説明

総合輸液製剤

【課 題】 ビタミンBの安定性に優れた総合輸液製剤の提供。
【解決手段】連通可能な隔壁により隔てられた2室を有する容器の各室に分別収容された還元糖液(A)とアミノ酸液(B)、並びに前記2室のいずれか一方と連通可能な小容器に収容されたビタミンB液(C)を備えたことを特徴とする総合輸液製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアミノ酸、還元糖およびビタミンBを含有した総合輸液製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンBはアミノ酸輸液と一緒に投与される重要なビタミンであり、他のビタミンと較べて、酸性条件の方が安定であり、かつ亜硫酸塩の存在により急速に分解するという性質を有している。従来、ビタミンBを含有する総合輸液製剤としては、連通可能な隔壁により隔てられた2室(A室およびB室)と該2室のいずれか一方と連通可能な小容器(C室)を備える容器に、還元糖液とアミノ酸液と脂溶性ビタミン液とを分別収容し、かつ還元糖液にビタミンBが配合されている輸液製剤がいくつか提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、A室にアミノ酸およびビタミンCを含有する輸液、B室に還元糖、ビタミンBおよびビタミンBを含有する輸液、C室にビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKを含有する輸液が充填されている総合輸液製剤が開示されている。
【0004】
特許文献2には、A室にアミノ酸、ビタミンBおよびビタミンCを含有する輸液、B室に還元糖およびビタミンBを含有する輸液、C室にビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKおよびビタミンB12を含有する輸液が充填されている総合栄養輸液剤が開示されている。
【0005】
特許文献3には、A室にL−チロシンを除くアミノ酸、ビタミンCおよびパントテン酸を含有する輸液、B室に還元糖、L−チロシン、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンBおよびニコチン酸類を含有する輸液、C室にビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB12を含有する輸液が充填されている総合栄養輸液剤が開示されている。
【0006】
特許文献4には、還元糖を含有する溶液、アミノ酸を含有する溶液および脂溶性ビタミンを含有する溶液の3液からなる輸液であって、還元糖液が更にビタミンBを含有し、アミノ酸液が更に葉酸を含有し、脂溶性ビタミン液が更にビタミンC、ビタミンBを含有している中心投与用輸液が記載されている。
【0007】
特許文献5には、還元糖を含有する溶液、アミノ酸を含有する溶液、ビタミンDを含有する溶液の3液からなる輸液であって、還元糖液が更にビタミンBを含有し、アミノ酸液が更にビタミンB12および葉酸を含有している輸液が記載されている。
【0008】
上記の既知輸液はいずれもビタミンBを還元糖液に配合したものであるが、還元糖液には、フルクトースやキシリトールなど他の糖が配合されたり、脂肪乳剤が配合されたり、安定化剤として亜硫酸塩が配合されたりする場合があり、このような場合には、ビタミンBを配合できない問題があった。また、ビタミンB含有還元糖液に脂肪乳剤が配合されると、ビタミンBを蛍光法や呈色法あるいはHPLC法により定量することが困難となる問題もあった。
【特許文献1】特開2000−273035号公報
【特許文献2】特開2001−55328号公報
【特許文献3】特開2001−163780号公報
【特許文献4】特開平11−158061号公報
【特許文献5】国際公開第99/39679号パンフレット(WO99/39679)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ビタミンBの安定性に優れた総合輸液製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく種々検討を重ねた結果、連通可能な隔壁により隔てられた2室を有する容器の各室に分別収容された還元糖液(A)とアミノ酸液(B)を備え、更に前記2室のいずれか一方と連通可能な小容器に収容されたビタミンB液(C)を備えた総合輸液製剤が、ビタミンBの安定性に優れていることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
〔1〕 連通可能な隔壁により隔てられた2室を有する容器の各室に分別収容された還元糖液(A)とアミノ酸液(B)を備え、更に前記2室のいずれか一方と連通可能な小容器に収容されたビタミンB液(C)を備えたことを特徴とする総合輸液製剤、
〔2〕 ビタミンB液(C)が脂溶性ビタミンを含むことを特徴とする前記〔1〕に記載の総合輸液製剤、
〔3〕 脂溶性ビタミンがビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKである前記〔2〕に記載の総合輸液製剤、
〔4〕 ビタミンB液(C)のpHが3〜6であることを特徴とする前記〔3〕に記載の総合輸液製剤、
〔5〕 ビタミンB液(C)が微量金属元素を含むことを特徴とする前記〔1〕に記載の総合輸液製剤、
〔6〕 ビタミンB液(C)中の微量金属元素が鉄、マンガン、亜鉛または銅である前記〔5〕に記載の総合輸液製剤、
〔7〕 ビタミンB液のpHが3〜5である前記〔6〕に記載の総合輸液製剤、
〔8〕 ビタミンB液(C)がビタミンB12を含むことを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の総合輸液製剤、
〔9〕 還元糖液(A)がフルクトースおよび/またはキシリトールを含むことを特徴とする前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の総合輸液製剤、
〔10〕 還元糖液(A)が亜硫酸塩を含むことを特徴とする前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の総合輸液製剤、
〔11〕 還元糖液(A)が脂肪乳剤を含むことを特徴とする前記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の総合輸液製剤、
〔12〕 容器が可撓性熱可塑性プラスチックフィルムより形成され、前記連通可能な隔壁が、容器本体の対向する内壁面同士を剥離可能にシールすることで構成され、前記小容器が可撓性熱可塑性プラスチックフィルムから形成され、前記容器の連通可能な隔壁の近傍で前記容器本体の対向する内壁面それぞれに固着されており、前記隔壁の開封に伴う内壁面の離間に伴って小容器が開封するようにされたことを特徴とする前記〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の総合輸液製剤、
〔13〕 前記小容器が2室に区切られ、一方の室にビタミンB液(C)が、他方の室に微量金属元素液(D)が収容されたことを特徴とする前記〔12〕に記載の総合輸液製剤、および
〔14〕 前記小容器が、容器の還元糖液(A)を収容する室中に配置されたことを特徴とする前記〔12〕または〔13〕に記載の総合輸液製剤、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の総合輸液製剤は還元糖液にフルクトース、キシリトール、亜硫酸塩などが配合されていてもビタミンBの安定性に優れ、また還元糖液に脂肪乳剤が配合されていてもビタミンBの定量が容易にできるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の総合輸液製剤は、連通可能な隔壁により隔てられた2室を有する容器の各室に分別収容された還元糖液(A)とアミノ酸液(B)を備え、更に前記2室のいずれか一方と連通可能な小容器に収容されたビタミンB液(C)を備えたことを特徴とする。
【0014】
(還元糖液(A))
還元糖液(A)中に含有される還元糖としては、ブドウ糖、フルクトースなどの単糖類、マルトースなどの二糖類が例示され、中でもブドウ糖、フルクトース、マルトースが好ましく、とりわけ血糖管理などの点でブドウ糖が好ましい。これらの還元糖は2種以上を混合して用いてもよく、更にこれらの還元糖にソルビトール、キシリトール、グリセリンなどを加えた混合物を用いてもよい。
【0015】
全ての溶液を混合した溶液中に還元糖は、約20〜800g/L、好ましくは約50〜400g/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0016】
還元糖液(A)は通常のpH調整剤、例えば、塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリを適宜使用してpH約2〜6、好ましくは約2.5〜5に調整するのが好ましい。
【0017】
また、還元糖液(A)には、脂肪乳剤が配合されていてもよい。
還元糖液(A)中に含まれる脂肪乳剤としては、公知の各種のものを使用でき、これに用いられる油脂もまた慣用のものでよく、その例としては、例えば大豆油、綿実油、サフラワー油、トウモロコシ油、ヤシ油、シソ油、エゴマ油などの植物油のほか、タラ肝油などの魚油などが挙げられる。該脂肪乳剤に用いられる乳化剤もまた、通常医薬製剤に慣用されているものでよく、その例としては、卵黄リン脂質、大豆リン脂質などが挙げられる。全ての溶液を混合した溶液中に脂肪乳剤の成分である油脂が約0.1〜30g/L、好ましくは約1〜20g/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0018】
(アミノ酸液(B))
アミノ酸液(B)中に含有されるアミノ酸としては、従来から生体への栄養補給を目的とするアミノ酸輸液に含有されている必須アミノ酸、非必須アミノ酸、および/またはこれらのアミノ酸の塩、エステルまたはN−アシル体などが挙げられる。具体的には例えば、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシンなどのアミノ酸が挙げられる。また、これらアミノ酸はL−アルギニン塩酸塩、L−システイン塩酸塩、L−グルタミン酸塩酸塩、L−ヒスチジン塩酸塩、L−リジン塩酸塩などの無機酸塩や、L−リジン酢酸塩、L−リジンリンゴ酸塩などの有機酸塩、L−チロシンメチルエスエル、L−メチオノンメチルエスエル、L−メチオニンエチルエステルなどのエステル体、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−L−トリプトファン、N−アセチル−L−プロリンなどのN−置換体、L−チロシル−L−チロシン、L−アラニル−L−チロシン、L−アルギニル−L−チロシン、L−チロシル−L−アルギニンなどのジペプチド類の形態でもよい。
【0019】
全ての溶液を混合した溶液中にアミノ酸は、以下の配合量(遊離形態で換算)で配合されているのが好ましい。L−ロイシン約0.4〜20.0g/L、好ましくは約0.8〜10.0g/L、L−イソロイシン約0.2〜14.0g/L、好ましくは約0.4〜7.0g/L、L−バリン約0.1〜16.0g/L、好ましくは約0.3〜8.0g/L、L−リジン約0.2〜14.0g/L、好ましくは約0.5〜7.0g/L、L−スレオニンを約0.1〜8.0g/L、好ましくは約0.3〜4.0g/L、L−トリプトファン約0.04〜3.0g/L、好ましくは約0.08〜1.5g/L、L−メチオニン約0.1〜8.0g/L、好ましくは約0.2〜4.0g/L、L−フェニルアラニン約0.2〜12.0g/L、好ましくは約0.4〜6.0g/L、L−システイン約0.01〜2.0g/L、好ましくは約0.03〜1.0g/L、L−チロシン約0.01〜2g/L、好ましくは約0.02〜1.0g/L、L−アルギニン約0.2〜14.0g/L、好ましくは約0.5〜7.0g/L、L−ヒスチジン約0.1〜8.0g/L、好ましくは約0.3〜4.0g/L、L−アラニン約0.2〜14.0g/L、好ましくは約0.4〜7.0g/L、L−プロリン約0.1〜10.0g/L、好ましくは約0.2〜5.0g/L、L−セリン約0.1〜6.0g/L、好ましくは約0.2〜3.0g/L、グリシン約0.1〜12.0g/L、好ましくは約0.3〜6.0g/、L−アスパラギン酸約0.01〜4.0g/L、好ましくは約0.03〜2.0g/L、L−グルタミン酸約0〜6.0g/L、好ましくは約0〜3.0g/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0020】
アミノ酸液(B)のpHは、通常のpH調整剤、例えば塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリを適宜用いて約2.5〜10、好ましくは約5〜8に調整するのが好ましい。
【0021】
(ビタミンB液(C))
ビタミンB液(C)は、溶媒(例えば水など)でビタミンBを溶解した溶液であれば特に限定されず、通常、ビタミンB水溶液の状態で用いられる。ビタミンB液(C)中に含まれるビタミンBの量(塩酸チアミンとして)は、全ての溶液を混合した溶液中に、約0.4〜30.0mg/L、好ましくは0.8〜30mg/L,より好ましくは約1.0〜5.0mg/Lとなるように配合される。
【0022】
ビタミンB液(C)のpHは、通常のpH調整剤、例えば塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリを適宜用いて調整される。
【0023】
また、ビタミンB液(C)には、脂溶性ビタミンが配合されていてもよい。その場合、pHは3.0〜6.0に調整されるのが好ましい。
ビタミンB液(C)中に含まれる脂溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどが挙げられる。ビタミンAとしては、例えばパルミチン酸エステル、酢酸エステルなどのエステル形態が挙げられる。ビタミンDとしては例えばビタミンD、ビタミンD、ビタミンD(コレカルシフェロール)およびそれらの活性型(ヒドロキシ誘導体)が挙げられる。ビタミンE(トコフェロール)としては、例えば酢酸エステル、コハク酸エステルなどのエステル形態が挙げられる。ビタミンK(フィトナジオン)としては、例えばフィトナジオン、メナテトレノン、メナジオンなどの誘導体が挙げられる。
【0024】
これらの脂溶性ビタミンは、全ての溶液を混合した溶液中に、ビタミンAを約400〜6500IU/L、好ましくは約800〜6500IU/L、より好ましくは約800〜4000IU/L、ビタミンD(コレカルシフェノールとして)を約0.5〜10.0μg/L、好ましくは約1.0〜10.0μg/L、より好ましくは約1.0〜6.0μg/L、ビタミンE(酢酸トコフェノールとして)を約1.0〜20.0mg/L、好ましくは約2.5〜20.0mg/L、より好ましくは約2.5〜12.0mg/L、ビタミンK(フィトナジオンとして)を約0.2〜4.0mg/L、好ましくは約0.5〜4.0mg/L、より好ましくは約0.5〜2.5mg/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0025】
また、ビタミンB液(C)には、微量金属元素が配合されていてもよい。その場合、pHは3.0〜5.0に調整されるのが好ましい。
微量金属元素としては、例えば、銅、鉄、亜鉛、マンガン、ヨウ素などが挙げられる。微量金属元素の供給源を例示すると、鉄の供給源としては、例えば塩化第二鉄、硫酸第二鉄などが挙げられ、マンガンの供給源としては、例えば塩化マンガン、硫酸マンガンなどが挙げられ、亜鉛の供給源としては、例えば塩化亜鉛、硫酸亜鉛などが挙げられ、銅の供給源としては、例えば硫酸銅などが挙げられ、ヨウ素の供給源としては、例えばヨウ化カリウムなどが挙げられる。
【0026】
微量金属元素は、対象となる患者の状態に対応して一種類のみが使用されてもよく、二種類以上が使用されてもよい。微量金属の配合量は、輸液分野における各種の文献に記載された、一日当たりの各微量金属元素の投与量(一日必要量)として一般的な範囲内であれば、特に限定されない。微量金属元素の配合量を例示するとすれば、全ての溶液を混合した溶液中に、鉄(鉄供給源として)を約2〜200μmol/L、好ましくは約5〜100μmol/L、マンガン(マンガン供給源として)を約0〜10μmol/L、好ましくは約0〜5μmol/L、亜鉛(亜鉛供給源として)を約2〜300μmol/L、好ましくは約1〜150μmol/L、銅(銅供給源として)を約0・5〜40μmol/L、好ましくは約1〜20μmol/L、ヨウ素(ヨウ素供給源として)を約0〜5μmol/L、好ましくは約0.2〜5μmol/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0027】
更に、本発明の総合輸液製剤は、小容器が2室に区切られ、一方の室にビタミンB液(C)が、他方の室に微量金属元素液(D)が収容されていてもよい。
【0028】
ビタミンB液に脂溶性ビタミンが含まれる場合、前記の微量金属元素のうち、鉄、マンガンおよび銅は、図2に示されるように、小容器を2室(第3室および第4室)に区切り、脂溶性ビタミンとは別に収容されるのが好ましい。ヨウ素は、少なくとも銅とは分別されるのが好ましく、例えば還元糖液(A)に好適に配合される。亜鉛は還元糖液(A)、アミノ酸液(B)、ビタミンB液(C)または微量金属元素(D)に配合される。
【0029】
(その他の添加剤)
還元糖液(A)、アミノ酸液(B)、ビタミンB液(C)、微量金属元素液(D)には、本発明の目的を阻害しない限り、電解質、ビタミンB以外の水溶性ビタミン類、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリソルベート20、D−ソルビトール、マクロゴール400などの公知の添加剤が配合されていてもよい。
【0030】
電解質としては、例えば、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Ma2+)などの陽イオン、クロールイオン(Cl)などの陰イオン、およびリン(P)などが挙げられる。電解質の供給源を例示すると、ナトリウムイオンの供給源としては、例えば塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、乳酸ナトリウムなどが挙げられる。カリウムイオンの供給源としては、例えば塩化カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウムなどが挙げられる。カルシウムイオンの供給源としては、例えば塩化カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウムなどが挙げられる。マグネシウムイオンの供給源としては、例えば硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウムなどが挙げられる。リンの供給源としては、例えばリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウムなどのリン化合物が挙げられる。
【0031】
これらの電解質は、全ての溶液を混合した溶液中に、ナトリウムイオンが約10〜160mEq/L、好ましくは約20〜80mEq/Lとなるように、カリウムイオンが約5〜80mEq/L、好ましくは約10〜40mEq/Lとなるように、カルシウムイオンが約1〜40mEq/L、好ましくは約2〜20mEq/Lとなるように、マグネシウムイオンが約1〜40mEq/L、好ましくは約2〜20mEq/Lとなるように、リンが約1〜40mmol/L、好ましくは約2〜20mmol/Lとなるように、クロールイオンが約10〜160mEq/L、好ましくは約20〜80mEq/Lとなるように配合されるのが好ましい。
【0032】
これらの電解質のうち、カルシウム塩およびマグネシウム塩はリン化合物と分離して、異なる溶液に配合しておくのが好ましい。その他の電解質は特に制限されず、溶液(A)〜(D)のいずれに配合してもよい。
【0033】
また、水溶性ビタミン類としては、例えば、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、パントテン酸類、ニコチン酸類、葉酸、ビオチン(ビタミンH)などが挙げられる。
【0034】
ビタミンBはビタミンB液(C)に配合されるのが好ましい。
ビタミンBは還元糖液(A)またはビタミンB液(C)に配合されるのが好ましい。
【0035】
ビタミンB12は、還元糖液(A)またはビタミンB液(C)に配合されるのが好ましいが、ビタミンCとの共存は避けることが望ましい。したがって、ビタミンB12を還元糖液(A)に配合した場合は、ビタミンCはアミノ酸液(B)に配合されるのが好ましい。
【0036】
パントテン酸類は還元糖液(A)に配合されるのが好ましい。
ニコチン酸類および葉酸はアミノ酸液(B)に配合されるのが好ましい。
ビオチン(ビタミンH)は微量金属元素液(D)に配合されるのが好ましい。
【0037】
また、アミノ酸液(B)には、安定化剤として亜硫酸塩および/または亜硫酸水素塩を添加することもでき、その場合、アミノ酸液(B)中に50mg/L以下配合してもよい。
【0038】
本発明の総合輸液製剤の好ましい具体例としては、3室に分割して充填する場合は、還元糖液(A)にはブドウ糖、大豆油、L−ヒスチジンが含まれており、アミノ酸液(B)にはL−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−リジン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、N−アセチル−L−システイン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アラニン、L−プロリン、L−セリン、グリシン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸および亜鉛が含まれており、ビタミンB液(C)にはビタミンBが含まれている輸液剤や、還元糖液(A)にはブドウ糖、フルクトース、キシリトール、およびヨウ素が含まれており、アミノ酸液(B)にはL−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−リジン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、N−アセチル−L−システイン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アラニン、L−プロリン、L−セリン、グリシン、L−アスパラギン酸およびL−グルタミン酸が含まれており、ビタミンB液(C)にはビタミンB、鉄、マンガン、亜鉛、銅が含まれている輸液剤や、還元糖液(A)にはブドウ糖、亜鉛、ビタミンB、ビタミンB12およびパンテノールが含まれており、アミノ酸液(B)にはL−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−リジン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、N−アセチル−L−システイン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アラニン、L−プロリン、L−セリン、グリシン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、ニコチン酸アミドおよび葉酸が含まれており、ビタミンB液(C)にはビタミンB、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKが含まれている輸液剤などが挙げられる。
【0039】
また、4室に分割して充填する場合は、還元糖液(A)にはブドウ糖、ヨウ素、ビタミンB、ビタミンB12およびパンテノールが含まれており、アミノ酸液(B)には、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−リジン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、N−アセチル−L−システイン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アラニン、L−プロリン、L−セリン、グリシン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、ニコチン酸アミド、葉酸、ビタミンCが含まれており、ビタミンB液(C)にはビタミンB、ビタミンB、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKが含まれており、微量金属元素液(D)には鉄、マンガン、亜鉛、銅およびビタミンHが含まれている輸液剤や、還元糖液(A)にはブドウ糖、ヨウ素、ビタミンBおよびパンテノールが含まれており、アミノ酸液(B)には、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−リジン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、N−アセチル−L−システイン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アラニン、L−プロリン、L−セリン、グリシン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、ニコチン酸アミド、葉酸、アスコルビン酸が含まれており、ビタミンB液(C)にはビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKが含まれており、微量金属元素液(D)には鉄、マンガン、亜鉛、銅およびビタミンHが含まれている輸液剤などが挙げられる。
【0040】
本発明の総合輸液製剤のさらに好ましい具体例としては、前記(A)〜(C)または(A)〜(D)の全ての溶液を混合した後の輸液1L中に各成分が下記表1記載の範囲となるように配合されている輸液剤を挙げることができる。
【表1】

【0041】
また、本発明の総合輸液製剤の他の好ましい具体例としては、前記(A)〜(D)の全ての溶液を混合した後の輸液1L中に各成分が下記表2記載の範囲となるように配合されている輸液剤を挙げることができる。
【表2】

【0042】
(容器)
本発明にかかる総合輸液製剤の容器は、連通可能な隔壁により隔てられた、還元糖液(A)とアミノ酸液(B)を収容するための2室を有し、かつ該2室のいずれか一方と連通可能な、ビタミンB液(C)を収容するための小容器を有するものであれば特に限定されない。また、前記小容器はさらに、ビタミンB液(C)と微量金属元素液(D)とを別々に収容するための2室に区切られていてもよく、あるいはビタミンB液(C)と微量金属元素液(D)とを別々に収容するために2つの小容器を設けてもよい。
【0043】
この様な容器は、特に限定されず、例えば特開平11−158061号公報や国際公開第99/39679号パンフレット(WO99/39679)に記載されたものを採用し得るが、特に好ましい形態は、2室の隔壁の開通に伴って小容器が開通するものとして、国際公開第03/092574号パンフレット(WO03/092574)に記載されたものが挙げられる。
【0044】
以下、図を用いて、本発明にかかる容器の一態様をより具体的に説明する。図1は輸液容器の平面図であり、連通可能な隔壁(5)により隔てられた2室(第1室および第2室)を有し、かつ該2室のうちいずれか一方と連結可能な小容器(6)が設けられている。第1室(3)または第2室(4)のいずれかに還元糖液(A)が充填され、他方の室にアミノ酸液(B)が充填されるが、上室となる第1室(3)に還元糖液(A)を、下室となる第2室(4)にアミノ酸液(B)を充填するのが好ましい。また、小容器(6)にはビタミンB液(C)が充填されるが、小容器(6)は、図2に示すように2室に区切り、一方の室(第3室(6a))にビタミンB液(C)を充填し、他方の室(第4室(6b))に微量金属元素液(D)が充填されていてもよい。小容器(6)は、第1室(3)に還元糖液(A)が充填され、第2室(4)にアミノ酸液(B)が充填される場合は、第1室側に設けられたものが好ましい。
【0045】
なお、第1室(3)に連通する閉塞された薬液流入部(9)はシリンジなどを用いて他の薬剤を注入するために用いられ、第2室(4)に連通する閉塞された薬液流出部(8)は、患者への内部薬液の注入のための輸液セットと接続するために、さらにはシリンジなどを用いて他の薬剤を注入するために用いられる。
【0046】
輸液容器の本体(2)の素材としては、従来より医療用容器等に慣用されている各種の可撓性熱可塑性プラスチックが使用でき、例えば、ポリエチレンまたはそのコポリマー、ポリプロピレンまたはそのコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール部分ケン化物、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物、エチレン−プロピレンコポリマーのようなオレフィン系樹脂もしくはポリオレフィン部分架橋物、スチレン系エラストマー、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル類もしくは軟質塩化ビニル樹脂など、またはそれらの内適当な樹脂を混合した素材、あるいはナイロン、環状オレフィンコポリマーなど他の素材も含めて前記素材を多層に成形したシートなどが利用可能である。
【0047】
第1室(3)と第2室(4)との間に設けられている連通可能な隔壁(5)は、第1室(3)または第2室(4)を押圧することにより両室が連通されるものであればよく、例えば、容器本体の対抗する内壁面同士を剥離可能に弱シールすることで構成されているものが好適に挙げられる。
【0048】
小容器(6)は、上記還元糖液(A)およびアミノ酸液(B)を収容する2室の一方の室に、用時連結可能に接続されている。そのような小容器としては、特に限定されないが、例えば、可撓性熱可塑性プラスチックフィルムより形成され、小容器(6)の一端部が、連通可能な隔壁(5)の近傍で容器本体(2)の対向する内壁面それぞれに、隔壁(5)の開封に伴う内壁面の離間に伴って開封するように固着したものが好ましい。この様な小容器を備えた輸液容器は、例えば、国際公開第03/092574号パンフレット(WO03/092574)に記載の容器が挙げられる。図3は、図1におけるA−A線断面図である。
【0049】
小容器(6)の材質は、輸液容器本体の材質と同様なものが使用できるが、とりわけ隔壁(5)の開封に伴う内壁面の離間に伴って開封しやすいもの、例えばポリ環状オレフィンやポリプロピレンをポリエチレンで挟んだ多層構造のフィルムが好適に挙げられる。
【0050】
上記のような小容器を備えた輸液容器は、例えば、図3(a)に示すように、小容器(6)の一端部が、第1室(3)を構成するフィルム(2a、2b)の内壁面に熱融着され、この融着部分が固着部(7)を形成している。この固着部(7)は、弱シールされている隔壁(5)の近傍に、隔壁(5)より強く、通常は剥離しない強度で融着されている。
【0051】
この様に構成された輸液容器を用いた場合の使用方法について説明する。まず第1室または第2室を手で押さえる等して押圧し、室内の圧力を高める。これによって、シール部の隔壁(5)が開封して第1室(3)と第2室(4)が連通し、還元糖液(A)とアミノ酸液(B)が混合される。このとき、隔壁(7)の開封は、容器本体(2)のフィルム(2a、2b)が離間することで行なわれ、これに伴って小容器(6)が開封する。すなわち、図3(b)に示すように、容器本体のフィルム(2a、2b)が離間すると、この離間に伴う力Fが小容器(6)に作用する。このとき、小容器(6)の2枚の多層フィルム(6a、6b)が固着部(7)により容器本体(2)のフィルム(2a、2b)に固定されているため、多層フィルム(6a、6b)は容器本体(2)のフィルム(2a、2b)とともに離間される。その結果、小容器(6)を構成する多層フィルム(6a、6b)が層間剥離を起こし、これに伴って多層フィルムが破断する。こうして、小容器(6)内に封入されたビタミンB液(C)が、上記のように混合された還元糖液(A)とアミノ酸液(B)との混合液に混入する。続いて、薬液流出部(8)のゴム栓(図示省略)に導管が接続された刺栓針(図示省略)を刺入すると、混合された薬液が導管を介して患者に投与される。
【0052】
小容器(6)は、図2に示すように、2室に区切り、一方の室(第3室)にビタミンB液(C)を充填し、他方の室(第4室)に微量金属元素液(D)が充填されていてもよいが、この場合は、小容器(6)は上記のような仕切り用弱シールで仕切ればよい。また、仕切りを設けた小容器を用いる代わりに、小容器を2つ設け、一つの小容器にビタミンB液(C)を充填し、他方の小容器に微量金属元素液(D)を充填することもできる。
【0053】
本発明の総合輸液製剤は、変質、酸化などを確実に防止するために、容器本体を脱酸素剤と共にガス非透過性外袋で包装されてよく、とりわけ容器の隔壁として溶着により形成された易剥離性の隔壁が採用された総合輸液製剤の場合は、外圧により隔壁が連通しないように該隔壁部にて折りたたまれた状態で包装するのが好ましい。また、必要に応じて不活性ガス充填包装などを行なうこともできる。
【0054】
外袋に適した材料としては、一般に汎用されているガス非透過性のフィルムもしくはシートなどが挙げられ、その材質としては、例えばエチレン/ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル、ナイロンなどガス非透過性素材のうち少なくとも1種が挙げられる。また、ガス非透過性のフィルムもしくはシートは、多層フィルムもしくはシート、あるいはこれらにシリカ蒸着またはアルミナ蒸着などが施された複合フィルムもしくはシートなどであってもよく、これらは目的に応じて適宜に選択され、使用され得る。
また、上記外袋に遮光性を付与するのが好ましい。外袋に遮光性を付与するには、例えば上記フィルムまたはシートにアルミ蒸着を施したり、アルミラミネートフィルムやカーボンブラックなどを混入させたポリエステルフィルムなどを用いる。
【0055】
外袋の形状、大きさなどは総合輸液容器を収納できれば特に制限されるものではない。好ましくは、該容器の約1.2〜約3倍容量程度の大きさであるのがよい。
【0056】
外袋内に封入する脱酸素剤としては、例えば、(1)炭化鉄、鉄カルボニル化合物、酸化鉄、鉄粉、水酸化鉄またはケイ素鉄をハロゲン化金属で被覆したもの、(2)水酸化アルカリ土類金属もしくは炭酸アルカリ土類金属、アルカリ性物質またはアルコール類化合物と亜ニチオン酸塩との混合物、(3)第一鉄化合物、遷移金属の塩類、アルミニウムの塩類、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含むアルカリ化合物、窒素を含むアルカリ化合物またはアンモニウム塩と亜硫酸アルカリ土類金属との混合物、(4)鉄もしくは亜鉛と硫酸ナトリウム・1水和物との混合物または該混合物とハロゲン化金属との混合物、(5)鉄、銅、スズ、亜鉛またはニッケル;硫酸ナトリウム・7水和物または10水和物;およびハロゲン化金属の混合物、(6)周期律表第4周期の遷移金属;スズもしくはアンチモン;または該混合物とハロゲン化金属との混合物、(7)アルカリ金属もしくはアンモニウムの亜硫酸塩、亜硫酸水素塩またはピロ亜硫酸塩;遷移金属の塩類またはアルミニウムの塩類などを用いることができる。これら公知物の中から、所望により適宜に選択することができる。上記脱酸素剤としては、粉末状のものであれば、適当な通気性の小袋にいれて用いるのが好ましく、錠剤化されているものであれば、包装せずにそのまま用いてもよい。
【0057】
また、脱酸素剤としては、市販のものを用いることができ、かかる市販の脱酸素剤としては、例えばエージレス(三菱ガス化学社製)、モデュラン(日本化薬社製)、バイタロン(東亜合成化学工業社製)、タモツ(王子化工株式会社製)、サンソカット(株式会社ファインテック製)、セキュール(日本曹達株式会社製)、オキシガード(東洋製罐株式会社製)、ハイレトフレックス−RD(東洋製罐株式会社製)などが挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
(1)還元糖液(A)の調製
大豆油及び卵黄リン脂質並びにブドウ糖を注射用水に加え、ホモミキサーにより粗乳化した後、注射用水を加えて粗乳化液を得た。得られた粗乳化液を、マントンゴーリンホモジナイザー(ゴーリン社製、15M−8TA型)により平均粒子径が0.17μm以下になるまで乳化して乳剤を得た。得られた乳剤に注射用水を加えて希釈し、表3に示した組成の還元糖液(A)を調製した。
【0060】
(2)アミノ酸液(B)の調製
各結晶アミノ酸及び電解質を注射用蒸留水に溶解し、クエン酸でpH6.2とした後、無菌濾過し、表3に示した組成のアミノ酸液(B)を調製した。なお、溶液(B)には、安定化剤として亜硫酸水素ナトリウムを濃度50mg/Lとなるように添加した。
【0061】
(3)ビタミンB液の調製
ビタミンB(塩酸チアミン)を注射用蒸留水に溶解し、塩酸でpH4として、ビタミンB濃度が0.489mg/mLのビタミンB液を調製した。
【0062】
(4)充填・包装
中間層がポリ環状オレフィン、内外層がポリエチレンからなる厚さ50μmのフィルムより成形した小容器に、上記ビタミンビタミンB液4mLを充填し、溶閉した。次に、ポリエチレン製2室輸液バッグの1室に上記小容器を挿入し、バッグの両壁面に溶着した。続いて、小容器を挿入した室に上記液(B)300mL、他方の室に上記液(A)600mLを充填し、密封した後常法に従い高圧蒸気滅菌して、図1のような容器入り輸液製剤を得た。これを、脱酸素剤(三菱ガス化学製;商品名エージレス)と共に、アルミラミネート外装袋で包装した。
【表3】

【0063】
<実施例2>
(1)還元糖液(A)の調製
注射用蒸留水にブドウ糖及び電解質を溶解し、酢酸でpH4として、糖電解質液を調製した。更に、ビタミンB(塩酸ピリドキシン)、ビタミンB12(シアノコバラミン)及びパンテノールを注射用蒸留水に溶解し、これを上記糖電解質液と混合し、無菌濾過して、表4に示した組成の還元糖液(A)を調製した。
【0064】
(2)アミノ酸液(B)の調製
各結晶アミノ酸及び電解質を注射用蒸留水に溶解し、コハク酸でpH6とした後、ビタミンC(アスコルビン酸)、葉酸、ニコチン酸アミドを加えて無菌濾過し、表4に示した組成のアミノ酸液(B)を調製した。なお、溶液(B)には、安定化剤として亜硫酸水素ナトリウムを濃度50mg/Lとなるように添加した。
【0065】
(3)ビタミンB液(C)の調製
ビタミンA(パルミチン酸レチノール)、ビタミンD
(コレカルシフェロール)、ビタミンE(酢酸トコフェロール)及びビタミンK(フィトナジオン)をポリソルベート80(溶液(C)中の濃度=5mg/mL)及びポリソルベート20(溶液(C)中の濃度=1mg/mL)により可溶化した後、注射用蒸留水に溶解し、更にビタミンB(塩酸チアミン)、ビタミンB (リン酸リボフラビンナトリウム)及びビオチンを加え、更に添加剤としてD−ソルビトール及びポリエチレングリコール400を添加し、クエン酸と水酸化ナトリウムでpH6とした後、無菌濾過して、表4に示した組成のビタミンB液(C)を調製した。
【0066】
(4)微量金属元素液(D)の調製
コンドロイチン硫酸ナトリウムの注射用蒸留水溶液に、塩化第二鉄の注射用蒸留水溶液と水酸化ナトリウムの注射用蒸留水溶液を交互に添加しながら、所定量の塩化第二鉄を添加した。この溶液に所定量の硫酸銅、塩化マンガン、硫酸亜鉛を添加した後、pHを水酸化ナトリウムで5.3に調整し、更にビタミンHを添加して注射用蒸留水で液量を調整し、表4に示した組成の微量金属元素液(D)を調製した。なお、コンドロイチン硫酸ナトリウムは濃度2.5g/Lとなるように添加した。
【0067】
(5)充填・包装
中間層がポリ環状オレフィン、内外層がポリエチレンからなる厚さ50μmのフィルムより成形した2室小容器に、上記ビタミンB液(C)及び微量金属元素液(D)それぞれ4mLを分別充填し、溶閉した。次に、ポリエチレン製2室輸液バッグの1室に上記小容器を挿入し、バッグの両壁面に溶着した。続いて、小容器を挿入した室に上記還元糖液(A)692mL、他方の室に上記アミノ酸液(B)300mLを充填し、密封した後常法に従い高圧蒸気滅菌して、図2のような容器入り輸液製剤を得た。これを、脱酸素剤(三菱ガス化学製;商品名エージレス)と共に、アルミラミネート外装袋で包装した。

【表4】

【0068】
<実施例3>
ビタミンB12(シアノコバラミン)を、還元糖液(A)に配合する代わりにビタミンB液(C)に0.625μg/mLの濃度で配合した他は実施例2と同様にして、輸液製剤を得た。
【0069】
<実施例4>
(1)還元糖液(A)の調製
注射用蒸留水にブドウ糖、フルクトース、キシリトール及び電解質を溶解し、クエン酸でpH4.5として、表5に示した組成の還元糖液(A)を調製した。なお、溶液(A)には、安定化剤として亜硫酸水素ナトリウムを濃度500mg/Lとなるように添加した。
【0070】
(2)アミノ酸液(B)の調製
各結晶アミノ酸を注射用蒸留水に溶解し、酢酸でpH7.0とした後、無菌濾過し、表5に示した組成のアミノ酸液(B)を調製した。なお、溶液(B)には、安定化剤として亜硫酸水素ナトリウムを濃度200mg/Lとなるように添加した。
【0071】
(3)ビタミンB液(C)の調製
コンドロイチン硫酸ナトリウムの注射用蒸留水溶液に、塩化第二鉄の注射用蒸留水溶液と水酸化ナトリウムの注射用蒸留水溶液を交互に添加しながら、所定量の塩化第二鉄を添加した。この溶液に所定量の硫酸銅、塩化マンガン、硫酸亜鉛を添加した後、pHを水酸化ナトリウムで5に調整し、更にビタミンB(塩酸チアミン)を添加して注射用蒸留水で液量を調整し、表5に示した組成のビタミンB液を調製した。なお、コンドロイチン硫酸ナトリウムは濃度2.5g/Lとなるように添加した。
【0072】
(4)充填・包装
中間層がポリ環状オレフィン、内外層がポリエチレンからなる厚さ50μmのフィルムより成形した小容器に、上記微量金属元素液4mLを充填し、溶閉した。次に、ポリエチレン製2室輸液バッグの1室に上記小容器を挿入し、バッグの両壁面に溶着した。続いて、小容器を挿入した室に上記液(A)600mL、他方の室に上記液(B)300mLを充填し、密封した後常法に従い高圧蒸気滅菌して、図1のような容器入り輸液製剤を得た。これを、脱酸素剤(三菱ガス化学製;商品名エージレス)と共に、アルミラミネート外装袋で包装した。
【表5】

【0073】
<実施例5>
(1)還元糖液(A)の調製
実施例2と同様にして、表6に示した組成の還元糖液(A)を調製した。
(2)アミノ酸液(B)の調製
実施例2と同様にして、表6に示した組成の溶液(B)を調製した。なお、溶液(B)には、安定化剤として亜硫酸水素ナトリウムを濃度50mg/Lとなるように添加した。
(3)ビタミンB液(C)の調製
実施例2と同様にして、表6に示した組成のビタミンB液を調製した。
【0074】
(4)充填・包装
中間層がポリ環状オレフィン、内外層がポリエチレンからなる厚さ50μmのフィルムより成形した小容器に、上記ビタミンB液4mLを分別充填し、溶閉した。次に、ポリエチレン製2室輸液バッグの1室に上記小容器を挿入し、バッグの両壁面に溶着した。続いて、小容器を挿入した室に上記アミノ酸液(B)300mL、他方の室に上記還元糖液(A)696mLを充填し、密封した後常法に従い高圧蒸気滅菌して、図1のような容器入り輸液製剤を得た。これを、脱酸素剤(三菱ガス化学製;商品名エージレス)と共に、アルミラミネート外装袋で包装した。
【表6】

【0075】
<比較例1>
ビタミンB(塩酸チアミン)を、還元糖液(A)に3.25mg/Lの濃度で配合する他は実施例1と同様にして、輸液製剤を得た。
室温で7日放置後、ビタミンBをHPLC法により定量しようとしたが、不可能であった。
【0076】
<比較例2>
ビタミンB(塩酸チアミン)を、還元糖液(A)に3.25mg/Lの濃度で配合する他は実施例4と同様にして、輸液製剤を得た。
室温で7日放置後、ビタミンBをHPLC法により定量したところ、残存率は0%であった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の総合輸液製剤は、医薬品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係る総合輸液製剤の容器の一実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明に係る総合輸液製剤の容器の一実施形態を示す平面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 総合輸液容器
2 容器本体
3 第1室
4 第2室
5 連通可能な隔壁(弱シール部)
6 小容器
7 固着部
8 薬液流出部
9 薬液流入部
10 吊掛孔
2a、2b 容器本体のフィルム
6a、6b 小容器の多層フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連通可能な隔壁により隔てられた2室を有する容器の各室に分別収容された還元糖液(A)とアミノ酸液(B)を備え、更に前記2室のいずれか一方と連通可能な小容器に収容されたビタミンB液(C)を備えたことを特徴とする総合輸液製剤。
【請求項2】
ビタミンB液(C)が脂溶性ビタミンを含むことを特徴とする請求項1に記載の総合輸液製剤。
【請求項3】
脂溶性ビタミンがビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKである請求項2に記載の総合輸液製剤。
【請求項4】
ビタミンB液(C)のpHが3〜6であることを特徴とする請求項3に記載の総合輸液製剤。
【請求項5】
ビタミンB液(C)が微量金属元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の総合輸液製剤。
【請求項6】
ビタミンB液(C)中の微量金属元素が鉄、マンガン、亜鉛または銅である請求項5に記載の総合輸液製剤。
【請求項7】
ビタミンB液のpHが3〜5である請求項6に記載の総合輸液製剤。
【請求項8】
ビタミンB液(C)がビタミンB12を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の総合輸液製剤。
【請求項9】
還元糖液(A)がフルクトースおよび/またはキシリトールを含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の総合輸液製剤。
【請求項10】
還元糖液(A)が亜硫酸塩を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の総合輸液製剤。
【請求項11】
還元糖液(A)が脂肪乳剤を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の総合輸液製剤。
【請求項12】
容器が可撓性熱可塑性プラスチックフィルムより形成され、前記連通可能な隔壁が、容器本体の対向する内壁面同士を剥離可能にシールすることで構成され、前記小容器が可撓性熱可塑性プラスチックフィルムから形成され、前記容器の連通可能な隔壁の近傍で前記容器本体の対向する内壁面それぞれに固着されており、前記隔壁の開封に伴う内壁面の離間に伴って小容器が開封するようにされたことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の総合輸液製剤。
【請求項13】
前記小容器が2室に区切られ、一方の室にビタミンB液(C)が、他方の室に微量金属元素液(D)が収容されたことを特徴とする請求項12に記載の総合輸液製剤。
【請求項14】
前記小容器が、容器の還元糖液(A)を収容する室中に配置されたことを特徴とする請求項12または13に記載の総合輸液製剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−124286(P2006−124286A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311375(P2004−311375)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000149435)株式会社大塚製薬工場 (154)
【Fターム(参考)】