説明

緊急連絡装置、緊急事態監視装置および監視方法、ならびに判定方法

【課題】 端末の保持者が特段の操作をすることなく緊急事態の通報が可能であって、しかも低コスト且つ広範囲で運用可能な緊急連絡装置を提供する。
【解決手段】 本発明の緊急連絡装置は、緊急連絡装置の傾き角を常時監視(S202〜S204)している傾斜センサ部を備えている。ユーザが転倒して傾き角が補助メモリに設定されている閾値角度より大きくなると(S205)、緊急連絡装置はユーザが転倒したと判定し、補助メモリに登録されている家族等に携帯メールおよびテレビ電話による通報を自動で行う(S214、S215)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末の保持者が該端末から緊急事態の連絡を行うことが可能な緊急連絡装置および緊急事態監視装置、ならびに該装置による緊急事態監視方法および判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
老人の介護や子供の防犯を目的として、GPS(Global Positioning System)等の測位機能を有した携帯電話端末を利用し、緊急時に端末の保持者からその家族等に通報が発せられるとともに、保持者の所在位置が通知される緊急通報システムが、すでに実用化されている。このようなシステムに関する文献として、特許文献1がある。
また、端末の保持者が緊急事態に陥った場合に、例えば体調の異常により気を失ったとか、あるいは暴漢に襲われたなど、緊急事態の内容によっては端末保持者が端末を操作して緊急であることを通報することが難しい状況も考えられる。このような場合の対策として、端末を操作することなく緊急通報することが可能な、特許文献2のような装置が提案されている。この装置は、老人等に持たせた小型送信機と地面に敷設された受信機とからなり、平常時(老人が立っている状態)と異常時(老人が転倒した状態)とで送受信機間の距離、すなわち、受信される電波の強度が異なることを利用して、緊急状態か否かを判断するものである。
【特許文献1】特開平8−180286号公報
【特許文献2】特開平7−15544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、現在実用化されているシステム(または特許文献1に記載のシステム)では、家族等がシステムに端末保持者の問い合わせを行った時、得られるのは端末搭載のGPS機能によって知ることができる保持者の位置情報のみであり、その保持者が緊急状態にあるかどうかまで知ることはできない。すなわち、緊急事態であることを端末保持者が家族等に知らせるためには、保持者が端末の緊急ボタンを押すなどの特定の操作をすることが要求されるため、本当の緊急事態に十分対応できないという問題がある。
また、特許文献2に記載された装置によれば、電波の強度の差を利用して自動的に緊急かどうかが判断できるので、上記の問題を解決し得る。しかしながら、この装置は、地面に受信機をあらたに多数敷設することが必要であるため、受信機を調達、運用、維持、管理するためのコストが多くかかるというデメリットを生ずる。また、この緊急通報システムの運用可能エリアは、このような受信機を敷設することができたエリアに限定されてしまうという問題もある。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、端末の保持者が特段の操作をすることなく緊急事態の通報が可能であって、しかも低コスト且つ広範囲で運用可能な緊急連絡装置、ならびに該装置による緊急事態監視方法および判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上述した課題を解決するためになされたものであって、請求項1に記載の発明は、所定の監視パラメータを定期的に監視する監視手段と、緊急事態に対応する前記監視パラメータの条件をあらかじめ記憶する記憶手段と、前記監視手段により測定された監視パラメータの値と前記記憶手段に記憶された条件とを比較することによって、緊急事態かどうかの判定処理を行う判定手段と、前記判定手段が緊急事態であるとの判定を下した場合に、緊急信号の出力を行う第1の通信手段と、を具備することを特徴とする緊急連絡装置を提案している。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の緊急連絡装置において、前記判定手段は、前記監視パラメータが緊急事態に対応する条件を満足している状態が、あらかじめ設定された評価時間だけ継続した場合に、緊急事態であるとの判定を下すことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の緊急連絡装置において、前記判定手段は、前記監視パラメータが緊急事態に対応する条件を満足した時、保持者に対しアラームを発するアラーム手段と、緊急事態であるとの判定が行われないようにするための指示を該保持者が入力するための入力手段と、を具備し、前記入力手段に前記指示が入力された場合は、緊急事態であるとの判定を行わないことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの項に記載の緊急連絡装置において、無線通信により基地局と接続されて、音声および画像による通話を行う第2の通信手段と、前記判定手段が緊急事態であるとの判定を下した場合に、前記第2の通信手段により所定の相手に通話を発呼する制御手段と、をさらに具備することを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかの項に記載の緊急連絡装置において、前記監視手段は、少なくとも所在位置を検出する位置検出手段と、鉛直方向と所定の軸とのなす傾き角を検出する傾斜角検出手段と、印加される加速度を検出する加速度検出手段と、保持者の生体情報を検出する生体情報検出手段とのうちいずれか1つを具備し、前記監視パラメータは、前記監視手段に対応して上記の所在位置、傾き角、加速度、若しくは生体情報またはこれらの組み合わせであることを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の緊急連絡装置において、前記判定手段は、前記傾斜角検出手段により検出された傾き角が前記記憶手段に記憶されている閾値より大きい場合に、緊急事態であると判定することを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の緊急連絡装置において、前記判定手段は、前記位置検出手段により検出された所在位置が前記記憶手段に記憶されている閾値時間より長い時間変化しない場合に、緊急事態であると判定することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項5に記載の緊急連絡装置において、前記判定手段は、前記加速度検出手段により検出された加速度が前記記憶手段に記憶されている閾値より大きい場合に、緊急事態であると判定することを特徴とする。
【0011】
請求項9に記載の発明は、請求項5または請求項6に記載の緊急連絡装置において、前記傾斜角検出手段は、地磁気の大きさを検出する磁気センサまたは加速度の大きさを検出する加速度センサであることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項5から請求項9のいずれかの項に記載の緊急連絡装置において、前記第1の通信手段によって出力される緊急信号は、前記位置検出手段によって検出された所在位置データまたは前記生体情報検出手段によって検出された生体情報を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項11に記載の発明は、所定の監視パラメータを定期的に監視する監視手段と、前記監視手段による測定で得られた前記監視パラメータを外部に送信する送信手段と、を具備し、前記監視手段は、少なくとも前記位置検出手段、前記傾斜角検出手段、前記加速度検出手段、前記生体情報検出手段のうちいずれか1つを具備し、前記監視パラメータは、前記監視手段により測定される所在位置、傾き角、加速度、若しくは生体情報またはこれらの組み合わせであることを特徴とする緊急事態監視装置を提案している。
【0013】
請求項12に記載の発明は、所在位置、傾き角、加速度、若しくは生体情報またはこれらの組み合わせからなる所定の監視パラメータを定期的に測定するステップと、測定により得られた前記監視パラメータを外部に送信するステップと、を有することを特徴とする緊急事態監視方法を提案している。
【0014】
請求項13に記載の発明は、所在位置、傾き角、加速度、若しくは生体情報またはこれらの組み合わせからなる所定の監視パラメータを定期的に測定するステップと、緊急事態に対応する前記監視パラメータの条件を読み出すステップと、読み出された該条件と測定された監視パラメータの値とを比較することによって緊急事態かどうかの判定処理を行うステップと、を有することを特徴とする緊急事態判定方法を提案している。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、搭載した傾斜センサにより携帯電話端末の傾き角を検出し、検出値からユーザが転倒したかどうかを判断するので、ユーザが端末の操作をすることができない状況においても、家族等に確実に緊急連絡の通報をすることができる。また、ユーザ転倒の判断は携帯電話端末内で行うので、そのためのインフラ設備を外部に用意する必要がなく、経済的に有利である。また、そのようなインフラ設備の有無によって使用可能エリアが限定されることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1は、この発明の一実施の形態による緊急連絡装置の構成を示すブロック図である。この緊急連絡装置は、傾斜センサとGPS機能を搭載した携帯電話端末1によって実現されるものである。この図において、携帯電話端末1は、端末ユニット1−1、1−2の2つの筐体を備えた折り畳み式の携帯電話端末である。アンテナ201は、無線基地局(図示せず)との間の電波信号の送受信を行うためのアンテナである。RF(Radio Frequency)部202は、アンテナ201が受信する受信信号を中間周波数の受信信号に変換して変復調部203へ出力するものである。さらにこのRF部202は、変復調部203から入力する送信信号を無線周波数の信号に変調してアンテナ201へ出力するものである。
【0017】
変復調部203は、RF部202から入力した受信信号の復調処理と、CDMA(Code Division Multiple Access)部204から入力した送信信号の変調処理とを行うものである。CDMA部204は、送信信号の符号化処理、および受信信号の復号化処理を行うものである。音声処理部205は、マイクロホン301から入力される音声信号をデジタル信号に変換してCDMA部204へ出力し、また、CDMA部204からデジタルの音声信号を入力してアナログの音声信号に変換し、スピーカ302へ出力して発音させるものである。
【0018】
GPSアンテナ401は、GPS衛星からの電波信号を受信するためのアンテナである。GPS受信部402は、GPS衛星から受信した電波信号を復調し、復調したデータに基づいて携帯電話端末1の緯度および経度(3次元モードの場合はさらに高度等)で表される位置を算出するものである。
【0019】
傾斜センサ部520は、3つの磁気センサ521−1〜521−3により地磁気の方向を検出することによって、鉛直方向に対する携帯電話端末1の傾き角を算出するものである。ここで、第1の磁気センサ521−1は携帯電話端末1の長手軸(X軸とする)方向の地磁気の大きさを検出し、他の2つの磁気センサ521−2、521−3はX軸と互いに直交する2つの軸(Y軸とZ軸とする)方向の地磁気の大きさを検出する。温度センサ522は、磁気センサ521−1〜521−3の温度補償を行うために温度を検出するものである。磁気センサ制御部523は、各センサ521−1〜521−3および522の出力に対して所定のデータ処理を行うものである。
【0020】
主制御部601は、携帯電話端末1の主制御を行うCPU(Central Processing Unit)、ROM602は、主制御部601のプログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)、RAM603は、データの一時記憶を行うRAM(Random Access Memory)、補助メモリ604は、ユーザ転倒の判定条件等の各種設定データを記憶されたフラッシュメモリである。
【0021】
報知手段303は、スピーカ・バイブレータ・発光ダイオード等を備え、着信やメール受信等を音・振動・光等によってユーザに報知するものである。時計部304は、主制御部601が使用する計時機能部である。主操作部305は、ユーザの指示入力を取り込んで主制御部601に与えるものである。
【0022】
電子撮像部306は、被写体の像をデジタル信号に変換して主制御部601へ出力する電子カメラである。表示部307は、主制御部601から入力する表示用の信号に基づいて画像や文字等を表示する液晶ディスプレイ(LCD)である。タッチパネル308は、表示部307の液晶ディスプレイの表面に組み込まれ、ユーザの接触操作による入力内容を表す信号を主制御部601へ出力するものである。副操作部309は、表示切り替えに用いられるプッシュスイッチである。
【0023】
次に、上述した緊急連絡装置の動作を図2に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、この携帯電話端末1の電源スイッチがオンになると(ステップS201)、傾斜センサ部520が始動し、磁気センサ521−1〜521−3がX軸、Y軸およびZ軸方向の地磁気の検出を開始する(ステップS203)。検出された地磁気データから、地磁気方向と携帯電話端末1の長手軸方向とのなす角度が計算され、さらに監視パラメータである携帯電話端末1の傾き角θ(鉛直方向と携帯電話端末1の長手軸とのなす角度)が計算されて(ステップS204)、RAM603へ出力される。ここで、ユーザは腰のベルトに携帯電話端末1を縦にして装着するのが普通の使用状態であり、この時の傾き角θはほぼ0度である。
地磁気の検出と傾き角θの計算は、測定サイクル時間t1ごとに実行され(ステップS202)、評価時間T1(ただし、T1>t1)分の傾き角データが随時更新されながらRAM603に保持される。ここで、時間t1とT1は補助メモリ604に設定データとしてあらかじめ記憶されているものである。
【0024】
次に、傾き角θと、補助メモリ604に記憶されている閾値角度αとの比較が行われる(ステップS205)。ここで、閾値角度αは、ユーザの身体が転倒している状態であると判断される角度であり、あらかじめユーザにより設定されている。傾き角θが閾値角度αより小さい(θ<α)場合は、「平常状態」(ユーザは立っている)と判断されてステップS202からの処理が繰り返される。傾き角θが閾値角度αより大きい(θ>α)場合は、「異常状態」(ユーザは転倒している)と判断されて、携帯電話端末1は警告モード(ステップS206〜ステップS213)へ移行する。
【0025】
警告モードでは、まずGPS受信部402がGPS衛星からの電波を受信し(ステップS206)、携帯電話端末1の位置(緯度および経度)を算出する(ステップS207)。そして、この算出された位置と、補助メモリ604に記憶されているユーザの自宅の位置とが比較される(ステップS208)。その結果、携帯電話端末1が自宅にあると判定された場合は、警告モードは解除されてステップS202からの処理が繰り返される。また、携帯電話端末1が自宅の外にあると判定された場合は、警告モードは続行して次の処理に移る。ここで、このような判定を行うのは、ユーザが外出している場合にだけこの緊急連絡装置を動作させるためである。
【0026】
次に、警告モードでは、評価時間T1が経過するまで、報知手段303がアラーム音を鳴らしてユーザに注意を促す(ステップS209)。これは、ユーザが転倒したのではなく、一時的に携帯電話端末1を腰のベルトから外して操作したり、机の上に置いたり、ユーザが自分の意思で横になったりした場合に、警告モードを解除する余地を与えるためのものである。アラーム音は、初めは小音量で、その後徐々に大音量になるように鳴音する。
【0027】
ここで、ユーザが評価時間T1の経過前に主操作部305の警告モード解除ボタンを押下すると(ステップS210、ステップS211)、警告モードは解除されてアラーム音は停止し(ステップS212)、携帯電話端末1は通常のモード(待機モード)へ戻る。その後、θ<αとなって普通の使用状態(腰のベルトに装着してユーザが立った状態)になると、RAM603に保持されている傾き角データがクリアされたうえで再びステップS202からの処理が実行される。
【0028】
一方、警告モードが解除されないまま評価時間T1が経過すると、ユーザが実際に転倒してそのまま転倒状態が継続していると判断され、アラーム音が停止(ステップS213)してから携帯電話端末1は緊急モード(ステップS214〜ステップS220)へ移行して以下の処理を行う。
まず、GPS機能によって算出された位置データと、「****(ユーザの名前)は緊急事態です。現在位置を確認してください。」というメッセージとが、携帯メール(第1の通信手段)によって家族宛てに自動送信される(ステップS214)。ここで、メールの送信先となる家族は、あらかじめ補助メモリ604に設定データとして記憶されているものである。また、このメールを受信した家族の携帯電話には、自動的に地図表示ソフトが読み込まれて、その表示画面に、受信した位置データに基づいてユーザの現在位置を表すマークが描かれた地図が表示される。
【0029】
次に、携帯電話端末1は、携帯メールを送信した家族にテレビ電話(第2の通信手段)の通話を自動的に発呼する(ステップS215、ステップS216)。家族との通話が繋がると、通常のテレビ電話と同じように、マイクロホン301が周囲の音や音声を集音し、電子撮像部306が映像を撮影して、家族の携帯電話端末にユーザの周囲の状況を知らせるとともに、家族からの呼び掛けをスピーカ302から発音して、ユーザまたは近くの通行者に注意を促す(ステップS217)。家族との通話が繋がらなかった場合は、報知手段303から大音量のアラーム音と「身体の異常のため転倒しました。救助をお願いします。」という音声メッセージを出力して、近くの通行者に注意を促す(ステップS219)。その後、通話の終了処理(ステップS218)またはアラームの停止処理(ステップS220)が行われ、動作が完了する。
【0030】
このように、上記の実施形態によれば、携帯電話端末1に傾斜センサを搭載して傾き角θを常時監視しておき、検出された傾き角θがあらかじめ設定した閾値角度α以上になった場合にユーザが転倒等により緊急事態に陥ったと判断するようにしている。すなわち、緊急事態か否かの判断は傾斜センサの検出値である傾き角θを用いて自動的に行われるので、ユーザが特段の操作をすることなく、家族等に緊急連絡が行われる。したがって、従来のようにユーザの所在位置だけでなく、ユーザが体調の異常等により転倒して緊急性があるということをも家族等に自動で通報することが可能となる。
【0031】
また、傾き角θは携帯電話端末1に内蔵された傾斜センサのみによって検出されるものであるから、ユーザが転倒したことを検出するための何らかの装置を外部(例えば地面)に多数敷設する必要は一切ない。すなわち、そのような装置を多数設置して運用していくためのコストが掛からないという点、緊急連絡システム全体としての構成が簡素なものになるという点でメリットがある。また、緊急連絡システムの運用可能エリアは、外部装置が敷設されたエリアに限定されることなく、通常の携帯電話端末のサービスエリア全体での運用が可能である。
【0032】
さらに、上記の実施形態によれば、傾き角θが閾値角度αを超えた状態が評価時間T1以上継続した場合にのみ、ユーザが緊急事態であると判断するようにしている。すなわち、ユーザが自分の意思で横になる等した場合に、即座に誤報が発せられるおそれがなく、信頼度の高い緊急連絡の通報が可能である。
【0033】
なお、上記実施形態においては、傾斜センサ部520は磁気センサ521−1〜521−3により構成されているが、磁気センサに替えて、携帯電話端末1に印加される加速度を検出する加速度センサを用いた構成とすることもできる。すなわち、互いに直交する3軸方向の加速度が検出されるように3つの加速度センサを実装して、各センサの検出値から携帯電話端末1に印加される加速度の方向(と大きさ)を算出する。通常は(衝撃が加わらなければ)、印加される加速度は重力加速度だけであり、その方向は鉛直方向であるから、上記実施形態と同様に傾き角θを求めることができる。
【0034】
また、上記実施形態においては、ユーザが転倒したかどうかの判断に傾き角θと閾値角度αの大小関係を利用しているが、そのような判断手法の替わりに、加速度センサにより検出された加速度の大きさ(通常は地上の重力加速度である1G)があらかじめ設定された値を超えた場合に転倒したとの判断をするようにしてもよい。このようにすれば、ユーザが転倒した時に加わる衝撃の大きさから緊急事態を判別することが可能である。
【0035】
さらに、緊急事態の別の判断手法として、GPS機能によりユーザの位置情報を常時モニタしておき、ある一定時間位置情報に変更がなかった場合に、ユーザが意に反して同じ場所に停留している、すなわち体調の異常や転倒等によって動くことができない緊急状態にある、と判断するようにしてもよい。
【0036】
また、本発明にかかる緊急連絡装置は、上記の実施形態のように折り畳み式の携帯電話端末に限定されるものではなく、ユーザの腕に常時装着する腕時計型の携帯電話端末(携帯電話機能を備えた腕時計)であってもよい。また、常時装着タイプである利点を活かして、この腕時計型携帯電話端末に脈拍センサを内蔵してもよい。これにより、脈拍を常時モニタしておいて、脈拍数が異常値を示した時に緊急連絡を通報するようにすることもできる。
なお、上記の実施形態ではCDMA方式の携帯電話端末を例として本発明にかかる緊急連絡装置を説明したが、携帯電話の通信方式は本発明の本質とは関係がなく、他のいかなる通信方式によるものであっても構わない。
【0037】
また、上記実施形態のステップS208では、GPS機能を利用してユーザの所在位置と自宅位置とを比較し、ユーザが外出している時にのみ緊急連絡装置を作動させるようにしているが、このような比較を行わずに、自宅内においても緊急かどうかの監視を行うようにすることもできる。
また、ステップS209においてユーザに注意を促すため報知手段303がアラーム音を鳴音させているが、これ以外にも、バイブレータによる振動や発光ダイオードによる光の点滅等によって注意喚起をしてもよい。
なお、緊急連絡の通報先は、ユーザの家族に限られることはなく、病院や老人ホーム等に設定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の一実施の形態による緊急連絡装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の緊急連絡装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1…携帯電話端末 1−1、1−2…端末ユニット 201…アンテナ 202…RF部 203…変復調部 204…CDMA部 205…音声処理部 301…マイクロホン 302…スピーカ 303…報知手段 304…時計部 305…主操作部 306…電子撮像部 307…表示部 308…タッチパネル 309…副操作部 401…GPSアンテナ 402…GPS受信部 520…傾斜センサ部 521−1〜521−3…磁気センサ 522…温度センサ 523…磁気センサ制御部 601…主制御部 602…ROM 603…RAM 604…補助メモリ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の監視パラメータを定期的に監視する監視手段と、
緊急事態に対応する前記監視パラメータの条件をあらかじめ記憶する記憶手段と、
前記監視手段により測定された監視パラメータの値と前記記憶手段に記憶された条件とを比較することによって、緊急事態かどうかの判定処理を行う判定手段と、
前記判定手段が緊急事態であるとの判定を下した場合に、緊急信号の出力を行う第1の通信手段と、
を具備することを特徴とする緊急連絡装置。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記監視パラメータが緊急事態に対応する条件を満足している状態が、あらかじめ設定された評価時間だけ継続した場合に、緊急事態であるとの判定を下すことを特徴とする請求項1に記載の緊急連絡装置。
【請求項3】
前記判定手段は、
前記監視パラメータが緊急事態に対応する条件を満足した時、保持者に対しアラームを発するアラーム手段と、
緊急事態であるとの判定が行われないようにするための指示を該保持者が入力するための入力手段と、
を具備し、
前記入力手段に前記指示が入力された場合は、緊急事態であるとの判定を行わないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の緊急連絡装置。
【請求項4】
無線通信により基地局と接続されて、音声および画像による通話を行う第2の通信手段と、
前記判定手段が緊急事態であるとの判定を下した場合に、前記第2の通信手段により所定の相手に通話を発呼する制御手段と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかの項に記載の緊急連絡装置。
【請求項5】
前記監視手段は、少なくとも
所在位置を検出する位置検出手段と、
鉛直方向と所定の軸とのなす傾き角を検出する傾斜角検出手段と、
印加される加速度を検出する加速度検出手段と、
保持者の生体情報を検出する生体情報検出手段と、
のうちいずれか1つを具備し、
前記監視パラメータは、
前記監視手段に対応して上記の所在位置、傾き角、加速度、若しくは生体情報またはこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかの項に記載の緊急連絡装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記傾斜角検出手段により検出された傾き角が前記記憶手段に記憶されている閾値より大きい場合に、緊急事態であると判定することを特徴とする請求項5に記載の緊急連絡装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記位置検出手段により検出された所在位置が前記記憶手段に記憶されている閾値時間より長い時間変化しない場合に、緊急事態であると判定することを特徴とする請求項5に記載の緊急連絡装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記加速度検出手段により検出された加速度が前記記憶手段に記憶されている閾値より大きい場合に、緊急事態であると判定することを特徴とする請求項5に記載の緊急連絡装置。
【請求項9】
前記傾斜角検出手段は、地磁気の大きさを検出する磁気センサまたは加速度の大きさを検出する加速度センサであることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の緊急連絡装置。
【請求項10】
前記第1の通信手段によって出力される緊急信号は、前記位置検出手段によって検出された所在位置データまたは前記生体情報検出手段によって検出された生体情報を含むことを特徴とする請求項5から請求項9のいずれかの項に記載の緊急連絡装置。
【請求項11】
所定の監視パラメータを定期的に監視する監視手段と、
前記監視手段による測定で得られた前記監視パラメータを外部に送信する送信手段と、
を具備し、
前記監視手段は、
少なくとも前記位置検出手段、前記傾斜角検出手段、前記加速度検出手段、前記生体情報検出手段のうちいずれか1つを具備し、
前記監視パラメータは、
前記監視手段により測定される所在位置、傾き角、加速度、若しくは生体情報またはこれらの組み合わせであることを特徴とする緊急事態監視装置。
【請求項12】
所在位置、傾き角、加速度、若しくは生体情報またはこれらの組み合わせからなる所定の監視パラメータを定期的に測定するステップと、
測定により得られた前記監視パラメータを外部に送信するステップと、
を有することを特徴とする緊急事態監視方法。
【請求項13】
所在位置、傾き角、加速度、若しくは生体情報またはこれらの組み合わせからなる所定の監視パラメータを定期的に測定するステップと、
緊急事態に対応する前記監視パラメータの条件を読み出すステップと、
読み出された該条件と測定された監視パラメータの値とを比較することによって緊急事態かどうかの判定処理を行うステップと、
を有することを特徴とする緊急事態判定方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−277464(P2006−277464A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97151(P2005−97151)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】