説明

絶縁被覆導電粒子、異方導電接着フィルム及びそれらの製造方法

【課題】回路電極の接続において、同一基板上で隣り合う回路電極間の絶縁性及び対向する回路電極間の導通性に優れる異方導電接着フィルムに用いられる絶縁被覆導電粒子を提供すること。
【解決手段】基材粒子と該基材粒子表面の少なくとも一部を被覆する多層の金属めっき層とを有する導電粒子8と、導電粒子8表面の少なくとも一部を被覆する絶縁性微粒子6と、を備える絶縁被覆導電粒子10であって、前記基材粒子が平均粒径4.0μm以下の樹脂粒子であり、導電粒子8が水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を表面に有し、絶縁性微粒子6が水酸基を表面に有する無機酸化物微粒子である、絶縁被覆導電粒子10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁被覆導電粒子、異方導電接着フィルム及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板同士又はICチップ等の電子部品と回路基板とを電気的に接続する際には、接着剤に導電粒子を分散させた異方導電接着フィルムが用いられている。すなわち、異方導電接着フィルムを相対峙する電極間に配置して、加熱、加圧によって電極同士を接続後、加圧方向に導電性を持たせることによって、電気的接続を行うことができる。この異方導電接着フィルムは、通常エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂とカップリング剤、硬化剤、導電粒子を混入及び分散した接着剤ワニスを剥離性フィルム上に塗布及び乾燥させて作製される。
【0003】
液晶表示用ガラスパネルには、COG(Chip−On−Glass)実装又はCOF(Chip−On−Flex)実装等によって液晶駆動用ICが実装される。COG実装では、異方導電接着フィルムを用いて液晶駆動用ICを直接ガラスパネル上に接合する。COF実装では、金属配線を有するフレキシブルテープに液晶駆動用ICを接合し、異方導電接着フィルムを用いてそれらをガラスパネルに接合する。
【0004】
ところが、近年の液晶表示の高精細化に伴い、ICチップの回路電極である金バンプは狭ピッチ化、狭面積化しており、その他の電子部品も高精細化が進んでいる。そのため、異方導電接着フィルム中の導電粒子が隣り合う回路電極間に流出して、ショートを発生させやすいといった問題がある。
【0005】
この問題を解決するため、異方導電接着フィルムの少なくとも片面に絶縁性の接着剤層を形成させることで、COG実装及びCOF実装における接合品質の低下を防ぐ方法(特許文献1)、導電粒子の表面を電気的絶縁性の皮膜で被覆する方法(特許文献2)、導電粒子を散布することで導電粒子を均一に分散させる方法(特許文献3)が開発されている。
【特許文献1】特開平8−279371号公報
【特許文献2】特許第2794009号公報
【特許文献3】特開2000−149677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された方法では、安定した接続抵抗を得るために導電粒子数を増やす場合には、隣り合う回路電極間の絶縁性について未だ改良の余地がある。また、上記特許文献2に記載された方法では、対向する回路電極間の接続抵抗が上昇し、安定した電気抵抗が得られにくい傾向がある。更に、上記特許文献3に記載された方法でも、粒子量を増加させると隣り合う回路電極間での絶縁性が保たれにくくなる。
【0007】
そこで本発明は、回路電極の接続において、同一基板上で隣り合う回路電極間の絶縁性及び対向する回路電極間の導通性に優れる異方導電接着フィルム及び該異方導電接着フィルムに用いられる絶縁被覆導電粒子並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材粒子と基材粒子表面の少なくとも一部を被覆する多層の金属めっき層とを有する導電粒子と、導電粒子表面の少なくとも一部を被覆する絶縁性微粒子と、を備える絶縁被覆導電粒子であって、基材粒子が平均粒径4.0μm以下の樹脂粒子であり、導電粒子が水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を表面に有し、絶縁性微粒子が水酸基を表面に有する無機酸化物微粒子である、絶縁被覆導電粒子である。
【0009】
本発明の絶縁被覆導電粒子を用いた異方導電接着フィルムは、回路電極の接続において、同一基板上で隣り合う回路電極間の絶縁性及び対向する回路電極間の導通性に優れる。本発明の絶縁被覆導電粒子は、基材粒子が複数の金属めっき層で覆われているために、絶縁性微粒子が導電粒子から剥離しにくい。また、基材粒子の粒径が4.0μm以下であるために絶縁被覆導電粒子を小さくすることができる。その結果、該絶縁被覆導電粒子を用いた異方導電接着フィルムは隣接回路電極間での絶縁性に優れる。更に、絶縁性微粒子が表面に水酸基を有する無機酸化物微粒子であり、かつ導電粒子が表面に官能基を有することにより、低い接続抵抗値が得られる。
【0010】
絶縁性微粒子が平均粒径20〜500nmのシリカ微粒子であり、絶縁性微粒子による導電粒子表面の被覆率が30〜50%であることが好ましい。また、絶縁性微粒子による導電粒子表面の被覆率のCV値が20%以下であることが好ましい。これにより、接続抵抗値が更に低くなり、より安定した接続抵抗が得られる。
【0011】
また、絶縁性微粒子の表面電位が負電位であることが好ましい。絶縁性微粒子の表面電位が負電位であると、官能基を有する導電粒子に絶縁性微粒子が結合しやすくなる。
【0012】
メルカプト基、スルフィド基又はジスルフィド基と前記官能基とを有する化合物が、導電粒子表面に付着又は結合していることが好ましい。これらの化合物を導電粒子表面に付着又は結合させると絶縁性微粒子が導電粒子を被覆しやすくなる。
【0013】
導電粒子の金属めっき層が金層及びニッケル層を含み、該金層の少なくとも一部が該ニッケル層よりも外側に設けられていることが好ましい。また、X線光電子分光装置による電子分光法によって導電粒子表面における金原子とニッケル原子の原子存在比を求めたときに、金原子に対するニッケル原子の原子存在比が70%以下であることが好ましい。金層及びニッケル層を上記構成とすることにより、絶縁性微粒子が導電粒子から剥離しにくくなり、更に隣接回路間の絶縁性を向上できる。
【0014】
絶縁性微粒子は導電粒子よりも硬い粒子であることが好ましい。絶縁性微粒子を導電粒子よりも硬くすることで、異方導電接着フィルムを作製する際に絶縁被覆導電粒子が変形しにくくなる。その結果、接続安定性が向上する。
【0015】
本発明は、メルカプト基、スルフィド基又はジスルフィド基と水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基とを有する化合物を含む溶液に導電粒子を接触させて、化合物を導電粒子表面に付着又は結合させる第1のステップと、高分子電解質を含む溶液に導電粒子を接触させて、高分子電解質を導電粒子表面に付着させる第2のステップと、水酸基を表面に有する無機酸化物微粒子である絶縁性微粒子を含む分散液に導電粒子を接触させて、導電粒子と導電粒子表面の少なくとも一部を被覆する絶縁性微粒子とを有する絶縁被覆導電粒子を得る第3のステップと、をこの順に備える、絶縁被覆導電粒子の製造方法を提供する。
【0016】
上記製造方法によれば、本発明の絶縁被覆導電粒子を効率良く容易に製造することができる。
【0017】
本発明に係る異方導電接着フィルムは、絶縁性接着剤層と、上記本発明の絶縁被覆導電粒子とを有する異方導電接着フィルムであって、絶縁被覆導電粒子が、絶縁性接着剤層内に部分的に又は完全に埋没しており、かつ、該絶縁性接着剤層の厚さ方向の一方側にのみ偏って配置されている、異方導電接着フィルムである。このような異方導電接着フィルムは、回路電極の接続において、同一基板上で隣り合う回路電極間の絶縁性及び対向する回路電極間の導通性に優れている。
【0018】
本発明は、絶縁性接着剤層を一定速度で走行させながら、上記本発明の絶縁被覆導電粒子を、絶縁性接着剤層の一方面側において噴霧し、噴霧された絶縁被覆導電粒子を前記絶縁接着剤層の表面に落下させる工程を含む、異方導電接着フィルムの製造方法を提供する。
【0019】
上記製造方法によれば、絶縁被覆導電粒子を絶縁性接着剤層の表面上に均等に配置することができるため、製造された異方導電接着フィルムが回路電極の接続に用いられた際、隣り合う回路電極間の絶縁性及び対向する回路電極間の導通性を向上させることができる。
【0020】
また、上記製造方法の絶縁被覆導電粒子を落下させる工程において、電界を発生させることにより絶縁被覆導電粒子を落下させることが好ましい。絶縁被覆導電粒子は、電界の方向に進行し、絶縁接着剤層の表面上に落下するので高効率に絶縁被覆導電粒子を散布できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、回路電極の接続において、同一基板上で隣り合う回路電極間の絶縁性及び対向する回路電極間の導通性に優れる異方導電接着フィルム及び該異方導電接着フィルムに用いられる絶縁被覆導電粒子並びにそれらの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態にかかる絶縁被覆導電粒子の外観図である。本実施形態にかかる絶縁被覆導電粒子10は、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を表面に有する導電粒子8と、導電粒子8表面の少なくとも一部を被覆する絶縁性微粒子6とから構成される。
【0024】
導電粒子8の粒径は、絶縁性を確保する観点から、同一基板上で互いに隣り合う電極間の最小の間隔よりも小さいことが必要である。また、導電粒子8の粒径は、同一基板上で電極の高さにばらつきがある場合、そのばらつきよりも大きいことが好ましい。このような観点から、導電粒子8の粒径は、1〜10μmであることが好ましく、2.5〜5μmであることがより好ましい。
【0025】
導電粒子8は、基材粒子と基材粒子表面の少なくとも一部を被覆する多層の金属めっき層とを有する。前記基材粒子の平均粒径は4.0μm以下であり、好ましくは2.0μm〜4.0μmである。2.0μm以上であると、実装時に導電粒子がチップバンプの高さばらつきに挟まりにくく、導通性がより良好になる。4.0μm以下であると、絶縁抵抗が低下せず、ショート不良がより発生しにくくなる。
【0026】
前記基材粒子は樹脂からなる樹脂粒子である。基材粒子が樹脂粒子であるために、加熱及び加圧による変形によって導電粒子と電極との接触面積を増加させることができる。基材粒子に用いられる樹脂としては特に限定しないが、ポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂、並びにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン及びポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂等を用いることができる。
【0027】
前記基材粒子表面を被覆する金属めっき層は単層構造の部分があってもよいが、少なくとも一部は複数の層からなる多層構造である。多層構造の場合、耐食性や導電性の観点から最外層は金層であることが好ましく、金層が表面となる部分が導電粒子8表面全体において60%以上であることが好ましい。また、前記金属めっき層が金層及びニッケル層を含み、該金層の少なくとも一部が該ニッケル層よりも外側に設けられていることが好ましい。さらに、導電粒子8表面における金原子に対するニッケル原子の原子存在比が70%以下であることが好ましい。該原子存在比は、X線光電子分光装置によって測定される。導電粒子8表面を上記構成とすることにより、絶縁性微粒子6が導電粒子8から剥離しにくくなり、隣接回路間の絶縁性が向上できる。
【0028】
前記基材粒子表面を被覆する金属めっき層に用いられる金属として、金、ニッケルの他にも、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、パラジウム、錫、クロム、チタン、アルミニウム、コバルト、ゲルマニウム、カドミウム等の金属やITO、はんだ等を用いることができる。
【0029】
前記基材粒子を前記金属めっき層で被覆する方法として、無電解めっき、置換めっき、電気めっき、スパッタリング等の方法が挙げられる。前記金属めっき層の厚みは特に限定しないが、0.005〜1.0μmの範囲が好ましく、0.01〜0.3μmの範囲がより好ましい。前記金属めっき層の厚みが0.005μm未満であると導通不良を起こし易い傾向があり、1.0μmを超えるとコストがかかる。
【0030】
導電粒子8はその表面に官能基を有する。絶縁性微粒子6との結合力向上の観点から、官能基が、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。導電粒子8の表面にこれらの官能基が形成されていることは、例えば、X線電子分光分析法、飛行時間型二次イオン質量分析法等の分析手法によって確認することができる。
【0031】
前記官能基は、導電粒子8表面に対して配位結合を形成する基と前記官能基とを有する化合物を、導電粒子8表面に付着又は結合させることにより形成できる。前記配位結合を形成する基として、例えば導電粒子8の表面が金層からなる場合、金に対して配位結合を形成するメルカプト基、スルフィド基又はジスルフィド基が挙げられる。従って、メルカプト基、スルフィド基又はジスルフィド基と前記官能基とを有する化合物が、導電粒子8表面に付着又は結合していることが好ましい。このような、メルカプト基、スルフィド基又はジスルフィド基と前記官能基とを有する化合物として、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸メチル、メルカプトコハク酸、チオグリセリン、及びシステイン等が挙げられる。
【0032】
導電粒子8表面に、前記官能基を形成させる具体的な方法として、例えば、メタノールやエタノール等の有機溶媒中にメルカプト酢酸等の上述の化合物を10〜100mmol/l程度溶解し、その溶液の中に導電粒子8を分散する方法が挙げられる。
【0033】
絶縁性微粒子6は、対向する回路電極間の導通性を十分高くする観点から、無機酸化物微粒子である。該無機酸化物微粒子として、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニオブ、亜鉛、錫、セリウム、マグネシウムより選ばれる少なくとも一つの元素を含む酸化物からなる微粒子を好適に用いることができる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
絶縁性微粒子6は、その表面に水酸基を有する。なお、この水酸基の一部を、シランカップリング剤等でアミノ基やカルボキシル基、エポキシ基に変性してもよい。通常、無機酸化物の粒子径が500nm以下の場合には変性することは困難であるので、絶縁性微粒子6を変性せずに用いることが好ましい。
【0035】
一般に水酸基は、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等の官能基と、脱水縮合による共有結合や水素結合によって強固な結合を形成する。導電粒子8はその表面にこれらの官能基を有しているため、導電粒子8と絶縁性粒子6とは強固な結合力を有している。さらに、絶縁性微粒子6の表面電位が負電位であることが好ましい。絶縁性微粒子6の表面電位が負電位であると、官能基を有する導電粒子8に絶縁性微粒子6が結合しやすくなる。
【0036】
絶縁性微粒子6が、前記無機酸化物微粒子の中でも粒子径を制御した水分散コロイダルシリカ(SiO)であることが特に好ましい。水分散コロイダルシリカ(SiO)であると、隣接回路電極間の絶縁性を更に良好にできる。水分散コロイダルシリカは表面に水酸基を有する為、導電粒子8との結合力に優れていること、粒子径を揃えやすいこと、安価であること等の利点も有する。絶縁信頼性向上のために、分散溶液中のアルカリ金属イオン及び、アルカリ土類金属イオン濃度が100ppm以下であることが望ましい。また、金属アルコキシドの加水分解反応、いわゆるゾルゲル法により製造される無機酸化物微粒子が好ましい。
【0037】
絶縁性微粒子6の平均粒径が20〜500nmであることが好ましい。粒径が20nm以上であると、20nm未満の場合と比較して、導電粒子8を被覆する絶縁性微粒子6が絶縁体として良好に機能して、同一基板上で互いに隣り合う回路電極間のショートを更に抑制できる。一方、粒径が500nm以下であると、500nmを超える場合と比較して、対向する回路電極間の導通性が向上する傾向にある。なお、上記粒径は、BET法による比表面積換算法又はX線小角散乱法により測定することができる。
【0038】
絶縁性微粒子6が、導電粒子8よりも硬い粒子であることが好ましい。絶縁性微粒子6を導電粒子8よりも硬くすることで、異方導電接着フィルムを作製する際に絶縁被覆導電粒子10が変形しにくくなる。なお、絶縁性微粒子6が導電粒子8よりも硬いことは粒子の硬度を測定することにより確認できる。硬度はモース硬度により測定できる(金:2.5、ニッケル:3.8、シリカ:7.0)。
【0039】
絶縁性微粒子6が、導電粒子8の表面を一層で被覆していることが好ましい。一層で被覆した場合、導電粒子8の表面に絶縁性微粒子6を複数層積層した場合に比べて、絶縁性微粒子6の積層量を制御しやすい。
【0040】
導電粒子8が絶縁性微粒子6によって被覆されている表面の割合、すなわち絶縁性微粒子6による導電粒子8表面の被覆率が30〜50%であることが好ましい。なお、ここでいう100%とは、導電粒子8表面を平面とした場合に、その平面に絶縁性微粒子6が細密充填される場合をいう。また、上記被覆率のCV値が20%以下であることが好ましい。なお、CV値とは、被覆率の標準偏差を平均値で割った値であり、ばらつきを示す。上記被覆率が高い場合は、同一基板上で隣り合う回路電極間の絶縁性が高くなり、かつ、対向する回路電極間の導通性が低下する傾向がある。上記被覆率が低い場合は、上記導通性が高くなり、上記絶縁性が低下する傾向がある。
【0041】
本実施形態にかかる絶縁被覆導電粒子10は、導電粒子8の表面上に高分子電解質を吸着させた後、絶縁性微粒子6を被覆して得ることができる。
【0042】
一般に、このような方法は、交互積層法(Layer−by−Layer assembly)と呼ばれる。交互積層法は、G.Decherらによって1992年に発表された有機薄膜を形成する方法である(Thin Solid Films,210/211,1992,p.831)。この方法では、正電荷を有するポリマー電解質(ポリカチオン)の水溶液と負電荷を有するポリマー電解質(ポリアニオン)の水溶液とに、基材を交互に浸漬することで基板上に静電的引力によって吸着したポリカチオンとポリアニオンとの組が積層されて複合膜(交互積層膜)を得ることができる。
【0043】
交互積層法では、静電的な引力によって、基材上に形成された材料の電荷と、溶液中の反対電荷を有する材料とが静電気的に引き合うことにより膜成長するので、吸着が進行して電荷の中和が起こるとそれ以上の吸着が起こらなくなる。したがって、ある飽和点までに至れば、それ以上膜厚が増加することはない。
【0044】
また、Lvovらは交互積層法を微粒子に応用し、シリカやチタニア、セリアの各微粒子分散液を用いて、微粒子の表面電荷と反対電荷を有する高分子電解質を交互積層法で積層する方法を報告している(Langmuir,Vol.13、1997、p.6195−6203)。この方法を用いると、負の表面電荷を有するシリカの微粒子とその反対電荷を持つポリカチオンであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)又はポリエチレンイミン(PEI)などとを交互に積層することで、シリカ微粒子と高分子電解質とが交互に積層された微粒子積層薄膜を形成することが可能である。
【0045】
絶縁被覆導電粒子10の製造方法として、メルカプト基、スルフィド基又はジスルフィド基と水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基とを有する化合物を含む溶液に導電粒子8を接触させて、該化合物を導電粒子8表面に付着又は結合させる第1のステップと、高分子電解質を含む溶液に導電粒子8を接触させて、該高分子電解質を導電粒子8表面に付着させる第2のステップと、水酸基を表面に有する無機酸化物微粒子である絶縁性微粒子6を含む分散液に導電粒子8を接触させて、導電粒子8と導電粒子8表面の少なくとも一部を被覆する絶縁性微粒子6とを有する絶縁被覆導電粒子10を得る第3のステップと、をこの順に備える、製造方法が挙げられる。
【0046】
上記製造方法で用いられる高分子電解質を含む溶液は、水又は水と水溶性の有機溶媒の混合溶媒に高分子電解質を溶解したものである。使用できる水溶性の有機溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリルなどが挙げられる。高分子電解質として、水又は水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒に可溶なものであり、水溶液中で電離し、荷電を有する官能基を主鎖又は側鎖に持つものを用いることができ、このうちポリカチオンが好ましい。ポリカチオンとして、ポリアミン類等のように正荷電を帯びることのできる官能基を有するもの、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジン、ポリアクリルアミドのいずれか、又はこれらのポリカチオンを少なくとも1種以上含む共重合体などを用いることができる。導電粒子8表面にこれらの高分子電解質が吸着されていることは、例えば、X線電子分光分析法、飛行時間型二次イオン質量分析法等の分析手法によって確認することができる。
【0047】
上述のポリカチオンのうち、ポリエチレンイミンが高い電荷密度を有しており、導電粒子8との結合力が強いことから好ましく用いることができる。高分子電解質の重量平均分子量は、用いる高分子電解質の種類によるため一概に定めることができないが、水溶性及び導電粒子8への吸着量を良好にする観点、及び取扱いの容易さの観点から、一般に500〜200000程度のものが好ましい。
【0048】
高分子電解質を含む溶液に導電粒子8を接触させる方法として、例えば高分子電解質を水又は水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒に溶解した高分子電解質溶液に、導電粒子8を浸漬する方法が挙げられる。この場合、高分子電解質溶液中の高分子電解質の濃度は、水溶性及び官能基含有導電粒子への吸着量を良好にする観点、及び取扱いの容易さの観点から、通常0.01〜10質量%程度が好ましい。高分子電解質溶液のpHは、特に限定されない。
【0049】
上記水溶性の有機溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリルなどを用いることができる。なお、高分子電解質を含む溶液として、エレクトロマイグレーションや腐食を避けるために、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)イオン、アルカリ土類金属(Ca、Sr、Ba、Ra)イオン、及びハロゲン化物イオン(フッ素イオン、クロライドイオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)を含まないものが好ましい。
【0050】
導電粒子8の表面に吸着される高分子電解質の種類や分子量、濃度を調整することによって、絶縁性微粒子6による導電粒子8表面の被覆率をコントロールすることができる。具体的にはポリエチレンイミン等、電荷密度の高い高分子電解質を用いた場合、絶縁性微粒子6による被覆率が高くなる傾向があり、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド等、電荷密度の低い高分子電解質を用いた場合、上記被覆率が低くなる傾向がある。また、高分子電解質の分子量が大きい場合、上記被覆率が高くなる傾向があり、高分子電解質の分子量が小さい場合、上記被覆率が低くなる傾向がある。さらに、高分子電解質を高濃度で用いた場合、上記被覆率が高くなる傾向があり、高分子電解質を低濃度で用いた場合、上記被覆率が低くなる傾向がある。
【0051】
上述の絶縁被覆導電粒子10の製造方法が、第2のステップで導電粒子8表面に前記高分子電解質を接触させる工程の後に導電粒子8の表面に吸着されていない余剰の前記高分子電解質を洗い流す工程を、及び第3のステップで導電粒子8の表面に絶縁性微粒子6を接触させる工程の後に導電粒子8を被覆していない余剰の絶縁性微粒子6を洗い流す工程を更に備えていてもよい。
【0052】
上述の高分子電解質及び絶縁性微粒子6を洗い流す工程に用いる洗浄溶媒としては、水、アルコール、又はアセトンなどを用いることができる。なお、導電粒子8の表面に吸着している高分子電解質及び又は導電粒子8の表面に直接又は高分子電解質を介して結合している絶縁性微粒子6は、上述の余剰の高分子電解質及び余剰の絶縁性微粒子6を洗い流す工程では通常剥離しない。
【0053】
上述の余剰の高分子電解質を洗い流す工程、及び絶縁性微粒子6を洗い流す工程を行うことによって、絶縁性微粒子6が高分子電解質溶液に持ち込まれること、及び高分子電解質が絶縁性微粒子6の分散液に持ち込まれることを防止することができる。なお、持ち込みによって絶縁性微粒子の分散液及び高分子電解質溶液内でカチオン、アニオンが混ざってしまうと、高分子電解質と絶縁性微粒子との凝集や沈殿が発生する場合がある。
【0054】
以上のようにして作製された絶縁被覆導電粒子10を、加熱乾燥することにより絶縁性微粒子6と導電粒子8との結合力を一層強化することができる。これは、導電粒子8表面のカルボキシル基等の官能基と絶縁性微粒子6表面の水酸基との化学結合が新たに形成されることによる。絶縁被覆導電粒子10の加熱乾燥は60℃〜200℃、10〜180分の範囲で行うことが好ましい。温度が60℃より高い場合、又は加熱時間が10分以上である場合は、温度が60℃より低い場合、又は加熱時間が10分より短い場合と比較して、導電粒子8の表面から絶縁性微粒子6が剥離しにくい傾向がある。一方、温度が200℃より低い場合、又は加熱時間が180分より短い場合は、温度が200℃より高い場合、又は加熱時間が180分より長い場合と比較して、導電粒子8が変形しにくい傾向にある。
【0055】
図2は、本発明の一実施形態にかかる異方導電性接着フィルムの断面図である。本実施形態の異方導電性接着剤フィルム3は、絶縁性接着剤層2と上述の通り作製した絶縁被覆導電粒子10とを有しており、絶縁被覆導電粒子10が絶縁性接着剤層2内に部分的に又は完全に埋没しており、かつ、絶縁性接着剤層2の厚さ方向の一方側にのみ偏って配置されている。絶縁被覆導電粒子10は、絶縁接着剤層2の表面から5μm以内に配置されていることが好ましい。
【0056】
絶縁性接着剤層2に用いられる接着剤組成物として、熱反応性樹脂と硬化剤との混合物を用いることができる。このうち、エポキシ樹脂と潜在性硬化剤との混合物を用いることが好ましい。潜在性硬化剤として、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、及びジシアンジアミド等を用いることができる。この他、接着剤組成物として、ラジカル反応性樹脂と有機過酸化物との混合物や紫外線などのエネルギー線硬化性樹脂を用いることができる。
【0057】
接着剤組成物に含まれるエポキシ樹脂として、エピクロルヒドリンとビスフェノールA、ビスフェノールF、又はビスフェノールAD等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラック又はクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂、ナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのエポキシ樹脂は、エレクトロマイグレーション防止の観点から、不純物イオン(Na、Cl等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが好ましい。
【0058】
接着剤組成物には、回路接着後の応力を低減するため、又は接着性を向上するために、上述の成分に加えてブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等を混合することができる。
【0059】
上記接着剤組成物に、フィルム形成性の観点からフェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂(フィルム形成性高分子)を配合することが好ましい。これらのフィルム形成性高分子を配合することが、反応性樹脂の硬化時の応力を緩和できる観点からも好ましい。また、接着性向上の観点から、フィルム形成性高分子が水酸基等の官能基を有することがより好ましい。なお、接着剤組成物をペースト状にしてもよい。フィルム形成は、これら少なくともエポキシ樹脂、アクリルゴム、潜在性硬化剤からなる接着剤組成物を有機溶剤に溶解あるいは分散により、液状化して、剥離性基材上に塗布し、硬化剤の活性温度以下で溶剤を除去することにより行われる。この時用いる溶剤として、芳香族炭化水素系と含酸素系の混合溶剤が材料の溶解性を向上させるため好ましい。
【0060】
接着剤組成物に、無機質充填材を混入・分散することができる。無機質充填材として、例えば、溶融シリカ、結晶質シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナ、炭酸カルシウム等の粉体があげられる。無機質充填材の配合量は、接着剤組成物100重量部に対して10〜200重量部が好ましく、熱膨張係数を低下させるには配合量が大きいほど効果的であるが、多量に配合すると接着性や接続部での接着剤の排除性低下に基づく導通不良が発生しやすいため、また、配合量が少ないと熱膨張係数が充分低下しにくいため、20〜90重量部がさらに好ましい。また、粉体の平均粒径は、接続部での導通不良を防止する目的で3μm以下にするのが好ましい。さらに、接続時の樹脂の流動性の低下及びチップのパッシベーション膜のダメージを防ぐ目的で、球状フィラを用いることが望ましい。無機質充填材は、絶縁被覆導電粒子10と共に又は絶縁性接着剤層2中の絶縁被覆導電粒子10が配置されていない側に混入・分散することができる。
【0061】
本発明にかかる異方導電接着フィルムの製造方法は、絶縁性接着剤層2を一定速度で走行させながら、絶縁被覆導電粒子10を、絶縁性接着剤層2の一方面側において噴霧し、噴霧された絶縁被覆導電粒子10を絶縁性接着剤層2の表面に落下させる工程を含む。
【0062】
絶縁被覆導電粒子10を絶縁性接着剤層の一方面側に噴霧する手段としては、乾燥した絶縁被覆導電粒子10に空気を吹き付けて噴霧する方法、高速気流中に絶縁被覆導電粒子10を供給して噴霧する方法、スプレー噴霧する方法等があり、中でも高速気流中に絶縁被覆導電粒子10を供給して噴霧する方法は、絶縁被覆導電粒子10が分散して落下するので好ましい。さらに、絶縁被覆導電粒子10を同一電荷とすればより分散度が向上できるので好ましい。このときに、散布ノズルにエアチューブを用いて水平方向に向けて絶縁被覆導電粒子10を噴霧すると、絶縁被覆導電粒子10は接触帯電で同一電荷に帯電し、噴霧された絶縁被覆導電粒子10が、噴霧用エアと分離することで落下し、絶縁性接着剤層上に均一に分散して配置される。
【0063】
絶縁被覆導電粒子10は重力によっても落下するが、電界を発生させることにより落下させることが好ましい。電界を発生させることにより、絶縁被覆導電粒子10は電界の方向に進行するので高効率である。電界を発生させるには、帯電した絶縁被覆導電粒子10を噴霧する際に、噴霧を行う箱内の上下に電極を設置すればよい。
【0064】
絶縁被覆導電粒子10の噴霧・落下は、空気を送り込み導電性粒子を浮遊させた空気流を作りノズルから噴霧する方法を用いた場合、容器の大きさ、空気圧力、ノズル材、ノズルと絶縁性接着剤との位置関係等と単位面積当たりの分布状態を予め実験的に求め、最適な条件になるように行う。例えば、回路電極の接続において導体の幅/導体の間隔が0.05mm/0.02mmのように精密な箇所の接続を行う場合には、絶縁被覆導電粒子10の大きさを3〜10μmとし、絶縁性接着剤の表面に、5000〜50000個/mm2の範囲に分散して配置されるように噴霧・落下させることが好ましい。
【0065】
さらに、絶縁性接着剤層2上に落下した絶縁被覆導電性粒子10を絶縁性接着剤層2内に埋め込むことが好ましい。絶縁被覆導電粒子10を埋め込む手段としては、絶縁被覆導電粒子10が落下した絶縁性接着剤層2の表面に、剥離性を有する表面を有するプラスチックフィルムを重ね、プレスやラミネート等によって圧力を加えることによって実現できる。
【0066】
さらに、絶縁被覆導電粒子10を埋め込む際に、絶縁性接着剤層2を加熱することが好ましい。加熱する温度としては、絶縁性接着剤層2が完全には硬化しない程度であって、その後に行う回路電極の接続において基板と基板との接続時に必要なタック性、塑性変形性を残す程度に加熱することが好ましく、その他の時間や圧力の条件等と共に、絶縁性接着剤層2に用いられる接着剤組成物の種類によって、予め実験的に求めておくことができる。
【0067】
絶縁被覆導電粒子10が落下した絶縁性接着剤層2に、単層又は複数層の別の接着剤層をラミネートして、厚み方向の特定の位置に粒子層を配置することもでき、このときに、ラミネートする接着剤層の溶融粘度に差をつけることが好ましく、例えば絶縁被覆導電粒子10が落下した絶縁性接着剤層2がエポキシ樹脂からなる場合、その表面に重ねる接着剤層としては、同じエポキシ樹脂で溶融粘度を上げたものを用いるとよい。絶縁性接着剤層2に絶縁被覆導電粒子10を押し込むときに、絶縁性接着剤層2に重ねる接着剤層にまで絶縁被覆導電粒子10が押し込まれず、絶縁被覆導電粒子10の厚み方向の位置を制御できる。
【0068】
異方導電接着フィルム3の厚みは、絶縁被覆導電粒子10の粒径及び接着剤組成物の特性を考慮して相対的に決定されるが、1〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましい。異方導電接着フィルム3の厚みが1μm以下では充分な接着性が得られない傾向があり、100μm以上では対向する回路電極間の導通性を得るために多量の絶縁被覆導電粒子10を必要とする傾向があり現実的ではない。
【0069】
図3は、本発明の異方導電接着フィルムの製造方法に用いられる製造装置を図示している。なお、絶縁被覆導電粒子10及び絶縁性接着剤層2は図3中には図示していない。絶縁性接着剤層2を有するフィルム11を巻出しロール12から巻出し、巻取りロール13で巻取りながら、一定速度で走行させる。保護フィルム14を巻出しロール15から巻出し、巻取りロール16で巻取りながら一定速度で走行させる。
【0070】
真空エジェクタ19の真空口に粒子供給機17から供給される絶縁被覆導電粒子10を落とし、圧縮空気により導電性粒子を流動化させる。流動化した絶縁被覆導電粒子10は、エアチューブ20内を高速移動する際に同一電荷に帯電し、散布ノズル21よりフィルム11上の絶縁性接着剤層2の一方面側において噴霧される。散布箱22の上下壁面に設置した上電極23、下電極24により散布箱22内のフィルムに対して垂直方向の電界を発生させる。電界の方向に沿って、噴霧された導電性粒子が噴霧エアと分離して、一定速度で走行する絶縁性接着剤層2の表面に落下する。噴霧エアと分離しなかった絶縁被覆導電粒子10は、排気口25からサイクロン26に吸い込まれ回収される。絶縁被覆導電粒子導電粒子10が落下した絶縁性接着剤層2は、上ラミネートロール27、下ラミネートロール28により保護フィルム14を介して絶縁被覆導電粒子10が絶縁性接着剤に埋り込む。ラミネートロールを通過した後保護フィルムが巻取ロール16で巻き取られてフィルム11から分離し、本発明の異方導電接着フィルムである、絶縁被覆導電粒子10が絶縁性接着剤層2内部に部分的に又は完全に埋没しており、かつ、絶縁性接着剤層2の厚さ方向の一方側にのみ偏って配置されているフィルム11が得られる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定
されるものではない。
【0072】
[導電粒子の作製]
(1−1)導電粒子1の作製
基材粒子である平均粒径3.8μmの架橋ポリスチレン粒子の表面上に、厚み700Åのニッケル層を無電解めっきで設け、さらにその外層に厚み200Åの金層を設けて導電粒子1を作製した。
【0073】
(1−2)導電粒子2の作製
基材粒子である平均粒径3.8μmの架橋ポリスチレン粒子の表面上に、厚み700Åのニッケル層を無電解めっきで設け、さらにその外層に厚み280Åの金層を設けて導電粒子2を作製した。
【0074】
(1−3)導電粒子3の作製
基材粒子である平均粒径3.0μmの架橋ポリスチレン微粒子の表面上に、厚み700Åのニッケル層を無電解めっきで設け、さらにその外層に厚み200Åの金層を設けて導電粒子3を作製した。
【0075】
(1−4)導電粒子4の作製
基材粒子である平均粒径3.0μmの架橋ポリスチレン微粒子の表面上に、厚み700Åのニッケル層を無電解めっきで設け、さらにその外層に厚み280Åの金層を設けて導電粒子4を作製した。
【0076】
[導電粒子の金層の厚み測定]
上記導電粒子1〜4の金層の厚み測定を行った。導電粒子1〜4を50体積%王水に溶解させた後、樹脂を孔径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾別して取り除き、原子吸光で測定した後に厚み換算した。
【0077】
[ESCAによる導電粒子表面における金に対するニッケルの存在比測定]
導電粒子1〜4を導電テープ上に敷き詰め、直径1.1mmの円内の導電粒子表面の原子存在比測定をX線光電子分光装置による電子分光法(ESCA)により行った(測定粒子数は1万個以上とした)。ESCAの測定条件を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
ESCAで導電粒子を測定した場合、ニッケルや金以外にも炭素や酸素といった成分が検出された。CやOは空気中での有機物汚染であるため無視して考え、導電粒子表面部に含まれる金原子の原子存在比を100%としたときのニッケル原子の原子存在比を求めた。結果を表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
[絶縁被覆導電粒子の作製]
(2−1)絶縁被覆導電粒子1の作製
次に、得られた導電粒子1の表面を、以下の方法で絶縁性微粒子により被覆した。
【0082】
メルカプト基とカルボキシル基とを有する化合物として、メルカプト酢酸を用いた。高分子電解質として、ポリカチオンであるポリエチレンイミンを、絶縁性微粒子としてシリカをそれぞれ用いた。まず、メルカプト酢酸8mmolをメタノール200mlで希釈して濃度0.46質量%のメルカプト酢酸溶液を調整した。また、ポリエチレンイミン水溶液(濃度30質量%、分子量70000)を超純水で希釈して、濃度0.3質量%に調整した。更に、コロイダルシリカ分散液(濃度20質量%、平均粒径130nm)も超純水で希釈して、濃度0.1質量%に調整した。
【0083】
次に上記導電粒子1を1g、上記メルカプト酢酸溶液に加え、室温で2時間、スリーワンモーターと直径45mmの攪拌羽で攪拌することによって、導電粒子1の表面にカルボキシル基を形成させた。その後、孔径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)でこのカルボキシル基を表面に有する導電粒子を濾別し、濾別した導電粒子をメンブレンフィルタ上でメタノールにより洗浄することで、導電粒子に吸着されていないメルカプト酢酸を除去した。
【0084】
次に、上記のカルボキシル基を表面に有する導電粒子1gを上記の0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液に加え、室温で30分間攪拌することで、上記導電粒子の表面のカルボキシル基にポリエチレンイミンを吸着させた。その後、孔径3μmのメンブレンフィルタで上記ポリエチレンイミンを吸着させた導電粒子を濾別し、濾別した導電粒子を超純水200gに入れて室温で5分間攪拌して洗浄した。更に孔径3μmのメンブレンフィルタで上記洗浄した導電粒子を濾別し、濾別した導電粒子をメンブレンフィルタ上にて200gの超純水で洗浄を行った。
【0085】
次に、上記のポリエチレンイミンを吸着させた導電粒子を上記の0.1質量%コロイダルシリカ分散液に入れて、室温で15分間攪拌することで、上記導電粒子の表面のポリエチレンイミンにコロイダルシリカ微粒子を吸着させた。その後、孔径3μmのメンブレンフィルタで上記コロイダルシリカ微粒子を吸着させた導電粒子を濾別し、濾別した導電粒子を超純水200gに入れて室温で5分間攪拌して洗浄した。更に孔径3μmのメンブレンフィルタで上記洗浄した導電粒子を濾別し、濾別した導電粒子をメンブレンフィルタ上にて200gの超純水で2回洗浄を行うことにより、導電粒子に吸着されていないコロイダルシリカ微粒子を除去した。その後80℃30分間及び120℃1時間の条件で乾燥を行うことにより、絶縁被覆導電粒子1を得た。
【0086】
(2−2)絶縁被覆導電粒子2の作製
導電粒子1の代わりに導電粒子2を用いたこと以外は上記(2−1)に記す導電粒子1の被覆と同様の工程で、絶縁被覆導電粒子2を作製した。
【0087】
(2−3)絶縁被覆導電粒子3の作製
導電粒子1の代わりに導電粒子3を用いたこと以外は上記(2−1)に記す導電粒子1の被覆と同様の工程で、絶縁被覆導電粒子3を作製した。
【0088】
(2−4)絶縁被覆導電粒子4の作製
導電粒子1の代わりに導電粒子4を用いたこと以外は上記(2−1)に記す導電粒子1の被覆と同様の工程で、絶縁被覆導電粒子4を作製した。
【0089】
(2−5)絶縁被覆導電粒子5の作製
濃度0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液の代わりに濃度0.03質量%のポリエチレン水溶液を用いたこと以外は、上記(2−1)に記す導電粒子1の被覆と同様の工程で、絶縁被覆導電粒子5を作製した。
【0090】
(2−6)絶縁被覆導電粒子6の作製
濃度0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液の代わりに濃度0.1質量%のポリエチレン水溶液を用いたこと以外は、上記(2−1)に記す導電粒子1の被覆と同様の工程で、絶縁被覆導電粒子6を作製した。
【0091】
(2−7)絶縁被覆導電粒子7の作製
濃度0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液の代わりに濃度0.4質量%のポリエチレン水溶液を用いたこと以外は、上記(2−1)に記す導電粒子1の被覆と同様の工程で、絶縁被覆導電粒子7を作製した。
【0092】
(2−8)絶縁被覆導電粒子8の作製
導電粒子1の代わりに導電粒子2を用いて、絶縁性微粒子として平均粒径200μmのメタクリル酸メチルの重合物(ポリメタクリル酸メチル)を用いたこと以外は、上記(2−1)に記す導電粒子1の被覆と同様の工程で、絶縁被覆導電粒子8を作製した。
【0093】
(2−9)絶縁被覆導電粒子9の作製
導電粒子1の代わりに導電粒子4を用いて、絶縁性微粒子として平均粒径200μmのメタクリル酸メチルの重合物(ポリメタクリル酸メチル)を用いたこと以外は、上記(2−1)に記す導電粒子1の被覆と同様の工程で、絶縁被覆導電粒子9を作製した。
【0094】
[絶縁性微粒子による導電粒子の被覆率の測定]
上記の(2−1)〜(2−9)で得られた絶縁被覆導電粒子の、絶縁性微粒子による導電粒子表面の被覆率(導電粒子の全表面積に対する、導電粒子の絶縁性微粒子によって被覆されている表面積の割合)をSEMの画像解析により測定した。被覆率は、絶縁被覆導電粒子の直径の半分の大きさを直径とする円をSEM画像に描き、円内の絶縁性微粒子の被覆率(即ち絶縁性微粒子の1個あたりの投影面積×絶縁性微粒子の数/測定範囲の絶縁被覆導電粒子の表面積)を測定することにより求めた。結果を表3に示す。
【0095】
【表3】

【0096】
[絶縁性微粒子剥離の確認]
絶縁性微粒子が導電粒子から剥離する可能性があるため、上記の(2−1)〜(2−9)で得られた、絶縁被覆導電粒子1〜9を剥離性フィルム上に噴霧し、走査型電子顕微鏡(S−800:日立製作所製)撮像にて絶縁性微粒子の剥離を観察した。その結果、導電粒子最表面の物質成分において金に対するニッケルの存在比が低い導電粒子1、3を用いている(2−1)、(2−3)、(2−5)〜(2−7)の粒子では絶縁性微粒子の剥離がほとんど起こっていなかったが、最表面にニッケル成分が多く析出している導電粒子2、4を用いている(2−2)、(2−4)、(2−8)、(2−9)では絶縁微粒子の剥離が確認できた。導電粒子表面の金量が多いほどメルカプト酢酸の吸着力が強くなるため導電粒子によるショート発生率の差異が生じたと考えられる。
【0097】
[異方導電接着フィルムの作製]
(実施例1)
接着剤ワニスを以下の手順で作製した。まず、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名:PKHA)30質量部とマイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(旭化成工業株式会社製、商品名:ノバキュアHP−3942HP)47質量部とを、酢酸エチル45質量部に溶解し、接着剤ワニスを得た。
【0098】
得られた接着剤ワニスを剥離性フィルム(離型処理した二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、厚さ50μm)上に塗布し、乾燥させて、平均厚さ23μmの絶縁性接着剤層を有するフィルムを得た。
【0099】
絶縁被覆導電粒子の散布を行う散布箱の壁面材質は、上壁面、下壁面はSUS鋼板、右壁面、左壁面はPVCで構成した。下壁面は接地し、上壁面には直流高圧電源により高電圧を印加して、散布箱に上から下向きの電界が発生する構造にした。なお、実施例1では上壁面に+10kVを印加し、下壁面は接地した。
【0100】
散布箱中に配置された巻出しロールから巻取ロールに、得られたフィルムを設置し、2m/分の速度で走行させた。上記(2−1)で得られた絶縁被覆導電粒子1を50g、粒子供給機に充填して、エアエジェクタに連続供給した。次いで上記絶縁被覆導電粒子1を、エアエジェクタ中で流動化させて、エアエジェクタに取り付けられたエアチューブを通過させ、エアチューブの先端の散布ノズルから、圧力0.5MPaで水平方向に、噴霧した。エアチューブはフィルムから10cmの高さのところに固定した。散布箱の上壁面から、下壁面に向かって電界が発生した。噴霧された絶縁被覆導電性粒子1は噴霧エアから分離し電界の方向に沿って落下した。その結果、絶縁被覆導電粒子1はフィルムの絶縁性接着剤層表面上にそれぞれ平均40000個/mmの割合で配置された。
【0101】
この絶縁被覆導電粒子が配置されたフィルムの絶縁被覆導電粒子散布面に、保護フィルム(離型処理した二軸延伸PET樹脂フィルム)の離型処理面を向かい合わせて重ね、温度50℃、圧力0.3MPa、速度2m/分の条件で、ゴムロールと金属ロールの二本のラミネートロール間を通して、散布した絶縁被覆導電性粒子を絶縁性接着剤の表層内に押し込んで固定させた。ラミネートロールを通過させた後、保護フィルムを巻取りロールで巻取り、絶縁性接着剤層の一方の主面の表層内に絶縁被覆導電粒子が埋め込まれた本発明の異方導電接着フィルムを別の巻取りロールで巻取った。
【0102】
(実施例2)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに、上記(2−2)で得られた絶縁被覆導電粒子2を用いたこと以外は実施例1と同様に異方導電接着フィルムを作製した。
【0103】
(実施例3)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに、上記(2−3)で得られた絶縁被覆導電粒子3を用いたこと以外は実施例1と同様に異方導電接着フィルムを作製した。
【0104】
(実施例4)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに、上記(2−4)で得られた絶縁被覆導電粒子4を用いたこと以外は実施例1と同様に異方導電接着フィルムを作製した。
【0105】
(実施例5)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに、上記(2−5)で得られた絶縁被覆導電粒子5を用いたこと以外は実施例1と同様に異方導電接着フィルムを作製した。
【0106】
(実施例6)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに、上記(2−6)で得られた絶縁被覆導電粒子6を用いたこと以外は実施例1と同様に異方導電接着フィルムを作製した。
【0107】
(実施例7)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに、上記(2−7)で得られた絶縁被覆導電粒子7を用いたこと以外は実施例1と同様に異方導電接着フィルムを作製した。
【0108】
(比較例1)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに、上記(1−1)で得られた導電粒子1を用いたこと以外は実施例1と同様に異方導電接着フィルムを作製した。
【0109】
(比較例2)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに、上記(1−3)で得られた導電粒子3を用いたこと以外は実施例1と同様に異方導電接着フィルムを作製した。
【0110】
(比較例3)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに、上記(2−8)で得られた絶縁被覆導電粒子8を用いたこと以外は実施例1と同様に異方導電接着フィルムを作製した。
【0111】
(比較例4)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに、上記(2−9)で得られた絶縁被覆導電粒子9を用いたこと以外は実施例1と同様に異方導電接着フィルムを作製した。
【0112】
[回路部材の接続構造の作製]
実施例1−7、比較例1−4の異方導電接着フィルム(3×18mm)をITO回路付きガラス基板(厚み0.5mm)に80℃、0.98MPa、1秒間の条件で加熱及び加圧することで貼り付けた後、異方導電接着フィルムから剥離性フィルムを剥離し、ICチップの金バンプとITO回路付きガラス基板の位置合わせを行った。ICチップには以下のICチップ1、ICチップ2、ICチップ3を用いた。
ICチップ1・・・金バンプ(面積30×100μm、スペース8μm、高さ15μm、バンプ数362)付きチップ(1.7×1.7mm、厚み0.55mm)
ICチップ2・・・金バンプ(面積28×100μm、スペース10μm、高さ15μm、バンプ数362)付きチップ(1.7×1.7mm、厚み0.55mm)
ICチップ3・・・金バンプ(面積26×100μm、スペース12μm、高さ15μm、バンプ数362)付きチップ(1.7×1.7mm、厚み0.55mm)
次いで、210℃、70MPa、5秒間の条件で、チップ上方から加熱及び加圧を行い、本接続を行った。
【0113】
[絶縁抵抗試験]
回路の接続後上記接続部に,直流(DC)50Vの電圧を1分間印加し、印加後の絶縁抵抗を2端子測定法を用いマルチメータで測定した。絶縁抵抗値が10Ω以下のものをショートとしてカウントした。
【0114】
[接続信頼性試験]
回路の接続後上記接続部の初期の電気抵抗値と、−40℃/30分間及び100/30分間の温度サイクル槽中に300サイクル保持した後の電気抵抗値とを、4端子測定法を用いて測定した。
【0115】
【表4】

【0116】
導電粒子の粒径が3.8μmであるものに関して、実施例1は実施例2並びに比較例1及び3に比べてショート率が非常に低かった。また、実施例1及び2並びに比較例1では異方導電接着フィルムが低接続抵抗値を維持したが、比較例3では接続抵抗値が高くなった。走査型電子顕微鏡で観察したところ、絶縁性微粒子がシリカである実施例1及び2では、加熱加圧時に絶縁性微粒子が導電粒子又はバンプに食い込んでいた。しかし、絶縁性微粒子がアクリル樹脂である比較例3では、加熱加圧によって変形していた。
【0117】
【表5】

【0118】
導電粒子の粒径が3.0μmであるものに関して、実施例3はショートが発生しなかった。実施例4及び比較例4も、実施例2及び比較例3と比較してショート発生率が低かった。ICチップのバンプ間スペースが狭くなっても、導電粒子の粒径が小さくなることで絶縁被覆導電粒子の凝集の影響を受けにくくなったからだと考えられる。一方、絶縁被覆を行っていない比較例2ではバンプ間スペースを広くしてもショート発生率は低下しなかった。
【0119】
【表6】

【0120】
導電粒子1の場合、絶縁性微粒子による導電粒子表面の被覆率を変化させると、被覆率が20%である実施例5では接続抵抗値は上昇しなかったものの、ショート発生率が高かった。また、被覆率が70%である実施例7ではショートが発生せず絶縁性は良好であったものの、接続抵抗値が高かった。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明に係る絶縁被覆導電粒子を表す図である。
【図2】本発明に係る異方導電接着フィルムを表す図である。
【図3】本発明に係る異方導電接着フィルムの製造方法に用いられる製造装置を表す図である。
【符号の説明】
【0122】
2・・・絶縁性接着剤層、3・・・異方導電接着フィルム、6・・・絶縁性微粒子、8・・・導電粒子、10・・・絶縁被覆導電粒子、11・・・フィルム、12・・・巻出しロール、13・・・巻取りロール、14・・・保護フィルム、15・・・巻出しロール、16・・・巻取りロール、17・・・粒子供給機、19・・・真空エジェクタ、20・・・エアチューブ、21・・・散布ノズル、22・・・散布箱、23・・・上電極、24・・・下電極、25・・・排気口、26・・・サイクロン、27・・・上ラミネートロール、28・・・下ラミネートロール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材粒子と該基材粒子表面の少なくとも一部を被覆する多層の金属めっき層とを有する導電粒子と、該導電粒子表面の少なくとも一部を被覆する絶縁性微粒子と、を備える絶縁被覆導電粒子であって、
前記基材粒子が平均粒径4.0μm以下の樹脂粒子であり、
前記導電粒子が水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を表面に有し、
前記絶縁性微粒子が水酸基を表面に有する無機酸化物微粒子である、絶縁被覆導電粒子。
【請求項2】
前記絶縁性微粒子が平均粒径20〜500nmのシリカ微粒子であり、前記絶縁性微粒子による前記導電粒子表面の被覆率が30〜50%である、請求項1に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項3】
メルカプト基、スルフィド基又はジスルフィド基と前記官能基とを有する化合物が、前記導電粒子表面に付着又は結合している請求項1又は2に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項4】
前記金属めっき層が金層及びニッケル層を含み、該金層の少なくとも一部が該ニッケル層よりも外側に設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項5】
X線光電子分光装置による電子分光法によって前記導電粒子表面における金原子とニッケル原子の原子存在比を求めたときに、金原子に対するニッケル原子の原子存在比が70%以下である、請求項4に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項6】
前記絶縁性微粒子による前記導電粒子表面の被覆率のCV値が20%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項7】
前記絶縁性微粒子の表面電位が負電位である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項8】
前記絶縁性微粒子が前記導電微粒子よりも硬い微粒子である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項9】
メルカプト基、スルフィド基又はジスルフィド基と水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基とを有する化合物を含む溶液に導電粒子を接触させて、前記化合物を前記導電粒子表面に付着又は結合させる第1のステップと、
高分子電解質を含む溶液に前記導電粒子を接触させて、前記高分子電解質を前記導電粒子表面に付着させる第2のステップと、
水酸基を表面に有する無機酸化物微粒子である絶縁性微粒子を含む分散液に前記導電粒子を接触させて、前記導電粒子と前記導電粒子表面の少なくとも一部を被覆する前記絶縁性微粒子とを有する絶縁被覆導電粒子を得る第3のステップと、
をこの順に備える、絶縁被覆導電粒子の製造方法。
【請求項10】
絶縁性接着剤層と、請求項1〜8のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子とを有する異方導電接着フィルムであって、
前記絶縁被覆導電粒子が、絶縁性接着剤層内に部分的に又は完全に埋没しており、かつ、該絶縁性接着剤層の厚さ方向の一方側にのみ偏って配置されている、異方導電接着フィルム。
【請求項11】
絶縁性接着剤層を一定速度で走行させながら、請求項1〜8のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子を、前記絶縁性接着剤層の一方面側において噴霧し、噴霧された前記絶縁被覆導電粒子を前記絶縁接着剤層の表面に落下させる工程を含む、異方導電接着フィルムの製造方法。
【請求項12】
電界を発生させることにより前記絶縁被覆導電粒子を落下させる、請求項11に記載の異方導電接着フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−170414(P2009−170414A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322620(P2008−322620)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】