説明

綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業部位を運転する方法

本発明は、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業部位を運転する方法であって、綾巻きパッケージの巻取速度を調節するための回転数調整可能な巻取駆動装置が設けられており、供給ボビンから紡出される糸の糸張力を監視するための、作業部位計算機と接続された糸張力センサが設けられており、糸張力を調整するための糸テンショナが設けられている方法に関する。本発明によれば、作業部位計算機(32)で、所望の糸張力(FZKsoll)の値ならびに該所望の糸張力(FZKsoll)からの許容パーセント偏差の値(TG)を調節することができ、糸張力(FZKsoll)の許容パーセント偏差の超過が生じると、直ちに作業部位計算機(32)によって巻取過程を中断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式の、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業部位を運転する方法に関する。
【0002】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械、たとえば自動ワインダは、長年来公知である。このような自動ワインダは、通常列を成して相並んで配置された同形の多数の作業部位を備えており、作業部位は、様々な糸処理装置もしくは糸監視装置を備えている。このような糸処理装置もしくは糸監視装置の制御および監視は、作業部位計算機を介して行われ、個々の作業部位計算機は、多くの場合機械バスを介して、自動ワインダの中央制御ユニットに接続されている。
【0003】
自動ワインダの作業部位におけるヤーン材料の供給および取出は、たとえばパッケージおよびボビン搬送システムを介して行われる。パッケージおよびボビン搬送システムでは、搬送皿上で直立して、通常紡績コップまたは空管である供給ボビンが循環する。
【0004】
パッケージおよびボビン搬送システムの代わりに、繊維機械は、作業部位独自の紡績コップマガジンを備えることもできる。そのような作業部位独自の紡績コップマガジンは、有利にはいわゆる円形マガジン(Rundmagazine)として形成されており、これは作業員によって手動で装着される。
【0005】
さらにそのような自動ワインダは、作業部位に自動的に供給を行う供給装置を備えている。そのような供給装置、たとえばいわゆる綾巻きパッケージ交換器は、完成した綾巻きパッケージを作業部位のパッケージフレームから取り出して、綾巻きパッケージを機械長さの搬送装置に搬送し、搬送装置は、綾巻きパッケージを機械端部側に配置された引渡ステーションに搬送し、新たな空管を該当する作業部位のパッケージフレームに入れ換える。
【0006】
ヤーンを容積の小さな紡績コップから多量のヤーンを有する綾巻きパッケージに巻き返す間、糸は、糸エラーに関して検査され、この場合検出されたエラーは解消される。走行する糸は、巻き返しに際してさらに糸張力センサによって監視され、糸張力は、糸テンショナによって所定のレベルで維持される。つまり糸テンショナによって、走行する糸のほぼ一定の糸張力が調節され、このようにして綾巻きパッケージに対する糸の均等な巻取が保証される。
【0007】
走行する糸の現行の糸張力を検出する糸張力センサは、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第4129803号明細書から公知である。この場合糸張力センサは、走行する糸の糸張力測定を実施し、糸テンショナの調節信号を形成し、糸テンショナは、調節信号に応じて、多少の大きさの制動作用を走行する糸に及ぼす。このためにたとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第4130301号明細書に記載されたそのような糸テンショナは、可変の押圧力で負荷可能な糸制動装置を備えている。糸テンショナと糸張力センサとの協働によって、ヤーンが規定の糸張力で巻取ボビンに巻き取られるよう保証される。つまり糸張力センサが糸張力の増大を送信すると、糸テンショナは、幾分か開かれて、糸張力の増加を補償する。
【0008】
これに応じて糸張力センサが糸張力の低下を送信すると、糸テンショナは幾分か閉じられる。
【0009】
もちろん自動ワインダの運転に際して、問題となる運転状況の生じる恐れがあり、この場合糸張力センサと糸テンショナとの前述の協働は、もはや完全には機能しない。
【0010】
たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第19848881号明細書に記載されているように、糸エラーの解消に関して、特に撚り継ぎ過程のあとで紡績コップに糸絡まりが生じる場合、糸テンショナが開いているにもかかわらず、糸の糸張力は大幅に高まる。ドイツ連邦共和国特許出願公開第19848881号明細書によれば、そのような糸絡まりは次のように検出して解消され、つまり下糸と上糸とを結合したあとで、生じる糸張力を糸張力センサによって検出して、検出値を作業部位計算機で処理し、制限値を超える場合に糸絡まりが推測され、該当する作業部位のパッケージ交換器が作動させられ、パッケージ交換が行われる。
【0011】
別の問題となる運転状況は、たとえば糸が糸テンショナの領域で制動皿の間を走行しない、つまり糸が制動皿の前後を通過する場合に生じる。これによって巻き返し過程が直接関与しないので、糸ガイドのエラーは常時直ぐ検出可能とはならない。糸張力の調整エラーによって、エラーを含んだ、通常過度にソフトに巻き取られた巻取パッケージが生じる。
【0012】
この運転状況を回避するために、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19905860号明細書では、1方法が記載されており、その方法では、作業部位計算機が、糸張力センサによって検出された糸張力に応じて、糸テンショナの押圧力を設定し、設定された押圧力は、押圧力の所定の限界値と比較され、所定の期間で限界値に到達するか、またはこれを超えると、巻取プロセスは中断される。
【0013】
公知の、極めて小さな糸張力で巻き取られる染色パッケージを製造する際に、糸テンショナが既に完全に開いて、糸張力が所望の値を超えて存在するようになる。そのような場合作業部位計算機によって、該当する作業部位で、システムは比較的低速で作業するので、巻取速度ひいては糸張力は低下させられるが、糸張力が常に所望の値に調節される点に関して、常に、また満足できる程度に常に十分な速さで保証されるものではない。そのような問題となる運転状況の結果として、通常綾巻きパッケージの品質が低下し、この場合綾巻きパッケージの品質低下は多くの場合直ぐには検出されない。
【0014】
前述の構成の作業部位および作業部位を運転する方法から出発して、本発明の課題は、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業部位を運転する方法を改良して、綾巻きパッケージ、特に染色パッケージの高い巻取品質を確実に保証することのできるものを提供することである。
【0015】
この課題は、請求項1の特徴部に記載した構成を有する方法によって解決される。
【0016】
本発明の有利な構成は、従属請求項の対象である。
【0017】
所望の糸張力値ならびに許容パーセント偏差値が作業部位計算機に入力可能であり、これらの値の維持は、作業部位計算機によってオンラインで監視され、許容されない偏差が生じると、直ちに自動的に巻取プロセスに作用して、アラームを作動させることによって、巻取プロセス全体にわたって限界許容偏差内に糸張力の位置する綾巻きパッケージが製造される。アラーム信号の発生によって、さらに該当する作業部位におけるイレギュラ発生が表示され、作業部位を検査するよう勧告される。
【0018】
請求項2に記載したように、さらに有利な実施形態では、巻取過程を中断して、アラームを作動させるまえに、糸張力の許容されない過不足の生じ得る期間を、作業部位計算機で調節することができる。つまり作業員は、たとえばヤーン材料または綾巻きパッケージのあとの使用目的に応じて、個別的に、どのような速さで作業部位計算機が、設定された許容限界値の範囲外に位置する確認された糸張力の偏差に反応すればよいか調節することができる。
【0019】
請求項3に記載したように、システムの設定可能な反応時間は、0.1〜0.5秒である。実際には、1秒の反応時間が特に有利であることが判明した。
【0020】
請求項4に示したように、糸張力が設定された期間に関する許容限界値に到達するか、該許容限界値を超えると、作業部位計算機が制御下の糸切断を行う。そのような糸切断によって、巻取過程は瞬時に中断されて、簡単な形式で、部分的に過度に強くまたは弱く糸層の巻き取られた綾巻きパッケージの生産が回避される。
【0021】
さらに請求項5に記載したように、アラームを作動させ、ひいては作業員に誤った作業を行う作業部位に関して注意を喚起することができる。
【0022】
以下に図面につき、本発明の実施例を詳しく説明する。
【0023】
図1には、綾巻きパッケージを製造する繊維機械1の作業部位10を側面図で示した。自動ワインダとして公知のこのような繊維機械は、相並んで配置された多数の作業部位10を有しており、作業部位10に供給ボビン12、有利には紡績コップが大容積の綾巻きパッケージ14に巻き返される。
【0024】
この場合紡績コップ12は、搬送装置16を介して個々の作業部位10に到達し、作業部位10は、それ自体公知のように、詳しくは図示していない多数の搬送区間を有しており、搬送区間に沿って、搬送皿20上に立てられた紡績コップ12もしくは空管18が搬送される。図1に示したように、巻返位置Iに配置された紡績コップ12から糸22が引き出され、糸22は、綾巻きパッケージ14への走行経路上で先ず下糸センサ28を通過し、下糸センサ28は、信号線路30を介して作業部位計算機32と接続されている。下糸センサ28によって、たとえば糸切れまたは制御下の糸切断のあとで、上糸検出を導入するまえに、下糸34が存在するかどうか確認される。下糸センサ28の上方に糸テンショナ36が配置されており、糸テンショナ36は、図2に示したように、2つの制動皿4,5を備えており、制動皿4,5は、走行する糸22に押圧力を及ぼす。糸テンショナ36は、制御線路38を介して同様に作業部位計算機32と接続されている。
【0025】
糸走行経路上を進むと、ヤーンエラーを確認するために糸クリアラ44が配置されている。糸クリアラ44によって、常時走行する糸の品質が監視され、この場合糸クリアラ44の信号は、評価するために、信号線路48を介して作業部位計算機32に送られる。糸エラーが生じると、作業部位計算機32によって、制御線路50を介して糸切断装置52が作動させられて糸22が分離される。
【0026】
糸走行方向で糸クリアラ44の下流側に糸張力センサ54ならびにパラフィン処理装置46が配置されている。
【0027】
この場合糸張力センサ54は、信号線路56を介して同様に作業部位計算機32と接続されている。紡績運転(巻返運転)中、糸張力センサ54によって、常時走行する糸22の糸張力が監視され、糸張力センサ54から送られた糸張力信号に応じて、作業部位計算機32を介して糸テンショナ36が操作される。要するに糸テンショナ36の制動皿4,5は、糸22を押圧力で負荷して、押圧力によって、走行する糸22にほぼ一定の糸張力が形成されるよう保証され、ほぼ一定の糸張力によって、製造しようとする綾巻きパッケージ14の均等なパッケージ密度が保証される。
【0028】
パラフィン処理装置46に続いて糸走行方向でみてさらに糸ガイド58が設けられており、糸ガイド58を介して、糸22は、たとえばいわゆる糸ガイドドラム60上に走行し、糸ガイドドラム60は、糸22を綾巻きで巻き付けるために巻取形式「ランダム巻(パッケージ直径の増加と共に巻取動作が低下し綾角が一定に維持される巻取形式」を提供する。綾巻きパッケージ14は、図示していない管を介して、旋回可能に支承されたパッケージフレーム6に回動可能に支承されており、この場合外周で、単個モータ式に駆動される糸ガイドドラム60に接触しており、糸ガイドドラム60は、摩擦接続を介して綾巻きパッケージ14を連行する。
【0029】
レギュラーな糸走行経路の外側に、追加的に糸撚り継ぎ装置40が配置されており、糸撚り継ぎ装置40は、信号線路42を介して同様に作業部位計算機32と接続されている。
【0030】
作業部位10は、さらに吸込ノズル7とグリッパ管8とを備えている。グリッパ管8は、紡績コップ12から到来する下糸を把持するために役立ち、下糸は、糸テンショナの上方で制御下の糸クリアラ切断または糸切れの場合に通常糸テンショナ36に保持される。
【0031】
吸込ノズル7は、綾巻きパッケージ14に向かって走行する上糸を収容するのに役立つ。
【0032】
図2には、作業部位計算機32、ならびに作業部位計算機32の、糸テンショナ36、糸張力センサ54、糸切断装置52およびアラーム装置11との接続回路を概略的に示した。
【0033】
図2に略示した糸テンショナ36は、それ自体公知で、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第4130301号明細書に詳しく記載されている。
【0034】
糸張力センサ54として、有利には、たとえば同様にドイツ連邦共和国特許出願公開第4129803号明細書によって公知の装置が用いられる。電気操作可能な糸切断装置は、たとえば符号52で示唆したように、繊維機械構造では従来技術として以前から知られている。そのような装置は、通常電磁石によって所望の形式で挿出(伸長)運動可能なカッタを備えており、カッタは、電磁石の通電時にストッパに押し付けられ、この場合カッタの手前で走行する糸は確実に分離される。
【0035】
作業部位計算機32は、本実施例では、糸張力目標値発信器13と、糸張力限界値発信器15と、コンパレータ19と、調整装置17と、たとえばコンパレータ19に組み込まれた時間素子21,23とを備えており、作業部位計算機32は、信号線路56を介して糸張力センサ54と接続されていて、調節線路38を介して糸テンショナ36と接続されていて、調節線路50を介して糸切断装置52と接続されていて、ならびに信号線路31を介してアラーム装置11と接続されている。さらに図2に示唆したように、コンパレータ19には、信号線路24を介して糸張力目標値発信器13から糸張力目標値FZKsollが提供され、ならびに信号線路27を介して制限値発信器15から適当な制限値TGが提供される。
【0036】
この場合限界値発信器15を介して、有利には、コンパレータ19が調整装置17を介して糸切断装置52とアラーム装置11とを作動させるまえに経過する、許容偏差の期間ZSが調節可能である。
【0037】
本発明による方法の機能:
巻返プロセスの間、紡出パッケージ12から繰り出される糸22は、綾巻きパッケージに向かう経路上で、特に糸テンショナ36の制動皿4、5間を走行する。制動皿4,5の押圧力を規定の形式で調節することによって、糸22は、少なくともほぼ一定の糸張力で綾巻きパッケージ14に巻き取られる。糸張力は、巻返プロセス全体の間、オンラインで糸張力センサ54によって監視される。求められる糸張力実際値FZKistは、コンパレータ19内で、糸張力目標値発信器13によって設定された糸張力目標値FZsollと比較される。出口側でコンパレータ19は調整装置17と接続されており、調整装置17によって、糸テンショナ36に常時必要な押圧力が加わるようになる。
【0038】
適当な調整信号は、糸テンショナ36の制動皿4,5の特定の押圧力に対応する。求められた糸張力実際値FZKistは、コンパレータ19内で、さらに制限値発信器15によって設定された限界値TGと比較される。
【0039】
コンパレータ19が、比較に際して、糸張力実際値FZKistが所定の期間ZSで限界値TGに到達したこと、またはこれを超過したことを認識すると、調節線路50を介して、糸切断装置52が作動させられて、走行する糸22が分離される。さらに信号線路31を介してアラーム装置11が作動させられて、該当する作業部位10が停止される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業部位を示す側面図である。
【図2】糸張力センサ、糸テンショナ、糸切断装置ならびにアラーム装置と接続された、巻返位置の作業部位を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業部位を運転する方法であって、
綾巻きパッケージの巻取速度を調節するための回転数調整可能な巻取駆動装置が設けられており、供給ボビンから紡出される糸の糸張力を監視するための、作業部位計算機と接続された糸張力センサが設けられており、糸張力を調整するための糸テンショナが設けられている方法において、
作業部位計算機(32)で、所望の糸張力(FZKsoll)の値ならびに該所望の糸張力(FZKsoll)からの許容パーセント偏差の値(TG)を調節することができ、
糸張力(FZKsoll)の許容パーセント偏差の超過が生じると、直ちに作業部位計算機(32)によって巻取過程を中断することを特徴とする、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業部位を運転する方法。
【請求項2】
巻取過程を中断するまえに、糸張力(FZKsoll)の許容されない超過の生じ得る期間(ZS)を、作業部位計算機(32)で調節する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
設定可能な期間(ZS)が、0.1秒から5秒まで、有利には約1秒である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
設定された期間(ZS)に関する糸張力(FZKsoll)の許容超過値に到達するか、該許容超過値を超えると、作業部位計算機(32)によって、制御下の糸切断を行う、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
設定された期間(ZS)に関する糸張力(FZKsoll)の許容超過値に到達するか、該許容超過値を超えると、作業部位計算機(32)によって、アラームを作動させる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−508783(P2009−508783A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531567(P2008−531567)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008722
【国際公開番号】WO2007/033771
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】