説明

結晶成長装置

【課題】混合比、ガス圧力および温度を制御してIII族窒化物結晶を結晶成長する結晶成長装置を提供する。
【解決手段】圧力/温度相関図PT1〜PT3は、金属Naと金属Gaとの量比を示す混合比r=0.4,0.7,0.95にそれぞれ対応して決定される。圧力/温度相関図PT1〜PT3は、GaN結晶を溶解する領域(領域REG11,REG21,REG31)と、GaN結晶を種結晶から結晶成長する領域(領域REG12,REG22,REG32)と、柱状形状のGaN結晶を結晶成長させる領域(領域REG13,REG23,REG33)と、板状形状のGaN結晶を結晶成長させる領域(領域REG14,REG24,REG34)とを含む。混合比rが複数の混合比の範囲で決定され、その決定された混合比に応じた圧力/温度相関図に含まれる所望の圧力および温度を用いてGAN結晶が結晶成長される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、III族窒化物結晶を結晶成長する結晶成長装置およびIII族窒化物結晶の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、紫外、紫〜青〜緑色光源として用いられているInGaAlN(III族窒化物半導体)系デバイスは、その殆どがサファイアおよびシリコンカーバイド(SiC)を基板とし、その基板上にMOCVD法(有機金属化学気相成長法)およびMBE法(分子線結晶成長法)等を用いて作製されている。
【0003】
このように、サファイアおよびシリコンカーバイドを基板として用いた場合、熱膨張係数および格子定数が基板とIII族窒化物半導体とでそれぞれ大きく異なっているため、III族窒化物半導体内に多くの結晶欠陥が含まれることとなる。この結晶欠陥は、デバイス特性を低下させ、たとえば、発光デバイスにおいては、寿命が短い、動作電力が大きい、等の欠点に直接関係する。
【0004】
また、サファイア基板は、絶縁体であるため、従来の発光デバイスのように基板側から電極を取り出すことが不可能であった。これにより、III族窒化物半導体側から電極を取り出すことが必要となる。その結果、デバイスの面積が大きくなり、高コスト化を招くという不都合があった。そして、デバイスの面積が大きくなると、サファイア基板とIII族窒化物半導体という異種材料の組み合わせに伴う基板の反りという新たな問題が発生する。
【0005】
さらに、サファイア基板上に作製されたIII族窒化物半導体デバイスは、劈開によるチップ分離が困難であり、レーザダイオード(LD)において必要とされる共振器端面を得ることは、容易ではない。このため、現在は、ドライエッチング、またはサファイア基板を厚さ100μm以下まで研磨した後に劈開に近い形に分離し、共振器端面の形成を行なっている。したがって、従来のLDのように、共振器端面の形成とチップ分離とを単一工程で行なうことが困難であり、工程の複雑化によるコスト高を招いていた。
【0006】
これらの問題を解決するため、サファイア基板上にIII族窒化物半導体を選択的に横方向に成長させるなどの工夫をし、結晶欠陥を低減させることが提案された。これにより、結晶欠陥を低減させることが可能となったが、サファイア基板の絶縁性および上述した劈開の困難性に関する問題は、依然として残っている。
【0007】
こうした問題を解決するためには、基板上に結晶成長する材料と同一である窒化ガリウム(GaN)基板が最適である。そのため、気相成長および融液成長等により、バルクGaNを結晶成長させる方法が、各種、提案されている。しかし、未だ高品質かつ実用的な大きさを有するGaN基板は、実現されていない。
【0008】
GaN基板を実現する1つの方法として、ナトリウム(Na)をフラックスとして用いたGaN結晶成長方法が提案されている(特許文献1)。この方法は、アジ化ナトリウム(NaN)と金属Gaとを原料として、ステンレス製の反応容器(容器内寸法:内径=7.5mm、長さ=100mm)にNaNおよび金属Gaを窒素雰囲気中で封入し、その反応容器を600〜800℃の温度で24〜100時間保持することにより、GaN結晶が成長するものである。
【0009】
この方法は、600〜800℃と比較的低温での結晶成長が可能であり、容器内圧力も高々100kg/cm程度と比較的低く、実用的な成長条件であることが特徴である。
【0010】
そして、最近では、アルカリ金属とIII族金属との混合融液と、窒素を含むV族原料とを反応させることにより、高品質なIII族窒化物結晶が実現されている(特許文献2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、GaN結晶を結晶成長する従来の結晶成長装置においては、金属Naと金属Gaとの混合比、窒素原料である窒素ガスのガス圧力および金属Naと金属Gaとの混合融液の温度がGaN結晶を結晶成長させるための主な条件であり、混合比、ガス圧力および温度を制御してGaN結晶を結晶成長させることが困難であった。
【0012】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、混合比、ガス圧力および温度を制御してIII族窒化物結晶を結晶成長する結晶成長装置を提供することである。
【0013】
また、この発明の別の目的は、混合比、ガス圧力および温度を制御してIII族窒化物結晶を製造する製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明によれば、結晶成長装置は、アルカリ金属とIII族金属との総量に対するアルカリ金属の量比を示す混合比に応じて決定され、かつ、III族窒化物結晶を結晶成長または溶解させるときの圧力と温度との関係を規定する圧力/温度相関図を用いてIII族窒化物結晶を結晶成長する結晶成長装置であって、坩堝と、ガス供給装置と、加熱装置と、制御装置とを備える。坩堝は、所定の混合比でアルカリ金属とIII族金属とを含む混合融液を保持する。ガス供給装置は、坩堝内の混合融液に接する容器空間へ窒素原料ガスを供給して容器空間のガス圧力を所定の圧力に設定する。加熱装置は、混合融液の温度を所定の温度に設定する。制御装置は、所定の混合比に応じて決定された所定の圧力/温度相関図に含まれる所望の圧力および所望の温度に容器空間における窒素原料ガスのガス圧力と混合融液の温度とをそれぞれ設定するようにガス供給装置および加熱装置を制御する。
【0015】
好ましくは、所定の圧力/温度相関図は、複数の混合比に対応して設けられた複数の圧力/温度相関図から所定の混合比の決定に応じて選択される。
【0016】
好ましくは、複数の圧力/温度相関図は、第1から第3の圧力/温度相関図を含む。第1の圧力/温度相関図は、第1の混合比に応じて決定される。第2の圧力/温度相関図は、第1の混合比よりも大きい第2の混合比に応じて決定される。第3の圧力/温度相関図は、第2の混合比よりも大きい第3の混合比に応じて決定される。そして、所定の圧力/温度相関図は、第1から第3の圧力/温度相関図から所定の混合比の決定に応じて選択される。
【0017】
好ましくは、第1の圧力/温度相関図は、種結晶からのIII族窒化物結晶の結晶成長および柱状形状からなるIII族窒化物結晶の結晶成長に適した圧力/温度相関図である。第2の圧力/温度相関図は、板状形状からなるIII族窒化物結晶の結晶成長に適した圧力/温度相関図である。第3の圧力/温度相関図は、種結晶からのIII族窒化物結晶の結晶成長に適した圧力/温度相関図である。
【0018】
好ましくは、制御装置は、柱状形状からなるIII族窒化物結晶を結晶成長させる場合、第1の圧力/温度相関図に含まれる第1の所望の圧力および第1の所望の温度に容器空間における窒素原料ガスのガス圧力と混合融液の温度とをそれぞれ設定するようにガス供給装置および加熱装置を制御する。
【0019】
好ましくは、制御装置は、板状形状からなるIII族窒化物結晶を結晶成長させる場合、第2の圧力/温度相関図に含まれる第2の所望の圧力および第2の所望の温度に容器空間における窒素原料ガスのガス圧力と混合融液の温度とをそれぞれ設定するようにガス供給装置および加熱装置を制御する。
【0020】
好ましくは、結晶成長装置は、支持装置をさらに備える。支持装置は、III族窒化物結晶からなる種結晶を容器空間と混合融液との界面または混合融液中に支持する。制御装置は、種結晶からIII族窒化物結晶を結晶成長させる場合、第1の圧力/温度相関図に含まれる第3の所望の圧力および第3の所望の温度に容器空間における窒素原料ガスのガス圧力と混合融液の温度とをそれぞれ設定するようにガス供給装置および加熱装置を制御し、または第3の圧力/温度相関図に含まれる第4の所望の圧力および第4の所望の温度に容器空間における窒素原料ガスのガス圧力と混合融液の温度とをそれぞれ設定するようにガス供給装置および加熱装置を制御する。
【0021】
好ましくは、第1から第3の圧力/温度相関図の各々は、III族窒化物結晶を溶解する第1の領域と、種結晶からIII族窒化物結晶を結晶成長する第2の領域と、柱状形状からなるIII族窒化物結晶を結晶成長する第3の領域と、板状形状からなるIII族窒化物結晶を結晶成長する第4の領域とを含む。そして、制御装置は、所定の混合比の決定に応じて第1から第3の圧力/温度相関図から選択された所定の圧力/温度相関図において、第1から第4の領域の少なくとも1つの領域に含まれる所望の圧力および所望の温度に容器空間における窒素原料ガスのガス圧力と混合融液の温度とをそれぞれ設定するようにガス供給装置および加熱装置を制御する。
【0022】
好ましくは、結晶成長装置は、混合比変化手段と、選択手段とをさらに備える。混合比変化手段は、混合融液におけるアルカリ金属とIII族金属との混合比を複数の混合比の範囲で変化する。選択手段は、混合比変化手段によって変化された混合比に対応する圧力/温度相関図を所定の圧力/温度相関図として複数の圧力/温度相関図から選択する。そして、制御装置は、選択手段によって選択された圧力/温度相関図に含まれる所望の圧力および所望の温度に容器空間における窒素原料ガスのガス圧力と混合融液の温度とをそれぞれ設定するようにガス供給装置および加熱装置を制御する。
【0023】
好ましくは、混合比変化手段は、混合融液へのアルカリ金属の供給/停止を制御して混合比を変化する。
【0024】
好ましくは、混合比変化手段は、外部容器と、蒸気圧制御器とを含む。外部容器は、容器空間に連通する外部容器空間に接してアルカリ金属融液を保持する。蒸気圧制御器は、アルカリ金属融液から蒸発するアルカリ金属の第1の蒸気圧と混合融液から蒸発するアルカリ金属の第2の蒸気圧との相対関係を変化させてアルカリ金属の供給/停止を制御する。
【0025】
好ましくは、蒸気圧制御器は、アルカリ金属融液の温度を変えて第1の蒸気圧と第2の蒸気圧との相対関係を変化させる。
【0026】
また、この発明によれば、製造方法は、アルカリ金属とIII族金属との総量に対するアルカリ金属の量比を示す混合比に応じて決定され、かつ、III族窒化物結晶を結晶成長または溶解させるときの圧力と温度との関係を規定する圧力/温度相関図を用いてIII族窒化物結晶を製造する製造方法であって、不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気中において所定の混合比でアルカリ金属とIII族金属とを坩堝に入れる第1の工程と、坩堝内のアルカリ金属およびIII族金属に接する容器空間へ窒素原料ガスを供給する第2の工程と、所定の混合比に応じて決定された所定の圧力/温度相関図に含まれる所望の圧力および所望の温度に容器空間における窒素原料ガスのガス圧力および坩堝の温度をそれぞれ設定する第3の工程とを備える。
【0027】
好ましくは、製造方法は、所定の時間、所望の圧力および所望の温度を保持する第4の工程をさらに備える。
【0028】
好ましくは、所定の圧力/温度相関図は、複数の混合比に対応して設けられた複数の圧力/温度相関図から前記所定の混合比の決定に応じて選択される。
【0029】
好ましくは、複数の圧力/温度相関図は、第1から第3の圧力/温度相関図を含む。第1の圧力/温度相関図は、第1の混合比に応じて決定される。第2の圧力/温度相関図は、第1の混合比よりも大きい第2の混合比に応じて決定される。第3の圧力/温度相関図は、第2の混合比よりも大きい第3の混合比に応じて決定される。そして、所定の圧力/温度相関図は、第1から第3の圧力/温度相関図から所定の混合比の決定に応じて選択される。
【0030】
好ましくは、第1の圧力/温度相関図は、種結晶からのIII族窒化物結晶の結晶成長および柱状形状からなるIII族窒化物結晶の結晶成長に適した圧力/温度相関図である。第2の圧力/温度相関図は、板状形状からなるIII族窒化物結晶の結晶成長に適した圧力/温度相関図である。第3の圧力/温度相関図は、種結晶からのIII族窒化物結晶の結晶成長に適した圧力/温度相関図である。
【0031】
好ましくは、第3の工程は、窒素原料ガスのガス圧力および坩堝の温度を第1の圧力/温度相関図に含まれる第1の所望の圧力および第1の所望の温度にそれぞれ設定する。
好ましくは、製造方法は、坩堝内に保持され、かつ、アルカリ金属とIII族金属とを含む混合融液にIII族窒化物結晶からなる種結晶を接触または浸漬させる第5の工程をさらに備える。
【0032】
好ましくは、第3の工程は、窒素原料ガスのガス圧力および坩堝の温度を第2の圧力/温度相関図に含まれる第2の所望の圧力および第2の所望の温度にそれぞれ設定する。
【0033】
好ましくは、第3の工程は、窒素原料ガスのガス圧力および坩堝の温度を第3の圧力/温度相関図に含まれる第3の所望の圧力および第3の所望の温度にそれぞれ設定する。
【0034】
好ましくは、第1から第3の圧力/温度相関図の各々は、III族窒化物結晶を溶解する第1の領域と、種結晶からIII族窒化物結晶を結晶成長する第2の領域と、柱状形状からなるIII族窒化物結晶を結晶成長する第3の領域と、板状形状からなるIII族窒化物結晶を結晶成長する第4の領域とを含む。そして、第3の工程は、所定の混合比の決定に応じて第1から第3の圧力/温度相関図から選択された所定の圧力/温度相関図において、第1から第4の領域のいずれか1つの領域に含まれる所望の圧力および所望の温度に窒素原料ガスのガス圧力および坩堝の温度をそれぞれ設定する。
【0035】
好ましくは、第1から第3の圧力/温度相関図の各々は、III族窒化物結晶を溶解する第1の領域と、種結晶からIII族窒化物結晶を結晶成長する第2の領域と、柱状形状からなるIII族窒化物結晶を結晶成長する第3の領域と、板状形状からなるIII族窒化物結晶を結晶成長する第4の領域とを含む。そして、第3の工程は、所定の混合比の決定に応じて第1から第3の圧力/温度相関図から選択された所定の圧力/温度相関図において、第1から第4の領域から選択された複数の領域に含まれる複数の所望の圧力および複数の所望の温度に窒素原料ガスのガス圧力および坩堝の温度をそれぞれ所定の順序で設定する。
【0036】
好ましくは、製造方法は、坩堝内に保持され、かつ、アルカリ金属とIII族金属とを含む混合融液におけるアルカリ金属とIII族金属との混合比を複数の混合比の範囲で変化する第5の工程と、第5の工程において変化された混合比に対応する圧力/温度相関図を所定の圧力/温度相関図として複数の圧力/温度相関図から選択する第6の工程とをさらに備える。そして、第3の工程は、窒素原料ガスのガス圧力および坩堝の温度を所定の圧力/温度相関図に含まれる所望の圧力および所望の温度にそれぞれ設定する。
【0037】
好ましくは、第5の工程は、混合融液へのアルカリ金属の供給/停止を制御して混合比を変化する。
【0038】
好ましくは、第5の工程は、容器空間に連通する外部容器空間に接して保持されたアルカリ金属融液から蒸発するアルカリ金属の第1の蒸気圧と混合融液から蒸発するアルカリ金属の第2の蒸気圧との相対関係を変化させてアルカリ金属の供給/停止を制御する。
【0039】
好ましくは、第5の工程は、アルカリ金属融液の温度を変えて第1の蒸気圧と第2の蒸気圧との相対関係を変化させる。
【発明の効果】
【0040】
この発明においては、アルカリ金属とIII族金属との量比を示す混合比が複数の混合比の範囲で決定され、その決定された混合比に応じた圧力/温度相関図に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてIII族窒化物結晶が結晶成長される。
【0041】
したがって、この発明によれば、混合比、ガス圧力および温度を制御してIII族窒化物結晶を結晶成長できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、この発明の実施の形態1による結晶成長装置の概略断面図である。
【図2】図2は、図1に示す融液保持部材の斜視図である。
【図3】図3は、融液保持部材の配管への取付状態を示す平面図である。
【図4】図4は、GaN結晶を結晶成長させるときの圧力と温度との関係を規定する圧力/温度相関図を金属Naと金属Gaとの混合比に対して示す図である。
【図5】図5は、坩堝および反応容器の温度のタイミングチャートである。
【図6】図6は、図5に示す2つのタイミングt1,t2間における坩堝および反応容器内の状態を示す模式図である。
【図7】図7は、図1に示す結晶成長装置を用いて結晶成長または溶解させたGaN結晶の模式図である。
【図8】図8は、GaN結晶の製造方法を説明するための実施の形態1におけるフローチャートである。
【図9】図9は、圧力/温度相関図の複数の領域に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させる場合の図8に示すステップS4の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】図10は、圧力/温度相関図の複数の領域に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させる場合の図8に示すステップS4の詳細な動作を説明するための他のフローチャートである。
【図11】図11は、実施の形態2による結晶成長装置の概略断面図である。
【図12】図12は、図11に示す支持装置、配管および熱電対の拡大図である。
【図13】図13は、図11に示す上下機構の構成を示す概略図である。
【図14】図14は、振動検出信号のタイミングチャートである。
【図15】図15は、坩堝および反応容器の温度の他のタイミングチャートである。
【図16】図16は、種結晶の温度と窒素ガスの流量との関係を示す図である。
【図17】図17は、図11に示す結晶成長装置を用いてGaN結晶を製造する動作を説明するためのフローチャートである。
【図18】図18は、実施の形態3による結晶成長装置の概略断面図である。
【図19】図19は、混合融液中における金属Naと金属Gaとの混合比を制御する方法を説明するための概念図である。
【図20】図20は、図18に示す制御装置の一部の構成を示すブロック図である。
【図21】図21は、混合比と圧力/温度相関図との関係を示す図である。
【図22】図22は、金属融液の温度と混合比との関係を示す図である。
【図23】図23は、GaN結晶の製造方法を説明するための実施の形態2におけるフローチャートである。
【図24】図24は、実施の形態3による結晶成長装置の他の概略断面図である。
【図25】図25は、図24に示す結晶成長装置を用いてGaN結晶を製造する動作を説明するためのフローチャートである。
【図26】図26は、この発明による融液保持部材の他の斜視図である。
【図27】図27は、図26に示す融液保持部材の固定方法を説明するための断面図である。
【図28】図28は、この発明による融液保持部材のさらに他の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0044】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による結晶成長装置の概略断面図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1による結晶成長装置100は、坩堝10と、反応容器20と、配管30と、融液保持部材60と、加熱装置70,80と、温度センサー71,81と、ガス供給管90,110と、バルブ120,121,160と、圧力調整器130と、ガスボンベ140と、排気管150と、真空ポンプ170と、圧力センサー180と、金属融液190と、制御装置300と、圧力センサー310とを備える。
【0045】
坩堝10は、略円柱形状を有し、ボロンナイトライド(BN)またはSUS316Lからなる。反応容器20は、坩堝10と所定の間隔を隔てて坩堝10の周囲に配置される。すなわち、反応容器20は、坩堝10を内部に含む。そして、反応容器20は、本体部21と、蓋部22とからなる。本体部21および蓋部22の各々は、SUS316Lからなり、本体部21と蓋部22との間は、メタルオーリングによってシールされる。
【0046】
配管30は、重力方向DR1において、一方端が坩堝10の下側で反応容器20に連結され、他方端がガス供給管110に連結される。
【0047】
融液保持部材60は、たとえば、金属およびセラミック等からなり、反応容器20と配管30との連結部よりも下側の配管30内に設置される。
【0048】
加熱装置70は、反応容器20の外周面20Aを囲むように配置される。加熱装置80は、反応容器20の底面20Bに対向して配置される。温度センサー71,81は、それぞれ、加熱装置70,80に近接して配置される。
【0049】
ガス供給管90は、一方端がバルブ120を介して反応容器20に連結され、他方端が圧力調整器130を介してガスボンベ140に連結される。ガス供給管110は、一方端がバルブ121を介して配管30に連結され、他方端がガス供給管90に連結される。
【0050】
バルブ120は、反応容器20の近傍でガス供給管90に装着される。圧力調整器130は、ガスボンベ140の近傍でガス供給管90に装着される。ガスボンベ140は、ガス供給管90に連結される。
【0051】
排気管150は、一方端がバルブ160を介して反応容器20に連結され、他方端が真空ポンプ170に連結される。バルブ160は、反応容器20の近傍で排気管150に装着される。真空ポンプ170は、排気管150に連結される。
【0052】
圧力センサー180は、反応容器20に取り付けられる。金属融液190は、金属ナトリウム(金属Na)融液からなり、融液保持部材60によって配管30内に保持される。
【0053】
坩堝10は、金属Naと、金属ガリウム(金属Ga)とを含む混合融液290を保持する。反応容器20は、坩堝10の周囲を覆う。配管30は、金属融液190を保持する。
【0054】
融液保持部材60は、配管30の内壁との間に数十μmの孔が形成されるように外周面に凹凸構造を有し、配管30内の空間31へ供給された窒素ガスを金属融液190の方向へ通過させ、窒素ガスを金属融液190を介して空間23内へ供給する。また、融液保持部材60は、金属融液190の表面張力により金属融液190を配管30内に保持する。
【0055】
加熱装置70は、ヒーターと、電流源とからなる。そして、加熱装置70は、制御装置300からの制御信号CTL1に応じて電流源によってヒーターに電流を流し、反応容器20の外周面20Aから坩堝10および反応容器20を結晶成長温度に加熱する。温度センサー71は、加熱装置70のヒーターの温度T1を検出し、その検出した温度T1を制御装置300へ出力する。
【0056】
加熱装置80も、ヒーターと、電流源とからなる。そして、加熱装置80は、制御装置300からの制御信号CTL2に応じて電流源によってヒーターに電流を流し、反応容器20の底面20Bから坩堝10および反応容器20を結晶成長温度に加熱する。温度センサー81は、加熱装置80のヒーターの温度T2を検出し、その検出した温度T2を制御装置300へ出力する。
【0057】
ガス供給管90は、ガスボンベ140から圧力調整器130を介して供給された窒素ガスをバルブ120を介して反応容器20内へ供給する。ガス供給管110は、ガスボンベ140から圧力調整器130を介して供給された窒素ガスをバルブ121を介して配管30内へ供給する。
【0058】
バルブ120は、ガス供給管90内の窒素ガスを反応容器20内へ供給し、または窒素ガスの反応容器20内への供給を停止する。バルブ121は、ガス供給管110内の窒素ガスを配管30内へ供給し、または窒素ガスの配管30内への供給を停止する。圧力調整器130は、制御装置300からの制御信号CTL3に応じて、ガスボンベ140からの窒素ガスを所定の圧力にしてガス供給管90,110に供給する。
【0059】
ガスボンベ140は、窒素ガスを保持する。排気管150は、反応容器20内の気体を真空ポンプ170へ通過させる。バルブ160は、反応容器20内と排気管150とを空間的に繋げ、または反応容器20内と排気管150とを空間的に遮断する。真空ポンプ170は、排気管150およびバルブ160を介して反応容器20内の真空引きを行なう。
【0060】
圧力センサー180は、加熱装置70によって加熱されていない反応容器20内の圧力を検出する。窒素ガスは、金属融液190と融液保持部材60を介して空間23へ導入される。
【0061】
制御装置300は、温度T1,T2をそれぞれ温度センサー71,81から受け、その受けた温度T1,T2に基づいて、坩堝10および反応容器20の温度を所望の温度に設定するための制御信号CTL1,CTL2を生成する。そして、制御装置300は、その生成した制御信号CTL1,2をそれぞれ加熱装置70,80へ出力する。
【0062】
また、制御装置300は、圧力センサー310から静水圧Psを受け、その受けた静水圧Psに基づいて空間23の圧力Pinを求める。より具体的には、反応容器20内の空間23の圧力Pinが相対的に高くなれば、金属融液190の静水圧Psは、圧力Pinに比例して相対的に高くなる。また、反応容器20内の空間23の圧力Pinが相対的に低くなれば、金属融液190の静水圧Psは、圧力Pinに比例して相対的に低くなる。
【0063】
このように、静水圧Psは、空間23内の圧力Pinに比例する。したがって、制御装置300は、静水圧Psと圧力Pinとの比例係数を保持しており、その保持している比例係数を静水圧Psに乗算することにより、静水圧Psに基づいて圧力Pinを求める。
【0064】
そして、制御装置300は、空間23の圧力Pinを求めると、その求めた圧力Pinを所望の圧力に設定するための制御信号CTL3を生成し、その生成した制御信号CTL3を圧力調整器130へ出力する。
【0065】
圧力センサー310は、金属融液190の静水圧Psを検出し、その検出した静水圧Psを制御創始300へ出力する。
【0066】
図2は、図1に示す融液保持部材60の斜視図である。図2を参照して、融液保持部材60は、栓61と、凸部62とを含む。栓61は、略円柱形状からなる。凸部62は、略半円形の断面形状を有し、栓61の外周面に栓61の長さ方向DR2に沿って形成される。
【0067】
図3は、融液保持部材60の配管30への取付状態を示す平面図である。図3を参照して、凸部62は、栓61の円周方向に複数個形成され、複数の凸部62は、数十μmの間隔dで形成される。また、凸部62は、数十μmの高さHを有する。融液保持部材60の複数の凸部62は、配管30の内壁30Aに接する。これにより、融液保持部材60は、配管30の内壁30Aに嵌合する。
【0068】
凸部62が数十μmの高さHを有し、数十μmの間隔dで栓61の外周面に配置される結果、融液保持部材60が配管30の内壁30Aに嵌合した状態では、融液保持部材60と配管30の内壁30Aとの間に、直径が略数十μmである空隙63が複数個形成される。
【0069】
この空隙63は、栓61の長さ方向DR2に窒素ガスを通過させるとともに、金属融液190の表面張力によって金属融液190を保持し、金属融液190が栓61の長さ方向DR2に通過するのを阻止する。
【0070】
図4は、GaN結晶を結晶成長させるときの圧力と温度との関係を規定する圧力/温度相関図を金属Naと金属Gaとの混合比に対して示す図である。なお、金属Naと金属Gaとの混合比rは、r=[金属Na]/([金属Na]+[金属Ga])によって定義される。[金属Na]および[金属Ga]は、それぞれ、金属Naのモル量および金属Gaのモル量である。
【0071】
図4の(a)は、混合比rがr=0.4である場合の圧力/温度相関図を示し、図4の(b)は、混合比rがr=0.7である場合の圧力/温度相関図を示し、図4の(c)は、混合比rがr=0.95である場合の圧力/温度相関図を示す。
【0072】
そして、図4の(a),(b),(c)の各々において、縦軸は、反応容器20内の空間23における窒素ガスのガス圧力を表し、横軸は、坩堝10および反応容器20の温度(=混合融液290の温度)の逆数(絶対温度の逆数)を表す。
【0073】
図4の(a)を参照して、圧力/温度相関図PT1は、領域REG11,REG12,REG13,REG14を有する。領域REG11は、直線k1によって領域REG12と仕切られ、領域REG12は、直線k2によって領域REG13と仕切られ、領域REG13は、直線k3によって領域REG14と仕切られる。
【0074】
そして、領域REG11は、GaN結晶を溶解させる領域であり、領域REG12は、新たな核の発生を抑制してGaN結晶が種結晶から結晶成長する領域である。また、領域REG13は、柱状形状のGaN結晶が結晶成長する領域であり、領域REG14は、板状形状のGaN結晶が結晶成長する領域である。
【0075】
このように、圧力/温度相関図PT1は、GaN結晶を溶解させる領域REG11と、形状または成長機構が異なるGaN結晶を結晶成長させる領域REG12,REG13,REG14とからなる。
【0076】
図4の(b)を参照して、圧力/温度相関図PT2は、領域REG21,REG22,REG23,REG24を有する。領域REG21は、直線k4によって領域REG22と仕切られ、領域REG22は、直線k5によって領域REG23と仕切られ、領域23は、直線k6によって領域REG24と仕切られる。
【0077】
そして、領域REG21は、GaN結晶を溶解させる領域であり、領域REG22は、新たな核の発生を抑制してGaN結晶が種結晶から結晶成長する領域である。また、領域REG23は、柱状形状のGaN結晶が結晶成長する領域であり、領域REG24は、板状形状のGaN結晶が結晶成長する領域である。
【0078】
このように、圧力/温度相関図PT2も、GaN結晶を溶解させる領域REG21と、形状または成長機構が異なるGaN結晶を結晶成長させる領域REG22,REG23,REG24とからなる。
【0079】
図4の(c)を参照して、圧力/温度相関図PT3は、領域REG31,REG32,REG33,REG34を有する。領域REG31は、直線k7によって領域REG32と仕切られ、領域REG32は、直線k8によって領域REG33と仕切られ、領域33は、直線k9によって領域REG34と仕切られる。
【0080】
そして、領域REG31は、GaN結晶を溶解させる領域であり、領域REG32は、新たな核の発生を抑制してGaN結晶が種結晶から結晶成長する領域である。また、領域REG33は、柱状形状のGaN結晶が結晶成長する領域であり、領域REG34は、板状形状のGaN結晶が結晶成長する領域である。
【0081】
このように、圧力/温度相関図PT3も、GaN結晶を溶解させる領域REG31と、形状または成長機構が異なるGaN結晶を結晶成長させる領域REG32,REG33,REG34とからなる。
【0082】
上述したように、圧力/温度相関図PT1〜PT3の各々は、GaN結晶を溶解させる領域、種結晶からGaN結晶を結晶成長させる領域、柱状形状のGaN結晶を結晶成長させる領域および板状形状のGaN結晶を結晶成長させる領域からなるが、圧力/温度相関図PT1の領域REG12,REG13は、それぞれ、圧力/温度相関図PT2の領域REG22,REG23よりも広く、圧力/温度相関図PT2の領域REG24は、圧力/温度相関図PT1,PT3の領域REG14,REG34よりも広く、圧力/温度相関図PT3の領域REG32,REG33は、圧力/温度相関図PT1の領域REG12,REG13と同じ広さを有し、かつ、金属Gaを補充しながらGaN結晶を結晶成長させる。
【0083】
したがって、圧力/温度相関図PT1は、種結晶からのGaN結晶の結晶成長および柱状形状からなるGaN結晶の結晶成長に適した圧力/温度相関図であり、圧力/温度相関図PT2は、板状形状からなるGaN結晶の結晶成長に適した圧力/温度相関図であり、圧力/温度相関図PT3は、種結晶からのGaN結晶の結晶成長に適した領域である。
【0084】
圧力/温度相関図PT3の領域REG32,REG33が圧力/温度相関図PT1の領域REG12,REG13と同じ広さを有するにも係わらず、圧力/温度相関図PT3が種結晶からのGaN結晶の結晶成長だけに適しているのは、圧力/温度相関図PT3を用いてGaN結晶を結晶成長させる場合、金属Gaを補充する必要があり、領域REG32における結晶成長(種結晶からのGaN結晶の結晶成長)の方が領域REG33における結晶成長(柱状形状からなるGaN結晶の結晶成長)よりも金属Gaの消費量が少ないからである。
【0085】
この発明においては、混合比rに応じてGaN結晶の結晶成長に用いる圧力/温度相関図を圧力/温度相関図PT1〜PT3から選択し、その選択した圧力/温度相関図(圧力/温度相関図PT1〜PT3のいずれか)に含まれる所望の圧力および所望の温度に空間23におけるガス圧力および混合融液290の温度をそれぞれ設定してGaN結晶を結晶成長する。
【0086】
図5は、坩堝10および反応容器20の温度のタイミングチャートである。また、図6は、図5に示す2つのタイミングt1,t2間における坩堝10および反応容器20内の状態を示す模式図である。なお、図5において、直線k10は、坩堝10および反応容器20の温度を示す。
【0087】
図5を参照して、加熱装置70,80は、直線k10に従って温度が上昇し、かつ、725℃に保持されるように坩堝10および反応容器20を加熱する。加熱装置70,80が坩堝10および反応容器20を加熱し始めると、坩堝10および反応容器20の温度は、上昇し始め、タイミングt1において98℃に達し、タイミングt2で725℃に達する。
【0088】
そうすると、坩堝10および反応容器20が725℃まで昇温される過程で、融液保持部材60よりも上側の配管30の温度が98℃以上に上昇され、配管30内に保持された金属Naは溶け、金属融液190(=金属Na融液)が配管30内に生成される。また、坩堝10中の金属Naおよび金属Gaは溶け、混合融液290が坩堝10中で生成される。
【0089】
その結果、空間23内の窒素ガス4は、金属融液190(=金属Na融液)および融液保持部材60を介して配管30内の空間31へ拡散することができず、空間23内に閉じ込められる(図6参照)。
【0090】
この場合、金属融液190に接する配管30の部分は、金属融液190から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaが混合融液290から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致する温度に加熱装置80によって昇温される。すなわち、金属融液190に接する配管30の部分は、金属融液190からの金属Naの蒸発と、混合融液290からの金属Naの蒸発とが略平衡になる温度に加熱装置80によって昇温される。
【0091】
したがって、金属融液190から混合融液290への金属Naの移動と、混合融液290から金属融液190への金属Naの移動とが略平衡になり、見かけ上、金属融液190と混合融液290との間で金属Naの移動が停止される。その結果、金属融液190および混合融液290からの金属Naの蒸発による混合融液290中の金属Naと金属Gaとの混合比の変動が抑制される。ここで言う金属Naの移動とは、気相輸送のことである。
【0092】
このように、坩堝10および反応容器20が725℃に加熱されると、金属融液190から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaが混合融液290から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致し、空間23内には、窒素ガス4と金属Na蒸気5とが混在する。
【0093】
そして、坩堝10および反応容器20の温度が725℃程度の高温状態では、空間23内の窒素ガス4は、金属Naを媒介として混合融液290中に取り込まれる。そして、坩堝10の側壁および底面からGaN結晶が結晶成長する。
【0094】
その後、GaN結晶の結晶成長の進行に伴って、空間23内の窒素ガスが消費されると、空間23の圧力P1が配管30内の空間31の圧力P2よりも低くなる。そうすると、空間23の圧力P1と空間31の圧力P2との圧力差に応じて、窒素ガスが空間31から空間23へ補給される。この場合、融液保持部材60は、空間31の窒素ガスを金属融液190へ透過させ、金属融液190は、窒素ガスを泡191として空間23へ導く。そして、空間23の圧力P1が空間31の圧力P2と同程度に上昇すると、空間31から空間23への窒素ガスの補給は停止される。
【0095】
図7は、図1に示す結晶成長装置100を用いて結晶成長または溶解させたGaN結晶の模式図である。図7の(a)は、図4に示す圧力/温度相関図PT1の領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させた場合を示し、図7の(b)は、図4に示す圧力/温度相関図PT1の領域REG14に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させた場合を示す。
【0096】
また、図7の(c)は、図4に示す圧力/温度相関図PT1の領域REG12に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いて種結晶からGaN結晶を結晶成長させた場合を示し、図7の(d)は、図4に示す圧力/温度相関図PT1の領域REG11に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を溶解させた場合を示す。
【0097】
図7の(a)を参照して、領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させた場合、複数のGaN結晶6が坩堝10の底面11から結晶成長する。そして、複数のGaN結晶6の各々は、尖った先端が坩堝10の底面11に接触し、c軸(<0001>)方向へ結晶成長した柱状形状からなる。また、複数のGaN結晶6は、その大きさが相互に異なり、坩堝10の底面11に対して相互に異なる方向へ結晶成長する。
【0098】
図7の(b)を参照して、領域REG14に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させた場合、複数のGaN結晶7が坩堝10内で結晶成長する。そして、複数のGaN結晶7の各々は、c面((0001))方向(c軸に垂直な方向)に結晶成長した板状形状からなる。また、複数のGaN結晶7は、その大きさが相互に異なる。
【0099】
図7の(c)を参照して、領域REG12に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させた場合、種結晶6AからGaN結晶8が結晶成長する。種結晶6Aは、領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いて結晶成長された複数のGaN結晶6(図7の(a)参照)のうちの1個のGaN結晶からなる。この場合、複数のGaN結晶6のうち、不要なGaN結晶を除去し、坩堝10の底面11に対して略垂直に結晶成長したGaN結晶6を種結晶6Aとして底面11に残す。これによって、坩堝10の底面11に固定された種結晶6Aを容易に作製できる。
【0100】
上述したように、複数のGaN結晶6は、c軸方向へ結晶成長するので、種結晶6Aもc軸方向へ結晶成長したGaN結晶からなる。したがって、領域REG12に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いて種結晶6Aから結晶成長したGaN結晶8もc軸方向へ結晶成長する。このとき、種結晶6Aが結晶成長して大きくなるため、c軸およびc面方向にも結晶サイズは拡大する。そして、領域RE12に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いたGaN結晶の結晶成長においては、坩堝10の側壁および底面11における核の発生が抑制されるため、大きなサイズのGaN結晶8を結晶成長できる。
【0101】
図7の(d)を参照して、領域REG11に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を処理すると、GaN結晶9が溶解され、GaN結晶9Aが坩堝10の底面11に残る。
【0102】
なお、図4に示す圧力/温度相関図PT2の領域REG23,REG24,REG22および圧力/温度相関図PT3の領域REG33,REG34,REG32は、それぞれ、図7の(a),(b),(c)に示すGaN結晶6,7,8を結晶成長させ、温度相関図PT2の領域REG21および圧力/温度相関図PT3の領域REG31は、図7の(d)に示すGaN結晶9を溶解させる。
【0103】
図8は、GaN結晶の製造方法を説明するための実施の形態1におけるフローチャートである。図8を参照して、一連の動作が開始されると、Arガスが充填されたグローブボックス内へ坩堝10、反応容器20および配管30を入れる。そして、Arガス雰囲気中で金属Naを配管30内に入れる(ステップS1)。なお、Arガスは、水分量が1ppm以下であり、かつ、酸素量が1ppm以下であるArガスである(以下、同じ)。
【0104】
その後、Arガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを所定の混合比rで坩堝10に入れる(ステップS2)。この場合、たとえば、混合比r=0.4で金属Naおよび金属Gaを坩堝10に入れる。そして、金属Naおよび金属Gaを入れた坩堝10を反応容器20内に設置する。
【0105】
引続いて、グローブボックスから坩堝10と反応容器20および配管30を取り出し、坩堝10および反応容器20内にArガスを充填した状態で坩堝10および反応容器20を結晶成長装置100に設定する。そして、バルブ160を開け、真空ポンプ170によって坩堝10および反応容器20内に充填されたArガスを排気する。真空ポンプ170によって坩堝10および反応容器20内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きした後、バルブ160を閉じ、バルブ120,121を開けて窒素ガスをガスボンベ140からガス供給管90,110を介して坩堝10および反応容器20内へ充填する。この場合、圧力調整器130によって坩堝10および反応容器20内の圧力が0.1MPa程度になるように坩堝10および反応容器20内へ窒素ガスを供給する。
【0106】
そして、圧力センサー180によって検出した反応容器20内の圧力が0.1MPa程度になると、バルブ120,121を閉じ、バルブ160を開けて真空ポンプ170によって坩堝10および反応容器20内に充填された窒素ガスを排気する。この場合も、真空ポンプ170によって坩堝10および反応容器20内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きする。
【0107】
そして、この坩堝10および反応容器20内の真空引きと坩堝10および反応容器20内への窒素ガスの充填とを数回繰り返し行なう。
【0108】
その後、真空ポンプ170によって坩堝10および反応容器20内を所定の圧力まで真空引きした後、バルブ160を閉じ、バルブ120,121を開けて窒素ガスを坩堝10および反応容器20の空間23へ供給する(ステップS3)。
【0109】
その後、制御装置300は、混合比r=0.4に応じて決定された圧力/温度相関図PT1の領域REG13を用いたGaN結晶の結晶成長が行なわれる場合、領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度を外部から受ける。たとえば、制御装置300は、5.05MPaの圧力および725℃の温度をそれぞれ領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度として外部から受ける。
【0110】
そうすると、制御装置300は、坩堝10および反応容器20の温度を所望の温度(=725℃)に設定するための制御信号CTL1,CTL2を生成し、その生成した制御信号CTL1,CTL2をそれぞれ加熱装置70,80へ出力するとともに、空間23の窒素ガスのガス圧力を所望の圧力(=5.05MPa)に設定するための制御信号CTL3を生成し、その生成した制御信号CTL3を圧力調整器130へ出力する。
【0111】
そして、加熱装置70は、制御装置300からの制御信号CTL1に応じて、坩堝10および反応容器20を外周面20Aから725℃に加熱し、加熱装置80は、制御装置300からの制御信号CTL2に応じて、坩堝10および反応容器20を底面20Bから725℃に加熱する。また、圧力調整器130は、制御装置300からの制御信号CTL3に応じて、空間23の圧力が5.05MPaになるように窒素ガスをガス供給管90,110、配管30および融液保持部材60を介して空間23へ供給する。
【0112】
すなわち、所定の混合比rに応じて決定された圧力/温度相関図PT1に含まれる所望の圧力(=5.05MPa)および所望の温度(=725℃)に空間23における窒素ガスの圧力および坩堝10の温度を設定する(ステップS4)。
【0113】
そして、所定の時間、所望の圧力および所望の温度が保持され(ステップS5)、所定の時間が経過すると、坩堝10および反応容器20の温度が降温される(ステップS6)。これにより、柱状形状からなるGaN結晶が製造され、一連の動作が終了する。
【0114】
なお、上記においては、圧力/温度相関図PT1の領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させる場合について説明したが、圧力/温度相関図PT1の領域REG11,REG12,REG14および圧力/温度相関図PT2,PT3の領域REG21,REG22,REG23,REG24,REG31,REG32,REG33,REG34に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長またはGaN結晶を溶解させる動作も、図8に示すフリーチャートに従って実行される。
【0115】
このように、この発明においては、複数の混合比(r=0.4,0.7,0.95)に対応して複数の圧力/温度相関図PT1〜PT3が設けられており、所定の混合比rに応じて決定された圧力/温度相関図(圧力/温度相関図PT1〜PT3のいずれか)を用いてGaN結晶が結晶成長または溶解される。
【0116】
したがって、この発明によれば、混合比r、ガス圧力および温度を制御してGaN結晶を結晶成長または溶解できる。
【0117】
上記においては、圧力/温度相関図PT1〜PT3の1つの領域に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長または溶解させる場合について説明したが、この発明においては、これに限らず、圧力/温度相関図PT1〜PT3の複数の領域に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させてもよい。この場合、図8に示すフローチャートのステップS4は、複数のステップからなる。
【0118】
図9は、圧力/温度相関図PT1〜PT3の複数の領域に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させる場合の図8に示すステップS4の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【0119】
図9を参照して、図8に示すステップS3が終了すると、圧力/温度相関図PT1の領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度に空間23の圧力および坩堝10の温度をそれぞれ設定し(ステップS41)、GaN結晶を結晶成長する。これにより、柱状形状からなる複数のGaN結晶が坩堝10の底面11に形成される。
【0120】
その後、圧力/温度相関図PT1の領域REG11に含まれる所望の圧力および所望の温度に空間23の圧力および坩堝10の温度をそれぞれ設定し(ステップS42)、ステップS41において結晶成長したGaN結晶を溶解する。これによって、サイズが小さいGaN結晶が溶解され、サイズの大きいGaN結晶が坩堝10の底面11に残る。そして、坩堝10の底面11に残ったGaN結晶が種結晶となる。
【0121】
引き続き、圧力/温度相関図PT1の領域REG12に含まれる所望の圧力および所望の温度に空間23の圧力および坩堝10の温度をそれぞれ設定し(ステップS43)、種結晶からGaN結晶を結晶成長させる。
【0122】
その後、一連の動作は、図8に示すステップS5へ移行する。
【0123】
このように、圧力/温度相関図PT1の領域REG13、領域REG11および領域REG12に含まれる複数の所望の圧力および複数の所望の温度を順次用いることによって、柱状形状からなる複数のGaN結晶6を坩堝10の底面11に結晶成長させ、その結晶成長させた複数のGaN結晶6の一部を溶解して種結晶を作製し、さらに、その作製した種結晶からGaN結晶8を結晶成長できる。この結果、少数の柱状結晶を種結晶として結晶を大きくすることができ、原料効率を上げて大型の結晶を成長することが可能となる。さらには、種結晶を外に取り出すことなく、結晶成長を行なうことができ、種結晶の清浄表面に結晶を成長させることができる。この結果、GaN結晶を成長させることが可能となる。
【0124】
図10は、圧力/温度相関図PT1〜PT3の複数の領域に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶を結晶成長させる場合の図8に示すステップS4の詳細な動作を説明するための他のフローチャートである。
【0125】
なお、図10に示すフローチャートは、種結晶が予め坩堝10の底面11に設置されている場合のフローチャートである。
【0126】
図10を参照して、図8に示すステップS3が終了すると、圧力/温度相関図PT1の領域REG11に含まれる所望の圧力および所望の温度に空間23の圧力および坩堝10の温度をそれぞれ設定し(ステップS41A)、種結晶を溶解する。
【0127】
その後、圧力/温度相関図PT1の領域REG12に含まれる所望の圧力および所望の温度に空間23の圧力および坩堝10の温度をそれぞれ設定し(ステップS42A)、種結晶からGaN結晶を結晶成長させる。
【0128】
その後、一連の動作は、図8に示すステップS5へ移行する。
【0129】
このように、圧力/温度相関図PT1の領域REG11および領域REG12に含まれる複数の所望の圧力および複数の所望の温度を順次用いることによって、種結晶の一部を溶解し、その溶解した種結晶からGaN結晶を結晶成長できる。
【0130】
種結晶を予め坩堝10の底面11に設置し、その設置した種結晶からGaN結晶を結晶成長させる場合、種結晶の表面が酸化されたり、種結晶の表面に水分等の不純物が付着しているので、領域REG11に含まれる所望の圧力および所望の温度に空間23の圧力および坩堝10の温度をそれぞれ設定して種結晶の一部を溶解させることで、結晶の清浄表面を出すことができる。その後、領域REG12に含まれる所望の圧力および所望の温度に空間23の圧力および坩堝10の温度をそれぞれ設定して溶解後の種結晶からGaN結晶を結晶成長させることにしたものである。これにより、高品質なGaN結晶を種結晶から連続的に結晶成長させることができる。
【0131】
[実施の形態2]
実施の形態2においては、GaN結晶は、950℃の温度および5MPaの窒素圧力が用いられて結晶成長される。この950℃の温度、5MPaの窒素圧力は、図4の(a)に示す圧力/温度相関図PT1の種結晶成長条件(領域REG12に含まれる)となっている。
【0132】
図11は、実施の形態2による結晶成長装置の概略断面図である。図11を参照して、実施の形態2による結晶成長装置100Aは、図1に示す結晶成長装置100にベローズ40、支持装置50、配管200、熱電対210、上下機構220、振動印加装置230
振動検出装置240、ガス供給管250、流量計260、ガスボンベ270および温度制御装置280を追加したものであり、その他は、結晶成長装置100と同じである。
【0133】
なお、結晶成長装置100Aにおいては、温度センサー71は、検出した温度T1を温度制御装置280および制御装置300へ出力し、温度センサー81は、検出した温度T2を温度制御装置280および制御装置300へ出力する。
【0134】
ベローズ40は、重力方向DR1において、坩堝10の上側で反応容器20に連結される。支持装置50は、中空の円筒形状からなり、一部がベローズ40を介して反応容器20の空間23内へ挿入される。
【0135】
配管200および熱電対210は、支持装置50の内部に挿入される。上下機構220は、ベローズ40よりも上側において支持装置50に取り付けられる。ガス供給管250は、一方端が配管200に連結され、他方端が流量計260を介してガスボンベ270に連結される。流量計260は、ガスボンベ270の近傍でガス供給管250に装着される。ガスボンベ270は、ガス供給管250に連結される。
【0136】
ベローズ40は、支持装置50を保持するとともに、反応容器20の内部と外部とを遮断する。また、ベローズ40は、支持装置50の重力方向DR1への移動に伴って重力方向DR1に伸縮する。支持装置50は、反応容器20内に挿入された一方端にGaN結晶からなる種結晶6Bを支持する。
【0137】
配管200は、ガス供給管250から供給された窒素ガスを一方端から支持装置50内へ放出して種結晶6Bを冷却する。熱電対210は、種結晶6Bの温度T3を検出し、その検出した温度T3を温度制御装置280へ出力する。
【0138】
上下機構220は、振動検出装置240からの振動検出信号BDSに応じて、後述する方法によって、種結晶6Bが空間23と混合融液290との気液界面3に接するように支持装置50を上下する。
【0139】
振動印加装置230は、たとえば、圧電素子からなり、所定の周波数を有する振動を支持装置50に印加する。振動検出装置240は、たとえば、加速度ピックアップからなり、支持装置50の振動を検出するとともに、支持装置50の振動を示す振動検出信号BDSを上下機構220へ出力する。
【0140】
ガス供給管250は、ガスボンベ270から流量計260を介して供給された窒素ガスを配管200へ供給する。流量計260は、温度制御装置280からの制御信号CTL4に応じて、ガスボンベ270から供給された窒素ガスの流量を調整してガス供給管250へ供給する。ガスボンベ270は、窒素ガスを保持する。
【0141】
温度制御装置280は、温度センサー71,81からそれぞれ温度T1,T2を受け、熱電対210から温度T3を受ける。そして、温度制御装置280は、温度センサー71,81から受けた温度T1,T2が坩堝10および反応容器20の温度を950℃に設定する950+α℃になると、種結晶6Bの温度である温度T3を950℃から低下させるための制御信号CTL4を生成し、その生成した制御信号CTL4を流量計260へ出力する。
【0142】
坩堝10および反応容器20の温度は、加熱装置70,80のヒーターの温度と所定の温度差αを有するため、加熱装置70,80のヒーターの温度が950+α℃になると、坩堝10および反応容器20の温度は、950℃に設定される。また、混合融液290の温度は、坩堝10および反応容器20の温度に等しく、混合融液290に接触している種結晶6Bの温度は、混合融液290の温度に等しい。
【0143】
したがって、温度制御装置280は、温度センサー71,81からそれぞれ受けた温度T1,T2が950+α℃になると、坩堝10および反応容器20の温度、すなわち、混合融液290に接触した種結晶6Bの温度が950℃に設定されたと判定し、種結晶6Bの温度を950℃から低下させるための制御信号CTL4を生成して流量計260へ出力することにしたものである。
【0144】
図12は、図11に示す支持装置50、配管200および熱電対210の拡大図である。図12を参照して、支持装置50は、筒状部材51と、固定部材52,53とを含む。筒状部材51は、略円形の断面形状を有する。固定部材52は、略L字形状の断面形状を有し、筒状部材51の一方端511側において筒状部材51の外周面51Aおよび底面51Bに固定される。また、固定部材53は、略L字形状の断面形状を有し、筒状部材51の一方端511側において固定部材52と対称に配置されるように筒状部材51の外周面51Aおよび底面51Bに固定される。その結果、筒状部材51および固定部材52,53によって囲まれた領域には、空間部54が形成される。
【0145】
配管200は、略円形の断面形状を有し、筒状部材51の内部に配置される。この場合、配管200の底面200Aは、筒状部材51の底面51Bに対向するように配置される。そして、配管200の底面200Aには、複数の空孔201が形成される。配管200内へ供給された窒素ガスは、複数の空孔201を介して筒状部材51の底面51Bに吹き付けられる。
【0146】
熱電対210は、一方端210Aが筒状部材51の底面51Bに接するように筒状部材51の内部に配置される(図12の(a)参照)。
【0147】
そして、種結晶6Bは、空間部54に嵌合する形状を有し、空間部54に嵌合することにより支持装置50によって支持される。この場合、種結晶6Bは、筒状部材51の底面51Bに接する(図12の(b)参照)。
【0148】
したがって、種結晶6Bと筒状部材51との間の熱伝導率が高くなる。その結果、熱電対210によって種結晶6Bの温度を検出できるとともに、配管200から筒状部材51の底面51Bに吹き付けられた窒素ガスによって種結晶6Bを容易に冷却できる。
【0149】
実施の形態2においては、種結晶自体が種結晶6Bのように嵌合可能な形状であるが、支持装置50と接する構造であれば、種結晶6Bの形状のアダプターを介して六角柱状の種結晶が保持されていてもよい。
【0150】
図13は、図11に示す上下機構220の構成を示す概略図である。図13を参照して、上下機構220は、凹凸部材221と、歯車222と、軸部材223と、モータ224と、制御部225とを含む。
【0151】
凹凸部材221は、略三角形状の断面形状からなり、筒状部材51の外周面51Aに固定される。歯車222は、軸部材223の一方端に固定され、凹凸部材221と噛み合う。軸部材223は、その一方端が歯車222に連結され、他方端がモータ224のシャフト(図示せず)に連結される。
【0152】
モータ224は、制御部225からの制御に従って歯車222を矢印226または227の方向へ回転させる。制御部225は、振動検出装置240からの振動検出信号BDSに基づいて、歯車222を矢印226または227の方向へ回転させるようにモータ224を制御する。
【0153】
歯車222が矢印226の方向へ回転すれば、支持装置50は、重力方向DR1において上方向へ移動し、歯車222が矢印227の方向へ回転すれば、支持装置50は、重力方向DR1において下方向へ移動する。
【0154】
したがって、歯車222を矢印226または227の方向へ回転させることは、支持装置50を重力方向DR1において上下させることに相当する。凹凸部材221の重力方向DR1の長さは、支持装置50を上下させる距離に相当する長さである。
【0155】
図14は、振動検出信号BDSのタイミングチャートである。図14を参照して、振動検出装置240によって検出される振動検出信号BDSは、種結晶6Bが混合融液290に接していないとき、信号成分SS1からなり、種結晶6Bが混合融液290に接しているとき、信号成分SS2からなり、種結晶6Bが混合融液290に浸漬されているとき、信号成分SS3からなる。
【0156】
種結晶6Bが混合融液290に接していないとき、種結晶6Bは、振動印加装置230により印加された振動によって大きく振動するので、振動検出信号BDSは、振幅が相対的に大きい信号成分SS1からなる。一方、種結晶6Bが混合融液290に接しているとき、種結晶6Bは、振動印加装置230から振動が印加されても、混合融液290の粘性によって大きく振動できないので、振動検出信号BDSは、振幅が相対的に小さい信号成分SS2からなる。また、種結晶6Bが混合融液290に浸漬されているとき、種結晶6Bは、振動印加装置230から振動が印加されても、混合融液290の粘性によってさらに振動し難くなるので、振動検出信号BDSは、信号成分SS2よりも振幅が小さい信号成分SS3からなる。
【0157】
再び、図13を参照して、制御部225は、振動検出装置240から振動検出信号BDSを受けると、振動検出信号BDSの信号成分を検出する。そして、制御部225は、その検出した信号成分が信号成分SS1からなるとき、振動検出信号BDSの信号成分が信号成分SS2になるまで、支持装置50を重力方向DR1において降下させるようにモータ224を制御する。
【0158】
より具体的には、制御部225は、歯車222を矢印227の方向へ回転させるようにモータ224を制御し、モータ224は、制御部225からの制御に従って歯車222を軸部材223を介して矢印227の方向へ回転させる。これによって、支持装置50は、重力方向DR1において下方向へ移動する。
【0159】
そして、制御部225は、振動検出装置240から受ける振動検出信号BDSの信号成分が信号成分SS1から信号成分SS2へ切換わると、歯車222の回転を停止するようにモータ224を制御し、モータ224は、制御部225からの制御に従って歯車222の回転を停止させる。これによって、支持装置50は、移動を停止し、種結晶6Bを気液界面3に保持する。
【0160】
また、制御部225は、信号成分SS2からなる振動検出信号BDSを振動検出装置240から受けたとき、支持装置50の移動を停止するようにモータ224を制御する。この場合は、種結晶6Bが混合融液290に既に接触しているからである。
【0161】
さらに、制御部225は、信号成分SS3からなる振動検出信号BDSを振動検出装置240から受けたとき、振動検出信号BDSの信号成分が信号成分SS2になるまで、支持装置50を重力方向DR1において上昇させるようにモータ224を制御する。
【0162】
より具体的には、制御部225は、歯車222を矢印226の方向へ回転させるようにモータ224を制御し、モータ224は、制御部225からの制御に従って歯車222を軸部材223を介して矢印226の方向へ回転させる。これによって、支持装置50は、重力方向DR1において上方向へ移動する。
【0163】
そして、制御部225は、振動検出装置240から受ける振動検出信号BDSの信号成分が信号成分SS3から信号成分SS2へ切換わると、歯車222の回転を停止するようにモータ224を制御し、モータ224は、制御部225からの制御に従って歯車222の回転を停止させる。これによって、支持装置50は、移動を停止し、種結晶6Bを気液界面3に保持する。
【0164】
このように、上下機構220は、振動検出装置240が検出する振動検出信号BDSに基づいて、種結晶6Bが混合融液290に接するように支持装置50を重力方向DR1に移動させる。
【0165】
図15は、坩堝10および反応容器20の温度の他のタイミングチャートである。また、図16は、種結晶6Bの温度と窒素ガスの流量との関係を示す図である。
【0166】
なお、図15において、直線k11は、坩堝10および反応容器20の温度を示し、曲線k12および直線k13は、種結晶6Bの温度を示す。
【0167】
図15を参照して、加熱装置70,80が坩堝10および反応容器20を加熱し始めると、坩堝10および反応容器20の温度は、上昇し始め、タイミングt1において98℃に達し、タイミングt2で950℃に達する。
【0168】
そうすると、図5において説明したように、窒素4および金属Na蒸気5が空間23内に閉じ込められる(図6参照)。
【0169】
そして、坩堝10および反応容器20の温度が950℃に達するタイミングt2で、上下機構220は、振動検出装置240からの振動検出信号BDSに基づいて、上述した方法によって支持装置50を上下し、種結晶6Bを混合融液290に接触させる。
【0170】
そして、坩堝10および反応容器20の温度が950℃程度の高温状態では、空間23内の窒素ガス4は、金属Naを媒介として混合融液290中に取り込まれる。この場合、混合融液290中の窒素濃度またはGaxNy(x,yは実数)の濃度は、空間23と混合融液290との気液界面3付近において最も高いため、GaN結晶が気液界面3に接している種結晶6Bから成長し始める。
【0171】
なお、この発明においては、GaxNyを「III族窒化物」と言い、GaxNyの濃度を「III族窒化物濃度」と言う。
【0172】
窒素ガスを配管200内へ供給しない場合、種結晶6Bの温度T3は、混合融液290の温度と同じ950℃であるが、実施の形態2においては、種結晶6B付近の混合融液290中の窒素またはIII族窒化物の過飽和度を上げるために、配管200内へ窒素ガスを供給して種結晶6Bを冷却し、種結晶6Bの温度T3を混合融液290の温度よりも低くする。
【0173】
より具体的には、種結晶6Bの温度T3は、タイミングt2以降、曲線k12に従って950℃よりも低い温度Ts1に設定される。この温度Ts1は、例えば、900℃である。種結晶6Bの温度T3を温度Ts1に設定する方法について説明する。
【0174】
温度制御装置280は、温度センサー71,81からそれぞれ受けた温度T1,T2が950+α℃に達すると、種結晶6Bの温度が950℃に設定されたと判定し、種結晶6Bの温度T3を温度Ts1に設定する流量からなる窒素ガスを流すための制御信号CTL4を生成して流量計260へ出力する。
【0175】
そうすると、流量計260は、制御信号CTL4に応じて、温度T3を温度Ts1に設定する流量からなる窒素ガスをガスボンベ270からガス供給管250を介して配管200内へ流す。種結晶6Bの温度は、窒素ガスの流量に略比例して950℃から低下し、窒素ガスの流量が流量fr1(sccm)になると、種結晶6Bの温度T3は、温度Ts1に設定される(図16参照)。
【0176】
したがって、流量計260は、流量fr1からなる窒素ガスを配管200内へ流す。そして、配管200内へ供給された窒素ガスは、配管200の複数の空孔201から筒状部材51の底面51Bに吹き付けられる。
【0177】
これによって、種結晶6Bは、筒状部材51の底面51Bを介して冷却され、種結晶6Bの温度T3は、タイミングt4で温度Ts1に低下し、その後、タイミングt3まで温度Ts1に保持される。
【0178】
なお、実施の形態2においては、好ましくは、種結晶6Bの温度T3は、タイミングt2以降、直線k13に従って低下するように制御される。すなわち、種結晶6Bの温度T3は、タイミングt2からタイミングt3までの間で950℃から温度Ts2(<Ts1)まで低下される。この場合、流量計260は、温度制御装置280からの制御信号CTL4に基づいて、直線k14に従って配管200内へ流す窒素ガスの流量を0から流量fr2まで増加する。窒素ガスの流量が流量fr2になると、種結晶6Bの温度T3は、温度Ts1よりも低い温度Ts2に設定される。そして、温度Ts2は、たとえば、850℃である。
【0179】
このように、混合融液290の温度(=950℃)と種結晶6Bの温度T3との差を徐々に大きくするのは、次の2つの理由による。
【0180】
1つ目の理由は、GaN結晶の結晶成長の進行とともに、種結晶6Bには、GaN結晶が付着するので、種結晶6Bの温度を徐々に低下させないと、種結晶6Bから結晶成長したGaN結晶の温度を混合融液290の温度よりも低い温度に設定し難くなるからである。
【0181】
2つ目の理由は、GaN結晶の結晶成長の進行とともに、混合融液290中のGaが消費され、混合比rが大きくなり、混合融液290中の窒素濃度またはIII族窒化物濃度の過飽和度が小さくなるので、種結晶6Bの温度を徐々に低下させないと、混合融液290中の窒素濃度またはIII族窒化物濃度を過飽和に保持し難くなるからである。
【0182】
したがって、GaN結晶の結晶成長の進行とともに、種結晶6Bの温度を徐々に低下させることによって、種結晶6B付近の混合融液290中の窒素またはIII族窒化物の過飽和度が徐々に大きくなり、GaN結晶の結晶成長を少なくとも保持できる。その結果、GaN結晶のサイズを拡大できる。
【0183】
図17は、図11に示す結晶成長装置100Aを用いてGaN結晶を製造する動作を説明するためのフローチャートである。図17に示すフローチャートは、図8に示すフローチャートのステップS2とステップS3との間にステップS2Aを挿入し、ステップS4とステップS5との間にステップS4Aを挿入し、ステップS5とステップS6との間にステップS5A,5Bを挿入したものであり、その他は、図8に示すフローチャートと同じである。
【0184】
図17を参照して、上述したステップS2が終了すると、Arガス雰囲気中で種結晶6Bを坩堝10内の金属Naおよび金属Gaの上側に設定する(ステップS2A)。より具体的には、種結晶6Bを支持装置50の一方端511側に形成された空間54へ嵌合することによって(図12の(b)参照)、種結晶6Bを坩堝10内の金属Naおよび金属Gaの上側に設定する。
【0185】
その後、上述したステップS3,S4が実行される。この場合、ステップS4において、窒素ガスの圧力が5MPaに設定され、坩堝10および反応容器20の温度が950℃に設定される。そして、ステップS4の後、坩堝10および反応容器20が所望の温度に加熱される過程で、坩堝10内の金属Naおよび金属Gaも液体になり、金属Naと金属Gaとの混合融液290が坩堝10内で発生する。そして、上下機構220は、上述した方法によって、種結晶6Bを混合融液290に接触させる(ステップS4A)。
【0186】
その後、坩堝10および反応容器20の温度が950℃の高温状態では、空間23内の窒素ガスが金属Naを媒介として混合融液290中へ取り込まれ、種結晶6BからGaN結晶が成長し始める。
【0187】
そして、上述したステップS5が実行され、種結晶6Bの温度T3が上述した方法によって混合融液290の温度(=950℃)よりも低い温度Ts1(または温度Ts2)に設定される(ステップS5A)。
【0188】
そして、GaN結晶の成長が進行すると、空間23内の窒素ガスが消費され、空間23内の窒素ガスが減少する。そうすると、空間23内の圧力P1が配管30内の空間31の圧力P2よりも低くなり(P1<P2)、空間23内と空間31内との間に差圧が発生し、空間31の窒素ガスは、融液保持部材60および金属融液190(=金属Na融液)を介して空間23内へ順次補給される。
【0189】
その後、種結晶6Bが混合融液290に接触するように、上述した方法によって種結晶6Bを降下させる(ステップS5B)。これによって、大きなサイズのGaN結晶が成長する。そして、上述したステップS6が実行され、種結晶6BからのGaN結晶の製造が終了する。
【0190】
なお、図17に示すフローチャートにおいては、坩堝10および反応容器20が950℃に加熱されると、種結晶6Bを金属Naおよび金属Gaとの混合融液290に接触させると説明したが(ステップS4,S4A参照)、この発明においては、これに限らず、坩堝10および反応容器20が950℃に加熱されると(ステップS4参照)、ステップS4Aにおいて、種結晶6Bを金属Naおよび金属Gaとの混合融液290中に保持するようにしてもよい。つまり、坩堝10および反応容器20が950℃に加熱されると、種結晶6Bを混合融液290に浸漬して種結晶6BからGaN結晶を結晶成長させるようにしてもよい。
【0191】
そして、種結晶6Bを混合融液290に接触させる動作は、振動印加装置230によって支持装置50に振動を印加し、支持装置50の振動を示す振動検出信号BDSを検出するステップAと、検出された振動検出信号BDSが、種結晶6Bが混合融液290に接したときの振動検出信号(振動検出信号BDSの成分SS2)になるように支持装置50を上下機構220によって移動させるステップBとからなる。
【0192】
また、種結晶6Bを混合融液290中に保持する動作は、振動印加装置230によって支持装置50に振動を印加し、支持装置50の振動を示す振動検出信号BDSを検出するステップAと、検出された振動検出信号BDSが、種結晶6Bが混合融液290中に浸漬されたときの振動検出信号(振動検出信号BDSの成分SS3)になるように支持装置50を上下機構220によって移動させるステップCとからなる。
【0193】
ステップBおよびステップCにおいて、支持装置50を上下機構220によって移動させるとしているのは、坩堝10の容積と、坩堝10に入れられた金属Naおよび金属Gaの全体量との関係によって、坩堝10内で生成された混合融液290の液面(=気液界面3)の位置が変動し、坩堝10内で混合融液290が生成された時点で、種結晶6Bが混合融液290に浸漬されていることもあれば、種結晶6Bが空間23に保持されていることもあるので、種結晶6Bを混合融液290に接触または種結晶6Bを混合融液290に浸漬するには、種結晶6Bを重力方向DR1において上下動させる必要があるからである。
【0194】
また、図17に示すフローチャートのステップS5Bにおいては、種結晶6Bが混合融液290に接触するように種結晶6Bを降下させると説明したが、この発明においては、図17に示すフローチャートのステップS5Bは、一般的には、GaN結晶の結晶成長中、種結晶6Bから結晶成長したGaN結晶が混合融液290に接するように支持装置50を上下機構220によって移動させるステップDからなる。
【0195】
GaN結晶の結晶成長とともに、混合融液290中のGaが消費されて混合融液290の液面(=気液界面3)が低下するが、この液面(=気液界面3)が低下する速度と、GaN結晶の結晶成長速度との関係によって種結晶6Bから結晶成長したGaN結晶を上方向へ移動させる場合もあれば、種結晶6Bから結晶成長したGaN結晶を下方向へ移動させる場合もあるからである。
【0196】
すなわち、液面(=気液界面3)の低下速度がGaN結晶の結晶成長速度よりも速い場合、種結晶6Bから結晶成長したGaN結晶を下方向へ移動させてGaN結晶を混合融液290の液面(=気液界面3)に接触させる。一方、液面(=気液界面3)の低下速度がGaN結晶の結晶成長速度よりも遅い場合、種結晶6Bから結晶成長したGaN結晶を上方向へ移動させてGaN結晶を混合融液290の液面(=気液界面3)に接触させる。
【0197】
このように、液面(=気液界面3)の低下速度とGaN結晶の結晶成長速度との関係によって、種結晶6Bから結晶成長したGaN結晶を重力方向DR1において上下動させる必要があるので、ステップDにおいては、「上下機構220によって支持装置50を移動させる」としたものである。
【0198】
そして、ステップDにおいて、種結晶6Bから結晶成長したGaN結晶を混合融液290に接触させる動作は、上述したステップAおよびステップBからなる。
【0199】
結晶成長装置100Aにおいては、種結晶6Bは、グローボックス中で反応容器20内に設置されるので、ステップS4の詳細な動作は、図10に示すフローチャートからなる。
【0200】
このように、種結晶6Bを空間23と混合融液290との気液界面3に接触させて種結晶6BからGaN結晶を結晶成長する場合にも、混合比rに応じて決定された圧力/温度相関図(圧力/温度相関図PT1〜PT3のいずれか)を用いてGaN結晶が結晶成長される。
【0201】
なお、ガスボンベ140、圧力調整器130、ガス供給管90,110、バルブ121、配管30、融液保持部材60および金属融液190は、「ガス供給装置」を構成する。
【0202】
[実施の形態3]
図18は、実施の形態3による結晶成長装置の概略断面図である。図18を参照して、実施の形態3による結晶成長装置100Bは、図1に示す結晶成長装置100に配管320,330、加熱装置350,360,370および温度センサー351を追加し、金属融液190を金属融液340に代え、制御装置300を制御装置300Aに代えたものであり、その他は、結晶成長装置100と同じである。
【0203】
なお、結晶成長装置100Bにおいては、融液保持部材60は、配管320内に設置され、圧力センサー310は、配管320に取り付けられる。
【0204】
配管320は、一方端がガス供給管110に連結され、他方端が配管330の一方端に連結される。配管330は、一方端が配管320の他方端に連結され、他方端が反応容器20に連結される。
【0205】
金属融液340は、融液保持部材60によって配管320内に保持される。加熱装置350は、金属融液340に対向する位置に設置され、温度センサー351は、加熱装置350に近接して配置される。また、加熱装置360は、配管320の空間322に対向して設置され、加熱装置370は、配管330に対向して設置される。
【0206】
加熱装置350は、ヒーターと電流源とからなる。そして、加熱装置350は、制御装置300Aからの制御信号CTL5に応じて電流源によってヒーターに電流を流し、金属融液340の温度を所定の温度に設定する。温度センサー351は、加熱装置350のヒーターの温度T4を検出し、その検出した温度T4を制御装置300Aへ出力する。
【0207】
加熱装置360は、配管320の空間322を結晶成長温度(=725℃)に加熱し、加熱装置370は、配管330の空間331を結晶成長温度(=725℃)に加熱する。
【0208】
制御装置300Aは、温度センサー71,81,351からそれぞれ温度T1,T2,T4を受け、圧力センサー310から静水圧Psを受ける。そして、制御装置300Aは、温度センサー351から受けた温度T4に基づいて、金属融液340の温度を所定の温度に設定するための制御信号CTL5を生成し、その生成した制御信号CTL5を加熱装置350へ出力する。
【0209】
加熱装置350のヒーターの温度は、金属融液340の温度と所定の温度差βを有する。加熱装置350のヒーターの温度がTm+β℃であるとき、金属融液340の温度が温度Tmに設定される。
【0210】
したがって、制御装置300Aは、温度センサー351からの温度T4をTm+β℃に設定するための制御信号CTL5を生成して加熱装置350へ出力し、金属融液340の温度を所定の温度Tmに設定する。制御装置300Aは、その他、制御装置300と同じ機能を果たす。
【0211】
図19は、混合融液290中における金属Naと金属Gaとの混合比rを制御する方法を説明するための概念図である。図19の(a)は、金属融液340(=金属Na融液)から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaが混合融液290から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略等しい場合を示し、図19の(b)は、蒸気圧PNaが蒸気圧PNa−Gaよりも高い場合を示し、図19の(c)は、蒸気圧PNaが蒸気圧PNa−Gaよりも低い場合を示す。
【0212】
金属融液340の温度が混合融液290の温度と等しい場合、蒸気圧PNaは、蒸気圧PNa−Gaよりも高い。したがって、金属融液340の温度が混合融液290の温度(=725℃)よりも低い温度に設定されると、蒸気圧PNaが蒸気圧PNa−Gaに略等しくなり、金属融液340と混合融液290との間における金属Naの気相輸送が、見かけ上、なくなる(図19の(a)参照)。その結果、混合融液290および金属融液340の量は、ほぼ一定に保持される。
【0213】
蒸気圧PNaが蒸気圧PNa−Gaよりも高い場合、金属Naが金属融液340から混合融液290へ気相輸送され、金属融液340は減少し、混合融液290は増加する(図19の(b)参照)。その結果、混合比rが大きくなる。
【0214】
蒸気圧PNaが蒸気圧PNa−Gaよりも低い場合、金属Naが混合融液290から金属融液340へ気相輸送され、混合融液290は減少し、金属融液340は増加する(図19の(c)参照)。その結果、混合比rが小さくなる。
【0215】
このように、蒸気圧PNaと蒸気圧PNa−Gaとの関係によって、混合融液290および金属融液340の量が保持されたり、増減したりする。
【0216】
図20は、図18に示す制御装置300Aの一部の構成を示すブロック図である。図20を参照して、制御装置300Aは、入力ボタン301〜307と、CPU(Central Processing Unit)308と、メモリ309とを含む。
【0217】
入力ボタン301は、混合比rを“0.4”に設定するためのボタンであり、入力ボタン302は、混合比rを“0.7”に設定するためのボタンであり、入力ボタン303は、混合比rを“0.95”に設定するためのボタンである。
【0218】
また、入力ボタン304は、圧力/温度相関図PT1の領域REG11、圧力/温度相関図PT2の領域REG21および圧力/温度相関図PT3の領域REG31のいずれかを指定するためのボタンであり、入力ボタン305は、圧力/温度相関図PT1の領域REG12、圧力/温度相関図PT2の領域REG22および圧力/温度相関図PT3の領域REG32のいずれかを指定するためのボタンであり、入力ボタン306は、圧力/温度相関図PT1の領域REG13、圧力/温度相関図PT2の領域REG23および圧力/温度相関図PT3の領域REG33のいずれかを指定するためのボタンであり、入力ボタン307は、圧力/温度相関図PT1の領域REG14、圧力/温度相関図PT2の領域REG24および圧力/温度相関図PT3の領域REG34のいずれかを指定するためのボタンである。
【0219】
入力ボタン301,304を連続して押すと、圧力/温度相関図PT1の領域REG11を指定したことになる。そして、圧力/温度相関図PT1の領域REG12,REG13,REG14および圧力/温度相関図PT2,PT3の領域REG21,REG22,REG23,REG24,REG31,REG32,REG33,REG34のいずれかを指定する場合、入力ボタン301〜303のいずれかと入力ボタン304〜307のいずれかとを連続して押す。
【0220】
また、圧力/温度相関図PT1〜PT3に含まれる複数の領域を指定する場合、入力ボタン301〜303のいずれかと、入力ボタン304〜307のうちの複数のボタンとを連続して押す。そして、入力ボタン304〜307のうちの複数のボタンを押す順序によってGaN結晶を結晶成長させるときのモードを各種に設定する。
【0221】
たとえば、領域REG13、領域REG11および領域REG12を順次指定する場合、入力ボタン301を押した後に、入力ボタン306、入力ボタン304および入力ボタン305を順次押す。
【0222】
入力ボタン301〜307は、押下されると、それぞれ、信号SG1〜SG7を生成してCPU304へ出力する。信号SG1は、混合比rを“0.4”に設定するための信号であり、信号SG2は、混合比rを“0.7”に設定するための信号であり、信号SG3は、混合比rを“0.95”に設定するための信号である。
【0223】
また、信号SG4は、領域REG11,REG21,REG31のいずれかを指定するための信号であり、信号SG5は、領域REG12,REG22,REG32のいずれかを指定するための信号であり、信号SG6は、領域REG13,REG23,REG33のいずれかを指定するための信号であり、信号SG7は、領域REG14,REG24,REG34のいずれかを指定するための信号である。
【0224】
表1は、信号SG1〜SG7と、混合比r=0.4,0.7,0.95および領域REG11,REG12,REG13,REG14;REG21,REG22,REG23,REG24;REG31,REG32,REG33,REG34との対応関係を示す。
【0225】
【表1】

【0226】
混合比r=0.4,0.7,0.95は、それぞれ、信号SG1〜SG3に対応付けられ、信号SG4は、領域REG11,REG21,REG31に対応付けられ、信号SG5は、領域REG12,REG22,REG32に対応付けられ、信号SG6は、領域REG13,REG23,REG33に対応付けられ、信号REG7は、領域REG14,REG24,REG34に対応付けられる。
【0227】
CPU308は、表1を保持しており、信号SG1〜SG3を受けると、表1を参照して、それぞれ、混合比r=0.4,0.7,0.95を検出する。また、CPU308は、信号SG1を受けた後に、信号SG4を受けると、表1を参照して領域REG11を検出し、信号SG2を受けた後に、信号SG4を受けると、表1を参照して領域REG21を検出し、信号SG3を受けた後に、信号SG4を受けると、表1を参照して領域REG31を検出する。
【0228】
さらに、CPU308は、信号SG1を受けた後に、信号SG5を受けると、表1を参照して信号REG12を検出し、信号SG2を受けた後に、信号SG5を受けると、表1を参照して信号REG22を検出し、信号SG3を受けた後に、信号SG5を受けると、表1を参照して信号REG32を検出する。
【0229】
さらに、CPU308は、信号SG1を受けた後に、信号SG6を受けると、表1を参照して信号REG13を検出し、信号SG2を受けた後に、信号SG6を受けると、表1を参照して信号REG23を検出し、信号SG3を受けた後に、信号SG6を受けると、表1を参照して信号REG33を検出する。
【0230】
さらに、CPU308は、信号SG1を受けた後に、信号SG7を受けると、表1を参照して信号REG14を検出し、信号SG2を受けた後に、信号SG7を受けると、表1を参照して信号REG24を検出し、信号SG3を受けた後に、信号SG7を受けると、表1を参照して信号REG34を検出する。
【0231】
図21は、混合比rと圧力/温度相関図との関係を示す図である。図21を参照して、圧力/温度相関図PT1〜PT3は、それぞれ、混合比r=0.4,0.7,0.95に対応付けられている。そして、メモリ309は、圧力/温度相関図PT1〜PT3をそれぞれ混合比r=0.4,0.7,0.95に対応付けて記憶する。そして、図21に示す圧力/温度相関図PT1〜PT3は、図4に示す圧力/温度相関図PT1〜PT3であるので、メモリ309は、圧力および温度が記載された圧力/温度相関図PT1〜PT3をそれぞれ混合比r=0.4,0.7,0.95に対応付けて記憶する。
【0232】
再び、図20を参照して、CPU308は、信号SG1〜SG3のいずれかと、信号SG4〜SG7のうちの少なくとも1つとを連続して受ける。まず、CPU308が信号SG1および信号SG6を連続して受けた場合について説明する。
【0233】
CPU308は、信号SG1および信号SG6を連続して受けると、信号SG1によって指定された混合比r(=0.4)および領域REG13を表1を参照して検出するとともに、その検出した混合比r(=0.4)に対応する圧力/温度相関図PT1をメモリ309から読み出す。
【0234】
メモリ309は、上述したように、圧力/温度相関図PT1〜PT3をそれぞれ混合比r=0.4,0.7,0.95に対応付けて記憶しているので、CPU308は、混合比r=0.4に対応する圧力/温度相関図PT1をメモリ309から読み出すことができる。
【0235】
そして、CPU308は、信号SG6に応じて領域REG13を検出しているので、読み出した圧力/温度相関図PT1の領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度を検出する。たとえば、CPU308は、所望の圧力および所望の温度として5.05MPaおよび725℃を圧力/温度相関図PT1の領域REG13から検出する。
【0236】
そうすると、CPU308は、混合融液290中の金属Naと金属Gaとの混合比を検出した混合比r=0.4に設定するための制御信号CTL5を生成して加熱装置350へ出力する。
【0237】
混合融液290の温度と金属融液340の温度との関係によって、蒸気圧PNaと蒸気圧PNa−Gaとの関係が決定され、蒸気圧PNaと蒸気圧PNa−Gaとの関係によって、上述したように、混合融液290および金属融液350中の金属Na量が保持されたり、金属融液340から混合融液290へ金属Naが移動したり、混合融液290から金属融液340へ金属Naが移動したりする(図19参照)。ここで言う金属Naの移動とは、気相輸送のことである。
【0238】
そして、混合融液290の温度が725℃である場合に、混合融液290中の混合比rが0.4,0.7,0.95になるときの金属融液340の温度を予め測定しておけば、CPU308は、温度センサー351から受けた温度T4に基づいて、現在の混合融液290中の混合比rNOWと、信号SG1によって指定された混合比rDIRに混合融液290中の混合比rを設定するための金属融液340の温度TDIRとを検出できる。
【0239】
図22は、金属融液340の温度と混合比rとの関係を示す図である。図22において、横軸は、混合融液340の温度を表し、縦軸は、混合比rを表す。曲線k15は、混合融液290の温度が725℃である場合の混合比rと金属融液340の温度との関係を示す。
【0240】
図22を参照して、金属融液340の温度がTNa1(>600℃)である場合、混合融液290中の混合比rは、0.4に設定され、金属融液340の温度がTNa2(>TNa1)である場合、混合融液290中の混合比rは、0.7に設定され、金属融液340の温度がTNa3(TNa2<TNa3<950℃)である場合、混合融液290中の混合比rは、0.95に設定される。
【0241】
CPU308は、温度センサー351から受けた温度T4がTNa2+β℃であれば、金属融液340の温度がTNa2であり、現在の混合融液290中の混合比rNOWが0.7であることを検知する。そして、CPU308は、信号SG1によって指定された混合比rDIRが0.4であるので、混合融液290中の混合比を混合比rDIRに設定するための金属融液340の温度がTNa1であることを検出する。
【0242】
そして、CPU308は、加熱装置350のヒーターの温度をTNa1+β℃に設定するための制御信号CTL5を生成して加熱装置350へ出力する。
【0243】
また、CPU308は、圧力/温度相関図PT1の領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度として5.05MPaおよび950℃を検出したので、混合融液290の温度(=坩堝10および反応容器20の温度)を950℃に設定するための制御信号CTL1,2を生成してそれぞれ加熱装置70,80へ出力するとともに、空間23の圧力を5.05MPaに設定するための制御信号CTL3を生成して圧力調整器130へ出力する。
【0244】
そうすると、加熱装置350は、制御装置300AのCPU308からの制御信号CTL5に応じて、金属融液340の温度をTNa1に設定する。これによって、混合融液290中の混合比rは、“0.4”に設定される。
【0245】
また、加熱装置70,80は、制御装置300AのCPU308からの制御信号CTL1,2に応じて、混合融液290の温度を950℃に設定する。さらに、圧力調整器130は、制御装置300AのCPU308からの制御信号CTL3に応じて、空間23の圧力を5.05MPaに設定する。
【0246】
これによって、圧力/温度相関図PT1の領域REG13に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶の結晶成長が行なわれる。
【0247】
次に、CPU308が信号SG1、信号SG4および信号SG5を連続して順次受けた場合について説明する。
【0248】
CPU308は、信号SG1、信号SG4および信号SG5を連続して順次受けると、信号SG1によって指定された混合比r(=0.4)および領域REG11,REG12を表1を参照して検出するとともに、その検出した混合比r(=0.4)に対応する圧力/温度相関図PT1をメモリ309から読み出す。
【0249】
そして、CPU308は、圧力/温度相関図PT1の領域REG11に含まれる所望の圧力Pf1および所望の温度Tf1と、領域REG12に含まれる所望の圧力Pf2および所望の温度Tf2とを検出する。
【0250】
そうすると、CPU308は、上述した方法によって、混合融液290中の混合比rを“0.4”に設定するための制御信号CTL5を生成して加熱装置350へ出力し、混合融液290の温度を所望の温度Tf1に設定するための制御信号CTL1,2を生成してそれぞれ加熱装置70,80へ出力し、さらに、空間23の圧力を圧力Pf1に設定するための制御信号CTL3を生成して圧力調整器130へ出力する。
【0251】
加熱装置350は、制御装置300AのCPU308からの制御信号CTL5に応じて、金属融液340の温度をTNa1に設定する。これによって、混合融液290中の混合比rは、“0.4”に設定される。
【0252】
また、加熱装置70,80は、制御装置300AのCPU308からの制御信号CTL1,2に応じて、混合融液290の温度をTf1に設定する。さらに、圧力調整器130は、制御装置300AのCPU308からの制御信号CTL3に応じて、空間23の圧力をPf1に設定する。
【0253】
これによって、圧力/温度相関図PT1の領域REG11に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いてGaN結晶の溶解が行なわれる。
【0254】
その後、CPU308は、混合融液290の温度を所望の温度Tf2に設定するための制御信号CTL1,2を生成してそれぞれ加熱装置70,80へ出力し、空間23の圧力を圧力Pf2に設定するための制御信号CTL3を生成して圧力調整器130へ出力する。
【0255】
そして、加熱装置70,80は、制御装置300AのCPU308からの制御信号CTL1,2に応じて、混合融液290の温度をTf2に設定する。また、圧力調整器130は、制御装置300AのCPU308からの制御信号CTL3に応じて、空間23の圧力をPf2に設定する。
【0256】
これによって、圧力/温度相関図PT1の領域REG12に含まれる所望の圧力および所望の温度を用いて種結晶からのGaN結晶の結晶成長が行なわれる。
【0257】
なお、CPU308は、上述した信号パターンと異なる信号パターンを入力ボタン301〜307から受けた場合も、上述した動作と同じ動作に従って、混合融液290中の混合比rを指定された混合比に設定するとともに、圧力/温度相関図PT1〜PT3の各領域に含まれる所望の圧力および所望の温度を設定する。
【0258】
また、CPU308は、図22に示す金属融液340の温度と混合比rとの関係を圧力/温度相関図PT1〜PT3の各領域に含まれる所望の温度に対して保持している。
【0259】
図23は、GaN結晶の製造方法を説明するための実施の形態2におけるフローチャートである。図23に示すフローチャートは、図8に示すフローチャートのステップS5とステップS6との間に、ステップS51〜ステップS54を追加したものであり、その他は、図8に示すフローチャートと同じである。
【0260】
図23を参照して、上述したステップS1〜ステップS5が実行されると、CPU308は、混合融液290中の混合比を変えるか否かを判定する(ステップS51)。より具体的には、CPU308は、信号SG1〜SG3のいずれかによって指定された混合比rDIRが現在の混合比rNOWと異なるか否かによって、混合融液290中の混合比を変えるか否かを判定する。
【0261】
ステップS51において、混合融液290中の混合比を変えると判定されたとき、混合融液290中の混合比rを0.4,0.7,0.95の範囲で上述した方法によって変える(ステップS52)。
【0262】
そして、変化された混合比に対応する圧力/温度相関図を所定の圧力/温度相関図として圧力/温度相関図PT1〜PT3から選択する(ステップS53)。
【0263】
その後、選択された圧力/温度相関図に含まれる所望の圧力および所望の温度に空間23の圧力および坩堝10の温度をそれぞれ設定する(ステップS54)。そして、一連の動作は、ステップS5へ移行し、ステップS51において、混合融液290中の混合比を変えないと判定されるまで、上述したステップS5,S51〜S54が繰り返し実行される。
【0264】
そして、ステップS51において、混合融液290中の混合比を変えないと判定されると、一連の動作は、上述したステップS6へ移行する。
【0265】
図23に示すフローチャートのステップ5,S51〜S54のループは、混合融液290中の混合比を変え、その変えた混合比に対応する圧力/温度相関図(圧力/温度相関図PT1〜PT3のいずれか)を用いてGaN結晶を結晶成長するループである。
【0266】
図24は、実施の形態3による結晶成長装置の他の概略断面図である。実施の形態3による結晶成長装置は、図24に示す結晶成長装置100Cであってもよい。図24を参照して、実施の形態3による結晶成長装置100Cは、図18に示す結晶成長装置100Bにベローズ40、支持装置50、配管200、熱電対210、上下機構220、振動印加装置230 振動検出装置240、ガス供給管250、流量計260、ガスボンベ270および温度制御装置280を追加したものであり、その他は、結晶成長装置100Bと同じである。
【0267】
なお、結晶成長装置100Cにおいては、温度センサー71は、検出した温度T1を温度制御装置280および制御装置300Aへ出力し、温度センサー81は、検出した温度T2を温度制御装置280および制御装置300Aへ出力する。
【0268】
ベローズ40、支持装置50、配管200、熱電対210、上下機構220、振動印加装置230 振動検出装置240、ガス供給管250、流量計260、ガスボンベ270および温度制御装置280については、実施の形態1において説明したとおりである。
【0269】
図25は、図24に示す結晶成長装置100Cを用いてGaN結晶を製造する動作を説明するためのフローチャートである。図25に示すフローチャートは、図17に示すフローチャートのステップS5BとステップS6との間にステップS51〜ステップS54を追加したものであり、その他は、図17に示すフローチャートと同じである。
【0270】
図25を参照して、上述したステップS1,S2,S2A,S3,S4,S4A,S5,S5A,S5Bが実行されると、図23において説明したステップS51〜ステップS54が順次実行される。そして、ステップS54の後、一連の動作は、ステップS5へ移行する。
【0271】
図25に示すフローチャートのステップ5,S5A,S5B,S51〜S54のループは、種結晶6Bを混合融液290に接触させた状態で、混合融液290中の混合比を変え、その変えた混合比に対応する圧力/温度相関図(圧力/温度相関図PT1〜PT3のいずれか)を用いて種結晶からGaN結晶を結晶成長するループである。
【0272】
上述したように、実施の形態3によれば、混合融液290中の金属Naと金属Gaとの混合比rを信号SG1〜SG3によって指定された混合比に自動的に変え、その変えた混合比に対応する圧力/温度相関図を用いてGaN結晶を結晶成長または溶解する。したがって、混合比r、圧力および温度を制御してGaN結晶を結晶成長できる。
【0273】
なお、実施の形態3においては、配管320,330と、金属融液340と、混合融液290中の混合比を信号SG1〜SG3によって指定された混合比rDIRに変えるために制御信号CTL5を生成して加熱装置350へ出力するCPU308と、制御信号CTL5に応じて、混合融液290中の混合比を混合比rDIRに設定する温度に金属融液340の温度を設定する加熱装置350とは、「混合比変化手段」を構成する。
【0274】
また、信号SG1〜SG3によって指定された混合比rDIRに対応する圧力/温度相関図をメモリ309から読み出すCPU308は、「選択手段」を構成する。
【0275】
さらに、配管320は、「外部容器」を構成し、空間331,322は、「外部容器空間」を構成する。
【0276】
さらに、混合融液290中の混合比を信号SG1〜SG3によって指定された混合比rDIRに変えるために制御信号CTL5を生成して加熱装置350へ出力するCPU308と、制御信号CTL5に応じて、混合融液290中の混合比を混合比rDIRに設定する温度に金属融液340の温度を設定する加熱装置350とは、「蒸気圧制御器」を構成する。
【0277】
図26は、この発明による融液保持部材の他の斜視図である。また、図27は、図26に示す融液保持部材400の固定方法を説明するための断面図である。図26を参照して、融液保持部材400は、栓401と、複数の凸部402とからなる。栓401は、長さ方向DR3へ直径が変化する円柱形状からなる。複数の凸部402の各々は、略半球形状を有し、直径が数十μmである。そして、複数の凸部402は、栓401の外周面401Aにランダムに形成される。ただし、隣接する2つの凸部402の間隔は、数十μmに設定される。
【0278】
図27を参照して、融液保持部材400は、支持部材403,404によって配管30内に固定される。より具体的には、融液保持部材400は、一方端が配管30の内壁に固定された支持部材403と、一方端が配管30の内壁に固定された支持部材404とによって挟まれることによって固定される。
【0279】
この場合、融液保持部材400の凸部402は、配管30に接していてもよく、接していなくてもよい。凸部402が配管30に接しないように融液保持部材400が固定される場合、凸部402と配管30との間隔を金属融液190の表面張力によって金属融液190を保持可能な間隔に設定して融液保持部材400を支持部材403,404によって固定する。
【0280】
配管30内に入れられた金属Naは、坩堝10および反応容器20の加熱が開始される前、固体であるので、ガスボンベ140から供給された窒素ガスは、反応容器20内の空間23と配管30との間を融液保持部材400を介して拡散可能である。
【0281】
そして、坩堝10および反応容器20の加熱が開始され、配管30の温度が98℃以上に昇温されると、配管30内に入れられた金属Naは、溶けて金属融液190になり、窒素ガスを空間23に閉じ込める。
【0282】
また、融液保持部材400は、金属融液190が空間31へ流出しないように金属融液190の表面張力によって金属融液190を保持する。
【0283】
さらに、金属融液190および融液保持部材400は、GaN結晶の成長が進行すると、窒素ガスと、金属融液190および混合融液290から蒸発した金属Na蒸気とを空間23に閉じ込める。その結果、混合融液290からの金属Naの更なる蒸発を抑制でき、混合融液290中における金属Naの蒸発による金属Naと金属Gaとの量比の変動を抑制できる。そして、GaN結晶の成長が進行するに伴って、空間23内の窒素ガスが減少すると、空間23内の圧力P1は、空間31の圧力P2よりも低くなり、融液保持部材400は、空間31の窒素ガスを反応容器20の方向へ通過させ、金属融液190を介して空間23へ供給する。
【0284】
このように、融液保持部材400は、上述した融液保持部材60と同じように作用する。したがって、融液保持部材400は、融液保持部材60に代えて結晶成長装置100,100A,100B,100Cに用いられる。
【0285】
上記においては、融液保持部材400は、凸部402を有すると説明したが、融液保持部材400は、凸部402を有していなくてもよい。この場合、栓401と反応容器20および配管30との間隔が数十μmになるように、融液保持部材400は、支持部材403,404によって配管30の内壁に固定される。
【0286】
そして、融液保持部材400(凸部402を有する場合と凸部402を有さない場合とを含む。以下、同じ)と配管30との間隔は、融液保持部材400の温度に応じて決定されるようにしてもよい。この場合、融液保持部材400の温度が相対的に高い場合、融液保持部材400と配管30との間隔は、相対的に小さく設定される。また、融液保持部材400の温度が相対的に低い場合、融液保持部材400と配管30との間隔は、相対的に大きく設定される。
【0287】
表面張力により金属融液190を保持可能な融液保持部材400と配管30との間隔は、融液保持部材400の温度によって変化する。したがって、融液保持部材400と配管30との間隔を融液保持部材400の温度に応じて変化させ、表面張力によって金属融液190を確実に保持できるようにしたものである。
【0288】
そして、融液保持部材400の温度制御は、加熱装置80によって行われる。
【0289】
融液保持部材400が用いられる場合、ガスボンベ140、圧力調整器130、ガス供給管90,110、バルブ121、配管30、融液保持部材400および金属融液190は、「ガス供給装置」を構成する。
【0290】
図28は、この発明による融液保持部材のさらに他の斜視図である。図28を参照して、融液保持部材410は、複数の貫通孔412が形成された栓411からなる。複数の貫通孔412は、栓411の長さ方向DR2に沿って形成される。そして、複数の貫通孔412の各々は、数十μmの直径を有する(図28の(a)参照)。
【0291】
なお、融液保持部材410においては、貫通孔412は、少なくとも1個形成されていればよい。
【0292】
また、融液保持部材420は、複数の貫通孔422が形成された栓421からなる。複数の貫通孔422は、栓421の長さ方向DR2に沿って形成される。そして、複数の貫通孔422の各々は、長さ方向DR2へ複数段に変化された直径r1,r2,r3を有する。直径r1,r2,r3の各々は、金属融液190を表面張力により保持可能な範囲で決定され、たとえば、数μm〜数十μmの範囲で決定される(図28の(b)参照)。
【0293】
なお、融液保持部材420においては、貫通孔422は、少なくとも1個形成されていればよい。また、貫通孔422の直径は、少なくとも2個に変化されればよい。さらに、貫通孔422の直径は、長さ方向DR2へ連続的に変えられてもよい。
【0294】
融液保持部材410または420は、結晶成長装置100,100A,100B,100Cの融液保持部材60に代えて用いられる。
【0295】
特に、融液保持部材420が融液保持部材60に代えて用いられた場合、結晶成長装置100,100A,100B,100Cにおいて、融液保持部材420の温度制御を精密に行なわなくても、複数段に変えられた直径のいずれかによって金属融液190を金属融液190の表面張力により保持できるので、融液保持部材420の温度制御を精密に行なわなくても、大きなサイズを有するGaN結晶を製造できる。
【0296】
融液保持部材410または420が用いられる場合、ガスボンベ140、圧力調整器130、ガス供給管90,110、バルブ121、配管30、融液保持部材410または420および金属融液190は、「ガス供給装置」を構成する。
【0297】
さらに、この発明においては、融液保持部材60に代えてポーラスプラグまたは逆流防止弁を用いてもよい。ポーラスプラグは、ステンレスの粉末を焼結した焼結体からなり、数十μmの空孔が多数形成された構造を有する。したがって、ポーラスプラグは、上述した融液保持部材60と同じように金属融液190の表面張力によって金属融液190を保持可能である。
【0298】
また、この発明における逆流防止弁は、低温部分に用いられるバネ式の逆流防止弁と、高温部分に用いられるピストン式の逆流防止弁との両方を含む。このピストン式の逆流防止弁とは、空間31内の圧力P2が空間23内の圧力P1よりも高いとき、圧力P2と圧力P1との差圧によってピストンが1対のガイドに沿って上方向へ移動して空間31の窒素ガスを金属融液190を介して空間23へ供給し、P1≧P2であるとき、自重によってピストンが反応容器20と配管30との連結部を塞ぐ形式の逆流防止弁である。したがって、この逆流防止弁は、高温部分においても使用できる。
【0299】
上述した実施の形態においては、結晶成長温度は、725℃あるいは950℃であると説明したが、この発明においては、これに限らず、結晶成長温度は、600℃以上であればよい。また、窒素ガス圧力も0.4MPa以上の加圧状態の本結晶成長方法で成長可能な圧力であればよい。すなわち、上限も本実施の形態の5.05MPaに限定されるものではなく、5.05MPa以上の圧力であってもよい。
【0300】
また、上記においては、Arガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを坩堝10に入れ、Arガス雰囲気中で金属Naを配管30または320内に入れると説明したが、この発明においては、これに限らず、He、NeおよびKr等のArガス以外のガスまたは窒素ガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを坩堝10に入れ、金属Naを配管30または320内に入れてもよく、一般的には、不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを坩堝10に入れ、金属Naを配管30または320内に入れればよい。そして、この場合、不活性ガスまたは窒素ガスは、水分量が1ppm以下であり、かつ、酸素量が1ppm以下である。
【0301】
さらに、金属Gaと混合する金属は、Naであると説明したが、この発明においては、これに限らず、リチウム(Li)およびカリウム(K)等のアルカリ金属、またはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)およびストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属を金属Gaと混合して混合融液290を生成してもよい。そして、これらのアルカリ金属が溶けたものは、アルカリ金属融液を構成し、これらのアルカリ土類金属が溶けたものは、アルカリ土類金属融液を構成する。
【0302】
さらに、窒素ガスに代えて、アジ化ナトリウムおよびアンモニア等の窒素を構成元素に含む化合物を用いてもよい。そして、これらの化合物は、窒素原料ガスを構成する。
【0303】
さらに、Gaに代えて、ボロン(B)、アルミニウム(Al)およびインジウム(In)等のIII族金属を用いてもよい。
【0304】
したがって、この発明による結晶成長装置または製造方法は、一般的には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属とIII族金属(ボロンを含む)との混合融液を用いてIII族窒化物結晶を製造するものであればよい。
【0305】
そして、この発明による結晶成長装置または製造方法を用いて製造したIII族窒化物結晶は、発光ダイオード、半導体レーザ、フォトダイオードおよびトランジスタ等のIII族窒化物半導体デバイスの作製に用いられる。
【0306】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0307】
この発明は、混合比、ガス圧力および温度を制御してIII族窒化物結晶を結晶成長する結晶成長装置に適用される。また、この発明は、混合比、ガス圧力および温度を制御してIII族窒化物結晶を製造する製造方法に適用される。
【符号の説明】
【0308】
1〜3 気液界面
4 窒素ガス
5 金属Na蒸気
6〜9,9A GaN結晶
6B 種結晶
10 坩堝
20 反応容器
20A 外周面
21 本体部
22 蓋部
23,31,321,322,331 空間
30,200,320,330 配管
30A 内壁
40 ベローズ
50 支持装置
60,400,410,420 融液保持部材
61,401,411,421 栓
62,402 凸部
63 空隙
70,80,350,360,370 加熱装置
71,81,351 温度センサー
90,110,250 ガス供給管
100,100A,100B,100C 結晶成長装置
120,121,160 バルブ
130 圧力調整器
140,270 ガスボンベ
150 排気管
170 真空ポンプ
180 圧力センサー
190,340 金属融液
201 空孔
210 熱電対
220 上下機構
221 凹凸部材
222 歯車
223 軸部材
224 モータ
225 制御部
230 振動印加装置
240 振動検出装置
280 温度制御装置
290 混合融液
300,300A 制御装置
301〜307 入力ボタン
308 CPU
309 メモリ
310 圧力センサー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0309】
【特許文献1】米国特許第5868837号明細書
【特許文献2】特開2001−58900号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属とIII族金属との総量に対する前記アルカリ金属の量比を示す混合比に応じて決定され、かつ、III族窒化物結晶を結晶成長または溶解させるときの圧力と温度との関係を規定する圧力/温度相関図を用いてIII族窒化物結晶を結晶成長する結晶成長装置であって、
所定の混合比で前記アルカリ金属と前記III族金属とを含む混合融液を保持する坩堝と、
前記坩堝内の前記混合融液に接する容器空間へ窒素原料ガスを供給して前記容器空間のガス圧力を所定の圧力に設定するガス供給装置と、
前記混合融液の温度を所定の温度に設定する加熱装置と、
前記所定の混合比に応じて決定された所定の圧力/温度相関図に含まれる所望の圧力および所望の温度に前記容器空間における前記窒素原料ガスのガス圧力と前記混合融液の温度とをそれぞれ設定するように前記ガス供給装置および前記加熱装置を制御する制御装置とを備える結晶成長装置。
【請求項2】
前記所定の圧力/温度相関図は、複数の混合比に対応して設けられた複数の圧力/温度相関図から前記所定の混合比の決定に応じて選択される、請求項1に記載の結晶成長装置。
【請求項3】
前記複数の圧力/温度相関図は、
第1の混合比に応じて決定された第1の圧力/温度相関図と、
前記第1の混合比よりも大きい第2の混合比に応じて決定された第2の圧力/温度相関図と、
前記第2の混合比よりも大きい第3の混合比に応じて決定された第3の圧力/温度相関図とを含み、
前記所定の圧力/温度相関図は、前記第1から第3の圧力/温度相関図から前記所定の混合比の決定に応じて選択される、請求項2に記載の結晶成長装置。
【請求項4】
前記第1の圧力/温度相関図は、種結晶からの前記III族窒化物結晶の結晶成長および柱状形状からなる前記III族窒化物結晶の結晶成長に適した圧力/温度相関図であり、
前記第2の圧力/温度相関図は、板状形状からなる前記III族窒化物結晶の結晶成長に適した圧力/温度相関図であり、
前記第3の圧力/温度相関図は、前記種結晶からの前記III族窒化物結晶の結晶成長に適した圧力/温度相関図である、請求項3に記載の結晶成長装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記柱状形状からなる前記III族窒化物結晶を結晶成長させる場合、前記第1の圧力/温度相関図に含まれる第1の所望の圧力および第1の所望の温度に前記容器空間における前記窒素原料ガスのガス圧力と前記混合融液の温度とをそれぞれ設定するように前記ガス供給装置および前記加熱装置を制御する、請求項4に記載の結晶成長装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記板状形状からなる前記III族窒化物結晶を結晶成長させる場合、前記第2の圧力/温度相関図に含まれる第2の所望の圧力および第2の所望の温度に前記容器空間における前記窒素原料ガスのガス圧力と前記混合融液の温度とをそれぞれ設定するように前記ガス供給装置および前記加熱装置を制御する、請求項4に記載の結晶成長装置。
【請求項7】
前記III族窒化物結晶からなる種結晶を前記容器空間と前記混合融液との界面または前記混合融液中に支持する支持装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記種結晶から前記III族窒化物結晶を結晶成長させる場合、前記第1の圧力/温度相関図に含まれる第3の所望の圧力および第3の所望の温度に前記容器空間における前記窒素原料ガスのガス圧力と前記混合融液の温度とをそれぞれ設定するように前記ガス供給装置および前記加熱装置を制御し、または第3の圧力/温度相関図に含まれる第4の所望の圧力および第4の所望の温度に前記容器空間における前記窒素原料ガスのガス圧力と前記混合融液の温度とをそれぞれ設定するように前記ガス供給装置および前記加熱装置を制御する、請求項4に記載の結晶成長装置。
【請求項8】
前記第1から第3の圧力/温度相関図の各々は、
前記III族窒化物結晶を溶解する第1の領域と、
前記種結晶から前記III族窒化物結晶を結晶成長する第2の領域と、
前記柱状形状からなる前記III族窒化物結晶を結晶成長する第3の領域と、
前記板状形状からなる前記III族窒化物結晶を結晶成長する第4の領域とを含み、
前記制御装置は、前記所定の混合比の決定に応じて前記第1から第3の圧力/温度相関図から選択された前記所定の圧力/温度相関図において、前記第1から第4の領域の少なくとも1つの領域に含まれる所望の圧力および所望の温度に前記容器空間における前記窒素原料ガスのガス圧力と前記混合融液の温度とをそれぞれ設定するように前記ガス供給装置および前記加熱装置を制御する、請求項3に記載の結晶成長装置。
【請求項9】
前記混合融液における前記アルカリ金属と前記III族金属との混合比を前記複数の混合比の範囲で変化する混合比変化手段と、
前記混合比変化手段によって変化された混合比に対応する圧力/温度相関図を前記所定の圧力/温度相関図として前記複数の圧力/温度相関図から選択する選択手段とをさらに備え、
前記制御装置は、前記選択手段によって選択された圧力/温度相関図に含まれる所望の圧力および所望の温度に前記容器空間における前記窒素原料ガスのガス圧力と前記混合融液の温度とをそれぞれ設定するように前記ガス供給装置および前記加熱装置を制御する、請求項2に記載の結晶成長装置。
【請求項10】
前記混合比変化手段は、前記混合融液への前記アルカリ金属の供給/停止を制御して前記混合比を変化する、請求項9に記載の結晶成長装置。
【請求項11】
前記混合比変化手段は、
前記容器空間に連通する外部容器空間に接してアルカリ金属融液を保持する外部容器と、
前記アルカリ金属融液から蒸発するアルカリ金属の第1の蒸気圧と前記混合融液から蒸発するアルカリ金属の第2の蒸気圧との相対関係を変化させて前記アルカリ金属の供給/停止を制御する蒸気圧制御器とを含む、請求項10に記載の結晶成長装置。
【請求項12】
前記蒸気圧制御器は、前記アルカリ金属融液の温度を変えて前記第1の蒸気圧と前記第2の蒸気圧との相対関係を変化させる、請求項11に記載の結晶成長装置。
【請求項13】
アルカリ金属とIII族金属との総量に対する前記アルカリ金属の量比を示す混合比に応じて決定され、かつ、III族窒化物結晶を結晶成長または溶解させるときの圧力と温度との関係を規定する圧力/温度相関図を用いてIII族窒化物結晶を製造する製造方法であって、
不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気中において所定の混合比で前記アルカリ金属と前記III族金属とを坩堝に入れる第1の工程と、
前記坩堝内の前記アルカリ金属および前記III族金属に接する容器空間へ窒素原料ガスを供給する第2の工程と、
前記所定の混合比に応じて決定された所定の圧力/温度相関図に含まれる所望の圧力および所望の温度に前記容器空間における前記窒素原料ガスのガス圧力および前記坩堝の温度をそれぞれ設定する第3の工程とを備える製造方法。
【請求項14】
所定の時間、前記所望の圧力および前記所望の温度を保持する第4の工程をさらに備える、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記所定の圧力/温度相関図は、複数の混合比に対応して設けられた複数の圧力/温度相関図から前記所定の混合比の決定に応じて選択される、請求項13または請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記複数の圧力/温度相関図は、
第1の混合比に応じて決定された第1の圧力/温度相関図と、
前記第1の混合比よりも大きい第2の混合比に応じて決定された第2の圧力/温度相関図と、
前記第2の混合比よりも大きい第3の混合比に応じて決定された第3の圧力/温度相関図とを含み、
前記所定の圧力/温度相関図は、前記第1から第3の圧力/温度相関図から前記所定の混合比の決定に応じて選択される、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記第1の圧力/温度相関図は、種結晶からの前記III族窒化物結晶の結晶成長および柱状形状からなる前記III族窒化物結晶の結晶成長に適した圧力/温度相関図であり、
前記第2の圧力/温度相関図は、板状形状からなる前記III族窒化物結晶の結晶成長に適した圧力/温度相関図であり、
前記第3の圧力/温度相関図は、前記種結晶からの前記III族窒化物結晶の結晶成長に適した圧力/温度相関図である、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記第3の工程は、前記窒素原料ガスのガス圧力および前記坩堝の温度を前記第1の圧力/温度相関図に含まれる第1の所望の圧力および第1の所望の温度にそれぞれ設定する、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記坩堝内に保持され、かつ、前記アルカリ金属と前記III族金属とを含む混合融液に前記III族窒化物結晶からなる種結晶を接触または浸漬させる第5の工程をさらに備える、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記第3の工程は、前記窒素原料ガスのガス圧力および前記坩堝の温度を前記第2の圧力/温度相関図に含まれる第2の所望の圧力および第2の所望の温度にそれぞれ設定する、請求項17に記載の製造方法。
【請求項21】
前記第3の工程は、前記窒素原料ガスのガス圧力および前記坩堝の温度を前記第3の圧力/温度相関図に含まれる第3の所望の圧力および第3の所望の温度にそれぞれ設定する、請求項17に記載の製造方法。
【請求項22】
前記第1から第3の圧力/温度相関図の各々は、
前記III族窒化物結晶を溶解する第1の領域と、
前記種結晶から前記III族窒化物結晶を結晶成長する第2の領域と、
前記柱状形状からなる前記III族窒化物結晶を結晶成長する第3の領域と、
前記板状形状からなる前記III族窒化物結晶を結晶成長する第4の領域とを含み、
前記第3の工程は、前記所定の混合比の決定に応じて前記第1から第3の圧力/温度相関図から選択された前記所定の圧力/温度相関図において、前記第1から第4の領域のいずれか1つの領域に含まれる所望の圧力および所望の温度に前記窒素原料ガスのガス圧力および前記坩堝の温度をそれぞれ設定する、請求項16に記載の製造方法。
【請求項23】
前記第1から第3の圧力/温度相関図の各々は、
前記III族窒化物結晶を溶解する第1の領域と、
前記種結晶から前記III族窒化物結晶を結晶成長する第2の領域と、
前記柱状形状からなる前記III族窒化物結晶を結晶成長する第3の領域と、
前記板状形状からなる前記III族窒化物結晶を結晶成長する第4の領域とを含み、
前記第3の工程は、前記所定の混合比の決定に応じて前記第1から第3の圧力/温度相関図から選択された前記所定の圧力/温度相関図において、前記第1から第4の領域から選択された複数の領域に含まれる複数の所望の圧力および複数の所望の温度に前記窒素原料ガスのガス圧力および前記坩堝の温度をそれぞれ所定の順序で設定する、請求項16に記載の製造方法。
【請求項24】
前記坩堝内に保持され、かつ、前記アルカリ金属と前記III族金属とを含む混合融液における前記アルカリ金属と前記III族金属との混合比を前記複数の混合比の範囲で変化する第5の工程と、
前記第5の工程において変化された混合比に対応する圧力/温度相関図を前記所定の圧力/温度相関図として前記複数の圧力/温度相関図から選択する第6の工程とをさらに備え、
前記第3の工程は、前記窒素原料ガスのガス圧力および前記坩堝の温度を前記所定の圧力/温度相関図に含まれる所望の圧力および所望の温度にそれぞれ設定する、請求項15に記載の製造方法。
【請求項25】
前記第5の工程は、前記混合融液への前記アルカリ金属の供給/停止を制御して前記混合比を変化する、請求項24に記載の製造方法。
【請求項26】
前記第5の工程は、前記容器空間に連通する外部容器空間に接して保持されたアルカリ金属融液から蒸発するアルカリ金属の第1の蒸気圧と前記混合融液から蒸発するアルカリ金属の第2の蒸気圧との相対関係を変化させて前記アルカリ金属の供給/停止を制御する、請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
前記第5の工程は、前記アルカリ金属融液の温度を変えて前記第1の蒸気圧と前記第2の蒸気圧との相対関係を変化させる、請求項26に記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公開番号】特開2012−140329(P2012−140329A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−98236(P2012−98236)
【出願日】平成24年4月23日(2012.4.23)
【分割の表示】特願2006−154425(P2006−154425)の分割
【原出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】