説明

給水システム

【課題】給水システムにおける科学的な管理技術を提供する。
【解決手段】水源1と出水具2との間に設けられた第1給水路6aと、水源1と出水具2との間に設けられ、かつ、出水具2の上流側で第1給水路6aに合流する第2給水路6bと、第1給水路6aに設けられた第1のポンプ装置5aと、第1給水路6aに設けられた第1逆止弁8aと、第2給水路6bに設けられた第2のポンプ装置5bと、第2給水路6bに設けられた第2逆止弁8bと、第1のポンプ装置5aおよび第2のポンプ装置5bの運転・停止を制御する制御手段とを具備し、1台のポンプが故障あるいは出力低下しても残りのポンプで代用させ、、交互にポンプを休ませることでポンプの休止時間を長くし、故障が起き難いものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給水システムに関する。特に、例えばマンションやビル或いは大規模開発住宅地においては、受水槽(貯水タンク)から蛇口に至る給水路は該受水槽から蛇口の前段までには複数の給水路が、そして各々の給水路にはポンプが各々に設けられているのが通常であるが、このような系における故障または故障に至る前の不調の状態を正確、かつ、容易に検知できる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンション・ビル、或いは大規模開発住宅地においては、一箇所に大型受水槽が設置され、この受水槽(水源)から各家庭・室に水道管(給水路)が引かれ、蛇口(出水具)の栓が開かれると、水が出るようになっている。このような給水システムにおいて、通常、給水路は、何らかの支障が起きたことを想定して、特に、ポンプの故障を想定して、又、ポンプを交互に休ませてポンプの耐久性を高める為に、複数個のポンプを設けている。すなわち、各家庭・室に設けられた蛇口(出水具)と受水槽との間に、例えば2台のポンプを設置し、1台のポンプが故障あるいは出力低下しても残りのポンプで代用させ、又、交互にポンプを休ませることでポンプの休止時間を長くし、故障が起き難いものとしている。
【0003】
ところで、上記の如きのシステムにおいて、給水システムに問題が起きているか否かのチェックは、定期的に点検員が来て外観を目視し、又、異音を聴き取り、或いは電流値を観測して判断しているのが普通である。
【0004】
又、長い期間に亘って利用される建築の給水設備については、可用性を確保しつつ、修繕や交換費用を低減することが求められる。しかしながら、現状では、メーカが推奨する早め早めの交換や、上記観測から経験的に判断していることから、必ずしも、費用的には適切であるとは考えられ難い状態にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、外観を目視し、又、異音を聴き取り、或いは電流値を観測して、ポンプなどの装置を含む給水システムに問題が起きているか否かの判断は極めて困難である。況してや、今日のような社会状況下にあっては、長年の経験に基づいた方法で故障の発生を見分けることが出来る熟練技術者は、最早、存在しないと言っても過言では無い。
【0006】
例えば、異常と判断されてポンプの交換を行なったものの、古いポンプが全く支障ないことも再々認められた。逆に、異常が認められないと判断されたものの、それから、間もない中にポンプ故障が発生する場合も起きていた。又、二台のポンプを並べて設置し、互いの故障をカバーし、不足能力を補いつつ均等に使用することで、寿命を延ばすことを企図していながらも、二台のポンプの運転時間に差が有るのに気が付かず、一台のポンプのみを酷使してしまい、結局、交換を早くしなければならない場合も縷々起きていた。
【0007】
すなわち、これまで、科学的根拠に基づく設備管理が行なわれておらず、管理コストのみが嵩んでいたのが現実であった。
【0008】
従って、本発明が解決しようとする課題は、科学的根拠に基づく管理が低廉なコストで実施できる給水システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決する為の検討が、本発明者によって、鋭意、推し進められて行った。その結果、給水システムにおける故障内容や原因が幾つかのタイプに分類できることが究明されるに至った。例えば、給水ポンプに問題が有る場合、逆止弁に問題が有る場合、圧力スイッチに問題が有る場合、それが如何なる現象として現れるかが究明されたのである。従って、如何なる現象をチェックしてれば如何なる問題が起きているのか、逆に言えば、如何なる現象が起きてなければ、今すぐ、その部品交換の必要は無いのかが判るようになったのである。すなわち、如何なる現象をチェックしてれば科学的な管理が可能になるかが判って来たのである。
【0010】
上記知見を基にして本発明が達成されたものである。
【0011】
すなわち、前記の課題は、
水源と出水具との間に設けられた給水システムであって、
前記水源と前記出水具との間に設けられた第1給水路と、前記水源と前記出水具との間に設けられ、かつ、該出水具の上流側で前記第1給水路に合流する第2給水路と、前記第1給水路に設けられた第1のポンプ装置と、前記第1給水路に設けられた第1逆止弁と、前記第2給水路に設けられた第2のポンプ装置と、前記第2給水路に設けられた第2逆止弁と、前記第1のポンプ装置および第2のポンプ装置の運転・停止を制御する制御手段とを具備し、更に、
前記第1のポンプ装置の合計運転時間情報を取得する第1ポンプ合計運転時間情報取得手段と、
前記第2のポンプ装置の合計運転時間情報を取得する第2ポンプ合計運転時間情報取得手段と、
前記第1のポンプ装置のポンプ運転回数情報を取得する第1ポンプ運転回数情報取得手段と、
前記第2のポンプ装置のポンプ運転回数情報を取得する第2ポンプ運転回数情報取得手段と、
前記第1のポンプ装置の連続運転時間情報を取得する第1ポンプ連続運転時間情報取得手段と、
前記第2のポンプ装置の連続運転時間情報を取得する第2ポンプ連続運転時間情報取得手段と、
前記第1のポンプ装置の運転停止時間情報を取得する第1ポンプ運転停止時間情報取得手段と、
前記第2のポンプ装置の運転停止時間情報を取得する第2ポンプ運転停止時間情報取得手段と、
前記第1のポンプ装置および/または第2のポンプ装置の運転時における前記給水路での水圧情報を取得する水圧情報取得手段
とを具備することを特徴とする給水システムによって解決される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えばマンションの給水システムにおける管理が科学的に行なわれる。その結果、不必要な部品交換が無くなり、管理コストが低廉なものになる。かつ、異音の有無で判断と言った非常に難しい能力を持たない者でも正確・容易に管理でき、即ち、熟練技術者を必要としないので、管理・運営コストが低廉になる。更には、通信手段を介してデータを集めることが出来、即ち、マンションに、一々、出向くこと無く、必要な場合のみ出向くことで管理が出来、この点からも管理・運営コストが低廉になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明になる給水システムは、水源(例えば、受水槽)と出水具(蛇口)との間に設けられた給水システムである。そして、水源と出水具との間には第1給水路が設けられている。この第1給水路には第1のポンプ装置や第1逆止弁が設けられている。又、前記水源と出水具との間で、かつ、該出水具の上流側において前記第1給水路に合流する第2給水路が設けられている。この第2給水路には第2のポンプ装置や第2逆止弁が設けられている。又、前記第1のポンプ装置や第2のポンプ装置などによる出力圧(水圧)を検出する出力圧検出手段(例えば、圧力計)が設けられている。又、圧力スイッチが設けられている。又、前記第1のポンプ装置および第2のポンプ装置の運転・停止を制御する制御手段も設けられている。更に、前記第1のポンプ装置の合計運転時間情報を取得する第1ポンプ合計運転時間情報取得手段と、前記第2のポンプ装置の合計運転時間情報を取得する第2ポンプ合計運転時間情報取得手段とを有する。又、前記第1のポンプ装置のポンプ運転回数情報を取得する第1ポンプ運転回数情報取得手段と、前記第2のポンプ装置のポンプ運転回数情報を取得する第2ポンプ運転回数情報取得手段とを有する。又、前記第1のポンプ装置の連続運転時間情報を取得する第1ポンプ連続運転時間情報取得手段と、前記第2のポンプ装置の連続運転時間情報を取得する第2ポンプ連続運転時間情報取得手段とを有する。又、前記第1のポンプ装置の運転停止時間情報を取得する第1ポンプ運転停止時間情報取得手段と、前記第2のポンプ装置の運転停止時間情報を取得する第2ポンプ運転停止時間情報取得手段とを有する。又、前記第1のポンプ装置および/または第2のポンプ装置の運転時における前記給水路(第1給水路および/または第2給水路)での水圧情報を取得する水圧情報取得手段を有する。そして、第1のポンプ装置および第2のポンプ装置の上流側に設けられた受水槽を有する場合には、好ましくは、前記受水槽に設けられた定水位弁装置と、前記受水槽内に給水を開始してから次の給水開始までの給水間隔の時間情報を取得する給水間隔時間情報取得手段と、前記受水槽内に連続して給水を行なう給水回数情報を取得する給水回数情報取得手段とを更に具備する。又、上記情報取得手段で得られた情報を出力する出力手段(紙にプリントするプリンタ、或いは液晶表示画面などに表示する表示手段)を有する。
【0014】
以下、更に詳しく説明する。
【0015】
図1は本発明の給水システムの概略図である。
【0016】
図1中、1は受水槽(貯水タンク)である。この受水槽1は、量水器を介して水道管(公営本管)に繋がっており、一定量の水が貯えられるようになっている。 尚、受水槽1には定水位弁装置14が設けられている。これによって、基本的には、受水槽1の水位が一定の範囲内に在るように制御される。尚、15は水位検出手段である。この水位検出手段15は、例えば複数の電極棒を有する電極セットからなる。そして、長さが異なる電極棒の間に流れる電流を検出することで水位が検出される。従って、水位検出手段15によって、基準値以下の水位の場合には、定水位弁装置14を介して水が供給され、基準値を越える水位の場合には、定水位弁装置14からの給水が停止されるように構成されている。2は、例えばマンション内に設けられている水道管であり、この水道管の先端側には各家庭(部屋)の出水具が取り付けられている。そして、出水具の栓が開けられると、蛇口から水が吐き出される。
【0017】
4は、各家庭(部屋)の出水具に繋がる水道管2と受水槽1との間に設けられたポンプ室である。このポンプ室4は複数のポンプ装置を有する。すなわち、第1のポンプ装置5aと第2のポンプ装置5bとを備えている。第1のポンプ装置5aは、受水槽1と水道管2とに繋がる第1給水路6aの途中に設けられている。第2のポンプ装置5bは、受水槽1(或いは、第1のポンプ装置5aより上流側における第1給水路6a)と水道管2(或いは、水道管2より上流側における第1給水路6a)とに繋がる第2給水路6bの途中に設けられている。又、第1給水路6aには、第1のポンプ装置5aより下流側において定圧弁7a、逆止弁8a、仕切弁9aが順に設けられている。同様に、第2給水路6bには、第2のポンプ装置5bより下流側において定圧弁7b、逆止弁8b、仕切弁9bが順に設けられている。更に、第1のポンプ装置5aより上流側の第1給水路6aには仕切弁10aが設けられており、又、第2のポンプ装置5bより上流側の第2給水路6bには仕切弁10bが設けられている。又、仕切弁9aより下流側の第1給水路6aに圧力計11が設けられている。そして、圧力計11によって、第1給水路6a(第2給水路6b)における圧力(水圧)が検出される。又、圧力計11より下流側の第1給水路6aに圧力スイッチ12が設けられている。この圧力スイッチ12は、第1給水路6a(第2給水路6b)における圧力(水圧)を幾らにするかを設定する為のものである。従って、圧力スイッチ12がZの値に設定されていると、圧力スイッチ12によって規定される圧力がZより小さくなると、第1のポンプ装置5a(第2のポンプ装置5b)の運転を稼動せしめるようになっている。尚、第1のポンプ装置5a(第2のポンプ装置5b)の動作停止は、第1給水路6a(第2給水路6b)における水の流動停止を検出することによって行なわれるようになっている。又、圧力スイッチ12より下流側の第1給水路6aにバッファ用の圧力タンク13が設けられている。そして、第1のポンプ装置5aと第2のポンプ装置5bとは、交互に、運転が行なわれるように制御されている。すなわち、後述の制御手段によって、第1のポンプ装置5aが運転している時は第2のポンプ装置5bは停止しており、逆に、第2のポンプ装置5bが運転している時は第1のポンプ装置5aは停止している。かつ、第1のポンプ装置5aの運転と第2のポンプ装置5bの運転とは交互に行なわれるよう制御されている。つまり、第1のポンプ装置5aが運転した次には第2のポンプ装置5bが運転し、第2のポンプ装置5bが運転した次には第1のポンプ装置5aが運転するように制御されている。
【0018】
尚、上記の如きの給水システムは、これまでのマンションにおける給水システムでも採用されているから、詳細な説明は省略される。
【0019】
さて、図示されていないが、第1のポンプ装置5aや第2のポンプ装置5bの駆動エネルギは電気(電力)であり、第1のポンプ装置5aや第2のポンプ装置5bが稼動中(運転中)であるか停止中であるかは電流(電圧)を検出することで判定できる。例えば、第1のポンプ装置5aや第2のポンプ装置5bの運転・停止を制御する制御手段(図2に示される操作盤内部や操作盤表面の構造を備えた制御装置)Xがポンプ室には設けられている。
【0020】
そして、前記制御手段Xを作動させる電流あるいは電圧、又は制御手段Xが作動した結果出力する電流あるいは電圧を検出することによって、第1のポンプ装置5a(第2のポンプ装置5b)の運転・停止などの情報を取得できるようになっている。この情報取得手段は、例えばマイクロコンピュータで構成される。そして、図3に示される如きの手段を有する。
【0021】
例えば、第1のポンプ装置5aの合計運転時間(単位時間(例えば、1日)における運転時間の合計値)情報を取得する第1ポンプ合計運転時間情報取得手段21aと、第2のポンプ装置5bの合計運転時間(単位時間(例えば、1日)における運転時間の合計値)情報を取得する第2ポンプ合計運転時間情報取得手段21bとを持っている。尚、運転時間は、ポンプ装置5a(又は5b)を駆動(運転)している電圧印加時間(或いは通電時間)に相当する。従って、第1ポンプ合計運転時間情報取得手段21aや第2ポンプ合計運転時間情報取得手段21bのタイマ(図示せず)によって時間(電圧印加時間(或いは通電時間))が計測され、この計測された時間が第1ポンプ合計運転時間情報取得手段21aや第2ポンプ合計運転時間情報取得手段21bによって合算され、これによって合計運転時間は得られる。
【0022】
又、第1のポンプ装置5aのポンプ運転回数(単位時間(例えば、1日)における運転回数)情報を取得する第1ポンプ運転回数情報取得手段22aと、第2のポンプ装置5bのポンプ運転回数(単位時間(例えば、1日)における運転回数)情報を取得する第2ポンプ運転回数情報取得手段22bとを持っている。尚、ポンプ運転回数は、ポンプ装置5a(又は5b)を駆動(運転)している電圧印加(或いは通電)の回数に相当する。従って、第1ポンプ運転回数情報取得手段22aや第2ポンプ運転回数情報取得手段22bのカウンタ(図示せず)がポンプ駆動(運転)の電圧印加(或いは通電)の回数をカウントすることによってポンプ運転回数が得られる。
【0023】
又、第1のポンプ装置5aの連続運転時間(単位回数(1回)当たりの連続運転時間(運転開始から運転停止に至るまでの時間))情報を取得する第1ポンプ連続運転時間情報取得手段23aと、第2のポンプ装置5bの連続運転時間(単位回数(1回)当たりの連続運転時間(運転開始から運転停止に至るまでの時間))情報を取得する第2ポンプ連続運転時間情報取得手段23bとを有する。尚、連続運転時間は、ポンプ装置5a(又は5b)を連続して駆動(運転)している電圧印加時間(或いは通電時間)である。従って、第1ポンプ連続運転時間情報取得手段23aや第2ポンプ連続運転時間情報取得手段23bのタイマ(図示せず)によって時間(電圧印加時間(或いは通電時間))が計測され、これによって連続運転時間は得られる。
【0024】
又、第1のポンプ装置5aの運転停止時間(単位回数(1回)当たりの運転停止時間(運転停止から運転開始に至るまでの時間))情報を取得する第1ポンプ運転停止時間情報取得手段24aと、第2のポンプ装置5bの運転停止時間(単位回数(1回)当たりの運転停止時間(運転停止から運転開始に至るまでの時間))情報を取得する第2ポンプ運転停止時間情報取得手段24bとを有する。尚、運転停止時間は、ポンプ装置5a(又は5b)が停止している時間、即ち、印加電圧(電流値)が0の時の時間である。従って、第1ポンプ運転停止時間情報取得手段24aや第2ポンプ運転停止時間情報取得手段24bのタイマ(図示せず)によって前記時間が計測され、これによって運転停止時間は得られる。
【0025】
又、第1のポンプ装置5aまたは第2のポンプ装置5bの運転時(運転開始時)における圧力計11によって得られた水圧情報を取得する水圧情報取得手段25を有する。
【0026】
又、受水槽1内に給水を開始してから次の給水開始までの給水間隔の時間(単位回数(1回)当たりの給水間隔の時間)情報を取得する給水間隔時間情報取得手段26を有する。従って、給水間隔時間情報取得手段26が有するタイマ(図示せず)によって給水間隔時間が得られる。
【0027】
又、受水槽1内に連続して給水を行なう給水回数(単位時間(例えば、1日)において連続して給水した回数)情報を取得する給水回数情報取得手段27を有する。従って、給水回数情報取得手段27が有するカウンタ(図示せず)によって給水回数がカウントされ、例えば1日における給水回数が得られる。
【0028】
さて、上記のように構成させた給水システムによって、次のような現象が検出される。
【0029】
例えば、第1のポンプ装置5aの吐出性能が劣化して来たとすると、これは図4に示される現象を示すようになる。すなわち、第1のポンプ装置5aの吐出性能が劣化して来たことから、第1のポンプ装置5aが一定の仕事を行なおうとすると、長時間に亘って仕事を行なわないと仕事が完了しない。従って、図4(a)に示される通り、第1ポンプ合計運転時間情報取得手段21aによる第1のポンプ装置5aの1日当たりの合計運転時間は、吐出性能の劣化に伴って、長くなって行く。これに対して、第1のポンプ装置5aと第2のポンプ装置5bとは、第1のポンプ装置5aが運転している間は第2のポンプ装置5bは運転しない関係にあることから、第2ポンプ合計運転時間情報取得手段21bによる第2のポンプ装置5bの1日当たりの合計運転時間は、第1のポンプ装置5aの吐出性能の劣化に伴って、短くなって行く。そして、第1のポンプ装置5aの吐出性能が劣化して来たことは、第1のポンプ装置5aが一定の仕事を行なおうとすると長時間に亘って仕事を行なわないと完了しないことであるから、必然的に、1日当たりの運転回数は少なくなることを意味する。従って、図4(b)に示される通り、第1ポンプ運転回数情報取得手段22aによる1日当たりのポンプ運転回数は、第1のポンプ装置5aの吐出性能の劣化に伴って、少なくなる。同時に、第2のポンプ装置5bが仕事する割合は少ないことであるから、第2ポンプ運転回数情報取得手段22bによる1日当たりのポンプ運転回数も少なくなる。又、上述した通り、第1のポンプ装置5aの吐出性能が劣化して来たことは、第1のポンプ装置5aが一定の仕事を行なおうとすると長時間に亘って仕事を行なわないと完了しないことであるから、1回当たりの運転時間は長くなる。従って、図4(c)に示される通り、第1ポンプ連続運転時間情報取得手段23aによる1回当たりの連続運転時間は、第1のポンプ装置5aの吐出性能劣化に伴って、長くなる。これに対して、第2のポンプ装置5bの吐出性能は第1のポンプ装置5aの吐出性能とは関係が無いから、第2ポンプ連続運転時間情報取得手段23bによる1回当たりの連続運転時間に変動は起きない。又、蛇口から使用される水量は第1のポンプ装置5aの吐出性能とは関係が無いから、図4(d)に示される通り、第1ポンプ運転停止時間情報取得手段24aや第2ポンプ運転停止時間情報取得手段24bによる1回当たりの運転停止時間に変動は認められない。蛇口から使用される水量は第1のポンプ装置5aの吐出性能とは関係が無いから、図4(e)に示される通り、水圧情報取得手段25で得られる運転開始時の圧力(水圧)に変動は認められない。
【0030】
と言うことは、図4に示される特徴の情報が得られた場合には、第1のポンプ装置5aの吐出性能が劣化して来たことを疑うことが出来る。尚、第2のポンプ装置5bの吐出性能が劣化して来た場合には、図4において、No.1とNo.2との表示が逆になるだけであるから、同様にして、第2のポンプ装置5bの吐出性能のチェックが可能である。
【0031】
又、第1給水路6aに設けられた逆止弁8aが劣化して来たとすると、これは図5に示される現象を示すようになる。すなわち、逆止弁8aが不良になった場合、第1のポンプ装置5aが運転中の場合には問題ないものの、第1のポンプ装置5aが停止中には、揚水した水の一部が逆流することであり、かつ、第2のポンプ装置5bが運転中の場合には、揚水した水の一部が還流することを意味する。このことから、一部では、第2のポンプ装置5bの性能劣化に近い現象を示すものの、図4とは異なることが判る。つまり、第2のポンプ装置5bが一定の仕事を行なおうとすると、揚水した水の一部が還流することから、長時間に亘って仕事を行なわないと、仕事は完了しない。従って、図5(a)に示される通り、第2ポンプ合計運転時間情報取得手段21bによる第2のポンプ装置5bの1日当たりの合計運転時間は長くなって行く。これに対して、第1のポンプ装置5aと第2のポンプ装置5bとは、第2のポンプ装置5bが運転している間は第1のポンプ装置5aは運転しない関係にあることから、第1ポンプ合計運転時間情報取得手段21aによる第1のポンプ装置5aの1日当たりの合計運転時間は短くなって行く。そして、揚水した水の一部が還流することは、蛇口から水が使われなくても、次第に失われていくことに相当するから、必然的に、1日当たりの運転回数は多くなることを意味する。従って、図5(b)に示される通り、第1ポンプ運転回数情報取得手段22a及び第2ポンプ運転回数情報取得手段22bによる1日当たりのポンプ運転回数は多くなる。又、上述した通り、第2のポンプ装置5bが揚水した水の一部が還流することは、第2のポンプ装置5bが一定の仕事を行なおうとすると、長時間に亘って仕事を行なわないと仕事が完了しないことから、1回当たりの運転時間は長くなる。従って、図5(c)に示される通り、第2ポンプ連続運転時間情報取得手段23bによる1回当たりの連続運転時間は長くなる。これに対して、逆止弁8aが不良になった場合でも、第1のポンプ装置5aが運転中の場合には問題ないから、第1ポンプ連続運転時間情報取得手段23aによる1回当たりの連続運転時間に変動は起きない。又、逆止弁8aが不良になった場合、揚水した水の一部が逆流することであるから、蛇口から水が使われなくても、次第に失われていくことに相当するので、必然的に、ポンプの停止時間は短くなる。すなわち、図5(d)に示される通り、第1ポンプ運転停止時間情報取得手段24aや第2ポンプ運転停止時間情報取得手段24bによる1回当たりの運転停止時間は、逆止弁8aの劣化に伴って、短くなって来る。又、ポンプ運転開始時の水圧は逆止弁8aの劣化には関与しないから、図5(e)に示される通り、水圧情報取得手段25で得られる運転開始時の圧力(水圧)に変動は認められない。
【0032】
と言うことは、図5に示される特徴の情報が得られた場合には、第1給水路6aに設けられた逆止弁8aが劣化して来たことを疑うことが出来る。尚、第2給水路6bに設けられた逆止弁8bが劣化して来た場合には、図5において、No.1とNo.2との表示が逆になるだけであるから、同様にして、逆止弁8bのチェックが可能である。
【0033】
次に、圧力スイッチ12が圧力検知不良あるいは接点破損と言った不良現象を示すようになった場合を考える。このことは、一つは過敏に反応(設定値より高目に起動)することを意味する。従って、図6に示される現象を示すものとなる。すなわち、第1のポンプ装置5aや第2のポンプ装置5bには問題が無いことから、図6(a)に示される通り、第1ポンプ合計運転時間情報取得手段21aや第2ポンプ合計運転時間情報取得手段21bによる1日当たりの合計運転時間には変動は認められない。しかしながら、過敏に反応すると言うことは、停止しているポンプの運転開始が早いことである。従って、図6(b)に示される通り、第1ポンプ運転回数情報取得手段22a及び第2ポンプ運転回数情報取得手段22bによる1日当たりのポンプ運転回数は多くなる。又、水圧が低下していないのにポンプが運転開始すると言うことは、それだけ速く設定圧力に到達することを意味する。従って、図6(c)に示される通り、第1ポンプ連続運転時間情報取得手段23a及び第2ポンプ連続運転時間情報取得手段23bによる1回当たりの連続運転時間は短くなる。又、上述した通り、停止しているポンプが早目に運転開始すると言うことは、必然的に、ポンプの停止期間は短くなる。従って、図6(d)に示される通り、第1ポンプ運転停止時間情報取得手段24aや第2ポンプ運転停止時間情報取得手段24bによる1回当たりの運転停止時間は短くなって来る。又、停止しているポンプの運転開始が早いことは水圧が低下していないのにポンプが運転開始すると言うことであるから、図6(e)に示される通り、水圧情報取得手段25で得られる運転開始時の圧力(水圧)は高くなる。
【0034】
と言うことは、図6に示される特徴の情報が得られた場合には、圧力スイッチ12が不良により設定値より高目で起動と言った不良現象を疑うことが出来る。
【0035】
これに対して、圧力スイッチ12の性能劣化であっても、圧力スイッチの動作が鈍感になる場合も有る。これは、設定値よりも低目に起動する場合である。従って、図7に示される現象を示すものとなる。すなわち、第1のポンプ装置5aや第2のポンプ装置5bには問題が無いことから、図7(a)に示される通り、第1ポンプ合計運転時間情報取得手段21aや第2ポンプ合計運転時間情報取得手段21bによる1日当たりの合計運転時間には変動は認められない。しかしながら、反応が鈍感と言うことは、停止しているポンプの運転開始が遅いことである。従って、図7(b)に示される通り、第1ポンプ運転回数情報取得手段22a及び第2ポンプ運転回数情報取得手段22bによる1日当たりのポンプ運転回数は少なくなる。又、水圧が十二分に低下してからポンプが運転開始すると言うことは、それだけ遅く設定圧力に到達することを意味する。従って、図7(c)に示される通り、第1ポンプ連続運転時間情報取得手段23a及び第2ポンプ連続運転時間情報取得手段23bによる1回当たりの連続運転時間は長くなる。又、上述した通り、水圧が十二分に低下してからポンプが運転開始すると言うことは、必然的に、ポンプの停止期間が長くなる。従って、図7(d)に示される通り、第1ポンプ運転停止時間情報取得手段24aや第2ポンプ運転停止時間情報取得手段24bによる1回当たりの運転停止時間は長くなって来る。又、停止しているポンプの運転開始が遅いと言うことは水圧の低下が大きいと言うことであるから、図7(e)に示される通り、水圧情報取得手段25で得られる運転開始時の圧力(水圧)は低くなる。
【0036】
と言うことは、図7に示される特徴の情報が得られた場合には、圧力スイッチ12が不良により設定値より低目で起動と言った不良現象を疑うことが出来る。
【0037】
又、定水位弁装置14の定水位弁が止水不良の場合を考える。止水不良と言うことは、給水回数情報取得手段27による1日当たりの給水回数は、図8(a)に示される通り、少なくなる。これに対して、給水回数が少なくなると言うことは、受水槽1内に給水を開始してから次の給水開始までの給水間隔の時間が、図8(b)に示される通り、長くなることを意味する。
【0038】
と言うことは、図8に示される特徴の情報が得られた場合には、定水位弁装置14における定水位弁の止水不良と言った不良現象を疑うことが出来る。
【0039】
又、定水位弁装置14の定水位弁が給水不良の場合を考える。給水不良と言うことは、給水回数情報取得手段27による1日当たりの給水回数は、図9(a)に示される通り、多くなる。これに対して、給水回数が多くなると言うことは、受水槽1内に給水を開始してから次の給水開始までの給水間隔の時間が、図9(b)に示される通り、短くなることを意味する。
【0040】
と言うことは、図9に示される特徴の情報が得られた場合には、定水位弁装置14における定水位弁の給水不良と言った不良現象を疑うことが出来る。
【0041】
従って、上記現象をチェックすることによって、給水システムにおける如何なる個所(部品)が不良化しているかを知ることが可能になる。しかも、上記した情報は電話回線などを介して遠隔地にいても取得でき、それだけ管理コストも低廉になることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の給水システムの概略図
【図2】制御装置の概略図
【図3】制御装置のブロック図
【図4】第1のポンプ装置の吐出性能が劣化して来た場合の出力手段で出力された特性図
【図5】第1給水路における逆止弁が性能劣化して来た場合の出力手段で出力された特性図
【図6】圧力スイッチが性能劣化して来た場合の出力手段で出力された特性図
【図7】圧力スイッチが性能劣化して来た場合の出力手段で出力された特性図
【図8】定水位弁の止水不良の場合の出力手段で出力された特性図
【図9】定水位弁の給水不良の場合の出力手段で出力された特性図
【符号の説明】
【0043】
1 受水槽
5a,5b ポンプ装置
6a,6b 給水路
8a,8b 逆止弁
11 圧力計
12 圧力スイッチ
13 圧力タンク
14 定水位弁装置
15 水位検出手段
21a,21b 合計運転時間情報取得手段
22a,22b ポンプ運転回数情報取得手段
23a,23b 連続運転時間情報取得手段
24a,24b 運転停止時間情報取得手段
25 水圧圧情報取得手段
26 給水間隔時間情報取得手段
27 給水回数情報取得手段

代 理 人 宇 高 克 己

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水源と出水具との間に設けられた給水システムであって、
前記水源と前記出水具との間に設けられた第1給水路と、前記水源と前記出水具との間に設けられ、かつ、該出水具の上流側で前記第1給水路に合流する第2給水路と、前記第1給水路に設けられた第1のポンプ装置と、前記第1給水路に設けられた第1逆止弁と、前記第2給水路に設けられた第2のポンプ装置と、前記第2給水路に設けられた第2逆止弁と、前記第1のポンプ装置および第2のポンプ装置の運転・停止を制御する制御手段とを具備し、更に、
前記第1のポンプ装置の合計運転時間情報を取得する第1ポンプ合計運転時間情報取得手段と、
前記第2のポンプ装置の合計運転時間情報を取得する第2ポンプ合計運転時間情報取得手段と、
前記第1のポンプ装置のポンプ運転回数情報を取得する第1ポンプ運転回数情報取得手段と、
前記第2のポンプ装置のポンプ運転回数情報を取得する第2ポンプ運転回数情報取得手段と、
前記第1のポンプ装置の連続運転時間情報を取得する第1ポンプ連続運転時間情報取得手段と、
前記第2のポンプ装置の連続運転時間情報を取得する第2ポンプ連続運転時間情報取得手段と、
前記第1のポンプ装置の運転停止時間情報を取得する第1ポンプ運転停止時間情報取得手段と、
前記第2のポンプ装置の運転停止時間情報を取得する第2ポンプ運転停止時間情報取得手段と、
前記第1のポンプ装置および/または第2のポンプ装置の運転時における前記給水路での水圧情報を取得する水圧情報取得手段
とを具備することを特徴とする給水システム。
【請求項2】
第1のポンプ装置および第2のポンプ装置の上流側に設けられた受水槽と、
前記受水槽に設けられた定水位弁装置と、
前記受水槽内に給水を開始してから次の給水開始までの給水間隔の時間情報を取得する給水間隔時間情報取得手段と、
前記受水槽内に連続して給水を行なう給水の回数情報を取得する給水回数情報取得手段
とを更に具備することを特徴とする請求項1の給水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−13630(P2009−13630A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175309(P2007−175309)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(507225274)
【Fターム(参考)】