説明

繊維入り流動物の計量搬送装置及びこれを用いたポリマー複合セメント板の製造方法

【課題】定容積型ポンプ以外のポンプも使用可能で低コスト化を図りやすく、また供給量の計量も可能な繊維入り流動物の計量搬送装置及びこれを用いたポリマー複合セメント板の製造方法を提供する。
【解決手段】繊維入り流動物を貯留するための貯留タンク10と、前記繊維入り流動物を搬送するための搬送部20と、前記繊維入り流動物が前記貯留タンク10から供給され前記搬送部20へと搬送するための送出手段30と、前記貯留タンク10と前記搬送部20と前記送出手段30及びこれらに残留する前記繊維入り流動物の合計重量を計量するための重量計量手段40とを備える。重量計量手段40により繊維入り流動物の変化量が重量計量手段40で計量することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維を含む流動物の量を計量して搬送するための計量搬送装置及びこれを用いたポリマー複合セメント板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、セメントと骨材と補強繊維と逆乳化液(逆エマルジョン液又はW/Oエマルジョン液)とを含む成形材料を所望の形状に成形した後、養生硬化させることによって、ポリマー複合セメント板を製造することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図2に従来から行われている成形材料の調製工程を示す。粉体材料はセメントや骨材などを含有するものであり、所定量の粉体材料を定量供給装置2により計量して混合設備3に供給する。また、水とスチレンモノマーと乳化剤と添加剤と補強繊維を供給装置4により混合タンク5に所定量ずつ計量して供給し、混合することにより補強繊維入りの逆乳化液を調製する。そして、所定量の逆乳化液が計量搬送装置6により混合設備3に供給され、ここで粉体材料と逆乳化液とが混合・混練されて成形材料が調製されるものである。成形材料は混合設備3から次工程の成形工程に送られる。尚、補強繊維は粉体材料に混合すると、成形材料にダマが発生しやすくなるため、逆乳化液の方に配合するようにする。
【0004】
図3に示すように、逆乳化液は混合タンク5から計量搬送装置6に供給された後、配管7を通じて混合設備3に搬送することができるが、配管7に絞り部や屈曲部が存在すると、その部分で補強繊維が引っ掛かって詰まってしまい搬送できなくなることがある。従って、補強繊維の詰まりを発生させないために、所定量の逆乳化液を計量する流量計を配管7に設けることができず、逆乳化液の精度の高い供給を行うことが難しくなる。その結果、粉体材料と逆乳化液との配合比率が一定になりにくく、成形材料から製造されるポリマー複合セメント板の品質を一定にするのが難しかった。
【0005】
そこで、所定量の逆乳化液を混合タンク5から混合設備3にまで供給するために、計量搬送装置6として定容積型ポンプを用いることが行われている。このような計量搬送装置6を用いると、流量計を配管7に設けずに所定量の逆乳化液を計量して混合設備3に供給することができる。また、定容積型ポンプは1回転あたりの送液量のバラツキが少ないため、逆乳化液の精度の高い供給を行いやすいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−176258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、定容積型ポンプは、例えば、歯車等を用いて1回転あたりの送液量を正確に計量したりしているために構造が複雑であり、また、摩耗等の少ない材質で歯車等を形成したりしているため、通常のポンプに比較して高価であり、メンテナンスコストも高いという問題があった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、定容積型ポンプ以外のポンプも使用可能で低コスト化を図りやすく、また供給量の計量も可能な繊維入り流動物の計量搬送装置及びこれを用いたポリマー複合セメント板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の繊維入り流動物の計量搬送装置は、繊維入り流動物を貯留するための貯留タンクと、前記繊維入り流動物を搬送するための搬送部と、前記繊維入り流動物が前記貯留タンクから供給され前記搬送部へと搬送するための送出手段と、前記貯留タンクと前記搬送部と前記送出手段及びこれらに残留する前記繊維入り流動物の合計重量を計量するための重量計量手段とを備えて成ることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の繊維入り流動物の計量搬送装置にあっては、前記送出手段が前記重量計量手段による計量結果に基づいてフィードバック制御可能であることが好ましい。
【0011】
本発明のポリマー複合セメント板の製造方法は、前記繊維入り流動物として、水とスチレンモノマーと乳化剤及び補強繊維を混合して逆乳化液を調製し、セメントと骨材とを混合して粉体材料を調製し、前記計量搬送装置の前記貯留タンクに前記逆乳化液を貯留し、この逆乳化液を前記送出手段に供給すると共に前記送出手段により前記逆乳化液を前記搬送部を通じて前記粉体材料との混合工程に供給し、この混合工程により前記逆乳化液と前記粉体材料とを混合して成形材料を調製するものであって、前記重量計量手段により前記合計重量の変化を計量することにより、前記混合工程に所定量の前記逆乳化液が供給されるように前記送出手段を制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、定容積型ポンプ以外のポンプも使用可能で低コスト化を図りやすく、また供給量の計量も可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の計量搬送装置の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図2】従来例の成形材料の調製工程を示す説明図である。
【図3】従来例の混合タンク、配管、供給装置、混合設備を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0015】
図1に繊維入り流動物の計量搬送装置Aの一例を示す。この計量搬送装置Aは、貯留タンク10と、搬送部20と、送出手段30と、重量計量手段40などを備えて形成されている。貯留タンク10は繊維入り流動物を貯留するためのものである。搬送部20は貯留タンク1に貯留されている繊維入り流動物を混合工程へと搬送するための経路であって、例えば、配管により形成することができる。送出手段30は貯留タンク10から繊維入り流動物が供給され、搬送部20を通じてこの繊維入り流動物を混合工程へと搬送する作用をするものである。このような送出手段30としてはポンプを用いることができ、ポンプとしては定容積型ポンプを用いてもよいが、好ましくは、定容積型ポンプよりも構造が簡素で高価な材質を使用していない安価なポンプを用いるようにする。例えば、渦巻き、斜流、軸流などの遠心式ポンプ、ギヤー、スクリュー、ベーン、ルーツなどの容積回転型ポンプ、渦流、ジェット、気泡、チューブなどの各種ポンプを使用することができる。これにより、ポンプの導入コストや計量搬送装置Aのメンテナンスコストを抑えることができ、計量搬送装置Aの低コスト化が図りやすく、また、この計量搬送装置Aを用いたポリマー複合セメント板の製造コストも低く抑えやすくなるものである。上記の貯留タンク10と送出手段30とは接続部11により接続されている。接続部11には貯留タンク10から送出手段30へと繊維入り流動物を送るための送り込み手段、例えば、スクリューなどを設けることができる。また、送出手段30には上記搬送部20の一端が接続されている。
【0016】
重量計量手段40は、上記の貯留タンク10と搬送部20と送出手段30及び貯留タンク10と搬送部20と送出手段30に残留する繊維入り流動物との合計重量を計量するためのものである。このような重量計量手段40としては基台41と力検出器42とを備えて形成することができる。基台41には上記の貯留タンク10と搬送部20と送出手段30が載設されている。力検出器42は基台41を下から支持するように設けられている。力検出器42としては、力(重量)を電気信号に変換して出力するセンサーであれば使用可能であり、例えば、ひずみゲージ式のロードセルを用いることができる。基台41に載設された貯留タンク10と搬送部20と送出手段30は力検出器42による重量計量に影響が出ないように、周囲の設備(例えば、後述の供給タンク12や混合設備13)と接触させず、縁切りされている。
【0017】
そして、上記の計量搬送装置Aを用いて繊維入り流動物を計量及び搬送するにあたっては、次のようにして行う。まず、供給タンク12から貯留タンク10に繊維入り流動物を供給する。繊維入り流動物は繊維と水などの液体とを含む液状物である。繊維入り流動物は供給タンク12で繊維及び液体などの成分を混合して調製しても良いし、調製済みの繊維入り流動物を供給タンク12を貯留しておいても良い。繊維入り流動物は供給タンク12の下面に設けた排出部15から落下により貯留タンク10に供給するものであり、供給タンク12と貯留タンク10とが接触していなくても容易に繊維入り流動物を供給することができる。
【0018】
次に、貯留タンク10に供給された繊維入り流動物を送出手段30に供給する。この場合、接続部11に設けた送り込み手段で繊維入り流動物を送出手段30に送り込むことができる。次に、送出手段30に供給された繊維入り流動物を送出手段30の作動により搬送部20に送出し、搬送部20を通じて繊維入り流動物を次工程の混合工程へと搬送する。搬送部20の他端(送出手段30と接続された端部と反対側の端部)の排出口20aは混合工程で使用する混合設備13の上方に達している。そして、繊維入り流動物は搬送部20の排出口20aから落下により混合設備13に供給するものであり、搬送部20と混合設備13とが接触していなくても容易に繊維入り流動物を供給することができる。
【0019】
次に、混合工程では、混合設備13に供給された繊維入り流動物と他の材料、例えば、セメントなどの粉体材料とを混合設備13で混合することによって、成形材料等を調製することができる。
【0020】
上記のようにして繊維入り流動物を搬送するにあたって、送出手段30による繊維入り流動物の単位時間当たりの送出量を一定にすることで、所定量の繊維入り流動物を計量搬送装置Aから次工程の混合設備13へと搬送することができる。従って、貯留タンク10と搬送部20と送出手段30及びこれらに残留する繊維入り流動物との合計重量は、比例的に変化(減少)し、この変化量が重量計量手段40の力検出器42で計量される。このようにして計量搬送装置Aは所定量の繊維入り流動物を計量しながら搬送することができる。そして、計量搬送装置Aは搬送部20に流量計を設けることなく、繊維入り流動物の次工程への供給量を計量することができるものである。
【0021】
また、重量計量手段40により計量された上記合計重量の変化量をコンピュータなどの制御手段に入力し、この入力された上記合計重量の変化量に基づいて、送出手段30による繊維入り流動物の次工程への供給量(搬送量)を制御して一定にするように、送出手段30を制御手段でフィードバック制御することができる。送出手段30がポンプの場合はポンプ回転数を制御して供給量を一定にすることができる。そして、このようなフィードバック制御を行うと、繊維入り流動物の供給量の精度が高めることができる。
【0022】
尚、貯留タンク10の繊維入り流動物の貯留量が少なくなると、供給タンク12から貯留タンク10に繊維入り流動物を補充する。このとき送出手段30がポンプの場合、補充中のポンプ回転数は補充直前のポンプ回転数と同じように一定にする。また、混合設備13に供給される他の材料(例えば、粉体材料)も常時その供給量を計量し、例えば、他の材料の供給量が正常な制御範囲を超えた場合には、繊維入り流動物の供給量も追随して増減させるというように、送出手段30を制御することもできる。
【0023】
以下に、上記計量搬送装置Aを用いたポリマー複合セメント板の製造方法について説明する。
【0024】
ポリマー複合セメント板の製造するための成形材料は、セメント、骨材、乳化剤、補強繊維、スチレンモノマー、水及び必要に応じて添加剤を用いて調製することができる。
【0025】
セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント、アルミナセメント、ハイアルミナセメント、スラグセメント、早強セメント、シリカヒューム等を用いることができる。
【0026】
骨材としては、フライアッシュバルーンやパーライト等の無機系軽量骨材等を用いることができる。また、無機系軽量骨材よりもポリマー複合セメント板の軽量化の効果の大きい有機系軽量骨材(例えば、マイクロバルーン)を用いることもできる。骨材の粒径は、無機系軽量骨材の場合は10〜500μm、有機系軽量骨材の場合は20〜100μmとすることができるが、これに限定されるものではない。
【0027】
乳化剤としては、例えば、ヤシ油系乳化剤、オレイン酸系乳化剤、ソルビタンセスキオレート、グリセロールモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ジエチレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ジグリセロールモノオレート等の非イオン性界面活性剤、各種アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を用いることができる。
【0028】
補強繊維としては、例えば、ポリプロピレン繊維(PP繊維)、アクリル繊維、ビニロン繊維等を用いることができる。補強繊維としては、ポリプロピレン繊維などの疎水性を有するものを用いることが好ましく、これにより、逆乳化液の逆乳化状態の破壊や阻害が発生しにくくなるものである。補強繊維は繊維長1〜2mm、繊維径10〜30μmとすることができるが、これに限定されるものではない。尚、補強繊維としては、繊維状の任意の形状のもの、粉体との混合でダマを生じない物、耐スチレン性を有する物などを用いることができる。
【0029】
添加剤としては、重合開始剤(t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)、架橋剤(トリメチロールプロパントリメタクリレート)、フライアッシュ、シリカヒューム、製品粉砕粉等を用いることができる。
【0030】
そして、成形材料を調製するにあたっては、次のようにして行う。まず、セメントと骨材とを略均一に混合して粉体材料を調製する。また、水とスチレンモノマーと乳化剤と添加剤と補強繊維とを略均一に混合して逆乳化液(逆エマルジョン液又はW/Oエマルジョン液)を調製する。この後、上記の逆乳化液を繊維入り流動物として供給タンク20に供給し、上記の工程にて計量搬送装置Aにより逆乳化液が混合設備13に供給される。また、粉体材料も配管等の投入経路14を通じて定量的に混合設備13に供給される。そして、混合設備13にて粉体材料と逆乳化液とを略均一に混合・混練することによって、成形材料を調製することができる。ここで、成形材料の全量に対する各成分の配合割合は、例えば、セメントが48〜52質量%、骨材が19〜23質量%、乳化剤が0.9〜1.3質量%、補強繊維が1.2〜1.6質量%、スチレンモノマーが3.2〜3.6質量%、水が21〜25質量%、添加剤が0.06〜0.10質量%の範囲で適宜調整可能である。また、逆乳化液の粘度は3000〜15000cpとすることができるが、これに限定されるものではない。
【0031】
上記のようにして調製された成形材料は混合設備13から次工程の成形工程に送られる。尚、混合設備13では成形材料が連続的に調製されながら次工程に連続して送られる。成形工程では、成形材料が押出成形機等で成形される。この後、成形された成形材料が蒸気養生等で養生硬化させる。このようにしてポリマー複合セメント板を製造することができる。成形条件や養生硬化条件は適宜設定可能である。
【0032】
そして、上記の計量搬送装置Aでは、逆乳化液(繊維入り流動物)の混合設備13への供給量の精度が向上するため、逆乳化液と粉体材料との配合比の精度が向上し、ポリマー複合セメント板の製品品質の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0033】
A 計量搬送装置
10 貯留タンク
20 搬送部
30 送出手段
40 重量計量手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維入り流動物を貯留するための貯留タンクと、前記繊維入り流動物を搬送するための搬送部と、前記繊維入り流動物が前記貯留タンクから供給され前記搬送部へと搬送するための送出手段と、前記貯留タンクと前記搬送部と前記送出手段及びこれらに残留する前記繊維入り流動物の合計重量を計量するための重量計量手段とを備えて成ることを特徴とする繊維入り流動物の計量搬送装置。
【請求項2】
前記送出手段が前記重量計量手段による計量結果に基づいてフィードバック制御可能であることを特徴とする請求項1に記載の繊維入り流動物の計量搬送装置。
【請求項3】
前記繊維入り流動物として、水とスチレンモノマーと乳化剤及び補強繊維を混合して逆乳化液を調製し、セメントと骨材とを混合して粉体材料を調製し、前記計量搬送装置の前記貯留タンクに前記逆乳化液を貯留し、この逆乳化液を前記送出手段に供給すると共に前記送出手段により前記逆乳化液を前記搬送部を通じて前記粉体材料との混合工程に供給し、この混合工程により前記逆乳化液と前記粉体材料とを混合して成形材料を調製するものであって、前記重量計量手段により前記合計重量の変化を計量することにより、前記混合工程に所定量の前記逆乳化液が供給されるように前記送出手段を制御することを特徴とするポリマー複合セメント板の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−173360(P2011−173360A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40008(P2010−40008)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(503367376)ケイミュー株式会社 (467)
【Fターム(参考)】