説明

繊維強化樹脂製の管状体の製造方法および該方法によって製造された管状体

【課題】繊維強化樹脂製管状体の軽量性を損なうことなくプリプレグの巻き剥がれを防止して強度と生産性を高める。
【解決手段】バイアスプリプレグ21、22とストレートプリプレグ23、25、27、28とフーププリプレグ24、26を芯材上にそれぞれ少なくとも1枚巻回する工程を含み、フーププリプレグ24、26のうち少なくとも1枚は、バイアスプリプレグ21、22またはストレートプリプレグ25、27からなる土台プリプレグに予め積層密着して積層体A1、A2を形成しておき、該積層体A1、A2を巻回することによって土台プリプレグ25、27と一体にフーププリプレグ24、26を巻回することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂製の管状体の製造方法および該方法によって製造された繊維強化樹脂製管状体に関し、特に、フーププリプレグを用いた管状体の積層不良の防止を図るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ゴルフクラブシャフトや釣竿などの管状体の材料は、軽量で、比強度、比剛性の高いカーボンプリプレグ等の繊維強化樹脂が主流となっている。
これら繊維強化樹脂製の管状体は、一般に繊維強化プリプレグを積層して形成されるが、繊維強化プリプレグは、その強化繊維の配列方向によって以下のような異なる特性を有する。
強化繊維の配列方向が管状体の軸線方向に対して傾斜して配されるバイアスプリプレグは、繊維が螺旋状に延在するため、主にねじり剛性、ねじり強度を高めることができる。
強化繊維の配列方向が管状体の軸線方向に対して略平行に配されるストレートプリプレグは、繊維が管状体軸線方向に延在するため、主に曲げ剛性、曲げ強度を高めることができる。
強化繊維の配列方向が管状体の軸線方向に対して略直角に配されるフーププリプレグは、繊維が管状体の周方向に延在するため、主につぶし剛性、つぶし強度を高めることができる。
【0003】
管状体の製造にあたっては、前記バイアスプリプレグ、ストレートプリプレグ、フーププリプレグを併用することによって、軽量性を維持しながら管状体に必要な剛性や強度を調整する技術が知られている。
例えば、特開平8−131588号(特許文献1)では、図5に示すように、バイアスプリプレグからなるバイアス層2を外側に、ストレートプリプレグからなるストレート層3を内側に配置し、該ストレート層3のさらに内側に、フーププリプレグからなるフープ層4を設けたゴルフクラブシャフト1が提案され、これにより、軽量性を損なうことなく、ゴルフクラブシャフト1のねじり剛性および曲げ剛性を高めることができるとされている。
【0004】
しかしながら、前記フーププリプレグは、周方向に延在する強化繊維の弾性によって巻回時に曲げが抑制されてしまうため、芯材に巻きつけにくいという特徴を有する。そのため、フープ層とその下層とを積層密着させることが難しく、端部の巻き剥がれ等が発生しやすい。
このような巻き剥がれが生じると、フープ層が浮き上がり、その外周層の巻回作業においてプリプレグが折れ曲がるほか、浮き上がり箇所にエアー溜りが発生するため、強度が低下し、管状体の特性にもバラツキが生じ、品質低下を招く点に問題がある。また、このような不良箇所の再密着作業が必要となるため、生産性が低下する点にも問題がある。
【0005】
前記問題への対策として、フープ層の外周側にストレート層を配置すると共に該ストレート層の巻回数(PLY数)を増やし、ラッピング効果によってフープ層の積層不良を防止する手法も知られている。しかしながら、ゴルフクラブシャフト等の管状体は軽量化への要請が強いため、ストレート層の余剰は排除する必要がある。しかも、軽量化による強度低下を防止するために、フープ層の多層化は今後必至と考えられるだけに、ストレート層の巻回数は多くてもフープ層と同一とすることが求められる。
【0006】
【特許文献1】特開平8−131588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、軽量性を損なうことなくフーププリプレグの巻き剥がれを防止し、品質および生産性を向上できる繊維強化樹脂製管状体の製造方法および該方法によって製造された管状体の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸してなるプリプレグの積層体からなる繊維強化樹脂製の管状体の製造方法において、
強化繊維の配列方向が管状体軸線に対して傾斜して配されるバイアスプリプレグと、強化繊維の配列方向が管状体軸線に対して平行に配されるストレートプリプレグと、強化繊維の配列方向が管状体軸線に対して直角に配されるフーププリプレグとを、芯材上に巻回する工程を含み、
前記フーププリプレグのうち少なくとも1枚は積層フーププリプレグ(以下、積層フープと称する)として前記バイアスプリプレグまたは前記ストレートプリプレグからなる土台プリプレグに予め積層密着して一体化した積層体を形成おき、該積層体を巻回することによって前記土台プリプレグと一体に前記積層フープが巻回されることを特徴とする繊維強化樹脂製の管状体の製造方法を提供している。
【0009】
前記本発明の管状体の製造方法によれば、芯材に巻きつけにくいフーププリプレグを、巻き付けやすいストレートプリプレグまたはバイアスプリプレグに予め積層密着して積層フープとして積層体として形成しておき、該積層体を芯材に巻回するため、フーププリプレグ単体で巻回する場合に起こりやすい巻き剥がれ等の積層不良を防止でき、土台プリプレグの巻回数を多くすることなく、管状体の軽量性を維持したまま品質および生産性を向上させることができる。
なお、ストレートプリプレグ又はバイアスプリプレグの両側に予めフーププリプレグを積層密着して一体化した積層体としてもよい。
【0010】
複数枚のフープフリプレグを用いる場合は、全てのフーププリプレグを前記積層フープとしておくことが好ましい。
また、ストレートプリプレグはバイアスプリプレグに比してより巻回しやすいため、前記積層体を構成する土台プリプレグにはストレートプリプレグを用いることが好ましい。
さらに、前記積層体を芯材に巻回するときは、土台プリプレグによるラッピング効果も考慮して、土台プリプレグが積層フープの外周側となるように巻回することが好ましい。
【0011】
なお、本発明におけるフーププリプレグは、繊維の配列方向と管状体軸線方向との交差角度が80〜100度のものを指す。
また、ストレートプリプレグは、繊維の配列方向と管状体軸線方向との交差角度が−10〜+10のものを指す。
また、バイアスプリプレグは繊維の配列方向と管状体軸線方向との交差角度が10度を越えて80度未満、−10度を越えて−80度未満のものを指す。
【0012】
前記土台プリプレグに積層密着する積層フープの管状体軸線方向の両端縁および巻回終端縁のうち、少なくとも1箇所は、前記土台プリプレグの周縁と一致させている、もしくは土台プリプレグの周縁よりも土台プリプレグの内側に位置させている。
これにより、フーププリプレグの巻き剥がれが特に生じやすい管状体軸線方向の端縁および/または巻回終端縁において、土台プリプレグによるアンカー効果を発現でき、巻回作業がより容易となるうえ、フーププリプレグの積層不良を一層確実に防止することができる。
【0013】
なお、積層フープは、管状体軸線方向の両端縁および巻回終端縁の3箇所すべてにおいて、土台プリプレグの周縁と一致または該周縁より土台プリプレグの内側に位置することが好ましいが、さらには、前記3箇所に加えて、積層フープの巻回初端縁でも土台プリプレグの周縁と一致または土台プリプレグの内側に位置することがより好ましい。これは、積層フープの周縁のうち巻回初端縁のみが土台プリプレグの外側に位置すると、巻回初端縁の剛性だけが小さくなり、応力が集中して折れたり曲がったりしやすくなることに因る。
【0014】
また、積層フープの周縁は、土台プリプレグの周縁と一致させるよりも、土台プリプレグの内側に位置させることが一層好ましい。土台プリプレグの周縁部によるアンカー効果を一層効果的に発現することができ、フーププリプレグの積層不良をより確実に防止することができる。
【0015】
積層フープの周縁と土台プリプレグの周縁とは、1mm以上、さらには3mm以上、さらには5mm以上、より好ましくは10mm以上離間させるのがよい。これは、積層フープの周縁と土台プリプレグの周縁を離間させることによって、土台プリプレグのアンカー効果を十分に発揮できるうえ、積層プリプレグ周縁部への応力集中を防ぎ、管状体の折損等を防止できることに因る。
一方、積層フープの周縁と土台プリプレグの周縁とを離間させすぎると、積層フープの長さが短くなってつぶし剛性/強度が低下する、あるいは土台プリプレグが不要に大きくなって重量増加を招くため、前記離間距離は、50mm以下、さらには30mm以下、より好ましくは20mm以下がよい。
【0016】
本発明は、前記方法で製造された管状体を提供しており、該管状体で、前記積層フープの管状体軸線方向の両端縁は、管状体の最終製品両端位置よりも内側に位置させている。 これは、フーププリプレグの巻き剥がれは、フーププリプレグの管状体軸線方向端部が管状体自体の端部に位置している場合に、その端部において特に発現しやすいうえ、ゴルフクラブシャフトや釣竿などの最終製品は、予め長めに設定された管状体の両端を所要寸法カットして作製するため、両端カット後の最終製品の状態において、フーププリプレグの管状体軸線方向端部が製品端部に位置しないことが求められることに因る。
【0017】
積層フープを管状体全長に対して部分的に短く積層する場合は、積層フープの管状体軸線方向端縁を、管状体軸線方向に対して斜めにカットすることが好ましい。これにより、成型後の積層段差を緩和できるため、フープ層の両端への応力集中を防止でき、管状体の強度低下を抑制できる。
【0018】
前記積層フープは、厚さを0.03〜0.06mmとしていることが好ましい。
該積層フープの厚さを0.03〜0.06mmとしているのは、0.03mm未満では薄すぎてつぶし剛性/強度が不足し、0.06mmを超えると、厚くなりすぎて積層が困難となり、端部の密着不足が生じやすいことに因る。
【0019】
また、前記積層フープの強化繊維の引張弾性率を30〜80ton/mmとすることが好ましい。ここでいう引張弾性率とは、JISR7601:1986「炭素繊維試験方法」に準拠して測定している。
積層フープの強化繊維の引張弾性率を30〜80ton/mmとしているのは、30ton/mm未満では必要なつぶし剛性/強度が得られず、80ton/mmを超えると、繊維の弾性が強くなりすぎて積層が困難になることに因る。
【0020】
前記積層フープおよび/または土台プリプレグの樹脂含量率は30〜40%であることが好ましい。
これは、30%未満では積層フープ自体の積層密着力が低下し、40%を超えると、積層フープが厚くなりすぎて重量増加を招くうえ、積層段差が大きくなり、応力集中や外観不良を招くことに因る。
好ましくは、前記積層フープと土台プリプレグの両方について、樹脂含量率を30〜40%とするのがよい。
【0021】
本発明においては、前記フーププリプレグを5枚以上用いてもよいが、重量増加抑制と曲げ強度・ねじれ強度維持のバランスを考慮して、1〜4枚、さらには1〜3枚、特に1〜2枚とすることが好ましい。
【0022】
前記バイアスプリプレグは2〜8枚用いることが好ましく、さらには4〜6枚がより好ましい。これは、2枚未満ではねじれ剛性/強度が弱くなると共に、1枚ではねじれ剛性が非対称となり、8枚より多くすると、限られた重量のなかで他のストレートプリプレグやフーププリプレグの比率が小さくなりすぎ、曲げ剛性/強度、つぶし剛性/強度が低下してしまうことに因る。
【0023】
前記ストレートプリプレグは1〜8枚用いることが好ましく、さらには2〜6枚、特に2〜4枚がより好ましい。これは、1枚未満では曲げ剛性/強度に加え、ねじれ剛性/強度も不足し、8枚より多くすると、プリプレグ枚数が多くなりすぎて作製時の作業性が悪く、コストもかかることに因る。
【0024】
本発明をゴルフクラブシャフトに適用する場合は、管状体の重量(g)/シャフト長さ(mm)の値は、0.025g/mm以上0.050g/mm以下とすることが好ましい。これは、0.025g/mm未満では、現存の高強度材料で作製することができないうえ、作製できたとしても使用に耐えるだけの強度を有することができず、0.050g/mmを超えると、シャフトの軽量性を維持できないことに因る。さらに、管状体の単位当たり重量の下限は、0.026g/mm以上、特に0.027g/mm以上が好ましく、上限は、0.048g/mm以下、特に0.045g/mm以下がよい。
【0025】
本発明をゴルフクラブシャフトに適用する場合における管状体の長さは、公式ルールに準拠して460mm以上1220mm以下が好ましい。
【0026】
前記プリプレグに用いられる強化繊維としては、比重が小さく弾性率と強度が高いという点からカーボン繊維が好ましいが、その他、一般に高性能強化繊維として使用される繊維、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、黒鉛繊維、炭化ケイ素繊維等も用いることができる。
【0027】
前記プリプレグに用いられるマトリクス樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられるが、強度と剛性の点より、熱硬化性樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ケイ素樹脂等が挙げられる。これら樹脂の中では前記エポキシ樹脂が好適に用いられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これら樹脂の中では前記ポリアミド樹脂が好適に用いられる。
【発明の効果】
【0028】
上述したように、本発明によれば、単体では巻きつけ困難なフーププリプレグを、巻きつけしやすいストレートプリプレグやバイアスプリプレグ等の土台プリプレグに予め積層密着して一体化した積層体として形成しておき、この積層体を芯材に巻回することにより、土台プリプレグの巻回数を増やすことなくフーププリプレグの巻き剥がれ等の積層不良を防ぎ、管状体の軽量化、強度向上、および生産性向上を図ることができる。
【0029】
また、土台プリプレグと予め一体化しておく積層フープの管状体軸線方向の両端縁および巻回終端縁のうち、少なくとも1箇所を、前記土台プリプレグの周縁と一致させる、もしくは土台プリプレグの周縁よりも土台プリプレグの内側に位置させることにより、土台プリプレグの周縁部によるアンカー効果が一層発揮され、フーププリプレグの積層不良をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4は、本発明の第一実施形態に係るゴルフクラブシャフト用の管状体10を示す。
管状体10は、8枚の繊維強化プリプレグ20(21〜28)のテーパー状の積層体からなり、該管状体10の両端を所要寸法カットして最終製品としてのシャフト10’が作製される。
前記シャフト10’は、図2に示すように、小径側のヘッド側先端部11にヘッド13が取り付けられ、大径側のグリップ側後端部12に、グリップ14が取り付けられる。
【0031】
本実施形態ではシャフト10’の全長を1130mmとし、前記管状体10はシャフト10’よりも長めの1168mmに設定している。
【0032】
前記繊維強化プリプレグ20(21〜28)は、強化繊維F21〜F28にいずれもカーボン繊維を用い、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を用いている。
【0033】
詳しくは、図1に示すように、1枚目と2枚目はバイアスプリプレグ21、22であり、管状体10の軸線方向に対して強化繊維F21、F22の配向角を−45度、+45度としている。これらバイアスプリプレグ21、22は、長さは管状体10の全長とし、ヘッド側の幅は50mm、グリップ側の幅は100mmとしている。また、厚みは0.085mmとし、樹脂含有率は24%としている。強化繊維F21、F22の引張弾性率は30ton/mmとしている。
【0034】
3枚目はストレートプリプレグ23であり、管状体10の軸線方向に対して強化繊維F23の配向角を0度としている。長さは管状体10の全長(1168mm)とし、ヘッド側の幅は26mm、グリップ側の幅は52mmとしている。厚みは0.082mmとし、樹脂含有率は24%としている。強化繊維F23の引張弾性率は24ton/mmとしている。
【0035】
4枚目はフーププリプレグ24であり、管状体10の軸線方向に対する強化繊維F24の配向角を90度としている。長さは1128mmとし、ヘッド側の幅は28mm、グリップ側の幅は52mmとし、厚みは0.034mmとし、樹脂含有率は40%としている。強化繊維F24の引張弾性率は30ton/mmとしている。
【0036】
5枚目はストレートプリプレグ25であり、管状体10の軸線方向に対する強化繊維F25の配向角を0度としている。長さは管状体10の全長とし、ヘッド側の幅は27mm、グリップ側の幅は53mmとし、厚みは0.103mmとし、樹脂含有率は24%としている。強化繊維F25の引張弾性率は24ton/mmとしている。
【0037】
前記4枚目のフーププリプレグ24は5枚目のストレートプリプレグ25と予め一体化された積層フープであり、積層フープのフーププリプレグ24と土台プリプレグのストレートプリプレグ25とで積層体A1を構成している。該積層フープ24の長さは1128mm、ストレートプリプレグ25の長さは1168mmで、ストレートプリプレグ25の長さ方向の両端より積層フープ24の長さ方向の両端を内側に位置させている。
【0038】
6枚目はフーププリプレグ26であり、管状体10の軸線方向に対する強化繊維F26の配向角を90度としている。長さは1128mmとし、ヘッド側の幅は29mm、グリップ側の幅は53mmとし、厚みは0.034mmとし、樹脂含有率は40%としている。強化繊維F26の引張弾性率は30ton/mmとしている。
【0039】
7枚目はストレートプリプレグ27であり、管状体10の軸線方向に対する強化繊維F27の配向角を0度としている。長さは管状体10の全長とし、ヘッド側の幅は28mm、グリップ側の幅は54mmとし、厚みは0.082mmとし、樹脂含有率は24%としている。強化繊維F27の引張弾性率は24ton/mmとしている。
【0040】
前記6枚目のフーププリプレグ26は7枚目のストレートプリプレグ27と予め一体化された積層フープであり、積層フープのフーププリプレグ26と土台プリプレグのストレートプリプレグ27とで積層体A2を構成している。積層フープ26の長さ方向は1128mm、ストレートプリプレグ27の長さは1168mmで、ストレートプリプレグ27の長さ方向の両端より積層フープ26の長さ方向の両端を内側に位置させている。
【0041】
8枚目はストレートプリプレグ28であり、管状体10の軸線方向に対して強化繊維F28の配向角を0度としている。長さは250mmとし、ヘッド側の幅は100mm、グリップ側の幅は0mmとする三角形状としている。厚みは0.082mmとし、樹脂含有率は24%としている。強化繊維F28の引張弾性率は24ton/mmとしている。
【0042】
次に、前記管状体10の製造方法を説明する。
管状体10はシートワインディング製法によって作製している。
まず、芯金(マンドレル)にプリプレグを巻き付けて積層していく前に、図3に示すように、前記フーププリプレグ24は積層フープとし、土台プリプレグのストレートプリプレグ25に予め積層密着させて一体化した積層体A1を作製しておく。同様に、前記フーププリプレグ26も積層フープとし、土台プリプレグのストレートプリプレグ27に予め積層密着させて一体化した積層体A2を作製しておく。
【0043】
前記積層体A1を作成する際、図3に示すように、積層フープのフーププリプレグ24の管状体軸線方向の両端縁24a、24bを土台プリプレグのストレートプリプレグ25の管状体軸線方向の両端縁25a、25bよりも20mm内側に位置させ、フーププリプレグ24の巻回方向の初端縁24cおよび終端縁24dは、ストレートプリプレグ25の巻回方向初端縁25cと終端縁25cよりも1mm内側に位置させる。かつ、フーププリプレグ24の前記両端縁24a、24bを、図4に示すように、管状体10の両端カット位置15、16よりも10mmづつ内側に位置させる。このように位置決めして両プリプレグを貼り合わせて一体化する。
積層体A2を作成する際、積層フープのフーププリプレグ26の周縁を、土台プリプレグのストレートプリプレグ27の周縁よりも内側で、かつ管状体最終カット位置15、16よりも内側に位置させて貼り合わせて一体化する。
【0044】
前記積層体A1、A2を作成した後に、前記プリプレグ20(21〜28)を芯金(図示せず)に順次巻き付けて積層していく。
まず、芯金に、バイアスプリプレグ21、22、ストレートプリプレグ23を順次巻きつけた後、前記積層体A1をフーププリプレグ24が内周側、ストレートプリプレグ25が外周側となるように巻きつける。次いで、積層体A2をフーププリプレグ26が内周側、ストレートプリプレグ27が外周側となるように巻きつける。
最後に、ストレートプリプレグ28をヘッド側先端部に巻き付けて積層する。
【0045】
次に、プリプレグ21〜28の積層体の表面をポリエチレンテレフタレート樹脂製等のテープでラッピングしてオーブン中で加熱加圧して樹脂を硬化させて一体的に成形し、その後、芯金を引き抜いて、管状体10を形成する。
【0046】
このように管状体10は、その製造工程においてフーププリプレグ24、26を単体で巻きつけず、それぞれ土台プリプレグとなるストレートプリプレグ25、27に予め積層密着させた積層体A1、A2の状態で、ストレートプリプレグ25、27と一体に巻きつけている。このように、土台プリプレグとなるストレートプリプレグ25、27の巻回数を特に増やすことなくフーププリプレグ24、26を容易に巻きつけることができ、管状体10の重量増加を抑制しながらフーププリプレグ24、26の巻き剥がれや積層不良を防止できる。
【0047】
また、積層体A1、A2は、積層フープのフーププリプレグ24、26を土台プリプレグのストレートプリプレグ25、27の周縁からはみ出さないように配置しているため、ストレートプリプレグ25、27のアンカー効果を一層発揮でき、フーププリプレグ24、26の巻き剥がれをより確実に防止できる。
【0048】
さらに、フーププリプレグ24、26の管状体軸線方向の両端縁24a、24b、26a、26bを、管状体10の両端カット位置15、16よりも内側に位置させているため、最終商品であるシャフト10’の両端17、18にフーププリプレグ24、26の前記両端縁24a、24b、26a、26bが現れず、シャフト10’の両端17、18とフーププリプレグ24、26の前記両端縁24a、24b、26a、26bとの間に必ずストレートプリプレグ25、27の積層密着部が介在する。これにより、特に、シャフト10’の両端17、18で発現しやすいフーププリプレグ24、26の巻き剥がれを効果的に防止できる。
【0049】
また、フーププリプレグ24、26は、厚さを0.03〜0.06mmの範囲内とし、強化繊維F24、F26の引張弾性率を30〜80ton/mmの範囲内としているため、つぶし剛性/強度と巻き付けやすさの両方をバランスよく備えることができる。
【0050】
さらにまた、積層体A1、A2を構成する積層フープのフーププリプレグ24、26と土台プリプレグのストレートプリプレグ25、27のいずれもが、樹脂含有率を30〜40%の範囲内としているため、高い積層密着力でフーププリプレグ24、26の巻き剥がれを防ぎながら、重量増加を抑制することができる。
【0051】
(実施例)
以上のことを確認するために、本発明に係るゴルフクラブシャフト用管状体の実施例1および比較例1について詳述する。なお、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明は限定されない。
【0052】
実施例1と比較例1は、フーププリプレグの芯材へ巻回方法のみを異ならせて作製し、密着不良の有無について評価を行った。
【0053】
実施例1と比較例1は、使用する繊維強化プリプレグの繊維角度と形状を前記第1実施形態と同一とした。即ち、バイアスプリプレグ21、22、ストレートプリプレグ23、フーププリプレグ24、ストレートプリプレグ25、フーププリプレグ26、ストレートプリプレグ27、ストレートプリプレグ28を芯材に巻きつけて、シートワインディング製法によって作製した。実施例1と比較例1は、いずれも、全長を1168mmとし、重量を45gとした。
【0054】
実施例1と比較例1は、前記各プリプレグ21〜28の仕様についても同一とした。具体的には、全プリプレグ21〜28にカーボン繊維を強化繊維とする東レ社製のプリプレグを用い、表1に示すとおりである。即ち、
バイアスプリプレグ21、22は、繊維種はM30S、樹脂種は#2521R、繊維の引張弾性率は30ton/mm、厚みは0.085mm、樹脂含有率(プリプレグの重量比)は24%である。
ストレートプリプレグ23は、繊維種はT700G、樹脂はを#2521R、繊維の引張弾性率は24ton/mm、厚みは0.082mm、樹脂含有率は24%である。
フーププリプレグ24、26は、繊維種はM30S、樹脂種は#2500、繊維の引張弾性率は30ton/mm、厚みは0.034mm、樹脂含有率は40%である。
ストレートプリプレグ25は、繊維種はT700G、樹脂種は#2521R、繊維の引張弾性率は24ton/mm、厚みは0.103mm、樹脂含有率を24%である。
ストレートプリプレグ27、28は、繊維種はT700G、樹脂種は#2521R、繊維の引張弾性率は24ton/mm、厚みは0.082mm、樹脂含有率は24%である。
【0055】
(実施例1)
フーププリプレグ24、26の巻回方法は前記第一実施形態と同一とした。即ち、積層フープのフーププリプレグ24は土台プリプレグのストレートプリプレグ25と予め積層密着させて積層体A1を作製した。積層フープのフーププリプレグ26は土台プリプレグのストレートプリプレグ27に予め積層密着させて積層体A2を作製した。
芯材へは、プリプレグ21、22、23、積層体A1、A2、プリプレグ28の順に巻き付けた。積層体A1、A2は、それぞれ積層フープのフーププリプレグ24、26を土台プリプレグのストレートプリプレグ25、27の周縁からはみ出さないように貼り合わせ、フーププリプレグ24、26が内周側となるように巻きつけた。
【0056】
(比較例1)
芯材にプリプレグ21〜28を順次内周側から巻きつけた。従って、フーププリプレグ24、26も単体で1枚ずつ巻きつけた。
【0057】
(密着不良有無の評価)
実施例1と比較例1をそれぞれ50本ずつ作製し、その作製工程において、各プリプレグの巻回後に巻回状態の目視外観チェックを行い、プリプレグ端部における密着不良(下層からの浮き上がり)を確認し、不良が見つかったものは再度密着作業を行った後に次のプリプレグの巻回を行い、全巻回を完了した。
評価結果は、実施例1については、50本すべての全巻回において密着不良は存在しなかったが、比較例1については、50本のうち13本について、フーププリプレグ24および/またはフーププリプレグ26の巻回に密着不良が見つかった。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態に係るゴルフクラブシャフト用管状体の繊維強化プリプレグの積層構成を示す図である。
【図2】最終製品であるゴルフクラブシャフトの概略図である。
【図3】積層プリプレグを示す平面図である。
【図4】管状体の両端部を示す平面図である。
【図5】従来例のプリプレグ積層構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 管状体
10’ ゴルフクラブシャフト(最終製品)
20 繊維強化プリプレグ
21、22 バイアスプリプレグ
23、25、27、28 ストレートプリプレグ
24、26 フーププリプレグ
A1、A2 積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維にマトリクス樹脂を含浸してなるプリプレグの積層体からなる繊維強化樹脂製の管状体の製造方法において、
強化繊維の配列方向が管状体軸線に対して傾斜して配されるバイアスプリプレグと、強化繊維の配列方向が管状体軸線に対して平行に配されるストレートプリプレグと、強化繊維の配列方向が管状体軸線に対して直角に配されるフーププリプレグとを、芯材上に巻回する工程を含み、
前記フーププリプレグのうち少なくとも1枚は積層フーププリプレグとして前記バイアスプリプレグまたは前記ストレートプリプレグからなる土台プリプレグに予め積層密着して一体化した積層体を形成おき、該積層体を巻回することによって前記土台プリプレグと一体に前記積層フーププリプレグが巻回されることを特徴とする繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項2】
前記土台プリプレグに積層密着する積層フーププリプレグの管状体軸線方向の両端縁および巻回終端縁のうち、少なくとも1箇所は、前記土台プリプレグの周縁と一致させ、または土台プリプレグの周縁よりも内側に位置させている請求項1に記載の繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法で製造された管状体であって、
前記積層フーププリプレグの管状体軸線方向の両端縁は、管状体の軸線方向両端位置よりも内側に位置している繊維強化樹脂製の管状体。
【請求項4】
前記積層フーププリプレグは、厚さが0.03〜0.06mm、強化繊維の引張弾性率が30〜80ton/mmとしている請求項3に記載の繊維強化樹脂製の管状体。
【請求項5】
前記積層フーププリプレグおよび/または土台プリプレグの樹脂含量率は30〜40%である請求項3または請求項4に記載の繊維強化樹脂製の管状体。
【請求項6】
ゴルフクラブシャフトからなる請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂製の管状体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−307701(P2008−307701A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155118(P2007−155118)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】