説明

結晶化ガラス

【課題】面内磁気記録方式および垂直磁気記録方式の何れにおいても、高密度記録のためのランプロード方式にも十分対応し得る良好な表面特性を兼ね備え、高速回転化、衝撃に耐え得る高強度を有し、各ドライブ部材に合致する熱膨張特性や耐熱性をも兼ね備えた、溶融温度が低く生産性に優れ、かつ、素材からのアルカリ溶出量の低減、すなわち化学的耐久性に優れた情報記録媒体用ディスク基板用等の結晶化ガラスを提供する。
【解決手段】酸化物基準において、SiO成分、LiO成分を含有し、質量%で、SrO成分およびBaO成分から選ばれるいずれか1種以上の合計量が3.5%を超え15%以下であり、結晶相として二ケイ酸リチウム、モノケイ酸リチウム、α−石英、α−石英固溶体、β−石英固溶体の中から選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする結晶化ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化ガラスに関し、特に情報磁気記録媒体基板用結晶化ガラスに関する。
特に本発明は、各種情報磁気記録装置に用いられる磁気記録媒体用基板の中でも、特に垂直磁気記録媒体やパターンドメディア用媒体、ディスクリートトラック用媒体等において、記録媒体の磁気特性低下抑制やアルカリコロージョンによるディフェクト低減のためにアルカリ金属含有量を低減させ、さらに量産レベルでのプレス成形に対応しうる低粘度特性、磁気ヘッドの低浮上化に対応可能な極めて平滑な基板表面を有し、高速回転に対応した高ヤング率と低比重特性を備え、優れた機械的特性も兼ね揃えた結晶化ガラスを提供するものである。
【0002】
尚、本発明において「情報記録媒体」とは、パーソナルコンピュータのハードディスクとして使用される、固定型ハードディスク、リムーバル型ハードディスク、もしくはカード型ハードディスク、デジタルビデオカメラ、デジタルカメラ、もしくはオーディオ用ハードディスク、カーナビ用ハードディスク、携帯電話用ハードディスクまたは各種電子デバイス用ハードディスクにおいて使用可能な情報磁気記録媒体を意味する。
【背景技術】
【0003】
近年、パーソナルコンピュータのマルチメディア化への対応のため、また、デジタルビデオカメラ・デジタルカメラで動画や音声等の大きなデータが扱われるようになり、大容量の情報磁気記録装置が必要となっている。その結果、情報磁気記録媒体は面記録密度を大きくするために、ビットおよびトラック密度を増加させ、ビットセルのサイズを縮小化する傾向にある。そのため、磁気ヘッドはディスク表面に従来よりも近接して作動しなければならなくなる。
【0004】
さらに記録密度が100Gb/inを超えると、このような小さい磁区では熱的に不安定になるため、100Gb/inを越える高記録密度化の要求に対して面内記録方式は物理的限界に到達している。
【0005】
これに対応するべく、垂直磁気記録方式の採用、量産化が進められている。この垂直磁気記録方式は磁化容易軸を垂直方向とするため、ビットサイズを極めて小さくすることができ、また、所望の媒体膜厚(面内記録方式の5〜10倍)を有することにより反磁界の低減や形状磁気異方性による効果も望むことができるため、従来の面内方向の磁気記録方式の高密度化において生じる記録エネルギーの減少や熱的不安定という問題を解決でき、面内磁気記録方式よりも格段の記録密度向上を実現できる。この様なことから、垂直磁気記録方式では実用レベルで100Gb/in以上の記録密度を達成することが量産レベルでは既に可能となっており、300Gb/inを越える記録密度に関する研究も既に行われている。
【0006】
この垂直磁気記録方式では、媒体面に対して垂直方向に磁化を行うため、従来の面内方向に磁化容易軸を有する媒体とは異なり、垂直方向に磁化容易軸を有する媒体が用いられる。垂直磁気記録方式の記録層として研究および実用化がなされているのは、バリウムフェライト膜、Co−γFeやCo系合金、FePt等のFe系合金、Ni系合金等の各種合金膜が挙げられる。
【0007】
ところが、これらの磁気記録媒体は、磁性体結晶粒子の微細化と垂直方向への生成のためにその成膜温度を高温化する必要がある。さらに最近の研究によれば、磁気特性向上のために高温(500〜900℃程度)でアニーリングを行う場合もある。
【0008】
これに対応すべく、基板にはアニーリング処理前後で材料形状が変化しにくい、耐熱性に優れた基板が求められている。また、高密度化に伴い磁気ヘッドの低浮上化を可能とするため、極めてスムーズな表面平滑度が必要とされている。
【0009】
その上、磁気記録媒体を長期間にわたり継続使用可能とするためには、基板からのアルカリ溶出を原因とする、(a)記憶媒体の磁気特性低下(アルカリ成分が記憶媒体中に拡散し、媒体の磁気特性を低下させる)、(b)基板表面へのディフェクトの付着(溶出したアルカリ成分が記録媒体表面にまで拡散しこれが化合物となり、異物として表面に生成する)、等の基本的な問題をクリアしていなければならない。
【0010】
前記の現象について更に詳しく述べる。まず、アルカリ溶出現象についてであるが、結晶相の構成成分としてアルカリ成分を必要とする結晶化ガラスを製造する場合、原ガラスのアルカリ成分の濃度は、結晶相に必要とされる化学量論的な量よりも多く必要であり、結晶化後は、ガラスマトリックス相に消費されなかったこれらアルカリ成分が残留している。これが、(i)成膜の際に記録媒体に熱拡散し、記録媒体の成分と化合物を生成し、記録媒体の磁気特性を低下させてしまったり、(ii)記録媒体表面へ経時的に拡散し、表面で水分や炭酸ガスと化合して水酸化物や炭酸化物を生成し、この化合物が表面の異物となって、表面欠陥や記録飛びの原因となる。
【0011】
以上のように、記録密度が飛躍的に向上している昨今では、前記問題点が記録密度向上の妨げの要因のひとつとなっており、したがって、従来にも増して、よりアルカリ溶出の少ない基板、とりわけ、アルカリコロージョン発生の主原因となるイオン半径の小さなリチウムイオンの含有量が少ない基板が強く求められている。
【0012】
情報記録媒体用基板用途として、いくつかの結晶化ガラスが知られている。例えば、特許文献1記載のSiO−LiO−P系結晶化ガラスは、主結晶相として二珪酸リチウム(LiO・2SiO)およびα−石英を有しており、また、情報磁気記録媒体として優れた物理的特性を示す材料であるが、アルカリ成分が比較的多いため、成膜済の基板の端面から析出するリチウムイオンに起因する磁性膜へのダメージ発生の問題を看過できない。また、基板表面粗さを低減(<3Å)することができず、高密度記録化に対応できない。
【0013】
特許文献2のLiO−Al−SiO系の結晶化ガラスは、主結晶相として二珪酸リチウム(LiO・2SiO)を有しており、LiOの含有量が4質量%〜8質量%と少なく、情報磁気記録媒体として優れた物理的特性を示す材料であるが、リチウムイオンの析出を少なくするために、LiO成分の含有量を単に少なくしているため、原ガラス溶融時の粘度が高くなってしまい、プレス成形に適さないものである。
【0014】
特許文献3のLiO−Al−SiO系の結晶化ガラスは、主結晶相として二珪酸リチウム(LiO・2SiO)およびα−石英、α−石英固溶体、α−クリストバライト、α−クリストバライト固溶体の中から選ばれる少なくとも1つ以上を含有している光フィルター用結晶化ガラスであるが、原ガラス溶融時の粘度が高く、薄板にプレス成形することが困難なため、情報記録媒体用途には適さないものである。
【特許文献1】特開2000−302481号公報
【特許文献2】特開2000−184624号公報
【特許文献3】特開2001−48584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、アルカリ成分の溶出による記録媒体の磁気特性低下の抑制やディフェクト低減のためにアルカリ成分含有量を低減しながらも、垂直磁気記録方式にも十分対応し得る良好な表面特性を兼ね備え、高速回転化や落下衝撃に耐え得る高強度を有し、各ドライブ部材に合致する熱膨張特性や化学的耐久性をも兼ね備えた、溶融温度が低く、プレス成形等に適した生産性の高い情報記録媒体用ディスク基板用等の結晶化ガラスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意試験研究を重ねた結果、酸化物基準において、SiO成分、LiO成分を含有し、さらにSrO成分およびBaO成分から選ばれるいずれか1種以上を含有し、質量%で、SrO成分およびBaO成分から選ばれるいずれか1種以上の合計含有量が3.5%を超え15%以下であり、結晶相として二ケイ酸リチウム、モノケイ酸リチウム、α−石英、α−石英固溶体、β−石英固溶体の中から選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする結晶化ガラスは、溶融温度およびガラスの粘度が低く、情報記録媒体用途に供する場合においてプレス成形等に適しているため生産性が高く、更に機械的特性にも優れたものであることを見いだした。加えて、磁気ヘッドの低浮上化に対応可能な極めて平滑な基板表面を有し、高速回転に対応した高ヤング率と低比重特性も兼ね揃えていた。
【0017】
より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0018】
(構成1)
酸化物基準において、
SiO成分、LiO成分を含有し、さらに質量%で、SrO成分およびBaO成分から選ばれるいずれか1種以上の合計含有量が3.5%を超え15%以下であり、
結晶相として二ケイ酸リチウム、モノケイ酸リチウム、α−石英、α−石英固溶体、β−石英固溶体の中から選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする結晶化ガラス。
(構成2)
酸化物基準において、LiO成分、NaO成分、KO成分の1種以上の合計量が5%〜14%である構成1に記載の結晶化ガラス。
(構成3)
酸化物基準の質量%でLiO成分の含有量が5%〜10%である構成1または2に記載の結晶化ガラス。
(構成4)
30℃に保温された純水中に3時間浸漬した際のアルカリ成分の溶出量が0.016[μg/cm]以下であることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載の結晶化ガラス。
(構成5)
25℃〜100℃の温度範囲における平均線膨張係数が50〜120[10−7−1]であることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載の結晶化ガラス。
(構成6)
前記結晶相の平均粒子径が100nm以下である構成1から5のいずれかに記載の結晶化ガラス。
(構成7)
ヤング率が85GPa以上であることを特徴とする、構成1から6のいずれかに記載の結晶化ガラス。
(構成8)
前記結晶化ガラスの組成は、酸化物基準の質量%で
SiO:60〜78%、および
LiO:5〜10%、および
:1.5〜3.0%、および
Al:4〜10%
の各成分を含有する構成1から7のいずれかに記載の結晶化ガラス。
(構成9)
前記結晶化ガラスの組成は、酸化物基準の質量%で
BaO:0〜15%以下、および/または
SrO:0〜15%以下、および/または
MgO:0〜2%、および/または
CaO:0〜2%、および/または
ZnO:0〜3%、および/または
O:0〜3%、および/または
NaO:0〜3%,および/または
ZrO:1〜10%、および/または
Gd成分、La成分、Y成分、Ga成分のうち1種以上の合量:0〜15%、および/または
Sb成分:0〜2%
の各成分を含有する構成8に記載の結晶化ガラス。
(構成10)
前記結晶化ガラスの組成は、酸化物基準の質量%で
:0〜5%、および/または
TiO:0〜5%
の各成分を含有する構成9に記載の結晶化ガラス。
(構成11)
1400℃に加熱した時の溶融ガラスの粘度η[dPa・s]の対数logηが2.4以下であることを特徴とする構成1から10のいずれかに記載の結晶化ガラス。
(構成12)
構成1から11のいずれかに記載の結晶化ガラスを用いた情報記録媒体用基板。
(構成13)
構成12に記載の基板の表面に圧縮応力層を設けた情報記録媒体用基板。
(構成14)
前記圧縮応力層は表面層に存在するアルカリ成分よりもイオン半径の大きなアルカリ成分で置換することにより形成されてなる構成13に記載の情報記録媒体用基板。
(構成15)
前記圧縮応力層は基板の加熱、その後急冷によって形成されたことを特徴とする構成13または14に記載の情報記録媒体用基板。
(構成16)
表面粗度Ra(算術平均粗さ)が2Å以下であることを特徴とする構成12から15のいずれかに記載の情報記録媒体用基板。
(構成17)
構成12から16に記載の情報記録媒体用基板を用いた情報記録媒体。
【発明の効果】
【0019】
本発明の結晶化ガラスは、アルカリ成分の溶出量が少なく、溶融温度およびガラスの粘度が低く、特に情報記録媒体用途に供する場合においてプレス成形等に適しているので、生産性が向上し、生産コストの低減に寄与することができる。また本発明の結晶化ガラスから得られる基板は、ヤング率、リング曲げ強度などの機械的特性に優れ、研磨後の表面粗度に優れ、特に情報記録媒体に好適である。加えて、今後の高記録密度化を実現する垂直磁化膜や他の高温製膜が必要な媒体に好適な特性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明について、具体的な実施態様について説明する。
本発明の結晶化ガラスは、二ケイ酸リチウム、モノケイ酸リチウム、α−石英、α−石英固溶体、β−石英固溶体の中から選ばれる少なくとも1種以上を主結晶相として含有する。これらの結晶相を含有することにより優れた耐熱性、機械的強度、高速回転化や落下衝撃に耐え得る高強度を有し、各ドライブ部材に合致する熱膨張特性や化学的耐久性を実現することができる。
とりわけ、二ケイ酸リチウムはヤング率やビッカーズ硬度等の機械的強度を強める効果があるため、必須で含有することが好ましい。
【0021】
ここで固溶体とは、α−石英(α−SiO)、β−石英(β−SiO)、それぞれの結晶において、一部が結晶を構成する元素以外の元素に置換されていたり、結晶間に原子が侵入しているものを言う。特に、β−石英固溶体は、化学式にてLiAlSi1−X(0<X<1)と表し、これより更に他の元素が置換または侵入されているものも含めたものの総称である。
【0022】
次に本発明の結晶化ガラスを構成する各組成成分について述べる。なお、各成分の含有量は酸化物基準の質量%で示す。ここで、「酸化物基準」とは、本発明の結晶化ガラスの構成成分の原料として使用される酸化物、硝酸塩等が溶融時にすべて分解され酸化物へ変化すると仮定して、結晶化ガラス中に含有される各成分の組成を表記する方法であり、この生成酸化物の質量の総和を100質量%として、結晶化ガラス中に含有される各成分の量を表記する。
【0023】
SiO成分は、原ガラスの熱処理により主結晶相として前記結晶を析出する必須な成分であるが、その量が60%未満では、得られた結晶化ガラスの析出結晶が不安定で組織が肥大化しやすく、その結果機械的強度が低下し、研磨して得られる表面租度も大きくなりやすいので、含有量の下限は60%であることが好ましく、62%がより好ましく、64%が最も好ましい。また78%を超えると溶解、成形性が困難になり易く、その結果均質性が低下しやすくなるので、含有量の上限は78%とすることが好ましく、77%がより好ましく、76%が最も好ましい。
【0024】
ガラスを低粘性化させるためにはアルカリ成分を多量に含有させる方法が良く用いられるが、この方法では、ガラスからのアルカリ成分の溶出増大による化学的耐久性の悪化が問題となるため、代替手段としてアルカリ土類成分やZnO成分を多量に含有させる方法がある。アルカリ土類成分を含有させる成分としては、MgO、CaO、BaO、SrO成分があるが、研究の結果、本発明者はSiO成分、LiO成分を含有し、上述の結晶相を含有する結晶化ガラスにおいては、ZnO、MgO、CaO成分は含有量の増大に伴い、結晶相への固溶が容易に発生し所望の物性が得られなくなる、もしくはガラス化困難な状態を引き起こすものの、特定の範囲であればBaO、SrO成分は含有量を増加させても所望の結晶相を維持したまま低粘性化を実現可能であることを見いだした。また、SrO成分およびBaO成分は、いずれも溶融状態のガラスの低粘性化と析出結晶の微細化に寄与するため、この効果と前記知見による効果を得るためには、SrO成分およびBaO成分から選ばれる1種以上の合計量が3.5%を超えることが好ましく、3.6%以上がより好ましく、3.7%以上が最も好ましい。
また、SrO成分およびBaO成分はガラス成分中に多量に含有させても析出結晶の肥大化や結晶相への固溶が発生しにくい成分である反面、比重が増加する傾向にあるため、比重を適切な値とし、前記知見による効果を得るためには、SrO成分およびBaO成分から選ばれる1種以上の合計量が15%以下であることが好ましく、14%以下がより好ましく、13%以下が最も好ましい。
【0025】
また、SrO成分は上記の様にBaO成分と補間的に含有されるが、溶融状態のガラスの低粘性化と析出結晶の微細化のために、2.5%以上含有することがより好ましく、3.5%以上含有することが最も好ましい。また、SrO成分の含有量の上限は比重を適切な値とするために15%以下が好ましく、14%以下がより好ましく、13%以下が最も好ましい。
【0026】
BaO成分は上記の様にSrO成分と補間的に含有されるが、溶融状態のガラスの低粘性化と析出結晶の微細化のために、2.5%以上含有することがより好ましく、3.5%以上含有することが最も好ましい。また、BaO成分の含有量の上限は比重を適切な値とするために15%以下が好ましく、14%以下がより好ましく、13%以下が最も好ましい。
【0027】
LiO成分は、前記結晶相を構成する成分であり、必須で含有される。ガラスの低粘性化にも寄与する重要な成分であるが、その量が5%未満ではその効果が充分に得られにくいので、含有量の下限5%とすることが好ましく、5.5%がより好ましく、6%が最も好ましい。また10%を超えると、化学的耐久性の悪化が顕著になるため、含有量の上限は10%とすることが好ましく、9%がより好ましく、8.5%が最も好ましい。
【0028】
O成分は結晶粒子の微細化、ガラスの低粘性化のために有効であるので任意成分として添加することができる。この成分が3%を超えるとガラス化し難くなり、所望の結晶相を得難くなるので、含有量の上限を3%とすることが好ましい。より好ましい上限値は2.5%であり、さらに好ましい上限値は2%である。
【0029】
NaO成分は低粘性化のために有効であるので任意成分として添加することができる。この成分が3%を超えるとガラス化し難くなり、所望の結晶相を得難くなるので、含有量の上限を3%とすることが好ましい。より好ましい上限値は2.5%であり、さらに好ましい上限値は2%である。
【0030】
アルカリ成分の溶出量を少なくするために、必須で含有されるLiO成分と、必要に応じて含有されるNaO成分、KO成分との1種以上の合計量を14%以下とすることが好ましく、12%以下とすることがより好ましく、11%以下とすることが最も好ましい。また、ガラスの粘性を下げやすくするために、LiO成分と、必要に応じて含有されるNaO成分、KO成分との1種以上の合計量を5%以上とすることが好ましく、6%以上とすることがより好ましく、7%以上とすることが最も好ましい。
【0031】
成分は核形成剤として添加することができ、低粘性化に寄与するとともにSiOとの共存により原ガラスの溶融、清澄性を向上するので、これらの効果を確実かつ十分に得るためには、含有量の下限は1.5%とすることが好ましく、1.6%がより好ましく、1.7%が最も好ましい。しかし、この成分の添加量が3%を超えるとガラス化し難くなり、失透が発生しやすくなるので、含有量の上限は3%とすることが好ましく、2.9%がより好ましく、2.8%が最も好ましい。
【0032】
Al成分は、SiO同様前記結晶相を構成する成分であるとともにガラスの安定化、化学的耐久性向上にも寄与する重要な成分であるが、その量が4%未満ではガラス化が困難となりやすいので、含有量の下限は4%であることが好ましく、4.5%がより好ましく、5%が最も好ましい。また10%を超えるとかえって溶解、成形性、耐失透性が悪化し、その結果均質性が低下しやすくなるので、含有量の上限は、10%とすることが好ましく、9.5%がより好ましく、9%が最も好ましい。
【0033】
MgO,CaO、ZnO成分は、ガラスの低粘性化、析出結晶相の微細化に有効であるので任意成分として添加することができる。しかし先述の通り、MgOが2%、CaOが2%、またはZnOが3%を超えると、析出結晶が不安定で組織が肥大化しやすくなり、所望の結晶相が得られ難くなる。また原ガラスが失透しやすくなる。したがって、これらの成分の含有量の上限は、MgOが2%、CaOが2%、ZnOが3%であり、より好ましい上限値はMgOが1.6%、CaOが1.6%、ZnOが2.4%であり、さらに好ましい上限値はMgOが1.2%、CaOが1.2%、ZnOが1.8%である。
【0034】
ZrO成分は核形成剤として添加することができる。この成分は、ガラスの化学的耐久性の向上、物理的特性の向上に大きく寄与し、微細な結晶を得るためにも有効であるので、この効果を容易に得るには1%以上添加することが好ましく、1.2%以上添加することがより好ましく、1.4%以上添加することが最も好ましい。しかし、この成分の添加量が10%を超えると溶け残りやZrSiO(ジルコン)が発生しやすくなるので、含有量の上限は10%とすることが好ましく、8%がより好ましく、6%が最も好ましい。
【0035】
Gd、La、Y、Ga成分はガラスの低粘性化、ヤング率向上による機械的特性の向上、結晶化処理温度の上昇すなわち耐熱性向上のために有効であるので、任意成分として添加することができるが、その量はこれら成分のうち1種以上の合計量が15%までで充分であり、合計量が15%を超えるとガラス化及び結晶化がし難くなる。したがって、これら成分の合計量の上限は15%とすることが好ましく、10%がより好ましく、8%が最も好ましい。
【0036】
Sb成分は脱泡剤として有効であるので、任意成分として添加することができるが、その量は2%までで充分であり、1.5%がより好ましく、1%が最も好ましい。
【0037】
As成分は環境上有害となりうる成分であり、その使用は極力少なくするべきである。本発明の結晶化ガラスはAs成分を含有しなくても清澄効果を得る事ができるため、環境への影響を軽減するためにはAs成分を含まないことが好ましい。
【0038】
成分はガラスの低粘性化に寄与し、溶解、成形性を向上するので、結晶化ガラスの特性を損なわない範囲で任意成分として添加することができる。しかしこの成分が5%以上だと原ガラスが分相しやすくなり、所望の結晶相を得難くなるので、含有量の上限を5%とすることが好ましい。より好ましい上限値は4%であり、さらに好ましい上限値は3%である。
【0039】
TiO成分は核形成剤として任意に添加することができる。しかし、この成分の添加量が5%を超えると所望の結晶相を得にくくなるとともに、結晶化後にTiO相が結晶相として析出する場合もあるので、含有量の上限は5%とすることが好ましく、4%がより好ましく、3%が最も好ましい。
【0040】
アルカリ成分溶出量は、単位面積あたりの溶出量が0.016μg/cmを超えると、記録媒体成膜時のアルカリ拡散による磁気特性の低下や記録媒体表面にまで拡散したアルカリ成分による化合物の生成により読み取りエラーやヘッドクラッシュを生じてしまいやすくなる。本発明の結晶化ガラスのアルカリ成分の単位面積当たり溶出量[μg/cm]は0.016以下であり、より好ましい態様においては0.014以下であり、最も好ましい態様においては0.012以下である。
【0041】
ここで、アルカリイオン溶出量の測定は、イオンクロマトグラフィーにより行った。フィルムパックに超純水80ミリリットル(室温)とディスク状の結晶化ガラス(直径約65mm×0.635mm)をパックし、その後約30℃に保温された乾燥機内に3時間保持した後、ディスクを取り出しイオンクロマト測定を行った時に得られるアルカリイオンの総量を求め、この値をディスクの表面積で除してアルカリ金属イオンの単位体積当たり溶出量[μg/cm]とした。
【0042】
次に、本発明の結晶化ガラスの結晶相の平均粒子径についてであるが、前記平均結晶粒子径は、基板に加工し、表面を研磨した後の表面特性に影響を及ぼす。先に述べたように、情報記録媒体の面記録密度向上に伴い、ヘッドの浮上高さが最近では15nm以下となっており、今後は10nm以下からニアコンタクトレコーディング方式或いは完全に接触するコンタクトレコーディング方式の方向に進みつつあり、これに対応するには、ディスク基板等の基板表面の平滑性は従来品よりも良好でなければならない。
従来レベルの平滑性では磁気記録媒体への高密度な入出力を行おうとしても、ヘッドと媒体間の距離が大きいため、磁気信号の入出力を行うことができない。またこの距離を小さくしようとすると、媒体(ディスク基板)の突起とヘッドが衝突し、ヘッド破損や媒体破損を引き起こしてしまう。したがって、この著しく低い浮上高さもしくは接触状態でもヘッド破損やディスク基板破損を引き起こさず、且つヘッドと媒体の吸着を生じない様にするため、表面粗度Ra(算術平均粗さ)の上限は2Åである。
そして、このような平滑な研磨面を得やすくするためには、結晶化ガラスの結晶粒子の平均粒子径の上限が100nm以下であることが好ましく、より好ましくは70nm以下、最も好ましくは50nm以下である。また、機械的強度および耐熱性を良好なものとするために、結晶化ガラスの結晶粒子の平均粒子径の下限は1nmが好ましい。
【0043】
本発明の結晶化ガラスは微細な結晶粒子を均一に析出させることにより、機械的強度の向上を図ることができる。特に微細なクラックの成長を析出結晶粒子が防止するため、研磨加工時におけるチッピング等による微細な欠けを著しく低減できる。
【0044】
また、このような微細な結晶を均一に析出させ、かつ、表面に圧縮応力層を形成させることにより結晶化ガラスの機械的強度、とりわけリング曲げ強度を飛躍的に向上させることが可能となる。これら観点からも結晶粒子の平均粒子径の範囲は上記の範囲が好ましい。
【0045】
このため、例えば、本発明の結晶化ガラスを磁気記録媒体用ディスク基板等の基板とした場合、面記録密度を大きくすることができ、記録密度の向上するために基板自体を高回転化しても、撓みや変形が発生することがなく、この回転による振動が低減され、振動や撓みによるデータ読み取りのエラー数(TMR)を低下させることになる。その上、耐衝撃特性に優れているため、特にモバイル用途等の情報記録媒体としてヘッドクラッシュ、基板の破壊が発生しにくく、その結果、優れた安定動作性を示すこととなる。
【0046】
ここで、結晶粒子の平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)像により測定した結晶像(n=100)の面積基準の粒子径の中央累積値(「メジアン径」d50)をいう。粒子径は得られた結晶像を平行な2直線で挟んだ時に2直線間の距離が最大となる値である。また、リング曲げ強度とは、直径が65mmで厚み0.635mmの薄い円板状試料を作成し、円形の支持リングと荷重リングにより該円板状試料の強度を測定する同心円曲げ法で測定した曲げ強度をいう。
【0047】
次に、ヤング率および比重について述べる。前記のように、記録密度およびデータ転送速度を向上するために、情報記録媒体ディスク基板の高速回転化傾向が進行しているが、この傾向に対応するには、基板材は高速回転時の撓みによるディスク振動を防止すべく、高剛性、低比重でなければならない。また、ヘッドの接触やリムーバブル記録装置のような携帯型の記録装置に用いた場合においては、それに十分耐え得る機械的強度、高ヤング率、表面硬度を有する事が好ましく、具体的には、ヤング率で85GPa以上であることが好ましく、88GPa以上であることがより好ましく、90GPa以上であることが最も好ましい。
【0048】
ところが、単に高剛性であっても比重が大きければ、高速回転時にその重量が大きいことによって撓みが生じ、振動を発生する。逆に低比重でも剛性が小さければ、同様に振動が発生することになる。また比重を低くし過ぎると、結果として所望の機械的強度を得ることが難しくなる。したがって、高剛性でありながら低比重という一見相反する特性のバランスを取らなければならず、その好ましい範囲はヤング率[GPa]/[比重]で32以上であり、より好ましい範囲は33以上であり、最も好ましい範囲は34以上である。また、比重についても、例え高剛性であっても2.7以下である必要があるが、2.2を下回ると、所望の剛性を有する基板は実質上得難い。
【0049】
また、平均線膨張係数についてであるが、ハードディスクの各構成部品との平均線膨張係数のマッチングを良好とするため、25〜100℃の範囲において、平均線膨張係数の下限が50[10−7−1]以上であることが好ましく、52[10−7−1]以上であることがより好ましく、55[10−7−1]以上であることが最も好ましい。同様の理由により、平均線膨張係数の上限が120[10−7−1]以下であるのが好ましく、110[10−7−1]以下であることがより好ましく、100[10−7−1]以下であることが最も好ましい。
【0050】
本発明の結晶化ガラスは上記の平均線膨張係数を有するので、熱的な寸法安定性が求められる各種精密部材等の用途としても好ましく使用することができる。
【0051】
次に粘度について説明する。本発明の結晶化ガラスは、ガラスを所定の形状(たとえば外径68mm、厚さ1.0mmのディスク状)に成形する際(例えばプレス成形)、溶融ガラスの粘度が高すぎると所定の形状の厚み、外径を得ることが難しい(厚みが大きくなり、外径が小さくなる)ので、1400℃に加熱した時の溶融ガラスの粘度η[dPa・s]の対数logηの上限値は2.40とすることが好ましく、2.38がより好ましく、2.35が最も好ましい。一方粘性が低すぎると所定の形状を得るために必要なガラス重量に合わせてガラスの流量を調整し、分断(シャーカット)することが非常に困難になるので、Logηの下限値は1.6とすることが好ましく、1.8とすることがより好ましく、2.0とすることが最も好ましい。
【0052】
ここで、1400℃に加熱した時の溶融ガラスの粘度η[dPa・s]の対数logηは球引上げ式粘度計(有限会社オプト企業製BVM−13LH)を用いて求めることができる。
【0053】
本発明の結晶化ガラスは表面に圧縮応力層を設けることにより、圧縮応力層を設ける前の結晶化ガラスが有する機械的強度をより向上させる効果を得られる。
【0054】
圧縮応力層の形成方法としては、例えば圧縮応力層形成前の結晶化ガラスの表面層に存在するアルカリ成分よりもイオン半径の大きなアルカリ成分とで交換反応させることによる化学強化法がある。また、結晶化ガラスを加熱し、その後急冷する熱強化法、結晶化ガラスの表面層にイオンを注入するイオン注入法がある。
【0055】
化学強化法としては、例えばカリウム又は/もしくはナトリウムを含有する塩、例えば硝酸カリウム(KNO)もしくは硝酸ナトリウム(NaNO)もしくはその複合塩の溶融塩に300〜600℃の温度にて0.5〜12時間浸漬する。これにより、結晶化ガラス中の残存ガラス成分に存在するリチウム成分(Liイオン)がLiよりもイオン半径の大きなアルカリ成分であるナトリウム成分(Naイオン)又は/もしくはカリウム成分(Kイオン)との交換反応、残存ガラス成分又は/もしくはリチウム成分(Liイオン)との交換反応によりガラス成分に存在するナトリウム成分(Naイオン)よりもイオン半径の大きなアルカリ成分であるカリウム成分との交換反応が進行し、これにより結晶化ガラスの容積増加が起こり結晶化ガラス表面層中に圧縮応力が発生し、その結果、衝撃特性の指標であるリング曲げ強度が増加する。
【0056】
熱強化法については特に限定されないが、例えば結晶化ガラスを、300℃〜600℃に加熱した後に水冷および/または空冷等の急速冷却を実施することにより、ガラスの表面と内部の温度差によって生じる圧縮応力層も形成することができる。尚、上記化学処理法と組み合わせることにより圧縮応力層をより効果的に形成することができる。
【0057】
本発明の結晶化ガラスを製造するには、上記の各成の原料を含有するガラス原料を溶融・急冷して原ガラスを作成し、該原ガラスを500℃〜650℃で熱処理し核形成工程を行い、この核形成工程の後に、600℃〜850℃の範囲で核形成工程より高い温度で熱処理することにより結晶成長工程を行う。
【0058】
また、情報記録媒体用基板を作製するためには、上記の条件で作製した溶融ガラスを下型上に滴下し、上下型でプレスすることによってディスク状に成形し、必要に応じ形状加工を施し、公知の方法でラッピング加工、研磨加工を施せば良い。
【実施例】
【0059】
次に本発明の好適な実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1〜表5は本発明の結晶化ガラスの実施例(No.1〜No.19)および比較例(No.1〜No.3)の結晶ガラスの組成例ならびにこれらの結晶化ガラスの核形成温度(単位:℃)、結晶成長温度(単位:℃)、結晶相、平均結晶粒子径(単位:nm)、比重、ヤング率、ヤング率/比重の値(表中の項目はE/ρとして表記)、平均線膨張係数(温度範囲:25℃〜100℃、単位:10−7−1、表中の項目はCTE(25−100)として表記)、リング曲げ強度(単位:MPa)、アルカリ成分溶出量(単位:μg/cm)、研磨後表面粗さRa(単位:nm)を示すものである。



















【0060】
【表1】





【0061】
【表2】







【0062】
【表3】




【0063】
【表4】




【0064】
【表5】










【0065】
さらに、上記の実施例および比較例について、溶融ガラスの粘度に関しては、球引上げ式粘度計(有限会社オプト企業製BVM−13LH)を用いて測定粘度曲線を求めた。本発明の実施例を比較例と比較すると、本発明の実施例および比較例1においては1400℃に加熱した時の粘度η[dPa・s]の対数logηはいずれも2.4以下であり、このため量産レベルでのプレス成形に対応し得る良好な低粘度特性を有するのに対し、比較例3のlogηは2.46であり、充分な低粘度特性を有せず、また、同様の粘度を得るためには1450℃付近まで加熱する必要があり、量産コストの増加や設備寿命の劣化を伴うことが分かる。
【0066】
上記実施例5のガラスと比較例3のガラスについてプレス試験を実施した。ガラスゴブの温度が1400℃になるように、ガラス流出ノズルを温度調節し、ガラス転移温度付近まで加熱された成形型(下型)にガラスを滴下し、上下型によりプレスを行った。実施例4のガラスを用いた場合は目標とするφ67mm×1mm厚のガラスディスクが得られたのに対し、比較例3のガラスを用いた場合は粘度が高いため、成形型上で十分に伸びず、所望の形状(φ67mm×1mm厚)よりも外径が小さく厚みが大きくなってしまった。
【0067】
本発明の上記実施例のガラスは、いずれも酸化物、炭酸塩、硝酸塩等の原料を混合し、これを通常の溶解装置を用いて約1400〜1500℃の温度で溶解し攪拌均質化した後、ディスク状に成形して、冷却しガラス成形体を得た。その後これを500〜650℃で約1〜12時間熱処理して結晶核形成後、600〜850℃の範囲内で結晶核形成温度よりも高い温度で約1〜12時間熱処理することにより結晶成長工程を行い、所望の結晶化ガラスを得た。次いで上記結晶化ガラスを平均粒径5〜30μmの砥粒にて約10分〜60分ラッピングし、内外径加工の後平均粒径0.5μm〜2μmの酸化セリウムにて約30分〜60分間研磨し、情報記録媒体用の基板を得た。この時の基板の表面粗度Ra(算術平均粗さ)はすべて2Å以下であった。
【0068】
(実施例20)
また、この基板に300〜600℃の温度の硝酸カリウム(KNO)に0.5〜12時間浸漬し、表面に圧縮応力層を形成した。これらの基板はリング曲げ強度が圧縮応力層形成前の1.5倍から8倍に向上していることが確認された。
【0069】
(実施例21)
また、300℃〜600℃に加熱した後に空冷法で急速冷却を実施し、表面に圧縮応力層を形成した。これらの基板はリング曲げ強度が向上していることが確認された。
【0070】
(実施例22)
また、上記の実施例により得られた基板に、DCスパッタ法により、クロム合金下地層、コバルト合金磁性層を成膜し、さらにダイヤモンドライクカーボン層を形成し、次いでパーフルオロポリエーテル系潤滑剤を塗布して、情報磁気記録媒体を得た。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、各種情報磁気記録装置に用いられる磁気記録媒体用基板の中でも、特に垂直磁気記録媒体やパターンドメディア用媒体、ディスクリートトラック用媒体等において、記録媒体の磁気特性低下抑制やアルカリコロージョンによるディフェクト低減のためにアルカリ金属含有量を低減しつつ、量産レベルでのプレス成形性に対応しうる低粘度特性、磁気ヘッドの低浮上化に対応可能な極めて平滑な基板表面を有し、高速回転に対応した高ヤング率と低比重特性を備え、優れた機械的特性も兼ね揃えた結晶化ガラスを提供するものである。これにより、情報記録媒体用基板、とりわけ、HDD向け垂直磁気記録媒体用基板として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の結晶化ガラスの実施例(No.5、7)および比較例(No.1、3)の粘度η[dPa・s]の対数(logη)と温度の関係を示すものである。尚、図1における温度は粘度測定において、ガラス融液で満たされた白金坩堝の温度を示している。
【図2】本発明の結晶化ガラスの実施例(No.5)のTEM写真像(×10万倍)を示す。
【図3】本発明の結晶化ガラスの実施例(No.7)のTEM写真像(×10万倍)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準において、
SiO成分、LiO成分を含有し、さらに質量%で、SrO成分およびBaO成分から選ばれるいずれか1種以上の合計含有量が3.5%を超え15%以下であり、
結晶相として二ケイ酸リチウム、モノケイ酸リチウム、α−石英、α−石英固溶体、β−石英固溶体の中から選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする結晶化ガラス。
【請求項2】
酸化物基準において、LiO成分、NaO成分、KO成分の1種以上の合計量が5%〜14%である請求項1に記載の結晶化ガラス。
【請求項3】
酸化物基準の質量%でLiO成分の含有量が5%〜10%である請求項1または2に記載の結晶化ガラス。
【請求項4】
30℃に保温された純水中に3時間浸漬した際のアルカリ成分の溶出量が0.016[μg/cm]以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の結晶化ガラス。
【請求項5】
25℃〜100℃の温度範囲における平均線膨張係数が50〜120[10−7−1]であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の結晶化ガラス。
【請求項6】
前記結晶相の平均粒子径が100nm以下である請求項1から5のいずれかに記載の結晶化ガラス。
【請求項7】
ヤング率が85GPa以上であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の結晶化ガラス。
【請求項8】
前記結晶化ガラスの組成は、酸化物基準の質量%で
SiO:60〜78%、および
LiO:5〜10%、および
:1.5〜3.0%、および
Al:4〜10%
の各成分を含有する請求項1から7のいずれかに記載の結晶化ガラス。
【請求項9】
前記結晶化ガラスの組成は、酸化物基準の質量%で
BaO:0〜15%以下、および/または
SrO:0〜15%以下、および/または
MgO:0〜2%、および/または
CaO:0〜2%、および/または
ZnO:0〜3%、および/または
O:0〜3%、および/または
NaO:0〜3%,および/または
ZrO:1〜10%、および/または
Gd成分、La成分、Y成分、Ga成分のうち1種以上の合量:0〜15%、および/または
Sb成分:0〜2%
の各成分を含有する請求項8に記載の結晶化ガラス。
【請求項10】
前記結晶化ガラスの組成は、酸化物基準の質量%で
:0〜5%、および/または
TiO:0〜5%
の各成分を含有する請求項9に記載の結晶化ガラス。
【請求項11】
1400℃に加熱した時の溶融ガラスの粘度η[dPa・s]の対数logηが2.4以下であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の結晶化ガラス。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の結晶化ガラスを用いた情報記録媒体用基板。
【請求項13】
請求項12に記載の基板の表面に圧縮応力層を設けた情報記録媒体用基板。
【請求項14】
前記圧縮応力層は表面層に存在するアルカリ成分よりもイオン半径の大きなアルカリ成分で置換することにより形成されてなる請求項13に記載の情報記録媒体用基板。
【請求項15】
前記圧縮応力層は基板の加熱、その後急冷によって形成されたことを特徴とする請求項13または14に記載の情報記録媒体用基板。
【請求項16】
表面粗度Ra(算術平均粗さ)が2Å以下であることを特徴とする請求項12から15のいずれかに記載の情報記録媒体用基板。
【請求項17】
請求項12から16に記載の情報記録媒体用基板を用いた情報記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−114005(P2009−114005A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286433(P2007−286433)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)
【Fターム(参考)】