説明

結晶粒の方位を制御する結晶化法

【課題】集積回路において利用される銅または他の導電性材料の薄膜において、広い領域にわたって粒子の同一の結晶方位を維持するための結晶化法を提供する。
【解決手段】基板3上に少なくとも部分的に結晶材料を薄膜4状に堆積する段階と、前記堆積材料に存在する内部歪みが緩和される時間の間に、第1の温度まで前記基板3及び前記基板3上に堆積された材料を加熱する段階と、その後で、曲げベンチ2上に前記基板3を置くことにより、前記基板3及び前記堆積材料を第2の温度及び均一な曲げにさらす段階と、よりなり、曲げの量及び前記第1及び第2の温度の間の差は、前記基板3に垂直な方向に対して方位角方向に沿って堆積された材料の特定の結晶方位に有利に働くように弾性曲げ定数(Cij)、熱変形(x)及び熱膨張係数を利用する関係から決定される値を有している結晶化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、結晶化法に関連しており、結晶粒の方位が制御されることを本質的な特性としている。
【背景技術】
【0002】
結晶粒子の方位は、多数の及び複雑な現象の影響下での成長の間に決定され、これはさらに、利用される方法に依存している。材料の特性が一般的に粒子の方位に依存しているので、前記方位を制御することは有益である。これは特に、集積回路において利用される銅または他の導電性材料の薄膜において、導電率特性を考慮している。加えて、前記結晶の広い領域にわたって粒子の同一の結晶方位を維持することはしばしば価値がある。
【0003】
従来技術は、結晶の方位に影響を与える機構を解明しようと試みるいくつかの働きを含んでいるが、粒子の方位を制御するシンプルで一般的な方法が、基板の表面での特定の薄膜の場合に提供されているようには思えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明の基本的な目的は、この差を埋めることである。それは結晶化法に関連しており、基板上に少なくとも部分的に結晶材料を薄膜状に堆積する段階と、前記堆積材料に存在する内部歪みが緩和されることのできる時間に、前記基板及び基板上に堆積された前記材料を第1の温度まで加熱する段階と、それから、曲げベンチ上に前記基板を配置することによって、前記基板及び前記堆積材料が第2の温度及び一様な曲げを受ける段階と、からなり、曲げの量及び前記第1と第2の温度の間の差は、前記基板に垂直な方向に対して方位角方向に沿って堆積された材料の特定の結晶方位に有利に働くように弾性曲げ定数、熱変形、及び熱膨張係数を利用する関係から決定される値を有している。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本願発明の方法の実施のために利用されるデバイスを示している。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本願発明は、前記方法の実施のために利用されるデバイスを示している図により直ぐに述べられるだろう。それは曲げベンチ2を含んでいるファーネス1を含んでいる。結晶材料の層4で被覆された基板3がそこに含まれている。本願発明に従い、薄層は、基板3の表面に平行な変形が、その全体の厚さにわたって十分に前記層に通じるような厚さである。第1のステップにおいて、前記基板3及び前記層4は、そこでの内部歪みが緩和されることのできる時間に、均一な温度まで加熱されるが、これは、これらの内部歪みが前記方法の実施を乱し、及びこれらは一般的に通常の堆積法に続いて高いからである。しかしながら、適用された温度は前記層4の材料が固体のままとされるべきである。集積回路の加工のために利用されるシリコン基板上の電気銅の堆積に対して、それは300℃あたりであってもよく、及び計算またはX線回折測定によって決定されうる。
【0007】
前の温度に対して定められる温度差が、前記ベンチ2による曲げとして、前記基板3及び前記層4に同時に適用される。曲げと熱膨張の二つの基点の歪みが現れる。前記層4の結晶材料におけるこれらの影響は、連続的な媒体構造によって直ぐに説明されるだろう。
【0008】
式(1):ε(total)=ε(applied)+ε(elastic)で始まり、これは前記層4において、全体の変形が外部媒体によって適用された変形と、内部弾性変形の和であることを表している。立方晶系結晶の場合、ベクトルx、x、及びxによって定義された主要な記号において、式(2)の系が得られる。
【0009】
【数1】

【0010】
ここで、xは(適用された曲面に沿った)基板3の長さであり、xはその幅であり、xは前記層が堆積された表面に対して垂直である。全体の変形は三つの要素を備えており、前記層4と比較して非常に厚い前記基板3はその上に変形を負わせるので、そのうちの最初の二つは前記基板3の頂部表面上の変形によって定義され、そして式(3):β=−vβに関連付けられる。ここで、vは前記基板のポアソン係数である。
【0011】
適用された変形の要素αは、熱膨張に起因しており、対応する係数に依存している。前記基板3の熱膨張は、以下の計算で無視されるが、前記基板3のこの熱膨張は、その上限での状態に達するので総変形の修正によって容易に考慮されうる。さらに、前記要素εijは前記層4の弾性変形を表している。
【0012】
前記結晶に関連付けられた、ベクトルy、y、及びy及びベクトルq’、q’’、及びqよりなる新しい記号が今導入され、これらはベクトルx、x、及びxに一致する単一ベクトルであるが、前記層4の視点から定義されている。記号(y,y,y)における方向q、q’、及びq’’の方位はそれぞれ、q、q、及びq;q’、q’、及びq’;及びq’’、q’’、及びq’’である。
【0013】
前記記号(y,y,y)において、式(2)の要素ε11、ε22、ε33、ε23、ε13及びε12は行列表記eからeで表現され、これらは以下の式に等しい。
【0014】
【数2】

【0015】
変形の弾性分域において一般的であり有効なフックの法則σ=Cεは、歪みのテンソル及び特に前記層4の自由表面上に適用する歪みベクトルσ(q)を決定することを可能にしている。これは前記結晶に関連付けられた記号において表現された要素(5)の系を与える。
【0016】
【数3】

【0017】
要素Cijは考慮された結晶の弾性定数のテンソルである。
【0018】
【数4】

【0019】
さらに、前記系(5)の要素は全てゼロでなければならず、何故ならこれは自由表面上に適用している歪みは同様にゼロだからである。これらの成分を要素毎に加えることによって及び
【0020】
【数5】

【0021】
を適用することによって(ここでq、q’及びq’’は垂直である)、最終的にα、β、及びβの間に式(8):
【0022】
【数6】

【0023】
が得られる。これはq、q’及びq’’の選択に独立している。
【0024】
前記結晶に結び付けられた記号におけるこの関係を利用することにより、系(5)の要素は、A=C11−C12−2C44と共に前記層4の自由表面上に適用している歪みを現すために、系(9)となる。
【0025】
【数7】

【0026】
前記基板が等方性である場合、A=0となるので、自由表面の条件σ(q)=0は必ず順守される。しかしながら、実際には通常の結晶材料は、ゼロでなければならない系(9)の大括弧内の量がゼロとならなければならないように、ある適度の非等方性を有している。
【0027】
式(7)の利用は系(9)を単純化させること、及び式(10)の系を得ることを可能にしている。
【0028】
【数8】

【0029】
前記ベクトルの直交性及び正規性の理由で、それはq及びq’の所定の値に対する解を与えるだけである。言い換えると、前記層4の熱的起源の変形に結び付けられた前記基板3への曲げ変形の適用は、一方では前記結晶の可能な方位性を制限し、及び他方ではq’の座標の表現がqのそれによって定義されるので、それを方位角に向けることを可能にしている。
【0030】
ある特定の場合が理解されうる。qが方向[111]に平行である場合、Q=Q=Q=1/3であり、これはQ’=Q’=Q’=1/3から推定され、言い換えると、q’は同様に方向[111]に平行であり、及びそれによりqと同化するが、これは不可能である。これから、弾性的観点からの非等方的な単結晶は、前記基板3が曲げられるモーメントから方向[111]の成長の方向を導入することができないことが推定される。この結果は、要素(6)の系が利用されうるとき、有利であり、言い換えると、立方晶系結晶の結晶に対して;曲げが無い状態において、成長の方向[111]は可能であり、ちょうど成長の方向[110]と[100]であることは注目すべきである。
【0031】
第2の特定の場合において、β及びαは、β=βとなるように選択される。系(10)は解としてQ’=Q’=Q’=1/3を与え、及びqは不定である。q’はこのように方向[111]となる。単結晶は方向xに平行な軸[111]を有している。
【0032】
第3の場合において、β及びαは、β=βとなるように選択され、反対に、それはQ’’=Q’’=Q’’=1/3を有しており、及びqは不定である。q’’はこのように方向[111]となる。単結晶は方向xに平行な軸[111]を有している。これら二つの後者の例は、前記結晶がβ及びαの選択に従って前記層4に直交する方向xの周りの方位角に方向付けられうることを示している。
【0033】
ポアソン係数v=0.33を有する銅、弾性定数C11=169GPa、C12=122GPa、C44=76GPa及び熱膨張係数が16.10−6−1の層の場合において、β=3.10−3となるように前記基板が曲げられる場合、第3の特定のケースの条件β=βがα=2.16.10−3すなわちΔT=+135℃に対して得られ、第2の特定のケースの条件βがα=−0.156.10−3すなわちΔT=−10℃に対して得られる。
【0034】
方位角の他の方向は、他の温度変化と共に得られうる。前の結果はq1、q2及びq3の三つの全てが非ゼロである状態に対して得られる。ベクトルqは一つか二つのゼロ要素を有することができ、及び同類の結果がさらに得られる。例えばq=0及びq≠qにおいて、β及びαがβ=βとなるように選択される場合、q’は、方向[001]であり、q(⊥q’)は無関係である。前記結晶の軸[001]がそれから方向xに指向される。同様に、β=βの場合、q’’は方向[001]であり、及び前記結晶の対応する軸は、方向xにある。
【0035】
前の結果は他の結晶に外挿されてもよく、前記弾性のテンソルは系(6)より少ないゼロ要素Cijを有しているので、系はより複雑になるだけである。例えば、単結晶系のテンソルは系(11)によって与えられる。
【0036】
【数9】

【0037】
全ての場合において、対応する温度及び曲げに従って、結晶の層に直角の方向の周囲の方位角に前記結晶のネットワークを指向させることが可能である。
【0038】
前記デバイスは非常に広い温度範囲を占め、一般的に大気温度から500℃の間である。前記曲げベンチ2は数千のオーダの変形を導入するために寸法される。前記ファーネス1は処理される層の酸化を避けるために真空か中性ガスの下にあるべきである。
【符号の説明】
【0039】
1 ファーネス
2 曲げベンチ
3 基板
4 層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶化方法であって、
基板上に少なくとも部分的に結晶材料を薄膜(4)状に堆積する段階と、
前記堆積材料に存在する内部歪みが緩和される時間の間に、第1の温度まで前記基板及び前記基板(3)上に堆積された材料を加熱する段階と、
その後で、曲げベンチ(2)上に前記基板を置くことにより、前記基板及び前記堆積材料を第2の温度及び均一な曲げにさらす段階と、よりなり、
曲げの量及び前記第1及び第2の温度の間の差は、前記基板に垂直な方向に対して方位角方向に沿って堆積された材料の特定の結晶方位に有利に働くように弾性曲げ定数(Cij)、熱変形(x)及び熱膨張係数を利用する関係から決定される値を有している結晶化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−189257(P2010−189257A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−27842(P2010−27842)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】