説明

絶縁被膜付きコンデンサ及びその製造方法

【課題】金属台座上にチップ型積層セラミックコンデンサを実装しても、端子電極間で短絡してしまうことがなく、かつワイヤーボンディングによる結線が可能な絶縁被膜付きコンデンサを提供すること。
【解決手段】チップ型積層体を製造する工程と、前記チップ型積層体に下地電極を施す工程と、前記端子電極上にめっきを施す工程と、電気的に接続していない複数の前記端子電極を同時に有する一の面上に絶縁被膜を施す工程とから製造された絶縁被膜付きコンデンサであって、前記絶縁被膜を施す部位は、電気的に接続していない複数の端子電極を同時に有する一の面上にある、少なくとも前記一の面上の前記端子電極を含む部位である絶縁被膜付きコンデンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分的に絶縁被膜コーティングを施したチップ型積層セラミックコンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焦電型赤外線センサーのパッケージ内などの導電性の台座の上に実装されるコンデンサは、そのまま導電性の台座に実装すると、その両端の端子電極が電気的に短絡してしまうので、例えば特開2004−279118号公報に示されているような複雑に配線された内部配線基板上に実装して、端子電極が短絡することを防止していると同時に、電気結線されているが、複雑な内部配線基板を設置する必要があるため、コスト的な問題があった。
【0003】
また、前記問題を解決するために、特開2010−169520号公報においては、内部配線基板を廃止し、ヘッダー上に直接コンデンサをエポキシ樹脂等の接着剤で固定し、各部品間の電気的結線をワイヤーボンディングで行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−279118号公報
【特許文献2】特開2010−169520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献2では、金属台座の上に接着剤を用いて直接コンデンサを実装しているので、接着工程においてコンデンサを金属台座に押しつけたときに端子電極間で短絡してしまう場合があるという問題があった。
【0006】
この問題を解決するために、コンデンサを実装する部分の金属台座上に絶縁被膜を形成する手法も考えられるが、金属端子等の突起物の隙間というごく狭いスペースに限定して絶縁被膜を形成するのは非常に困難である。
【0007】
したがって、本発明は上記事情を鑑みて、金属台座上に直接チップ型積層セラミックコンデンサを実装しても、端子電極間で短絡してしまうことがなく、かつワイヤーボンディングによる結線が可能な絶縁被膜付きコンデンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、2以上の端子電極を有するチップ型積層セラミックコンデンサにおいて、電気的に接続していない複数の端子電極を同時に有する一の面上の、少なくとも前記端子電極を含む部位に絶縁被膜を施した絶縁被膜付きコンデンサを採用する。
【0009】
このような絶縁被膜付きコンデンサの製造方法にして、従来から周知の方法でチップ型積層体を製造する第一の工程と、前記チップ型積層体に下地電極を施す第二の工程と、前記下地電極上にめっきを施す第三の工程と、電気的に接続していない複数の前記下地電極を同時に有する一の面上に絶縁被膜を施す第四の工程とからなる前記絶縁被膜付きコンデンサの製造方法。
【0010】
従来から周知の方法でチップ型積層体を製造する第一の工程と、前記チップ型積層体に下地電極を施す第二の工程と、電気的に接続していない複数の前記下地電極を同時に有する一の面上に絶縁被膜を施す第三の工程と、前記下地電極上にめっきを施す第四の工程とからなる前記絶縁被膜付きコンデンサの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
このような本発明による絶縁被膜付きコンデンサを用いれば、端子電極同士が導通することなく金属面上に実装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一般的なチップ型積層セラミックコンデンサの斜視図
【図2】本発明による絶縁被膜付きコンデンサの斜視図
【図3】図2の絶縁被膜付きコンデンサのA−A断面図
【図4】金属台座に絶縁被膜付きコンデンサを実装した外観斜視図
【図5】金属台座に絶縁被膜付きコンデンサを実装したときの断面図
【図6】絶縁被膜付きコンデンサの第二の形態の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
まず、図1は、従来から周知である、対向する2面に端子電極1を有するチップ型積層セラミックコンデンサ2である。図2は、本発明による絶縁被膜付きコンデンサ3の外観を示したもので、また、図3はそのA−A断面図を示している。このように、チップ型積層セラミックコンデンサ2の6面のうち、2つの端子電極1を同時に有する面上において、少なくともこの面上の端子電極を含む部位に絶縁被膜4が施してある。すなわち、平面上にチップ型積層セラミックコンデンサ2を載置したときに、少なくともこの平面と接している端子電極部位に絶縁被膜4を施すのである。なお、絶縁被膜4は、図2及び図3に示すように、前記端子電極部位だけでなく、2つの端子電極1を同時に有する面上、さらには外周面にまで回り込んで被覆することによって、端子電極間の絶縁はより確実なものとなる。
【0015】
図3に示すように、このチップ型積層セラミックコンデンサ2の端子電極1は、第一の層であるCu、Ag、Niなどからなる下地電極5と、第二の層であるNiめっき6と、第三の層であるAuめっき7とから構成されている。また、絶縁被膜4はエポキシ系、フェノール系、アクリル系などの絶縁素材からなる。
【0016】
本発明による絶縁被膜付きコンデンサ3は、図4及び図5に示されるように、一般的な焦電型赤外線センサーのパッケージの金属台座8上に、例えばエポキシ系ような絶縁性の接着剤9によって固定される。そして、回路を形成するために、ワイヤー10を用いて金属端子電極11の上端部にワイヤーボンディング接続される。なお、金属端子電極11は絶縁支持部12によって金属台座8とは絶縁されている。
【0017】
(実施例1)本発明による絶縁被膜付きコンデンサ3の製造方法として、従来から周知のチップ型積層体を製造する第一の工程と、前記チップ型積層体の内部電極が露出されている2面に下地電極5を施す第二の工程と、前記下地電極5にNiめっき6及びAuめっき7を施してチップ型積層セラミックコンデンサ2を完成させる第三の工程と、チップ型積層セラミックコンデンサ2の対向する2面の端子電極1を同時に有する一の面上に絶縁被膜を施す第四の工程とからなる絶縁被膜付きコンデンサ3の製造方法がある。
【0018】
前記第一の工程から第三の工程までは、従来から周知の製造方法である。第四の工程であるチップ型積層セラミックコンデンサ2の、前記一の面上、すなわち金属台座への実装面13に絶縁被膜4を施す手法としては、インクジェット、スクリーン印刷、転写などがある。
【0019】
この絶縁被膜付きコンデンサ3は、接着剤9を用いて金属台座8に固定するので、この接着工程において、絶縁被膜付きコンデンサ3を金属台座8に押しつける必要があるため、絶縁被膜付きコンデンサ3と金属台座8が接触してしまう場合がある。このとき、絶縁被膜4が施されていないコンデンサを使用している場合、端子電極がショートする不良を発生してしまう。しかし、図5に示すように、実装面13には絶縁被膜4が施されているので絶縁被膜付きコンデンサ3は、実装面と接触しても対向する2面の端子電極がショートしてしまうことはない。
【0020】
そして、絶縁被膜付きコンデンサ3の実装面13と反対側の面には、絶縁被膜4が施されていないので、ワイヤーボンディングによって金属端子電極11と容易に接続することができる。したがって、複雑な内部配線基板を設置することなく電気回路を形成することができるのである。
【0021】
(実施例2)本発明による絶縁被膜付きコンデンサ3の別の製造方法として、従来から周知のチップ型積層体を製造する第一の工程と、前記チップ型積層体の対向する2面に下地電極5を施す第二の工程と、前記対向する2面の下地電極5を同時に有する一の面上に絶縁被膜4を施す第三の工程と、前記下地電極5にNiめっき6及びAuめっき7を施す第四の工程とからなる絶縁被膜付きコンデンサ3の製造方法がある。
【0022】
このように、下地電極5を施した後に絶縁被膜4を被覆し、その後Niめっき6およびAuめっき7を施したとしても、図6のように、めっきは絶縁被膜4の上には施されずに、導電性の下地電極5の上にしか施されない。したがって、実装面13上にめっきされることはなく、実施例1で示した絶縁被膜付きコンデンサ3と同様の効果を得ることができる。
【0023】
さらに、実施例2の製造方法による絶縁被膜付きコンデンサ3は、Niめっき及びAuめっきを施す面積が、実施例1の製造方法による絶縁被膜付きコンデンサ3よりも小さくなるので、製造コストの面からみると有利になるのである。
【0024】
なお、Niめっき6を施した後に絶縁被膜4を被覆し、その後Auめっき7を施す手順は、生産効率を考慮すると現実的な手法ではないが、実施例1及び実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0025】
以上、本発明の詳細について、具体的な実施例を示しながら説明してきたが、ここで示したのは本発明の一つの実施形態であり、その技術思想を踏まえた上で、発明の効果を著しく損なわない限度において、前記実施形態の一部を変更して実施することが可能であることが理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明による絶縁被膜付きコンデンサは、導電性の基板上に実装しても端子電極が導通してしまうことがなく、しかもワイヤーボンディングで容易に結線することができる。
【符号の説明】
【0027】
1;,端子電極
2;,チップ型積層セラミックコンデンサ
3;,絶縁被膜付きコンデンサ
4;,絶縁被膜
5;,下地電極
6;,Niめっき
7;,Auめっき
8;,金属台座
9;,接着剤
10;,ワイヤー
11;,金属端子電極
12;,絶縁支持部
13;,実装面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の端子電極を有するチップ型積層セラミックコンデンサにおいて、電気的に接続していない複数の端子電極を同時に有する一の面上の、少なくとも前記端子電極を含む部位に絶縁被膜を施した絶縁被膜付きコンデンサ。
【請求項2】
チップ型積層体を製造する第一の工程と、
前記チップ型積層体に下地電極を施す第二の工程と、
前記下地電極上にめっきを施す第三の工程と、
電気的に接続していない複数の前記下地電極を同時に有する一の面上に絶縁被膜を施す第四の工程と、
からなる絶縁被膜付きコンデンサの製造方法。
【請求項3】
チップ型積層体を製造する第一の工程と、
前記チップ型積層体に下地電極を施す第二の工程と、
電気的に接続していない複数の前記下地電極を同時に有する一の面上に絶縁被膜を施す第三の工程と、
前記下地電極上にめっきを施す第四の工程と、
からなる絶縁被膜付きコンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−222124(P2012−222124A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85911(P2011−85911)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(591149089)株式会社MARUWA (35)
【Fターム(参考)】