説明

置換された5員アザシクロの新規塩およびタンパク質老化に関連する疾患の治療におけるその使用

本発明は、式(I)の5員アザシクロ化合物、薬学的に許容されるその塩およびその水和物に関する;式中、当該基は、明細書において定義された通りである。本発明は更に、前記化合物又はその薬学的に許容される塩又はその水和物を含む薬学的組成物、及び当該薬学的組成物の(i)皮膚の弾力性の改善または皮膚の皺の減少、(ii)糖尿病の治療、(iii)糖尿病の有害な続発症の治療又は軽減、(iv)腎臓障害の治療又は軽減、(v)血管に対する障害の治療又は軽減、(vi)高血圧症の治療又は軽減、(vii)網膜症の治療又は軽減、(viii)レンズタンパク質に対する障害の治療又は軽減、(ix)白内障の治療又は軽減、(X)末梢性ニューロパチーの治療又は軽減、又は(xi)変形性関節症の治療又は軽減における使用に関する。本発明は更に、歯のステインを防止又はリバースするための経口製剤の製造、又は作物の植物タンパク質又は動物タンパク質の鮮度維持剤の製造における使用に関する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
技術分野
本発明は、置換された5員 アザシクロ塩化合物、同一物を含むその薬学的組成物の製造、(i)皮膚の弾力性の改善または皮膚の皺の減少、(ii)糖尿病の治療、(iii)糖尿病の有害な続発症の治療又は軽減、(iv)腎臓障害の治療又は軽減、(v)血管に対する障害の治療又は軽減、(vi)高血圧症の治療又は軽減、(vii)網膜症の治療又は軽減、(viii)レンズタンパク質に対する障害の治療又は軽減、(ix)白内障の治療又は軽減、(X)末梢性ニューロパチーの治療又は軽減、又は(xi)変形性関節症の治療又は軽減を含むAGEに関連する疾患又は症状の予防又は治療におけるその使用に関する。
【0002】
背景技術
糖とタンパク質との間の反応は、ある時期において知られている。1912年と同じくらいの初期、メイラード(Maillard)は、グルコース及び他の還元糖がアミノ酸と反応し、それから、脱水および転位を経て安定した茶色の色素を形成したことを発見した。更なる研究は、貯蔵及び過熱処理した食物もまた糖およびポリペプチドから形成されたそのような色素を生成することを示唆している。そのような色素の形成は、タンパク質の生物学的活性を低下する。関連する特許出願については、US.08/588249を参照されたい。還元糖と遊離アミノ酸の間の非酵素反応は、安定なジケトンアマドリ生成物として知られる副産物を形成する。特に、ヘモグロビンのベータ鎖のアミノ末端がグルコースと反応し、ヘモグロビンA1cを形成する。類似の反応は、他の様々な生体タンパク質、例えば、レンズグリスタリン、コラーゲン及び神経タンパク質などで生ずることが分かっている(Advanced Glycsylation; Chemistry, Biology and Implications for Diabetes and Aging、Advances in Pharmacology、Vol.23、pp. 1-34 Academic Press、1992を参照されたい)。
【0003】
前記反応は、糖尿病を患う個体において生じるように、高グルコースレベルの存在下において促進されるが、正常グルコースレベルでも生じる。一方、老化(aging)過程は、リポフスチンの形成に密接に関連する。コラーゲンの老化は、コラーゲンとグルコースを使用することによりインビトロにおいて模倣できる。グルコース誘導のコラーゲン生成物は他のタンパク質を捕獲し、且つ反応して、当該タンパク質とのクロスリンク反応を導く。当該グルコースに誘導されるクロスリンク反応は、高度なグリコシル化最終産物(AGE)を生じる。AGEは、糖尿病の合併症に関連し、および正常な老化過程もまたAGEの増加を生じることが知られている。生体内のAGEは、異常な病理学的化学構造を有するのみならず、ある受容体により識別され、それにより糖尿病および老化に関連する複雑な病理学的変化を引き起こす。
【0004】
現在、幾つかの成功している治療学的アプローチがAGEの蓄積の介在を基礎に達成されている。1つのアプローチは、USP4,758,583に記載されており、そこにおいて、アミノグアニジン及びその類似体がその前駆体からのAGEの形成を阻害することにおいて使用される。初期のグリコシル化生成物と反応することにより、当該薬剤は、当該グリコシル化生成物がAGEに更に変換されることを防止し、AGEの組織との更なるクロスリンクも阻害する。このアプローチの効果は、糖尿病および老化のラット動物モデルにおいて示されており、マクロな血管、腎臓および神経病理における他の効果も含んでいる。これらのデータは、以下の文献にレビューされている(Vlassara、et al.、1994,Biology of Diseases, "Pathogenic effects of advanced glycosylation:Biochemical,Biologic and Biclinical implications for diabetes and aging", Laboratory Investigation 70:138-151; Brownlee、1995、"The pathological implications of protein glycation", Clin. Invest. Med.,18:275-281;and Brownlee、1995、"Advanced protein glycosylation in diabetes and aging", Ann. Rev. Med. 46:223-34)。
【0005】
組織におけるAGEを調節する、特に、既に組織において形成され蓄積されたAGEのクロスリンク(これは臨床的又は亜臨床的な病理学的変化の原因である)ためのもう1つのアプローチは、形成されたAGEのクロスリンクをリバース又は分解する。バッサン(Vassan)らは、AGEの分解に関するアプローチが有効であることを示している(vassan、et al.,Nature,1996、Vol. 382(18)、275-278)。USP 5,656,261及びUS application Ser. Nos. 08/588249及びUS08/848776に記載される当該化合物、製剤および方法の全ては、インビボおよびインビトロにおける形成されたAGEクロスリンクを分解できる。研究は、そのような化合物の加齢を原因とする循環器病において陽性の結果を示した(Wolffenbuttel, et al., 1998、"Breakers of Advanced Glycation End Products Restores Large Artery Properties in Experimental Deabetes", Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 95:4630-4634)。これらの研究において、1〜3週間のAGEブロッカー化合物の投与により9週の糖尿病ラットは、大動脈硬化の糖尿病誘導による増加はリバースした結果となった。改善されたパラメータは、心臓拍出量、末梢抵抗、全身動脈性コンプライアンス、動脈のインプットインピーダンス、および頚動脈のコンプライアンスが含まれた(USP6,319,934)。
【0006】
発明の開示
本発明の目的は、AGEにおいて作用し、タンパク質とのクロスリンクを防ぐために既に形成されたAGEを分解し、及びクロスリンクされたタンパク質を分解し、それによりタンパク質代謝を促進し、インビボにおけるAGEの高いレベルから引き起こされる種々の病理学的変化を治療又は予防するための小分子分解剤を探索および開発することである。本発明は、皮膚の弾力性の増加又は皮膚の皺の減少、糖尿病の治療又は糖尿病の有害な続発症、腎臓障害、血管に対する障害、高血圧症、網膜症、レンズタンパク質に対する障害、白内障、末梢性ニューロパチー又は変形性関節症の治療又は軽減のために使用することが可能である。当該クロスリンクタンパク質の分解剤が作用する当該グリコシル化タンパク質は、ヒトタンパク質に限定するものではなく、作物の植物タンパク質又は動物タンパク質も含み、従って、当該分解剤は、更に、作物の植物タンパク質および動物タンパク質の鮮度維持のために使用される。
【0007】
本発明者らは、以下の一般式(I)の化合物がタンパク質グリコシル化を原因とする種々の疾患の治療および/または予防のために使用できることを見出した。
【0008】
本発明者らは、USP5,656,261に開示される好ましくは化合物ALT-711と比較して、一般式(I)の化合物はよりよくAGE分解活性を有し、および毒性が低いことを、インビボおよびインビトロの種々のモデルにおいて示す通りに見出している。
【0009】
従って、1つの側面において、本発明は、一般式(I)化合物またはその薬学的に許容される塩又はその水和物に関する;
【化6】

【0010】
式中:
XはO又はSであり、
YはO又はSであり、
QはO又はNHであり、
R1及びR2 は同じであっても異なっていてもよく、独立して水素、C1−C4 アルキル、C2−C4 アルケニル、及びヒドロキシ−C1−C4 アルキルからなる群より選択され、又はR1及びR2は、結合されて芳香環 Ar2又は5又は6員脂肪族環を形成し;
R3 は水素、直鎖状又は分枝の C1−C8 アルキル、直鎖状又は分枝の C2−C8 アルケニル、C3−C8 シクロアルキル、ヒドロキシ、C1−C4 アルコキシ、C1−C4 アルキルアミノ、シアノ又はトリフルオロメチルであり、
R4 は 水素、直鎖状又は分枝の C1−C8 アルキル、直鎖状又は分枝の C2−C8 アルケニル、C3−C8 シクロアルキル又は単環、二環又は三環式の芳香族単素環式又は複素環式ラジカル、式中、各環は、5から6 環原子からなり、当該複素環ラジカルは、O、S及びNからなる群より選択される1〜6ヘテロ原子を含み、当該環は、独立して未置換又は、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、直鎖状又は分枝の C1−C6 アルキル、直鎖状又は分枝の C2−C6 アルケニル、C1−C4 アルコキシ、C2−C4 アルケンオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、カルボキシ及びアミノからなる群より選択される1〜3の置換基で置換され、
および Z は薬学的に許容された酸ラジカルである。
【0011】
好ましい態様において、本発明は、一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩又はその水和物に関する;
【化7】

【0012】
式中:
X は Sであり、
Y は O又はSであり、
Q は O又はNHであり、
R1及びR2 は同じ又は異なってよく、独立して水素、C1−C4 アルキル及びC2−C4 アルケニルからなる群より選択され;又はR1及びR2は、結合されて芳香環 Ar2を形成し、
R3 は 水素、直鎖状又は分枝の C1−C8 アルキル、直鎖状又は分枝の C2−C8 アルケニル、C3−C8 シクロアルキル、ヒドロキシ、C1−C4 アルコキシ、C1−C4 アルキルアミノ、シアノ又はトリフルオロメチルであり、
R4 は 水素、直鎖状又は分枝の C1−C8 アルキル、直鎖状又は分枝の C2−C8 アルケニル、C3−C8 シクロアルキル又は単環、二環又は三環式の芳香族単素環又は複素環ラジカルであり、式中、各環は、5 から 6 環原子からなり、当該複素環ラジカルはO、S及びNからなる群より選択される 1 〜 6 のヘテロ原子を含み、当該環は、独立して未置換又は、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、直鎖状又は分枝の C1−C6 アルキル、直鎖状又は分枝の C2−C6 アルケニル、C1−C4 アルコキシ、C2−C4 アルケンオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、カルボキシ及びアミノからなる群より選択される1 〜 3 の置換基で置換され、
及び Z は薬学的に許容される酸ラジカルである。
【0013】
好ましい 態様において、本発明は、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩又はその水和物に関する;
【化8】

【0014】
式中:
X は Sであり、
Y は Oであり、
Q は Oであり、
R1 はメチル又はR2 と結合して6員脂肪族環を形成し、
R2 は メチル又はヒドロキシエチル、又はR1 と結合して6員脂肪族環を形成し、
R3 は 水素であり、
R4 は 水素又はベンジルであり、
及び Z は薬学的に許容される酸ラジカル、例えば、 F、Cl、Br、I、メタンスルホネート又はp−メチルベンゼンスルホネート、及び好ましくは Br又はメタンスルホネートである。
【0015】
本発明の化合物は、これに限定するものではないが、以下化合物又はその薬学的に許容される塩又はその水和物を含む。
【化9】

【0016】
上記の化合物の中でも、3−ベンジルオキシカルボニルメチル−4−メチル−チアゾール −3−ブロミドがより好ましい。
【0017】
本発明に従うと、本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、無機の酸塩又は有機酸塩を含み、これらに限定するものではないが以下を含む:塩化物、ブロミド、ヨウ化物、ニトラート、スルフェート、ビスフェート、ホスフェート、リン酸一水素、アセテート、プロピオネート、ブチレート、オキサレート、トリメチルアセテート、アジペート、アルギナート、ラクテート、シトラート、タートレート、スクシネート、マレエート、フマレート、ピクレート、アスパルテート、グルコネート、ベンゾエート、メタンスルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p−メチルベンゼンスルホネート及びジヒドロキシナフタレンカルボキシラート。
【0018】
もう1つの側面において、本発明は式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩、又はその水和物の製造方法であって、以下の工程を具備する方法に関する。
【0019】
a)スルホウレア又は以下の式のウレアを;
【化10】

【0020】
式(II)のケトン;
【化11】

【0021】
式中 R1及びR2は、式(I)の化合物で定義した通りである;
と、触媒としてのハロゲンの存在下において反応して式(III)の化合物を形成する;または文献(J. Amer. Chem. Soc.、1949、71、4007)に記載の方法に続いて、触媒としてのハロゲンの存在下における反応を行って式(III)の化合物を得る。
【化12】

【0022】
式中 R1、R2及びXは、式(I)の化合物で定義した通りである。
【0023】
b)式(III)の化合物を亜硝酸イソアミルと反応し、式(IV)の化合物を形成し;
【化13】

【0024】
式中 R1、R2及びXは、上記で定義した通りである。
【0025】
c)式(IV)の化合物を式(V)の化合物と反応し;
【化14】

【0026】
式中 R3、Y、Q及びR4は、式(I)の化合物について上記で定義した通り、及びL は脱離基、例えば、F、Cl、Br、I、メタンスルホネート又はp−メチルベンゼンスルホナートである;
式(I)の化合物を形成する。
【化15】

【0027】
式中 R1、R2、R3、X、Y、Q、R4及びZは、上記で定義した通り:
任意に、更に式(I)の化合物、ここで、R4 はHではない、を加水分解して化合物(Ia)を得る:
【化16】

【0028】
式中 R1、R2、R3、X、Y、Q及びZは、上記定義した通り、
任意に、式(Ia)の化合物、ここで、QはOである、を直鎖状又は分枝の C1−C8 アルカノール、直鎖状又は分枝の C2−C8 アルケニルアルコール、C3−C8 シクロアルキルアルコール又は芳香族アルコールと反応し、エステルを得る。
【0029】
必要であれば、当該得られた化合物を、それ自身公知の方法に従って、1の塩から他の塩に変換してよい。
【0030】
1つの態様において、本発明の化合物は、以下の反応経路に従って製造されてもよい:
反応経路I:
【化17】

【0031】
式(IV)の化合物を;
【化18】

【0032】
式中、
X は O又はSであり、
R1及びR2は同じ又は異なり、独立して水素、C1−C4 アルキル及びC2−C4 アルケニルからなる群より選択され;又はR1及びR2は、互いに連結して芳香環Ar2を形成する
式(Va)の化合物と反応して、一般式(I)の化合物を形成することを具備する;
【化19】

【0033】
式中,
Y はO又はSであり、
Q は O又はNHであり、
R3は 水素、直鎖状又は分枝の C1−C8 アルキル、直鎖状又は分枝の C2−C8 アルケニル、C3−C8 シクロアルキル、ヒドロキシ、C1−C4 アルコキシ、C1−C4 アルキルアミノ、シアノ又はトリフルオロメチルであり、
R4 は水素、直鎖状又は分枝の C1−C8 アルキル、直鎖状の又は分枝の C2−C8 アルケニル、C3−C8 シクロアルキル又は単環、二環又は三環式の芳香族単素環又は複素環ラジカル、式中、各環は5 から 6 環原子からなり、当該複素環ラジカルは、O、S及びNからなる群より選択される1 〜 6 ヘテロ原子を含み、当該環は、独立して未置換又はハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、直鎖状又は分枝の C1−C6 アルキル、直鎖状又は分枝の C2−C6 アルケニル、C1−C4 アルコキシ、C2−C4 アルケンオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、カルボキシ及びアミノからなる群より選択される1 〜 3 置換基で置換されている;
【化20】

【0034】
式中 X、Y、Q、R1、R2、R3及びR4は、上記定義の通り、及びZ はBrである。
【0035】
上記の反応経路において、式(IV)の化合物と式(Va)の化合物の間の反応は、溶媒、例えば、エタノール、アセトニトリル又はブタノンなどの存在下において、又は上記2つの原料のうちの1つが液体である場合には溶媒の不在下において、80℃〜100℃の温度で、窒素雰囲気下で、5〜96時間、行われる。
【0036】
当該反応生成物は、静置結晶化及び続く再結晶化により、又はシリカゲルカラムクロマトグラフィを使用することにより精製されてよい。本発明において使用され得るシリカゲルは、粒子サイズが10〜40μmのカラムクロマトグラフィ用の通常のシリカゲルでよく、溶出液は、1又は幾つかの溶媒から調製されてよく、好ましくは、異なる割合のジクロロメタン及びメタノールから調製された混合溶媒の1つである。精製後に、本発明に従う式(I)の化合物が得られる。
【0037】
上記の反応経路に従い使用される式(IV)の化合物は、公知であり、または種々の方法、例えば、反応経路IIに従う方法により合成されてよい。
【0038】
反応ルートII:
【化21】

【0039】
式中 R1、R2,及びXは、式(I)の化合物のために定義された通り。
【0040】
上記の反応経路IIに従うと、式(II)の化合物は、ウレア又はスルホウレアと、ヨウ素の存在下において反応し、式(III)の化合物を形成し、次に、式(III)の化合物は亜硝酸イソアミルで、無水テトラフラン中で処理されて、当該アミノ基を除去されることにより式(IV)の化合物を形成する。式(IV)の化合物は、高減圧蒸発又はシリカゲルクロマトグラフィにより精製され、ここで、使用されるシリカゲルは、粒子サイズが10〜40μmのクロマトグラフィ用の通常のシリカゲルであってよく、溶出液は、1又は幾つかの溶媒から調製されてよく、好ましくは異なる割合のエチルアセテート及びシクロヘキサンから調製される混合溶媒の1つである。
【0041】
上記の反応経路Iに従って使用される式(Va)の化合物は、公知であり、それ自身公知の方法により合成されてよい。例えば、式(Va)の化合物は、以下の方法により合成されてよい。
【化22】

【0042】
式(III)の化合物は、臭化銅、ブロミド又はNBSを用いてα位でブロム化され、式(Va)の化合物を形成する。式(Va)の化合物は、高減圧蒸発又はクロマトグラフィにより精製されてよく、ここで、使用されるシリカゲルは、粒子サイズが10〜40μmのクロマトグラフィ用の通常のシリカゲルであってよく、溶出液は、1又は幾つかの溶媒から調整されてよく、好ましくは異なる割合のエチルアセテート及びシクロヘキサンから調製される混合溶媒の1つであってよい。式(Va)の化合物は、ここにおいて含まれる少量のα位ジブロム化生成物を除去するために精製されるべきである。
【0043】
任意に、式(I)の化合物、ここにおいて、R4はHではない化合物は、更に加水分解されて式(Ia)の化合物を形成されてもよい。
【化23】

【0044】
式中、R1、R2、R3、X、Y、Q,及びZは、上記で定義された通り、
Q が Oの場合、式(Ia)の化合物は、直鎖状又は分枝の C1−C8 アルカノール、直鎖状又は分枝の C2−C8 アルケニルアルコール、C3−C8 シクロアルキルアルコール又は芳香族アルコールで脱水縮合反応を受けてエステルを形成されてよい。
【0045】
R3 が水素でない場合、一般式(I)の化合物は、立体異性体であってもよい。本発明の関連する当該立体異性体は、不斉合成を経て単一の光学的異性体として得られてもよい。しかしながら、ラセミ化合物の分割は光学的に純粋な化合物を得るための主な手段である。分割のためには主に4つの方法がある:結晶化法、クロマトグラフィ法、動力学的法及び酵素学的方法。本発明の化合物のラセミ化合物の分割のためには、実用的価値のある結晶化法が好ましい:水中、有機溶媒中、又は水と有機溶媒の混合溶媒中のラセミ化合物の溶液に対してキラル酸(分割剤)を添加して、ジアステレオ異性体を形成すること、及びジアステレオ異性体の溶解性の違いを第一に利用することにより、ジアステレオ異性体の1つを結晶化すること。好ましいキラル酸は、酒石酸、マンデル酸、ショウノウスルホン酸などを含む。クロマトグラフィ法は、主に種々のHPLCキラルカラムを利用し、分離を実施し、それにより光学的に純粋な化合物を得る。
【0046】
更なる側面において、本発明は、少なくとも1つの一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩又はその水和物、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む薬学的組成物に関する前記薬学的組成物は、投与経路に依存する種々の形態に製造されてよい。本発明に従う化合物は、また、種々の薬学的に許容される塩として製造されてもよい。
【0047】
本発明に従う薬学的組成物は、有効量の本発明の式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその水和物、及び1又は複数の適切な薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む。前記薬学的に許容される担体又は賦形剤は、これらに限定するものではないが、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レクチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミンなど、緩衝剤、例えば、ホスフェートなど、グリセリン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、部分的にグリセリンでエステル化された飽和植物性脂肪酸の混合物、水、塩又は電解質、例えば、プロタミン、スルフェート、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、マグネシウムトリシリカート、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリラート、蜜蝋及びラノリンなどを含む。
【0048】
更なる側面において、本発明は、少なくとも1の式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその水和物のタンパク質のグリコシル化から生ずる種々の疾患の予防および/または治療のための医薬の製造における使用に関する。
【0049】
本発明は、更に、タンパク質のグリコシル化から生ずる種々の疾患の予防および/または治療の方法であって、当該予防および/または治療を必要とする対象に対して式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその水和物の少なくとも1の予防学的および/または治療学的有効量を投与することを具備する方法に関する。
【0050】
本発明の化合物は、クロスリンクされたタンパク質のために高有効性の分解剤の一種である。本発明の化合物は、ALT-711よりも優れた、グリコシル化タンパク質を分解する能力を有し、従って、これに限定するものではないが、(i)皮膚の弾力性の増加または皮膚の皺の減少、(ii)糖尿病の治療、(iii)糖尿病の有害な続発症の治療又は軽減、(iv)腎臓障害の治療又は軽減、(v)血管に対する障害の治療又は軽減、(vi)高血圧症の治療又は軽減、(vii)網膜症の治療又は軽減、(viii)レンズタンパク質に対する障害の治療又は軽減、(ix)白内障の治療又は軽減、(X)末梢性ニューロパチーの治療又は軽減、又は(xi)変形性関節症の治療又は軽減において使用され得る。
【0051】
本発明において記載される化合物が作用する当該グリコシル化されたタンパク質は、人タンパク質に限定するものでなく、作物の植物タンパク質、動物の臓器タンパク質も含み、従って、本発明において記載される化合物又は組成物は、鮮度維持の適用においても使用され得る。
【0052】
本発明の化合物は、更に、口腔内における非酵素グリコシル化反応に由来する歯のステインの阻害又はリバースのために使用される。本発明の化合物を使用する方法は、意図する使用に従って変化してよい。
【0053】
口腔内において生じる当該非酵素反応は、歯のステインを結果として導く。現在、使用される抗プラーク剤は、グリコシル化反応および更なる歯のステインを促進し得る。最近、抗プラーク作用を有するある種のカチオン殺菌剤が通常の口腔内洗浄において使用されている。これらのカチオン殺菌剤は、アレキシジン、セチルピリジニウム塩化物などを含む。これらの薬剤は、グリコシル化の重要な工程、即ち、メイラード反応を促進し、それによって歯のステインを促進する(Nordbo、J. Dent. Res.、58:1429(1979))。更に、インビトロにおいて、クロロヘキシジン及び塩化ベンザルコニウムはグリコシル化反応(褐変反応)を触媒することが観察されたことが報告されている。糖及びアミノ酸を含む混合物に添加されたクロロヘキシジンは、メイラード反応に起因する色素の形成を促進する。
【0054】
上記の理由から、本発明の化合物およびその同じものを含む薬学的組成物は、口腔内において使用され得る。特に適切な製剤は、当該薬剤を含む経口用リンス剤および歯磨き粉である。
【0055】
本発明の化合物の上述した使用のためには、適切な形態にある非毒性の且つ薬学的に許容される担体がそのような経口用リンス剤及び歯磨き粉を調製するために使用されてよい。
【0056】
本発明の化合物を含む当該薬学的組成物は、何れかの以下の方法において適用されてよい;経口投与、スプレー・吸引、直腸的投与、耳鼻科用薬物デリバリー、バッカル投与、局所投与、非経口投与、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、胸内及び頭蓋内注射又は注入、又は外植貯蔵投与、ここで、経口投与、腹腔内又は静脈内投与が好ましい。
【0057】
経口投与のために、本発明の化合物は、経口投与に適切な投与量形態に形成されてもよく、これらに限定するものではないが、錠剤、カプセル、水中の溶液、水中の懸濁液を含む。錠剤製剤において使用される担体は、一般的に、ラクトースおよびコーンスターチを含み、潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムが使用されてもよい。カプセル製剤において使用される希釈剤は、一般的に、ラクトースおよび乾燥コーンスターチを含む。水性懸濁液製剤は、一般的に活性成分と適切な乳化剤及び懸濁剤と混合されることにより処方される。必要であれば、甘味剤、香味剤又は着色剤が前記経口製剤に添加されてもよい。
【0058】
局所投与のためには、特に、障害のある面又は外部適用される医薬が容易に到達する臓器、例えば、眼、皮膚又は下部腸管など治療のためには、本発明の化合物は、障害のある面又は臓器に依存する局所投与のために適切な種々の製剤に形成することが可能である。
【0059】
詳細な説明は以下の通りである;
眼に対して局所投与する場合には、本発明の化合物は微粉砕化された懸濁剤または溶液の形態に調製されてよく、ここで、使用される担体は、保存剤、例えば、ベンジルアルカノール塩化物などを含む又は含まない、ある一定のpHの等張性の滅菌精製水である。眼に対して投与する場合、当該化合物はまた、軟膏、例えば、ワセリン軟膏などに処方されてもよい。
【0060】
皮膚に対して局所投与される場合、本発明の化合物は、適切な形態に形成されてもよく、例えば、軟膏、ローション又はクリームであってよく、ここにおいて活性成分は、1又は複数の担体に懸濁または溶解されてよい。使用される担体は、これらに限定するものではないが、ミネラルオイル、液体ワセリン、ワセリンアルバム、プロピレングリコオール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、乳化ワックス及び水を含む。ローション又はクリームにおいて使用される担体は、これらに限定するものではないが、ミネラルオイル、ソルビタンモノステアレート、Tween60、セチルエステルワックス、オレイル芳香族アルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水を含む。
【0061】
本発明の化合物はまた、滅菌注射可能な水又はオイル懸濁液及び滅菌注射可能溶液を含む滅菌された注射可能な製剤の形態において投与されてもよい。使用される担体及び溶媒は、水、リンガー溶液、等張製塩化ナトリウム溶液を含む。滅菌非揮発性オイル、例えば、モノグリセリド又はジグリセリドもまた、溶媒又は懸濁媒体として使用されてよい。
【0062】
加えて、本発明の化合物の当該投与量形態および投与の方法は、多くの因子、年齢、体重、性別、身体的健康状態、対象の栄養状態、使用される化合物の活性、適用期間、代謝率、当該疾患の重症度及び医師の主観的な判断などの因子に依存することは指摘されておくべきである。好ましい投与量形態は、1日に体重1kg当たり0.01〜100mgの範囲であり、及び最も好ましい投与形態は、1日に体重1kg当たり20〜30mgの範囲にある。
【0063】
[例]
以下の例は、更に本発明を説明するために記載されるものであり、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0064】
当該化合物の融点は、SRY-1モデル融点機器で測定され、当該温度は補正されていない。1H-NMR スペクトルは、Bruker ARX400又はUS Varian Unity Inova 600 model NMR スペクトロメーターで測定し、及びFAB マススペクトルはZabspect high resolution mass spectrometerで測定した。
【0065】
一般的製法:チアゾール親核とαブロモエステルの間の反応のための一般的製法
【化24】

【0066】
上記の反応経路に従うチアゾール親核とα−ブロモエステル化合物の間の反応は、溶媒、例えば、エタノール、アセトニトリル又はブタノンの存在下、又は上記2つの原料のうちの1つのが液体である場合には溶媒の不在において、温度80℃〜100℃で窒素雰囲気下で5〜96時間行った。
【0067】
当該反応生成物は、静置結晶化および続く再結晶化により、又はシリカゲルカラムクロマトグラフィを使用して精製した。使用されたシリカゲルは、粒子サイズが10〜40μmのクロマトグラフィ用の通常のシリカゲルであり、溶出液は、1又は幾つかの溶媒から調製し、例えば、異なる割合のジクロロメタン及びメタノールのから調製された混合溶媒が調製された。精製後、目的化合物を得た。
【0068】
例1:3−ベンジルオキシカルボニルメチル−4,5−ジメチル−チアゾール−3−ブロミド
上記の製法に従って、表題化合物(0.4g、収量26%、油状物質)を、ベンジルブロモアセテート及び4,5−ジメチル−チアゾールから製造した。
【0069】
MS[M]=262.1m/e; 1H−NMR(400MHz、DMSO)δ 2.349(s 3H); 2.510(s 3H); 5.273(s 2H); 5.728(s 2H); 7.416−7.427(m 5H); 10.104(s 1H)。
【0070】
例2: 3−ベンジルオキシカルボニルメチル−5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチル−チアゾール−3−ブロミド
表題化合物(0.5g、収量 28%、油状物質)を、ベンジルブロモアセテート及び5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチル−チアゾールを使用したことを以外は例1の方法に従って製造した。
【0071】
MS[M]=292.1m/e; 1H−NMR(400MHz、DMSO)δ 2.322(s 3H); 3.016(t J = 5.2Hz 2H); 3.769(t J =5.2Hz 2H); 5.213(s 2H); 5.730(s 2H); 7.337−7.356(m 5H); 10.521(d J=5.5Hz 1H)。
【0072】
例3: 3−ベンジルオキシカルボニルメチル−4−メチル−チアゾール−3−ブロミド
一般的な製造に従って、表題化合物(1.2g、収量 30%、油状物質)をベンジルブロモアセテート及び4−メチル−チアゾールから製造した。
【0073】
MS[M]=313.9m/e; 1H−NMR(400MHz、CD3OD)δ 2.512(s 3H); 5.293(s 2H); 5.600(s 2H); 7.356−7.399(m 5H); 7.991(s 1H)。
【0074】
例4: 3−ベンジルオキシカルボニルメチル−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−3−ブロミド
一般的な製造に従って、表題化合物(1.3g、収量31%、薄黄色固体、m. p. 160−166℃)をベンジルブロモアセテート及び4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾールから製造した。
【0075】
MS[M]=288.0m/e; 1H−NMR(400MHz,DMSO)δ 1.798(m 4H); 2.681(m 2H); 2.903(t J = 4.3Hz 2H); 5.269(s 2H); 5.702(s 2H); 7.312−7.423(m 5H); 10.172(s 1H)。
【0076】
例5:3−カルボキシメチル−4−メチル−チアゾール−3−ブロミド
例3において得られた1g の3−ベンジルオキシカルボニルメチル−4−メチル−チアゾール−3−ブロミドを1N のKCO3水溶液に溶解し、室温で3時間攪拌し、その間にTLCを使用して反応をモニターした。反応終了時に、当該反応混合物を10ml x 3 のクロロホルムで抽出し、水層を分離した。氷浴冷却を用いて、当該溶液がpH値が2になるまで、当該水層に1NのHBr水溶液を滴下した。次に、当該水溶液を乾燥するまで蒸発させた。20 の無水物エタノールを添加して残渣を洗浄し、次に、不溶性の物質を濾過により取り除いた。得られたエタノール溶液を乾燥するまで蒸発させ、それにより表題化合物を固体として得た(700mg、収量 50%、m. p. 223−230℃)。
【0077】
MS[M]=158.2m/e; 1H-NMR(400MHz,DMSO)2.3606(d J=0.8Hz 3H); 5.0936(s 2H); 7.7131(d J=1.7Hz 1H); 9.7258(d J=2.8Hz 1H)。
【0078】
例6:AGE-BSAコラーゲンクロスリンクの分解におけるELISAスクリーニング試験
AGEクロスリンクはインビトロにおいて、AGE-BSAにより、ラット尾腱コラーゲンコート96ウェルマイクロタイタープレートに対して調製した。ELISA法をAGEクロスリンクにおける当該化合物の分解効果を評価するために使用した。
【0079】
尾コラーゲンコーティング96ウェルマイクロタイタープレートの調製:
正常なウィスターラット(体重200±20g)を素早く屠殺し、次に、その尾を切除し、尾のコラーゲンを温度4℃で以下のように調製した:尾腱コラーゲン原繊維組織を取り出し、生理的食塩水で洗浄し、非コラーゲン原繊維組織を剥き取り、滅菌した脱イオン水で3回漱ぎ、小片に切り、0.1%の酢酸に4℃で1週間浸漬し、その間、当該浸漬液をしばしば攪拌した。最終的に、当該浸漬液を8000Gで30分間遠心処理により供し、上清のコラーゲン溶液を回収した。希釈の後、タンパク質含量を測定した。96ウェルマイクロタイタープレート(Costar)を当該コラーゲン溶液で70μg/ウェルの量で4℃で24時間フルウェルコーティングし、次に、コーティング液を破棄した。当該プレートを滅菌条件下で空気乾燥し、鮮度維持フィルムで覆い、使用のために4℃で保存した。
【0080】
AGE-BSAの調製:
0.2MのPBS(pH7.4)中で50mg/mLのウシ血清アルブミンBAS(V)(Roch)および0.5Mのグルコースを含むよう液を滅菌条件下で37℃で3〜4ヶ月インキュベートし、それによりグリコシル化BSA、即ち、BSA-AGEを形成した。同じ時間で、非グリコシル化BSAを、グルコースフリーのBSAを用いて調製した。次に、BSA-AGE溶液を0.01MのPBS(pH7.4)に対して透析し、未反応のグルコースを除去した。蛍光スキャンニング(Exi/Em(395/460nm))およびSDS-PAGEを使用して、BSA-AGEの形成を確認し、及びタンパク質含量をローリー法により決定した。
【0081】
アッセイプロトコール:
尾コラーゲンコーティング96ウェルマイクロタイタープレートをPBS(pH7.4)で1時間フルウェル処理して、酸生コラーゲンを中性化した。次に当該プレートをSuperblock(PIERCE)で37℃で1時間ブロッキングし、PBST(PBS-Tween)で3回洗浄し、同時に洗浄の各時間について1分間振盪した。AGE-BSAをPBS中に所望の濃度に希釈し、最大クロスリンクを得た。100μLのAGE-BSA溶液を96ウェルプレートのA、B、C及びDにラベルされた列のウェルに添加し、BSA溶液を同じ濃度でE、F、G及びHとラベルされた列のウェルに添加した。各列の最初の3つのウェルは、試薬ブランクのためにPBSで満たした。当該プレートを37℃で4時間インキュベートし、コラーゲンクロスリングを可能にし、PBSTで4回洗浄し、同時に洗浄の各時間当たり1分間振盪した。試験化合物をpH7.4のPBSに希釈した。試験化合物を4例ずつAGE-BSAクロスリンクウェルに、4例のBSAウェルに、全量100μL/ウェルで添加した。PBSを全量100μL/ウェルで、非分解対照として同様に添加した。当該プレートを37℃で16時間インキュベートし、PBSTで4回洗浄し、同時に、洗浄の各時間で1分間振盪した。80μL/ウェルのウサギ抗BSA抗体(1:500)を当該ウェルに添加し、当該プレートを37℃で50分間インキュベートした。当該プレートをPBSTで4回洗浄し、同時に各洗浄において1分間振盪した後に、80μL/ウェルの西洋ワサビペルオキシダーゼ−標識−ヤギ−抗ウサギIgG(1:1000)をウェルに添加した。当該プレートを37℃で50分間インキュベートし、次に、PBSTで3回洗浄し、同時に洗浄の各時間当たり1分間振盪した。100μL/ウェルのTMB基質(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)を当該ウェルに添加した。そのプレートを暗所室温で20分間インキュベートした。2M H2SO4 を使用して反応を停止した。反応後10分以内に、光学的密度を450nmでBOBRAD Model 550 プレートリーダー(ブランクウェルを0値にセットした)で測定した。
【0082】
データ分析:
平均光学密度(average optical density(OD))を各4組ずつ(quadruplicate)について計算した。
【0083】
補正されたOD = AGE−BSAウェルのODの平均値−BSA ウェルのODの平均値
分解割合は、ODにおける減少をパーセンテージで表した:
[(PBSウェルのODの平均値 − OD 試験化合物ウェルのODの平均値)/OD PBSウェルのODの平均値] X 100%。
【0084】
上記のプロトコールに従って決定した濃度0.1及び1mmol/Lの試験化合物の分解率を表1に示した(結果はこれらの3つのスクリーニング結果よりも多くの数の平均値である)。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩またはその水和物;
【化1】

式中:
X は O又はSであり、
Y は O又はSであり、
Q は O又はNHであり、
R1及びR2 は同じまたは異なり、独立して、水素、C1−C4 アルキル、C2−C4 アルケニル及びヒドロキシ−C1−C4 アルキル以下からなる群より選択される、又はR1及びR2は、結合して芳香環又は5-又は6員脂肪族環を形成する;
R3 は水素、直鎖状の又は分枝の C1−C8 アルキル、直鎖状又は分枝の C2−C8 アルケニル、C3−C8 シクロアルキル、ヒドロキシ、C1−C4 アルコキシ、C1−C4 アルキルアミノ、シアノ又はトリフルオロメチル;
R4 は水素、直鎖状の又は分枝の C1−C8 アルキル、直鎖状又は分枝の C2−C8 アルケニル、C3−C8 シクロアルキル又は単環、二環又は三環式の芳香族単素環又は複素環ラジカルであり、式中、各環は5から6環原子からなり、当該複素環ラジカルは、0、S及びNからなる群より選択される1〜6のヘテロ原子を含み、当該環は、独立して、未置換又はハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、直鎖状の又は分枝の C1−C6 アルキル、直鎖状又は分枝の C2−C6 アルケニル、C1−C4 アルコキシ、C2−C4 アルケンオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、カルボキシ及びアミノからなる群より選択される1〜3の置換基で置換されている;および
Zは、薬学的に許容される酸ラジカルである。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩またはその水和物;
式中:
X は Sであり、
Y は Oであり、
Q は Oであり、
R1、R2、R3及びR4は、請求項1において定義された通りであり、
Zはハライド(すなわち、F、Cl、Br,又はI)、メタンスルホネート、p−メチルベンゼンスルホネート及び好ましくはBr又はメタンスルホネートである。
【請求項3】
以下からなる群より選択される請求項1または2に記載の化合物;
3−ベンジルオキシカルボニルメチル−4,5−ジメチル−チアゾール−3−ブロミド,
3−ベンジルオキシカルボニルメチル−5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチル−チアゾール−3−ブロミド,
3−ベンジルオキシカルボニルメチル−4−メチル−チアゾール−3−ブロミド,
3−ベンジルオキシカルボニルメチル−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾール−3−ブロミド、および
3−カルボキシメチル−4−メチル−チアゾール−3−ブロミド,
またはその薬学的に許容される塩又はその水和物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩又はその水和物及び少なくとも1の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載の化合物を製造する方法であって、
式(IV)の化合物;
【化2】

式中 R1、R2,及びXは、請求項1において定義された通りであり;
を式(V)の化合物;
【化3】

式中 R3、Y、Q及びR4は、請求項1において定義された通りであり、及びL は、F、Cl、Br、I、メタンスルホナート又はp−メチルベンゼンスルホナートなどの脱離基であり:
と反応させ、一般式(I)の化合物;
【化4】

式中 R1、R2、R3、X、Y、Q、R4及びZは、請求項1で定義した通り:
を得ることと、
更に、任意に、R4がHではない一般式(I)の化合物を加水分解し、式(Ia)の化合物を得ること:
【化5】

式中 R1、R2、R3、X、Y、Q及びZは、請求項1において定義された通り;
任意に、QがOである式(Ia)の化合物を、直鎖状又は分枝のC1−C8 アルカノール、直鎖状又は分枝の C2−C8 アルケニルアルコール、C3−C8 シクロアルキルアルコール又は芳香族アルコールと反応して、エステルを得ること
を具備する方法。
【請求項6】
請求項1〜3の何れか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩又はその水和物の高度なグリコシル化最終産物(AGE)に関連する疾患又は症状を治療又は予防するための医薬の製造における使用。
【請求項7】
請求項1〜3の何れか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩又はその水和物の、(i)皮膚の弾力性の改善又は皮膚の皺の減少、(ii)糖尿病の治療、(iii)糖尿病の有害な続発症の治療又は軽減、(iv)腎臓障害の治療又は軽減、(v)血管に対する障害の治療又は軽減、(vi)高血圧症の治療又は軽減、(vii)網膜症の治療又は軽減、(viii)レンズタンパク質に対する障害の治療又は軽減、(ix)白内障の治療又は軽減、(x)末梢性ニューロパチーの治療又は軽減、又は(xi)変形性関節症の治療又は軽減のための医薬の製造における使用。
【請求項8】
請求項1〜3の何れか1項に記載の化合物又はこれらの薬学的に許容される塩又はその水和物の歯のステインをリバースするためのリバース剤又は動物体における歯のステインを阻害又はリバースするための経口製剤の製造における使用。
【請求項9】
請求項1〜3の何れか1項における化合物又はその薬学的に許容される塩又はその水和物の歯のステインを予防又はリバースすることにおける使用。
【請求項10】
請求項1〜3の何れか1項に記載の化合物又はその塩又は水和物の作物の植物タンパク質又は動物タンパク質のための鮮度維持剤の製造における使用。

【公表番号】特表2009−524605(P2009−524605A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551634(P2008−551634)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【国際出願番号】PCT/CN2007/000319
【国際公開番号】WO2007/085203
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(508228603)
【Fターム(参考)】