説明

締付け位置検出装置

【課題】本発明は、複数の締付け位置がどのような場所であってもネジ締めが行われている締付け位置の検出を可能にすることを目的とする。
【解決手段】本発明は、基準位置34からの三次元位置が予め求められている複数の締付け位置で作業者が手持ちの締付け工具22によりネジ締めを行う際、基準位置34に対する締付け工具22の三次元位置に基づいてネジ締めが行われている締付け位置を特定する締付け位置検出装置であって、基準位置34と締付け工具22とをつなぐ変形自在な帯板状のテープ部材32と、テープ部材32の長さ方向に並んでそのテープ部材32の複数箇所に設けられており、複数箇所のねじれと曲がりとを検出する光ファイバーセンサ31と、複数箇所の光ファイバーセンサ31からの信号に基づくテープ部材32の全体形状から基準位置に対する締付け工具22の三次元位置を演算する演算部34,36とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準位置からの三次元位置が予め求められている複数の締付け位置で作業者が手持ちの締付け工具によりネジ締めを行う際、前記基準位置に対する前記締付け工具の三次元位置に基づいてネジ締めが行われている前記締付け位置を特定する締付け位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する従来の締付け位置検出装置が特許文献1に記載されている。
前記締付け位置検出装置は、図8に示すように、吊り搬送される車体101の下面に設けられた複数の締付け位置のうちで、ネジ締めが行われている締付け位置を特定するための装置である。締付け位置検出装置は、車体101の基準位置に取付けられた超音波送信機103と、締付け工具104に付属する超音波送信機と、床面の所定位置に設置された三台の超音波受信機106とを備えている。そして、各々の超音波発信機と各々の超音波受信機106とにより、車体101の基準位置、及び締付け工具104と床面の所定位置間の距離を測定できるように構成されている。
さらに、締付け位置検出装置は、車体101の基準位置、及び締付け工具104と床面の所定位置間の距離に基づいて、前記基準位置に対する締付け工具104の三次元位置を演算する演算装置(図示省略)を備えている。なお、車体101の基準位置に対する複数の締付け位置の三次元データは予め前記演算装置に入力されている。
このため、車体101の基準位置に対する締付け工具104の三次元位置が求まることにより、作業者がいずれの締付け位置でネジ締め作業を行っているかを特定できるようになる。
【0003】
【特許文献1】特開2006−98186号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した締付け位置検出装置は、締付け工具104の超音波送信機等と各々の超音波受信機106間の距離に基づいて締付け工具104の三次元位置を演算により求める構成である。このため、締付け工具104の超音波送信機と各々の超音波受信機106間に遮蔽物がある場合には距離の測定ができず、締付け工具104の三次元位置を求めることはできない。例えば、複数の締付け位置が車体101の室内に設けられている場合は、ネジ締め時に締付け工具104の超音波送信機と各々の超音波受信機106間が車体101によって遮られるため、前記締付け工具104の三次元位置を求めることはできない。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、複数の締付け位置がどのような場所であってもネジ締めが行われている締付け位置の特定を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、基準位置からの三次元位置が予め求められている複数の締付け位置で作業者が手持ちの締付け工具によりネジ締めを行う際、前記基準位置に対する前記締付け工具の三次元位置に基づいてネジ締めが行われている前記締付け位置を特定する締付け位置検出装置であって、前記基準位置と前記締付け工具とをつなぐ変形自在なテープ部材と、前記テープ部材の長さ方向に並んでそのテープ部材の複数箇所に設けられており、前記複数箇所のねじれと曲がりとを検出する光ファイバーセンサと、前記複数箇所の光ファイバーセンサからの信号に基づく前記テープ部材の全体形状から前記基準位置に対する前記締付け工具の三次元位置を演算する演算部とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明によると、複数の光ファイバーセンサからの信号に基づいて基準位置と締付け工具とをつなぐテープ部材の全体形状を求め、そのテープ部材の全体形状から前記基準位置に対する締付け工具の三次元位置を演算する構成である。このため、複数の締付け位置が、例えば、車体の室内にあって、ネジ締め時に締付け工具が車体に囲われるような場所であっても良好に締付け工具の三次元位置を検出できるようになる。
即ち、複数の締付け位置がどのような場所にあってもネジ締めが行われている締付け位置の特定が可能になる。
【0008】
請求項2の発明によると、テープ部材は、締付け工具の空気ホース、あるいは電気ケーブルに沿わされていることを特徴とする。
このため、テープ部材を単体で敷設する場合と比較して、そのテープ部材が損傷し難くなる。
【0009】
請求項3の発明は、基準位置からの三次元位置が予め求められている複数の締付け位置で作業者が手持ちの締付け工具によりネジ締めを行う際、前記基準位置に対する前記締付け工具の三次元位置に基づいてネジ締めが行われている前記締付け位置を特定する締付け位置検出装置であって、前記締付け工具に装着されており、地磁気を検出する地磁気センサと、前記地磁気に対する前記締付け工具の回転角速度を検出するジャイロセンサと、前記締付け工具の移動加速度を検出する加速度センサと、前記締付け工具を前記基準位置から前記締付け位置まで移動させる際、前記地磁気センサ、ジャイロセンサ、加速度センサのデータを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されたデータに基づいて、前記基準位置から単位時間後の第1位置、その第1位置から単位時間後の第2位置、以下順番に、第n―1位置から単位時間後の第n位置を演算することで、前記締付け位置における前記締付け工具の前記基準位置に対する三次元位置を求める演算部とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明によると、締付け工具を基準位置から締付け位置まで移動させる際の前記地磁気センサ、ジャイロセンサ、加速度センサのデータに基づいて、基準位置から単位時間後の第1位置、その第1位置から単位時間後の第2位置、以下順番に、第n―1位置から単位時間後の第n位置を演算することで、前記締付け位置における前記締付け工具の基準位置に対する三次元位置を求める構成である。
例えば、第1位置は、基準位置からの締付け工具の移動角度(移動方向)と、単位時間内の移動距離とから求めることができる。さらに、前記移動角度(移動方向)は地磁気を基準にしてジャイロセンサの回転角速度データを積分することで求められ、前記移動距離は加速度センサの加速度データを二階積分することで求められる。
即ち、移動途中における締付け工具の三次元位置を基準位置から単位時間毎に、第1位置、第2位置、・・・第n−1位置、第n位置と順番に求めることで、最終的に締付け位置における締付け工具の基準位置に対する三次元位置を求める構成である。このため、複数の締付け位置が、例えば、車体の室内にあって、ネジ締め時に締付け工具が車体に囲われるような場所であっても良好に締付け工具の三次元位置を求められるようになる。なお、上記した記号nは、自然数(正の整数)を表している。
即ち、複数の締付け位置がどのような場所にあってもネジ締めが行われている締付け位置の特定が可能になる。
【0011】
請求項4の発明によると、地磁気センサ、ジャイロセンサ、加速度センサは、前記締付け工具の軸心と同軸に位置決めされていることを特徴とする。
このため、ネジ締め時に地磁気センサ、ジャイロセンサ、加速度センサが締付け位置と同軸になり、その締付け位置の検出精度が向上する。
請求項5の発明によると、地磁気センサ、ジャイロセンサ、加速度センサのデータは、無線により伝送可能に構成されていることを特徴とする。
このため、締付け工具等に地磁気センサ、ジャイロセンサ、加速度センサの配線を接続する必要がなくなり、締付け工具の取り扱い性が向上する。
【0012】
請求項6の発明によると、複数の締付け位置は、搬送装置により搬送される車体の室内に設けられており、基準位置は、車体の近傍でその車体の移動と関連して移動する台車上に設定されていることを特徴とする。
このため、例えば、テープ部材の長さ寸法を比較的小さくでき、コスト低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、複数の締付け位置がどのような場所にあってもネジ締めが行われている締付け位置の検出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1に係る締付け位置検出装置を備える締付け工具を使用したネジ締め作業を表す模式斜視図(A図)であり、室内の複数の締付け位置を表す斜視図(B図)である。
【図2】本実施形態に係る締付け位置検出装置の全体模式図(A図)、図2(A)のB-B矢視断面図(B図)、及び形状測定テープの模式斜視図(C図)である。
【図3】本発明の実施形態2に係る締付け位置検出装置の複合センサを備える締付け工具を表す模式側面図である。
【図4】本実施形態に係る締付け位置検出装置の全体系統図である。
【図5】本実施形態に係る締付け位置検出装置で使用される複合センサの原理図である。
【図6】締付け工具を基準位置から締付け位置まで移動させる際の移動軌跡を表す模式図である。
【図7】締付け工具を基準位置から締付け位置まで移動する際の途中位置を演算する際の考え方を表す模式図である。
【図8】従来の締付け位置検出装置を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態1]
以下、図1、図2に基づいて本発明の実施形態1に係る締付け位置検出装置について説明する。本実施形態に係る締付け位置検出装置は、自動車の製造ラインにおいて、車体に対して室内の部品をネジ締めする際にいずれの締付け位置で締付けを行っているかを特定するための装置である。
【0016】
<自動車の製造ラインの概要>
自動車の製造ラインには、図1(A)に示すように、自動車のボディ10(車体10)を一定速度で一定方向(L方向)に搬送するための搬送装置3が設置されている。さらに、搬送装置3の機側には、車体10に取付ける部品等を車体10の近傍で運搬する移動台車14が配置されている。移動台車14は、一定速度で移動する車体10に対して予め決められた位置関係となるように、前記車体10の移動と関連して移動するように構成されている。
作業者は、手持ちの締付け工具22を使用して車体10の室内に部品(図示省略)をボルト締めする。車体10の室内には、図1(B)に示すように、例えば、No.1 〜No.4の雌ネジ孔12が形成されており、それらの雌ネジ孔12を利用して前記部品がボルトBrにより固定される。即ち、No.1 〜No.4の雌ネジ孔12の位置がボルト締めを行う締付け位置となる。ここで、移動台車14上に設けられた基準位置(後記する)に対するNo.1 〜No.4締付け位置の三次元データは予めパソコン36(図2(A)参照)に入力されている。
締付け工具22は、空気圧を利用してボルト締めを行う工具であり、図2(A)に示すように、その締付け工具22のグリップ部22jに空気ホース24の先端が接続されている。前記空気ホース24は変形自在なホースであり、その基端部が移動台車14に接続されている。
【0017】
<締付け位置検出装置30について>
締付け位置検出装置30は、作業者がNo.1 〜No.4締付け位置のいずれの位置でボルト締めを行っているかを特定する装置あり、基準位置に対する締付け工具22の三次元位置を検出できるように構成されている。締付け位置検出装置30は、図2(A)に示すように、締付け工具22の空気ホース24に沿わされる形状測定テープ32と、インターフェイスボックス34と、パソコン36とから構成されている。
形状測定テープ32は、空気ホース24に沿わされて曲げられた自身の三次元形状を測定するテープであり、図2(C)に示すように、変形自在な帯板状のテープ部材32bと、テープ部材32bの長さ方向に並んでそのテープ部材32bの複数箇所に設けられた光ファイバーセンサ31とから構成されている。光ファイバーセンサ31は、テープ部材32bのねじれと曲がりを検出するセンサであり、曲がり等に比例して光を損失させる性質を利用している。また、各々の光ファイバーセンサ31の間隔Xは、約60mmに設定されている。
【0018】
形状測定テープ32は、空気ホース24の先端(締付け工具22の位置)から基端部近傍まで沿わされており、図2(B)に示すように、空気ホース24と共に保護ケーブル21によって被覆されている。そして、形状測定テープ32の基端部が移動台車14に設置されたインターフェイスボックス34に接続されている。
インターフェイスボックス34は、形状測定テープ32に設けられた各々の光ファイバーセンサ31からのねじれと曲がり信号から形状測定テープ32の三次元形状を演算により求める部分であり、移動台車14の基準位置に位置決めされている。即ち、インターフェイスボックス34は、基準位置から先端までの形状測定テープ32の三次元形状を求められるように構成されている。そして、形状測定テープ32の三次元形状のデータがインターフェイスボックス34から専用ケーブル35によってパソコン36に伝送される。パソコン36は形状測定テープ32の三次元形状に基づいて前記基準位置に対する締付け工具22の三次元位置を演算する。前述のように、前記パソコン36には、前記基準位置に対するNo.1 〜No.4締付け位置の三次元データが入力されているため、締付け工具22の三次元位置を求めることで、作業者がNo.1 〜No.4締付け位置のいずれの位置でボルト締めを行っているかを特定することができる。
即ち、前記インターフェイスボックス34及びパソコン36が本発明の演算部に相当する。
【0019】
このように、作業者がNo.1 〜No.4締付け位置のいずれの位置でボルト締めを行っているかを特定することができるため、作業者が手順通りに締付け作業を行ったか否かを確認することができる。さらに、No.1 〜No.4締付け位置毎に最適トルクの設定をし、作業者が所定の締付け位置でボルト締めする際に最適トルクを報知することも可能になる。また、パソコン36により、No.1 〜No.4締付け位置のそれぞれにおいて、締付け時間、締付けトルク等のデータを蓄積しておくことも可能になる。
【0020】
<本実施形態に係る締付け位置検出装置30の長所について>
本実施形態に係る締付け位置検出装置30によると、複数の光ファイバーセンサ31からの信号に基づいて基準位置と締付け工具22とをつなぐテープ部材32b(形状測定テープ32)の全体形状を求め、その形状測定テープ32の全体形状から基準位置に対する締付け工具22の三次元位置を演算する構成である。このため、複数の締付け位置(No.1 〜No.4)が、例えば、車体10の室内にあって、ネジ締め時に締付け工具22が車体10に囲われるような場所であっても良好に締付け工具22の三次元位置を検出できるようになる。
即ち、複数の締付け位置がどのような場所にあってもネジ締めが行われている締付け位置の特定が可能になる。
また、形状測定テープ32は、締付け工具22の空気ホース24に沿わされているため、形状測定テープ32を単体で敷設する場合と比較して、その形状測定テープ32が損傷し難くなる。
また、複数の締付け位置は、搬送装置3により搬送される車体10の室内に設けられており、基準位置は、車体10の近傍でその車体10の移動と関連して移動する移動台車14上に設定されているため、形状測定テープ32の長さ寸法を比較的小さくでき、コスト低減を図ることができる。
【0021】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、締付け工具22の空気ホース24に形状測定テープ32を沿わせる例を示したが、空気ホース24の代わりに電気ケーブルに形状測定テープ32を沿わせる構成でも可能である。また、形状測定テープ32を空気ホース24等に沿わせることなく、形状測定テープ32単体で締付け工具22と移動台車14間に渡らせる構成でも可能である。
さらに、移動台車14上に締付け位置検出装置30のインターフェイスボックス34を設置する例を示したが、前記インターフェイスボックス34を定位置に固定する方式でも可能である。
【0022】
[実施形態2]
以下、図3から図7に基づいて本発明の実施形態2に係る締付け位置検出装置について説明する。本実施形態に係る締付け位置検出装置は、実施形態1で使用された形状測定テープ32の代わりに複合センサ40を使用して基準位置に対する締付け工具22の三次元位置を求めるように構成されている。
なお、実施形態1に係る締付け位置検出装置と本実施形態に係る締付け位置検出装置とは上記以外の構成は等しいため、等しい構成(部材)については実施形態1と同一の番号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る締付け位置検出装置30は、図4に示すように、締付け工具22に装着されている複合センサ40と、移動台車14に設けられた無線送信機49と、パソコン36とから構成されている。
【0023】
<締付け工具22について>
締付け工具22は、空気圧を利用してボルト締めを行う工具であり、図3に示すように、回転駆動機構(図示省略)を収納する略円筒状のハウジング22hを備えている。ハウジング22hには、前記回転駆動機構の回転力を受けて回転する回転部22rが同軸に支持されており、その回転部22rがハウジング22hの先端から軸方向に突出するように構成されている。そして、前記回転部22rの先端にボルトBrの頭部Bhが嵌合するソケット部22sが同軸に形成されている。また、ハウジング22hの基端部には、複合センサ40が収納されるセンサケース22cが同軸に形成されている。さらに、ハウジング22hの基端部寄りの側面には半径方向外側に突出するグリップ部22jが設けられており、そのグリップ部22jに空気ホース24の先端が接続されている。
【0024】
<複合センサ40について>
複合センサ40は、図5に示すように、加速度センサ41とジャイロセンサ43と地磁気センサ45とから構成されている。地磁気センサ45は、締付け工具22の移動方向を求める際に基準となる地磁気を検出するセンサである。ジャイロセンサ43は、締付け工具22が移動する際、地磁気に対する締付け工具22の回転角速度を検出するセンサであり、前記回転角速度を積分することで地磁気に対する締付け工具22の移動角度を算出することが可能になる。加速度センサ45は、締付け工具22の移動加速度を検出するセンサであり、前記移動加速度を二階積分することで締付け工具22の移動距離を算出することができる。
【0025】
<無線送信機49及びパソコン36>
無線送信機49は、締付け工具22に装着された複合センサ40からの信号を受けて前記信号をパソコン36に無線送信する装置であり、図4に示すように、移動台車14の所定位置に取付けられている。ここで、前記複合センサ40と無線送信機49とは専用ケーブル47によって接続されている。また、移動台車14には締付け工具22を格納する工具格納部14wが設けられており、その工具格納部14wの位置が基準位置(N0)に設定されている。
パソコン36は、記憶部と演算部とを備えており、前記記憶部により締付け工具22が移動台車14の工具格納部14w(基準位置(N0))からNo.1 〜No.4締付け位置まで移動する際に、無線送信機49によって無線送信された複合センサ40のデータを記憶できるように構成されている。そして、前記パソコン36の演算部が前記データに基づいて、図6に示すように、締付け工具22が基準位置(N0)からNo.1 〜No.4締付け位置まで移動する際の途中位置(N1〜Nn-1)、及び締付け位置(Nn)を演算可能なように構成されている。
【0026】
即ち、パソコン36の演算部では、記憶部に記憶されている複合センサ40のデータに基づいて、先ず、基準位置(N0)から単位時間(T0)後の締付け工具22の三次元位置である第1位置(N1)が演算される。第1位置(N1)は、図7に示すように、基準位置(N0)からの締付け工具22の移動角度θ1と移動距離L1とから求めることができる。ここで、移動角度θ1は、ジャイロセンサ43により検出された地磁気Eに対する締付け工具22の回転角速度を0〜単位時間(T0)の間で積分することにより算出される。また、移動距離L1は、加速度センサ45により検出された締付け工具22の移動加速度を0〜単位時間(T0)の間で二階積分することにより算出される。
【0027】
次に、第1位置(N1)から単位時間(T0)後の締付け工具22の三次元位置である第2位置(N2)が演算される。第2位置(N2)は、同様に、第1位置(N1)からの締付け工具22の移動角度θ2と移動距離L2(図7参照)とから求めることができる。次に、第2位置(N2)から単位時間(T0)後の締付け工具22の三次元位置である第3位置(N3)が演算される。第3位置(N3)は、同様に、第2位置(N2)からの締付け工具22の移動角度θ3と移動距離L3(図7参照)とから求めることができる。以下、同様に、第n−2位置(Nn-2)から単位時間(T0)後の締付け工具22の三次元位置である第n−1位置(Nn-1)が演算される。そして、最終的に、第n−1位置(Nn-1)から単位時間(T0)後の締付け工具22の三次元位置である第n位置(Nn)、即ち、締付け位置(Nn)が演算される。
このように、締付け工具22が基準位置(N0)からNo.1 〜No.4締付け位置まで移動する際に、パソコン36の演算部で単位時間(T0)毎の締付け工具22の移動途中位置(N1〜Nn-1)が順番に演算されることで、最終的に締付け位置にある締付け工具の三次元位置が求められる。
【0028】
ここで、本実施形態に係る締付け位置検出装置30では、単位時間(T0)は、例えば、T0=0.1秒に設定されている。また、工具格納部14w(基準位置(N0))にある締付け工具22をNo.1 〜No.4締付け位置まで移動させるのに要する平均的な時間は3秒程度である。
前述のように、前記パソコン36には、前記基準位置(N0)に対するNo.1 〜No.4締付け位置の三次元データが予め入力されているため、締付け工具22の三次元位置(Nn)を求めることで、作業者がNo.1 〜No.4締付け位置のいずれの位置でボルト締めを行っているかを特定することができる。
即ち、前記パソコン36が本発明の記憶部及び演算部に相当する。
【0029】
<本実施形態に係る締付け位置検出装置30の長所について>
本発明によると、締付け工具22を基準位置(N0)から締付け位置まで移動させる際の複合センサ40のデータに基づいて、移動途中における締付け工具22の三次元位置を基準位置(N0)から単位時間毎に、第1位置(N1)、第2位置(N2)、・・・第n−1位置(Nn-1)、第n位置(Nn)と順番に求めることで、最終的に締付け位置にある締付け工具22の基準位置(N0)に対する三次元位置を求める構成である。
このため、複数の締付け位置が、例えば、車体10の室内にあって、ネジ締め時に締付け工具22が車体10に囲われるような場所であっても良好に締付け工具22の三次元位置を求められるようになる。
即ち、複数の締付け位置がどのような場所にあってもネジ締めが行われている締付け位置の特定が可能になる。
また、複合センサ40は、締付け工具22の軸心と同軸に位置決めされているため、ネジ締め時に複合センサ40が締付け位置と同軸になり、その締付け位置の検出精度が向上する。
【0030】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、締付け工具22に装着された複合センサ40と移動台車14の無線送信機49とを専用ケーブル47で接続する例を示したが、複合センサ40の信号をパソコン36に対して直接的に無線送信する構成でも可能である。これにより、専用ケーブル47等が不要になり、締付け工具22の取り扱い性が向上する。
なお、無線送信機49により複合センサ40の信号を無線送信する代わりにケーブルを使用することも可能である。
また、本実施形態では、空気圧を利用してボルト締めを行う締付け工具22を例示したが、電動式の締付け工具に本発明を適用することも可能である。
また、本実施形態では、締付け工具22の三次元位置を演算する際の単位時間(T0)をT0=0.1秒に設定する例を示したが、単位時間(T0)は基準位置(N0)と締付け位置との距離等に応じて適宜変更可能である。
また、基準位置(N0)を移動台車14の工具格納部14wに設定する例を示したが、基準位置(N0)を車体10側に設定することも可能である。
【0031】
また、実施形態1,2では、No.1〜No.4締付け位置でボルトBrを雌ネジ孔12に締付ける例を示したが、ナットを雄ネジに締付ける構成でも可能である。
また、実施形態1,2では、No.1〜No.4締付け位置が車体10の室内にある例を示したが、No.1〜No.4締付け位置が車体10の下面にある場合も可能であるし、エンジンルーム内にある場合でも可能である。さらに、締付け位置(No.1 〜No.4)が四箇所の場合を例示したが、締付け位置の数は適宜変更可能である。
さらに、実施形態1,2では、車体の移動と関連して移動するものとして台車を例示したが、車体の移動と関連して移動するものであれば台車以外のものであっても良い。
また、実施形態1,2では、搬送装置で搬送される車体における締付け位置の検出に本発明を適用する例を示したが、定位置で機器の複数のネジ締めを行うような場合にも本発明を適用することが可能である。この場合、任意の点を基準位置(原点)として設定することができる。
【符号の説明】
【0032】
3・・・・・搬送装置
10・・・・車体
14・・・・移動台車
21・・・・保護ケーブル
22・・・・締付け工具
24・・・・空気ホース
30・・・・締付け位置検出装置
31・・・・光ファイバーセンサ
32・・・・形状測定テープ
32b ・・・テープ部材
34・・・・インターフェイスボックス(演算部)
35・・・・専用ケーブル
36・・・・パソコン(演算部、記憶部)
40・・・・複合センサ
41・・・・加速度センサ
43・・・・ジャイロセンサ
45・・・・地磁気センサ
49・・・・無線送信機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準位置からの三次元位置が予め求められている複数の締付け位置で作業者が手持ちの締付け工具によりネジ締めを行う際、前記基準位置に対する前記締付け工具の三次元位置に基づいてネジ締めが行われている前記締付け位置を特定する締付け位置検出装置であって、
前記基準位置と前記締付け工具とをつなぐ変形自在なテープ部材と、
前記テープ部材の長さ方向に並んでそのテープ部材の複数箇所に設けられており、前記複数箇所のねじれと曲がりとを検出する光ファイバーセンサと、
前記複数箇所の光ファイバーセンサからの信号に基づく前記テープ部材の全体形状から前記基準位置に対する前記締付け工具の三次元位置を演算する演算部と、
を有することを特徴とする締付け位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載された締付け位置検出装置であって、
前記テープ部材は、前記締付け工具の空気ホース、あるいは電気ケーブルに沿わされていることを特徴とする締付け位置検出装置。
【請求項3】
基準位置からの三次元位置が予め求められている複数の締付け位置で作業者が手持ちの締付け工具によりネジ締めを行う際、前記基準位置に対する前記締付け工具の三次元位置に基づいてネジ締めが行われている前記締付け位置を特定する締付け位置検出装置であって、
前記締付け工具に装着されており、地磁気を検出する地磁気センサと、前記地磁気に対する前記締付け工具の回転角速度を検出するジャイロセンサと、前記締付け工具の移動加速度を検出する加速度センサと、
前記締付け工具を前記基準位置から前記締付け位置まで移動させる際、前記地磁気センサ、ジャイロセンサ、加速度センサのデータを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されたデータに基づいて、前記基準位置から単位時間後の第1位置、その第1位置から単位時間後の第2位置、以下順番に、第n―1位置から単位時間後の第n位置を演算することで、前記締付け位置における前記締付け工具の前記基準位置に対する三次元位置を求める演算部と、
を有することを特徴とする締付け位置検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載された締付け位置検出装置であって、
前記地磁気センサ、ジャイロセンサ、加速度センサは、前記締付け工具の軸心と同軸に位置決めされていることを特徴とする締付け位置検出装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4のいずれかに記載された締付け位置検出装置であって、
前記地磁気センサ、ジャイロセンサ、加速度センサのデータは、無線により伝送可能に構成されていることを特徴とする締付け位置検出装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された締付け位置検出装置であって、
複数の締付け位置は、搬送装置により搬送される車体の室内に設けられており、基準位置は、車体の近傍でその車体の移動と関連して移動する台車上に設定されていることを特徴とする締付け位置検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−85390(P2010−85390A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128023(P2009−128023)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】