説明

結合物質回収方法及び装置

【課題】 結合物質の回収処理の処理効率を向上する。
【解決手段】 センサユニット12は、上面に金属膜13が形成されたプリズム14と、流路部材41とからなる。金属膜13には、リガンドが固定されるリンカー膜22が形成される。流路部材41には、リンカー膜22と対向する位置に流路16が形成されている。流路16には、出入口16a,16bが設けられており、これら各出入口16a,16bから、1対のピペット26a,26bを持つ分注ヘッド26によって液体の注入と排出とが行われる。分注ヘッド26によって試料溶液をリンカー膜22に送液し、リガンドを固定する。この後、分注ヘッド26によって、溶出液を流路16へ注入して、試料のうち、リガンドと結合した結合物質をリガンドから解離させ、その結合物質を溶出液とともに回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リガンドと結合した結合物質を回収する結合物質回収方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、細胞から発現する物質のうち、ペプチドやタンパク質などの未知の物質を同定,解析するために、質量分析計(マススペクトロメーター)を用いて、質量分析が行われている。質量分析計は、試料となる物質をイオン化し、その質量/電荷比に基づいて分離し、最後にそのイオンを検出し、検出したイオンの分子量を記録する。
【0003】
この質量分析の対象となる未知の物質を回収する方法として、細胞から発現した物質を試料として含む試料溶液を、ペプチドやタンパク質をリガンドとして固定したリガンド固定膜に送液して接触させ、この後、溶出液をリガンド固定膜に送液して、リガンド固定膜に結合した物質(以下、結合物質という)をリガンドから解離させて、解離した結合物質を回収する回収方法が知られている。
【0004】
下記特許文献1では、こうした結合物質の回収を、表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)センサチップと、このSPRセンサチップを使用してSPR検出を行うSPR測定装置を使用して行う方法が開示されている。SPRとは、金属中の自由電子が集団的に振動することによって生じ、その金属の表面に沿って進む自由電子の粗密波である。SPRセンサチップは、透明な誘電体と、この誘電体上に形成され、一方の面が試料の反応を検知するセンサ面となる金属膜を持っている。前記誘電体を通じて前記センサ面の裏面の光入射面に全反射条件を満たすように(臨界角以上の入射角で)光を入射すると、その光入射面において全反射が起こるが、入射光のうちわずかな光は反射せずに金属膜内を通過して、センサ面に染み出す。この染み出した光波はエバネッセント波と呼ばれ、このエバネッセント波と表面プラズモンの振動数が一致して共鳴すると(SPRが発生すると)、反射光の強度が大きく減衰する。SPR測定装置は、前記光入射面で反射する反射光の減衰を捉えることにより、その裏側のセンサ面で発生するSPRを検出する。
【0005】
SPRを発生させるための光の入射角(共鳴角)は、エバネッセント波および表面プラズモンが伝播する媒質の屈折率に依存する。言い換えると、媒質の屈折率が変化すれば、SPRを発生させる共鳴角が変化する。センサ面と接する物質は、エバネッセント波および表面プラズモンを伝播させる媒質となるので、例えば、センサ面において、2種類の分子間の結合や解離などの反応が生じると、それが媒質の屈折率の変化として顕れて、共鳴角が変化する。SPR測定装置は、この共鳴角の変化を捉えることにより分子間の相互作用を測定する。
【0006】
このSPR測定装置を使用して、リガンドと試料とを接触させれば、接触後に試料とリガンドとの結合の有無を調べることができるので、質量分析の前に、回収液に結合物質が含まれているかいないかの峻別が可能となり、質量分析を効率的に行うことができる。
【0007】
下記特許文献1記載のSPR測定装置には、SPRセンサチップが着脱自在にセットされる。このSPRセンサチップのセンサ面には、リガンドを固定する固定膜が形成される。SPR測定装置には、前記センサ面へ液体を送液する流路が形成された流路部材が設けられており、SPRセンサチップは、前記流路とセンサ面とが対向するように装着される。
【0008】
流路部材には、チューブと流路を接続するコネクタブロックが取り付けられている。流路には、前記チューブを通じて、試料溶液及び溶出液が供給されるとともに、そこから排出された液体が回収される。
【特許文献1】特表平9−500208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記方法では、流路部材がSPR測定装置に設けられているため、リガンド固定膜と接触させる試料溶液が複数種類ある場合には、1種類の試料溶液をリガンド固定膜に送液する毎に、流路部材やチューブを洗浄しなければならない。このため、多種類の試料溶液から結合物質を回収する場合には、非常に時間がかかり、スループット(処理能力)を上げることができないという問題があった。
【0010】
また、チューブを通じて試料溶液の供給と排出とを行うため、リガンド固定膜までの供給経路やリガンド固定膜からの排出経路が長くなるため、準備しなければならない試料溶液の量が多くなってしまうという問題があった。試料は、非常に高価であるため、できるだけ少ない試料を用いて結合物質を回収したいという要望が強い。
【0011】
本発明の目的は、結合試料の回収処理のスループットを向上させることである。
【0012】
本発明の別の目的は、質量分析のための結合物質の回収を少ない試料で行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の結合物質回収方法は、リガンドを固定したリガンド固定膜に、試料を含む試料溶液を接触させ、この接触により前記リガンドと結合した試料を、結合物質として回収する結合物質回収方法において、リガンド固定膜が形成される支持体と、前記リガンド固定膜へ前記試料溶液を送液する流路が形成された流路部材とが一体的に組み付けられたリガンド固定ユニットと、前記流路の端部に形成された出入口から前記試料溶液の注入と排出とを行うピペットを備えた分注ヘッドとを用い、前記分注ヘッドによって前記流路へ前記試料溶液を注入して前記リガンド固定膜へ送液する試料溶液送液ステップと、前記分注ヘッドによって前記流路へ溶出液を注入して前記リガンド固定膜へ送液して、前記試料のうち、前記リガンドと結合した結合物質を前記リガンド固定膜から解離させる結合物質解離ステップと、前記分注ヘッドによって前記流路から前記溶出液を吸引することにより、前記溶出液とともに前記結合物質を前記流路から排出し、前記結合物質を回収容器へ回収する結合物質回収ステップとからなることを特徴とする。
【0014】
前記リガンド固定膜へ前記試料溶液を送液した後、前記溶出液を注入する前に、前記分注ヘッドによって前記流路へバッファを注入することにより、前記試料のうち、前記リガンドと結合しない非結合物質を、前記バッファとともに前記流路から排出する非結合物質除去ステップを含むことが好ましい。
【0015】
前記リガンド固定ユニットは、前記支持体として透明な誘電体が使用されるとともに、この誘電体の上面に形成された薄膜の表面に前記リガンド固定膜が形成されており、前記誘電体を通じて前記薄膜の裏面に全反射条件を満たすように光を入射させたときに、前記リガンドと前記試料との反応状況に応じて、その反射光が全反射減衰を生じる減衰角が変化するセンサユニットであることが好ましい。
【0016】
前記試料溶液を前記リガンド固定膜へ送液した後、前記反射光の減衰状況を測定する測定ステップを含み、この測定ステップの測定結果に基づいて前記リガンドと前記試料との結合の有無を調べて、前記結合が有る場合のみ、前記結合物質回収ステップを実行することが好ましい。
【0017】
前記センサユニットを第1ステージにセットして、前記試料送液ステップから前記測定ステップまでを実行し、前記結合が有る場合には、前記センサユニットを前記第1ステージとは異なる第2ステージへ移動して、前記結合物質回収ステップを実行することが好ましい。
【0018】
前記第1ステージは、前記測定を行うための測定手段が設けられた測定装置に設けられており、前記第2ステージは、前記測定装置とは別の筐体を持つ結合物質回収装置に設けられていることが好ましい。
【0019】
本発明の結合物質回収装置は、リガンドを固定したリガンド固定膜に、試料を含む試料溶液を接触させ、この接触により前記リガンドと結合した試料を結合物質として回収する結合物質回収装置において、リガンド固定膜が形成される支持体と、前記リガンド固定膜へ前記試料溶液を送液する流路が形成された流路部材とが一体的に組み付けられたリガンド固定ユニットが着脱自在にセットされるステージと、前記ステージ、前記試料溶液を含む液体を収納する液体収納容器、前記流路から排出した前記液体を回収する液体回収容器の各部にアクセス可能であり、前記液体の吸引と吐出とを行うピペットを備えた分注ヘッドとを有することを特徴とする。
【0020】
前記リガンド固定ユニットは、前記支持体として透明な誘電体が使用されるとともに、この誘電体の上面に形成された薄膜の表面に前記リガンド固定膜が形成されており、前記誘電体を通じて前記薄膜の裏面に全反射条件を満たすように光を入射させたときに、前記リガンドと前記試料との反応状況に応じて、その反射光が全反射減衰を生じる減衰角が変化するセンサユニットであることが好ましい。
【0021】
前記センサユニットに前記光を照射する光源と、前記反射光を受光してその検出信号を出力する検出器とからなり、前記リガンドと前記試料との結合の有無を調べるための測定データを得る測定部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、リガンド固定膜が形成される支持体と、前記リガンド固定膜へ前記試料溶液を送液する流路が形成された流路部材とが一体的に組み付けられたリガンド固定ユニットと、前記流路の端部に形成された出入口から前記試料溶液の注入と排出とを行うピペットを備えた分注ヘッドとを用い、この分注ヘッドによって前記流路へ前記試料溶液を注入して前記リガンド固定膜へ送液し、前記流路へ溶出液を注入して前記リガンド固定膜へ送液して、前記試料のうち、前記リガンドと結合した結合物質を前記リガンド固定膜から解離させ、前記分注ヘッドによって前記流路から前記溶出液を吸引することにより、前記溶出液とともに前記結合物質を前記流路から排出し、前記結合物質を回収容器へ回収するようにしたから、1回使用する毎に、流路部材を洗浄する手間が省けるので、結合試料の回収処理のスループットを向上させることができる。また、分注ヘッドにより流路に試料溶液を注入してリガンド固定膜へ接触させるので、質量分析のための結合物質の回収を少ない試料で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1に示すように、結合物質の回収は、SPRセンサであるセンサユニット12を、SPR測定機11にセットして行われる。センサユニット12は、一方の面がSPRが発生するセンサ面13aとなる金属膜13と、このセンサ面13aの裏面の光入射面13bと接合されるプリズム14と、前記センサ面13aと対向して配置され、このセンサ面13aに試料を含む試料溶液を送液するための流路16が形成された流路部材41とを備えている。
【0024】
金属膜13としては、例えば、金が使用され、その膜厚は、例えば、50nmである。この膜厚は、金属膜の素材、照射される光の発光波長などに応じて適宜選択される。プリズム14は、その上面に前記金属膜13が形成される透明な誘電体であり、光入射面13bに向けて、全反射条件を満たすように照射された光を集光する。
【0025】
流路16は、略U字形に屈曲された送液管であり、前記センサ面13aと対向して配置され前記センサ面13aと略平行な対向部分16cと、この対向部分16cの両端から流路部材41の上面に向けて流路部材41を縦方向に貫通する貫通部分16dとからなる。各貫通部分16dの上端は、それぞれ、流路16への液体の注入とそこからの排出を行う出入口16a,16bとなる。流路16の管径は、例えば、約1mm程度であり、各出入口16a,16bの間隔は、例えば、約10mm程度である。
【0026】
対向部分16cは、流路部材41の底面に形成された溝であり、その開放部位はセンサ面13aによって覆われて封止される。これにより、流路16に注入された液体は、センサ面13aと接触しながら、対向部分16cを流れる。これら流路16とセンサ面13aによってセンサセル17が構成される。後述するように、センサユニット12は、こうしたセンサセル17を複数個備えている。
【0027】
センサ面13aのほぼ中央部には、リンカー膜22が形成されている。リンカー膜22は、リガンドと結合してこれを固定するリガンド固定膜である。このリンカー膜22は、センサユニット12の製造段階において予め形成される。例えば、このリンカー膜22に、リガンドとなるペプチドが固定される。なお、リンカー膜22は、リガンドを固定するための固定基となるので、固定するリガンドの種類に応じて適宜選択される。リガンドの固定処理は、ペプチドを溶媒に溶かした溶液を流路16へ注入することによって行われる。
【0028】
このセンサユニット12は、SPR測定機11に着脱自在にセットされる。SPR測定機11には、流路16への液体の注入と、そこからの排出とを行う分注ヘッド25が設けられている。分注ヘッド26は、一対のピペット26a,26bを備えており、これら各ピペット26a,26bによって、流路16の各出入口16a,16bを通じて、液体の注入と排出とが行われる。
【0029】
例えば、試料溶液は、ピペット26aによって、一方の出入口16aから注入されて、リンカー膜22に送液される。試料溶液には、例えば、1種類の細胞から発現する複数種類のタンパク質が試料として含まれる。これらの複数種類の試料が、試料溶液中を拡散してリンカー膜22に固定されたリガンドと接触する。試料にリガンドと特異的に結合する結合物質が含まれる場合には、その結合物質とリンカー膜22に固定されたリガンドとが結合する。流路16に注入された試料溶液は、例えば、所定時間、流路16内に滞留される。そして、所定時間経過した後、他方の出入口16bからピペット26bによって吸引されて排出される。
【0030】
試料溶液をこの流路16内に滞留させている間、試料溶液を静置しておいてもよいし、各ピペット26a,ピペット26bによって交互に吸引動作と吐出動作とを繰り返すことにより試料溶液を攪拌して流路16内で流動させてもよい。試料溶液を流動させることにより、試料溶液内における試料の拡散率が高まり、リガンドへの結合物質の結合量を向上させることができる。また、試料溶液の注入と排出は、1回でなくてもよく、複数回行ってもよい。
【0031】
試料溶液を流路16から排出することによって、試料のうち、リガンドと結合しない非結合物質の多くは、リンカー膜22から除去されるが、中にはリンカー膜22上に残留する非結合物質もある。そのため、こうした非結合物質をリンカー膜22上から除去するために、試料溶液を排出した後、ピペット26aによって、流路16へ、非結合物質を流路16内から除去するためのバッファが注入される。流路16に注入されたバッファは、リンカー膜22から非結合物質を除去して、その非結合物質とともにピペット26bによって流路16から排出される。
【0032】
こうして非結合物質を除去した後、流路16には、ピペット26aによって溶出液が注入され、リンカー膜22へ送液される。溶出液は、いったんリガンドと結合した結合物質を、リガンドと解離させる。解離された結合物質は、この溶出液とともにピペット26bの吸引によって流路16から排出されて回収される。回収された結合物質は、質量分析計に送られる。
【0033】
SPR測定機11には、照明部32と検出器33とが設けられており、これらによってSPR信号が測定される。こうして得た測定データに基づいて、リガンドと試料との結合の有無が判断される。
【0034】
照明部32は、例えば、光源と、集光レンズ、拡散板、偏光板を含む光学系とからなり、全反射条件を満足する様々な入射角の光をプリズム14を通じて光入射面13bに対して照射する。光源としては、例えば、LED(Light Emitting Diode),LD(Laser Diode),SLD(Super Luminescent Diode)などの発光素子が使用される。
【0035】
光入射面13bに入射した様々な角度の入射光線は、それぞれの入射角に応じて様々な反射角で反射する。検出器33としては、例えば、CCDエリアセンサやフォトダイオードアレイが使用されており、光入射面13bで反射した様々な角度の反射光を受光し、それらを光電変換して光強度に応じた電気信号をSPR信号としてデータ解析機91に出力する。
【0036】
センサ面13a上の媒質の屈折率が変化すると、光強度が減衰する共鳴角に対応した反射角も変化する。この反射角の変化は、受光面内における反射光の減衰位置の変化として顕れる。リガンドと試料とが結合した場合と、結合しない場合とでは前記屈折率が異なるので、前記減衰位置の変化を検出することにより、リガンドと試料との結合の有無が調べられる。
【0037】
リンカー膜22上には、リガンドが固定され試料との反応が生じる測定領域(act領域)22aと、リガンドが固定されず、前記測定領域の信号測定に際しての参照信号を得るための参照領域(ref領域)22bとが形成される。このref領域22bは、リンカー膜22を製膜する際に形成される。形成方法としては、例えば、リンカー膜22に対して表面処理を施して、リンカー膜22の半分程度の領域について、リガンドと結合する結合基を失活させる。これにより、リンカー膜22の半分がact領域22aとなり、残りの半分がref領域22bとなる。
【0038】
検出器33は、act領域22aに対応するSPR信号をact信号として出力し、ref領域22bに対応するSPR信号をref信号として出力する。データ解析は、これらact信号とref信号を比較して、例えば、その差分を取り、この差分データを測定データとして解析がなされる。こうすることで、例えば、複数のセンサセル間の個体差や、液体の温度変化など、外乱に起因するノイズをキャンセルすることが可能となり、S/N比が良好な精度の高い測定データが得られるようにしている。
【0039】
図3は、センサユニット12の分解斜視図である。センサユニット12は、流路16が形成される流路部材41と、上面に金属膜13が形成されたプリズム14と、流路部材41を、プリズム14の上面と接合させた状態で保持する保持部材42と、保持部材42の上方に配置される蓋部材43とからなる。
【0040】
金属膜13は、プリズム14の上面に、例えば、蒸着によって形成される。金属膜13は、流路部材41に形成された複数の流路16と対向するように短冊状に形成されており、その上面には、各流路16に対応する部位に、リンカー膜22が配置される。また、プリズム14の長手方向の両側面には、保持部材42の係合部42aと係合する係合爪14aが設けられている。これらの係合により、流路部材41が保持部材42とプリズム14とによって挟み込まれる。流路部材41の底面41bは、プリズム14の上面と対向する対向面であり、流路部材41は、その底面41bとプリズム14の上面とが圧接した状態で保持される。こうして、流路部材41、金属膜13およびプリズム14が一体的に組み付けられて、センサユニット12が完成する。
【0041】
また、プリズム14の短辺方向の両端部には、突部14bが設けられている。この突部14bは、センサユニット12を収納するホルダ52(図3参照)の内壁と係合してその収納位置を位置決めするためのものである。
【0042】
プリズム14の素材としては、例えば、ホウケイクラウン(BK7)やバリウムクラウン(Bak4)などに代表される光学ガラスや、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネイト(PC)、非晶性ポリオレフィン(APO)などに代表される光学プラスチックなどが用いられる。
【0043】
保持部材42の上部には、各流路16の出入口16a,16bに対応する位置に、ピペット26a,26bの先端が進入する受け入れ口42bが形成されている。受け入れ口42bは、ピペットから吐出される液体が各出入口16aへ導かれるように、漏斗形状をしている。保持部材42が流路部材41を挟み込んでプリズム14と係合すると、受け入れ口42bの下面は、出入口16a,16bと接合して、受け入れ口42bと流路16とが連結される。
【0044】
また、これら各受け入れ口42bの両脇には、円筒形のボス42cが設けられている。これらのボス42cは、蓋部材43に形成された穴43aと嵌合して、蓋部材43を位置決めするためのものである。蓋部材43は、受け入れ口42bおよびボス42cに対応する位置に穴が空けられた両面テープ44によって、保持部材42の上面に貼り付けられる。
【0045】
蓋部材43は、流路16に通じる受け入れ口42bを覆うことで、流路16内の液体の蒸発を防止する。蓋部材43は、弾性部材、例えば、ゴムやプラスチックで形成されており、各受け入れ口42bに対応する位置に、十字形のスリット43bが形成されている。蓋部材43は、流路16内の液体の蒸発を防止するためのものであるから、受け入れ口42bを覆う必要があるが、受け入れ口42bを完全に覆ってしまっては、ピペットを受け入れ口42bに挿入することができない。そこで、スリット43bを形成することで、ピペットの挿入を可能とするとともに、ピペットを挿入していない状態では、受け入れ口42bが塞がれるようにしている。スリット43bは、ピペットが押し込まれると、スリット43bの周辺が弾性変形して、スリット43bの口が大きく開いて、ピペットを受け入れる。そして、ピペットを抜くと、弾性力によってスリット43bが初期状態に復帰して、受け入れ口42bを塞ぐ。
【0046】
流路部材41は長尺状をしており、3つの流路16が、その長手方向に沿って配列されている。なお、本例では、流路16の数が3つの例で説明したが、もちろん、流路16の数は、3つに限らず、1つまたは2つであってもよいし、4つ以上でもよい。
【0047】
また、図示しないが、このセンサユニット12には、個々のユニットを識別できるように各ユニット毎の識別IDなどの情報を含むバーコードが記録されている。こうした識別IDは、例えば、測定結果のデータ管理に用いられる。
【0048】
図3に示すように、SPR測定機11は、ホルダ搬送機構71、ピックアップ機構72、ヘッド移動機構73、測定ステージ74からなり、これらの各部が筐体75に収容されている。センサユニット12は、ホルダ52に収納された状態で、SPR測定機11にセットされる。ホルダ52内の複数のセンサユニット12は、順次、測定ステージ74に送られる。この測定ステージ74において、上述した、試料溶液とリガンドとの接触、SPR検出によるリガンドと試料との結合状況の測定、結合物質の回収が行われる。
【0049】
ホルダ搬送機構71は、搬送ベルト76と、この搬送ベルト76に取り付けられたキャリッジ77と、このキャリッジ77に取り付けられ、固定済みのセンサユニット12が収納されたホルダ52を載置するプレート78とからなる。ホルダ搬送機構71は、ホルダ52が載置されたプレート78をX方向へ移動させることにより、ホルダ52内の各センサユニット12を、ピックアップ機構72がピックアップするピックアップ位置へ運ぶ。
【0050】
ピックアップ機構72は、ホルダ52からセンサユニット12をピックアップする機構であり、ホルダ52に収納されたセンサユニット12を下方から上方に向けて押し上げる押し上げ機構81と、この押し上げ機構81によってホルダ52の上方に押し上げられたセンサユニット12を両脇から挟み込んで保持するハンドリングヘッド82とからなる。
ホルダ52の底部は開口になっており、また、プレート78も、その開口に対応する位置が中空になっている。押し上げ機構81は、プレート78の下方から上昇して、プレート78を通過し、ホルダ52の開口へ進入してセンサユニット12の底面と当接して、これを押し上げる押し上げ部材81aと、この押し上げ部材81aを駆動して上下に昇降させる押し上げ部材駆動機構81bとからなる。
【0051】
ハンドリングヘッド82は、センサユニット12を挟み込む1対の爪を備えており、この爪でセンサユニット12を掴んで保持する。ハンドリングヘッド82は、ヘッド本体82aがナット84を介してボールネジ86に取り付けられており、ホルダ52上方のピックアップ位置と、測定ステージ74との間で移動自在に設けられている。ハンドリングヘッド82は、ピックアップ位置でセンサユニット12を掴み、それを保持した状態でY方向へ移動して、センサユニット12を測定ステージ74へ運ぶ。また、ハンドリングヘッド82は、使用済みのセンサユニット12を、測定ステージ74からピックアップ位置へ運び、ホルダ52上でリリースしてホルダ52へ戻す。
【0052】
測定ステージ74には、センサユニット12が配置される位置の下方に、照明部32と、検出器33とが配置されている。測定ステージ74には、断面が略三角形の取り付け台90が設けられており、照明部32と検出器33は、この取り付け台90の対向する各斜面にそれぞれ取り付けられる。ハンドリングヘッド82によってピックアップ位置から運ばれてきたセンサユニット12は、その底面が取り付け台90の頂上に設けられたガイドレールと嵌合することによって進路をガイドされながら測定ステージ74へ運ばれる。
【0053】
センサユニット12は、上述したとおり、複数のセンサセル17を有しており、結合物質の回収は、各センサセル17毎に行われる。測定ステージ74では、センサユニット12を各センサセル17の配列ピッチでY方向に移動させることにより、各センサセル17を、照明部32の光路上の測定位置に順次進入させる。
【0054】
測定ステージ74の傍らには、テーブル89が設けられており、このテーブル89上には、複数のウエルプレート88が載置される。各ウエルプレート88は、複数のウエル状の升がマトリックスに配列された液体収納容器である。これらのウエルプレート88は、リガンドと接触させる試料溶液を収納する試料溶液収納容器、流路16から吸引して排出した廃液を収容する廃液回収容器、リガンドと結合した結合物質を回収する結合物質回収容器、バッファや溶出液を収納する収納容器として使用される。
【0055】
ヘッド移動機構73は、分注ヘッド26を、X,Y,Zの3方向に移動させながら、測定ステージ74にあるセンサユニット12や、各ウエルプレート88が載置されるテーブル89の位置に移動する。分注ヘッド26は、ウエルプレート88にアクセスして、液体を吸引し、これを保持した状態で、測定ステージ74に移動して、測定対象となるセンサセル17に液の注入を行うとともに、センサセル17から液を吸引して、吸引した液体を、ウエルプレート88に運ぶ。
【0056】
各ピペット26a,26bのノズルの先端には、ピペットチップが交換可能に取り付けられる。図示しないが、SPR測定機11には、分注ヘッド26がアクセス可能な位置に、交換用ピペットチップを収容するピペットチップ保管部と、使用済みのピペットチップを回収するピペットチップ回収部とが設けられている。ピペットチップは、液体と直接接触するので、このピペットチップを介して異種の液体の混液が生じないように、使用する液体毎に交換される。ピペットチップは、ノズルの先端に嵌合により取り付けられる。また、各ピペット26a,26bには、ノズルからピペットチップをリリースするリリース機構が設けられており、ピペットチップの交換が自動的に行われるようになっている。ピペットチップを交換する際には、分注ヘッド26は、まず、使用済みのピペットチップをピペットチップ回収部でリリースし、この後、ピペットチップ保管部にアクセスして未使用のピペットチップをピックアップする。
【0057】
データ解析機91は、例えば、パーソナルコンピュータなどで構成されており、検出器33から出力される測定データを受信して記録するとともに、その測定データに基づいてデータの解析を行う。このデータ解析により、センサユニット12の各センサセル17毎に、リガンドと試料とが結合したか否かが判定される。データ解析機91には、HDD(ハードディスクドライブ)などのデータストレージデバイスが設けられており、前記判定結果は、このデータストレージデバイスに記録される。
【0058】
また、データ解析機91は、SPR測定機11のコントロールユニットとしても機能する。データ解析機91は、前記判定結果に応じて、分注ヘッド26をコントロールして、各センサセル17から吸引した液体に結合物質が含まれている場合には、分注ヘッド26を、結合物質回収容器となるウエルプレート88に運び、結合物質を含む液体を回収する。他方、各センサセル17から吸引した液体に結合物質が含まれていない場合には、分注ヘッド26を、廃液回収容器となるウエルプレート88に運び、吸引した液体をその容器に収納する。
【0059】
以下、上記構成による作用について、図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。リガンドを固定済みのセンサユニット12をホルダ52に収容して、SPR測定機11のプレート78にセットする。ホルダ52内の各センサユニット12は、ピックアップ機構72によって、ピックアップされて、測定ステージ74に運ばれる。測定ステージ74に運ばれたセンサユニット12は、まず、1つの目のセンサセル17が測定位置に挿入される。
【0060】
センサセル17が測定位置に挿入されると、SPR測定が開始される。SPR測定が開始された後、分注ヘッド26は、テーブル89に移動して、一方のピペット26aでウエルプレート88から試料溶液を吸引し、測定位置にあるセンサセル17へ試料溶液を注入する。試料溶液は、センサセル17内で所定時間滞留される。こうして、試料溶液をリガンドと接触させる。この後、他方のピペット26bによって試料溶液を吸引してセンサセル17から排出する。排出された試料溶液は、廃液回収用のウエルプレート88に運ばれる。このように、分注ヘッド26によって、試料溶液をセンサセル17に注入して、試料溶液とリガンドとを接触させるので、従来のように、チューブを経由して流路へ試料溶液を連続的に送液する方法と比較して、試料溶液が少なくて済む。
【0061】
次に、分注ヘッド26は、一方のピペット26aによってバッファをセンサセル17へ注入し、他方のピペット26bによって注入したバッファを吸引してセンサセル17から排出する。これにより、試料溶液に含まれる試料のうち、リガンドと結合しない非結合物質がバッファとともにセンサセル17から排出される。排出された非結合物質を含むバッファは、廃液回収用のウエルプレート88に回収される。
【0062】
このバッファが送液された後、SPR測定が終了する。データ解析機91は、測定データに基づいて、注入した試料のうち、リガンドと試料との結合の有無を判定する。そして、リガンドと試料との結合が無い場合には、回収を行わずに、1つのセンサセル17の処理を終了する。
【0063】
他方、リガンドと結合した結合物質が有る場合には、分注ヘッド26は、一方のピペット26aによって溶出液をセンサセル17へ注入する。溶出液がセンサセル17に注入されると、リガンドから結合物質が解離される。他方のピペット26bは、結合物質を、溶出液とともに吸引してセンサセル17から排出する。そして、分注ヘッド26は、結合物質回収用のウエルプレート88に結合物質を回収する。
【0064】
1つのセンサセル17の処理が終了すると、センサユニット12を移動して、次のセンサセル17を測定位置に挿入し、上記手順が実行される。1個のセンサユニット12の各センサセル17の処理が終了した場合には、ハンドリングヘッド82によって処理済みのセンサユニット12がホルダ52に戻されて、未処理のセンサユニット12が測定ステージ74に運ばれて、上記手順が実行される。こうして回収された結合物質は、質量分析計に送られて、同定,解析が行われる。
【0065】
このように、センサユニット12に流路部材41を設けて、1回使用した流路部材41を処分可能にするとともに、流路16への液体の注入や排出を、分注ヘッド26によって行うようにしているので、流路部材を測定装置に設け、チューブなどを用いてその流路部材に液体を送液する従来の方法と比較して、流路部材などの洗浄の手間が省けるため、処理効率が向上する。
【0066】
上記実施形態では、SPR測定機11を結合物質を回収する回収装置として使用して、SPR測定によりリガンドと試料との結合の有無を判定し、リガンドと結合した試料のみ回収を行うようにしているが、質量分析によって結合物質の有無は調べることができので、SPR測定による結合の有無の判定を行わなくてもよい。そのような場合には、例えば、図4に示す回収装置101を使用して試料が回収される。
【0067】
回収装置101は、筐体のベースとなる筐体ベース102上に、複数のセンサユニット12を載置する載置スペース103が確保されている。センサユニット12は、この載置スペース103に載置された状態で、試料溶液のリガンド固定済みのリンカー膜22への送液と、結合物質の回収とが行われる。したがって、載置スペース103は、結合物質を回収するステージとなる。センサユニット12は、ホルダ52に収納された状態で載置スペース103にセットされる。載置スペース103には、ホルダ52を、例えば、10個並べて配置することができるようになっており、その数に応じた台座104が設けられている。
【0068】
筐体ベース102上には、流路16へ注入する種々の液体(試料溶液、バッファ,溶出液など)を保管する複数の液体収納容器105が設けられている。また、筐体ベース102上には、結合物質回収容器や廃液回収容器として用いられるウエルプレート106が設けられている。
【0069】
また、回収装置101には、ヘッド本体にピペット対108を3組連装した分注ヘッド109が設けられている。この分注ヘッド109は、ヘッド移動機構110によって、X、Y、Zの3方向に移動自在に設けられている。この分注ヘッド109が、載置スペース103上の複数のセンサユニット12、ウエルプレート106、液体収納容器105の各部にアクセスして、センサユニット12への液体(試料溶液,バッファ,溶出液)の注入や排出と、排出した液体のウエルプレート106への回収を行う。分注ヘッド109には、ピペット対108が3組設けられているので、1つのセンサユニット12に含まれる3つのセンサセル17に対して同時に液体の注入と排出を行うことができる。また、符合111は、ピペットチップ112を保管するピペットチップ保管部113である。
【0070】
この回収装置101は、リガンドと試料との結合の有無を調べることができないため、ウエルプレート106に回収された回収液には、結合物質が含まれているものと、含まれていないものが混在する。これらの回収液は、すべて質量分析計に送られる。そして、質量分析によって、結合物質の有無が調べられるとともに、結合物質が有る場合には、その同定と解析とが行われる。
【0071】
上記実施形態では、SPR測定機11及び回収装置101のいずれかを使用して、試料溶液の注入から、結合物質の回収までを行っているが、これら2つの装置で処理を分担してもよい。例えば、センサユニット12をSPR測定機11にセットして、試料溶液の注入と、リガンドと試料との結合の有無の検出とを行い、結合有りと判定されたセンサユニット12を回収装置101に移動して、結合物質の回収を行う。こうすればより処理効率が上がるので、センサユニット12の数が多い場合には有効である。また、SPR測定機11と回収装置101との間で、センサユニット12の移動とともに、測定データの受け渡しを行い、回収装置101が、この測定データに基づいて、結合有りのセンサユニット12と、結合無しのセンサユニット12とを識別して、回収を行うようにしてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、センサユニットに複数の流路を設けた例で説明したが、流路は1つでもよい。1個の流路から回収する結合物質の回収量を増やすためには、試料が結合するリンカー膜の面積を多くするとよい。そこで、図5に示すセンサユニット120のように、流路121の対向部分121aの長さを、上記センサユニット12の流路16の対向部分16cよりも長くするとともに、この対向部分121aと対面する領域のほぼ全域に、リンカー膜122を設けるとよい。このセンサユニット120の流路部材123の長手方向の長さは、例えば、上記センサユニット12の流路部材41の長さと同じである。流路部材123の両端部付近に、それぞれ出入口121bが1つずつ設けられており、対向部分121cは、各出入口121bの間隔にほぼ等しい長さを持っている。リンカー膜122は、対向部分121cの長さに対応して細長形状をしている。リガンドは、リンカー膜122の全面に固定される。
【0073】
SPR信号を測定する測定ポイントは、例えば、リンカー膜122のうち、一方の出入口121bよりに設定される。この測定ポイントのうち、act信号を測定するact領域は、リンカー膜122の端部に設定され、ref信号を測定するref領域は、リンカー膜122から外れた位置(リンカー膜122が無い位置)に設定される。もちろん、ref領域は、リンカー膜122上にあってもよいが、その場合には、上述したとおりリガンドが結合しないように表面処理(結合基を失活させる)が施される。
【0074】
こうして、対向部分121aに対面する領域のほぼ全域にリンカー膜122を形成することで、面積が多くなるので、結合物質の結合量及び回収量が増加する。なお、便宜上、保持部材や蓋部材等を図示していないが、センサユニット12と同様に、流路部材123とプリズム14とは、保持部材によって一体的に組み付けられる。
【0075】
また、本実施形態では、センサ面上にSPRを発生させて、そのときの反射光の減衰を検出するSPRセンサを利用して、リガンドと試料との結合の有無を測定する例で説明しているが、SPRセンサに限らず、全反射減衰を利用する他のセンサを用いてもよい。全反射減衰を利用するセンサとしては、SPRセンサの他に、例えば、漏洩モードセンサが知られている。漏洩モードセンサは、誘電体と、この上に順に層設されたクラッド層と光導波層とによって構成された薄膜とからなり、この薄膜の一方の面がセンサ面となり、他方の面が光入射面となる。光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させると、その一部が前記クラッド層を透過して前記光導波層に取り込まれる。そして、この光導波層において、導波モードが励起されると、前記光入射面における反射光が大きく減衰する。導波モードが励起される入射角は、SPRの共鳴角と同様に、センサ面上の媒質の屈折率に応じて変化する。この反射光の減衰を検出することにより、前記センサ面上の反応が測定される。
【0076】
また、全反射減衰を利用した測定を行わない場合には、リガンド固定ユニットとして、全反射減衰を利用するセンサを用いなくてもよい。この場合には、リンカー膜(リガンド固定膜)が形成される支持体は、プリズムでなくてもよく、その支持体に単に流路部材を取り付けたリガンド固定ユニットを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】センサユニットとSPR測定機の説明図である。
【図2】センサユニットの分解斜視図である。
【図3】SPR測定機の構成図である。
【図4】リガンド回収手順を示すフローチャートである。
【図5】回収装置の構成図である。
【図6】長い流路を持つセンサユニットの説明図である。
【符号の説明】
【0078】
11 SPR測定機
12 センサユニット
13 金属膜
13a センサ面
16 流路
17 センサセル
22 リンカー膜
26 分注ヘッド
26a,26b ピペット
31 測定部
74 測定ステージ
91 データ解析機
101 回収装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リガンドを固定したリガンド固定膜に、試料を含む試料溶液を接触させ、この接触により前記リガンドと結合した試料を、結合物質として回収する結合物質回収方法において、
リガンド固定膜が形成される支持体と、前記リガンド固定膜へ前記試料溶液を送液する流路が形成された流路部材とが一体的に組み付けられたリガンド固定ユニットと、前記流路の端部に形成された出入口から前記試料溶液の注入と排出とを行うピペットを備えた分注ヘッドとを用い、
前記分注ヘッドによって前記流路へ前記試料溶液を注入して前記リガンド固定膜へ送液する試料溶液送液ステップと、
前記分注ヘッドによって前記流路へ溶出液を注入して前記リガンド固定膜へ送液して、前記試料のうち、前記リガンドと結合した結合物質を前記リガンド固定膜から解離させる結合物質解離ステップと、
前記分注ヘッドによって前記流路から前記溶出液を吸引することにより、前記溶出液とともに前記結合物質を前記流路から排出し、前記結合物質を回収容器へ回収する結合物質回収ステップとからなることを特徴とする結合物質回収方法。
【請求項2】
前記リガンド固定膜へ前記試料溶液を送液した後、前記溶出液を注入する前に、前記分注ヘッドによって前記流路へバッファを注入することにより、前記試料のうち、前記リガンドと結合しない非結合物質を、前記バッファとともに前記流路から排出する非結合物質除去ステップを含むことを特徴とする請求項1記載の結合物質回収方法。
【請求項3】
前記リガンド固定ユニットは、前記支持体として透明な誘電体が使用されるとともに、この誘電体の上面に形成された薄膜の表面に前記リガンド固定膜が形成されており、前記誘電体を通じて前記薄膜の裏面に全反射条件を満たすように光を入射させたときに、前記リガンドと前記試料との反応状況に応じて、その反射光が全反射減衰を生じる減衰角が変化するセンサユニットであることを特徴とする請求項1又は2記載の結合物質回収方法。
【請求項4】
前記試料溶液を前記リガンド固定膜へ送液した後、前記反射光の減衰状況を測定する測定ステップを含み、この測定ステップの測定結果に基づいて前記リガンドと前記試料との結合の有無を調べて、前記結合が有る場合のみ、前記結合物質回収ステップを実行することを特徴とする請求項3記載の結合物質回収方法。
【請求項5】
前記センサユニットを第1ステージにセットして、前記試料送液ステップから前記測定ステップまでを実行し、前記結合が有る場合には、前記センサユニットを前記第1ステージとは異なる第2ステージへ移動して、前記結合物質回収ステップを実行することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の結合物質回収方法。
【請求項6】
前記第1ステージは、前記測定を行うための測定手段が設けられた測定装置に設けられており、前記第2ステージは、前記測定装置とは別の筐体を持つ結合物質回収装置に設けられていることを特徴とする請求項5記載の結合物質回収方法。
【請求項7】
リガンドを固定したリガンド固定膜に、試料を含む試料溶液を接触させ、この接触により前記リガンドと結合した試料を結合物質として回収する結合物質回収装置において、
リガンド固定膜が形成される支持体と、前記リガンド固定膜へ前記試料溶液を送液する流路が形成された流路部材とが一体的に組み付けられたリガンド固定ユニットが着脱自在にセットされるステージと、
前記ステージ、前記試料溶液を含む液体を収納する液体収納容器、前記流路から排出した前記液体を回収する液体回収容器の各部にアクセス可能であり、前記液体の吸引と吐出とを行うピペットを備えた分注ヘッドとを有することを特徴とする結合物質回収装置。
【請求項8】
前記リガンド固定ユニットは、前記支持体として透明な誘電体が使用されるとともに、この誘電体の上面に形成された薄膜の表面に前記リガンド固定膜が形成されており、前記誘電体を通じて前記薄膜の裏面に全反射条件を満たすように光を入射させたときに、前記リガンドと前記試料との反応状況に応じて、その反射光が全反射減衰を生じる減衰角が変化するセンサユニットであることを特徴とする請求項7記載の結合物質回収装置。
【請求項9】
前記センサユニットに前記光を照射する光源と、前記反射光を受光してその検出信号を出力する検出器とからなり、前記リガンドと前記試料との結合の有無を調べるための測定データを得る測定部を備えたことを特徴とする請求項8記載の結合物質回収装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−313091(P2006−313091A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135243(P2005−135243)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】