結晶の構造解析方法および結晶の構造解析装置
【課題】X線回折測定を用いて結晶の構造を正確に解析する。
【解決手段】対象試料にX線を照射したときに対象試料にて回折した回折X線の強度を、広い開口角条件と狭い開口角条件にて検出して、両者の相対比を「対象試料の回折X線強度比」とする。また結晶の完全性が保証された参照試料にX線を照射したときに参照試料にて回折した回折X線の強度を、広い開口角条件と狭い開口角条件にて検出して、両者の相対比を「参照試料の回折X線強度比」とする。参照試料に対してX線解析をする際の反射指数は、対象試料に対してX線解析をする際における反射指数に対して独立選択したものとしている。そして、「対象試料の回折X線強度比」を、「参照試料の回折X線強度比」で除算した値を、「規格化された回折X線強度比」としこの値から結晶状態を解析する。
【解決手段】対象試料にX線を照射したときに対象試料にて回折した回折X線の強度を、広い開口角条件と狭い開口角条件にて検出して、両者の相対比を「対象試料の回折X線強度比」とする。また結晶の完全性が保証された参照試料にX線を照射したときに参照試料にて回折した回折X線の強度を、広い開口角条件と狭い開口角条件にて検出して、両者の相対比を「参照試料の回折X線強度比」とする。参照試料に対してX線解析をする際の反射指数は、対象試料に対してX線解析をする際における反射指数に対して独立選択したものとしている。そして、「対象試料の回折X線強度比」を、「参照試料の回折X線強度比」で除算した値を、「規格化された回折X線強度比」としこの値から結晶状態を解析する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルク結晶、または半導体薄膜結晶や多重量子井戸構造の構造解析をするのに適用して有用な、結晶の構造解析方法および結晶の構造解析装置に関する発明である。本発明は、特に格子不整合の大きいヘテロエピタキシャル成長薄膜結晶の不完全性、歪を含むエピタキシャル薄膜および歪超格子格子の構造劣化の有無およびその程度、特徴等を調べる上で有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、InGaAs/GaAs、Si/SiGeなどの材料系を用いた歪系エピタキシャル層、歪超格子構造の作製においては「臨界膜厚」(あるいは「臨界歪」)という量の重要性がよく知られており、臨界膜厚の評価、および臨界膜厚をこえた領域での格子緩和過程の評価は重要な評価対象であった。X線回折法は、PL測定法、TEM解析法などとともに、これら臨界膜厚の評価、格子緩和過程の評価に従来からよく用いられてきた。
【0003】
しかるにこれらの各種評価法で評価された臨界膜厚値は一般には一致せず、その不一致の原因の1つとし、従来のX線回折評価が他の評価手法に比べて、構造劣化に対する検出感度が劣る点が指摘されていた(I.J.Fritz, P.L.Gourley, and L.R.Dawson, Appl.Phys.Lett.51.1004-1006(1987)およびP.L.Gourley, I.J.Fritz, and L.R.Dawson, Appl.Phys.Lett.52,377-379(1988)。
【0004】
すなわちX線回折法により得られた臨界膜厚値は他のPL値等から得られた臨界膜厚値に比べて大きな値になり、正しい値が得られないことが指摘され、欠陥等の密度が小さい場合の初期的構造劣化の検出には不向きであることが報告されていた。また、「なぜX線回折法では検出感度がとれないのか?」という点に対しての更なる検討例も少なく、X線回折法の立場からの検出感度の向上の方法等はこれまで全く検討されてこなかった。
【0005】
上記におけるX線回折評価ではrocking curve 測定法を用いた評価が主であったのに対し、その後逆格子mapping測定などの方法が開発されたが、これらの新しく開発された手法においても、上記の「他の測定法に比べての構造劣化の検出感度」という問題点に関しては、目立った改善効果、詳細検討は見られなかった。
【0006】
このような中、最近本願発明者らによってこの検出感度問題を改善する新しいX線回折法を用いた評価解析法が提出された(K. Nakashima and K. Tateno, J. Appl. Crystallogr.37,14-23(2004)。この方法は2種類の測定条件で測定した回折プロファイルを基準ピークをそろえて重ねて表示し、回折強度差を比較することにより、検出感度よく構造劣化の有無およびその程度を判定する評価方法である。
【0007】
しかるにこの方法を適用できるためには、測定プロファイル中に解析対象ピーク以外にreferenceとなる基準ピークが観測できることが必要であった。しかるに、バルク結晶、または格子不整合度の大きいヘテロエピタキシャル成長薄膜結晶などでは、基準ピークとなるようなピークが解析対象ピークの近傍に観測できないような場合が頻繁に現れ、このような一般の場合には上記の手法は適用できなかった。
【0008】
【非特許文献1】I.J.Fritz, P.L.Gourley, and L.R.Dawson, Appl.Phys.Lett.51.1004-1006(1987)
【非特許文献2】P.L.Gourley, I.J.Fritz, and L.R.Dawson, Appl.Phys.Lett.52,377-379(1988)
【非特許文献3】K. Nakashima and K. Tateno, J. Appl. Crystallogr.37,14-23(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
歪系エピタキシャル層、歪超格子構造の作製において重要となる、臨界膜厚の評価、および臨界膜厚をこえた領域での格子緩和過程の評価などの構造劣化をX線回折法を用いて評価する際に従来問題となっていた、他のPL測定法などを用いた場合と比べて検出感度が悪い、という課題を解決し、X線回折法を用いた構造劣化を評価する上で、従来法と比較して検出感度が向上するような新しい評価解析手法を提供する。
【0010】
特に、従来提案されていた方法が適用できないような場合、すなわち、バルク結晶、または格子不整合度の大きいヘテロエピタキシャル成長薄膜結晶などで、基準ピークとなるようなピークが解析対象ピークの近傍に観測できないような場合にも適用できる新しい評価解析手法を提供する。
【0011】
なお、結晶構造の劣化としては、転位、欠陥、結晶方位の分布、結晶組成の乱れ等が考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の結晶の構造解析方法の構成は
試料に対してX線を照射したときに、前記試料にて回折した回折X線の強度をX線検出器により検出して前記試料の結晶の構造を解析する方法であって、
試料として解析対象となる対象試料を用い、この対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を、広開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
前記対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を、狭開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度との相対比を求め、この相対比を対象試料の回折X線強度比とする工程と、
試料として結晶の完全性が保証された参照試料を用い、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を、広開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を、狭開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度との相対比を求め、この相対比を参照試料の回折X線強度比とする工程と、
対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比との相対比を求め、この相対比を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする。
【0013】
また本発明の結晶の構造解析方法の構成は、
試料に対してX線を照射したときに、前記試料にて回折した回折X線の強度をX線検出器により検出して前記試料の結晶の構造を解析する方法であって、
試料として解析対象となる対象試料を用い、この対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度の中からピークとなる強度を、広開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
前記対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度の中からピークとなる強度を、狭開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での対象試料のX線強度を広開口角での対象試料のX線強度にて除算し、この除算値を対象試料の回折X線強度比とする工程と、
試料として結晶の完全性が保証された参照試料を用い、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度の中からピークとなる強度を、広開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度の中からピークとなる強度を、狭開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での参照試料のX線強度を広開口角での参照試料のX線強度にて除算し、この除算値を参照試料の回折X線強度比とする工程と、
対象試料の回折X線強度比を参照試料の回折X線強度比にて除算し、この除算値を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする。
【0014】
また本発明の結晶の構造解析方法の構成は、
試料に対してX線を照射したときに、前記試料にて回折した回折X線の強度をX線検出器により検出して前記試料の結晶の構造を解析する方法であって、
試料として解析対象となる対象試料を用い、この対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を積分した積分値を、広開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
前記対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を積分した積分値を、狭開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での対象試料のX線強度を広開口角での対象試料のX線強度にて除算し、この除算値を対象試料の回折X線強度比とする工程と、
試料として結晶の完全性が保証された参照試料を用い、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を積分した積分値を、広開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を積分した積分値を、狭開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での参照試料のX線強度を広開口角での参照試料のX線強度にて除算し、この除算値を参照試料の回折X線強度比とする工程と、
対象試料の回折X線強度比を参照試料の回折X線強度比にて除算し、この除算値を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする。
【0015】
また本発明の結晶の構造解析方法の構成は、
前記参照試料は、完全結晶基板である、Si基板結晶、またはGe基板結晶、またはGaAs基板結晶、またはInP基板結晶であることを特徴とする。
【0016】
また本発明の結晶の構造解析装置の構成は、
試料を保持する試料保持部と、前記試料保持部に保持された試料に対してX線を照射するX線源と、前記試料にて回折した回折X線の強度を検出するX線検出器と、前記試料保持部と前記X線検出器との間であって回折X線が進行する受光系に配置されたり前記受光系から外れた位置に配置されたりする開口絞り手段とを有するX線回折装置と、
演算部と、
記憶部とからなる結晶の構造解析装置であって、
前記試料保持部に解析対象となる対象試料を保持し、この対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を広開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を狭開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度を読み込み、狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度との相対比を求め、この相対比を対象試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記試料保持部に結晶の完全性が保証された参照試料を保持し、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を広開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を狭開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度を読み込み、狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度との相対比を求め、この相対比を参照試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比を読み込み、対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比との相対比を求め、この相対比を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする。
【0017】
また本発明の結晶の構造解析装置の構成は、
試料を保持する試料保持部と、前記試料保持部に保持された試料に対してX線を照射するX線源と、前記試料にて回折した回折X線の強度を検出するX線検出器と、前記試料保持部と前記X線検出器との間であって回折X線が進行する受光系に配置されたり前記受光系から外れた位置に配置されたりする開口絞り手段とを有するX線回折装置と、
演算部と、
記憶部とからなる結晶の構造解析装置であって、
前記試料保持部に解析対象となる対象試料を保持し、この対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度の中からピークとなる強度を広開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度の中からピークとなる強度を狭開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度を読み込み、狭開口角での対象試料のX線強度を広開口角での対象試料のX線強度にて除算し、この除算値を対象試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記試料保持部に結晶の完全性が保証された参照試料を保持し、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度の中からピークとなる強度を広開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度の中からピークとなる強度を狭開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度を読み込み、狭開口角での参照試料のX線強度を広開口角での参照試料のX線強度にて除算し、この除算値を参照試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比を読み込み、対象試料の回折X線強度比を参照試料の回折X線強度比にて除算し、この除算値を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする。
【0018】
また本発明の結晶の構造解析装置の構成は、
試料を保持する試料保持部と、前記試料保持部に保持された試料に対してX線を照射するX線源と、前記試料にて回折した回折X線の強度を検出するX線検出器と、前記試料保持部と前記X線検出器との間であって回折X線が進行する受光系に配置されたり前記受光系から外れた位置に配置されたりする開口絞り手段とを有するX線回折装置と、
演算部と、
記憶部とからなる結晶の構造解析装置であって、
前記試料保持部に解析対象となる対象試料を保持し、この対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を積分した積分値を広開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を積分した積分値を狭開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度を読み込み、狭開口角での対象試料のX線強度を広開口角での対象試料のX線強度にて除算し、この除算値を対象試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記試料保持部に結晶の完全性が保証された参照試料を保持し、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を積分した積分値を広開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を積分した積分値を狭開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度を読み込み、狭開口角での参照試料のX線強度を広開口角での参照試料のX線強度にて除算し、この除算値を参照試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比を読み込み、対象試料の回折X線強度比を参照試料の回折X線強度比にて除算し、この除算値を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする。
【0019】
また本発明の結晶の構造解析装置の構成は、
前記参照試料は、完全結晶基板である、Si基板結晶、またはGe基板結晶、またはGaAs基板結晶、またはInP基板結晶であることを特徴とする。
【0020】
[作用]
本発明においては、上記評価手段を用いることにより、解析対象ピークに関する評価解析と基準ピークを用いた解析および補正を分離、独立して行えるような評価解析手法を構成でき、これにより必ずしも基準ピークが解析対象ピークの近傍に観測されずとも、評価解析手法がうまく機能し、より一般の場合に検出感度よく構造劣化を検出、評価するという作用を生み出す。
特に、比較参照用試料測定時の反射指数を解析対象試料測定の反射指数と独立に自由に選べることを保証する解析方法にすることで、両者で反射指数が共通に選べないような、より一般の場合にも適用可能な解析方法に定式化できるという作用をもたらす。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、歪系エピタキシャル層、歪超格子構造の作製において重要となる、臨界膜厚の評価、および臨界膜厚をこえた領域での格子緩和過程の評価などの構造劣化をX線回折法を用いて評価する際に従来問題となっていた、他のPL測定法などを用いた場合と比べて検出感度が悪い、という課題を解決し、X線回折法を用いた構造劣化を評価する上で、従来法と比較して検出感度を向上させることが可能となった。特に、バルク結晶、または格子不整合度の大きいヘテロエピタキシャル成長薄膜結晶などにおいて頻繁に遭遇する、基準ピークとなるようなピークが解析対象ピークの近傍に観測できないような場合、すなわち、従来提案されていた方法では解析できないような場合にも構造劣化を検出感度よく評価解析することが可能となった。また、補正を施すことにより、構造劣化の無い場合を1.0とする普遍的比表示が可能となる点も本発明の効果である。
さらに、比較参照用試料測定時の反射指数を解析対象試料測定の反射指数と独立に自由に選べることを保証する解析方法にすることで、両者で反射指数が共通に選べないようなより一般の場合にも解析が適用可能となった。すなわち、本発明により、測定上の便宜を考えて反射指数を自由に選んで測定した実験データを用いて解析することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態では、任意のバルク結晶、または任意の基板上にエピタキシャル成長により作製された任意の材料系からなる単層および多層構造結晶を、X線回折により構造評価する場合を想定する。
この際、本発明の結晶の構造解析方法は、
(1)回折X線の受光系の開口角条件のみを変えた条件で、他の測定条件を同じに保ち、同一の反射指数(hkl)をもつ回折プロファイルを複数測定する工程と、
上記工程により得られた各測定プロファイル中の解析対象ピーク(あるいは一連のピーク群)ごとにピークトップ点での回折強度値を絶対測定し、この値をもとに各解析対象ピークごとに受光系開口角条件の異なる測定プロファイル間での回折強度値の相対比を算出する工程と、
上記工程により得られた回折強度値の比を受光系開口角条件の広い条件での回折強度値に対する受光系開口角条件の狭い条件での回折強度値の相対比の観点から整理し、この値の大小を評価することにより、各解析対象ピーク(あるいは一連のピーク群)に対応する解析対象層(あるいは解析対象多層構造結晶)の結晶的完全性、構造劣化の程度を判定することを特徴とする結晶の構造解析法であり、
かつ、
(2)解析対象となる試料とは別に、比較参照用試料として結晶の完全性の保証された試料を用意しておき、上記(1)中に述べた解析対象試料に対して適用した受光系の開口角条件のみを変えた条件での回折プロファイルの複数測定を比較参照用試料に対しても行う。この比較参照用試料に対する測定では、入射X線に関するすべての測定条件、受光系測定配置条件、スキャンスピード等測定条件をすべて(1)の解析対象試料の測定時に用いた条件に保ったまま比較参照用試料にも適用し、(1)と同様の手順で回折プロファイルを複数測定する。ただし、この測定の際、比較参照用試料測定に用いる反射指数hklは(1)の測定条件とは独立に自由に選択することを特徴とする。このようにして得られた回折プロファイル中の比較参照用試料ピークに対して(1)と同様の手順で受光系開口角条件の異なる測定プロファイル間での回折強度値の相対比を算出する工程と、
得られた比較参照用試料ピークに対する回折強度値の相対比を用いて、上記(1)の解析法において得られた解析対象ピークに対する回折強度値の相対比を除することにより、規格化された回折強度値の相対比を算出する工程と、
前工程で得られた規格化された回折強度値の相対比の大小を比較することにより、各解析対象ピーク(または一連のピーク群)に対応する解析対象層(あるいは解析対象多層構造結晶)の結晶学的完全性、構造劣化の程度を判定することを特徴とする結晶の構造解析法である。
【0023】
また本発明を実施するための最良の形態では、
(3)上記(2)の解析法において、特に
比較参照用試料として、Si基板結晶、Ge基板結晶、GaAs基板結晶、InP基板結晶等の完全結晶基板を用いることを特徴とする結晶の構造解析法である。
【0024】
次に、本発明の各実施例を説明する。
【実施例1】
【0025】
本発明の具体的な実施例1として、(0001)サファイア基板上にMOVPE成長法により作製したGaNエピタキシャル薄膜試料を本発明に適用して構造評価した例を以下に述べる。尚、サファイアとGaNは格子不整合度が約19%あり、格子不整合度の大きな材料系の典型例である。したがって、X線回折測定においてサファイア基板ピークはGaNエピタキシャル層ピークの近傍には観測されず、したがってGaNエピタキシャル層ピークの近傍に基準ピークとなりうるような回折ピークは観測されない場合の典型例となっている。
【0026】
GaNエピタキシャル薄膜試料としては、成長条件の異なる2つの対象試料(試料Aおよび試料B)を準備し、それぞれについて構造劣化の程度を評価した。
【0027】
本発明の実施例として、図1にGaN試料Aの0006反射X線回折測定プロファイルを示す。同図には2種類の受光系開口角条件(第1測定条件と第2測定条件)で測定した2つのプロファイルが表示してあり、各プロファイルにはGaN層に起因したピークのみが観測される。用いた受光系開口角条件は、1つはX線検出器の前に受光スリットを置かない広い受光系開口角条件(第1測定条件)、他の1つは、X線検出器の前に受光用アナライザ結晶を挿入した極端に狭い受光系開口角条件(第2測定条件)である。
X線回折測定の際における第1測定条件と第2測定条件は、受光系開口角条件は異なるが、他の測定条件は同一にしている。
【0028】
図1の表示において、縦軸は回折強度をcounts/secondを単位として表示しており、横軸は試料に照射するX線の入射角度を表示している。
「回折強度」とは、X線源から発生したX線を試料に照射したときに、試料の結晶格子によって回折されて射出された回折X線の強度を、X線検出器によって検出した強度(回折X線強度)である。図1の縦軸は、この回折強度(回折X線強度)を示している。
【0029】
また、X線回折法では、周知のように、X線源を静止した状態で、試料を徐々に回転させることにより試料に照射するX線の入射角度を変化させて、各入射角度における回折強度を検出している。この場合、例えば二軸回折計では、ゴニオメータを使用して、試料をθ°回転させたときに同期してX線検出器を2θ°回転させるようにしている。図1の横軸は、試料に照射するX線の入射角度の変化状態を示している。
なお、試料を回転させてX線の入射角度を変化させつつ、回折X線強度(回折強度)を検出することを、「スキャン」と称する。
更に、各入射角度における回折強度を辿った特性曲線を、「プロファイル」と称する。
また、試料から射出される回折X線は所定の放射角(立体角)をもって、X線検出器に向かって進行する。したがって、試料とX線検出器との間の経路(受光系)に、開口絞り手段(スリットやアナライザ結晶)を配置すると、開口絞り手段の開口角の範囲内にある回折X線のみがX線検出器に入射されることになる。
【0030】
図1に示す両プロファイルの測定においてX線源の条件、スキャンスピード、反射指数等、受光系開口角条件以外の他のすべての測定条件は同一に保っているため、図1の表示における2つのプロファイルの間の相対強度差は、受光系開口角条件の違いに起因して生じる回折強度差の絶対表示とみなせる点が重要である。
【0031】
この点に注意すると、図1より、極端に狭い受光系開口角条件で測定した場合のGaN層ピークの絶対回折強度は、広い受光系開口角条件で測定した場合の絶対回折強度に比べて著しく減少していることが分かる。この減少の程度の大小を評価解析することにより、解析対象層であるGaN層の結晶の完全性、構造劣化の程度を評価できる。具体的に2つのプロファイルの中のGaNピーク(具体的には入射角度が63°付近のときの)の回折強度比(=極端に狭い受光系開口角としたときの回折強度/広い受光系開口角としたときの回折強度)を図から求めると、約0.01という小さな値が得られ、構造劣化の程度が大きいことが結論できる。
【0032】
更に詳述すると、まず広い受光系開口角条件(第1測定条件)で対象試料AをX線回折測定して、プロファイルの中のGaNピーク(広開口角での対象試料の回折X線強度)を求める。
次に、極端に狭い受光系開口角条件(第2測定条件)で対象試料AをX線回折測定して、プロファイルの中のGaNピーク(狭開口角での対象試料の回折X線強度)を求める。
そして、「極端に狭い受光系開口角条件(第2測定条件)で対象試料AをX線回折測定したプロファイルの中のGaNピーク(狭開口角での対象試料の回折X線強度)」を「広い受光系開口角条件(第1測定条件)で対象試料AをX線回折測定したプロファイルの中のGaNピーク(広開口角での対象試料の回折X線強度)」で除算することにより、「対象試料Aの回折X線強度比」として、上述した約0.01という値が得られる。
【0033】
同様の測定を試料Bについて行った結果を図2に示す。用いた測定条件はすべて図1の測定で用いたものと同一に揃えておき、これにより試料間における構造劣化の程度の比較が容易になるようにした。図2より、入射角度が64.2°付近のときの試料Bに対する回折強度比、つまり対象試料Bの回折X線強度比(=極端に狭い受光系開口角としたときの回折強度/広い受光系開口角としたときの回折強度)は約0.06が得られる。
【0034】
更に詳述すると、まず広い受光系開口角条件(前述した第1測定条件)で対象試料BをX線回折測定して、プロファイルの中のGaNピーク(広開口角での対象試料の回折X線強度)を求める。
次に、極端に狭い受光系開口角条件(前述した第2測定条件)で対象試料BをX線測定して、プロファイルの中のGaNピーク(狭開口角での対象試料の回折X線強度)を求める。
そして、「極端に狭い受光系開口角条件(第2測定条件)で対象試料BをX線回折測定したプロファイルの中のGaNピーク(狭開口角での対象試料の回折X線強度)」を「広い受光系開口角条件(第1測定条件)で対象試料BをX線回折測定したプロファイルの中のGaNピーク(広開口角での対象試料の回折X線強度)」で除算することにより、「対象試料Bの回折X線強度比」として、上述した約0.06という値が得られる。
【0035】
ここで、広い受光系開口角条件と狭い受光系開口角条件について、X線回折装置を示す図3(a)〜(e)を用いて説明する。
【0036】
図3(a)において、10はX線源、11は試料保持部、12はX線検出器、13はスリットである。試料保持部11には、試料20が備えられる。
【0037】
X線源10から発生したX線は、試料保持部11に保持された試料20に照射される。そうすると、試料20の結晶格子の回折により回折X線が生じてこの回折X線が射出される。射出された回折X線はX線検出部12に入り回折X線の強度が検出される。このときスキャン動作により、試料20(試料保持部11)をθ°回転させたときに同期して検出器を2θ°回転させるようにしている。
【0038】
そして、試料20とX線検出部11との間の経路、つまり、回折X線が進行する受光系に、スリット13を配置したり、スリット13を配置しなかったりすることができる。「広い受光系開口角条件」はスリット13がない場合に相当し、「狭い受光系開口角条件」はスリット13がある場合に相当する。
【0039】
図3(b)に示すように、結晶性の高い試料20にX線を照射した場合、その結晶表面で回折したX線は散乱するものが少なく狭い放射角を有する。したがって、図3(c)に示すように、結晶とX線検出器20の間にスリット13を挿入した場合、回折したX線のほとんどがスリット13を透過してX線検出器12に到達するので測定される回折強度は高い。よって、スリット13を挿入する場合に検出される回折強度は、挿入しない場合のそれに比べて低下することはないので、それぞれの回折強度の比の値は高くなる。
【0040】
一方、図3(d)に示すように、結晶性の低い試料20にX線を照射した場合、その結晶表面で回折したX線は散乱するものが多く広い放射角を有する。したがって、結晶とX線検出器12の間にスリット13を挿入した場合、回折したX線の多くはスリット13を透過せずX線検出器12に到達できないので測定される回折強度は低い。よって、スリット13を挿入する場合に検出される回折強度は、挿入しない場合のそれに比べて低下するので、それぞれの回折強度の比の値は低くなる。
【0041】
実際の測定においては狭い受光系開口角条件は、図4(b)に示すように、アナライザ結晶14を用いて実現できる。一般にアナライザ結晶14にはSi結晶やGe結晶の(220)非対称面が用いられる。なお図4(a)は、アナライザ結晶14を受光系に介在させないようにして受光系開口角条件を広くした状態を示している。
【0042】
次に、比較参照用試料としてGaAs基板結晶を採用し、図1,図2で用いた測定条件と同一の測定条件を用いて測定評価した結果を図5に示す。この際、反射指数も図1,図2とは独立に004に選んだ。なお、比較参照用試料として採用したGaAs基板結晶は、結晶の完全性が保証された試料である。
【0043】
なお、反射指数とは、結晶のブラッグ条件を満足する格子面によるX線の反射を表す指数である。
なお、図1,図2,に示す測定評価結果を得るために用いた測定条件で用いた反射指数と、図5に示す測定評価結果を得るために用いた測定条件で用いた反射指数は、異ならせている。他の測定条件は同じにしている。
【0044】
つまり、ここでいう「測定条件とは」、試料に入射するX線の強度・波長、X線検出器の感度、開口絞り手段の開口角、各試料の反射指数、スキャンスピード等をいう。
【0045】
図5より2つの測定(広い受光系開口角条件における測定と、極端に狭い受光系開口角条件における測定)での回折強度比は約0.25であることが分かる。この値は反射指数を002、あるいは006に選んで評価しても指数に依存せず、ほぼ一定の値が得られることが実験的に確認できる。この実験事実から、比較参照用試料として完全結晶を選んだ場合には上記回折強度比は反射指数に依存せず、他の測定条件で決まる一定の値が得られることが実験的に保証できる。したがって図5の測定において図1,2とは独立に反射指数を選んで解析することが正当化される。
以上の結果を基に図5の004反射を用いた実験結果から、本実施例に採用した測定条件では、2つの異なる受光系開口角測定条件での回折強度比は完全結晶試料に対して(測定に用いる反射指数に依存せず)約0.25となる測定条件であったことが確認できた。
【0046】
更に詳述すると、まず広い受光系開口角条件(第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じにした第3測定条件)で参照試料をX線回折測定してプロファイルの中のGaAsピーク(広開口角での参照試料の回折X線強度)を求める。
次に、極端に狭い受光系開口角条件(第2測定条件に対して反射指数は第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じにした第4測定条件)で参照試料をX線回折測定してプロファイルの中のGaAsピーク(狭開口角での参照試料の回折X線強度)を求める。
そして、「極端に狭い受光系開口角条件(第3測定条件)で参照試料を測定したプロファイルの中のGaAsピーク(狭開口角での参照試料の回折X線強度)」を「広い受光系開口角条件(第4測定条件)で参照試料を測定したプロファイルの中のGaAsピーク(広開口角での参照試料の回折X線強度)」で除算することにより、「参照試料の回折X線強度比」として、上述した約0.25という値が得られる。
【0047】
なお比較参照用試料は完全結晶、つまり、結晶の完全性が保証された試料であり、ここでいう、「結晶の完全性が保証された」とは、結晶品質が一般に市販されている半導体結晶基板の結晶品質程度であることを示す。
【0048】
そこで、「参照試料の回折X線強度比(=0.25)」を用いて上述の解析対象層である試料AのGaNピークの回折強度比(「対象試料Aの回折X線強度比」=0.01)を除することにより、補正された回折強度比(規格化した回折X線強度比)を求めると、0.01/0.25=0.04の値を得る。この規格化した回折X線強度比の値が1.0であれば解析対象層が完全結晶であることを意味し、規格化した回折X線強度比の値が1.0よりも小さくなるに従い構造劣化の程度が大きくなることを示している。この意味で「補正された回折強度比(規格化した回折X線強度比)」は構造劣化の程度をより普遍的に表示する量になっていることが分かり、図1のみの解析に比べて利点を持つことが分かる。得られた0.04という値(規格化した回折X線強度比の値)から解析対象層である対象試料AのGaNピークは構造劣化の影響を顕著に含んでいることが明確になった。
【0049】
試料Bについても同様に補正された回折強度比(規格化した回折X線強度比)を求めると、0.06/0.25=0.24の値を得る。この値が1.0よりも小さいことから、試料Bについても構造劣化が存在することが簡便に結論できる。また、試料Aとの値の比較から、試料Bの構造劣化の程度は試料Aほど大きくないことが結論でき、試料Bは試料Aに比べて結晶性がよいことが簡便かつ普遍的立場から解析できた。
【0050】
以上のように本発明では、規格化した回折X線強度比を求めるようにしたため、構造劣化の有無、およびその程度を、従来に比べてより一般の場合に検出感度よく検出、評価できることが分かった。
【0051】
なお、結晶の完全性が保証された参照試料としては、Si基板結晶、Ge基板結晶、GaAs基板結晶、InP基板結晶等の完全結晶基板を用いることができる。
【実施例2】
【0052】
次に本発明の実施例2に係る、結晶の構造解析装置を、概略構成図である図6(a),図6(b)、及び、フロー図である図7(a)〜図7(c)を参照して説明する。
実施例2の、結晶の構造解析装置100は、実施例1の「結晶の構造解析方法」を実施する一つの装置である。なお、図6(a)は広い受光系開口角条件(第1測定条件及び第3測定条件)においてX線回折測定をする状態を示しており、図6(b)は極端に狭い受光系開口角条件(第2測定条件及び第4測定条件)においてX線回折測定をする状態を示している。
【0053】
図6(a)及び図6(b)に示すように、この結晶の構造解析装置100は、X線回折装置30と、演算部40と、記憶部50を有している。演算部40と記憶部50との間ではデータの送受ができるようになっている。
【0054】
X線回折装置30は、X線源31と、試料保持部32と、X線検出器33,34と、アナライザ結晶35を備えている。X線検出器33とX線検出器34の検出感度は同一になっている。試料保持部32には、対象試料21または参照試料22が保持される。
【0055】
X線回折測定の際には、X線源31から発生したX線が、試料保持部32に保持された試料21(または22)に照射される。そうすると、試料21(22)の結晶の回折により回折X線が生じて、この回折X線が射出される。
図6(a)に示す第1測定条件及び第3測定条件(広い開口角条件)のときには、回折X線はX線検出器33に入り回折X線の強度が検出される。検出された回折X線強度は、X線検出器33から演算部40に送られる。
また、図6(b)に示す第2測定条件及び第4測定条件(極端に狭い開口角条件)のときには、回折X線はアナライザ結晶35で回折・反射されてからX線検出器34に入り回折X線の強度が検出される。検出された回折X線強度は、X線検出器34から演算部40に送られる。
そして、第1,第3測定条件であっても、第2,第4測定条件であっても、スキャン動作が行われ、試料21(22)を保持した試料保持部32を徐々に回転することに伴い、この試料保持部32の回転角の2倍の角度でもって、検出器33,34及びアナライザ結晶35が徐々に回転するようになっている。
【0056】
なお、第1,第3測定条件(広い開口角条件)と第2,第4測定条件(極端に狭い開口角条件)とでは、検出器33,34及びアナライザ結晶35の配置状態が異なるが、この配置状態の変更は、手動制御によっても、自動制御によっても行うことができる。
【0057】
また、解析対象となる対象試料21を試料保持部32の表面側に保持して、X線回折測定を行った後に、参照試料22を試料保持部32の表面側に保持して、X線回折測定を行う。
この試料の交換の変形例としては、試料保持部32の表面側に対象試料21を保持し、試料保持部32の裏面側に対象試料22を保持し、対象試料21に対してX線回折測定をする際には対象試料21をX線源31側に向け、その後の参照試料22に対しX線回折測定をする際には、試料保持部32を180度回転させて、参照試料22をX線源31側に向けるように構成することもできる。
【0058】
次に図6(a),図6(b)及び図7(a)〜図7(c)を参照してX線回折測定動作を説明する。
【0059】
図6(a)に示すように、広い受光系開口角条件になる配置状態にして、解析対象となる対象試料21を、試料保持部32にセットする(ステップ1)。
【0060】
受光系にアナライザ結晶35をセットせずに広い受光系開口角条件とした状態において、対象試料21にX線を照射しつつスキャンをして、対象試料21から放射される回折X線の強度(回折X線強度)をX線検出器33で測定する。このときの測定条件を、「第1測定条件」とする(ステップ2)。
【0061】
演算部40では、「第1測定条件」の下で得られた回折X線強度を示す測定プロファイルの中から、ピークとなる部分の回折X線強度を求める。この求めた回折X線強度を、「広開口角での対象試料の回折X線強度」とする(ステップ3)。
【0062】
上記の「広開口角での対象試料の回折X線強度」を、記憶部50に記憶する(ステップ4)。
【0063】
図6(b)に示すように、アナライザ結晶35を受光系にセットして狭い受光系開口角条件とした状態において、対象試料21にX線を照射しつつスキャンをして、対象試料21から放射されて狭い開口角を透過してきた回折X線の強度(回折X線強度)をX線検出器34で測定する。このときの測定条件は、「第1測定条件」に対して受光系開口角が異なるのみで他の測定条件を保持したままの「第2測定条件」としている(ステップ5)。
【0064】
演算部40では、「第2測定条件」の下で得られた回折X線強度を示す測定プロファイルの中から、ピークとなる部分の回折X線強度を求める。この求めた回折X線強度を、「狭開口角での対象試料の回折X線強度」とする(ステップ6)。
【0065】
上記の「狭開口角での対象試料の回折X線強度」を、記憶部50に記憶する(ステップ7)。
【0066】
記憶部50に記憶されている、「広開口角での対象試料の回折X線強度」と「狭開口角での対象試料の回折X線強度」を演算部40に読み込む(ステップ8)。
【0067】
演算部40では、「狭開口角での対象試料の回折X線強度」を「広開口角での対象試料の回折X線強度」で除算して、「対象試料の回折X線強度比」を計算する(ステップ9)。
【0068】
上記の「対象試料の回折X線強度比」を、記憶部50に記憶する(ステップ10)。
【0069】
次に、図6(a)に示すように、広い受光系開口角条件になる配置状態にして、結晶の完全性が保証された参照試料22を、試料保持部32にセットする(ステップ11)。
【0070】
受光系にアナライザ結晶35をセットせずに広い受光系開口角条件とした状態において、参照試料22にX線を照射しつつスキャンをして、参照試料22から放射される回折X線の強度(回折X線強度)をX線検出器33で測定する。このときの測定条件(「第3測定条件」)は、上述した「第1測定条件」に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである(ステップ12)。
【0071】
演算部40では、「第3測定条件」の下で得られた回折X線強度を示す測定プロファイルの中から、ピークとなる部分の回折X線強度を求める。この求めた回折X線強度を、「広開口角での参照試料の回折X線強度」とする(ステップ13)。
【0072】
上記の「広開口角での参照試料の回折X線強度」を、記憶部50に記憶する(ステップ14)。
【0073】
図6(b)に示すように、アナライザ結晶35を受光系にセットして狭い受光系開口角条件とした状態において、参照試料22にX線を照射しつつスキャンをして、参照試料22から放射されて狭い開口角を透過してきた回折X線の強度(回折X線強度)をX線検出器34で測定する。このときの測定条件(「第4測定条件」)は、上述した「第2測定条件」に対して反射指数は「第3測定条件」で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである(ステップ15)。
【0074】
演算部40では、「第4測定条件」の下で得られた回折X線強度を示す測定プロファイルの中から、ピークとなる部分の回折X線強度を求める。この求めた回折X線強度を、「狭開口角での参照試料の回折X線強度」とする(ステップ16)。
【0075】
上記の「狭開口角での参照試料の回折X線強度」を、記憶部50に記憶する(ステップ17)。
【0076】
記憶部50に記憶されている、「広開口角での参照試料の回折X線強度」と「狭開口角での参照試料の回折X線強度」を演算部40に読み込む(ステップ18)。
【0077】
演算部40では、「狭開口角での参照試料の回折X線強度」を「広開口角での参照試料の回折X線強度」で除算して、「参照試料の回折X線強度比」を計算する(ステップ19)。
【0078】
上記の「参照試料の回折X線強度比」を、記憶部50に記憶する(ステップ20)。
【0079】
記憶部50に記憶されている「対象試料の回折X線強度比」と「参照試料の回折X線強度比」を演算部40に読み込む(ステップ21)。
【0080】
演算部40では、「対象試料の回折X線強度比」を「参照試料の回折X線強度比」で除算して、「規格化した回折X線強度比」を計算する(ステップ22)。
【0081】
「規格化した回折X線強度比」の大きさから、対象試料22の結晶学的完全性、構造劣化の程度を判定する(ステップ23)。
【実施例3】
【0082】
上記各実施例においては、プロファイルのピークの値を対象として解析しているが、プロファイルの積分値など、回折されたX線の強度を反映するものを対象としても同様の効果を得ることができる。
【0083】
そこで、実施例3では、図6(a),図6(b)に示す、結晶の構造解析装置100を用いると共に、回折X線の強度を反映するものとしてプロファイルの積分値を用いて、結晶の構造解析をする例を説明する。
構成は図6(a),図6(b)に示すものと同じであるので、図6(a),図6(b)及び図8(a)〜図8(c)を参照して、実施例3でのX線回折測定動作を説明する。
【0084】
図6(a)に示すように、広い受光系開口角条件になる配置状態にして、解析対象となる対象試料21を、試料保持部32にセットする(ステップ101)。
【0085】
受光系にアナライザ結晶35をセットせずに広い受光系開口角条件とした状態において、対象試料21にX線を照射しつつスキャンをして、対象試料21から放射される回折X線の強度(回折X線強度)をX線検出器33で測定する。このときの測定条件を、「第1測定条件」とする(ステップ102)。
【0086】
演算部40では、「第1測定条件」の下で得られた回折X線強度を示す測定プロファイルを積分して積分値を求める。この積分値を、「広開口角での対象試料の回折X線強度」とする(ステップ103)。
【0087】
上記の「広開口角での対象試料の回折X線強度」を、記憶部50に記憶する(ステップ104)。
【0088】
図6(b)に示すように、アナライザ結晶35を受光系にセットして狭い受光系開口角条件とした状態において、対象試料21にX線を照射しつつスキャンをして、対象試料21から放射されて狭い開口角を透過してきた回折X線の強度(回折X線強度)をX線検出器34で測定する。このときの測定条件は、「第1測定条件」に対して受光系開口角が異なるのみで他の測定条件を保持したままの「第2測定条件」としている(ステップ105)。
【0089】
演算部40では、「第2測定条件」の下で得られた回折X線強度を示す測定プロファイルを積分して積分値を求める。この積分値を、「狭開口角での対象試料の回折X線強度」とする(ステップ106)。
【0090】
上記の「狭開口角での対象試料の回折X線強度」を、記憶部50に記憶する(ステップ107)。
【0091】
記憶部50に記憶されている、「広開口角での対象試料の回折X線強度」と「狭開口角での対象試料の回折X線強度」を演算部40に読み込む(ステップ108)。
【0092】
演算部40では、「狭開口角での対象試料の回折X線強度」を「広開口角での対象試料の回折X線強度」で除算して、「対象試料の回折X線強度比」を計算する(ステップ109)。
【0093】
上記の「対象試料の回折X線強度比」を、記憶部50に記憶する(ステップ110)。
【0094】
次に、図6(a)に示すように、広い受光系開口角条件になる配置状態にして、結晶の完全性が保証された参照試料22を、試料保持部32にセットする(ステップ111)。
【0095】
受光系にアナライザ結晶35をセットせずに広い受光系開口角条件とした状態において、参照試料22にX線を照射しつつスキャンをして、参照試料22から放射される回折X線の強度(回折X線強度)をX線検出器33で測定する。このときの測定条件(「第3測定条件」)は、上述した「第1測定条件」に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである(ステップ112)。
【0096】
演算部40では、「第3測定条件」の下で得られた回折X線強度を示す測定プロファイルを積分して積分値を求める。この積分値を、「広開口角での参照試料の回折X線強度」とする(ステップ113)。
【0097】
上記の「広開口角での参照試料の回折X線強度」を、記憶部50に記憶する(ステップ114)。
【0098】
図6(b)に示すように、アナライザ結晶35を受光系にセットして狭い受光系開口角条件とした状態において、参照試料22にX線を照射しつつスキャンをして、参照試料22から放射されて狭い開口角を透過してきた回折X線の強度(回折X線強度)をX線検出器34で測定する。このときの測定条件(「第4測定条件」)は、上述した「第2測定条件」に対して反射指数は「第3測定条件」で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである(ステップ115)。
【0099】
演算部40では、「第4測定条件」の下で得られた回折X線強度を示す測定プロファイルを積分して積分値を求める。この積分値を、「狭開口角での参照試料の回折X線強度」とする(ステップ116)。
【0100】
上記の「狭開口角での参照試料の回折X線強度」を、記憶部50に記憶する(ステップ117)。
【0101】
記憶部50に記憶されている、「広開口角での参照試料の回折X線強度」と「狭開口角での参照試料の回折X線強度」を演算部40に読み込む(ステップ118)。
【0102】
演算部40では、「狭開口角での参照試料の回折X線強度」を「広開口角での参照試料の回折X線強度」で除算して、「参照試料の回折X線強度比」を計算する(ステップ119)。
【0103】
上記の「参照試料の回折X線強度比」を、記憶部50に記憶する(ステップ120)。
【0104】
記憶部50に記憶されている「対象試料の回折X線強度比」と「参照試料の回折X線強度比」を演算部40に読み込む(ステップ121)。
【0105】
演算部40では、「対象試料の回折X線強度比」を「参照試料の回折X線強度比」で除算して、「規格化した回折X線強度比」を計算する(ステップ122)。
【0106】
「規格化した回折X線強度比」の大きさから、対象試料22の結晶学的完全性、構造劣化の程度を判定する(ステップ123)。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】2種類の受光系開口角条件で測定したGaN試料(試料A)の0006反射X線回折測定プロファイルを示す特性図。
【図2】2種類の受光系開口角条件で測定したGaN試料(試料B)の0006反射X線回折測定プロファイルを示す特性図。
【図3】X線解析装置を示す概略構成図。
【図4】X線解析装置を示す概略構成図。
【図5】比較参照用試料GaAs基板結晶ピークに対して2種類の受光系開口角条件で測定した006反射X線回折測定プロファイルを示す特性図。
【図6(a)】実施例2に係る、結晶の構造解析装置を示す構成図。
【図6(b)】実施例2に係る、結晶の構造解析装置を示す構成図。
【図7(a)】実施例2の動作状態を示すフロー図。
【図7(b)】実施例2の動作状態を示すフロー図。
【図7(c)】実施例2の動作状態を示すフロー図。
【図8(a)】実施例3の動作状態を示すフロー図。
【図8(b)】実施例3の動作状態を示すフロー図。
【図8(c)】実施例3の動作状態を示すフロー図。
【符号の説明】
【0108】
10 X線源
11 試料保持部
12 X線検出器
13 スリット
14 アナライザ結晶
20 試料
100 結晶の構造解析装置
30 X線回折装置
31 エクス線源
32 試料保持部
33,34 X線検出器
35 アナライザ結晶
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルク結晶、または半導体薄膜結晶や多重量子井戸構造の構造解析をするのに適用して有用な、結晶の構造解析方法および結晶の構造解析装置に関する発明である。本発明は、特に格子不整合の大きいヘテロエピタキシャル成長薄膜結晶の不完全性、歪を含むエピタキシャル薄膜および歪超格子格子の構造劣化の有無およびその程度、特徴等を調べる上で有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、InGaAs/GaAs、Si/SiGeなどの材料系を用いた歪系エピタキシャル層、歪超格子構造の作製においては「臨界膜厚」(あるいは「臨界歪」)という量の重要性がよく知られており、臨界膜厚の評価、および臨界膜厚をこえた領域での格子緩和過程の評価は重要な評価対象であった。X線回折法は、PL測定法、TEM解析法などとともに、これら臨界膜厚の評価、格子緩和過程の評価に従来からよく用いられてきた。
【0003】
しかるにこれらの各種評価法で評価された臨界膜厚値は一般には一致せず、その不一致の原因の1つとし、従来のX線回折評価が他の評価手法に比べて、構造劣化に対する検出感度が劣る点が指摘されていた(I.J.Fritz, P.L.Gourley, and L.R.Dawson, Appl.Phys.Lett.51.1004-1006(1987)およびP.L.Gourley, I.J.Fritz, and L.R.Dawson, Appl.Phys.Lett.52,377-379(1988)。
【0004】
すなわちX線回折法により得られた臨界膜厚値は他のPL値等から得られた臨界膜厚値に比べて大きな値になり、正しい値が得られないことが指摘され、欠陥等の密度が小さい場合の初期的構造劣化の検出には不向きであることが報告されていた。また、「なぜX線回折法では検出感度がとれないのか?」という点に対しての更なる検討例も少なく、X線回折法の立場からの検出感度の向上の方法等はこれまで全く検討されてこなかった。
【0005】
上記におけるX線回折評価ではrocking curve 測定法を用いた評価が主であったのに対し、その後逆格子mapping測定などの方法が開発されたが、これらの新しく開発された手法においても、上記の「他の測定法に比べての構造劣化の検出感度」という問題点に関しては、目立った改善効果、詳細検討は見られなかった。
【0006】
このような中、最近本願発明者らによってこの検出感度問題を改善する新しいX線回折法を用いた評価解析法が提出された(K. Nakashima and K. Tateno, J. Appl. Crystallogr.37,14-23(2004)。この方法は2種類の測定条件で測定した回折プロファイルを基準ピークをそろえて重ねて表示し、回折強度差を比較することにより、検出感度よく構造劣化の有無およびその程度を判定する評価方法である。
【0007】
しかるにこの方法を適用できるためには、測定プロファイル中に解析対象ピーク以外にreferenceとなる基準ピークが観測できることが必要であった。しかるに、バルク結晶、または格子不整合度の大きいヘテロエピタキシャル成長薄膜結晶などでは、基準ピークとなるようなピークが解析対象ピークの近傍に観測できないような場合が頻繁に現れ、このような一般の場合には上記の手法は適用できなかった。
【0008】
【非特許文献1】I.J.Fritz, P.L.Gourley, and L.R.Dawson, Appl.Phys.Lett.51.1004-1006(1987)
【非特許文献2】P.L.Gourley, I.J.Fritz, and L.R.Dawson, Appl.Phys.Lett.52,377-379(1988)
【非特許文献3】K. Nakashima and K. Tateno, J. Appl. Crystallogr.37,14-23(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
歪系エピタキシャル層、歪超格子構造の作製において重要となる、臨界膜厚の評価、および臨界膜厚をこえた領域での格子緩和過程の評価などの構造劣化をX線回折法を用いて評価する際に従来問題となっていた、他のPL測定法などを用いた場合と比べて検出感度が悪い、という課題を解決し、X線回折法を用いた構造劣化を評価する上で、従来法と比較して検出感度が向上するような新しい評価解析手法を提供する。
【0010】
特に、従来提案されていた方法が適用できないような場合、すなわち、バルク結晶、または格子不整合度の大きいヘテロエピタキシャル成長薄膜結晶などで、基準ピークとなるようなピークが解析対象ピークの近傍に観測できないような場合にも適用できる新しい評価解析手法を提供する。
【0011】
なお、結晶構造の劣化としては、転位、欠陥、結晶方位の分布、結晶組成の乱れ等が考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の結晶の構造解析方法の構成は
試料に対してX線を照射したときに、前記試料にて回折した回折X線の強度をX線検出器により検出して前記試料の結晶の構造を解析する方法であって、
試料として解析対象となる対象試料を用い、この対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を、広開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
前記対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を、狭開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度との相対比を求め、この相対比を対象試料の回折X線強度比とする工程と、
試料として結晶の完全性が保証された参照試料を用い、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を、広開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を、狭開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度との相対比を求め、この相対比を参照試料の回折X線強度比とする工程と、
対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比との相対比を求め、この相対比を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする。
【0013】
また本発明の結晶の構造解析方法の構成は、
試料に対してX線を照射したときに、前記試料にて回折した回折X線の強度をX線検出器により検出して前記試料の結晶の構造を解析する方法であって、
試料として解析対象となる対象試料を用い、この対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度の中からピークとなる強度を、広開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
前記対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度の中からピークとなる強度を、狭開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での対象試料のX線強度を広開口角での対象試料のX線強度にて除算し、この除算値を対象試料の回折X線強度比とする工程と、
試料として結晶の完全性が保証された参照試料を用い、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度の中からピークとなる強度を、広開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度の中からピークとなる強度を、狭開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での参照試料のX線強度を広開口角での参照試料のX線強度にて除算し、この除算値を参照試料の回折X線強度比とする工程と、
対象試料の回折X線強度比を参照試料の回折X線強度比にて除算し、この除算値を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする。
【0014】
また本発明の結晶の構造解析方法の構成は、
試料に対してX線を照射したときに、前記試料にて回折した回折X線の強度をX線検出器により検出して前記試料の結晶の構造を解析する方法であって、
試料として解析対象となる対象試料を用い、この対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を積分した積分値を、広開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
前記対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を積分した積分値を、狭開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での対象試料のX線強度を広開口角での対象試料のX線強度にて除算し、この除算値を対象試料の回折X線強度比とする工程と、
試料として結晶の完全性が保証された参照試料を用い、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を積分した積分値を、広開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を積分した積分値を、狭開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での参照試料のX線強度を広開口角での参照試料のX線強度にて除算し、この除算値を参照試料の回折X線強度比とする工程と、
対象試料の回折X線強度比を参照試料の回折X線強度比にて除算し、この除算値を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする。
【0015】
また本発明の結晶の構造解析方法の構成は、
前記参照試料は、完全結晶基板である、Si基板結晶、またはGe基板結晶、またはGaAs基板結晶、またはInP基板結晶であることを特徴とする。
【0016】
また本発明の結晶の構造解析装置の構成は、
試料を保持する試料保持部と、前記試料保持部に保持された試料に対してX線を照射するX線源と、前記試料にて回折した回折X線の強度を検出するX線検出器と、前記試料保持部と前記X線検出器との間であって回折X線が進行する受光系に配置されたり前記受光系から外れた位置に配置されたりする開口絞り手段とを有するX線回折装置と、
演算部と、
記憶部とからなる結晶の構造解析装置であって、
前記試料保持部に解析対象となる対象試料を保持し、この対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を広開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を狭開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度を読み込み、狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度との相対比を求め、この相対比を対象試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記試料保持部に結晶の完全性が保証された参照試料を保持し、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を広開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を狭開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度を読み込み、狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度との相対比を求め、この相対比を参照試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比を読み込み、対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比との相対比を求め、この相対比を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする。
【0017】
また本発明の結晶の構造解析装置の構成は、
試料を保持する試料保持部と、前記試料保持部に保持された試料に対してX線を照射するX線源と、前記試料にて回折した回折X線の強度を検出するX線検出器と、前記試料保持部と前記X線検出器との間であって回折X線が進行する受光系に配置されたり前記受光系から外れた位置に配置されたりする開口絞り手段とを有するX線回折装置と、
演算部と、
記憶部とからなる結晶の構造解析装置であって、
前記試料保持部に解析対象となる対象試料を保持し、この対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度の中からピークとなる強度を広開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度の中からピークとなる強度を狭開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度を読み込み、狭開口角での対象試料のX線強度を広開口角での対象試料のX線強度にて除算し、この除算値を対象試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記試料保持部に結晶の完全性が保証された参照試料を保持し、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度の中からピークとなる強度を広開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度の中からピークとなる強度を狭開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度を読み込み、狭開口角での参照試料のX線強度を広開口角での参照試料のX線強度にて除算し、この除算値を参照試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比を読み込み、対象試料の回折X線強度比を参照試料の回折X線強度比にて除算し、この除算値を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする。
【0018】
また本発明の結晶の構造解析装置の構成は、
試料を保持する試料保持部と、前記試料保持部に保持された試料に対してX線を照射するX線源と、前記試料にて回折した回折X線の強度を検出するX線検出器と、前記試料保持部と前記X線検出器との間であって回折X線が進行する受光系に配置されたり前記受光系から外れた位置に配置されたりする開口絞り手段とを有するX線回折装置と、
演算部と、
記憶部とからなる結晶の構造解析装置であって、
前記試料保持部に解析対象となる対象試料を保持し、この対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を積分した積分値を広開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を積分した積分値を狭開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度を読み込み、狭開口角での対象試料のX線強度を広開口角での対象試料のX線強度にて除算し、この除算値を対象試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記試料保持部に結晶の完全性が保証された参照試料を保持し、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を積分した積分値を広開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を積分した積分値を狭開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度を読み込み、狭開口角での参照試料のX線強度を広開口角での参照試料のX線強度にて除算し、この除算値を参照試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比を読み込み、対象試料の回折X線強度比を参照試料の回折X線強度比にて除算し、この除算値を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする。
【0019】
また本発明の結晶の構造解析装置の構成は、
前記参照試料は、完全結晶基板である、Si基板結晶、またはGe基板結晶、またはGaAs基板結晶、またはInP基板結晶であることを特徴とする。
【0020】
[作用]
本発明においては、上記評価手段を用いることにより、解析対象ピークに関する評価解析と基準ピークを用いた解析および補正を分離、独立して行えるような評価解析手法を構成でき、これにより必ずしも基準ピークが解析対象ピークの近傍に観測されずとも、評価解析手法がうまく機能し、より一般の場合に検出感度よく構造劣化を検出、評価するという作用を生み出す。
特に、比較参照用試料測定時の反射指数を解析対象試料測定の反射指数と独立に自由に選べることを保証する解析方法にすることで、両者で反射指数が共通に選べないような、より一般の場合にも適用可能な解析方法に定式化できるという作用をもたらす。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、歪系エピタキシャル層、歪超格子構造の作製において重要となる、臨界膜厚の評価、および臨界膜厚をこえた領域での格子緩和過程の評価などの構造劣化をX線回折法を用いて評価する際に従来問題となっていた、他のPL測定法などを用いた場合と比べて検出感度が悪い、という課題を解決し、X線回折法を用いた構造劣化を評価する上で、従来法と比較して検出感度を向上させることが可能となった。特に、バルク結晶、または格子不整合度の大きいヘテロエピタキシャル成長薄膜結晶などにおいて頻繁に遭遇する、基準ピークとなるようなピークが解析対象ピークの近傍に観測できないような場合、すなわち、従来提案されていた方法では解析できないような場合にも構造劣化を検出感度よく評価解析することが可能となった。また、補正を施すことにより、構造劣化の無い場合を1.0とする普遍的比表示が可能となる点も本発明の効果である。
さらに、比較参照用試料測定時の反射指数を解析対象試料測定の反射指数と独立に自由に選べることを保証する解析方法にすることで、両者で反射指数が共通に選べないようなより一般の場合にも解析が適用可能となった。すなわち、本発明により、測定上の便宜を考えて反射指数を自由に選んで測定した実験データを用いて解析することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態では、任意のバルク結晶、または任意の基板上にエピタキシャル成長により作製された任意の材料系からなる単層および多層構造結晶を、X線回折により構造評価する場合を想定する。
この際、本発明の結晶の構造解析方法は、
(1)回折X線の受光系の開口角条件のみを変えた条件で、他の測定条件を同じに保ち、同一の反射指数(hkl)をもつ回折プロファイルを複数測定する工程と、
上記工程により得られた各測定プロファイル中の解析対象ピーク(あるいは一連のピーク群)ごとにピークトップ点での回折強度値を絶対測定し、この値をもとに各解析対象ピークごとに受光系開口角条件の異なる測定プロファイル間での回折強度値の相対比を算出する工程と、
上記工程により得られた回折強度値の比を受光系開口角条件の広い条件での回折強度値に対する受光系開口角条件の狭い条件での回折強度値の相対比の観点から整理し、この値の大小を評価することにより、各解析対象ピーク(あるいは一連のピーク群)に対応する解析対象層(あるいは解析対象多層構造結晶)の結晶的完全性、構造劣化の程度を判定することを特徴とする結晶の構造解析法であり、
かつ、
(2)解析対象となる試料とは別に、比較参照用試料として結晶の完全性の保証された試料を用意しておき、上記(1)中に述べた解析対象試料に対して適用した受光系の開口角条件のみを変えた条件での回折プロファイルの複数測定を比較参照用試料に対しても行う。この比較参照用試料に対する測定では、入射X線に関するすべての測定条件、受光系測定配置条件、スキャンスピード等測定条件をすべて(1)の解析対象試料の測定時に用いた条件に保ったまま比較参照用試料にも適用し、(1)と同様の手順で回折プロファイルを複数測定する。ただし、この測定の際、比較参照用試料測定に用いる反射指数hklは(1)の測定条件とは独立に自由に選択することを特徴とする。このようにして得られた回折プロファイル中の比較参照用試料ピークに対して(1)と同様の手順で受光系開口角条件の異なる測定プロファイル間での回折強度値の相対比を算出する工程と、
得られた比較参照用試料ピークに対する回折強度値の相対比を用いて、上記(1)の解析法において得られた解析対象ピークに対する回折強度値の相対比を除することにより、規格化された回折強度値の相対比を算出する工程と、
前工程で得られた規格化された回折強度値の相対比の大小を比較することにより、各解析対象ピーク(または一連のピーク群)に対応する解析対象層(あるいは解析対象多層構造結晶)の結晶学的完全性、構造劣化の程度を判定することを特徴とする結晶の構造解析法である。
【0023】
また本発明を実施するための最良の形態では、
(3)上記(2)の解析法において、特に
比較参照用試料として、Si基板結晶、Ge基板結晶、GaAs基板結晶、InP基板結晶等の完全結晶基板を用いることを特徴とする結晶の構造解析法である。
【0024】
次に、本発明の各実施例を説明する。
【実施例1】
【0025】
本発明の具体的な実施例1として、(0001)サファイア基板上にMOVPE成長法により作製したGaNエピタキシャル薄膜試料を本発明に適用して構造評価した例を以下に述べる。尚、サファイアとGaNは格子不整合度が約19%あり、格子不整合度の大きな材料系の典型例である。したがって、X線回折測定においてサファイア基板ピークはGaNエピタキシャル層ピークの近傍には観測されず、したがってGaNエピタキシャル層ピークの近傍に基準ピークとなりうるような回折ピークは観測されない場合の典型例となっている。
【0026】
GaNエピタキシャル薄膜試料としては、成長条件の異なる2つの対象試料(試料Aおよび試料B)を準備し、それぞれについて構造劣化の程度を評価した。
【0027】
本発明の実施例として、図1にGaN試料Aの0006反射X線回折測定プロファイルを示す。同図には2種類の受光系開口角条件(第1測定条件と第2測定条件)で測定した2つのプロファイルが表示してあり、各プロファイルにはGaN層に起因したピークのみが観測される。用いた受光系開口角条件は、1つはX線検出器の前に受光スリットを置かない広い受光系開口角条件(第1測定条件)、他の1つは、X線検出器の前に受光用アナライザ結晶を挿入した極端に狭い受光系開口角条件(第2測定条件)である。
X線回折測定の際における第1測定条件と第2測定条件は、受光系開口角条件は異なるが、他の測定条件は同一にしている。
【0028】
図1の表示において、縦軸は回折強度をcounts/secondを単位として表示しており、横軸は試料に照射するX線の入射角度を表示している。
「回折強度」とは、X線源から発生したX線を試料に照射したときに、試料の結晶格子によって回折されて射出された回折X線の強度を、X線検出器によって検出した強度(回折X線強度)である。図1の縦軸は、この回折強度(回折X線強度)を示している。
【0029】
また、X線回折法では、周知のように、X線源を静止した状態で、試料を徐々に回転させることにより試料に照射するX線の入射角度を変化させて、各入射角度における回折強度を検出している。この場合、例えば二軸回折計では、ゴニオメータを使用して、試料をθ°回転させたときに同期してX線検出器を2θ°回転させるようにしている。図1の横軸は、試料に照射するX線の入射角度の変化状態を示している。
なお、試料を回転させてX線の入射角度を変化させつつ、回折X線強度(回折強度)を検出することを、「スキャン」と称する。
更に、各入射角度における回折強度を辿った特性曲線を、「プロファイル」と称する。
また、試料から射出される回折X線は所定の放射角(立体角)をもって、X線検出器に向かって進行する。したがって、試料とX線検出器との間の経路(受光系)に、開口絞り手段(スリットやアナライザ結晶)を配置すると、開口絞り手段の開口角の範囲内にある回折X線のみがX線検出器に入射されることになる。
【0030】
図1に示す両プロファイルの測定においてX線源の条件、スキャンスピード、反射指数等、受光系開口角条件以外の他のすべての測定条件は同一に保っているため、図1の表示における2つのプロファイルの間の相対強度差は、受光系開口角条件の違いに起因して生じる回折強度差の絶対表示とみなせる点が重要である。
【0031】
この点に注意すると、図1より、極端に狭い受光系開口角条件で測定した場合のGaN層ピークの絶対回折強度は、広い受光系開口角条件で測定した場合の絶対回折強度に比べて著しく減少していることが分かる。この減少の程度の大小を評価解析することにより、解析対象層であるGaN層の結晶の完全性、構造劣化の程度を評価できる。具体的に2つのプロファイルの中のGaNピーク(具体的には入射角度が63°付近のときの)の回折強度比(=極端に狭い受光系開口角としたときの回折強度/広い受光系開口角としたときの回折強度)を図から求めると、約0.01という小さな値が得られ、構造劣化の程度が大きいことが結論できる。
【0032】
更に詳述すると、まず広い受光系開口角条件(第1測定条件)で対象試料AをX線回折測定して、プロファイルの中のGaNピーク(広開口角での対象試料の回折X線強度)を求める。
次に、極端に狭い受光系開口角条件(第2測定条件)で対象試料AをX線回折測定して、プロファイルの中のGaNピーク(狭開口角での対象試料の回折X線強度)を求める。
そして、「極端に狭い受光系開口角条件(第2測定条件)で対象試料AをX線回折測定したプロファイルの中のGaNピーク(狭開口角での対象試料の回折X線強度)」を「広い受光系開口角条件(第1測定条件)で対象試料AをX線回折測定したプロファイルの中のGaNピーク(広開口角での対象試料の回折X線強度)」で除算することにより、「対象試料Aの回折X線強度比」として、上述した約0.01という値が得られる。
【0033】
同様の測定を試料Bについて行った結果を図2に示す。用いた測定条件はすべて図1の測定で用いたものと同一に揃えておき、これにより試料間における構造劣化の程度の比較が容易になるようにした。図2より、入射角度が64.2°付近のときの試料Bに対する回折強度比、つまり対象試料Bの回折X線強度比(=極端に狭い受光系開口角としたときの回折強度/広い受光系開口角としたときの回折強度)は約0.06が得られる。
【0034】
更に詳述すると、まず広い受光系開口角条件(前述した第1測定条件)で対象試料BをX線回折測定して、プロファイルの中のGaNピーク(広開口角での対象試料の回折X線強度)を求める。
次に、極端に狭い受光系開口角条件(前述した第2測定条件)で対象試料BをX線測定して、プロファイルの中のGaNピーク(狭開口角での対象試料の回折X線強度)を求める。
そして、「極端に狭い受光系開口角条件(第2測定条件)で対象試料BをX線回折測定したプロファイルの中のGaNピーク(狭開口角での対象試料の回折X線強度)」を「広い受光系開口角条件(第1測定条件)で対象試料BをX線回折測定したプロファイルの中のGaNピーク(広開口角での対象試料の回折X線強度)」で除算することにより、「対象試料Bの回折X線強度比」として、上述した約0.06という値が得られる。
【0035】
ここで、広い受光系開口角条件と狭い受光系開口角条件について、X線回折装置を示す図3(a)〜(e)を用いて説明する。
【0036】
図3(a)において、10はX線源、11は試料保持部、12はX線検出器、13はスリットである。試料保持部11には、試料20が備えられる。
【0037】
X線源10から発生したX線は、試料保持部11に保持された試料20に照射される。そうすると、試料20の結晶格子の回折により回折X線が生じてこの回折X線が射出される。射出された回折X線はX線検出部12に入り回折X線の強度が検出される。このときスキャン動作により、試料20(試料保持部11)をθ°回転させたときに同期して検出器を2θ°回転させるようにしている。
【0038】
そして、試料20とX線検出部11との間の経路、つまり、回折X線が進行する受光系に、スリット13を配置したり、スリット13を配置しなかったりすることができる。「広い受光系開口角条件」はスリット13がない場合に相当し、「狭い受光系開口角条件」はスリット13がある場合に相当する。
【0039】
図3(b)に示すように、結晶性の高い試料20にX線を照射した場合、その結晶表面で回折したX線は散乱するものが少なく狭い放射角を有する。したがって、図3(c)に示すように、結晶とX線検出器20の間にスリット13を挿入した場合、回折したX線のほとんどがスリット13を透過してX線検出器12に到達するので測定される回折強度は高い。よって、スリット13を挿入する場合に検出される回折強度は、挿入しない場合のそれに比べて低下することはないので、それぞれの回折強度の比の値は高くなる。
【0040】
一方、図3(d)に示すように、結晶性の低い試料20にX線を照射した場合、その結晶表面で回折したX線は散乱するものが多く広い放射角を有する。したがって、結晶とX線検出器12の間にスリット13を挿入した場合、回折したX線の多くはスリット13を透過せずX線検出器12に到達できないので測定される回折強度は低い。よって、スリット13を挿入する場合に検出される回折強度は、挿入しない場合のそれに比べて低下するので、それぞれの回折強度の比の値は低くなる。
【0041】
実際の測定においては狭い受光系開口角条件は、図4(b)に示すように、アナライザ結晶14を用いて実現できる。一般にアナライザ結晶14にはSi結晶やGe結晶の(220)非対称面が用いられる。なお図4(a)は、アナライザ結晶14を受光系に介在させないようにして受光系開口角条件を広くした状態を示している。
【0042】
次に、比較参照用試料としてGaAs基板結晶を採用し、図1,図2で用いた測定条件と同一の測定条件を用いて測定評価した結果を図5に示す。この際、反射指数も図1,図2とは独立に004に選んだ。なお、比較参照用試料として採用したGaAs基板結晶は、結晶の完全性が保証された試料である。
【0043】
なお、反射指数とは、結晶のブラッグ条件を満足する格子面によるX線の反射を表す指数である。
なお、図1,図2,に示す測定評価結果を得るために用いた測定条件で用いた反射指数と、図5に示す測定評価結果を得るために用いた測定条件で用いた反射指数は、異ならせている。他の測定条件は同じにしている。
【0044】
つまり、ここでいう「測定条件とは」、試料に入射するX線の強度・波長、X線検出器の感度、開口絞り手段の開口角、各試料の反射指数、スキャンスピード等をいう。
【0045】
図5より2つの測定(広い受光系開口角条件における測定と、極端に狭い受光系開口角条件における測定)での回折強度比は約0.25であることが分かる。この値は反射指数を002、あるいは006に選んで評価しても指数に依存せず、ほぼ一定の値が得られることが実験的に確認できる。この実験事実から、比較参照用試料として完全結晶を選んだ場合には上記回折強度比は反射指数に依存せず、他の測定条件で決まる一定の値が得られることが実験的に保証できる。したがって図5の測定において図1,2とは独立に反射指数を選んで解析することが正当化される。
以上の結果を基に図5の004反射を用いた実験結果から、本実施例に採用した測定条件では、2つの異なる受光系開口角測定条件での回折強度比は完全結晶試料に対して(測定に用いる反射指数に依存せず)約0.25となる測定条件であったことが確認できた。
【0046】
更に詳述すると、まず広い受光系開口角条件(第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じにした第3測定条件)で参照試料をX線回折測定してプロファイルの中のGaAsピーク(広開口角での参照試料の回折X線強度)を求める。
次に、極端に狭い受光系開口角条件(第2測定条件に対して反射指数は第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じにした第4測定条件)で参照試料をX線回折測定してプロファイルの中のGaAsピーク(狭開口角での参照試料の回折X線強度)を求める。
そして、「極端に狭い受光系開口角条件(第3測定条件)で参照試料を測定したプロファイルの中のGaAsピーク(狭開口角での参照試料の回折X線強度)」を「広い受光系開口角条件(第4測定条件)で参照試料を測定したプロファイルの中のGaAsピーク(広開口角での参照試料の回折X線強度)」で除算することにより、「参照試料の回折X線強度比」として、上述した約0.25という値が得られる。
【0047】
なお比較参照用試料は完全結晶、つまり、結晶の完全性が保証された試料であり、ここでいう、「結晶の完全性が保証された」とは、結晶品質が一般に市販されている半導体結晶基板の結晶品質程度であることを示す。
【0048】
そこで、「参照試料の回折X線強度比(=0.25)」を用いて上述の解析対象層である試料AのGaNピークの回折強度比(「対象試料Aの回折X線強度比」=0.01)を除することにより、補正された回折強度比(規格化した回折X線強度比)を求めると、0.01/0.25=0.04の値を得る。この規格化した回折X線強度比の値が1.0であれば解析対象層が完全結晶であることを意味し、規格化した回折X線強度比の値が1.0よりも小さくなるに従い構造劣化の程度が大きくなることを示している。この意味で「補正された回折強度比(規格化した回折X線強度比)」は構造劣化の程度をより普遍的に表示する量になっていることが分かり、図1のみの解析に比べて利点を持つことが分かる。得られた0.04という値(規格化した回折X線強度比の値)から解析対象層である対象試料AのGaNピークは構造劣化の影響を顕著に含んでいることが明確になった。
【0049】
試料Bについても同様に補正された回折強度比(規格化した回折X線強度比)を求めると、0.06/0.25=0.24の値を得る。この値が1.0よりも小さいことから、試料Bについても構造劣化が存在することが簡便に結論できる。また、試料Aとの値の比較から、試料Bの構造劣化の程度は試料Aほど大きくないことが結論でき、試料Bは試料Aに比べて結晶性がよいことが簡便かつ普遍的立場から解析できた。
【0050】
以上のように本発明では、規格化した回折X線強度比を求めるようにしたため、構造劣化の有無、およびその程度を、従来に比べてより一般の場合に検出感度よく検出、評価できることが分かった。
【0051】
なお、結晶の完全性が保証された参照試料としては、Si基板結晶、Ge基板結晶、GaAs基板結晶、InP基板結晶等の完全結晶基板を用いることができる。
【実施例2】
【0052】
次に本発明の実施例2に係る、結晶の構造解析装置を、概略構成図である図6(a),図6(b)、及び、フロー図である図7(a)〜図7(c)を参照して説明する。
実施例2の、結晶の構造解析装置100は、実施例1の「結晶の構造解析方法」を実施する一つの装置である。なお、図6(a)は広い受光系開口角条件(第1測定条件及び第3測定条件)においてX線回折測定をする状態を示しており、図6(b)は極端に狭い受光系開口角条件(第2測定条件及び第4測定条件)においてX線回折測定をする状態を示している。
【0053】
図6(a)及び図6(b)に示すように、この結晶の構造解析装置100は、X線回折装置30と、演算部40と、記憶部50を有している。演算部40と記憶部50との間ではデータの送受ができるようになっている。
【0054】
X線回折装置30は、X線源31と、試料保持部32と、X線検出器33,34と、アナライザ結晶35を備えている。X線検出器33とX線検出器34の検出感度は同一になっている。試料保持部32には、対象試料21または参照試料22が保持される。
【0055】
X線回折測定の際には、X線源31から発生したX線が、試料保持部32に保持された試料21(または22)に照射される。そうすると、試料21(22)の結晶の回折により回折X線が生じて、この回折X線が射出される。
図6(a)に示す第1測定条件及び第3測定条件(広い開口角条件)のときには、回折X線はX線検出器33に入り回折X線の強度が検出される。検出された回折X線強度は、X線検出器33から演算部40に送られる。
また、図6(b)に示す第2測定条件及び第4測定条件(極端に狭い開口角条件)のときには、回折X線はアナライザ結晶35で回折・反射されてからX線検出器34に入り回折X線の強度が検出される。検出された回折X線強度は、X線検出器34から演算部40に送られる。
そして、第1,第3測定条件であっても、第2,第4測定条件であっても、スキャン動作が行われ、試料21(22)を保持した試料保持部32を徐々に回転することに伴い、この試料保持部32の回転角の2倍の角度でもって、検出器33,34及びアナライザ結晶35が徐々に回転するようになっている。
【0056】
なお、第1,第3測定条件(広い開口角条件)と第2,第4測定条件(極端に狭い開口角条件)とでは、検出器33,34及びアナライザ結晶35の配置状態が異なるが、この配置状態の変更は、手動制御によっても、自動制御によっても行うことができる。
【0057】
また、解析対象となる対象試料21を試料保持部32の表面側に保持して、X線回折測定を行った後に、参照試料22を試料保持部32の表面側に保持して、X線回折測定を行う。
この試料の交換の変形例としては、試料保持部32の表面側に対象試料21を保持し、試料保持部32の裏面側に対象試料22を保持し、対象試料21に対してX線回折測定をする際には対象試料21をX線源31側に向け、その後の参照試料22に対しX線回折測定をする際には、試料保持部32を180度回転させて、参照試料22をX線源31側に向けるように構成することもできる。
【0058】
次に図6(a),図6(b)及び図7(a)〜図7(c)を参照してX線回折測定動作を説明する。
【0059】
図6(a)に示すように、広い受光系開口角条件になる配置状態にして、解析対象となる対象試料21を、試料保持部32にセットする(ステップ1)。
【0060】
受光系にアナライザ結晶35をセットせずに広い受光系開口角条件とした状態において、対象試料21にX線を照射しつつスキャンをして、対象試料21から放射される回折X線の強度(回折X線強度)をX線検出器33で測定する。このときの測定条件を、「第1測定条件」とする(ステップ2)。
【0061】
演算部40では、「第1測定条件」の下で得られた回折X線強度を示す測定プロファイルの中から、ピークとなる部分の回折X線強度を求める。この求めた回折X線強度を、「広開口角での対象試料の回折X線強度」とする(ステップ3)。
【0062】
上記の「広開口角での対象試料の回折X線強度」を、記憶部50に記憶する(ステップ4)。
【0063】
図6(b)に示すように、アナライザ結晶35を受光系にセットして狭い受光系開口角条件とした状態において、対象試料21にX線を照射しつつスキャンをして、対象試料21から放射されて狭い開口角を透過してきた回折X線の強度(回折X線強度)をX線検出器34で測定する。このときの測定条件は、「第1測定条件」に対して受光系開口角が異なるのみで他の測定条件を保持したままの「第2測定条件」としている(ステップ5)。
【0064】
演算部40では、「第2測定条件」の下で得られた回折X線強度を示す測定プロファイルの中から、ピークとなる部分の回折X線強度を求める。この求めた回折X線強度を、「狭開口角での対象試料の回折X線強度」とする(ステップ6)。
【0065】
上記の「狭開口角での対象試料の回折X線強度」を、記憶部50に記憶する(ステップ7)。
【0066】
記憶部50に記憶されている、「広開口角での対象試料の回折X線強度」と「狭開口角での対象試料の回折X線強度」を演算部40に読み込む(ステップ8)。
【0067】
演算部40では、「狭開口角での対象試料の回折X線強度」を「広開口角での対象試料の回折X線強度」で除算して、「対象試料の回折X線強度比」を計算する(ステップ9)。
【0068】
上記の「対象試料の回折X線強度比」を、記憶部50に記憶する(ステップ10)。
【0069】
次に、図6(a)に示すように、広い受光系開口角条件になる配置状態にして、結晶の完全性が保証された参照試料22を、試料保持部32にセットする(ステップ11)。
【0070】
受光系にアナライザ結晶35をセットせずに広い受光系開口角条件とした状態において、参照試料22にX線を照射しつつスキャンをして、参照試料22から放射される回折X線の強度(回折X線強度)をX線検出器33で測定する。このときの測定条件(「第3測定条件」)は、上述した「第1測定条件」に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである(ステップ12)。
【0071】
演算部40では、「第3測定条件」の下で得られた回折X線強度を示す測定プロファイルの中から、ピークとなる部分の回折X線強度を求める。この求めた回折X線強度を、「広開口角での参照試料の回折X線強度」とする(ステップ13)。
【0072】
上記の「広開口角での参照試料の回折X線強度」を、記憶部50に記憶する(ステップ14)。
【0073】
図6(b)に示すように、アナライザ結晶35を受光系にセットして狭い受光系開口角条件とした状態において、参照試料22にX線を照射しつつスキャンをして、参照試料22から放射されて狭い開口角を透過してきた回折X線の強度(回折X線強度)をX線検出器34で測定する。このときの測定条件(「第4測定条件」)は、上述した「第2測定条件」に対して反射指数は「第3測定条件」で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである(ステップ15)。
【0074】
演算部40では、「第4測定条件」の下で得られた回折X線強度を示す測定プロファイルの中から、ピークとなる部分の回折X線強度を求める。この求めた回折X線強度を、「狭開口角での参照試料の回折X線強度」とする(ステップ16)。
【0075】
上記の「狭開口角での参照試料の回折X線強度」を、記憶部50に記憶する(ステップ17)。
【0076】
記憶部50に記憶されている、「広開口角での参照試料の回折X線強度」と「狭開口角での参照試料の回折X線強度」を演算部40に読み込む(ステップ18)。
【0077】
演算部40では、「狭開口角での参照試料の回折X線強度」を「広開口角での参照試料の回折X線強度」で除算して、「参照試料の回折X線強度比」を計算する(ステップ19)。
【0078】
上記の「参照試料の回折X線強度比」を、記憶部50に記憶する(ステップ20)。
【0079】
記憶部50に記憶されている「対象試料の回折X線強度比」と「参照試料の回折X線強度比」を演算部40に読み込む(ステップ21)。
【0080】
演算部40では、「対象試料の回折X線強度比」を「参照試料の回折X線強度比」で除算して、「規格化した回折X線強度比」を計算する(ステップ22)。
【0081】
「規格化した回折X線強度比」の大きさから、対象試料22の結晶学的完全性、構造劣化の程度を判定する(ステップ23)。
【実施例3】
【0082】
上記各実施例においては、プロファイルのピークの値を対象として解析しているが、プロファイルの積分値など、回折されたX線の強度を反映するものを対象としても同様の効果を得ることができる。
【0083】
そこで、実施例3では、図6(a),図6(b)に示す、結晶の構造解析装置100を用いると共に、回折X線の強度を反映するものとしてプロファイルの積分値を用いて、結晶の構造解析をする例を説明する。
構成は図6(a),図6(b)に示すものと同じであるので、図6(a),図6(b)及び図8(a)〜図8(c)を参照して、実施例3でのX線回折測定動作を説明する。
【0084】
図6(a)に示すように、広い受光系開口角条件になる配置状態にして、解析対象となる対象試料21を、試料保持部32にセットする(ステップ101)。
【0085】
受光系にアナライザ結晶35をセットせずに広い受光系開口角条件とした状態において、対象試料21にX線を照射しつつスキャンをして、対象試料21から放射される回折X線の強度(回折X線強度)をX線検出器33で測定する。このときの測定条件を、「第1測定条件」とする(ステップ102)。
【0086】
演算部40では、「第1測定条件」の下で得られた回折X線強度を示す測定プロファイルを積分して積分値を求める。この積分値を、「広開口角での対象試料の回折X線強度」とする(ステップ103)。
【0087】
上記の「広開口角での対象試料の回折X線強度」を、記憶部50に記憶する(ステップ104)。
【0088】
図6(b)に示すように、アナライザ結晶35を受光系にセットして狭い受光系開口角条件とした状態において、対象試料21にX線を照射しつつスキャンをして、対象試料21から放射されて狭い開口角を透過してきた回折X線の強度(回折X線強度)をX線検出器34で測定する。このときの測定条件は、「第1測定条件」に対して受光系開口角が異なるのみで他の測定条件を保持したままの「第2測定条件」としている(ステップ105)。
【0089】
演算部40では、「第2測定条件」の下で得られた回折X線強度を示す測定プロファイルを積分して積分値を求める。この積分値を、「狭開口角での対象試料の回折X線強度」とする(ステップ106)。
【0090】
上記の「狭開口角での対象試料の回折X線強度」を、記憶部50に記憶する(ステップ107)。
【0091】
記憶部50に記憶されている、「広開口角での対象試料の回折X線強度」と「狭開口角での対象試料の回折X線強度」を演算部40に読み込む(ステップ108)。
【0092】
演算部40では、「狭開口角での対象試料の回折X線強度」を「広開口角での対象試料の回折X線強度」で除算して、「対象試料の回折X線強度比」を計算する(ステップ109)。
【0093】
上記の「対象試料の回折X線強度比」を、記憶部50に記憶する(ステップ110)。
【0094】
次に、図6(a)に示すように、広い受光系開口角条件になる配置状態にして、結晶の完全性が保証された参照試料22を、試料保持部32にセットする(ステップ111)。
【0095】
受光系にアナライザ結晶35をセットせずに広い受光系開口角条件とした状態において、参照試料22にX線を照射しつつスキャンをして、参照試料22から放射される回折X線の強度(回折X線強度)をX線検出器33で測定する。このときの測定条件(「第3測定条件」)は、上述した「第1測定条件」に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである(ステップ112)。
【0096】
演算部40では、「第3測定条件」の下で得られた回折X線強度を示す測定プロファイルを積分して積分値を求める。この積分値を、「広開口角での参照試料の回折X線強度」とする(ステップ113)。
【0097】
上記の「広開口角での参照試料の回折X線強度」を、記憶部50に記憶する(ステップ114)。
【0098】
図6(b)に示すように、アナライザ結晶35を受光系にセットして狭い受光系開口角条件とした状態において、参照試料22にX線を照射しつつスキャンをして、参照試料22から放射されて狭い開口角を透過してきた回折X線の強度(回折X線強度)をX線検出器34で測定する。このときの測定条件(「第4測定条件」)は、上述した「第2測定条件」に対して反射指数は「第3測定条件」で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである(ステップ115)。
【0099】
演算部40では、「第4測定条件」の下で得られた回折X線強度を示す測定プロファイルを積分して積分値を求める。この積分値を、「狭開口角での参照試料の回折X線強度」とする(ステップ116)。
【0100】
上記の「狭開口角での参照試料の回折X線強度」を、記憶部50に記憶する(ステップ117)。
【0101】
記憶部50に記憶されている、「広開口角での参照試料の回折X線強度」と「狭開口角での参照試料の回折X線強度」を演算部40に読み込む(ステップ118)。
【0102】
演算部40では、「狭開口角での参照試料の回折X線強度」を「広開口角での参照試料の回折X線強度」で除算して、「参照試料の回折X線強度比」を計算する(ステップ119)。
【0103】
上記の「参照試料の回折X線強度比」を、記憶部50に記憶する(ステップ120)。
【0104】
記憶部50に記憶されている「対象試料の回折X線強度比」と「参照試料の回折X線強度比」を演算部40に読み込む(ステップ121)。
【0105】
演算部40では、「対象試料の回折X線強度比」を「参照試料の回折X線強度比」で除算して、「規格化した回折X線強度比」を計算する(ステップ122)。
【0106】
「規格化した回折X線強度比」の大きさから、対象試料22の結晶学的完全性、構造劣化の程度を判定する(ステップ123)。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】2種類の受光系開口角条件で測定したGaN試料(試料A)の0006反射X線回折測定プロファイルを示す特性図。
【図2】2種類の受光系開口角条件で測定したGaN試料(試料B)の0006反射X線回折測定プロファイルを示す特性図。
【図3】X線解析装置を示す概略構成図。
【図4】X線解析装置を示す概略構成図。
【図5】比較参照用試料GaAs基板結晶ピークに対して2種類の受光系開口角条件で測定した006反射X線回折測定プロファイルを示す特性図。
【図6(a)】実施例2に係る、結晶の構造解析装置を示す構成図。
【図6(b)】実施例2に係る、結晶の構造解析装置を示す構成図。
【図7(a)】実施例2の動作状態を示すフロー図。
【図7(b)】実施例2の動作状態を示すフロー図。
【図7(c)】実施例2の動作状態を示すフロー図。
【図8(a)】実施例3の動作状態を示すフロー図。
【図8(b)】実施例3の動作状態を示すフロー図。
【図8(c)】実施例3の動作状態を示すフロー図。
【符号の説明】
【0108】
10 X線源
11 試料保持部
12 X線検出器
13 スリット
14 アナライザ結晶
20 試料
100 結晶の構造解析装置
30 X線回折装置
31 エクス線源
32 試料保持部
33,34 X線検出器
35 アナライザ結晶
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対してX線を照射したときに、前記試料にて回折した回折X線の強度をX線検出器により検出して前記試料の結晶の構造を解析する方法であって、
試料として解析対象となる対象試料を用い、この対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を、広開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
前記対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を、狭開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度との相対比を求め、この相対比を対象試料の回折X線強度比とする工程と、
試料として結晶の完全性が保証された参照試料を用い、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を、広開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を、狭開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度との相対比を求め、この相対比を参照試料の回折X線強度比とする工程と、
対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比との相対比を求め、この相対比を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする結晶の構造解析方法。
【請求項2】
試料に対してX線を照射したときに、前記試料にて回折した回折X線の強度をX線検出器により検出して前記試料の結晶の構造を解析する方法であって、
試料として解析対象となる対象試料を用い、この対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度の中からピークとなる強度を、広開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
前記対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度の中からピークとなる強度を、狭開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での対象試料のX線強度を広開口角での対象試料のX線強度にて除算し、この除算値を対象試料の回折X線強度比とする工程と、
試料として結晶の完全性が保証された参照試料を用い、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度の中からピークとなる強度を、広開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度の中からピークとなる強度を、狭開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での参照試料のX線強度を広開口角での参照試料のX線強度にて除算し、この除算値を参照試料の回折X線強度比とする工程と、
対象試料の回折X線強度比を参照試料の回折X線強度比にて除算し、この除算値を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする結晶の構造解析方法。
【請求項3】
試料に対してX線を照射したときに、前記試料にて回折した回折X線の強度をX線検出器により検出して前記試料の結晶の構造を解析する方法であって、
試料として解析対象となる対象試料を用い、この対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を積分した積分値を、広開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
前記対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を積分した積分値を、狭開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での対象試料のX線強度を広開口角での対象試料のX線強度にて除算し、この除算値を対象試料の回折X線強度比とする工程と、
試料として結晶の完全性が保証された参照試料を用い、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を積分した積分値を、広開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を積分した積分値を、狭開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での参照試料のX線強度を広開口角での参照試料のX線強度にて除算し、この除算値を参照試料の回折X線強度比とする工程と、
対象試料の回折X線強度比を参照試料の回折X線強度比にて除算し、この除算値を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする結晶の構造解析方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項において、
前記参照試料は、完全結晶基板である、Si基板結晶、またはGe基板結晶、またはGaAs基板結晶、またはInP基板結晶であることを特徴とする結晶の構造解析方法。
【請求項5】
試料を保持する試料保持部と、前記試料保持部に保持された試料に対してX線を照射するX線源と、前記試料にて回折した回折X線の強度を検出するX線検出器と、前記試料保持部と前記X線検出器との間であって回折X線が進行する受光系に配置されたり前記受光系から外れた位置に配置されたりする開口絞り手段とを有するX線回折装置と、
演算部と、
記憶部とからなる結晶の構造解析装置であって、
前記試料保持部に解析対象となる対象試料を保持し、この対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を広開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を狭開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度を読み込み、狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度との相対比を求め、この相対比を対象試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記試料保持部に結晶の完全性が保証された参照試料を保持し、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を広開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を狭開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度を読み込み、狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度との相対比を求め、この相対比を参照試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比を読み込み、対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比との相対比を求め、この相対比を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする結晶の構造解析装置。
【請求項6】
試料を保持する試料保持部と、前記試料保持部に保持された試料に対してX線を照射するX線源と、前記試料にて回折した回折X線の強度を検出するX線検出器と、前記試料保持部と前記X線検出器との間であって回折X線が進行する受光系に配置されたり前記受光系から外れた位置に配置されたりする開口絞り手段とを有するX線回折装置と、
演算部と、
記憶部とからなる結晶の構造解析装置であって、
前記試料保持部に解析対象となる対象試料を保持し、この対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度の中からピークとなる強度を広開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度の中からピークとなる強度を狭開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度を読み込み、狭開口角での対象試料のX線強度を広開口角での対象試料のX線強度にて除算し、この除算値を対象試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記試料保持部に結晶の完全性が保証された参照試料を保持し、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度の中からピークとなる強度を広開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度の中からピークとなる強度を狭開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度を読み込み、狭開口角での参照試料のX線強度を広開口角での参照試料のX線強度にて除算し、この除算値を参照試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比を読み込み、対象試料の回折X線強度比を参照試料の回折X線強度比にて除算し、この除算値を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする結晶の構造解析装置。
【請求項7】
試料を保持する試料保持部と、前記試料保持部に保持された試料に対してX線を照射するX線源と、前記試料にて回折した回折X線の強度を検出するX線検出器と、前記試料保持部と前記X線検出器との間であって回折X線が進行する受光系に配置されたり前記受光系から外れた位置に配置されたりする開口絞り手段とを有するX線回折装置と、
演算部と、
記憶部とからなる結晶の構造解析装置であって、
前記試料保持部に解析対象となる対象試料を保持し、この対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を積分した積分値を広開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を積分した積分値を狭開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度を読み込み、狭開口角での対象試料のX線強度を広開口角での対象試料のX線強度にて除算し、この除算値を対象試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記試料保持部に結晶の完全性が保証された参照試料を保持し、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を積分した積分値を広開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を積分した積分値を狭開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度を読み込み、狭開口角での参照試料のX線強度を広開口角での参照試料のX線強度にて除算し、この除算値を参照試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比を読み込み、対象試料の回折X線強度比を参照試料の回折X線強度比にて除算し、この除算値を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする結晶の構造解析装置。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7の何れか一項において、
前記参照試料は、完全結晶基板である、Si基板結晶、またはGe基板結晶、またはGaAs基板結晶、またはInP基板結晶であることを特徴とする結晶の構造解析装置。
【請求項1】
試料に対してX線を照射したときに、前記試料にて回折した回折X線の強度をX線検出器により検出して前記試料の結晶の構造を解析する方法であって、
試料として解析対象となる対象試料を用い、この対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を、広開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
前記対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を、狭開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度との相対比を求め、この相対比を対象試料の回折X線強度比とする工程と、
試料として結晶の完全性が保証された参照試料を用い、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を、広開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を、狭開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度との相対比を求め、この相対比を参照試料の回折X線強度比とする工程と、
対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比との相対比を求め、この相対比を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする結晶の構造解析方法。
【請求項2】
試料に対してX線を照射したときに、前記試料にて回折した回折X線の強度をX線検出器により検出して前記試料の結晶の構造を解析する方法であって、
試料として解析対象となる対象試料を用い、この対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度の中からピークとなる強度を、広開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
前記対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度の中からピークとなる強度を、狭開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での対象試料のX線強度を広開口角での対象試料のX線強度にて除算し、この除算値を対象試料の回折X線強度比とする工程と、
試料として結晶の完全性が保証された参照試料を用い、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度の中からピークとなる強度を、広開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度の中からピークとなる強度を、狭開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での参照試料のX線強度を広開口角での参照試料のX線強度にて除算し、この除算値を参照試料の回折X線強度比とする工程と、
対象試料の回折X線強度比を参照試料の回折X線強度比にて除算し、この除算値を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする結晶の構造解析方法。
【請求項3】
試料に対してX線を照射したときに、前記試料にて回折した回折X線の強度をX線検出器により検出して前記試料の結晶の構造を解析する方法であって、
試料として解析対象となる対象試料を用い、この対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を積分した積分値を、広開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
前記対象試料と前記X線検出器との間に開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を積分した積分値を、狭開口角での対象試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での対象試料のX線強度を広開口角での対象試料のX線強度にて除算し、この除算値を対象試料の回折X線強度比とする工程と、
試料として結晶の完全性が保証された参照試料を用い、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を積分した積分値を、広開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、この検出した強度を積分した積分値を、狭開口角での参照試料の回折X線強度とする工程と、
狭開口角での参照試料のX線強度を広開口角での参照試料のX線強度にて除算し、この除算値を参照試料の回折X線強度比とする工程と、
対象試料の回折X線強度比を参照試料の回折X線強度比にて除算し、この除算値を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする結晶の構造解析方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項において、
前記参照試料は、完全結晶基板である、Si基板結晶、またはGe基板結晶、またはGaAs基板結晶、またはInP基板結晶であることを特徴とする結晶の構造解析方法。
【請求項5】
試料を保持する試料保持部と、前記試料保持部に保持された試料に対してX線を照射するX線源と、前記試料にて回折した回折X線の強度を検出するX線検出器と、前記試料保持部と前記X線検出器との間であって回折X線が進行する受光系に配置されたり前記受光系から外れた位置に配置されたりする開口絞り手段とを有するX線回折装置と、
演算部と、
記憶部とからなる結晶の構造解析装置であって、
前記試料保持部に解析対象となる対象試料を保持し、この対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を広開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を狭開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度を読み込み、狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度との相対比を求め、この相対比を対象試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記試料保持部に結晶の完全性が保証された参照試料を保持し、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を広開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を狭開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度を読み込み、狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度との相対比を求め、この相対比を参照試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比を読み込み、対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比との相対比を求め、この相対比を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする結晶の構造解析装置。
【請求項6】
試料を保持する試料保持部と、前記試料保持部に保持された試料に対してX線を照射するX線源と、前記試料にて回折した回折X線の強度を検出するX線検出器と、前記試料保持部と前記X線検出器との間であって回折X線が進行する受光系に配置されたり前記受光系から外れた位置に配置されたりする開口絞り手段とを有するX線回折装置と、
演算部と、
記憶部とからなる結晶の構造解析装置であって、
前記試料保持部に解析対象となる対象試料を保持し、この対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度の中からピークとなる強度を広開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度の中からピークとなる強度を狭開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度を読み込み、狭開口角での対象試料のX線強度を広開口角での対象試料のX線強度にて除算し、この除算値を対象試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記試料保持部に結晶の完全性が保証された参照試料を保持し、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度の中からピークとなる強度を広開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度の中からピークとなる強度を狭開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度を読み込み、狭開口角での参照試料のX線強度を広開口角での参照試料のX線強度にて除算し、この除算値を参照試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比を読み込み、対象試料の回折X線強度比を参照試料の回折X線強度比にて除算し、この除算値を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする結晶の構造解析装置。
【請求項7】
試料を保持する試料保持部と、前記試料保持部に保持された試料に対してX線を照射するX線源と、前記試料にて回折した回折X線の強度を検出するX線検出器と、前記試料保持部と前記X線検出器との間であって回折X線が進行する受光系に配置されたり前記受光系から外れた位置に配置されたりする開口絞り手段とを有するX線回折装置と、
演算部と、
記憶部とからなる結晶の構造解析装置であって、
前記試料保持部に解析対象となる対象試料を保持し、この対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置しないようにした第1測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を積分した積分値を広開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記対象試料と前記X線検出器との間の前記受光系に前記開口絞り手段を配置するが他の測定条件は第1測定条件と同じにした第2測定条件にて、入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記対象試料にX線を照射し、前記対象試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を積分した積分値を狭開口角での対象試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での対象試料のX線強度と広開口角での対象試料のX線強度を読み込み、狭開口角での対象試料のX線強度を広開口角での対象試料のX線強度にて除算し、この除算値を対象試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記試料保持部に結晶の完全性が保証された参照試料を保持し、前記第1測定条件に対して反射指数は独立に選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第3測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折した回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を積分した積分値を広開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記第2測定条件に対して反射指数は前記第3測定条件で選択した反射指数とするが他の測定条件は同じである第4測定条件にて入射角度を徐々に変化させつつ前記X線源から前記参照試料にX線を照射し、前記参照試料にて回折して前記開口絞り手段を通過してきた回折X線の強度を前記X線検出器により検出し、前記演算部はこの検出した強度を積分した積分値を狭開口角での参照試料の回折X線強度として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から狭開口角での参照試料のX線強度と広開口角での参照試料のX線強度を読み込み、狭開口角での参照試料のX線強度を広開口角での参照試料のX線強度にて除算し、この除算値を参照試料の回折X線強度比として前記記憶部に記憶し、
前記演算部は、前記記憶部から対象試料の回折X線強度比と参照試料の回折X線強度比を読み込み、対象試料の回折X線強度比を参照試料の回折X線強度比にて除算し、この除算値を規格化した回折X線強度比とし、この規格化した回折X線強度比の値から対象試料の結晶構造状態を判定することを特徴とする結晶の構造解析装置。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7の何れか一項において、
前記参照試料は、完全結晶基板である、Si基板結晶、またはGe基板結晶、またはGaAs基板結晶、またはInP基板結晶であることを特徴とする結晶の構造解析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図8(c)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図8(c)】
【公開番号】特開2008−197025(P2008−197025A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34289(P2007−34289)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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