説明

緩衝包装体及び梱包方

【課題】外部からの衝撃などにより損傷を受け易い基板類の移において、精密加工を施した有効部位が非接触となる構造の配列トレイと、緩衝特性に優れたフィルムを用いた緩衝ガイドとからなる包装体を用いて基板類の外周部を固定して外箱に収納することで有効部位の摩擦防止や衝撃吸収が図れ、作業効率の改善やフィルムの透明性から目視による品質管理が実施でき、さらに再利用も可能な緩衝包装体とその梱包方法を提供する。
【解決手段】包装する基板類51を、支持溝部21aを配置した配列トレイ21に収納し、緩衝フィルム12の膜面圧効果を原理とした緩衝ガイド11との組み合わせにより、基板類の有効部位の保護と衝撃吸収が可能な構成で、作業効率の改善と品質管理にも有効であることを特徴とする緩衝包装体及びそれを用いた梱包方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部からの衝撃を受け易い基板類の移送において、支持溝を有する配列トレイと、緩衝フィルムを用いた緩衝ガイドの構成からなり、これらを組み合わせて形成する緩衝梱包体及びそれを用いた梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、移送時に発生する外部の衝撃から保護を必要とする光学部品や電子部品に利用される薄板状の基板またはレンズ(以下、「基板類」という。)では、該基板類を個々の袋に入れて、クッション性のある緩衝材を利用した保護がなされて外箱に収納する方法を始めとして様々な対策が実施されている。近年、前記の基板類は、その精密さを求める加工技術の高度化も含めて表面の仕上げ状態が多様化してきており、特に精密鏡面研磨や薄膜の蒸着加工が施されるケ−スでは、基板類の有効範囲である研磨面や成膜部分(以下、「有効部位」という。)は、包装部材とは非接触状態での包装が求められている。
【0003】
非接触に対応する従来の包装は、樹脂材料を原料として真空成型によるトレイが多く利用されており、上下に2分割された構造で、下型には基板類を収納するために該基板類の形状に合致した相対向する一対の支持溝が配列され、上型にも収納に必要な溝が形成された構造で、それぞれを対面結合するトレイである。この場合、基板類と前記支持溝との微細なクリアランスを残した構造であるために、外部からの衝撃には対応されていない。したがって、前記基板類の保護のためには、外箱との間に新たな緩衝材を挿入する必要がある。同様な構造の例として、複数枚の円形基板を収納する方法として、半円周溝を有する半円筒部の対面結合させたプラスチック製の成型された専用の容器(特許文献1、参照。)がある。
【0004】
有効部位の被接触状態を創出するために発泡のポリオレフィン系樹脂を利用した事例として、単一発泡成形体である素材が持つ緩衝性を利用して、基板支持用の溝を形成したガラス基板搬送ボックス(特許文献2参照。)があり、また前記と同一の樹脂を使用して各溝の先端部に突出部を形成し、その突出部間の間隔を基板の厚みより広くした基板搬送用ボックス(特許文献3参照。)が公開されている。これらは、相対向する一対の溝を支持体としているために、基板の有効部位の保護には効果的であるが、微細なクリアランスを利用しているために緩衝性の素材との摩擦が発生する可能性と、ボックス全体の振動対策の面でやや不安を残している。さらに導入には初期費用として高額な金型や形枠製作費が必要となり、ロット数の少ないものには適していない。
【0005】
一方で、フィルムを利用して被包装品を固定する方法も公開されている。ただし、フィルムには特性が2種類あり、加熱によりシュリンクする熱収縮性のものと、熱可塑性のフィルムで伸縮性、復元性及び耐久性(以下、「緩衝特性」という。)を特徴としたものに分けられる。前者の参考事例が、4個のL字形の発泡系樹脂を接触面にして、外周部への熱収縮性フィルムによるシュリンク包装(特許文献4参照。)を特徴として複数枚の基板を固定する方式である。ただし、ここで公開されているシュリンク包装のフィルムは、熱による収縮を原理としているために再利用は不可能である。
【0006】
後者の緩衝特性を特徴とした熱可塑性の緩衝フィルムを利用した梱包として、緩衝機能性フィルムを窓貼りした中枠部により、トレイ状の製品収納部を固定する方法の緩衝機能付き包装体(特許文献5参照。)が公開されている。フィルムと被包装品との接触により、膜形状のフィルムに発生する柔軟変形とその張力を利用して相対する被包装品との接触面に発生する圧力の効果(以下、「膜面圧効果」と略して表記する。)を基本原理としている。接触面の大きな被包装品には適しているが、前記トレイ状の製品収納部では、薄板状の基板類を固定する機能は有していないために基板類では対応できない。
【0007】
同様な例として、一対のフィルム枠を使用して、被包装品を任意の姿勢で収納するフィルム梱包材による緩衝梱包方法(特許文献6参照。)も公開されている。また、これらに類似した具体例として、販売時の箱が消滅して存在しない要修理依頼品であるカメラやパソコンの搬送用として、紙製の段ボ−ルを使用して上下に相対向する二つのフィルム枠の間に、前記の精密機器でもある商品を挟み込んで、中空状態で保持することで該商品の保護が図られている包装体がある。これらの梱包では、該フィルムの緩衝特性を生かして、再利用が可能であることが注目されている。
【0008】
さらに、同様のフィルムを利用した参考例として、一対の中枠部材を利用したディスプレイの緩衝包装体(特許文献7参照。)も公開されている。ここでは、透明な緩衝フィルムを透して展示商品を容易に観察できるためにその目的を達成している。
【0009】
前記の熱可塑性緩衝フィルムの特徴を利用して不具合の生じた事例もある。光学部品のレンズを包装の対象として、研磨工程から薄膜の蒸着加工の通い箱に採用したケ−スで、薄膜成形した面をフィルムで保持させたために、輸送後の保管中にレンズの有効部位である面部分と該フィルムとに数日間の接触が生じて、変色などの不具合が発生している。要因としては、接触部における結露や酸化などが推定されている。これらの対策としても、包装される基板類の有効部位は、包装素材との非接触が必須条件であることが判明できる。
【特許文献1】実開 昭62−108279公報
【特許文献2】特許 2552625公報
【特許文献3】特開 2002−347882公報
【特許文献4】特開 2002−193340公報
【特許文献5】特開 平11−268768公報
【特許文献6】特開 2001−278343公報
【特許文献7】特許 3704623公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光学部品や電子部品として使用される薄板状の基板類の移送において、配列トレイに複数枚を集合的に収納できるようにオレフィン系発泡体の板材を切断した素材に支持溝と内枠の加工を施して接着を重ねた配列トレイと、緩衝フィルムとの膜面圧効果によって固定されて有効部位の保護と外部からの衝撃吸収が図られる構造を形成できるようにガイド板に緩衝フィルムを貼り合わせた緩衝ガイドとからなる緩衝梱包体を提供することである。また、該緩衝包装体を用いる梱包では配列トレイと緩衝ガイドを組み合わせて使用することで容易に基板類の固定状態を創出できる構造であるために作業効率の改善に寄与でき、フィルムの持つ透明性を利用して目視にて観察をしながら外箱への収納ができるために品質管理にも有効であり、フィルムの緩衝特性によって再利用が可能でもあり、緩衝包装体自体の導入初期費用も安価であるためにコストダウンが図られることを具えた梱包方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基板類の衝撃からの保護を優先して、金型や形枠の高価な初期費用を投入することなく、通常の一般作業にも兼用できる配列トレイとして、オレフィン系発泡樹脂の板材を素材に選択して、小ロットでの加工が可能なウォ−タ−ジェットやプレス切断により、前記配列トレイの基板収納スペ−スには相対向する一対の面に基板類の形状に合致した複数の支持溝を形成し、別途に切断された底板部に接着剤で接合し、内枠を切抜いたスペ−サ−部を含んで形成する。前記支持溝に配列された基板類の外周部が緩衝フィルムの膜面圧効果により固定状態に保持される構造である。一方で、緩衝ガイドは、紙または発泡系樹脂の板材をガイド板としての寸法に切断し、折り目に沿ったリ−ド罫及と折り曲げ用の補助穴を加工し、実証や試作において厚さを決定した緩衝フィルムを熱溶着もしくは接着剤にて接合させて形成する。前述の緩衝ガイドの折り曲げ操作において発生するフィルムの緩衝特性により、被包装品である基板類を固定することができる緩衝包装体を構成している。ここでの包装体は再利用が可能なリタ−ナブル性も有していることも特徴の一つとしている。また、上述の配列トレイに含まれるスペ−サ−部は、作業スペースの確保と膜面圧効果のための張力の均一化を目的とした高さ寸法を具えており、更なる用途として、乾燥剤や脱酸素剤を封入する場合に通気孔を形成することでカバ−としての役割も兼ね備えた構造である。これらの緩衝包装体を使用した包装作業の工程においては、まず前期配列トレイに基板類を集合的に配列・収納した状態で、緩衝ガイドのガイド板の上で、かつ緩衝フィルム下側に配置した後、緩衝ガイドをリ−ド罫に沿って折り曲げるだけで膜面圧効果が発生して、固定状態となるため単独だけでなく複数の緩衝ガイドを積層(以下、「単層または積層にて」という。)にて収納できる。さらに複層の緩衝ガイドの間に仕切り板を採用することで、内部の補強対策も可能となることを特徴とする緩衝包装体及びそれを用いた梱包方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、光学部品や電子部品として使用される薄板状の基板類を移送する梱包に関して、支持溝を有する配列トレイと緩衝フィルムを貼り合わせられた緩衝ガイドとによって構成される緩衝包装体は、前記基板類の外周部を固定状態に保持して、有効部位の保護となる非接触の状態を実現させることが可能である。
【0013】
緩衝特性に優れた緩衝フィルムを用いた緩衝ガイドによって、基板類を固定状態に保持して外箱に収納される配列トレイは、底部以外の側面及び上部には外箱との空間部分が発生し、外部からの直接的な衝撃は受けにくい状態となる。仮に底部からの衝撃を受けてもフィルムの特性により反対方向へ吸収されるので、基板類の保護には有効な構成となり、外箱との間には新たな緩衝材を必要としない梱包である。
【0014】
支持溝を利用した専用容器において、微細なクリアランスを持って固定する場合では、クリアランス範囲内での微細な振動に伴い摩擦が発生するが、本発明では緩衝フィルムによるの膜面圧効果を生かして常時一定方向に安定した保持が可能となり、摩擦などの影響を受けにくい構造である。
【0015】
スペ−サ−部含んだ配列トレイは、通常の作業工程でも兼用が可能であるために新たな包装工程が発生せずに基板類を配列した状態のまま包装に移行でき、さらに次工程では先にスペ−サ−部を取り除くために作業スペースが確保され、基板類の取り出しも容易となり、作業効率が改善されてコストダウンに貢献できる。
【0016】
緩衝包装体を形成する配列トレイ及び緩衝ガイドは、高価な金型や形枠を必要とする成型品と異なり、初期導入コストが安価であり、特に、再使用が可能なリタ−ナブル性を有するために、更なるコストダウンが期待できる。
【0017】
さらに、フィルムの透明性を利用した品質管理にも有効である。基板類を配列トレイに収納して、それら全体をフィルムで保持させた状態において数量や製品状況の確認が目視によって実施できるために、梱包時と開梱時の双方において、利便性が発揮される。
【0018】
同様に、基板類を収納した配列トレイをガイド板上に配置して、緩衝ガイドの折り曲げ工程によって発生するフィルムの膜面圧効果を利用して、配列トレイ全体を保持状態のままで、外箱へは垂直または水平のいずれの方向でも収納でき、さらに単層または積層のいずれでも可能である。また仕切り板を採用することで、各層間の補強対策も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施にあたり、一般的な四角形状の基板を移送する場合の事例として、本発明の緩衝包装体及びそれを用いた梱包方法について、下記にて説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明における緩衝包装体を構成する配列トレイと緩衝ガイドとを組み合わせた使用例の概念を示しているのが図1である。基板類51を配列した状態の側面を示した図(a)の配列トレイと、図(d)に平面を示した緩衝ガイド11から構成されて、図(b)の如く緩衝ガイド11を構成する緩衝フィルム12の内側で、基板類を含む前記緩衝トレイ21を固定させ、ガイド板11aに加工されたリ−ド罫13aに沿って形成される緩衝ガイド折り曲げ端13の重ね折り部を上側両サイドの支持基点として、図(c)に示す状態で水平方向に配置して外箱41に収納する緩衝包装体である。
【0021】
図2は配列トレイ21を単独でなく2枚とし、二枚の緩衝ガイドを使用して垂直方向で収納した場合の斜視図である。本発明の緩衝包装体は、緩衝ガイド11の折り曲げ操作で基板類51の固定状態が保持される構造となり、前記と同様に折り曲げ操作にて形成される緩衝ガイド折り曲げ端13を支持基点として、収納の方向性は問われないで複数の積層でも収納できる。また、ここでの谷折りの矢印は緩衝ガイド11で固定状態とするための作業方向を示し、下方向の矢印は外箱への収納方向を示したものである。
【0022】
図1(d)に示された緩衝フィルム12によって膜面圧効果を得るための緩衝ガイド11は、ガイド板11aに紙及び発泡系樹脂のいずれか一方の板を用いるが、本実施例では白色段ボ−ルを使用して指定寸法に切断し、梱包の作業工程に必要な折り曲げ位置に沿ってそれぞれが一対となるリ−ド罫13a及び13bを入れ、さらに曲げ易くするための折り曲げ用補助穴11bを前記リ−ド罫が交差する4箇所に5mm径で設ける。ここで、支持体11aの材料として、白色段ボールを使用したが、紙粉の発生を嫌う時には、紙粉の出ない厚紙や発泡系樹脂の板材を選択して対応することもできる。
【0023】
図1(d)に示された矢印は折り曲げの手順でもあり、まず折り曲げ方向1は、相対する面を曲げるための一対のリ−ド罫13aに沿った位置で山折りとして緩衝フィルム12が膜面圧効果を発生させる方向を示し、折り曲げ方向2は、相対する面に沿った一対のリ−ド罫13bを谷折りとして外箱との空間を創出するための方向指示をしている。
【0024】
また、前記のガイド板において、折り曲げ方向1のリ−ド罫13aが補助穴11bの位置からV字形状で二重になっているのは、二重線とすることで折り曲げ操作にて形成される緩衝ガイド折り曲げ端13に巾をもたせ、外箱との接触部分となる支持基点として強度をつけることと、積層にも利用するためである。さらに仮留め及び収納作業用持手部穴11dと、配列トレイの配置位置のマ−キング11eも切り込むことができる。
【0025】
上述の如く形成したガイド板11aに、予め寸法を決定して切断した緩衝フィルム12の両端を裏面の所定の位置に11cに熱溶着または粘着剤にて貼り合わせて、緩衝ガイド11を形成させる。
【0026】
一方の配列トレイ21を示しているのが図3(a)の斜視図である。ここでは、オレフィン系発泡樹脂を材料に、配列トレイの支持溝部21aを加工して、配列トレイの底板部21bに粘着剤を用いて接着した状態を示しており、前記配列トレイに含まれるスペ−サ−部21cとは区分して表示している。図3(b)には、本事例での四角形状の基板を基板収納スペ−ス52に収納した状態の図3(a)のA部・平面詳細として表示している。上述の接着に先立ち、配列トレイの支持溝部21aは、底板部21bと同一寸法に切断された材料を使用して、配列トレイの基板収納スペ−ス52を設ける構造で、相対向して一対となる支持溝をウォ−タ−ジェット加工により、前記A部・平面詳細に示すような基板の外周部を支持するV溝を形成する。同様に、スペ−サ−部21cも内枠を所定の寸法に切断して形成する。ここで利用するオレフィン系発泡樹脂の素材時寸法は1,000x1,000mmで、その厚さは1mm間隔にて1〜70mmの範囲で製造されているものを利用する。また、これらの加工は、ウォ−タ−ジェット加工以外の型抜きによるプレス一括切断に切り替えることで、量産化への対応も可能である。
【0027】
図面への表示はないが、配列トレイの支持溝部21aとスペ−サ−部21cを固定するためにこれらの外周部を利用して、そのコ−ナ−部分の4箇所に貫通した3mm径のガイドピン用の穴を加工しておくことも可能である。またガイドピンの代案として、頭部が円形で、かつスペ−サ−部を貫通し、十分に溝切り部に達する長さの押しピンで、固定することも可能である。
【0028】
図4は、配列トレイの支持溝部21aと底板部21bを接着し、スペ−サ−部21cを付属した配列トレイに、基板51を基板収納スペ−ス52に形成された相対向する一対の溝に並列的に収納した状態を示した側面図である。図4(a)では、該基板51の外周部となる側面が、配列トレイの支持溝部21aの溝で支持されて有効部位が非接触となる構造を、また図4(b)では、該基板51の上部が該スペ−サ−部21cからの突出する状態を示している。組み合わせて使用する緩衝ガイドのフィルム12のみを少し離した状態で表示しているが、矢印方向に下がった位置で柔軟変形をして張力を発揮して膜面圧効果を得ることができる構造である。
【0029】
本発明において、配列トレイのスペ−サ−部21cは、作業時に被包装品を取り出し易くするための作業スペ−ス確保が目的であるが、フィルム選定の要素でもある。緩衝フィルム12は、伸縮性・復元性・耐久性を有しているが、その厚さによって固定する張力と伸びが異なっている。そこで、本実施例では、38x38x3mmtの基板に対して、溝切り部分21aを25mm、スペ−サ−部21cを10mmとし、基板上部の突出寸法を3mmに設定して、厚さ40ミクロンの緩衝フィルムを使用することを事前の実証により決定している。通常は、保持する被包装品の重量にも左右されるが、大きなサイズでは伸長性を重視した薄いフィルムを、また重量が重い基板では厚手のフィルムを選択するのが一般的である。
【0030】
緩衝フィルムの標準仕様としては、40〜100ミクロンの厚さで、その最大巾は、1,050mmである。このフィルムの厚さを、図4における基板上部の突出状態を参考にして、下記にて緩衝フィルムに関する別途な事例を追記する。前述のようにスペ−サ−部21cは、被包装品へのフィルムの張力を均一化させる役目を持っている。上述の事例では、配列トレイでの基板収納スペース52は2列の配列であったが、3列以上では両側の列の基板が受ける張力と比較して、中間の列に配置した基板が受ける張力は小さくなるので、スペ−サ−部による突出寸法とフィルムの関係が重要となる。したがって、3列以上に配置する時は、必ず事前の実証あるいは試作が必要となってくる。これまでの結果として、3列以上のトレイにおける中間位置の配列の保持には、基板の突出寸法を少なくして、厚手のフィルムを使用することで均一化をはかる構造が適している。また、0.5mm以下の薄い基板では、該基板自体の変形が予想されるので、トレイの列に関係なく前記の突出寸法を微小とし、さらにフィルムも薄いものを使用して、全体の張力を小さく均一化させて保護を図る構造が必要である。一方で、円形の基板を1列または2列以下で配置する場合には、張力のバランスが保たれるのでコストダウンの目的から逆にスペ−サ−部を省略できるケ−スもある。
【0031】
緩衝包装体を構成する緩衝ガイド11と配列トレイ21とを組み合わせた梱包の作業工程を下記にて説明する。図4に示すように、基板51を配列トレイ21に収納して、予め緩衝ガイド11のガイド板11aに表示された配列トレイの配置位置マ−キング11eに合わせて仮置きし、図1(d)に示された折り曲げ方向とその順位に従って、山折りと谷折りを実施することで、図1(b)の状態となり、ガイド板11aに貼りあわされた緩衝フィルム12の柔軟変形と張力により膜面圧効果が発生して、基板51を含む配列トレイ21を仮留めの固定状態として保持できる。その保持を継続して、図1(c)に示すように外箱41に緩衝包装体として収納する。外箱のフタ部分とは図1(b)の緩衝ガイド折り曲げ端13の支持基点で固定される構造である。この工程において基板51は、外箱に収納するまで、常に透明なフィルムを通して目視にて確認できる状況である。開梱の時も同様に仮留め保持の状態のまま外箱から取り出すことになり、品質管理に非常に有効である。さらに、本発明の梱包では、前記フィルムの特性である伸縮性・復元性・耐久性によって、繰り返しの再利用も可能である。
【0032】
外箱41への収納方法としては、上述したように図1に表記された水平方向、及び図2にて表記した垂直方向のいずれの方向でも対応が可能である。これらは、作業時の仮留めの固定状態が、目視にて確認できる構造からも容易に判断できる。積層に関しては、図1(d)に示したガイド部のリ−ド罫13aが折り曲げ用補助穴11bからV字形状になっている部分が、外箱内面や各層との支持基点13となる構造を形成するが、厚さが不足したり、強度に不安がある時には、さらにコ字型をした板状の仕切り板を反対方向から挿入して補強したり、外箱の底と同じ寸法の仕切り板を入れることで、上下方向の補強をして対応できる。
【0033】
別途な事例として、被包装品の数量が多い場合には、真空成形トレイを利用する。上述の発泡系樹脂を素材とした配列トレイより導入の初期費用はかかるが、ト−タルコストの安さから選択される。図5は、前記真空成型トレイ31aを利用する場合を示している。一般的な真空成形トレイは、上型と下型の組み合わせで使用されるが、本項で採用する前記トレイは、被包装品の横倒れを防ぐ目的で相対向する一対の複数の溝を配列した構造の下型のみを製作して、本発明における配列トレイの代案とする。しかしながら、スペ−サ−部は含まれていないために、前記トレイの外周部にスペ−サ−部31cとスペ−サ−部の底板部31cとで接着した構造で別途に形成する。ここでの条件として、ス−ペ−サ−部31b及び31cと緩衝フィルム12を整合させた実証が必要となる。また、該トレイの重量を考慮して、厚いフィルムと突出寸法の少ないスペ−サ−部を組み合わせて選定することが好ましい包装体である。
【0034】
下記にて、上述した実施例に基づいて製作した具体例について記載する。図2にて表記した斜視図は、収納方向を垂直とした2層に関するものであるが、5層として実施した具体例である。
【0035】
〔ガラス基板〕
寸法 : 38x38x3mm
重量 : 9g/1枚当り
枚数 : 25枚x2列=50枚/1トレイ当り
積層 : 5層(250枚)
【0036】
〔配列トレイ用素材〕
材料 : オレフィン系発砲樹脂の板材 発砲倍率:20倍
寸法 : 1,000x1,000x25mm(粘着材付き)
1,000x1,000x10mm(スペ−サ−部用)
1,000x1,000x5mm(底板用)
数量 : 各1枚
加工方法 : ウォ−タ−ジェット(試作)、または抜き型製作でのプレス切断(量産)
【0037】
〔作業トレイの概要〕
外形寸法 : 290x185mm
溝および列数 : 25x2列
溝ピッチ : 10mm
溝深さ : 7mm
溝開口部 : 5mm
【0038】
〔スペ−サ−部〕
外形寸法 : 290x185mm
高さ寸法 : 5mm
窓部寸法 : 260x39mm(2列)
【0039】
〔スペ−サ−部のガイドピン〕
品名 : アクリル製丸棒
外径 : 3mm丸棒x30mmL
数量 : 4本
【0040】
〔緩衝フィルム〕
品名 : 熱可塑性ポリウレタンフィルム
仕様 : 40ミクロン x 1,050mm巾(購入寸法)
使用寸法 : 330 x 425+50mm(裏面の貼り付け部)
【0041】
〔緩衝ガイドのガイド板〕
品名 : 段ボ−ル(Eフル−ト・片面白色)
寸法 : 530x425mm
【0042】
〔外箱〕
品名 : 段ボ−ル(Bフル−ト)
仕様 : ガイド部5個を垂直方向に積層して収納
寸法 : 405x405x245mm(内寸)
409x409x253mm(外寸)
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、専用容器や高額の型代を要するトレイではなく、板材で厚さの種類も豊富な市販の発砲系樹脂を素材として、容易に製作することができる配列トレイを形成して、緩衝フィルムを用いた緩衝ガイドとの組み合わせで使用するために、配列トレイの支持溝の加工精度もウォ−タ−ジェットの加工範囲である0.5mm以上で十分であり、特にロット数が少ない移送品には最適な対応と判断できる。
【0044】
本発明での梱包は、対象品の有効部位の特殊な保護や、新たな緩衝材の詰込内容を検討する必要が無いために、作業者の特殊な技術や判断を必要としない。また平板状態で保管ができる緩衝ガイドや外箱は保管スペ−スも少なくて済み、配列トレイは通常の作業との兼用ができるために、採用することでのメリットは大きいと判断できる。
【0045】
また、少量多品種を扱う光学部品メ−カ−で、特に精密研磨や薄膜の蒸着加工をする部門からの要求が大きい。その理由として、客先から高価な材料を支給されて基板類を加工するメ−カ−では、材料に保険をかけて加工するケ−スも発生する中で、梱包と輸送に関しても注目されてきている。移送時の損傷発生による再加工では、その責任としてお金よりも単納期が要求され、短時間での再加工が問題視されている。また、研磨品を支給されて、蒸着加工を施して返却するような工程では、本発明の緩衝包装体は、リタ−ナブル性から再利用ができるために、支給時に実績のある包装体と梱包方法として安心して使用できる。
【0046】
上述の事例である角型の基板では、溝切り部の側面二辺のみで支持されているが、円形のレンズや、基板の精密加工で基板の寸法が短くなるケ−スには、底板部にもV溝が必要になってくる。つまり、三辺での支持での安定を目的としており、フィルムでの張力で不安定とならないような対策である。特に精密加工の通い箱としての利用では、新たな返却専用のスペ−サ−部を別途に製作して、その内側寸法を調整することでいずれか一方のV溝に接触させて、底部V溝の2点支持で安定を図ることで応用も可能となる。
【0047】
本発明における上述の構造は、製品の寸法に合わせた作業トレイを製作することで展開されているが、対象となる基板やレンズの寸法に合わせて使用できる汎用性のあるトレイを標準化することで採用される範囲が大きくなる。つまり、溝切り部分の構成を4本に分割して厚さのみ標準化して、自由な間隔で底板に貼り付けて製作すれば、利用範囲が拡大される。この場合には底板への張り合わせを外側に合わせて形成する。底板やガイド部は数種類の寸法を準備することで解決できる。
【0048】
被包装品が光学部品のプリズムのような形状では、配列トレイには円形の溝を切り、プリズムの有効部位ではない三角形の面を利用して、上下方向に保持することができる。有効となる四角形の3面を支持体やフィルムに接触させない手法である。また各面が有効部位となるときは、四角形をした面の底辺が線接触となる構造で、真空成形トレイを製作して、三角形をした面の頂点となる辺をフィルムの張力で押えるような設計で各面の非接触も可能となる。
【0049】
一方で、これらの被包装品は、輸送途上での結露や表面の酸化も問題となる。新規に設計・製作する配列トレイには、そうした事情を配慮して、乾燥剤または脱酸素剤の封入スペ−スも設置可能である。この場合、外部との密封は、ビニ−ル袋を併用する構造とすることが可能である。また、乾燥剤の同封位置として対角に2箇所10x40mmの切込みを入れた構造も可能であることが上述の事例で確認できた。
【0050】
結露と共に静電気対策も必要となるケ−スがあるが、配列トレイの材質を導電性の発泡系樹脂に変更して、帯電防止用の袋に入れて、その状態で緩衝フィルムを用いて固定することも可能である。
【0051】
また、基板類に属する部品は、製造履歴を部品に直接記入することはスペ−スの問題から実施されていない。近年の導入されてきたICタグを配列トレイ毎に貼り付けて、ロット番号によりに管理することにも適した包装体である。
【0052】
基板類ではないが、電子部品としてその表面に突起物となる部品を配置したプリント基板の包装にも適している。該プリント基板の外周部を固定することで基板類と同様な突起状である部品の保護対策として期待できる。
【0053】
デザイン性を重視した江戸切子のコップを例としたガラス製の置物の包装にも適用できる。フィルムを通して内容が確認できる包装として、本発明で実施したようにコップの形状に合致した支持溝を形成した配列トレイに被包装品を配置し、緩衝ガイドを持って固定させ、外箱のフィルムに平行な面を窓状に開放することで、ディスプレイとの兼用ができる包装として応用できる。ここでは、背面に用いる配列トレイの素材である発泡系樹脂の色を選択できるので効果的なディスプレイを期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】は本発明の概念として(a)は配列トレイに基板を収納した状態を示し、(b)は配列トレイを緩衝ガイドにて仮留め固定状態を示し、さらに(c)は水平方向に1層のみを収納した状態を示す側面図である。また(d)は緩衝ガイドを構成するガイド板と緩衝フィルムの平面図である。
【図2】は2枚の配列トレイをそれぞれの緩衝ガイドで固定して、1層は外箱内部に収納し、別の1層を下方の矢印方向へ積層にて収納する場合の概念を示した斜視図である。
【図3】(a)は基板収納スペ−スを有する配列トレイとスペ−サ−部の概念を示した斜視図であり、(b)は配列トレイの支持溝に基板を収納した時の状態を示したA部の平面図である。
【図4】は配列トレイの側面図で、角型基板を収納した時の概念を示しており、フィルムの張力は矢印方向に密着させて発生する。(a)は非接触とする有効部位の面を、(b)はスペ−サ−部と基板の突出状態を示している。
【図5】は配列トレイとして、プラスチックの真空成形タイプを採用する場合に必要とするスペ−サ−部とその位置を示す概念図である。
【符号の説明】
【0055】
11 緩衝ガイド
11a ガイド板
11b ガイド板の折り曲げ用補助穴
11c ガイド板への緩衝フィルム貼り付け位置(裏面)
11d 仮留め及び収納作業用持手部穴
11e 配列トレイの配置位置のマ−キング
12 緩衝フィルム
13 緩衝ガイド折り曲げ端(支持基点)
13a 折り曲げ部リ−ド罫(山折り)
13b 折り曲げ部リ−ド罫(谷折り)
21 配列トレイ
21a 配列トレイの支持溝部
21b 配列トレイの底板部
21c 配列トレイのスペ−サ−部
31a 真空成形トレイ
31b 真空成形トレイ用スペ−サ−部底板
31c 真空成形トレイスペ−サ−部
41 外箱
51 基板(角型)
52 基板収納スペ−ス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板類を所定の間隔で配列できる支持溝を有すスペ−スが形成されている配列トレイと、ガイド板に緩衝フィルムを貼り合わせた緩衝ガイドとからなり、ガイド板と緩衝フィルムとの間に基板類を配列した前記配列トレイが挿入され、折り曲げが可能な前記緩衝ガイドにより基板類の外周部を固定して外箱に収納することができる構造を特徴とする緩衝包装体。
【請求項2】
請求項1記載の配列トレイは、オレフィン系発泡樹脂を素材とした底板部と、該底板部に接着され基板類の収納スペ−スとして相対向する一対の面に基板類の形状に合致した複数の支持溝が形成された支持溝部と、内枠を切抜いたスペ−サ−部とを含むことを特徴とする緩衝包装体。
【請求項3】
請求項1記載の緩衝ガイドは、紙及び発泡系樹脂のいずれか一方を素材として折り目となる位置にリ−ド罫と補助穴を加工して裏面にフィルム両端の貼り合わせ代を有するガイド板と、該ガイド板に貼り合わされて折り曲げ操作を加えることで膜面圧効果が生じて基板類の固定できる緩衝特性を有した緩衝フィルムとから構成されることを特徴とする緩衝包装体。
【請求項4】
請求項2記載の配列トレイに含まれるスペーサー部は、基板類の収納及び取り出し作業におけるスペ−ス確保するためと、緩衝フィルムの膜面圧効果を得るためとの目的から厚さ寸法が決定されることを特徴とする緩衝包装体。
【請求項5】
緩衝ガイドのガイド板と緩衝フィルムとの間隔を広げ、基板類を収納した配列トレイを前記ガイド板にマ−キングされた位置に挿入し、緩衝ガイドをフィルムの張力が発生する方向へ山折りにし、基板類の上方と外箱とに空間を発生せしめるように折り曲げ部を谷折りし、前記配列トレイと基板類の双方を固定状態に保持し、基板類を外部衝撃からも保護するために前述の折り曲げによって発生した空間を生かして外箱に収納させる緩衝包装体を用いた工程を具えていることを特徴とする梱包方法。
【請求項6】
包装の工程に先立ち、請求項1及び3に記載の緩衝ガイドのガイド板は、該緩衝ガイドを単独で収納する場合の外箱内面、もしくは複層で収納する場合の緩衝ガイド間の接触面として、前記ガイド板の端面に厚みを持った折り曲げ部を形成できるように前記ガイド板の折り曲げ用補助穴から外側に向かった4組のV字形状のリ−ド罫が加工されていることを特徴とする緩衝包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−7175(P2008−7175A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180741(P2006−180741)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(505142757)
【Fターム(参考)】