説明

結合物質

本発明は、特定の刺激に応答して凝集するよう誘発することができる結合物質に関する。好ましい形態では、上記結合物質は、少なくとも結合パートナーに対する結合メンバーと、その結合パートナーを含む。上記結合メンバーおよび結合パートナーの少なくとも一方が可逆的にマスキングされており、その結果、マスキングした部分がアンマスキングされるまで、複数の結合物質は互いに凝集することができない。凝集を誘発する好ましい機構には、照射および酵素作用が含まれる。本発明の適用例として、生化学的アッセイにおけるシグナル増幅およびin vivoでの治療薬の高い局部濃度の達成が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合物質、特に、特定の刺激に応答して凝集するように誘発することができる結合物質に関する。このような試薬は、診断および治療の両用途において、中でもシグナル増幅のために用いたり、さらには、成分同士の凝集を必要とするミクロ製造技術で用いたりすることができる。
【背景技術】
【0002】
免疫診断方法は、臨床分野において、またそれ以外の分野でも非常に有用であることが証明されている。食品試験、環境試験および法医学での用途は、こうした用途のほんの一部にすぎない。この方法の頑健性、精度および利便性により、家庭用キットから複雑な研究室用自動分析装置まで用途は多岐にわたる。特に、高分子量被検体の免疫測定方法の開発は目覚しい成功を収めている。
【0003】
イムノアッセイでは、固定化した被検体を検出するために抗体を用いることが多い。このような抗体は、通常、分光測光法により検出可能な読取りを提供するために、蛍光標識分子とカップリングされるか、または(例えば、ELISAにおいては)基質に作用して変色を起こすことができる酵素とカップリングされる。このような酵素として、アルカリホフファターゼおよびホースラディッシュペルオキシダーゼがある。したがって、発生するシグナルは、固定化被検体に結合した抗体分子の数に依存する。しかし、一般的に、結合した抗体分子1個につき発生するシグナルは、比較的低い。このため、特に、低濃度の被検体を検出する場合、感度不足が起こりうる。例えば、複数の酵素分子鎖を検出試薬にカップリングさせるか、または複数の検出層を用いることにより、このような酵素によるアッセイで発生するシグナルを増加させる試みがなされてきた。予め形成された分子鎖を用いると、拡散および標的との結合がサイズおよびその他の立体効果により妨げられることがある。従って、要求される部位にまたはその近傍に集合する、より小さな分子を用いるのが有利でありうる。逐次追加される多検出層の使用は、ある部位にもたらされる検出分子の数を増加するためによく用いられる方法である。これは、検出可能なシグナルを増強する効果的な方法ではあるが、複雑性が増し、時間がかかるとともに、誤りの可能性を導入するという欠点が加わり、かなり面倒である。触媒反応によるリポーター付着(Catalysed Reporter Deposition)(チラミドシグナル増幅法)のような、第2標識の二次沈降による検出分子の量の増加方法が開発されている。この方法では、第1酵素標識が不溶性成分を生じさせ、この成分は、その部位周辺での沈降後、これに対する第2抗体の添加により検出することができる。これらの方法はシグナルを増加することはできるが、関連する最終ユーザー操作に関して、例えば、各種試薬の逐次添加を必要とする場合には、やはり複雑性を増すこととなる。したがって、このようなアッセイにおいてシグナルを増幅する方法であって、効果的かつユーザーの使いやすい別の方法が求められている。
【0004】
また、治療薬剤を所望の疾患部位にターゲッティングするために、抗体が提案されている。この手法は、例えば、プロドラッグを活性薬物に変換することができる酵素を特定部位にターゲッティングするために用いられる。その部位で特異的に発現される分子に対して誘導された抗体が被検者に投与される。前記酵素は、その抗体にカップリングさせるか、あるいは、第1抗体に対して誘導された第2抗体にカップリングさせてから、投与することができる。このタイプの治療法は、ADEPT(antibody directed enzyme prodrug therapy; 特異的抗体による酵素プロドラッグ療法)としても知られている。所望の部位で活性酵素の量を増加させる方法、ならびに、プロドラッグ活性化の時間的および空間的特異性を増強する方法が極めて望ましい。標的化された凝集が可能な薬剤は、治療薬を所与の部位にターゲッティングしようとする場合、または治療薬を所定の時点で活性化させようとする場合の治療分野において他にも多様な用途が考えられる。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、適切な刺激を与えることにより、自己集合または凝集するように誘発することができる試薬を提供する。刺激は、凝集の微細な制御を達成するように、時間的および空間的に特定した方法で与えることができる(または、単純に試薬によって与えることができる)。本発明の試薬は、診断、治療、ならびにその他の用途など、多岐にわたり使用することができる。
【0006】
第一の形態において、本発明は、2つの結合部分(binding moiety)を含む結合物質(binding agent)を提供するが、該2つの結合部分は、
(i)結合パートナーに結合することができる結合メンバー、および
(ii)結合パートナー、
からなり、該結合部分の一方は可逆的にマスキングされており、それにより、2つの該結合物質は互いに結合しないことを特徴とする。可逆的にマスキングされた結合部分がアンマスキングされると、結合物質は互いに結合できるようになり、このようにして複合体または凝集体を形成する。
【0007】
また、複数の結合物質の凝集を引き起こす方法も提供され、この方法は、
複数の結合物質を含む組成物を用意するステップ、ここで、各結合物質は2つの結合部分を含み、該2つの結合部分は、
(i)結合パートナーに対する結合メンバー、および
(ii)結合パートナー、
からなり、上記結合部分の一方は可逆的にマスキングされており、それにより、複数の結合物質は互いに結合しないこと、
上記結合部分をアンマスキングし、それにより、上記複数の結合物質が互いに結合できるようにするステップ、
を含んでなる。
【0008】
前記2つの結合部分は、好ましくは、共有結合で連結されており、こうして同じ分子の一部を形成している。しかし、結合物質は非共有結合相互作用により一緒に保持された分子複合体であってもよく、その際、2つの結合部分は、該複合体の異なる成分上に位置する。本明細書で結合物質分子について述べる場合にはこのように解釈すべきである。
【0009】
従って、本発明のこの形態において、結合物質は2つの結合部分を含み、これらの結合部分は離れた状態で互いに結合することができるため、複数の同じ結合物質の凝集を誘発することができる。これら部分の1つ(または1つ以上)はマスキングされており、その結果、該部分がアンマスキングされるまで、このような凝集は起こり得ない。これらの相補的結合部分を、本明細書では、結合メンバーおよび結合パートナーと呼ぶ。
【0010】
しかし、「結合メンバー」および「結合パートナー」という用語は、各々が他方と結合する能力以外の何らかの特定の構造的または機能的関係を意味すると解釈すべきではない。さらに、ある箇所で結合メンバーと称した部分を、別の箇所では同様に結合パートナーと称することもありうることが理解されよう。
【0011】
典型的には、結合メンバーと結合パートナーは、以下に詳細に説明するように、特異的結合対のメンバーである。好適な結合対として、限定するものではないが、抗体とそれに対応した(コグネイト)抗原(抗体が結合するエピトープを含んでいれば、全抗原またはその断片のいずれでもよい)、受容体とリガンド、アビジン/ストレプトアビジンとビオチン、核酸同士、炭水化物とレクチンなどが挙げられる。
【0012】
好ましくは、単一の結合物質の前記部分同士は、結合部分がアンマスキングされた後に互いに相互作用することができない。このような分子内相互作用は、分子間凝集の可能性を低下させる傾向があることから、一般に好ましくない。典型的には、その際、結合部分同士を間隔をおいて離して、両者が立体的に互いに相互作用することはできないが、別の結合物質のそれぞれの相補的結合部分と相互作用することができるようにする。
【0013】
結合物質の凝集体の内部で架橋が起こる程度は、各結合物質に存在する各タイプの結合部分の数に応じて変動する。従って、各結合物質は、一方または両方のタイプの結合部分を複数含んでいてもよく、例えば、結合物質は、独立に、一方または両方の結合部分を2、3、4、5もしくはそれ以上のコピー数含んでいてもよい。
【0014】
可逆的にマスキングされた結合部分のアンマスキングは、該部分の活性化、または一般に結合物質の活性化、とみなすことができる。
【0015】
好適な結合部分は、該結合部分上に位置するか、またはそれに隣接するマスキング要素によりマスキングすることができる。マスキング要素は、立体障害、静電反発もしくはその他いずれかの好適なメカニズムを介して、対応した結合部分との結合を妨害しうる。
【0016】
分離可能なマスキング要素を付与することができる。例えば、選択的に切断可能な基または結合によりマスキング要素を結合物質にカップリングさせる。
【0017】
マスキング要素は、様々な方法により結合物質から切断することができ、このような方法として、限定するものではないが、照射、酸化、還元、pH変化、もしくは酵素的切断などが挙げられる。切断方法は、結合物質を用いようとする用途に応じて、適切に選択することができる。
【0018】
結合部分が特定の酵素の作用によりアンマスキングされるように、結合物質を設計することが望ましい場合もある。例えば、特定の腫瘍細胞が分泌する酵素により結合部分をアンマスキングすることによって、結合物質の結合(および/またはエフェクター)特性がその細胞型の付近でのみ活性化されるようにするのが望ましい。好適な酵素として、様々な腫瘍細胞(特に転移性腫瘍細胞)により分泌されるプロテアーゼ(例えばメタロプロテアーゼ)が挙げられる。
【0019】
酵素的切断を活性化メカニズムとして使用すると、結合物質活性化の連鎖反応を起こすことが可能になり、この場合には、活性化された1つの結合物質が別の結合物質を活性化することができ、このようにして次々と活性化が起こる。特に有用なものは、不活性酵素(例えば、プロ酵素または酵素前駆体)を含む結合物質であり、ここでは、酵素の活性形態が、例えばプロ酵素からプロペプチドを切断することにより、それ自体の不活性形態をその活性形態に変換することができる。典型的には、結合物質は、上記酵素の活性形態と優先的に結合する(好ましくは、不活性形態と結合しないかまたは実質的に結合しない)結合部分(例えば、抗体)を含んでいる。このような場合、マスクは酵素の不活性を引き起こす要素(例えば、プロ酵素のプロペプチド)として考えられる。
【0020】
好適なプロ酵素の例はキモトリプシノーゲンであり、これは、そのプロペプチドの切断によりキモトリプシンに活性化される。キモトリプシンは、それ自体でキモトリプシノーゲンをキモトリプシンに変換することができる。
【0021】
あるいは、マスキングした結合部分は、結合物質の立体配座の変化によりアンマスキングされる。これは、結合メンバーが結合することのできる新しい立体配座を結合物質に形成させたり、あるいは、それまでマスキングまたは遮蔽されていた(例えば、立体的に)結合物質の一部を露出させたりすることができる。従って、結合部分は結合物質の立体配座の変化によりアンマスキングされ、それによって、該結合メンバーまたは結合パートナーが露出される。立体配座の変化は、別の活性化方法と一緒に、または別の活性化方法の結果として、起こりうる。例えば、前述したように、プロ酵素を結合部分として用いる場合には、相補的結合部分が、プロペプチドの切断時にだけ生じる特定の立体配座を認識することができる。従って、キモトリプシンと特異的に結合することができるが、キモトリプシノーゲンには結合しない抗体を、キモトリプシノーゲンと組み合わせて用いてもよい。
【0022】
このように、マスクは結合物質の立体配座の変化により除去または逆転することができ、それにより結合部分が露出される。
【0023】
照射は、可能性のある別の活性化メカニズムであり、これは、それがもたらす活性化に対する厳密な空間的および時間的制御ゆえに、特に治療用途において非常に好ましい。被検者に全身的にまたは局所的に結合物質を投与し、例えばレーザーを用いて、極めて特定的に結合物質を活性化させることが可能である。これにより、身体の他の場所での不要な活性化を低減することができる。従って、結合部分の一方または両方を光開裂性成分(すなわち、光切断可能な結合を介して結合物質の残りに結合された成分)でマスキングすることができる。
【0024】
結合物質は典型的にはエフェクターメンバーを含む。エフェクターの種類および正体は、結合物質の意図した用途に応じて変わってくる。このような結合物質は、in vivoまたはin vitroにかかわらず(研究所アッセイ系および細胞培養を含む)、特定のエフェクターの局在化した濃度増加を引き起こすことが望ましいあらゆる用途に用いることができる。
【0025】
本明細書に記載する結合物質は、特定の部位のまたはサンプル中の被検体の存在または濃度を測定するアッセイにおいて、シグナルを提供または増幅するために使用することができる。このようなアッセイとして、in vitroで実施する生物学的、生化学的、もしくは免疫学的アッセイ、ならびにin vivoで個体に実施する診断試験が挙げられる。
【0026】
このような実施形態において、エフェクターはシグナル発生手段を含んでいてもよい。例として、放射性標識または蛍光標識のような標識成分がある。あるいはまた、シグナル発生手段は、検出可能な読取りをもたらすように基質に作用することができる酵素を含んでいてもよい。これには、基質に作用して、変色のような分光測光法により検出可能な変化を生み出すことが含まれる。このような酵素として、アルカリホスファターゼおよびホースラディッシュペルオキシダーゼが挙げられる。その他の可能性は当業者には明らかであろう。
【0027】
別の実施形態では、エフェクターメンバーが結合機能性を有する。例えば、これは標的細胞型と結合することができる。特定の実施形態では、これは、結合物質の凝集部位で1以上の特定の細胞型の凝集または活性化を誘発することができる。こうして、エフェクターメンバーは、細胞の表面に結合し、任意にその細胞型を活性化することができる。従って、エフェクターメンバーは、細胞表面分子に結合することができ、任意に該表面分子のアゴニストであってもよい。一例として説明すれば、血小板の表面に発現する分子(例えば、CD41)に結合することができる分子(例えば、抗CD41抗体)を用いて、血小板の局在化凝集を誘発し、これにより血液凝固を促進することができる。アゴニスト活性が必要とされる場合には、エフェクターは、受容体、共受容体、リガンドもしくは別のタイプのアゴニスト(例えば、抗体)でありうる。細胞は、例えば、T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞のような免疫系の細胞でありうる。例えば、エフェクターは、結合物質の凝集部位でT細胞を活性化することができる抗CD3抗体でありうる。このようなエフェクターは、例えば免疫応答の活性化のために、治療上有用でありうる。これはまた、癌の治療、もしくは細胞内寄生体(例えば、ウイルス、マラリア原虫など)による感染の治療にも有用であると考えられる。
【0028】
標的細胞の表面に結合することができるエフェクターは、結合物質をその特定の細胞型に局在化させる(例えば、治療上有用なエフェクターを当該細胞型にターゲッティングさせる)ためにも用いることができる。細胞特異的抗原に結合することができる抗体のような結合物質は、ここでは特に有用である。例として、腫瘍特異的抗原、およびウイルス抗原のような寄生体抗原に対する結合物質が挙げられる。
【0029】
治療上有用であると考えられるその他のエフェクターとして、薬物およびプロドラッグ分子、ならびに、プロドラッグを活性形態に変換するための酵素が挙げられる。このような酵素には、ホスファターゼ、カルボキシペプチダーゼ、βグルコシダーゼ、βラクタマーゼ、アミダーゼ、シトシンデアミナーゼおよびニトロレダクターゼなどがある。これらは、感染または癌の治療にも有用であると考えられる。例えば、照射により、腫瘍または感染の部位で結合物質の凝集を誘発し、関連エフェクター濃度の局在化を可能にすることができる。
【0030】
また、エフェクター部分を可逆的にマスキングするか、もしくは阻害することにより、活性化されるまでエフェクターがその機能を発揮するのを阻止することも可能である。エフェクター部分のマスキングは、結合メンバー/パートナーと同じ手段、または別の手段のいずれにより実施してもよい。従って、凝集およびエフェクター機能を活性化させるために、同じまたは異なる刺激が必要とされる。
【0031】
本発明は、さらに、本明細書に記載する結合物質を製造する方法も提供する。好ましい方法は、以下のステップ:
(i)結合パートナーに結合することができる結合メンバーからなる第1成分を用意するステップ、
(ii)上記結合パートナーからなる第2成分を用意するステップ、
ここで、上記結合メンバーおよび結合パートナーの一方は可逆的にマスキングされており、その結果、上記結合メンバーまたはパートナーは他方に結合するのを阻止されていること、
(iii)第1成分と第2成分が互いに結合するように両者を接触させるステップ、
を含んでなる。
【0032】
前記方法は、関連する結合メンバーまたはパートナーを可逆的にマスキングするステップをさらに含むことができる。
【0033】
第1および第2成分は、共有結合により結合させて、これらが単一の分子を形成するようにしてもよい。例えば、通常の結合試薬を用いて、両成分間に共有結合を形成させる。あるいは、これらの成分を非共有結合で結合させ、例えば、非共有結合相互作用(例:抗体−抗原またはアビジン−ビオチン相互作用)により一緒に保持された複合体を形成することもできる。
【0034】
第1および第2成分は各々、複数の結合メンバーまたはパートナーを含んでもよく、その場合、その一部だけをマスキングする。従って、得られた複合体または分子が、少なくとも1つの遊離の結合パートナーと少なくとも1つの遊離の結合メンバー(その一方が可逆的にマスキングされている)を依然として含んでいる限り、アンマスキングされた結合メンバーおよびパートナー間の相互作用により、前記成分を互いに結合させることができる。
【0035】
例えば、単一成分複合体を作製するには、アビジン分子の4つのビオチン結合部位のいくつか(しかし全部ではない)がマスキングされて、ビオチンと結合できないように、アビジン分子を部分的にマスキングする。次に、部分的にマスキングしたビオチンをビオチン化エフェクター分子(例えば、イムノアッセイでシグナルを増幅するのに用いるアルカリホスファターゼ)と接触させる。これにより、残りのアビジン結合部位をアンマスキングしたとき、それら自体で凝集する複合体が形成される。
【0036】
本発明はまた、2つ以上の結合物質成分を含む系も包含する。2つ以上の成分を用いる場合、いずれか1つの結合物質は、結合メンバーと、その対応する結合パートナーの両方を含む必要はない。その代わり、各結合物質は少なくとも2つの結合部分を有し、その各々は、上記系の別の成分(別の結合物質)に存在する結合メンバーに対する結合パートナーである。本明細書中で用いる用語「結合メンバー」および「結合パートナー」は相互交換可能であると解釈できる。従って、第1成分の「結合メンバー」は、同系の別の成分に存在する相補的な「結合メンバー」の「結合パートナー」と称することもできる。
【0037】
従って、別の形態では、本発明は、結合物質の少なくとも2つの集団を含む組成物を提供するが、ここで、各集団は、それぞれの結合パートナーに対する少なくとも2つの結合メンバーを有し、上記結合パートナーの各々は結合物質の上記集団の別のものに存在し、その際、少なくとも1つの集団の結合メンバーが可逆的にマスキングされており、それにより、その1集団がそれぞれの結合パートナーを含む集団と結合しない。
【0038】
また、複数の結合物質の凝集を引き起こす方法も提供され、この方法は、以下のステップ:
結合物質の少なくとも2つの集団を含む組成物を得るステップ、ここで、各集団は、それぞれの結合パートナーに対する少なくとも2つの結合メンバーを有し、上記結合パートナーの各々は結合物質の上記集団の別のものに存在し、その際、少なくとも1つの集団の結合メンバーが可逆的にマスキングされており、それにより、その1集団がそれぞれの結合パートナーを含む集団と結合しないこと、
上記結合メンバーをアンマスキングし、それにより、その1集団がそれぞれの結合パートナーを含む集団と結合できるようにするステップ、
を含んでなる。
【0039】
さらに、結合物質の少なくとも2つの集団を含むキットも提供され、ここで、各集団は、それぞれの結合パートナーに対する少なくとも2つの結合メンバーを有し、上記結合パートナーの各々は結合物質の上記集団の別のものに存在し、その際、少なくとも1つの集団の結合メンバーが可逆的にマスキングされており、それにより、その1集団がそれぞれの結合パートナーを含む集団と結合しない。
【0040】
各集団は、複数の特定種の結合物質を含む。
【0041】
各結合物質の結合メンバーおよびパートナーは同じでも違ってもよい。
【0042】
結合物質の各集団は、その結合部分の1つ以上をマスキングしておくことができる。各々を同じメカニズムでアンマスキングするのが好ましい。
【0043】
前述した単一種の結合物質の場合と同様に、結合物質の凝集体の内部で架橋が起こる程度は、各結合物質に存在する各タイプの結合部分の数に応じて変動する。従って、各結合物質は、一または両タイプの結合メンバーまたはパートナーを複数含んでもよく、例えば、これらは独立に、一または両タイプの結合メンバーまたはパートナーの2、3、4、5もしくはそれ以上のコピーを含むことができる。
【0044】
好ましい方法、キットおよび組成物は、2種の結合物質しか含まず、その際、各結合物質は、他方の結合物質に存在するそれぞれの相補的結合パートナー/結合メンバーと結合することができる(少なくとも)2つの結合メンバー/結合パートナーを有する。従って、好ましい実施形態では、結合パートナーの各々は、他方の同じ結合物質集団に存在する。二成分系の例を以下に挙げる:
(i)2つの抗原結合部位を有する抗体と、この抗体により認識される少なくとも2つのエピトープを有する抗原分子との組合せ。抗原結合部位またはコグネイトエピトープのいずれか、もしくは両方を可逆的にマスキングすることができる;(ii)アビジン分子(4つのビオチン結合部位を有する)と、2つ以上のビオチン部分に結合した分子との組合せ。典型的には、アビジン結合部位を可逆的にマスキングすることにより、活性化前にビオチンとの相互作用を阻止する。これは、前述した単一成分結合物質の二成分バージョンとして考えることができ、部分的にマスキングしたアビジンと、多重にビオチン化したエフェクター分子の複合体を含む。
【0045】
本発明はまた、3種以上の結合物質を含む方法、キットおよび組成物も包含し、その際、少なくとも1種を可逆的にマスキングすることにより、他の種の少なくとも1つとの結合を阻止する。
【0046】
多成分系、組成物、キットなどは、単一成分系について記載したのと同様のマスキングおよび活性化機構、エフェクターメンバーなどを含むことができる。
【0047】
互いに会合する2つ以上の結合物質を有する系、組成物およびキットは、特定の結合対の各メンバーを実質的に化学量論的に等しい量で含む。1つのメンバーが大幅に過剰に存在すると、結合物質の所望する架橋および凝集が起こりにくくなる。代わりに、活性化により、多数の微小な複合体が形成され、過剰に存在する結合メンバーを含む結合物質は、(多くても)それぞれの結合パートナーを含む結合物質の若干数としか結合することができない。効率的な架橋には、各結合物質が少なくとも2つの他の結合物質と会合することが求められる。
【0048】
本発明の方法は、in vitroまたはin vivoのいずれでも使用することができる。結合物質の凝集は、溶液中または表面(例えば、細胞表面、またはマイクロプレートのような固相支持体の表面)上のいずれでも起こすことができる。
【0049】
凝集が表面で起こる場合には、結合メンバーまたは結合パートナーをその表面に存在させることにより、第1結合物質がその表面と会合できるようにする。このように、結合物質は、特定の焦点、例えば上記表面に存在するまたはこれに結合した特定の分子上、で凝集させうる。従って、本発明の方法は、結合物質の凝集のための焦点を提供するステップを含むことができる。
【0050】
典型的に、この焦点は、結合物質の1つと結合することができる部分を含む分子であり、活性化(アンマスキング)されると、結合物質が焦点で凝集することになる。
【0051】
この結合は、結合物質に存在する結合部分の1つ(すなわち、結合メンバーもしくは結合パートナー)を介して、または結合物質のエフェクターメンバー、あるいは、結合物質分子の他のいずれかの部分を介して行なわれる。好ましい実施形態では、凝集のための焦点は、結合物質に存在する結合部分の少なくとも1つ(すなわち、結合メンバーまたは結合パートナー)をそれ自身で含む分子である。
【0052】
これに加え、またはこれに代わり、本発明の方法は、結合物質のマスキングした結合部分をアンマスキングすることができる物質の供給源を提供するステップを含んでもよい。これは、凝集が特定の表面で起こる必要がなく、特定部位の近傍(例えば、遊離溶液中)で起こればよい場合、特に適用される。
【0053】
例えば、本発明は、免疫系の刺激、プロドラッグの活性化などのような治療特性を有するエフェクターメンバーを含む結合物質の標的凝集を引き起こす手段を提供する。このような結合物質は、疾患部位における免疫系またはプロドラッグの活性化を高めるために、疾患部位(例えば、腫瘍、寄生された細胞など)の近傍で凝集することが望ましい。結合物質は、疾患部位によりまたは該部位で産生された物質(例えば、感染細胞が産生するウイルス酵素、もしくは腫瘍細胞が産生するメタロプロテアーゼ)によって、その凝集が誘発されるように設計することができる。従って、疾患部位自体を活性化物質の供給源としてみなすことができる。
【0054】
本発明はさらに、医学的治療方法(例えば、寄生された細胞または腫瘍細胞の除去もしくは低減)に用いるための本明細書に記載した結合物質および組成物を提供する。また、例えば、癌、またはウイルスやマラリア原虫のような細胞内寄生体による感染を治療するための、薬剤の製造における本明細書に記載の結合物質および組成物の使用も提供する。
【0055】
すでに記載したように、本発明の特に好ましい形態は、サンプル中の被検体を検出するアッセイで前記結合物質を使用することに関し、その際、結合物質がシグナル増幅試薬として役立つと考えられる。従って、本発明は、サンプル中の被検体を測定する方法であって、以下のステップを含む方法を提供する:
(a)サンプルを複数の結合物質(各々が2つの結合部分を含む)と接触させるステップ、ここで、上記結合部分は、
(i)結合パートナーと結合することができる結合メンバー、および
(ii)上記結合パートナー、
からなり、上記結合部分の一方が可逆的にマスキングされており、それにより、上記結合物質が互いに結合しないこと;
(b)上記サンプルを、被検体(もし存在すれば)に結合することができる検出物質と接触させるステップ、その際、上記検出物質は上記結合部分の一方を含むこと;
(c)可逆的にマスキングした結合部分をアンマスキングすることにより、上記結合物質が凝集体を形成するようにするステップ。
【0056】
従って、被検体がサンプル中に存在する場合には、結合物質のいくつかが、検出物質(それゆえに被検体)と会合(例えば、結合)した複合体または凝集体を形成する。このように、検出物質は、前述した凝集のための「焦点」を提供する。
【0057】
特定の実施形態では、被検体は結合物質が有する結合部分の1つを含んでいてもよい。このような場合、被検体自体が凝集のための焦点を提供する。従って、別個の検出物質を用いる必要がない。こうして、被検体自体と直接会合(直接結合)する結合物質は検出物質とみなすことができる。従って、検出物質は結合物質の1つでありうる。
【0058】
この方法は典型的には、凝集した結合物質の存在を検出するステップを含んでいる。これは、直接または間接的手段のいずれによってもよい。本明細書の別の箇所で記載したように、結合物質にシグナル発生手段(例えば、標識成分)を担持させ、これを検出できるようにしてもよい。あるいは、結合物質の凝集体の形成は、光散乱または表面プラズモン共鳴など、様々な方法で直接測定することもできる。
【0059】
この方法は、固相に被検体を固定化することを含むが、これは、通常、検出物質との接触前に行なう。例えば、固相表面にサンプルを直接コーティングすることができる。あるいは、被検体に特異的な固定化物質自体を固相に固定化し、被検体が結合できる結合部位を提供してもよい。固定化物質は、検出物質により認識される部位とは異なる被検体の部位に結合するため、固定化物質と検出物質の両方を同時に被検体に結合させることができる。典型的には、固定化物質は被検体に特異的な抗体であるが、受容体もしくはその他の好適な分子でもよい。
【0060】
前述したアッセイ方法では、結合物質の凝集体が、検出しようとする被検体と結合もしくは連結(例えば、検出物質を介して)される。これは、結合した凝集体が、アッセイの様々な段階で過剰の未反応または未結合成分を除去するための洗浄ステップを経て、保持されるので望ましい。この方法は、任意に、例えば検出物質の添加と結合物質の添加の間、および/または結合物質の活性化と凝集体の検出の間に、上記のような洗浄ステップを含むことができる。アッセイの様々な成分は、所望により同時に添加しても、逐次的に添加してもよいことが理解されよう。
【0061】
好ましいアッセイフォーマットは、検出物質が被検体に特異的な抗体である、免疫化学的方法を含む。このような方法として、ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)およびウェスタンブロットのような方法があるが、測定しようとする被検体が固定化細胞の集団または組織切片に存在する場合には免疫組織染色および免疫蛍光のようなアッセイも含まれる。
【0062】
同様に、前記の方法は核酸検出方法にも適用することができ、その場合、被検体は核酸分子(例えば、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAであり、ゲノムDNA、mRNAもしくはcDNAを含む)であり、検出物質は、適切なストリンジェンシー条件(例えば、高、中もしくは低ストリンジェンシー条件)下で被検体核酸とハイブリダイズすることができる核酸分子である。このような方法として、被検体核酸が膜に固定化されるサザンおよびノーザンブロット、ならびにin situハイブリダイゼーションが挙げられる。
【0063】
例えば、in situハイブリダイゼーションのためのプローブ(検出物質)はフルオレセインで標識することができる。フルオレセインからのシグナルは、結合物質(マスキングされた抗フルオレセイン抗体をフルオレセインにコンジュゲートしたもの)を用いて増幅することができる。上記抗体のアンマスキングにより、プローブ上にフルオレセイン含有結合物質の凝集が起こり、プローブだけで達成されるものより有意に大きなシグナルが得られる。
【0064】
多くの場合、サンプルは、被検体を含むと思われる溶液(例えば、水溶液、細胞抽出物など)であることが明らかである。しかし、本発明の方法は、他のタイプのサンプル(例えば、細胞調製物、組織切片など)を用いる用途にも十分に適用可能である。被検体は、あらゆる好適な被検体でよく、このような被検体として、限定するものではないが、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、核酸、有機または無機ポリマー、小さな有機または無機分子、ならびに、巨大分子複合体、ウイルスおよび真核または原核細胞のようなさらに大きな実体物が挙げられる。
【0065】
このように、本発明の方法および組成物を用いて、サンプル中の被検体(例えば、ウイルスまたは細菌のような感染性病原体)の存在を検出することができる。このようなアッセイは、あらゆる好適なフォーマット(例えば、均一液体アッセイフォーマット)で実施することができる。単純な沈降または凝集アッセイを用いることもでき、その場合、被検体に結合することのできるエフェクター部分を含む結合物質を用いる。サンプルを結合物質と接触させ、例えば照射により、結合物質を活性化(アンマスキング)した後、例えば光散乱などにより、沈降速度および程度を観測する。沈降速度および程度は、サンプル中の被検体の量に応じて変動するはずである。
【0066】
別の形態では、競合的アッセイフォーマットを用いる。典型的には、未知量の被検体を含むサンプルを既知量の競合物質と接触させる。次に、被検体と競合物質を一定数の結合部位について競合させた後、競合物質により占められた結合部位の割合を決定することにより、サンプル中の被検体の濃度を算出する。
【0067】
従って、本発明は、サンプル中の被検体を測定する方法であって、以下のステップを含む方法を提供する:
(a)サンプルを、
(i)競合物質、および
(ii)複数の結合部位、
と接触させるステップ、その際、各結合部位は、被検体(存在すれば)および競合物質と結合することができるが、同時に両者と結合することはできないこと;
(b)上記サンプルを複数の結合物質(各々2つの結合部分を含む)と接触させるステップ、ここで、上記結合部分は、
(i)結合パートナーと結合することができる結合メンバー、および
(ii)上記結合パートナー、
を含み、上記結合部分の一方が可逆的にマスキングされており、それにより、上記結合物質は互いに結合しないこと;
(c)上記サンプルを、競合物質(もし存在すれば)に結合することができる検出物質と接触させるステップ、その際、上記検出物質は上記結合部分の一方を含むこと;
(d)可逆的にマスキングされた結合部分をアンマスキングすることにより、上記結合物質が凝集体を形成するようにするステップ。
【0068】
パート(a)(ii)に記載した結合部位は、典型的には、非競合アッセイ系に関して上述したような、固相に固定化した固定化物質(例えば、受容体または抗体)の一部である。
【0069】
前記のアッセイ方法において、(上記のような)2つ以上の結合物質成分を含む結合物質系を単一結合物質種の代わりに用いてもよいことが当業者には明らかであろう。
【0070】
従って、本発明はさらに、サンプル中の被検体を測定する方法であって、以下のステップを含む方法を提供する:
(a)サンプルを結合物質の少なくとも2つの集団と接触させるステップ、ここで、各集団は、それぞれの結合パートナーに対する少なくとも2つの結合メンバーを有し、上記結合パートナーの各々は結合物質の上記集団の別のものに存在し、その際、上記集団の少なくとも1つの結合メンバーが可逆的にマスキングされており、それにより、その1集団が、それぞれの結合パートナーを含む集団と結合しないこと;
(b)上記サンプルを、被検体(もし存在すれば)に結合することができる検出物質と接触させるステップ、その際、上記検出物質は上記結合メンバーまたは結合パートナーの一方を含むこと;
(c)可逆的にマスキングされた結合部分をアンマスキングすることにより、上記結合物質が凝集体を形成するようにするステップ。
【0071】
また、サンプル中の被検体を測定する方法であって、以下のステップを含む方法も提供される:
(a)サンプルを、
(i)競合物質、および
(ii)複数の結合部位、
と接触させるステップ、その際、各結合部位は、被検体(存在すれば)および競合物質と結合することができるが、両方と同時に結合することはできないこと;
(b)該サンプルを、結合物質の少なくとも2つの集団と接触させるステップ、ここで、各集団は、それぞれの結合パートナーに対する少なくとも2つの結合メンバーを有し、上記結合パートナーの各々は結合物質の上記集団の別のものに存在し、その際、上記集団の少なくとも1つの結合メンバーが可逆的にマスキングされており、それにより、その1集団が、それぞれの結合パートナーを有する集団と結合しないこと;
(c)該サンプルを、競合物質(存在すれば)と結合することができる検出物質と接触させるステップ、その際、上記検出物質は上記結合メンバーまたは結合パートナーの一方を含むこと;
(d)可逆的にマスキングされた結合部分をアンマスキングすることにより、上記結合物質が凝集体を形成するようにするステップ。
【0072】
これらの方法の好ましい形態は、上記のとおりであり、また本明細書の他の箇所に記載するとおりである。
【0073】
本発明の別の特に好ましい形態は、生理学的部位に特定の治療薬の高い局所濃度をもたらすために、治療に前記結合物質を用いることに関する。
【0074】
従って、本発明は、生理学的部位で治療薬の凝集を引き起こす方法を提供し、この方法は、以下のステップを含む:
複数の結合物質を個体に投与するステップ、上記結合物質の各々は2つの結合部分を含み、これら結合部分は、
(i)結合パートナーと結合することができる結合メンバー、および
(ii)上記結合パートナー、
からなり、上記結合部分の一方が可逆的にマスキングされており、それにより、上記結合物質は互いに結合せず、上記結合物質の各々が治療薬をさらに含むこと;
可逆的にマスキングされた結合部分をアンマスキングして、上記結合物質を互いに結合させることにより、上記結合物質の凝集を誘発するステップ。
【0075】
生理学的部位は、疾患部位、例えば、腫瘍または寄生体感染の部位でありうる。あるいは、この部位は、創傷部位のように、例えば、血餅形成が望ましい部位であってもよい。
【0076】
凝集体を前記部位(例えば、罹患した細胞)に物理的に結合させることが望ましいが、必ずしも必要なわけではない。
【0077】
従って、本発明の方法は、結合物質が凝集することができる焦点(focus)を提供することを含む。これは、ターゲッティング物質により達成することができる。ターゲッティング物質は、当該部位に発現(好ましくは特異的に)された分子と結合する能力をもつべきであり、そのため、好適な分子に特異的な抗体(またはそのフラグメント)を含みうる。こうして、ターゲッティング物質は、腫瘍特異的抗原または寄生体抗原(例えば、ウイルス抗原)と結合する能力をもつものである。さらに、ターゲッティング物質は、結合物質の一方と結合する能力をもつべきであり、それゆえに、結合物質に含まれる結合部分の一方を含むものである。
【0078】
本発明の方法はさらに、ターゲッティング物質を個体に投与するステップを含むことができる。これに加え、またはこれに代わり、結合物質の結合部分の一方が前記部位に発現された分子と結合する能力をもっていてもよい。
【0079】
結合部分のアンマスキングは、あらゆる好適な手段によって達成することができる。好ましい例として、照射(この場合には、結合部分が光切断性部分でマスキングされている)および酵素作用が挙げられる。
【0080】
活性化に関与する酵素は、前記部位に外因的に(該部位に発現された分子に結合することができる前記タイプのターゲッティング物質により)提供されるか、もしくは該部位で産生される。これは、例えば、癌細胞により発現された酵素(例えば、プロテアーゼ)、または感染細胞により発現された寄生体酵素(例えば、ウイルス酵素など)でありうる。従って、結合部分をアンマスキングするステップは、全治療を施すステップに代わって、特殊な作用を必ずしも必要としないことが理解されよう。アンマスキング(従って、凝集)は単純に、結合物質が適切な酵素を発現させる部位に出会ったときに、起こるにすぎない。
【0081】
本発明のこれらの方法に有用な治療薬については、本明細書の他の箇所でさらに詳しく説明する。このような治療薬として、細胞表面(例えば、血小板の表面)に発現された分子と結合可能な分子、免疫系の細胞を活性化できる分子(例えば、抗CD3抗体)、薬物またはプロドラッグ分子、ならびに酵素(例えば、プロドラッグを活性形態に変換できる酵素)などが挙げられる。後者の場合、この方法は、プロドラッグを個体に投与するステップをさらに含みうる。
【0082】
また、治療薬を可逆的にマスキングすることにより、凝集が起こるときだけそれが活性になる(すなわち、それが当該部位でしか活性にならない)ようにすることができる。
【0083】
前述した治療方法に対応するin vitro方法も本発明の範囲に含まれることが理解されよう。
【0084】
従って、本発明はまた、細胞の培養物中で治療薬の凝集を引き起こす方法を提供し、この方法は、以下のステップを含む:
細胞の培養物を複数の結合物質と接触させるステップ、ここで、上記結合物質の各々は2つの結合部分を含み、これら結合部分は、
(i)結合パートナーと結合することができる結合メンバー、および
(ii)上記結合パートナー、
からなり、上記結合部分の一方が可逆的にマスキングされており、それにより、上記結合物質が互いに結合せず、上記結合物質の各々が前記治療薬をさらに含むこと;
可逆的にマスキングされた結合部分をアンマスキングして、上記結合物質を互いに結合させることにより、上記結合物質の凝集を誘発するステップ。
【0085】
本発明の治療的形態に関して述べたように、必要であれば、ターゲッティング物質を用いてもよい。治療方法の他の特徴も、このような細胞培養方法に使用できるように適合させることも可能である。
【0086】
細胞は、例えば、癌細胞、寄生体に感染した細胞、免疫系の細胞(例えば、T細胞)、血小板などでありうる。
【0087】
前述した細胞培養方法および治療方法において、単一結合物質種に代わって、2つ以上の結合物質成分(前記の通り)を含む結合物質系を用いてもよいことが当業者には明らかであろう。
【0088】
発明の詳細な説明
本発明は、結合物質同士の相互作用を阻止するマスクの除去をもたらす特定の刺激により、時間的および/または空間的に特異的な方法で結合物質の凝集体を形成させる材料および方法を提供する。これらの材料および方法は、凝集の精巧な制御が望まれる様々な診断および治療分野に適用することができる。
【0089】
特異的結合対
本明細書に記載した結合部分、すなわち、結合メンバーとその相補的結合パートナーは、好ましくは、特異的結合対を構成する。
【0090】
「特異的結合対」という用語は、特異的結合メンバー(sbm)とその結合パートナー(bp)からなる分子の対を示すのに用いられるが、これらは、互いに対して特定の特異性を有し、通常の条件下で、他の分子との結合に優先して互いに結合する。特異的結合対の例として、抗体とそのコグネイトエピトープ/抗原、リガンド(ホルモンなど)と受容体、アビジン/ストレプトアビジンとビオチン、レクチンと炭水化物、相補的ヌクレオチド配列などが挙げられる。
【0091】
酵素は、その基質と、あるいは、競合的またはアロステリックいずれかのモジュレーター(例えば、阻害剤および賦活剤)と特異的に結合する。モジュレーターは、酵素分子の活性部位またはその他の部位に結合することにより、その生理学的効果を発揮することができる。従って、本発明において酵素を結合メンバーとして用いることができるが、結合パートナーが該酵素の基質である場合には、酵素が結合パートナーを構造的に改変または変更しないように、酵素を不活性化させる。これは、突然変異誘発(例えば、活性部位で触媒として重要な残基の変異誘発)、補因子の除去などにより達成することができる。あるいは、酵素は、補基質のような別の必要な分子がアッセイ培地中に存在しないため、基質に作用できなくてもよい。
【0092】
また、分子インプリントを結合メンバーとして用いてもよい。これらは、標的被検体の周辺でプラスチックポリマーを形成させ、形成されたポリマーから被検体を抽出した後、ポリマーを粉砕して微粉とすることにより作製することができ、この方法は、Nonbiological Alternatives to Antibodies in Immunoassays; Principles and Practice of Immunoassay (第2版) 第7章、pp 139-153 Ed CP Price & DJ Newman (1997) に記載されている。
【0093】
アプタマー(aptamer)は、他の分子と結合する能力に基づいてライブラリーから選択されたDNAまたはRNA分子である。他の核酸、タンパク質、小さな有機化合物、さらには生物体とさえ結合することができるアプタマーが選択されていることから、これらも本発明で用いることができる。
【0094】
当業者はこれら以外に多数の例を考えられるはずであり、それらをここで列挙する必要はない。
【0095】
用語「特異的結合対」は、特異的結合メンバーおよび結合パートナーのいずれかまたは両方が、より大きな分子の結合部分だけを含む場合にも適用される。従って、抗体の場合、特異的結合メンバーは、抗体のドメイン(抗体結合ドメイン)だけを含むものでもよい。かかるドメインは、抗原のエピトープまたは短い配列(抗原に固有または特有ではあるが、担体タンパク質にコンジュゲートされた場合を除いて抗体応答を刺激することができない)のいずれかと結合することができる。
【0096】
全抗体のフラグメントは、抗原と結合する機能を果すことができることが明らかにされている。従って、本明細書で「抗体」という用語を用いるとき、抗体の結合フラグメントを含む分子を包含する。結合フラグメントの例を以下に挙げる:(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなるFabフラグメント;(ii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(iv)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward, E. S.ら、Nature 341, 544-546 (1989));(v)単離されたCDR領域;(vi)2つの連結されたFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)2フラグメント;(vi)VHドメインとVLドメインがペプチドリンカー(2つのドメインを結合させて抗原結合メンバーを形成させる)により連結されている、一本鎖Fv分子(scFv)(Birdら、Science, 242, 423-426, 1988; Hustonら、PNAS USA, 85, 5879-5883, 1988)。
【0097】
二重特異性抗体も本発明で用いることができる。このような抗体として、二重特異性一本鎖Fv二量体(PCT/US92/09965)および「ダイアボディー」(diabody)、すなわち、遺伝子融合により構築された多価または多重特異性フラグメント(WO94/13804; P. Holligerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 6444-6448, 1993)が挙げられる。
【0098】
ダイアボディーはポリペプチドの多量体であり、このとき、各ポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖の結合領域を含む第1ドメインと、免疫グロブリン重鎖の結合領域を含む第2ドメインとを含んでなり、これら2つのドメインは(例えば、ペプチドリンカーにより)連結されているが、互いに会合して抗原結合メンバーを形成することはできない。すなわち、抗原結合メンバーは、多量体内のあるポリペプチドの第1ドメインと、多量体内の別のポリペプチドの第2ドメインとの会合により形成される。
【0099】
本発明の結合物質として用いることができる二重特異性抗体の一例は、第1抗原結合部位が特定の抗原に対して誘導されたものであり、しかも第2抗原結合部位が第1抗原結合部位に特異的な抗イディオタイプ部位である、2つの抗体フラグメントを有するものである。このような二重特異性抗体は、抗原結合部位のいずれもマスキングされていないとき凝集し、また、該抗原(これに対して第1フラグメントが特異的である)と結合するだろう。あるいは、第2結合部位は、抗原結合部位の外側(例えば、第1抗体フラグメントの定常領域)に存在する第1抗体フラグメント上のエピトープに特異的であってもよい。第1抗原結合部位は該分子のエフェクター部分として作用してもよく、あるいは、別のエフェクター部分が存在してもよい。
【0100】
説明のために、二重特異性抗体として考えられるT細胞活性化試薬を例として記載する。これは、マウス抗CD3 IgG抗体がマウスIgGに対して誘導された抗体にカップリングされたものからなる。従って、本発明に関して、二重特異性抗体が結合物質となり、その結合物質の2つの結合部分は、抗マウスIgG抗体の結合部位と、抗CD3抗体のエピトープ(これは該抗体に対して特異的)である。抗CD3抗体結合部位はエフェクター部分とみなすことができる。2つの結合部分は、2つの抗体が互いに連結される前に、抗体成分の一方または両方を光切断性部分(例えば、NPE)でコーティングすることにより、可逆的にマスキングすることができる。この試薬は適切な照射により凝集させることができる。抗CD3抗体を光切断性試薬でコーティングすると、照射が行なわれるまで、抗CD3エフェクター部分もT細胞に発現されたCD3と相互作用することができなくなる。従って、照射により、二重特異性抗体の局部凝集が起こり、抗CD3エフェクター部分のアンマスキングも起こる。その効果は、T細胞付近に発現されたCD3分子を架橋し、これによりその領域でT細胞活性化を刺激することができる抗CD3抗体の複合体を提供することである。これは、例えば、腫瘍近傍でT細胞活性を刺激するのに有用である。
【0101】
抗CD3抗体の代わりに抗CD41抗体を含む同様の構築物を用いて、血餅形成を促進することもできる。CD41は血小板の表面に発現される。従って、血流中でのこの構築物の活性化により、凝集した抗CD41結合部位を介して血小板の局部凝集が起こる。これは、創傷部位で、あるいは、腫瘍への血液供給を制限する上で有用である。
【0102】
マスキングおよび活性化機構
結合物質は、活性化刺激を与える前に互いと相互作用するのを阻止されなければならない。従って、結合メンバー/パートナーを可逆的にマスキングすることにより、その相補的結合部分との相互作用を阻止する。
【0103】
マスクは分離可能なマスキング要素によって提供されうる。選択的に切断可能な結合基または結合を介してマスキング要素を結合物質に結合させることができる。マスキング要素は結合メンバーまたは結合パートナーに配置してもよいし、これらに隣接させてもよい。これにより、立体障害、静電反発もしくはその他の適切な作用機構によってコグネイト結合部分との結合が阻止される。
【0104】
結合物質からマスキング要素を選択的に切断することにより、結合部分がアンマスキングされる。様々な方法を用いることができ、このような方法として、限定するものではないが、照射(光分解)、酸化、還元、pH変化もしくは酵素的切断などが挙げられる。切断方法は、結合物質を用いようとする用途に応じて適切に選択することができる。
【0105】
酵素的切断を用いると、結合物質活性化の連鎖反応を起こすことができる。例えば、結合物質は、プロテアーゼの触媒的に不活性のプロ酵素(酵素前駆体)形態が、活性プロテアーゼに対して誘導された抗体(しかし、プロ酵素には結合することができない)にカップリングされたものからなる。この結合物質の凝集は、酵素前駆体が(例えば、触媒量の活性酵素の存在により)そのプロペプチドの切断によって活性化されない限り、決して起こらない。活性化された酵素はその後、他の結合物質のプロ酵素を活性化するとともに、結合物質の抗体部分に結合することができる。このように、活性化および凝集の連鎖反応が開始される。好適なプロ酵素としてキモトリプシノーゲンが挙げられる。
【0106】
好ましい実施形態では、選択的に切断可能な基を、例えば、UV、赤外線、X線もしくは可視光線などの照射により切断することができる。レーザー照射は、その照射を極めて厳密に制御できることから、特に治療方法に適している。従って、レーザーを用いて、周囲の健康な組織に影響を及ぼすことなく、罹患組織(例えば、腫瘍)の部位だけに照射することができる。
【0107】
このように、結合メンバー/パートナーをマスキングすることによって、その相補的結合部分との相互作用を光切断性部分により阻止することができる。このような光切断性部分は当分野ではよく知られている。ヒドロキシまたはアミノ残基と結合する適切な試薬を用いて、タンパク質結合物質を好適に誘導体化することができる。従って、ホスゲン、ジホスゲンもしくはDCCI(ジシクロヘキシルカルボジイミド)を用いて、多種のアルコールから光切断性エステル、アミド、カーボネートなどを生成することができる。この場合、ニトロフェニル誘導体を用いてもよい。ニトロフェニルメチルアルコール、1-ニトロフェニルエタン-1-オールのような置換されたアリールアルカノール、ならびに置換された類似体を用いる。Thompsonら(Biochem. Biophys. Res. Com. 201, 1213-1219(1994)およびBiochem. Soc. Trans. 225S, 23 (1995))は、1-(2-ニトロフェニル)-エチル(NPE)部分の付加によるタンパク質機能の可逆的阻害を記載している。更なる光切断性部分も、例えば、Biological Applications of Photochemical Switches, H. Morrison (編), Bioorganic Photochemistry Series, 第2巻、J. Wiley & Sons(特に第1章、第4節、第34〜50頁を参照のこと)から当業者には周知である。その他の好適な光切断性部分として、以下のものが挙げられる:1-(2-ニトロフェニル)ジアゾエタン(L. Bedouetら、Recovery of the oxidative activity of caged bovine haemoglobin after UV photolysis, BBRC,320 (2004) 939-944)、2-ニトロフェニルグリシン(M. Endoら、Design and synthesis of photochemically controllable caspase-3, Angew. Chem. Int. 編 2004, 43, 5643-5645)、6-ニトロベラトリル(M. Endoら、Design and synthesis of photochemically controllable restriction endonumclease BamHI by manipulation of the salt-bridge network in the dimmer interface, J. Org. Chem, 2004, 69, 4292-4289)、o-ニトロベンジルおよび4-ヒドロキシフェナシル。
【0108】
あるいはまた、マスクは結合物質の立体配座の変化により除去することもできる。これは、結合メンバーが結合することのできる結合物質の新しい立体配座を形成したり、前もって(例えば、立体的に)マスキングまたは遮蔽された結合物質の一部を露出させたりする。かくして、マスクが結合物質の立体配座の変化により逆転され、それにより、上記結合メンバーまたは結合パートナーが露出される。立体配座の変化は、別の活性化方法と一緒に、またはその結果として起こりうる。例えば、前述したプロ酵素の例では、抗体が、プロペプチドの切断でのみ生じた特定の立体配座を認識すると考えられる。
【0109】
相補的核酸配列を結合部分として用いてもよい。結合部分として2つの相補的配列を含む分子は、他のそのような分子と相互作用しないように自己ハイブリダイズするため、両方の分子がこの自己ハイブリダイゼーションによりマスキングされると考えられる。この分子は線状(この場合、自己ハイブリダイゼーションはヘアピン構造を形成する)でも、閉じたループの形状をしていてもよい。この系の温度がヘアピン型二重らせんの融解温度を超えると、ヘアピンは融解し、溶解状態の遊離の線状核酸分子をもたらす。温度が下がるにつれ、別の分子からの配列が互いに対合して、複合体を形成する。相補的配列は、どのような所望の配列を有することもできるが、単一ヌクレオチドの相補系(例えば、ポリ(A)とポリ(T)、またはポリ(G)とポリ(C))は特に望ましい。適切な長さのリンカー配列により相補的配列を分離することもできる。特にリンカー配列で、エフェクター部分を分子に結合させてもよい。このような結合物質は、DNA、RNAもしくは、改変型バックボーンを有する好適な核酸類似体(例えば、タンパク質核酸(PNA))からなるものでよい。典型的には、各相補的配列は少なくとも20ヌクレオチドの長さであるが、意図する用途に応じて任意の長さが好適となりうる。
【0110】
エフェクターメンバー
前述したように、エフェクターの種類および正体は、結合物質の意図する用途に応じて変わってくる。
【0111】
記載した方法および結合物質の用途には、シグナル発生および増幅が含まれる。これは、サンプル中の被検体の存在または濃度を測定するためのアッセイにおいて特に有用である。このようなアッセイでは、一般的に、他の分子に優先して目的の被検体と特異的に結合することができる結合部位を有する物質を用いる。そのような物質の例として、目的の被検体と特異的に結合することができる抗体、受容体およびその他の分子が挙げられる。通常、これらの物質を固相支持体上に(例えば、一定の間隔をおいた位置に)固定化して、アッセイでそれらを操作しやすくするのが好都合である。
【0112】
一般に、サンプル中の被検体が関連物質に結合できるような適切な条件下で、サンプルを結合物質と接触させる。
【0113】
次に、結合物質の結合部位の占有率を、被検体を直接または間接的に標識するか、もしくは展開剤を用いるかのいずれかにより測定し、サンプル中の被検体の存在または量の指標とする。典型的には、展開剤を(例えば、放射性標識、蛍光標識、もしくはホースラディッシュペルオキシダーゼのような酵素標識で)直接または間接的に標識することにより、当分野では周知の方法を用いてそれらを検出することができる。
【0114】
直接標識された展開剤は、この物質と会合または結合された標識を有する。間接的に標識された展開剤は、標識された種(例えば、展開剤に結合することができる標識抗体)と結合することができるか、あるいは、検出可能な結果を生み出す別の種に作用することができる。
【0115】
こうして、放射性標識はシンチレーション計数管またはその他の放射線計数装置を用いて、蛍光標識はレーザーおよび共焦点顕微鏡を用いて、また酵素標識は基質への酵素標識の作用(典型的には、色の変化を生じる)により、それぞれ検出することができる。別の実施形態では、展開剤または被検体は、その検出が可能になるようにタグ付けされるが、例えば、被検体を検出するためにPCR反応で増幅しうるヌクレオチド配列に連結される。その他の標識は当業者には周知であり、以下に述べる。展開剤は、競合的方法で用いることができ、その際、展開剤は、結合物質の占有された結合部位について被検体と競合する。あるいは、非競合的方法でも展開剤を用いることができ、この場合、標識された展開剤は、結合物質が結合した被検体と、または占有された結合部位に結合する。両方法とも、被検体が占める結合部位の数を示すことから、例えば、既知濃度の被検体を含むサンプルを用いて得られた標準との比較により、サンプル中の被検体の濃度を得ることができる。
【0116】
また、診断分野でも、このようなアッセイの小型化の傾向が進んでおり、例えば、結合物質(抗体または核酸配列など)は、固相支持体または診断チップ上の小さな個別の位置(マイクロスポット)に、および/またはアレイとして、固定化して用いられる。これらの手法は、(特に、蛍光標識した試薬の使用により)高い感度を提供し、試験しようとする個体からごく少量の生物サンプルしか必要とせず、しかも、多様な個別のアッセイを同時に実施するのを可能にするため、極めて価値がある。この後者の利点は、単一サンプルを用いて、複数の被検体を使用するアッセイの実施を可能にすることから、有用であると考えられる。この小型化技術を可能にする技法の例が、以下の文献に記載されている:WO84/01031、WO88/1058、WO89/01157、WO93/8472、WO95/18376/ WO95/18377、WO95/24649およびEP 0 373 203。
【0117】
本発明の方法、組成物および結合物質は、このようなアッセイでシグナルを得るために、またはこのようなアッセイで得られたシグナルを増加または増幅するために、様々な方法で用いることができる。これらの適用は当業者には容易に理解されよう。
【0118】
典型的には、シグナルを発生または増幅する目的で(例えば、アッセイおよび診断用途で)、エフェクターは、標識分子(例えば、放射性、蛍光、化学発光もしくは酵素標識)のようなシグナル発生手段を含み、その結果、それは当業者に周知の方法で検出され得る。あるいは、結合物質は別の標識種(例えば、結合物質に結合することができる標識抗体)を介して間接的に標識してもよく、その場合、エフェクターは、その別の標識種が相互作用する結合物質の一部としてみることができる。
【0119】
同じ系における結合物質の異なる集団が、様々な標識分子を含有してもよい。好ましい実施形態では、これらの様々な標識分子は、その結合物質が凝集するとき相互作用して、非凝集結合分子上の個々の標識が生じるシグナルとは別のシグナルを発生する。
【0120】
Nature Publishing Group(2001)により刊行されたThe Immunoassay Handbook(第2版)D Wild編に記載されるシグナル発生方法が特に適している。特定の用途として、第11章(E. F. Ullman)に記載された均一系が挙げられる。シンチレーション近接アッセイ(SPA)(例えば、弱いαまたはβ線エミッタ−および発蛍光団を用いる)および酵素チャネリング(例えば、グルコースオキシダーゼおよびペルオキシダーゼを用いる)は、記載した方法で用いるための特に魅力的な系を提供する。これらの方法では、結合物質を検出系の相補的成分で標識することにより、これらが凝集するときには、2つの成分が互いに十分に接近して、検出可能なシグナルを発生するが、活性化前の溶解状態では、このような会合が起こらず、従って、シグナルも発生しないようにする。
【0121】
好ましい酵素標識は、基質に作用して検出可能な変化を生じることができるものである。好ましい実施形態では、この変化は分光測光法により検出することができ、例えば、色の変化である。アルカリホスファターゼとホースラディッシュペルオキシダーゼは、このような酵素のよく知られた例であるが、当業者であれば他にも同様に好適な例が考えられるであろう。
【0122】
また、本発明の結合物質は、例えば患者における腫瘍の存在を検出するために、in vivoで実施する診断方法でシグナルを発生または増幅する際にも使用することができる。例えば、腫瘍が存在すればその腫瘍に結合させるために、腫瘍特異的抗体を患者に投与する。抗体と結合した酵素は、本発明の標識結合物質を活性化することができ、これによって腫瘍部位で検出可能なシグナルの局在化を達成しうる。
【0123】
治療用途には別のタイプのエフェクターが有用である。このエフェクターは、所望の部位に結合物質を局在化する際にある役割を果たし、かつ/または、特定の生物学的エフェクター機能を活性化するための役割を担っている。結合物質は、2つ以上の同種または異種いずれのエフェクターメンバーを含んでもよい。
【0124】
具体的用途に応じて、あらゆる生物学的活性分子がエフェクターメンバーとして有用となりうる。これらには、以下のものが含まれる:シグナル伝達分子および細胞応答を誘発することができる他の分子、例えば、細胞表面受容体のリガンド(例:ホルモン、成長因子、サイトカインなど);結合機能性を有する分子、例えば、抗体、レクチン、前記のようなリガンドの受容体、共受容体など;ならびに、他の生物学的エフェクター機能を有する分子、例えば、酵素など。
【0125】
本発明は、このようなエフェクターを含む結合物質が、所与の刺激に応答して凝集し、急速に刺激地点でエフェクターの密度を高めることを可能にする。
【0126】
細胞表面受容体と結合することができる分子をエフェクターとして用いることにより、これらの細胞から特定の応答を引き出すこともできる。例えば、免疫細胞の表面上の受容体を架橋させることにより、これらの細胞を活性化させることが可能である。従って、免疫系の細胞に結合し、任意にこれを活性化することができるエフェクターが特に好ましい。以下に挙げる例では、抗CD3抗体を用いて、T細胞を活性化し、これらを刺激して増殖させ、IL-2のような前炎症性サイトカインを産生させることを記載している。これらの抗体が溶解状態の個別の形態であるときには、遊離した個々の抗体がもたらす細胞表面受容体の架橋の範囲が限られるため、T細胞への作用は一般にほとんどないか、または全くない。しかし、本発明の結合物質の一部として用いる場合には、これらの物質を用いて、身体の特定の部位で免疫応答を刺激することができる。
【0127】
別のエフェクターメンバーとして、プロドラッグを活性化することができる酵素がある。ホスファターゼ、特にアルカリホスファターゼを用いて、リン酸化プロドラッグをさらに細胞傷害性の脱リン酸化形態に変換することができる。例えば、リン酸エトポシド、リン酸マイトマイシンンおよびリン酸ドキソルビシンを脱リン酸化して、それぞれエトポシド、マイトマイシンンおよびドキソルビシンを得ることができる。薬物分子を不活性化するためにグルタミン酸残基が用いられているプロドラッグを活性化するには、カルボキシペプチダーゼ、特にG2を用いる。βグルコシダーゼを用いて、アミグダリンからシアニドを生成することができる。ペニシリナーゼおよびセファロスポリナーゼのようなβラクタマーゼを用いて、プロドラッグ(セファロスポリンに連結された薬物を含む)のβラクタム環を加水分解することによりビンブラスチンまたはDAVLBHYDを生成することができる。ペニシリンアミダーゼ(例えば、フェノキシメチルペニシリンアミダーゼ)のようなアミダーゼを用いて、そのアセトアミド(例えば、フォノキシアセトアミド)誘導体からメルファランまたはドキソルビシンを生成することができる。シトシンデアミナーゼは、S-フルオロシチシンを5-フルオロウラシルに変換することができる。ニトロレダクターゼ(例えば、大腸菌由来)を用いて、CB 1954を活性アルキル化剤に変換することができる。
【0128】
結合物質およびプロドラッグは被検者に別々にまたは一緒に投与することができ、その際、薬物の活性化を所望の部位でのみ起こすことができる。
【0129】
あるいは、エフェクターメンバーとして薬物分子自体を用いるか、または薬物に対し特定の親和性を有するエフェクターメンバー(例えば、薬物に対する抗体)を用いることにより、特定部位での薬物の濃度を高めることも可能である。
【0130】
血小板の表面にある抗原に結合することができるエフェクターは、血餅形成が望ましい部位で血小板凝集および血栓形成を促進するために使用することができる。
【0131】
感染性病原体に結合することができるエフェクターは、これら病原体の凝集を引き起こし、これにより、感染性病原体の毒性、感染性もしくは病原性を低減させるか、または免疫系による感染性病原体のクリアランス速度を高めるために使用することができる。
【0132】
標的細胞に結合することができるエフェクターは、1以上の結合物質をその細胞型に局在化させるために使用することができる。このようなエフェクターを用いて、既述した治療エフェクターを含む結合物質を標的細胞型に局在化させることができる。例として、腫瘍特異的抗原またはウイルスタンパク質のような寄生体抗原に対して誘導された結合物質(例えば、抗体)が挙げられる。
【0133】
本発明の結合物質を用いて、組織の遺伝子工学的操作のための足場を形成することもできる。これは、1種以上の細胞および/または細胞外マトリックス分子に結合することができるエフェクターを用いて、達成することができる。
【0134】
結合物質をアンマスキングし、活性化を誘発するのに必要な刺激の種類によって、凝集が起こる場所および時間が左右される。例えば、光活性化可能な結合物質は、レーザー照射の局部適用により凝集するよう誘発することができる。あるいは、メタロプロテアーゼにより活性化可能な結合物質は、該酵素を分泌する転移性腫瘍付近で活性化することが可能である。この方法は、被検者に結合物質を投与した後、いかなる外部刺激も加える必要がないが、免疫系の活性化は疾患部位でしか起こらないと考えられる。
【0135】
また、エフェクターメンバーはまた、凝集を引き起こす結合部分の1つを含みうることが理解されよう。従って、エフェクターがフルオレセインのような標識部分であるとき、フルオレセインは一方の結合部分として作用することができ、他方は抗フルオレセイン抗体である。エフェクターが、アルカリホスファターゼのようなシグナル発生酵素である場合には、結合部分の一方は抗アルカリホスファターゼ抗体であり、他方は抗体が結合するアルカリホスファターゼのエピトープである。一般に、エフェクターは、他の結合部分と結合していても、まだそのエフェクター機能(例えば、蛍光または触媒活性)を果たすことができることが望ましい。
【実施例】
【0136】
アルカリホスファターゼシグナル増幅試薬
アルカリホスファターゼに対する抗体は、それが免疫学的に反応する1以上のアルカリホスファターゼ分子にカップリングさせることができる。抗原結合部位、アルカリホスファターゼのいずれか、もしくは両方を、例えば光切断性部分でコーティングすることにより、マスキングすることができる。
【0137】
このような試薬は、Thompsonら(前記参照)により記載されるように、抗体を、例えばNPEでコーティング(マスキング)し、次に当業者には周知の通常のカップリング方法を用いて、これをアルカリホスファターゼにコンジュゲートさせることにより作製することができる。この試薬は、アルカリホスファターゼ(AP)にカップリングされた第2抗体を用いるELISAのようなイムノアッセイでの使用が考えられる。第2抗体の結合後にAP基質を添加することによりアッセイを展開させる代わりに、前記結合物質を、それが活性化されない条件下で添加する。例えば、NPEをコーティング試薬として用いる場合には、単純に試薬を強力なUV照射から遠ざけるだけで、これを不活性に維持することができる。一般に試薬を暗所で用いる必要はない。
【0138】
結合物質は、照射により活性化されるまで、固定化APとも、互いとも結合することができない。照射後、これは固定化AP上に凝集する。これによって、結合された各第2抗体に固定化されたAPの量が大幅に増加し、発色基質の添加によりアッセイを展開すると、得られるシグナルが大幅に増加する。これは従来のアッセイに比していくつかの利点をもたらし、例えば、展開時間の短縮ならびにシグナル対ノイズ比の増加などが達成される。この種の試薬の使用は、スモールスケールのアッセイ系(例えば、ミクロまたはナノスケールのアレイ系)を用いる場合に、特に有利である。
【0139】
実施例1
NPEでマスキングされたアルカリホスファターゼ−抗アルカリホスファターゼコンジュゲートの作製
アルカリホスファターゼがNPEでコーティングされた抗アルカリホスファターゼ抗体に結合されているコンジュゲートを作製した。
【0140】
アルカリホスファターゼ(Biogenesis)を、0.1M NaClを含む0.1Mリン酸塩pH7.5に対して透析した。その最終濃度は0.92mg/mlであった。
【0141】
抗アルカリホスファターゼをZymedから入手した。4mlのバッファー中の2mgの該抗体を0.1M重炭酸塩に対して透析した。その最終容量は4.5mlであった。1.5mlを対照として保持した。
【0142】
NPE(1-(2-ニトロフェニル)エタノール)(11mg)を、5.2μlのピリジン触媒の存在下に250μlの乾燥ジオキサン中で7.8μlのジホスゲンと反応させた。白色の沈殿物が直ちに形成され、その後、この混合物を15分間放置してから、未反応物質を窒素流下で蒸発させた。塩化1-(2-ニトロフェノール)エトキシカルボニルを250μlのジオキサン中に再懸濁させて使用に供した。
【0143】
10μlの塩化カルボニル(NPE-COCl)生成物を抗体の2×1.5mlアリコートに添加し、4時間放置した。次に、この溶液を50mMリン酸塩pH7.5に対して一晩透析してから、微量遠心機において13Kで10分間遠心分離した。NPE-抗アルカリホスファターゼの最終濃度は0.26mg/mlであった。OD 0.398(抗体分子1個当たり平均7.2残基のNPEを示す)。
【0144】
二官能価架橋剤である3-(2-ピリジチオ)プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(SPDP, Pierce)を用いて、マスキング/コーティングした抗体をアルカリホスファターゼにコンジュゲートさせた。
【0145】
0.05Mリン酸バッファーpH7.5中の各々1mlのアルカリホスファターゼ(0.5mg/ml)およびNPEコーティング抗アルカリホスファターゼ抗体(0.26mg/ml)を個別に、60倍モル過剰量のSPDP(エタノール中1.26mg/mlのSPDPをそれぞれ60μlおよび30μl)を2時間かけて添加することにより誘導体化した。次に、過剰のSPDPをP10脱塩カラムで各成分から除去した。SPDP-アルカリホスファターゼを、100μlの0.5Mジチオトレイトール(DTT)を添加することにより30分間還元し、過剰のDTTを別のP10カラムで除去した。還元したSPDP-APを直ちに非還元SPDP誘導体化NPE-抗AP抗体に添加し、この混合物を20℃で一晩放置することにより架橋を生じさせた。最終タンパク質濃度は0.2mg/mlであった。
【0146】
アルカリホスファターゼの増幅アッセイにおけるNPEコーティング抗AP-AP試薬の使用
96ウェルElisaプレートの各ウェルに100μlのアルカリホスファターゼサンプル(重炭酸塩バッファーpH9.6中に0.01μg/mlのアルカリホスファターゼを含む)を入れ、4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、このプレートを100μlの0.5%BSA(コーティングバッファー中)で1時間ブロックした。次に、プレートをPBS-Tweenで3回洗浄した。
【0147】
100μlのNPEコーティング抗AP-APコンジュゲート(0.01mg/ml)をウェルに添加し、これらに0、2、5および10分間UV照射した。さらに1時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、p-ニトロフェニルリン酸基質を添加した。発色をOD 405nmでモニタリングした。UV照射後、サンプルのアルカリホスファターゼの検出が6倍以上増加した。結果を以下の表に示す。
【0148】

【0149】
実施例2
NPEでコーティングされたビオチン−アルカリホスファターゼ−アビジンコンジュゲートの作製
ビオチン化アルカリホスファターゼがNPEでコーティングされたアビジンに連結されているコンジュゲートを作製した。
【0150】
NPEによるアビジンのコーティング
濃度が1mg/mlのアビジン(卵白由来、Sigma Chemical Co Ltd)を0.1M重炭酸塩pH8.3に対して5時間透析した。その間に容量が1.5mlまで増加した。0.5mlを対照として取っておいた。
【0151】
NPE-COClを実施例1に記載したように調製した。50LのNPE-COClを残った1mlのアビジンに添加し、5時間ゆっくりと回転させた。次に、0.9%NaClを含む10mMリン酸塩pH7.4に対してこれを透析し、続いて微量遠心機において13Kで10分間遠心分離することにより、透明な上清を得た。得られたNPEコーティングアビジンは、タンパク質濃度が0.17mg/mlであり、アビジン分子1個当たり28残基のNPEでコーティングされていた。
【0152】
アルカリホスファターゼのビオチン化
10mgのビオチンと10mgのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を同じ試験管に計り分け、500μlのジオキサンを添加する。この混合物に、500μlのジメチルホルムアミド(DMF)中8mgの1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を添加する。次にこの溶液を2.5時間放置して反応させ、活性化NHS-ビオチンエステルを形成させる。100μlのNHS-ビオチン溶液を2mlの1mg/ml AP(0.1M重炭酸塩中)に添加し、一晩放置することにより反応させた。遠心分離(13Kで10分)および透析により未結合ビオチンを除去した後、ビオチンによるAPのコーティングを電気泳動により確認した。
【0153】
次に、10μgのNPEコーティングアビジンと50μgのAP-ビオチンを混合することにより、NPEでコーティングされたビオチン-AP-アビジン複合体を作製した。
【0154】
ELISA
マイクロタイタープレートのウェルを100μlの0.0004μg/mlアビジン(コーティングバッファーpH9.6中)で4℃にて一晩コーティングした。一晩インキュベートした後、プレートを1時間ブロックし(コーティングバッファー中0.5%BSA)、PBS-Tweenで3回洗浄した。
【0155】
等量の10μg/mlアビジン-NPEと50μg/mlビオチン-APを混合することにより、最終濃度5μg/mlのアビジン-NPE/25μg/mlビオチン-APの複合体を得た。この複合体10μlをアビジンコーティングELISAプレートの各ウェルに添加した。プレートの半分を直ちに3分間UV照射してから、プレートを4℃で2時間インキュベートした。洗浄後、p-ニトロフェニルリン酸基質を各ウェルに添加した後、発色を405 nmでモニタリングした。アビジン検出の約5倍増加が観測され、20分のインキュベーション後には、非照射ウェルのODが0.32であったのに対し、照射ウェルのODは1.4であった。ODのバックグラウンド値0.13を両方の値から差し引くと、比例増加はさらに大きくなる。
【0156】
サンプルアビジン濃度 非照射 照射
0.4 pg/ml 0.19 1.27
【0157】
自己凝集性T細胞活性化試薬
マウス抗CD3 IgGおよび抗マウスIgG分子を個別にNPEでコーティングした後、互いにコンジュゲートさせた。得られたコンジュゲートは、互いとまたはT細胞と結合することができない。しかし、照射による活性化の後には、抗IgGおよび抗CD3結合部分の両方が露出される。得られた活性コンジュゲートは、IgG−抗IgG相互作用により、溶解状態で凝集し、T細胞を活性化することができる抗CD3部位の極めて高い局部密度をもたらす。
【0158】
この試薬は、腫瘍の近傍でT細胞活性化を刺激することにより、腫瘍の治療に使用することができる。腫瘍に特異的に結合することができる別のエフェクター部分を介して、凝集体を腫瘍に局在化させることができる。多数の変形が考えられる。例えば、2つの抗体を異なる光活性化性部分でマスキングして、異なる波長の光により、別個に凝集およびT細胞刺激機能を活性化させることが可能である。あるいはまた、抗体の1つを、異なる刺激を必要とする別の機構でマスキングすることも可能である。例えば、腫瘍が分泌することが知られる酵素(例えば、メタロ酵素)により切断可能なペプチドにより凝集を阻止することができる。次に、この酵素と接触させると凝集が起こり、T細胞刺激機能は標的化照射により別個に活性化することができる。
【0159】
実施例3
T細胞活性化
SPDPコンジュゲーションにより、マウス抗CD3抗体OKT3をアビジンに結合させ、得られたコンジュゲートを以下のようにNPEでコーティングする:
塩化1-(2-ニトロフェニル)エトキシカルボニル(NPE-COCl)を調製するために、250μlのジオキサン中に11mgのNPE(1-(2-ニトロフェニル)エタノール)を溶解し、続いて触媒として5.6μlのピリジン、次に7.8μlのジホスゲンを添加して塩化カルボニルの白い沈殿物を形成させる。次に、窒素により溶剤を蒸発させ、白色の固体を250μlの新鮮なジオキサンに再懸濁させる。この12μlを0.5mgのOKT3-アビジンコンジュゲートに添加し、ホイルで包み、回転撹拌機上で2時間放置する。生成物をPBSに対して一晩透析した後、10,000rpmで10分遠心分離することにより凝集物を分離する。次に、NPEコーティングコンジュゲートを、アビジン結合能力(アビジンがNPEでコーティングされていない状態で)に対し計算上10倍過剰量のビオチンに暴露する。過剰のビオチンを透析により除去する。
【0160】
このブロッキングステップの後、通常の方法(例えば、実施例2に記載の方法)により、NPEコーティングコンジュゲートをビオチン化する。
【0161】
CD3を発現するCD4陽性T細胞系H9をETCC(European Tissue Culture Center)から入手する。これらの細胞をRPMI培地および10%ウシ胎児血清中でコンフルエントになるまで培養し、約106細胞/mlの懸濁液を取得する。次に、細胞を1000 RPMで5分間遠心分離し、もとの約半分の量の培地(前もってOAW42細胞増殖により馴らした培地)中に再懸濁させる。約300,000個の細胞を含む150μlアリコートを滅菌マイクロタイタープレートの各ウェルに入れる。試験しようとする30μlのコンジュゲート(濃度0.1mg/ml)をこの段階でH9細胞に添加する。1系列にはUV光線を照射し、1系列は照射しないでおく。
【0162】
UV-A光線への暴露により照射しようとするウェルは、VL-206BL UV-Aランプ(2×6W管)を用いて、プレートのプラスチックカバー越しに照射する。次にプレートを37℃で3時間インキュベートする。次に、細胞をウェルからエッペンドルフ管に移し、3,000 RPMで2分間遠心分離する。細胞上清をデカントし、サンドイッチELISAキット(BD Bioscience, OptEIA Human IL-2 Set)を用いて、IL-2レベルを測定する。そのために、15.6pg/mlから1,000pg/mlのIL-2の範囲にわたってIL-2標準曲線を予め取得しておく。
【0163】
また、照射を行う、および行わない比較実験および対照を以下のように実施する:
(1)前記と同じだが、過剰の遊離ビオチン(架橋を阻害するため)を添加する;
(2)NPE-コンジュゲートを添加しない;
(3)ビオチン化NPE-コンジュゲートの代わりに天然OKT3-アビジンコンジュゲートを添加する。
【0164】
光線を照射したビオチン化NPE-コンジュゲートに暴露した細胞から得られた上清に、優れたIL-2産生が認められた。
【0165】
実施例4
T細胞活性化2
実施例3の代替法として、モノクローナルラット抗マウスIgG抗体およびマウス抗CD3モノクローナル抗体OKT3の両方を個別に、実施例3と同様に塩化1-(2-ニトロフェニル)エトキシカルボニルを用いて、NPEでコーティングする。残った遊離の非コーティング抗マウス抗体は、イムノアフィニティーカラムで特異的吸着により除去する。次に、コーティング抗体をカップリングさせて二重特異性抗体を作製し、未結合抗体から分離させる。この光活性化性二重特異性抗体を実施例3のNPE-OKT3-アビジン構築物の代わりに用いて、T細胞活性化の光活性化を実証する。
【0166】
実施例5
光活性化性構築物のin vivoでの使用
実施例4に記載した光活性化性構築物を、以下のようにin vivoT細胞活性化に用いることができる:
M5076転移性卵巣肉腫をBL6マウスにおいて増殖させる。この腫瘍を以下のように同系動物に皮下移植する。すなわち、腫瘍を切除し、ハンクス培地中で可能な限り微細に切断して濃厚な懸濁液を得、その400μlを400μlの前記構築物(ハンクス培地中50μg/ml)と混合する。その後、試験動物の側腹部に皮下注射する。別のグループには、構築物を添加していない腫瘍だけを投与した。
【0167】
各グループを2つのサブグループに分ける。1つのサブグループにはそれ以上操作を行なわないが、第2サブグループには、皮下注射した周辺の皮膚にUV-A光線を照射する(VL-206BL UV-Aランプ(2×6W管)、1cmの距離で約16mW/cm2の総UV-A照射)。何週間か経過すると、構築物を投与され照射を受けたサブグループでは腫瘍増殖が阻害されていることが認められるであろう。
【0168】
実施例6
酵素前駆体コンジュゲートの使用
キモトリプシンをキモトリプシノーゲンから切断したときにキモトリプシンに出現する切断部位に対してモノクローナル抗体を作製する。このモノクローナル抗体はキモトリプシノーゲン自体とは反応しないはずである。
【0169】
マウスをキモトリプシンで免疫し、通常の方法によりハイブリドーマを作製する。キモトリプシンに対する抗体を産生するが、キモトリプシノーゲンに対する抗体は産生しないものについて、得られたハイブリドーマをスクリーニングする。これは、マイクロタイタープレートのウェルをキモトリプシンまたはキモトリプシノーゲンのいずれかでコーティングし、候補ハイブリドーマ上清培養液を添加し、結合を生じさせ、その後第2標識検出抗体を添加することにより実施する。第2検出抗体の著しく大きな結合を与える培養液をもたらす候補をさらにクローニングし、スクリーニングし、増殖させて、有用な量の抗体を産生させる。
【0170】
この抗体をキモトリプシノーゲンにコンジュゲートさせることにより、例えばイムノアッセイに用いることができる「二次コンジュゲート」を形成させる。
【0171】
「一次コンジュゲート」は、検出抗体(イムノアッセイで検出しようとする抗原に対して誘導されたもの)を前述の抗体(キモトリプシンとは反応性であるが、キモトリプシノーゲンとは反応性でない)とNPEコーティングキモトリプシンの両方にコンジュゲートすることにより作製される。これは、最初に検出抗体と抗キモトリプシン抗体の両方を含む二重特異性抗体を作製し、次に、NPE阻害キモトリプシンをコンジュゲートさせることにより達成される。
【0172】
イムノアッセイは、実質的に通常の方法で、例えば検出しようとする被検体を結合させたELISAプレートで、実施することができる。一次コンジュゲートの添加およびインキュベーション後、未結合の一次コンジュゲートをプレートから洗い流し、二次コンジュゲートを添加する。
【0173】
次に、プレートを照射して、プレートに結合したキモトリプシンを活性化させる。プレートをインキュベートし、その間に、プレートに結合した一次コンジュゲートのキモトリプシンが二次コンジュゲートのキモトリプシノーゲンに作用してキモトリプシンを生成する。このキモトリプシンは、一次コンジュゲートの抗キモトリプシン、ならびに二次コンジュゲート分子の抗キモトリプシンによって結合され、その後は、他の二次コンジュゲート分子においてキモトリプシノーゲンのキモトリプシンへの変換を触媒することができる。これによって、一次コンジュゲートが結合したプレート表面の地点で、二次コンジュゲート活性化と凝集の連鎖反応が起こる。
【0174】
好適な時点で、溶液を除去し、プレートを洗浄することにより、反応を停止させる。プレートに結合したままのキモトリプシンの活性を、好適な基質(例えば、N-ベンゾイル-L-チロシンエチルエステル)の添加により測定する。プレート上に供給した標準から、未知のサンプルを判定することができる。
【0175】
実施例7
抗アルカリホスファターゼ抗体(Zymed)を実施例1のようにNPEでマスキングする。
【0176】
1ng/mlのヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)溶液を50mM TrisバッファーpH7.4中に調製し、11の5倍連続希釈液をつくる。各希釈液の2通りの50μlアリコート(Trisバッファーだけの対照ブランクを含む)をマイクロタイタープレートのウェル(2通りのウェルは互いに十分間隔をあけてある)に個別に添加し、加湿チャンバにおいて室温で1時間インキュベートする。この溶液を振り払って除去し、ウェルをTris Tweenバッファーで4回洗浄する。
【0177】
1mg/mlのアルカリホスファターゼコンジュゲート抗HCG抗体(Biogenis)の1:250希釈液50μlを各ウェルに添加した後、10ng/mlのNPEコンジュゲート抗アルカリホスファターゼ抗体の溶液50μlを添加する。暗所において室温で30分インキュベートすることにより最初の結合を起こさせる。次に、2通りのウェルの各セットの1つをVL-206BL UV-Aランプ(2×6W管)で照射し、プレートを室温でさらに15分インキュベートする。その後、プレートから溶液を振り払って除去し、プレートをTris Tweenバッファーで4回洗浄する。p-ニトロフェニルリン酸基質をウェルに添加し、OD 405nmで光学密度の変化をモニタリングする。十分に希釈したHCGサンプルでは、照射ウェルセットでの光学密度変化の方が、未照射のものより迅速であり、より速い、より高感度の検出を可能にすることがわかる。
【0178】
実施例8
ヒト抗マウスIgGを、実施例3と同様に塩化1-(2-ニトロフェニル)エトキシカルボニル(NPE-COCl)を用いてNPEでマスキングし、その結果、この抗体は照射を受けるまでマウスIgGと結合しない。
【0179】
CD4陽性T細胞系H9を、RPMI培地および10%ウシ胎児血清中でコンフルエントになるまで培養する。次に、上記細胞を1,000 RPMで5分遠心分離し、もとの約半分の量の培地(前もってOAW42細胞増殖により馴らした培地)中に再懸濁させる。約300,000個の細胞を含む150μlアリコートを滅菌マイクロタイタープレートの各ウェルに入れて、2系例のウェルを用意する。両系列に、OKT3抗体とNPE処理ヒト抗マウス抗体(両方とも0.1mg/mlの濃度)の等混合物20μlまたは20μlの0.05mg/ml OKT3抗体のいずれかを添加する。
【0180】
1系列には、VL-206BL UV-Aランプ(2×6W管)で、プレートのプラスチックカバー越しにUV-A光線を照射し、他方の系列には照射しないでおく。
【0181】
次にプレートを37℃で3時間インキュベートする。続いて、細胞をウェルからエッペンドルフ管に移し、3,000 RPMで2分遠心分離する。細胞上清液をデカントし、IL-2レベルをサンドイッチELISAキット(BD Bioscience, OptEIA Human IL-2 Set)により測定する。そのために、IL-2標準曲線を15.6pg/mlから1,000pg/mlのIL-2の範囲にわたって予め取得しておく。
【0182】
NPE処理ヒト抗マウス抗体とOKT3の両方を添加し、かつ照射を受けたウェルが、他のウェルより多くのIL-2を産生することがわかる。
【0183】
以上説明した実施例と一緒に本発明を説明してきたが、この開示により、多数の同等の改変および変更が当業者には明らかであろう。従って、本発明の実施形態は例示的であって、制限的と考えるべきではない。本発明の精神および範囲を逸脱することなく、記載した実施形態への様々な変更を実施することが可能である。本明細書に引用したあらゆる参照文献は、参照することにより本明細書に明白に組み入れられるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの結合部分を含む結合物質であって、該2つの結合部分は、
(i)結合パートナーに結合することができる結合メンバー、および
(ii)該結合パートナー、
からなり、該結合部分の一方が可逆的にマスキングされており、それにより、2つの該結合物質は互いに結合しない、上記結合物質
【請求項2】
前記結合部分がアンマスキングされた後に、単一の結合物質の結合メンバーと結合パートナーが互いに相互作用することができない、請求項1に記載の結合物質。
【請求項3】
前記結合パートナーと結合メンバーが立体的に互いに相互作用することができない、請求項2に記載の結合物質。
【請求項4】
前記結合部分が分離可能なマスキング要素によって可逆的にマスキングされている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の結合物質。
【請求項5】
前記マスキング要素が選択的に切断可能な基または結合を介して結合物質にカップリングされている、請求項4に記載の結合物質。
【請求項6】
選択的に切断可能な基または結合が照射、酸化、還元、pH変化、もしくは酵素的切断により切断可能である、請求項5に記載の結合物質。
【請求項7】
前記照射がUV照射である、請求項6に記載の結合物質。
【請求項8】
選択的に切断可能な基または結合がプロテアーゼにより切断可能である、請求項5に記載の結合物質。
【請求項9】
選択的に切断可能な基または結合の切断が結合物質のプロテアーゼ活性を活性化する、請求項8に記載の結合物質。
【請求項10】
前記結合部分が結合物質の立体配座変化によりアンマスキングされる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の結合物質。
【請求項11】
前記結合部分が抗体とそのコグネイトエピトープである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の結合物質。
【請求項12】
前記結合部分がアビジンまたはストレプトアビジンとビオチンである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の結合物質。
【請求項13】
さらにエフェクターメンバーを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の結合物質。
【請求項14】
前記エフェクターメンバーがシグナル発生手段である、請求項13に記載の結合物質。
【請求項15】
前記シグナル発生手段が標識成分または酵素である、請求項14に記載の結合物質。
【請求項16】
前記エフェクターメンバーが結合機能性を有する、請求項13に記載の結合物質。
【請求項17】
前記エフェクターメンバーが標的細胞型に結合することができる、請求項16に記載の結合物質。
【請求項18】
前記エフェクターメンバーが腫瘍特異的抗原または寄生体抗原に結合することができる、請求項17に記載の結合物質。
【請求項19】
前記標的細胞が免疫系の細胞である、請求項17に記載の結合物質。
【請求項20】
前記エフェクターメンバーが免疫系の前記細胞を活性化することができる、請求項19に記載の結合物質。
【請求項21】
前記細胞がT細胞である、請求項20に記載の結合物質。
【請求項22】
前記エフェクターメンバーが抗CD3抗体である、請求項22に記載の結合物質。
【請求項23】
前記エフェクターメンバーが酵素である、請求項13に記載の結合物質。
【請求項24】
前記酵素がプロドラッグを活性形態に変換することができる、請求項23に記載の結合物質。
【請求項25】
前記エフェクターメンバーが可逆的にマスキングされている、請求項13〜24のいずれか1項に記載の結合物質。
【請求項26】
前記エフェクターメンバーが前記結合メンバーまたは結合パートナーと同じ手段でアンマスキングされる、請求項13〜25のいずれか1項に記載の結合物質。
【請求項27】
少なくとも2つの異なるエフェクターメンバーを含む、請求項13〜26のいずれか1項に記載の結合物質。
【請求項28】
医学的治療法に使用するための、請求項1〜27のいずれか1項に記載の結合物質。
【請求項29】
癌治療用の医薬の製造における、請求項1〜27のいずれか1項に記載の結合物質の使用。
【請求項30】
結合物質を製造する方法であって、以下のステップ:
(i)結合パートナーに結合することができる結合メンバーからなる第1成分を用意するステップ、
(ii)上記結合パートナーからなる第2成分を用意するステップ、
ここで、上記結合メンバーおよび結合パートナーの一方は可逆的にマスキングされており、それにより、上記結合メンバーまたは結合パートナーは他方に結合するのを阻止されていること、
(iii)第1成分と第2成分が互いに結合するように両者を接触させるステップ、
を含んでなる上記方法。
【請求項31】
第1および第2成分を互いに共有結合で連結させる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
第1および第2成分を互いに非共有結合で会合させる、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
第1および第2成分がそれぞれアビジン/ストレプトアビジンおよびビオチンからなる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
結合物質の少なくとも2つの集団を含む組成物であって、各集団は、それぞれの結合パートナーに対する少なくとも2つの結合メンバーを有し、上記結合パートナーの各々は結合物質の上記集団の別のものに存在し、その際、少なくとも1つの集団の結合メンバーが可逆的にマスキングされており、それにより、その1集団がそれぞれの結合パートナーを含む集団と結合しない、上記組成物。
【請求項35】
複数の結合物質の凝集を引き起こす方法であって、以下のステップ:
結合物質の少なくとも2つの集団を含む組成物を用意するステップ、ここで、各集団は、それぞれの結合パートナーに対する少なくとも2つの結合メンバーを有し、上記結合パートナーの各々は結合物質の上記集団の別のものに存在し、その際、少なくとも1つの集団の結合メンバーが可逆的にマスキングされており、それにより、その1集団が、それぞれの結合パートナーを含む集団と結合しないこと、
上記結合メンバーをアンマスキングし、それにより、その1集団がそれぞれの結合パートナーを含む集団と結合できるようにするステップ、
を含んでなる上記方法。
【請求項36】
結合物質の少なくとも2つの集団を含むキットであって、各集団は、それぞれの結合パートナーに対する少なくとも2つの結合メンバーを有し、上記結合パートナーの各々は結合物質の上記集団の別のものに存在し、その際、少なくとも1つの集団の結合メンバーが可逆的にマスキングされており、それにより、その1集団がそれぞれの結合パートナーを含む集団と結合しない、上記キット。
【請求項37】
サンプル中の被検体を測定する方法であって、以下のステップ:
(a)サンプルを複数の結合物質と接触させるステップ、ここで、該結合物質の各々は2つの結合部分を含み、該結合部分は、
(i)結合パートナーと結合することができる結合メンバー、および
(ii)該結合パートナー、
からなり、該結合部分の一方が可逆的にマスキングされており、それにより、該結合物質が互いに結合しないこと、
(b)該サンプルを、被検体が存在すれば、該被検体に結合することができる検出物質と接触させるステップ、その際、該検出物質は上記結合部分の一方を含むこと、
(c)可逆的にマスキングされた結合部分をアンマスキングすることにより、上記結合物質が凝集体を形成するようにするステップ、
を含んでなる上記方法。
【請求項38】
前記検出物質が結合物質の1つである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
凝集した結合物質の存在を検出するステップを含む、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記結合物質がシグナル発生手段を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記被検体を固相上に固定化する、請求項37〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記被検体が、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、核酸、有機もしくは無機ポリマー、または小さな有機もしくは無機分子である、請求項37〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記検出物質が被検体に特異的な抗体である、請求項37〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
ELISA、ウェスタンブロット、免疫組織化学もしくは免疫蛍光アッセイである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記検出物質が、被検体とハイブリダイズすることができる核酸分子である、請求項37〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
サザンブロット、ノーザンブロットもしくはin situハイブリダイゼーションである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
サンプル中の被検体を測定する方法であって、以下のステップ:
(a)サンプルを、
(i)競合物質、および
(ii)複数の結合部位、
と接触させるステップ、その際、各結合部位は、存在すれば被検体および競合物質と結合することができるが、同時に両者と結合することはできないこと、
(b)該サンプルを、2つの結合部分を含む複数の結合物質と接触させるステップ、ここで、該2つの結合部分は、
(i)結合パートナーと結合することができる結合メンバー、および
(ii)該結合パートナー、
からなり、該結合部分の一方が可逆的にマスキングされており、それにより、該結合物質は互いに結合しないこと、
(c)該サンプルを、存在すれば競合物質に結合することができる検出物質と接触させるステップ、その際、該検出物質は上記結合部分の一方を含むこと、
(d)可逆的にマスキングされた結合部分をアンマスキングすることにより、上記結合物質が凝集体を形成するようにするステップ、
を含んでなる上記方法。
【請求項48】
サンプル中の被検体を測定する方法であって、以下のステップ:
(a)サンプルを結合物質の少なくとも2つの集団と接触させるステップ、ここで、各集団は、それぞれの結合パートナーに対する少なくとも2つの結合メンバーを有し、上記結合パートナーの各々は結合物質の上記集団の別のものに存在し、その際、少なくとも1つの集団の結合メンバーが可逆的にマスキングされており、それにより、その1集団がそれぞれの結合パートナーを含む集団と結合しないこと、
(b)該サンプルを、存在すれば被検体に結合することができる検出物質と接触させるステップ、その際、該検出物質は上記結合メンバーまたは結合パートナーの一方を含むこと、
(c)可逆的にマスキングされた結合メンバーをアンマスキングすることにより、上記結合物質が凝集体を形成するようにするステップ、
を含んでなる上記方法。
【請求項49】
サンプル中の被検体を測定する方法であって、以下のステップ:
(a)サンプルを、
(i)競合物質、および
(ii)複数の結合部位、
と接触させるステップ、その際、各結合部位は、存在すれば被検体および競合物質と結合することができるが、同時に両方と結合することはできないこと、
(b)該サンプルを、結合物質の少なくとも2つの集団と接触させるステップ、ここで、各集団は、それぞれの結合パートナーに対する少なくとも2つの結合メンバーを有し、上記結合パートナーの各々は結合物質の上記集団の別のものに存在し、その際、少なくとも1つの集団の結合メンバーが可逆的にマスキングされており、それにより、その1集団がそれぞれの結合パートナーを含む集団と結合しないこと、
(c)該サンプルを、存在すれば競合物質に結合することができる検出物質と接触させるステップ、その際、該検出物質は上記結合メンバーまたは結合パートナーの一方を含むこと、
(d)可逆的にマスキングされた結合部分をアンマスキングすることにより、上記結合物質が凝集体を形成するようにするステップ、
を含んでなる上記方法。
【請求項50】
生理学的部位で治療薬の凝集を引き起こす方法であって、以下のステップ:
複数の結合物質を個体に投与するステップ、上記結合物質の各々は2つの結合部分を含み、これら結合部分は、
(i)結合パートナーと結合することができる結合メンバー、および
(ii)該結合パートナー、
からなり、上記結合部分の一方が可逆的にマスキングされており、それにより、上記結合物質は互いに結合せず、上記結合物質の各々が治療薬をさらに含むこと、
可逆的にマスキングされた結合部分をアンマスキングして、上記結合物質を互いに結合させることにより、上記結合物質の凝集を引き起こすステップ、
を含んでなる上記方法。
【請求項51】
前記生理学的部位が疾患部位である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記疾患部位が腫瘍または寄生体感染の部位である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記生理学的部位が創傷部位である、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記部位で発現する分子に結合することができ、かつ前記結合物質の1つに結合することができるか、または前記結合部分をアンマスキングすることができるターゲッティング物質を投与することを含む、請求項50〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記結合部分を照射または酵素作用によりアンマスキングする、請求項50〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記治療薬が、細胞表面に発現した分子、免疫系の細胞を活性化することができる分子、薬物もしくはプロドラッグ分子、または酵素に結合することができる、請求項50〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記治療薬が、抗CD41抗体、抗CD3抗体、もしくはプロドラッグを活性形態に変換することができる酵素である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記治療薬が可逆的にマスキングされており、結合部分と同じメカニズムでアンマスキングされる、請求項50〜57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
細胞の培養物中に治療薬の凝集を引き起こす方法であって、以下のステップ:
細胞の培養物を複数の結合物質と接触させるステップ、ここで、該結合物質の各々は2つの結合部分を含み、これら結合部分は、
(i)結合パートナーと結合することができる結合メンバー、および
(ii)該結合パートナー、
からなり、上記結合部分の一方が可逆的にマスキングされており、それにより、該結合物質は互いに結合せず、上記結合物質の各々が治療薬をさらに含むこと、
可逆的にマスキングされた結合部分をアンマスキングして、上記結合物質を互いに結合させることにより、上記結合物質の凝集を引き起こすステップ、
を含んでなる上記方法。
【請求項60】
前記細胞が、癌細胞、寄生体に感染した細胞、免疫系の細胞、もしくは血小板を含む、請求項59に記載の方法。

【公表番号】特表2007−524105(P2007−524105A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500291(P2007−500291)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000704
【国際公開番号】WO2005/083431
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(506286445)バイオエンハンスメンツ リミテッド (1)
【出願人】(307009872)
【Fターム(参考)】