説明

編集装置、制御方法及びプログラム

【課題】過去にデコードできたコマのPTS値を把握することが可能な編集装置を提供する。
【解決手段】 編集装置(100)は、デコーダ(43)でデコードできたVideo符号のPTS(Presentation Time Stamp)値を記憶する記憶手段(48)を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MPEG(Moving Picture Image Coding Experts Group)方式の圧縮画像データを編集する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮画像データの符号化方式としては、MPEG方式が標準化されている。また、MPEG方式の画像符号化アルゴリズムでは、ランダムアクセス機能を可能にするために、GOP(Group of Picture)単位で符号化が行われている。各GPOは、Iピクチャと、Pピクチャと、Bピクチャと、で構成している。
【0003】
Iピクチャは、Intra-coded picture(フレーム内符号化画像)のことを示し、フレーム内符号化した画像データであり、動き補償を行わないピクチャである。
Pピクチャは、Predictive-coded picture(順方向予測符号化画像)のことを示し、1つ前の再生画像データ(Iピクチャ又はPピクチャ)から動き補償を行い、フレーム間符号化を行ったピクチャである。
Bピクチャは、Bi-directionally predictive-coded picture(双方向予測符号化画像)のことを示し、1つ前と1つ後の再生画像データ(Iピクチャ又はPピクチャ)から動き補償を行い、両方向予測のフレーム間符号化を行ったピクチャである。
【0004】
なお、上述したMPEG方式の符号化を行う編集装置において、フレーム単位の編集を行う場合は、表示画面上でユーザ操作によるコマ送り、コマ戻しを行う機能が必要になる。以下、図4を参照しながら、編集装置でコマ戻しを行う場合の処理動作例について説明する。図4は、P22(PTS値230)のコマ(フレーム)を表示画面上に表示している状態で1コマ戻しを行う場合を示す。なお、図4では説明の便宜上、1コマ当たりのPTS値を10としている。
【0005】
編集装置は、1コマ戻しの操作を受け付けた場合に、現在表示中のコマのPTS値を取得する(ステップS1)。図4の場合は、P22(PTS値230)のコマを表示画面上に表示しているため、現在表示中のコマ(P22)のPTS値(230)を取得する。
【0006】
次に、編集装置は、ステップS1で取得したPTS値を基に、1コマ前のPTS値を算出し、該算出した1コマ前のPTS値をデコーダに指定する(ステップS2)。図4の場合は、ステップS1で取得したPTS値が230であるため、そのPTS値(230)を基に、1コマ前(B24)のPTS値(220)を算出し、該算出した1コマ前(B24)のPTS値(220)をデコーダに指定する。
【0007】
次に、編集装置は、デコーダに指定した指定PTS値を含むGOPの1つ前のGOPからデコーダに入力する(ステップS3)。図4の場合は、指定PTS値は、220であり、その指定PTS値(220)を含むGOPは、GOP3であるため、そのGOP3の1つ前のGOP2からデコーダに入力する。
【0008】
デコーダは、指定PTS値までデータをデコードし、指定PTS値のコマを表示画面上に表示する(ステップS4)。図4の場合は、GOP2の先頭からデータをデコードし、指定PTS値(220)のコマ(B24)を表示画面上に表示する。これにより、1コマ前の指定PTS値(220)のコマ(B24)を表示画面上に表示することができる。
【0009】
しかし、上述した図4の処理動作では、コマ戻しができない状況が発生する。具体的には、MPEGのPTSは、90KHzでカウントされており、1秒間に90000増加する。このため、29.97fpsの場合は、1コマあたり3003、または、3004となる。また、24fpsの場合は、1コマあたり3750となる。その結果、上述した図4のステップS2において、現在表示中のコマのPTS値を基に1コマ前の正確なPTS値を算出し、該算出した1コマ前の正確なPTS値をデコーダに指定するのは困難であり、デコーダに指定するPTS値に誤差が含まれてしまうことになる。
【0010】
例えば、図4に示す例で、現在表示中のコマ(P22)のPTS値(230)を基に算出した1コマ前のPTS値が220ではなく、221になってしまったと仮定する。この場合、編集装置は、誤差を含んだPTS値(221)をデコーダに指定し、デコーダは、指定PTS(221)になるまでデータをデコードし、指定PTS(221)に該当するコマを表示画面上に表示することになる。指定PTS(221)は符号に存在しないため、デコーダは、PTS値220のB24のコマではなく、指定PTSを過ぎたPTS値230のP22のコマを表示画面上に表示することになり、コマ戻しを行っても表示画面上に表示されるコマが前回と変わらない状況が発生してしまうことになる。このような状況が発生すると、ユーザがコマ戻し操作を何回行っても表示画面上に表示されるコマが変わらない状況(コマ戻し操作を何回行ってもP22のコマが表示画面上に表示される状況)が発生することになる。
【0011】
このようなことから、1コマ前の正確なPTS値をデコーダに指定し、コマ戻し操作を正しく行うことが可能な仕組みの開発が必要視されることになる。
【0012】
なお、本発明より先に出願された技術文献として、特許文献1:特開2000-224543号公報には、MPEG2方式による画像データの記録再生装置において、特殊再生をスムーズに行う技術について開示されている。
【0013】
上記特許文献1では、記録媒体上に記録されるPESパケット内におけるピクチャ内符号化データを示すためのインデックスファイルを作成し、該作成したインデックスファイルを記録媒体上に保存するようにして、逆再生やタイムサーチなどの特殊再生時には、上記インデックスファイルからピクチャ内符号化データの情報を取得することにしている。これにより、特殊再生時において特殊再生するPESパケットからピクチャ内符号化データを確実に取得し、画像データの欠損や遅滞などを発生することなく、スムーズな特殊再生を行うことを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−224543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記特許文献1には、記録媒体上に記録されるPESパケット内におけるピクチャ内符号化データを示すためのインデックスファイルを用いて、特殊再生をスムーズに行うことにしている。
【0016】
しかし、上記特許文献1には、1コマ前の正確なPTS値をデコーダに指定し、コマ戻し操作を正しく行う仕組みについては何ら考慮されていない。
【0017】
なお、図4を基に説明した編集装置では、表示画面上に現在表示しているコマのPTS値を把握することはできるが、過去にデコードできたコマのPTS値を把握する術がないため、1コマ前の正確なPTS値をデコーダに指定することができない状況が発生することになる。このため、過去にデコードできたコマのPTS値を把握できれば、1コマ前の正確なPTS値をデコーダに指定することも可能になる。
【0018】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、過去にデコードできたコマのPTS値を把握することが可能な編集装置、制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
かかる目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を有することとする。
【0020】
<編集装置>
本発明にかかる編集装置は、
デコーダでデコードできたVideo符号のPTS(Presentation Time Stamp)値を記憶する記憶手段を有することを特徴とする。
【0021】
<制御方法>
本発明にかかる制御方法は、
編集装置で行う制御方法であって、
Video符号をデコーダでデコードする工程と、
前記デコーダでデコードできた前記Video符号のPTS(Presentation Time Stamp)値を記憶手段に記憶する工程と、を有することを特徴とする。
【0022】
<プログラム>
本発明にかかるプログラムは、
編集装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、
Video符号をデコーダでデコードする処理と、
前記デコーダでデコードできた前記Video符号のPTS(Presentation Time Stamp)値を記憶手段に記憶する処理と、を、前記コンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、過去にデコードできたコマのPTS値を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の編集装置100の内部構成例を示す図である。
【図2】本実施形態の編集装置100の処理動作例を示す図である。
【図3】本実施形態の編集装置100の具体例を説明するための図である。
【図4】本発明の問題状況を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<編集装置100の概要>
まず、図1を参照しながら、本実施形態の編集装置100の概要について説明する。
【0026】
本実施形態の編集装置100は、デコーダ(Video Decoder43に相当)でデコードできたVideo符号のPTS(Presentation Time Stamp)値を記憶する記憶手段(PTS Table48に相当)を有することを特徴とする。これにより、過去にデコードできたコマのPTS値を把握することができる。その結果、過去にデコードできたコマのPTS値を基に、1コマ前の正確なPTS値をデコーダ43に指定することができる。また、本実施形態の編集装置100は、フレームレートが29.97fpsであっても、24fpsであっても、1コマ前の正確なPTS値をデコーダ43に指定することができるので、1コマずつコマ戻しを行うことができる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態の再生装置100について詳細に説明する。
【0027】
<編集装置100の内部構成例>
まず、図1を参照しながら、本実施形態の編集装置100の内部構成例について説明する。
【0028】
本実施形態の編集装置100は、メモリ1と、ファイルリーダ2と、Demux3と、Decoder4と、Video Render5と、Audio Render6と、ディスプレイ7と、スピーカ8と、を含んで構成している。
【0029】
メモリ1は、各種情報を記憶するものであり、例えば、録画番組等のMPEGデータを格納する。
【0030】
ファイルリーダ2は、MPEGデータを読み込む機能を行う。ファイルリーダ2は、ディスプレイ7に表示する画像データの指定PTS値を受け付けた場合に、その指定PTS値に応じたMPEGデータをメモリ1から読み取る。なお、1コマ戻し操作の場合は、ディスプレイ7に現在表示中のPTS値より所定の値(Δα)だけ小さいPTS値を指定PTS値として受け付ける(指定PTS値=現在表示中のPTS値−Δα)。なお、所定の値(Δα)は、連続するフレームのPTS値の差分の範囲内で任意に設定することが可能であり、例えば、連続するフレームのPTS値の差分が3003の場合は、所定の値(Δα)として1〜3003の値を設定することが可能である。但し、PTS値の差分の中間値を所定の値(Δα)として設定することが好ましい。
【0031】
ファイルリーダ2は、ディスプレイ7に表示する画像データの指定PTS値を受け付けた場合に、その指定PTS値を含むGOPの1つ前のGOPのMPEGデータから順にメモリ1から読み取る。ファイルリーダ2は、メモリ1から順に読み取ったMPEGデータを指定PTS値と共にDemux3に出力する。
【0032】
Demux3は、MPEGデータをVideo符号データ、Audio符号データに分離する機能を行う。Demux3は、ファイルリーダ2から受け付けたMPEGデータをVideo符号データとAudio符号データとに分離し、その分離したVideo符号データとAudio符号データと共に指定PTS値をDecoder4に出力する。
【0033】
Decoder4は、MPEGデータを出力データに変換する機能を行う。Decoder4は、Buffer41,42を含んで構成し、Demux3から受け付けたVideo符号データとAudio符号データをBuffer41,42に格納する。Video Decoder43は、Buffer41に格納したVideo符号データをデコードし、Audio Decoder44は、Buffer42に格納したAudio符号データをデコードする。但し、Audio Decoder44は、状況に応じて、Audio符号データをデコードしなくても良い。なお、本実施形態のVideo Decoder43は、再生、コマ送り、コマ戻し、シーク等の過去の操作でデコードできたVideo符号データのPTS値をPTS Table48に予め記憶して管理し、PTS検索部47は、Demux3から受け付けた指定PTS値を基に、PTS Table48を検索し、PTS Table48に記憶されているPTS値の中から、指定PTS値以下で、且つ、最も大きい値のPTS値を特定する。そして、Video Decoder43は、PTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値になるまでBuffer41に格納したVideo符号データをデコードする。転送部45は、Video Decorder43でデコードした画像データをVideo Render5に転送する。なお、転送部45は、Video Decorder43でデコードした画像データをPTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値になるまで破棄し、PTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値の画像データをVideo Render5に出力する。Audio Decoder44は、PTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値になるまでBuffer42に格納したAudio符号データをデコードする。転送部46は、Audio Decorder44でデコードした音声データをAudio Render6に転送する。なお、転送部46は、Audio Decorder44でデコードした音声データをPTS検索部47がPTS Table48から特定した指定PTS値になるまで破棄し、PTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値以降の音声データをAudio Render6に出力する。
【0034】
Video Render5は、画像データを出力する機能を行う。Video Render5は、転送部45から転送されてきた画像データをディスプレイ7に出力し、ディスプレイ7上に画像データを表示する。
【0035】
Audio Render6は、音声データを出力する機能を行う。Audio Render6は、転送部46から転送されてきた音声データをスピーカ8に出力し、スピーカ8から音声データを出力する。但し、Audio Render6は、状況に応じて、音声データを出力しなくても良い。
【0036】
<編集装置100の処理動作例>
次に、図2を参照しながら、本実施形態の編集装置100の処理動作例について説明する。なお、本実施形態の編集装置100は、再生、コマ送り、コマ戻し、シーク等の過去の操作時にVideo Decoder43でデコードできたPTS値をPTS Table48に記憶して管理する。PTS Table48は、2GOP分のPTS値を記憶することができ、上記の操作が行われる度にVideo Decoder43でデコードできたPTS値をPTS Table48に記憶し、PTS Table48に記憶するPTS値を上書きして随時更新する。
【0037】
本実施形態の編集装置100において1コマ戻しを開始する場合は、ユーザ操作により1コマ戻しの再生開始時にディスプレイ7に表示する画像データをPTS値で指定する(ステップA1)。この場合、本実施形態の編集装置100は、ディスプレイ7に現在表示中のPTS値より所定の値(Δα)だけ小さいPTS値を指定する。
【0038】
編集装置100は、ディスプレイ7に表示する画像データのPTS値を指定した場合に(ステップA1/Yes)、ファイルリーダ2は、その指定PTS値を基に、その指定PTS値を含むGOPの1つ前のGOPのMPEGデータから順にメモリ1から読み取る。そして、メモリ1から順に読み取ったMPEGデータと共に指定PTS値をDemux3に出力する。
【0039】
Demux3は、ファイルリーダ2からMPEGデータを受け付けた場合に、その受け付けたMPEGデータをVideo符号データとAudio符号データとに分離し、その分離したVideo符号データとAudio符号データと共に指定PTS値をDecoder4に出力する。
【0040】
これにより、編集装置100は、ディスプレイ7に表示する画像データのPTS値を指定した場合に(ステップA1/Yes)、その指定PTS値を含むGOPの1つ前のGOPのMPEGデータ(Video符号データとAudio符号データ)から順にDecoder4に入力することができる(ステップA2)。
【0041】
Decoder4は、Demux3から受け付けたVideo符号データとAudio符号データをBuffer41,42に格納する。
【0042】
PTS検索部47は、Demux3から受け付けた指定PTS値を基に、PTS Table48を検索し、PTS Table48に記憶されているPTS値の中から、指定PTS値以下であり、且つ、最も大きい値のPTS値を特定する(ステップA3)。
【0043】
Video Decoder43は、PTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値になるまでBuffer41に格納したI,P,BピクチャのVideo符号データをデコードし、そのデコードした画像データを転送部45に出力する。転送部45は、Video Decorder43でデコードした画像データをPTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値になるまで破棄し、PTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値の画像データをVideo Render5に出力する(ステップA4)。
【0044】
また、Audio Decoder44は、PTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値になるまでBuffer42に格納したAudio符号データをデコードし、そのデコードした音声データを転送部46に出力する。但し、Audio Decoder44は、状況に応じて、Audio符号データをデコードしなくても良い。転送部46は、Audio Decorder44でデコードした音声データをPTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値になるまで破棄し、PTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値の音声データをAudio Render6に出力する。
【0045】
Video Render5は、転送部45から出力された画像データをディスプレイ7に出力し、ディスプレイ7上に画像データを表示する。これにより、Video Render5は、PTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値の画像データをディスプレイ7に表示することができる(ステップA5)。
【0046】
また、Audio Render6は、転送部46から転送されてきた音声データをスピーカ8に出力し、スピーカ8から音声データを出力することになる。但し、Audio Render6は、状況に応じて、音声データを出力しなくても良い。
【0047】
<上記処理動作の具体例>
次に、図3を参照しながら、上述した図2に示す処理動作の具体例について説明する。以下の処理動作では、1コマ戻しの再生を、『B24』から開始した場合について説明する。なお、本実施形態では、説明の簡略化のために、1GOP単位を、9フレームで構成しているが、通常は、1GOP単位を、MPEGに準拠したフレーム数で構成することになる。また、各ピクチャを示す記号(I,P,B)に付した数字は、各ピクチャを区分するためのものであり、Decoder4に入力する前のデータは、図3に示す『符号順』で示す順序で構成し、Decoder4でデコードした後のデータは、図3に示す『表示順』で示す順序で構成する。例えば、『GOP1』は、Decoder4に入力する前は、『I01→B02→B03→P04→B05→B06→P07→B08→B09』で構成しており、Decoder4でデコードした後は、『B02→B03→I01→B05→B06→P04→B08→B09→P07』で構成している。
【0048】
本実施形態の編集装置100において1コマ戻しを開始する場合は、ユーザ操作により1コマ戻しの再生開始時にディスプレイ7に表示する『B24』をPTS値で指定する(ステップA1)。この場合、編集装置100は、ディスプレイ7に現在表示中のPTS値(230)より所定の値(Δα=1)だけ小さいPTS値(229)を指定する。
【0049】
編集装置100は、ディスプレイ7に表示する『B24』のPTS値(229)を指定した場合に(ステップA1/Yes)、ファイルリーダ2は、その指定PTS値(229)を基に、その指定PTS値(229)を含むGOP3の1つ前のGOP2のMPEGデータから順にメモリ1から読み取る。そして、メモリ1から順に読み取ったMPEGデータと共に指定PTS値(229)をDemux3に出力する。
【0050】
Demux3は、ファイルリーダ2からMPEGデータを受け付けた場合に、その受け付けたMPEGデータをVideo符号データとAudio符号データとに分離し、その分離したVideo符号データとAudio符号データと共に指定PTS値(229)をDecoder4に出力する。
【0051】
これにより、編集装置100は、ディスプレイ7に表示する『B24』のPTS値(229)を指定した場合に(ステップA1/Yes)、その指定PTS値(229)を含むGOP3の1つ前のGOP2のMPEGデータ(Video符号データとAudio符号データ)から順にDecoder4に入力することができる(ステップA2)。
【0052】
Decoder4は、Demux3から受け付けたVideo符号データとAudio符号データをBuffer41,42に格納する。
【0053】
PTS検索部47は、Demux3から受け付けた指定PTS値(229)を基に、PTS Table48を検索し、PTS Table48に記憶されているPTS値の中から、指定PTS値(229)以下であり、且つ、最も大きい値のPTS値(220)を特定する(ステップA3)。
【0054】
Video Decoder43は、PTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値(220)になるまでBuffer41に格納したI,P,BピクチャのVideo符号データをデコードし、そのデコードした画像データを転送部45に出力する。転送部45は、Video Decorder43でデコードした画像データをPTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値(220)になるまで破棄し、PTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値(220)の画像データ(B24)をVideo Render5に出力する(ステップA4)。また、同時にVideo Decoder43は、次のコマ戻し操作に利用するためにデコードできた画像データのPTS値をPTS Table48に格納し、更新する。例えば、I10からデコードできたとすると、PTS Table48には、I10のPTS値110からB24のPTS値220までが格納されることになる。
【0055】
また、Audio Decoder44は、PTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値(220)になるまでBuffer42に格納したAudio符号データをデコードし、そのデコードした音声データを転送部46に出力する。但し、Audio Decoder44は、状況に応じて、Audio符号データをデコードしなくても良い。転送部46は、Audio Decorder44でデコードした音声データをPTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値(220)になるまで破棄し、PTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値(220)の音声データをAudio Render6に出力する。
【0056】
Video Render5は、転送部45から出力された画像データ(B24)をディスプレイ7に出力し、ディスプレイ7上に画像データ(B24)を表示する。これにより、Video Render5は、PTS検索部47がPTS Table48から特定したPTS値(220)の画像データ(B24)をディスプレイ7に表示することができる(ステップA5)。
【0057】
また、Audio Render6は、転送部46から転送されてきた音声データをスピーカ8に出力し、スピーカ8から音声データを出力することになる。但し、Audio Render6は、状況に応じて、音声データを出力しなくても良い。
【0058】
<本実施形態の編集装置100の作用・効果>
このように、本実施形態の編集装置100は、Video Decoder43でデコードできたVideo符号のPTS値をPTS Table48に記憶して管理する。これにより、過去にデコードできたコマのPTS値を把握することができる。その結果、過去にデコードできたコマのPTS値を基に、1コマ前の正確なPTS値をVideo Decoder43に指定することができる。また、本実施形態の編集装置100は、フレームレートが29.97fpsであっても、24fpsであっても、1コマ前の正確なPTS値をVideo Decoder43に指定することができるので、1コマずつコマ戻しを行うことができる。
【0059】
また、本実施形態の編集装置100は、Video Decoder43でデコードできたVideo符号のPTS値をPTS Table48に記憶して管理し、そのPTS Table48に記憶したPTS値を基に、1コマ前の正確なPTS値をVideo Decoder43に指定するため、データが壊れてしまい、Video Decoder43でデコード出来ないコマがあっても、Video Decoder43でデコード出来ないコマを飛ばしてその前のコマをディスプレイ7に表示することができる。また、PTS値が飛んでいるデータであってもコマ戻しを行うことができる。
【0060】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0061】
例えば、上述した本実施形態の編集装置100は、図1に示すように、ファイルリーダ2と、Demux3と、を有し、メモリ1からMPEGデータを読み出す機能(ファイルリーダ2の機能)と、そのMPEGデータを分離する機能(Demux3の機能)と、を区分して構成することにした。しかし、ファイルリーダ2の機能と、Demux3の機能と、を1つの機能として統合するように構築することも可能である。
【0062】
また、上述した本実施形態における編集装置100を構成する各装置における制御動作は、ハードウェア、または、ソフトウェア、あるいは、両者の複合構成を用いて実行することも可能である。
【0063】
なお、ソフトウェアを用いて処理を実行する場合には、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ内のメモリにインストールして実行させることが可能である。あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させることが可能である。
【0064】
例えば、プログラムは、記録媒体としてのハードディスクやROM(Read Only Memory)に予め記録しておくことが可能である。あるいは、プログラムは、リムーバブル記録媒体に、一時的、あるいは、永続的に格納(記録)しておくことが可能である。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することが可能である。なお、リムーバブル記録媒体としては、フロッピー(登録商標)ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magneto optical)ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、磁気ディスク、半導体メモリなどが挙げられる。
【0065】
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体からコンピュータにインストールすることになる。また、ダウンロードサイトから、コンピュータに無線転送することになる。また、ネットワークを介して、コンピュータに有線で転送することになる。
【0066】
また、本実施形態における編集装置100は、上記実施形態で説明した処理動作に従って時系列的に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力、あるいは、必要に応じて並列的にあるいは個別に実行するように構築することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、MPEG規格の符号を編集する技術に適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
100 編集装置
1 メモリ
2 ファイルリーダ(取得手段)
3 Demux
4 Decoder
41、42 Buffer
43 Video Decoder(出力手段)
44 Audio Decoder
45 転送部(出力手段)
46 転送部
47 PTS検索部(検索手段)
48 PTS Table(記憶手段)
5 Video Render
6 Audio Render
7 ディスプレイ
8 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デコーダでデコードできたVideo符号のPTS(Presentation Time Stamp)値を記憶する記憶手段を有することを特徴とする編集装置。
【請求項2】
画像データを表示画面に表示するための操作が行われる度に前記デコーダでデコードできたVideo符号のPTS値を前記記憶手段に記憶し、前記記憶手段に記憶されている前記PTS値を前記操作が行われる度に上書きして更新することを特徴とする請求項1記載の編集装置。
【請求項3】
画像データを表示画面に表示するための指定PTS値を受け付けた場合に、前記記憶手段に記憶されている前記PTS値の中で、前記指定PTS値以下であり、且つ、最も大きい値のPTS値に該当するコマを前記表示画面に表示するように制御する制御手段を有することを特徴とする請求項1または2記載の編集装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記指定PTS値を受け付けた場合に、当該指定PTSのデータを含む第1のGOP(Group of Picture)及び当該第1のGOPの1つ前の第2のGOPのデータを少なくとも取得する取得手段と、
前記記憶手段を検索し、前記記憶手段に記憶されている前記PTS値の中で、前記指定PTS値以下であり、且つ、最も大きい値のPTS値を特定する検索手段と、
前記取得手段で取得したデータを、前記検索手段で特定したPTS値のデータまでデコードし、前記検索手段で特定したPTS値に該当するコマを前記表示画面に出力する出力手段と、
を有することを特徴とする請求項3記載の編集装置。
【請求項5】
前記取得手段で取得したデータの中でデコードできたVideo符号のPTS値を前記記憶手段に記憶し、前記記憶手段に記憶されている前記PTS値を更新することを特徴とする請求項4記載の編集装置。
【請求項6】
前記指定PTS値は、前記表示画面に現在表示されているコマのPTS値から所定の値だけ減算した値であることを特徴とする請求項3から5の何れか1項に記載の編集装置。
【請求項7】
編集装置で行う制御方法であって、
Video符号をデコーダでデコードする工程と、
前記デコーダでデコードできた前記Video符号のPTS(Presentation Time Stamp)値を記憶手段に記憶する工程と、を有することを特徴とする制御方法。
【請求項8】
編集装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、
Video符号をデコーダでデコードする処理と、
前記デコーダでデコードできた前記Video符号のPTS(Presentation Time Stamp)値を記憶手段に記憶する処理と、を、前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−147333(P2012−147333A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5218(P2011−5218)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(311012169)NECパーソナルコンピュータ株式会社 (116)
【Fターム(参考)】