説明

絞り装置用の光学フィルタ及び絞り装置

【課題】絞り装置の光路上に対して抜き差し自在に装備するのに最適な条件、即ち(a)厚みが小さく割れを生じない、(b)軽量で取り扱い性がよい、(c)加工性がよく重量増や体積増につながる可動枠に嵌めずに直接可動式に組み付けられる、(d)スライド動作を保証するため反りや膜の剥離が発生しにくい、等の条件を満たす光学フィルタ、及び、その光学フィルタを使用した絞り装置の提供。
【解決手段】光路を形成する開口部10aを有した絞り基板10の板面に沿ってスライド自在に装備され、フィルタ駆動手段30によりスライドさせられることで、光路上に挿入されたり光路上から取り除かれたりする絞り装置用の赤外カットフィルタであり、蒸着またはスパッタによる成膜が可能な耐熱温度を有するプラスチック薄板(ノルボルネン系樹脂の薄板)をフィルタ基材とし、その表裏両面に蒸着またはスパッタにより略同等厚さの多層膜を形成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCTV(監視カメラシステム)用レンズ等の撮影装置に組み付けられる絞り装置用の光学フィルタ、及び、その光学フィルタを装備した絞り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昼夜監視カメラシステムとして、カメラボデイのカラー撮像素子(CCD又はCMOS等)上に、昼間は可視光領域の光を結像させてカラー撮影を行い、夜間は可視光領域の光に加えて近赤外領域の光を結像させてモノクロ撮影を行い、TVモニタ上に監視像を映し出すシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このシステムは、昼間の撮影時には、撮像素子の前方(カメラボデイ内またはレンズ鏡筒内)に赤外カットフィルタを位置させて、可視光領域の光のみに基づいてカラー撮影を行い、また夜間の撮影時には、同フィルタを撮像素子の前方から取り除き、赤外波長域及び可視波長域の光に基づいてモノクロ撮影を行う。
【0004】
図7(a)、(b)は、赤外カットフィルタをカメラ本体内に備える従来型のCCTVカメラの構成を示す図である。
【0005】
このCCTVカメラは、カメラ本体100Aと、その前方に取り付けられたレンズ鏡筒200Aとからなる。カメラ本体100Aの内部には、撮像素子130が設けられると共に、赤外カットフィルタ110が設けられている。また、レンズ鏡筒200Aの内部には、絞り210が設けられている。
【0006】
カメラ本体100A内の赤外カットフィルタ110は、カメラ本体100A内に設けられたモータ等のフィルタ駆動用アクチュエータ230により駆動され、撮像素子130の前方の光路L上に挿入されたり光路L上から取り除かれたりする。図4(a)は赤外カットフィルタ110が光路L上に挿入された状態、(b)は赤外カットフィルタ110が光路L上から取り除かれた状態を示している。一方、レンズ鏡筒200A内の絞り210は、レンズ鏡筒200A内に設けられたガルバノメータ等の絞り駆動用アクチュエータ220により駆動され、その絞り開口の大きさが調節される。
【0007】
図7の(a)の状態では、赤外カットフィルタ110が光路L上に挿入されているので、レンズ鏡筒200Aに入射した光は、絞り210を介してカメラ本体100Aに入射し、赤外カットフィルタ110を透過して撮像素子130に達し、被写体像として投影される。一方、(b)の状態では、赤外カットフィルタ110が光路L上から取り除かれているので、レンズ鏡筒200Aに入射した光は、絞り210を介してカメラ本体100Aに入射し、赤外カットフィルタ110を介することなく、撮像素子130に直接達し、被写体像として投影される。
【0008】
また、図8(a)、(b)は、赤外カットフィルタをレンズ鏡筒内に備える別の従来型のCCTVカメラの構成を示す図である。
【0009】
このCCTVカメラは、カメラ本体100Bと、その前方に取り付けられたレンズ鏡筒200Bとからなり、赤外カットフィルタ110及びフィルタ駆動用アクチュエータ230は、図7の従来例と違って、カメラ本体100Bの内部ではなく、レンズ鏡筒200Bの内部に設けられている。撮像素子130と絞り210については、図7の例と同じである。
【0010】
また、このCCTVカメラでは、赤外カットフィルタ110に隣接させて、ダミーのフィルタ111が設けられている。このダミーのフィルタ111は、赤外カットフィルタ110とほぼ同じ厚さの透光性平行平面板よりなるもので、赤外カットフィルタ110が光路L上にある時とない時とでの光路長の差を補償し、光路長の差による撮像素子130に対するピントずれを防止するためのものである。
【0011】
従って、赤外カットフィルタ110とダミーのフィルタ111は、図示略の同じホルダに取り付けられており、ホルダをフィルタ駆動用アクチュエータ230で駆動することにより、赤外カットフィルタ110またはダミーのフィルタ111のいずれかが光路L上に配置されるようになっている。
【0012】
また、従来の赤外カットフィルタは比較的厚みのあるもの(0.5mm以上)であるため、特許文献1に記載のCCTVカメラでは、絞り基板(図示略)の一方の板面側に絞り羽根を配置した場合、絞り基板の他方の板面側に赤外カットフィルタを配置することにより、絞り部分の構成の複雑化を避けながら、赤外カットフィルタを一体に備えた絞り装置を構成している。
【0013】
ところで、上述の撮影装置等において赤外カットフィルタを可動式(つまり光路に対して抜き差し自在)に装備する場合、多くは赤外カットフィルタ自身に相応の剛性を期待する関係から、ガラスや石英をフィルタ基材としてその表面に成膜を施した光学フィルタ(例えば、特許文献2、特許文献3参照)が使用されるのが一般的であった。
【0014】
【特許文献1】特開2002−189238号公報
【特許文献2】特開2003−29027号公報
【特許文献3】特開2000−314808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、ガラスや石英をフィルタ基材とした光学フィルタの場合、硬くて割れやすいため、複雑な形状加工が難しい。そのため、可動式に装備する場合には、直接フィルタだけを動かすように構成するのは困難であり、可動枠にフィルタを嵌めて使用せざるを得ず、可動部分が大きくなりがちであった。また、可動式とする場合、薄くて軽いのがよいが、厚くて重くなりがちであった。
【0016】
特に最近のCCTVカメラでは、カメラ本体100Aの小型化に伴い、レンズ鏡筒内の絞り装置に赤外カットフィルタとその駆動機構を一体に組み込むことが行われるようになってきており、従来のガラスや石英をフィルタ基材とした赤外カットフィルタを使用したままでは、装置のコンパクト化や動作性能に限界が生じていた。
【0017】
本発明は、上記事情を考慮し、絞り装置の光路上に対して抜き差し自在に装備するのに最適な条件、即ち、
(a)厚みが小さく、割れを生じない
(b)軽量で取り扱い性がよい
(c)加工性がよく、重量増や体積増につながる可動枠に嵌めずに直接可動式に組み付けられる
(d)スライド動作を保証するため、反りや膜の剥離が発生しにくい
等の条件を満たすことのできる光学フィルタ、及び、その光学フィルタを使用することで、小型・軽量化を図れるようにした絞り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1の発明は、光路を形成する開口部を有した絞り基板の板面に沿ってスライド自在に装備され、フィルタ駆動手段によりスライドさせられることで、前記光路上に挿入されたり光路上から取り除かれたりする絞り装置用の光学フィルタにおいて、蒸着またはスパッタによる成膜が可能な耐熱温度を有するプラスチック薄板をフィルタ基材とし、その表裏両面に蒸着またはスパッタにより略同等厚さの多層膜を形成してなることを特徴とする。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1に記載の絞り装置用の光学フィルタであって、前記プラスチック薄板として、ノルボルネン系樹脂の薄板を使用したことを特徴とする。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の絞り装置用の光学フィルタであって、厚さが0.25mm以下の赤外領域の光を遮断する赤外カットフィルタであることを特徴とする。
【0021】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の絞り装置用の光学フィルタであって、前記絞り基板の光路を覆う大きさの略円形のフィルタ本体部と、該フィルタ本体部より延出したクランク形状のレバー部とを有し、前記クランク形状のレバー部の屈曲部にフィルタを回動自在に支持するための軸孔が設けられると共に、レバー部の先端側に前記フィルタ駆動手段の駆動ピンの係合する係合孔が設けられており、全体形状が、前記プラスチック薄板に多層膜を形成したフィルタ素材をプレスカットすることにより加工されていることを特徴とする。
【0022】
請求項5の発明の絞り装置は、光路を形成する開口部を有した絞り基板と、この絞り基板の一方の板面に配置され該板面に沿ってスライドすることで前記光路を絞り調節する絞り羽根と、前記光路を絞り調節するために前記絞り羽根を駆動する絞り駆動手段と、波長に応じた透過特性を有する光学フィルタと、この光学フィルタを前記光路上に挿入したり光路上から取り除いたりするフィルタ駆動手段とを備え、前記光学フィルタとして、請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルタを使用し、この光学フィルタを、前記絞り基板の一方の板面側に配置し、前記絞り羽根に沿ってスライド自在に設けたことを特徴とする。
【0023】
請求項6の発明は、請求項5記載の絞り装置であって、前記絞り羽根が互いに積層した状態で2枚設けられており、それら2枚の絞り羽根の間に、前記光学フィルタを配置したことを特徴とする。
【0024】
請求項7の発明は、請求項5または6に記載の絞り装置であって、前記光学フィルタが、前記絞り基板の端部に設けられた軸に回動自在に支持され、その軸を中心に回動させられることで、前記光路上に挿入されたり光路上から取り除かれたりするものであることを特徴とする。
【0025】
請求項8の発明は、請求項5〜7のいずれかに記載の絞り装置であって、前記絞り駆動手段とフィルタ駆動手段とが共に、前記絞り基板上において前記光路に対して同じ側に配置されていることを特徴とする。
【0026】
請求項9の発明は、請求項5〜8のいずれかに記載の絞り装置であって、前記フィルタ駆動手段は、前記光学フィルタが光路上の第1の位置と光路上から外れた第2の位置との中間位置よりも第1の位置側にあるとき光学フィルタを第1の位置に磁力によって保持し、光学フィルタが前記中間位置よりも第2の位置側にあるとき光学フィルタを第2の位置に磁力によって保持するフィルタ保持手段を備えていることを特徴とする。
【0027】
請求項10の発明は、請求項9記載の絞り装置であって、前記フィルタ保持手段が、前記光学フィルタを駆動するモータのロータに設けられた永久磁石と、前記光学フィルタを前記第1の位置と第2の位置の中間位置に操作したとき前記永久磁石の互いに隣接するN極とS極から等距離の位置に配置され、且つ、前記N極またはS極との間に吸引力を発生しそれによりロータに回転付勢力を与える磁性片と、を有することを特徴とする。
【0028】
請求項11の発明は、請求項5〜10のいずれかに記載の絞り装置であって、前記絞り羽根の絞り開口を形成する透孔部に、前記光学フィルタとは別のNDフィルタが設けられており、このNDフィルタが、赤外領域の透過率が可視領域の透過率とほぼ同等の分光透過率特性を有するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
請求項1の発明の絞り装置用の光学フィルタは、ガラスや石英材ではなく、耐熱性を有するプラスチック薄板をフィルタ基材とし、その表裏両面に蒸着またはスパッタにより略同等厚さの多層膜を形成してなるから、軽量である上、厚みを小さくしても、割れにくく、取り扱い性がよい。また、プレスカット等の量産性の高い方法により形状を自由に加工できるから、重量増や体積増につながる可動枠に嵌めないでも、直接可動式に組み付けることが容易にできる。また、両面に同等厚さの多層膜を形成しているので、反りや膜の剥離も発生しにくい。従って、絞り装置にスライド自在に組み込んだ場合、安定した確実なスライド動作を保証することができるし、体積増や重量増を抑えて、絞り装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0030】
請求項2の発明によれば、前記プラスチック薄板としてノルボルネン系樹脂の薄板を使用しているので、成膜時の耐熱性を十分に発揮することができるし、可動式に装備する光学フィルタとしての高い光学特性や寸法安定性を発揮することができる。
【0031】
請求項3の発明によれば、光学フィルタの厚さを0.25mm以下にしたので、光学フィルタの有り無しによる光路長の差をほとんど無くすことができ、ピントずれを考慮しての光学設計を不要にすることができる。つまり、光路長の調整のためのダミーのフィルタを使用しないでもよくなり、その駆動系も含めて小型・軽量化が達成できる。また、赤外カットフィルタであるから、昼夜兼用のCCTVカメラの絞り装置に適用するのに好適である。
【0032】
請求項4の発明によれば、全体形状を、プラスチック薄板に多層膜を形成したフィルタ素材をプレスカットすることにより加工しているので、量産設備を使用するだけで、絞り装置に可動枠を使用せずに直接回動スライド式に装備する際の必要形状を満たすことができる。
【0033】
請求項5の発明の絞り装置によれば、プラスチック薄板をフィルタ基材とする光学フィルタを、絞り基板の一方の板面側に絞り羽根と一緒に配置し、絞り羽根に沿ってスライド自在に設けているので、軽量化を図りながら絞り装置の構成を単純化することができる。また、薄板状に製作した光学フィルタは、絞り羽根間の隙間や絞り羽根と絞り基板の隙間などの狭いスペースに、絞り羽根の作動や自身の作動に支障を与えることなく配置することができることから、光学フィルタを光路上に対して抜き差し自在に一体に組み込みながらも、絞り装置のコンパクト化(特に薄型化)を図ることができる。また、光学フィルタの薄型化により、ピントずれ防止のためのダミーフィルタを設ける必要もなくなり、その結果、重量の増加やスペースの増加を排することができて、レンズ鏡筒等に組み込む際の組み付け性の向上が図れ、レンズ鏡筒等の軽量・小型化に大きく貢献することができる。
【0034】
請求項6の発明によれば、2枚の絞り羽根の隙間に光学フィルタを配置したので、光学フィルタを配置するための特別なスペースが不要であり、コンパクト化が図れる。また、2枚の絞り羽根を案内として光学フィルタをスライドさせることができるので、光学フィルタの作動の円滑化を図ることもできる。
【0035】
請求項7の発明によれば、光学フィルタのスライド方式を回動式にしたので、光学フィルタの駆動系を省スペース型の単純な構造とすることができる。また、回動式にしたことで、絞り羽根間の小さな隙間において無理なく光学フィルタを駆動させることができる。
【0036】
請求項8の発明によれば、絞り駆動手段とフィルタ駆動手段とを光路に対して同じ側に設けているので、絞り装置をレンズ鏡筒に組み付ける場合に、どちらかの駆動手段が邪魔になるようなことなく、絞り装置をレンズ鏡筒に無理なく組み付けることができ、レンズ鏡筒等への取り付けが簡単にできるようになる。
【0037】
請求項9の発明によれば、磁力によって光学フィルタの位置を第1の位置または第2の位置のいずれかに保持するようにしたので、フィルタ駆動手段の電力消費を低減することができる。
【0038】
請求項10の発明によれば、その磁力を、フィルタ駆動手段を構成するモータのロータの永久磁石を利用して得るので、無駄の構成を極力省き低コストに構成できる。
【0039】
請求項11の発明によれば、NDフィルタによって、例えば、CCTVカメラに適用した場合の夜間撮影時の赤外光の透過量を可視領域の光と同じ程度に減少させることができるため、赤外光が過剰に撮影されるのを防ぐことができる。従って、赤外光の強い被写体部分が明るくなり過ぎるようなことがなく、見やすい撮像画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態の光学フィルタ及びそれを組み込んだ絞り装置を図面に基づいて説明する。
図1は実施形態の絞り装置1の構成を示す分解斜視図である。
この絞り装置1は、樹脂成形品よりなる長方形板状の絞り基板10と、この絞り基板10の上面(一方の板面上)に互いに重ね合わせた状態でスライド自在に組み付けられる一対の絞り羽根12、13と、これら2枚の絞り羽根12、13の間に回転スライド可能に配置される薄膜状の光学フィルタ15と、絞り基板10の上面に絞り羽根12、13及び光学フィルタ15を組み付けた上で、絞り基板10上に絞り羽根12、13を覆うように被せられる羽根カバー14と、絞り基板10の下面側に組み付けられる絞り駆動装置20及びフィルタ駆動装置30と、からなる。
【0041】
絞り基板10及び羽根カバー14には、光路(図中縦の中心軸線を光軸とした光の通路)を形成するための開口部10a、14aが形成され、絞り羽根12、13には、絞り開口を形成するための切欠状または孔状の透孔部12e、13eが設けられている。そして、絞り基板10上で絞り羽根12、13を矢印f1、f2方向に直線スライドさせることにより、前記の光路を絞り調節することができるようになっている。絞り駆動装置20は、図示略の駆動レバーに設けた駆動ピン21a、21bを介して絞り羽根12、13をスライドさせるもので、モータを中心に構成されている。
【0042】
光学フィルタ15は、波長に応じた透過特性を有するもので、ここでは赤外線領域(近赤外線領域を含む)の光を遮断する赤外カットフィルタが使用されている。フィルタ駆動装置30は、駆動レバー31を介して光学フィルタ15を回転スライドさせることにより、光学フィルタ15を光路上に挿入したり光路上から取り除いたりするもので、モータを中心に構成されている。
【0043】
この光学フィルタ15は、0,25mm以下の厚みの薄膜状(フィルム状)に形成されることで、2枚の絞り羽根12、13の僅かな隙間に挿入されており、絞り羽根12、13に沿ってスライドできるように設けられている。このように2枚の絞り羽根12、13の間に挟まれることにより、光学フィルタ15は、絞り羽根12、13の表面を案内面として滑らかにスライドすることができ、薄膜状でありながら安定した抜き差し動作が可能となっている。
【0044】
図2はこの光学フィルタ15の断面構造の模式図である。
この光学フィルタ15は、耐熱温度の高いプラスチック薄板151をフィルタ基材とし、その表裏両面(A面とB面)に、蒸着またはスパッタにより略同等厚さの多層膜152、153を形成してなるものである。プラスチック薄板151の材料としては、ノルボルネン系樹脂が、光学特性や寸法安定性の点で最適である。このノルボルネン系のプラスチック薄板151は、130℃以上の耐熱性を有するので、例えば、120℃程度までの雰囲気温度下で蒸着を施すことにより、変形を生じることなく、安定した状態で、多層膜152、153を形成することが可能である。
【0045】
ここでは、表裏面の多層膜152、152の厚さを略等しく設定したことにより、表裏のバランスを良好に保つことができ、温度変化等による光学フィルタ15の反り防止を図ることができ、それにより蒸着膜の剥離防止を図ることができる。また、スライドさせる際の動作の安定を保証することもできる。
【0046】
図3は、多層膜152、153の膜構成の例を示している。(a)は蒸着により成膜する場合、(b)はスパッタにより成膜する場合の例をそれぞれ示している。(a)の蒸着の場合は、一例としてTiO2とSiO2を交互に成膜(例えば38層)して、片面4〜5μmの厚さの多層膜152、153を形成している。蒸着方法としては、120℃以下の雰囲気温度下で材料を電子ビームで溶かし、蒸着装置の上部ドームに取り付けたプラスチック薄板に蒸着させる方法を採ることができる。
【0047】
(b)のスパッタの場合は、一例としてNb2O5とSiO2を交互にRFスパッタ法により成膜(例えば30層)して、片面3μm程度の厚さの多層膜152、153を形成している。当該スパッタは約60℃の低温の雰囲気温度下で成膜することができる。
【0048】
光学フィルタ15の製作手順としては、図4に示すように、まず(a)のプラスチック薄板151を用意し、次に(b)その表裏面に成膜を施し、それを(c)プレス設備にて所定形状にプレスカットし、それにより(d)の完成品(光学フィルタ)を得る、という手順を経るのがよい。
【0049】
プレスカットした光学フィルタ15は、図1に示すように、絞り基板10の光路を覆う大きさの略円形のフィルタ本体部15hと、フィルタ本体部15hより延出したクランク形状のレバー部15aとを有している。そして、レバー部15aの屈曲部にフィルタを回動自在に支持するための透孔(軸孔)15bが設けられると共に、レバー部15aの先端側にフィルタ駆動手段30の駆動ピン30aの係合する長孔(係合孔)15cが設けられている。
【0050】
また、絞り羽根12、13の絞り開口を形成する透孔部12e、13eには、赤外カットフィルタよりなる光学フィルタ15とは別のNDフィルタ12f、13fが貼り付けられている。これらNDフィルタ12f、13fは、赤外領域の光の透過率が可視領域の光の透過率とほぼ同等の分光透過率特性を有するように作られている。
【0051】
絞り基板10の上面の周縁部の近傍には、絞り羽根12、13と係合する先端フック付きの4つのガイドピン11a、11b、11c、11dが複数設けられている。また、絞り羽根12、13の側縁部の近傍には、各側縁部と平行に長溝12a、12b、12c、13a、13b、13cが設けられている。そして、これら長溝12a、12b、12c、13a、13b、13cをガイドピン11a、11b、11c、11dに嵌めることで、絞り羽根12、13が絞り基板10の上面に矢印f1、f2方向に直線スライド自在に保持されている。なお、ガイドピン11a、11b、11c、11dの先端フック部分が、絞り羽根12、13の上方への抜け防止を果たす。なお、図1において絞り基板10上に設けられている符号16で示すものは、レンズ鏡筒などへこの絞り装置1を取り付け固定するための取付ブラケットである(図6を用いて後述)。
【0052】
絞り羽根12、13を駆動するための要素としては、まず、各絞り羽根12、13の長手方向の端部に、それぞれ絞り羽根12、13のスライド方向と直交する横溝12d、13dが設けられている。一方、絞り基板10の下面側に取り付けられた絞り駆動装置20には、図示しない駆動レバーが設けられている。この駆動レバーは、両端に絞り基板10の上面側に突き出た駆動ピン21a、21bを有するもので、その中心部が絞り駆動装置20のモータ軸(図示略)に結合されている。各駆動ピン21a、21bには、それぞれ絞り羽根12、13の長手方向の端部に設けた横溝12d、13dが係合しており、これにより、絞り駆動装置20のモータを回転駆動すると、駆動ピン21a、21bの回動により2枚の絞り羽根12、13が直線スライドして、光路の絞り調節が行われるようになっている。
【0053】
このように直線スライドする2枚の絞り羽根12、13の間に配置された光学フィルタ15は、前述したように、光路を遮断するフィルタ本体部15hが、絞り羽根12、13の透孔部12e、13eよりもやや大きめの略円形に形成され、その一端に外方に延出するクランク形状のレバー部15aを有する一体成形品である。
【0054】
絞り基板10の一方の側縁部には、フィルタ駆動装置30を取り付けるためのブラケット10bが一体に突設されており、そのブラケット10bの下面側に、フィルタ駆動装置30の主要素であるモータ(特に符号を付さず)が取り付けられている。前記ブラケット10aの近傍には、光学フィルタ15を支持するための支軸10cが突設され、その支軸10cの近傍に、フィルタ駆動装置30の駆動レバー31の先端に設けた駆動ピン31aが突出している。
【0055】
光学フィルタ15は、クランクレバー部15aの曲がり部に設けた透孔15bを前記支軸10cに嵌めることで、この支軸10cを中心に絞り羽根12、13の面に沿って回動可能に支持されている。また、クランクレバー部15aの先端側に設けた長孔15cに、フィルタ駆動装置30の駆動ピン31aが係合しており、これにより、フィルタ駆動装置30を駆動することにより、駆動ピン31aの回動によって、光学フィルタ15が支軸10cを中心に回動し、それにより、光学フィルタ15が光路上に挿入されたり光路上から取り除かれたりする(光学フィルタ15が光路上に対して抜き差しされる)ようになっている。
【0056】
この場合、絞り駆動装置20とフィルタ駆動装置30は、共に、絞り基板10上において光路に対して同じ側に配置されている。つまり、絞り基板10の長手方向の一端側にまとめて、絞り駆動装置20とフィルタ駆動装置30とが配置されている。従って、駆動装置20、30が設けられていない他端側は、寸法的に薄い板状体のままに保たれている。
【0057】
次に、光学フィルタ15を光路上に対して抜き差し駆動するフィルタ駆動装置30の構成について詳しく述べる。
フィルタ駆動装置30は、モータへの通電を停止しても、光学フィルタ15を光路上の第1の位置(フィルタ使用位置)、または、光路上から外れた第2の位置(フィルタ不使用位置)のいずれかに位置決め保持するフィルタ保持機能(フィルタ保持手段)を備えている。
【0058】
このフィルタ保持機能とは、光学フィルタ15が光路上の第1の位置(フィルタ使用位置)と光路上から外れた第2の位置(フィルタ不使用位置)との中間位置よりも第1の位置側にあるとき、光学フィルタ15を磁力によって第1の位置側に付勢することで結果的に第1の位置に保持し、また、光学フィルタ15が前記中間位置よりも第2の位置側にあるとき、光学フィルタ15を、磁力によって第2の位置側に付勢することで結果的に第2の位置に保持する機能である。
【0059】
この光学フィルタ15を第1の位置または第2の位置のいずれかに保持する機能(フィルタ保持機能=フィルタ保持手段)は、本実施形態の場合、光学フィルタ15を駆動するモータのロータに設けられた永久磁石と、この永久磁石のN極またはS極との間に吸引力を発生しそれによりロータに回転付勢力を与える磁性片とで構成されている。
【0060】
その点について図5を参照しながら詳しく説明する。
フィルタ駆動装置30の主体をなすモータは、図5(a)に示すように、ロータ軸33を有するロータ32と、ロータ32を回転駆動するためにロータ32の周囲に配置されたコイルボビン35と、コイルボビン35に巻回されたコイル36と、コイルボビン35に外嵌された円筒状のヨーク30a等から構成されている。ここでは、ヨーク30a、コイルボビン35及びコイル36でステータが構成されている。
【0061】
ロータ32は、直径方向両端がN極とS極に分極された円筒状の永久磁石で構成されている。ロータ軸33は樹脂製であり、外部に突出した先端部に、前記光学フィルタ15と係合する駆動レバー31の基端部が結合されている。また、ステータのヨーク30aの内側とロータ32の間には、軟磁性片37が配置されている。この軟磁性片37は、図5(a)に示すように、光学フィルタ15が前記第1の位置と第2の位置の中間位置にくるように駆動レバー31を操作したとき、ロータ32のN極とS極から略等距離となる位置に配置されており、ロータ32のN極またはS極との間に吸引力を発生し、それにより、ロータ32に回転付勢力を与える機能を果たしている。
【0062】
図5(b)は、ロータ32が矢印(イ)方向に振れた結果、光学フィルタ15が第2の位置(光路上から外れた位置)に到達したときのロータ32の回転位置を示している。このときは、ロータ32のN極が軟磁性体37に接近するので、N極と軟磁性体37との間に大きな磁気吸引力が発生し、その磁気吸引力によって、モータへの通電を停止しても、ロータ32つまりは光学フィルタ15が第2の位置に保持される。
【0063】
図5(c)は、ロータ32が矢印(ロ)方向に振れた結果、光学フィルタ15が第1の位置(光路上の位置)に到達したときのロータ32の回転位置を示している。このときは、ロータ32のS極が軟磁性体37に接近するので、S極と軟磁性体37との間に大きな磁気吸引力が発生し、その磁気吸引力によって、モータへの通電を停止しても、ロータ32つまりは光学フィルタ15が第1の位置に保持される。
【0064】
従って、このように光学フィルタ15を第1の位置または第2の位置のいずれかの位置に永久磁石の磁力によって保持することができ、その状態ではモータの電力が必要なくなるため、通電による発熱を無くすことができると共に、バッテリ電源の寿命を長くすることができる。特に、本実施形態の絞り装置1では、光学フィルタ15の位置決めに使用する磁力(つまり付勢力)を、ロータの永久磁石を利用して得るので、軟磁性片37を所定位置に配置するだけの簡単な構成とすることができる。
【0065】
次に、この絞り装置1を昼夜監視CCTVカメラに適用した場合を想定して、その作用を説明する。
この絞り装置1においては、絞り駆動装置20を駆動制御することによって、絞り羽根12、13に係合する駆動ピン21a、21bを回動させ、その回動によって絞り羽根12、13を直線スライドさせて、光路の絞り調節を行うことができる。最大絞りに近い位置では、絞り羽根12、13の透孔部12e、13eに取り付けたNDフィルタ12f、13fが光路上に位置することになるので、NDフィルタの作用が撮影光に現れる。
【0066】
一方、この絞り装置1においては、フィルタ駆動装置30を駆動することによって、駆動レバー31が回動するので、その回動によって光学フィルタ15を、支軸10cを中心に回転スライドさせて、光路上に対して抜き差しすることができる。
【0067】
この場合の光学フィルタ15は赤外カットフィルタであるから、光路上に光学フィルタ15を位置決めさせることにより、撮影光の赤外領域をカットすることができる。また、NDフィルタ12f、13fによって、夜間撮影時の赤外光の透過量を可視領域の光と同じ程度に減少させることができるため、赤外光が過剰に撮影されるのを防ぐことができ、その結果、赤外光の強い被写体部分が明るくなり過ぎるようなことがなくなり、見やすい撮像画像を得ることができる。
【0068】
即ち、CCTVカメラに搭載することを前提とした場合、この種の従来の絞り装置においては、赤外カットフィルタを挿入しない夜間モノクロ撮影時における光量の制御範囲を広げるために、絞り羽根に絞り開口上に位置するNDフィルタを貼り付けることが一般的に行われている。しかし、通常のNDフィルタは、赤外光に対しては透過率が上がった状態、いわゆる抜けた状態となりがちである。このため、モノクロ撮影の際の赤外光を可視光と同じように均一に抑えることができず、可視光に比べて赤外光の透過量が多くなり、赤外光の強い被写体部分が明るくなり、見にくい撮像画像となる。この点、本絞り装置1は、NDフィルタ12f、13fによって赤外光の透過量を可視領域の光と同程度に減少させるようにしている。従って、赤外光の強い被写体部分が明るくなり過ぎるようなことがなく、見やすい撮像画像を得ることができる。
【0069】
このような作用が得られる本絞り装置1においては、次に述べるような各種の効果を得ることができる。
即ち、光学フィルタ15を薄膜状にして、絞り基板10の一方の板面(上面)側に絞り羽根12、13と一緒に配置し、絞り羽根12、13に沿ってスライド自在に設けているので、絞り装置1の構成を単純化することができる。
【0070】
特に、2枚の絞り羽根12、13間の僅かな隙間に光学フィルタ15を配置しているので、光学フィルタ15のための余分なスペースが全く不要であり、絞り装置1の厚さ方向のコンパクト化が図れる。また、2枚の絞り羽根12、13を案内として、光学フィルタ15をスライドさせることができることから、光学フィルタ15の作動の円滑化を図ることもできる。
【0071】
このことは、光学フィルタ15として、ガラスや石英材ではなく、耐熱性を有するプラスチック薄板151をフィルタ基材とし、その表裏両面に蒸着またはスパッタにより略同等厚さの多層膜152、153を形成した薄膜状(フィルム状)のフィルタを使用したからできることである、と言える。
【0072】
即ち、この光学フィルタ15は、軽量に作れる上、厚みをきわめて小さくできる。しかも、割れにくく、取り扱い性がよい。また、プレスカット等の量産性の高い方法により形状を自由に決めることができるから、重量増や体積増につながる可動枠に嵌めないでも、上記のように直接形状加工や孔加工を施して、可動式に組み付けることが容易にできる。また、両面に同等厚さの多層膜152、153を形成しているので、反りや膜の剥離も発生しにくい。こうした特性が、絞り装置1にスライド自在に組み込んだ場合にも、安定した確実なスライド動作を保証し、体積増や重量増を抑えて、絞り装置1全体のコンパクト化を実現することに、大いに役立っているのである。
【0073】
また、光学フィルタの厚さを0.25mm以下にしたので、光学フィルタ15の有り無しによる光路長の差をほとんど無くすことができ、ピントずれを考慮しての光学設計を不要にすることができる。つまり、光路長の調整のためのダミーのフィルタを使用しないでもよくなり、その駆動系も含めて小型・軽量化が達成できる。
【0074】
従って、光学フィルタ15を光路上に対して抜き差し自在に一体に組み込みながらも、絞り装置1全体のコンパクト化(特に薄型化)を図ることができ、レンズ鏡筒などに組み込みやすくなると共に、レンズ鏡筒等の軽量・小型化に大いに貢献することができる。
【0075】
また、光学フィルタ15を絞り羽根12、13に沿ってスライドさせる方式は、直線移動式でも回動式でもよいが、この絞り装置1では、絞り基板10の端部に設けた軸を中心とした回動式にしている。こうすることにより、光学フィルタ15をホルダなどに取り付けずに直接回転スライドさせることができ、光学フィルタ15の駆動系を省スペース型の単純な構造とすることができる。また、回動式(回転スライド式)としたことにより、絞り羽根12、13間の小さな隙間において無理なく光学フィルタ15を駆動させることができるようになる。
【0076】
また、この絞り装置1では、比較的に容積の大きな部品である絞り駆動手段20とフィルタ駆動手段30とを、光路に対して同じ側に設けている。つまり、絞り基板10の厚み方向に大きめの寸法を持つ部品(絞り駆動手段20及びフィルタ駆動手段30)を、光路を挟んだ両側にそれぞれ配置するのではなく、絞り基板10の片側にまとめて配置しているので、それと反対側の部分を薄くすることができる。従って、絞り装置1をレンズ鏡筒に組み付ける場合に、どちらかの駆動手段が邪魔になるようなことなく、その薄く保った部分を先にレンズ鏡筒に横から差し込みながら、絞り装置1をレンズ鏡筒に無理なく組み付けることができ、レンズ鏡筒等への取り付けが簡単にできるようになる。
【0077】
図6は絞り装置1のレンズ鏡筒2に対する取付例を示している。
レンズ鏡筒2の周壁には側孔2aがあいており、この側孔2aに、光軸方向と直角な方向から絞り装置1を差し込むことができるようになっている。側孔2aの一端には取付座2bが設けられており、取付座2bの前面にネジ孔2cが設けられている。一方、絞り装置1の絞り基板10には、固定する際に使用するための取付ブラケット16が設けられており、取付ブラケット16にネジ通し用の切欠16aと、レンズ鏡筒2側の取付座2bに対する当て面16bが設けられている。
【0078】
この絞り装置1は、絞り駆動装置20とフィルタ駆動装置30の両方を、光路に対する片側にまとめて配置しているので、駆動装置20、30の有る側と反対側は、厚さの薄い板状のままに保たれている。従って、この絞り装置1をレンズ鏡筒2に組み付ける場合は、レンズ鏡筒2の側孔2aに絞り装置1の薄い側を差し込んで、取付ブラケット16の当て面16bをレンズ鏡筒2側の取付座2aの前面に当接させ、その状態で取付ブラケット16の切欠16aを通してネジ17を取付座2aのネジ孔2bに締め込むことで、絞り装置1をレンズ鏡筒2に取り付けることができる。従って、レンズ鏡筒2に対する組み付けが簡単にでき、作業性が良い。
【0079】
なお、上記実施形態においては、絞り基板10の上面に、絞り羽根12、13等の脱落防止を目的として羽根カバー14を取り付けているが、絞り羽根12、13は絞り基板10側のガイドピン11a〜11dによって脱落止めされているので、必ずしも羽根カバー14は取り付けなくてもよい。
【0080】
また、上記実施形態においては、2枚の絞り羽根12、13によって絞りを調節する場合について述べたが、1枚の絞り羽根で絞りを調節する場合にも本発明は適用することができる。その場合は、例えば、光学フィルタ15を1枚の絞り羽根と絞り基板の隙間に配置すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態の光学フィルタを装備した絞り装置の分解斜視図である。
【図2】同光学フィルタの断面構成の模式図である。
【図3】同光学フィルタの膜構成の例(a)、(b)を示す図である。
【図4】同光学フィルタの製作手順例を示す図である。
【図5】前記絞り装置のフィルタ駆動装置の構成を示す図で、(a)は光学フィルタが第1の位置(光路上の位置)と第2の位置(光路上から外れた位置)の中間位置にあるときの状態を示す図、(b)は光学フィルタが第2の位置(光路上から外れた位置)にあるときの状態を示す図、(c)は光学フィルタが第1の位置(光路上の位置)にあるときの状態を示す図である。
【図6】同絞り装置をレンズ鏡筒に横から組み付ける場合の説明に使用する斜視図である。
【図7】従来のCCTVカメラシステムにおける絞りと光学フィルタの関係を示す概略構成図で、(a)は光学フィルタを光路上に位置させた状態を示す図、(b)は光学フィルタを光路上から取り外した状態を示す図である。
【図8】別の従来のCCTVカメラシステムにおける絞りと光学フィルタの関係を示す概略構成図で、(a)は光学フィルタを光路上に位置させた状態を示す図、(b)は光学フィルタを光路上から取り外した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1 絞り装置
10 絞り基板
12,13 絞り羽根
12f,13f NDフィルタ
15 光学フィルタ
151 プラスチック薄板
152,153 多層膜
15h フィルタ本体部
15a レバー部
15b 透孔(軸孔)
15c 長孔(係合孔)
20 絞り駆動装置(絞り駆動手段)
30 フィルタ駆動装置(フィルタ駆動手段)
32 ロータ(永久磁石)
36 コイル(ステータ)
37 軟磁性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路を形成する開口部を有した絞り基板の板面に沿ってスライド自在に装備され、フィルタ駆動手段によりスライドさせられることで、前記光路上に挿入されたり光路上から取り除かれたりする絞り装置用の光学フィルタにおいて、
蒸着またはスパッタによる成膜が可能な耐熱温度を有するプラスチック薄板をフィルタ基材とし、その表裏両面に蒸着またはスパッタにより略同等厚さの多層膜を形成してなることを特徴とする絞り装置用の光学フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の絞り装置用の光学フィルタであって、
前記プラスチック薄板として、ノルボルネン系樹脂の薄板を使用したことを特徴とする絞り装置用の光学フィルタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の絞り装置用の光学フィルタであって、
厚さが0.25mm以下の赤外領域の光を遮断する赤外カットフィルタであることを特徴とする絞り装置用の光学フィルタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の絞り装置用の光学フィルタであって、
前記絞り基板の光路を覆う大きさの略円形のフィルタ本体部と、該フィルタ本体部より延出したクランク形状のレバー部とを有し、前記クランク形状のレバー部の屈曲部にフィルタを回動自在に支持するための軸孔が設けられると共に、レバー部の先端側に前記フィルタ駆動手段の駆動ピンの係合する係合孔が設けられており、全体形状が、前記プラスチック薄板に多層膜を形成したフィルタ素材をプレスカットすることにより加工されていることを特徴とする絞り装置用の光学フィルタ。
【請求項5】
光路を形成する開口部を有した絞り基板と、この絞り基板の一方の板面に配置され該板面に沿ってスライドすることで前記光路を絞り調節する絞り羽根と、前記光路を絞り調節するために前記絞り羽根を駆動する絞り駆動手段と、波長に応じた透過特性を有する光学フィルタと、この光学フィルタを前記光路上に挿入したり光路上から取り除いたりするフィルタ駆動手段とを備え、前記光学フィルタとして、請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルタを使用し、この光学フィルタを、前記絞り基板の一方の板面側に配置し、前記絞り羽根に沿ってスライド自在に設けたことを特徴とする絞り装置。
【請求項6】
請求項5記載の絞り装置であって、
前記絞り羽根が互いに積層した状態で2枚設けられており、それら2枚の絞り羽根の間に、前記光学フィルタを配置したことを特徴とする絞り装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の絞り装置であって、
前記光学フィルタが、前記絞り基板の端部に設けられた軸に回動自在に支持され、その軸を中心に回動させられることで、前記光路上に挿入されたり光路上から取り除かれたりするものであることを特徴とする絞り装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の絞り装置であって、
前記絞り駆動手段とフィルタ駆動手段とが共に、前記絞り基板上において前記光路に対して同じ側に配置されていることを特徴とする絞り装置。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の絞り装置であって、
前記フィルタ駆動手段は、前記光学フィルタが光路上の第1の位置と光路上から外れた第2の位置との中間位置よりも第1の位置側にあるとき光学フィルタを第1の位置に磁力によって保持し、光学フィルタが前記中間位置よりも第2の位置側にあるとき光学フィルタを第2の位置に磁力によって保持するフィルタ保持手段を備えていることを特徴とする絞り装置。
【請求項10】
請求項9記載の絞り装置であって、
前記フィルタ保持手段が、前記光学フィルタを駆動するモータのロータに設けられた永久磁石と、前記光学フィルタを前記第1の位置と第2の位置の中間位置に操作したとき前記永久磁石の互いに隣接するN極とS極から等距離の位置に配置され、且つ、前記N極またはS極との間に吸引力を発生しそれによりロータに回転付勢力を与える磁性片と、を有することを特徴とする絞り装置。
【請求項11】
請求項5〜10のいずれかに記載の絞り装置であって、
前記絞り羽根の絞り開口を形成する透孔部に、前記光学フィルタとは別のNDフィルタが設けられており、このNDフィルタが、赤外領域の透過率が可視領域の透過率とほぼ同等の分光透過率特性を有するものであることを特徴とする絞り装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−139223(P2006−139223A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331218(P2004−331218)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000231590)日本精密測器株式会社 (64)
【Fターム(参考)】