絶縁膜の形成方法
【課題】 被処理基板や絶縁膜に損傷が与えられるのを抑制しつつ、被処理基板に良好に絶縁膜を形成することができる絶縁膜の形成方法を提供する。
【解決手段】 電磁波入射面Fを有する真空容器2の内部に被処理基板100を配設する。希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含む第1のガスは、電磁波入射面Fからの距離が10mm未満となる位置から真空容器2の内部に導入し、有機シリコン化合物を含む第2のガスは、電磁波入射面からの距離が10mm以上となる位置から真空容器2の内部に導入する。真空容器2の内部に、電磁波入射面Fから電磁波を入射させることにより真空容器の内部で表面波プラズマを生じさせ、被処理基板100に酸化シリコンを堆積させる。
【解決手段】 電磁波入射面Fを有する真空容器2の内部に被処理基板100を配設する。希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含む第1のガスは、電磁波入射面Fからの距離が10mm未満となる位置から真空容器2の内部に導入し、有機シリコン化合物を含む第2のガスは、電磁波入射面からの距離が10mm以上となる位置から真空容器2の内部に導入する。真空容器2の内部に、電磁波入射面Fから電磁波を入射させることにより真空容器の内部で表面波プラズマを生じさせ、被処理基板100に酸化シリコンを堆積させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体集積回路装置のような半導体装置や液晶表示装置のような表示装置の製造プロセス等で絶縁膜を形成する場合に適用される絶縁膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置や液晶表示装置等の製造プロセスにおいては、有機シリコン化合物をプロセスガスとし、平行平板型の高周波プラズマCVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)装置を用いて、被処理基板上に絶縁膜を形成する方法が知られている。
【0003】
平行平板型の高周波プラズマCVD装置は、真空チャンバ、高周波電源、高周波電極、及びアース電極等を備えている。真空チャンバは、有機シリコン化合物ガスと酸素の混合ガスを導入するガス導入部を有している。
【0004】
この平行平板型の高周波プラズマCVD装置を用いて絶縁膜を形成する場合、以下のようにする。有機シリコン化合物ガス及び酸素ガスを、ガス導入部を介して真空チャンバ内に導入する。高周波電源から13.56MHzの高周波電力を高周波電極に供給することで、真空チャンバ内においてプラズマを発生させる。このようにすることにより、プラズマによって有機シリコン化合物が分解され、この有機シリコン化合物を材料としたシリコン酸化物膜が被処理基板上に形成される(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、上述のような平行平板型の高周波プラズマCVD装置では、真空チャンバ内で発生したプラズマが被処理基板を配設した領域にまで広がってしまうため、被処理基板の表面や被処理基板と絶縁膜との界面等にイオン損傷を与え易いという問題がある。すなわち、プラズマが被処理基板を配設した領域にまで広がると、被処理基板がエネルギーの高い電子に接することとなるため、電子のエネルギーにしたがって増加する傾向のあるシース電界が大きくなる。シース電界が大きくなると、これに伴って被処理基板に入射するイオンのエネルギーが増加するため、結果として、被処理基板の表面や被処理基板と絶縁膜との界面等にイオン損傷が生じ易くなってしまう。
【0006】
このような問題に対して、近年、表面波プラズマを発生させる絶縁膜形成装置を用いることにより、プラズマを局在させて、被処理基板上に絶縁膜を形成する方法が提案されている。この場合、プロセスガスとしては、一般に、シランガス(モノシランガス等)が用いられる。
【0007】
絶縁膜形成装置としては、真空チャンバ、誘電体プレート、ラジアルラインスロットアンテナ、8.3GHzのマイクロ波を発生するマイクロ波発生装置等を備えたものが知られている。真空チャンバは、クリプトンガスと酸素ガスとの混合ガスを導入する第1のガス導入部と、シランガスを導入する第2のガス導入部とを有している。誘電体プレートは、真空チャンバの壁の一部を構成している。ラジアルラインスロットアンテナは、誘電体プレートに沿って設けられている。第1のガス導入部は、第2のガス導入部よりもラジアルラインスロットアンテナ側に設けられている。また、第2のガス導入部は、電子温度が1eV以下となる領域からシランガスが導入されるように、その位置が設定されている。
【0008】
この絶縁膜形成装置を用いて絶縁膜を形成する場合、以下のようにする。クリプトンガスと酸素ガスとの混合ガスを第1のガス導入部を介して真空チャンバ内に導入する。ラジアルラインスロットアンテナより放射された電磁波を、誘電体プレートを通して真空チャンバ内に透過させる。これにより、酸素及びクリプトンが励振して、真空チャンバ内において表面波プラズマが発生する。そして、この表面波プラズマにより、酸素ラジカルが生成される。第2のガス導入部からシランガスを導入し、酸素ラジカルによってシランガスを分解及び反応させる。これにより、被処理基板上に絶縁膜としての酸化シリコン膜が形成される(例えば、非特許文献1参照。)。
【0009】
また、他の絶縁膜形成装置としては、プロセスチャンバ、誘電体隔壁、プラズマ励起ガス用シャワープレート、プロセスガス用シャワープレート、ラジアルラインスロットアンテナ、及び、2.45GHzのマイクロ波を発生するマグネトロン等を備えたものが知られている。誘電体隔壁は、ラジアルラインスロットアンテナの下方に設けられている。プラズマ励起ガス用シャワープレートは、誘電体隔壁の下方に設けられている。プロセスガス用シャワープレートは、プラズマ励起ガス用シャワープレートの下方に設けられている。
【0010】
この絶縁膜形成装置は、以下のようにして使用する。プラズマ励起ガス用シャワープレートに形成された複数の開口部を介して、プラズマ励起ガスとしての希ガスをプロセスチャンバ内に導入する。ラジアルラインスロットアンテナから放射されたマイクロ波を、プラズマ励起ガス用シャワープレートを介して、プロセスチャンバ内に導入する。これにより、希ガスが励振してプラズマが発生する。プロセスガス用シャワープレートに形成された複数の開口部を介して、プロセスガスを供給する。これにより、プロセスガスがプラズマと反応し、被処理基板に所定の処理が施される(例えば、特許文献2参照。)
一方、酸化ハフニウムや酸化ジルコニウムといった金属酸化物は、酸化シリコンよりも誘電率が高いため、絶縁膜の材料として注目されている。酸化ハフニウムや酸化ジルコニウムといった金属酸化物からなる膜(以下、金属酸化膜という)を形成する方法としては、従来、有機金属気相成長法(MOCVD法)、スパッタリング法、又は、原子層堆積法(ALD法)等が知られている。
【0011】
しかしながら、有機金属気相成長法では、原料となる有機金属化合物ガスを、500℃〜700℃に加熱した被処理基板で分解させて膜を成長させるため、ガラス基板やプラスチック基板のように比較的融点の低い被処理基板への適用が困難である。また、スパッタリング法では、ターゲットから反跳した高速中性粒子が被処理基板に衝突するため、被処理基板にダメージを与え易い。さらに、原子層堆積法では、原子層を1層ずつ堆積させていくため、成膜速度が非常に遅い。
【0012】
このような問題に対して、近年、プラズマを用いて酸化ジルコニウム膜を形成する方法が提案されている。まず、テトラプロポキシジルコニウム(Zr(OC3H7)4)ガスと酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを用意する。この時、混合ガス中の酸素ガスとアルゴンガスとの比を1:5とする。被処理基板が設けられたチャンバ内に混合ガスを導入する。チャンバ内にプラズマを発生させて、Zr(OC3H7)4ガス及び酸素ガスをプラズマ放電させる。これにより、被処理基板上に酸化ジルコニウム膜が形成される。(例えば、非特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平5−345831号公報(段落0013〜段落0016、図1)
【特許文献2】特開2002−299241号公報(段落0033〜段落0049、図1)
【非特許文献1】Hiroki Tanaka et al.“High−Quality Silicon Oxide Film Formed by Diffusion Region Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition and Oxygen Radical Treatment Using Microwave−Excited High−Density Plasma”Jpn.J.Appl.Phys.Vol.42(2003)pp1911−1915
【非特許文献2】森岡 怜司、他2名、“金属有機材料を前駆体としたプラズマCVDによる高誘電率ジルコニウム酸化膜の形成”、平成15年1月29日、第20回「プラズマプロセッシング研究会」(社団法人 応用物理学会 プラズマエレクトロニクス分科会 主催)予稿集、p317〜p318
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、プロセスガスとして有機シリコン化合物ガスを使用すると、シランガスを使用した場合と比べて被覆性の良好な酸化シリコン膜が得られ易い。これは、有機シリコン化合物がシランと比べて分子容積が大きいためである。したがって、有機シリコン化合物がプラズマによって分解されてなる中間生成物もまた比較的分子容積が大きく、その立体効果により被処理基板の表面でマイグレーションしながら、この被処理基板の表面に比較的均一に付着する。したがって、被覆性の良好な酸化シリコン膜となる。
【0014】
しかしながら、有機シリコン化合物は、その骨格にアルキル基等を含んでいるため、有機シリコン化合物を過度に分解すると、炭素骨格部分に含まれる炭素原子が、形成される酸化シリコン膜内に不純物として混入し易くなってしまう。すなわち、非特許文献1に記載の技術において用いられているシランガスよりも、過度な分解による弊害が大きいという課題がある。
【0015】
一方、非特許文献2に記載の技術では、混合ガス中の酸素ガスの分圧が低く抑えられているため、形成される金属酸化膜中に酸素欠損が生じやすいという問題がある。
【0016】
本発明は、このような事情にもとづいてなされたもので、被処理基板やこの被処理基板に形成される絶縁膜に損傷が与えられるのを抑制しつつ、被処理基板に良好に絶縁膜を形成することができる絶縁膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の形態に係る絶縁膜の形成方法は、電磁波が入射される電磁波入射面を有する処理容器の内部に、被処理基板を配設する工程と、
希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含む第1のガスを、前記電磁波入射面からの距離が10mm未満となる位置から真空の前記処理容器の内部に導入させる工程と、
有機金属化合物を含む第2のガスを、前記電磁波入射面からの距離が10mm以上となる位置に設けられ、被処理基板より大きい環状の下部ガス導入管から、前記第1のガスと分離して前記処理容器の内部に導入させる工程と、
前記処理容器の内部に前記電磁波入射面から電磁波を入射させることにより、
前記処理容器の内部で前記電磁波入射面近傍に前記第1のガスによる表面波プラズマを生じさせ第1のガスのラジカルを生成させる工程と、
前記ラジカルが拡散流として前記第2のガス雰囲気に到達し前記第2のガスと反応して前記被処理基板に金属酸化物を堆積させる工程と、
を有し、下部ガス導入管を80℃乃至200℃に直接加熱することにより膜厚が安定した絶縁膜を形成することを特徴とする。
【0018】
本発明の第2の形態に係る絶縁膜の形成方法は、前記第1のガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノンのうちの少なくとも1種の希ガスを含んでいることを特徴とする。
【0019】
本発明の第3の形態に係る絶縁膜の形成方法は、前記第1のガスが酸素ガスを含んでいるとともに、前記酸素ガスを前記処理容器の内部に供給するときの流量が、前記第2のガスを前記処理容器の内部に導入させるときの流量よりも多くなるように設定されていることを特徴とする。
【0020】
処理容器の内部に電磁波入射面から電磁波を入射させると、第1ガス及び第2のガスが励振されてプラズマが生じ、電磁波入射面近傍のプラズマ内の電子密度が増加する。電磁波入射面近傍のプラズマ内の電子密度が増加していくと、電磁波はプラズマ内を伝播することが困難になり、このプラズマ内で減衰する。したがって、電磁波入射面から離れた領域には電磁波が届かなくなり、第1のガス及び第2のガスが電磁波によって励振される領域は、電磁波入射面の近傍に限られるようになる。この状態が、表面波プラズマが生じている状態である。
【0021】
つまり、表面波プラズマが生じている状態においては、電磁波によるエネルギーが与えられて化合物の電離が生じる領域が電磁波入射面の近傍に局在する。つまり、表面波プラズマは、電磁波入射面からの距離によってその状態が異なる。また、表面波プラズマが生じている状態においては、被処理基板の表面近傍に生じるシースの電界が小さい。そのため、被処理基板へのイオンの入射エネルギーが低く、イオンによる被処理基板の損傷が少ない。
【0022】
表面波プラズマが発生する領域の境界は、電磁波入射面(誘電体窓)と処理容器の内部空間(第1のガスが供給されている領域)との界面である。そして、表面波プラズマが発生している状態において、プラズマのエネルギーが高い領域、すなわち、電磁波が到達して第1及び第2のガスを直接励振させている領域は、表皮厚さによって知ることができる。表皮厚さは、電磁波入射面から電磁波の電界が1/eに減衰する位置までの距離を示しており、その値は電磁波の入射面近傍の電子密度に依存する。
【0023】
つまり、表面波プラズマが発生している状態において、電磁波入射面からの距離が表皮厚さよりも小さい領域では、高密度のプラズマが発生している。また、電磁波入射面からの距離が表皮厚さよりも大きい領域(表皮厚さを外れた領域)では、電磁波は高密度のプラズマによって遮蔽されて到達せず、酸素ラジカルは拡散流として到達する。
【0024】
したがって、処理容器の内部で表面波プラズマを生じさせ、処理容器の内部に配設された被処理基板に絶縁膜を形成するような場合、電磁波入射面からの距離が表皮厚さよりも大きくなるような位置から有機シリコン化合物ガス又は有機金属化合物を含む第2のガスを供給すれば、有機シリコン化合物又は有機金属化合物の過度な分解を抑止でき、しかも、酸素ラジカルと有機シリコン化合物又は有機金属化合物とを効率良く反応させ、被処理基板に、酸素欠損が少なく、均一で、段差被覆性に優れる良好な膜質の絶縁膜(酸化シリコン膜又は金属酸化物膜)を形成することができると考えられる。
【0025】
表皮厚さδは、以下の(1)式で求めることができる。
【数1】
【0026】
ω:電磁波の角振動数
c:真空中の光速(定数)
ne:電子密度
nc:カットオフ密度
カットオフ密度ncは、以下の(2)式で求めることができる。
【数2】
【0027】
ε0:真空中の誘電率(定数)
me:電子の質量(定数)
ω:電磁波の角振動数
e:素電荷(定数)
表面波プラズマの分散関係は、以下の(3)式で示される。
【数3】
【0028】
ω:電磁波の角振動数
c:真空中の光速(定数)
εd:誘電体窓の誘電率
ωp:プラズマの角振動数
プラズマの角振動数ωpは、以下の(4)式で求めることができる。
【数4】
【0029】
e:素電荷(定数)
n0:電子密度
ε0:真空中の誘電率(定数)
me:電子の質量(定数)
電磁波入射面(誘電体窓)とプラズマの境界面を表面波が伝播するには、(3)式の分母が正の値をとる必要がある。そのため、(4)式の関係も含めると、以下の(5)式の関係を満たす必要がある。
【数5】
【0030】
n0:電子密度
ε0:真空中の誘電率(定数)
me:電子の質量(定数)
εd:誘電体窓の誘電率
e:素電荷(定数)
ω:電磁波の角振動数
(5)式を用いて、国内において工業目的の電磁波使用のため、基本波またはスプリアス発射による電界強度の許容値の特例として、最大許容値を定めずに用いられている周波数(無線設備規則第65条、及び郵政省告示第257号)である、2.45GHz、5.8GHz及び22.125GHzに関して、合成石英(比誘電率3.8)及びアルミナ(比誘電率9.9)を用いた場合にプラズマの境界面を表面波が伝播させるのに必要な電子密度n0を求め、そのときの表皮厚さを計算すると表1のようになる。すなわち、2.45GHz以上の周波数において比誘電率が3.8以上の誘電体窓を用い、完全な表面波プラズマ状態にした場合には、表皮厚さは10mm以下になる。
【表1】
【0031】
マイクロ波を用いたプロセスでは、前記の周波数、すなわち2.45GHz、5.8GHz及び22.125GHzの高周波電源が用いられることが多く、誘電体窓の材質としては、石英、あるいはアルミナが一般的である。そのため、石英の誘電体窓を使用し、周波数を2.45GHzとしたときの表皮厚さδ以上、つまり、電磁波入射面から10mm以上離れていれば、電磁波は高密度のプラズマに遮蔽されて到達せず、酸素ラジカルは拡散流として到達すると考えられる。
【0032】
また、本発明者らは、電子温度が2eV以下となるような位置から第2のガスを処理容器の内部に導入すれば、有機シリコン化合物や有機金属化合物が過度に分解されるのを抑制できることを突き止めた。図10は、電磁波入射面からの距離と電子温度との関係を示している。図10に示すように、プラズマを発生させるための第1のガスの種類及び分圧を変化させても、電磁波入射面から10mm以上離れた領域では、電子温度が大凡2eV以下であり、上述の推論と矛盾しないことがわかった。
【0033】
さらに、本発明者らは、電子密度が電磁波入射面の50%以下に減少するような位置から第2のガスを処理容器の内部に導入すれば、有機シリコン化合物や有機金属化合物が過度に分解されるのを抑制できることを突き止めた。図11には、電磁波入射面からの距離と電子密度との関係を示している。図11に示すように、プラズマを発生させるための第1のガスの種類及び分圧を変化させても、電磁波入射面から10mm以上離れた領域では、電子密度は電磁波入射面の50%以下に減少しており、上述の推論と矛盾しないことがわかった。
【0034】
このような結果から、本発明者らは、電磁波入射面から10mm以上離れた位置から第2のガスを処理容器の内部に導入することで、酸素欠損が少なく、均一で、段差被覆性に優れた絶縁膜(シリコン酸化膜又は金属酸化物膜)を、イオン損傷を殆ど与えることなく被処理基板に形成することができることを突き止めた。
【0035】
以上のように、本発明の第1及び第2の形態に係る絶縁膜の形成方法では、表面波プラズマを用いて被処理基板に絶縁膜を形成する絶縁膜の形成方法であって、第1のガスと第2のガスとを分離して処理容器の内部に供給している。詳しくは、希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含む第1のガスを電磁波入射面からの距離が10mm未満となる位置から処理容器の内部に導入させるとともに、有機シリコン化合物を含む第2のガスが前記電磁波入射面からの距離が10mm以上となる位置から処理容器の内部に導入させるようにしている。
【0036】
このように、表面波プラズマを用いることによって、プラズマのエネルギーの高い領域を被処理基板から離れた位置に局在化させることができる。これにより、被処理基板近傍のシース電界が小さくなるため、被処理基板に入射するイオンのエネルギーも減少する。したがって、被処理基板やこの被処理基板に形成される絶縁膜に与えられるイオン損傷を抑制することができる。
【0037】
しかも、電磁波入射面からの距離が10mm未満となる位置から第1のガスを処理容器の内部に導入するようにしている。電磁波入射面からの距離が10mm未満となる領域では、電磁波による電界で電子が直接に加速されるため、電子のエネルギーが大きい。したがって、処理容器内において酸素ラジカルを効率良く生成させることができる。
【0038】
さらに、電磁波入射面からの距離が10mm以上となる位置から第2のガスを処理容器の内部に導入するようにしている。電磁波入射面からの距離が10mm以上となる領域では、電磁波が高密度のプラズマによって遮蔽されるため、有機シリコン化合物や有機金属化合物が過度に分解されるのを抑制することができる。したがって、被処理基板に、酸素欠損が少なく、均一で、段差被覆性に優れる良好な膜質の絶縁膜を形成することができる。
【0039】
また、電磁波入射面から10mm以上離れた位置では、その殆どの場合において、電子温度が2eV以下となる。このように、電子温度の低い領域、すなわち電子のエネルギーが低く、有機シリコン化合物又は有機金属化合物の電子の衝突による過度な分解が抑止される領域で、拡散流として到達する酸素ラジカルと有機シリコン化合物又は有機金属化合物とを反応させ、被処理基板への絶縁膜堆積を行うことで、被処理基板に損傷を殆ど与えることなく、酸素欠損が少なく、均一で、段差被覆性に優れる良好な膜質の絶縁膜を形成することができる。
【0040】
さらに、電磁波入射面から10mm以上離れた位置では、その殆どの場合において、電子密度が電磁波の入射面の50%以下に減少している。このように、電子密度が低い領域、すなわち電子とプロセスガスとの衝突頻度が低く、有機シリコン化合物又は有機金属化合物の電子の衝突による過度な分解が抑止される領域で、拡散流として到達する酸素ラジカルと有機シリコン化合物又は有機金属化合物とを反応させ、被処理基板への絶縁膜堆積を行うことで、被処理基板に損傷を殆ど与えることなく、酸素欠損が少なく、均一で、段差被覆性に優れる良好な膜質の絶縁膜を形成することができる。
【0041】
なお、本発明の第1及び第2の形態に係る絶縁膜の形成方法、及び、後述する、第3の形態に係る絶縁膜形成装置において、「被処理基板」としては、例えば、ガラス基板、石英ガラス基板、セラミックス基板、樹脂基板、又は、シリコンウエハ等の基板を用いることができる。また、「被処理基板」としては、上述のような基板上に、単結晶シリコン、レーザ結晶化や固相結晶化等により形成した多結晶シリコン、微結晶シリコン、又は、アモルファスシリコン等の半導体層が形成されたものを用いてもよい。さらに、「被処理基板」としては、上述のような基板上に、半導体層と絶縁膜とを順不同で積層させたものや、上述のような基板上に、半導体層と絶縁膜とが順不同で積層されてなる部分を有する回路素子や回路素子の一部を形成したもの等を用いてもよい。
【0042】
本発明の第1の形態に係る絶縁膜の形成方法を実施する場合、第2のガスは、有機シリコン化合物として、テトラアルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、ポリメチルジシロキサン、ポリメチルシクロテトラシロキサンのうちの1種以上を含んでいるのが好ましい。このようにすることにより、基板上に膜質の良好な酸化シリコン膜を形成することができる。
【0043】
一方、本発明の第2の形態に係る絶縁膜の形成方法を実現する場合、第2のガスは、有機金属化合物として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、テトラプロポキシジルコニウム、ペンタエトキシタンタル、テトラプロポキシハフニウムのうちのいずれか1種を含んでいるのが好ましい。トリメチルアルミニウム又はトリエチルアルミニウムを選択することで、被処理基板に酸化アルミニウム膜を形成することができる。テトラプロポキシジルコニウムを選択することで、被処理基板に酸化ジルコニウム膜を形成することができる。ペンタエトキシタンタルを選択することで、被処理基板に酸化タンタル膜を形成することができる。テトラプロポキシハフニウムを選択することで、被処理基板に酸化ハフニウム膜を形成することができる。また、酸化ハフニウムや酸化ジルコニウムは、酸化シリコンよりも誘電率が高い。したがって、テトラプロポキシハフニウムやテトラプロポキシジルコニウムを選択することで、酸化シリコン膜よりも絶縁性の良好な絶縁膜を形成することができる。
【0044】
本発明の第1及び第2の形態に係る絶縁膜の形成方法を実施する場合、第1のガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、又はキセノンのうちの少なくとも1種の希ガスを含んでいるのが好ましい。有機シリコン化合物及び有機金属化合物は、その殆どが構成元素中に酸素を含んでいる。そのため、第1のガスには、必ずしも酸素ガスを含ませなくてもよく、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、又はキセノンのうちの少なくとも1種の希ガスを含ませることで、処理容器内において酸素ラジカルを発生させ、被処理基板に絶縁膜を形成することができる。
【0045】
ただし、第1のガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、又はキセノンのうちの少なくとも1種の希ガスと酸素ガスとを含んでいるガスを用いるのがさらに好ましい。このようにすることにより、処理容器内において酸素ラジカルを多く発生させ、被処理基板に酸素欠損の少ない絶縁膜を形成することができる。
【0046】
第1のガスが酸素ガスを含んでいる場合、酸素ガスを処理容器の内部に供給する際の流量が、第2のガスを処理容器の内部に供給する際の流量よりも多くなるように設定するのが好ましい。このようにすることにより、第2のガスが導入される位置よりも下方において、酸素ラジカルを第2のガスよりも多く存在させることができる。したがって、有機シリコン化合物中のシリコン原子や有機金属酸化物中の金属原子の酸化が促進されるので、より酸素欠損の少ない高品質な酸化膜を形成することができる。
【0047】
第3の形態に係る絶縁膜形成装置は、電磁波が入射される電磁波入射面を有し、内部に被処理基板を配設可能な処理容器と、希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含む第1のガスを前記処理容器内に導入させる第1のガス導入部を有し、前記処理容器に設けられた第1のガス導入系と、有機シリコン化合物又は有機金属化合物を含む第2のガスを前記処理容器内に導入させる第2のガス導入部を有し、前記処理容器に設けられた第2のガス導入系とを具備し、前記第1のガス導入部と前記電磁波入射面との間の距離が10mm未満に設定されているとともに、前記第2のガス導入部と前記電磁波入射面との間の距離が10mm以上に設定されており、且つ、前記処理容器の内部に前記第1及び第2のガスによる表面波プラズマが生成可能である。
【0048】
第3の形態に係る絶縁膜形成装置では、第1のガスを導入するための第1のガス導入部と電磁波入射面との間の距離を10mm未満、第2のガスを導入するための第2のガス導入部と前記電磁波入射面との間の距離を10mm以上としている。このようにすることにより、第1のガスをプラズマの密度が比較的高い領域に供給することができる。そのため、処理容器内において酸素ラジカルを効率良く生成させることができる。しかも、有機シリコン化合物又は有機金属化合物を含む第2のガスを、高密度のプラズマによって電磁波が遮蔽されて到達しない領域に供給することができる。そのため、電子の衝突によって有機シリコン化合物や有機金属化合物が過度に分解されるのを抑制することができる。
【0049】
したがって、第3の形態に係る絶縁膜形成装置を用いることで、被処理基板に、酸素欠損が少なく、膜質が良好であって、かつ、段差被覆性に優れた高品質な絶縁膜を形成することができる。
【0050】
ところで、処理容器内において酸素ラジカルをより効率良く生成するためには、誘電体部材近傍の領域、特に表面波プラズマ状態でも電磁波が到達してガスを直接励振している領域、すなわち表皮厚さで示される領域に酸素を供給することが望ましい。つまり、酸素ガスを含む第1のガスを用いる場合、この第1のガスは、表皮厚さで示される領域内に供給するのが好ましい。
【0051】
したがって、本発明の第3の形態に係る絶縁膜の形成方法を実施する場合、酸素ガスを含む第1のガスを用いるとともに、第1のガス導入部と電磁波入射面との間の距離が表面波プラズマの表皮厚さよりも小さくなるような領域に第1のガス導入部を設けるか、或いは、第1のガス導入部を誘電体部材と一体化に形成するのが好ましい。このようにすることにより、電磁波による電界で電子が直接に加速されている領域に酸素を供給することができるため、第1のガス導入系から供給される第1のガスを誘電体部材近傍で効率よく分解させ、酸素ラジカルを効率良く生成することができる。しかも、第1のガス導入系から供給される第1のガスによって誘電体部材近傍で生じた酸素ラジカルを第2のガス導入系から供給される第2のガスと十分に反応させることができる。そのため、酸素欠損が少なく、均一で、段差被覆性に優れる膜質の良好な絶縁膜を、良好な膜形成速度で形成することができる。
【0052】
また、有機シリコン化合物や有機金属化合物は、モノシラン等と比べて沸点が高いことが多い。そのため、上記特許文献2に記載の絶縁膜形成装置を用いて絶縁膜を形成する場合、有機シリコン化合物や有機金属化合物のように沸点が高い化合物をプロセスガスとして採用すると、プロセスガスの一部が液化して、プロセスガス用シャワープレートに形成されたガス放出用の複数の開口部の一部を閉塞させてしまうことがある。このように、プロセスガス用シャワープレートが閉塞されると、プロセスガスが処理容器内に安定に供給されなかったり、その供給が不均一となったりすることがある。
【0053】
したがって、特許文献2に記載の絶縁膜形成装置では、有機シリコン化合物ガスの供給量が不均一になり易い。絶縁膜の形成速度は、供給されるプロセスガスの量と関係するため、プロセスガスが処理容器内に安定に供給されなかったり、その供給量が不均一であったりすると、膜厚の均一性が損なわれてしまう。
【0054】
そのため、本発明の第3の形態に係る絶縁膜の形成方法を実施する場合、第2のガス導入系は、加熱手段を備えているのが好ましい。このようにすることにより、有機シリコン化合物や有機金属化合物を含む第2のガスが第2のガス導入系のガス導入部から均一に導入されるような所定の温度に保つことができる。
【0055】
第2のガス導入系が加熱手段を備えている場合、この加熱手段としては、被処理基板を80℃乃至200℃程度の温度に保持可能なものを採用するのが好ましい。第2のガス導入部を80℃乃至200℃の温度に保持することにより、第2のガスとして、有機シリコン化合物や有機金属化合物といった沸点の高いガスを用いる場合にも、第2のガスの液化によるガス供給量の変動が抑止され、膜厚の安定した絶縁膜を形成することができる。
【0056】
加熱手段は、例えば、第2のガス導入系と熱的に接続した状態で、処理容器の外部に設けるのが好ましい。このようにすることにより、構造を複雑にすることなく、第2のガス導入系の加熱を行うことができる。また、加熱手段は、例えば、第2のガス導入系の構造壁内に循環路を設けるとともに、この循環路に高温流体(高温気体又は高温液体)を流通させることで構成してもよい。この構成によれば、高温流体を構造壁内に循環させることで、第2のガス導入系全体にすばやく熱エネルギーを伝えることができる。したがって、第2のガス導入系を均等に加熱することができる。加熱手段としては、例えば、ヒータを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0057】
さらに、特許文献2に記載の絶縁膜形成装置では、プロセスガスは、プロセスガス用シャワープレートの一端側からこのプロセスガス用シャワープレート内に導入され、このプロセスガス用シャワープレート内を流通しながら、このプロセスガス用シャワープレートに形成されたガス放出用の複数の開口部から放出するように構成されている。そのため、シャワープレートに形成されたガス放出用の複数の開口部から放出されるプロセスガスの量は、有機シリコン化合物ガスが導入される一端側が多く、この一端側から離れるにつれて少なくなる。上述のように、プロセスガスが処理容器内に安定に供給されなかったり、その供給量が不均一であったりすると、膜厚の均一性が損なわれてしまう。
【0058】
そのため、本発明の第3の形態に係る絶縁膜の形成方法を実施する場合、例えば、第2のガス導入部を、複数のガス噴出口を有するシャワープレートとするとともに、複数のガス噴出口の単位面積あたりの開口比率を、シャワープレート内のガス流の上流側で、このガス流に対するガス噴出口のコンダクタンス(物理的抵抗の逆数)が小さく、シャワープレート内のガス流の下流側で、このガス流に対するガス噴出口のコンダクタンスが大きくなるように設定するのが好ましい。具体的には、例えば、複数のガス噴出口の単位面積あたりの開口比率を、シャワープレート内のガス流の上流側が小さく、ガス流の下流側が大きくなるように設定するとよい。更に好ましくは、ガス噴出口のコンダクタンス(ガス噴出口の単位面積あたりの開口比率)は、シャワープレートから処理容器の内部に供給される第2のガスの供給量の分布が実質的に均一となるように設定するとよい。このようにすることにより、第2のガスを処理容器内に均一性良く供給することができるため、被処理基板状に均一性の良好な絶縁膜を形成することができる。
【0059】
また、第2のガス導入部を、開口部を備えた隔壁で区切られたシャワープレートとする場合、シャワープレート内のガス流の上流側で、このガス流に対する隔壁のコンダクタンスが大きく、シャワープレート内のガス流の下流側で、このガス流に対する隔壁のコンダクタンスが小さくなるように、シャワープレートの内部にガスの流れを調整する複数の隔壁を設けるとともに、隔壁で区分される各領域に夫々対応させて、夫々ガス噴出口を設けるのが好ましい。具体的には、例えば、複数の隔壁を、シャワープレート内のガス流の上流側で低く、ガス流の下流側が高くなるように設定するとよい。更に好ましくは、隔壁の大きさや位置は、シャワープレートから供給される第2のガスの供給量の分布が実質的に均一となるように設定するとよい。このようにすることにより、シャワープレート内での第2のガスの流れが制御されるため、第2のガスを処理容器内に均一性良く供給することが可能となり、被処理基板状に均一性の良好な絶縁膜を形成することができる。
【0060】
さらに、第2のガス導入部を、複数のガス噴出口を有するシャワープレートとする場合、シャワープレートの内部に、第2のガスが導入されるガス導入口を有する第1のガス室と、複数のガス噴出口を有する第2のガス室とを設けるとともに、第1のガス室と第2のガス室との間でガスの流れを調整する複数の開口部を有する拡散板を介して接続し、且つ、複数の開口部の単位面積あたりの開口比率を、シャワープレート内のガス流の上流側で、このガス流に対する開口部のコンダクタンスが小さく、シャワープレート内のガス流の下流側で、このガス流に対する開口部のコンダクタンスが大きくなるように設定するのが好ましい。具体的には、例えば、複数の開口部の単位面積あたりの開口比率を、シャワープレート内のガス流の上流側が小さく、ガス流の下流側が大きくなるように設定するとよい。更に好ましくは、開口部のコンダクタンス(開口部の単位面積あたりの開口比率)は、シャワープレートから処理容器の内部に供給される第2のガスの供給量の分布が実質的に均一となるように設定するとよい。このようにすることにより、シャワープレート内での第2のガスの流れが制御されるため、第2のガスを処理容器内に均一性良く供給することが可能となり、被処理基板状に均一性の良好な絶縁膜を形成することができる。
【0061】
また、第3の形態に係る絶縁膜形成装置を実施する場合、第2のガス導入系が処理容器に取り付けられている取り付け部分を誘電体によって形成するとよい。このような構成をとることにより、金属などの導体を用いた場合に比べて、放電初期のプラズマが表面波プラズマ状態に至るまでの過渡状態において、第2のガス導入部が電磁界やプラズマに与える影響を低減し、安定したプラズマ放電が実現できる。
【0062】
さらに、第3の形態に係る絶縁膜形成装置を実施する場合、アンテナは、1以上の導波管型スロットアンテナを有しているのが好ましい。このような構成をとることにより、誘電損失が少なく大電力に耐えるアンテナが得られるため、絶縁膜形成装置の大型化が容易となる。大型液晶表示装置に適用される大型基板に絶縁膜を形成するような絶縁膜形成装置とする場合には、複数の導波管スロットアンテナを、誘電体部材の外面と対向するように互いに並べて配設するのが更に好ましい。なお、アンテナは、導波管スロットアンテナを有するものに限定されるものではなく、電磁波を処理容器に向けて放射することが可能なものであればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
以下、本発明の第1の実施形態を、図1乃至図3を参照して説明する。本実施形態では、本発明の絶縁膜の形成方法の一実施形態、及び、絶縁膜形成装置の一実施形態について説明する。
【0064】
図1は、絶縁膜形成装置の一例を示している。本実施形態の絶縁膜形成装置1は、処理容器としての真空容器2、1つ以上例えば9つの誘電体部材3、基板支持台4、ガス排出系5、第1のガス導入系としての上部ガス導入系6、第2のガス導入系としての下部ガス導入系7、高周波電源8、導波管9、1つ以上例えば9つの導波管スロットアンテナ10を有するアンテナ、及び、加熱手段11等を備えている。
【0065】
前記真空容器2は、上壁2a、底壁2b、及び、上壁2aの周縁と底壁2bの周縁とを繋ぐ周壁2cを有して、内部を真空状態或いはその近傍にまで減圧することが可能な強度に形成されている。上壁2a、底壁2b、及び周壁2cを形成する材料としては、例えばアルミニウム等の金属材料を用いることができる。
【0066】
上壁2aには、真空容器2の壁の一部を構成するように、誘電体部材3が設けられている。この誘電体部材3もまた、真空容器2の内部を真空状態或いはその近傍にまで減圧することが可能な強度に形成されている。誘電体部材3を形成する誘電体材料としては、例えば合成石英等を用いることができる。
【0067】
詳しくは、図1及び図2に示すように、上壁2aは、1つ以上例えば9つの開口部12を有している。これら開口部12は、夫々、横断面略T字状の細長な空間を形成している。これら開口部12は、夫々所定の間隔を置いて互いに平行に設けられている。1つ以上例えば9つの誘電体部材3は、夫々、開口部12に嵌合するような横断面略T字状の細長部材とされている。これら誘電体部材3は、対応する開口部12に嵌合させることで、当該開口部12を夫々気密に閉塞している。つまり、真空容器2の上壁2aには、真空容器2の壁の一部を構成するように、複数の誘電体部材3が互いに並べて設けられている。そして、上壁2aは、真空容器2の壁の一部であるとともに、誘電体部材3を支持する梁としても機能している。以下、誘電体部材を誘電体窓3と言う。
【0068】
また、前記真空容器2は、図示しないが、上壁2aと誘電体窓3との間を封止する封止機構を有している。封止機構は、例えば、開口部12を規定する壁にその周方向に沿って設けられた溝と、この溝に沿って設けられたO−リングとを有している。この封止機構により、開口部12を規定する壁と誘電体窓3との間がシールされている。
【0069】
真空容器2の内部には、被処理基板100を支持する前記基板支持台4が設けられている。本実施形態では、この基板支持台4は、例えば、被処理基板100が後述するガス噴出口22aの下方25mmの位置に保持されるように、その配設位置が設定されている。
【0070】
前記高周波電源8としては、例えば、2.45GHzの電源を用いることができる。真空容器2の上方には、複数の誘電体窓3に対応するように、複数の導波管スロットアンテナ10が夫々設けられている。これら導波管スロットアンテナ10は、夫々、管壁の一部にスリット状の開口部10aを設けたものであり、当該開口部10a近傍で起きる電磁界結合を利用して電磁波を放射することで、夫々がアンテナとして機能する。複数の導波管スロットアンテナ10は、複数の誘電体窓3の外面と夫々対向するように互いに並べて配設されている。互いに隣り合う導波管スロットアンテナ10は各々接続されている。
【0071】
導波管スロットアンテナ10は、一般に金属で構成されるため、誘電体で形成されたアンテナと比べて誘電損失が少なく、大電力に対する耐性が高いという特長がある。また、導波管スロットアンテナ10は、構造が単純で放射特性の設計が比較的正確に行えるため、大型基板用の絶縁膜形成装置に好適である。特に、複数の導波管スロットアンテナ10を互いに並べて配置した本実施形態の絶縁膜形成装置1は、大型の液晶表示装置等に用いる角型で面積の大きい基板に絶縁膜を形成する場合に好適である。
【0072】
複数の導波管スロットアンテナ10のうちの1つ、例えば、最も高周波電源8側の導波管スロットアンテナ10は、導波管9を介して高周波電源8と接続されている。これにより、高周波電源8が発生した電磁波は、導波管9によって、各導波管スロットアンテナ10に導かれる。つまり、この絶縁膜形成装置1では、導波管スロットアンテナ10に導かれた電磁波は、誘電体窓3を透過して真空容器2の内部に入射することとなる。したがって、誘電体窓3の内面が電磁波入射面Fとなる。
【0073】
また、真空容器2には、前記ガス排出系5と、前記上部ガス導入系6と、前記下部ガス導入系7とが設けられている。ガス排出系5は、真空容器2の内部と連通するようにこの真空容器2に設けられたガス排出部5a、及び、真空排気システム5b等を有している。真空排気システム5bは、例えば、ターボ分子ポンプ等を用いることができる。この真空排気システム5bを稼動させることにより、真空容器2の内部を所定の真空度に達するまで排気することができる。
【0074】
上部ガス導入系6は、希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含む第1のガスを真空容器2の内部に導入するためのものである。本実施形態の絶縁膜形成装置1では、上部ガス導入系6は、例えば、第1のガス導入部としての上部ガス導入管21を有している。
【0075】
上部ガス導入管21は、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン等の金属、或いは酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の誘電体によって形成されている。なお、上部ガス導入管21が電磁界やプラズマに影響を与える影響を考慮すると、上部ガス導入管21は、誘電体材料で形成するのが好ましい。しかしながら、管の形成する際の加工を考慮すると、上部ガス導入管21は、金属材料で形成する方が安価で容易である。そのため、上部ガス導入管21を金属材料で形成するような場合には、上部ガス導入管21の外面に絶縁膜を形成しておくとよい。
【0076】
上部ガス導入管21は、図2に示すように、誘電体窓3が形成されている領域を避けて、真空容器2の上壁2a(梁)の内面に沿って設けられている。詳しくは、上部ガス導入管21は、複数の配管部21bと1つの延出部21cとを有している。複数の配管部21bは、真空容器2の上壁2a(梁)の内面に沿うように互いに平行に配管されている。延出部21cは、これら配管部21bと直交するように配管されているとともに、これら配管部21bを互いに連通させている。この延出部21cの両端は、真空容器2の周壁2cを介して、真空容器2の外方に延出している。延出部21cの両端又は一端には、上記第1のガスを収容する第1のガスシリンダ(図示せず)を着脱自在に取り付けることができるようになっている。
【0077】
これら配管部21bには、夫々、複数のガス噴出口21aが長手方向に略等間隔で設けられている。したがって、複数のガス噴出口21aは、略同一面上に位置することとなる。これらガス噴出口21aは、電磁波入射面Fからの距離L1が表面波プラズマの表皮厚さδよりも小さくなる位置に設けられている。本実施形態では、これらガス噴出口21aが形成されている仮想平面F1と電磁波入射面Fとの距離L1が10mm未満、例えば、3mmとなるように、上部ガス導入管21が形成されており、上部ガス導入管21を配管することで、複数のガス噴出口21aが電磁波入射面Fの下方3mmの位置に設けられるようになっている(図1参照)。
【0078】
下部ガス導入系7は、有機シリコン化合物又は有機金属化合物を含む第2のガスを真空容器2の内部に導入するためのものである。本実施形態の絶縁膜形成装置1では、下部ガス導入系7は、例えば、第2のガス導入部としての下部ガス導入管22を有している。
【0079】
下部ガス導入管22は、上部ガス導入部と同様に、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン等の金属、或いは酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の誘電体によって形成されている。ところで、放電初期のプラズマが表面波プラズマ状態に至るまでの間のような過渡状態では、電磁波は下部ガス導入系7まで到達する。そのため、下部ガス導入管22を金属材料によって形成すると、上記過渡状態において、下部ガス導入系7が電磁界やプラズマに影響を与える場合がある。そのため、下部ガス導入管22が電磁界やプラズマに影響を与える影響を考慮すると、下部ガス導入管22は、誘電体材料で形成するのが好ましい。下部ガス導入管22を金属材料で形成するような場合には、下部ガス導入管22の外面に絶縁膜を形成しておくのが好ましい。
【0080】
下部ガス導入管22は、図3に示すように、環状部22bと一対の延出部22cとを有している。環状部22bは、被処理基板100の外周よりも一回り大きく形成されている。各延出部22cは、環状部22bと連通されている。各延出部22cの一端は、真空容器2の周壁2cを介して、真空容器2の外方に延出している。少なくとも一方の延出部22cの一端には、上記第2のガスを収容する第2のガスシリンダ(図示せず)を着脱自在に取り付けることができるようになっている。
【0081】
環状部22bには、複数のガス噴出口22aが長手方向に略等間隔で設けられている。これらガス噴出口22aは、電磁波入射面Fからの距離L2が表面波プラズマの表皮厚さδよりも大きくなる位置に設けられている。本実施形態では、これらガス噴出口22aが形成されている仮想平面F2と電磁波入射面Fとの距離L2が10mm以上、例えば、30mmとなるように、下部ガス導入管22が形成されており、下部ガス導入管22を配設することで、複数のガス噴出口22aが電磁波入射面Fの下方30mmの位置に設けられている(図1参照)。
【0082】
ところで、第2のガスに含まれる有機シリコン化合物ガスや有機金属化合物ガスは、モノシラン等と比べて沸点が高いため、液化し易い。そのため、第2のガスを安定して真空容器2の内部に導入するためには、下部ガス導入系7を適切な温度、すなわち80℃から200℃程度に保つのが望ましい。そのため、本実施形態の絶縁膜形成装置1では、下部ガス導入系7に加熱手段11を設けている。加熱手段11は、例えば、ヒータ13を有している。
【0083】
具体的には、ヒータ13は、例えば、下部ガス導入管22の各延出部22cにその外周面に設けられている。このようにすることにより、下部ガス導入管22を構成する材料の熱伝導によって下部ガス導入系7全体に熱を伝えることができる。したがって、加熱手段11を真空容器2内に設置する場合に比べて簡単な構成で下部ガス導入系7を適切な温度に保つことができる。なお、下部ガス導入管22を構成する材料の熱伝導によって下部ガス導入系7全体に熱を伝えるような構成の場合には、下部ガス導入管22は、窒化アルミニウム等のように、熱伝導係数の大きい材料で形成するのが望ましい。
【0084】
次に、絶縁膜形成装置1を用いた絶縁膜の形成方法の一例を説明する。本実施形態では、第1のガスとして酸素ガスを用いるともに、第2のガスとしてテトラアルコキシシランの一種であるテトラエトキシシランを用いて、被処理基板100に絶縁膜101を形成する例について説明する。
【0085】
基板支持台4上に被処理基板100を配置する。ガス排出系5を駆動させ、真空容器2内を実質的に真空とする。真空容器2内のガス圧が80Paとなるように、上部ガス導入系6から、真空容器2内に酸素ガスを400SCCMの流量で供給するとともに、下部ガス導入系7から、真空容器2内にテトラエトキシシランガスを12SCCMの流量で供給する。このとき、加熱手段11によって、下部ガス導入系7を適切な温度(80℃から200℃程度)に保っておく。
【0086】
高周波電源8をONにする。これにより、2.45GHzの電磁波は、導波管9を介して導波管スロットアンテナ10に導かれ、導波管スロットアンテナ10から誘電体窓3に向けて電力密度3W/cm2で照射されるようになる。
【0087】
2.45GHzの電磁波は、誘電体窓3を介して真空容器2内に照射される。これにより、酸素ガスが励振されてプラズマが生じ、電磁波入射面F近傍のプラズマ内の電子密度が増加する。電磁波入射面F近傍のプラズマ内の電子密度が増加していくと、電磁波はプラズマ内を伝播することが困難になり、このプラズマ内で減衰する。したがって、電磁波入射面Fから離れた領域には電磁波が届かなくなる。つまり、表面波プラズマが生じる。酸素ガスは、電磁波入射面Fとの距離L1が3mmとなる位置、すなわち、電磁波入射面Fからの距離L1が表皮厚さ δ よりも小さい領域から真空容器2内に導入されているため、表面波プラズマが生じている状態において、高密度なプラズマにより酸素分子が励振され、効率良く酸素ラジカルが生成される。
【0088】
一方、テトラエトキシシランガスは、電磁波入射面Fとの距離L2が30mmとなる位置、すなわち、電磁波入射面Fからの距離L2が表皮厚さよりも大きい領域から真空容器2内に導入されている。したがって、テトラエトキシシランガスが真空容器2内に導入されている領域には、電磁波は高密度のプラズマに遮蔽されて到達しないため、テトラエトキシシランが電磁波によって過度に分解されるのを抑制できる。また、電磁波入射面Fとの距離L1が30mmとなる位置であっても、酸素ラジカルは拡散流として到達するため、テトラエトキシシランと酸素ラジカルとは効率良く反応し、テトラエトキシシランの分解は促進される。したがって、被処理基板100の表面に、酸化シリコンが堆積する。テトラエトキシシランは、モノシラン等と比べて分子容積の大きい化合物であるため、その立体効果により被処理基板100の表面でマイグレーションしながら、この被処理基板100の表面に比較的均一に付着する。したがって、被処理基板100に膜質の良好な絶縁膜(酸化シリコン膜)101が形成される。
【0089】
このような条件下では、29nm/minの形成速度で被処理基板100に絶縁膜101を形成することができた。また、形成された絶縁膜101は、2MV/cmの電界を印加した時のリーク電流が2×10−10A/cm2、固定電荷密度が2×1011/cm2以下であった。この結果から、本実施形態の絶縁膜の形成方法では、リーク電流及び固定電荷密度とも低く抑制することができ、しかも、絶縁膜101の形成速度も良好であることがわかった。
【0090】
図10は、表面波プラズマにおける電子温度と電磁波入射面Fからの距離との関係を示している。電磁波入射面Fからの距離が10mm付近で電子温度が急激に変化しているのは、電磁波が到達し電子が直接励振されている領域(すなわち表皮厚さδ内の領域)と、電子がほとんど励振されない領域(すなわち表皮厚さδから外れた領域)とでは、電子温度に差が生じるためであると考えられる。この結果から、表面波プラズマ状態が維持される条件下では、表皮厚さδは最大でも10mm程度であることがわかった。
【0091】
図11は、表面波プラズマにおける電子密度と電磁波入射面Fからの距離との関係を示している。表面波プラズマでは前述のように電磁波によって励振される領域が局在化しているため、電子密度は電磁波入射面Fから遠ざかるに従って低下する。そのため、電磁波入射面Fから10mm程度離れた位置での電子密度は、電磁波入射面Fでの電子密度の50%以下となることがわかった。なお、この結果から、酸素は電子を取り込み易いため、100%のアルゴンでプラズマを発生させた場合に比べて、酸素を混合すると電子密度が低下することもわかった。
【0092】
以上のように、本実施形態の絶縁膜の形成方法によれば、電磁波が入射される電磁波入射面Fを有する真空容器2の内部に被処理基板100を配設する工程と、希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含む第1のガスとしての酸素ガスを、電磁波入射面Fからの距離L1が10mm未満となる位置から真空容器2の内部に導入させるとともに、有機シリコン化合物としてのテトラエトキシシランガスを含む第2のガスを、電磁波入射面Fからの距離L2が10mm以上となる位置から、第1のガスと分離して、真空容器2の内部に導入させる工程と、真空容器2の内部に電磁波入射面Fから電磁波を入射させることにより、真空容器2の内部で第1及び第2のガスによる表面波プラズマを生じさせ、被処理基板100に酸化シリコンを堆積させる工程とを有している。したがって、被処理基板100やこの被処理基板100に形成される絶縁膜101に損傷が与えられるのを抑制しつつ、被処理基板100に良好に絶縁膜101を形成することができる。
【0093】
なお、本実施形態の絶縁膜の形成方法では、第1のガスとして酸素ガス、第2のガスとしてテトラエトキシシランガスを採用したが、第1及び第2のガスはこれに限定されるものではない。
【0094】
第1のガスは、酸素ガスに限定されるものではなく、希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含むガスを採用すればよい。第1のガスとしては、例えば、酸素と、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンのうちの1以上の希ガスと混合ガスを用いることができる。酸素へのヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの添加は、10%から99%までの広い添加比率で可能であり、その添加比率によって絶縁膜の形成速度を増加させることができる。
【0095】
また、第1のガスとして、酸素ガスを含むガスを採用した場合、酸素ガスを真空容器2の内部に供給する時の流量を、第2のガスを真空容器2の内部に供給する時の流量よりも多くなるようにすることで、有機シリコン化合物中のシリコン原子や有機金属酸化物中の金属原子の酸化が促進されるため、より酸素欠損の少ない高品質な酸化膜を形成することができる。
【0096】
第2のガスとしては、有機シリコン化合物又は有機金属酸化物を含むガスを採用すればよい。このようにすることにより、被処理基板100やこの被処理基板100に形成される絶縁膜に損傷が与えられるのを抑制しつつ、被処理基板100に良好に絶縁膜を形成することができる。
【0097】
また、有機シリコン化合物としては、例えば、テトラアルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、ポリメチルジシロキサン、ポリメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。有機金属化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、テトラプロポキシジルコニウム、ペンタエトキシタンタル、テトラプロポキシハフニウム等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0098】
また、本実施形態の絶縁膜形成装置1によれば、内部に被処理基板100を配設可能な真空容器2と、電磁波を発生させるための高周波電源8と、電磁波を真空容器2に向けて放射するアンテナと、内面に電磁波入射面Fを有し、真空容器2の壁の一部を構成するように真空容器2に設けられ、アンテナから放射された電磁波を真空容器の内部に透過させる誘電体窓3と、希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含む第1のガスとしての酸素ガスを真空容器2内に導入する上部ガス導入管21を有し、真空容器2に設けられた上部ガス導入系6と、有機シリコン化合物又は有機金属化合物を含む第2のガスを真空容器2内に導入する下部ガス導入管22を有し、真空容器2に設けられた下部ガス導入系7とを具備している。そして、上部ガス導入管21が下部ガス導入管22よりも電磁波入射面F側に設けられているとともに、下部ガス導入管22のガス噴出口22aと電磁波入射面Fとの間の距離L2を10mm以上離している。この絶縁膜形成装置1を用いることで、被処理基板100やこの被処理基板100に形成される絶縁膜に損傷が与えられるのを抑制しつつ、被処理基板100に良好に絶縁膜を形成することができる。
【0099】
しかも、本実施形態の絶縁膜形成装置1は、アンテナが、1以上の導波管スロットアンテナ10を有しているため、誘電損失が少なく大電力に耐えることができる。さらに、複数の導波管スロットアンテナ10を、複数の誘電体窓3の外面と夫々対向させ、且つ、互いに並べて配設しているので、大型の液晶表示装置等に用いる角型で面積の大きい基板であっても絶縁膜を形成することができる。
【0100】
以下、本発明の第2の実施形態を、図4及び図5を参照して説明する。本実施形態では、絶縁膜形成装置の一実施形態について説明する。
【0101】
本実施形態の絶縁膜形成装置1は、下部ガス導入系7及び加熱手段11が第1の実施の形態で説明した絶縁膜形成装置1と異なっているが、他の構成は上述した第1の実施形態の絶縁膜形成装置1と同じであるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
【0102】
下部ガス導入系7は、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン等の金属、或いは、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の誘電体により形成されている。なお、下部ガス導入系7の材料として誘電体を用いるのが望ましいことは、第1の実施形態の絶縁膜形成装置1と同様である。
【0103】
下部ガス導入系7は、第1のガス導入部(下部ガス導入部)としてのシャワープレート30を有している。図4に示すように、シャワープレート30は、互いに対向する一対の板材31a,31bを有して偏平な箱状に形成されており、内部空間S1に第2のガスが流通されるようになっている。シャワープレート30は、内部空間S1を開放させる開口部32を有している。また、真空容器2の周壁2cには、内部空間S1を真空容器2の外方に開放するための開口部33が形成されている。したがって、シャワープレート30の内部空間S1は、開口部32と開口部33の壁を介して、真空容器2の外方に開放している。第2のガスは、開口部33及び開口部32を介して、シャワープレート30の内部空間S1に導入される。このシャワープレート30は、真空容器2を上側の部屋と下側の部屋とに分断する大きさに形成されており、基板支持台4を上方から覆うように設けられている。
【0104】
図5に示すように、このシャワープレート30は、第1のガスや酸素ラジカルを上側の部屋と下側の部屋とで流通させるための多数の貫通孔35が設けられている。さらに、このシャワープレート30には、下側の板材31bの壁に多数のガス噴出口36が設けられている。
【0105】
さらに、このシャワープレート30には、加熱手段11が設けられている。加熱手段11は、高温媒体循環器34を有している。高温媒体循環器34は、ポンプ34a、循環路34b、ヒータ(図示せず)、及び、高温流体等を有して構成されている。高温流体は、例えば、空気や、窒素、アルゴン、クリプトン、キセノン等のガス、或いは、水、エチレングリコール、鉱油、アルキルベンゼン、ジアリールアルカン、トリアリールジアルカン、ジフェニル−ジフェニルエーテル混合体、アルキルビフェニル、アルキルナフタレン等の液体から選択すればよい。
【0106】
高温流体(高温気体又は高温液体)を循環させる循環路34bは、シャワープレート30の内部に設けられている。なお、上記循環路は、第1のガスを流通させる内部空間S1からは隔離されている。この高温媒体循環器34では、ヒータで高温流体を加熱するとともに、ポンプ34aを稼動させて高温流体をシャワープレート30の内部に流通させることによって、下部ガス導入系7を80℃乃至200℃程度の温度に保つように構成されている。
【0107】
このように下部ガス導入系7を高温媒体の循環によって加熱すると、下部ガス導入系7にすばやく熱エネルギーが伝えられるとともに、下部ガス導入系7を均等に加熱することができる。そのため、有機シリコン化合物ガスや有機金属化合物ガスを含むガスを使用して絶縁膜を形成する際に、有機シリコン化合物ガスや有機金属化合物ガスの液化によるガス供給量の変動を抑止することができる。
【0108】
以上のように、本実施形態の絶縁膜形成装置1を用いれば、有機シリコン化合物ガスや有機金属化合物ガスの液化によるガス供給量の変動を抑止することができるため、被処理基板100に絶縁膜101を形成する際において、良好な膜厚制御性及び膜厚均一性を実現することができる。
【0109】
以下、本発明の第3の実施形態を、図6を参照して説明する。本実施形態では、絶縁膜形成装置の一実施形態について説明する。
【0110】
本実施形態の絶縁膜形成装置1は、上部ガス導入系6及び下部ガス導入系7が第1の実施の形態で説明した絶縁膜形成装置1と異なっているが、他の構成は上述した第1の実施形態の絶縁膜形成装置1と同じであるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
【0111】
上部ガス導入系6及び下部ガス導入系7は、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン等の金属、或いは、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の誘電体により形成されている。なお、上部ガス導入系6及び下部ガス導入系7の材料として誘電体を用いるのが望ましいことは、第1の実施形態の絶縁膜形成装置1と同様である。
【0112】
上部ガス導入系6は、第1のガス導入部(上部ガス導入部)としての上部シャワープレート40を有している。上部シャワープレート40は、真空容器2の上壁2aの内面を覆う板材41を有しており、真空容器2の上壁2aと板材41との間の内部空間S2に、第1のガスが流通されるようになっている。板材41は、内部空間S2を気密に保つように、真空容器2の上壁2aに接続されている。上部シャワープレート40の内部空間S2は、真空容器2の周壁2cに形成された開口部42を介して、真空容器2の外方に開放している。この開口部42から、第1のガスが上部シャワープレート40の内部空間S2に導入される。また、この上部シャワープレート40の板材41には、多数のガス噴出口43が略等間隔で設けられている。
【0113】
ところで、上述したような上部シャワープレート40では、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン等の金属製の板材41を真空容器2の上壁2aに接地させるとともに、ガス噴出口43を充分に小さくすることで、プラズマを内部空間S2に閉じ込めることができる。このようにすることにより、放電初期のプラズマが表面波プラズマ状態に至るまでの過渡状態において、プラズマが被処理基板100に達するのを抑制できるとともに、プラズマ放射光に含まれるエネルギーの高い紫外光を上部シャワープレート40により遮ることができる。したがって、被処理基板100の損傷抑止効果を高めることができる。
【0114】
上部シャワープレート40を、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の誘電体で形成した場合、上部シャワープレート40の形状や上部シャワープレート40の内部空間S2におけるガス圧力等によっては、プラズマは、板材41の上方で生じる場合と板材41に下方で生じる場合とがある。
【0115】
プラズマが板材41の上方で生じるように設定すると、プラズマ放射光に含まれるエネルギーの高い紫外光が上部シャワープレート40で遮られるため、被処理基板100の損傷抑止効果を高めることができる。
【0116】
プラズマが板材41の下方で生じるように設定すると、上部シャワープレート40を通して第1のガスをプラズマに分散供給することができるため、プラズマの均一性を高めることができる。なお、プラズマが板材41の下方で生じるように設定した場合には、電磁波入射面Fは、板材41と真空容器2の内部空間との界面(板材41の下面)であり、他の場合は電磁波入射面Fは、誘電体窓3と真空容器2の内部空間との界面(誘電体窓3の内面)である。
【0117】
下部ガス導入系7は、第2のガス導入部(下部ガス導入部)としての下部シャワープレート50を有している。下部シャワープレート50は、基板支持台4に支持される被処理基板100を覆う程度の大きさに形成されている。この下部シャワープレート50は、互いに対向する一対の板材51a,51bを有して偏平な箱状に形成されており、内部空間S3に第2のガスが流通されるようになっている。下部シャワープレート50の内部空間S3は、真空容器2の周壁2cに形成された開口部52を介して、真空容器2の外方に開放している。この開口部52から、第2のガスが下部シャワープレート50の内部空間S3に導入される。
【0118】
また、この下部シャワープレート50の下側の板材51bには、多数のガス噴出口53が設けられている。この下部シャワープレート50では、複数のガス噴出口53の単位面積あたりの開口比率を、下部シャワープレート50内のガス流の上流側で、このガス流に対するガス噴出口53のコンダクタンス(物理的抵抗の逆数)が小さく、下部シャワープレート50内のガス流の下流側で、このガス流に対するガス噴出口53のコンダクタンスが大きくなるように設定している。具体的には、複数のガス噴出口53の単位面積あたりの開口比率を、下部シャワープレート50内のガス流の上流側が小さく、ガス流の下流側が大きくなるように設定している。このようにすることにより、下部シャワープレート50の下面の略全域に対応する領域から、第2のガスを真空容器2内に向けて均一に吐出させることができる。また、図示しないが、下部シャワープレート50は、第1のガスや酸素ラジカルを下部シャワープレート50の上側の領域と下部シャワープレート50の下側の領域との間で流通させるための多数の貫通孔を有している。
【0119】
なお、下部ガス導入系7を80℃から200℃程度の温度に保つことが望ましい。そのため、下部ガス導入系7に、第1の実施形態の絶縁膜形成装置1が備える加熱手段11や、第2の実施形態の絶縁膜形成装置1が備える加熱手段11等を備えさせてもよい。
【0120】
以上のように、本実施形態の絶縁膜形成装置1を用いれば、第2のガスを被処理基板100の上方から真空容器2内に均一に供給することができるため、被処理基板100に絶縁膜101を形成する際において、良好な膜厚制御性及び膜厚均一性を実現することができる。
【0121】
以下、本発明の第4の実施形態を、図7を参照して説明する。本実施形態では、絶縁膜形成装置の一実施形態について説明する。
【0122】
本実施形態の絶縁膜形成装置は、上部ガス導入系6及び下部ガス導入系7が第1の実施の形態で説明した絶縁膜形成装置1と異なっているが、他の構成は上述した第1の実施形態の絶縁膜形成装置1と同じであるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
【0123】
上部ガス導入系6は、第3の実施の形態で説明した絶縁膜形成装置1が備える上部ガス導入系6と同様である。
【0124】
下部ガス導入系7は、下部ガス導入部としての下部シャワープレート60を有している。下部シャワープレート60は、基板支持台4に支持される被処理基板100を覆う程度の大きさに形成されている。この下部シャワープレート60は、互いに対向する一対の板材61a,61bを有して偏平な箱状に形成されており、内部空間S4に第2のガスが流通されるようになっている。下部シャワープレート60の内部空間S4は、真空容器2の周壁2cに形成された開口部62を介して、真空容器2の外方に開放している。この開口部62から、第2のガスが下部シャワープレート60の内部空間S4に導入される。
【0125】
下部シャワープレート60の内部空間S4には、第2のガスの流れを調整する複数の隔壁64が設けられている。これらの隔壁64は、下部シャワープレート60内のガス流の上流側でこのガス流に対する隔壁64のコンダクタンスが大きく、下部シャワープレート60内のガス流の下流側でこのガス流に対する隔壁64のコンダクタンスが小さくなるように、その大きさが設定されている。具体的には、各隔壁64は、下部シャワープレート60内のガス流の上流側で低く、ガス流の下流側が高くなるように、その高さが設定されている。このように、第2のガスの流入圧力の高いガス流の上流側の隔壁64を小さくすることで、ガス流の上流側のコンダクタンスを大きくすることができるとともに、第2のガスの流入圧力の低いガス流の下流側で隔壁64を大きくすることで、ガス流の下流側のコンダクタンスを小さくすることができる。
【0126】
下部シャワープレート60の下側の板材61aには、これら隔壁64で区分される各領域に夫々対応させて、多数のガス噴出口63が設けられている。このようにすることにより、第2のガスは、隔壁64で制限された隙間65を通る流れと、ガス噴出口63から噴出する流れに分かれる。隔壁64によりコンダクタンスを変えることで、隙間65を通る流れと、ガス噴出口63から噴出する流れの流量比を調節することができる。この流量比を所望の値に調整することで、下部シャワープレート60の下面の略全域に対応する領域から、第2のガスを真空容器2内に向けて均一に吐出させることができる。また、図示しないが、下部シャワープレート60は、第1のガスや酸素ラジカルを下部シャワープレート60の上側の領域と下部シャワープレート60の下側の領域との間で流通させるための多数の貫通孔を有している。
【0127】
なお、下部ガス導入系7を80℃から200℃程度の温度に保つことが望ましい。そのため、下部ガス導入系7に、第1の実施形態の絶縁膜形成装置1が備える加熱手段11や、第2の実施形態の絶縁膜形成装置1が備える加熱手段11等を備えさせてもよい。
【0128】
以上のように、本実施形態の絶縁膜形成装置1を用いれば、第2のガスを被処理基板100の上方から真空容器2内に均一に供給することができるため、被処理基板100に絶縁膜101を形成する際において、良好な膜厚制御性及び膜厚均一性を実現することができる。
【0129】
以下、本発明の第5の実施形態を、図8を参照して説明する。本実施形態では、絶縁膜形成装置の一実施形態について説明する。
【0130】
本実施形態の絶縁膜形成装置1は、上部ガス導入系6及び下部ガス導入系7が第1の実施の形態で説明した絶縁膜形成装置1と異なっているが、他の構成は上述した第1の実施形態の絶縁膜形成装置1と同じであるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
【0131】
上部ガス導入系6としては、第3の実施の形態で説明した絶縁膜形成装置1が備える上部ガス導入系6と同様である。
【0132】
下部ガス導入系7は、第2のガス導入部(下部ガス導入部)としての下部シャワープレート70を有している。下部シャワープレート70は、基板支持台4に支持される被処理基板100を覆う程度の大きさに形成されている。この下部シャワープレート70は、互いに対向する一対の板材71a,71bを有して偏平な箱状に形成されている。また、一対の板材71a,71cの間には、複数の開口部74aを有する拡散板74が設けられている。この拡散板74により、下部シャワープレート70の内部空間S5は、第1のガス室としての上側ガス室G1と、第2のガス室としての下側ガス室G2とに分断されている。下部シャワープレート70の内部空間S5のうちの上側ガス室G1は、真空容器2の周壁2cに形成された開口部72を介して、真空容器2の外方に開放している。この開口部62から、第2のガスが下部シャワープレート70の上側ガス室G1に導入される。また、下部シャワープレート70の下側の板材71bは、複数のガス噴出口73を有している。
【0133】
この下部シャワープレート70では、拡散板74の開口部74aの大きさ・数・形状等によって、上側ガス室G1と下側ガス室G2との間でガスの流れが調整されるようになっている。本実施形態では、拡散板74の開口部74aの単位面積あたりの開口比率は、下部シャワープレート70内のガス流の上流側で、このガス流に対する開口部74aのコンダクタンスが小さく、下部シャワープレート70内のガス流の下流側で、このガス流に対する開口部74aのコンダクタンスが大きくなるように設定されている。具体的には、第2のガスの流入圧力の高いガス流の上流側では、拡散板74の単位面積あたりの開口面積を小さくすることでコンダクタンスを小さくし、第2のガスの流入圧力の低いガス流の下流側では、開口面積を大きくすることでコンダクタンスを大きくしている。このようにすることにより、拡散板74の下面の略全域に対応する領域から、第2のガスを下側ガス室G2に向けて均一に送ることができるため、結果として、下部シャワープレート57の下面の略全域に対応する領域から、第2のガスを真空容器2内に向けて均一に吐出されることとなる。
【0134】
なお、下部ガス導入系7を80℃から200℃程度の温度に保つことが望ましい。そのため、下部ガス導入系7に、第1の実施形態の絶縁膜形成装置1が備える加熱手段11や、第2の実施形態の絶縁膜形成装置1が備える加熱手段11等を備えさせてもよい。
【0135】
以上のように、本実施形態の絶縁膜形成装置1を用いれば、第2のガスを被処理基板100の上方から真空容器2内に均一に供給することができるため、被処理基板100に絶縁膜101を形成する際において、良好な膜厚制御性及び膜厚均一性を実現することができる。
【0136】
以下、本発明の第6の実施形態を、図9を参照して説明する。本実施形態では、絶縁膜形成装置の一実施形態について説明する。
【0137】
本実施形態の絶縁膜形成装置1は、上部ガス導入系6が第1の実施の形態で説明した絶縁膜形成装置1と異なっているが、他の構成は上述した第1の実施形態の絶縁膜形成装置1と同じであるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
【0138】
本実施形態の上部ガス導入系6は、誘電体窓3と一体化に形成されている。詳しくは、誘電体窓3には、その内部に第1のガスを流通させるガス流通経路81、ガス流通経路81と真空容器2の内部とを連通させる複数の連通路82、及び、ガス流通経路81と真空容器2の外方とを連通させる連通管83とを有している。ガス流通経路81及び複数の連通路82は、誘電体窓3を切削する等により形成されている。各連通管83はガス流通経路81と連通している。ガス流通経路81と連通管83とにより第1のガス導入部(上部ガス導入部)が構成されており、連通路82の開口端が、第1のガスを真空容器2の内部に導入するガス噴出口となる。
【0139】
連通管83は、真空容器2の上壁2aに形成された貫通孔84内に配管され、真空容器2の外方に延出している。連通管83は、誘電体窓3とは一体であっても別体であってもよい。なお、この場合においても、誘電体窓3の内面が電磁波入射面Fとなる。他の構成は第1の実施形態の絶縁膜形成装置1と同じであるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
【0140】
本実施形態の絶縁膜形成装置1によれば、第1のガス導入系から供給される第1のガスを誘電体部材3近傍で効率よく分解させ、酸素ラジカルを効率良く生成することができる。
【0141】
なお、本発明の絶縁膜の形成方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲において種々に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る絶縁膜形成装置を示す断面図。
【図2】図1中のII−II線に沿って示す断面図。
【図3】図1中のIII−III線に沿って示す断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る絶縁膜形成装置を示す断面図。
【図5】図4中のV−V線に沿って示す断面図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る絶縁膜形成装置を示す断面図。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る絶縁膜形成装置を示す断面図。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る絶縁膜形成装置を示す断面図。
【図9】本発明の第6の実施形態に係る絶縁膜形成装置を示す断面図。
【図10】電磁波入射面からの距離と電子温度との関係を示す図。
【図11】電磁波入射面からの距離と電子密度との関係を示す図。
【符号の説明】
【0143】
1a,1b,1c,1d,1e,1f…絶縁膜形成装置、 2…真空容器(処理容器)、 3…誘電体窓(誘電体部材)、 6…上部ガス導入系(第1のガス導入系)、 7…下部ガス導入系(第2のガス導入系)、 8…高周波電源、 10…導波管スロットアンテナ、 11加熱手段、 100…被処理基板100、 101…絶縁膜、 F…電磁波入射面、
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体集積回路装置のような半導体装置や液晶表示装置のような表示装置の製造プロセス等で絶縁膜を形成する場合に適用される絶縁膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置や液晶表示装置等の製造プロセスにおいては、有機シリコン化合物をプロセスガスとし、平行平板型の高周波プラズマCVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)装置を用いて、被処理基板上に絶縁膜を形成する方法が知られている。
【0003】
平行平板型の高周波プラズマCVD装置は、真空チャンバ、高周波電源、高周波電極、及びアース電極等を備えている。真空チャンバは、有機シリコン化合物ガスと酸素の混合ガスを導入するガス導入部を有している。
【0004】
この平行平板型の高周波プラズマCVD装置を用いて絶縁膜を形成する場合、以下のようにする。有機シリコン化合物ガス及び酸素ガスを、ガス導入部を介して真空チャンバ内に導入する。高周波電源から13.56MHzの高周波電力を高周波電極に供給することで、真空チャンバ内においてプラズマを発生させる。このようにすることにより、プラズマによって有機シリコン化合物が分解され、この有機シリコン化合物を材料としたシリコン酸化物膜が被処理基板上に形成される(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、上述のような平行平板型の高周波プラズマCVD装置では、真空チャンバ内で発生したプラズマが被処理基板を配設した領域にまで広がってしまうため、被処理基板の表面や被処理基板と絶縁膜との界面等にイオン損傷を与え易いという問題がある。すなわち、プラズマが被処理基板を配設した領域にまで広がると、被処理基板がエネルギーの高い電子に接することとなるため、電子のエネルギーにしたがって増加する傾向のあるシース電界が大きくなる。シース電界が大きくなると、これに伴って被処理基板に入射するイオンのエネルギーが増加するため、結果として、被処理基板の表面や被処理基板と絶縁膜との界面等にイオン損傷が生じ易くなってしまう。
【0006】
このような問題に対して、近年、表面波プラズマを発生させる絶縁膜形成装置を用いることにより、プラズマを局在させて、被処理基板上に絶縁膜を形成する方法が提案されている。この場合、プロセスガスとしては、一般に、シランガス(モノシランガス等)が用いられる。
【0007】
絶縁膜形成装置としては、真空チャンバ、誘電体プレート、ラジアルラインスロットアンテナ、8.3GHzのマイクロ波を発生するマイクロ波発生装置等を備えたものが知られている。真空チャンバは、クリプトンガスと酸素ガスとの混合ガスを導入する第1のガス導入部と、シランガスを導入する第2のガス導入部とを有している。誘電体プレートは、真空チャンバの壁の一部を構成している。ラジアルラインスロットアンテナは、誘電体プレートに沿って設けられている。第1のガス導入部は、第2のガス導入部よりもラジアルラインスロットアンテナ側に設けられている。また、第2のガス導入部は、電子温度が1eV以下となる領域からシランガスが導入されるように、その位置が設定されている。
【0008】
この絶縁膜形成装置を用いて絶縁膜を形成する場合、以下のようにする。クリプトンガスと酸素ガスとの混合ガスを第1のガス導入部を介して真空チャンバ内に導入する。ラジアルラインスロットアンテナより放射された電磁波を、誘電体プレートを通して真空チャンバ内に透過させる。これにより、酸素及びクリプトンが励振して、真空チャンバ内において表面波プラズマが発生する。そして、この表面波プラズマにより、酸素ラジカルが生成される。第2のガス導入部からシランガスを導入し、酸素ラジカルによってシランガスを分解及び反応させる。これにより、被処理基板上に絶縁膜としての酸化シリコン膜が形成される(例えば、非特許文献1参照。)。
【0009】
また、他の絶縁膜形成装置としては、プロセスチャンバ、誘電体隔壁、プラズマ励起ガス用シャワープレート、プロセスガス用シャワープレート、ラジアルラインスロットアンテナ、及び、2.45GHzのマイクロ波を発生するマグネトロン等を備えたものが知られている。誘電体隔壁は、ラジアルラインスロットアンテナの下方に設けられている。プラズマ励起ガス用シャワープレートは、誘電体隔壁の下方に設けられている。プロセスガス用シャワープレートは、プラズマ励起ガス用シャワープレートの下方に設けられている。
【0010】
この絶縁膜形成装置は、以下のようにして使用する。プラズマ励起ガス用シャワープレートに形成された複数の開口部を介して、プラズマ励起ガスとしての希ガスをプロセスチャンバ内に導入する。ラジアルラインスロットアンテナから放射されたマイクロ波を、プラズマ励起ガス用シャワープレートを介して、プロセスチャンバ内に導入する。これにより、希ガスが励振してプラズマが発生する。プロセスガス用シャワープレートに形成された複数の開口部を介して、プロセスガスを供給する。これにより、プロセスガスがプラズマと反応し、被処理基板に所定の処理が施される(例えば、特許文献2参照。)
一方、酸化ハフニウムや酸化ジルコニウムといった金属酸化物は、酸化シリコンよりも誘電率が高いため、絶縁膜の材料として注目されている。酸化ハフニウムや酸化ジルコニウムといった金属酸化物からなる膜(以下、金属酸化膜という)を形成する方法としては、従来、有機金属気相成長法(MOCVD法)、スパッタリング法、又は、原子層堆積法(ALD法)等が知られている。
【0011】
しかしながら、有機金属気相成長法では、原料となる有機金属化合物ガスを、500℃〜700℃に加熱した被処理基板で分解させて膜を成長させるため、ガラス基板やプラスチック基板のように比較的融点の低い被処理基板への適用が困難である。また、スパッタリング法では、ターゲットから反跳した高速中性粒子が被処理基板に衝突するため、被処理基板にダメージを与え易い。さらに、原子層堆積法では、原子層を1層ずつ堆積させていくため、成膜速度が非常に遅い。
【0012】
このような問題に対して、近年、プラズマを用いて酸化ジルコニウム膜を形成する方法が提案されている。まず、テトラプロポキシジルコニウム(Zr(OC3H7)4)ガスと酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを用意する。この時、混合ガス中の酸素ガスとアルゴンガスとの比を1:5とする。被処理基板が設けられたチャンバ内に混合ガスを導入する。チャンバ内にプラズマを発生させて、Zr(OC3H7)4ガス及び酸素ガスをプラズマ放電させる。これにより、被処理基板上に酸化ジルコニウム膜が形成される。(例えば、非特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平5−345831号公報(段落0013〜段落0016、図1)
【特許文献2】特開2002−299241号公報(段落0033〜段落0049、図1)
【非特許文献1】Hiroki Tanaka et al.“High−Quality Silicon Oxide Film Formed by Diffusion Region Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition and Oxygen Radical Treatment Using Microwave−Excited High−Density Plasma”Jpn.J.Appl.Phys.Vol.42(2003)pp1911−1915
【非特許文献2】森岡 怜司、他2名、“金属有機材料を前駆体としたプラズマCVDによる高誘電率ジルコニウム酸化膜の形成”、平成15年1月29日、第20回「プラズマプロセッシング研究会」(社団法人 応用物理学会 プラズマエレクトロニクス分科会 主催)予稿集、p317〜p318
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、プロセスガスとして有機シリコン化合物ガスを使用すると、シランガスを使用した場合と比べて被覆性の良好な酸化シリコン膜が得られ易い。これは、有機シリコン化合物がシランと比べて分子容積が大きいためである。したがって、有機シリコン化合物がプラズマによって分解されてなる中間生成物もまた比較的分子容積が大きく、その立体効果により被処理基板の表面でマイグレーションしながら、この被処理基板の表面に比較的均一に付着する。したがって、被覆性の良好な酸化シリコン膜となる。
【0014】
しかしながら、有機シリコン化合物は、その骨格にアルキル基等を含んでいるため、有機シリコン化合物を過度に分解すると、炭素骨格部分に含まれる炭素原子が、形成される酸化シリコン膜内に不純物として混入し易くなってしまう。すなわち、非特許文献1に記載の技術において用いられているシランガスよりも、過度な分解による弊害が大きいという課題がある。
【0015】
一方、非特許文献2に記載の技術では、混合ガス中の酸素ガスの分圧が低く抑えられているため、形成される金属酸化膜中に酸素欠損が生じやすいという問題がある。
【0016】
本発明は、このような事情にもとづいてなされたもので、被処理基板やこの被処理基板に形成される絶縁膜に損傷が与えられるのを抑制しつつ、被処理基板に良好に絶縁膜を形成することができる絶縁膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の形態に係る絶縁膜の形成方法は、電磁波が入射される電磁波入射面を有する処理容器の内部に、被処理基板を配設する工程と、
希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含む第1のガスを、前記電磁波入射面からの距離が10mm未満となる位置から真空の前記処理容器の内部に導入させる工程と、
有機金属化合物を含む第2のガスを、前記電磁波入射面からの距離が10mm以上となる位置に設けられ、被処理基板より大きい環状の下部ガス導入管から、前記第1のガスと分離して前記処理容器の内部に導入させる工程と、
前記処理容器の内部に前記電磁波入射面から電磁波を入射させることにより、
前記処理容器の内部で前記電磁波入射面近傍に前記第1のガスによる表面波プラズマを生じさせ第1のガスのラジカルを生成させる工程と、
前記ラジカルが拡散流として前記第2のガス雰囲気に到達し前記第2のガスと反応して前記被処理基板に金属酸化物を堆積させる工程と、
を有し、下部ガス導入管を80℃乃至200℃に直接加熱することにより膜厚が安定した絶縁膜を形成することを特徴とする。
【0018】
本発明の第2の形態に係る絶縁膜の形成方法は、前記第1のガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノンのうちの少なくとも1種の希ガスを含んでいることを特徴とする。
【0019】
本発明の第3の形態に係る絶縁膜の形成方法は、前記第1のガスが酸素ガスを含んでいるとともに、前記酸素ガスを前記処理容器の内部に供給するときの流量が、前記第2のガスを前記処理容器の内部に導入させるときの流量よりも多くなるように設定されていることを特徴とする。
【0020】
処理容器の内部に電磁波入射面から電磁波を入射させると、第1ガス及び第2のガスが励振されてプラズマが生じ、電磁波入射面近傍のプラズマ内の電子密度が増加する。電磁波入射面近傍のプラズマ内の電子密度が増加していくと、電磁波はプラズマ内を伝播することが困難になり、このプラズマ内で減衰する。したがって、電磁波入射面から離れた領域には電磁波が届かなくなり、第1のガス及び第2のガスが電磁波によって励振される領域は、電磁波入射面の近傍に限られるようになる。この状態が、表面波プラズマが生じている状態である。
【0021】
つまり、表面波プラズマが生じている状態においては、電磁波によるエネルギーが与えられて化合物の電離が生じる領域が電磁波入射面の近傍に局在する。つまり、表面波プラズマは、電磁波入射面からの距離によってその状態が異なる。また、表面波プラズマが生じている状態においては、被処理基板の表面近傍に生じるシースの電界が小さい。そのため、被処理基板へのイオンの入射エネルギーが低く、イオンによる被処理基板の損傷が少ない。
【0022】
表面波プラズマが発生する領域の境界は、電磁波入射面(誘電体窓)と処理容器の内部空間(第1のガスが供給されている領域)との界面である。そして、表面波プラズマが発生している状態において、プラズマのエネルギーが高い領域、すなわち、電磁波が到達して第1及び第2のガスを直接励振させている領域は、表皮厚さによって知ることができる。表皮厚さは、電磁波入射面から電磁波の電界が1/eに減衰する位置までの距離を示しており、その値は電磁波の入射面近傍の電子密度に依存する。
【0023】
つまり、表面波プラズマが発生している状態において、電磁波入射面からの距離が表皮厚さよりも小さい領域では、高密度のプラズマが発生している。また、電磁波入射面からの距離が表皮厚さよりも大きい領域(表皮厚さを外れた領域)では、電磁波は高密度のプラズマによって遮蔽されて到達せず、酸素ラジカルは拡散流として到達する。
【0024】
したがって、処理容器の内部で表面波プラズマを生じさせ、処理容器の内部に配設された被処理基板に絶縁膜を形成するような場合、電磁波入射面からの距離が表皮厚さよりも大きくなるような位置から有機シリコン化合物ガス又は有機金属化合物を含む第2のガスを供給すれば、有機シリコン化合物又は有機金属化合物の過度な分解を抑止でき、しかも、酸素ラジカルと有機シリコン化合物又は有機金属化合物とを効率良く反応させ、被処理基板に、酸素欠損が少なく、均一で、段差被覆性に優れる良好な膜質の絶縁膜(酸化シリコン膜又は金属酸化物膜)を形成することができると考えられる。
【0025】
表皮厚さδは、以下の(1)式で求めることができる。
【数1】
【0026】
ω:電磁波の角振動数
c:真空中の光速(定数)
ne:電子密度
nc:カットオフ密度
カットオフ密度ncは、以下の(2)式で求めることができる。
【数2】
【0027】
ε0:真空中の誘電率(定数)
me:電子の質量(定数)
ω:電磁波の角振動数
e:素電荷(定数)
表面波プラズマの分散関係は、以下の(3)式で示される。
【数3】
【0028】
ω:電磁波の角振動数
c:真空中の光速(定数)
εd:誘電体窓の誘電率
ωp:プラズマの角振動数
プラズマの角振動数ωpは、以下の(4)式で求めることができる。
【数4】
【0029】
e:素電荷(定数)
n0:電子密度
ε0:真空中の誘電率(定数)
me:電子の質量(定数)
電磁波入射面(誘電体窓)とプラズマの境界面を表面波が伝播するには、(3)式の分母が正の値をとる必要がある。そのため、(4)式の関係も含めると、以下の(5)式の関係を満たす必要がある。
【数5】
【0030】
n0:電子密度
ε0:真空中の誘電率(定数)
me:電子の質量(定数)
εd:誘電体窓の誘電率
e:素電荷(定数)
ω:電磁波の角振動数
(5)式を用いて、国内において工業目的の電磁波使用のため、基本波またはスプリアス発射による電界強度の許容値の特例として、最大許容値を定めずに用いられている周波数(無線設備規則第65条、及び郵政省告示第257号)である、2.45GHz、5.8GHz及び22.125GHzに関して、合成石英(比誘電率3.8)及びアルミナ(比誘電率9.9)を用いた場合にプラズマの境界面を表面波が伝播させるのに必要な電子密度n0を求め、そのときの表皮厚さを計算すると表1のようになる。すなわち、2.45GHz以上の周波数において比誘電率が3.8以上の誘電体窓を用い、完全な表面波プラズマ状態にした場合には、表皮厚さは10mm以下になる。
【表1】
【0031】
マイクロ波を用いたプロセスでは、前記の周波数、すなわち2.45GHz、5.8GHz及び22.125GHzの高周波電源が用いられることが多く、誘電体窓の材質としては、石英、あるいはアルミナが一般的である。そのため、石英の誘電体窓を使用し、周波数を2.45GHzとしたときの表皮厚さδ以上、つまり、電磁波入射面から10mm以上離れていれば、電磁波は高密度のプラズマに遮蔽されて到達せず、酸素ラジカルは拡散流として到達すると考えられる。
【0032】
また、本発明者らは、電子温度が2eV以下となるような位置から第2のガスを処理容器の内部に導入すれば、有機シリコン化合物や有機金属化合物が過度に分解されるのを抑制できることを突き止めた。図10は、電磁波入射面からの距離と電子温度との関係を示している。図10に示すように、プラズマを発生させるための第1のガスの種類及び分圧を変化させても、電磁波入射面から10mm以上離れた領域では、電子温度が大凡2eV以下であり、上述の推論と矛盾しないことがわかった。
【0033】
さらに、本発明者らは、電子密度が電磁波入射面の50%以下に減少するような位置から第2のガスを処理容器の内部に導入すれば、有機シリコン化合物や有機金属化合物が過度に分解されるのを抑制できることを突き止めた。図11には、電磁波入射面からの距離と電子密度との関係を示している。図11に示すように、プラズマを発生させるための第1のガスの種類及び分圧を変化させても、電磁波入射面から10mm以上離れた領域では、電子密度は電磁波入射面の50%以下に減少しており、上述の推論と矛盾しないことがわかった。
【0034】
このような結果から、本発明者らは、電磁波入射面から10mm以上離れた位置から第2のガスを処理容器の内部に導入することで、酸素欠損が少なく、均一で、段差被覆性に優れた絶縁膜(シリコン酸化膜又は金属酸化物膜)を、イオン損傷を殆ど与えることなく被処理基板に形成することができることを突き止めた。
【0035】
以上のように、本発明の第1及び第2の形態に係る絶縁膜の形成方法では、表面波プラズマを用いて被処理基板に絶縁膜を形成する絶縁膜の形成方法であって、第1のガスと第2のガスとを分離して処理容器の内部に供給している。詳しくは、希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含む第1のガスを電磁波入射面からの距離が10mm未満となる位置から処理容器の内部に導入させるとともに、有機シリコン化合物を含む第2のガスが前記電磁波入射面からの距離が10mm以上となる位置から処理容器の内部に導入させるようにしている。
【0036】
このように、表面波プラズマを用いることによって、プラズマのエネルギーの高い領域を被処理基板から離れた位置に局在化させることができる。これにより、被処理基板近傍のシース電界が小さくなるため、被処理基板に入射するイオンのエネルギーも減少する。したがって、被処理基板やこの被処理基板に形成される絶縁膜に与えられるイオン損傷を抑制することができる。
【0037】
しかも、電磁波入射面からの距離が10mm未満となる位置から第1のガスを処理容器の内部に導入するようにしている。電磁波入射面からの距離が10mm未満となる領域では、電磁波による電界で電子が直接に加速されるため、電子のエネルギーが大きい。したがって、処理容器内において酸素ラジカルを効率良く生成させることができる。
【0038】
さらに、電磁波入射面からの距離が10mm以上となる位置から第2のガスを処理容器の内部に導入するようにしている。電磁波入射面からの距離が10mm以上となる領域では、電磁波が高密度のプラズマによって遮蔽されるため、有機シリコン化合物や有機金属化合物が過度に分解されるのを抑制することができる。したがって、被処理基板に、酸素欠損が少なく、均一で、段差被覆性に優れる良好な膜質の絶縁膜を形成することができる。
【0039】
また、電磁波入射面から10mm以上離れた位置では、その殆どの場合において、電子温度が2eV以下となる。このように、電子温度の低い領域、すなわち電子のエネルギーが低く、有機シリコン化合物又は有機金属化合物の電子の衝突による過度な分解が抑止される領域で、拡散流として到達する酸素ラジカルと有機シリコン化合物又は有機金属化合物とを反応させ、被処理基板への絶縁膜堆積を行うことで、被処理基板に損傷を殆ど与えることなく、酸素欠損が少なく、均一で、段差被覆性に優れる良好な膜質の絶縁膜を形成することができる。
【0040】
さらに、電磁波入射面から10mm以上離れた位置では、その殆どの場合において、電子密度が電磁波の入射面の50%以下に減少している。このように、電子密度が低い領域、すなわち電子とプロセスガスとの衝突頻度が低く、有機シリコン化合物又は有機金属化合物の電子の衝突による過度な分解が抑止される領域で、拡散流として到達する酸素ラジカルと有機シリコン化合物又は有機金属化合物とを反応させ、被処理基板への絶縁膜堆積を行うことで、被処理基板に損傷を殆ど与えることなく、酸素欠損が少なく、均一で、段差被覆性に優れる良好な膜質の絶縁膜を形成することができる。
【0041】
なお、本発明の第1及び第2の形態に係る絶縁膜の形成方法、及び、後述する、第3の形態に係る絶縁膜形成装置において、「被処理基板」としては、例えば、ガラス基板、石英ガラス基板、セラミックス基板、樹脂基板、又は、シリコンウエハ等の基板を用いることができる。また、「被処理基板」としては、上述のような基板上に、単結晶シリコン、レーザ結晶化や固相結晶化等により形成した多結晶シリコン、微結晶シリコン、又は、アモルファスシリコン等の半導体層が形成されたものを用いてもよい。さらに、「被処理基板」としては、上述のような基板上に、半導体層と絶縁膜とを順不同で積層させたものや、上述のような基板上に、半導体層と絶縁膜とが順不同で積層されてなる部分を有する回路素子や回路素子の一部を形成したもの等を用いてもよい。
【0042】
本発明の第1の形態に係る絶縁膜の形成方法を実施する場合、第2のガスは、有機シリコン化合物として、テトラアルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、ポリメチルジシロキサン、ポリメチルシクロテトラシロキサンのうちの1種以上を含んでいるのが好ましい。このようにすることにより、基板上に膜質の良好な酸化シリコン膜を形成することができる。
【0043】
一方、本発明の第2の形態に係る絶縁膜の形成方法を実現する場合、第2のガスは、有機金属化合物として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、テトラプロポキシジルコニウム、ペンタエトキシタンタル、テトラプロポキシハフニウムのうちのいずれか1種を含んでいるのが好ましい。トリメチルアルミニウム又はトリエチルアルミニウムを選択することで、被処理基板に酸化アルミニウム膜を形成することができる。テトラプロポキシジルコニウムを選択することで、被処理基板に酸化ジルコニウム膜を形成することができる。ペンタエトキシタンタルを選択することで、被処理基板に酸化タンタル膜を形成することができる。テトラプロポキシハフニウムを選択することで、被処理基板に酸化ハフニウム膜を形成することができる。また、酸化ハフニウムや酸化ジルコニウムは、酸化シリコンよりも誘電率が高い。したがって、テトラプロポキシハフニウムやテトラプロポキシジルコニウムを選択することで、酸化シリコン膜よりも絶縁性の良好な絶縁膜を形成することができる。
【0044】
本発明の第1及び第2の形態に係る絶縁膜の形成方法を実施する場合、第1のガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、又はキセノンのうちの少なくとも1種の希ガスを含んでいるのが好ましい。有機シリコン化合物及び有機金属化合物は、その殆どが構成元素中に酸素を含んでいる。そのため、第1のガスには、必ずしも酸素ガスを含ませなくてもよく、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、又はキセノンのうちの少なくとも1種の希ガスを含ませることで、処理容器内において酸素ラジカルを発生させ、被処理基板に絶縁膜を形成することができる。
【0045】
ただし、第1のガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、又はキセノンのうちの少なくとも1種の希ガスと酸素ガスとを含んでいるガスを用いるのがさらに好ましい。このようにすることにより、処理容器内において酸素ラジカルを多く発生させ、被処理基板に酸素欠損の少ない絶縁膜を形成することができる。
【0046】
第1のガスが酸素ガスを含んでいる場合、酸素ガスを処理容器の内部に供給する際の流量が、第2のガスを処理容器の内部に供給する際の流量よりも多くなるように設定するのが好ましい。このようにすることにより、第2のガスが導入される位置よりも下方において、酸素ラジカルを第2のガスよりも多く存在させることができる。したがって、有機シリコン化合物中のシリコン原子や有機金属酸化物中の金属原子の酸化が促進されるので、より酸素欠損の少ない高品質な酸化膜を形成することができる。
【0047】
第3の形態に係る絶縁膜形成装置は、電磁波が入射される電磁波入射面を有し、内部に被処理基板を配設可能な処理容器と、希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含む第1のガスを前記処理容器内に導入させる第1のガス導入部を有し、前記処理容器に設けられた第1のガス導入系と、有機シリコン化合物又は有機金属化合物を含む第2のガスを前記処理容器内に導入させる第2のガス導入部を有し、前記処理容器に設けられた第2のガス導入系とを具備し、前記第1のガス導入部と前記電磁波入射面との間の距離が10mm未満に設定されているとともに、前記第2のガス導入部と前記電磁波入射面との間の距離が10mm以上に設定されており、且つ、前記処理容器の内部に前記第1及び第2のガスによる表面波プラズマが生成可能である。
【0048】
第3の形態に係る絶縁膜形成装置では、第1のガスを導入するための第1のガス導入部と電磁波入射面との間の距離を10mm未満、第2のガスを導入するための第2のガス導入部と前記電磁波入射面との間の距離を10mm以上としている。このようにすることにより、第1のガスをプラズマの密度が比較的高い領域に供給することができる。そのため、処理容器内において酸素ラジカルを効率良く生成させることができる。しかも、有機シリコン化合物又は有機金属化合物を含む第2のガスを、高密度のプラズマによって電磁波が遮蔽されて到達しない領域に供給することができる。そのため、電子の衝突によって有機シリコン化合物や有機金属化合物が過度に分解されるのを抑制することができる。
【0049】
したがって、第3の形態に係る絶縁膜形成装置を用いることで、被処理基板に、酸素欠損が少なく、膜質が良好であって、かつ、段差被覆性に優れた高品質な絶縁膜を形成することができる。
【0050】
ところで、処理容器内において酸素ラジカルをより効率良く生成するためには、誘電体部材近傍の領域、特に表面波プラズマ状態でも電磁波が到達してガスを直接励振している領域、すなわち表皮厚さで示される領域に酸素を供給することが望ましい。つまり、酸素ガスを含む第1のガスを用いる場合、この第1のガスは、表皮厚さで示される領域内に供給するのが好ましい。
【0051】
したがって、本発明の第3の形態に係る絶縁膜の形成方法を実施する場合、酸素ガスを含む第1のガスを用いるとともに、第1のガス導入部と電磁波入射面との間の距離が表面波プラズマの表皮厚さよりも小さくなるような領域に第1のガス導入部を設けるか、或いは、第1のガス導入部を誘電体部材と一体化に形成するのが好ましい。このようにすることにより、電磁波による電界で電子が直接に加速されている領域に酸素を供給することができるため、第1のガス導入系から供給される第1のガスを誘電体部材近傍で効率よく分解させ、酸素ラジカルを効率良く生成することができる。しかも、第1のガス導入系から供給される第1のガスによって誘電体部材近傍で生じた酸素ラジカルを第2のガス導入系から供給される第2のガスと十分に反応させることができる。そのため、酸素欠損が少なく、均一で、段差被覆性に優れる膜質の良好な絶縁膜を、良好な膜形成速度で形成することができる。
【0052】
また、有機シリコン化合物や有機金属化合物は、モノシラン等と比べて沸点が高いことが多い。そのため、上記特許文献2に記載の絶縁膜形成装置を用いて絶縁膜を形成する場合、有機シリコン化合物や有機金属化合物のように沸点が高い化合物をプロセスガスとして採用すると、プロセスガスの一部が液化して、プロセスガス用シャワープレートに形成されたガス放出用の複数の開口部の一部を閉塞させてしまうことがある。このように、プロセスガス用シャワープレートが閉塞されると、プロセスガスが処理容器内に安定に供給されなかったり、その供給が不均一となったりすることがある。
【0053】
したがって、特許文献2に記載の絶縁膜形成装置では、有機シリコン化合物ガスの供給量が不均一になり易い。絶縁膜の形成速度は、供給されるプロセスガスの量と関係するため、プロセスガスが処理容器内に安定に供給されなかったり、その供給量が不均一であったりすると、膜厚の均一性が損なわれてしまう。
【0054】
そのため、本発明の第3の形態に係る絶縁膜の形成方法を実施する場合、第2のガス導入系は、加熱手段を備えているのが好ましい。このようにすることにより、有機シリコン化合物や有機金属化合物を含む第2のガスが第2のガス導入系のガス導入部から均一に導入されるような所定の温度に保つことができる。
【0055】
第2のガス導入系が加熱手段を備えている場合、この加熱手段としては、被処理基板を80℃乃至200℃程度の温度に保持可能なものを採用するのが好ましい。第2のガス導入部を80℃乃至200℃の温度に保持することにより、第2のガスとして、有機シリコン化合物や有機金属化合物といった沸点の高いガスを用いる場合にも、第2のガスの液化によるガス供給量の変動が抑止され、膜厚の安定した絶縁膜を形成することができる。
【0056】
加熱手段は、例えば、第2のガス導入系と熱的に接続した状態で、処理容器の外部に設けるのが好ましい。このようにすることにより、構造を複雑にすることなく、第2のガス導入系の加熱を行うことができる。また、加熱手段は、例えば、第2のガス導入系の構造壁内に循環路を設けるとともに、この循環路に高温流体(高温気体又は高温液体)を流通させることで構成してもよい。この構成によれば、高温流体を構造壁内に循環させることで、第2のガス導入系全体にすばやく熱エネルギーを伝えることができる。したがって、第2のガス導入系を均等に加熱することができる。加熱手段としては、例えば、ヒータを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0057】
さらに、特許文献2に記載の絶縁膜形成装置では、プロセスガスは、プロセスガス用シャワープレートの一端側からこのプロセスガス用シャワープレート内に導入され、このプロセスガス用シャワープレート内を流通しながら、このプロセスガス用シャワープレートに形成されたガス放出用の複数の開口部から放出するように構成されている。そのため、シャワープレートに形成されたガス放出用の複数の開口部から放出されるプロセスガスの量は、有機シリコン化合物ガスが導入される一端側が多く、この一端側から離れるにつれて少なくなる。上述のように、プロセスガスが処理容器内に安定に供給されなかったり、その供給量が不均一であったりすると、膜厚の均一性が損なわれてしまう。
【0058】
そのため、本発明の第3の形態に係る絶縁膜の形成方法を実施する場合、例えば、第2のガス導入部を、複数のガス噴出口を有するシャワープレートとするとともに、複数のガス噴出口の単位面積あたりの開口比率を、シャワープレート内のガス流の上流側で、このガス流に対するガス噴出口のコンダクタンス(物理的抵抗の逆数)が小さく、シャワープレート内のガス流の下流側で、このガス流に対するガス噴出口のコンダクタンスが大きくなるように設定するのが好ましい。具体的には、例えば、複数のガス噴出口の単位面積あたりの開口比率を、シャワープレート内のガス流の上流側が小さく、ガス流の下流側が大きくなるように設定するとよい。更に好ましくは、ガス噴出口のコンダクタンス(ガス噴出口の単位面積あたりの開口比率)は、シャワープレートから処理容器の内部に供給される第2のガスの供給量の分布が実質的に均一となるように設定するとよい。このようにすることにより、第2のガスを処理容器内に均一性良く供給することができるため、被処理基板状に均一性の良好な絶縁膜を形成することができる。
【0059】
また、第2のガス導入部を、開口部を備えた隔壁で区切られたシャワープレートとする場合、シャワープレート内のガス流の上流側で、このガス流に対する隔壁のコンダクタンスが大きく、シャワープレート内のガス流の下流側で、このガス流に対する隔壁のコンダクタンスが小さくなるように、シャワープレートの内部にガスの流れを調整する複数の隔壁を設けるとともに、隔壁で区分される各領域に夫々対応させて、夫々ガス噴出口を設けるのが好ましい。具体的には、例えば、複数の隔壁を、シャワープレート内のガス流の上流側で低く、ガス流の下流側が高くなるように設定するとよい。更に好ましくは、隔壁の大きさや位置は、シャワープレートから供給される第2のガスの供給量の分布が実質的に均一となるように設定するとよい。このようにすることにより、シャワープレート内での第2のガスの流れが制御されるため、第2のガスを処理容器内に均一性良く供給することが可能となり、被処理基板状に均一性の良好な絶縁膜を形成することができる。
【0060】
さらに、第2のガス導入部を、複数のガス噴出口を有するシャワープレートとする場合、シャワープレートの内部に、第2のガスが導入されるガス導入口を有する第1のガス室と、複数のガス噴出口を有する第2のガス室とを設けるとともに、第1のガス室と第2のガス室との間でガスの流れを調整する複数の開口部を有する拡散板を介して接続し、且つ、複数の開口部の単位面積あたりの開口比率を、シャワープレート内のガス流の上流側で、このガス流に対する開口部のコンダクタンスが小さく、シャワープレート内のガス流の下流側で、このガス流に対する開口部のコンダクタンスが大きくなるように設定するのが好ましい。具体的には、例えば、複数の開口部の単位面積あたりの開口比率を、シャワープレート内のガス流の上流側が小さく、ガス流の下流側が大きくなるように設定するとよい。更に好ましくは、開口部のコンダクタンス(開口部の単位面積あたりの開口比率)は、シャワープレートから処理容器の内部に供給される第2のガスの供給量の分布が実質的に均一となるように設定するとよい。このようにすることにより、シャワープレート内での第2のガスの流れが制御されるため、第2のガスを処理容器内に均一性良く供給することが可能となり、被処理基板状に均一性の良好な絶縁膜を形成することができる。
【0061】
また、第3の形態に係る絶縁膜形成装置を実施する場合、第2のガス導入系が処理容器に取り付けられている取り付け部分を誘電体によって形成するとよい。このような構成をとることにより、金属などの導体を用いた場合に比べて、放電初期のプラズマが表面波プラズマ状態に至るまでの過渡状態において、第2のガス導入部が電磁界やプラズマに与える影響を低減し、安定したプラズマ放電が実現できる。
【0062】
さらに、第3の形態に係る絶縁膜形成装置を実施する場合、アンテナは、1以上の導波管型スロットアンテナを有しているのが好ましい。このような構成をとることにより、誘電損失が少なく大電力に耐えるアンテナが得られるため、絶縁膜形成装置の大型化が容易となる。大型液晶表示装置に適用される大型基板に絶縁膜を形成するような絶縁膜形成装置とする場合には、複数の導波管スロットアンテナを、誘電体部材の外面と対向するように互いに並べて配設するのが更に好ましい。なお、アンテナは、導波管スロットアンテナを有するものに限定されるものではなく、電磁波を処理容器に向けて放射することが可能なものであればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
以下、本発明の第1の実施形態を、図1乃至図3を参照して説明する。本実施形態では、本発明の絶縁膜の形成方法の一実施形態、及び、絶縁膜形成装置の一実施形態について説明する。
【0064】
図1は、絶縁膜形成装置の一例を示している。本実施形態の絶縁膜形成装置1は、処理容器としての真空容器2、1つ以上例えば9つの誘電体部材3、基板支持台4、ガス排出系5、第1のガス導入系としての上部ガス導入系6、第2のガス導入系としての下部ガス導入系7、高周波電源8、導波管9、1つ以上例えば9つの導波管スロットアンテナ10を有するアンテナ、及び、加熱手段11等を備えている。
【0065】
前記真空容器2は、上壁2a、底壁2b、及び、上壁2aの周縁と底壁2bの周縁とを繋ぐ周壁2cを有して、内部を真空状態或いはその近傍にまで減圧することが可能な強度に形成されている。上壁2a、底壁2b、及び周壁2cを形成する材料としては、例えばアルミニウム等の金属材料を用いることができる。
【0066】
上壁2aには、真空容器2の壁の一部を構成するように、誘電体部材3が設けられている。この誘電体部材3もまた、真空容器2の内部を真空状態或いはその近傍にまで減圧することが可能な強度に形成されている。誘電体部材3を形成する誘電体材料としては、例えば合成石英等を用いることができる。
【0067】
詳しくは、図1及び図2に示すように、上壁2aは、1つ以上例えば9つの開口部12を有している。これら開口部12は、夫々、横断面略T字状の細長な空間を形成している。これら開口部12は、夫々所定の間隔を置いて互いに平行に設けられている。1つ以上例えば9つの誘電体部材3は、夫々、開口部12に嵌合するような横断面略T字状の細長部材とされている。これら誘電体部材3は、対応する開口部12に嵌合させることで、当該開口部12を夫々気密に閉塞している。つまり、真空容器2の上壁2aには、真空容器2の壁の一部を構成するように、複数の誘電体部材3が互いに並べて設けられている。そして、上壁2aは、真空容器2の壁の一部であるとともに、誘電体部材3を支持する梁としても機能している。以下、誘電体部材を誘電体窓3と言う。
【0068】
また、前記真空容器2は、図示しないが、上壁2aと誘電体窓3との間を封止する封止機構を有している。封止機構は、例えば、開口部12を規定する壁にその周方向に沿って設けられた溝と、この溝に沿って設けられたO−リングとを有している。この封止機構により、開口部12を規定する壁と誘電体窓3との間がシールされている。
【0069】
真空容器2の内部には、被処理基板100を支持する前記基板支持台4が設けられている。本実施形態では、この基板支持台4は、例えば、被処理基板100が後述するガス噴出口22aの下方25mmの位置に保持されるように、その配設位置が設定されている。
【0070】
前記高周波電源8としては、例えば、2.45GHzの電源を用いることができる。真空容器2の上方には、複数の誘電体窓3に対応するように、複数の導波管スロットアンテナ10が夫々設けられている。これら導波管スロットアンテナ10は、夫々、管壁の一部にスリット状の開口部10aを設けたものであり、当該開口部10a近傍で起きる電磁界結合を利用して電磁波を放射することで、夫々がアンテナとして機能する。複数の導波管スロットアンテナ10は、複数の誘電体窓3の外面と夫々対向するように互いに並べて配設されている。互いに隣り合う導波管スロットアンテナ10は各々接続されている。
【0071】
導波管スロットアンテナ10は、一般に金属で構成されるため、誘電体で形成されたアンテナと比べて誘電損失が少なく、大電力に対する耐性が高いという特長がある。また、導波管スロットアンテナ10は、構造が単純で放射特性の設計が比較的正確に行えるため、大型基板用の絶縁膜形成装置に好適である。特に、複数の導波管スロットアンテナ10を互いに並べて配置した本実施形態の絶縁膜形成装置1は、大型の液晶表示装置等に用いる角型で面積の大きい基板に絶縁膜を形成する場合に好適である。
【0072】
複数の導波管スロットアンテナ10のうちの1つ、例えば、最も高周波電源8側の導波管スロットアンテナ10は、導波管9を介して高周波電源8と接続されている。これにより、高周波電源8が発生した電磁波は、導波管9によって、各導波管スロットアンテナ10に導かれる。つまり、この絶縁膜形成装置1では、導波管スロットアンテナ10に導かれた電磁波は、誘電体窓3を透過して真空容器2の内部に入射することとなる。したがって、誘電体窓3の内面が電磁波入射面Fとなる。
【0073】
また、真空容器2には、前記ガス排出系5と、前記上部ガス導入系6と、前記下部ガス導入系7とが設けられている。ガス排出系5は、真空容器2の内部と連通するようにこの真空容器2に設けられたガス排出部5a、及び、真空排気システム5b等を有している。真空排気システム5bは、例えば、ターボ分子ポンプ等を用いることができる。この真空排気システム5bを稼動させることにより、真空容器2の内部を所定の真空度に達するまで排気することができる。
【0074】
上部ガス導入系6は、希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含む第1のガスを真空容器2の内部に導入するためのものである。本実施形態の絶縁膜形成装置1では、上部ガス導入系6は、例えば、第1のガス導入部としての上部ガス導入管21を有している。
【0075】
上部ガス導入管21は、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン等の金属、或いは酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の誘電体によって形成されている。なお、上部ガス導入管21が電磁界やプラズマに影響を与える影響を考慮すると、上部ガス導入管21は、誘電体材料で形成するのが好ましい。しかしながら、管の形成する際の加工を考慮すると、上部ガス導入管21は、金属材料で形成する方が安価で容易である。そのため、上部ガス導入管21を金属材料で形成するような場合には、上部ガス導入管21の外面に絶縁膜を形成しておくとよい。
【0076】
上部ガス導入管21は、図2に示すように、誘電体窓3が形成されている領域を避けて、真空容器2の上壁2a(梁)の内面に沿って設けられている。詳しくは、上部ガス導入管21は、複数の配管部21bと1つの延出部21cとを有している。複数の配管部21bは、真空容器2の上壁2a(梁)の内面に沿うように互いに平行に配管されている。延出部21cは、これら配管部21bと直交するように配管されているとともに、これら配管部21bを互いに連通させている。この延出部21cの両端は、真空容器2の周壁2cを介して、真空容器2の外方に延出している。延出部21cの両端又は一端には、上記第1のガスを収容する第1のガスシリンダ(図示せず)を着脱自在に取り付けることができるようになっている。
【0077】
これら配管部21bには、夫々、複数のガス噴出口21aが長手方向に略等間隔で設けられている。したがって、複数のガス噴出口21aは、略同一面上に位置することとなる。これらガス噴出口21aは、電磁波入射面Fからの距離L1が表面波プラズマの表皮厚さδよりも小さくなる位置に設けられている。本実施形態では、これらガス噴出口21aが形成されている仮想平面F1と電磁波入射面Fとの距離L1が10mm未満、例えば、3mmとなるように、上部ガス導入管21が形成されており、上部ガス導入管21を配管することで、複数のガス噴出口21aが電磁波入射面Fの下方3mmの位置に設けられるようになっている(図1参照)。
【0078】
下部ガス導入系7は、有機シリコン化合物又は有機金属化合物を含む第2のガスを真空容器2の内部に導入するためのものである。本実施形態の絶縁膜形成装置1では、下部ガス導入系7は、例えば、第2のガス導入部としての下部ガス導入管22を有している。
【0079】
下部ガス導入管22は、上部ガス導入部と同様に、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン等の金属、或いは酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の誘電体によって形成されている。ところで、放電初期のプラズマが表面波プラズマ状態に至るまでの間のような過渡状態では、電磁波は下部ガス導入系7まで到達する。そのため、下部ガス導入管22を金属材料によって形成すると、上記過渡状態において、下部ガス導入系7が電磁界やプラズマに影響を与える場合がある。そのため、下部ガス導入管22が電磁界やプラズマに影響を与える影響を考慮すると、下部ガス導入管22は、誘電体材料で形成するのが好ましい。下部ガス導入管22を金属材料で形成するような場合には、下部ガス導入管22の外面に絶縁膜を形成しておくのが好ましい。
【0080】
下部ガス導入管22は、図3に示すように、環状部22bと一対の延出部22cとを有している。環状部22bは、被処理基板100の外周よりも一回り大きく形成されている。各延出部22cは、環状部22bと連通されている。各延出部22cの一端は、真空容器2の周壁2cを介して、真空容器2の外方に延出している。少なくとも一方の延出部22cの一端には、上記第2のガスを収容する第2のガスシリンダ(図示せず)を着脱自在に取り付けることができるようになっている。
【0081】
環状部22bには、複数のガス噴出口22aが長手方向に略等間隔で設けられている。これらガス噴出口22aは、電磁波入射面Fからの距離L2が表面波プラズマの表皮厚さδよりも大きくなる位置に設けられている。本実施形態では、これらガス噴出口22aが形成されている仮想平面F2と電磁波入射面Fとの距離L2が10mm以上、例えば、30mmとなるように、下部ガス導入管22が形成されており、下部ガス導入管22を配設することで、複数のガス噴出口22aが電磁波入射面Fの下方30mmの位置に設けられている(図1参照)。
【0082】
ところで、第2のガスに含まれる有機シリコン化合物ガスや有機金属化合物ガスは、モノシラン等と比べて沸点が高いため、液化し易い。そのため、第2のガスを安定して真空容器2の内部に導入するためには、下部ガス導入系7を適切な温度、すなわち80℃から200℃程度に保つのが望ましい。そのため、本実施形態の絶縁膜形成装置1では、下部ガス導入系7に加熱手段11を設けている。加熱手段11は、例えば、ヒータ13を有している。
【0083】
具体的には、ヒータ13は、例えば、下部ガス導入管22の各延出部22cにその外周面に設けられている。このようにすることにより、下部ガス導入管22を構成する材料の熱伝導によって下部ガス導入系7全体に熱を伝えることができる。したがって、加熱手段11を真空容器2内に設置する場合に比べて簡単な構成で下部ガス導入系7を適切な温度に保つことができる。なお、下部ガス導入管22を構成する材料の熱伝導によって下部ガス導入系7全体に熱を伝えるような構成の場合には、下部ガス導入管22は、窒化アルミニウム等のように、熱伝導係数の大きい材料で形成するのが望ましい。
【0084】
次に、絶縁膜形成装置1を用いた絶縁膜の形成方法の一例を説明する。本実施形態では、第1のガスとして酸素ガスを用いるともに、第2のガスとしてテトラアルコキシシランの一種であるテトラエトキシシランを用いて、被処理基板100に絶縁膜101を形成する例について説明する。
【0085】
基板支持台4上に被処理基板100を配置する。ガス排出系5を駆動させ、真空容器2内を実質的に真空とする。真空容器2内のガス圧が80Paとなるように、上部ガス導入系6から、真空容器2内に酸素ガスを400SCCMの流量で供給するとともに、下部ガス導入系7から、真空容器2内にテトラエトキシシランガスを12SCCMの流量で供給する。このとき、加熱手段11によって、下部ガス導入系7を適切な温度(80℃から200℃程度)に保っておく。
【0086】
高周波電源8をONにする。これにより、2.45GHzの電磁波は、導波管9を介して導波管スロットアンテナ10に導かれ、導波管スロットアンテナ10から誘電体窓3に向けて電力密度3W/cm2で照射されるようになる。
【0087】
2.45GHzの電磁波は、誘電体窓3を介して真空容器2内に照射される。これにより、酸素ガスが励振されてプラズマが生じ、電磁波入射面F近傍のプラズマ内の電子密度が増加する。電磁波入射面F近傍のプラズマ内の電子密度が増加していくと、電磁波はプラズマ内を伝播することが困難になり、このプラズマ内で減衰する。したがって、電磁波入射面Fから離れた領域には電磁波が届かなくなる。つまり、表面波プラズマが生じる。酸素ガスは、電磁波入射面Fとの距離L1が3mmとなる位置、すなわち、電磁波入射面Fからの距離L1が表皮厚さ δ よりも小さい領域から真空容器2内に導入されているため、表面波プラズマが生じている状態において、高密度なプラズマにより酸素分子が励振され、効率良く酸素ラジカルが生成される。
【0088】
一方、テトラエトキシシランガスは、電磁波入射面Fとの距離L2が30mmとなる位置、すなわち、電磁波入射面Fからの距離L2が表皮厚さよりも大きい領域から真空容器2内に導入されている。したがって、テトラエトキシシランガスが真空容器2内に導入されている領域には、電磁波は高密度のプラズマに遮蔽されて到達しないため、テトラエトキシシランが電磁波によって過度に分解されるのを抑制できる。また、電磁波入射面Fとの距離L1が30mmとなる位置であっても、酸素ラジカルは拡散流として到達するため、テトラエトキシシランと酸素ラジカルとは効率良く反応し、テトラエトキシシランの分解は促進される。したがって、被処理基板100の表面に、酸化シリコンが堆積する。テトラエトキシシランは、モノシラン等と比べて分子容積の大きい化合物であるため、その立体効果により被処理基板100の表面でマイグレーションしながら、この被処理基板100の表面に比較的均一に付着する。したがって、被処理基板100に膜質の良好な絶縁膜(酸化シリコン膜)101が形成される。
【0089】
このような条件下では、29nm/minの形成速度で被処理基板100に絶縁膜101を形成することができた。また、形成された絶縁膜101は、2MV/cmの電界を印加した時のリーク電流が2×10−10A/cm2、固定電荷密度が2×1011/cm2以下であった。この結果から、本実施形態の絶縁膜の形成方法では、リーク電流及び固定電荷密度とも低く抑制することができ、しかも、絶縁膜101の形成速度も良好であることがわかった。
【0090】
図10は、表面波プラズマにおける電子温度と電磁波入射面Fからの距離との関係を示している。電磁波入射面Fからの距離が10mm付近で電子温度が急激に変化しているのは、電磁波が到達し電子が直接励振されている領域(すなわち表皮厚さδ内の領域)と、電子がほとんど励振されない領域(すなわち表皮厚さδから外れた領域)とでは、電子温度に差が生じるためであると考えられる。この結果から、表面波プラズマ状態が維持される条件下では、表皮厚さδは最大でも10mm程度であることがわかった。
【0091】
図11は、表面波プラズマにおける電子密度と電磁波入射面Fからの距離との関係を示している。表面波プラズマでは前述のように電磁波によって励振される領域が局在化しているため、電子密度は電磁波入射面Fから遠ざかるに従って低下する。そのため、電磁波入射面Fから10mm程度離れた位置での電子密度は、電磁波入射面Fでの電子密度の50%以下となることがわかった。なお、この結果から、酸素は電子を取り込み易いため、100%のアルゴンでプラズマを発生させた場合に比べて、酸素を混合すると電子密度が低下することもわかった。
【0092】
以上のように、本実施形態の絶縁膜の形成方法によれば、電磁波が入射される電磁波入射面Fを有する真空容器2の内部に被処理基板100を配設する工程と、希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含む第1のガスとしての酸素ガスを、電磁波入射面Fからの距離L1が10mm未満となる位置から真空容器2の内部に導入させるとともに、有機シリコン化合物としてのテトラエトキシシランガスを含む第2のガスを、電磁波入射面Fからの距離L2が10mm以上となる位置から、第1のガスと分離して、真空容器2の内部に導入させる工程と、真空容器2の内部に電磁波入射面Fから電磁波を入射させることにより、真空容器2の内部で第1及び第2のガスによる表面波プラズマを生じさせ、被処理基板100に酸化シリコンを堆積させる工程とを有している。したがって、被処理基板100やこの被処理基板100に形成される絶縁膜101に損傷が与えられるのを抑制しつつ、被処理基板100に良好に絶縁膜101を形成することができる。
【0093】
なお、本実施形態の絶縁膜の形成方法では、第1のガスとして酸素ガス、第2のガスとしてテトラエトキシシランガスを採用したが、第1及び第2のガスはこれに限定されるものではない。
【0094】
第1のガスは、酸素ガスに限定されるものではなく、希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含むガスを採用すればよい。第1のガスとしては、例えば、酸素と、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンのうちの1以上の希ガスと混合ガスを用いることができる。酸素へのヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの添加は、10%から99%までの広い添加比率で可能であり、その添加比率によって絶縁膜の形成速度を増加させることができる。
【0095】
また、第1のガスとして、酸素ガスを含むガスを採用した場合、酸素ガスを真空容器2の内部に供給する時の流量を、第2のガスを真空容器2の内部に供給する時の流量よりも多くなるようにすることで、有機シリコン化合物中のシリコン原子や有機金属酸化物中の金属原子の酸化が促進されるため、より酸素欠損の少ない高品質な酸化膜を形成することができる。
【0096】
第2のガスとしては、有機シリコン化合物又は有機金属酸化物を含むガスを採用すればよい。このようにすることにより、被処理基板100やこの被処理基板100に形成される絶縁膜に損傷が与えられるのを抑制しつつ、被処理基板100に良好に絶縁膜を形成することができる。
【0097】
また、有機シリコン化合物としては、例えば、テトラアルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、ポリメチルジシロキサン、ポリメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。有機金属化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、テトラプロポキシジルコニウム、ペンタエトキシタンタル、テトラプロポキシハフニウム等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0098】
また、本実施形態の絶縁膜形成装置1によれば、内部に被処理基板100を配設可能な真空容器2と、電磁波を発生させるための高周波電源8と、電磁波を真空容器2に向けて放射するアンテナと、内面に電磁波入射面Fを有し、真空容器2の壁の一部を構成するように真空容器2に設けられ、アンテナから放射された電磁波を真空容器の内部に透過させる誘電体窓3と、希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含む第1のガスとしての酸素ガスを真空容器2内に導入する上部ガス導入管21を有し、真空容器2に設けられた上部ガス導入系6と、有機シリコン化合物又は有機金属化合物を含む第2のガスを真空容器2内に導入する下部ガス導入管22を有し、真空容器2に設けられた下部ガス導入系7とを具備している。そして、上部ガス導入管21が下部ガス導入管22よりも電磁波入射面F側に設けられているとともに、下部ガス導入管22のガス噴出口22aと電磁波入射面Fとの間の距離L2を10mm以上離している。この絶縁膜形成装置1を用いることで、被処理基板100やこの被処理基板100に形成される絶縁膜に損傷が与えられるのを抑制しつつ、被処理基板100に良好に絶縁膜を形成することができる。
【0099】
しかも、本実施形態の絶縁膜形成装置1は、アンテナが、1以上の導波管スロットアンテナ10を有しているため、誘電損失が少なく大電力に耐えることができる。さらに、複数の導波管スロットアンテナ10を、複数の誘電体窓3の外面と夫々対向させ、且つ、互いに並べて配設しているので、大型の液晶表示装置等に用いる角型で面積の大きい基板であっても絶縁膜を形成することができる。
【0100】
以下、本発明の第2の実施形態を、図4及び図5を参照して説明する。本実施形態では、絶縁膜形成装置の一実施形態について説明する。
【0101】
本実施形態の絶縁膜形成装置1は、下部ガス導入系7及び加熱手段11が第1の実施の形態で説明した絶縁膜形成装置1と異なっているが、他の構成は上述した第1の実施形態の絶縁膜形成装置1と同じであるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
【0102】
下部ガス導入系7は、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン等の金属、或いは、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の誘電体により形成されている。なお、下部ガス導入系7の材料として誘電体を用いるのが望ましいことは、第1の実施形態の絶縁膜形成装置1と同様である。
【0103】
下部ガス導入系7は、第1のガス導入部(下部ガス導入部)としてのシャワープレート30を有している。図4に示すように、シャワープレート30は、互いに対向する一対の板材31a,31bを有して偏平な箱状に形成されており、内部空間S1に第2のガスが流通されるようになっている。シャワープレート30は、内部空間S1を開放させる開口部32を有している。また、真空容器2の周壁2cには、内部空間S1を真空容器2の外方に開放するための開口部33が形成されている。したがって、シャワープレート30の内部空間S1は、開口部32と開口部33の壁を介して、真空容器2の外方に開放している。第2のガスは、開口部33及び開口部32を介して、シャワープレート30の内部空間S1に導入される。このシャワープレート30は、真空容器2を上側の部屋と下側の部屋とに分断する大きさに形成されており、基板支持台4を上方から覆うように設けられている。
【0104】
図5に示すように、このシャワープレート30は、第1のガスや酸素ラジカルを上側の部屋と下側の部屋とで流通させるための多数の貫通孔35が設けられている。さらに、このシャワープレート30には、下側の板材31bの壁に多数のガス噴出口36が設けられている。
【0105】
さらに、このシャワープレート30には、加熱手段11が設けられている。加熱手段11は、高温媒体循環器34を有している。高温媒体循環器34は、ポンプ34a、循環路34b、ヒータ(図示せず)、及び、高温流体等を有して構成されている。高温流体は、例えば、空気や、窒素、アルゴン、クリプトン、キセノン等のガス、或いは、水、エチレングリコール、鉱油、アルキルベンゼン、ジアリールアルカン、トリアリールジアルカン、ジフェニル−ジフェニルエーテル混合体、アルキルビフェニル、アルキルナフタレン等の液体から選択すればよい。
【0106】
高温流体(高温気体又は高温液体)を循環させる循環路34bは、シャワープレート30の内部に設けられている。なお、上記循環路は、第1のガスを流通させる内部空間S1からは隔離されている。この高温媒体循環器34では、ヒータで高温流体を加熱するとともに、ポンプ34aを稼動させて高温流体をシャワープレート30の内部に流通させることによって、下部ガス導入系7を80℃乃至200℃程度の温度に保つように構成されている。
【0107】
このように下部ガス導入系7を高温媒体の循環によって加熱すると、下部ガス導入系7にすばやく熱エネルギーが伝えられるとともに、下部ガス導入系7を均等に加熱することができる。そのため、有機シリコン化合物ガスや有機金属化合物ガスを含むガスを使用して絶縁膜を形成する際に、有機シリコン化合物ガスや有機金属化合物ガスの液化によるガス供給量の変動を抑止することができる。
【0108】
以上のように、本実施形態の絶縁膜形成装置1を用いれば、有機シリコン化合物ガスや有機金属化合物ガスの液化によるガス供給量の変動を抑止することができるため、被処理基板100に絶縁膜101を形成する際において、良好な膜厚制御性及び膜厚均一性を実現することができる。
【0109】
以下、本発明の第3の実施形態を、図6を参照して説明する。本実施形態では、絶縁膜形成装置の一実施形態について説明する。
【0110】
本実施形態の絶縁膜形成装置1は、上部ガス導入系6及び下部ガス導入系7が第1の実施の形態で説明した絶縁膜形成装置1と異なっているが、他の構成は上述した第1の実施形態の絶縁膜形成装置1と同じであるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
【0111】
上部ガス導入系6及び下部ガス導入系7は、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン等の金属、或いは、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の誘電体により形成されている。なお、上部ガス導入系6及び下部ガス導入系7の材料として誘電体を用いるのが望ましいことは、第1の実施形態の絶縁膜形成装置1と同様である。
【0112】
上部ガス導入系6は、第1のガス導入部(上部ガス導入部)としての上部シャワープレート40を有している。上部シャワープレート40は、真空容器2の上壁2aの内面を覆う板材41を有しており、真空容器2の上壁2aと板材41との間の内部空間S2に、第1のガスが流通されるようになっている。板材41は、内部空間S2を気密に保つように、真空容器2の上壁2aに接続されている。上部シャワープレート40の内部空間S2は、真空容器2の周壁2cに形成された開口部42を介して、真空容器2の外方に開放している。この開口部42から、第1のガスが上部シャワープレート40の内部空間S2に導入される。また、この上部シャワープレート40の板材41には、多数のガス噴出口43が略等間隔で設けられている。
【0113】
ところで、上述したような上部シャワープレート40では、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン等の金属製の板材41を真空容器2の上壁2aに接地させるとともに、ガス噴出口43を充分に小さくすることで、プラズマを内部空間S2に閉じ込めることができる。このようにすることにより、放電初期のプラズマが表面波プラズマ状態に至るまでの過渡状態において、プラズマが被処理基板100に達するのを抑制できるとともに、プラズマ放射光に含まれるエネルギーの高い紫外光を上部シャワープレート40により遮ることができる。したがって、被処理基板100の損傷抑止効果を高めることができる。
【0114】
上部シャワープレート40を、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の誘電体で形成した場合、上部シャワープレート40の形状や上部シャワープレート40の内部空間S2におけるガス圧力等によっては、プラズマは、板材41の上方で生じる場合と板材41に下方で生じる場合とがある。
【0115】
プラズマが板材41の上方で生じるように設定すると、プラズマ放射光に含まれるエネルギーの高い紫外光が上部シャワープレート40で遮られるため、被処理基板100の損傷抑止効果を高めることができる。
【0116】
プラズマが板材41の下方で生じるように設定すると、上部シャワープレート40を通して第1のガスをプラズマに分散供給することができるため、プラズマの均一性を高めることができる。なお、プラズマが板材41の下方で生じるように設定した場合には、電磁波入射面Fは、板材41と真空容器2の内部空間との界面(板材41の下面)であり、他の場合は電磁波入射面Fは、誘電体窓3と真空容器2の内部空間との界面(誘電体窓3の内面)である。
【0117】
下部ガス導入系7は、第2のガス導入部(下部ガス導入部)としての下部シャワープレート50を有している。下部シャワープレート50は、基板支持台4に支持される被処理基板100を覆う程度の大きさに形成されている。この下部シャワープレート50は、互いに対向する一対の板材51a,51bを有して偏平な箱状に形成されており、内部空間S3に第2のガスが流通されるようになっている。下部シャワープレート50の内部空間S3は、真空容器2の周壁2cに形成された開口部52を介して、真空容器2の外方に開放している。この開口部52から、第2のガスが下部シャワープレート50の内部空間S3に導入される。
【0118】
また、この下部シャワープレート50の下側の板材51bには、多数のガス噴出口53が設けられている。この下部シャワープレート50では、複数のガス噴出口53の単位面積あたりの開口比率を、下部シャワープレート50内のガス流の上流側で、このガス流に対するガス噴出口53のコンダクタンス(物理的抵抗の逆数)が小さく、下部シャワープレート50内のガス流の下流側で、このガス流に対するガス噴出口53のコンダクタンスが大きくなるように設定している。具体的には、複数のガス噴出口53の単位面積あたりの開口比率を、下部シャワープレート50内のガス流の上流側が小さく、ガス流の下流側が大きくなるように設定している。このようにすることにより、下部シャワープレート50の下面の略全域に対応する領域から、第2のガスを真空容器2内に向けて均一に吐出させることができる。また、図示しないが、下部シャワープレート50は、第1のガスや酸素ラジカルを下部シャワープレート50の上側の領域と下部シャワープレート50の下側の領域との間で流通させるための多数の貫通孔を有している。
【0119】
なお、下部ガス導入系7を80℃から200℃程度の温度に保つことが望ましい。そのため、下部ガス導入系7に、第1の実施形態の絶縁膜形成装置1が備える加熱手段11や、第2の実施形態の絶縁膜形成装置1が備える加熱手段11等を備えさせてもよい。
【0120】
以上のように、本実施形態の絶縁膜形成装置1を用いれば、第2のガスを被処理基板100の上方から真空容器2内に均一に供給することができるため、被処理基板100に絶縁膜101を形成する際において、良好な膜厚制御性及び膜厚均一性を実現することができる。
【0121】
以下、本発明の第4の実施形態を、図7を参照して説明する。本実施形態では、絶縁膜形成装置の一実施形態について説明する。
【0122】
本実施形態の絶縁膜形成装置は、上部ガス導入系6及び下部ガス導入系7が第1の実施の形態で説明した絶縁膜形成装置1と異なっているが、他の構成は上述した第1の実施形態の絶縁膜形成装置1と同じであるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
【0123】
上部ガス導入系6は、第3の実施の形態で説明した絶縁膜形成装置1が備える上部ガス導入系6と同様である。
【0124】
下部ガス導入系7は、下部ガス導入部としての下部シャワープレート60を有している。下部シャワープレート60は、基板支持台4に支持される被処理基板100を覆う程度の大きさに形成されている。この下部シャワープレート60は、互いに対向する一対の板材61a,61bを有して偏平な箱状に形成されており、内部空間S4に第2のガスが流通されるようになっている。下部シャワープレート60の内部空間S4は、真空容器2の周壁2cに形成された開口部62を介して、真空容器2の外方に開放している。この開口部62から、第2のガスが下部シャワープレート60の内部空間S4に導入される。
【0125】
下部シャワープレート60の内部空間S4には、第2のガスの流れを調整する複数の隔壁64が設けられている。これらの隔壁64は、下部シャワープレート60内のガス流の上流側でこのガス流に対する隔壁64のコンダクタンスが大きく、下部シャワープレート60内のガス流の下流側でこのガス流に対する隔壁64のコンダクタンスが小さくなるように、その大きさが設定されている。具体的には、各隔壁64は、下部シャワープレート60内のガス流の上流側で低く、ガス流の下流側が高くなるように、その高さが設定されている。このように、第2のガスの流入圧力の高いガス流の上流側の隔壁64を小さくすることで、ガス流の上流側のコンダクタンスを大きくすることができるとともに、第2のガスの流入圧力の低いガス流の下流側で隔壁64を大きくすることで、ガス流の下流側のコンダクタンスを小さくすることができる。
【0126】
下部シャワープレート60の下側の板材61aには、これら隔壁64で区分される各領域に夫々対応させて、多数のガス噴出口63が設けられている。このようにすることにより、第2のガスは、隔壁64で制限された隙間65を通る流れと、ガス噴出口63から噴出する流れに分かれる。隔壁64によりコンダクタンスを変えることで、隙間65を通る流れと、ガス噴出口63から噴出する流れの流量比を調節することができる。この流量比を所望の値に調整することで、下部シャワープレート60の下面の略全域に対応する領域から、第2のガスを真空容器2内に向けて均一に吐出させることができる。また、図示しないが、下部シャワープレート60は、第1のガスや酸素ラジカルを下部シャワープレート60の上側の領域と下部シャワープレート60の下側の領域との間で流通させるための多数の貫通孔を有している。
【0127】
なお、下部ガス導入系7を80℃から200℃程度の温度に保つことが望ましい。そのため、下部ガス導入系7に、第1の実施形態の絶縁膜形成装置1が備える加熱手段11や、第2の実施形態の絶縁膜形成装置1が備える加熱手段11等を備えさせてもよい。
【0128】
以上のように、本実施形態の絶縁膜形成装置1を用いれば、第2のガスを被処理基板100の上方から真空容器2内に均一に供給することができるため、被処理基板100に絶縁膜101を形成する際において、良好な膜厚制御性及び膜厚均一性を実現することができる。
【0129】
以下、本発明の第5の実施形態を、図8を参照して説明する。本実施形態では、絶縁膜形成装置の一実施形態について説明する。
【0130】
本実施形態の絶縁膜形成装置1は、上部ガス導入系6及び下部ガス導入系7が第1の実施の形態で説明した絶縁膜形成装置1と異なっているが、他の構成は上述した第1の実施形態の絶縁膜形成装置1と同じであるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
【0131】
上部ガス導入系6としては、第3の実施の形態で説明した絶縁膜形成装置1が備える上部ガス導入系6と同様である。
【0132】
下部ガス導入系7は、第2のガス導入部(下部ガス導入部)としての下部シャワープレート70を有している。下部シャワープレート70は、基板支持台4に支持される被処理基板100を覆う程度の大きさに形成されている。この下部シャワープレート70は、互いに対向する一対の板材71a,71bを有して偏平な箱状に形成されている。また、一対の板材71a,71cの間には、複数の開口部74aを有する拡散板74が設けられている。この拡散板74により、下部シャワープレート70の内部空間S5は、第1のガス室としての上側ガス室G1と、第2のガス室としての下側ガス室G2とに分断されている。下部シャワープレート70の内部空間S5のうちの上側ガス室G1は、真空容器2の周壁2cに形成された開口部72を介して、真空容器2の外方に開放している。この開口部62から、第2のガスが下部シャワープレート70の上側ガス室G1に導入される。また、下部シャワープレート70の下側の板材71bは、複数のガス噴出口73を有している。
【0133】
この下部シャワープレート70では、拡散板74の開口部74aの大きさ・数・形状等によって、上側ガス室G1と下側ガス室G2との間でガスの流れが調整されるようになっている。本実施形態では、拡散板74の開口部74aの単位面積あたりの開口比率は、下部シャワープレート70内のガス流の上流側で、このガス流に対する開口部74aのコンダクタンスが小さく、下部シャワープレート70内のガス流の下流側で、このガス流に対する開口部74aのコンダクタンスが大きくなるように設定されている。具体的には、第2のガスの流入圧力の高いガス流の上流側では、拡散板74の単位面積あたりの開口面積を小さくすることでコンダクタンスを小さくし、第2のガスの流入圧力の低いガス流の下流側では、開口面積を大きくすることでコンダクタンスを大きくしている。このようにすることにより、拡散板74の下面の略全域に対応する領域から、第2のガスを下側ガス室G2に向けて均一に送ることができるため、結果として、下部シャワープレート57の下面の略全域に対応する領域から、第2のガスを真空容器2内に向けて均一に吐出されることとなる。
【0134】
なお、下部ガス導入系7を80℃から200℃程度の温度に保つことが望ましい。そのため、下部ガス導入系7に、第1の実施形態の絶縁膜形成装置1が備える加熱手段11や、第2の実施形態の絶縁膜形成装置1が備える加熱手段11等を備えさせてもよい。
【0135】
以上のように、本実施形態の絶縁膜形成装置1を用いれば、第2のガスを被処理基板100の上方から真空容器2内に均一に供給することができるため、被処理基板100に絶縁膜101を形成する際において、良好な膜厚制御性及び膜厚均一性を実現することができる。
【0136】
以下、本発明の第6の実施形態を、図9を参照して説明する。本実施形態では、絶縁膜形成装置の一実施形態について説明する。
【0137】
本実施形態の絶縁膜形成装置1は、上部ガス導入系6が第1の実施の形態で説明した絶縁膜形成装置1と異なっているが、他の構成は上述した第1の実施形態の絶縁膜形成装置1と同じであるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
【0138】
本実施形態の上部ガス導入系6は、誘電体窓3と一体化に形成されている。詳しくは、誘電体窓3には、その内部に第1のガスを流通させるガス流通経路81、ガス流通経路81と真空容器2の内部とを連通させる複数の連通路82、及び、ガス流通経路81と真空容器2の外方とを連通させる連通管83とを有している。ガス流通経路81及び複数の連通路82は、誘電体窓3を切削する等により形成されている。各連通管83はガス流通経路81と連通している。ガス流通経路81と連通管83とにより第1のガス導入部(上部ガス導入部)が構成されており、連通路82の開口端が、第1のガスを真空容器2の内部に導入するガス噴出口となる。
【0139】
連通管83は、真空容器2の上壁2aに形成された貫通孔84内に配管され、真空容器2の外方に延出している。連通管83は、誘電体窓3とは一体であっても別体であってもよい。なお、この場合においても、誘電体窓3の内面が電磁波入射面Fとなる。他の構成は第1の実施形態の絶縁膜形成装置1と同じであるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
【0140】
本実施形態の絶縁膜形成装置1によれば、第1のガス導入系から供給される第1のガスを誘電体部材3近傍で効率よく分解させ、酸素ラジカルを効率良く生成することができる。
【0141】
なお、本発明の絶縁膜の形成方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲において種々に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る絶縁膜形成装置を示す断面図。
【図2】図1中のII−II線に沿って示す断面図。
【図3】図1中のIII−III線に沿って示す断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る絶縁膜形成装置を示す断面図。
【図5】図4中のV−V線に沿って示す断面図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る絶縁膜形成装置を示す断面図。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る絶縁膜形成装置を示す断面図。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る絶縁膜形成装置を示す断面図。
【図9】本発明の第6の実施形態に係る絶縁膜形成装置を示す断面図。
【図10】電磁波入射面からの距離と電子温度との関係を示す図。
【図11】電磁波入射面からの距離と電子密度との関係を示す図。
【符号の説明】
【0143】
1a,1b,1c,1d,1e,1f…絶縁膜形成装置、 2…真空容器(処理容器)、 3…誘電体窓(誘電体部材)、 6…上部ガス導入系(第1のガス導入系)、 7…下部ガス導入系(第2のガス導入系)、 8…高周波電源、 10…導波管スロットアンテナ、 11加熱手段、 100…被処理基板100、 101…絶縁膜、 F…電磁波入射面、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波が入射される電磁波入射面を有する処理容器の内部に、被処理基板を配設する工程と、
希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含む第1のガスを、前記電磁波入射面からの距離が10mm未満となる位置から真空の前記処理容器の内部に導入させる工程と、
有機金属化合物を含む第2のガスを、前記電磁波入射面からの距離が10mm以上となる位置に設けられ、被処理基板より大きい環状の下部ガス導入管から、前記第1ガスと分離して前記処理容器の内部に導入させる工程と、
前記処理容器の内部に前記電磁波入射面から電磁波を入射させることにより、前記処理容器の内部で前記電磁波入射面近傍に前記第1のガスによる表面波プラズマを生じさせ第1のガスのラジカルを生成させる工程と、
前記ラジカルが拡散流として前記第2のガス雰囲気に到達し前記第2のガスと反応して前記被処理基板に金属酸化物を堆積させる工程と、
を有し、下部ガス導入管を80℃乃至200℃に加熱することにより膜厚が安定した絶縁膜を形成することを特徴とする絶縁膜の形成方法。
【請求項2】
前記第1のガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノンのうちの少なくとも1種の希ガスを含んでいることを特徴とする請求項1記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項3】
前記第1のガスが酸素ガスを含んでいるとともに、前記酸素ガスを前記処理容器の内部に供給するときの流量が、前記第2のガスを前記処理容器の内部に導入させるときの流量よりも多くなるように設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項1】
電磁波が入射される電磁波入射面を有する処理容器の内部に、被処理基板を配設する工程と、
希ガス及び酸素ガスのうちの少なくとも一方を含む第1のガスを、前記電磁波入射面からの距離が10mm未満となる位置から真空の前記処理容器の内部に導入させる工程と、
有機金属化合物を含む第2のガスを、前記電磁波入射面からの距離が10mm以上となる位置に設けられ、被処理基板より大きい環状の下部ガス導入管から、前記第1ガスと分離して前記処理容器の内部に導入させる工程と、
前記処理容器の内部に前記電磁波入射面から電磁波を入射させることにより、前記処理容器の内部で前記電磁波入射面近傍に前記第1のガスによる表面波プラズマを生じさせ第1のガスのラジカルを生成させる工程と、
前記ラジカルが拡散流として前記第2のガス雰囲気に到達し前記第2のガスと反応して前記被処理基板に金属酸化物を堆積させる工程と、
を有し、下部ガス導入管を80℃乃至200℃に加熱することにより膜厚が安定した絶縁膜を形成することを特徴とする絶縁膜の形成方法。
【請求項2】
前記第1のガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノンのうちの少なくとも1種の希ガスを含んでいることを特徴とする請求項1記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項3】
前記第1のガスが酸素ガスを含んでいるとともに、前記酸素ガスを前記処理容器の内部に供給するときの流量が、前記第2のガスを前記処理容器の内部に導入させるときの流量よりも多くなるように設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁膜の形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−35435(P2011−35435A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261736(P2010−261736)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【分割の表示】特願2004−81307(P2004−81307)の分割
【原出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【出願人】(501286657)株式会社 液晶先端技術開発センター (161)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【分割の表示】特願2004−81307(P2004−81307)の分割
【原出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【出願人】(501286657)株式会社 液晶先端技術開発センター (161)
【Fターム(参考)】
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