔を形成する。マイクロプロジェクション92は場合により患者の皮膚上に部材を固定する補助をするためにバーブ94を伴って構成することができる。本発明の生物学的物質は開口部96を通過することができる。薬剤送達の適用において、物質はマイクロプロジェクション92の外面を下り、角質層を通って移動して、局所的又は全身治療を達成する。この移動は本発明の電気輸送法を使用して補助される。本発明に従うと、マイクロプロジェクションアレー24のマイクロプロジェクション94及び開口部96の数は所望の流速、採取又は送達される物質、使用される送達装置(すなわち、電気輸送、受動的、浸透性、圧力駆動、等)及び当業者に明白な他の因子に関してばらつく。概括的に単位面積当たりのマイクロプロジェクション数(すなわち突起の密度)が大きいほど、より多数の経路が存在するために、皮膚を通る物質の流量がより分散される。
【0097】
本発明の1つの態様において、マイクロプロジェクションの密度は少なくとも約10個のマイクロプロジェクション/cm、より好ましくは、少なくとも約200〜600個のマイクロプロジェクション/cmの範囲内にある。同様に、物質が通過する単位面積当たりの開口部数は少なくとも約10個の開口部/cm、そして約1000個の開口部/cm未満である。同様に、好ましい態様において、マイクロプロジェクション貫通要素は1000ミクロン未満の突起物の長さを有する。更なる態様において、貫通要素は500ミクロン未満、より好ましくは、250ミクロン未満の突起物の長さを有する。マイクロプロジェクションは典型的には約5〜50ミクロンの幅及び厚さを有する。
【0098】
前記のマイクロプロジェクション部材90並びに本発明の範囲内で使用することができる他のマイクロプロジェクション装置及びアレーの更なる詳細は、それらの全体を本明細書に引用により取り込まれている、米国特許第6,322,808号、第6,230,051号明細書及び同時係属米国特許出願第10/045,842号明細書に開示されている。
【0099】
次に図5〜7を参照すると、本発明の経皮送達システム100のスキーム図が示される。システム100はコントローラー及び電力源並びに図6に更に詳細に示される第1及び第2の電流伝導体104を含んでなる電気回路102を含んでなる。マイクロプロジェクション部材106は該第1のマイクロプロジェクション部材の該底面層から突き出る複数の角質層貫通マイクロプロジェクションを有する。マイクロプロジェクション部材106は図7に詳細に示されるように伝導体104に接続された供与電極108を有する。受容電極又は対電極110は供与電極108の周囲に円周状に形成され、更に伝導体104により回路102に接続されている。絶縁体112は電極108及び110間の短絡を防止する。
【0100】
本態様において、供与電極108及び対電極110双方がマイクロプロジェクションアレーを含んでなる。これが角質層を通過する均一な貫通深度を有するシステムを提供する。均一な貫通は、電極間に電圧が適用される時に非常に均一な電界を形成する。角質層−電極界面に破断がないために、均一性が増加する。このような均一な電界が皮膚を横切る物質の電気輸送の効率、信頼性及び再現性に寄与する。当業者はまた、図8にスキームで示されるように、この形態がマイクロプロジェクション部材106の円周の回りに対称的に平行なプレートのコンデンサー構造物114を提供することを認めるであろう。この形態は絶縁体の界面を横切る表面電荷密度を最大にし、それが順次全体的静電界を増加する。この幾何学的構造により形成される図9に示される電界116は球形に対称性である。該形態はまた、広域にわたり電界を分配し、生物学的活性物質と電界の間の相互作用の機会を最大にする。更に、マイクロプロジェクションアレーの使用は高分子の輸送を容易にする。
【0101】
本発明のもう1つの態様は図10に示される。この構造において、経皮送達装置は適当な距離を離して配置された2個のマイクロプロジェクション電極を含んでなる。このような構造は供与電界122及び対電界124を含んでなる半球形の対称性電界120を形成する。前記のように、双方の電極に対してマイクロプロジェクションアレーを使用すると、マイクロプロジェクションの均一な貫通により、非常に均一で、均質な電界を形成する。
【0102】
図11に示される本発明の更にもう1つの態様において、マイクロプロジェクションの互いに入り込む列が2種の電極を形成する。特にマイクロプロジェクション部材130は複数の角質層貫通マイクロプロジェクション132を有する。マイクロプロジェクションの列は絶縁体134により電気的に隔離されて、供与電極136及び対電極138を形成する。開口部140は生物学的活性物質の通過を許す。この構造も供与電極及び対電極双方の均一な貫通の利点を提供する。電気信号の適用時の供与電極136と対電極138の列の間の放電が細胞膜をエレクトロポレーションするのに十分な電界を形成して、それにより生物学的活性物質の細胞内送達を増加することができる。
【0103】
図5及び11に示された態様は例えば、好都合には、それらの間の絶縁層と一緒に固定することができる2個の別のユニットとして製造することができる。
【0104】
本発明のもう1つのアスペクトは、マイクロプロジェクション部材140の部分透視図である図12に示される。図に示すように、マイクロプロジェクション部材140は複数の角質層貫通突起物142を有する。絶縁コーティング144はマイクロプロジェクション部材140の土台146及びマイクロプロジェクション142の本体を覆う。突起物の先端を裸で残すことにより、電界密度はその部分で著しく高度である。電極間に適当な電圧を適用すると、細胞膜に微細な孔を形成することができる膜透過性化エネルギーを形成する。
【0105】
本発明の方法はマイクロプロジェクション部材に第1の電気信号を送達して、生物学的活性物質のエレクトロポレーション及び細胞内電気輸送を容易にさせるための制御装置を形成する工程を含んでなる。制御装置は好ましくはまた、生物学的活性物質の経皮的移動を容易にするために、第1の電気信号の前に、マイクロプロジェクション部材に第2の電気信号を送達するようになっている。
【0106】
本発明の電気輸送態様は皮膚、爪、粘膜又は身体の他の表面のどこかの部分と電気的接触している少なくとも2個の電極を使用する。一般に「供与」電極と呼ばれる一方の電極はそれから治療物質が身体中に送達される電極である。典型的に「対」電極と呼ばれる他方の電極は、身体を通る電気回路を閉じる役割をもつ。例えば、送達されるべき治療物質が正に帯電されたカチオンである場合は陽極が供与電極であり、他方陰極は回路を完結する役割をもつ対電極である。あるいはまた、治療物質が負に帯電したアニオンである場合は、陰極が供与電極であり、陽極が対電極である。更に、アニオン及びカチオン双方の治療物質のイオン又は非帯電の溶解された治療物質が送達される場合は、陽極及び陰極双方を供与電極と考えることができる。更に、電気輸送送達システムは概括的に身体に送達される治療物質の少なくとも1種のレザボア又は源を必要とする。このような供与レザボアの例はポーチ又は空隙、多孔性スポンジ又はパッド及び親水性ポリマー又はゲルマトリックスを包含する。このような供与レザボアは陽極又は陰極と体表に電気的に接続され、そしてそれらの間に配置されて、1種又は複数の治療物質又は薬剤の固定された又は更新可能な源を提供する。
【0107】
電気輸送装置は1個又は複数のバッテリーのような電力源により動力を与えられる。典型的には、ある任意の時に、電源の一方のポールが供与電極に電気的に接続され、他方反対のポールは対電極に接続される。電気輸送物質送達の速度は装置により適用される電流にほぼ比例することが示されているので、多数の電気輸送装置は典型的には、電極を通って適用される電圧及び/又は電流を制御する電気的コントローラーを有し、それにより物質の送達速度を制御する。これらの制御回路は電源により供給される電流及び/又は電圧の電気信号、すなわち振幅、極性、タイミング、波形、等を制御するために種々の電装品を使用する。引用によりその全体が本明細書に取り込まれている、米国特許第5,047,007号明細書はいくつかの適当なパラメーター及び特徴を開示している。マイクロプロジェクション部材の電極を含んでなる本発明の態様において、経皮的送達を高めるための常用の電気輸送電極を伴う装置を増強することが所望されるかも知れない。
【0108】
エレクトロポレーションは微細な孔を形成するそして/又は細胞膜の透過性を増加することにより細胞の内部に一時的なアクセスを与える。有効なエレクトロポレーションはモノクローナル抗体の産生、細胞−細胞融合、細胞−組織融合、膜タンパク質の挿入及び遺伝子形質転換のような重要な利点を提供する。更に、エレクトロポレーションを使用する染料及び蛍光分子の細胞内送達は研究及び診断に利益を与えることができる。
【0109】
電極及び電極アレーはエレクトロポレーションを包含する治療的効果のための電気的波形を送達するために使用することができる。電気的処置は最少の細胞毒性を伴う一過性の膜の不安定化をもたらす方法で実施される。電気的処置の強度は典型的には、適用される電界の強度により表わされる。この電界は電極間の距離で割られた電極に適用される電圧と定義される。電気的信号はパルス振幅、期間、波形及び他の適した特徴を含んでなる。代表的パルス振幅及び期間の範囲は、それらに限定されることは意図されないが、ナノセカンド〜秒範囲の期間中に1〜20,000ボルト/cmを包含する。好ましい範囲は100〜5,000ボルト/cmを含んでなる。特定の態様はミリセカンド範囲内の期間に1〜500ボルト/cmの範囲内の1又は複数のパルスあるいはマイクロセカンドの範囲に750〜1500ボルト/cmの範囲内の1又は複数のパルスを含んでなる。これらの値は例としてのみ与えられ、当業者は意図される用途に基づいて適当な値を選択することができるであろう。現在好ましい電界強度はインビボで分子を送達するためには1000〜5000ボルト/cmの範囲内にある可能性がある。過剰な電界強度は細胞の溶解をもたらし、他方低い電界強度は効力を低下させる。パルスは通常、方形波タイプのものであるが、指数的に減衰するパルスを使用することもできる。各パルスの期間はパルス幅と呼ばれる。エレクトロポレーションはマイクロセカンド〜ミリセカンドの範囲のパルス幅で実施することができる。パルス数は典型的には1〜100の範囲にあり、そして好ましくは、複数のパルスが使用される。
【0110】
エレクトロポレーションにより細胞内部に送達される分子に対して、細胞内にある時に細胞膜の外部の近位にある問題の分子が透過性化状態にあることが重要である。本発明の電気輸送機能はエレクトロポレーションの前に適当な領域に生物学的活性物質を送達するのに非常に適する。従って生物学的活性物質の経皮輸送を容易にするであろう電気信号を電極に送達することが望ましい。電気信号は患者の皮膚を通して物質をイオントホレーゼにより移動させるようになっているであろう。次に、細胞膜をエレクトロポレーションするようになっている電気信号が電極に適用されて生物学的活性物質の細胞内輸送を容易にさせることができる。本発明の更なる促進は、透過性化された細胞膜を通って物質を輸送するようになっている電極に更なる電気信号を供給する工程を含んでなる。当業者が認めるであろうように、本発明の電気輸送及びエレクトロポレーションのアスペクト双方を制御し、そして修飾するために1種又はすべての段階を繰り返すことができる。実例となる電気輸送及びエレクトロポレーション物質送達システムは、その明細がそれら全体を本明細書に取り入れられている米国特許第5,147,296号、第5,080,646号、第5,169,382号及び第5,169383号明細書に開示されている。。
【0111】
本発明に従うコーティング調製物は好ましくは、少なくとも1種の湿潤化剤を包含する。当該技術分野で周知のように、湿潤化剤は概括的に両親媒性分子として説明することができる。湿潤化剤を含有する溶液が疎水性基質に適用されると、分子の疎水性基が疎水性基質に結合し、他方分子の親水性部分は水と接したままである。その結果、基質の疎水性表面は湿潤化剤の疎水性基でコートされず、溶媒による湿潤化を受け易くさせる。湿潤化剤は界面活性剤並びに両親媒性を示すポリマーを包含する。
【0112】
本発明の1つの態様において、コーティング調製物は少なくとも1種の界面活性剤を包含する。本発明に従う1種又は複数の界面活性剤は双イオン性、両性、カチオン、アニオン、又は非イオン性であることができる。界面活性剤の例には、ナトリウムラウロアンホアセテート、ナトリウムドデシルスルフェート(SDS)、セチルピリジニウムクロリド(CPC)、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(TMAC)、ベンズアルコニウムクロリド、Tween20及びTween80のようなポリソルベート、ソルビタンラウレートのような他のソルビタン誘導体及びラウレス−4のようなアルコキシル化アルコールが包含される。もっとも好ましい界面活性剤にはTween20、Tween80及びSDSが包含される。
【0113】
界面活性剤の濃度は好ましくは、コーティング溶液調製物の約0.001〜2重量%の範囲内にある。
【0114】
本発明の更なる態様において、コーティング調製物は両親媒性を有する少なくとも1種のポリマー物質又はポリマーを包含する。前記ポリマーの例には、限定されずに、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)又はエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)のようなセルロース誘導体並びにプルロニックが包含される。
【0115】
本発明の1つの態様において、両親媒性を示すポリマー濃度は好ましくは、コーティング調製物の約0.01〜20重量%の範囲内、より好ましくは、0.03〜10重量%の範囲内にある。更により好ましくは、湿潤化剤の濃度はコーティング調製物の約0.1〜5重量%の範囲内にある。
【0116】
当業者により認められるように、前記の湿潤化剤は別々に又は組み合わせて使用することができる。
【0117】
本発明に従うコーティング調製物は更に親水性ポリマーを包含することができる。親水性ポリマーは好ましくは、以下の群:ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(n−ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコール及びそれらの混合物並びに類似のポリマー、から選択される。当該技術分野で周知のように前記のポリマーは粘度を増加する。
【0118】
コーティング調製物中の親水性ポリマーの濃度は好ましくは、コーティング調製物の約0.01〜20重量%の範囲、より好ましくは、約0.03〜10重量%の範囲内にある。更により好ましくは、湿潤化剤の濃度はコーティング調製物の約0.1〜5重量%の範囲内にある。
【0119】
本発明に従うコーティング調製物は更に、その全体が本明細書に引用により取り込まれている同時係属米国特許出願第10/127,108号明細書に開示されたような生物学的適合性担体を包含することができる。適した生物学的適合性担体はヒトアルブミン、バイオ工学処理したヒトアルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリスルフェート、ポリアミノ酸、蔗糖、トレハロース、メレジトース、ラフィノース及びスタキオースを包含する。
【0120】
コーティング調製物中の生物学的適合性担体の濃度は好ましくは、コーティング調製物の約2〜70重量%の範囲、より好ましくは、5〜50重量%の範囲内にある。更により好ましくは、湿潤化剤の濃度はコーティング調製物の約10〜40重量%の範囲内にある。
【0121】
本発明に従うコーティング調製物は更に、その全体を本明細書に引用により取り込まれている同時係属米国特許出願第60/514,533号明細書に開示されたような安定剤を包含することができる。適した安定剤の例は、限定されずに、非還元糖、多糖類、還元糖又はDNアーゼインヒビターを包含する。
【0122】
本発明のコーティングは更に、その全体を本明細書に引用により取り込まれている同時係属米国特許出願第10/674,626号及び第60/514,433号明細書に開示されたような血管収縮剤を包含することができる。前記の同時係属出願に示されたように、血管収縮剤はマイクロプロジェクション部材上への適用中及びその後の出血を抑制するために使用される。好ましい血管収縮剤には、限定されずに、アミデフリン、カファミノール、シクロペンタミン、デオキシエピネフリン、エピネフリン、フェリプレッシン、インダナゾリン、メチゾリン、ミドドリン、ナファゾリン、ノルデフリン、オクトドリン、オルニプレッシン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルエタノールアミン、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、プソイドエフェドリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、ツアミノヘプタン、チマゾリン、バソプレッシン、キシロメタゾリン及びそれらの混合物が包含される。もっとも好ましい血管収縮剤はエピネフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、インダナゾリン、メチゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、オキシメタゾリン及びキシロメタゾリンを包含する。
【0123】
使用される場合は、血管収縮剤の濃度は好ましくは、コーティングの約0.1重量%〜10重量%の範囲内にある。
【0124】
本発明の更にもう1つの態様において、コーティング調製物は、その全体が本明細書に引用により取り込まれている同時係属米国特許出願第09/950,436号明細書に開示されたような少なくとも1種の「経路開放モジュレーター」を包含する。前記の同時係属出願に示されたように、経路開放モジュレーターは皮膚の天然の治癒過程を防止又は減少させ、それによりマイクロプロジェクション部材のアレーにより角質層に形成される経路又は微細スリットの閉鎖を防止する。経路開放モジュレーターの例には、限定されずに、浸透性物質(例えば、塩化ナトリウム)及び双イオン性化合物(例えば、アミノ酸)が包含される。
【0125】
同時係属出願に定義された用語「経路開放モジュレーター」は更に、ベタメサゾン21−ホスフェート二ナトリウム塩、トリアムシノロンアセトニド21−二ナトリウムホスフェート、ヒドロコルタメート塩酸、ヒドロコーチゾン21−ホスフェート二ナトリウム塩、メチルプレドニソロン21−ホスフェート二ナトリウム塩、メチルプレドニソロン21−スクシネートナトリウム塩、パラメタゾン二ナトリウムホスフェート及びプレドニソロン21−スクシネートナトリウム塩のような抗炎症剤並びに、クエン酸、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、デキストリン硫酸ナトリウム、アスピリン及びEDTAのような抗凝固剤を包含する。
【0126】
本発明に従うコーティング調製物はまた、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のような非水性溶媒、染料、顔料、不活性充填剤、透過促進剤、賦形剤及び、医薬品の他の常用の成分又は当該技術分野で知られた経皮装置を包含することができる。
【0127】
他の知られた調製物添加剤もまた、それらがコーティング調製物の必要な溶解度及び粘度の特性並びに乾燥されたコーティングの物理的保全性に悪い影響を与えない限り、コーティング調製物に添加することができる。
【0128】
コーティング調製物は好ましくは、各マイクロプロジェクション10を有効にコートするためには約500センチポアズ未満、そして3センチポアズを超える粘度を有する。コーティング調製物はより好ましくは、約3〜200センチポアズの範囲内の粘度を有する。
【0129】
本発明に従う所望のコーティングの厚さはシートの単位面積当たりのマイクロプロジェクションの密度並びにコーティング組成物の粘度及び濃度並びに選択されるコート法に左右される。コーティングの厚さは好ましくは、50ミクロン未満である。
【0130】
1つの態様において、コーティングの厚さはマイクロプロジェクションの表面から測定して25ミクロン未満、より好ましくは、10ミクロン未満である。更により好ましくは、コーティングの厚さは約1〜10ミクロンの範囲内にある。
【0131】
本発明の他のアスペクトにおいて、生物学的活性物質はヒドロゲル調製物中に含有される。一方の電極に隣接したレザボア中に含有される1種又は複数のヒドロゲル調製物は好ましくは、その全体が本明細書に引用により取り込まれている同時係属米国特許出願第60/514,433号明細書に開示されたヒドロゲル調製物のような水主体のヒドロゲルを含んでなる。
【0132】
当該技術分野で周知のように、ヒドロゲルは水中で膨潤する高分子ポリマーの網状構造物である。適したポリマーの網状構造物の例には、限定されずに、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(n−ビニルピロリドン)及びプルロニックが包含される。もっとも好ましいポリマー物質はセルロース誘導体である。これらのポリマーは異なる平均分子量を示す種々の等級で入手することができ、従って異なるレオロジー特性を示す。
【0133】
本発明に従うヒドロゲル調製物はまた、1種の界面活性剤(すなわち湿潤化剤)を包含する。本発明に従う1種又は複数の界面活性剤は双イオン性、両性、カチオン、アニオン、又は非イオン性であることができる。界面活性剤の例には、ナトリウムラウロアンホアセテート、ナトリウムドデシルスルフェート(SDS)、セチルピリジニウムクロリド(CPC)、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(TMAC)、ベンズアルコニウムクロリド、Tween20及びTween80のようなポリソルベート、ソルビタンラウレートのような他のソルビタン誘導体及びラウレス−4のようなアルコキシル化アルコールが包含される。もっとも好ましい界面活性剤にはTween20、Tween80及びSDSが包含される。
【0134】
ヒドロゲル調製物は好ましくは更に、両親媒性を有するポリマー物質又はポリマーを包含する。前記ポリマーの例には、限定されずに、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)又はエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)のようなセルロース誘導体並びにプルロニックが包含される。
【0135】
界面活性剤の濃度は好ましくは、ヒドロゲル調製物の0.001%と2重量%の間からなる。両親媒性を示すポリマーの濃度は好ましくは、ヒドロゲル調製物の約0.5〜40重量%の範囲内にある。
【0136】
前記のように、本発明の少なくとも1つの更なる態様に従うと、ヒドロゲル調製物は少なくとも1種の生物学的活性物質、例えばワクチンを含有する。ワクチンは好ましくは、限定されずに、ウイルス及びバクテリア、タンパク質主体のワクチン、多糖類主体のワクチン及び核酸主体のワクチンを包含する前記のワクチンの1種を含んでなる。
【0137】
本発明の更なる態様において、ヒドロゲル調製物は、その全体を本明細書に引用により取り込まれている同時係属米国特許出願第09/950,436号明細書に開示されたような少なくとも1種の経路開放モジュレーターを含有する。適した経路開放モジュレーターには、限定されずに、浸透性物質(例えば、塩化ナトリウム)、双イオン性化合物(例えば、アミノ酸)並びに、ベタメサゾン21−ホスフェート二ナトリウム塩、トリアムシノロンアセトニド21−二ナトリウムホスフェート、ヒドロコルタメート塩酸、ヒドロコーチゾン21−ホスフェート二ナトリウム塩、メチルプレドニソロン21−ホスフェート二ナトリウム塩、メチルプレドニソロン21−スクシネートナトリウム塩、パラメタゾン二ナトリウムホスフェート及びプレドニソロン21−スクシネートナトリウム塩のような抗炎症剤及び、クエン酸、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、デキストリン硫酸ナトリウム及びEDTAのような抗凝固剤が包含される。
【0138】
本発明に従うヒドロゲル調製物はまた、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のような非水性溶媒、染料、顔料、不活性充填剤、透過促進剤、賦形剤及び、医薬品の他の常用の成分又は当該技術分野で知られた経皮装置を包含することができる。
【0139】
ヒドロゲル調製物は更に、少なくとも1種の血管収縮剤を包含することができる。適した血管収縮剤も同様に、限定されずに、エピネフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、インダナゾリン、メチゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、アミデフリン、カファミノール、シクロペンタミン、デオキシエピネフリン、エピネフリン、フェリプレッシン、インダナゾリン、メチゾリン、ミドドリン、ナファゾリン、ノルデフリン、オクトドリン、オルニプレッシン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルエタノールアミン、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、プソイドエフェドリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、ツアミノヘプタン、
チマゾリン、バソプレッシン及びキシロメタゾリン及びそれらの混合物を包含する。
【実施例1】
【0140】
本発明のシステムのエレクトロポレーション効果を図5〜7に示したタイプのマイクロプロジェクションアレー部材を使用して観察した。マイクロプロジェクション部材はコアのマイクロプロジェクションアレーの周囲に同心の更なるマイクロプロジェクションアレーの電極リングを有するエレクトロポレーションパルス送達電極からなった。双方のアレーは非伝導性リングにより分離されており、それぞれ、細胞内の取り込みが所望される位置に複数のマイクロプロジェクションを提供する2個のエレクトロポレーション電極を形成する。本実施例において、マイクロプロジェクションアレーの電極を通してエレクトロポレーションパルスを適用することにより、HGP中へのマイクロプロジェクションDNA送達後に細胞内DNAの取り込みの増加が達成された。DNA取り込みはmRNAレベルに対する遺伝子発現を検出することによりモニターし、本システムの効力の比較を通常の先行技術のマクロ−針アレーの電極に対して実施した。本実施例は電気輸送促進を伴う及び伴わないマイクロプロジェクションアレー並びに市販のマクロ−針エレクトロポレーションシステムを含んでなる7種の処置群を包含する。
【0141】
第1群:細胞内送達のどんな電気輸送促進をも伴わないマイクロプロジェクションアレーMF S250によるDNA送達。
【0142】
第2群:マイクロプロジェクションアレーS250による、次に市販のマクロ−針アレーの電極(Cytopulse,Inc.)を通して適用されるエレクトロポレーションによるDNA送達。
【0143】
第3群:マイクロプロジェクションアレーS250による、次に同心のマイクロプロジェクションアレーの電極を通して適用されるエレクトロポレーションのために構成されたエレクトロポレーションによるDNA送達。
【0144】
第4群:細胞内送達のどんな電気輸送促進をも伴わないマイクロプロジェクションアレーMF 1065によるDNA送達。
【0145】
第5群:マイクロプロジェクションアレーMF 1065による、次に市販のマクロ−針アレーの電極(Cytopulse,Inc.)を通して適用されるエレクトロポレーションによるDNA送達。
【0146】
第6群:細胞内送達のどんな電気輸送促進をも伴わないマイクロプロジェクションアレーMF 1066によるDNA送達。
【0147】
第7群:マイクロプロジェクションアレーMF 1066による、次に市販のマクロ−針アレーの電極(Cytopulse,Inc.)を通して適用されるエレクトロポレーションによるDNA送達。
【0148】
物質及び方法
シートの面に約90°の角度で曲げられたチタンのマイクロプロジェクション、約2cmの面積及び増加する突き出し物の長さ、MF S250(250μm),MF 1065(400μm)及びMF 1066(600μm)を含んでなるマイクロプロジェクションアレーを使用した。アレーをアレー1個当たり40μgのDNAの負荷を伴うCEN014(ベータ−ガラクトシダーゼ発現プラスミド)でコートした。密封された裏打ち接着性パッドを使用して皮膚にアレーを固定した。電気輸送条件はエレクトロポレーション(EP)に対して設定され、マイクロプロジェクションアレー送達部位において皮膚中に挿入されたCytopulseの2×6の針のアレーの電極(6NA)により送達される時は4EPパルス、100V/cm、40msec、2Hz.であり、そしてBioRad GenePulser Xcellパルス発生装置を使用してマイクロプロジェクションアレー電極により送達される時は、4EPパルス、100V/cm、40msec、2Hz.であった。
【0149】
無毛モルモット(HGP)の皮膚に対するDNAの送達は以下の通りであった。コートしたマイクロプロジェクションアレーを生存HGPに1分間適用し、適用部位をマークした。マイクロプロジェクションアレーによるDNA送達を表1に示すように電気輸送により促進した。残留物の分析により、48%の平均送達率、又は19.5μgのDNAの皮膚中への平均送達を示した。すべての動物が麻酔下に留まる間にマイクロプロジェクションアレーによるDNA送達の直後にエレクトロポレーション(EP)を実施した。
【0150】
【表1】

【0151】
マイクロプロジェクションアレーDNA送達後のプラスミドDNAの細胞内取り込みをrtPCRによりmRNAレベルに対するコードされたベータ−ガラクトシダーゼタンパク質の遺伝子発現を測定することにより決定した。DNA送達の1日(24時間)後に、動物を殺し、8mmの皮膚生検を得た。生検をすべての処置部位の中心、皮内注射部位及び未処置皮膚部位から得た。生検を秤量し、粉砕及び短時間の音波処理によりホモジナイズした。業者のプロトコールに従ってStratagan RNA抽出キット(Absolutely RNATMRT−PCR Miniprep Kit(Stratagene 400800)を使用してRNAを抽出し、ProSTAR First strandRT−PCR kit(Stratagene Cat#200420)を使用して第1ストランドcDNAを形成した。rtPCR反応をInvitrogen Kit:PCR Supermix(Invitrogen 10572014)を使用して実施した。
【0152】
本実施例のPCR条件は以下の通りである。使用されたプライマーはIntron RT 5’プライマー−5’CCG GGA ACG GTG CAT TGG AA3’[SEQ.ID NO:1]及び#1057 b−gal intron RT3’プライマー−5’ ATC GGC CTC AGG AAG ATC GC3’[SEQ.ID NO:2]を包含した。提供されたフラグメントは1286bp(プラスミド)又は459bp(メッセージ)であった。2μlのプライマーを50μlの反応物中5μgの総出発RNAとともに使用した。PCR反応条件は5分間95℃、1分間92℃の40サイクル、30秒間66℃、1分間72℃そして72℃で10分の延長であった。PCR反応物8μlを131ヌクレオチドのベータ−ガラクトシダーゼmRNA特異的フラグメントの存在に対するゲル電気泳動法により分析した。この方法は定性的方法でベータ−ガラクトシダーゼ発現を検出する。
【0153】
表1から認められるように、マイクロプロジェクションアレーS250が電気輸送促進を伴わずにDNAをHGPの皮膚に輸送するために使用された時(第1群)に、発現は検出できなかった(n=2)。市販の6針アレーのアプリケーターを使用したエレクトロポレーション後(n=3)(第2群)にも発現は認められなかった。しかし、統合された同心電極を伴うマイクロプロジェクションアレーを使用するDNAの送達及びDNA送達後直接の電界の適用は2/3のmRNA陽性の組織生検をもたらし、それは、この電極が放電を送達し、細胞内DNA取り込み及び皮膚中の発現を高めるために適することを示す。本実施例群において、マイクロプロジェクションアレーの電極は、マイクロプロジェクション部材によるDNA送達後の遺伝子発現を促進する点で市販の6本のマクロ−針の2列の電極より優れていた。
【0154】
当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、本発明に種々の変更及び修正を実施してそれを種々の用途及び条件に適応させることができる。従ってこれらの変更及び修正は適当に、公正に、以下の請求の範囲の同等物の完全な範囲内にあることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明のシステムの1つの態様の分解透視図である。
【図2】本発明のもう1つの態様の側面の断面図である。
【図3】本発明のマイクロプロジェクション部材及び代表的アプリケーターの詳細を伴う透視図である。
【図4】本発明に従うマイクロプロジェクション部材の透視図である
【図5】本発明に従う、生物学的活性物質を経皮送達するためのシステムの1つの態様の透視図である。
【図6】図5に示したシステムのマイクロプロジェクション部材の一部の詳細図である。
【図7】図5に示したシステムの一部を示す詳細なスキーム図である。
【図8】図5に示した態様を使用して形成することができる二極性電荷分布のプロファイルのスキーム図である。
【図9】図5で示したマイクロプロジェクション部材により形成される電界のスキーム図である。
【図10】本発明のもう1つの態様により形成される電界のスキーム図である。
【図11】本発明の1つの態様を表わすマイクロプロジェクション部材の部分透視図である。
【図12】本発明のもう1つの態様を表わすマイクロプロジェクション部材の部分透視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面層及び底面層を有する第1の電極であって、かつ、該第1の電極の底面層から突き出る複数の角質層貫通マイクロプロジェクションを有する、上記第1の電極;
第2の電極;
生物学的活性物質を含有する該第1の電極と結合された生物学的活性物質の源;並びに
細胞膜をエレクトロポレーションすることが可能な該第1の電極及び該第2の電極に第1の電気信号を送達するようになっている回路:
を含んでなる生物学的活性物質を経皮的に送達するためのシステム。
【請求項2】
第1の電気信号が生物学的活性物質の細胞内移動を容易にする請求項1のシステム。
【請求項3】
第1の電気信号が約100V/cm〜5,000V/cmの範囲内の電界密度を形成するようになっている請求項1のシステム。
【請求項4】
回路が更に、生物学的活性物質の経皮的移動を容易にする、第1の電極及び第2の電極に第2の電気信号を送達するようになっている請求項2のシステム。
【請求項5】
第2の電極が上面層及び底面層及び、第2の電極の底面層から突き出る複数の角質層貫通マイクロプロジェクションを有する請求項1のシステム。
【請求項6】
第1の電気信号が実質的に均一な電界を形成する請求項5のシステム。
【請求項7】
第1の電極及び第2の電極が第1のマイクロプロジェクション部材を含んでなる請求項6のシステム。
【請求項8】
第1の電極及び第2の電極が第1のマイクロプロジェクション部材の区域を含んでなり、そして第1の電極及び第2の電極が絶縁体により分離されている請求項7のシステム。
【請求項9】
第1の電極が円形の区域を含んでなり、そして第2の電極が該円形の区域の周囲の円周区域を含んでなる請求項8のシステム。
【請求項10】
第1の電気信号が球状に対称的な電界を形成する請求項9のシステム。
【請求項11】
第1の電極及び第2の電極がマイクロプロジェクション部材の円周の周囲に平行なプレートのコンデンサー(capacitor)構造物を含んでなる請求項9のシステム。
【請求項12】
第1の電極及び第2の電極が絶縁体により分離された角質層貫通マイクロプロジェクションの交互の列を含んでなる請求項7のシステム。
【請求項13】
第1の電極が第1のマイクロプロジェクション部材を含んでなりそして第2の電極が第2のマイクロプロジェクション部材を含んでなる請求項6のシステム。
【請求項14】
第1のマイクロプロジェクション部材及び第2のマイクロプロジェクション部材が半球状に対称的な電界を形成するように配置されている請求項13のシステム。
【請求項15】
細胞をエレクトロポレーションするために電界密度を最大にするように構成されている第1のマイクロプロジェクション部材上に配置された絶縁コーティングを更に含んでなる請求項5のシステム。
【請求項16】
生物学的活性物質が免疫学的活性物質を含んでなる請求項1のシステム。
【請求項17】
生物学的活性物質が抗感染薬、抗生物質、抗ウイルス剤、鎮痛剤、フェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、ブプレノルフィン、鎮痛剤組み合わせ物、麻酔剤、食欲抑制剤、抗関節炎剤、抗喘息剤、テルブタリン、抗痙攣剤、抗鬱剤、抗糖尿病剤、下痢止め剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗偏頭痛調製物、スコポラミン及びオンダンセトロンのような抗乗り物酔い調製物、制嘔吐剤、抗腫瘍剤、抗パーキンソン病薬、止痒剤、抗精神病剤、解熱剤、鎮痙剤、抗コリン作用剤、交感神経興奮様薬、キサンチン誘導体、循環器官用調製物、カルシウムチャンネルブロッカー、ニフェジピン、ベータブロッカー、ベータアゴニスト、ドブタミン、リトドリン、抗不整脈剤、降圧剤、アテノロール、ACEインヒビター、ラニチジン、利尿剤、血管拡張剤、中枢神経系刺激剤、咳及び風邪用調製物、うっ血除去剤、診断薬、ホルモン、副甲状腺ホルモン、催眠剤、免疫抑制剤、筋弛緩剤、副交感神経遮断剤、副交感神経興奮様薬、プロスタグランジン、タンパク質、ペプチド、精神刺激薬、鎮静剤及び精神安定剤、からなる群から選択される請求項1のシステム。
【請求項18】
生物学的活性物質源がマイクロプロジェクション上の生物学的適合性のコーティングを含んでなる請求項1のシステム。
【請求項19】
コーティングが更に、界面活性剤、両親媒性ポリマー、親水性ポリマー、生物学的適合性担体、安定剤、血管収縮剤及び経路開放モジュレーターからなる群から選択される化合物を含んでなる請求項18のシステム。
【請求項20】
生物学的活性物質源がヒドロゲルを含んでなる請求項1のシステム。
【請求項21】
ヒドロゲルが更に、高分子ポリマーの網状構造物、界面活性剤、両親媒性ポリマー、血管収縮剤及び経路開放モジュレーターからなる群から選択される化合物を含んでなる請求項20のシステム。
【請求項22】
a)i)上面層及び底面層を有する第1の電極であって、かつ、該第1の電極の底面層から突き出る複数の角質層貫通マイクロプロジェクションを有する、上記第1の電極、
ii)第2の電極、
iii)生物学的活性物質を含有する第1の電極と結合された生物学的活性物質の源、並びに
iv)細胞膜をエレクトロポレーションすることができる第1及び第2の電極に第1の電気信号を送達するようになっている回路、
を含んでなる経皮的送達システムを提供し、並びに
b)生物学的活性物質の細胞内移動を容易にするために第1の電極及び第2の電極に該第1の電気信号を送達する、
工程を含んでなる生物学的活性物質を送達する方法。
【請求項23】
第1の信号を送達する工程が約100V/cm〜5,000V/cmの範囲内の電界密度を形成する請求項22の方法。
【請求項24】
第1の電気信号を繰り返して送達する工程を更に含んでなる請求項22の方法。
【請求項25】
第2の電気信号を送達する工程が第1の電気信号を送達する工程の前に起る、生物学的活性物質の経皮的移動を容易にする、第1の電極及び第2の電極に第2の電気信号を送達する工程を更に含んでなる請求項22の方法。
【請求項26】
第2の電極が上面層及び底面層及び、第2の電極の底面層から突き出る複数の角質層貫通マイクロプロジェクションを有し、そして第1の電気信号を送達する工程が更に、実質的に均一な電界を形成する工程を含んでなる請求項22の方法。
【請求項27】
第1の電極及び第2の電極が第1のマイクロプロジェクション部材を含んでなる請求項26の方法。
【請求項28】
第1の電極がマイクロプロジェクション部材の円形の区域を含んでなり、そして第2の電極が該円形の区域の周囲の円周区域を含んでなり、そして第1の電気信号を送達する工程が球状に対称的な電界を形成する請求項27の方法。
【請求項29】
第1の電極及び第2の電極が第1のマイクロプロジェクション部材上の角質層貫通マイクロプロジェクションの交互の列を含んでなり、そして該交互の列が絶縁体により分離されている請求項27の方法。
【請求項30】
第1の電極が第1のマイクロプロジェクション部材を含んでなり、そして第2の電極が第2のマイクロプロジェクション部材を含んでなり、そして該第1のマイクロプロジェクション部材及び該第2のマイクロプロジェクション部材が、第1の電気信号を送達する工程が半球状に対称的な電界を形成するように配置される請求項26の方法。
【請求項31】
細胞をエレクトロポレーションするために電界密度を最大にするようにマイクロプロジェクション上に絶縁コーティングを配置する工程を更に含んでなる請求項26の方法。
【請求項32】
マイクロプロジェクション上に絶縁コーティングを配置する工程が該マイクロプロジェクションの先端を未コートのままで残す工程を含んでなる請求項31の方法。
【請求項33】
第2の電気信号を送達し、そして第1の電気信号を送達する工程の後に、細胞膜を横切って生物学的活性物質を輸送するために第1の電極及び第2の電極に第3の電気信号を送達する工程を更に含んでなる請求項25の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−526794(P2007−526794A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539577(P2006−539577)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/036180
【国際公開番号】WO2005/049108
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】