説明

経路探索方法、経路探索装置、経路探索を行うためのコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを記録した記録媒体

【課題】目的地の最寄道路が細街路であるとき、目的地まで直接案内をすることができない。
【解決手段】細街路網内の目的地に対しその近くの幹線道路(目標幹線道路)を特定して、当該幹線道路において目的地を囲む細街路網内へ進入可能な交差点(目標交差点)を抽出し、この交差点(目標交差点)から目的地までの経路探索(細街路探索)と出発地からこの交差点(目標交差点)までの経路探索(主経路探索)とを別個に行い、両者を合体させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナビゲーションシステムで経路探索を実行するときに、目的地や出発地の最寄道路が細街路であったときの経路探索方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、経路探索は専ら幹線道路について行われていた。幹線道路を構成するリンクやノードにつき、道路情報が付与されていたからである。ここに道路情報はリンクやノードの特性を規定する情報であり、例えばリンクについては道路種を規定し、ノードについては信号機の有無を規定する。かかる道路情報は専らフィールド調査に基づき蓄積されてきた。運転者に負担のかからない経路を優先的に探索するために経路コストが利用される。リンク及びノード毎に定められるコスト情報を探索経路の全リンク及びノードにつき加算して経路コストは決定される。コスト情報は道路情報に基づき特定される。
細街路では運転者にかかる負担が大きくなる。そこで細街路から幹線道路へ抜け出すための経路を探索する方法が特許文献1に記載されている。また、本願に関連する他の技術を開示する文献として特許文献2を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−232956号公報
【特許文献2】特開2004−347539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今のナビゲーション装置にはより詳細な案内が要求されてきており、例えば目的地の最寄道路が細街路であるときなどにおいても、目的地まで直接案内可能な経路の探索が要求される。
しかしながら、従来では、細街路に関する道路情報の蓄積が不十分であり、例えば目的地の最寄道路が細街路であるときには、当該目的地まで直接案内できない場合が多かった。その場合、目的地に最も近い幹線道路の地点を案内終了地点とし、この案内終了地点までの経路探索をするにとどまっていた。そうすると、案内終了地点から目的地まで運転者は地図を見ながら、また周囲の景色、標識を見ながら独自の判断で細街路を運転することとなる。細街路は幅員が狭く、かつ、歩行者の安全を確保する見地から一時停止や一方通行等の規制が多いため、運転に負担が伴う。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記課題を解決することを目的とする。この発明の第1の局面は次のように規定される。即ち、
経路の第1の指定地の最寄道路が細街路であるときの経路探索方法であって、
前記第1の指定地に対し、前記細街路を介し又は前記細街路及び前記細街路に連絡する他の細街路を介し、かつ他の幹線道路を何ら介することなく連絡する目標幹線道路を特定するステップと、
該目標幹線道路と前記細街路及び/又は前記他の細街路との交差点であって、前記経路における車輌進行方向に順方向の目標交差点を抽出するステップと、
前記第1の指定地と前記目標交差点とをつなぐ前記細街路及び/又は前記他の細街路の経路において最も小さい経路コストの経路を探索し、この探索された経路を細街路経路として指定するステップと、
前記細街路経路上にある前記目標交差点を第1の目標通過交差点とし、該第1の目標通過交差点と前記経路の第2の指定地との間の主経路を探索するステップと、
を含むことを特徴とする経路探索方法。
【0006】
第1の指定地を目的地とし、第2の指定地を出発地としたとき、目的地の最寄道路が細街路であると、目的地に対しその近くの幹線道路(目標幹線道路)を特定して、当該幹線道路において目的地へ連絡する細街路へ進入可能な交差点(目標交差点)を抽出し、この交差点(目標交差点)から目的地までの経路探索(細街路探索)と出発地からこの交差点(目標交差点)までの経路探索(主経路探索)とを別個に行う。後者の主経路探索はナビゲーション装置の備える汎用機能でカバーされる。前者の細街路探索はナビゲーション装置に新たに要求される機能であるが、目的地とその近くの幹線道路という狭い範囲での経路探索であるので、特別な処理を行ってもナビゲーション装置にかかる負担は少なく、経路探索に要する時間がいたずらに増大することもない。
【0007】
ここに、経路の指定地とは既述の目的地又は出発地の他、ナビゲーションシステム上で指定可能な経由地も含む。
目標幹線道路は第1の指定地が隣接する細街路へ直接連絡し、又は当該細街路へ連絡する他の細街路へ直接連絡し、当該目標幹線道路と目的地との間に他の幹線道路を介在させない。その意味で、複数の目標幹線道路が特定されることがある。
この明細書において、第1の指定地が隣接する細街路とこの細街路へ連絡する他の細街路のことを細街路網と表現することがある。
【0008】
目標幹線道路において抽出される目標交差点は経路における車輌進行方向に順方向である。ここに順方向とは車輌の進行を何ら規制しないことを意味する。例えば第1の指定地が目的地である場合、幹線道路と細街路網との交差点において当該目的地側への進入が許される交差点が目標交差点となる。一方通行等の進行方向規制により幹線道路から細街路網へ進入できない交差点は目標交差点となりえない。他方、第1の指定地が出発地である場合、幹線道路と細街路網との交差点において出発地側の細街路網から幹線道路へ退出できる交差点が目標交差点となる。
また、出発地とは、経路探索が行われる時点における出発地を意味し、自車の現在地が出発地となることが多い。勿論、自車の現在地以外の地点を出発地として指定することができる。
【0009】
細街路網中の第1の指定地と目標交差点との間で最適な経路を特定する際に、経路コストの概念を利用することができる。細街路網において探索した経路に沿って各細街路(リンク)やその各交差点(ノード)のコスト情報を加算したものが経路コストであり、この経路コストの最も小さいものが細街路経路となる。
【0010】
ナビゲーション装置にインストールされる情報において、一般的に、細街路に関する情報は、ディスプレイへの描画対象としての地図情報程度である。地図情報は地図上における細街路の位置を示す情報であり、この情報はマップマッチングのためにも用いられる。ただ、地図情報のみでは経路探索のとき利用できず、細街路のリンクやノードのコスト情報を定めるための基礎情報とはなり得ない。幹線道路と同様な情報を細街路のリンクやノードに付与するとデータ量が膨大となってナビゲーションシステムにかかる負担が大きくなるからである。
他方、この発明で規定する幹線道路とは、ナビゲーションシステムの汎用的な道路探索機能において探索対象となりうる道路を指す。かかる幹線道路には地図情報と道路情報とが予め与えられている。例えば地図情報としてのリンクに対応して道路情報としての道路種に関する情報、車線数に関する情報等が与えられ、また地図情報としてのノードに対応して道路情報としての信号機の有無に関する情報等が与えられる。道路情報を予め定められた「道路情報−コスト情報表」に対応させることにより、リンク及びノード毎にコスト情報を特定できる。勿論、リンク及びノードへ固有のコスト情報を予め割りつけることもできる。
【0011】
この発明では、第1の指定地が属する細街路網を構成する各リンクと各ノードのコスト情報を特別な方法で特定し、このコスト情報を用いて第1の指定地と目標交差点とをつなぐ経路の経路コストを演算し、最も経路コストの小さい経路(細街路経路)を探索する。
ここに、細街路網を構成する各リンクと各ノードのコスト情報は細街路に付与されている地図情報を用いて演算する。
地図情報として、細街路網の交差点における(1)右左折回数、(2)交差点の横断回数、(3)進入路と退出路の交差角度を利用することができる。
即ち、この発明の第2の局面は次のように規定される。
第1の局面に記載の経路探索方法において、前記細街路経路の経路コストは、細街路交差点での右左折回数、横断回数、進入路と退出路との交差角度の少なくとも一つを参照して演算される。
【0012】
ナビゲーションシステムが、道路情報とは別個に、交通規制データを備えるときには、交通規制データを用いて細街路網を構成する各リンクと各ノードのコスト情報を演算できる。ここに交通規制データとして、例えば財団法人日本交通管理技術協会の提供するデジタル交通規制データを用いることができる。交通規制データの中でも、一方通行データ、一時停止データを用いることが好ましい。
即ち、この発明の第3の局面は次のように規定される。
第1又は第2の局面に記載の経路探索方法において、前記細街路経路の経路コストは、一方通行データ及び/又は一時停止データを参照して演算される。
【0013】
経由地の最寄道路が細街路である場合、経由地を目的地として出発地からそこまでの経路探索によって特定される第1の経路が通過する目標交差点Aと、経由地を出発地としてそこから目的地までの経路探索によって特定される第2の経路が通過する目標通過交差点Bとは必ずしも一致しない。
そこで、運転者が経由地における所謂土地カンを養えるように、細街路経路Bを通って経由地を囲む細街路網から幹線道路へ退出した後、主経路Bにおいて第2の経由地として目標通過交差点Aを設定することが好ましい。これにより、経由地を離れて目標通過交差点Bから幹線道路へ退出したのち、幹線道を通って既に通過経験のある目標通過交差点Aを再度通過することができるため、経由地付近の土地カンが養われる。
即ち、この発明の第4の局面は次のように規定される。
第1〜第3のいずれかに記載の経路探索方法において、経由地の最寄道路が細街路であるとき、出発地から前記経由地までの経路における前記経由地に連絡する目標通過交差点Aを保存し、
前記経由地から目的地までの経路における前記経由地に連絡する目標通過交差点Bを保存し、
前記目標通過交差点Bから前記目的地までの主経路において前記目標通過交差点Aを第2の経由地として設定する。
【0014】
また、この発明の第5の局面は次のように規定される。即ち、
経路の第1の指定地の最寄道路が細街路であるときの経路探索装置であって、
前記第1の指定地に対し、前記細街路を介し又は前記細街路及び前記細街路に連絡する他の細街路を介し、かつ他の幹線道路を何ら介することなく連絡する目標幹線道路を特定する目標幹線道路特定部と、
該目標幹線道路と前記細街路及び/又は前記他の細街路との交差点であって、前記経路における車輌進行方向に順方向の目標交差点を抽出する目標交差点抽出部と、
前記第1の指定地と前記目標交差点とをつなぐ前記細街路及び/又は前記他の細街路において最も小さい経路コストの経路を探索し、この探索された経路を細街路経路として指定する細街路経路探索部と、
前記細街路経路上にある前記目標交差点を第1の目標通過交差点とし、該第1の目標通過交差点と前記経路の第2の指定地との間の主経路を探索する主経路探索部と、
を含むことを特徴とする経路探索装置。
このように規定される第5の局面の経路探索装置によれば、第1の局面と同様の効果が得られる。
【0015】
この発明の第6の局面は次のように規定される。即ち、
第5の局面の経路探索装置において、前記細街路経路の経路コストは、細街路交差点での右左折回数、横断回数、進入路と退出路との交差角度の少なくとも一つを参照して演算される。
このように規定される第6の局面の経路探索装置によれば、第2の局面と同様の効果が得られる。
【0016】
この発明の第7の局面は次のように規定される。即ち、
第5又は第6の局面の経路探索装置において、前記細街路経路の経路コストは、一方通行データ及び/又は一時停止データを参照して演算される。
このように規定される第7の局面の経路探索装置によれば、第3の局面と同様の効果が得られる。
【0017】
この発明の第8の局面は次のように規定される。即ち、
第1〜第3のいずれかに記載の局面の経路探索装置において、経由地の最寄道路が細街路であるとき、出発地から前記経由地までの経路における前記経由地に連絡する目標通過交差点Aを保存し、
前記経由地から目的地までの経路における前記経由地に連絡する目標通過交差点Bを保存し、
前記目標通過交差点Bから前記目的地までの主経路において前記目標通過交差点Aを第2の経由地として設定する。
このように規定される第8の局面の経路探索装置によれば、第4の局面と同様の効果が得られる。
【0018】
さらに、この発明の第9の局面は次のように規定される。即ち、
経路の第1の指定地の最寄道路が細街路であるときの経路探索するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
前記第1の指定地に対し、前記細街路を介し又は前記細街路及び前記細街路に連絡する他の細街路を介し、かつ他の幹線道路を何ら介することなく連絡する目標幹線道路を特定する手段と、
該目標幹線道路と前記細街路及び/又は前記他の細街路との交差点であって、前記経路における車輌進行方向に順方向の目標交差点を抽出する手段と、
前記第1の指定地と前記目標交差点とをつなぐ前記細街路及び/又は前記他の細街路において最も小さい経路コストの経路を探索し、この探索された経路を細街路経路として指定する手段と、
前記細街路経路上にある前記目標交差点を第1の目標通過交差点とし、該第1の目標通過交差点と前記経路の第2の指定地との間の主経路を探索する手段、
として機能させる、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
このように規定される第9の局面のコンピュータプログラムによれば、第1の局面と同様の効果が得られる。
【0019】
この発明の第10の局面は次のように規定される。即ち、
第9の局面のコンピュータプログラムにおいて、前記細街路経路の経路コストは、細街路交差点での右左折回数、横断回数、進入路と退出路との交差角度の少なくとも一つを参照して演算される。
このように規定される第10の局面のコンピュータプログラムによれば、第2の局面と同様の効果が得られる。
【0020】
この発明の第11の局面は次のように規定される。即ち、
第9又は第10の局面のコンピュータプログラムにおいて、前記細街路経路の経路コストは、一方通行データ及び/又は一時停止データを参照して演算される。
このように規定される第11の局面のコンピュータプログラムによれば、第3の局面と同様の効果が得られる。
【0021】
この発明の第12の局面は次のように規定される。即ち、
第9〜第11のいずれかに記載の局面のコンピュータプログラムにおいて、経由地の最寄道路が細街路であるとき、前記コンピュータを、
出発地から前記経由地までの経路における前記経由地に連絡する目標通過交差点Aを保存し、
前記経由地から目的地までの経路における前記経由地に連絡する目標通過交差点Bを保存し、
前記目標通過交差点Bから前記目的地までの主経路において前記目標通過交差点Aを第2の経由地として設定する手段、
として機能させる。
このように規定される第12の局面のコンピュータプログラムによれば、第4の局面と同様の効果が得られる。
【0022】
第9〜第12の局面で規定されるコンピュータプログラムを記録する記録媒体が第13の局面として規定される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1はこの発明の実施の形態のナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は図1における経路探索装置の詳細構成を説明するブロック図である。
【図3】図3は目的地と目標幹線道路との関係を示す模式図である。
【図4】図4は目標交差点を示す模式図である。
【図5】図5はナビゲーションシステムの動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は第1の細街路経路の探索方法を示すフローチャートである。
【図7】図7は第1の細街路経路の探索方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
実施の形態のナビゲーションシステム1は、図1に示すとおり、制御部3、メモリ部4、入力部5、自車位置検出部6、出力部7、インターフェース部8及び経路探索装置10を備えている。
制御部3はCPU、バッファメモリその他の装置を備えたコンピュータ装置であり、ナビゲーションシステム1を構成する他の要素を制御する。メモリ部4にはコンピュータプログラムが保存され、このコンピュータプログラムはコンピュータ装置である制御部3に読み込まれて、これを機能させる。このコンピュータプログラムはDVD等の汎用的な媒体へ保存できる。
【0025】
入力部5は目的地等を設定するため用いられる。入力部5としてディスプレイの表示内容と協働するタッチパネル式の入力装置を用いることができる。
自車位置検出部6はGPS装置やジャイロ装置を用いて利用者端末の現在の位置を検出する。
出力部7はディスプレイを含み、ナビゲーションに必要な地図情報、その他の情報を表示する。この出力部7は音声案内装置を含むこともできる。
インターフェース部8はナビゲーションシステム1を無線ネットワーク等へ連結させる。
【0026】
経路探索装置10は探索部20と情報保存部30とを備える。経路探索装置10の詳細を図2に示す。
探索部20には経路探索部21、目標幹線道路特定部27及び目標交差点抽出部28が備えられる。経路探索部21は出発地から目的地までの経路を探索する。探索に際し、経路コストを演算して当該経路コストが最も小さい経路を上位に表示して推奨経路とする。
図2の例では、経路探索部21に主経路探索部23と副経路探索部24とが備えられる。主経路探索部23は汎用的なナビゲーションシステムに備えられており、道路情報保存部30の汎用的道路情報保存領域33に保存される情報を参照して専ら幹線道路の経路を探索する。
副経路探索部24は細街路における経路を探索するためのものであって、コスト生成部25及び細街路経路探索部26を備える。コスト生成部25は第1の指定地を囲む細街路網を構成するリンク及びノードにつき所定のルールに基づきそれぞれコスト情報を生成して、第2のコスト情報保存部38に保存する。細街路経路探索部26は第2の地図情報保存部37に保存されている細街路の地図情報を読み出し、第2のコスト情報保存部38に保存されているそれらのコスト情報を参照して細街路における経路を探索する。経路コスト情報が最も小さい経路が推奨され、細街路経路となる。
【0027】
情報保存部30には第1の情報保存部31、第2のコスト情報保存部38及び交通規制データ保存部39が備えられる。第1の情報保存部31内の情報は予めインストールされており、必要に応じて書き換えられる。第2のコスト情報保存部38は、第1の指定地を囲む細街路網が特定された際に、当該細街路網を構成するリンク及びノードに対し、コスト生成部25により生成されたコスト情報を関連付けて保存する。交通規制データ保存部39には交通規制データが保存される。
【0028】
第1の情報保存部31には地図情報保存部36と道路情報保存部35とが備えられる。地図情報保存部36には第1の地図情報保存部34と第2の地図情報保存部37がある。第1の地図情報保存部34には幹線道路に関する地図情報が保存され、第2の地図情報保存部37には細街路に関する地図情報が保存される。ここで、地図情報とはナビゲーションシステムの表示装置に道路を描画するために必要な情報であり、少なくともノード情報とリンク情報を備える。
道路情報保存部35の特性情報保存部351には第1の地図情報保存部34に保存されている各ノード情報や各リンク情報に付随して、ノードやリンクの特性を規定する情報が備えられる。この特性に対応するコスト情報が第1のコスト情報保存部353に保存される。したがって、例えば、主経路探索部23により第1の地図情報保存部に保存されるリンクが指定されたとき、道路情報保存部35の特性情報保存部351から当該指定されたリンクの特性が読み込まれるとともに、当該特性に対応するコスト情報が第1のコスト情報保存部353から読み込まれ、それぞれ経路探索に用いられる。
【0029】
第1の地図情報保存部34と道路情報保存部35により汎用的道路情報保存部33が構成される。この汎用的道路情報保存部33は汎用的なナビゲーションシステムにインストールされている。汎用的なナビゲーションシステムでは主経路探索部23が汎用的道路情報保存部33に保存の地図情報と道路情報を参照して経路探索を実行する。
【0030】
目標幹線道路特定部27は第1の指定地の最寄道路が細街路となるとき、図3に示すとおり、当該細街路を中心として放射状に領域を拡大して最初に遭遇する幹線道路K1を特定する。更に領域を拡大していったときに順次遭遇する幹線道路K2、K3、K4を特定する。これら幹線道路が目標幹線道路である。
この実施例では、目的地を囲む細街路網の全細街路が幹線道路と交差するように、4つの幹線道路K1〜K4を特定している。
特定する幹線道路の数は1つ以上あればよい。より正確な細街路探索を実行するためには、第1の指定地が含まれる細街路網を完全に囲むように複数の幹線道路を特定することが好ましい。
【0031】
このようにして特定された幹線道路をこの明細書では目標幹線道路という。目標幹線道路は第1の指定地を囲む細街路網に直接連絡しており、第1の指定地と目標幹線道路との間に当該細街路網に連絡した他の幹線道路は存在しない。
【0032】
目標交差点抽出部28は、目標幹線道路特定部27が特定した目標幹線道路上の交差点から目標交差点を抽出する。ここに目標交差点は、探索する経路に対して順方向の交差点である。図4に示すとおり、第1の指定地が目的地である場合、幹線道路から細街路網中へ進入可能な幹線道路上の交差点をピックアップする。図4では、当該目標交差点に×印が付してある。
【0033】
次に、ナビゲーションシステムの動作について図5のフローチャートに従いながら説明する。
ステップ1において、入力部5により目的地をセットする。目的地をセットしたときの自車位置を自車位置検出部6で検出して、当該自車位置を出発地とすることができる。
ステップ3ではステップ1で設定した目的地の最寄道路が細街路であるか否か、即ち、目的地が細街路網内に存在しているか否かを検証する。目的地が細街路網内に存在するとき、ステップ5において第1の細街路経路を探索する。
【0034】
ステップ5の動作の詳細を図6に示す。
ステップ51では目標幹線道路特定部27により目標幹線道路Kを特定する(図3参照)。目的地から放射状に区域を拡大していって直接に突き当たる幹線道路を目標幹線道路とする。この例では4つの目標幹線道路K1〜K4を特定している。
目標交差点抽出部28により、各目標幹線道路K1〜K4において細街路と交差する交差点のなかから、幹線道路から細街路側へ進行可能な交差点(目標交差点)を抽出する(ステップ53)。このステップを実行するにあたり、まずは幹線道K1〜K4と細街路との交差点をピックアップし、続いて、当該交差点における進行方向が経路に対して順方向か否かを検証する。
【0035】
ステップ54では目標幹線道路で外縁が規定される細街路網の各細街路のコスト情報を特定し、特定したコスト情報を第2のコスト情報保存部38に保存する。
この例では細街路のコスト情報をコスト生成部25により、所定のルールに従い特定する。ルールの例を下記に示す。
(1)細街路網の交差点での左右折にコスト情報C1を付与する。
(2)細街路網での交差点を通過したときコスト情報C2を付与する。
(3)細街路網での交差点において、進入路と退出路との交差角度が任意の角度(例えば80度)以下の場合、コスト情報C3を付与する。
(4)一時停止についコスト情報C4を付与する。
(5)対面通行(非一方通行)の細街路にコスト情報C5を付与する。
各コスト情報C1〜C5を全て同じ値(単位コスト情報)とすることもできるし、また、各コスト情報C1〜C5に傾斜を設けることもできる。
(1)〜(3)のルールに従うコスト情報付与処理は第2の地図情報保存部に保存された第2の地図情報を参照して行うことができる。(4)、(5)のルールに従うコスト情報付与処理は交通規制データ保存部39に保存された交通規制データを参照して行うことができる。
更には、細街路の幅員データが準備されているときには、細街路の幅員が所定の閾値より狭いとき、コスト情報C6を付与するようにしてもよい。更にまた、自車の車幅と細街路との幅員を比較して、細街路の幅員が自車の車幅の所定倍数以下のとき、コスト情報C7を付与することもできる。
【0036】
図6に戻り、ステップ54では細街路経路探索部26が第2の地図情報保存部37と第2のコスト情報保存部38とを参照して、目的地と各目標交差点間の経路探索を行い、最も経路コストの小さい経路(第1の細街路経路)を特定する。図7の例では、細街路網における右左折の回数がゼロの経路の経路コストが最小となった。よって、この経路が第1の細街路経路となる。
図5に戻り、ステップ54で特定された第1の細街路経路上にある目標交差点を第1の目標通過交差点として特定する。
【0037】
ステップ9ではステップ2で設定した出発地の最寄道路が細街路であるか否か、即ち、出発地が細街路網内に存在しているか否かを検証する。出発地が細街路網内に存在するとき、ステップ11において第2の細街路経路を探索する。
ステップ11の動作は、図6で説明した第1の細街路経路の探索と実質的同一である。なお、細街路側から幹線道路側へ進行可能な交差点が目標交差点として抽出される。抽出された目標交差点と出発地との間の経路探索を行い、最も経路コストの小さい(第2の細街路経路)を特定する。
ステップ13ではステップ11で特定された第2の細街路経路上にある目標交差点を第2の目標通過交差点として特定する。
出発地に関する第2の細街路経路の演算を目的地に関する第1の細街路経路の演算の後で行うようにしたのは、経路探索において出発地は自車位置であることが多く、目的地を設定した後に自車をスタートさせたとき、経路探索処理中に自車が細街路網を退出して幹線道路まで到達することがあるからである。そうなればステップ9がNOとなり、ナビゲーションシステムにかかる負担が低減される。
【0038】
目的地及び出発地が細街路網内にあったとき(ステップ15;Y)、
第1の目標通過交差点から第2の目標通過交差点までの経路(主経路)をナビゲーションシステムに備えられた汎用的な機能(主経路探索部23)を用いて探索する(ステップ17)。
なお、目的地の最寄道路が幹線道路であり、出発地の最寄道路が細街路であるときは、第2の目標通過交差点から目的地までが主経路となる。出発地の最寄道路が幹線道路であり、目的地の最寄道路が細街路であるときは、出発地から第1の目標通過交差点までが主経路となる。
出発地及び目的地ともそれらの最寄道路が幹線道路であるとき(ステップ15;N)、出発地から目的地までが主経路探索部により探索される。
【0039】
ステップ19では、第1及び/又は第2の細街路経路と主経路とが合体される。
これにより、出発地や目的地が細街路網内に存在しても、出発地や目的地まで直接の案内が可能となる。
【0040】
次に、経由地の最寄道路が細街路である場合の例を説明する。
基本的には、まずは、経由地を目的地として出発地からそこまでの経路探索を上記の例に従い実行する。これにより、下記第1の経路が特定される。
第1の経路 : 出発地→(主経路A)→目標通過交差点A→(細街路経路A)→経由地(目的地)
次に、経由地を出発地としてそこから目的地までの経路探索を上記の例に従い実行する。これにより、下記の第2の経路が特定される。
第2の経路 : 経由地(出発地)→(細街路経路B)→目標通過交差点B→(主経路B)→目的地
【0041】
上記において、目標通過交差点Aと目標通過交差点Bとは必ずしも一致しない。
そこで、運転者が経由地における所謂土地カンを養えるように、細街路経路Bを通って経由地を囲む細街路網から幹線道路へ退出した後、主経路Bにおいて第2の経由地として目標通過交差点Aを設定することができる。これにより、経由地を離れて目標通過交差点Bから幹線道路へ退出したのち、幹線道を通って既に通過経験のある目標通過交差点Aを再度通過し、目的地へと案内される。かかる案内方法によれば、目標通過交差点Aを必ず2回通過するため、経由地近辺の土地カンが養われる。
上記において、目標通過交差点Bと目標通過交差点Aとが一致する場合には、主経路Bにおける第2の経由地の設定は不要である。
【0042】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 ナビゲーションシステム
10 経路探索装置
20 探索部
30 情報保存部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路の第1の指定地の最寄道路が細街路であるときの経路探索方法であって、
前記第1の指定地に対し、前記細街路を介し又は前記細街路及び前記細街路に連絡する他の細街路を介し、かつ他の幹線道路を何ら介することなく連絡する目標幹線道路を特定するステップと、
該目標幹線道路と前記細街路及び/又は前記他の細街路との交差点であって、前記経路における車輌進行方向に順方向の目標交差点を抽出するステップと、
前記第1の指定地と前記目標交差点とをつなぐ前記細街路及び/又は前記他の細街路において最も小さい経路コストの経路を探索し、この探索された経路を細街路経路として指定するステップと、
前記細街路経路上にある前記目標交差点を第1の目標通過交差点とし、該第1の目標通過交差点と前記経路の第2の指定地との間の主経路を探索するステップと、
を含むことを特徴とする経路探索方法。
【請求項2】
前記細街路経路の経路コストは、細街路交差点での右左折回数、横断回数、進入路と退出路との交差角度の少なくとも一つを参照して演算される、ことを特徴とする請求項1に記載の経路探索方法。
【請求項3】
前記細街路経路の経路コストは、一方通行データ及び/又は一時停止データを参照して演算される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の経路探索方法。
【請求項4】
経由地の最寄道路が細街路であるとき、出発地から前記経由地までの経路における前記経由地に連絡する目標通過交差点Aを保存し、
前記経由地から目的地までの経路における前記経由地に連絡する目標通過交差点Bを保存し、
前記目標通過交差点Bから前記目的地までの主経路において前記目標通過交差点Aを第2の経由地として設定する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の経路探索方法。
【請求項5】
経路の第1の指定地の最寄道路が細街路であるときの経路探索装置であって、
前記第1の指定地に対し、前記細街路を介し又は前記細街路及び前記細街路に連絡する他の細街路を介し、かつ他の幹線道路を何ら介することなく連絡する目標幹線道路を特定する目標幹線道路特定部と、
該目標幹線道路と前記細街路及び/又は前記他の細街路との交差点であって、前記経路における車輌進行方向に順方向の目標交差点を抽出する目標交差点抽出部と、
前記第1の指定地と前記目標交差点とをつなぐ前記細街路及び/又は前記他の細街路において最も小さい経路コストの経路を探索し、この探索された経路を細街路経路として指定する細街路経路探索部と、
前記細街路経路上にある前記目標交差点を第1の目標通過交差点とし、該第1の目標通過交差点と前記経路の第2の指定地との間の主経路を探索する主経路探索部と、
を含むことを特徴とする経路探索装置。
【請求項6】
前記細街路経路の経路コストは、細街路交差点での右左折回数、横断回数、進入路と退出路との交差角度の少なくとも一つを参照して演算される、ことを特徴とする請求項5に記載の経路探索装置。
【請求項7】
前記細街路経路の経路コストは、一方通行データ及び/又は一時停止データを参照して演算される、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の経路探索装置。
【請求項8】
経由地の最寄道路が細街路であるとき、出発地から前記経由地までの経路における前記経由地に連絡する目標通過交差点Aを保存し、
前記経由地から目的地までの経路における前記経由地に連絡する目標通過交差点Bを保存し、
前記目標通過交差点Bから前記目的地までの主経路において前記目標通過交差点Aを第2の経由地として設定する、ことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の経路探索装置。
【請求項9】
経路の第1の指定地の最寄道路が細街路であるときの経路探索するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
前記第1の指定地に対し、前記細街路を介し又は前記細街路及び前記細街路に連絡する他の細街路を介し、かつ他の幹線道路を何ら介することなく連絡する目標幹線道路を特定する手段と、
該目標幹線道路と前記細街路及び/又は前記他の細街路との交差点であって、前記経路における車輌進行方向に順方向の目標交差点を抽出する手段と、
前記第1の指定地と前記目標交差点とをつなぐ前記細街路及び/又は前記他の細街路において最も小さい経路コストの経路を探索し、この探索された経路を細街路経路として指定する手段と、
前記細街路経路上にある前記目標交差点を第1の目標通過交差点とし、該第1の目標通過交差点と前記経路の第2の指定地との間の主経路を探索する手段、
として機能させる、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記細街路経路の経路コストは、細街路交差点での右左折回数、横断回数、進入路と退出路との交差角度の少なくとも一つを参照して演算される、ことを特徴とする請求項9に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
前記細街路経路の経路コストは、一方通行データ及び/又は一時停止データを参照して演算される、ことを特徴とする請求項9又は10に記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
経由地の最寄道路が細街路であるとき、前記コンピュータを、
出発地から前記経由地までの経路における前記経由地に連絡する目標通過交差点Aを保存し、
前記経由地から目的地までの経路における前記経由地に連絡する目標通過交差点Bを保存し、
前記目標通過交差点Bから前記目的地までの主経路において前記目標通過交差点Aを第2の経由地として設定する手段、
として機能させる、ことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか一項に記載のコンピュータプログラムを記録する記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−210286(P2010−210286A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54059(P2009−54059)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(501271479)株式会社トヨタマップマスター (56)
【Fターム(参考)】