説明

経路探索装置およびナビゲーション装置

【課題】より精度よく総燃費コストが最小となる経路を探索できるようにする。
【解決手段】複数のプローブ車両の走行に伴って収集された区間毎の燃費を特定するためのプローブ情報に基づいて特定される区間毎の燃費に基づいて地図データに含まれる区間毎の勾配情報を補正し(S102)、補正した区間毎の勾配情報に基づいて区間毎の燃費コストを補正し(S104)、補正した区間毎の燃費コストを用いて出発地から目的地に至る総燃費コストが最小となる経路を探索する(S106)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データに含まれる道路情報に基づいて区間毎の燃費コストを算出し、出発地から目的地に至る総燃費コストが最小となる経路を探索する経路探索装置およびナビゲーション装置。
【背景技術】
【0002】
従来、地図データに含まれる道路情報に基づいて区間毎の燃費コストを算出し、出発地から目的地に至る総燃費コストが最小となる経路を探索する経路探索装置がある。また、地図データの道路情報に含まれる区間毎の勾配情報を用いて燃費を補正する装置もある(例えば、特許文献1、段落「0026」〜「0027」参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−189698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、道路情報に含まれる勾配情報は、区間毎(例えば、リンク毎)に規定されているので、一定の勾配で両端間が傾斜している区間も、区間の途中にアップダウンがある区間も、区間の両端の高低差が同じであれば道路勾配は同一となる。したがって、勾配情報を用いて燃費を補正する場合、どちらの区間も補正量は同一となることになる。しかし、実際の走行では、全区間が平坦な区間よりも区間の途中にアップダウンがある区間の方が燃費は悪化する。
【0005】
したがって、地図データに含まれる道路情報に基づいて区間毎の燃費コストを算出し、更に、道路情報に含まれる区間毎の勾配情報に基づいて区間毎の燃費コストを補正して、出発地から目的地に至る総燃費コストが最小となる経路を探索するような構成では、区間の途中のアップダウン等が考慮されないため、精度よく総燃費コストが最小となる経路を探索することができないといった問題があった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みたもので、より精度よく総燃費コストが最小となる経路を探索できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、区間毎の燃費コストを算出し、出発地から目的地に至る総燃費コストが最小となる経路を探索する経路探索装置であって、複数の特定車両の走行に伴って収集された区間毎の燃費を特定するためのプローブ情報を記憶する記憶手段と、プローブ情報に基づいて特定される区間毎の燃費に基づいて地図データに含まれる区間毎の勾配情報を補正する第1の補正手段と、第1の補正手段により補正された区間毎の勾配情報に基づいて区間毎の燃費コストを補正する第2の補正手段と、第2の補正手段により補正された区間毎の燃費コストを用いて出発地から目的地に至る総燃費コストが最小となる経路を探索する探索手段と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、プローブ情報に基づいて特定される区間毎の燃費に基づいて地図データに含まれる区間毎の勾配情報を補正し、この補正した区間毎の勾配情報に基づいて区間毎の燃費コストを補正し、この補正した区間毎の燃費コストを用いて出発地から目的地に至る総燃費コストが最小となる経路が探索される。すなわち、例えば、区間の両端の高低差が同一の区間でも、プローブ情報に基づいて特定される区間毎の燃費に基づいて地図データに含まれる区間毎の勾配情報が異なるように補正されるので、より精度よく総燃費コストが最小となる経路を探索できる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明のように、第1の補正手段は、プローブ情報により特定される燃費の悪い区間ほど当該区間の燃費が悪化するように当該区間の勾配情報を補正することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明のように、プローブ情報は、複数の特定車両の走行に伴って収集された燃費を平均した平均燃費情報とすることができる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、複数の特定車両の走行に伴って収集された区間毎の燃費を特定するためのプローブ情報を収集する情報センタと通信する通信手段を備え、記憶手段には、通信手段を介して情報センタより取得した区間毎のプローブ情報が記憶されるようになっていることを特徴としている。
【0012】
このような構成によれば、複数の特定車両の走行に伴って収集された区間毎の燃費を特定するためのプローブ情報を収集する情報センタより取得した区間毎のプローブ情報が記憶されるので、最新のプローブ情報に基づいて特定される区間毎の燃費に基づいて地図データに含まれる区間毎の勾配情報を補正することができる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、自車両の燃費に影響する運転特性を判定するための情報を収集する情報収集手段と、情報収集手段により収集された情報に基づいて自車両の運転者の運転特性を分類する運転特性分類手段と、を備え、第1の補正手段は、更に、自車両の運転者の運転特性が燃費の悪い運転特性であるほど当該区間の燃費が悪化するように勾配情報を補正することを特徴としている。
【0014】
このように、自車両の運転者の運転特性が燃費の悪い運転特性であるほど当該区間の燃費が悪化するように勾配情報を補正することができる。
【0015】
また、請求項6に記載の発明のように、自車両の燃費に影響する運転特性を判定するための情報は、自車両の加速度の統計情報とすることができる。
【0016】
また、請求項7に記載の発明は、情報収集手段は、自車両の燃費に影響する運転特性を判定するための情報を上り勾配区間と下り勾配区間で区別して収集し、運転特性分類手段は、上り勾配区間走行時と下り勾配区間走行時で別々に自車両の燃費に影響する運転特性を分類し、第1の補正手段は、上り勾配区間と下り勾配区間を区別して勾配情報を補正することを特徴としている。
【0017】
運転者の運転特性は、上り勾配区間と下り勾配区間とで異なる場合があるが、上記した構成によれば、上り勾配区間走行時と下り勾配区間走行時で別々に自車両の燃費に影響する運転特性を分類し、第1の補正手段は、上り勾配区間と下り勾配区間を区別して勾配情報が補正されるので、運転者の運転特性に適した勾配情報の補正が可能である。
【0018】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の経路探索装置により探索された案内経路に従って走行案内を行うナビゲーション装置であって、地図データには、区間毎にアクセル踏み込み限度値が記憶されており、自車両のアクセル踏み込み量を特定するための情報を取得するアクセル踏み込み量情報取得手段と、アクセル踏み込み量を特定するための情報により特定される自車両のアクセル踏み込み量が、自車両が位置する区間におけるアクセル踏み込み限度値を超えたことを判定した場合、運転者にアクセル操作の注意を報知する報知手段と、を備えたことを特徴としている。
【0019】
このような構成によれば、アクセル踏み込み量を特定するための情報により特定される自車両のアクセル踏み込み量が、自車両が位置する区間におけるアクセル踏み込み限度値を超えたことを判定した場合、運転者にアクセル操作の注意が報知されるので、燃費コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係るナビゲーション装置の構成を示す図である。
【図2】プローブ情報に基づいて補正した勾配情報を用いて区間毎の燃費コストを補正する処理のフローチャートである。
【図3】補正マップについて説明するための図である。
【図4】補正マップについて説明するための図である。
【図5】運転者にアクセル操作の注意を報知する処理のフローチャートである。
【図6】自車両の加速度に基づいて運転者の運転特性を分類する処理のフローチャートである。
【図7】加速度の分布と運転特性の関係を示す図である。
【図8】燃費勾配影響指数について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るナビゲーション装置の構成を図1に示す。本ナビゲーション装置1は、経路探索装置としての機能を備えている。
【0022】
本ナビゲーション装置1は、位置検出器10、地図データ入力部11、車載LANインタフェース12、通信機13、表示器14、スピーカ15および制御部16を備えている。
【0023】
位置検出器10は、GPS受信機10a、車速センサ10b、ジャイロスコープ10c、地磁気センサ10dにより構成されており、これらから入力される現在位置を特定するための情報を制御部16へ出力する。
【0024】
地図データ入力部11は、地図表示や経路探索用の地図データを入力するための装置である。地図データ入力部11は、制御部16の要求に応じて、地図データが記憶された不揮発性記憶媒体から必要な地図データの読み出しを行う。
【0025】
地図データには、道路データ、施設データおよび背景データ等が含まれる。道路データは、リンクの位置情報、リンクの種別情報、リンクの道路格(すなわち、高速道路、一般道路、細街路等の別)情報、区間(例えば、リンク)毎の勾配を示す勾配情報、ノードの位置情報、ノードの種別情報、ノードとリンクとの接続関係の情報等を含んでいる。施設データは、施設毎のレコードを複数有しており、各レコードは、対象とする施設の名称情報、所在位置情報、施設種類情報等を示すデータを有している。背景データは、川、湖、海、鉄道、施設などの位置、形状、名称を表す情報等を含んでいる。
【0026】
車載LANインタフェース12は、車載LANに接続するためのインタフェースである。なお、車載LANには、エンジンECU、ボデーECU、ドアECU等の各種ECU等が接続されている。
【0027】
通信機13は、無線ネットワーク網(図示せず)を介して外部と通信(音声通話およびデータ通信)するための機器である。本実施形態では、無線ネットワーク網を介して情報センタ2と通信することが可能となっている。
【0028】
表示器14は、液晶等のディスプレイを有し、当該ディスプレイに制御部16より入力される映像信号に応じた映像を表示させる。スピーカは、制御部16より入力される音声信号に応じた音声を出力するものである。
【0029】
制御部16は、CPU、RAM、ROM、記憶装置、I/O等を備えたコンピュータとして構成されており、CPUはROMに記憶されたプログラムに従って各種処理を実施する。
【0030】
制御部16の処理としては、位置検出器10より入力される現在位置を特定するための情報に基づいて現在位置を特定する現在位置特定処理、現在位置周辺の地図上に自車位置マークを重ねた地図表示画面を表示させる地図表示処理、ユーザ操作に応じて目的地を検索する目的地検索処理、出発地から目的地に至る案内経路を探索する経路探索処理、案内経路に従って走行案内を行う走行案内処理等がある。
【0031】
本実施形態では、経路探索処理において、有料道路を優先して通行する有料優先、一般道路を優先して通行する一般優先、出発地から目的地に至る所要時間が最小となる時間優先、出発地から目的地に至る所要距離が最小となる距離優先、出発地から目的地に至る燃費コストが最小となる燃費優先の中からの探索条件を選択することが可能となっている。
【0032】
情報センタ1は、各種演算を行うサーバを有しており、このサーバにより渋滞情報、工事情報、規制情報等の交通情報を提供するサービスを実施する。また、情報センタ1は、タクシー車両等により構成される多数のプローブ車両の走行に伴って収集された各種データを受信してデータベースを作成し、車両からの要求に応じて配信するサービスも実施する。本実施形態における情報センタ1は、プローブ車両より区間毎の燃費を収集し、収集した車両の台数で除算した平均燃費情報をデータベースに格納し、この区間毎の平均燃費情報を車両からの要求に応じて配信する。
【0033】
制御部16は、ユーザ操作に応じて、通信機13を介して情報センタ2に接続し、当該情報センタ2よりプローブ車両の走行に伴って収集された区間毎の燃費を特定するためのプローブ情報(本実施形態では、区間毎の平均燃費情報)を取得して記憶装置に記憶させる処理を実施する。
【0034】
制御部16は、出発地から目的地に至る総燃費コストが最小となる経路を探索する際に、単に、区間毎の燃費コストを勾配情報で補正するのではなく、記憶装置に記憶されたプローブ情報に基づいて勾配情報を補正し、このプローブ情報に基づいて補正した勾配情報を用いて区間毎の燃費コストを補正する処理を実施する。
【0035】
図2に、この処理のフローチャートを示す。運転者の操作に応じて車両のイグニッションスイッチがオン状態になると本ナビゲーション装置1は、動作状態となる。また、ユーザ操作に応じて出発地および目的地を特定し、ユーザ操作に応じて燃費優先を探索条件とした経路探索の実施が指示されると、制御部16は図2に示す処理を実施する。
【0036】
まず、出発地および目的地を含む領域の道路データを地図データ入力部11より読み込むとともに、出発地および目的地を含む領域のプローブ情報(区間毎の平均燃費情報)を記憶装置より読み込む(S100)。
【0037】
次に、プローブ情報に基づいて区間毎の勾配情報を補正する(S102)。具体的には、プローブ情報(区間毎の平均燃費情報)に基づいて区間毎の勾配情報を補正するための補正マップがROMに記憶されており、この補正マップを用いて区間毎の勾配情報を補正する。
【0038】
ここで、図3、図4を参照して、補正マップについて説明する。図3に示すように、この補正マップには、平均燃費と燃費勾配影響指数Fの関係が規定されている。平均燃費が悪いほど燃費勾配影響指数Fは大きくなり、反対に、平均燃費が良いほど燃費勾配影響指数Fは小さくなるように平均燃費と燃費勾配影響指数Fの関係が規定されている。
【0039】
平均燃費Aの場合における燃費勾配影響指数F1は、平均燃費Bの場合における燃費勾配影響指数F2よりも大きくなっている。また、平均燃費Bの場合における燃費勾配影響指数F2は、平均燃費Cの場合における燃費勾配影響指数F3よりも大きくなっている。
【0040】
本実施形態では、地図データに含まれる区間毎の勾配情報に、その区間の平均燃費に対応する燃費勾配影響指数Fを加算することにより区間毎の勾配情報を補正する。
【0041】
図4に示すように、勾配情報が1(%)、平均燃費がA(cc/m)のリンクn−1の区間では、勾配の1(%)に平均燃費Aの場合における燃費勾配影響指数F1(%)を加算する。したがって、リンクn−1の区間における補正後の勾配情報は、1+F1(%)となる。
【0042】
また、勾配情報が0.5(%)、平均燃費がB(cc/m)のリンクnの区間では、勾配の0.5(%)に平均燃費Bの場合における燃費勾配影響指数F2(%)を加算する。したがって、リンクnの区間における補正後の勾配情報は、0.5+F2(%)となる。
【0043】
同様に、勾配情報が0.3(%)、平均燃費がC(cc/m)のリンクn+1の区間では、勾配の0.3(%)に平均燃費Cの場合における燃費勾配影響指数F3(%)を加算する。したがって、リンクn+1の区間における補正後の勾配情報は、0.3+F3(%)となる。
【0044】
このように、プローブ情報(区間毎の平均燃費)により特定される燃費の悪い区間ほど当該区間の勾配を大きくみなすように、すなわち当該区間の燃費が悪化するように当該区間の勾配情報を補正する。
【0045】
次に、補正された勾配情報に基づいて区間毎の燃費コストを補正する(S104)。本実施形態では、出発地から目的地に至る区間毎の燃料消費量を算出し、S102にて補正された勾配情報を用いて区間毎の燃料消費量を補正する。なお、各リンクの燃料消費量を算出し、道路勾配で補正する技術についは公知技術(例えば、特開2009−79995号公報等参照)である。
【0046】
次に、燃費コストが最小となる案内経路(エコルート)を探索する(S106)。具体的には、区間毎の燃料消費量が最小となる経路を案内経路(エコルート)として特定する。
【0047】
次に、案内経路(エコルート)を表示器14のディスプレイに表示させ(S108)、本処理を終了する。
【0048】
本ナビゲーション装置1における地図データには、区間毎にアクセル踏み込み限度値が記憶されている。制御部16は、自車両のアクセル踏み込み量が、自車両が位置する区間におけるアクセル踏み込み限度値を超えたことを判定した場合、運転者にアクセル操作の注意を報知する処理を実施する。
【0049】
図5に、この処理のフローチャートを示す。本ナビゲーション装置1が動作状態になると、制御部16は、図5に示す処理を開始する。
【0050】
まず、地図データ入力器11を介して自車位置周辺の地図データに含まれるアクセル踏み込み量を特定するための情報を取得する(S200)。本実施形態では、アクセル踏み込み量を特定するための情報としてアクセル開度を取得する。
【0051】
次に、このアクセル開度により特定される自車両のアクセル踏み込み量が、自車両が位置する区間におけるアクセル踏み込み限度値を超えたか否かを判定する(S202)。
【0052】
ここで、自車両のアクセル踏み込み量が、自車両が位置する区間におけるアクセル踏み込み限度値を超えていない場合、S202の判定はNOとなり、S200へ戻る。
【0053】
また、自車両のアクセル踏み込み量が、自車両が位置する区間におけるアクセル踏み込み限度値を超えると、S202の判定はYESとなり、次に、運転者にアクセル操作の注意を報知する(S204)。例えば、「アクセルを踏み込みすぎです」といったメッセージが表示器14に表示されるとともに、スピーカ15より音声出力される。
【0054】
上記した構成によれば、複数のプローブ車両(特定車両)の走行に伴って収集された区間毎の燃費を特定するためのプローブ情報を記憶する記憶装置と、この記憶装置に記憶されたプローブ情報に基づいて特定される区間毎の燃費に基づいて地図データに含まれる区間毎の勾配情報を補正し、この補正した区間毎の勾配情報に基づいて区間毎の燃費コストを補正し、この補正した区間毎の燃費コストを用いて出発地から目的地に至る総燃費コストが最小となる経路が探索される。したがって、例えば、区間の両端の高低差が同一の区間でも、プローブ情報に基づいて特定される区間毎の燃費に基づいて地図データに含まれる区間毎の勾配情報が異なるように補正されるので、より精度よく総燃費コストが最小となる経路を探索できる。
【0055】
また、複数のプローブ車の走行に伴って収集された区間毎の燃費を特定するためのプローブ情報を収集する情報センタより取得した区間毎のプローブ情報が記憶されるので、最新のプローブ情報に基づいて特定される区間毎の燃費に基づいて地図データに含まれる区間毎の勾配情報を補正することができる。
【0056】
また、上記した構成によれば、アクセル踏み込み量を特定するための情報により特定される自車両のアクセル踏み込み量が、自車両が位置する区間におけるアクセル踏み込み限度値を超えたことを判定した場合、運転者にアクセル操作の注意が報知されるので、燃費コストの低減を図ることができる。
【0057】
(第2実施形態)
本実施形態に係るナビゲーション装置1の構成は、図1に示した1実施形態の構成と同じである。上記第1実施形態では、区間毎の燃費を特定するためのプローブ情報を用いて勾配情報を補正する構成を示したが、本実施形態では、更に、自車両の燃費に影響する運転特性を判定するための情報を収集して運転者の運転特性を分類し、この運転者の運転特性にしたがって勾配情報を補正する。なお、上記実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分を中心に説明する。
【0058】
本制御部16は、自車両の燃費に影響する運転特性を判定するための情報として、自車両の加速度を収集し、この収集した加速度の統計情報に基づいて運転者の運転特性を分類する処理を実施する。
【0059】
図6に、この処理のフローチャートを示す。車両の走行中、制御部16は、図5に示す処理を定期的に実施する。
【0060】
まず、自車両の加速度を収集する(S300)。本実施形態では、車速センサ10bより入力される車速信号に基づいて自車両の加速度を収集する。自車両の加速度は、車速の差分(変化量)を収集間隔で除算することに求めることができる。
【0061】
次に、運転者の運転特性を分類して記憶装置に記憶させる(S302)。本実施形態では、運転者の運転特性を急運転、通常運転、緩運転の3つに分類する。
【0062】
図7に、加速度の分布と運転特性の関係を示す。図に示すように、加速度の分布により運転特性を分類することができる。図7に示された加速度の分布と運転特性の関係に基づいて、自車両の加速度の分布に近い運転特性を決定して自車両の加速度の統計情報として記憶装置に記憶させる。このように、運転者の運転特性が分類され、記憶装置に記憶される。
【0063】
本実施形態において、制御部16は、図2に示した処理と同様の処理を実施する。ただし、本実施形態においては、S102にて、プローブ情報に基づいて区間毎の勾配情報を補正した後、更に、S302にて分類された運転者の運転特性に従って勾配情報を補正する。
【0064】
本実施形態では、緩運転特性の運転特性係数をα、通常運転特性の運転特性係数をβ、急運転特性の運転特性係数をγとし、燃費勾配影響指数に運転特性の応じた運転特性係数α、β、γを乗算することにより勾配情報を補正する。ただし、0<α<β<γとなっている。
【0065】
図8に示すように、勾配情報が1(%)、燃費勾配影響指数がF1のリンクn−aの区間では、燃費勾配影響指数F1に、運転特性の応じた運転特性係数α、β、γのいずれかを乗算する。したがって、このリンクn−1の区間における勾配情報は、1+F1×α(%)、1+F1×β(%)、1+F1×γ(%)のいずれかに補正される。
【0066】
また、勾配情報が0.5(%)、燃費勾配影響指数がF2のリンクnの区間では、燃費勾配影響指数F2に、運転特性の応じた運転特性係数α、β、γのいずれかを乗算する。したがって、このリンクnの区間における勾配情報は、0.5+F2×α(%)、0.5+F2×β(%)、0.5+F3×γ(%)のいずれかに補正される。
【0067】
また、勾配情報が0.3(%)、燃費勾配影響指数がF3のリンクn+1の区間では、燃費勾配影響指数F3に、運転特性の応じた運転特性係数α、β、γのいずれかを乗算する。したがって、このリンクn+1の区間における勾配情報は、0.3+F3×α(%)、0.3+F3×β(%)、0.3+F3×γ(%)のいずれかに補正される。
【0068】
このようにして、運転者の運転特性が燃費の悪い運転特性であるほど当該区間の燃費が悪化するように勾配情報が補正される。
【0069】
上記した構成によれば、自車両の燃費に影響する運転特性を判定するための情報を収集し、収集した情報に基づいて自車両の運転者の運転特性を分類し、自車両の運転者の運転特性が燃費の悪い運転特性であるほど当該区間の燃費が悪化するように勾配情報が補正される。すなわち、自車両の運転者の運転特性が燃費の悪い運転特性であるほど当該区間の燃費が悪化するように勾配情報を補正することができる。
【0070】
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、自車両の加速度の分布から運転者の運転特性を分類したが、例えば、緩運転特性であると分類された運転者であっても、上り勾配あるいは下り勾配での運転特性が緩運転特性であるとは限らない。そこで、本実施形態では、ジャイロスコープ10cより入力される信号に基づいて上り勾配を走行中であるか下り勾配を走行中であるかを判定し、上り勾配における運転者の運転特性を判定するための情報と下り勾配の運転者の運転特性を判定するための情報を区別して収集し、上り勾配と下り勾配で運転者の運転特性を区別して分類する。
【0071】
例えば、上り勾配を走行中に、アクセル踏み込み量が予め定められた閾値よりも大きい場合、加速度が予め定められた閾値よりも大きい場合、地図データと現在位置より自車両が上り勾配の終点に近づいているにもかかわらず加速度が予め定められた閾値よりも大きい場合等には、運転者の運転特性が急運転であると分類することができる。
【0072】
また、上り勾配を走行中に、アクセル踏み込み量が予め定められた閾値よりも小さい場合等には、運転者の運転特性が緩運転であると分類することができる。また、下り勾配を走行中に、アクセル踏み込み量が予め定められた閾値よりも大きい場合等には、運転者の運転特性が急運転であると分類することができる。また、下り勾配を走行中に、エンジンブレーキ使用による燃料噴射カットの頻度が予め定められた閾値よりも大きい場合等には、運転者の運転特性が緩運転であると分類することができる。
【0073】
運転者の運転特性は、上り勾配区間と下り勾配区間とで異なる場合があるが、上記した構成によれば、上り勾配区間走行時と下り勾配区間走行時で別々に自車両の燃費に影響する運転特性を分類し、第1の補正手段は、上り勾配区間と下り勾配区間を区別して勾配情報が補正されるので、運転者の運転特性に適した勾配情報の補正が可能である。
【0074】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、区間毎の燃費コストとして区間毎の燃費コストを算出し、総燃費コストが最小となる案内経路を探索したが、例えば、モータを走行用の動力源として使用する電気自動車においては、モータにより消費される区間毎の電力量を区間毎の燃費コストとして総電力量が最小となる経路を探索するようにしてもよい。
【0075】
また、上記第1実施形態では、情報センタより取得した区間毎の平均燃費情報を区間毎の燃費を特定するためのプローブ情報として、このプローブ情報を用いて勾配情報を補正する構成を示したが、例えば、モータを走行用の動力源として使用する電気自動車においては、モータにより消費される区間毎の平均電力量を区間毎の燃費を特定するためのプローブ情報として、このプローブ情報を用いて勾配情報を補正する構成してもよい。
【0076】
また、上記第2実施形態では、自車両の燃費に影響する運転特性を判定するための情報(例えば、加速度)を収集し、収集した情報に基づいて自車両の運転者の運転特性を分類し、自車両の運転者の運転特性が燃費の悪い運転特性であるほど当該区間の燃費が悪化するように勾配情報を補正する構成を示したが、自車両の運転者の運転特性を特定するための情報とともに区間毎の燃料消費量を特定するための情報を通信機13を介して情報センタ2へ送信するようにしてもよい。
【0077】
上記第2実施形態では、自車両の燃費に影響する運転特性を判定するための情報として車速情報に基づく加速度を収集したが、加速度に限定されるものではなく、例えば、アクセル踏み込み量、燃料噴射量等を収集するようにしてもよい。
【0078】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、制御部16の記憶装置が記憶手段に相当し、S102が第1の補正手段に相当し、S104が第2の補正手段に相当し、S106が探索手段に相当し、通信機13が通信手段に相当し、S300が情報収集手段に相当し、S302が運転特性分類手段に相当し、S200がアクセル踏み込み量情報取得手段に相当し、S202、S204が報知手段に相当する。
【符号の説明】
【0079】
1 ナビゲーション装置
2 情報センタ
10 位置検出器
11 地図データ入力部
12 車載LANインタフェース
13 通信機
14 表示器
15 スピーカ
16 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
区間毎の燃費コストを算出し、出発地から目的地に至る総燃費コストが最小となる経路を探索する経路探索装置であって、
複数の特定車両の走行に伴って収集された区間毎の燃費を特定するためのプローブ情報を記憶する記憶手段と、
前記プローブ情報に基づいて特定される前記区間毎の燃費に基づいて地図データに含まれる区間毎の勾配情報を補正する第1の補正手段と、
前記第1の補正手段により補正された前記区間毎の勾配情報に基づいて前記区間毎の燃費コストを補正する第2の補正手段と、
前記第2の補正手段により補正された前記区間毎の燃費コストを用いて出発地から目的地に至る総燃費コストが最小となる経路を探索する探索手段と、を備えたことを特徴とする経路探索装置。
【請求項2】
前記第1の補正手段は、前記プローブ情報により特定される燃費の悪い区間ほど当該区間の燃費が悪化するように当該区間の勾配情報を補正することを特徴とする請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項3】
前記プローブ情報は、前記複数の特定車両の走行に伴って収集された燃費を平均した平均燃費情報であることを特徴とする請求項1または2に記載の経路探索装置。
【請求項4】
前記複数の特定車両の走行に伴って収集された区間毎の燃費を特定するためのプローブ情報を収集する情報センタと通信する通信手段を備え、
前記記憶手段には、前記通信手段を介して前記情報センタより取得した前記区間毎のプローブ情報が記憶されるようになっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の経路探索装置。
【請求項5】
自車両の燃費に影響する運転特性を判定するための情報を収集する情報収集手段と、
前記情報収集手段により収集された前記情報に基づいて前記自車両の運転者の運転特性を分類する運転特性分類手段と、を備え、
前記第1の補正手段は、更に、前記自車両の運転者の運転特性が燃費の悪い運転特性であるほど当該区間の燃費が悪化するように前記勾配情報を補正することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の経路探索装置。
【請求項6】
自車両の燃費に影響する運転特性を判定するための情報は、自車両の加速度の統計情報であることを特徴とする請求項5に記載の経路探索装置。
【請求項7】
前記情報収集手段は、前記自車両の燃費に影響する運転特性を判定するための情報を上り勾配区間と下り勾配区間で区別して収集し、
前記運転特性分類手段は、上り勾配区間走行時と下り勾配区間走行時で別々に前記自車両の燃費に影響する運転特性を分類し、
前記第1の補正手段は、上り勾配区間と下り勾配区間を区別して前記勾配情報を補正することを特徴とする請求項5または6に記載の経路探索装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の経路探索装置により探索された案内経路に従って走行案内を行うナビゲーション装置であって、
前記地図データには、区間毎にアクセル踏み込み限度値が記憶されており、
自車両のアクセル踏み込み量を特定するための情報を取得するアクセル踏み込み量情報取得手段と、
前記アクセル踏み込み量を特定するための情報により特定される前記自車両のアクセル踏み込み量が、前記自車両が位置する区間における前記アクセル踏み込み限度値を超えたことを判定した場合、運転者にアクセル操作の注意を報知する報知手段と、を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−237306(P2011−237306A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109557(P2010−109557)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】