説明

耐傷性および耐引っ掻き性が改良された装飾用金属のためのコーティングおよびその塗布方法

装飾用金属基材と、無機粒子を含む上記基材上の透明硬化コーティングであって、硬化コーティングの曝露表面領域中の粒子濃度が該コーティングのバルク領域を超える透明硬化コーティングとを含むコーティングされた物品。好ましくは、透明コーティングは電着によって塗布される。本発明はまた、(a)(i)硬化性樹脂結合剤と、(ii)無機粒子と、(iii)界面活性剤とを含む電着性の硬化性組成物を基材上に電着させるステップと、(b)組成物を硬化させて大気に曝露した表面を有する基材上に実質的に連続したコーティングを形成させるステップであって、その間に、無機粒子が、コーティングの曝露表面領域に移動するステップとを含む、導電性基材上に耐磨耗性コーティングを形成する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングされた物品、詳細には、装飾用物品、および物品の耐傷性および耐引っ掻き性が改良されるように電着によって物品をコーティングするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真鍮、青銅、研磨された鋼およびアルミニウムなどの装飾用金属、ならびにハードウェアおよび宝飾品、アルミニウムおよび鋼の装備品など、上記のものから誘導される物品は、清澄なまたは着色した透明コーティングによってコーティングされて物品の耐久性および耐候性が向上する場合が多い。多数のこうした保護コーティングの欠点は、耐傷性および耐引っ掻き性が不十分なことである。
【0003】
本発明は、耐傷性および耐引っ掻き性が改良されたコーティングされた装飾用金属基材、および耐傷性および耐引っ掻き性が改良されるコーティングを電着によって塗布するステップを提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、
(a)装飾用基材と、
(b)無機粒子を含む上記基材上の透明コーティングであって、コーティングの曝露表面領域中の粒子濃度がコーティングのバルク領域中の粒子濃度を超える透明コーティングとを含むコーティングされた物品を提供する。
【0005】
本発明はまた、
(a)(i)硬化性樹脂結合剤と、
(ii)無機粒子と、
(iii)界面活性剤とを含む電着性の硬化性組成物を基材上に電着させるステップと、
(b)組成物を硬化させて大気に曝露した表面を有する基材上に実質的に連続したコーティングを形成させるステップであって、その間に、無機粒子が、コーティングの曝露表面領域に移動するステップとを含む、導電性基材上に耐磨耗性コーティングを形成する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図面は、以下の実施例Iの硬化した電着コーティングの断面を13,000倍に拡大した透過型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の装飾用基材は、その正反射率を測定した場合に、外観が明るく輝いている。正反射率は、BYK GARDNER、RTM HAZE−GLOSSMETERを使用して、ASTM D2457、D523に従って正反射光沢を測定することによって求めることができる。したがって、この方法によって入射角60°で(60°正反射光沢)正反射光沢を測定すると、光沢の読取り値は、100を超え、通常200を超え、しばしば300を超え、および400を超える。好ましくは、装飾用基材は、導電性であり、金属である。かかる装飾用金属の例は、研磨された鋼およびアルミニウム、銅、研磨青銅、真鍮、金および銀などの貴金属、ならびにメッキまたはコーティングすることによってクロムメッキ鋼またはニッケルメッキ鋼、および銅メッキ基材のような明るく輝く金属外観がもたらされる基材である。
【0008】
装飾用金属は、明るいハードウェア、例えば、真鍮ドアノブ、郵便受、貴金属宝飾品、自動車用のアルミニウムおよび鋼装備品などの用途で使用される。
【0009】
上述したように、装飾用基材は、好ましくは、導電性であり、これによって、電着によって保護コーティングを塗布することが可能になる。しかし、保護コーティングは、スプレー、浸漬コーティングおよびロールコーティングなどよりありふれた技法によって塗布することができる。後者の場合、基材は導電性である必要はない。
【0010】
装飾用金属に塗布されるコーティング組成物は、硬化性樹脂結合剤と、無機粒子と、界面活性剤とを含む。樹脂結合剤は、反応性官能基を含むフィルム形成樹脂と、フィルム形成樹脂の官能基と反応性である官能基を有する硬化剤とを含む。フィルム形成樹脂および硬化剤は、異なる共反応性官能基を有する1つの樹脂結合剤中に含まれていてもよい。例えば、ヒドロキシル基とブロックイソシアネート基とを含む樹脂結合剤である。
【0011】
フィルム形成樹脂は、硬化性樹脂組成物が電着によって塗布できるように、好ましくは、イオン性である。樹脂は、アニオン性であっても、カチオン性であってもよく、好ましくは、本質的にカチオン性である。
【0012】
電着性のアニオン性コーティング組成物で使用するのに適したフィルム形成樹脂の例は、乾性油または半乾性脂肪酸エステルとジカルボン酸またはその無水物との反応生成物または付加物;および脂肪酸エステル、不飽和酸またはその無水物と、さらにポリオールと反応する任意の追加の不飽和修飾材料との反応生成物など、塩基可溶化されたカルボン酸含有ポリマーである。アクリル酸ヒドロキシルエチルおよび/またはメタクリル酸ヒドロキシルメチルなどの不飽和カルボン酸のヒドロキシ−アルキルエステルと、アクリル酸またはメタクリル酸などの不飽和カルボン酸と、アクリル酸およびメタクリル酸の低級アルキルエステル、例えば、アクリル酸エチルおよびメタクリル酸ブチルなど少なくとも1つの他のエチレン性不飽和モノマーとの少なくとも部分的に中和されたインターポリマーも適している。かかるインターポリマーまたは樹脂は、通常、(メタ)アクリル樹脂と呼ばれる。さらなる別の適切な電着性樹脂として、アルキッド−アミノプラストビヒクル、すなわち、アルキッド樹脂とアミン−アルデヒド樹脂とを含むビヒクルが挙げられる。さらなる別の電着性のアニオン性樹脂組成物として、樹脂ポリオールの混合エステルが挙げられる。こうした組成物は、参照により全体が本明細書に組み込まれている米国特許第3749657号のカラム9、1〜75行、およびカラム10、1〜13行に詳細に記述されている。当業者には周知であるリン酸塩化ポリエポキシドまたはリン酸塩化アクリルポリマーなど他の酸官能性ポリマーも使用することができる。
【0013】
前述したように、電着性のイオン性樹脂(a)は、カソード上に堆積可能であることが好ましい。かかるカチオン性フィルム形成樹脂の例として、米国特許第3663389号、3984299号、3947338号および3947339号に記載のものなどのポリエポキシドと、第一級または第二級アミンとの酸可溶化反応生成物などアミン塩の基を含有する樹脂が挙げられる。通常、こうしたアミン塩の基を含有する樹脂は、ブロックイソシアネート硬化剤と組み合わせて使用される。イソシアネートは、前記米国特許第3984299号に記載されているように完全にブロックされていてもよく、または米国特許第3947338号に記載されているようにイソシアネートは、部分的にブロックされて、樹脂主鎖と反応していてもよい。また、米国特許第4134866号およびDE−OS第2707405号に記載されているような一成分組成物もフィルム形成樹脂として使用することができる。エポキシ−アミン反応生成物の他に、フィルム形成樹脂はまた、米国特許第3455806号および3928157号に記載されているようなカチオン性アクリル樹脂からも選択することができる。カチオン性アミン塩の基を含有する樹脂の他に、スルホニウム塩の基を含有する樹脂も使用することができる。かかる樹脂の例は、米国特許第4038232号に開示されているようなスルホニウム基含有(メタ)アクリル樹脂である。
【0014】
適切な硬化剤の例は、フィルム形成樹脂に伴うヒドロキシル基およびカルボン酸基と反応性であり、アニオン性フィルム形成樹脂用の好ましい硬化剤であるアミノプラストである。他の硬化剤は、フィルム形成樹脂に伴うヒドロキシル基ならびに第一級および第二級アミン基と反応性であり、カチオン性フィルム形成樹脂用の好ましい硬化剤であるポリイソシアネートである。
【0015】
アミノプラスト樹脂は、当技術分野で周知である。アミノプラストは、ホルムアルデヒドと、アミンまたはアミドとの縮合反応から得ることができる。アミンまたはアミドの非限定的な例として、メラミン、尿素またはベンゾグアナミンが挙げられる。使用されるアルデヒドは、ホルムアルデヒドである場合が最も多いが、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒドおよびベンズアルデヒドなど他のアルデヒドも使用することができる。
【0016】
アミノプラストは、イミノおよびメチロール基を含み、ある場合には、メチロール基の少なくとも一部分が、アルコールでエーテル化されて硬化応答が改変される。メタノール、エタノール、n−ブチルアルコール、イソブタノールおよびヘキサノールを含めての任意の一価アルコールは、この目的で用いることができる。
【0017】
アミノプラストの非限定的な例として、ある場合には、モノマー性であり、1〜4個の炭素原子を含む1つまたは複数のアルコールで少なくとも部分的にエーテル化されている、メラミン−、尿素−またはベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合体が挙げられる。適切なアミノプラスト樹脂の非限定的な例は、例えば、商標CYMEL(登録商標)としてCytec Industries,Inc.から、および商標RESIMENE(登録商標)としてSolutia,Inc.から市販されている。
【0018】
使用するのに適した他の硬化剤として、限定されないが、ポリイソシアネート硬化剤が挙げられる。本明細書では、「ポリイソシアネート」という用語は、ブロックされた(またはキャップされた)ポリイソシアネート、およびブロックされていないポリイソシアネートを含むものとする。ポリイソシアネートは、脂肪族もしくは芳香族ポリイソアネートであっても、前記の2つの混合物であってもよい。ジイソシアネートも使用できるが、ジイソシアネートのイソシアヌレートなどの高級ポリイソシアネートもしばしば使用することができる。高級ポリイソシアネートはまた、ジイソシアネートと組み合わせて使用することもできる。イソシアネートプレポリマー、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物も使用することができる。ポリイソシアネート硬化剤の混合物も使用することができる。
【0019】
ポリイソシアネートが、ブロックまたはキャップされている場合、当業者に公知である任意の適切な脂肪族、脂環式または芳香族アルキルモノアルコールは、ポリイソシアネート用のキャッピング剤として使用することができる。他の適切なキャッピング剤として、オキシムおよびラクタムが挙げられる。
【0020】
本発明のコーティング組成物で使用するのに適した粒子は、当技術分野で公知の無機元素または化合物を含むことができる。適切な粒子は、セラミック材料、金属材料および前記の任意の混合物から形成することができる。適切なセラミック材料として、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、金属ケイ酸塩、金属ホウ化物、金属炭酸塩、および前記の任意の混合物が挙げられる。金属窒化物の特定の非限定的例は、例えば、窒化ホウ素であり;金属酸化物の特定の非限定的例は、例えば、酸化亜鉛であり;適切な金属硫化物の非限定的例は、例えば、二硫化モリブデン、二硫化タンタル、二硫化タングステン、および二硫化亜鉛であり;金属ケイ酸塩の適切な非限定的例は、例えば、バーミキュライトなどのケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウムである。
【0021】
粒子は、例えば、コロイダル、フュームドもしくはアモルファス形態中のシリカ、アルミナまたはコロイダルアルミナ、二酸化チタン、酸化セシウム、酸化イットリウム、コロイダルイットリア、ジルコニア、例えば、コロイダルもしくはアモルファスジルコニア、および前記の任意の混合物など本質的に単一の無機酸化物のコア;またはその上に別の型の有機酸化物が堆積したある型の無機酸化物を含むことができる。本発明の硬化組成物は、透明コーティングとして用いられるので、無機粒子は、硬化組成物の光学的特性との干渉が小さくあるべきである。本明細書では、「透明な」とは、BYK/Haze Gloss装置を使用して測定した場合、硬化コーティングが、BYK Haze指数が50未満、より通常的には25未満であることを意味する。
【0022】
好ましくは、無機粒子は、ゾルゲル法によってin situで生成したコロイダルシリカ粒子であり、そのゾルゲル法では、アルコキシシランは、アルコール/水混合物中で加水分解されてin situでコロイダルシリカ粒子が形成される。
【0023】
無機粒子は、平均粒径が1000ナノメートル未満、通常、1〜100および1〜50ナノメートル、しばしば5〜25ナノメートルである。
【0024】
平均粒径は、透過型電子顕微鏡(「TEM」)像の電子写真を目視で調査し、像中の粒子の直径を測定し、TEM像の倍率に基づいて平均粒径を計算することによって決定することができる。例えば、105,000倍のTEM像が生成すると、変換係数は、倍率を1000で除することによって得られる。目視検査において、粒子の直径をミリメートルで測定すると、その測定値は、変換係数を使用してナノメートルに変換される。粒子の直径は、粒子を完全に囲むことになる最小直径の球を示す。
【0025】
粒子の形状(または形態)は、本発明の特定の実施形態およびその所期の用途に応じて、変更することができる。例えば、一般に、球状形態(固体ビーズ、マイクロビーズまたは中空球など)のもの、および立方体、板状または針状(延伸状または繊維状)である粒子を使用することができる。
【0026】
無機粒子は、モース硬度値が5超、より通常には6超である。
【0027】
コーティング組成物には界面活性剤も存在しており、この界面活性剤は、独立の成分として存在することもでき、または無機粒子と予備反応させることもできる。
【0028】
界面活性剤は、アニオン性、非イオン性およびカチオン性界面活性剤から選択することができる。
【0029】
本明細書では、「界面活性剤」とは、硬化組成物またはコーティングの固体表面張力または表面エネルギーを低下させる傾向のある任意の材料を意味する。つまり、界面活性剤を含む組成物から形成された硬化組成物またはコーティングは、界面活性剤を含まない類似の組成物から形成された硬化コーティングよりも固体表面張力または表面エネルギーが小さい。
【0030】
適切なアニオン性界面活性剤の非限定的例として、スルフェートまたはスルホネートが挙げられる。特定の非限定的例として、アルキル基中に10〜16個の炭素原子および直鎖または分枝鎖を含む高級アルキルベンゼンスルホネート、例えば、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシルまたはヘキサデシルベンゼンスルホネート、ならびに高級アルキルトルエン、キシレンおよびフェノールスルホネートのナトリウム塩などの高級アルキル単核芳香族スルホネート;アルキルナフタレンスルホネートおよびジノニルナフタレンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0031】
本発明の硬化組成物またはコーティングで使用するのに適した非イオン性界面活性剤の非限定的例として、エーテル結合を含み、以下の一般式:RO(R’O)
[式中、置換基Rは、6〜60個の炭素原子を含む炭化水素基を表し、置換基R’は、2または3個の炭素原子を含むアルキレン基を表し、前記の任意の混合物でもよく、nは、2〜100の範囲の整数であり、引用した値を含むものとする]によって表されるものが挙げられる。
【0032】
かかる非イオン性界面活性剤は、脂肪族アルコールまたはアルキル置換フェノールを過剰のエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドによって処理することによって調製することができる。アルキル炭素鎖は、14〜40個の炭素原子を含むことができ、オレイルアルコールまたはステアリルアルコールなどの長鎖脂肪族アルコールから誘導することができる。上記の式によって表される型の非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤は、Air Products Chemicals,Inc.から一般商標SURFYNOLで;BASF CorporationからPLURONICまたはTETRONICで;Union CarbideからTERGITOL;およびHuntsman CorporationからSURFONICで市販されている。
【0033】
上記で示されたように、カチオン性界面活性剤も使用することができる。本発明の硬化組成物またはコーティングで使用するのに適したカチオン性界面活性剤の非限定的例として、Akzo Nobel Chemicalsから市販のn−アルキルアミンの酢酸塩であるARMAC HTなどのアルキルアミンの酸塩;Calgene Chemicals Inc.から市販のCALGENE C−100などのイミダゾリン誘導体;Deforest Enterprisesから市販のココアミンエトキシレートであるDETHOX Amine C−5などのエトキシル化アミンまたはアミド;Ethox Chemicals,Inc.から市販のETHOX TAMなどのエトキシル化脂肪族アミン;およびInolex Chemical Co.から市販のLEXEMUL AR、ステアリン酸グリセリル/ステアライドエチルジエチルアミンなどのグリセリルエステルが挙げられる。
【0034】
コーティング組成物が、アニオン性フィルム形成樹脂を含む場合、アニオン性または非イオン性界面活性剤を使用するべきである。コーティング組成物が、カチオン性フィルム形成樹脂を含む場合、カチオン性または非イオン性界面活性剤を使用するべきである。
【0035】
好ましくは、界面活性剤は、少なくとも1つの反応性官能基を含む少なくとも1つのポリシロキサンから選択され、
該少なくとも1つのポリシロキサンは、少なくとも1つの以下の構造単位(I)を含む:
(I) RSiO(4−n−m)/2
[式中、各Rは、同一であっても異なっていてもよく、H、OH、一価の炭化水素基または一価のシロキサン基を表し、各Rは、同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1つの反応性官能基を含む基を表し、mおよびnは、0<n<4、0<m<4および2≦(m+n)<4という要件を満たす]。
【0036】
上記の「少なくとも1つの構造単位(I)を含む少なくとも1つのポリシロキサン」は、分子当り少なくとも2つのSi原子を含むポリマーであることを理解されたい。上記したように、「ポリマー」という用語は、オリゴマ−を包含し、限定なしでホモポリマーとコポリマーの双方を含むものである。少なくとも1つのポリシロキサンは、直鎖、分枝、樹枝状または環式ポリシロキサンを含むことができることも理解されたい。
【0037】
また、本明細書では、「反応性」という用語は、組成物を硬化させるのに十分な条件下で、別の官能基と共有結合を形成する官能基を指す。
【0038】
上記の少なくとも1つの構造単位(I)に示されたmおよびnはそれぞれ、0<n<4、0<m<4および2≦(m+n)<4という要件を満たす。(m+n)が3である場合、nによって表される値は、2であってよく、mによって表される値は、1である。同様に、(m+n)が2である場合、nおよびmそれぞれによって表される値は、1である。
【0039】
本明細書では、「一価の炭化水素基」は、炭素のみに基づく主鎖反復単位を有する一価基を意味する。本明細書では、「一価の」は、置換基として、唯一の単一共有結合を形成する置換基を指す。例えば、少なくとも1つのポリシロキサン上の一価基は、少なくとも1つのポリシロキサンポリマーの主鎖中のケイ素原子と単一共有結合を形成することになる。本明細書では、「炭化水素基」は、分枝と非分枝の双方の炭化水素基を包含するものである。
【0040】
したがって、「一価の炭化水素基」を指定する場合、炭化水素基は、分枝もしくは非分枝、非環式もしくは環式、飽和もしくは不飽和、または芳香族であってよく、1〜24個(または、芳香族基の場合、3〜24個)の炭素原子を含むことができる。かかる炭化水素基の非限定的例として、アルキル、アルコキシ、アリ−ル、アルカリール、およびアルコキシアリ−ル基が挙げられる。低級アルキル基の非限定的例として、例えば、メチル、エチル、プロピル、およびブチル基が挙げられる。本明細書では、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を指す。炭化水素の1つまたは複数の水素原子は、へテロ原子で置換することができる。本明細書では、「へテロ原子」は、炭素以外の元素、例えば、酸素、窒素およびハロゲン原子を意味する。
【0041】
本明細書では、「シロキサン」は、2つ以上の−SiO−基を含む主鎖を含む基を意味する。例えば、上記で議論されたRによって表されるシロキサン基、および以下で議論されるRは、分枝または非分枝、および直鎖または環式であってよい。シロキサン基は、ペンダント有機置換基、例えば、アルキル、アリ−ルおよびアルカリール基で置換することができる。有機置換基は、へテロ原子、例えば、酸素、窒素およびハロゲン原子、反応性官能基、例えば、Rに関して上記で議論したような反応性官能基、および前記の任意の混合物によって置換することができる。
【0042】
別の実施形態では、各置換基Rは、同一であっても異なっていてもよく、ヒドロキシル基またはカルボキシル基などの少なくとも1つの反応性官能基を含む基を表す。
【0043】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つのポリシロキサンが、ヒドロキシル基などの少なくとも2つの反応性官能基を含む、既に議論したような硬化組成物を対象とする。少なくとも1つのポリシロキサンは、少なくとも1つのポリシロキサンのグラム当り、等価重量が50〜1000mg、好ましくは、100〜500mgである反応性基を有することができる。
【0044】
一実施形態では、本発明は、既に記述したような硬化組成物を対象とするものであり、少なくとも1つのポリシロキサンは、以下の構造(II)または(III)を有する:
【0045】
【化1】

[式中、mは、少なくとも1の値を有し、m’は、0〜75の範囲であり、nは、0〜75の範囲であり、n’は、0〜75の範囲であり、各Rは、同一であっても異なっていてもよく、H、OH、一価の炭化水素基、一価のシロキサン基、および前記の任意のものの混合物から選択され、−Rは、以下の構造(IV):
(IV) −R−X
(式中、−Rは、アルキレン基、オキシアルキレン基、アルキレンアリール基、アルケニレン基、オキシアルケニレン基、およびアルケニレンアリール基から選択され、Xは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基、ブロックポリイソシアネート基、第一級アミン基、第二級アミン基、アミド基、カルバメート基、尿素基、ウレタン基、ビニル基、アクリレート基およびメタクリレート基などの不飽和エステル基、マレイミド基、フマレート基、スルホニウム基およびアンモニウム基などのオニウム塩の基、無水物基、ヒドロキシアルキルアミド基、およびエポキシ基から選択される少なくとも1つの反応性官能基を含む基を表す)を含む]。
【0046】
本明細書では、「アルキレン」は、C〜C25の炭素鎖長を有する非環式または環式の飽和炭化水素基を指す。適切なアルキレン基の非限定的例として、限定されないが、例えば、それぞれ(CH、(CH、(CH、(CH10および(CH23などのプロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−デセニル、および1−ヘンエイコセニルから誘導されるもの、ならびにイソプレンおよびミルセンが挙げられる。
【0047】
本明細書では、「オキシアルキレン」は、2つの炭素原子に結合し、それらの間に入る少なくとも1つの酸素原子を含み、C〜C25のアルキレン炭素鎖長を有するアルキレン基を指す。適切なオキシアルキレン基の非限定的例として、−(CHOCHC(CHOH)(CHCH−)などの、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリトリトールモノアリルエーテル、ポリエトキシル化アリルアルコールおよびポリプロポキシル化アリルアルコールから誘導されるものが挙げられる。
【0048】
本明細書では、「アルキレンアリール」は、少なくとも1つのアリール基、例えば、フェニルで置換され、C〜C25のアルキレン炭素鎖長を有する非環式アルキレン基を指す。アリール基は、所望であれば、さらに置換されていてもよい。アリール基に対する適切な置換基の非限定的例として、限定されないが、ヒドロキシル基、ベンジル基、カルボン酸基、および脂肪族炭化水素基が挙げられる。適切なアルキレンアリール基の非限定的例として、限定されないが、−(CH−および−CHCH(CH)C(C(CH(NCO)などの、スチレンおよび3−イソプロペニル−∝,∝−ジメチルベンジルイソシアネートから誘導されるものが挙げられる。本明細書では「アルケニレン」は、1つまたは複数の二重結合を有し、C〜C25のアルケニレン炭素鎖長を有する非環式または環式炭化水素基を指す。適切なアルケニレン基の非限定的例として、プロパルギルアルコールとアセチレン酸ジオールから誘導されるもの、例えば、SURFYNOL 104としてAir Products and Chemicals,Inc. Allentown,Pennsylvaniaから市販されている2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールが挙げられる。
【0049】
式(II)および(III)は、概略図であり、ブロックは所望の場所で使用できるが、カッコ内の部分が必ずブロックであることを意味するものではない。一部の場合、ポリシロキサンは、多様なシロキサン単位を含むことができる。このことは、用いるシロキサン単位の数が増加すればするほど、益々そうであり、多数の異なるシロキサン単位の混合物を使用する場合にとくにそうである。複数のシロキサン単位を使用し、ブロックの形成を所望する場合、結合してブロック化合物が形成され得るオリゴマーを形成することができる。反応物をうまく選定することによって、交互構造体または交互構造体のブロックを有する化合物を使用することができる。
【0050】
硬化性樹脂結合剤は、組成物中に、80〜99重量%、より通常には85〜99重量%の量で存在する。無機粒子は、組成物中に、0.5〜10重量%、より通常には0.5〜5重量%の量で存在し、界面活性剤は、通常、コーティング組成物中に、0.5〜10重量%、より通常には2〜12.5重量%の量で存在する。上記の重量%は、組成物の全固体重量に対するものである。
【0051】
コーティング組成物が電着によって塗布される場合、コーティング組成物は、水性分散液の形態である。
【0052】
「分散液」という用語は、組成物の固体が分散相であり、水が連続相である2相の透明、半透明または不透明系であると考えられている。固体相の平均粒径は、一般に、1.0ミクロン未満、通常0.5ミクロン未満、好ましくは、0.15ミクロン未満である。
【0053】
水性媒体中の固体相の濃度は、水性分散液の全重量に対して少なくとも1重量%、通常約2〜約60重量%である。
【0054】
電着浴は、水および任意選択の共希釈剤中に、イオン性フィルム形成樹脂および架橋剤を含む硬化性樹脂組成物を予備分散する(predispering)ことによって調製することができる。通常、この予備分散液の樹脂固体は、分散液の全重量に対して約60〜80重量%である。次いで、分散液は、追加の水および任意選択の共希釈剤で希釈して電着浴を形成することができる。無機粒子および界面活性剤は、予備分散液または電着浴それ自体に添加することができる。好ましくは、無機粒子を、界面活性剤と予備反応させ、その予備反応材料を樹脂予備分散液に添加する。予備反応は、無機粒子と界面活性剤との実際の化学反応を必ずしも意味しない。それは、2つを一緒に混合した後に、通常、50〜150℃で10〜60分間加熱して混合物を形成し、その混合物が、コーティング組成物により容易に組み込まれることが分かっている実際の反応生成物になる場合があるということを単に意味するに過ぎない。
【0055】
本発明の組成物が、電着浴の形態である場合、電着浴の固体含量は、通常、電着浴の全重量に対して約5〜25重量%の範囲内である。
【0056】
上述したように、水の他に、水性媒体は、合体溶媒などの共希釈剤を含むことができる。有用な合体溶媒として、炭化水素、アルコール、エステル、エーテルおよびケトンが挙げられる。好ましい合体溶媒として、アルコール、ポリオールおよびケトンが挙げられる。特定の合体溶媒として、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、イソホロン、2−メトキシペンタノン、エチレングリコールおよびプロピレングリコール、ならびにエチレングリコールのモノエチル、エチレングリコールのモノブチルおよびエチレングリコールのモノヘキシルエーテルが挙げられる。合体溶媒の量は、水性媒体の全重量に対して、一般に約0.01〜25重量%、用いる場合、好ましくは、約0.05〜約5重量%である。
【0057】
コーティング組成物は、染料または透明顔料を含むことによって、コーティングの透明性を大幅に損なうことなくコーティングに着色することができる。
【0058】
上記の水性分散液を電着で使用するのに用いる場合、水性分散液を伝導性アノードおよび伝導性カソードに接触させる。コーティングされるべき表面は、カチオン性電着ではカソードであり、アニオン性電着ではアノードである。上述したように、本発明の方法では、基材がカソードとして働くことが好ましい。水性分散液と接触した後に、コーティング組成物の接着フィルムは、電極間に十分な電圧を印加した場合に電極として働いている基材上に堆積する。電着が実施される条件は、一般に、他の型のコーティングの電着で使用される条件と類似である。印加電圧は、変化させることができ、例えば、わずか1ボルトから大きくは数千ボルトであってよいが、通常50〜500ボルトである。電流密度は、通常、平方フィート当り0.5アンペア〜5アンペアであり、電着中に減少する傾向があり、それによって、絶縁フィルムが形成されたことが分かる。
【0059】
組成物が硬化する場合、無機粒子は、表面領域の濃度が硬化組成物のバルク領域よりも大きくなるように硬化組成物の表面領域まで移動する。
【0060】
本明細書では、硬化組成物の「表面領域」とは、コーティングされた基材の空気曝露表面に一般に平行で、硬化コーティングの表面から深さ方向に垂直に延伸する厚さが曝露表面から下方に少なくとも20ナノメートル〜150ナノメートルである領域を意味する。ある種の実施形態では、表面領域のこの厚さは、少なくとも20ナノメートル〜100ナノメートルの範囲であり、少なくとも20ナノメートル〜50ナノメートルの範囲であってもよい。本明細書では、硬化組成物の「バルク領域」とは、表面領域から下方に延伸し、コーティングされた基材の表面に一般に平行である領域を意味する。バルク領域は、表面領域との界面から硬化コーティングを通って硬化組成物の下方の基材またはコーティング層まで延伸する厚さを有する。
【0061】
硬化組成物中の粒子の濃度は、多様な方法で特徴付けることができる。例えば、表面領域の粒子の平均数密度(すなわち、単位体積当りの粒子の平均数または粒子数)は、バルク領域の平均数密度より大きい。あるいは、表面領域の粒子の平均体積分率(すなわち、粒子の占める体積/全体積)または単位体積当りの平均重量%、すなわち、((硬化コーティングの単位体積内の粒子重量)/(硬化コーティングの単位体積の全重量))×100%は、バルク領域内の粒子の平均体積分率または平均重量%より大きい。
【0062】
硬化コーティングの表面領域に存在する粒子濃度(上記で特徴付けられるような)は、所望であれば、透過型電子顕微鏡法(「TEM」)、表面走査型電子顕微鏡法(「X−SEM」)、原子間力顕微鏡法(「AFM」)およびX線光電子分光分析法などの当技術分野で周知の多様な表面分析技法によって求めることができる。
【0063】
例えば、硬化コーティングの表面領域に存在する粒子の濃度は、断面透過型電子顕微鏡技法によって求めることができる。有用な透過型電子顕微鏡法は、概括的に以下のように記述される。コーティング組成物を基材に塗布し硬化させる。次いで、硬化コーティングの試料を、基材から除去または剥離させ、当技術分野で周知である技法を使用して硬化エポキシ樹脂中に埋め込む。次いで、埋め込まれた試料は、ブロック状の面の形成など当技術分野で周知である技法を使用して室温で薄片にすることができる。薄片は、水を保持するための「ボート型空洞」を備えたホルダーに付けた45°ダイアモンドナイフエッジを使用して切断することができる。切断プロセス中において、薄片は、ボート型空洞中の水の表面まで漂う。数個の切断片が明から暗金色までの干渉色にいったん到達したら(すなわち、厚さ約100〜150ナノメートル)、個々の試料を通常、ホルムバール−炭素でコーティングされたグリッド上に集め、ガラススライド上で周囲温度で乾燥させる。次いで、試料を、Philips CM12 TEMなどの適切な透過型電子顕微鏡内に置き、105,000倍などの多様な倍率で調べ、電子顕微鏡写真を介して表面領域の粒子濃度を記録する。硬化コーティングの表面領域の粒子濃度は、電子顕微鏡写真を目視検査で確認することができる。
【0064】
本発明によって硬化組成物から形成されたコーティングは、優れた初期の耐引っ掻き(傷)特性、および優れた耐候性試験後または「保持後」の耐引っ掻き(傷)性を有することができ、これは、コーティングされた基材の磨耗前後でのコーティングされた基材の光沢を測定することによって評価することができる。
【0065】
本発明によるコーティングされた基材の初期の20°光沢は、Gardner Instrument Company,Inc.から市販されている20°NOVO−GLOSS 20統計的光沢計によって測定することができる。コーティングされた基材は、Atlas Electrical Devices Company of Chicago、Illinoisから市販されているAtlas AATCC Scratch Tester、Model CM−5を使用して錘付研磨紙を用いて10往復の擦りでコーティングまたは基材を直線的に引っ掻くことによる引っ掻き試験にかけることができる。研磨紙は、St.Paul、Minnesotaの3M Companyから市販されている3M 281Q WETORDRY(商標)PRODUCTION(商標)の9ミクロン研磨紙シートである。次いで、パネルを水道水ですすぎ、紙タオルで注意深く叩いて乾燥させる。20°光沢を各試験パネルの引っ掻き領域について測定する。報告数値は、引っ掻き試験後も保持された初期の光沢の百分率、すなわち、100%×引っ掻き後の光沢/初期の光沢である。明るく反射するコーティングされた基材の20°光沢は、あまり意味がないので、20°光沢は、本発明のコーティング組成物が塗布されている黒色基材について求める。例えば、基材は、カーボンブラックなどの伝導性黒色顔料を含むコーティング組成物でまずコーティングした後、本発明のコーティング組成物を電着させることができる。このようにして試験した場合、硬化組成物は、初期20°光沢(Gardner Instrument Companyから市販されている20°NOVO−GLOSS 20統計的光沢計によって測定した場合)が70超であり、磨耗試験後も初期光沢の少なくとも70%を保持する。
【0066】
加えて、硬化コーティングは、耐引っ掻き性(Q Panel Companyから市販の耐候性試験用キャビネット中でUVA−340電球にQUV曝露することによって、未引っ掻き試験パネルを耐候性シミュレーションにかけた後に上記の引っ掻き試験法を使用して測定した場合)が保持されるので、初期20°光沢の50%超が耐候性試験後も保持される。
【0067】
本発明の例示は、以下の実施例であるが、この実施例は、本発明を細部まで限定するものとみなすべきではない。別段の指示がない限り、以下の実施例、および本明細書全体において部数および百分率はすべて重量基準である。
【実施例】
【0068】
(実施例A)
ポリシロキサン
この実施例は、おおよその重合度が3〜4であるポリシロキサン、すなわち、(Si−O)〜(Si−O)のヒドロシリル化生成物であるポリシロキサンポリオールの調製を記述する。ポリシロキサンポリオールを以下のように調製した:
窒素ブランケットを保持するための手段を備えた適切な反応容器に、トリメチルロールプロパンモノアリルエーテル1032.0kgおよび無水酢酸ナトリウム84.4gを添加した。室温で撹拌しながら、混合物に窒素を20分間パージし、塩化白金酸溶液(イソプロパノール570.0gに29.1gを溶解させたもの)を添加した後、トルエン952.5gを添加した。混合物を80℃まで加熱し、MASILWAX BASE 135(Emerald Performance Materialsから市販の水素化ケイ素を含むポリシロキサン)680.4kgを5時間30分間かけて添加した。赤外スペクトルの2150cm−1における水素化ケイ素のピークが全く観察されなくなるまで、温度を80℃に保持した。
【0069】
(実施例B)
シリカ分散液
この実施例は、以下のように調製されたコロイダルシリカ分散液を記述する:
真空蒸留装置を備えた適切な反応容器をNで洗い流した。反応フラスコに実施例Aのポリシロキサンポリオール236.3g、ORGANOSILICASOL MT−ST(Nissan Chemicalsから市販のコロイダルシリカ)337.2gおよびメチルアミルケトン129.4gを添加した。溶媒212.1gを除去し終わるまで、生成混合物を25℃で真空蒸留した。混合物を2時間40℃で加熱し、次いで、60℃でさらに2時間加熱した。反応フラスコに、4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物90.2gを30分かけて添加した。この添加が完了した後、混合物を90℃まで加熱した。赤外スペクトルにおける1790cm−1の無水物ピークが全く観察されなくなった時に、CARDURA E−10(ネオデカン酸グリシジルエステル)175.9gを2時間かけて添加した。添加から最初の10分後に、ベンジルジメチルアミン0.75gを反応容器に添加した。反応温度を約16時間90℃で保持し次いで、CARDURA E−10の13.56gを添加した。90℃で約20時間後、最終の酸値が11.5に到達した。
【0070】
(実施例I)
実施例Bのコロイダルシリカ分散液を使用してELECTROCLEAR 2700としてPPG Industriesから市販の電着性のカチオン性透明コーティング組成物を修飾した。アミノ基含有アクリルポリマーおよびアミノプラスト硬化剤を実施例Bのシリカ分散液と混合した。混合物に乳酸を添加してアミノ基含有アクリルポリマー(70%TN)を部分的に中和し、混合物は、固体含量30%で水に分散した。電着浴で使用するために、分散液を固体含量15重量%までさらに水で希釈した。
【0071】
図を参照し、それによって、コロイダルシリカ粒子の濃度が、硬化コーティングの表面2においてバルク領域より大きいことを知ることができる。換言すれば、空気曝露表面の界面から深さ20〜50ナノメートルまで延伸する領域のコロイダルシリカ粒子の濃度は、コーティング3のバルク領域のシリカ粒子濃度より大きい。
【0072】
(実施例II)(対照)
対照のために、非修飾ELECTROCLEAR 2700を実施例Iと比較した。
【0073】
実施例IおよびIIのカチオン性電着浴を調製した。浴は、固体含量が15重量%、浴導電率が27℃で700〜900μΩ/cmであった。浴温度26〜32℃、130〜250ボルトで30〜90秒間浴中でアルミニウムパネルに電着した。平滑で連続したフィルムを得た。フィルムを177℃で30分間硬化させて外観の良好な粘着性のないコーティングを得た。
【0074】
試験手順
コーティングされた試験パネルの耐引っ掻き性を以下の方法を使用して測定した:コーティングされたパネルの初期の20°光沢は、Gardner Instrument Company,Inc.から市販されている20°NOVO−GLOSS 20統計的光沢計によって測定する。Atlas Electrical Devices Company of Chicago、Illinoisから市販されているAtlas AATCC Scratch Tester、Model CM−5を使用して錘付研磨紙を用いて10往復の擦りでコーティングされた表面を直線的に引っ掻くことによる引っ掻き試験にコーティングされたパネルをかけた。研磨紙は、3M Companyから市販されている3M 2819 WET OR DRY PRODUCTIONの9ミクロン研磨紙シートである。次いで、パネルを水ですすぎ、注意深く叩いて乾燥させた。20°光沢を各試験パネルの引っ掻き領域について測定した。報告数値は、引っ掻き試験後も保持された初期の光沢の百分率、すなわち、100%×引っ掻き後の光沢/初期の光沢である。Q Panel Co.から市販の耐候性試験用キャビネット中でUVA−340電球にQUV曝露することによって、未引っ掻き試験パネルを耐候性シミュレーションにかけた後に上記の引っ掻き試験法を使用して耐候性試験後の耐引っ掻き性(保持された耐引っ掻き性)を測定した。試験は以下の通りである:70℃で8時間のサイクルの後に50℃で4時間(100時間の全曝露時間)。報告数値は、保持引っ掻き試験後も保持された初期の光沢の百分率、すなわち、100×引っ掻き後の保持光沢/初期の光沢である。結果を以下の表1に報告する。
【0075】
【表1】

上記の表1で報告された結果は、対照に比較して、実施例IIの本発明の電着多成分組成物は、初期の耐引っ掻き性および耐候性シミュレーション試験後の保持された耐引っ掻き性がより良好であるコーティングを提供することを例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)装飾用金属基材と、
(b)無機粒子を含む該基材上の透明硬化コーティングであって、硬化コーティングの曝露表面領域中の粒子濃度が硬化コーティングのバルク領域を超える透明硬化コーティングと
を含むコーティングされた物品。
【請求項2】
前記装飾用金属が、真鍮、青銅、研磨された鋼およびアルミニウム、ならびに貴金属から選択される、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項3】
ハードウェア、アルミニウムおよび鋼の装備品、ならびに宝飾品の形態である、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項4】
前記透明硬化コーティングが、電着によって塗布される、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項5】
電着がカチオン性電着である、請求項4に記載のコーティングされた物品。
【請求項6】
前記硬化コーティングが(メタ)アクリル樹脂から誘導される、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項7】
前記無機粒子が、1000ナノメートル未満の粒径を有する、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項8】
前記無機粒子が、5超のモース硬度を有する、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項9】
前記無機粒子がコロイダルシリカである、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項10】
前記粒子が、前記硬化コーティング組成物中に前記硬化コーティングの重量に対して0.5〜10重量%の量で存在する、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項11】
界面活性剤がポリシロキサンである、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項12】
前記ポリシロキサンが、以下の構造式:
−SiO(4−n−m)/2
[式中、各Rは、同一であっても異なっていてもよく、H、OH、一価の炭化水素基または一価のシロキサン基から選択され、各Rは、同じであっても異なっていてもよく、樹脂結合剤中の官能基と反応性である少なくとも1つの官能基を有する基であり、0<n<4、0<m<4および2≦(m+n)<4である]を有する、請求項11に記載のコーティングされた物品。
【請求項13】
前記ポリシロキサンが、以下の構造式:
【化2】

[式中、
mは、少なくとも1の値を有し、
m’は、0〜75の範囲であり、
nは、0〜75の範囲であり、
n’は、0〜75の範囲であり、
各Rは、同一であっても異なっていてもよく、H、OH、一価の炭化水素基、一価のシロキサン基、および前記の任意のものの混合物から選択され、
は、以下の構造:
−R−X
(式中、
−Rは、アルキレン基、オキシアルキレン基、アルキレンアリール基、アルケニレン基、オキシアルキレン基およびアルケニレンアリール基から選択され、
Xは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基、ブロックポリイソシアネート基、第一級アミン基、第二級アミン基、アミド基、カルバメート基、尿素基、ウレタン基、ビニル基、不飽和エステル基、マレイミド基、フマレート基、無水物基、ヒドロキシアルキルアミド基およびエポキシ基から選択される少なくとも1つの反応性官能基を含む基を表す)を含む]を有する、請求項11に記載のコーティングされた物品。
【請求項14】
(a)(i)硬化性樹脂結合剤と、
(ii)無機粒子と、
(iii)界面活性剤とを含む電着性の硬化性組成物を基材上に電着させるステップと、
(b)組成物を硬化させて大気に曝露した表面を有する基材上に実質的に連続したコーティングを形成させるステップであって、その間に、無機粒子が、コーティングの曝露表面領域に移動するステップと
を含む、導電性基材上に耐磨耗性コーティングを形成する方法。
【請求項15】
硬化性樹脂組成物が、
(a)反応性官能基を含むイオン性フィルム形成樹脂と、
(b)(a)の反応性官能基と反応性である官能基を有する硬化剤と
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記イオン性フィルム形成樹脂が、カチオン性基を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カチオン性基が、アミン塩の基およびスルホニウム塩の基から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記イオン性フィルム形成樹脂が、カチオン性基および活性水素基を含む(メタ)アクリル樹脂である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記硬化剤が、ポリイソシアネートである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記無機粒子が、1000ナノメートル未満の粒径を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記無機粒子が、5超のモース硬度値を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記無機粒子が、コロイダルシリカである、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記無機粒子が、組成物中に組成物の全重量に対して0.5〜10重量%の量で存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記界面活性剤が、ポリシロキサンである、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリシロキサンが、以下の構造式:
−SiO(4−n−m)/2
[式中、各Rは、同一であっても異なっていてもよく、H、OH、一価の炭化水素基または一価のシロキサン基から選択され、各Rは、同じであっても異なっていてもよく、樹脂結合剤中の官能基と反応性である少なくとも1つの官能基を有する基であり、0<n<4、0<m<4および2≦(m+n)<4である]を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリシロキサンが、以下の構造式:
【化3】

[式中、
mは、少なくとも1の値を有し、
m’は、0〜75の範囲であり、
nは、0〜75の範囲であり、
n’は、0〜75の範囲であり、
各Rは、同一であっても異なっていてもよく、H、OH、一価の炭化水素基、一価のシロキサン基、および前記の任意のものの混合物から選択され、
は、以下の構造:
−R−X
(式中、
−Rは、アルキレン基、オキシアルキレン基、アルキレンアリール基、アルケニレン基、オキシアルキレン基、およびアルケニレンアリール基から選択され、
Xは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基、ブロックポリイソシアネート基、第一級アミン基、第二級アミン基、アミド基、カルバメート基、尿素基、ウレタン基、ビニル基、不飽和エステル基、マレイミド基、フマレート基、無水物基、ヒドロキシアルキルアミド基およびエポキシ基から選択される少なくとも1つの反応性官能基を含む基を表す)を含む]を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記界面活性剤が、組成物の固体の重量に対して0.5〜10重量%の量で組成物中に存在する、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−533088(P2010−533088A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516237(P2010−516237)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/069602
【国際公開番号】WO2009/009641
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】