統合人工装具
骨インプラントオペレーション用に利用でき得る、又は骨充填剤若しくは置換として利用でき得る統合人工装具は、少なくとも、金属サポート(30)とプラスチック材料からなるインサート(13)とを含んでおり、該プラスチック材料は摩擦表面、つまりインサートを規定するように少なくとも金属サポートの第1の表面に接続されており、調節可能な厚さを有している。金属サポート(30)は、第1の表面の反対側に、人工装具又は骨置換が設置される骨の部分に接続されることを意図した第2の表面を含んでいる。第1の表面は、実質的に均一な態様で分散されて、且つ、インサート(13)を形成するプラスチック材料の固定及び固化に適したキャビティ又はホール(12)を有している一方で、第2の表面は、骨の固定を最適化するのに適したポーラス層(16)を含んでおり、第1の表面と第2の表面とは、プラスチックインサート(13)を形成する工程におけるプラスチック材料を留める緻密層(14)によって分離されている。第1の表面のキャビティ又はホール(12)は、第2の表面の孔よりも、いかなる異なる形態の場合において、より大きな形状及びサイズを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工装具及び骨置換におけるアプリケーションのための統合人工装具に関する。
【0002】
より正確には、本発明は、統合人工装具及びその関連する製造方法に関し、動物の関節、より具体的には、人間の関節の復元のために用いられ得るものである。
【0003】
本発明は、人工骨及び骨置換のインプラントの医療分野で適用されるものである。
【背景技術】
【0004】
人工装具は公知のものであって、人間又は動物の身体の部分に適用されるものであるが、通常は、主として、プラスチック材料によって形成されるインサートに強固に接続される金属サポート又はシェルによって形成されている。それにより、人工装具の可動部分のスライドを容易にし、その結果、人工装具の移動を可能にして且つその部分における摩擦を低減する。
【0005】
金属サポート用の材料の選択とインサートのプラスチック材料の選択は、生体適合性の材料の利用によって、決定される。一般的には、金属サポートは純チタン、チタン合金、タンタル合金、コバルト合金によって形成される一方で、プラスチック材料は、例えば、高分子量のポリエチレン、ポリカーボネートウレタン、ポリエーテルエーテルケトン又はそれら類似の材料によって形成される。
【0006】
ポーラス構造を有する金属サポートの外部表面を少なくとも形成することが知られており、その機能は、インプラントオペレーションの後に骨を結合させることを可能にすることであり、それにより、人工装具の漸進的なオステオインテグレーションプロセスが促進する。
【0007】
ポーラス構造は、もしも内部表面又はその一部に存在するならば、オステオインテグレーションプロセスを可能にするだけではなく、プラスチック材料からなる摩擦インサートの固化を促進させるためにも利用され得る。
【0008】
ポーラス構造を形成するために利用される方法の一つはDMSL(Direct Selective Laser Sintering)である。この方法により、連続する層の固化プロセスを用い、レーザービームを利用して、予め定めた厚さを有し、且つ、金属材料粉末からなる金属材料の製品及び部品を形成することが可能になる。別の技術はEBM(Electron Beam Melting)であって、この技術を用いることにより、高真空条件における溶融プロセスとDMSLS技術におけるのと同様に連続する層の固化を行うことにより、チタニウム粉末浴から生成される例えばチタニウム部品を作ることを可能にする。
【0009】
公知の方法では、インサートは、人工装具と一緒に一旦固化されると本来持つべき形態で通常事前に形成され、それから、インプラントオペレーションの過程において人工装具に取り付けられるか、または、事前に用意しておかれるものである。
【0010】
プラスチックインサートが金属サポートと共に固化されて形成されることを可能にするために、公知の方法では、すでに事前に形成されたプラスチックインサートが、事前に設定された柔らかさのレベルに到達するまで熱せられる。そして連続して、プラスチックと金属の二つの部分は、圧縮により互いに固化されて形成され、このようにして、プラスチック材料の表面の一部を制御された態様で金属部材の穴に貫通させる。
【0011】
この方法の一つの不具合は、加熱の段階とプラスチックインサートを金属サポートに貫通させる段階とを慎重に制御する必要があることである。なぜなら、それらの穴は、インプラント後のオステオインテグレーションプロセスに要するものであるので、完全には充填されてはならないからである。
【0012】
この種の人工装具の別の不具合は、プラスチックインサートを事前に所望の形態に形成する必要があって、追加的なオペレーションが伴い、そしてまた、適切な形状及びサイズの連続するインサートを蓄えて保持する可能性を低減させることである。
【0013】
特許文献1は、オステオインテグレーション及び内部のポリマー裏地用に適した外部表面を有する人工装具部品を開示している。この人工装具部品は、記述された方法において、セラミック材料で得られるものであって、内側及び外側にポーラス層が張られた素地から形成され、それから、炉の中で焼結される。
【0014】
それから、セラミック体の内側上には、内部のポリマー裏地が注入される。ついでに言えば、特許文献1は、シェルを形成するために、いかなる金属物質、例えばチタニウムを用いることを仮定している。ポーラスチタニウムシェルを作るための方法は記述されていない。
【0015】
特許文献2はまた別の方法を記述しており、その方法では、ポーラス層が、金属ベースの上に、例えば糊付け又は溶接されて適用されており、それから、ポリマー層がポーラス層の上に貼り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第6,682,567号
【特許文献2】米国特許公開第2009/0084491号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的の一つは、上述したタイプの人工装具を形成することであって、そして、複雑な準備オペレーションを避けると共にその製造時間及びコストを制限しながら、それを容易に形成するものである。
【0018】
本発明の別の目的は、サポート構造と共に固化される前にプラスチックインサートを事前に形成する工程を避けると共に、店舗での備蓄を管理しなければならないことを避けることである。
【0019】
本発明の別の目的は、金属物質とプラスチック材料とのより安定して且つ抵抗力のある結合を実現することである。
【0020】
本発明の別の目的は、従来の統合人工装具と比較して、より制限された厚みを有する統合人工装具を形成することを可能にすることである。
【0021】
本件出願人は、従来技術の欠点を克服すると共に様々な目的や利点を得るために、本発明を考案し、試験し、具現化したものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、独立請求項において定義されて且つ特徴付けられており、従属請求項は本発明のその他の特徴又は主要な独創的アイデアの変形例を記述している。
【0023】
上記目的に応じて、本発明の人工装具は、大腿骨、肩、膝などのための人工装具としての骨インプラントオペレーションに用いられ得るものである。人工装具はまた、骨の充填剤又は置換、インサート、シェル又はその類のものとしても適用され得る。
【0024】
本発明に係る統合人工装具は、少なくとも、金属サポートとプラスチック材料からなるインサートとを含んでおり、該プラスチック材料は摩擦表面、つまりインサートを規定するように少なくとも金属サポートの第1の表面に接続されており、所望の厚さに調節でき得る厚さを有している。
【0025】
第1の表面と反対側において、金属サポートは、人工装具又は骨置換が設置される骨の部分に接続するように意図された第2の表面を含んでいる。
【0026】
本発明によると、第1の表面は、実質的に均一に分散されて且つインサートを形成するプラスチック材料の固定及び固化に適したキャビティ又はホールを含んでおり、一方で、第2の表面は、骨の固定を最適化するのに適した層構造又はポーラス構造を含んでおり、そこでは、第1の表面と第2の表面とが、プラスチックインサートを形成するための流し込み工程においてプラスチック材料をストップさせる緻密層によって分離されており、さらに、第1の表面のキャビティ又はホールは、第2の表面の孔よりも、いかなる異なる形態の場合において、より大きな形状及びサイズを有している。
【0027】
例を与えるために、人工装具の全体的なサイズに応じて、骨固定層における孔のサイズは、250mm〜1000mmの範囲で変化し得るものであり、プラスチック材料からなる固化層におけるホールやキャビティの幅のサイズは、1200mm〜2500mmまでの範囲か、それよりも大きい値で、変化する。
【0028】
液体状態又は半液体状態のプラスチック材料を、第1の表面に形成された固化層のキャビティ又はホールへ流し込むことにより、プラスチックインサートは少なくとも部分的に得られる。
【0029】
緻密層は、プラスチック材料が流し込まれているときに、その液体のプラスチック材料を含有するが、それにより、その材料が金属サポートの反対側の表面に突き抜けたり分散したりすることが防止される。
【0030】
固化層に関して、本件発明者らは、内部に延伸すると共に少なくともアンダーカットを生成する表面ホール又は隙間を備えたり、相互に連結し合って且つ互いに接続している一連の開口キャビティを備えたり、又は、プラスチックインサートを固定することを可能にして金属サポート層を用いて固化させたりする、あらゆる構造を意味している。
【0031】
インサートは、最初に、固化層のキャビティ又はホールが完全に充填されるまで、液体又は半液体の状態でプラスチック材料を供給し、それから、プラスチック材料が供給される側に、固化層の外側に、所望の形状及びサイズを有する突き出しインサートが形成されるように、さらにプラスチック材料を供給することにより、得られる。統合人工装具の形状及びサイズは、アプリケーションの種類に応じた各ケースにおいて一貫性を有している。
【0032】
金属サポートは好ましくは、チタニウム及び/又はコバルト及び/又はタンタル及び/又はそれらの合金によって形成されている。
【0033】
プラスチックインサートはポリマー材料から形成されており、好ましくは、ポリエチレン、ポリカーボネートウレタン、及びポリエーテルエーテルケトンからなる群から選択される材料から形成されている。
【0034】
この場合、ポリエーテルエーテルケトン及びポリカーボネートウレタンを用いることが好ましい。なぜなら、これらの物質は、溶融後、ポーラス構造に対する流し込み工程を容易にするのに相応しい粘度を有しているからである。
【0035】
本発明はまた、統合人工装具を製造する方法に関している。
【0036】
この方法は、金属サポート形成する第1のステップを含み、該金属サポートは、緻密層によって分離された少なくとも第1の表面と第2の表面とを有しており、そして、キャビティ又はホールが第1の表面上に形成されて固化層を規定しており、一方で、第2の表面上には表面孔が設けられている。さらに、この方法は、液体状態又は半液体状態でプラスチック材料を供給、流し込み、又は注入する第2のステップを含み、該プラスチック材料は、緻密層に到達するまで固化層のキャビティ又はホール内に突き抜け、これらのホール又はキャビティは内部に延伸し且つ少なくともアンダーカットを生成するか、交互に連結し合って且つ互いに結合された開口キャビティであり、さらに、金属サポートとその第1及び第2の表面は、EBM(Electoron Beam Melting)を用いて単一の工程で形成される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明のこれらの特徴及びその他の特徴は、付属の図面を用いた制限されない実施例としての好ましい実施形態に関する後述の記述から明らかになるであろう。
【図1】図1は、本発明に係る統合人工装具の第1構成の立体図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る別の形態の側面図及び立体図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る別の形態の側面図及び立体図である。
【図4】図4は、人工装具を骨に取り付けるためのスルーホールを有する統合人工装具の立体図である。
【図5】図5は、本発明の別の実施形態に係る統合人工装具の立体図である。
【図6】図6は、本発明に係る大腿骨の頭部の断面図である。
【図7】図7は、本発明に係る寛骨臼カップの断面図である。
【図8】図8は、本発明を実現するためのプラスチック材料を突き出すための方法に関する概略図である。
【図9】図9(a)〜(c)は、本発明に係る人工装具の他の実施形態の断面図、平面図及び全体図を示しており、そこでは、平面図及び全体図において、プラスチック材料の層が説明の明瞭化のために省略されている。
【図10】図10(a)〜(c)は、本発明に係る人工装具の他の実施形態の断面図、平面図及び全体図を示しており、そこでは、平面図及び全体図において、プラスチック材料の層が説明の明瞭化のために省略されている。
【図11】図11(a)〜(c)は、本発明に係る人工装具の他の実施形態の断面図、平面図及び全体図を示しており、そこでは、平面図及び全体図において、プラスチック材料の層が説明の明瞭化のために省略されている。
【発明を実施するための形態】
【0038】
幾つかの実施形態の記述のために用いられる参照符号を有する各図面において、同じ機能を発揮する機能部分は同じ参照符号の数字を有している。特に、本発明に係る統合人工装具は、参照符号の数字10によってその全体が意図されたものである。
【0039】
図1を参照すると、統合人工装具の実施形態に係る第1の単純化された形態が示されている。
【0040】
図1における統合人工装具10は、金属サポート30と上記金属サポート30において固化されたプラスチックインサート13とを含んでいる。
【0041】
金属サポート30は、例えば内部における、プラスチックインサート13の第1の層つまり固化層11を規定する第1の表面を含み、固化層11に直接に隣接する位置において緻密層14が設けられている。
【0042】
固化層11は、その表面に、内部に延伸すると共に互いに連絡し合うブラインドホール及び/又はキャビティ12を有している。本構成の例は、図11(a)〜(c)に示されている。
【0043】
本実施形態のその他の形状では、固化層11は、全体が緻密層14に取り付けられており、垂直部材を備えており、相互連結に極めて接近して互いに接続された結合構造、例えば通常のメッシュを有する網、グリッド(図9(a)〜(c)参照)やクロス(図10(a)〜(c)参照)のような構造を含むことができる。
【0044】
ホールやキャビティ12は相対的に大きい幅を有しており、その幅は、1200mm〜2500mm及びそれ以上に変動し得るものである。
【0045】
本実施形態の固化層11の他の形状では、固化層11は「スパイダー」タイプの構造からなり、この構造は、図7及び図10(c)に示されるように、その足元に極めて接近して、緻密層14にしっかりと取り付けられている。
【0046】
もしも、プラスチックインサート13が、一般に曲線形状を有する不規則な表面上に形成される場合、固化層11はホール12から構成されてもよく、該ホール12は、円形又は四角形の断面又はその他の形状を有し、そのホールが形成される表面に対して垂直に規則的に延伸するものであってもよい。この形状の実施形態の例が図11(a)〜(c)に示されており、この場合、ホール12は円形の断面を有し、それにより、メッシュが生成されており、表面間に隙間を形成すると共に、インサート13が、一旦固化されると、金属サポート30にしっかりと取り付けられて保持され得るように、支柱(pylon)によって支持されている。
【0047】
本発明の実施形態の他の形状によると、円形、四角形の断面又はその他の形状を有するホール12は、結合部材を規定するように相互に結合されている。
【0048】
しかし別の実施形態の形状では、ホール12は相互に連結されていない。
【0049】
流し込まれて冷却された後にインサート13のプラスチック材料を固化することを可能にする、ともかく如何なる形状のキャビティ構造や別の構造は、本発明の分野の範囲で想定されることが理解される。
【0050】
図1に示した場合において、前述したように、固化層11は、液体又は半液体の状態で流し込まれるプラスチック材料で充填されるキャビティ12を有しており、該プラスチック材料はそれから、緻密層14によって包含される。プラスチック材料13の流し込みに続いて、プラスチックインサート13は、所望の高さ又は厚さを備えて形成され、固化層11に相互に緊密に接続される。
【0051】
本記述において、本件発明者らは、金属材料からなる緻密層14及び固化層11を示すために、便宜上、「層」という用語を用いている。しかしながら、このことは、それらが後に結合される二つの分離した層を意味するものではなく、異なる表面特性を備える部分を有する同じ本体である(一方の側に緻密材料が存在し、他方の側にポーラス構造が存在する)。
【0052】
固化層11と緻密層14は、純チタニウム、その合金、コバルト合金、タンタル合金及び/又はそれらの合金、又はその他の生体適合性金属に基づいた材料でもって固化されて形成される。
【0053】
プラスチック材料はまた、生体適合特性、機械的耐性つまり摩耗耐性の良好な特性、ポーラス構造内で注入を容易にする化学―物理特性を有さなければならない。該ポーラス構造は、限定しない例を与えるために、ポリマー材料、好ましくは、ポリエチレン、ポリカーボネートウレタン、ポリエーテルエーテルケトン又はそのような材料からなる群から選択される材料から形成されてもよい。
【0054】
この場合、ポリエーテルエーテルケトン及びポリカーボネートウレタンを用いることが有利である。なぜなら、これらの材料は、溶融した後、金属サポートの固化層11への流し込みプロセスを容易にするのに適した粘度を有するからである。
【0055】
表面又は反対側に、人工装具10は、緻密層14に隣接して形成された第2の層つまりポーラス層16を有している。
【0056】
ポーラス層16は、骨における全体の人工装具10のオステオインテグレーションを促進させることができ、それにより、間隙がポーラス層16上に形成されるか、細孔さえも形成され、それにより、時間をかけて、骨上に人工装具10が効率的に留まることを確保する。
【0057】
インサート13を形成する流し込まれるプラスチック材料のためのストップ部材として働く緻密層14の存在は、ポーラス層16の気孔率がプラスチック材料によって減少しないことを保証するものである。
【0058】
ポーラス層16は通常、固化層11のホールやキャビティ12よりも小さい形状及びサイズを持つ間隙を有する。なぜなら、前者はオステオインテグレーション用に意図されたものであり、後者はインサート13を形成するプラスチック材料を留めるために意図されたものであるからである。
【0059】
特に、ポーラス層16の間隙は、約250mm〜1000mmまでの範囲で変動し得る。
【0060】
本発明の一つの特徴は、金属サポート30が、その固化膜11、緻密層14及びポーラス層16を備えており、後述でより詳細に説明するが、電子溶解技術(Electron Beam Melting Technique)、つまりEBMによって得られる。
【0061】
この技術は、所望の幾何学的且つ次元特性を得ることが可能であることを保証するものであって、それは、固化膜11のためのアンダーカット及びブラインドキャビティの観点、ポーラス層16のための間隙や細孔の観点、及び、緻密層14の高さ及び密度の観点において、極めて正確に、保証するものである。
【0062】
図2及び図3は、本発明に係る統合人工装具10の二つの別の形態を示しており、統合人工装具10の形状は、要求されるアプリケーションのタイプに基づいて異なり得るものであることを示している。
【0063】
特に、これらの方法は、緻密金属材料から形成され、緻密層14を有して且つ第2のポーラス層16を介して、固化して形成された附属のピン17を示している。
【0064】
このピン17は、本発明のアプリケーションによると、全体の統合人工装具を骨内に取り付けるように機能し、そして、図示しないさらなる取り付け部材に統合され得る。
【0065】
これらの場合、図2は脛骨を示す一方で、図3は浅いくぼみのあるインサートを示している。
【0066】
図4は、統合人工装具10が、人工装具をインプラントがなされる骨壁に取り付けることを可能にするスルーホール18を含んでいる変形例を示している。スルーホール18は各々、抑制するホール18を強化するためであると共にスクリュー(図示せず)がインサートされることを可能にするために緻密材料からなる環状壁19によって区分されている。
【0067】
図5は、もうひとつ別の形状の実施形態を示しており、そこでは、図2における頚骨インサートは取り付けピン17を有しておらず、プラスチックインサート13は、膝関節の滑りに一致してその滑りを可能にするのに適した幾何学的形状をもって形成されている。
【0068】
図6は、本発明に係る統合人工装具10の適用例であって、大腿骨の頭部用の人工装具に適用した例であり、類似の形状の人工装具及び同じ形態が上腕骨の人工装具に適用されてもよい。
【0069】
図7は、統合人工装具10を寛臼骨カップに応用した例を示している。
【0070】
統合人工装具を形成する方法は、金属サポート30を形成する工程と、液体又は半液体状態のプラスチック材料を供給する工程とを含んでいる。
【0071】
金属サポート30は、上述したように、EBM(Electron Beam Melting)として知られた技術を用いて形成される。
【0072】
この技術は、高真空の条件で且つEBMに適した装置を用いて、高速電子ビームにより、所望の粒子サイズの金属材料からなる粉末浴を溶融させる。
【0073】
金属材料の粉末は、所望の粒子サイズを有しているが、所望の場所及び所望の事前に定めた場所において連続層に堆積され、そして、例えば、本発明に係る金属材料からなる層11、14及び16を形成するために溶融される。
【0074】
金属サポート30を形成する工程において用いられるEBM技術は、等価な技術、例えばDMSLS(Direct Metal Selective Laser Sintering)として知られた技術によって取って代えてもよく、その場合、粉末浴の溶融は、高パワーレーザー線によって実行される。
【0075】
金属サポート30が上述したように一旦得られると、本方法では、それから、固化層11のキャビティ12内にプラスチック材料を流し込むと同時に、プラスチックインサート13を形成する工程に進む。
【0076】
図8は、プラスチックインサート13を形成するために、プラスチック材料を注入する可能な方法を概略的に示している。
【0077】
金属サポート30はモールド20内に挿入され、そして、注入チャンバー25を形成するように、カウンターモールド21を用いて閉じられている。カウンターモールド21は、注入装置26を備えており、プラスチック材料及び加圧手段23を注入する注入チャネル22を含んでいる。注入が終了してプラスチック材料が冷却されると、引出装置24はそれから、モールド20から人工装具10を引き出すことを可能にする。
【0078】
特に、金属サポート30は、前のEBMによる製造工程から得られたモールド20内へ挿入されて、カウンターモールド21によって閉じられる。
【0079】
プラスチック材料は注入チャネル22を介して注入されて、注入チャンバー25及び固化層11のキャビティ12を充填する一方で、緻密層14はプラスチック注入を含んでおり、それにより、プラスチック材料が注入される側に関して反対側に突き出して拡散することを防止する。
【0080】
加圧手段23は、固化層11のキャビティ12へプラスチック材料が突き抜けることを促進させる。
【0081】
上述した統合人工装具及びその製造方法に対して、本発明の分野及び範囲を逸脱することなく、変形及び/追加がなされてもよいことは明確である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工装具及び骨置換におけるアプリケーションのための統合人工装具に関する。
【0002】
より正確には、本発明は、統合人工装具及びその関連する製造方法に関し、動物の関節、より具体的には、人間の関節の復元のために用いられ得るものである。
【0003】
本発明は、人工骨及び骨置換のインプラントの医療分野で適用されるものである。
【背景技術】
【0004】
人工装具は公知のものであって、人間又は動物の身体の部分に適用されるものであるが、通常は、主として、プラスチック材料によって形成されるインサートに強固に接続される金属サポート又はシェルによって形成されている。それにより、人工装具の可動部分のスライドを容易にし、その結果、人工装具の移動を可能にして且つその部分における摩擦を低減する。
【0005】
金属サポート用の材料の選択とインサートのプラスチック材料の選択は、生体適合性の材料の利用によって、決定される。一般的には、金属サポートは純チタン、チタン合金、タンタル合金、コバルト合金によって形成される一方で、プラスチック材料は、例えば、高分子量のポリエチレン、ポリカーボネートウレタン、ポリエーテルエーテルケトン又はそれら類似の材料によって形成される。
【0006】
ポーラス構造を有する金属サポートの外部表面を少なくとも形成することが知られており、その機能は、インプラントオペレーションの後に骨を結合させることを可能にすることであり、それにより、人工装具の漸進的なオステオインテグレーションプロセスが促進する。
【0007】
ポーラス構造は、もしも内部表面又はその一部に存在するならば、オステオインテグレーションプロセスを可能にするだけではなく、プラスチック材料からなる摩擦インサートの固化を促進させるためにも利用され得る。
【0008】
ポーラス構造を形成するために利用される方法の一つはDMSL(Direct Selective Laser Sintering)である。この方法により、連続する層の固化プロセスを用い、レーザービームを利用して、予め定めた厚さを有し、且つ、金属材料粉末からなる金属材料の製品及び部品を形成することが可能になる。別の技術はEBM(Electron Beam Melting)であって、この技術を用いることにより、高真空条件における溶融プロセスとDMSLS技術におけるのと同様に連続する層の固化を行うことにより、チタニウム粉末浴から生成される例えばチタニウム部品を作ることを可能にする。
【0009】
公知の方法では、インサートは、人工装具と一緒に一旦固化されると本来持つべき形態で通常事前に形成され、それから、インプラントオペレーションの過程において人工装具に取り付けられるか、または、事前に用意しておかれるものである。
【0010】
プラスチックインサートが金属サポートと共に固化されて形成されることを可能にするために、公知の方法では、すでに事前に形成されたプラスチックインサートが、事前に設定された柔らかさのレベルに到達するまで熱せられる。そして連続して、プラスチックと金属の二つの部分は、圧縮により互いに固化されて形成され、このようにして、プラスチック材料の表面の一部を制御された態様で金属部材の穴に貫通させる。
【0011】
この方法の一つの不具合は、加熱の段階とプラスチックインサートを金属サポートに貫通させる段階とを慎重に制御する必要があることである。なぜなら、それらの穴は、インプラント後のオステオインテグレーションプロセスに要するものであるので、完全には充填されてはならないからである。
【0012】
この種の人工装具の別の不具合は、プラスチックインサートを事前に所望の形態に形成する必要があって、追加的なオペレーションが伴い、そしてまた、適切な形状及びサイズの連続するインサートを蓄えて保持する可能性を低減させることである。
【0013】
特許文献1は、オステオインテグレーション及び内部のポリマー裏地用に適した外部表面を有する人工装具部品を開示している。この人工装具部品は、記述された方法において、セラミック材料で得られるものであって、内側及び外側にポーラス層が張られた素地から形成され、それから、炉の中で焼結される。
【0014】
それから、セラミック体の内側上には、内部のポリマー裏地が注入される。ついでに言えば、特許文献1は、シェルを形成するために、いかなる金属物質、例えばチタニウムを用いることを仮定している。ポーラスチタニウムシェルを作るための方法は記述されていない。
【0015】
特許文献2はまた別の方法を記述しており、その方法では、ポーラス層が、金属ベースの上に、例えば糊付け又は溶接されて適用されており、それから、ポリマー層がポーラス層の上に貼り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第6,682,567号
【特許文献2】米国特許公開第2009/0084491号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的の一つは、上述したタイプの人工装具を形成することであって、そして、複雑な準備オペレーションを避けると共にその製造時間及びコストを制限しながら、それを容易に形成するものである。
【0018】
本発明の別の目的は、サポート構造と共に固化される前にプラスチックインサートを事前に形成する工程を避けると共に、店舗での備蓄を管理しなければならないことを避けることである。
【0019】
本発明の別の目的は、金属物質とプラスチック材料とのより安定して且つ抵抗力のある結合を実現することである。
【0020】
本発明の別の目的は、従来の統合人工装具と比較して、より制限された厚みを有する統合人工装具を形成することを可能にすることである。
【0021】
本件出願人は、従来技術の欠点を克服すると共に様々な目的や利点を得るために、本発明を考案し、試験し、具現化したものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、独立請求項において定義されて且つ特徴付けられており、従属請求項は本発明のその他の特徴又は主要な独創的アイデアの変形例を記述している。
【0023】
上記目的に応じて、本発明の人工装具は、大腿骨、肩、膝などのための人工装具としての骨インプラントオペレーションに用いられ得るものである。人工装具はまた、骨の充填剤又は置換、インサート、シェル又はその類のものとしても適用され得る。
【0024】
本発明に係る統合人工装具は、少なくとも、金属サポートとプラスチック材料からなるインサートとを含んでおり、該プラスチック材料は摩擦表面、つまりインサートを規定するように少なくとも金属サポートの第1の表面に接続されており、所望の厚さに調節でき得る厚さを有している。
【0025】
第1の表面と反対側において、金属サポートは、人工装具又は骨置換が設置される骨の部分に接続するように意図された第2の表面を含んでいる。
【0026】
本発明によると、第1の表面は、実質的に均一に分散されて且つインサートを形成するプラスチック材料の固定及び固化に適したキャビティ又はホールを含んでおり、一方で、第2の表面は、骨の固定を最適化するのに適した層構造又はポーラス構造を含んでおり、そこでは、第1の表面と第2の表面とが、プラスチックインサートを形成するための流し込み工程においてプラスチック材料をストップさせる緻密層によって分離されており、さらに、第1の表面のキャビティ又はホールは、第2の表面の孔よりも、いかなる異なる形態の場合において、より大きな形状及びサイズを有している。
【0027】
例を与えるために、人工装具の全体的なサイズに応じて、骨固定層における孔のサイズは、250mm〜1000mmの範囲で変化し得るものであり、プラスチック材料からなる固化層におけるホールやキャビティの幅のサイズは、1200mm〜2500mmまでの範囲か、それよりも大きい値で、変化する。
【0028】
液体状態又は半液体状態のプラスチック材料を、第1の表面に形成された固化層のキャビティ又はホールへ流し込むことにより、プラスチックインサートは少なくとも部分的に得られる。
【0029】
緻密層は、プラスチック材料が流し込まれているときに、その液体のプラスチック材料を含有するが、それにより、その材料が金属サポートの反対側の表面に突き抜けたり分散したりすることが防止される。
【0030】
固化層に関して、本件発明者らは、内部に延伸すると共に少なくともアンダーカットを生成する表面ホール又は隙間を備えたり、相互に連結し合って且つ互いに接続している一連の開口キャビティを備えたり、又は、プラスチックインサートを固定することを可能にして金属サポート層を用いて固化させたりする、あらゆる構造を意味している。
【0031】
インサートは、最初に、固化層のキャビティ又はホールが完全に充填されるまで、液体又は半液体の状態でプラスチック材料を供給し、それから、プラスチック材料が供給される側に、固化層の外側に、所望の形状及びサイズを有する突き出しインサートが形成されるように、さらにプラスチック材料を供給することにより、得られる。統合人工装具の形状及びサイズは、アプリケーションの種類に応じた各ケースにおいて一貫性を有している。
【0032】
金属サポートは好ましくは、チタニウム及び/又はコバルト及び/又はタンタル及び/又はそれらの合金によって形成されている。
【0033】
プラスチックインサートはポリマー材料から形成されており、好ましくは、ポリエチレン、ポリカーボネートウレタン、及びポリエーテルエーテルケトンからなる群から選択される材料から形成されている。
【0034】
この場合、ポリエーテルエーテルケトン及びポリカーボネートウレタンを用いることが好ましい。なぜなら、これらの物質は、溶融後、ポーラス構造に対する流し込み工程を容易にするのに相応しい粘度を有しているからである。
【0035】
本発明はまた、統合人工装具を製造する方法に関している。
【0036】
この方法は、金属サポート形成する第1のステップを含み、該金属サポートは、緻密層によって分離された少なくとも第1の表面と第2の表面とを有しており、そして、キャビティ又はホールが第1の表面上に形成されて固化層を規定しており、一方で、第2の表面上には表面孔が設けられている。さらに、この方法は、液体状態又は半液体状態でプラスチック材料を供給、流し込み、又は注入する第2のステップを含み、該プラスチック材料は、緻密層に到達するまで固化層のキャビティ又はホール内に突き抜け、これらのホール又はキャビティは内部に延伸し且つ少なくともアンダーカットを生成するか、交互に連結し合って且つ互いに結合された開口キャビティであり、さらに、金属サポートとその第1及び第2の表面は、EBM(Electoron Beam Melting)を用いて単一の工程で形成される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明のこれらの特徴及びその他の特徴は、付属の図面を用いた制限されない実施例としての好ましい実施形態に関する後述の記述から明らかになるであろう。
【図1】図1は、本発明に係る統合人工装具の第1構成の立体図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る別の形態の側面図及び立体図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る別の形態の側面図及び立体図である。
【図4】図4は、人工装具を骨に取り付けるためのスルーホールを有する統合人工装具の立体図である。
【図5】図5は、本発明の別の実施形態に係る統合人工装具の立体図である。
【図6】図6は、本発明に係る大腿骨の頭部の断面図である。
【図7】図7は、本発明に係る寛骨臼カップの断面図である。
【図8】図8は、本発明を実現するためのプラスチック材料を突き出すための方法に関する概略図である。
【図9】図9(a)〜(c)は、本発明に係る人工装具の他の実施形態の断面図、平面図及び全体図を示しており、そこでは、平面図及び全体図において、プラスチック材料の層が説明の明瞭化のために省略されている。
【図10】図10(a)〜(c)は、本発明に係る人工装具の他の実施形態の断面図、平面図及び全体図を示しており、そこでは、平面図及び全体図において、プラスチック材料の層が説明の明瞭化のために省略されている。
【図11】図11(a)〜(c)は、本発明に係る人工装具の他の実施形態の断面図、平面図及び全体図を示しており、そこでは、平面図及び全体図において、プラスチック材料の層が説明の明瞭化のために省略されている。
【発明を実施するための形態】
【0038】
幾つかの実施形態の記述のために用いられる参照符号を有する各図面において、同じ機能を発揮する機能部分は同じ参照符号の数字を有している。特に、本発明に係る統合人工装具は、参照符号の数字10によってその全体が意図されたものである。
【0039】
図1を参照すると、統合人工装具の実施形態に係る第1の単純化された形態が示されている。
【0040】
図1における統合人工装具10は、金属サポート30と上記金属サポート30において固化されたプラスチックインサート13とを含んでいる。
【0041】
金属サポート30は、例えば内部における、プラスチックインサート13の第1の層つまり固化層11を規定する第1の表面を含み、固化層11に直接に隣接する位置において緻密層14が設けられている。
【0042】
固化層11は、その表面に、内部に延伸すると共に互いに連絡し合うブラインドホール及び/又はキャビティ12を有している。本構成の例は、図11(a)〜(c)に示されている。
【0043】
本実施形態のその他の形状では、固化層11は、全体が緻密層14に取り付けられており、垂直部材を備えており、相互連結に極めて接近して互いに接続された結合構造、例えば通常のメッシュを有する網、グリッド(図9(a)〜(c)参照)やクロス(図10(a)〜(c)参照)のような構造を含むことができる。
【0044】
ホールやキャビティ12は相対的に大きい幅を有しており、その幅は、1200mm〜2500mm及びそれ以上に変動し得るものである。
【0045】
本実施形態の固化層11の他の形状では、固化層11は「スパイダー」タイプの構造からなり、この構造は、図7及び図10(c)に示されるように、その足元に極めて接近して、緻密層14にしっかりと取り付けられている。
【0046】
もしも、プラスチックインサート13が、一般に曲線形状を有する不規則な表面上に形成される場合、固化層11はホール12から構成されてもよく、該ホール12は、円形又は四角形の断面又はその他の形状を有し、そのホールが形成される表面に対して垂直に規則的に延伸するものであってもよい。この形状の実施形態の例が図11(a)〜(c)に示されており、この場合、ホール12は円形の断面を有し、それにより、メッシュが生成されており、表面間に隙間を形成すると共に、インサート13が、一旦固化されると、金属サポート30にしっかりと取り付けられて保持され得るように、支柱(pylon)によって支持されている。
【0047】
本発明の実施形態の他の形状によると、円形、四角形の断面又はその他の形状を有するホール12は、結合部材を規定するように相互に結合されている。
【0048】
しかし別の実施形態の形状では、ホール12は相互に連結されていない。
【0049】
流し込まれて冷却された後にインサート13のプラスチック材料を固化することを可能にする、ともかく如何なる形状のキャビティ構造や別の構造は、本発明の分野の範囲で想定されることが理解される。
【0050】
図1に示した場合において、前述したように、固化層11は、液体又は半液体の状態で流し込まれるプラスチック材料で充填されるキャビティ12を有しており、該プラスチック材料はそれから、緻密層14によって包含される。プラスチック材料13の流し込みに続いて、プラスチックインサート13は、所望の高さ又は厚さを備えて形成され、固化層11に相互に緊密に接続される。
【0051】
本記述において、本件発明者らは、金属材料からなる緻密層14及び固化層11を示すために、便宜上、「層」という用語を用いている。しかしながら、このことは、それらが後に結合される二つの分離した層を意味するものではなく、異なる表面特性を備える部分を有する同じ本体である(一方の側に緻密材料が存在し、他方の側にポーラス構造が存在する)。
【0052】
固化層11と緻密層14は、純チタニウム、その合金、コバルト合金、タンタル合金及び/又はそれらの合金、又はその他の生体適合性金属に基づいた材料でもって固化されて形成される。
【0053】
プラスチック材料はまた、生体適合特性、機械的耐性つまり摩耗耐性の良好な特性、ポーラス構造内で注入を容易にする化学―物理特性を有さなければならない。該ポーラス構造は、限定しない例を与えるために、ポリマー材料、好ましくは、ポリエチレン、ポリカーボネートウレタン、ポリエーテルエーテルケトン又はそのような材料からなる群から選択される材料から形成されてもよい。
【0054】
この場合、ポリエーテルエーテルケトン及びポリカーボネートウレタンを用いることが有利である。なぜなら、これらの材料は、溶融した後、金属サポートの固化層11への流し込みプロセスを容易にするのに適した粘度を有するからである。
【0055】
表面又は反対側に、人工装具10は、緻密層14に隣接して形成された第2の層つまりポーラス層16を有している。
【0056】
ポーラス層16は、骨における全体の人工装具10のオステオインテグレーションを促進させることができ、それにより、間隙がポーラス層16上に形成されるか、細孔さえも形成され、それにより、時間をかけて、骨上に人工装具10が効率的に留まることを確保する。
【0057】
インサート13を形成する流し込まれるプラスチック材料のためのストップ部材として働く緻密層14の存在は、ポーラス層16の気孔率がプラスチック材料によって減少しないことを保証するものである。
【0058】
ポーラス層16は通常、固化層11のホールやキャビティ12よりも小さい形状及びサイズを持つ間隙を有する。なぜなら、前者はオステオインテグレーション用に意図されたものであり、後者はインサート13を形成するプラスチック材料を留めるために意図されたものであるからである。
【0059】
特に、ポーラス層16の間隙は、約250mm〜1000mmまでの範囲で変動し得る。
【0060】
本発明の一つの特徴は、金属サポート30が、その固化膜11、緻密層14及びポーラス層16を備えており、後述でより詳細に説明するが、電子溶解技術(Electron Beam Melting Technique)、つまりEBMによって得られる。
【0061】
この技術は、所望の幾何学的且つ次元特性を得ることが可能であることを保証するものであって、それは、固化膜11のためのアンダーカット及びブラインドキャビティの観点、ポーラス層16のための間隙や細孔の観点、及び、緻密層14の高さ及び密度の観点において、極めて正確に、保証するものである。
【0062】
図2及び図3は、本発明に係る統合人工装具10の二つの別の形態を示しており、統合人工装具10の形状は、要求されるアプリケーションのタイプに基づいて異なり得るものであることを示している。
【0063】
特に、これらの方法は、緻密金属材料から形成され、緻密層14を有して且つ第2のポーラス層16を介して、固化して形成された附属のピン17を示している。
【0064】
このピン17は、本発明のアプリケーションによると、全体の統合人工装具を骨内に取り付けるように機能し、そして、図示しないさらなる取り付け部材に統合され得る。
【0065】
これらの場合、図2は脛骨を示す一方で、図3は浅いくぼみのあるインサートを示している。
【0066】
図4は、統合人工装具10が、人工装具をインプラントがなされる骨壁に取り付けることを可能にするスルーホール18を含んでいる変形例を示している。スルーホール18は各々、抑制するホール18を強化するためであると共にスクリュー(図示せず)がインサートされることを可能にするために緻密材料からなる環状壁19によって区分されている。
【0067】
図5は、もうひとつ別の形状の実施形態を示しており、そこでは、図2における頚骨インサートは取り付けピン17を有しておらず、プラスチックインサート13は、膝関節の滑りに一致してその滑りを可能にするのに適した幾何学的形状をもって形成されている。
【0068】
図6は、本発明に係る統合人工装具10の適用例であって、大腿骨の頭部用の人工装具に適用した例であり、類似の形状の人工装具及び同じ形態が上腕骨の人工装具に適用されてもよい。
【0069】
図7は、統合人工装具10を寛臼骨カップに応用した例を示している。
【0070】
統合人工装具を形成する方法は、金属サポート30を形成する工程と、液体又は半液体状態のプラスチック材料を供給する工程とを含んでいる。
【0071】
金属サポート30は、上述したように、EBM(Electron Beam Melting)として知られた技術を用いて形成される。
【0072】
この技術は、高真空の条件で且つEBMに適した装置を用いて、高速電子ビームにより、所望の粒子サイズの金属材料からなる粉末浴を溶融させる。
【0073】
金属材料の粉末は、所望の粒子サイズを有しているが、所望の場所及び所望の事前に定めた場所において連続層に堆積され、そして、例えば、本発明に係る金属材料からなる層11、14及び16を形成するために溶融される。
【0074】
金属サポート30を形成する工程において用いられるEBM技術は、等価な技術、例えばDMSLS(Direct Metal Selective Laser Sintering)として知られた技術によって取って代えてもよく、その場合、粉末浴の溶融は、高パワーレーザー線によって実行される。
【0075】
金属サポート30が上述したように一旦得られると、本方法では、それから、固化層11のキャビティ12内にプラスチック材料を流し込むと同時に、プラスチックインサート13を形成する工程に進む。
【0076】
図8は、プラスチックインサート13を形成するために、プラスチック材料を注入する可能な方法を概略的に示している。
【0077】
金属サポート30はモールド20内に挿入され、そして、注入チャンバー25を形成するように、カウンターモールド21を用いて閉じられている。カウンターモールド21は、注入装置26を備えており、プラスチック材料及び加圧手段23を注入する注入チャネル22を含んでいる。注入が終了してプラスチック材料が冷却されると、引出装置24はそれから、モールド20から人工装具10を引き出すことを可能にする。
【0078】
特に、金属サポート30は、前のEBMによる製造工程から得られたモールド20内へ挿入されて、カウンターモールド21によって閉じられる。
【0079】
プラスチック材料は注入チャネル22を介して注入されて、注入チャンバー25及び固化層11のキャビティ12を充填する一方で、緻密層14はプラスチック注入を含んでおり、それにより、プラスチック材料が注入される側に関して反対側に突き出して拡散することを防止する。
【0080】
加圧手段23は、固化層11のキャビティ12へプラスチック材料が突き抜けることを促進させる。
【0081】
上述した統合人工装具及びその製造方法に対して、本発明の分野及び範囲を逸脱することなく、変形及び/追加がなされてもよいことは明確である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨、肩若しくは膝の人工装具、又は骨の充填剤若しくは置換、インサート、シェル又はその類のものとして、骨インプラントオペレーションのために利用でき得る統合人工装であって、
少なくとも、金属サポートとプラスチック材料からなるインサートとを含んでおり、該プラスチック材料は摩擦表面、つまりインサートを規定するように少なくとも金属サポートの第1の表面に接続されており、調節可能な厚さを有しており、
前記金属サポート(30)は、前記第1の表面の反対側に、前記人工装具又は骨置換が設置される骨の部分に接続されることを意図した第2の表面を含んでおり、
前記第1の表面は、実質的に均一な態様で分散されて、且つ、前記インサート(13)を形成する前記プラスチック材料の固定及び固化に適したキャビティ又はホール(12)を有しており、一方で、前記第2の表面は、前記骨の固定を最適化するのに適したポーラス層(16)を含んでおり、そこでは、前記第1の表面と前記第2の表面とは、前記プラスチックインサート(13)を形成する工程における前記プラスチック材料を留める緻密層(14)によって分離されており、さらに、前記第1の表面の前記キャビティ又はホール(12)は、前記第2の表面の孔よりも、いかなる異なる形態の場合において、より大きな形状及びサイズを有している、
ことを特徴とする統合人工装具。
【請求項2】
請求項1に記載の統合人工装具において、
前記プラスチックインサート(13)は、第1の炉で形成された前記固化層の前記キャビティ又はホール(12)内へ、液体状態又は半液体状態でプラスチック材料を供給することにより、少なくとも部分的に得られるものである、
ことを特徴とする統合人工装具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の統合人工装具において、
前記キャビティ又はホール(12)は、前記固化層(11)の内部に向かって延伸していると共に少なくともアンダーカットを生成するか、又は、交互に連結して且つ互いに結合された一連の開口キャビティを有している、
ことを特徴とする人工装具。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の統合人工装具において、
前記金属サポート(30)は、チタニウム及び/又はコバルト及び/又はタンタル及び/又はそれらの合金から形成されている、
ことを特徴とする統合人工装具。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の統合人工装具において、
前記プラスチックインサート(13)は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネートウレタン、及びポリエチレンからなる群より選択されるポリマー材料によって形成されている、
ことを特徴とする統合人工装具。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の統合人工装具において、
前記キャビティ又はホール(12)は、1200mm〜2500mmの範囲かそれ以上の範囲で変動し得る幅サイズを有している、
ことを特徴とする統合人工装具。
【請求項7】
大腿骨、肩若しくは膝の人工装具、又は骨の充填剤若しくは置換、インサート、シェル又はその類のものとして、骨インプラントオペレーションのために利用でき得る統合人工装の形成方法であって、
少なくとも、金属サポートとプラスチック材料からなるインサートとを含んでおり、該プラスチック材料は摩擦表面、つまりインサートを規定するように少なくとも金属サポートの第1の表面に接続されており、調節可能な厚さを有しており、
前記金属サポート(30)は、前記第1の表面の反対側に、前記人工装具又は骨置換が設置される骨の部分に接続されることを意図した第2の表面を含んでおり、
第1のステップと第2のステップとを備え、
前記第1のステップでは、前記第1の表面と前記第2の表面との間の少なくとも中間の緻密層(14)を規定するように前記金属サポート(30)が形成され、前記固化層(11)を規定するように前記第1の表面上にキャビティ又はホール(12)が形成され、第2の表面上には表面孔が設けられ、
前記第2のステップでは、液体状態又は半液体状態でプラスチック材料を供給、流し込み、又は注入して、前記緻密層(14)に到達するまで、前記固化層(11)のキャビティ又はホール(12)内に突き抜け、前記ホール又はキャビティ(12)は内部に延伸し且つ少なくともアンダーカットを生成するか、交互に連結し合って且つ互いに結合された開口キャビティであり、さらに、前記金属サポート(3)と前記第1及び第2の表面は、EBM(Electoron Beam Melting)技術を用いて単一の工程で形成される、
ことを特徴とする統合人工装具の形成方法。
【請求項1】
大腿骨、肩若しくは膝の人工装具、又は骨の充填剤若しくは置換、インサート、シェル又はその類のものとして、骨インプラントオペレーションのために利用でき得る統合人工装であって、
少なくとも、金属サポートとプラスチック材料からなるインサートとを含んでおり、該プラスチック材料は摩擦表面、つまりインサートを規定するように少なくとも金属サポートの第1の表面に接続されており、調節可能な厚さを有しており、
前記金属サポート(30)は、前記第1の表面の反対側に、前記人工装具又は骨置換が設置される骨の部分に接続されることを意図した第2の表面を含んでおり、
前記第1の表面は、実質的に均一な態様で分散されて、且つ、前記インサート(13)を形成する前記プラスチック材料の固定及び固化に適したキャビティ又はホール(12)を有しており、一方で、前記第2の表面は、前記骨の固定を最適化するのに適したポーラス層(16)を含んでおり、そこでは、前記第1の表面と前記第2の表面とは、前記プラスチックインサート(13)を形成する工程における前記プラスチック材料を留める緻密層(14)によって分離されており、さらに、前記第1の表面の前記キャビティ又はホール(12)は、前記第2の表面の孔よりも、いかなる異なる形態の場合において、より大きな形状及びサイズを有している、
ことを特徴とする統合人工装具。
【請求項2】
請求項1に記載の統合人工装具において、
前記プラスチックインサート(13)は、第1の炉で形成された前記固化層の前記キャビティ又はホール(12)内へ、液体状態又は半液体状態でプラスチック材料を供給することにより、少なくとも部分的に得られるものである、
ことを特徴とする統合人工装具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の統合人工装具において、
前記キャビティ又はホール(12)は、前記固化層(11)の内部に向かって延伸していると共に少なくともアンダーカットを生成するか、又は、交互に連結して且つ互いに結合された一連の開口キャビティを有している、
ことを特徴とする人工装具。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の統合人工装具において、
前記金属サポート(30)は、チタニウム及び/又はコバルト及び/又はタンタル及び/又はそれらの合金から形成されている、
ことを特徴とする統合人工装具。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の統合人工装具において、
前記プラスチックインサート(13)は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネートウレタン、及びポリエチレンからなる群より選択されるポリマー材料によって形成されている、
ことを特徴とする統合人工装具。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の統合人工装具において、
前記キャビティ又はホール(12)は、1200mm〜2500mmの範囲かそれ以上の範囲で変動し得る幅サイズを有している、
ことを特徴とする統合人工装具。
【請求項7】
大腿骨、肩若しくは膝の人工装具、又は骨の充填剤若しくは置換、インサート、シェル又はその類のものとして、骨インプラントオペレーションのために利用でき得る統合人工装の形成方法であって、
少なくとも、金属サポートとプラスチック材料からなるインサートとを含んでおり、該プラスチック材料は摩擦表面、つまりインサートを規定するように少なくとも金属サポートの第1の表面に接続されており、調節可能な厚さを有しており、
前記金属サポート(30)は、前記第1の表面の反対側に、前記人工装具又は骨置換が設置される骨の部分に接続されることを意図した第2の表面を含んでおり、
第1のステップと第2のステップとを備え、
前記第1のステップでは、前記第1の表面と前記第2の表面との間の少なくとも中間の緻密層(14)を規定するように前記金属サポート(30)が形成され、前記固化層(11)を規定するように前記第1の表面上にキャビティ又はホール(12)が形成され、第2の表面上には表面孔が設けられ、
前記第2のステップでは、液体状態又は半液体状態でプラスチック材料を供給、流し込み、又は注入して、前記緻密層(14)に到達するまで、前記固化層(11)のキャビティ又はホール(12)内に突き抜け、前記ホール又はキャビティ(12)は内部に延伸し且つ少なくともアンダーカットを生成するか、交互に連結し合って且つ互いに結合された開口キャビティであり、さらに、前記金属サポート(3)と前記第1及び第2の表面は、EBM(Electoron Beam Melting)技術を用いて単一の工程で形成される、
ことを特徴とする統合人工装具の形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−520268(P2013−520268A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554440(P2012−554440)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/IB2011/000407
【国際公開番号】WO2011/138646
【国際公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(512221290)
【氏名又は名称原語表記】RIMACORPORATE SPA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/IB2011/000407
【国際公開番号】WO2011/138646
【国際公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(512221290)
【氏名又は名称原語表記】RIMACORPORATE SPA
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]