説明

繊維強化樹脂ペレット

【課題】本発明は、機械的特性、流動性等に優れ、特に曲げ弾性率、生産性に優れた繊維強化樹脂ペレットを提供することをその課題とするものである。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)、重量平均繊維長が0.1〜0.5mmの短繊維状充填材(B1)および繊維長が3〜30mmの長繊維状充填材(B2)を配合してなる繊維強化樹脂組成物からなる繊維強化樹脂ペレットであって、長繊維状充填材(B2)の全てがペレットと同じ長さで配列していることを特徴とする繊維強化樹脂ペレット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状充填材を高充填しているにもかかわらず機械的特性、流動性等に優れ、特に曲げ弾性率、生産性に優れた繊維強化樹脂ペレットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の機械特性を向上させるための手段として、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維状充填材を配合することは一般的に知られている。一般的な配合手法としては、熱可塑性樹脂と繊維のチョップドストランド(短繊維)を押出機中で溶融混練することにより繊維強化樹脂組成物が得られる手法が用いられる。
【0003】
しかし、近年プラスチックの高性能化に対する要求が高度化し、金属同等の剛性が求められるようになってきている。金属同等の剛性を実現するためには繊維状充填材を高充填し繊維長を長く保つ必要があるが、一般的な押出機中で溶融混練する手法では溶融混練時の剪断により繊維が折損すること、多量の繊維状充填材起因の剪断発熱によって樹脂を劣化させることなど多くの問題があり、熱可塑性樹脂と繊維状充填材を押出機で溶融混練する手法では高性能化には限界があった。
【0004】
これに対し、繊維の繊維長を溶融混練前の原料で微細ガラス繊維とチョップドストランドガラス繊維の併用でコンロールし高性能化する手法が提案されている。(特許文献1参照)しかしながら、微細な繊維を用いる手法であり、流動性や表面外観等には効果は出るが機械的特性の高性能化にはならない。
【0005】
また、繊維の折損を起こすことなく長繊維で強化された熱可塑性樹脂組成物を製造する方法として溶融樹脂中に浸漬した繊維束を機械的に含浸させダイより引き抜くプルトリュージョン法や繊維束を電線被覆用のコーティングダイの中に通し熱可塑性樹脂を押出被覆させ電線状のストランドを得る電線被覆法等が提案されている。(特許文献2、3参照)しかしながら、両手法共に連続長繊維束をダイより引き抜きながら熱可塑性樹脂で被覆する手法であるため、繊維を長くペレット中に保つことは可能であるが、連続長繊維束が熱可塑性樹脂被覆からはみ出し易く、被覆できる連続長繊維束量に限界があり、高充填化できない等、本手法でも高性能化に限界があった。
【0006】
以上の通り、繊維強化樹脂ペレットにおいて、原料面や製造工程で様々な工夫は為されているが、金属同等の剛性が得られ、生産性に優れ、かつ高い機械的特性が得られるようなものは存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−12858号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平4−153007号公報(請求項1)
【特許文献3】特開2004−14990号公報(請求項1および5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題を解決し、繊維状充填材を高充填化でき、優れた機械的特性、流動性、外観、生産性を改善した繊維強化樹脂ペレットを提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果得られたものである。
(1)熱可塑性樹脂(A)、重量平均繊維長が0.1〜0.5mmの短繊維状充填材(B1)および繊維長が3〜30mmの長繊維状充填材(B2)を配合してなる繊維強化樹脂組成物からなる繊維強化樹脂ペレットであって、長繊維状充填材(B2)の全てがペレットと同じ長さで配列していることを特徴とする繊維強化樹脂ペレット。
(2)繊維強化樹脂組成物を100重量部として、熱可塑性樹脂(A)20〜80重量部、短繊維状充填材(B1)5〜40重量部および長繊維状充填材(B2)15〜40重量部を配合してなる繊維強化樹脂組成物からなることを特徴とする(1)に記載の繊維強化樹脂ペレット。
(3)長繊維状充填材(B2)の配合量が、短繊維状充填材(B1)および長繊維状充填材(B2)の合計量を100重量%として、長繊維状充填材(B2)の配合量が20〜80重量%であり、熱可塑性樹脂(A)および短繊維状充填材(B1)の合計量を100重量%として、短繊維状充填材(B1)配合量が60重量%以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の繊維強化樹脂ペレット。
(4)短繊維状充填材(B1)および/または長繊維状充填材(B2)が炭素繊維であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維強化樹脂ペレット。
(5)長繊維状充填材(B2)が繊維強化樹脂ペレット断面の中心部に配置され、熱可塑性樹脂(A)および短繊維状充填材(B1)を配合した短繊維強化樹脂組成物がその周囲の外層部に配置されていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の繊維強化樹脂ペレット。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の繊維強化樹脂ペレットを成形してなる成形品。
(7)流動方向の曲げ弾性率(M1)が20GPa以上であることを特徴とする(6)に記載の成形品。
(8)流動方向の曲げ弾性率(M1)と流動に垂直方向の曲げ弾性率(M2)の比(M2/M1)が0.8〜1.2の範囲であることを特徴とする(6)または(7)に記載の成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、長繊維状充填材を繊維強化樹脂ペレット断面の中心部に配置し、熱可塑性樹脂および短繊維状充填材を配合した組成物がその周囲の外層部に配置された多層構造することで、繊維状充填材を高充填化でき、機械的特性の向上、流動性、外観、生産性のバランスが優れた繊維強化樹脂ペレットを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の繊維強化樹脂ペレットについて具体的に説明する。
【0012】
本発明の繊維強化樹脂ペレットに使用する熱可塑性樹脂(A)とは、熱可塑性を示す樹脂であれば特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、フッ素樹脂、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、塩化ビニル、オレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリアクリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリーレンサルファイド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、エチルセルロース等のセルロース誘導体、液晶性樹脂等、およびこれらの変性材あるいは1種または2種以上のブレンド物等が挙げられる。
【0013】
スチレン系樹脂としては、PS(ポリスチレン)、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合体)、AES(アクリロニトリル/エチレン・プロピレン・非共役ジエンゴム/スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)、MBS(メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体)などが挙げられ、特にABSが好ましい。
【0014】
オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、メタクリル酸/メタクリル酸メチル/グルタル酸無水物共重合体などが挙げられ、流動性、機械強度の観点から特にポリプロピレンが好ましい。
【0015】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性スチレンブタジエンエラストマー、熱可塑性オレフィンエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマーなどが挙げられる。
【0016】
ポリアミドとしては、ポリマーの繰り返し構造中にアミド結合を有するものであれば、特に限定されるものではない。ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではないが、ラクタム類の開環重合、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、アミノカルボン酸の重縮合等の方法が挙げられる。ジアミンとしては、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、及び芳香族ジアミンが挙げられる。ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等が挙げられる。実施の形態において、ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及びダイマー酸等が挙げられる。ラクタム類としては、例えば、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、及びω−ラウロラクタム等が挙げられる。アミノカルボン酸としては、例えば、ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、及び13−アミノトリデカン酸等が挙げられる。具体的な例としては、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン11,ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612,ナイロン6/66コポリマー、ナイロン6/612、ナイロンMXD(m−キシリレンジアミン)6、ナイロン9Tなどが挙げられる。また、ナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/M5Tコポリマー、ナイロン6T/12コポリマー、ナイロン66/6T/6Iコポリマーおよびナイロン6T/6コポリマーなどのヘキサメチレンテレフタルアミド単位を有する共重合体も好ましい。さらにこれらのポリアミド樹脂の複数を、耐衝撃性、成形加工性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限がないが、サンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度として、1.5〜7.0の範囲のものが好ましく、特に2.0〜6.0の範囲のナイロンが好ましい。ポリアミド樹脂には、長期耐熱性を向上させる添加物として、銅化合物が好ましく用いられる。なかでも1価の銅化合物とりわけ1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第1銅、ヨウ化第1銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。銅化合物の添加量は、ナイロン100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましく、さらに0.015〜1重量部の範囲であることが好ましい。添加量が多すぎると溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色により製品の価値を減ずることになる。銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、ヨウ化カリウムおよびヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
【0017】
ポリエステルとしては、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体が好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂が特に好ましく、ポリブチレンテレフタレートが最も好ましい。これらの重合体においては、全ジカルボン酸に対するテレフタル酸ユニットの割合が30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましい。 また、ポリエステルはヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体およびラクトンから選択された一種以上を含有していてもよい。ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などが挙げられる。また、ラクトンとしてはカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどが挙げられる。これらを構造単位とする重合体または共重合体としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸/乳酸、ポリヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ吉草酸などの脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。ポリエステルの融点は、特に限定されないが、耐熱性の点で、120℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましく、220℃以上であることが特に好ましい。上限は、特に限定されないが、300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましい。なお、上記ポリエステルの融点は、示差走査熱量計(DSC)により昇温速度20℃/分で測定した値である。ポリエステルのカルボキシル末端基量は、特に限定されないが、流動性、耐加水分解性および耐熱性の点で、50eq/t以下であることが好ましく、30eq/t以下であることがより好ましく、20eq/t以下であることがさらに好ましく、10eq/t以下であることが特に好ましい。下限は0eq/tである。なおポリエステル樹脂のカルボキシル末端基量は、o−クレゾール/クロロホルム溶媒に溶解させた後、エタノール性水酸化カリウムで滴定し測定した値である。ポリエステルの粘度は、溶融混練が可能であれば特に限定されないが、成形性の点で、o−クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度が0.36〜1.60dl/gの範囲であることが好ましく、0.50〜1.25dl/gの範囲であることがより好ましい。ポリエステル樹脂の分子量は、特に限定されないが、耐熱性の点で、重量平均分子量(Mw)5万〜50万の範囲であることが好ましく、10万〜30万の範囲であることがより好ましく、15万〜25万の範囲であることがさらに好ましい。なお、本発明において、上記ポリエステルの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。上記ポリエステルの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の重縮合法や開環重合法などにより製造することができる。バッチ重合および連続重合のいずれでもよく、また、エステル交換反応および直接重合による反応のいずれでも適用することができる。
【0018】
ポリカーボネートとしては芳香族ホモポリカーボネートと芳香族コポリカーボネートより選ぶことができる。製造方法としては、2官能フェノール系化合物に苛性アルカリ及び溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法、あるいは二官能フェノール系化合物と炭酸ジエチルとを触媒の存在下でエステル交換させるエステル交換法を挙げることができる。該芳香族ポリカーボネートは粘度平均分子量が1万〜10万の範囲が好適である。ここで、上記2官能フェノール系化合物は、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。
【0019】
ポリアリーレンサルファイドとしては、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられ、中でもポリフェニレンスルフィドが特に好ましく使用される。ポリアリーレンサルファイドは、通常公知の方法、つまり特公昭45−3368号公報に記載される、比較的分子量の小さな重合体を得る方法あるいは特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造することができる。前記のようにして得られたポリアリーレンサルファイドを、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化などの種々の処理を施した上で使用することも、もちろん可能である。 ポリアリーレンサルファイドを加熱により架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。この場合の加熱処理温度としては、好ましくは150〜280℃、より好ましくは200〜270℃の範囲が選択して使用されるものであり、処理時間としては、好ましくは0.5〜100時間、より好ましくは2〜50時間の範囲が選択されるが、この両者をコントロールすることによって、目標とする粘度レベルを得ることができる。かかる加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかも、より均一に処理する場合は回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。ポリアリーレンサルファイドを窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧(好ましくは7,000Nm−2以下)下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間の条件で加熱処理する方法を例示することができる。かかる加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。ポリアリーレンサルファイドを有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては、たとえば、洗浄に用いる有機溶媒としては、ポリアリーレンサルファイドを分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく使用することができる。例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが使用される。これらの有機溶媒のなかでも、特にN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどが好ましく使用される。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にポリアリーレンサルファイド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でポリアリーレンサルファイドを洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分な効果が得られる。なお、有機溶媒洗浄を施されたポリアリーレンサルファイド樹脂は、残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。ポリアリーレンサルファイドを熱水で処理する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、熱水洗浄によるポリアリーレンサルファイド樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のポリアリーレンサルファイドを投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。ポリアリーレンサルファイド樹脂と水との割合は、水の多い方がよく、好ましくは水1リットルに対し、ポリアリーレンサルファイド200g以下の浴比で使用される。ポリアリーレンサルファイドを酸処理する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、酸または酸の水溶液にポリアリーレンサルファイド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸は、ポリアリーレンサルファイドを分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、および硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などが用いられる。これらの酸のなかでも、特に酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたポリアリーレンサルファイドは、残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また、洗浄に用いる水は、酸処理によるポリアリーレンサルファイドの好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。ポリアリーレンサルファイドの溶融粘度は、310℃、剪断速度1000/秒の条件下で80Pa・s以下であることが好ましく、50Pa・s以下がより好ましく、20Pa・s以下であることが更に好ましい。下限については特に制限はないが、5Pa・s以上であることが好ましい。また溶融粘度の異なる2種以上のポリアリーレンサルファイドを併用して用いても良い。ポリアリーレンサルファイドの溶融粘度が80Pa・sを越えると、溶融流動性の点で不利となる傾向があるばかりでなく、レーザー焦点の環境安定性が劣る傾向にある。溶融粘度が高いと何故レーザー焦点の環境安定性が低下するかは定かではないが、恐らく成形時の繊維状充填材の配向を促すため、成形体の温度変化による変形の異方性が増すためと推定している。なお、溶融粘度は、キャピログラフ(東洋精機(株)社製)装置を用い、ダイス長10mm、ダイス孔直径0.5〜1.0mmの条件により測定することができる。
【0020】
これらの熱可塑性樹脂のうち、ポリアミド、スチレン系樹脂、ポリオレフィン、ポリカーボネート、およびポリアリーレンサルファイドなどが好ましい。特にナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン9T、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィドなどが好ましく使用できる。
【0021】
本発明で用いられる重量平均繊維長が0.1〜0.5mmの範囲である短繊維状充填材(B1)は、特に限定されるものでないが、繊維状の形状を有するいずれの充填材も使用することができる。具体的には、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、ワラステナイト、アルミナシリケートなどの繊維状、ウィスカー状充填材、金属(ニッケル、銅、コバルト、銀、アルミニウム、鉄及びこれらの合金等)で被覆された非金属繊維(ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、炭素繊維等)等が挙げられる。前記短繊維状充填材中、PAN系やピッチ系の炭素繊維が好ましい例として挙げられ、特に好ましい例はPAN系炭素繊維である。短繊維状充填材(B1)の好ましい重量平均繊維長としては0.1〜0.5mmの範囲であり、さらに好ましくは0.125〜0.45mm、特に好ましくは0.15〜0.40mmである。0.1mm以下の場合は十分な曲げ弾性率改良効果が得られず、0.40mm以上では表面外観が悪化し好ましくない。ここで、重量平均繊維長は得られたペレットまたは成形品をポリアミド樹脂が溶ける溶剤にて溶解させた後、濾過・洗浄を行い、その残渣を光学顕微鏡にて観察し、1000本の長さを測定した結果を重量平均繊維長に計算して得られたものである。短繊維状充填材(B1)の表面には、樹脂の濡れ性の改善、取り扱い性の向上を目的として、カップリング剤や集束剤等を付着させたものを用いてもよい。カップリング剤としては、例えば、アミノ系、エポキシ系、クロル系、メルカプト系、及びカチオン系のシランカップリング剤等が挙げられ、アミノ系シラン系カップリング剤が好適に使用可能である。集束剤としては、例えば、無水マレイン酸系化合物、ウレタン系化合物、アクリル系化合物、エポキシ系化合物、フェノール系化合物及びこれら化合物の誘導体から選ばれる1種以上を含有する集束剤が挙げられ、ウレタン系化合物を含有する集束剤が好適に使用可能である。短繊維状充填材(B1)中の集束剤の含有量は、0.1〜10.0重量%であることが好ましく、0.3〜8.0重量%がさらに好ましく、0.5〜6.0重量%が特に好ましい。また、溶融混練時に使用する短繊維状充填材(B1)形態としては、溶融混練装置に添加できる形態で有れば制限はなく、予め裁断されているチョップドストランドや破砕繊維、連続長繊維等が挙げられ、生産性の観点からチョップドストランドが好ましく利用できる。
【0022】
本発明で用いられる長繊維状充填材(B2)は、特に限定されるものでないが、繊維状の形状を有するいずれの充填材も使用することができる。具体的には、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、ワラステナイト、アルミナシリケートなどの繊維状、ウィスカー状充填材、金属(ニッケル、銅、コバルト、銀、アルミニウム、鉄及びこれらの合金等)で被覆された非金属繊維(ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、炭素繊維等)等が挙げられる。前記短繊維状充填材中、PAN系やピッチ系の炭素繊維が好ましい例として挙げられ、特に好ましい例はPAN系炭素繊維である。短繊維状充填材(B1)の表面には、樹脂の濡れ性の改善、取り扱い性の向上を目的として、カップリング剤や集束剤等を付着させたものを用いてもよい。カップリング剤としては、例えば、アミノ系、エポキシ系、クロル系、メルカプト系、及びカチオン系のシランカップリング剤等が挙げられ、アミノ系シラン系カップリング剤が好適に使用可能である。集束剤としては、例えば、無水マレイン酸系化合物、ウレタン系化合物、アクリル系化合物、エポキシ系化合物、フェノール系化合物及びこれら化合物の誘導体から選ばれる1種以上を含有する集束剤が挙げられ、ウレタン系化合物、エポキシ化合物、フェノール系化合物を含有する集束剤が好適に使用可能である。長繊維状充填材(B2)中の集束剤の含有量は、0.05〜2.0重量%であることが好ましく、0.08〜1.5重量%がさらに好ましく、0.1〜1.0重量%が特に好ましい。また、被覆配合時に使用する長繊維状充填材(B1)形態としては、プルトルージョン法や電線被覆法等で引き抜き成形が可能である形態で有れば制限はないが、連続長繊維が好ましく利用できる。
【0023】
本発明の繊維強化樹脂ペレットの製造方法は、短繊維状充填材(B1)は長繊維状充填剤(B2)と配合する前に、予め熱可塑性樹脂(A)と配合を行い、連続した長繊維状充填剤(B2)を被覆配合することで、繊維状充填材を高充填化でき、機械的特性の向上、流動性、外観、生産性のバランスが優れた繊維強化樹脂ペレットが得られることが重要である。すなわち、予め熱可塑性樹脂(A)と短繊維状充填材(B1)を溶融混練し、短繊維状充填材(B1)の重量平均繊維長が0.1〜0.5mmの範囲にコントロールした組成物を得た後、プルトルージョン法や電線被覆法等で引き抜き成形を行い被覆配合しペレット化したものである。
【0024】
この時、長繊維状充填材(B2)の全てがペレットと同じ長さで配列した長繊維であり、かつその長さが3〜30mmであることが重要である。短繊維状充填材(B1)単独では、外観は優れるものの機械的特性の向上には繋がらず好ましくない。また長繊維状充填材(B2)単独では、充填材が高充填できず大幅に生産性を低下させるため好ましくない。また、本発明の繊維強化樹脂ペレットの形状は、特に限定されるものではないが、直径1〜5mm、ペレット長3〜30mmの円柱形状であることが好ましい。直径がこれより小さすぎると製造が困難となり、大きすぎると射出成形時に成形機へのカミコミが難しく供給が困難になる場合がある。ペレット長は実質的に炭素繊維長であるため、短すぎると本発明の特性が十分に得られない場合があり、長すぎると射出成形機への供給が困難になるため好ましくない。
【0025】
前記、繊維強化樹脂ペレットの製造方法では、繊維状充填材(B1)を予め熱可塑性樹脂(A)と配合する方法としては、溶融混練する方法が好ましく、熱可塑性樹脂(A)と繊維状充填材(B1)との配合物製造時の溶融混練装置の温度設定としては使用する熱可塑性樹脂の融点(Tm)+30℃以上またはガラス転移点(Tg)+120℃以上で行うことが好ましい。熱可塑性樹脂(A)と繊維状充填材(B1)を供給する溶融混練装置原料供給位置は、特に制限はないが熱可塑性樹脂(A)は主原料供給口が好ましく、繊維状充填材(B1)に関しては、特に制限はないが主原料供給口と吐出口の中間、具体的にはスクリューエレメントデザインで主原料供給口に最も近いシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンと吐出口に最も近いシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンの中間位置であれば重量平均繊維長のコントロールが容易となり好ましい。前記を製造する溶融混練装置としては特に制限はなく、熱可塑性樹脂(A)と繊維状充填材(B1)とを、適度な剪断場の下で加熱溶融混合することが可能な樹脂加工用に使用される公知の押出機、連続式ニーダー等の溶融混練装置を使用することができる。例えば、スクリューが1本の単軸押出機及びニーダー、スクリューが2本の二軸押出機及びニーダー、スクリューが3本以上の多軸押出機及びニーダー、さらに、押出機及びニーダーが1台の押出機、押出機及びニーダーが2台繋がったタンデム押出機、溶融混練せず原料供給のみ可能なサイドフィーダーが設置された押出機及びニーダー等特に制限はない。スクリューエレメントデザインにおいては、フルフライトスクリュー等を有する溶融または非溶融搬送ゾーン、シールリング等を有するシールゾーン、ユニメルト、ニーディング等を有するミキシングゾーン等の組み合わせにも特に制限はなく、例えばシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する連続溶融混練装置が好ましく、シールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する2軸スクリュー部を有する連続溶融混練装置がさらに好ましく、シールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する2軸押出機が最も好ましい。
【0026】
長繊維状充填材(B2)を予め溶融混練した熱可塑性樹脂(A)と繊維状充填材(B1)の組成物で被覆配合する方法としては、プルトルージョン法や電線被覆法等で引き抜き成形により被覆配合する方法が好ましく、熱可塑性樹脂(A)と繊維状充填材(B1)との配合物で使用する熱可塑性樹脂の融点(Tm)+30℃以上またはガラス転移点(Tg)+120℃以上で行うことが好ましい。前記を製造する手段としてはプルトルージョン法や電線被覆法が挙げられるが特に制限はなく、長繊維状充填材(B2)を熱可塑性樹脂(A)と繊維状充填材(B1)の組成物で被覆配合できる公知の引き抜き成形機を使用することが出きる。例えば、被覆用溶融混練装置としては、スクリューが1本の単軸押出機及びニーダー、スクリューが2本の二軸押出機及びニーダー、スクリューが3本以上の多軸押出機及びニーダー、さらに、押出機及びニーダーが1台の押出機、押出機及びニーダーが2台繋がったタンデム押出機、溶融混練せず原料供給のみ可能なサイドフィーダーが設置された押出機及びニーダー等特に制限はない。溶融混練装置先端に樹脂が充満し樹脂含浸と引き抜き成形が可能な樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バスを有した被覆装置、溶融混練装置先端に実質上樹脂含浸を行わない電線被覆用のコーティグダイを有した装置が好ましく、被覆用溶融混練装置先端に実質上樹脂含浸を行わない電線被覆用のコーティグダイを有した装置がさらに好ましく利用できる。これら装置で引き抜いた樹脂被覆長繊維ストランドを冷却しストランドカッターで所定の長さにカットすることで、全てがペレットと同じ長さで配列した長繊維であり、かつその長さが3〜30mmの長繊維強化樹脂ペレットが得られる。とりわけ、前記被覆配合で使用する被覆用溶融混練装置を用い、繊維状充填材(B1)を予め熱可塑性樹脂(A)と溶融混練する製造方法は、生産性が向上するため好ましい。
【0027】
本発明における熱可塑性樹脂(A)、短繊維状充填材(B1)および長繊維状充填材(B2)の配合量は、全組成物100重量部に対し、熱可塑性樹脂(A)30〜80重量部、短繊維状充填材(B1)5〜40重量部および長繊維状充填材(B2)15〜40重量部であり、好ましくは熱可塑性樹脂(A)40〜70重量部、短繊維状充填材(B1)10〜30重量部および長繊維状充填材(B2)18〜35重量部、さらに好ましくは熱可塑性樹脂(A)45〜65重量部、短繊維状充填材(B1)15〜25重量部および長繊維状充填材(B2)20〜30重量部である。熱可塑性樹脂の配合量が30重量部未満の場合は、成形性および表面外観が悪化し好ましくなく、80重量部以上では充分な曲げ弾性率改良効果が得られず好ましくない。
【0028】
前記製造方法によって得られた繊維強化樹脂ペレットは、長繊維状充填材(B2)を熱可塑性樹脂(A)と短繊維状充填材(B1)との組成物で被覆配合された形態であり、繊維強化樹脂ペレット断面の中心部に長繊維状充填材(B2)が配置され、熱可塑性樹脂(A)および短繊維状充填剤(B1)との組成物がその周囲の外層部に配置された多層構造であることが好ましい。長繊維状充填材(B2)はペレット断面中心部に配置されているが、配合量が40重量部以上では長繊維状充填材(B2)の束形状が異型になりやすく充分に被覆できずペレット外に繊維束がはみ出し生産性を悪化させるため好ましくなく、15重量部未満では十分な曲げ弾性率改良効果が得られず好ましくない。
【0029】
本発明の長繊維状充填材(B2)の配合量は、短繊維状充填材(B1)及び長繊維状充填材(B2)合計量の20〜80重量%であり、さらに好ましくは30〜70重量%、最も好ましくは35〜65重量%である。長繊維状充填材(B2)の配合量が、短繊維状充填材(B1)及び長繊維状充填材(B2)合計量の20重量%未満では、充分な曲げ弾性率改良効果が得られず好ましくなく、80重量%を越えると、成形性および表面外観が悪化し好ましくない。また、本発明の短繊維状充填材(B1)配合量は、熱可塑性樹脂(A)と短繊維状充填材(B1)の合計量の60重量%以下であり、さらに好ましくは50重量%以下、最も好ましくは40重量%以下である。短繊維状充填材(B1)配合量が、熱可塑性樹脂(A)と短繊維状充填材(B1)の合計量の60重量%を越えると、長繊維状充填材(B2)を被覆できず繊維束がはみ出し生産性を低下させるため好ましくない。
【0030】
本発明の繊維強化樹脂ペレットでは、短繊維状充填剤(B1)配合時に加えて、非繊維状充填材を併用することもできる。非繊維状充填材としては、特に限定されるものでなく、板状、粉末状、粒状などのいずれの充填材も使用することができる。具体的には、タルク、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイトなどの珪酸塩、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、セラミックビ−ズ、窒化ホウ素、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスフレーク、ガラス粉、ガラスバルーン、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材、およびモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母に代表される層状珪酸塩が挙げられる。層状珪酸塩は層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩であってもよく、有機オニウムイオンとしてはアンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられ、上記の非繊維状充填材は2種以上を併用して使用することもできる。またこれら非繊維状充填材はシラン系、チタネート系などのカップリング剤、その他表面処理剤で処理されていることが好ましく、エポキシシラン、アミノシラン系のカップリング剤で処理されている場合が優れた機械的特性を発現できるため特に好ましい。これら非繊維状充填材の中で好ましくはガラスフレーク、ガラスビーズが好ましく用いられる。本発明における非繊維状充填材の配合量は、全組成物100重量部に対し、5〜100重量部であり、好ましくは10〜80重量部、より好ましくは15〜60重量部である。配合量が5重量部未満の場合は、十分な機械的特性改良効果が得られず、100重量部を越えるときには成形性および表面外観が悪化し好ましくない。
【0031】
さらに本発明の繊維強化樹脂ペレットには本発明の効果を損なわない範囲において、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、ポリオレフィン系化合物、シリコーン系化合物、長鎖脂肪族エステル系化合物、長鎖脂肪族アミド系化合物、などの離型剤、防食剤、着色防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミニウムなどの滑剤、難燃剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
【0032】
かくして得られる本発明の繊維強化樹脂ペレットは、短繊維状充填材(B1)および長繊維状充填材(B2)それぞれの特徴である機械的特性、流動性、表面外観等に優れ、特に曲げ弾性率、生産性に優れた繊維強化樹脂ペレットが得られる。なかでも自動車部品、電気・電子部品、スポーツ用品部品等の射出成形品で厚み0.1〜2.0mmの薄肉部を有する成形品および寸法精度が要求される成形品などに有用である。
【0033】
本発明の繊維強化樹脂ペレットは、通常の射出成形、押出成形、プレス成形などの成形方法によって、優れた表面外観(光沢)および機械的性質を有する成形品などに加工することが可能である。
【0034】
さらに本発明の繊維強化樹脂ペレットから得られた成形品の流動方向の曲げ弾性率(M1)が20GPa以上であること好ましく、さらに好ましくは30GPa以上、特に好ましくは35GPa以上であり、20GPa以下では金属同等の剛性とは言えず好ましくない。
【0035】
また、本発明の繊維強化樹脂ペレットから得られた成形品の流動方向の曲げ弾性率(M1)と流動に垂直方向の曲げ弾性率(M2)の比(M2/M1)が0.6以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.7以上、特に好ましくは0.8以上であり、金属並の性能としては特性の等方性(流動方向の曲げ弾性率/流動に垂直方向の曲げ弾性率)も重要であるため0.6以下であれば異方性が強く好ましくない。
【0036】
本発明において、上記各種成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、スポーツ用品部品、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。具体的な用途としては、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンのハウジング、シャーシおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジング、シャーシおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジング、シャーシおよび内部部品、コピー機のハウジング、シャーシおよび内部部品、ファクシミリのハウジング、シャーシおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品およびハウジング、シャーシ部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。また、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジング、シャーシおよび内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、コンクリート型枠などの土木関連部材、釣竿部品、リールのハウジング及びシャーシ部品、ルアー部品、クーラーボックス部品、ゴルフクラブ部品、テニス、バドミントン、スカッシュ等のラケット部品、スキー板部品、スキーストック部品、自転車のフレーム、ペダル、フロントフォーク、ハンドルバー、クランク、シートピラー、車輪等の部品、ボート用オール、スポーツ用ヘルメット、フェンス構成部材、ゴルフティー、剣道用防具(面)および竹刀などのスポーツ用品部品、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、結束バンド、クリップ、ファン、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、育苗用ポット、植生杭、農ビの止め具などの農業部材、骨折補強材などの医療用品、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ICトレイ、文房具、排水溝フィルター、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用である。特に自動車用内装部品、自動車用外装部品、スポーツ用品部材および各種電気・電子部品のハウジング、シャーシおよび内部部品として有用である。
【0037】
本発明の繊維強化樹脂ペレットおよび成形品は、リサイクルすることが可能である。例えば、樹脂組成物およびそれからなる成形品を粉砕し、好ましくは粉末状とした後、必要に応じて添加剤を配合して使用することができるが、繊維の折損がおきている場合、得られる樹脂組成物は、本発明の成形品と同様の機械強度を発現することは困難である。
【実施例】
【0038】
本発明をさらに具体的に説明するために、以下、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中の部数およびwt%はそれぞれ重量部および重量%を示す。
【0039】
(A)熱可塑性樹脂
<A−1>ナイロン6樹脂“アミラン”CM1001(東レ株式会社製)を使用した。
【0040】
(B1)短繊維状充填材
<B1−1>炭素繊維“トレカ”カットファイバーTV14−006(東レ株式会社製)を使用した。
【0041】
(B2)長繊維状充填材
<B2−1>炭素繊維“トレカ”T700SC−12K−50C(東レ株式会社製)を使用した。
【0042】
[実施例1〜5、比較例1〜5]
表1記載の参考例(参考例5は除く)の組成で、熱可塑性樹脂(A)を表中に示す諸条件に設定した2軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)主ホッパーに供給後、短繊維状充填材(B1)はサイドフィーダーを用いて溶融樹脂中に供給し、ダイから吐出されたストランドを水中にて冷却、ストランドカッターにより長さ3.0mm長にカットしてペレット化を実施し、短繊維強化樹脂ペレットを得た。表1記載の参考例5の組成で、熱可塑性樹脂(A)および短繊維状充填材(B1)を表中に示す諸条件に設定した2軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)主ホッパーに供給し、ダイから吐出されたストランドを水中にて冷却、ストランドカッターにより長さ3.0mm長にカットしてペレット化を実施し、短繊維強化樹脂ペレットを得た。但し、参考例6に関しては剪断発熱により樹脂が分解してしまったこと、短繊維状充填材が多量であったため、ストランド引き取り性が悪く製造困難であった。
【0043】
さらに、表2記載実施例、比較例の組成で、長繊維状充填材(B2)を表中に示す諸条件に設定した直径40mmの短軸押出機の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に平行に引き揃えて通し、押出機からダイ中で溶融させた前記参考例組成を吐出させて、長繊維状充填材(B2)の周囲を被覆するように前記参考例組成を連続的に配置した後、ストランドを水中にて冷却し、ストランドカッターにより7mm長にカットし繊維強化樹脂ペレットを製造した。(この時の長繊維状充填材(B2)の繊維長は平行に引き揃えてカットしているため7mmとなる。)
【0044】
上記で得られた繊維強化樹脂ペレットを80℃で一昼夜真空乾燥し、表中の条件で射出成形機(住友重機械社製SG75H−MIV)を使用し、射出速度100mm/sec、射出圧を下限圧+1MPaでそれぞれの試験片を成形し、次の条件で物性を測定した。
【0045】
[繊維長]:参考例で得られた短繊維強化樹脂ペレットをギ酸にて溶かした後、濾過を行い、その残渣を光学顕微鏡にて20〜100倍の倍率で観察しながら、1000本の長さを測定し重量平均繊維長(mm)を求めた。
【0046】
[生産性]:実施例、比較例で得られた繊維強化樹脂ペレット10kgを、30Lのロッキングミキサー(愛知電機社製)に投入し、回転数35rpm、揺動角40°、揺動数17.8回/minの条件で30分間攪拌混合し、ペレットに割れ、毛羽等有るものを取り除いた後の良品率(wt%)を求めた。
【0047】
[耐衝撃性]:ISO 179に従い23℃でシャルピー衝撃強さ(ノッチ無し)を評価した。
【0048】
[曲げ強さ]:150mm×150mm×4mm厚みの試験片を流れ方向および流れに垂直方向それぞれに関して、10mm幅に切削加工しその試験片について、ISO 178に従い曲げ強度を評価した。
【0049】
[曲げ弾性率]:150mm×150mm×4mm厚みの試験片を流れ方向および流れに垂直方向それぞれに関して、10mm幅に切削加工しその試験片について、ISO 178に従い曲げ弾性率を評価した。
【0050】
[耐熱性]:ISO 75(荷重:1.80MPa)に従い耐熱性を評価した。
【0051】
[寸法安定性]:150mm×150mm×4mm厚みの試験片について、流れ方向、流れに垂直方向の各3点をノギスで計測し、その平均値から成形収縮率を求めた。
【0052】
[スパイラルフロー長]:幅10mm、2mmtの金型を用い、表中に示す温度条件、射出速度100mm/sec、射出圧力80MPaで成形した際の流動長を測定した。流動長は20ショットの平均の値とする。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
実施例1〜4、比較例1〜5より、本発明のとおり熱可塑性樹脂(A)、重量平均繊維長が0.1〜0.5mmの短繊維状充填材(B1)および繊維長が3〜30mmの長繊維状充填材(B2)を配合してなる繊維強化樹脂組成物からなる繊維強化樹脂ペレットであって、長繊維状充填材(B2)の全てがペレットと同じ長さで配列していることを特徴とする繊維強化樹脂ペレットは、繊維状充填材を高充填しているにも関わらず、生産性(良品率)が高く、曲げ弾性率が大幅に向上し、流動性に関しても優れる。具体的には比較例3,5において、長繊維充填材(B2)単独、短繊維充填材(B1)単独で繊維状充填材を高充填化した場合、生産性(良品率)が大幅に低下し製造することができない。比較例1において、短繊維充填材(B1)の重量平均繊維長を0.1mm以下にした場合には、僅かに曲げ弾性率が向上するが所望の特性を得ることができない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の繊維強化樹脂ペレットは、自動車用内装部品、自動車用外装部品、スポーツ用品部材および各種電気・電子部品のハウジング、シャーシおよび内部部品など種々の用途に用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)、重量平均繊維長が0.1〜0.5mmの短繊維状充填材(B1)および繊維長が3〜30mmの長繊維状充填材(B2)を配合してなる繊維強化樹脂組成物からなる繊維強化樹脂ペレットであって、長繊維状充填材(B2)の全てがペレットと同じ長さで配列していることを特徴とする繊維強化樹脂ペレット。
【請求項2】
繊維強化樹脂組成物を100重量部として、熱可塑性樹脂(A)20〜80重量部、短繊維状充填材(B1)5〜40重量部および長繊維状充填材(B2)15〜40重量部を配合してなる繊維強化樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂ペレット。
【請求項3】
長繊維状充填材(B2)の配合量が、短繊維状充填材(B1)および長繊維状充填材(B2)の合計量を100重量%として、長繊維状充填材(B2)の配合量が20〜80重量%であり、熱可塑性樹脂(A)および短繊維状充填材(B1)の合計量を100重量%として、短繊維状充填材(B1)配合量が60重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化樹脂ペレット。
【請求項4】
短繊維状充填材(B1)および/または長繊維状充填材(B2)が炭素繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化樹脂ペレット。
【請求項5】
長繊維状充填材(B2)が繊維強化樹脂ペレット断面の中心部に配置され、熱可塑性樹脂(A)および短繊維状充填材(B1)を配合した短繊維強化樹脂組成物がその周囲の外層部に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化樹脂ペレット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化樹脂ペレットを成形してなる成形品。
【請求項7】
流動方向の曲げ弾性率(M1)が20GPa以上であることを特徴とする請求項6に記載の成形品。
【請求項8】
流動方向の曲げ弾性率(M1)と流動に垂直方向の曲げ弾性率(M2)の比(M2/M1)が0.8〜1.2の範囲であることを特徴とする請求項6または7に記載の成形品。


【公開番号】特開2012−116917(P2012−116917A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266555(P2010−266555)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】