説明

結線装置及び結線方法

【課題】主電極及び副電極の双方に対して回転電機の軸方向から容易にアプローチでき、主電極及び副電極の交換や調整、確認等の各種作業を容易にできる結線装置及び結線方法を得る。
【解決手段】スライダ122と共に主電極保持ブロック24が上昇すると、揺動レバー132の被押上ピン144が主電極保持ブロック24に押し上げられて揺動レバー132が回動し、押上ピン138が副電極保持ブロック44を押し上げる。被押上ピン144は押上ピン138よりもシャフト134から離間しているので、主電極保持ブロック24の上昇量は副電極保持ブロック44よりも大きく、これにより、主電極を副電極よりも上方へオフセットさせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等の回転電機の整流子片の結線爪に巻線を結線するための結線装置及び結線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に示されるヒュージング装置(結線装置)では、電機子の軸方向に主電極と副電極とが並んで配置されている。副電極をフック部(結線爪)と導通した部分に当接させつつ、主電極をフック部に接近させ、主電極によりフック部を屈曲させつつ主電極と副電極との間に電流を流すことでフック部と電機子の巻線とが溶接されて結線される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−213441の公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなヒュージング装置では、上記のように電機子の軸方向に主電極と副電極とが並んで配置されているため、電機子の軸方向に見ると主電極と副電極とが重なる。このため、電機子の軸方向に沿って主電極及び副電極のうちの一方の電極を介して作業者とは反対側に位置する他方の電極には、作業者がアプローチしにくく、この他方の電極を電極ホルダから取り外しや、他方の電極の調整作業等の各種作業がしにくい。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、主電極及び副電極の双方に対して回転電機の軸方向から容易にアプローチでき、主電極及び副電極の交換や調整、確認等の各種作業を容易にできる結線装置及び結線方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る結線装置は、回転電機の整流子片に形成された結線爪に対して主電極を保持すると共に、前記回転電機の回転半径方向に沿って前記主電極を前記結線爪に対して接離させる向きである接離方向に移動可能な主電極保持手段と、前記回転電機の回転軸方向に前記主電極に対して離間して配置された副電極を保持すると共に、前記接離方向へ移動可能な副電極保持手段と、出力した駆動力により前記主電極保持手段を前記接離方向へ移動させて、前記副電極保持手段を前記主電極保持手段と同じ向きへ移動させると共に、前記主電極保持手段を前記結線爪から所定距離離間した位置まで移動させた状態で、前記主電極及び前記副電極の一方の電極に対して他方の電極を前記接離方向にオフセットさせる駆動手段と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載の結線装置では、回転電機の整流子片に形成された結線爪に主電極が圧接し、更に、回転電機の回転軸方向に沿って主電極に対して離間した位置で副電極が結線爪に対して導通している部分に当接し、この状態で主電極と副電極との間が通電されると、結線爪と巻線とが溶接されて結線される。
【0008】
また、主電極は回転電機の回転半径方向に沿って主電極を結線爪に対して接離させる向きである接離方向に移動可能な主電極保持手段に保持され、副電極はこの接離方向に移動可能な副電極保持手段に保持される。これらの主電極保持手段及び副電極保持手段は駆動手段から出力された駆動力により、接離方向の同じ向きに移動する。
【0009】
さらに、主電極が結線爪から所定距離離間した位置まで主電極保持手段が移動すると、主電極及び副電極の一方の電極に対して他方の電極が接離方向にオフセットされる。このように主電極と副電極とが接離方向にオフセットされることで、主電極及び副電極の双方に対して回転電機の軸方向からアプローチでき、主電極及び副電極の交換や調整、確認等の各種作業を容易にできる。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係る結線装置は、請求項1に記載の本発明において、前記主電極保持手段及び前記副電極保持手段のうち何れかの一方の保持部に伝わった前記駆動力を増速又は減速して前記主電極保持手段及び前記副電極保持手段のうち何れかの他方の保持部へ伝え、前記主電極保持手段を前記結線爪から所定距離離間した位置まで移動させた状態で、前記主電極及び前記副電極の一方の電極に対して他方の電極を前記接離方向にオフセットさせる変速手段を含めて前記駆動手段を構成している。
【0011】
請求項2に記載の結線装置によれば、駆動手段から出力された駆動力は主電極保持手段及び副電極保持手段のうち何れかの一方の保持部に伝わって、この何れかの一方の保持部を接離方向に移動させる。駆動手段の駆動力によって何れかの一方の保持部が移動すると、この何れかの一方の保持部の移動が変速手段を介して主電極保持手段及び副電極保持手段のうち何れかの他方の保持部に伝わって、この何れかの他方の保持部を何れかの一方の保持部と同じ向きに移動させる。
【0012】
ここで、変速手段は、何れかの一方の保持部の移動を増速又は減速して何れかの他方の保持部に伝えるため、何れかの他方の保持部は何れかの一方の保持部と同じ向きに移動するものの、何れかの他方の保持部の移動速度は何れかの一方の保持部の移動速度とは異なる。このため、主電極が結線爪から所定距離離間した位置まで主電極保持手段を移動させることで、主電極及び副電極の一方の電極に対して他方の電極をオフセットさせることができる。
【0013】
請求項3に記載の本発明に係る結線装置は、請求項2に記載の本発明において、前記接離方向に対して直交する向きを軸方向とする軸周りに揺動可能に支持されると共に、揺動中心から半径方向に離間した位置で前記何れかの一方の保持部が支持され、前記何れかの一方の保持部が支持された位置よりも前記揺動中心から離間した位置で前記何れかの他方の保持部が支持され、揺動することによる前記何れかの他方の保持部における前記接離移動方向の移動距離を前記何れかの一方の保持部における前記接離移動方向の移動距離よりも長くする揺動部材を含めて前記変速手段を構成している。
【0014】
請求項3に記載の結線装置によれば、変速手段を構成する揺動部材が接離方向に対して直交する向きを軸方向とする軸周りに揺動可能に支持される。この揺動部材においてその揺動中心から揺動半径方向に離間した位置では主電極保持手段及び副電極保持手段のうち何れかの一方の保持部が支持されており、揺動部材の揺動により何れかの一方の保持部が接離方向に移動する。
【0015】
この揺動部材における何れかの一方の保持部の支持位置よりも更に揺動半径方向外側では、主電極保持手段及び副電極保持手段のうち何れかの他方の保持部が揺動部材に支持される。このため、揺動部材が揺動すると、主電極保持手段及び副電極保持手段が共に接離方向の同じ向きに移動するが、何れかの一方の保持部よりも揺動部材の揺動中心から離れている何れかの他方の保持部は、接離移動方向の移動距離が何れかの一方の保持部よりも長くなる。これにより、主電極が結線爪から所定距離離間した位置まで主電極保持手段を移動させることで、主電極及び副電極の一方の電極に対して他方の電極をオフセットさせることができる。
【0016】
請求項4に記載の本発明に係る結線装置は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の本発明において、出力した駆動力により前記主電極が前記結線爪に接触する位置まで前記主電極保持手段及び前記副電極保持手段の双方を前記接離方向の同じ向きへ移動させる位置制御用の第1モータと、前記主電極が前記結線爪に接触する位置から前記結線爪と巻線とを溶接する溶接位置までの間で前記主電極保持手段を移動させる前記第1モータよりも低トルクの第2モータと、を含めて前記駆動手段を構成している。
【0017】
請求項4に記載の結線装置によれば、駆動手段は第1モータと第2モータとを含めて構成される。結線爪と巻線とを溶接する際には、先ず第1モータの駆動力により主電極保持手段が結線爪に主電極が接近する向きへ移動する。これにより、結線爪に主電極が当接する。次いで、この状態で第1モータよりも低トルクの第2モータの駆動力で主電極保持手段が更に移動させられ、これにより、主電極が結線爪に圧接する。この状態で、主電極と副電極との間が通電されて結線爪と巻線とが溶接される。
【0018】
このように、第2モータは第1モータよりもトルクが低いので、主電極が結線爪に当接するまでは第1モータによって主電極保持手段、ひいては、主電極を高速移動させることができ、主電極が結線爪に当接してからは第2モータによって結線爪に対する主電極の加圧力を微調整しながら主電極を結線爪に圧接させて結線爪と巻線とを溶接できる。これにより、結線工程における作業時間を短くできると共に結線の品質を向上又は安定させることができる。
【0019】
請求項5に記載の本発明に係る結線装置は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の本発明において、前記主電極保持手段に対する前記主電極の着脱方向及び前記副電極保持手段に対する前記副電極の着脱方向の少なくとも何れか一方を、前記回転電機の回転軸方向に沿った前記主電極に対する前記副電極の離間した向き又はその反対方向に設定している。
【0020】
請求項5に記載の結線装置によれば、主電極保持手段に対する主電極の着脱方向と副電極保持手段に対する副電極の着脱方向の少なくとも何れか一が回転電機の回転軸方向に沿った主電極に対する副電極の離間した向き又はその反対方向に設定される。このため、結線爪と巻線との溶接が終了して回転電機を取り外した際に、主電極及び副電極の少なくとも何れかの一方をその保持部から容易に取り外すことができる。
【0021】
請求項6に記載の本発明に係る結線方法は、回転電機の整流子片に形成された結線爪に対し、前記回転電機の回転半径方向に沿って主電極を接近させて前記主電極を結線爪に圧接させると共に、前記主電極と同じ向きに副電極を移動させて前記結線爪に対して導通した部分に前記副電極を当接させた状態で、前記主電極と前記副電極との間を通電させて前記結線爪と巻線とを溶接させると共に、前記結線爪に対する前記主電極の接近方向とは反対方向へ前記主電極が移動して前記結線爪から所定距離離間することにより、前記主電極及び前記副電極の一方に対して他方が前記接近方向にオフセットされるように設定している。
【0022】
請求項6に記載の結線方法では、回転電機の整流子片に形成された結線爪に主電極が圧接し、更に、回転電機の回転軸方向に沿って主電極に対して離間した位置で副電極が結線爪に対して導通している部分に当接し、この状態で主電極と副電極との間が通電されると、結線爪と巻線とが溶接されて結線される。
【0023】
また、結線爪に対する主電極の接近方向とは反対方向へ主電極が移動して、主電極が結線爪から所定距離離間すると、主電極及び副電極の一方に対して他方が接近方向にオフセットされる。このように主電極と副電極とが接近方向又はその反対方向にオフセットされることで、主電極及び副電極の双方に対して回転電機の軸方向からアプローチでき、主電極及び副電極の交換や調整、確認等の各種作業を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係る結線装置を概略的に示す正面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る結線装置を概略的に示す左側面断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る結線装置を概略的に示す右側面断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る結線装置の要部を拡大した概略的な正面図である。
【図5】主電極保持手段及び副電極保持手段が上昇した状態を示す図4に対応した概略的な拡大正面図である。
【図6】主電極保持手段及び副電極保持手段が下降した状態を示す図4に対応した概略的な拡大正面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る結線装置による結線方法を概略的に示す拡大右側面図で、(A)は主電極及び副電極が回転電機の整流子に接した状態を示し、(B)は主電極が整流子の結線爪を曲げた状態を示す。
【図8】本発明の一実施の形態に係る結線装置による結線方法を概略的に示す拡大右側面図で、(A)は主電極が結線爪から離間した状態に接した状態を示し、(B)は副電極に対して主電極が上方へオフセットされるまで主電極及び副電極が上昇した状態を示し、(C)は(B)の状態から更に副電極を取り外した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<本実施の形態の構成>
図1には本発明の一実施の形態に係る結線装置10の全体構成が概略的な正面図により示されており、図2には結線装置10の全体構成が概略的な左側面断面図により示されており、図3には結線装置10の全体構成が概略的な右側面断面図により示されている。なお、これらの図を含む各図において、矢印Upは結線装置10の上方を示し、矢印Dwは結線装置10の下方を示す。また、矢印Frは結線装置10の前方を示し、矢印Reは結線装置10の後方を示す。さらに、矢印Lfは結線装置10の左方を示し、矢印Rhは結線装置10の右方を示す。なお、これらの向きはあくまでも本実施の形態を説明するための便宜上の向きであって、本発明に係る結線装置の向きがこのような向きに限定されるものではない。
【0026】
図1から図3の各図に示されるように、結線装置10はベースプレート12を備えている。ベースプレート12上にはガイドプレート14が取り付けられている。このガイドプレート14には左右一対のスライダ16、18(スライダ16に関しては図2を参照、スライダ18に関しては図3を参照)が設けられている。これらのスライダ16、18の各々に対応してスライダ16には長手方向が装置の上下方向に沿ってガイドプレート14の上端部にて開口したガイド孔が形成されており、スライダ16、18は対応する各ガイド孔に上下方向にスライド可能に嵌挿されている。
【0027】
図2に示されるように、右側のスライダ18の上端部には厚さ方向が上下方向に沿ったプレート20が締結固定されている。このプレート20においてスライダ16よりも前側ではアーム22が設けられている。アーム22は一端側における厚さ方向が上下方向に沿った板状とされ、プレート20に締結固定されている。このアーム22は一端よりも前側の中間部が左右方向を軸方向とする軸周りに湾曲しており、この中間部よりも他端側では厚さ方向が前後方向に沿っている。
【0028】
このアーム22の他端側には主電極保持手段としての主電極保持ブロック24が保持されている。主電極保持ブロック24は溶接ヘッド26を備えている。この溶接ヘッド26の前側には主電極ホルダ28が設けられている。主電極ホルダ28は長手方向が上下方向に沿った角棒形状に形成されている。主電極ホルダ28は上下両端が開口した中空の筒形状に形成されており、主電極ホルダ28の内側には棒状の主電極30が収容されている。主電極30は主電極ホルダ28の下端から所定の長さだけ突出した状態でビス等の締結手段により固定されている。
【0029】
また、主電極ホルダ28の長手方向中間部おける後面にはブロック状の挿込部32が形成されている。この挿込部32に対応して主電極保持ブロック24には凹部34が形成されており、挿込部32は凹部34に嵌挿される。凹部34に嵌挿された挿込部32に対応して、溶接ヘッド26にはクランプレバーが設けられている。クランプレバーはその一部が挿込部32の下面と対向しており、付勢手段の付勢力により挿込部32の下面に圧接し、溶接ヘッド26と共に上下に挿込部32を挟持している。
【0030】
一方、図3に示されるように、左側のスライダ16の上端部には厚さ方向が上下方向に沿ったプレート40が締結固定されている。このプレート40においてスライダ16よりも前側ではアーム42が設けられている。アーム42は一端側における厚さ方向が上下方向に沿った板状とされ、プレート40に締結固定されている。このアーム42は一端よりも前側の中間部が左右方向を軸方向とする軸周りに湾曲しており、この中間部よりも他端側では厚さ方向が前後方向に沿っている。
【0031】
このアーム42の他端側には副電極保持手段としての副電極保持ブロック44が保持されている。副電極保持ブロック44は保持ブロック本体45を備えており、更に、この保持ブロック本体45に対して上下方向にスライダ可能に保持されたスライダ46を備えている。このスライダ46の前側には副電極ホルダ48が設けられている。副電極ホルダ48は長手方向が上下方向に沿った角棒形状に形成されている。
【0032】
この副電極ホルダ48におけるスライダ46よりも下側の部分には凹部50が形成されている。凹部50は副電極ホルダ48の後面にて開口していると共に、副電極ホルダ48の左右両端面にて矩形に開口している。この凹部50の後側には厚さ方向が前後方向に沿った板状の保持プレート52が設けられており、副電極ホルダ48に締結固定されている。
【0033】
保持プレート52は凹部54が形成されている。凹部54は凹部50と対向するように形成されており、保持プレート52の前面にて開口していると共に、保持プレート52の左右両端面にて矩形に開口している。この凹部50と凹部54とで構成される左右に貫通した断面矩形の孔には副電極56が貫通配置されている。副電極56は長手方向が左右方向に沿った角棒形状に形成されており、その先端(右端)側は副電極ホルダ48及び保持プレート52から突出して、主電極ホルダ28の下端から突出した主電極30の先端側の後ろで前後方向に主電極30と対向している。
【0034】
一方、副電極ホルダ48の長手方向中間部おける後面には矩形の凹部58が形成されており、ブロック状の嵌挿ブロック60が嵌挿されている。この凹部58が形成された部位に対応して副電極ホルダ48の前面からは締結ボルト62が副電極ホルダ48を貫通している。副電極ホルダ48を貫通した締結ボルト62は凹部58の底部から突出して嵌挿ブロック60に螺合し、嵌挿ブロック60を副電極ホルダ48に締結固定している。また、副電極ホルダ48に締結固定された嵌挿ブロック60は副電極ホルダ48の後面よりも更に後方へ突出している。
【0035】
この副電極ホルダ48の後面よりも更に後方へ突出した嵌挿ブロック60に対応してスライダ46には凹部64が形成されており、嵌挿ブロック60は凹部64に嵌挿されている。凹部64に嵌挿された嵌挿ブロック60に対応して、スライダ46にはクランプレバーが設けられている。クランプレバーはその一部が嵌挿ブロック60の下面と対向しており、付勢手段の付勢力により嵌挿ブロック60の下面に圧接し、スライダ46と共に上下に嵌挿ブロック60を挟持している。
【0036】
上記の主電極保持ブロック24や副電極保持ブロック44とガイドプレート14との間には駆動手段としての駆動部70が設けられている。駆動部70はガイドプレート14に固定された駆動部筐体72を備えている。駆動部筐体72の内側にはボールねじ機構74を構成するねじ軸76が設けられている。ねじ軸76は長手方向が上下方向に沿っており、その上端側は軸受機構78によって回転自在に支持されている。一方、ねじ軸76の下端部にはカップリング80を介して棒状の軸部材82がねじ軸76に対して同軸的且つ一体的に連結されており、この軸部材82が軸受機構84によって回転自在に支持されている。
【0037】
軸部材82の下端部はカップリング86を介して軸部材88の上端部に同軸的且つ一体的に連結されている。軸部材88はベースプレート12を貫通してベースプレート12の下方へ突出していると共に、ベースプレート12をその厚さ方向に貫通した状態で設けられた軸受機構90によって回転自在に支持されている。この軸部材88に対応してベースプレート12の下側には第2モータとしてのトルク制御用サーボモータ102が設けられている。トルク制御用サーボモータ102はモータハウジング104を備えている。軸部材88の下端側はモータハウジング104の上端からモータハウジング104の内側に入り込んでおり、トルク制御用サーボモータ102の出力軸へカップリングを介して同軸的且つ一体的に連結されている。
【0038】
また、ベースプレート12の下側におけるトルク制御用サーボモータ102の側方には第1モータとしての位置制御用サーボモータ106が設けられている。位置制御用サーボモータ106のモータハウジング108の上側には軸方向が上下方向に沿ったプーリ110が設けられている。このプーリ110は軸方向が上下方向に沿った位置制御用サーボモータ106の出力軸に同軸的且つ一体的に連結されている。プーリ110に対応してモータハウジング104の上側にはプーリ112が設けられている。
【0039】
プーリ112は軸部材88に対して同軸的且つ一体的に連結されている。これらのプーリ110とプーリ112とには無端ベルト114が掛け回されており、位置制御用サーボモータ106の駆動力でプーリ110が回転すると、プーリ110の回転を無端ベルト114がプーリ110に伝えてプーリ110を回転させ、これにより、軸部材88を回転させることができるようになっている。
【0040】
ここで、本結線装置10では、位置制御用サーボモータ106の容量はトルク制御用サーボモータ102の容量よりも大きく設定されており、位置制御用サーボモータ106の駆動力で軸部材88を高速回転させることができるようになっている。換言すれば、トルク制御用サーボモータ102のトルクは位置制御用サーボモータ106のトルクよりも低く設定されており、トルク制御用サーボモータ102が出力した駆動力で軸部材88の回転量を微調整できるようになっている。
【0041】
一方、駆動部筐体72の内側にはボールねじ機構74を構成するスライダ122が設けられている。スライダ122にはねじ軸76が貫通しており、ねじ軸76が正転するとスライダ122が上昇し、ねじ軸76が逆転するとスライダ122が下降する。図1及び図4に示されるように、スライダ122の一部は駆動部筐体72の前面に形成された開口部から駆動部筐体72の外側へ突出している。このようにスライダ122において駆動部筐体72の外側へ突出した部分に対応して主電極保持ブロック24には嵌合部124が設けられている。
【0042】
嵌合部124には嵌合凹部126が形成されており、スライダ122が嵌合凹部126の内側に入り込んでいる。スライダ122の上端部は嵌合凹部126内の上端に当接していると共に、スライダ122の下端部は嵌合凹部126内の下端に当接しており、スライダ122の上下動に連動して嵌合部124、ひいては、主電極保持ブロック24が上下にスライドするようになっている。
【0043】
また、図1に示されるように、主電極保持ブロック24及び副電極保持ブロック44の前側には揺動部材としての揺動レバー132が設けられている。図4に示されるように、揺動レバー132は軸方向が前後方向に設定されたシャフト134に揺動自在に支持されている。シャフト134は副電極保持ブロック44の保持ブロック本体45に形成された長孔136を貫通して駆動部筐体72に固定されている。この揺動レバー132において、揺動レバー132の揺動中心であるシャフト134から揺動レバー132の揺動半径方向に離間した位置には押上ピン138が揺動レバー132に対して一体的に設けられている。
【0044】
押上ピン138は保持ブロック本体45に設定された係合部140に下側から接しており、図5に示されるように、シャフト134周りに押上ピン138が上昇すると、押上ピン138に係合部140が持ち上げられて保持ブロック本体45が上昇する。また、シャフト134周りに押上ピン138が下降すると、図6に示されるように、押上ピン138に係合部140が支持されたままの押上ピン138の下降分だけ保持ブロック本体45が下降する。
【0045】
ここで、シャフト134が貫通する長孔136は長手方向が上下方向に沿っているため、押上ピン138の上下動に伴い保持ブロック本体45が上下にスライドするが、図6に示されるように長孔136の上端部がシャフト134に接すると、保持ブロック本体45はそれ以上下降することはできない。但し、副電極保持ブロック44において保持ブロック本体45とスライダ46との間には圧縮コイルばね142が介在しており、保持ブロック本体45に対してスライダ46を下方へ付勢しているので、スライダ46は保持ブロック本体45に対して所定ストローク上下動できる。
【0046】
一方、図4に示されるように、揺動レバー132において、揺動レバー132の揺動中心であるシャフト134から押上ピン138の形成位置よりも更に揺動半径方向外側には被押上ピン144が形成されている。被押上ピン144に対応して上述した嵌合部124には長手方向が左右方向に沿った長孔146が形成されており、被押上ピン144は長孔146に入り込んでいる。
【0047】
図5に示されるように、スライダ122と共に嵌合部124(すなわち、主電極保持ブロック24)が上昇すると、長孔136の内周部に被押上ピン144が押し上げられ、これにより、シャフト134周りに被押上ピン144が上昇する向きに揺動レバー132が揺動し、スライダ122と共に嵌合部124(すなわち、主電極保持ブロック24)が下降すると、図6に示されるように、押上ピン138に作用する保持ブロック本体45の重量によってシャフト134周りに被押上ピン144が下降する向きに揺動レバー132が揺動する。
【0048】
以上の構成の本結線装置10は、図示しないチャックを備えており、図3に示される回転電機の回転子162を構成するシャフト164が保持される。チャックに保持された回転子162は、シャフト164の軸方向が前後方向に沿っており、回転子162における整流子166の結線爪168が上下方向に主電極30と対向し、整流子166におけるブラシとの摺接部分が上下方向に副電極56と対向するようになっている。
【0049】
<本実施の形態の作用、効果>
次に、本結線装置10の動作の説明を通して本結線装置10の作用並びに効果(本発明の一実施の形態に係る結線方法とその作用並びに効果)について説明する。
【0050】
本結線装置10では、先ず、図6に示されるように、シャフト134が長孔136の上端部に接した状態で図7の(A)に示されるように主電極30が結線爪168に当接して副電極56が回転子162におけるブラシとの摺接部分に当接するように主電極ホルダ28が主電極保持ブロック24にセットされて副電極ホルダ48がスライダ46にセットされる。
【0051】
回転子162における結線爪168の結線を行なう際には、先ず、図3に示されるように、図示しないチャックに回転子162のシャフト164を保持させ、回転子162における整流子166の結線爪168を上下方向に主電極30と対向させ、結線爪168におけるブラシとの摺接部分を上下方向に副電極56と対向させる。この状態で、位置制御用サーボモータ106を正転駆動させると、位置制御用サーボモータ106の駆動力がプーリ110、無端ベルト114、及びプーリ112を介して軸部材88に伝わり、軸部材88を比較的高速で正転させる。
【0052】
この軸部材88が高速正転することで、軸部材88に対して同軸的且つ一体的に連結されたボールねじ機構74が高速正転し、これにより、スライダ122が下降する。スライダ122が下降することで、図7の(A)に示されるように、主電極30が結線爪168に当接すると、位置制御用サーボモータ106の正転駆動が停止され、位置制御用サーボモータ106よりも低トルクのトルク制御用サーボモータ102が正転駆動される。トルク制御用サーボモータ102の正転駆動力は軸部材88を介してボールねじ機構74に伝わり、ボールねじ機構74を低速で正転させる。これによりスライダ122が更に下降すると、主電極30が結線爪168を押圧し、図7の(B)に示されるように、結線爪168を屈曲させて結線爪168によって回転子162の巻線170を挟持させる。
【0053】
一方、上記のように位置制御用サーボモータ106やトルク制御用サーボモータ102の正転駆動力でスライダ122が下降し、これに伴い、主電極保持ブロック24の嵌合部124が下降すると、嵌合部124の長孔146に入り込んでいる被押上ピン144が下降し、これにより、揺動レバー132が下降するように揺動する。揺動レバー132に形成されている押上ピン138は副電極保持ブロック44の保持ブロック本体45に形成された長孔136に入り込んでいるので、揺動レバー132が下向きに揺動すると、これに追従するように保持ブロック本体45が下降する。
【0054】
このように保持ブロック本体45が下降することで図7の(A)に示されるように副電極56が回転子162におけるブラシとの摺接部分に当接する。主電極30が結線爪168を押圧し、図7の(B)に示されるように、結線爪168を屈曲させる際にはトルク制御用サーボモータ102の正転駆動力でスライダ122と共に主電極保持ブロック24の嵌合部124が下降するが、上述したように副電極56が回転子162におけるブラシとの摺接部分に当接した状態では、図6に示されるように、シャフト134が長孔136の上端部に接しているので、揺動レバー132が回動しても押上ピン138が係合部140から離間するように下降するだけで保持ブロック本体45はそれ以上下降できない。このため、主電極30が結線爪168を押圧して屈曲させている間に副電極56が不要に大きな力で回転子162におけるブラシとの摺接部分を押圧することがない。
【0055】
以上のように、主電極30が結線爪168を屈曲させて結線爪168によって回転子162の巻線170を挟持させて、副電極56が整流子166に当接した状態で主電極30と副電極56との間が通電され、これにより、結線爪168と巻線170とが溶接されて結線される。
【0056】
このように結線爪168と巻線170との結線が終了すると、位置制御用サーボモータ106が逆転駆動され、これにより、スライダ122が上昇する。スライダ122が上昇すると、嵌合部124、すなわち、主電極保持ブロック24が上昇して図8の(A)に示されるように、主電極30が結線爪168から離間する。さらに、嵌合部124が上昇することで長孔146の内周部が被押上ピン144を押し上げると、揺動レバー132がシャフト134周りに揺動して、押上ピン138が保持ブロック本体45の係合部140を押し上げる。
【0057】
但し、上記のように、副電極保持ブロック44のスライダ46は保持ブロック本体45に対して上下に相対的にスライド可能であり、主電極30が結線爪168を屈曲させた状態でスライダ46は保持ブロック本体45に対して相対的にスライドした状態であったので、図8の(A)に示されるように保持ブロック本体45が所定ストローク上昇するまでスライダ46は上昇しない。
【0058】
次いで、この状態から更に位置制御用サーボモータ106の逆転駆動力でスライダ122を上昇させて保持ブロック本体45が一定ストローク上昇した後には、スライダ122の上昇に伴う揺動レバー132の揺動で、保持ブロック本体45と共にスライダ46が上昇し、副電極56が回転子162の整流子166から離間する。この状態で、別の結線爪168と巻線170との結線を行う場合には、回転子162のシャフト164周りに所定角度チャックを回動させて、別の結線爪168と主電極30とを上下に対向させると共に、結線爪168におけるブラシとの摺接部分と副電極56とを上下に対向させ、この状態から再び、位置制御用サーボモータ106やトルク制御用サーボモータ102を正転駆動させる。
【0059】
一方、結線作業が終了して図8の(A)に示される状態から更に位置制御用サーボモータ106を逆転駆動させてスライダ122を上昇させる。これにより、図8の(B)に示されるように、主電極30や副電極56を十分に回転子162から離間させることで、回転子162を前方へ向けてチャックから取り外すことができる。ここで、揺動レバー132はシャフト134を中心に揺動する構成である。
【0060】
このため、揺動レバー132の各部位における上下の移動量は揺動レバー132の揺動中心であるシャフト134に近いほど小さく、シャフト134から遠いほど大きい。したがって、本結線装置10では、スライダ122が上昇することで嵌合部124(すなわち、主電極保持ブロック24)が上昇し、嵌合部124が上昇することで被押上ピン144が押し上げられて揺動レバー132が揺動し、押上ピン138が副電極保持ブロック44の保持ブロック本体45を押し上げるが、このときの保持ブロック本体45の上方への移動量は嵌合部124の上方への移動量よりも小さい。
【0061】
このため、十分にスライダ122を上昇させると、図8の(B)に示されるように、主電極30が副電極56よりも十分に上方へ離間する。これにより、結線装置10の前方から副電極56や副電極56を保持する副電極ホルダ48にアプローチでき、例えば、図8の(C)に示されるような副電極56の取外作業等の各種作業を容易に行なうことができる。
【0062】
また、本実施の形態では、主電極30を結線爪168に接近させる場合や結線終了後に主電極30を結線爪168から離間させる場合には容量がトルク制御用サーボモータ102よりも大きな位置制御用サーボモータ106によってボールねじ機構74のねじ軸76を比較的高速で回転させて、主電極保持ブロック24や副電極保持ブロック44を移動させるので作業効率がよく、また、主電極30が結線爪168に当接してからは位置制御用サーボモータ106の低トルクのトルク制御用サーボモータ102によってねじ軸76の回転量、ひいては、主電極30の移動量を微調整できるので結線の品質を向上又は安定させることができる。
【0063】
なお、本実施の形態では、主電極保持ブロック24と副電極保持ブロック44との間に揺動レバー132を介在させ、揺動レバー132によって主電極保持ブロック24の上下動を副電極保持ブロック44に伝えて副電極保持ブロック44を上下動させる構成であったが、例えば、スライダ122の上下動で副電極保持ブロック44を上下動させ、副電極保持ブロック44の上下動を揺動レバー132のような揺動部材を介して主電極保持ブロック24に伝えて主電極保持ブロック24を上下動させる構成であってもよい。
【0064】
また、本実施の形態では、変速手段を揺動部材としての揺動レバー132で構成したが、変速手段はトルク制御用サーボモータ102や位置制御用サーボモータ106の駆動力によって主電極保持ブロック24と副電極保持ブロック44とが同じ向きに上下動し、更に、主電極保持ブロック24及び副電極保持ブロック44の一方に対する他方の移動ストロークを異ならせることができればよい。したがって、揺動部材に代わり変速手段をギヤ列により構成してボールねじ機構74と主電極保持ブロック24や副電極保持ブロック44との間や主電極保持ブロック24と副電極保持ブロック44との間に介在させて主電極保持ブロック24及び副電極保持ブロック44の一方に対する他方の移動ストロークを異ならせる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10・・・結線装置、24・・・主電極保持ブロック(主電極保持手段)、30・・・主電極、44・・・副電極保持ブロック(副電極保持手段)、56・・・副電極、70・・・駆動部(駆動手段)、102・・・トルク制御用サーボモータ(第2モータ)、106・・・位置制御用サーボモータ(第1モータ)、132・・・揺動レバー(変速手段、揺動部材)、162・・・回転子(回転電機)、164・・・シャフト、166・・・整流子、168・・・結線爪、170・・・巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機の整流子片に形成された結線爪に対して主電極を保持すると共に、前記回転電機の回転半径方向に沿って前記主電極を前記結線爪に対して接離させる向きである接離方向に移動可能な主電極保持手段と、
前記回転電機の回転軸方向に前記主電極に対して離間して配置された副電極を保持すると共に、前記接離方向へ移動可能な副電極保持手段と、
出力した駆動力により前記主電極保持手段を前記接離方向へ移動させて、前記副電極保持手段を前記主電極保持手段と同じ向きへ移動させると共に、前記主電極保持手段を前記結線爪から所定距離離間した位置まで移動させた状態で、前記主電極及び前記副電極の一方の電極に対して他方の電極を前記接離方向にオフセットさせる駆動手段と、
を備える結線装置。
【請求項2】
前記主電極保持手段及び前記副電極保持手段のうち何れかの一方の保持部に伝わった前記駆動力を増速又は減速して前記主電極保持手段及び前記副電極保持手段のうち何れかの他方の保持部へ伝え、前記主電極保持手段を前記結線爪から所定距離離間した位置まで移動させた状態で、前記主電極及び前記副電極の一方の電極に対して他方の電極を前記接離方向にオフセットさせる変速手段を含めて前記駆動手段を構成した請求項1に記載の結線装置。
【請求項3】
前記接離方向に対して直交する向きを軸方向とする軸周りに揺動可能に支持されると共に、揺動中心から半径方向に離間した位置で前記何れかの一方の保持部が支持され、前記何れかの一方の保持部が支持された位置よりも前記揺動中心から離間した位置で前記何れかの他方の保持部が支持され、揺動することによる前記何れかの他方の保持部における前記接離移動方向の移動距離を前記何れかの一方の保持部における前記接離移動方向の移動距離よりも長くする揺動部材を含めて前記変速手段を構成した請求項2に記載の結線装置。
【請求項4】
出力した駆動力により前記主電極が前記結線爪に接触する位置まで前記主電極保持手段及び前記副電極保持手段の双方を前記接離方向の同じ向きへ移動させる位置制御用の第1モータと、
前記主電極が前記結線爪に接触する位置から前記結線爪と巻線とを溶接する溶接位置までの間で前記主電極保持手段を移動させる前記第1モータよりも低トルクの第2モータと、
を含めて前記駆動手段を構成した請求項1から請求項3の何れか1項に記載の結線装置。
【請求項5】
前記主電極保持手段に対する前記主電極の着脱方向及び前記副電極保持手段に対する前記副電極の着脱方向の少なくとも何れか一方を、前記回転電機の回転軸方向に沿った前記主電極に対する前記副電極の離間した向き又はその反対方向に設定した請求項1から請求項4の何れか1項に記載の結線装置。
【請求項6】
回転電機の整流子片に形成された結線爪に対し、前記回転電機の回転半径方向に沿って主電極を接近させて前記主電極を結線爪に圧接させると共に、前記主電極と同じ向きに副電極を移動させて前記結線爪に対して導通した部分に前記副電極を当接させた状態で、前記主電極と前記副電極との間を通電させて前記結線爪と巻線とを溶接させると共に、前記結線爪に対する前記主電極の接近方向とは反対方向へ前記主電極が移動して前記結線爪から所定距離離間することにより、前記主電極及び前記副電極の一方に対して他方が前記接近方向にオフセットされる結線方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−210025(P2012−210025A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72713(P2011−72713)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】