説明

繊維複合材製の少なくとも1つの一体的なフランジを有する中空シャフトの製造方法

【課題】フランジのエリアにおいて均一かつ規定の繊維構造と、フランジの壁厚みの柔軟な設定とを備えた繊維複合材製の一体フランジを有する中空シャフトを簡単かつコスト効率良く製造する。
【解決手段】繊維複合材製の一体的なフランジ12を有する中空シャフトの製造方法において、繊維材料で作られた複数の交差巻回部13が、シャフト部11の内側のコア20に適用される。コア20は半径方向の拡張リング22を有し、巻回部13は、それぞれの拡張リング22の外周部23上に固定される。繊維材料製の1つ以上のインサート15が、巻回部13間の拡張リング22のエリアに挿入される。次に、巻回部13の部分は、ストリッパ30を用いてエッジ25上の拡張リング22の外周部から剥がされ、拡張リング22の軸受面24上に載置されて、フランジ12の一部分を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維材料の複数の交差式の巻回部がコアに堆積され、繊維複合材製の少なくとも1つの一体的なフランジ(以下「一体フランジ」とも称する)を有する中空シャフトの製造方法に関する。さらに、本発明は、繊維複合材製の中空シャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
このような繊維複合材シャフトは、例えば、独国特許文献DE102006042301A1に記載されるような補償カップリングにおいて使用される。ここでは、フランジに構成された固定開口の穴の内輪にわたって、繊維複合材シャフトへトルクが導入される。しかしながら、繊維複合材シャフトは、他の目的でも使用され得る。
【0003】
欧州特許文献EP0443470A1から、繊維複合材製の一体フランジを有する中空シャフトの製造方法が知られている。この公知の方法では、シャフト部およびフランジが繊維材料から作られることによって、シャフト部の内側輪郭だけが、コアによって予め決定される。フランジを形成するために、シャフト部上を移動する狭い板の形状の拡張ディスクが設けられる。巻回部を形成する際、繊維材料は、拡張ディスク上に敷設され、拡張ディスクを越えて固定される。拡張ディスクの周辺で、さらなる固定が行われる。巻回部を敷設することによって、拡張ディスクの周辺とシャフト部との間に、ほぼ円錐形の部分が形成される。巻回部の仕上げ後、繊維材料は、成形ツールを用いてシャフト部のエリアに固定され、拡張ディスクの外側で切断される。次に、円錐部は、例えば、拡張ディスクを変位させることによって、半径方向に実質的に延出するフランジを形成するために、成形ツールに押圧される。次に、拡張ディスクが取り除かれ、支持ツールに取り替えられる。巻回部の円錐部を広げている間、繊維層が薄くなり、ひいては、繊維層の厚みが低減する。このため、成形ツールの軸受表面を適切な傾きを付けて構成することが考慮される。しかしながら、このような傾きは、フランジの少なくとも一方側が、軸受面として直接使用できないため、上述した使用目的では問題となる。最終的に、フランジの外側にのみ適用された繊維織物が、事前に成形ツールの軸受面に適用され得る。さらに、コンポーネントの製造中に拡張ディスクを変位させる必要があるため、この方法はさらに複雑になる。円錐部を成形ツールに適用するとき、繊維材料の繊維には負荷がかからないため、繊維構造は、フランジのエリアにおいて最適ではない。
【0004】
独国特許文献DE19544008A1から、一体フランジを有する中空シャフトのさらなる製造方法が知られている。ここでも、フランジの壁の厚みは外向きに低減する。これらの一体フランジは、最終的に軸方向の接続が可能となる別のホルダに受け入れられる。
【0005】
さらに、国際特許公報WO98/20263から、巻回された一体フランジ部を有する中空シャフトが知られており、ここでは、壁の厚みの低減は、金属製の閉鎖プレートによって半径方向に補償される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような背景を踏まえ、本発明の目的は、フランジのエリアにおいて均一かつ規定の繊維構造を簡単かつコスト効率良く製造可能であり、フランジの壁厚みの設定に関して柔軟である、繊維複合材製の少なくとも1つの一体フランジを有する中空シャフトの製造方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の方法により達成される。繊維複合材製の少なくとも1つの一体フランジを有する中空シャフトを製造するための本発明による方法の場合、繊維材料の複数の交差式の巻回部がコアに堆積される。この方法は、特に、コアが、各フランジに対して、フランジの正面壁の形状を与えるための軸受面を有する半径方向の拡張リングを有するように、コアがフランジの正面壁を含むシャフトの内側輪郭を表すことと、さらに、それぞれの拡張リングの外周エリア上にわたって巻回部が敷設され、固定され、繊維材料製の1つ以上のインサートが、巻回部間の拡張リングのエリアに挿入され、拡張リング上での繊維材料の固定が、巻回部の仕上げ後に解放され、巻回部の部分が、ストリッパを用いてエッジ上にわたって拡張リングの外周エリアから剥がされ、拡張リングの軸受面上に載置されるようにして、フランジの一部分を形成することとを特徴とする。
【0008】
本発明による方法は、製造機器のコストを下げる固定コアを使用する。さらに、中空シャフトの長さは、予め非常に正確に調節され得る。
【0009】
固定拡張リングの周辺にある繊維材料の部分が、軸受面に繊維材料を敷設するさい、拡張リング上にわたって剥がされるため、フランジの強度特性への悪影響を及ぼす可能性のある折り目や部分的に負荷がない巻回部が回避されるように、張力がかかった状態ですべての繊維巻回部に対して繊維材料が敷設される。このようにして、フランジのエリアにある繊維構造が改良される。
【0010】
さらに、本発明による方法の場合、寸法の構成に応じて、軸方向に長い拡張リングの外周部上にまず設置された巻回部の部分が、後のフランジの一部になり得る。
【0011】
フランジの壁厚みは、巻回部の形成中に挿入される繊維材料のインサートによって、必要に応じて調節され得る。さらに、巻回部の層間の埋め込みにより、フランジにおける繊維構造が改良される。
【0012】
本発明の有益な構成は、さらなる特許請求の範囲に示される。
【0013】
好ましくは、ストリッパは、固定拡張リングの軸受面の方向に変位することで、拡張リングと繊維材料のテーパ部との間に形成されたガセットに衝突する。有益な構成において、拡張リングは、対応する正面側を含む中空シャフトの内側輪郭を予め決定する複数部品コアの構成要素である。コアの長さを調節するために、拡張リングは、中空シャフトのシャフト部分の内側輪郭を予め決定する円筒部に対して移動するように構成され得る。
【0014】
本発明のさらなる有益な構成によれば、拡張リングが使用され、拡張リングの外径は、繊維材料または後のシャフトのテーパ部の方向に増大する。上述したように、繊維材料は、例えば、フックなどによって拡張リング上に直接または拡張リングを越えて、軸端部で巻回部を形成する間、固定される。しかしながら、拡張リングを越えて形成すると、材料の消費量が多くなるため、拡張リング上に直接固定することが好ましい。拡張リングの軸受面に対してガセットを敷設する前に、繊維材料は、例えば、繊維材料の縁部エリアを取り外すことによって、固定から分離される必要がある。増大する直径、例えば、円錐形状を有する拡張リングの外周部の構成により、繊維材料はまず、拡張リング状に保持された状態にある。このようにして、負荷からの望ましくない解放が回避され、繊維が常にフランジにおいて伸張された状態が確保される。
【0015】
好ましくは、巻回部の仕上げ後、巻回された繊維材料の固定を解放する前に、少なくとも拡張リングの外周部のエリアにおいて、円周層が巻回部に形成される。この層は、巻回された繊維材料を締め付け、安定化するために役立つ。特に、外周部上のシートが改良される。これは、エッジ上にわたって巻回部の後で剥離するために有益である。
【0016】
本発明のさらなる有益な実施形態によれば、フランジを形成するために、インサートが使用され、インサートの全厚みは、拡張リング上の繊維材料端部の方向に増大する。好ましくは、円錐部および拡張リングの外周部の巻回部のエリア上での巻回中にインサートが敷設される。しかしながら、円錐部または拡張リングの外周部上のみに局所的に堆積させることも可能である。しかしながら、基本的に、インサートなしの作業も想定され、半径方向に壁の厚みが低減するフランジが得られる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、インサートの厚みは、対応するフランジが一定の壁の厚みを有するように適応される。このように、軸方向に作用する固定要素様の軸受面として、さらに直接に処理することなく、フランジの正面側とは反対の背面側が使用され得る。
【0018】
使用されるインサートは、例えば、繊維材料マットから切り取られたリングディスクセグメントとして構成され得る。
【0019】
有益な実施形態によれば、リングディスクの形態の縫合インサートが使用される。縫合インサートは、前述したリングディスクセグメントとは異なり、繊維配向は、フランジの全周囲にわたって同様に構成され得るため、フランジのエリアにおいて繊維構造がさらに最適化される可能性が得られる。強度の非均一性は、フランジのエリアにおいてさらに低減され得る。
【0020】
好ましくは、材料の厚みが外向きに増大する1つ以上の縫合リングディスクが使用される。このリングディスクは、公知の方法を用いて容易に作られ、容易に操作され得る。材料の厚みが外向きに増大することにより、敷設された巻回部の繊維が半径方向に薄くなることが阻止される。他の形態において、またはさらに、増大した堆積角度を有する1つ以上の縫合リングディスクが使用され得、堆積角度は、リングディスク上の繊維配向と半径方向との間の角度として画成される。これにより、巻回部の敷設から生じる半径方向の薄化を補償することが可能となる。
【0021】
さらに、本発明により、1つのシャフト部と、シャフト部の端部に1つまたは2つの一体フランジとを備える、請求項12に記載の複合材料の中空シャフトが可能となる。本発明により中空シャフトは、シャフト部およびフランジが、繊維材料で作られた連続した巻回部を有し、フランジのエリアにおいて、フランジが一定の壁の厚みを有するように、繊維材料で作られた1つ以上のインサートが巻回部の間に埋め込まれることを特徴とする。ここで、フランジの壁の厚みは、中空シャフトのエリアの壁の厚みに対して増大され得る。インサートによって、壁の厚みの低減を補償できるだけでなく、フランジを全体的に厚くすることもできる。
【0022】
有益な構成において、各フランジは、正面側と、正面側とは反対の背面側とを有する。ここで、正面側および背面側は、シャフト部の長手中心軸に対して90度の角度をなす平面にそれぞれある。反対側の表面に対して軸方向にフランジをつける場合、フランジの正面側および背面側のさらなる処理が基本的に不要である。多くても、適切な固定孔をフランジ内に埋め込めばよく、必要であれば、外側縁部を平滑化すればよい。
【0023】
さらなる有益な実施形態によれば、巻線の繊維は、フランジのエリアに伸張される。これは、強度の点で有益である。好ましくは、これに加えて、フランジは、円周方向に均質な繊維構造を有する。
【0024】
半径方向に厚みが増大するインサートによって、さらには、複数のインサートがある場合、全厚みが増大するインサートによって、一定の壁の厚みが得られる。均質の繊維構造に対して、インサートは、リングディスクの形状を有することが好ましい。
【0025】
さらに、一体フランジを有する繊維複合材シャフトを製造するデバイスが示される。
【0026】
以下、図面に例示した実施形態によって本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1a】繊維複合材製の一体フランジを有するシャフトの製造方法の略図を示す。
【図1b】繊維複合材製の一体フランジを有するシャフトの製造方法の略図を示す。
【図1c】繊維複合材製の一体フランジを有するシャフトの製造方法の略図を示す。
【図1d】繊維複合材製の一体フランジを有するシャフトの製造方法の略図を示す。
【図1e】繊維複合材製の一体フランジを有するシャフトの製造方法の略図を示す。
【図1f】繊維複合材製の一体フランジを有するシャフトの製造方法の略図を示す。
【図2】フランジの方へ向いた視野方向におけるリングセグメントの形態のインサートの繊維構造の図を示す。
【図3】フランジの方へ向いた視野方向における縫合されたリングディスクの形態のインサートの繊維構造の図を示す。
【図4】図3のインサートの詳細図を示す。
【図5】縫合されたリングディスクの形態のインサートのさらなる実施形態の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1a〜図1fは、ワインディング技術における繊維複合材製の中空シャフト10の製造方法の過程を示す。完成した中空シャフト10は、シャフト部11と、シャフト部11の一端にある少なくとも1つの一体フランジ12とを備える。シャフト部11の他端は、原則的に、任意の構成を有し得る。例えば、他端に一体フランジが設けられてもよい。シャフト部11および一体フランジ12は、繊維複合材製であることにより、シャフト部11およびフランジ12は、繊維材料の連続した巻回部を有し、すなわち、1つの動作で巻き付けられる。
【0029】
特に、繊維複合材料の製造に一般的であるようなガラス繊維、炭素繊維、または他の繊維の単繊維、繊維束、フィラメント糸、または粗紡糸が使用される。繊維材料にすでに直接付着し、ひいては、巻回部の敷設時に形成されるか、またはすでに巻き付けられた繊維材料に後でもたらす熱可塑性合成樹脂またはエラストマーが、マトリクスとして使用される。
【0030】
第1の手順ステップ(1)において、繊維材料で作られた交差式の巻回部13の第1の層が、後の中空シャフト10の内側輪郭を表すコア20に形成される。コア20は、シャフト部11に対して、円筒部21を有し、後の中空シャフト10の各フランジ12に対して、半径方向に突出する拡張リング22を有し、拡張リング22の外径は、円筒部21の外径より大きい。コア20は、基本的に1つの部品で構成され得る。しかしながら、例示した実施形態の場合、コアは、いくつかの部品で作られる。拡張リング22は、円筒部21に対して変位可能であり、この目的のために円筒部上に位置付けられる。このように、コア20の長さは、異なる長さを有する中空シャフトを製造するように非常に簡単に調節され得る。コア20上に繊維材料を巻き付け、敷設している間、拡張リング22は、円筒部21に対して静止している。
【0031】
拡張リング22は、例示した実施形態の場合、円筒部21の方向に直径が増大する外周部23を有する。円筒部21に対して回転させた側面上に軸受面24が設けられ、この軸受面は、フランジ12の正面壁の形状を画成する。軸受面24は、円筒部21の長手軸Aに垂直方向の平面に延伸し、外周部23とともに取り外しエッジ25を形成する。このエッジ25の機能については、以下でさらに詳細に説明する。この実施形態の代替例において、外周部23も一定の直径をもつようにデザインされ得る。さらに、拡張リング22上には複数のフック26があり、拡張リング22上にわたって、繊維材料の巻回部13がコア20または拡張リング22上に敷設され、ひいては、固定される。このようにして、フランジ12の前壁に続くシャフト部11の内側輪郭が、コア20の構成要素である拡張リング22によって決定されるため、結果的に、中空シャフト10を製造するための固定成形ツールが得られることになる。
【0032】
図1aに示すように、巻回部13は、拡張リング22の外周部23上にわたって敷設され、フック26に固定される。フック26は、拡張リング22のショルダ27上に軸方向に支持された支持リング上に設置される。巻回中、外周部23と円筒部21との間に、ほぼ円錐形のガセット14が形成され、巻回部13は、拡張リング22の軸受面24上にも、円筒部21上にも載置されない。
【0033】
巻回部13の形成中、図1bに示すように、巻回部13の間の拡張リング22のエリアに、繊維材料で作られた1つ以上のインサート15が挿入される。壁の厚みは、描かれたインサート15によって後のフランジ12上で調節される。例示した実施形態において、インサート15は、拡張リング22の外周部23上にわたって重なるとともに、巻回部の円錐形ガセット14上にわたって重なる。これは、両方のエリアが、ガセット14を軸受面24に対して敷設した後に、フランジ12の部分を形成するためである。
【0034】
図2〜図5に、実現可能なインサートが描かれている。基本的に、1つ以上のインサートが使用可能であることで、フランジ12の厚みがインサートによって得られる。
【0035】
特に有益な代替実施形態において、インサートの厚みは、関連するフランジ12の壁厚みが一定になるように適応される。この場合、円筒部21またはシャフト部11の長手中心軸Aに対して90度の角度を有する1つの平面に、フランジ12の正面側および背面側がそれぞれ設置される。この目的のためにインサートが使用され、その全厚みは、拡張リング22上の繊維材料端部の方向、すなわち、この場合は、フック26の方向に増大する。
【0036】
図2は、リングディスクセグメント15a、15bの形態のインサート15’を示す。ここで、リングディスクセグメント15a、15bの繊維構造は、斜線で示されている。リングディスクセグメント15a、15bは、半径方向に対して同じ種類の繊維構造の配向を有するように配置される。したがって、結果的に、フランジ上の繊維構造が円周方向に均質化される。
【0037】
円周方向に均質化のままの繊維構造が、図3に示すリングディスクの形態の縫合されたインサート15によって達成され得る。ここでも、繊維構造は斜線で示されている。外向きに増大する材料の厚みは、最終的に、単一のインサート15によって縫合リングディスクによって達成され得る。
【0038】
図4は、一平面で起こる縫合後に得られた図3のインサート15を切り欠いた部分の平面図を示す。ここで、繊維の配向とリングディスク15の半径方向との間の角度として画成される堆積角度αは、内縁部により小さな角度α1を有し、外縁部により大きな角度α2を有する。リングディスク15が、円錐部14のエリアおよび外周部23のエリアに適用されれば、堆積角度の増大により、後のフランジ12で材料が外向きに厚くなる。
【0039】
図5は、斜線で示されているように、材料の密度および厚みが外向きに増大するように、内縁部よりも外縁部のエリアに、表面積当たりの繊維数が多く設けられる、リングディスク形状のさらなる縫合インサート15’’を示す。
【0040】
ステップ(c)において最後の巻回部を形成した後、繊維および/またはエラストマー材料の円周層16が、繊維材料をフック26に固定した上で、さらなるステップ(d)において直接巻き付けられ、これで巻回プロセスが終了する。円周層16は、拡張リング22の外周部23のエリアに巻き付けられた繊維材料を締め付け安定させるために役立つ。その後、フック26がある縁部エリアが、ステップ(e)に示すように、切り取られる。ここで、円周層16の一部も切り取られる。拡張リング22および円周層の外径が、取り外しエッジ25または円筒部21の方向に増大するため、繊維材料は、所定の位置に保持される。
【0041】
次に、さらなるステップ(f)において、拡張リング22の外周エリア23に設置された巻回部の部分が、フランジ12の一部分を形成するために、エッジ25上にわたって剥がされ、拡張リング22の軸面24に対して適用される。しかしながら、ここで、円周層26下のエリアは、外周部23上にとどまる。エッジ25上にわたった取り外しであるため、すべての繊維が伸張されたままであることが確保される。これは、均質な繊維構造にとって有益である。図1fに示すように、外周部23の剥離は、ストリッパ30によって行われ、ストリッパ30は、拡張リング22の軸受面24の方向に変位されて、静止状態にされる。ストリッパ30は、中心開口を有する分割されたブロックによって形成され、そのブロックの直径は、巻回されたシャフト部11の外径に相当する。軸受面24の方向に変位している間、ストリッパ30は、ガセット14に衝突し、まず、コア20の円筒部21に対して、最終的には、コアの軸受面24に対してガセットを敷設する。拡張リング22の方向にストリッパ30を変位するために、スピンドル32によってストリッパ30に結合された対抗支持体31が、拡張リング22上に取り付けられる。手動または機械的に実行可能であるスピンドル32の回転により、ストリッパ30は、巻回された繊維材料がコア20上に完全に載置されるまで、軸受面24の方向に引き寄せられる。このように形成されたブランクは、次に例えば熱的効果で硬くされ、コア20から分離される。最後に、固定開口が、フランジ12に空けられる。さらに、フランジ12の外周部が平滑化され得る。一方で、フランジエリアの軸受面の処理は不要である。
【0042】
従来の繊維複合シャフトと比較すると、上記に説明した方法を用いて製造された繊維複合体の中空シャフトは、フランジのエリアの繊維構造が改良された点が優れている。このように、フランジは、非常に均質な繊維構造を有する。さらに、巻回部の繊維は、起伏を生じることなくフランジのエリアに伸張される。敷設中の折り目の形成が回避される。シャフト部11の巻回部が、フランジ12に続くため、フランジがシャフト部11に良好に接続される。壁の厚みは、好ましくは縫合された繊維材料の1つ以上のインサート15、15’、または15’’によって、フランジ12にしっかりと固定して調節され得る。特に、一定の壁厚みが可能である。巻回部間の埋め込みにより、安定した繊維複合物が得られる。
【0043】
さらに、この方法は、低コストの機器に特徴付けられる。円筒部21上に拡張リング22を軸方向に調節可能であることにより、異なる軸方向の長さへの適応が容易になる。しかしながら、シャフトの正面側の内寸法および軸方向の距離に関連するコアのすべてのコンポーネントが、シャフトの巻回中に静止状態にあるため、フランジの正面側間のシャフトの長さは、事前に非常に正確に調節可能である。
【0044】
実施形態によって本発明を上記に詳細に説明してきた。しかしながら、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって規定されたあらゆる構成を備える。
【符号の説明】
【0045】
10…中空シャフト、11…シャフト部、12…フランジ、13…巻回部、14…ガセット、15…インサート、20…コア、21…円筒部、22…拡張リング、23…外周部、24…軸受面、25…取り外しエッジ、26…フック、27…ショルダ、30…ストリッパ、31…対抗支持体、32…スピンドル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維複合材製の少なくとも1つの一体的なフランジを有する中空シャフトを製造する方法であって、
繊維材料の複数の交差式の巻回部(13)が、シャフト部(11)の内側輪郭を表すコア(20)に堆積され、前記コア(20)が、各フランジ(12)に対して、該フランジ(12)の正面壁の形状を画成するための軸受面(24)を有する半径方向の拡張リング(20)を有し、
前記巻回部(13)が、それぞれの前記拡張リング(22)の外周部(23)上全体にわたって敷設され、固定され、
繊維材料で作られた1つ以上のインサート(15、15’、15’’)が、前記巻回部(13)間の前記拡張リング(22)のエリアに配置され、
前記巻回部(13)の仕上げ後、巻回された繊維材料の固定が解除され、前記巻回部(13)の部分が、ストリッパ(30)を用いてエッジ(25)上全体にわたる前記拡張リング(22)の前記外周部(23)から取り外され、前記拡張リングの前記軸受面(24)上に載置されることによって、前記フランジ(12)の一部分を形成する、方法。
【請求項2】
前記巻回部(13)の仕上げ後、前記巻回された繊維材料の固定を解放する前に、前記巻回繊維材料を締め付け安定化するための前記拡張リング(22)の前記外周部(23)上の前記巻回部(13)の部分に、外周層(16)が形成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ストリッパ(30)が、前記固定拡張リング(22)の前記軸受面(24)の方向に変位し、変位に際し、前記拡張リング(22)と、前記巻回された繊維材料の前記シャフト部(11)との間に形成された前記巻回部(13)のガセット(14)に作用することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
拡張リング(22)が使用され、前記拡張リング(22)の外径が、前記巻回された繊維材料または後のシャフトの前記シャフト部(11)の方向に増大することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記インサート(15;15’;15’’)が使用され、前記インサートの全厚みが、前記拡張リング(22)上の繊維材料端部の方向に増大することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記インサート(15;15’;15’’)の厚みが、前記対応するフランジ(12)の壁の厚みが一定になるように構成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
リングディスクセグメント(15a、15b)の形態のインサート(15’)が使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
リングディスクの形態の縫合されたインサート(15;15’’)が使用されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
材料の厚みが外向きに増大するインサート(15;15’’)として、1つ以上の縫合されたリングディスクが使用されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
内側から外側へ増大し、前記リングディスク上の前記繊維配向と半径方向との間の角度として画成される堆積角度(α)を有するインサート(15;15’’)として、1つ以上の縫合されたリングディスクが使用されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記中空シャフト(10)の長さが、シャフト部(11)の内側輪郭を予め決定するための円筒部(21)と、フランジ(12)の正面壁の形態を画成するための前記円筒部(21)に対して変位可能な拡張リング(22)とを有する多部品コア(20)によって予め決定され得ることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1つのシャフト部(11)と、前記シャフト部(11)の軸端部にある1つまたは2つの一体的なフランジ(12)とを備え、前記シャフト部(11)および前記フランジ(12)の少なくとも1つが、繊維材料で作られた連続した巻回部(13)を有し、前記フランジ(12)の少なくとも1つのエリアにおいて、前記フランジの少なくとも1つが、一定の壁の厚みを有するように、繊維材料で作られた1つ以上のインサート(15;15’、15’’)が巻回部(13)の間に埋め込まれる、繊維複合材製の中空シャフト。
【請求項13】
各フランジ(12)が、正面側と、前記正面側と反対側の背面側とを有し、前記正面側および前記背面側が、前記シャフト部(11)の前記長手方向の中心軸(A)に対して90度の角度をなす平面にそれぞれあることを特徴とする、請求項12に記載の中空シャフト。
【請求項14】
前記巻回部(13)の繊維が、前記フランジ(12)の少なくとも1つのエリアで伸張されることを特徴とする、請求項12または13に記載の中空シャフト。
【請求項15】
前記少なくとも1つのインサート(15;15’、15’’)が、半径方向に増大する厚みを有する、請求項12〜14のいずれか一項に記載の中空シャフト。
【請求項16】
前記フランジの少なくとも1つが、円周方向に均質の繊維構造を有することを特徴とする、請求項12〜15のいずれか一項に記載の中空シャフト。
【請求項17】
前記インサート(15;15’’)の少なくとも1つが、リングディスクの形態を有する、請求項12〜16のいずれか一項に記載の中空シャフト。
【請求項18】
1つのシャフト部(11)と、前記シャフト部(11)の軸端部にある1つまたは2つの一体的なフランジ(12)とを有する複合材料製の中空シャフトを製造するための装置であって、
前記シャフト部(11)の内側輪郭を予め決定するための円筒部(21)を有するコア(20)であって、前記円筒部(21)から半径方向に突出し、フランジ(12)の正面壁の形状を予め決定するための軸受面(24)と、外周部(23)と、前記外周部(23)と前記軸受面(24)との間に形成された取り外しエッジ(25)とを有する少なくとも1つの拡張リングを有するコア(20)と、
前記円筒部(21)および前記拡張リング(22)の外周部(23)上に、繊維材料で作られた巻回部(13)を形成するための手段と、
前記エッジ(2)上全体にわたって前記拡張リング(22)の前記外周部(23)から前記巻回部(13)の部分を剥がし、前記部分を前記拡張リング(22)の前記軸受面(24)に対して押圧するために、前記拡張リング(22)の前記軸受面(24)の方向に変位可能な前記シャフト部(11)を取り囲むためのストリッパ(30)と、
を備える装置。
【請求項19】
前記拡張リング(22)の前記外周部(23)が、前記取り外しエッジ(25)の方向に増大する外径を有することを特徴とする、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記拡張リング(22)が、前記コア(20)の長さを調節するために、前記円筒部(21)に対して変位可能であることを特徴とする、請求項18または19に記載の装置。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図1c】
image rotate

【図1d】
image rotate

【図1e】
image rotate

【図1f】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−42662(P2010−42662A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−141087(P2009−141087)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(507203076)ガイスリンガー ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】