給電プラグロック装置
【課題】仮に操作アームが半嵌合をとっていても、ロック状態に移行することができる給電プラグロック装置を提供する。
【解決手段】給電プラグロック装置のロックバー37に、複数の段を有する段状部49を形成する。段状部49の各段は、ロックバー37の移動方向に沿って高さが異なるように形成される。ロックアーム17がインレット14に半嵌合したとき、段状部49のいずれかの段でロッキングレバー43を固定する。よって、ロックアーム17が仮に半嵌合していても、給電プラグロック装置をロック状態に移行させることが可能となる。
【解決手段】給電プラグロック装置のロックバー37に、複数の段を有する段状部49を形成する。段状部49の各段は、ロックバー37の移動方向に沿って高さが異なるように形成される。ロックアーム17がインレット14に半嵌合したとき、段状部49のいずれかの段でロッキングレバー43を固定する。よって、ロックアーム17が仮に半嵌合していても、給電プラグロック装置をロック状態に移行させることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両等の物品に接続された給電プラグを物品にロックして、給電プラグの不正取り外しを防止する給電プラグロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への意識の高まりから、二酸化炭素の排出量の少ない車両として、例えばハイブリッド車や電気自動車等の普及が進んでいる。これら車両は、バッテリの電力でモータを回転させ、モータの駆動力により走行するものである。よって、長距離走行してバッテリ残量が減ると、その度にバッテリを充電しなくてはならない(特許文献1等参照)。
【0003】
ところで、バッテリ充電は、バッテリの構成要素である電池セルで化合物やイオンの電解反応を伴うため、充電時間が相対的に長くかかる現状がある。よって、バッテリ充電中、仮に車両から立ち去ってしまうと、その隙に第三者によって給電プラグを付け替えられるなどして、電力を盗電される可能性も否めない。よって、バッテリ充電可能な車両では、給電プラグを車両に接続した際、給電プラグが不正に車両から引き抜かれないようにロック装置を搭載することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−161898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の給電プラグロック装置としては、接続時の抜け止めとして給電プラグに設けられた揺動操作式の爪状の部材(通称、ロックアーム)を、インレット側のロックバーで操作規制する形式が考案されている。ロックアームは自身の軸回りに揺動可能であって、給電プラグがインレットに接続されたとき、インレットの突部に係止する動きをとり、この状態をとると、給電プラグをインレットに係止する。また、ロックアームは根元の操作部を押すと開き側に揺動し、突部との係止が解除可能となっている。
【0006】
例えば、ロックアームがインレットの突部に係止したとき、インレット側のロックバーがロックアームの上方に位置して、ロックアームの開き側の動きが制限されると、給電プラグロック装置がロック状態をとり、給電プラグがインレットにロックされる。一方、ロックバーがロックアームから離間して給電プラグロック装置がアンロック状態となると、ロックアームの開き操作が許容され、インレットから給電プラグを引き抜くことが可能となる。
【0007】
ところで、この形式の給電プラグロック装置を使用した場合、状況によっては、ロックアームがインレットの突部にきっちり固定しない状態、いわゆる半嵌合が生じる可能性がある。ロックアームが突部に半嵌合の状態をとってしまうと、ロックバーをロックアームの上方に位置させようとしてロックバーをロック方向に動かしても、通常よりも上に位置するロックアームにてロックバーの動きが途中で止められてしまい、正常なロック位置に移行できない状況になる。こうなると、給電プラグロック装置をロック状態にすることができない可能性がある。
【0008】
半嵌合の要因としては、例えば給電プラグとインレットが別メーカ同士であるときや、給電プラグを地面に落下させてロックアームが変形してしまったときや、ロックアームの軸部が劣化してロックアームが閉じ側に戻りきらないときがある。また、ロックアームに異物が噛み込んでいるときや、給電プラグ(充電ケーブル)の自重でロックアームが浮き上がってしまうときなども、半嵌合が発生することがある。
【0009】
本発明の目的は、仮に操作アームが半嵌合をとっていても、ロック状態に移行することができる給電プラグロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記問題点を解決するために、本発明では、インレットに給電プラグが接続されたとき、前記給電プラグに設けられた操作アームが前記インレットに抜け止めの係止をとり、この状態下で、前記インレット側のロック部材が前記操作アームの操作を規制する状態をとることにより、前記給電プラグの不正取り外しを防止する給電プラグロック装置において、互いに動きを制限し合って前記給電プラグをロック状態とする第1部材及び第2部材のうち、ロック時に接触し合う面の少なくとも一方を段付き形状としたことを要旨とする。
【0011】
本発明の構成によれば、第1部材と第2部材がロック状態をとるときに接触する面のうち、第1部材及び第2部材の少なくとも一方を段付き形状とした。このため、操作アームが仮にインレットに半嵌合して通常よりも浮く状態をとったとしても、このとき第1部材及び第2部材は、段の付いている部分で互いに固定し合い、結果、ロック部材がアーム部材をロックする状態をとる。よって、操作アームが半嵌合していても、給電プラグロック装置をロック状態に移行させることが可能となる。
【0012】
本発明では、前記段付き形状は、高さの異なる複数の段により形成されていることを要旨とする。この構成によれば、操作アームが半嵌合をとるとき、仮に操作アームの浮く高さが異なる状況となっても、各状況に対応することが可能となる。
【0013】
本発明では、ロック動作又はアンロック動作のときに前記第1部材の座として動く連結部材に、当該第1部材を抜け止め状態で連結し、前記第1部材及び前記連結部材の間に、当該第1部材をロック方向に付勢する付勢部材を介装し、ロック動作時、半嵌合により前記第1部材が位置規制されて動けなくなっても、前記連結部材に対する前記第1部材のアンロック方向への動きを前記付勢部材により吸収して、前記連結部材のロック方向への動きを許容する吸収機構を備えたことを要旨とする。この構成によれば、例えば操作アームが半嵌合のとき、第1部材を逆側に逃がすことが可能となる。また、周囲の部品には、全嵌合時と同じ動作をとらせることが可能となるので、周囲部品に特別な動きをとらせる必要もない。
【0014】
本発明では、前記ロック部材のロック位置又はアンロック位置への移動を駆動手段によって電気的に行う電動式であることを要旨とする。この構成によれば、給電プラグロック装置を電動式としたので、例えば手動操作の場合に比べて、利便性をよくすることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、仮に操作アームが半嵌合をとっていても、ロック状態に移行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態における車両及び充電システムの構成図。
【図2】給電プラグをインレットに接続するときの外観を示す斜視図。
【図3】給電プラグをインレットに接続するときの外観を示す側面図。
【図4】給電プラグロック装置の分解斜視図。
【図5】給電プラグロック装置を斜め下から見た斜視図。
【図6】給電プラグロック装置の断面図。
【図7】アンロック状態のロック機構を背面から見た斜視図。
【図8】アンロック状態のロック機構の背面図。
【図9】ロック状態のロック機構を背面から見た斜視図。
【図10】ロック状態のロック機構の背面図。
【図11】半嵌合時のロック機構を示す背面図。
【図12】半嵌合時のロック機構を示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した給電プラグロック装置の一実施形態を図1〜図12に従って説明する。
図1に示すように、ハイブリッド車(以下、単に車両1と記す)には、車輪を回す動力をエンジン2及びモータ3にて発生させるハイブリッドシステム4が設けられている。ハイブリッドシステム4には、モータ3の電源としてバッテリ5が設けられている。車両1は、エンジン2の動力で発電してモータ3により走行するモード、エンジン2及びモータ3の両方を動力として走行するモード、モータ3のみで走行するモード等の各種モードにより走行する。
【0018】
車両1には、外部電源にてバッテリ5を充電する充電システム6が設けられている。充電システム6は、例えば街の一角に設置された充電スタンドや住宅の商用電源などを充電設備7として、充電設備7の充電ケーブル8の先端に設けられた給電プラグ9を車両1に接続してバッテリ5を充電する。
【0019】
図1及び図2に示すように、車体10の側壁には、給電プラグ9の接続箇所として受電コネクタ11が設けられている。受電コネクタ11は、横開き式のリッド12によって開閉される収納室13に収納されている。受電コネクタ11には、電気接続端子(パワー端子、制御端子等)を有するインレット14が設けられている。インレット14には、給電プラグ9が完挿されたことを検出するプラグ接続検出センサ15が設けられている。
【0020】
図2及び図3に示すように、給電プラグ9は、充電システム6の電源側であって、インレット14に接続される電気接続端子が設けられている。給電プラグ9のプラグ本体16には、接続時の抜け止めとしてロックアーム17が揺動可能に取り付けられている。ロックアーム17は、長手方向中央を回動軸18として、長手方向と交差する方向に揺動する。ロックアーム17は、先端の爪部19と根元の操作部20とがプラグ本体16の外部に露出されている。ロックアーム17には、操作部20寄りの位置に、ロックアーム17を閉じ側に常時付勢する付勢部材21が設けられている。なお、操作アームがロックアームに相当する。
【0021】
給電プラグ9を受電コネクタ11に接続する際には、給電プラグ9を受電コネクタ11へ挿入方向(図3の−Y軸方向)に真っ直ぐ挿し込む。このとき、爪部19がインレット14の突部22に当接すると、ロックアーム17は斜面22aに案内されて突部22を上る。そして、給電プラグ9がインレット14に完挿されると、付勢部材21の付勢力によってロックアーム17が閉じ側に揺動する。このため、爪部19が突部22に引っ掛かり、給電プラグ9がインレット14に抜け止めされる。
【0022】
ハイブリッドシステム4は、インレット14に給電プラグ9が完挿されたことをプラグ接続検出センサ15により検出すると、給電プラグ9に充電開始要求を出力する。給電プラグ9は、ハイブリッドシステム4から充電開始要求を入力すると、受電コネクタ11に電流を流して、バッテリ5を充電する。ハイブリッドシステム4は、バッテリ5が満充電されたことを確認すると、充電終了要求を給電プラグ9に出力する。給電プラグ9は、ハイブリッドシステム4から充電終了要求を入力すると、受電コネクタ11への電流供給を停止し、充電を終了する。
【0023】
給電プラグ9をインレット14から取り外す際には、操作部20を押してロックアーム17を開き側に揺動させ、突部22から離間させる。そして、この状態で給電プラグ9をインレット14から真っ直ぐ引き抜くことで、車両1から取り外す。
【0024】
図4〜図6に示すように、受電コネクタ11には、インレット14に接続された給電プラグ9の不正な取り外しを防止する給電プラグロック装置23が設けられている。給電プラグロック装置23には、各種部品を収納するケース24が設けられている。ケース24は、本体部分をなすロックボディ25と、ロックボディ25の開口を閉じるリッド26とから形成されている。ケース24は、ロックボディ25が複数の係止部材27によってインレット14に対し強固に取り付け固定されている。リッド26の下方には、給電プラグ9をインレット14に接続/取り外しするときにロックアーム17が通過する凹部28が形成されている。
【0025】
図4に示すように、ケース24には、給電プラグロック装置23の機構部分としてロック機構29が搭載されている。この場合、ロックボディ25の内部には、給電プラグロック装置23の動作駆動源として給電プラグロックモータ30が収納されている。給電プラグロックモータ30は、例えばDCモータが使用されるとともに、モータ軸30aが装置幅方向(図4のX軸方向)を向くように配置されている。なお、給電プラグロックモータ30が駆動手段に相当する。
【0026】
モータ軸30aには、モータ軸30aと一体回転するシャフト31が取り付けられ、シャフト31の根元寄りの位置にギヤ部32が取り付けられている。このギヤ部32には、給電プラグロックモータ30の回転力を、モータ軸方向の直線移動に変換するロックストッパ33が連結されている。ロックストッパ33は、ストッパ本体部34に貫設されたネジ孔35にギヤ部32が噛合されることにより、給電プラグロックモータ30に連結されている。本例の場合、給電プラグロックモータ30が軸La回りに一方向(図4のK1方向)に回転するとロックストッパ33がロック方向(図4の矢印K2方向)に直線移動し、給電プラグロックモータ30が軸La回りに他方向(図4のS1方向)に回転するとロックストッパ33がアンロック方向(図4の矢印S2方向)に直線移動する。なお、ロックストッパ33がロック部材及び連結部材を構成する。
【0027】
ロックストッパ33の側壁に突設された支持部36には、ロックストッパ33と連れ動きするロックバー37が連結されている。ロックバー37には、支持部36が通される環状の連結部38と、連結部38の先端に一体形成された略直方体状のロックバー本体部39とが設けられている。ロックバー37は、連結部38が支持部36の背面の係止溝36aに嵌ることにより、ロックストッパ33に対して抜け止めされている。なお、ロックバー37がロック部材を構成し、連結部38が吸収機構を構成する。
【0028】
ロックストッパ33とロックバー37との間には、ロック時におけるロックバー37のアンロック方向への移動を吸収する付勢部材40が介装されている。付勢部材40は、例えばコイルばねが使用され、一端が支持部36の凹部36bに固定され、他端がロックバー本体部39の係止突39aに固定されている。本例の場合、ロックストッパ33及びロックバー37が一体となってロック方向に直線移動したとき、ロックバー37が位置規制を受ける状況になっても、ロックバー37のアンロック方向への動きを付勢部材40にて吸収して、ロックストッパ33のロック方向への移動を継続させる。なお、付勢部材40が吸収機構を構成する。
【0029】
ロックボディ25には、ロックバー37と協同してロックアーム17を位置規制するロッキングレバー41が、装置幅方向に延びる軸部材42の軸Lb回りに回動可能に取り付けられている。ロッキングレバー41の下部には、ロックアーム17の爪部19に当接可能な略三角状のアーム当接部43が突設されている。アーム当接部43は、ケース24の底面に形成された開口部44から外部に露出し、給電プラグ9をインレット14に抜き挿しするとき、ロックアーム17に当接する。なお、ロッキングレバー41がロック部材及び第2部材を構成する。
【0030】
軸部材42には、ロッキングレバー41をロックアーム17側に常時付勢する付勢部材45が介装されている。図6に示すように、ロッキングレバー41は、通常、ケース24内の内壁24aに当接することで通常位置をとり、付勢部材45の付勢力に抗して、通常位置から持ち上がり方向(図6の矢印R1方向)に回動可能となっている。また、持ち上がり方向に回動したロッキングレバー41は、付勢部材45の付勢力によって、押し下げ方向(図6の矢印R2方向)に回動可能である。
【0031】
ロッキングレバー41の内面には、ロッキングレバー41の内面を段状に形成することにより位置規制部46及び凹部47が形成されている。位置規制部46は、ロック方向に直線移動したロックバー37とほぼ隙間無く接触可能な部位となっている。また、凹部47は、位置規制部46のアンロック方向の隣に形成されるとともに、装置高さ方向(図4のZ軸方向)において位置規制部46よりも高さが低く形成されている。
【0032】
図9及び図10に示すように、ロックバー37がロック方向に直線移動して位置規制部46と対向すると、ロックバー37は、ロッキングレバー41の持ち上がり方向の回動を制限するロック位置をとる。このため、給電プラグロック装置23がロック状態をとる。一方、図7及び図8に示すように、ロックバー37がアンロック方向に直線移動して凹部47に対向すると、ロックバー37は、ロッキングレバー41の持ち上がり方向の回動を許容するアンロック位置をとる。このため、給電プラグロック装置23がアンロック状態をとる。
【0033】
図7〜図12に示すように、ロック時においてロックバー37とロッキングレバー41とが接触する面(接触面48)には、ロックアーム17が突部22に半嵌合する状態(図11及び図12の状態)をとっても、給電プラグロック装置23がロック状態をとれるように段付き形状に形成されている。これにより、ロッキングレバー41がロックアーム17を上から押えるとき、段のどこかでロッキングレバー41を固定できるので、給電プラグロック装置23がロック状態をとる。
【0034】
本例の場合、ロックバー37とロッキングレバー41との接触面48において、ロックバー37の底面に段状部49が設けられている。本例の段状部49は、ロック方向に向かうに従い、段の溝が段階的に深くなっていくように複数段(2段)にて形成されている。本例の場合、先端側の深い段を第1段部50とし、手前の浅い段を第2段部51とし、段の無い部分を通常当接部52とする。
【0035】
次に、本例の給電プラグロック装置23の動作を、図10〜図12を用いて説明する。
給電プラグロック装置23がアンロック状態のとき、給電プラグロックモータ30にロックトリガが入力されると、給電プラグロックモータ30は一方向に回転(例えば正転)し、ロック動作を実行する。このとき、ロックストッパ33及びロックバー37が一体となってロック方向に直線移動を開始する。なお、ロックトリガは、例えばロック動作を車両ドアのドアロック連動とした場合、ドアロックモータから直接供給される電流(電圧)でもよいし、制御IC(Integrated Circuit)から出力されるロック開始の指令でもよい。
【0036】
このとき、図10に示すように、ロックアーム17が突部22に全嵌合する場合、ロッキングレバー41は押し下げ方向において最も下まで回動する状態となっているので、ロックバー37はロッキングレバー41に制限を受けることなく、最大ロック位置(動作終端位置)まで移動可能である。このため、通常当接部52が位置規制部46に対向するので、ロッキングレバー41の回動が通常当接部52にて規制され、給電プラグロック装置23がロック状態をとる。
【0037】
ここで、ロックアーム17の爪部19がインレット14の突部22に係止する状態をとるとき、ロックアーム17及び突部22が、例えばロックアーム17が少し浮いて突部22に係止する半嵌合(図11に示す状態)をとったとする。このとき、ロックアーム17は、通常高さよりもHaだけ高い位置をとるので、ロッキングレバー41もHaだけ上方に回った回動位置をとることになる。
【0038】
この状況下でロックバー37がロック方向に直線移動したとき、第1段部50及び第2段部51が位置規制部46の上方に入り込んだ後、通常当接部52の壁52aが位置規制部46の側壁に当接した時点で、ロックバー37は停止する。この後、給電プラグロックモータ30は回転し続けるが、ロックバー37は止まった状態を維持し、ロックストッパ33のみがロック方向に移動する。このため、ロックバー37がロッキングレバー41を上から押してロックアーム17を突部22に固定する状態をとることが可能となるので、ロックアーム17を開き側に手動操作することができなくなる。よって、図11に示すような半嵌合が生じても、給電プラグロック装置23をロック状態に遷移させることが可能となる。
【0039】
また、ロックアーム17の爪部19がインレット14の突部22に係止する状態をとるとき、ロックアーム17及び突部22が、例えばロックアーム17が大きく浮いて突部22に係止する半嵌合(図12に示す状態)をとったとする。このとき、ロックアーム17は、通常高さよりもHb(>Ha)だけ高い位置をとるので、ロッキングレバー41もHbだけ上方に回った回動位置をとることになる。
【0040】
この状況下でロックバー37がロック方向に直線移動したとき、第1段部50が位置規制部46の上方に入り込んだ後、第2段部51の壁51aが位置規制部46の側壁に当接した時点で、ロックバー37は停止する。この後、給電プラグロックモータ30は回転し続けるが、ロックバー37は止まった状態を維持し、ロックストッパ33のみがロック方向に移動する。このため、ロックバー37がロッキングレバー41を上から押してロックアーム17を突部22に固定する状態をとることが可能となるので、ロックアーム17を開き側に手動操作することができなくなる。よって、図12に示すような半嵌合が生じても、給電プラグロック装置23をロック状態に遷移させることが可能となる。
【0041】
ロックアーム17が半嵌合のとき、仮に半嵌合が解消されると、ロックアーム17が押し下げ方向に回動する動きをとるので、ロックバー37はロッキングレバー41による位置制限が解消され、付勢部材40の付勢力によってロック方向に直線移動する動きをとる。このため、通常当接部52が位置規制部46の上に乗り、通常のロック状態に切り換わる。よって、半嵌合が解消されれば、通常の安定したロック状態に遷移させることも可能である。
【0042】
給電プラグロック装置23がロック状態のとき、給電プラグロックモータ30にアンロックトリガが入力されると、給電プラグロックモータ30は他方向に回転(例えば逆転)し、アンロック動作を開始する。そして、ロックストッパ33及びロックバー37が一体となってアンロック方向に直線移動し、これらがアンロック位置に到達すると、給電プラグロック装置23がアンロック状態に戻る。なお、アンロックトリガは、ロックトリガと同様に、ドアロックモータから直接供給される電流(電圧)でもよいし、制御ICから出力されるアンロック開始の指令でもよい。
【0043】
以上により、本例においては、ロックバー37の底面に段状部49を設け、ロック時においてロックバー37とロッキングレバー41とが接触する面を段付き形状とした。このため、ロックアーム17が突部22にきっちり嵌合しない半嵌合をとっていても、ロックバー37でロックアーム17を固定することが可能となる。よって、ロックアーム17が突部22に半嵌合となっていても、給電プラグロック装置23をロック状態に移行させることが可能となる。
【0044】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)ロック時においてロックバー37とロッキングレバー41とが接触する面(接触面48)を段付き形状としたので、ロックアーム17が半嵌合する場合であっても、給電プラグロック装置23にてロックアーム17をインレット14にしっかりとロックすることができる。
【0045】
(2)接触面48に段状部49を複数段設けたので、ロックアーム17が状況に応じて浮く高さが異なる場合であっても、ロックアーム17をインレット14にロックすることができる。
【0046】
(3)ロックストッパ33にロックバー37を抜け止め状態で連結し、これら両者の間に、ロック時におけるロックバー37のアンロック方向への移動を許容する付勢部材40を介装した。このため、ロックアーム17が半嵌合のとき、ロックバー37をアンロック側に逃がすことができる。また、給電プラグロックモータ30やロックストッパ33等には、全嵌合時と同じ動作をとらせることが可能となるので、周囲部品に特別な動きをとらせる必要もない。
【0047】
(4)給電プラグロック装置23を給電プラグロックモータ30による電動式としたので、ロックやアンロックを自動で切り換えることができる。ロックやアンロックの切り換えをユーザ自ら手動で行う必要がないので、利便性をよくすることができる。
【0048】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・給電プラグロックモータ30の通電を電流検知制御にて実行してもよい。電流検知制御は、給電プラグロックモータ30に流れる電流を測定し、電流測定値からモータ回転数を推測し、このモータ回転数によってロックバー37の距離を積算する。そして、電流が閾値を継続して超えた時点で、ロックバーの移動距離が最小必要距離に到達していれば、正常位置で停動電流発生とし判定し、モータ通電を停止する。一方、電流が閾値を継続して超えた時点で、ロックバー37の移動距離が最小必要距離に到達していなければ、異常位置で停動電流発生と判定し、規定時間通電した後、モータ通電を終了する。電流検知方式を用いれば、例えばセンサ類が不要となるので、装置体格を小型化することが可能となる。
【0049】
・給電プラグロックモータ30の通電時間は、一定時間としてもよい。
・バッテリ5の充電開始条件は、適宜変更可能である。例えば、プラグ接続検出センサ15がインレット14への給電プラグ9の挿し込みを検出し、かつ電子キーとID照合が成立することを充電開始条件としてもよい。
【0050】
・バッテリ5の充電停止は、車両内のスイッチを切ることで行ってもよい。
・給電プラグロック装置23の構造は、実施形態に述べたものに限定されず、適宜変更可能である。例えば、ロック時にロックバー37がロックアーム17の上方に直接位置するものでもよい。
【0051】
・ロックバー37は、直線移動するものに限定されず、例えば軸回りに回転する回転式としてもよい。
・給電プラグロック装置23は、ロックやアンロックが手動操作により実行されるものでもよい。
【0052】
・給電プラグロック装置23は、例えばロックを手動式とし、アンロックを電動式とするものでもよい。
・ロックストッパ33が過度に動き過ぎてシャフト31から脱落してしまったときのために、ロックストッパ33とシャフト31との連結を復帰させる機構(例えば、ばね等)を設けてもよい。
【0053】
・段状部49は、ロックバー37に形成されることに限定されず、例えばロッキングレバー41に設けてもよい。
・ロックバー37でロックアーム17の開き操作を直接ロックする場合、段状部49はロックバー37側に設けてもよいし、又はロックアーム17に設けてもよい。
【0054】
・段状部49は、ロックバー37及びロッキングレバー41の一方に形成されることに限定されず、両方に設けてもよい。
・ロックストッパ33及びロックバー37が一部品となったものでもよい。
【0055】
・操作アームは、中心を軸として回動するロックアーム17に限定されず、インレット14の突部22に係脱操作可能であれば、形状や構造は特に限定されない。
・開口部44に、ケース24の防水性を確保するシール部材を設けてもよい。
【0056】
・車両1は、ハイブリッド車に限定されず、例えばモータのみで走行する電気自動車でもよい。
・給電プラグロック装置23は、車両1に適用されることに限らず、他の装置や機器に応用してもよい。
【0057】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)請求項1〜4のいずれかにおいて、前記段状部は、前記ロック部材の移動方向において高さを異ならせて複数段形成されている。この構成によれば、操作アームが仮に半嵌合をとっていても、操作アームをより確実にインレットに固定することが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
9…給電プラグ、14…インレット、17…操作アームとしてのロックアーム、23…給電プラグロック装置、30…駆動手段としての給電プラグロックモータ、33…ロック部材及び連結部材を構成するロックストッパ、37…ロック部材及び第1部材を構成するロックバー、38…吸収機構を構成する連結部、40…吸収機構を構成する付勢部材、41…ロック部材及び第2部材を構成するロッキングレバー、48…ロック時に接触し合う面としての接触面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両等の物品に接続された給電プラグを物品にロックして、給電プラグの不正取り外しを防止する給電プラグロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への意識の高まりから、二酸化炭素の排出量の少ない車両として、例えばハイブリッド車や電気自動車等の普及が進んでいる。これら車両は、バッテリの電力でモータを回転させ、モータの駆動力により走行するものである。よって、長距離走行してバッテリ残量が減ると、その度にバッテリを充電しなくてはならない(特許文献1等参照)。
【0003】
ところで、バッテリ充電は、バッテリの構成要素である電池セルで化合物やイオンの電解反応を伴うため、充電時間が相対的に長くかかる現状がある。よって、バッテリ充電中、仮に車両から立ち去ってしまうと、その隙に第三者によって給電プラグを付け替えられるなどして、電力を盗電される可能性も否めない。よって、バッテリ充電可能な車両では、給電プラグを車両に接続した際、給電プラグが不正に車両から引き抜かれないようにロック装置を搭載することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−161898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の給電プラグロック装置としては、接続時の抜け止めとして給電プラグに設けられた揺動操作式の爪状の部材(通称、ロックアーム)を、インレット側のロックバーで操作規制する形式が考案されている。ロックアームは自身の軸回りに揺動可能であって、給電プラグがインレットに接続されたとき、インレットの突部に係止する動きをとり、この状態をとると、給電プラグをインレットに係止する。また、ロックアームは根元の操作部を押すと開き側に揺動し、突部との係止が解除可能となっている。
【0006】
例えば、ロックアームがインレットの突部に係止したとき、インレット側のロックバーがロックアームの上方に位置して、ロックアームの開き側の動きが制限されると、給電プラグロック装置がロック状態をとり、給電プラグがインレットにロックされる。一方、ロックバーがロックアームから離間して給電プラグロック装置がアンロック状態となると、ロックアームの開き操作が許容され、インレットから給電プラグを引き抜くことが可能となる。
【0007】
ところで、この形式の給電プラグロック装置を使用した場合、状況によっては、ロックアームがインレットの突部にきっちり固定しない状態、いわゆる半嵌合が生じる可能性がある。ロックアームが突部に半嵌合の状態をとってしまうと、ロックバーをロックアームの上方に位置させようとしてロックバーをロック方向に動かしても、通常よりも上に位置するロックアームにてロックバーの動きが途中で止められてしまい、正常なロック位置に移行できない状況になる。こうなると、給電プラグロック装置をロック状態にすることができない可能性がある。
【0008】
半嵌合の要因としては、例えば給電プラグとインレットが別メーカ同士であるときや、給電プラグを地面に落下させてロックアームが変形してしまったときや、ロックアームの軸部が劣化してロックアームが閉じ側に戻りきらないときがある。また、ロックアームに異物が噛み込んでいるときや、給電プラグ(充電ケーブル)の自重でロックアームが浮き上がってしまうときなども、半嵌合が発生することがある。
【0009】
本発明の目的は、仮に操作アームが半嵌合をとっていても、ロック状態に移行することができる給電プラグロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記問題点を解決するために、本発明では、インレットに給電プラグが接続されたとき、前記給電プラグに設けられた操作アームが前記インレットに抜け止めの係止をとり、この状態下で、前記インレット側のロック部材が前記操作アームの操作を規制する状態をとることにより、前記給電プラグの不正取り外しを防止する給電プラグロック装置において、互いに動きを制限し合って前記給電プラグをロック状態とする第1部材及び第2部材のうち、ロック時に接触し合う面の少なくとも一方を段付き形状としたことを要旨とする。
【0011】
本発明の構成によれば、第1部材と第2部材がロック状態をとるときに接触する面のうち、第1部材及び第2部材の少なくとも一方を段付き形状とした。このため、操作アームが仮にインレットに半嵌合して通常よりも浮く状態をとったとしても、このとき第1部材及び第2部材は、段の付いている部分で互いに固定し合い、結果、ロック部材がアーム部材をロックする状態をとる。よって、操作アームが半嵌合していても、給電プラグロック装置をロック状態に移行させることが可能となる。
【0012】
本発明では、前記段付き形状は、高さの異なる複数の段により形成されていることを要旨とする。この構成によれば、操作アームが半嵌合をとるとき、仮に操作アームの浮く高さが異なる状況となっても、各状況に対応することが可能となる。
【0013】
本発明では、ロック動作又はアンロック動作のときに前記第1部材の座として動く連結部材に、当該第1部材を抜け止め状態で連結し、前記第1部材及び前記連結部材の間に、当該第1部材をロック方向に付勢する付勢部材を介装し、ロック動作時、半嵌合により前記第1部材が位置規制されて動けなくなっても、前記連結部材に対する前記第1部材のアンロック方向への動きを前記付勢部材により吸収して、前記連結部材のロック方向への動きを許容する吸収機構を備えたことを要旨とする。この構成によれば、例えば操作アームが半嵌合のとき、第1部材を逆側に逃がすことが可能となる。また、周囲の部品には、全嵌合時と同じ動作をとらせることが可能となるので、周囲部品に特別な動きをとらせる必要もない。
【0014】
本発明では、前記ロック部材のロック位置又はアンロック位置への移動を駆動手段によって電気的に行う電動式であることを要旨とする。この構成によれば、給電プラグロック装置を電動式としたので、例えば手動操作の場合に比べて、利便性をよくすることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、仮に操作アームが半嵌合をとっていても、ロック状態に移行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態における車両及び充電システムの構成図。
【図2】給電プラグをインレットに接続するときの外観を示す斜視図。
【図3】給電プラグをインレットに接続するときの外観を示す側面図。
【図4】給電プラグロック装置の分解斜視図。
【図5】給電プラグロック装置を斜め下から見た斜視図。
【図6】給電プラグロック装置の断面図。
【図7】アンロック状態のロック機構を背面から見た斜視図。
【図8】アンロック状態のロック機構の背面図。
【図9】ロック状態のロック機構を背面から見た斜視図。
【図10】ロック状態のロック機構の背面図。
【図11】半嵌合時のロック機構を示す背面図。
【図12】半嵌合時のロック機構を示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した給電プラグロック装置の一実施形態を図1〜図12に従って説明する。
図1に示すように、ハイブリッド車(以下、単に車両1と記す)には、車輪を回す動力をエンジン2及びモータ3にて発生させるハイブリッドシステム4が設けられている。ハイブリッドシステム4には、モータ3の電源としてバッテリ5が設けられている。車両1は、エンジン2の動力で発電してモータ3により走行するモード、エンジン2及びモータ3の両方を動力として走行するモード、モータ3のみで走行するモード等の各種モードにより走行する。
【0018】
車両1には、外部電源にてバッテリ5を充電する充電システム6が設けられている。充電システム6は、例えば街の一角に設置された充電スタンドや住宅の商用電源などを充電設備7として、充電設備7の充電ケーブル8の先端に設けられた給電プラグ9を車両1に接続してバッテリ5を充電する。
【0019】
図1及び図2に示すように、車体10の側壁には、給電プラグ9の接続箇所として受電コネクタ11が設けられている。受電コネクタ11は、横開き式のリッド12によって開閉される収納室13に収納されている。受電コネクタ11には、電気接続端子(パワー端子、制御端子等)を有するインレット14が設けられている。インレット14には、給電プラグ9が完挿されたことを検出するプラグ接続検出センサ15が設けられている。
【0020】
図2及び図3に示すように、給電プラグ9は、充電システム6の電源側であって、インレット14に接続される電気接続端子が設けられている。給電プラグ9のプラグ本体16には、接続時の抜け止めとしてロックアーム17が揺動可能に取り付けられている。ロックアーム17は、長手方向中央を回動軸18として、長手方向と交差する方向に揺動する。ロックアーム17は、先端の爪部19と根元の操作部20とがプラグ本体16の外部に露出されている。ロックアーム17には、操作部20寄りの位置に、ロックアーム17を閉じ側に常時付勢する付勢部材21が設けられている。なお、操作アームがロックアームに相当する。
【0021】
給電プラグ9を受電コネクタ11に接続する際には、給電プラグ9を受電コネクタ11へ挿入方向(図3の−Y軸方向)に真っ直ぐ挿し込む。このとき、爪部19がインレット14の突部22に当接すると、ロックアーム17は斜面22aに案内されて突部22を上る。そして、給電プラグ9がインレット14に完挿されると、付勢部材21の付勢力によってロックアーム17が閉じ側に揺動する。このため、爪部19が突部22に引っ掛かり、給電プラグ9がインレット14に抜け止めされる。
【0022】
ハイブリッドシステム4は、インレット14に給電プラグ9が完挿されたことをプラグ接続検出センサ15により検出すると、給電プラグ9に充電開始要求を出力する。給電プラグ9は、ハイブリッドシステム4から充電開始要求を入力すると、受電コネクタ11に電流を流して、バッテリ5を充電する。ハイブリッドシステム4は、バッテリ5が満充電されたことを確認すると、充電終了要求を給電プラグ9に出力する。給電プラグ9は、ハイブリッドシステム4から充電終了要求を入力すると、受電コネクタ11への電流供給を停止し、充電を終了する。
【0023】
給電プラグ9をインレット14から取り外す際には、操作部20を押してロックアーム17を開き側に揺動させ、突部22から離間させる。そして、この状態で給電プラグ9をインレット14から真っ直ぐ引き抜くことで、車両1から取り外す。
【0024】
図4〜図6に示すように、受電コネクタ11には、インレット14に接続された給電プラグ9の不正な取り外しを防止する給電プラグロック装置23が設けられている。給電プラグロック装置23には、各種部品を収納するケース24が設けられている。ケース24は、本体部分をなすロックボディ25と、ロックボディ25の開口を閉じるリッド26とから形成されている。ケース24は、ロックボディ25が複数の係止部材27によってインレット14に対し強固に取り付け固定されている。リッド26の下方には、給電プラグ9をインレット14に接続/取り外しするときにロックアーム17が通過する凹部28が形成されている。
【0025】
図4に示すように、ケース24には、給電プラグロック装置23の機構部分としてロック機構29が搭載されている。この場合、ロックボディ25の内部には、給電プラグロック装置23の動作駆動源として給電プラグロックモータ30が収納されている。給電プラグロックモータ30は、例えばDCモータが使用されるとともに、モータ軸30aが装置幅方向(図4のX軸方向)を向くように配置されている。なお、給電プラグロックモータ30が駆動手段に相当する。
【0026】
モータ軸30aには、モータ軸30aと一体回転するシャフト31が取り付けられ、シャフト31の根元寄りの位置にギヤ部32が取り付けられている。このギヤ部32には、給電プラグロックモータ30の回転力を、モータ軸方向の直線移動に変換するロックストッパ33が連結されている。ロックストッパ33は、ストッパ本体部34に貫設されたネジ孔35にギヤ部32が噛合されることにより、給電プラグロックモータ30に連結されている。本例の場合、給電プラグロックモータ30が軸La回りに一方向(図4のK1方向)に回転するとロックストッパ33がロック方向(図4の矢印K2方向)に直線移動し、給電プラグロックモータ30が軸La回りに他方向(図4のS1方向)に回転するとロックストッパ33がアンロック方向(図4の矢印S2方向)に直線移動する。なお、ロックストッパ33がロック部材及び連結部材を構成する。
【0027】
ロックストッパ33の側壁に突設された支持部36には、ロックストッパ33と連れ動きするロックバー37が連結されている。ロックバー37には、支持部36が通される環状の連結部38と、連結部38の先端に一体形成された略直方体状のロックバー本体部39とが設けられている。ロックバー37は、連結部38が支持部36の背面の係止溝36aに嵌ることにより、ロックストッパ33に対して抜け止めされている。なお、ロックバー37がロック部材を構成し、連結部38が吸収機構を構成する。
【0028】
ロックストッパ33とロックバー37との間には、ロック時におけるロックバー37のアンロック方向への移動を吸収する付勢部材40が介装されている。付勢部材40は、例えばコイルばねが使用され、一端が支持部36の凹部36bに固定され、他端がロックバー本体部39の係止突39aに固定されている。本例の場合、ロックストッパ33及びロックバー37が一体となってロック方向に直線移動したとき、ロックバー37が位置規制を受ける状況になっても、ロックバー37のアンロック方向への動きを付勢部材40にて吸収して、ロックストッパ33のロック方向への移動を継続させる。なお、付勢部材40が吸収機構を構成する。
【0029】
ロックボディ25には、ロックバー37と協同してロックアーム17を位置規制するロッキングレバー41が、装置幅方向に延びる軸部材42の軸Lb回りに回動可能に取り付けられている。ロッキングレバー41の下部には、ロックアーム17の爪部19に当接可能な略三角状のアーム当接部43が突設されている。アーム当接部43は、ケース24の底面に形成された開口部44から外部に露出し、給電プラグ9をインレット14に抜き挿しするとき、ロックアーム17に当接する。なお、ロッキングレバー41がロック部材及び第2部材を構成する。
【0030】
軸部材42には、ロッキングレバー41をロックアーム17側に常時付勢する付勢部材45が介装されている。図6に示すように、ロッキングレバー41は、通常、ケース24内の内壁24aに当接することで通常位置をとり、付勢部材45の付勢力に抗して、通常位置から持ち上がり方向(図6の矢印R1方向)に回動可能となっている。また、持ち上がり方向に回動したロッキングレバー41は、付勢部材45の付勢力によって、押し下げ方向(図6の矢印R2方向)に回動可能である。
【0031】
ロッキングレバー41の内面には、ロッキングレバー41の内面を段状に形成することにより位置規制部46及び凹部47が形成されている。位置規制部46は、ロック方向に直線移動したロックバー37とほぼ隙間無く接触可能な部位となっている。また、凹部47は、位置規制部46のアンロック方向の隣に形成されるとともに、装置高さ方向(図4のZ軸方向)において位置規制部46よりも高さが低く形成されている。
【0032】
図9及び図10に示すように、ロックバー37がロック方向に直線移動して位置規制部46と対向すると、ロックバー37は、ロッキングレバー41の持ち上がり方向の回動を制限するロック位置をとる。このため、給電プラグロック装置23がロック状態をとる。一方、図7及び図8に示すように、ロックバー37がアンロック方向に直線移動して凹部47に対向すると、ロックバー37は、ロッキングレバー41の持ち上がり方向の回動を許容するアンロック位置をとる。このため、給電プラグロック装置23がアンロック状態をとる。
【0033】
図7〜図12に示すように、ロック時においてロックバー37とロッキングレバー41とが接触する面(接触面48)には、ロックアーム17が突部22に半嵌合する状態(図11及び図12の状態)をとっても、給電プラグロック装置23がロック状態をとれるように段付き形状に形成されている。これにより、ロッキングレバー41がロックアーム17を上から押えるとき、段のどこかでロッキングレバー41を固定できるので、給電プラグロック装置23がロック状態をとる。
【0034】
本例の場合、ロックバー37とロッキングレバー41との接触面48において、ロックバー37の底面に段状部49が設けられている。本例の段状部49は、ロック方向に向かうに従い、段の溝が段階的に深くなっていくように複数段(2段)にて形成されている。本例の場合、先端側の深い段を第1段部50とし、手前の浅い段を第2段部51とし、段の無い部分を通常当接部52とする。
【0035】
次に、本例の給電プラグロック装置23の動作を、図10〜図12を用いて説明する。
給電プラグロック装置23がアンロック状態のとき、給電プラグロックモータ30にロックトリガが入力されると、給電プラグロックモータ30は一方向に回転(例えば正転)し、ロック動作を実行する。このとき、ロックストッパ33及びロックバー37が一体となってロック方向に直線移動を開始する。なお、ロックトリガは、例えばロック動作を車両ドアのドアロック連動とした場合、ドアロックモータから直接供給される電流(電圧)でもよいし、制御IC(Integrated Circuit)から出力されるロック開始の指令でもよい。
【0036】
このとき、図10に示すように、ロックアーム17が突部22に全嵌合する場合、ロッキングレバー41は押し下げ方向において最も下まで回動する状態となっているので、ロックバー37はロッキングレバー41に制限を受けることなく、最大ロック位置(動作終端位置)まで移動可能である。このため、通常当接部52が位置規制部46に対向するので、ロッキングレバー41の回動が通常当接部52にて規制され、給電プラグロック装置23がロック状態をとる。
【0037】
ここで、ロックアーム17の爪部19がインレット14の突部22に係止する状態をとるとき、ロックアーム17及び突部22が、例えばロックアーム17が少し浮いて突部22に係止する半嵌合(図11に示す状態)をとったとする。このとき、ロックアーム17は、通常高さよりもHaだけ高い位置をとるので、ロッキングレバー41もHaだけ上方に回った回動位置をとることになる。
【0038】
この状況下でロックバー37がロック方向に直線移動したとき、第1段部50及び第2段部51が位置規制部46の上方に入り込んだ後、通常当接部52の壁52aが位置規制部46の側壁に当接した時点で、ロックバー37は停止する。この後、給電プラグロックモータ30は回転し続けるが、ロックバー37は止まった状態を維持し、ロックストッパ33のみがロック方向に移動する。このため、ロックバー37がロッキングレバー41を上から押してロックアーム17を突部22に固定する状態をとることが可能となるので、ロックアーム17を開き側に手動操作することができなくなる。よって、図11に示すような半嵌合が生じても、給電プラグロック装置23をロック状態に遷移させることが可能となる。
【0039】
また、ロックアーム17の爪部19がインレット14の突部22に係止する状態をとるとき、ロックアーム17及び突部22が、例えばロックアーム17が大きく浮いて突部22に係止する半嵌合(図12に示す状態)をとったとする。このとき、ロックアーム17は、通常高さよりもHb(>Ha)だけ高い位置をとるので、ロッキングレバー41もHbだけ上方に回った回動位置をとることになる。
【0040】
この状況下でロックバー37がロック方向に直線移動したとき、第1段部50が位置規制部46の上方に入り込んだ後、第2段部51の壁51aが位置規制部46の側壁に当接した時点で、ロックバー37は停止する。この後、給電プラグロックモータ30は回転し続けるが、ロックバー37は止まった状態を維持し、ロックストッパ33のみがロック方向に移動する。このため、ロックバー37がロッキングレバー41を上から押してロックアーム17を突部22に固定する状態をとることが可能となるので、ロックアーム17を開き側に手動操作することができなくなる。よって、図12に示すような半嵌合が生じても、給電プラグロック装置23をロック状態に遷移させることが可能となる。
【0041】
ロックアーム17が半嵌合のとき、仮に半嵌合が解消されると、ロックアーム17が押し下げ方向に回動する動きをとるので、ロックバー37はロッキングレバー41による位置制限が解消され、付勢部材40の付勢力によってロック方向に直線移動する動きをとる。このため、通常当接部52が位置規制部46の上に乗り、通常のロック状態に切り換わる。よって、半嵌合が解消されれば、通常の安定したロック状態に遷移させることも可能である。
【0042】
給電プラグロック装置23がロック状態のとき、給電プラグロックモータ30にアンロックトリガが入力されると、給電プラグロックモータ30は他方向に回転(例えば逆転)し、アンロック動作を開始する。そして、ロックストッパ33及びロックバー37が一体となってアンロック方向に直線移動し、これらがアンロック位置に到達すると、給電プラグロック装置23がアンロック状態に戻る。なお、アンロックトリガは、ロックトリガと同様に、ドアロックモータから直接供給される電流(電圧)でもよいし、制御ICから出力されるアンロック開始の指令でもよい。
【0043】
以上により、本例においては、ロックバー37の底面に段状部49を設け、ロック時においてロックバー37とロッキングレバー41とが接触する面を段付き形状とした。このため、ロックアーム17が突部22にきっちり嵌合しない半嵌合をとっていても、ロックバー37でロックアーム17を固定することが可能となる。よって、ロックアーム17が突部22に半嵌合となっていても、給電プラグロック装置23をロック状態に移行させることが可能となる。
【0044】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)ロック時においてロックバー37とロッキングレバー41とが接触する面(接触面48)を段付き形状としたので、ロックアーム17が半嵌合する場合であっても、給電プラグロック装置23にてロックアーム17をインレット14にしっかりとロックすることができる。
【0045】
(2)接触面48に段状部49を複数段設けたので、ロックアーム17が状況に応じて浮く高さが異なる場合であっても、ロックアーム17をインレット14にロックすることができる。
【0046】
(3)ロックストッパ33にロックバー37を抜け止め状態で連結し、これら両者の間に、ロック時におけるロックバー37のアンロック方向への移動を許容する付勢部材40を介装した。このため、ロックアーム17が半嵌合のとき、ロックバー37をアンロック側に逃がすことができる。また、給電プラグロックモータ30やロックストッパ33等には、全嵌合時と同じ動作をとらせることが可能となるので、周囲部品に特別な動きをとらせる必要もない。
【0047】
(4)給電プラグロック装置23を給電プラグロックモータ30による電動式としたので、ロックやアンロックを自動で切り換えることができる。ロックやアンロックの切り換えをユーザ自ら手動で行う必要がないので、利便性をよくすることができる。
【0048】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・給電プラグロックモータ30の通電を電流検知制御にて実行してもよい。電流検知制御は、給電プラグロックモータ30に流れる電流を測定し、電流測定値からモータ回転数を推測し、このモータ回転数によってロックバー37の距離を積算する。そして、電流が閾値を継続して超えた時点で、ロックバーの移動距離が最小必要距離に到達していれば、正常位置で停動電流発生とし判定し、モータ通電を停止する。一方、電流が閾値を継続して超えた時点で、ロックバー37の移動距離が最小必要距離に到達していなければ、異常位置で停動電流発生と判定し、規定時間通電した後、モータ通電を終了する。電流検知方式を用いれば、例えばセンサ類が不要となるので、装置体格を小型化することが可能となる。
【0049】
・給電プラグロックモータ30の通電時間は、一定時間としてもよい。
・バッテリ5の充電開始条件は、適宜変更可能である。例えば、プラグ接続検出センサ15がインレット14への給電プラグ9の挿し込みを検出し、かつ電子キーとID照合が成立することを充電開始条件としてもよい。
【0050】
・バッテリ5の充電停止は、車両内のスイッチを切ることで行ってもよい。
・給電プラグロック装置23の構造は、実施形態に述べたものに限定されず、適宜変更可能である。例えば、ロック時にロックバー37がロックアーム17の上方に直接位置するものでもよい。
【0051】
・ロックバー37は、直線移動するものに限定されず、例えば軸回りに回転する回転式としてもよい。
・給電プラグロック装置23は、ロックやアンロックが手動操作により実行されるものでもよい。
【0052】
・給電プラグロック装置23は、例えばロックを手動式とし、アンロックを電動式とするものでもよい。
・ロックストッパ33が過度に動き過ぎてシャフト31から脱落してしまったときのために、ロックストッパ33とシャフト31との連結を復帰させる機構(例えば、ばね等)を設けてもよい。
【0053】
・段状部49は、ロックバー37に形成されることに限定されず、例えばロッキングレバー41に設けてもよい。
・ロックバー37でロックアーム17の開き操作を直接ロックする場合、段状部49はロックバー37側に設けてもよいし、又はロックアーム17に設けてもよい。
【0054】
・段状部49は、ロックバー37及びロッキングレバー41の一方に形成されることに限定されず、両方に設けてもよい。
・ロックストッパ33及びロックバー37が一部品となったものでもよい。
【0055】
・操作アームは、中心を軸として回動するロックアーム17に限定されず、インレット14の突部22に係脱操作可能であれば、形状や構造は特に限定されない。
・開口部44に、ケース24の防水性を確保するシール部材を設けてもよい。
【0056】
・車両1は、ハイブリッド車に限定されず、例えばモータのみで走行する電気自動車でもよい。
・給電プラグロック装置23は、車両1に適用されることに限らず、他の装置や機器に応用してもよい。
【0057】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)請求項1〜4のいずれかにおいて、前記段状部は、前記ロック部材の移動方向において高さを異ならせて複数段形成されている。この構成によれば、操作アームが仮に半嵌合をとっていても、操作アームをより確実にインレットに固定することが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
9…給電プラグ、14…インレット、17…操作アームとしてのロックアーム、23…給電プラグロック装置、30…駆動手段としての給電プラグロックモータ、33…ロック部材及び連結部材を構成するロックストッパ、37…ロック部材及び第1部材を構成するロックバー、38…吸収機構を構成する連結部、40…吸収機構を構成する付勢部材、41…ロック部材及び第2部材を構成するロッキングレバー、48…ロック時に接触し合う面としての接触面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インレットに給電プラグが接続されたとき、前記給電プラグに設けられた操作アームが前記インレットに抜け止めの係止をとり、この状態下で、前記インレット側のロック部材が前記操作アームの操作を規制する状態をとることにより、前記給電プラグの不正取り外しを防止する給電プラグロック装置において、
互いに動きを制限し合って前記給電プラグをロック状態とする第1部材及び第2部材のうち、ロック時に接触し合う面の少なくとも一方を段付き形状とした
ことを特徴とする給電プラグロック装置。
【請求項2】
前記段付き形状は、高さの異なる複数の段により形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の給電プラグロック装置。
【請求項3】
ロック動作又はアンロック動作のときに前記第1部材の座として動く連結部材に、当該第1部材を抜け止め状態で連結し、前記第1部材及び前記連結部材の間に、当該第1部材をロック方向に付勢する付勢部材を介装し、ロック動作時、半嵌合により前記第1部材が位置規制されて動けなくなっても、前記連結部材に対する前記第1部材のアンロック方向への動きを前記付勢部材により吸収して、前記連結部材のロック方向への動きを許容する吸収機構を備えた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の給電プラグロック装置。
【請求項4】
前記ロック部材のロック位置又はアンロック位置への移動を駆動手段によって電気的に行う電動式である
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の給電プラグロック装置。
【請求項1】
インレットに給電プラグが接続されたとき、前記給電プラグに設けられた操作アームが前記インレットに抜け止めの係止をとり、この状態下で、前記インレット側のロック部材が前記操作アームの操作を規制する状態をとることにより、前記給電プラグの不正取り外しを防止する給電プラグロック装置において、
互いに動きを制限し合って前記給電プラグをロック状態とする第1部材及び第2部材のうち、ロック時に接触し合う面の少なくとも一方を段付き形状とした
ことを特徴とする給電プラグロック装置。
【請求項2】
前記段付き形状は、高さの異なる複数の段により形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の給電プラグロック装置。
【請求項3】
ロック動作又はアンロック動作のときに前記第1部材の座として動く連結部材に、当該第1部材を抜け止め状態で連結し、前記第1部材及び前記連結部材の間に、当該第1部材をロック方向に付勢する付勢部材を介装し、ロック動作時、半嵌合により前記第1部材が位置規制されて動けなくなっても、前記連結部材に対する前記第1部材のアンロック方向への動きを前記付勢部材により吸収して、前記連結部材のロック方向への動きを許容する吸収機構を備えた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の給電プラグロック装置。
【請求項4】
前記ロック部材のロック位置又はアンロック位置への移動を駆動手段によって電気的に行う電動式である
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の給電プラグロック装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−199024(P2012−199024A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61437(P2011−61437)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]