説明

置換イミダゾロピラジンおよびトリアゾロピラジン誘導体類:GABAAレセプタリガンド類

構造式Iで示される化合物と、その製造法を提示する。


構造式I
上記式中の変数Z、Z、Z、R、R、R、R、R、およびArは本件に定義する。このような化合物は、 in vivo または in vitroにおけるGABAレセプタへのリガンド結合性を調節するために使用でき、特に、ヒト、飼い慣らされたコンパニオンアニマル、および家畜動物における様々な中枢神経系(CNS)疾患の治療に有用である。本件に提示の化合物は単独で、または、他の(1つ以上の)CNS剤の効果を高めるため1つ以上の他のCNS剤と組み合わせて投与する。薬剤組成物と、このような疾患の治療法を提示する。また、GABAレセプタを検出するための(例えば、レセプタの位置測定の研究)これらのリガンドの使用法も提示する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、有用な薬学的性質を持つイミダゾロピラジン類(imidazolopyrazines)およびトリアゾロピラジン類(triazolopyrazines)に関する。本発明は更に、これらの化合物を含む薬剤組成物と、中枢神経系(CNS)疾患の治療におけるこれらの化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
GABAレセプタスーパーファミリーは、それを通して主な抑制性神経伝達物質のγ−アミノブチル酸(GABA)が作用する、レセプタ類の1つの種類を示すものである。GABAは哺乳動物の脳全体に広く分布し(但し一様ではない)、GABAレセプタと呼ばれるタンパク複合体を通してその作用の多くを伝え、塩化物伝導性を変えて膜分極を引き起こす。抗不安薬および鎮静薬であるベンゾジアゼピン類など、多くの薬物もこのレセプタに結合する。GABAレセプタは塩化物チャネルを持ち、このチャネルは通常(必ずしもではないが)GABAに応じて開き、塩化物を細胞内に取り込ませる。これは更に細胞膜電位を過分極させて神経活性を遅くする効果を持つ。
【0003】
GABAレセプタ類は5個のタンパクサブユニットから成る。これらのGABAレセプタサブユニットに関わる多くのcDNAがクローン化され、その一次構造が決定されている。これらのサブユニットには4膜間隔らせん(4 membrane-spanning helices)の基本モチーフが共通しているが、十分なシーケンスの相違があるためいくつかのグループに分けられる。現在、少なくとも6α、3β、3γ、1ε、1δ、および2ρサブユニットが同定されている。天然由来のGABAレセプタ類は一般に、2個のαサブユニットと、2個のβサブユニットと、1個のγサブユニットとから成る。様々な方面からの証拠(メッセージ分布、ゲノム局在性、および生化学的試験の結果などから)は、主な自然発生的なレセプタの組み合わせが、αβγ、αβγ、αβγ、およびαβγであることを示唆している。
【0004】
GABA(レセプタ複合体に対し2個)に対するGABAレセプタ結合部位は、αおよびβサブユニットからのアミノ酸によって形成される。αおよびγサブユニットからのアミノ酸は共に、レセプタ当たり1個のベンゾジアゼピン部位を形成し、この部位でベンゾジアゼピンはその薬理活性を発揮する。更に、GABAレセプタは他の数種類の薬物との相互作用部位を含んでいる。これとしては、ステロイド結合部位、ピクロトキシン部位、およびバルビツレート部位が挙げられる。GABAレセプタのベンゾジアゼピン部位はレセプタ複合体上の明瞭な部位であって、他の種類の薬物またはGABAとの相互作用部位とは重複しない。
【0005】
典型的なアロステリック機構では、ベンゾジアゼピン部位に薬物が結合すると、GABAに対するGABAレセプタの親和力が変化する。GABAの性能を高めてGABAレセプタチャネルを開くベンゾジアゼピン類とその関連薬物は、GABAを強める程度に応じて作用薬または部分的作用薬として知られる。同じ部位を占めてGABAの作用を低下させる、β−カルボリン(carboline)誘導体など別の種類の薬物は、逆作用薬と呼ばれる。同じ部位を占め、更にGABA活性への影響の少ない、または影響しない化合物は、作用薬または逆作用薬の働きを妨げることができるため、GABAレセプタ拮抗薬と呼ばれる。
【0006】
ベンゾジアゼピン部位で作用する薬物の重要なアロステリック調節効果は早くから認められ、異なるレセプタサブタイプでの活性の分布は、多くの薬理学的発見がなされている分野である。ベンゾジアゼピン部位に働く作用薬は、抗不安、鎮静、鎮痙、および催眠効果を示すものとして知られる一方、この部位で逆作用薬として働く化合物は、不安発生、認識力増強、および前痙攣発生効果を誘発する。
【0007】
ベンゾジアゼピン類は抗不安剤として長い間親しまれてきた薬剤であるが、この化合物は、認知障害、鎮静作用、運動失調、エタノールの影響の相乗作用など、多くの好ましくない副作用を示すことがあり、また耐性や薬物依存を起こし易い。従って当該技術においては、GABAレセプタの活性化および/または活性を調節する治療薬が更に求められている。本発明はこの要求を満たし、更にまたこれに関連した利点を提示するものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、GABAレセプタの活性化および/またはGABAレセプタの関与するシグナル変換を調節する化合物を提示する。このようなGABAレセプタモジュレータは、望ましくは親和力が高く、および/または選択性の高いGABAレセプタリガンドであり、ヒトGABAレセプタなどのGABAレセプタの、作用薬、逆作用薬、または拮抗薬として作用する。このためこれらは様々なCNS疾患の治療に有用である。
【0009】
ある態様においては、本件に提示のGABAレセプタモジュレータは、構造式Iで示される置換イミダゾロピラジン類およびトリアゾロピラジン類またはその薬学的許容体である。
【化1】

構造式I
式中、Zは窒素またはCRであり、Zは窒素またはCRであり、Zは窒素またはCRであって、Z、Z、およびZの1つ以上、2つ以下は窒素である。
Arは、フェニル、ナフチル、または5〜10員のヘテロアリールを示すものであって、そのそれぞれは必要に応じて置換基されており、望ましくは、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキル、(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルエーテル、C〜Cアルカノン、C〜Cアルカノイル、3〜7員のヘテロシクロアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、オキソ、C〜Cヒドロキシアルキル、C〜Cアミノアルキル、および、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノ(C〜Cアルキル)より独立して選ばれる、0〜4個の置換基で置換されている。
、R、R、およびRはそれぞれ、(a)および(b)より独立して選ばれ、
(a)は、水素、ハロゲン、ニトロ、およびシアノであり、
(b)は、次の構造式で示される基である。
【化2】


式中、
Lは、共有単結合またはC〜Cアルキルである。
Gは、共有単結合、N(R)、O、C(=O)、C(=O)O、C(=O)N(R)、N(R)C(=O)、S(O)、CHC(=O)、S(O)N(R)、またはN(R)S(O)であって、mは、0、1、または2である。
および各Rは、(i)および(ii)より独立して選ばれ、
(i)は、水素であり
(ii)は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキル、(3〜6員のヘテロシクロアルキル)C〜Cアルキル、(アリール)C〜Cアルキル、または(ヘテロアリール)C〜Cアルキルであって、そのそれぞれは必要に応じて置換されており、望ましくは、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルカノイル、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、およびC〜Cハロアルコキシより独立して選ばれる、0〜4個の置換基で置換されている。
は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、あるいはモノまたはジ(C〜Cアルキル)アミノであって、そのそれぞれは、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cシクロアルキル、フェニルC〜Cアルキル、およびフェニルC〜Cアルコキシより独立して選ばれる、0〜5個の置換基で置換されている。
およびRは独立して、水素、ハロゲン、メチル、またはエチルである。
は、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cシクロアルキル、C1〜Cハロアルキル、およびC〜Cハロアルコキシより独立して選ばれる、0、1、または2個の置換基を示す。
【0010】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容可能なキャリヤ、賦形薬(diluent)、または賦形剤(excipient)と組み合わせた、上記の化合物またはその薬学的許容体の1つ以上を含む薬剤組成物を提示する。容器に入れたこれらの薬剤組成物と、この組成物を、不安、うつ病、睡眠障害、注意欠陥障害、またはアルツハイマー痴呆などのCNS疾患を罹患した患者の治療に使用するための使用説明書と、を含む包装済み医薬製剤も提示する。
【0011】
本発明は更に別の態様において、特定のCNS疾患、例えば、不安、うつ病、睡眠障害、注意欠陥障害、精神分裂病、またはアルツハイマー痴呆などを罹患した患者の治療法を提示する。この方法は、このような疾患の治療を必要とする患者に、GABAレセプタを調節する量の前述の化合物またはその薬学的許容体を投与する工程を含む。患者の短期記憶を向上させる方法も提示する。この方法は、このような疾患の治療を必要とする患者に、GABAレセプタを調節する量の前述の化合物またはその薬学的許容体を投与する工程を含む。特定のCNS疾患を罹患した、ヒト、飼い慣らされたコンパニオンアニマル(ペット)、または家畜動物の、効果的な量の本発明の化合物を用いた治療も本発明に含まれる。
【0012】
別の態様では、本発明は、他のCNS活性化合物の作用を相乗的に強める方法を提示する。この方法は、他のCNS活性化合物の投与と共に、GABAレセプタを調節する量の構造式Iの化合物またはその薬学的許容体を投与する工程を含む。
【0013】
本発明は更に、試料(例えば、組織片)中におけるGABAレセプタ類の位置測定用プローブとしての構造式Iの化合物の使用に関する。ある実施の形態では、オートラジオグラフィを用いてGABAレセプタ類を検出する。更に、本発明は、試料中におけるGABAレセプタの存在または不在の決定法を提示する。この方法は、(a)化合物がGABAレセプタに結合するような条件下で、試料を前述の化合物と接触させる工程と、(b)GABAレセプタに結合していない化合物を除去する工程と、(c)GABAレセプタに結合した化合物の量を検出する工程と、を含む。
【0014】
更に別の態様では、本発明は、中間体を含む、本件に開示の化合物の製造法を提示する。
【0015】
本発明のこれらの、またその他の態様は、以下の詳細な記述を参照することにより明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
前述のように、本発明は、構造式Iで示される、イミダゾ[1,2−a]ピラジン類、イミダゾ[1,5−a]ピラジン類、[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン類、および[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピラジン類などの、置換イミダゾロピラジン類およびトリアゾロピラジン類を提示する。ある望ましい化合物は、望ましくは高い選択性でGABAレセプタと結合する。ある望ましい化合物は更に、脳機能を改善する。特定の作動理論に限定しようとするものではないが、このような化合物とGABAレセプタのベンゾジアゼピン部位との相互作用によりこれらの化合物の薬理効果が生じると考えられる。このような化合物は、 in vitro または in vivo において、GABAレセプタ類の位置測定、または様々な状況におけるGABAレセプタ活性の調節に使用できる。
【0017】
<化学的記述および用語>
本件に提示の化合物は一般的に標準命名法を用いて記述する。不斉中心を持つ化合物については、(特に明記されない限り)全ての光学異性体とその混合物が含まれると理解されたい。特定の立体化学または異性体形が明確に示されていない限り、全てのキラル(エナンチオマーとジアステレオマー)およびラセミ形、また構造式の全ての幾何異性体形も含まれる。オレフィン類、C=N二重結合、等の多くの幾何異性体も、本件に示す化合物に含むことができ、またこれら安定な異性体は全て本発明内に意図するものである。本発明の化合物のシスおよびトランス幾何異性体を示し、更に異性体混合物としてまたは別々の異性体形として単離しても良い。挙げられた化合物には更に、1つ以上の原子を同位体(すなわち、同じ原子番号を持つが質量数の異なる原子)で置き換えた化合物も含まれる。一般的な例として(限定するものではない)、水素の同位体としてはトリチウムとジュウテリウムが挙げられ、炭素の同位体としては11C、13C、および14Cが挙げられる。
【0018】
本件では、ある化合物を、変数を含む一般構造式を用いて示す。特に明記のない限り、この式中の各変数は、他の変数とは独立して定義され、式中に1度以上現われた変数はいずれも各表記毎に独立して定義される。このため、例えば、ある基が0〜2個のRで置換されていると示された場合、この基は置換されていないか、または2個までのR基で置換されており、また表記毎のRは、Rの定義の中から独立して選ばれる。更に、置換基および/または変数の組み合わせは、このような組み合わせが安定な化合物となる場合にのみ可能であることは明らかであろう。
【0019】
本件で用いる“置換イミダゾロピラジン類およびトリアゾロピラジン類”とは、構造式Iの化合物と、更にその薬学的許容体を指す。
【0020】
本件に挙げた化合物の“薬学的許容体”には、このような化合物の薬学的に許容可能な塩類、エステル類、水和物類、包接化合物類、およびプロドラッグ類、また、全ての結晶形が含まれる。ここで用いる薬学的許容塩とは、ヒトまたは動物の組織と接触させて用いるのに適していると当該技術で一般的に考えられる、酸または塩基塩であって、強い毒性、刺激性、アレルギー反応、または他の問題あるいは合併症がなく、妥当な利益/リスク比に収まっているものである。このような塩類としては、アミン類などの塩基性残基の無機および有機酸塩類、またカルボン酸類などの酸性残基のアルカリまたは有機塩類が挙げられる。具体的な薬物塩としては、塩酸、リン酸、臭化水素酸、リンゴ酸、グリコール酸、フマル酸、硫酸、スルファミン酸、スルファニル酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエチルスルホン酸、硝酸、安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ステアリン酸、サリチル酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、パモイック酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、プロピオン酸、ヒドロキシマレイン酸、ヨウ化水素酸、フェニル酢酸、酢酸などのアルカン酸、HOOC−(CH−COOH (式中、nは0〜4)、等の酸類の塩が挙げられる(これらに限定するものではない)。同様に、薬学的に許容可能なカチオンとしては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム、およびアンモニウムが挙げられる(これらに限定するものではない)。一般的な当業者ならば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, p. 1418 (1985)に挙げられているものなど、本件に提示の化合物に対する薬学的許容塩を更に挙げることができよう。一般に薬学的許容塩は、塩基性または酸性部分を持つ親化合物から、一般的な化学的方法のいずれかにより、例えば、本化合物の遊離酸または塩基体を化学量論量の適当な塩基または酸と、水、有機溶媒、または2つの混合物(一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が望ましい)中で反応させることにより合成可能である。
【0021】
“プロドラッグ”とは、構造式Iの構造条件を完全に満たしてはいないが、患者に投与後、生体内(in vivo)で変化して構造式Iの化合物を生じる化合物である。例えばプロドラッグは本件で提示の化合物のアクリル酸エステル誘導体である。プロドラッグ類には、ヒドロキシ、アミン、またはメルカプト基に何らかの基が結合していて、ほ乳類である患者(畜)に投与すると、開裂してそれぞれ遊離ヒドロキシル、アミノ、またはメルカプト基を生じるような化合物が含まれる。プロドラッグ類の例としては、本件に提示の化合物中のアルコールおよびアミン官能基の、酢酸、ギ酸、および安息香酸誘導体が挙げられる(これらに限定するものではない)。構造式Iの化合物のプロドラッグ類は、例えば、修飾したものが in vivo で開裂して構造式Iの化合物を生成するよう、化合物中にある官能基を修飾して調製する。
【0022】
本件で用いる“置換基”とは、当該分子の中の原子に共有結合する分子部分を指す。例えば、“環置換基”は、環員である原子(望ましくは炭素または窒素原子)に共有結合した、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基、または本件に述べるその他の置換基などの部分である。本件で用いる“置換した”とは、指定された原子上のどれか1つまたはそれ以上の水素を、指定された原子の通常の原子価を超えないように、表示の置換基から選んだもので置き換え、置換によって安定な化合物(すなわち、単離、特定、および生物活性試験に供試可能な化合物)が生成することを意味する。置換基がオキソ(すなわち、=O)である場合、原子上の2つの水素が置き換わる。芳香族部分をオキソ基で置換すると、芳香環はそれに対応する部分不飽和環に置き換わる。例えば、オキソで置換されたピリジル基はピリドンである。
【0023】
“必要に応じて置換された”とは、基が置換されていないか、あるいは置換可能な位置、一般に、1、2、3、4、または5の位置のいずれか1つ以上が、本件に開示のものなどの1つ以上の適当な置換基で置換されていることを示す。必要に応じた置換は、“0〜X個の置換基で置換”(Xは置換基の最大数)という句でも示される。適当な置換基としては、例えば、ハロゲン、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、ニトロ、アジド、カルボキサミド、−COOH、SONH、アルキル(例えば、C〜Cアルキル)、アルケニル(例えば、C〜Cアルケニル)、アルキニル(例えば、C〜Cアルキニル)、アルコキシ(例えば、C〜Cアルコキシ)、アルキルエーテル(例えば、C〜Cアルキルエーテル)、アルキルチオ(例えば、C〜Cアルキルチオ)、ハロアルキル(例えば、C〜Cハロアルキル)、ヒドロキシアルキル(例えば、C〜Cヒドロキシアルキル)、アミノアルキル(例えば、C〜Cアミノアルキル)、ハロアルコキシ(例えば、C〜Cハロアルコキシ)、アルカノイル(例えば、C〜Cアルカノイル)、アルカノン(例えば、C〜Cアルカノン)、アルカノイルオキシ(例えば、C〜Cアルカノイルオキシ)、アルコキシカルボニル(例えば、C〜Cアルコキシカルボニル)、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノ、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノC〜Cアルキル、モノおよびジ(C〜Cアルキル)カルボキサミド、モノおよびジ(C〜Cアルキル)スルホンアミド、アルキルスルフィニル(例えば、C〜Cアルキルスルフィニル)、アルキルスルホニル(例えば、C〜Cアルキルスルホニル)、アリール(例えば、フェニル)、アリールアルキル(例えば、ベンジルやフェネチルなどの(C〜C18アリール)C〜Cアルキル)、アリールオキシ(例えば、フェノキシなどのC〜C18アリールオキシ)、アリールアルコキシ(例えば、(C〜C18アリール)C〜Cアルコキシ)、および/または3〜8員の複素環基(例えば、クマリニル、キノリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、モルホリノ、またはピロリジニル)が挙げられる。本件に提示の構造式中の基は、必要に応じて、1〜3、1〜4、または1〜5個の、独立して選ばれる置換基で置換されている。
【0024】
2つの文字または記号に挟まれていないダッシュ(“−”)は、置換基の結合位置を示すために用いる。例えば、−CONHは炭素原子を経て結合している。
【0025】
本件で用いる“アルキル”は、分枝および直鎖両方の飽和脂肪族炭化水素基を含むもので、明記されている場合には示された数の炭素原子を含んでいる。つまり、本件で用いるC〜Cアルキルとは、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基を指す。本件で用いる“C”は共有単結合を示し、例えば“C〜Cアルキル”とは、共有単結合またはC〜Cアルキル基を指す。アルキル基としては、1〜8個の炭素原子を含む基(C〜Cアルキル)、1〜6個の炭素原子を含む基(C〜Cアルキル)、および1〜4個の炭素原子を含む基(C〜Cアルキル)が挙げられ、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、2−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、および3−メチルペンチルである。ある実施の形態では、望ましいアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、および3−ペンチルである。“アミノアルキル”は、本件で定義したアルキル基を1つ以上の−NH置換基で置換したものである。“ヒドロキシアルキル”は、本件で定義したアルキル基を1つ以上の−OH置換基で置換したものである。
【0026】
“アルケニル”とは、1つ以上の不飽和炭素−炭素結合を含む直鎖または分枝炭化水素鎖、例えばエテニルおよびプロペニルを指す。アルケニル基としては、それぞれ2〜8、2〜6、または2〜4個の炭素原子を含む、C〜Cアルケニル、C〜Cアルケニル、およびC〜Cアルケニル基、例えば、エテニル、アリル、またはイソプロペニルが挙げられる。
【0027】
“アルキニル”とは、1つ以上の炭素−炭素三重結合を含む直鎖または分枝炭化水素鎖を指す。アルキニル基としては、それぞれ2〜8、2〜6、または2〜4個の炭素原子を含む、C〜Cアルキニル、C〜Cアルキニル、およびC〜Cアルキニル基が挙げられる。アルキニル基としては、例えばエチニルおよびプロピニルなどの基が挙げられる。
【0028】
“シクロアルキル”は、全ての環員が炭素である飽和環状基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルである。このような基は一般に、3〜約8個の環炭素原子を含み、ある実施の形態においては、このような基は3〜7個の環炭素原子を持つ。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシル、更に、ノルボルナンまたはアダマンタンなどの架橋またはかご形飽和環基、等が挙げられる。置換されている場合、ハロゲン、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cアルカノイルなどの示された置換基は、どの環炭素原子に結合しても良い。
【0029】
“(シクロアルキル)アルキル”においては、“シクロアルキル”および“アルキル”は先に定義したとおりであり、結合位置はアルキル基上にある。この用語は、シクロプロピルメチル、シクロヘキシルメチル、およびシクロヘキシルエチルを含む(これらに限定するものではない)。“(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキル”とは、共有単結合またはC〜Cアルキル基を経て結合した3〜7員のシクロアルキル基を指す。同様に、“(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルコキシ”とは、C〜Cアルコキシ基を経て結合した3〜7員のシクロアルキル基を指す。
【0030】
本件で用いる“アルコキシ”とは、酸素を介して結合した前述のアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を意味する。アルコキシ基としては、それぞれ1〜6または1〜4個の炭素原子を持つ、C〜CアルコキシおよびC〜Cアルコキシ基が挙げられる。具体的なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、2−ペントキシ、3−ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、ヘキソキシ、2−ヘキソキシ、3−ヘキソキシ、および3−メチルペントキシである。同様に、“アルキルチオ”とは、硫黄を介して結合した前述のアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を指す。
【0031】
本件で用いる“アルキルスルフィニル”とは、構造式 −(SO)−アルキル で示され、硫黄原子が結合点である基を指す。アルキルスルフィニル基としては、それぞれ1〜6、または1〜4個の炭素原子を含む、C〜CアルキルスルフィニルおよびC〜Cアルキルスルフィニル基が挙げられる。
【0032】
“アルキルスルホニル”とは、構造式 −(SO)−アルキル で示され、硫黄原子が結合点である基を指す。アルキルスルホニル基としては、それぞれ1〜6または1〜4個の炭素原子を含む、C〜CアルキルスルホニルおよびC〜Cアルキルスルホニル基が挙げられる。メチルスルホニルがアルキルスルホニル基の一例である。
【0033】
“アルキルスルホンアミド”とは、構造式 −(SO)−NR で示され、硫黄原子が結合点であり、各Rが独立して水素またはアルキルである基を指す。“モノまたはジ(C〜Cアルキル)スルホンアミド”とは、1つのRがC〜Cアルキルで他のRが水素、あるいは独立して選ばれたC〜Cアルキルである基を指す。
【0034】
“アルカノイル”とは、カルボニルを介して結合した先に定義のアルキル基を指す。アルカノイル基としては、それぞれ2〜8、2〜6、または2〜4個の炭素原子を含む、C〜Cアルカノイル、C〜Cアルカノイル、およびC〜Cアルカノイル基が挙げられる。“Cアルカノイル”とは、−(C=O)−H を指し、これは(C〜Cアルカノイルと共に)“C〜Cアルカノイル”に含まれる。エタノイルはCアルカノイルである。
【0035】
本件で用いる“オキソ”とは、ケト基(C=O)を指す。非芳香環の置換基がオキソ基であると、−CH− が −C(=O)− に変わる。芳香環にオキソ置換基を導入すると芳香族性が失われることは明らかである。
【0036】
“アルカノン”は、示された数の炭素原子を含む先に定義のアルキル基の少なくとも1つの位置をオキソ基で置換したものである。“C〜Cアルカノン”、“C〜Cアルカノン”、および“C〜Cアルカノン”とは、それぞれ3〜8、6、または4個の炭素原子を含むアルカノンを指す。例えば、Cアルカノン基は、−CH−(C=O)−CHの構造を持つ。
【0037】
同様に、“アルキルエーテル”は、炭素−炭素結合を介して結合した直鎖または分枝エーテル置換基を指す。アルキルエーテル基としては、それぞれ2〜8、6、または4個の炭素原子を含む、C〜Cアルキルエーテル、C〜Cアルキルエーテル、およびC〜Cアルキルエーテル基が挙げられる。例えば、Cアルキルエーテル基は、−CH−O−CHの構造を持つ。
【0038】
“アルコキシカルボニル”とは、カルボニルを介して結合したアルコキシ基(すなわち、一般構造式 −C(=O)−O−アルキル を持つ基)を指す。アルコキシカルボニル基としては、それぞれ2〜8、6、または4個の炭素原子を含む、C〜C、C〜C、およびC〜Cアルコキシカルボニル基が挙げられる。“Cアルコキシカルボニル”とは、−C(=O)−OHを指し、これは“C〜Cアルコキシカルボニル”に含まれる。これらの基はアルキルカルボキシラート基とも呼ばれる。例えば、メチルカルボキシラートは、−C(=O)−O−CHであり、エチルカルボキシラートは、−C(=O)−O−CHCHである。
【0039】
“アルキルアミノ”とは、一般構造式 −NH−アルキル、または −N(アルキル)(アルキル)を持ち、それぞれのアルキルが同じまたは異なる、2級または3級アミンを指す。このような基としては、例えば、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノ基(それぞれのアルキルは同じまたは異なるもので、1〜8個の炭素原子を含む)、また、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノ基、およびモノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノ基が挙げられる。
【0040】
“アルキルアミノアルキル”とは、アルキル基を介して結合したアルキルアミノ基(すなわち、一般構造式 −アルキル−NH−アルキル、または −アルキル−N(アルキル)(アルキル) を持つ基であって、各アルキルは独立して選ばれる)を指す。このような基としては、例えば、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノC〜Cアルキル、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノC〜Cアルキル、および、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノC〜Cアルキル(それぞれのアルキルは同じまたは異なる)が挙げられる。“モノまたはジ(C〜Cアルキル)アミノC〜Cアルキル”とは、共有単結合またはC〜Cアルキル基を経て結合したモノまたはジ(C〜Cアルキル)アミノ基を指す。このような基の例としては、メチルアミノメチル、およびジエチルアミノメチル、また次の構造式で示されるものが挙げられる。
【化3】





【0041】
“カルボキサミド”とは、アミド基(すなわち、−(C=O)NH)を指す。
【0042】
“ハロゲン”とは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を指す。
【0043】
“ハロアルキル”は、1つ以上のハロゲン原子で置換された分枝または直鎖アルキル基(例えば、“ハロC〜Cアルキル”基は1〜8個の炭素原子を含み、“ハロC〜Cアルキル”基は1〜6個の炭素原子を含む)である。ハロアルキル基の例としては、モノ、ジ、またはトリフルオロメチル;モノ、ジ、またはトリクロロメチル;モノ、ジ、トリ、テトラ、またはペンタフルオロエチル;および、モノ、ジ、トリ、テトラ、またはペンタクロロエチルが挙げられる(これらに限定するものではない)。典型的なハロアルキル基は、トリフルオロメチルとジフルオロメチルである。本件に提示のある化合物は、5または3個以下のハロアルキル基を含む。“ハロアルコキシ”とは、酸素を介して結合した、先に定義のハロアルキル基を指す。“ハロC〜Cアルコキシ”基は1〜8個の炭素原子を含む。
【0044】
本件で用いる“炭素環”または“炭素環基”とは、単環または2環縮合環、側鎖の環、あるいはスピロ環を持ち、それぞれの環が3〜8個の原子から成り、全ての環原子が炭素である、飽和、部分不飽和、または芳香族基を示す。炭素環基は、安定した構造となるようないずれかの炭素原子を介して結合し、また生成する化合物が安定ならば、炭素原子のいずれかを置換しても良い。炭素環基としては、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびアリール基が挙げられる。二環式炭素環基は、1個のシクロアルキル環と、1個の部分不飽和環または芳香環を持つもの(例えば、テトラヒドロナフチル基)でも良い。
【0045】
本件で用いる“アリール”とは、(1つ以上の)芳香環中に炭素のみを含む芳香族基を示す。このような芳香族基は更に炭素または非炭素原子または基で置換されていても良い。典型的なアリール基は、1〜3個の、単環、縮合環、スピロ環、または側鎖の環を含み、環構成原子は6〜約18個であるが、環員としてヘテロ原子を含まないものである。代表的なアリール基としては、フェニル、ナフチル(1−ナフチルと2−ナフチルを含む)、およびビフェニルが挙げられる。“(アリール)C〜Cアルキル”とは、共有単結合、メチル、またはエチルを介して結合したアリール基(望ましくは、C〜C10アリール基)を指す。“フェニルC〜Cアルキル”とは、共有単結合またはC〜Cアルキル基を介して結合したフェニル基を指す。同様に、“フェニルC〜Cアルコキシ”とは、C〜Cアルコキシ基を経て結合したフェニル基を指す。
【0046】
“ヘテロ原子”は炭素以外の原子であって、例えば、酸素、硫黄、または窒素などである。
【0047】
“複素環”または“複素環基”は、それぞれの環が3〜8個の原子から成る1または2個の環を持つ、飽和、部分不飽和、または芳香族基であって、そのうちの少なくとも1つの環に、N、O、およびSより独立して選ばれる1〜4個のヘテロ原子を含むものを示すために用いられる。複素環は、安定な構造となるならばどのヘテロ原子または炭素原子で結合しても良く、また生成する化合物が安定ならば、(1つ以上の)炭素および/または窒素原子上に置換基を持つものでも良い。窒素および/または硫黄ヘテロ原子はいずれも必要に応じて酸化し、また窒素はいずれも必要に応じて4級化できる。二環式複素環基は、(必ずしもではないが)1個の飽和環と1個の部分不飽和または芳香環を含むもの(例えば、テトラヒドロキノリニル基)でも良い。
【0048】
ある複素環は、“ヘテロアリール”(すなわち、1〜4個のヘテロ原子を含む少なくとも1つの芳香環を含む基)、例えば、5〜10員のヘテロアリール基(例えば、5〜7員の単環基、または7〜10員の二環基)である。ヘテロアリール基中のSとO原子の総数が1を超える場合、これらのヘテロ原子は互いに隣接せず、ヘテロアリール中のSとO原子の総数は、1、2、または3以下が望ましく、より望ましくは1または2、最も望ましくは1以下である。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、フラニル、インドリル、ピリミジニル、ピリジジニル、ピラジニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チエニル、チアゾリル、トリアゾリル、イソキサゾリル、キノリニル、ピロリル、ピラゾリル、および5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリンが挙げられる。“5または6員のヘテロアリール”は、5または6個の環員を含む単環ヘテロアリールである。“(ヘテロアリール)C〜Cアルキル”とは、共有単結合、メチル、またはエチルを介して結合したヘテロアリール基(望ましくは5〜10員のヘテロアリール基)を指す。
【0049】
その他の複素環は、本件では“ヘテロシクロアルキル”(すなわち、飽和複素環)と呼ぶ。ヘテロシクロアルキル基は、3〜約8個の環原子、より一般的には3〜7個、または5〜7個の環原子を含む。ヘテロシクロアルキル基の例としては、モルホリニル、ピペラジニル、およびピロリジニルが挙げられる。“(3〜6員のヘテロシクロアルキル)C〜Cアルキル”とは、共有単結合、またはC〜Cアルキル基を介して結合した、3〜6個の環原子を含むヘテロシクロアルキル基を指す。
【0050】
“GABAレセプタ”および“ベンゾジアゼピンレセプタ”とは、検出可能な程度にGABAと結合し、投与量に応じて塩化物伝導性と膜分極を変えるタンパク複合体を指す。天然由来の哺乳動物(特に、ヒトまたはラット)GABAレセプタサブユニットを含むレセプタが一般に望ましいが、レセプタのGABAへの結合性を著しく阻害しない(すなわち、レセプタのGABAに対する結合親和性が50%以上保たれる)程度にサブユニットを修飾しても良い。GABAに対してGABAレセプタとなり得るものの結合親和性は、本件に提示の標準リガンド結合性試験法を用いて評価できる。“GABAレセプタ”の範疇に入るものには、様々なGABAレセプタサブタイプがあることは明らかである。このようなサブタイプとしては、αβγ、αβγ、αβγ、およびαβγレセプタサブタイプが挙げられる(これらに限定するものではない)。GABAレセプタは、様々な由来源、例えばラット皮質の調製物から、またはクローン化ヒトGABAレセプタ発現細胞から得られる。特定のサブタイプは、標準的手法(例えば、本件に示すように、所望のサブユニットをエンコードしたmRNAをホスト細胞に組み込むことにより)を用いて容易に調製できる。
【0051】
GABAレセプタの“作用薬”は、GABAレセプタでのGABAの活性を高める化合物である。作用薬は、GABAのGABAレセプタへの結合性を高めるものでも良い(必ずしもその必要はない)。化合物がGABA作用薬として働く力は、実施例11に提示の試験法などの電気生理学的試験法を用いて求めることができる。
【0052】
GABAレセプタの“逆作用薬”は、GABAレセプタでのGABAの活性を弱める化合物である。逆作用薬は、GABAのGABAレセプタへの結合性を阻害するものでも良い(必ずしもその必要はない)。GABAが引き起こすGABAレセプタ活性の低下は、実施例11の試験法などの電気生理学的試験法で求めることができる。
【0053】
ここで用いるGABAレセプタの“拮抗薬”とは、GABAレセプタのベンゾジアゼピン部位を占めるが、GABAレセプタでのGABA活性に対する影響の認められない化合物である。このような化合物は、作用薬または逆作用薬の働きを阻害することができる。GABAレセプタ拮抗薬の活性は、本件の実施例10に提示の方法などの適当なGABAレセプタ結合性試験法と、実施例11に提示の電気生理学的試験法などの適当な官能性試験法とを組み合わせて用いて求めることができる。
【0054】
“GABAレセプタモジュレータ”は、GABAレセプタ作用薬、逆作用薬、または拮抗薬として働く全ての化合物である。ある実施の形態において、このようなモジュレータは、標準GABAレセプタ放射性リガンド結合性試験において1マイクロモル(μM)以下の親和定数(affinity constant)を示し、または実施例11に提示の電気生理学的試験において1μM以下のEC50を示す。別の実施の形態では、GABAレセプタモジュレータは、500ナノモル(nM)、200nM、100nM、50nM、25nM、10nM、または5nM以下の親和定数またはEC50を示す。
【0055】
“GABAレセプタ調節量”は、標的GABAレセプタにおいてモジュレータが効果的な濃度となるようなGABAレセプタモジュレータの量である。効果的な濃度とは、実施例10に示す試験において、H−フルマゼニル(Flumazenil)の全特異的結合性の阻害が統計的に有意(すなわち、p≦0.05とし、スチューデントのt検定などの一般的なパラメータ統計分析法を使用して求めた)となるのに十分な濃度である。
【0056】
GABAレセプタにおけるKiが1μM、望ましくは100nM以下、または10nM以下ならば、GABAレセプタモジュレータは“高い親和性”を持つと言える。GABAレセプタにおけるKiの代表的な決定法を、本件の実施例10に示す。Kiは、試験に用いるレセプタサブタイプに応じて変わることは明らかである。つまり、親和性の高い化合物は、“サブタイプ特異的”(すなわち、あるサブタイプに対するKiが他のサブタイプより10倍以上も大きい)である。このような化合物は、少なくとも1つのGABAレセプタサブタイプに対するKiが上記の基準に合致するならば、GABAレセプタに対して高い親和性を持つと言える。
【0057】
他の膜結合レセプタ類への結合におけるKiの10分の1以下、望ましくは100分の1以下の低いKiでGABAレセプタへ結合するならば、GABAレセプタモジュレータは“高い選択性”を持つと言える。詳細には、このような化合物は、以下のレセプタ類、セロトニン、ドパミン、ガラニン、VR1、C5a、MCH、NPY、CRF、ブラジキニン、およびタキキニンにおいて、GABAレセプタより10倍以上大きいKiを持つものである。他のレセプタ類でのKiを求めるための試験は、市販の膜レセプタ結合性試験法(例えば、カナダ国トロント、MDS PHARMA SERVICES、およびワシントン州レドモンド、CEREPより入手可能な結合性試験法)などの標準的な結合性試験プロトコルを用いて行うことができる。
【0058】
“患者(畜)”とは、本件に提示の化合物で治療する全ての個体である。患者(畜)には、ヒトおよび他の動物、例えばコンパニオンアニマルや家畜が含まれる。患者(畜)は、CNS疾患を罹患したもの、またはこのような症状のないもの(すなわち、予防的処置)である。
【0059】
“CNS疾患”は、患者のGABAレセプタの変調による中枢神経系の病気または好ましくない健康状態である。このような障害としては、不安障害(例えば、恐慌性障害、脅迫性障害、広場恐怖症、社会恐怖症、特定的恐怖症、気分変調、適応障害、分離不安、循環気質、および全般性不安障害)、ストレス障害(例えば、心的外傷後ストレス障害、予期不安急性ストレス障害、および急性ストレス障害)、抑うつ性障害(例えば、うつ病、非定型うつ病、双極性障害、および双極性障害の抑うつ相)、睡眠障害(例えば、原発性不眠症、日周期睡眠障害、睡眠異常NOS、悪夢障害などの錯眠、夜驚症、またうつ病、不安、および/または他の精神障害から派生した睡眠障害、および物質誘発性睡眠障害)、認知障害(例えば、認知欠陥、軽度認知欠陥(MCI)、加齢関連認知低下(ARCD)、精神分裂病、外傷性脳障害、ダウン症候群、アルツハイマー症およびパーキンソン病などの神経変性疾患、および発作)、AIDS関連痴呆、うつ病や不安または精神病に伴う痴呆、注意欠陥障害(例えば、注意欠陥障害および注意欠陥多動障害)、痙攣性障害(例えば、てんかん)、ベンゾジアゼピン過量、薬物およびアルコール嗜癖が挙げられる。
【0060】
“CNS剤”は、CNS疾患の治療または予防に用いられる薬物である。CNS剤としては、例えば、セロトニンレセプタ(例えば、5−HT1A)作用薬および拮抗薬と、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI);ニューロキニンレセプタ拮抗薬;副腎皮質刺激ホルモン放出因子レセプタ(CRF)拮抗薬;メラトニンレセプタ作用薬;ニコチン様作用薬;ムスカリン様試剤;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、およびドパミンレセプタ作用薬が挙げられる。
【0061】
<置換イミダゾロピラジンおよびトリアゾロピラジン誘導体>
前述のように、本発明は、先に述べたような変数を含む構造式Iの化合物と、そのような化合物の薬学的許容体とを提示する。
【化4】

構造式I
【0062】
ある実施の形態において、Arは、フェニル、ピリジル、チアゾリル、チエニル、トリアゾロピリジル、ピリジジニル、またはピリミジニルであって、そのそれぞれが、0〜4個の前述の置換基(例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cアルカノイル、(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、およびC〜Cハロアルコキシより独立して選ばれる、0、1、2、または3個の置換基)で置換されているものを示している。代表的なAr部分としては、例えば、フェニル、ピリジル(例えば、ピリジン−2−イル)、チアゾリル(例えば、1,3−チアゾール−2−イル)、チエニル(例えば、2−チエニル)、ピリジジニル(例えば、ピリジジン−3−イル)、およびトリアゾロピリジル(例えば、[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−5−イル)が挙げられ、そのそれぞれは、クロロ、フルオロ、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルアミノ、C〜Cハロアルキル、およびC〜Cハロアルコキシより独立して選ばれる、0〜3個の置換基で置換されている。ある実施の形態では、Arは、ピリジン−2−イル、3−フルオロピリジン−2−イル、6−フルオロピリジン−2−イル、2,6−ジフルオロフェニル、2,5−ジフルオロフェニル、3−フルオロフェニル、または3−メチル[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−5−イルを表す。
【0063】
は、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cシクロアルキル、C〜Cハロアルキル、およびC〜Cハロアルコキシより独立して選ばれる、0、1、または2個の置換基を示す。ある実施の形態では、Rは、ハロゲン、C〜Cアルキル、およびC〜Cアルコキシより選ばれる、0または1個の置換基を示す。
【0064】
上記のように、R、R、R、およびRはそれぞれ、(a)および(b)より独立して選ばれ、(a)は、水素、ハロゲン、ニトロ、およびシアノであり、(b)は、次の構造式で示される基である。
【化5】


式中、Lは、共有単結合(すなわち、Lはない)またはC〜Cアルキルを示し、Gは、共有単結合(すなわち、Lは単結合を介して直接Rに結合している)、N(R)、すなわち、
【化6】


、O、C(=O)、すなわち、
【化7】


、C(=O)O、すなわち、
【化8】


、C(=O)N(R)、すなわち、
【化9】


、N(R)C(=O)、すなわち、
【化10】


、S(O)、すなわち、−S−、
【化11】


、または
【化12】


、CHC(=O)、すなわち、
【化13】


、S(O)N(R)、例えば、
【化14】


、または、N(R)S(O)、例えば、
【化15】


であって、式中、mは、0、1、または2であり、Rおよび各Rは前述のとおりである。
【0065】
ある実施の形態において、R、R、R、およびRはそれぞれ、(a)および(b)より独立して選ばれ、(a)は、水素、ハロゲン、およびシアノであり、(b)は、次の構造式で示される基である。
【化16】


式中、(i)Lは、共有単結合、メチレン、またはエチレンであり、(ii)Gは、共有単結合、NH、N(R)、O、C(=O)O、またはC(=O)であり、(iii)RおよびR(存在する場合)は、(1)および(2)より独立して選ばれ、(1)は水素であり、(2)は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cシクロアルキル、4〜7員のヘテロシクロアルキル、フェニル、チエニル、ピリジル、ピリミジニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリダジニル、およびピラジニルであって、そのそれぞれは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C〜Cアルキル、およびC〜Cアルコキシより独立して選ばれる、0〜4個の置換基で置換されている。代表的なR、R、R、およびR基としては、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜CアルコキシC〜Cアルキル、C〜Cヒドロキシアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノ、フェニル、およびピリジルが挙げられる。ある実施の形態では、RおよびRはそれぞれ、水素、メチル、またはエチルである。ある実施の形態では、Rは、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜CアルコキシC〜Cアルキル、C〜Cヒドロキシアルキル、トリフルオロメチル、フェニル、およびピリジルより選ばれる。
【0066】
ある実施の形態において、ArおよびRは前記のとおりであり、Zは窒素であり、ZはCRである。このような化合物における代表的なR、R、およびR基としては、例えば、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、およびC〜Cアルコキシが挙げられる。他の実施の形態では、ArおよびRは前記のとおりであり、ZはCRであり、Zは窒素である。このような化合物における代表的なR、R、およびRとしては、例えば、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、およびC〜Cアルコキシが挙げられる。更に別の実施の形態では、ArおよびRは前記のとおりであり、ZおよびZは窒素である。このような化合物における代表的なRおよびR基としては、例えば、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、およびC〜Cアルコキシが挙げられる。
【0067】
本件に提示のある化合物においては、Rは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、あるいは、モノまたはジ(C〜Cアルキル)アミノ(望ましくは、C〜CアルキルまたはC〜Cアルケニル)であって、そのそれぞれは、ハロゲン、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、フェニルC〜Cアルキル、およびフェニルC〜Cアルコキシより独立して選ばれる、0〜2個の置換基で置換されている。R基としては、例えば、エチル、プロピル、ブチル、エトキシ、およびメトキシメチルが挙げられる。
【0068】
およびRは一般に、水素、ハロゲン、または低級アルキルであり、ある実施の形態においては両方とも水素である。
【0069】
ある化合物において、R、R、R、およびRは、(a)および(b)より独立して選ばれ、
(a)は、水素、ハロゲン、およびシアノであり、
(b)は、次の構造式で示される基である。
【化17】


式中、
(i)Lは共有単結合であり、
(ii)Gは、共有単結合、NH、N(R)、O、C(=O)O、またはC(=O)であり、
(iii)RおよびRは、(1)および(2)より独立して選ばれ、(1)は水素であり、(2)は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキル、フェニル、チエニル、ピリジル、ピリミジニル、チアゾリル、およびピラジニルであって、そのそれぞれは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C〜Cアルキル、およびC〜Cアルコキシより独立して選ばれる、0〜4個の置換基で置換されている。
【0070】
このような化合物のあるものにおいては、R、R、R、およびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜CアルコキシC〜Cアルキル、C〜Cヒドロキシアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、C〜Cカルボキシラート、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノ、フェニルC〜Cアルキル、ピリジルC〜Cアルキル、および(4〜7員のヘテロシクロアルキル)C〜Cアルキルより独立して選ばれる。このような化合物のひとつのカテゴリーにおいては、RおよびRは、水素、メチル、およびエチルより独立して選ばれる。
【0071】
前述のように、Zは窒素またはCRであり、Zは窒素またはCRであり、Zは窒素またはCRである。ある化合物においては、Zは窒素であり、ZはCRであり、ZはCRである。このような化合物としては、R、R、およびRが、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜CアルコキシC〜Cアルキル、C〜Cヒドロキシアルキル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フェニル、およびピリジルより独立して選ばれるものが挙げられる。その他の化合物では、ZはCRであり、Zは窒素であり、ZはCRである。このような化合物としては、R、R、およびRが、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜CアルコキシC〜Cアルキル、C〜Cヒドロキシアルキル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フェニル、およびピリジルより独立して選ばれるものが挙げられる。更に別の化合物では、ZおよびZは窒素であり、ZはCRである。このような化合物としては、RおよびRが、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜CアルコキシC〜Cアルキル、C〜Cヒドロキシアルキル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フェニル、およびピリジルより独立して選ばれるものが挙げられる。その他の化合物においては、ZおよびZは窒素であり、ZはCRである。このような化合物としては、RおよびRが、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜CアルコキシC〜Cアルキル、C〜Cヒドロキシアルキル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フェニル、およびピリジルより独立して選ばれるものが挙げられる。
【0072】
本件に提示の化合物は、標準的な in vitro レセプタ結合性試験による測定で検出可能なほどに、GABAレセプタへのリガンド結合性を変える(調節する)。ここでいう“GABAレセプタリガンド結合性試験”とは、実施例10に提示の標準的な in vitro レセプタ結合性試験を指すものである。つまり、比較試験は、GABAレセプタ調製物を、フルマゼニル(Flumazenil)などの標識化(例えば、H)リガンドと、非標識の供試化合物と共に培養して行う。検出可能なほどにGABAレセプタへのリガンド結合性を変える化合物を加えて培養を行うと、化合物の無い状態で結合した標識の量と比較して、GABAレセプタ調製物に結合した標識の量が増減すると考えられる。望ましくは、このような化合物は、1μM以下、より望ましくは500nM、100nM、20nM、または10nM以下のGABAレセプタでのKiを示す。in vitro での結合性の測定に用いるGABAレセプタは、様々な由来源、例えばラット皮質の調製物から、またはクローン化ヒトGABAレセプタ発現細胞から得られる。
【0073】
ある実施の形態において、経口的バイオアベイラビリティ(致死量以下、または好ましくは薬学的に許容可能な経口投与量、望ましく2g以下、より望ましくは1gまたは200mg、あるいはそれ以下で、検出可能な in vivo 効果を生じることができる)、低毒性(GABAレセプタ調節量を患者(畜)に投与しても毒性を示さない化合物が望ましい)、最小限の副作用(GABAレセプタ調節量の化合物を患者(畜)に投与した場合に生じる副作用が、プラセボと同程度の化合物が望ましい)、血清タンパク結合性が小さい、適当な in vitro および in vivo 半減期(Q.I.D.投与、望ましくはT.I.D.投与、より望ましくはB.I.D.投与、最も望ましくは1日1回投与が可能となる in vivo 半減期に等しい、in vitro 半減期を示す化合物が望ましい)などの好ましい薬学的性質を備えた化合物が望ましい。補体活性部位への体内分布も望ましい(例えば、CNS疾患の治療に用いる化合物は、望ましくは血液脳関門を通過するが、末梢性疾患の治療に使用する化合物の脳内濃度は一般に低い方が望ましい)。
【0074】
これらの特性の評価と、特定の用途に優れた化合物の同定には、当該技術で公知のごく一般的な試験法を用いる。例えば、バイオアベイラビリティの予測に用いる試験法としては、Caco−2細胞単一層などのヒト腸管細胞単一層通過輸送性が挙げられる。ヒトにおける化合物の血液脳関門の通過性は、化合物を投与した(例えば、静脈内に)実験動物における化合物の脳内濃度から予測できる。血清タンパク結合性は、Oravcovaら,(1996) Journal of Chromatography B 677:1-27 に記載のアルブミン結合性試験などから予測できる。化合物の半減期は、効果的な量とするために必要な化合物の投薬頻度に反比例する。化合物の in vitro 半減期は、クーンツ(Kuhnz)およびギーシェン(Gieschen)(1998) Drug Metabolism and Disposition 26:1120-27に記載のミクロソーム半減期の測定から予測できる。
【0075】
前述のように、本件で提示の望ましい化合物は無毒である。一般的に、本件で用いる“無毒”とは、相対的な意味と理解されるべきもので、米国食品医薬品局(FDA)により哺乳動物(望ましくはヒト)への投与が承認された、あるいは、制定された基準に適い、FDAにより哺乳動物(望ましくはヒト)への投与が承認され得る物質を指すものである。更に、より望ましい無毒性化合物は一般に次の基準の1つ以上を満たす。(1)細胞のATP生産を著しく阻害しない。(2)心臓QT間隔を有意に延長しない。(3)著しい肝臓腫脹を起こさない。(4)肝酵素の著しい放出を起こさない。
【0076】
本件で用いる“細胞のATP生産を著しく阻害しない”化合物とは、実施例12に記載の方法で試験した場合に、細胞ATP濃度を50%以上減少させない化合物である。望ましくは、実施例12に記載の方法で処理した細胞が、未処理細胞で測定されたATP濃度の80%以上のATP濃度を示すものである。この試験に用いるモジュレータ濃度は一般に、実施例11の試験におけるモジュレータのEC50またはIC50の、10倍、100倍、または1000倍以上である。
【0077】
“心臓QT間隔を有意に延長しない”化合物とは、治療的効果を生じる in vivo 濃度とする最小用量の2倍量を投与したモルモット、ミニブタ、またはイヌにおいて、心臓QT間隔(心電図記録検査法により測定)に統計的に有意な延長を生じない化合物である。ある望ましい実施の形態では、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、40、または50mg/kgの用量を非経口的または経口的に投与しても、心臓QT間隔に統計的に有意な延長が生じない。“統計的に有意”とは、スチューデントのt検定などの統計的有意性の標準パラメトリック評価を用いた測定で、p<0.1、より望ましくはp<0.05の有意水準において対照と差が生じることを意味する。
【0078】
“著しい肝臓腫脹を起こさない”化合物は、治療的効果を生じる in vivo 濃度とする最小用量の2倍量を、5〜10日間、実験用齧歯類(例えば、マウスまたはラット)に毎日投与した場合に、肝臓/体重比の増加が、比較対照を100%以上超えない。より望ましい実施の形態では、この用量で、比較対照の75%または50%以上の肝臓の腫脹を起こさない。齧歯類以外のほ乳類(例えば、イヌ)を用いた場合、この用量で、比較用未処理対照の50%以上、望ましくは25%以上、更に望ましくは10%以上の肝臓/体重比の増加を起こしてはならない。このような試験に好ましい用量としては、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、40、または50mg/kgの非経口的または経口的投与が挙げられる。
【0079】
同様に、“肝酵素の著しい放出を促進しない”化合物は、治療的効果を生じる in vivo 濃度とする最小用量の2倍量を投与した場合に、実験用齧歯類の、ALT、LDH、またはASTの血清濃度を、比較用の模擬治療対照の3倍以上(望ましくは2倍以上)には上げない。より望ましい実施の形態では、この用量で、比較対照の75%または50%以上、これらの血清濃度を上げない。あるいは、“肝酵素の著しい放出を促進しない”化合物は、in vitro 肝細胞試験において、化合物の最小 in vivo 治療濃度の2倍に等しい濃度(in vitroで肝細胞と接触および培養する培地またはその他同様の溶液中での)で、比較用模擬処理対照細胞の培地で測定されたベースライン濃度を超えて、これら全ての肝酵素の培地への検出可能な放出を引き起こさない。より望ましい実施の形態では、これらの化合物の濃度が化合物の最小 in vivo 治療濃度の5倍、望ましくは10倍であっても、ベースライン濃度を超えるこれら全ての肝酵素の培地への放出は検出されない。
【0080】
別の実施の形態では、ある望ましい化合物は、治療的効果を生じる最低 in vivo 濃度に等しい濃度で、CYP1A2活性、CYP2A6活性、CYP2C9活性、CYP2C19活性、CYP2D6活性、CYP2E1活性、またはCYP3A4活性などのミクロソームシトクロムP450酵素活性を、阻害または誘発しない。
【0081】
ある望ましい化合物は、治療的効果を生じる最低 in vivo 濃度に等しい濃度で、染色体異常誘発性または突然変異促進性(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞を用いた vitro 小核試験、マウスリンパ腫試験、ヒトリンパ球染色体異常試験、齧歯類骨髄小核試験、エイムス試験、等の標準試験法を用いて求めた場合)を持たないものである。他の実施の形態では、ある望ましい化合物は、この濃度で姉妹染色分体交換(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞での)を誘発しない。
【0082】
検出のため、以下により詳細に述べるように、本件に提示の化合物を同位体によって標識化または放射性標識化する。このような化合物は、前述の化合物と同一であるが、実際には1個以上の原子が、天然に通常見られる原子量または質量数とは異なる原子量または質量数を持つ原子により置き換わったものである。本件に提示の化合物に組み込むことのできる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、および塩素の同位体、例えば、H、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36Clが挙げられる。更に、ジュウテリウム(すなわち、H)などの重い同位体で置換すると代謝安定性が高まって、in vivo での半減期が大きくなり、または所要投与量が減少し、治療に有利となるため場合によっては好ましい。
【0083】
上記のように、ラセミ化合物および光学活性体などの異なる立体異性体も本発明に含まれる。ある実施の形態では、単一の鏡像異性体(すなわち、光学活性体)とすることが好ましい。単一鏡像異性体の標準的製造法としては、不斉合成およびラセミ化合物の分割が挙げられる。ラセミ化合物の分割は、分割剤存在下での結晶化、または、例えばキラルHPLCカラムを用いたクロマトグラフィなど、一般的な方法で行うことができる。
【0084】
<薬剤組成物>
本発明はまた、少なくとも1つの本件に提示のGABAレセプタモジュレータを、少なくとも1つの生理学的に許容できるキャリヤまたは賦形剤と組み合わせて含む薬剤組成物を提示する。このような化合物は、GABAレセプタの調節が望まれる患者(例えば、苦痛を伴う処置のため健忘症を起こすことが有益な患者、あるいは、不安、うつ病、睡眠障害、または認知障害の患者)の治療に用いられる。薬剤組成物は、例えば、水、緩衝液(例えば、中性緩衝食塩水またはリン酸緩衝食塩水)、エタノール、鉱油、植物油、ジメチルスルホキシド、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、ショ糖、またはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、アジュバント、ポリペプチド、または、グリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤、EDTAなどのキレート化剤、またはグルタチオン、および/または防腐剤を含む。望ましい薬剤組成物は、ヒトまたは他の動物(例えば、犬や猫などのコンパニオンアニマル)への経口投与用に配合したものである。所望ならば、追加のCNS活性剤など他の活性成分も加えて良い。
【0085】
薬剤組成物は、例えば、局所、経口、経鼻、直腸、または非経口投与など適当な投与法に応じて配合する。ここで用いる“非経口”には、皮下、皮内、脈管内(例えば、静脈内)、筋肉内、脊髄内、頭蓋内、クモ膜下腔または硬膜下腔内、および腹腔内注射、また同様な注射または注入方法が含まれる。ある実施の形態では、経口使用に適した形の組成物が好ましい。このような形態としては、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水溶液または油状懸濁液、分散可能な粉剤または顆粒、エマルション、硬または軟カプセル、あるいはシロップまたはエリキシルが挙げられる。更に別の実施の形態では、本発明の組成物を凍結乾燥物として調剤する。
【0086】
経口使用のための組成物は、飲み易い製剤とするために、甘味剤、着香剤、着色剤、または保存料などの1つ以上の成分を更に加える。錠剤は、錠剤の製造に適した生理学的に許容可能な賦形剤と混ぜ合わせた活性成分を含む。このような賦形剤としては、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウム)、造粒剤および崩壊剤(例えば、コーンスターチまたはアルギン酸)、結合剤(例えば、澱粉、ゼラチン、またはアラビアゴム)、および滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルク)が挙げられる。錠剤はコーティングしなくても良く、あるいは、胃腸管での崩壊と吸収を遅らせてより長時間作用を持続させるため、公知の手法でコーティングしても良い。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を用いることができる。
【0087】
経口使用用の製剤は、活性成分を不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリン)と混合した硬ゼラチンカプセルとして、あるいは、活性成分を水または油性媒質(例えば、ピーナツ油、流動パラフィン、またはオリーブ油)と混合した軟ゼラチンカプセルとしても良い。
【0088】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した1つ以上の賦形剤と混合した活性材料を含む。このような賦形剤としては、懸濁剤(例えば、ナトリウム=カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアラビアゴム);および分散または湿潤剤(例えば、レシチンなどの天然由来リン脂質、ポリオキシエチレンステアラートなどのアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、ヘプタデカエチレンオキシセタノールなどのエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアートなどの、エチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトールから誘導した部分エステル化物との縮合生成物、あるいは、ポリエチレンソルビタンモノオレアートなどの、エチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導した部分エステル化物との縮合生成物)が挙げられる。水性懸濁液には更に、1つ以上の保存料、例えばp−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはn−プロピル、1つ以上の着色剤、1つ以上の着香剤、および/または1つ以上の甘味剤、例えばショ糖またはサッカリンなどを加えても良い。
【0089】
油状懸濁液は、活性成分を植物油(例えば、落花生油、オリーブ油、ごま油、またはココナッツオイル)または流動パラフィンなどの鉱油中に懸濁して調製する。油状懸濁液には、みつろう、硬パラフィン、またはセチルアルコールなどの増粘剤を加えても良い。1つ以上の甘味剤および/または着香剤を加えて、飲み易い経口製剤としても良い。このような懸濁液には、アスコルビン酸などの酸化防止剤を加えて保存性を良くすることができる。
【0090】
水を加えて水性懸濁液を調製するのに適した分散可能な粉および顆粒は、活性成分を分散または湿潤剤、懸濁剤、および1つ以上の保存料と混合して製造する。適当な分散または湿潤剤および懸濁剤の例は既に先に挙げた。甘味剤、着香剤、および着色剤などの追加の賦形剤を加えても良い。
【0091】
薬剤組成物は水中油エマルションの形としても良い。油相は、植物油(例えば、オリーブ油または落花生油)または鉱油(例えば、流動パラフィン)、あるいはそれらの混合物である。適当な乳化剤は、天然ゴム(例えば、アラビアゴムまたはトラガカントゴム)、天然リン脂質類(例えば、大豆、レシチン、および、脂肪酸とヘキシトールから誘導したエステル化物類または部分エステル化物類)、無水物類(例えば、ソルビタンモノオレアート)、および、脂肪酸とヘキシトールから誘導した部分エステル化物とエチレンオキシドとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチンソルビタンモノオレアート)である。エマルションには更に、甘味剤および/または着香剤を加えても良い。
【0092】
シロップおよびエリキシルは、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、またはショ糖などの甘味剤を加えて調剤する。この製剤には、1つ以上の粘滑剤、防腐剤、着香剤および/または着色剤を更に加えても良い。
【0093】
薬剤組成物は、無菌で注入可能な水性または油性懸濁液として調製しても良い。化合物は、使用するビヒクルと濃度に応じて、ビヒクル中へ懸濁させ、または溶解させることができる。このような組成物は、先に示したような適当な分散剤、湿潤剤および/または懸濁化剤を用いた公知の技術に従って調剤する。条件に適ったビヒクルおよび溶媒の中でもよく使われるのは、水、1,3−ブタンジオール、リンゲル液、および等張性塩化ナトリウム溶液である。更に、溶媒または懸濁媒質として、無菌の固定油を用いても良い。これには、合成モノまたはジグリセリドなどの低刺激性固定油が用いられる。更に、注射用組成物の調剤には、オレイン酸などの脂肪酸が使えることもわかった。また、局所麻酔薬、防腐剤、および/または緩衝剤などのアジュバントもビヒクルに溶解可能である。
【0094】
薬剤組成物は、座薬(例えば、直腸投与用)の形にすることもできる。このような組成物は、常温で固体であるが直腸温では液体となる、つまり直腸内で溶けて薬物を放出する適当な非刺激性の賦形剤と薬物とを混合して調製することができる。適当な賦形剤としては、例えば、カカオ脂およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0095】
ヒト以外の動物への投与には、組成物を動物の餌または飲料水に加えても良い。動物がその食餌と共に適量の組成物を摂取するよう、動物の餌および飲料水組成物に配合すると便利である。組成物を、餌または飲料水添加用のプレミックスとしても便利である。
【0096】
薬剤組成物を、徐放性製剤(すなわち、投与後に化合物をゆっくりと放出させるカプセルなどの製剤)として調剤しても良い。このような製剤は一般に公知の技術を用いて調製し、例えば、経口、直腸、または皮下埋め込みにより、あるいは所望の標的部位への埋め込みにより投与する。このような製剤に用いられるキャリヤは生体適合性であり、更に生分解性である。比較的一定した濃度で活性化合物を放出する製剤が望ましい。徐放性製剤に含まれる化合物の量は、埋め込み部位、放出の速度と期待される持続時間、また治療または予防すべき状態の性質に応じて変わる。
【0097】
本件に提示の化合物は一般に、薬剤組成物に治療的有効量で含まれている。治療的有効量とは、CNS疾患の症状が軽減するなど、患者の利益が認められる量である。望ましい濃度は、 in vitro においてGABAレセプタリガンドのGABAレセプタへの結合を十分に阻害する濃度である。投薬量が、体重当たり1日約0.1〜約140mg/kg(ヒトの患者に対して1日約0.5mg〜約7g)の範囲となる組成物が好ましい。キャリヤ材料と組み合わせて1回分の投与体とする活性成分の量は、治療を受ける主体(host)と具体的な投与法に応じて変わる。投薬単位体は一般に約1〜約500mgの活性成分を含む。しかし、特定の患者に対する最適用量は、使用する特定の化合物の活性;患者の年齢、体重、全身的健康状態、性別、および食事;投与の時間および経路;排出速度;薬の組み合わせなど同時に行われている全ての治療;治療を受ける特定の疾患の種類と重症度など、様々な要因によって決まることは理解されよう。最適用量は、当該技術で公知の通常の試験および手法を用いて定められる。
【0098】
薬剤組成物を、不安、うつ病、睡眠障害、注意欠陥障害、またはアルツハイマー痴呆などのCNS疾患の治療用として包装する。包装済み医薬製剤は、治療的有効量の少なくとも1つの本件に示す化合物を納めた容器と、納められた組成物がCNS疾患の治療に用いられることを示す使用説明書(例えば、ラベル)とを含む。
【0099】
<使用法>
ある態様において、本発明は、CNS疾患の進行を抑える方法を提示する。つまり、本件に提示の治療法を、現在ある疾患の治療に用い、あるいは、CNS疾患の認められない患者におけるこのような疾患の予防、軽症化、または発症を遅らせるために用いる。CNS疾患については以下に更に詳しく述べる。またCNS疾患は、当該技術において確立された基準を用いて診断および観察する。あるいは、または更に、本件に提示の化合物は、短期記憶の向上のため患者に投与しても良い。患者には、ヒト、飼い慣らされたコンパニオンアニマル(イヌなどのペット)、および家畜動物が含まれ、投与量および治療法は前述のとおりである。
【0100】
投薬の頻度は、使用する化合物および治療または予防すべき特定の疾病によって変わる。一般に、多くの疾患の治療には、1日4回以下の投薬計画が好ましい。睡眠障害の治療には、速やかに有効濃度に達する1回の投与が望ましい。患者は一般に、治療または予防すべき症状に適した本技術の通常の技術者によく知られた評価法を用いて、治療的効果を観察する。
【0101】
望ましい実施の形態では、本件に提示の化合物を、このような疾患の治療を必要とする患者の治療に用いる。一般に、このような患者は、GABAレセプタを調節する量、望ましくはCNS疾患の1つ以上の症状を変えるのに十分な量の、構造式Iの化合物(またはその薬学的許容体)を用いて治療する。αβγおよびαβγレセプタサブタイプでの作用薬として働く化合物は、恐慌性障害、強迫性障害、および全般性不安障害などの不安障害や、心的外傷後ストレスおよび急性ストレス障害などのストレス障害の治療に特に有用である。αβγおよびαβγレセプタサブタイプでの作用薬として働く化合物は更に、抑うつ性または双極性障害、精神分裂病、および睡眠障害の治療に有用であり、また加齢関連認知低下およびアルツハイマー病の治療にも使用できる。αβγレセプタサブタイプまたはαβγおよびαβγレセプタサブタイプでの逆作用薬として働く化合物は、ダウン症候群、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患、および発作関連痴呆などによって生じる認知障害の治療に特に有用である。αβγレセプタサブタイプでの逆作用薬として働く化合物は、記憶障害患者における記憶、特に短期記憶の向上による認知障害の治療に特に有用であり、一方、αβγレセプタサブタイプでの作用薬として働くものは、健忘症の誘導に特に有用である。αβγレセプタサブタイプでの作用薬として働く化合物は、てんかんなどの痙攣性障害の治療に有用である。ベンゾジアゼピン部位での拮抗薬として働く化合物は、ベンゾジアゼピン過量の効果を抑えるのに有効であり、また薬物およびアルコール嗜癖の治療に有用である。
【0102】
本件に提示の化合物および組成物を用いて治療可能なCNS疾患としては以下のものが挙げられる。
うつ病:例えば、うつ病、非定型うつ病、双極性障害、双極性障害の抑うつ相
不安:例えば、全般性不安障害(GAD)、広場恐怖症、恐慌性障害+/−広場恐怖症、社会恐怖症、特定的恐怖症、心的外傷後ストレス障害、強迫性障害(OCD)、気分変調、動揺と不安を伴う適応障害、分離不安障害、予期不安急性ストレス障害、適応障害、循環気質
睡眠障害:例えば、原発性不眠症、日周期睡眠障害、睡眠異常NOS、悪夢障害などの錯眠、夜驚症、うつ病および/または不安あるいは他の精神障害から派生した睡眠障害、物質誘発性睡眠障害などの睡眠障害
認知欠陥:例えば、認知欠陥、アルツハイマー病、パーキンソン病、軽度認知欠陥(MCI)、加齢関連認知低下(ARCD)、発作、外傷性脳障害、AIDS関連痴呆、および、うつ病、不安、および精神病(精神分裂病および幻覚障害など)に伴う痴呆
注意欠陥障害:例えば、注意欠陥障害(ADD)および注意欠陥過活動性障害(ADHD)
発語障害:例えば、運動性チック、間代性構音障害、失流暢(dysfluency)、発語途絶(speech blockage)、構語障害、ツレット症候群、および痙攣性言語
【0103】
本件に提示の化合物および組成物は、患者の短期記憶(ワーキングメモリー)の向上にも使用できる。短期記憶損失を向上させるための化合物の治療的有効量は、数字暗記検査(forward digit span)および連続機械的暗記(serial rote learning)などの短期記憶機能の標準的試験において統計的に有意な向上が認められるのに十分な量である。例えば、このような試験は、患者の単語または文字を思い出す力を評価するよう設計されたものである。あるいは、短期記憶機能を評価するため、より徹底的な神経物理学的試験法を用いても良い。短期記憶向上のための治療を受ける患者は、記憶障害と診断された、またはそのような障害が進行し易いと認められた(必要条件ではない)者である。
【0104】
別の態様では、本発明は、他の(1つ以上の)CNS剤の作用(または治療的効果)を高める方法を提示する。この方法は、GABAレセプタ調節量の本件に提示の化合物を、他のCNS剤と共に投与する工程を含む。このようなCNS剤としては、不安のための、セロトニンレセプタ(例えば、5−HT1A)作用薬および拮抗薬;不安およびうつ病のための、ニューロキニンレセプタ拮抗薬または副腎皮質刺激ホルモン放出因子レセプタ(CRF)拮抗薬;睡眠障害のための、メラトニンレセプタ作用薬;アルツハイマー痴呆などの神経変性障害のための、ニコチン様作用薬、ムスカリン様試剤、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、およびドパミンレセプタ作用薬、などが挙げられる(これらに限定するものではない)。ある実施の形態においては、本発明は、有効量の本件に提示のGABA作用薬化合物を選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)と共に投与することで、SSRIの抗うつ活性を相乗的に高める方法を提示する。化合物の有効量とは、他のCNS剤単独で治療した患者と比較して、患者の症状に変化が認められるのに十分な量である。併用投与は、公知の手法、例えば、ダ・ロッカ(Da-Rocha)ら,(1997) J. Psychopharmacology 11(3):211-218;スミスら, (1998) Am. J. Psychiatry 155(10):1339-45;および、リー(Le)ら, (1996) Alcohol and alcoholism 31(suppl.):127-132に記述の方法を用いて行うことができる。更に、PCT国際公開番号第WO99/47142号、第WO99/47171号、第WO99/47131号、および第WO99/37303号を参照のこと。
【0105】
本発明は、RO15−1788またはGABAなどの、ベンゾジアゼピン化合物(すなわち、ベンゾジアゼピン環構造を含む化合物)の、GABAレセプタへの結合を抑制する方法にも適している。この方法は、GABAレセプタ調節量の本件に提示の化合物と、GABAレセプタ発現細胞とを接触させる工程を含む。この方法は、 in vivoでの(例えば、 in vitroにおいてベンゾジアゼピン化合物またはGABAのGABAレセプタへの結合を阻害するのに十分な量の、本件に提示のGABAレセプタモジュレータを投与した患者において)ベンゾジアゼピン化合物のGABAレセプタへの結合を阻害する工程を含む(但し、これに限定するものではない)。ある実施の形態では、この方法はベンゾジアゼピン薬過量の治療に有効である。ベンゾジアゼピン化合物のGABAレセプタへの結合を阻害するのに十分なGABAレセプタモジュレータの量は、実施例10に記載のGABAレセプタ結合性試験により容易に求められる。
【0106】
別の態様では、本発明は、本件に提示のGABAレセプタモジュレータの in vitroでの様々な使用法を提示する。例えば、このような化合物は、組織片などの試料中におけるGABAレセプタの検出および位置測定用プローブとして、レセプタ活性試験での陽性対照として、GABAレセプタへの結合能が期待される候補試剤の判定のための標準および試薬として、あるいは、陽電子射出断層撮影法(PET)画像化のための、または単光子射出コンピュータ断層撮影法(SPECT)のための放射線トレーサとして使用できる。これらの試験法は、生体内におけるGABAレセプタの特定に用いることができる。これらの化合物は更に、GABAレセプタへの結合能が期待される候補医薬の判定における標準および試薬としても有用である。
【0107】
試料中のGABAレセプタの存在または不在を決定する方法においては、GABAレセプタモジュレータをGABAレセプタに結合させるような条件下で、試料を、本件に提示のGABAレセプタモジュレータと共に培養する。次に、試料中のGABAレセプタに結合したGABAレセプタモジュレータの量を測定する。例えば、GABAレセプタモジュレータを様々な公知の手法(例えば、本件に示すように、トリチウムなどの放射性核種で放射線標識化)のいずれかを用いて標識化し、試料(例えば、培養細胞調製物、組織調製物、またはその一部など)と共に培養する。適当な培養時間は一般に、試験期間の間に起こる結合の程度の分析から求める。培養後、結合しなかった化合物を除き、使用した標識に合った方法(例えば、放射線標識化化合物ではオートラジオグラフィまたはシンチレーション計数、発光基および蛍光基の検出には分光法を用いる)で結合した化合物を測定する。対照として、比較用試料を、放射線標識化化合物と、大量の非標識化化合物とに同時に接触させる。次に、結合しなかった標識化および非標識化化合物を同様に除いて、結合した標識を測定する。対照より供試試料中で多く標識が検出されれば、試料中にGABAレセプタがあることがわかる。検出定量法、例えば、培養細胞または組織試料中のGABAレセプタ類のレセプタオートラジオグラフィ(レセプタマッピング)は、“Current Protocols in Pharmacology” (1998) John Wiley & Sons, New York の8.1.1〜8.1.9節でクハー(Kuhar)の述べた方法で行う。
【0108】
例えば、本件に提示のGABAレセプタモジュレータは、細胞または組織試料中のGABAレセプタの検出に用いられる。これは、複数の比較用細胞または組織試料を調製し、そのうちの少なくとも1つを実験用試料として調製し、少なくとも1つを対照用試料として調製して行う。実験用試料は、本件に提示のGABAレセプタモジュレータのいずれとも以前接触したことのない、少なくとも1つの比較用細胞または組織試料を、選定したGABAレセプタモジュレータの検出できるよう標識化した調製物を最初の測定済みモル濃度で含む実験用溶液と接触(細胞および組織試料中で、RO15−1788をGABAレセプタに結合させるような条件下で)させて調製する。対照試料は、実験用試料と同様に調製し、更に同化合物の非標識化調製物をより高いモル濃度で含むものである。
【0109】
次に、実験用および対照用試料を洗って、結合しなかった可検出標識化化合物を除く。次に、残留する結合した可検出標識化化合物の量を測定し、実験用および対照用試料中の可検出標識化化合物の量を比較する。洗浄した(1つ以上の)実験用試料で、(1つ以上の)対照用試料より多い可検出標識が検出されれば、実験用試料中にGABAレセプタが存在することがわかる。
【0110】
この操作に用いられる可検出標識化GABAレセプタモジュレータは、放射性標識、あるいは直接または間接発光性標識で標識化する。この操作で組織片を用い、標識が放射性標識ならば、結合した標識化化合物はオートラジオグラフィで検出する。
【0111】
本件に提示の化合物は、様々な公知の細胞培養または細胞分離法にも使用できる。例えば、スクリーニング、評価、および培地中で成長させるための固定化GABAレセプタ発現細胞に用いるため、化合物を組織培養プレートまたは他の細胞培養支持体の内面に結合させても良い。この結合は、前記の方法など適当な手法で、またその他の標準的な手法で行うことができる。化合物はまた、in vitroでの細胞の同定と分類を容易にし、GABAレセプタ発現細胞の選定を行うために使用できる。望ましくは、この方法に用いる(1つ以上の)化合物は、本件に示すように標識化する。ある望ましい実施の形態では、フルオレセインなどの蛍光マーカに結合させた化合物を細胞と接触させ、次にこれを蛍光活性化細胞分類法(FACS)で分析する。
【0112】
他の態様では、 in vitro または in vivo でのリガンドのGABAレセプタへの結合性を調節する方法を提示する。この方法は、リガンドのレセプタへの結合に適した条件下で、GABAレセプタを十分な量の本件に提示のGABAレセプタモジュレータと接触する工程を含む。GABAレセプタは、溶液中に、培養または単離された細胞調製物中に、または患者の体内に存在する。望ましくは、GABAレセプタは、ほ乳類の脳中に存在する。一般に、レセプタと接触させる化合物の量は、例えば実施例10に記載の結合性試験で in vitro でのリガンドのGABAレセプタへの結合性を変えるのに十分でなければならない。
【0113】
本件では更に、フルマゼニルのレセプタへの結合に適した条件下で、 in vitro または in vivo の両方において、前記のように十分量の化合物とGABAレセプタとを接触させることにより、細胞性GABAレセプタのシグナル変換活性(特に、塩化物イオン伝導性)を変える方法を提示する。GABAレセプタは、溶液中に、培養または単離された細胞または細胞膜調製物中に、あるいは患者の体内に存在し、化合物の量は、in vitroにおいてGABAレセプタのシグナル変換活性を変えるのに十分な量である。ある実施の形態では、レセプタと接触させる化合物の量は、例えば実施例10に記載の結合性試験で in vitro でのフルマゼニルのGABAレセプタへの結合性を変えるのに十分でなければならない。シグナル変換活性に対する効果は、標準的な手法を用いた細胞の電気生理学的変化として測定する。GABAレセプタのシグナル変換活性を変えるのに十分な化合物の量は、実施例11に記載の試験法などのGABAレセプタシグナル変換試験より求められる。in vivo でのGABAレセプタ発現細胞は、神経細胞または脳細胞である(これに制限するものではない)。このような細胞は、本発明の化合物を含む体液との接触、例えば脳脊髄液との接触を通じて本化合物と接触する。in vitro における細胞内のGABAレセプタのシグナル変換活性の変化は、GABAレセプタ発現細胞をGABAの存在下で本発明の化合物と接触させた際の、このような細胞の検出可能な電気生理学的変化から求められる。
【0114】
細胞の電気生理学的変化の定量には、細胞内記録またはパッチクランプ記録が用いられる。本発明の化合物を投与された動物の挙動における再現性のある変化もまた、動物のGABAレセプタ発現細胞の電気生理学的変化が起きたことを示すと解釈できる。
【0115】
<化合物の調製>
本件に提示の化合物は一般に、標準的な合成法を用いて調製する。開始物質は一般に、ミズーリ州セントルイス、シグマ−アルドリッチ・コーポレーション(Sigma-Aldrich Corp.)などメーカーから容易に入手でき、あるいは本件に示すように調製する。構造式Iの化合物の調製に適した代表的な手法は、次のスキームに概要を示したものであるが、これは本発明の範囲または意図をここに示す特定の試薬および条件に制限するものではない。当業者ならば、本発明に包含される化合物の製造のため、試薬および条件を変え、また追加の工程を用いても良いことは理解されよう。所望の変換を行うため、反応性官能基を保護する必要がある場合もある。一般に、このような保護基の必要性、更にこれらの基の付加と脱離に必要な条件は、有機合成の技術に精通した者には明らかであろう。以下のスキームでは特に指示のない限り変数は構造式Iに定義したとおりである。
【0116】
以下のスキームおよびそれに伴う実施例で用いる略語は次のとおりである。
Ac 酢酸エステル
AcO 酢酸無水物
BINAP 2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル
CDCl 重水素化クロロホルム
δ 化学シフト
DCM ジクロロメタン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
HPLC 高速液体クロマトグラフィ
H NMR プロトン核磁気共鳴
Hz ヘルツ
LC/MS 液体クロマトグラフィ/質量分光測定
mCPBA m−クロロペルオキシ安息香酸
MeOH メタノール
MS 質量分光測定
M+1 質量+1
mCPBA m−クロロペルオキシ安息香酸
Ph フェニル
Pd(PPh テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)
Pd(PhP)Cl ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)
PTLC 予備薄層クロマトグラフィ
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィ

<反応スキーム>
【化18】

【0117】
スキーム1に、イミダゾール融合ピラジン類(8)の合成を示す。ヒドロキシピラジン(1)を、J. Am. Chem. Soc. 74:1580 (1952) に基本的に従って調製し、POClで処理してクロロピラジン(2)に変換する。(2)をmCPBAで処理すると、塩素に対してメタ位の窒素が選択的に酸化されて(3)が生じる。(3)はPOClと反応してクロロメチル誘導体(4)を生じ、これをアリール置換イミダゾールとカップリングさせて(5)とする。Pdカップリング条件下で(5)をアミノ化し、次に酸開裂により(7)を生じる。これをα−ハロアルデヒドまたはケトンと縮合すると生成物(8)が生じる。なお、上記および以下、スキーム中の化合物の数字を文章中では括弧書きで記載することとする。
【化19】

【0118】
スキーム2に、トリアゾール融合ピラジン類(11)の合成を示す。クロロピラジン(9)をヒドラジンで処理すると(10)が生じる。これをカルボン酸と共に還流して(11)とする。
【化20】

【0119】
スキーム3に、イミダゾール融合ピラジン類(14)の合成を示す。Pd(PPhの存在下で、(12)をトリブチルスズビニルエチルエーテルと反応させる。続く酸加水分解によりケトン(13)が生じる。(13)をホルムアミドおよびギ酸と反応させ、次にPOClと反応させて生成物(14)とする。
【化21】

【0120】
スキーム4に、トリアゾール融合ピラジン類(17)の合成を示す。(7)をN−(1,1−ジメトキシアルキル)−N,N−ジメチルアミンと反応させ、次にヒドロキシルアミンで処理して、中間体(15)を生じる。(15)を無水酢酸を用いてアセチル化し、次に酢酸中で環化して生成物(17)とする。
【0121】
放射性同位体である原子を少なくとも1つの含む前駆物質を用いてその合成を行うことにより、化合物を放射線標識化する。それぞれの同位体は、望ましくは炭素(例えば、14C)、水素(例えば、H)、硫黄(例えば、35S)、またはヨウ素(例えば、125I)である。トリチウム標識化化合物は、基質としてこの化合物を用いた、トリチウム化酢酸中での白金触媒交換、トリチウム化トリフルオロ酢酸中での酸触媒交換、または、トリチウムガスとの不均一触媒交換により、触媒を用いて調製することもできる。更に、前駆物質のあるものに、適宜、トリチウムガスとのトリチウム−ハロゲン交換、不飽和結合のトリチウムガス還元、またはホウトリチウム化ナトリウムを用いた還元を行っても良い。放射線標識化化合物の調製は、放射線標識化プローブ化合物のカスタム合成に長けた放射性同位体供給業者によって簡便に行っても良い。
【0122】
次の実施例は説明の手段として示すものであって、制限のためではない。特に明示されない限り、全ての試薬および溶媒は標準的な市販グレードのものであり、更に精製を行うことなく用いる。本件に示す開始物質および中間体は一般に、業者より入手し、市販の有機化合物より調製し、または公知の合成法を用いて調製する。
【実施例】
【0123】
次の実施例に述べる開始物質および様々な中間体は、業者より入手し、市販の有機化合物より調製し、または公知の合成法を用いて調製する。本発明の中間体の調製に適した方法の代表的な例も以下に示す。
【0124】
以下の実施例において、本件の化合物の特定に用いるLC/MS条件は以下のとおりである。
【0125】
1.分析用HPLC/MS装置:分析は、ウォーターズ(Waters)600シリーズポンプ(マサチューセッツ州ミルフォード、ウォーターズ・コーポレーション(Waters Corporation)製)、ウォーターズ996ダイオードアレイ検出器およびギルソン(Gilson)215オートサンプラー(ウィスコンシン州ミドルトン、ギルソン・インク(Gilson Inc.)製)、 Micromass(登録商標)LCTタイム・オブ・フライト・エレクトロスプレイ(time-of-flight electrospray)イオン化質量分析器を用いて行った。データは、OpenLynx Global Server(登録商標)、OpenLynx(登録商標)および AutoLynx(登録商標)処理を備えた、MassLynx(登録商標)4.0ソフトウェアを用いて得た。
【0126】
2.分析用HPLC条件:4.6×50mm、 Chromolith(登録商標) SpeedROD RP-18e カラム(ドイツ国ダルムシュタット、メルク社(Merck KGaA)製);UV 10スペクトル/秒、測定範囲220〜340nm;流速6.0ml/分;注入量1μl
勾配条件 − 移動相Aは、水95%、MeOH5%で0.05%TFA添加;移動相Bは、MeOH95%、水5%で0.025%TFA添加;勾配 0〜0.5分の間10〜100%B、1.2分まで100%Bで保ち、1.21分で10%Bに戻す;注入間隔2.15分
【0127】
3.分析用MS条件:キャピラリ電圧3.5kV;コーン電圧30V;脱溶媒およびソース温度はそれぞれ350℃および120℃;スキャン時間0.22秒間、スキャン間遅延0.05分として質量範囲181〜750
【0128】
<実施例1>
6−[2−(6−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−5−プロピルイミダゾ[1,2−a]ピラジンの合成
【化22】

【0129】
1)5−メチル−6−プロピルピラジン−2−オール
この化合物は基本的に、J. Am. Chem. Soc. 74:1580 (1952)に記載の方法で調製した。得られた2つの異性体の混合物は、更に精製を行うことなく次の工程に用いた。(LC−MS(M+1)153.10)
【0130】
2)5−クロロ−2−メチル−3−プロピルピラジン
工程1で得られた5−メチル−6−プロピルピラジン−2−オールを含む異性体混合物(5g)とPOCl(10ml)とを、85℃で2時間加熱した。減圧下で過剰のPOClを除き、残分に氷水を加えた。飽和NaHCOを用いて混合物をアルカリ性とし、DCMで抽出した。有機層をMgSO上で乾燥後、溶媒を除いた。粗生成物をヘキサン:酢酸エチル(10:1)を用いたシリカゲルカラムに通して精製し、2つの異性体の混合物を無色の油として得た。
【0131】
3)5−クロロ−2−メチル−3−プロピルピラジン−1−オール
工程2で得られた5−クロロ−2−メチル−3−プロピルピラジンを含む混合物(0.9g)と、mCPBA(1.7g)とを、1,2−ジクロロエタン(20ml)に加えて65℃で一晩加熱した。混合物を室温まで放冷し、飽和NaHCOで洗い、MgSOで乾燥後、溶媒を除いた。残分を、ヘキサン:酢酸エチル(5:2)を用いたシリカゲルカラムで精製し、5−クロロ−2−メチル−3−プロピルピラジン−1−オール(H NMR(CDCl)δ1.01(t,3H,J=7.5Hz),1.73(p,2H、J=7.5Hz),2.44(s,3H),2.78(t,2H,J=7.5Hz),8.09(s,1H);LC−MS(M+1)187.06)を得た。
【0132】
4)5−クロロ−2−クロロメチル−3−プロピルピラジン
5−クロロ−2−メチル−3−プロピルピラジン−1−オール(0.3g)とPOCl(0.5ml)との混合物を1時間加熱還流した。減圧下で過剰のPOClを除いた。残分をDCMに溶解し、飽和NaHCOで洗い、MgSOで乾燥後、溶媒を除いて油状物とし、これをヘキサン:エーテル(50:1)を用いたシリカゲルカラムで精製して、5−クロロ−2−クロロメチル−3−プロピルピラジン(H NMR(CDCl)δ1.03(t,3H,J=7.5Hz),1.81(p,2H,J=7.2Hz),2.86(t,2H,J=7.5Hz),4.70(s,2H),8.38(s,1H);LC−MS(M+1)205.04)を無色の油として得た。
【0133】
5)2−フルオロ−6−(1H−イミダゾール−2−イル)ピリジン
【化23】


a)2−フルオロピリジン−6−カルボキシアルデヒドの調製
【0134】
ジイソプロピルアミン(6.54ml、1.2当量)を30mlのTHFに溶解した溶液に、n−ブチルリチウム溶液(17.1ml、2.5Mヘキサン溶液)を0℃で滴下して加えた。0℃で15分間撹拌を続けた後、反応物を−78℃まで冷却した。冷たくなった溶液に、2−フルオロ−6−メチルピリジン(4.00ml、38.9mmol)を滴下して加えた。反応混合物を−78℃で1時間撹拌後、DMF(4.52ml、1.5当量)を加えて反応を止めた。反応物を−78℃で30分間保った後、0℃まで暖めた。この冷溶液を、過ヨウ素酸ナトリウム(24.9g)を120mlの水に加えた混合物に0℃で加えた。反応混合物を1時間かけてゆっくりと室温まで暖めた後、室温で24時間撹拌した。反応混合物をセライト(celite)の栓に通して濾過し、沈殿物を除いて、栓をエーテルで洗った。有機層を分け、重炭酸ナトリウム水溶液(1×40ml)で洗い、次に0.25MのKHPO(1×40ml)で、更にブライン(1×40ml)で洗った。有機溶液を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮した。
【0135】
b)2−フルオロ−6−(1H−イミダゾール−2−イル)ピリジンの調製
工程aで得られた粗アルデヒドの溶液に、メタノール(12ml)水性グリオキサール(6.21ml、40重量%水溶液)を滴下して加えた。この溶液を0℃に冷やし、水酸化アンモニウム水溶液(6.0ml、28重量%水溶液)を加えた。反応物を約1時間かけてゆっくりと室温まで暖めた後、更に室温で3時間撹拌した。減圧して大部分のメタノールを除き、反応混合物を水(10ml)で希釈して酢酸エチル(30ml)で抽出した。有機層をブライン(20ml)で洗い、ヘキサン(15ml)で希釈し、シリカゲルの栓(高さ0.25インチ(6.35mm)×直径1.25インチ(31.75mm))に通し、栓を余分の酢酸エチル:ヘキサン(2:1)(20ml)で洗った。溶離液を合わせて減圧下で濃縮し、粗製2−フルオロ−6−(1H−イミダゾール−2−イル)ピリジンを得た。
【0136】
6)5−クロロ−2−[2−(6−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−3−プロピルピラジン
5−クロロ−2−クロロメチル−3−プロピルピラジン(0.108g)と、2−フルオロ−6−(1H−イミダゾール−2−イル)ピリジン(0.086g)と、KCO(0.095g)とを、DMF(1ml)に加えた混合物を室温で一晩撹拌した。水(5ml)を加えた。この混合物を酢酸エチルで抽出し(15ml×3)、乾燥し、溶媒を留去して粗生成物とした。これを、5%メタノール/DCM を用いたシリカカラムで精製して、標記の生成物(H NMR(CDCl)δ0.99(t,3H,J=7.5Hz),1.76(p,2H,J=7.2Hz),1.91(t,2H,J=7.5Hz),6.04(s,2H),6.80(dd,1H,J=2.7,0.6Hz),7.09(d,1H,J=1.2Hz),7.21(d,1H,J=1.2Hz),7.82(q,1H,J=7.5Hz),8.14(dd,1H,J=2.7,0.6Hz),8.24(s,1H);LC−MS(M+1)332.07)とした。
【0137】
7)ベンズヒドリリデン−{5−[2−(6−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−6−プロピルピラジン−2−イル}アミン
【化24】


密閉した丸底の試験管を窒素でパージし、Pd(OAc)(14mg、5%)と、BINAP(43mg、5%)と、乾燥THFを入れた。この混合物にNを約5分間フラッシュした。撹拌しながら、5−クロロ−2−[2−(6−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−3−プロピルピラジン(0.21g)と、ベンゾフェノンイミン(0.13g)と、CsCO(0.42g)とを加え、開始物質が無くなるまでこの混合物を90℃に加熱した。混合物を室温まで放冷した。THFを除いて酢酸エチル(40ml)を加えた。この混合物を、水(10ml)と、ブライン(10ml)とで洗い、乾燥し、溶媒を除いて粗生成物を得た。粗生成物を、酢酸エチル:ヘキサン(2:1)を用いたシリカカラムで精製して、標記の化合物(H NMR(CDCl)δ0.79(t,3H,J=7.5Hz),1.52(p,2H,J=7.2Hz),2.74(t,2H,J=7.5Hz),5.93(s,2H),6.80(dd,1H,J=2.7,0.6Hz),6.91(s,1H),7.05−7.30(m,6H),7.34−7.49(m,3H),7.63(s,1H),7.75−7.85(m,3H),8.07−8.11(m,1H);LC−MS(M+1)477.15)を得た。
【0138】
8)5−[2−(6−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−6−プロピルピラジン−2−イルアミン
【化25】


室温で、ベンズヒドリリデン−{5−[2−(6−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−6−プロピルピラジン−2−イル}アミン(0.1g)をTHF(15ml)に溶解した。10mlの5%HCl水溶液を加え、混合物を室温で30分間撹拌した。THFを除き、混合物を飽和NaHCOで中和した。混合物をクロロホルムで抽出(30ml×3)した。有機相をMgSO上で乾燥した。溶媒を除いて白色固体とし、これをエーテルで洗浄して標記の生成物(LC−MS(M+1)313.14)を得た。
【0139】
9)6−[2−(6−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−5−プロピルイミダゾ[1,2−a]ピラジン
【化26】


5−[2−(6−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−6−プロピルピラジン−2−イルアミン(20mg)と、50%クロロアセトアルデヒド水溶液(0.2ml)とをDMF(5ml)に加えた混合物を、70℃で一晩加熱した。酢酸エチル(20ml)を加えた。この混合物を飽和NaHCOで洗い、乾燥した。5%メタノール/DCMを用いたPTLC分離により標記の生成物(H NMR(CDCl)δ0.97(t,3H,J=7.5Hz),1.63(p,2H,J=7.2Hz),3.17(t,2H,J=7.5Hz),6.14(s,2H),6.87(dd,1H,J=2.7,0.6Hz),7.13(d,1H,J=1.2Hz),7.28(d,1H,J=1.2Hz),7.66(s,1H),7.83(s,1H),7.86(q,1H,J=7.5Hz),8.15(dd,1H,J=2.7,0.6Hz),8.98(s,1H);LC−MS(M+1)337.14)を得た。
【0140】
<実施例2>
5−プロピル−6−(2−ピリジン−2−イルイミダゾール−1−イルメチル)イミダゾ[1,2−a]ピラジンの合成
【化27】


この化合物は、実施例1に記載の方法に容易かつ明白な変更を行って調製した。(H NMR(CDCl)δ0.91(t,3H,J=7.5Hz),1.54(p,2H,J=7.2Hz),3.08(t,2H,J=7.5Hz),6.24(s,2H),7.11(s,1H),7.24−7.28(m,2H),7.62(s,1H),7.70−7.85(m,2H),8.26(d,1H,J=8.1Hz),8.59(s,1H),8.99(s,1H);LC−MS(M+1)319.15)
【0141】
<実施例3>
6−[2−(3−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−5−プロピルイミダゾ[1,2−a]ピラジンの合成
【化28】


この化合物は、実施例1に記載の方法に容易かつ明白な変更を行って調製した。(H NMR(CDCl)δ0.92(t,3H,J=7.5Hz),1.54(p,2H,J=7.2Hz),2.97(t,2H,J=7.5Hz),5.87(s,2H),7.18−7.33(m,2H),7.35−7.40(m,1H),7.54−7.64(m,2H),7.85(s,1H),8.50(s,1H),8.98(s,1H);LC−MS(M+1)337.11)
【0142】
<実施例4>
6−[2−(6−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−1−メチル−5−プロピルイミダゾ[1,5−a]ピラジンの合成
【化29】

【0143】
1)1−{5−[2−(6−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−6−プロピルピラジン−2−イル}エタノン
【化30】


5−クロロ−2−[2−(6−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−3−プロピルピラジン(0.24g)をトルエン(30ml)に加えた溶液に、トリブチルスズビニルエチルエーテル(0.40g)とPd(PhP)Cl(40mg)とを加えた。この混合物を10分間脱気後、130℃で一晩加熱した。減圧下で溶媒を除き、残分をメタノール(15ml)に溶解した。6NのHCl(20ml)を加え、混合物を室温で5時間撹拌した。溶媒を除き、飽和NaHCOで中和し、酢酸エチルで抽出した。有機層を乾燥し、溶媒を留去して粗生成物を得た。これを5%メタノール/DCMを用いたPTLCで精製して、標記の生成物(H NMR(CDCl)δ1.04(t,3H,J=7.5Hz),1.88(p,2H,J=7.2Hz),2.69(s,3H),3.00(t,2H,J=7.5Hz),6.08(s,2H),6.76(dd,1H,J=7.8,2.7Hz),7.10(s,1H),7.23(s,1H),7.80(q,1H,J=8.1Hz),8.13(dd,1H,J=7.8,2.1Hz),8.84(s,1H);LC−MS(M+1)386.20)を得た。
【0144】
2)N−(1−{5−[2−(6−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−6−プロピルピラジン−2−イル}エチル)ホルムアミド
【化31】


0.5gのホルムアミドに加えた、1−{5−[2−(6−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−6−プロピルピラジン−2−イル}エタノン(0.12g)とギ酸(0.050g)とを、160〜180℃とした0.6gのホルムアミドに加えた。この混合物を、160〜180℃で更に1.5時間加熱した。この間に、ギ酸(0.050g)を加えた。混合物を室温まで放冷して水(10ml)に注ぎ込み、濃水酸化ナトリウムを用いて溶液をpH11以上のアルカリ性とした。溶液を酢酸エチルで抽出した。有機層をMgSO上で乾燥し、溶媒を留去して粗生成物とした。これを酢酸エチルを用いたTLCで精製し、標記の生成物(H NMR(CDCl)δ0.98(t,3H,J=7.5Hz),1.45(d,3H,J=6.9Hz),1.72(p,2H,J=7.2Hz),2.90(t,2H,J=7.5Hz),5.25(p,1H,J=6.9Hz),6.05(q,2H,J=10.3Hz),6.76−6.83(m,2H),7.08(s,1H),7.19(s,1H),7.81(q,1H,J=8.1Hz),8.15(dd,1H,J=7.8,2.1Hz),8.19(s,1H);LC−MS(M+1)369.16)を得た。
【0145】
3)6−[2−(6−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−1−メチル−5−プロピルイミダゾ[1,5−a]ピラジン
【化32】


N−(1−{5−[2−(6−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−6−プロピルピラジン−2−イル}エチル)ホルムアミド(70mg)とPOCl(3ml)との混合物を3時間加熱還流した。過剰のPOClを除き、酢酸エチル(10ml)を加え、混合物を飽和NaHCO(5ml)と、ブライン(5ml)とで洗い、MgSO上で乾燥させた。溶媒を留去後、残分を7%メタノール/DCMを用いたPTLCで精製して、標記の生成物(H NMR(CDCl)δ0.97(t,3H,J=7.5Hz),1.26(s,3H),1.65(p,2H,J=7.2Hz),2.61(s,3H),3.09(t,2H,J=7.5Hz),6.03(s,2H),6.92(d,1H,J=2.7Hz),7.20(s,1H),7.36(s,1H),7.92(q,1H,J=7.5Hz),8.07(s,1H),8.30(s,1H),8.75(s,1H);LC−MS(M+1)351.14)を得た。
【0146】
<実施例5>
6−[2−(3−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−1−メチル−5−プロピルイミダゾ[1,5−a]ピラジンの合成
【化33】


この化合物は、実施例4に記載の方法に容易かつ明白な変更を行って調製した。(H NMR(CDCl)δ0.91(t,3H,J=7.5Hz),1.55(p,2H,J=7.2Hz),2.60(s,3H),2.87(t,2H,J=7.5Hz),5.74(s,2H),7.21(d,1H,J=2.7Hz),7.20(s,1H),7.36(m,1H),7.57(t,1H,J=9.6Hz),8.01(s,1H),8.48(d,1H,J=4.5Hz),8.75(s,1H);LC−MS(M+1)351.14)
【0147】
<実施例6>
5−プロピル−6−(2−ピリジン−2−イルイミダゾール−1−イルメチル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジンの合成
【化34】

【0148】
1)5−クロロ−3−プロピル−2−(2−ピリジン−2−イルイミダゾール−1−イルメチル)ピラジン
【化35】


5−クロロ−2−クロロメチル−3−プロピルピラジン(0.35g)と、2−(1H−イミダゾール−2−イル)ピリジン(0.25g)と、KCO(0.28g)とをDMF(10ml)に加えた混合物を室温で一晩撹拌した。水(15ml)を加えた。混合物をDCM(15ml×3)で抽出した。有機層を乾燥し、溶媒を留去して残分とし、これを7.5%メタノール/DCMを用いたシリカゲルカラムで精製して標記の生成物(H NMR(CDCl)δ0.95(t,3H,J=7.5Hz),1.70(p,2H,J=7.2Hz),1.85(t,2H,J=7.5Hz),6.11(s,2H),7.07(d,1H,J=1.2Hz),7.14−7.21(m,2H),7.70−7.77(m,1H),8.23(d,1H,J=6.0Hz),8.27(s,1H),8.39−8.43(m,1H);LC−MS(M+1)314.10)を得た。
【0149】
2)6−プロピル−5−(2−ピリジン−2−イル−イミダゾール−1−イルメチル)ピラジン−2−イル]ヒドラジン
【化36】


5−クロロ−3−プロピル−2−(2−ピリジン−2−イルイミダゾール−1−イルメチル)ピラジン(0.103g)とヒドラジン水和物(0.2ml)とをエタノール(10ml)に加えた混合物を、密閉した試験管中、110℃で一晩加熱した。溶媒を減圧下で除いて固体とし、これを酢酸エチルで洗い、乾燥して、標記の生成物(H NMR(CDCl)δ0.59(t,3H,J=7.5Hz),1.28(p,2H,J=7.2Hz),2.34(t,2H,J=7.5Hz),3.31(m,3H),5.74(s,2H),6.83(d,1H,J=4.5Hz),7.05−7.28(m,1H),7.26(s,1H),7.63(t,1H,J=4.5Hz),7.72(s,1H),7.81(d,1H,J=7.2Hz),8.40(d,1H,J=4.8Hz);LC−MS(M+1)310.13)を得た。
【0150】
3)5−プロピル−6−(2−ピリジン−2−イルイミダゾール−1−イルメチル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン
【化37】


6−プロピル−5−(2−ピリジン−2−イルイミダゾール−1−イルメチル)ピラジン−2−イル]ヒドラジン(26mg)とギ酸(2mg)との混合物を、110℃で一晩加熱した。過剰のギ酸を除き、ジクロロメタン(10ml)を加えた。混合物を飽和NaHCOで洗い、乾燥し、溶媒を留去して残分とし、これを5%メタノール/ジクロロメタンを用いたPTLCで精製して、標記の生成物(H NMR(CDCl)δ0.95(t,3H,J=7.5Hz),1.61(p,2H,J=7.2Hz),3.18(t,2H,J=7.5Hz),6.24(s,2H),7.14(s,1H),7.23−7.28(m,2H),7.78(t,1H,J=5.7Hz),8.25(d,1H,J=6.0Hz),8.56(d,1H,J=3.6Hz),8.86(s,1H),9.24(s,1H);LC−MS(M+1)320.12)を得た。
【0151】
<実施例7>
3−メチル−5−プロピル−6−(2−ピリジン−2−イルイミダゾール−1−イルメチル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジンの合成
【化38】


この化合物は、実施例6に記載の方法に容易かつ明白な変更を行って調製した。(H NMR(CDCl)δ0.95(t,3H,J=7.5Hz),1.54(p,2H,J=7.2Hz),2.98(s,3H),3.22(t,2H,J=7.5Hz),6.23(s,2H),7.14(s,1H),7.24−7.28(m,2H),7.79(t,1H,J=5.7Hz),8.26(d,1H,J=5.4Hz),8.57(s,1H),9.13(s,1H);LC−MS(M+1)334.13)
【0152】
<実施例8>
6−{[2−(3−フルオロピリジン−2−イル)−1H−イミダゾール−1−イル]メチル}−5−プロピル[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピラジンの合成
【化39】

【0153】
1)5−{[2−(3−フルオロピリジン−2−イル)−1H−イミダゾール−1−イル]メチル}−6−プロピルピラジン−2−アミン
【化40】


この化合物は、実施例1の工程1〜8に記載の方法に容易かつ明白な変更を行って調製した。
【0154】
2)N−5−{[2−(3−フルオロピリジン−2−イル)−1H−イミダゾール−1−イル]メチル}−6−プロピルピラジン−2−イル−N’−ヒドロキシイミドホルムアミド
【化41】


5−{[2−(3−フルオロピリジン−2−イル)−1H−イミダゾール−1−イル]メチル}−6−プロピルピラジン−2−アミン(210mg、0.67mmol)とN−(ジメトキシメチル)−N,N−ジメチルアミン(0.67mmol)とをトルエン(3ml)に加えた溶液を3時間還流した。減圧下で溶媒を除き、得られた黄色の油をEtOH(6ml)に溶解し、これにNHOH−HCl(76mg、1.1mmol)を加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除き、残分をNaHCO飽和水溶液(5ml)とEtOAc(10ml)との間で分配させた。層を分け、水層をEtOAc(2×10ml)で抽出した。抽出液を合わせてブライン(8ml)で洗い、乾燥し(NaSO)、乾固した。残分を5%MeOH/CHCHを用いたPTLC分離にかけ、標記の化合物を黄色固体として得た。
【0155】
N−5−{[2−(3−フルオロピリジン−2−イル)−1H−イミダゾール−1−イル]メチル}−6−プロピルピラジン−2−イル−N’−ヒドロキシイミドホルムアミド=ヒドロキシエタンイミドアミド(0.7mmol)と無水酢酸(2ml)との混合物を、室温で4時間撹拌した。溶媒を減圧下で除き、残分をNaHCO飽和水溶液(10ml)とEtOAc(20ml)との間で分配させた。層を分け、水層をEtOAc(3×20ml)で抽出した。合わせた抽出液をブライン(15ml)で洗い、乾燥し(NaSO)、乾固した。黄色油状残分は、更に精製することなく次の工程に用いた。
【0156】
3)6−{[2−(3−フルオロピリジン−2−イル)−1H−イミダゾール−1−イル]メチル}−5−プロピル[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピラジン
【化42】


N−5−{[2−(3−フルオロピリジン−2−イル)−1H−イミダゾール−1−イル]メチル}−6−プロピルピラジン−2−イル−N’−ヒドロキシイミドホルムアミド=ヒドロキシエタンイミドアミン(0.7mmol)と無水酢酸(2ml)との混合物を、室温で4時間撹拌した。減圧下で溶媒を除き、残分をNaHCO飽和水溶液(10ml)とEtOAc(20ml)との間で分配させた。層を分け、水層をEtOAc(3×20ml)で抽出した。合わせた抽出液をブライン(15ml)で洗い、乾燥し(NaSO)、乾固した。得られた黄色油状の残分をHOAc(6ml)に溶解し、混合物を110℃で一晩加熱した。減圧下で溶媒を除き、残分をNaHCO飽和水溶液(5ml)とEtOAc(10ml)との間で分配させた。層を分け、水層をEtOAc(2×10ml)で抽出した。合わせた抽出液をブライン(8ml)で洗い、乾燥し(NaSO)、乾固した。残分を5%MeOH/CHCHを用いたPTLC分離にかけ、標記の化合物(H NMR(CDCl)δ9.13(s,1H),8.45−8.47(m,1H),8.46(s,1H),7.55−7.60(m,1H),7.32−7.36(m,1H),7.24(s,1H),7.22(s,1H),5.96(s,2H),3.18−3.22(m,2H),1.59−1.68(m,2H),0.94(t,3H))を淡黄色固体として得た。
【0157】
<実施例9>
6−{[2−(3−フルオロピリジン−2−イル)−1H−イミダゾール−1−イル]メチル}−2−メチル−5−プロピル[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピラジンの合成
【化43】


この化合物は、実施例8に記載の方法に容易かつ明白な変更を行って調製した。(H NMR(CDCl)δ8.99(s,1H),8.47−8.48(m,1H),7.56−7.61(m,1H),7.33−7.37(m,1H),7.24(s,1H),7.21(s,1H),5.93(s,2H),3.13−3.17(m,2H),2.65(s,3H),1.60−1.66(m,2H),0.93(t,3H))
【0158】
<実施例10>
リガンド結合性試験
本発明の望ましい化合物の、GABAレセプタのベンゾジアゼピン部位に対する高い親和性を、トーマス(Thomas)およびトールマン(Tallman)(J. Bio. Chem. (1981) 156:9838-9842、 および J. Neurosci. (1983) 3:433-440)に本質的に記述されている結合性試験法を用いて確認した。
【0159】
ラットの皮質組織を切り取り、25容量(w/v)の緩衝液A(0.05Mのトリス(Tris)HCl緩衝液、4℃でpH7.4)に入れてホモジナイズした。組織ホモジネートを、冷却しながら(4℃)20,000×gで20分間遠心分離にかけた。上清を傾瀉し、沈殿物を同じ容量の緩衝液で再度ホモジナイズし、もう一度20,000×gで遠心分離にかけた。この遠心分離工程の上清を傾瀉し、沈殿物を−20℃で一晩保存した。次に沈殿物を解凍し、25容量の緩衝液A(最初の重量/容量)に再び懸濁させ、20,000×gで遠心分離して上清を傾瀉した。この洗浄工程をもう一度繰り返した。最後に沈殿物を50容量の緩衝液Aに再懸濁した。
【0160】
100μlの組織ホモジネートと、100μlの放射リガンド(0.5nMのH−RO15−1788[H−フルマゼニル]、比放射能80Ci/mmol)と、供試化合物または対照(以下参照)とを含む培養液に緩衝液Aを加えて全量を500μlとした。4℃で30分間培養後、速やかにワットマンGFBフィルタに通して濾過し、遊離しているリガンドと結合したリガンドとを分けた。フィルタを新しい緩衝液Aで2回洗い、液体シンチレーションカウンタで計数した。非特異的結合(対照)は、H−RO15−1788を10μMのジアゼパム(Diazepam)(マサチューセッツ州ナティック、リサーチ・バイオケミカルズ・インターナショナル(Research Biochemicals International)製)で置き換えて求めた。データは3連とし、平均し、各化合物についての全特異的結合性の阻害率(全特異的結合性=合計−非特異的)を算出した。
【0161】
阻害率を求めるため、前述の方法により、曲線あたり10−12〜10−5Mの化合物の濃度範囲に亘って11個の測定を行い、競合結合性曲線を作成した。Ki値は、Cheng−Prussof式に従って算出した。本発明の望ましい化合物は100nM以下のKi値を示し、本発明のより望ましい化合物は10nM以下のKi値を示す。
【0162】
<実施例11>
電気生理学
以下の試験を行って、本発明の化合物が細胞の電気生理学的性質を変えるか、また、GABAレセプタのベンゾジアゼピン部位における作用薬、拮抗薬、または逆作用薬として働くかを求めた。
【0163】
試験は、本質的に、ホワイト(White)およびガーレイ(Gurley)(NeuroReport 6:1313-1316, 1995)、および、ホワイト、ガーレイ、ハートネット(Hartnett)、スターリング(Stirling)、およびグレゴリー(Gregory)(Receptors and Channels 3:1-5, 1995)に記述の方法に変更を加えて行った。電気生理学的記録は、−70mVの膜保持電位における二電極電圧クランプ法を用いて行った。 Xenopus laevis 卵母細胞を酵素によって単離し、α、β、およびγサブユニットをそれぞれ4:1:4の比で混合した非ポリアデニル化cRNAを注入した。ホワイトらの文献に記載の9個の、α、β、およびγサブユニットの組み合わせのうち、望ましい組み合わせは、αβγ、αβγ、αβγ、および、αβγである。望ましくは、各組み合わせの全てのサブユニットcRNAはヒトクローン、あるいは全てラットクローンである。これらのクローン化サブユニットはそれぞれGENBANKに、例えば、ヒトα、GENBANK受け入れ番号X14766;ヒトα、GENBANK受け入れ番号A28100;ヒトα、GENBANK受け入れ番号A28102;ヒトα、GENBANK受け入れ番号A28104;ヒトβ、GENBANK受け入れ番号M82919;ヒトβ、GENBANK受け入れ番号Z20136;ヒトγ、GENBANK受け入れ番号X15376;ラットα、GENBANK受け入れ番号L08490;ラットα、GENBANK受け入れ番号L08491;ラットα、GENBANK受け入れ番号L08492;ラットα、GENBANK受け入れ番号L08494;ラットβ、GENBANK受け入れ番号X15467;ラットβ、GENBANK受け入れ番号X15468;ラットγ、GENBANK受け入れ番号L08497と示されている。サブユニットの組み合わせについてはそれぞれ、1μMのGABAを用いた場合に10nA以上の大きさの電流が生じるよう、各構成サブユニットに関する十分なメッセージを注入する。
【0164】
化合物は、誘発可能な最大GABA電流(例えば、1〜9μM)の10%以下を誘発する、GABA濃度に対して評価する。濃度/効果の関係を調べるため、評価すべき化合物(供試化合物)の濃度を次第に上げながら、各卵母細胞に曝露する。供試化合物の効力は、電流の大きさの変化率(100((Ic/I)−1) 式中、Icは、供試化合物の存在下で観測されたGABA誘発電流の大きさであり、Iは、供試化合物の不在下で観測されたGABA誘発電流の大きさである)として計算する。
【0165】
供試化合物のベンゾジアゼピン部位に対する特異性は、次の濃度/効果曲線を完成させて求めた。予め加えた供試化合物を取り除くため十分に洗浄した卵母細胞を、GABA+1μMのRO15−1788に曝露し、次に、GABA+1μMのRO15−1788+供試化合物に曝露した。化合物の添加による変化率を前述のように算出した。RO15−1788存在下で観測された全ての変化率を、1μMのRO15−1788不在下で観測された電流の大きさでの変化率から差し引いた。この正味の値を、標準法による平均効力およびEC50値の計算に用いた。平均効力およびEC50値の算出のため、濃度/効果データを細胞間で平均し、理論式に当てはめた。
【0166】
<実施例12>
MDCK毒性試験
この実施例では、Madin Darby イヌ腎臓(MDCK)細胞を用いた細胞毒性試験法による、化合物の毒性評価について述べる。
【0167】
底の透明な96穴プレート(コネチカット州メリデン、パッカード(PACKARD)製)のそれぞれの穴に1μLの供試化合物を加え、試験における化合物の最終濃度を、10μM、100μM、または200μMとした。供試化合物を含まない溶媒を対照穴に加えた。
【0168】
MDCK細胞、ATCC番号CCL−34(バージニア州マナッサス、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)製)を、ATCC製品情報シートの使用説明書に従って無菌状態に保った。融合性MDCK細胞をトリプシン処理し、採取し、温(37℃)培地(VITACELL最小必須培地イーグル(Eagle)、ATCCカタログ番号30−2003)を用いて、0.1×10細胞/mlの濃度に希釈した。細胞を含まない100μlの温培地を入れた5個の標準曲線対照穴を除き、各穴に100μlの希釈細胞を加えた。次に、プレートを、一定に振とうしながら、95%O、5%COの条件下、37℃で2時間培養した。培養後、それぞれの穴に50μlの哺乳動物細胞溶解溶液を加え、穴をPACKARD TOPSEALステッカーで覆い、プレートを適当な振とう器上、約700rpmで2分間振とうした。
【0169】
毒性を持つ化合物ならば、未処理細胞に比べてATP生産を減少させると考えられる。一般に、PACKARD(コネチカット州メリデン)ATP−LITE−MルミネッセントATP検出用キット(製品番号6016941)を製造者の使用説明書に従って使用し、処理および未処理MDCK細胞でのATP生産を測定する。PACKARD ATP LITE−M試薬を平衡となるまで室温に置いた。平衡後、凍結乾燥した基質溶液を5.5mlの基質緩衝液(キットから)中で還元した。凍結乾燥ATP標準溶液を脱イオン水中で還元して10mMの原液とした。5個の対照穴として、10μlの連続的に希釈したPACKARD標準を各標準曲線対照穴に加え、各穴の最終濃度を、順次、200nM、100nM、50nM、25nM、および12.5nMとした。PACKARD基質溶液(50μl)を全ての穴に加え、次にこれを覆い、プレートを適当な振とう器上、約700rpmで2分間振とうした。白色のPACKARDステッカーを各プレートの底に貼り付け、試料をホイルで巻き暗所に10分間置いて試料を暗馴化した。次に、ルミネッセンスカウンタ(例えば、PACKARD TOPCOUNTマイクロプレートシンチレーションおよびルミネッセンスカウンタ、またはTECAN SPECTRAFLUOR PLUS)を用い、22℃でルミネッセンスを測定した。またATP濃度は、標準曲線から算出した。(1つ以上の)供試化合物で処理した細胞中におけるATP濃度を、未処理細胞で求めた濃度と比較した。10μMの望ましい供試化合物で処理した細胞は、未処理細胞の80%以上、望ましくは90%以上のATP濃度を示した。100μM濃度の供試化合物を用いた場合、望ましい供試化合物で処理した細胞は、未処理細胞において検出されたATP濃度の50%以上、望ましくは80%以上のATP濃度を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構造式で示される化合物またはその薬学的許容体であって、
【化1】



式中、
は窒素またはCRであり、Zは窒素またはCRであり、Zは窒素またはCRであって、ZとZとZの1つ以上、2つ以下は窒素であり、
Arは、フェニル、ナフチル、または5〜10員のヘテロアリールを示すものであって、そのそれぞれは、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキル、(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルエーテル、C〜Cアルカノン、C〜Cアルカノイル、3〜7員のヘテロシクロアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、オキソ、C〜Cヒドロキシアルキル、C〜Cアミノアルキル、および、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノ(C〜Cアルキル)より独立して選ばれる、0〜4個の置換基で置換されており、
、R、R、およびRはそれぞれ、(a)および(b)より独立して選ばれ、
(a)は、水素、ハロゲン、ニトロ、およびシアノであり、
(b)は、次の構造式で示される基であって、
【化2】



式中、
Lは、共有単結合またはC〜Cアルキルであり、
Gは、共有単結合、−N(R)−、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)N(R)−、−N(R)C(=O)−、−S(O)−、−CHC(=O)−、−S(O)N(R)−、または−N(R)S(O)−であって、mは、0、1、または2であり、
および各Rは、(i)および(ii)より独立して選ばれ、
(i)は水素であり、
(ii)は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキル、(3〜6員のヘテロシクロアルキル)C〜Cアルキル、(アリール)C〜Cアルキル、または(ヘテロアリール)C〜Cアルキルであって、そのそれぞれは、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルカノイル、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cハロアルキル、およびC〜Cハロアルコキシより独立して選ばれる、0〜4個の置換基で置換されており、
は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、あるいはモノまたはジ(C〜Cアルキル)アミノであって、そのそれぞれは、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cシクロアルキル、フェニルC〜Cアルキル、およびフェニルC〜Cアルコキシより独立して選ばれる、0〜5個の置換基で置換されており、
およびRは独立して、水素、ハロゲン、メチル、またはエチルであり、
は、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cシクロアルキル、C〜Cハロアルキル、およびC〜Cハロアルコキシより独立して選ばれる、0、1、または2個の置換基を示す、
ことを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、Rは、ハロゲン、C〜Cアルキル、およびC〜Cアルコキシより選ばれる、0または1個の置換基を示すことを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、Arは、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノまたはジ(C〜Cアルキル)アミノ、C〜Cアルカノイル、(C〜Cシクロアルキル)C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、およびC〜Cハロアルコキシより独立して選ばれる、0、1、2、または3個の置換基で置換されていることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、Arは、フェニル、ピリジル、チアゾリル、チエニル、トリアゾロピリジル、ピリジジニル(pyridizinyl)、またはピリミジニルを示すものであって、そのそれぞれは0〜4個の置換基で置換されていることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項5】
請求項4に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、Arは、フェニル、ピリジル、チアゾリル、チエニル、トリアゾロピリジル、またはピリジジニルを示すものであって、そのそれぞれは、塩素、フッ素、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルアミノ、C〜Cハロアルキル、およびC〜Cハロアルコキシより独立して選ばれる、0〜3個の置換基で置換されていることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項6】
請求項5に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、Arは、フェニル、2−ピリジル、1,3−チアゾール−2−イル、2−チエニル、[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−5−イル、または3−ピリジジニルを示すものであって、そのそれぞれは、フッ素、塩素、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、シアノ、およびC〜Cアルコキシより独立して選ばれる、0〜3個の置換基で置換されていることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項7】
請求項5に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、Arは、ピリジン−2−イル、2,6−ジフルオロフェニル、2,5−ジフルオロフェニル、3−フルオロフェニル、3−メチル[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−5−イル、3−フルオロピリジン−2−イル、または6−フルオロピリジン−2−イルを示すことを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、
、R、R、およびRは、(a)および(b)より独立して選ばれ、
(a)は、水素、ハロゲン、またはシアノであり、
(b)は、次の構造式で示される基であって、
【化3】



式中、
(i)Lは、共有単結合、メチレン、またはエチレンであり、
(ii)Gは、共有単結合、NH、N(R)、O、C(=O)O、またはC(=O)であり、
(iii)RおよびRは、(1)および(2)より独立して選ばれ、(1)は水素であり、(2)は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cシクロアルキル、4〜7員のヘテロシクロアルキル、フェニル、チエニル、ピリジル、ピリミジニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリダジニル、およびピラジニルであって、そのそれぞれは、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C〜Cアルキル、およびC〜Cアルコキシより独立して選ばれる、0〜4個の置換基で置換されている
ことを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項9】
請求項8に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、R、R、R、およびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜CアルコキシC〜Cアルキル、C〜Cヒドロキシアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、C〜Cカルボキシラート、モノおよびジ(C〜Cアルキル)アミノ、フェニルC〜Cアルキル、ピリジルC〜Cアルキル、および(4〜7員のヘテロシクロアルキル)C〜Cアルキルより独立して選ばれることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項10】
請求項9に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、RおよびRは、水素、メチル、およびエチルより独立して選ばれることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項11】
請求項9に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、Zは窒素であり、ZはCRであり、ZはCRであることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項12】
請求項11に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、R、R、およびRは、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜CアルコキシC〜Cアルキル、C〜Cヒドロキシアルキル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フェニルC〜Cアルキル、ピリジルC〜Cアルキル、および(4〜7員のヘテロシクロアルキル)C〜Cアルキルより独立して選ばれることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項13】
請求項9に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、ZはCRであり、Zは窒素であり、ZはCRであることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項14】
請求項13に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、R、R、およびRは、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜CアルコキシC〜Cアルキル、C〜Cヒドロキシアルキル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フェニルC〜Cアルキル、ピリジルC〜Cアルキル、および(4〜7員のヘテロシクロアルキル)C〜Cアルキルより独立して選ばれることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項15】
請求項9に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、ZおよびZは窒素であり、ZはCRであることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項16】
請求項15に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、RおよびRは、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜CアルコキシC〜Cアルキル、C〜Cヒドロキシアルキル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フェニルC〜Cアルキル、ピリジルC〜Cアルキル、および(4〜7員のヘテロシクロアルキル)C〜Cアルキルより独立して選ばれることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項17】
請求項9に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、ZおよびZは窒素であり、ZはCRであることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項18】
請求項17に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、RおよびRは、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜CアルコキシC〜Cアルキル、C〜Cヒドロキシアルキル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フェニルC〜Cアルキル、ピリジルC〜Cアルキル、および(4〜7員のヘテロシクロアルキル)C〜Cアルキルより独立して選ばれることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、RおよびRはいずれも水素であることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項20】
請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、Rは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、あるいはモノまたはジ(C〜Cアルキル)アミノであって、そのそれぞれは、ハロゲン、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、フェニルC〜Cアルキル、およびフェニルC〜Cアルコキシより独立して選ばれる、0〜2個の置換基で置換されていることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項21】
請求項20に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、Rは、エチル、プロピル、ブチル、エトキシ、またはメトキシメチルであることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項22】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、前記化合物は、
6−[2−(6−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−5−プロピルイミダゾ[1,2−a]ピラジン、
5−プロピル−6−(2−ピリジン−2−イルイミダゾール−1−イルメチル)イミダゾ[1,2−a]ピラジン、
6−[2−(3−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−5−プロピルイミダゾ[1,2−a]ピラジン、
6−[2−(6−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−1−メチル−5−プロピルイミダゾ[1,5−a]ピラジン、
6−[2−(3−フルオロピリジン−2−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−1−メチル−5−プロピルイミダゾ[1,5−a]ピラジン、
5−プロピル−6−(2−ピリジン−2−イルイミダゾール−1−イルメチル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン、
3−メチル−5−プロピル−6−(2−ピリジン−2−イルイミダゾール−1−イルメチル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン、
3−メチル−6−[2−(3−メチル[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジン−5−イル)イミダゾール−1−イルメチル]−5−プロピル[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン、
6−{[2−(3−フルオロピリジン−2−イル)−1H−イミダゾール−1−イル]メチル}−5−プロピル[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピラジン、および
6−{[2−(3−フルオロピリジン−2−イル)−1H−イミダゾール−1−イル]メチル}−2−メチル−5−プロピル[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピラジン
より選ばれることを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項23】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、GABAレセプタ結合性試験において、前記化合物は1マイクロモル以下のKiを示すことを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項24】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、GABAレセプタ結合性試験において、前記化合物は100ナノモル以下のKiを示すことを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項25】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的許容体であって、GABAレセプタ結合性試験において、前記化合物は10ナノモル以下のKiを示すことを特徴とする化合物またはその薬学的許容体。
【請求項26】
薬学的に許容可能なキャリヤまたは賦形剤と組み合わせた、請求項1に記載の化合物またはその薬学的許容体を含むことを特徴とする薬剤組成物。
【請求項27】
請求項26に記載の薬剤組成物であって、前記薬剤組成物は、注射液、エーロゾル、クリーム、ゲル、丸剤、カプセル、シロップ、または経皮吸収パッチとして調剤されることを特徴とする薬剤組成物。
【請求項28】
不安、うつ病、睡眠障害、注意欠陥障害、またはアルツハイマー痴呆の治療を必要とする患者に、GABAレセプタを調節する量の、請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的許容体を投与する工程を含むことを特徴とする、不安、うつ病、睡眠障害、注意欠陥障害、またはアルツハイマー痴呆の治療法。
【請求項29】
患者に、CNS剤と、請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的許容体とを投与する工程を含むことを特徴とする、CNS剤の治療的効果を高める方法。
【請求項30】
患者に、GABAレセプタを調節する量の、請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的許容体を投与する工程を含むことを特徴とする、患者の短期記憶を向上させる方法。
【請求項31】
GABAレセプタ発現細胞を、細胞の電気生理学的性質を検出可能なほどに変えるのに十分な量の、請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的許容体と接触させ、これによりGABAレセプタのシグナル変換活性を変える工程を含むことを特徴とする、GABAレセプタのシグナル変換活性を変える方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、細胞は、組み換えによって異種由来のGABAレセプタを発現し、細胞の電気生理学的変化は、細胞内記録(intracellular recording)またはパッチクランプ記録(patch clamp recording)で検出することを特徴とする方法。
【請求項33】
試料中のGABAレセプタの存在または不在の決定法であって、
前記方法は、
(a)試料を、請求項1に記載の化合物またはその薬学的許容体と、前記化合物がGABAレセプタに結合するような条件下で接触させる工程と、
(b)GABAレセプタに結合していない前記化合物またはその薬学的許容体を除去する工程と、
(c)GABAレセプタに結合した前記化合物またはその薬学的許容体の量を検出する工程と、
を含み、これにより試料中のGABAレセプタの存在または不在を決定することを特徴とする、試料中のGABAレセプタの存在または不在の決定法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、結合した化合物の存在または不在をオートラジオグラフィを用いて検出することを特徴とする方法。
【請求項35】
試料中のGABAレセプタの存在または不在の決定法であって、
前記方法は、
バックグラウンド結合を求める工程と、
GABA結合を求める工程と、
を含み、
バックグラウンド結合を求める工程は、順に、
(a)第1の試料を、GABAレセプタ類に結合しないことが既知の、測定済みモル濃度の標識化化合物と、化合物がGABAレセプタ類に結合するような条件下で接触させる工程と、
(b)GABAレセプタ類に結合していない化合物を除去するような条件下で、第1試料を洗浄する工程と、
(c)バックグラウンド結合量として、洗浄後に残留する標識の量を検出する工程と、
を含み、
GABA結合を求める工程は、順に、
(d)請求項1に記載の標識化化合物またはその薬学的許容体を、第1試料と比較するための第2試料と接触させる工程であって、前記化合物またはその薬学的許容体の濃度は、(a)の測定済みモル濃度であり、前記接触を、(a)で用いた条件下で行う工程と、
(e)第2試料を、(b)で用いた条件下で洗浄する工程と、
(f)洗浄後に第2試料中に残留する標識の量を検出する工程と、
(g)(f)で求めた第2試料中に残留する標識の量から、(c)で求めたバックグラウンド結合量を差し引く工程と、
を含み、
(g)の差し引き後の量が正であることが、第2試料中でのGABAレセプタの存在を示すことを特徴とする、試料中のGABAレセプタの存在または不在の決定法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、第1試料および第2試料の洗浄後に残留する標識の量は、オートラジオグラフィを用いて検出することを特徴とする方法。
【請求項37】
容器に入れた請求項26に記載の薬剤組成物と、この組成物を、不安、うつ病、睡眠障害、注意欠陥障害、アルツハイマー痴呆、または短期記憶損失を罹患した患者の治療に使用するための使用説明書と、を含むことを特徴とする包装済み医薬製剤。
【請求項38】
不安、うつ病、睡眠障害、注意欠陥障害、アルツハイマー痴呆、および短期記憶損失より選ばれる症状の治療用薬剤の製造における、請求項1に記載の化合物またはその薬学的許容体の使用。

【公表番号】特表2007−501272(P2007−501272A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532554(P2006−532554)
【出願日】平成16年5月3日(2004.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/013778
【国際公開番号】WO2004/107863
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(500015456)ニューロジェン・コーポレーション (48)
【出願人】(505412638)
【出願人】(505412649)
【出願人】(505412661)
【Fターム(参考)】