説明

耐加水分解性シリコーン化合物

ある局面では、本発明は、耐加水分解性シリコーン化合物に関する。具体的には、立体障害性耐加水分解性シリコーン化合物と高純度耐加水分解性シリコーン化合物が開示される。また、耐加水分解性シリコーン化合物の製造方法も開示されており、開示される方法による生成物;開示される化合物及び開示される方法による生成物を含む組成物及びポリマー;そして、開示される組成物、開示されるポリマー、開示される化合物及び開示される方法による生成物を含むコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜及び眼鏡レンズなどの眼用レンズも開示される。本要約は、特定の技術分野での調査のための検索ツールとして意図されるものであり、本発明を制限することを意図するものではない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2006年9月26日に出願した米国特許出願第60/848,317号及び2006年11月20日に出願した米国特許出願第11/561,456号(これらの文献の全文は、参照により本明細書に組み込まれる)に基づく優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
眼用レンズ用モノマーとして、ケイ素基を有するモノマーが知られている。例えば、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレートが眼用レンズ用モノマーとして広く用いられている。この3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレートと親水性モノマーであるN,N-ジメチルアクリルアミドを共重合して得られるポリマーは透明かつ高酸素透過性であるという有益な特長を有する。しかし、含水率の増加を図るためにメタクリル酸などのカルボン酸を共重合成分として用いると、シリコーン成分が徐々に加水分解されて、長期間保存する際にコンタクトレンズの物性低下を招くおそれがあった。
【0003】
一方、耐加水分解性を高めるために特許文献1に記載されている3-[トリス(トリエチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレートを調製し、カルボン酸を添加して加水分解試験を行った。その結果、ポリマーは、80℃では比較的良好な安定性を示したが、90℃になると加水分解してしまうことが判明した。
【0004】
従って、従来のケイ素含有材料は、典型的には、有益な透明度と酸素透過性を保持しつつ十分な耐加水分解性を提供できない。従って、これらの欠点を克服し、効果的に耐加水分解性ケイ素含有材料を提供する方法及び組成物に対する需要が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,377,371号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書に具体化されて明白に記載されるように、本発明は、ある局面において、耐加水分解性シリコーン化合物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
立体障害性の耐加水分解性シリコーン化合物が開示される。例えば、該化合物は、立体障害性の末端ケイ素基を有していてもよい。更なる例では、前記化合物は、環状シロキサン部分を有していてもよい。
【0008】
また、純度が向上した耐加水分解性シリコーン化合物も開示される。例えば、該化合物は、生成の際に生じるジシロキサン副生成物が少ない。
【0009】
また、耐加水分解性シリコーン化合物の製造方法も開示される。更なる局面では、本発明は、アルコキシシリル化合物と1又は2種類以上のハロゲン化シリル化合物との反応に関する。更なる局面では、本発明は、ハロゲン化シリルとシラノールとの反応に関する。また更なる局面では、本発明は、環状シロキサンモノマーの調製に関する。
【0010】
開示される方法の生成物も開示される。
【0011】
開示される化合物及び開示される方法の生成物を含む組成物及びポリマーも開示される。
【0012】
また、開示される組成物、開示されるポリマー、開示される化合物及び開示される方法の生成物を含む、眼用レンズ、例えば、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜及び眼鏡レンズも開示される。
【0013】
本発明の更なる利点については、その一部は以下の明細書の記載に説明されており、また、その一部は明細書の内容から自明であるか又は本発明の実施により理解することができる。本発明の利点は、特に、添付する各請求項に指摘される要素及びその組み合わせにより実現及び達成される。先の一般的記載及び以下の詳細な説明は、単に例示と説明を提供するためのものであり、本発明を限定するものではなく、本発明は、請求項によって限定されることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本明細書に取り込まれ、その一部を構成する添付図面は、複数の態様を図示し、記載と共に開示される組成物及び方法を図示するものである。
【図1】図1は、R(1/Q)対 厚さ(lm)のプロット図を表す。
【図2】図2は、酸素透過性測定用の装置を示す。
【図3】図3は、酸素透過性の測定に用いられる電極ユニットの構造を示す。
【図4】図4は、酸素透過性測定用装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、以下の本発明の局面の詳細な説明とこれに含まれる実施例を参照することにより、更に容易に理解できる。
【0016】
本発明の化合物、組成物、製品、装置及び/又は方法を開示して説明する前に、これらは、他に特定されてない場合、特定の合成方法に限定されるものではなく、又は他に特定されてない場合、特定の試薬に限定されるものではなく、無論のこと、それ自体として変化してもよいことが理解されなければならない。また、本明細書で用いる用語は、単に特定の態様を説明することのみを目的としており、何らかの制限を意図するものではない。本明細書に説明する方法及び原料と類似するか又は同等のいかなる方法及び原料を本発明の実施又は試験に用いることも可能であるが、これより例示的な方法と原料を説明する。
【0017】
本明細書で言及する全ての文献は、これらの文献を引用して開示及び説明する方法及び/又は原料を参照することにより、本明細書に組み込まれるものとする。本明細書で議論する文献は、本発明の出願日よりも先の開示だけを提示するものとする。しかしながら、これら文献のいずれも、先行発明によって、本発明が、このような文献に先行していないことを容認するものとして解釈すべきではない。更に、本明細書に提示する文献の日付は、実際の発行日と異なっているかもしれないが、実際の発行日については個別に確認する必要があるだろう。
【0018】
A. 定義
本明細書及び添付する請求項で用いる場合、単数形の「一つの(a)」、「一つの(an)」及び「該(the)」には、その文に明確な指摘のない限り、複数形の指示対象も含まれる。従って、例えば、「1つの成分(a component)」、「1つのポリマー(a polymer)」又は「1つの残基(a residue)」には、2つ以上のこれらの成分、ポリマー又は残基等の混合物が含まれる。
【0019】
範囲については、本明細書では、「約」1つの特定の値から、そして/又は「約」別の特定値と表す場合がある。このような範囲が表現された場合、別の態様には、1つの特定の値からそして/又は他の特定の値までが含まれる。同様に、値が近似値で表される場合、「約」という先行詞を用いることで、この特定の値が、別の態様を形成することが理解されるであろう。また更に、これらの範囲の各終点は、もう一方の終点との関連においても有意であるし、そしてもう一方の終点とは無関係に有意でもあることが理解されるであろう。また、本明細書には数多くの数値が開示されており、各数値は、ここにおいて、その数値自体に加えて、その数値の「約」としても開示されていることが理解される。例えば、「10」という数値が開示されている場合、「約10」も開示されていることになる。また、2つの特定の構成単位間の各構成単位も開示されていることが理解される。例えば、10及び15が開示されている場合、11、12、13及び14も開示されていることになる。
【0020】
化学種の残基は、本明細書及び結びの請求項で用いる場合、特定の反応スキームにおける化学種の生成物、又はこれから得られる製剤(formulation)若しくは化学製品である成分を指し、このことは、この成分が実際に前記化学種から得られたかどうかに関係ない。従って、ポリエステル中のエチレングリコール残基は、エチレングリコールを用いてポリエステルを調製したかどうかに関係なく、該ポリエチレン中の1つ以上の-OCH2CH2O-ユニットを指す。同様に、ポリエステル中のセバシン酸残基は、この残基が、ポリエステルを得るためにセバシン酸又はこのエステルを反応させることで得られるかどうかに関係なく、該ポリエチレン中の1つ以上の-CO(CH2)8CO-部分を指す。
【0021】
本明細書で用いる場合、「随意の(optional)」又は「随意に(optionally)」という用語は、続いて記載される現象又は状況が、起こっても起こらなくてもよく、この記載に、前記現象若しくは状況が起こる場合と起こらない場合が含まれることを意味する。
【0022】
本明細書で用いる場合、「共重合体」という用語は、2種類以上の異なる繰り返し単位(モノマー残基)から形成されるポリマーを指す。例としては、共重合体は、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体であってもよいが、これらに限定されるわけではない。
【0023】
本明細書で用いる場合、「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容可能な置換基を含むことを意図している。広い局面では、許容可能な置換基には、有機化合物の非環式及び環式、分枝及び非分枝、炭素環式及び複素環式、並びに芳香族及び非芳香族置換基が含まれる。例示的な置換基には、例として、以下に記載するものが含まれる。許容可能な置換基は、適切な有機化合物に対して、1つ若しくは複数であっても、又は同一若しくは異なっていてもよい。この開示の目的において、窒素等のヘテロ原子は、水素原子置換基及び/又は本明細書に記載される有機化合物のいずれかの許容可能な置換基であって、このヘテロ原子の原子価を満たす置換基を有していてもよい。本開示は、有機化合物の許容可能な置換基によって、いかなる形でも制限を受けることを意図していない。また、「置換」又は「〜で置換された」という用語には、このような置換が、置換された原子及び置換基の許容できる原子価数に一致するものであり、そして該置換が、安定な化合物、自発的に、例えば、転位、環化、脱離等により変化しない化合物を生じるという明確な条件が含まれる。
【0024】
種々の用語を定義するにおいて、「A1」、「A2」、「A3」及び「A4」は、ここでは、種々の特定の置換基を表す包括的記号として用いられる。これらの記号は、いずれの置換基であってもよく、本明細書に開示される置換基に限定されるものではない。そして、これらの記号が、1つの例において特定の置換基として定義される場合であっても、別の例では、別の置換基として定義される場合がある。
【0025】
本明細書で用いられる「アルキル」という用語は、炭素数1〜24、例えば、炭素数1〜12又は炭素数1〜6の分枝状又は非分枝状の飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル等である。アルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。アルキル基は、本明細書に記載される、置換又は非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよいが、これらの基に限定されるものではない。「低級アルキル」基とは、1ないし6個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0026】
「アルキル」とは、明細書を通して、通常は、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方を指すものとして用いられる;しかしながら、本明細書では、置換アルキル基は、該アルキル基上の具体的な置換基を特定することにより、具体的に言及される。例えば、「ハロゲン化アルキル」という用語は、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素のハロゲン化合物の1つ又は複数で置換されたアルキル基を具体的に指す。「アルコキシアルキル」という用語は、例えば、以下に記載されるアルコキシ基の1つ又は複数で置換されたアルキル基を具体的に指す。「アルキルアミノ」という用語は、例えば、以下に記載されるアミノ基等の1つ又は複数で置換されたアルキル基を具体的に指す。1つの例で「アルキル」を用いて、そして、別の例で「アルキルアルコール」等の具体的な用語を用いた場合でも、「アルキル」という用語が、「アルキルアルコール」等の具体的な用語も指さないことを意味するものではない。
【0027】
この慣行は、本明細書に記載する他の基についても用いられる。即ち、「シクロアルキル」等の用語は、非置換シクロアルキル部分及び置換シクロアルキル部分の両方を指すが、本明細書では、該置換部分は、これに加えて、具体的に定義される場合がある;例えば、特定の置換シクロアルキルが、「アルキルシクロアルキル」等と呼ばれる場合もある。同様に、置換アルコキシは、例えば「ハロゲン化アルコキシ」等と具体的に言及される場合があり、特定の置換アルケニルが、例えば「アルケニルアルコール」等となる場合もある。繰り返しになるが、「シクロアルキル」等の一般名と「アルキルシクロアルキル」等の具体的用語を用いる慣行は、該一般名が、該具体的用語を含まないことを暗示するものではない。
【0028】
本明細書で用いる「シクロアルキル」という用語は、3個以上の炭素原子から構成される非芳香族炭素系環である。シクロアルキル基の例は、これらに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル等が挙げられる。「ヘテロシクロアルキル」という用語は、上記で定義されるシクロアルキル基の一種であり、「シクロアルキル」という用語の意味に含まれ、環に含まれる少なくとも1つの炭素原子が、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリン等のヘテロ原子で置換されたものである。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0029】
本明細書で用いる「ポリアルキレン基」という用語は、相互に結合したCH2基を複数有する基である。ポリアルキレン基は、式-(CH2)a-で表すことが可能であり、ここで、「a」は、2〜500の整数である。
【0030】
本明細書で用いる「アルコキシ」及び「アルコキシル」という用語は、エーテル結合を介して結合したアルキル又はシクロアルキルを指す;即ち、「アルコキシ」基は、-OA1として定義可能であり、ここで、A1は、上記に定義されるアルキル又はシクロアルキルである。「アルコキシ」には、直ぐ上に記載するアルコキシ基から成るポリマーも含まれる;即ち、アルコキシは、-OA1-OA2又は-OA1-(OA2)a-OA3等のポリエーテルであってもよく、ここで、「a」は、1〜200の整数であり、かつA1、A2及びA3は、アルキル基及び/又はシクロアルキル基である。
【0031】
本明細書で用いる「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する構造式を有する炭素数2〜24の炭化水素基である。(A1A2)C=C(A3A4)等の非対称構造は、E異性体とZ異性体の両方を含むことを意図している。このことは、本明細書において、非対称アルケンが存在する構造式において適用されてもよく、又は、結合記号C=Cで明確に示してもよい。アルケニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0032】
本明細書で用いる「シクロアルケニル」という用語は、3個以上の炭素原子から構成され、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合、即ち、C=Cを含む非芳香族炭素系環である。シクロアルケニル基の例としては、これらに限定されないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、ノルボルネニル等が挙げられる。「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、上記で定義されるシクロアルケニル基の一種であり、「シクロアルケニル」という用語の意味に含まれ、環に含まれる少なくとも1つの炭素原子が、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリン等のヘテロ原子で置換されたものである。シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0033】
本明細書で用いる「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む構造式を有する、炭素数2〜24の炭化水素基である。アルキニル基は、置換されていなくてもよく、又は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0034】
本明細書で用いる「シクロアルキニル」という用語は、7個以上の炭素原子から構成され、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む非芳香族炭素系環である。シクロアルキニル基の例としては、これらに限定されないが、シクロヘプチニル、シクロオクチニル、シクロノニニル等が挙げられる。「ヘテロシクロアルキニル」という用語は、上記で定義されるシクロアルキニル基の一種であり、「シクロアルキニル」という用語の意味に含まれ、環に含まれる少なくとも1つの炭素原子が、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリン等のヘテロ原子で置換されたものである。シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0035】
本明細書で用いる「アリール」という用語は、これらに限定されないが、ベンゼン、ナフタレン、フェニル、ビフェニル、フェノキシベンゼン等を含む、いずれかの炭素系芳香族基を含有する基である。「アリール」という用語には、芳香族基であって、該芳香族基の環内に少なくと1つのヘテロ原子が組み込まれた芳香族基を含有する基として定義される「ヘテロアリール」も含まれる。ヘテロ原子の例としては、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄及びリンが挙げられる。同様に、「アリール」の用語にも含まれる「非ヘテロアリール」という用語は、ヘテロ原子を含まない芳香族基を含有する基を定義する。アリール基は、置換されていても置換されていなくてもよい。アリール基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。「ビアリール」という用語は、特定の種類のアリール基であり、「アリール」の定義に含まれる。ビアリールは、ナフタレンのような縮合環式構造を介して共に結合した2つのアリール基、又はビフェニルのように1つ以上の炭素−炭素結合を介して結合した2つのアリール基を指す。
【0036】
本明細書で用いる「アルデヒド」という用語は、式-C(O)Hで表される。この明細書を通して、「C(O)」はカルボニル基、即ち、C=Oの略式表記である。
【0037】
本明細書で用いる「アミン」又は「アミノ」という用語は、式NA1A2A3で表され、ここで、A1、A2及びA3は、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0038】
本明細書で用いる「カルボン酸」という用語は、式-C(O)OHにより表される。
【0039】
本明細書で用いる「エステル」という用語は、式-OC(O)A1又は-C(O)OA1により表され、ここで、A1は、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書で用いる「ポリエステル」という用語は、式-(A1O(O)C-A2-C(O)O)a-または-(A1O(O)C-A2-OC(O))a-により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよく、そして「a」は1〜500の整数である。「ポリエステル」とは、2個以上のカルボン酸基を有する化合物と2個以上のヒドロキシル基を有する化合物との反応により生成する基を説明するために用いられる用語である。
【0040】
本明細書で用いる「エーテル」という用語は、式A1OA2により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書で用いる「ポリエーテル」という用語は、式-(A1O-A2O)a-により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよく、そして「a」は1〜500の整数である。ポリエーテル基の例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及びポリブチレンオキシドが挙げられる。
【0041】
本明細書で用いる「ハライド」という用語は、ハロゲン類、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0042】
本明細書で用いる「ヒドロキシル」という用語は、式-OHにより表される。
【0043】
本明細書で用いる「ケトン」という用語は、式A1C(O)A2により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載するような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0044】
本明細書で用いる「アジド」という用語は、式-N3により表される。
【0045】
本明細書で用いる「ニトロ」という用語は、式-NO2により表される。
【0046】
本明細書で用いる「ニトリル」という用語は、式-CNにより表される。
【0047】
本明細書で用いる「シリル」という用語は、式-SiA1A2A3で表され、ここで、A1、A2及びA3は、独立して、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0048】
本明細書で用いる「スルホ-オキソ(sulfo-oxo)」という用語は、式-S(O)A1、-S(O)2A1、 -OS(O)2A1、又は-OS(O)2 OA1で表され、ここで、A1は、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書を通じて、「S(O)」とは、S=Oの略式表記である。「スルホニル」という用語は、本明細書で用いる場合、式-S(O)2A1で表されるスルホ-オキソ基を指し、ここで、A1は、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書で用いる「スルホン」という用語は、式A1S(O)2A2により表され、ここで、A1及びA2は、本明細書に記載するように、独立して、置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書で用いる「スルホキシド」という用語は、式A1S(O)A2により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0049】
本明細書で用いる「チオール」という用語は、式- SHにより表される。
【0050】
本明細書で用いる場合、「シロキサニル」という用語は、少なくとも1つのSi-O-Si結合を有する構造体を指す。従って、例えば、シロキサニル基は、少なくとも1つのSi-O-Si部分を有する基を意味し、シロキサニル化合物は、少なくとも1つのSi-O-Si基を有する化合物を指す。
【0051】
本明細書で用いる場合、「アルコキシシリル」という用語は、少なくとも1つのSi-O-A1結合を有する構造体を指す。従って、例えば、アルコキシシリル基は、少なくとも1つのSi-O-A1部分を有する基を意味し、アルコキシシリル化合物は、少なくとも1つのSi-O-A1基を有する化合物を意味する。更なる局面では、アルコキシシリルは、Si-O-A1基を1つ有していてもよい。種々の局面において、アルコキシシリル部分のA1は、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。また、更なる局面において、アルコキシシリルという用語に、置換アルコキシシリル基及び加水分解されたアルコキシシリル基(即ち、シラノール基)等のアルコキシシリル誘導体が含まれることも意図される。
【0052】
本明細書で用いる場合、「ハロゲン化シリル」という用語は、式X1SiA1A2A3又はX1X2SiA1A2又はX1X2X3SiA1又はX1X2X3X4Siで表される構造を指し、ここで、X1、X2、X3及びX4は、独立して、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、そしてA1、A2及びA3は、独立して、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基である。更なる局面では、ハロゲン化シリルは、X1SiA1A2A3の構造を有していてもよい。
【0053】
本明細書で用いる場合、「シラノール」という用語は、式 -SiA1A2A3A4で表される構造を有するシリル部分を指し、ここで、A1、A2、A3及びA4は、独立して、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよいが、但し、A1、A2、A3及びA4のうち少なくとも1つがヒドロキシルとなる。更なる局面では、A1、A2、A3及びA4のうち1つがヒドロキシルである。
【0054】
本明細書で用いる場合、「シラノキシ」及び「シラノキシル」という用語は、式 -OSiA1A2A3で表される構造を有するシリル部分を指し、ここで、A1、A2及びA3は、独立して、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0055】
本明細書で用いる場合、「アルキルアクリル酸」という用語は、アクリル酸、アルキル置換アクリル酸、これらの塩及びこれらの誘導体を指す。ある局面では、アルキルアクリル酸は、更に置換されていてもよい。更なる局面では、アルキルアクリル酸は、メタクリル酸である。
【0056】
本明細書で用いる場合、「加水分解性基」という用語は、加水分解又は加溶媒分解により水素へと変換可能な基又は部分を指す。ある局面では、加水分解性基は、周囲温度で又は周囲温度前後で、大気圧で又は大気圧前後で、水又はプロトン性溶媒に暴露することにより加水分解できる(即ち、水素基に変換できる)。更なる局面では、加水分解性基は、高温又は高圧下で水又はプロトン性溶媒に暴露することで加水分解できる。更なる局面では、加水分解性基は、酸性水若しくはアルカリ水又は酸性プロトン性溶媒若しくはアルカリ性プロトン性溶媒に暴露することにより加水分解できる。
【0057】
本明細書で用いる場合、「立体障害性」という用語は、第三級又は第四級の置換部分を指し、ここで、少なくとも1つの置換基が、2個以上の炭素原子を有する。例えば、立体障害性部分は、以下の構造を有していてもよい。
【0058】
【化1】

【0059】
(式中、A1は、炭素原子又はケイ素原子であり、そして、A2、A3及びA4のうち少なくとも1つが炭素数2以上の有機基である。更なる局面では、A2、A3及びA4のうち少なくとも1つがメチルであり、そしてA2、A3及びA4のうち少なくとも1つが炭素数2以上の有機基である)。
【0060】
立体障害性基の一例としては、立体障害性末端ケイ素基が挙げられ、これは、以下の構造を有していてもよい:
【0061】
【化2】

【0062】
(式中、A2、A3及びA4のうち少なくとも1つが炭素数2以上の有機基である。更なる局面では、A2、A3及びA4のうち少なくとも1つがメチルであり、そしてA2、A3及びA4のうち少なくとも1つが炭素数2以上の有機基である)。
【0063】
本明細書で用いる場合、「ラジカル重合可能な重合基」という用語は、例えば、ラジカル開始剤などのラジカル源に暴露させた際に、付加重合を起こすことが可能な部分を指す。ラジカル共重合可能な重合基としては、オレフィン類並びにアクリレート類、例えば、アクリル酸及びその誘導体(例えば、アクリル酸アルキル)並びにメタクリル酸及びその誘導体(例えば、メタクリル酸アルキル)等が挙げられる。このような重合は、典型的には、連鎖成長機構を通じて進行し、連鎖成長速度を示す。
【0064】
本明細書で用いる場合、「加水分解耐性」という用語は、加水分解条件下で化合物又は組成物が存続し続ける能力を指す。ある局面では、酸加水分解が意図される。本明細書で用いる場合、「耐加水分解性」という用語は、加水分解条件下で存続し続ける特性を指す。ある局面では、化合物の残基について、組成物が、その化合物の残基を含む場合に、その化合物の残基を含まない類似組成物と比べて、より高い加水分解耐性を示す場合に、前記化合物の残基が加水分解性であると称することができる。
【0065】
他に記載のない限り、くさび又は破線ではなく実線のみで示される化学結合を有する式は、それぞれの可能な異性体、例えば、各エナンチオマー及びジアステレオマー並びにラセミ混合物又はスケールミック(scalemic)混合物等の異性体の混合物を意図している。
【0066】
本発明の組成物の調製に用いられる成分、並びに本発明の方法で用いられる組成物自体が開示される。これらと他の原料が本明細書に開示されており、これら原料の組合せ、サブセット、相互作用、グループ等が開示される場合は、これら化合物の個々の種々の組合せ及び集合的な組み合わせ及び順序が明確に開示されていないかもしれないがその場合にも、それぞれは、本明細書において、具体的に意図されて記載されているものと理解される。例えば、特定の化合物が開示されて議論され、該化合物を含む数多くの分子に施すことが可能な数々の修飾が議論される場合、特に表示のない限り、該化合物と可能な修飾のそれぞれ及び全ての組合せと順序が具体的に意図されている。従って、あるクラスの分子A、B及びCが、あるクラスの分子D、E及びFと共に開示され、そして組合せ分子A-Dの例が開示されている場合には、それぞれが個別に記載されていなくても、それぞれが、個別かつ集合的に意図されており、組み合わせA-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E及びC-Fが開示されているものと見なされることを意味している。同様に、これらのあらゆるサブセット又は組み合わせも開示されているものとする。従って、例えば、A-E、B-F及びC-Eのサブグループも開示されているものとみなされることになる。この概念は、これらに限定されないが、本発明の組成物の製造方法及び使用方法における工程を含む、本出願の全ての局面にあてはまる。従って、実施可能な種々の更なる工程が存在する場合には、これらの更なる工程のそれぞれが、本発明の方法のいずれかの具体的な態様又は態様の組合せで実施できるものと理解される。
【0067】
本明細書に開示する組成物が、一定の機能を有することが理解される。本明細書には、開示される機能を実行するための特定の構造上の要件が開示されており、開示される構造に関する機能と同一の機能を実行可能な種々の構造が存在すること、そしてこれらの構造が、典型的には同一の結果を達成するであろうことが理解される。
【0068】
B.耐加水分解性シリコーン化合物
ある局面において、本発明は、立体障害性の耐加水分解性シリコーン化合物に関する。即ち、シリコーン化合物は、少なくとも一つの立体障害性末端ケイ素基を有しており、従って、加水分解条件に対する耐性が向上している。
【0069】
1.立体障害性耐加水分解性シリコーン化合物
ある局面では、本発明は、以下の構造を有する立体障害性耐加水分解性シリコーン化合物に関する:
【0070】
【化3】

【0071】
(式中、Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表し;
Z1〜Z11は、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表すが、但し、Z3、Z4及びZ9の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ3、Z4及びZ9の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり、Z5、Z6及びZ10の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり、そして、Z7、Z8及びZ11の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり;nは、0〜200の整数を表し;そして、a、b及びcは、独立して、0〜20の整数を表すが、但し、a、b及びcは、同時に0になることはない)。
【0072】
ある局面では、a、b及びcは、1である。更なる局面では、nは、0である。更なる局面では、nが、0であり、a、b及びcの全てが1である。また更なる局面では、aが0であり;b及びcが1であり;そしてZが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はフェニル基を含む。また更なる局面では、kが0であり、mが1〜3である。別の更なる局面では、mが2又は3であり、a、b及びcが、独立して、1ないし20であり、例えば、1ないし16、1ないし12、1ないし8、1ないし6、1ないし4、2ないし16、2ないし12、2ないし8、2ないし6、2ないし4又は4ないし20である。また、更なる局面では、mが2又は3であり;a、b及びcが、1であり;そしてnが0である。
【0073】
例えば、化合物は、以下の構造を有していてもよく、約90℃において少なくとも約90%の耐加水分解性を示す:
【0074】
【化4】

【0075】
(式中、Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;Lは、以下の構造を有し;
【0076】
【化5】

【0077】
(ここで、Gは、水素又は加水分解性基であり;kは、0〜6の整数を表し、;そして、mは、kが0の場合に、1〜3の整数を表し、kが0でない場合に、1〜20の整数を表すが、但し、1 < 3k + m < 20である)
Z1〜Z11は、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表すが、但し、Z3、Z4及びZ9の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ3、Z4及びZ9の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり、Z5、Z6及びZ10の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり、そして、Z7、Z8及びZ11の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり;nは、0〜200の整数を表し; a、b及びcは、独立して、0〜20の整数を表すが、但し、a、b及びcは、同時に0になることはない)。
【0078】
ある局面では、立体障害性耐加水分解性シリコーン化合物は、環状シロキサンモノマーであってもよく、以下の構造を有していてもよい:
【0079】
【化6】

【0080】
(式中、pは、1、2又は3であり;Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表し;そして、
R1、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a及びR4bは、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す)。
【0081】
a.ラジカル重合可能な重合基
ある局面では、本発明の立体障害性耐加水分解性シリコーン化合物は、少なくとも1つのラジカル重合可能な重合基Mを含む。ある局面では、Mは、例えば、ラジカル開始剤などのラジカル源に暴露させた場合に、付加重合を起こすことが可能な、当業者に知られるいずれかの部分である。更なる局面では、Mは、オレフィンとなる場合がある。例えば、Mは、エチレン、1,3-ブタジエン部分又はスチリル部分を含むアルケン基であってもよい。更なる局面では、Mは、アクリレートとなる場合がある。例えば、Mは、アクリル酸若しくはその誘導体(例えば、アクリル酸アルキル)の残基又はメタクリル酸若しくはその誘導体(例えば、メタクリル酸アルキル)の残基であってもよい。特に、ある局面では、Mは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基であってもよい。
【0082】
更なる局面では、Mは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、N-ビニルアミド基又はスチリル基であってもよい。
【0083】
1つのラジカル重合可能な重合基は、本発明に係る他の化合物の他のラジカル重合可能な重合基又はコモノマーのラジカル重合可能な重合基と重合反応を起こし、これによって、本発明に係る化合物の残基を含むポリマーが生成可能なことが理解されるべきである。
【0084】
b.結合基
ある局面では、本発明の立体障害性耐加水分解性シリコーン化合物は、結合基Lを1個以上含んでいてもよい。ある局面では、Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基であってもよく、例えば、置換された若しくは置換されていない炭素数1〜16の有機基、炭素数1〜12の有機基、炭素数1〜8の有機基又は炭素数1〜4の有機基であってもよい。更なる局面では、結合基Lは、置換された若しくは置換されていないポリアルキレン基となる場合がある。即ち、Lは、相互に結合されたCH2基を2個以上含み、式 -(CH2)a-(式中、「a」は、1〜20の整数)で表される基であってもよい。例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン及びヘキシレンが挙げられる。前記有機基は、分枝状であっても直鎖状であってもよい。
【0085】
更なる局面では、結合基Lは、1又は2個以上の官能基で置換されていてもよい。例えば、Lは、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アミノ基、アミノアルキル基、アミド基、アルキルアミド基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基又はこれらの官能基の組合せで置換されていてもよい。また更なる局面では、Lは、ヒドロキシ基又はヒドロキシアルキル基で置換されていてもよい。特に、ある局面では、Lは、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0086】
更なる局面では、結合基Lの1又は2個以上のCH2基は、1又は2個以上のヘテロ原子で置換されていてもよい。例えば、Lの1又は2個以上のCH2基は、O、S、N-RL、P-RL又はこれらのヘテロ原子の組合せで置換されていてもよい(RLは、炭素数1〜20の置換若しくは非置換アルキル基又は炭素数6〜20の置換若しくは非置換アリール基であり、RLは、1又は2個以上の官能基で置換されていてもよく、そして、RLのCH2基は、1又は2個以上のヘテロ原子で置換されていてもよい)。また更なる局面では、Lの1又は2個以上のCH2基は、0又はN-RLで置換されていてもよい。
【0087】
更なる局面では、Lは、以下の構造を有する:
【0088】
【化7】

【0089】
(式中、Gは、水素又は加水分解性基であり;kは、0〜6の整数を表し、;そして、mは、kが0の場合に、1〜3の整数を表し、kが0でない場合に、1〜20の整数を表すが、但し、1 < 3k + m < 20である)。
【0090】
更なる局面では、kが1であり、そしてmが1ないし7である。別の更なる局面では、Lは、本発明の化合物及び/又は組成物に含まれない。
【0091】
c.シロキサニル鎖
ある局面では、本発明の立体障害性耐加水分解性シリコーン化合物は、以下の構造を有するシロキサニル鎖を含んでいてもよい:
【0092】
【化8】

【0093】
(式中、Z1及びZ2は、独立して、炭素数1〜20の置換若しくは非置換アルキル基又は炭素数6〜20の置換若しくは非置換アリール基である)。
【0094】
前記炭素数1〜20のアルキル基は、例えば、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキル基であってもよい。例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル及びドデシルが挙げられる。前記アルキル基は、分枝状であっても直鎖状であってもよい。
【0095】
前記炭素数6〜20のアリール基は、例えば、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数6〜10のアリール基であってもよい。例としては、フェニル、トルエニル、ピリジニル及びナフタレニルが挙げられる。
【0096】
nは、0ないし200となる場合があり、例えば、0ないし100、0ないし50、0ないし25、0ないし12、0ないし10、0ないし6、0ないし4、1ないし200、1ないし100、1ないし50、1ないし25、1ないし12、1ないし10、1ないし6又は1ないし4となる場合がある。ポリマーでは、nの平均値が、非整数となる場合があることが理解されるべきである。
【0097】
更なる局面では、本発明の化合物は、、以下の一般的構造を有するシロキサニル鎖を含んでいてもよい:
【0098】
【化9】

【0099】
(式中、Z3〜Z11は、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表すが、但し、Z3、Z4及びZ9の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ3、Z4及びZ9の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり、Z5、Z6及びZ10の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり、そして、Z7、Z8及びZ11の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基である)。
【0100】
前記炭素数1〜20のアルキル基は、例えば、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキル基であってもよい。例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル及びドデシルが挙げられる。前記アルキル基は、分枝状であっても直鎖状であってもよい。
【0101】
例えば、各シロキサニル鎖は、独立して、以下の式で表される構造を有していてもよい:
【0102】
【化10】

【0103】
前記炭素数6〜20のアリール基は、例えば、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数6〜10のアリール基であってもよい。例としては、フェニル、トルエニル、ピリジニル及びナフタレニルが挙げられる。
【0104】
例えば、各シロキサニル鎖は、独立して、以下の式で表される構造を有していてもよい:
【0105】
【化11】

【0106】
更なる局面では、a、b及びcのそれぞれは、0ないし20となる場合があり、例えば、0ないし12、0ないし10、0ないし8、0ないし6、0ないし4、1ないし20、0ないし12、0ないし10、0ないし8、0ないし6、0ないし4又は1ないし20、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20であってもよい。ポリマーでは、a、b及びcのいずれかの平均値が、非整数となる場合があることが理解されるべきである。a、b及びcのそれぞれは、a、b及びcの他の項と同じであっても異なっていてもよい。
【0107】
更なる局面では、Z3、Z4及びZ9のうち2つがメチル基であり、かつZ3、Z4及びZ9のうち1つがエチル基、プロピル基又はブチル基であり;Z5、Z6及びZ10のうち2つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10のうち1つがエチル基、プロピル基又はブチル基であり;そして、Z7、Z8及びZ11のうち2つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10のうち1つがエチル基、プロピル基又はブチル基である。別の更なる局面では、Z3、Z4、Z5、Z6、Z7及びZ8がメチル基であり、そして、Z9、Z10及びZ11が、独立して、エチル基、プロピル基又はブチル基である。
【0108】
d.例示的構造
例としては、本発明の立体障害性耐加水分解性シリコーン化合物は、以下の式により表される構造を有していてもよい:
【0109】
【化12】

【0110】
C.耐加水分解性シリコーン化合物の製造方法
ある局面では、本発明は、立体障害性耐加水分解性シリコーン化合物の製造方法に関する。即ち、この方法により、少なくとも1つの立体障害性末端ケイ素基を有し、それによって加水分解条件に対する耐性が向上したシリコーン化合物を製造できる。
【0111】
1.アルコキシシリル化合物とハロゲン化シリル化合物との反応
ある局面では、本発明は、立体障害性末端ケイ素基を有する耐加水分解性シリコーン化合物の製造方法であって、以下の構造を有するアルコキシシリル化合物
【0112】
【化13】

【0113】
を、以下の構造を有する1又は2個種類以上のハロゲン化シリル化合物と反応させる工程を含む方法に関する
【0114】
【化14】

【0115】
(式中、X1、X2及びX3は、独立して、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択されるハロゲンを表し;Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表し;nは、0〜200の整数を表し;Q1、Q2及びQ3は、独立して、水素又は加水分解性基を表し;Z1〜Z11は、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表すが、但し、Z3、Z4及びZ9の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ3、Z4及びZ9の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり、Z5、Z6及びZ10の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり、そして、Z7、Z8及びZ11の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり;a、a'、b、b'、c及びc'は、独立して、0〜20の整数を表し;そして、(a + a')、(b + b')及び(c + c')は、独立して、0〜20の整数であるが、但し、(a + a')、(b + b')及び(c + c')は、同時に0になることはない)。
【0116】
更なる局面では、a、a'、b、b'、c及びc'は、独立して、0ないし20の整数を表し、例えば、0ないし12、0ないし10、0ないし8、0ないし6、0ないし4、1ないし20、0ないし12、0ないし10、0ないし8、0ないし6、0ないし4又は1ないし20を表す。a、a'、b、b'、c及びc'のそれぞれは、a、a'、b、b'、c及びc'の他の項と同じであっても異なっていてもよい。別の更なる局面では、(a + a')、(b + b')及び(c + c')は、独立して、0〜20の整数であるが、但し、(a + a')、(b + b')及び(c + c')は、同時に0になることはない。例えば、(a + a')、(b + b')及び(c + c')は、独立して、0ないし12、0ないし10、0ないし8、0ないし6、0ないし4、1ないし20、0ないし12、0ないし10、0ないし8、0ないし6、0ないし4又は1ないし20、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20となる場合がある。ポリマーでは、a、a'、b、b'、c、c'、(a + a')、(b + b')及び(c + c')のいずれかの平均値が、非整数となる場合があることが理解されるべきである。
【0117】
更なる局面では、Q1、Q2及びQ3は、独立して、アルキルを表す。
【0118】
a.ラジカル重合可能な重合基
ある局面では、本発明の方法により、本明細書に開示するラジカル重合可能な重合基を少なくとも1つ含む化合物が生成される。1つのラジカル重合可能な重合基は、本発明に係る他の化合物の他のラジカル重合可能な重合基又はコモノマーのラジカル重合可能な重合基と重合反応を起こし、これによって、本発明に係る化合物の残基を含むポリマーが生成可能なことが理解されるべきである。
【0119】
b.結合基
ある局面では、本発明の方法により、本明細書に開示する結合基Lを1個以上含む化合物が生成される。更なる局面では、結合基Lは、1又は2個以上の官能基で置換されていてもよい。例えば、Lは、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アミノ基、アミノアルキル基、アミド基、アルキルアミド基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基又はこれらの官能基の組合せで置換されていてもよい。また更なる局面では、Lは、ヒドロキシ基又はヒドロキシアルキル基で置換されていてもよい。特に、ある局面では、Lは、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0120】
更なる局面では、結合基Lの1又は2個以上のCH2基は、1又は2個以上のヘテロ原子で置換されていてもよい。例えば、Lの1又は2個以上のCH2基は、O、S、N-RL、P-RL又はこれらのヘテロ原子の組合せで置換されていてもよい(RLは、炭素数1〜20の置換若しくは非置換アルキル基又は炭素数6〜20の置換若しくは非置換アリール基であり、RLは、1又は2個以上の官能基で置換されていてもよく、そして、RLのCH2基は、1又は2個以上のヘテロ原子で置換されていてもよい)。また更なる局面では、Lの1又は2個以上のCH2基は、0又はN-RLで置換されていてもよい。
【0121】
更なる局面では、Lは、以下の構造を有する:
【0122】
【化15】

【0123】
(式中、Gは、水素又は加水分解性基であり;kは、0〜6の整数を表し、;そして、mは、kが0の場合に、1〜3の整数を表し、kが0でない場合に、1〜20の整数を表すが、但し、1 < 3k + m < 20である)。
【0124】
更なる局面では、kが1であり、そしてmが1ないし7である。別の更なる局面では、Lは、本発明の方法において存在しない。
【0125】
c.シロキサニル鎖
ある局面では、本発明の方法により、本明細書に開示する以下の一般的構造を有するシロキサニル鎖を含んでいてもよい化合物が生成される:
【0126】
【化16】

【0127】
d.アルコキシシリル化合物
ある局面では、本発明の方法は、以下の構造を有するアルコキシシリル化合物に関する:
【0128】
【化17】

【0129】
更なる局面では、Q1、Q2及びQ3は、独立して、水素又は加水分解性基を表す。例えば、Q1、Q2及びQ3は、独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ベンジル基又はベンゾイル基等のアルキル基又はアリール基を表す。
【0130】
更なる局面では、Z1ないしZ8は、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。前記炭素数1〜20のアルキル基は、例えば、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキル基であってもよい。例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル及びドデシルが挙げられる。前記アルキル基は、分枝状であっても直鎖状であってもよい。前記炭素数6〜20のアリール基は、例えば、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数6〜10のアリール基であってもよい。例としては、フェニル、トルエニル、ピリジニル及びナフタレニルが挙げられる。
【0131】
nは、0ないし200となる場合があり、例えば、0ないし100、0ないし50、0ないし25、0ないし12、0ないし10、0ないし6、0ないし4、1ないし200、1ないし100、1ないし50、1ないし25、1ないし12、1ないし10、1ないし6又は1ないし4となる場合がある。ポリマーでは、nの平均値が、非整数となる場合があることが理解されるべきである。
【0132】
更なる局面では、a、b及びcは、独立して、0ないし20の整数を表し、例えば、0ないし12、0ないし10、0ないし8、0ないし6、0ないし4、1ないし20、0ないし12、0ないし10、0ないし8、0ないし6、0ないし4又は1ないし20、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20を表す。a、b及びcのそれぞれは、a、b及びcの他の項と同じであっても異なっていてもよい。ポリマーでは、a、b及びcのいずれかの平均値が、非整数となる場合があることが理解されるべきである。
【0133】
別の更なる局面では、アルコキシシリル化合物は、以下の構造を有していてもよい:
【0134】
【化18】

【0135】
e.ハロゲン化シリル化合物
ある局面では、本発明の方法における使用に適したハロゲン化シリルは、以下の構造を有する:
【0136】
【化19】

【0137】
ある局面では、X1、X2及びX3は、独立して、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択されるハロゲンを表す。
【0138】
更なる局面では、Z3〜Z11は、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。前記炭素数1〜20のアルキル基は、例えば、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキル基であってもよい。例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル及びドデシルが挙げられる。前記アルキル基は、分枝状であっても直鎖状であってもよい。前記炭素数6〜20のアリール基は、例えば、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数6〜10のアリール基であってもよい。例としては、フェニル、トルエニル、ピリジニル及びナフタレニルが挙げられる。
【0139】
更なる局面では、a'、b'及びc'は、独立して、0ないし20の整数を表し、例えば、0ないし12、0ないし10、0ないし8、0ないし6、0ないし4、1ないし20、0ないし12、0ないし10、0ないし8、0ないし6、0ないし4又は1ないし20、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20を表す。a'、b'及びc'のそれぞれは、a'、b'及びc'の他の項と同じであっても異なっていてもよい。ポリマーでは、a'、b'及びc'のいずれかの平均値が、非整数となる場合があることが理解されるべきである。
【0140】
別の更なる局面では、ハロゲン化シリル化合物は、以下の構造を有していてもよい:
【0141】
【化20】

【0142】
f.反応条件
典型的には、アルコキシシリル化合物(例えば、トリアルコキシシリルアルキルアクリレート)とこれに対して3モル当量以上のハロゲン化シリル(例えば、トリアルキルシリルハライド)が、水、アルコール及び有機溶媒の混合物に添加される。トリアルコキシシリルアルキルアクリレートとトリアルキルシリルハライドは、別々に添加してもよく、又は混合物として添加してもよいが、典型的には、滴下漏斗を用いて添加される。このような添加は、典型的には、混合物を撹拌、振とう又は超音波処理により混和させながら行われる。
【0143】
i.試薬
ある局面では、例えば、本明細書に記載されるような、トリアルコキシシリルアルキルアクリレートなどの本明細書に開示されるアルコキシシリル化合物は、本明細書に開示する方法と関連して用いることができる。典型的には、この試薬の1モル当量が使用される。
【0144】
ある局面では、例えば、トリアルキルシリルハライドなどの本明細書に開示されるハロゲン化シリルは、本明細書に開示する方法と関連して用いることができる。有機合成分野の当業者であれば、反応に用いるハロゲン化シリルの相対量を直ちに決定可能であろうが、典型的には、アルコキシシリル化合物に対して3モル当量以上のハロゲン化シリルが用いられる。更なる局面では、過剰量が所望される場合には、4、5、6モル当量又はこれ以上を用いてもよい。
【0145】
更なる局面では、開示する方法との関連で水を用いてもよい。より具体的には、アルコキシシリル化合物とハロゲン化シリルとが添加された混合物において使用できる。更なる局面では、水は、脱イオン水又は蒸留水である。典型的には、反応に用いるアルコキシシリル化合物1 mmol当たりに約0.5 mLの水が用いられる;しかしながら、アルコキシシリル化合物1 mmol当たりに約0.1 mLないし約3.0 mLの水を用いてもよい。理論への束縛を願うものではないが、水はアルコキシシリル化合物の加水分解に寄与し、それによって、求核剤が形成され、この求核剤が、次に、ハロゲン化シリルと反応することになると考えられている。
【0146】
更なる局面では、開示する方法との関連でアルコールを用いてもよい。アルコールは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール又はその他の炭素数7〜12のアルコールであってもよい。更なる局面では、前記アルコールは、水混和性である。典型的には、混合物に含まれる水1 mL当たり約0.5 mLのアルコールが用いられる;しかしながら、水1 mL当たり約0.1 mLないし約3.0 mLのアルコールを用いてもよい。
【0147】
ある局面では、開示する方法との関連で有機溶媒を用いてもよい。種々の局面において、有機溶媒は、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン又はデカンなどの炭化水素;ジエチルエーテルなどのエーテル;又はジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びジエチルアセトアミドなどのアミドであってもよい。更なる局面では、水と不混和性となるような有機溶媒が選択される。典型的には、混合物に含まれる水1 mL当たり約0.5 mLの有機溶媒が用いられる;しかしながら、水1 mL当たり約0.1 mLないし約3.0 mLの有機溶媒を用いてもよい。
【0148】
ii.温度及び圧力
添加は、典型的には、約0℃ないし約10℃の温度、例えば、約0℃ないし約5℃又は約2℃ないし約3℃の温度で行われる。即ち、水、アルコール及び有機溶媒の混合物は、典型的には、アルコキシシリル化合物及びハロゲン化シリルの添加前及び/又は添加中に冷却される。更なる局面では、アルコキシシリル化合物及び/又はハロゲン化シリルは、添加前及び/又は添加中に、例えば、約0℃ないし約10℃の温度、例えば、約0℃ないし約5℃又は約2℃ないし約3℃の温度に冷却される。添加は、大気圧(即ち、約760 Torr)下で好適に行うことが可能である。
【0149】
iii.時間
ある局面では、反応は、約30分間ないし約6時間、例えば、約1時間ないし約4時間又は約3時間撹拌させてもよい。当業者であれば、クロマトグラフ法(例えば、薄層クロマトグラフィー(TCL)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又はガスクロマトグラフィー(GC))によって出発物質(例えば、アルコキシシリル化合物)の消費をモニターすることにより、反応の完了を直ちに決定できるであろう。
【0150】
iv.精製
反応が完了すると、有機層(即ち、有機溶媒及び有機溶媒に溶解する成分)の取り出し及び水層の除去により生成物を単離することができる。典型的には、有機層をブラインで1回又は複数回洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥させる。次いで、粗生成物をろ過し、濃縮して、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/酢酸エチル)により精製できる。
【0151】
g.本発明の方法により生成される耐加水分解性シリル化合物
本発明の方法により生成される生成物も開示されている。ある局面では、本発明の方法により生成される耐加水分解性シリコーン化合物は、本明細書に開示する以下の構造を有していてもよい:
【0152】
【化21】

【0153】
(式中、Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表し;Z1〜Z11は、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表すが、但し、Z3、Z4及びZ9の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ3、Z4及びZ9の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり、Z5、Z6及びZ10の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり、そして、Z7、Z8及びZ11の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり;nは、0〜200の整数を表し;そして、a、b及びcは、独立して、0〜20の整数を表すが、但し、a、b及びcは、同時に0になることはない)。
【0154】
更なる種々の局面において、耐加水分解性シリコーン化合物は、以下の構造を有していてもよい:
【0155】
【化22】

【0156】
D.環状シロキサンモノマー
更なる局面では、本発明は、環状シロキサンモノマー、該環状シロキサンモノマーの残基を含むポリマー、これらの製造方法及びこれらの重合方法に関する。前記ポリマーを含むシリコーンハイドロゲルは、従来のシリコーンハイドロゲルと比較して、熱安定性が向上している。環状シロキサンは、シリコーンハイドロゲル形成製剤中のシリコーンの唯一の供給源として用いてもよく、又はTRIS、mPDMS、SiGMA及びその他の非環状シロキサンとの組み合わせで用いてもよい。
【0157】
これらのモノマーは、混合物中での相溶性、酸素透過性に対する寄与などに関して、類似する非環状類似体と同様の作用を示す。例えば、SiGMAと同様に、C4-SiGMAは、特に、PVPなどの高分子量内部湿潤剤が混合物中に含まれる場合に、シリコーンハイドロゲル形成用混合物の相溶性を向上させることができる。
【0158】
1.従来型シリコーンハイドロゲルの加水分解安定性
従来型のシリコーンハイドロゲルは、加水分解安定性が制限されている。これらを水中で加熱すると、通常は、これらの物質の弾性係数の増加が観察される。例えば、Purevision(登録商標)(Bausch & Lomb社)レンズの弾性係数は、95℃で1週間加熱した場合に155から576 psiに増加する。典型的な加速劣化モデルにおいては、いくつかのシリコーンハイドロゲルレンズの保存期間は、この弾性係数の増加により短縮される場合がある。
【0159】
理論への束縛を願うものではないが、以下に示すように、末端シロキサン基の加水分解が起こり、次いで、縮合反応により新たなシロキサン結合が形成され、新たな架橋が導入されることがこの弾性係数の増加の原因だと考えられている。
【0160】
【化23】

【0161】
更にまた、一般的に、イオン性カルボキシレート基が導入された場合には、水中で加熱した場合よりも弾性係数の増加が著しいものとなる。Purevision(登録商標)(Bausch & Lomb社)レンズは、カルボン酸官能性モノマー(carboxylic acid-functional monomer)であるVINAL(N-ビニルカルボキシ-β-アラニン)で作られていることから、このレンズの弾性係数の増加は上記の一例となる。ある局面では、カルボキシレート基は、以下に示すように求核触媒として機能する場合がある:
【0162】
【化24】

【0163】
2.加水分解安定性の向上
小規模のシリコーン環を含み、かつ末端シロキサン基を含まないモノマー(例えば、トリメチルシロキサン)は、典型的には、以下に示すように、シロキサン結合が加水分解によって切断された際に縮合して環を再形成する:
【0164】
【化25】

【0165】
換言するならば、初期平衡状態は、分子内縮合により元の環状シロキサンを再形成する方に傾いている。従って、新たな架橋は殆ど形成されず、弾性係数増加の低下が観察されることになる。このようなモノマーとしては、例えば、シクロテトラシロキサン類又はシクロペンタシロキサン類を挙げることができる。
【0166】
シリコーンハイドロゲルの製造に用いたシクロトリシロキサンメタクリレートでは、弾性係数は増加することが判明した。理論への束縛を願うものではないが、これは、シクロトリシロキサンが、特に環のひずみに起因して開環を起こしやすいことが原因であると考えられている。
【0167】
3.化合物
ある局面では、前記化合物は、以下の構造を有する:
【0168】
【化26】

【0169】
(式中、pは、1、2又は3であり;Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表し;そして、
R1、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a及びR4bは、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。更なる局面では、R2a = R2b、R3a = R3b、そしてR4a = R4bである)。
【0170】
好ましいモノマーの例としては、以下に示すC4-TRIS及びC4-SiMAAが挙げられる。
【0171】
【化27】

【0172】
即ち、ある局面では、前記化合物は、以下の構造を有する:
【0173】
【化28】

【0174】
また、更なる局面では、前記化合物は、以下の構造を有する:
【0175】
【化29】

【0176】
種々の局面において、R1、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a及びR4bは、メチルである。
【0177】
a.ラジカル重合可能な重合基
ある局面では、本発明に係る高純度耐加水分解性シリコーン化合物は、本明細書に開示するラジカル重合可能な重合基Mを少なくとも1つ含む。更なる局面では、Mは、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、N-ビニルアミド基又はスチリル基である。1つのラジカル重合可能な重合基は、本発明に係る他の化合物の他のラジカル重合可能な重合基又はコモノマーのラジカル重合可能な重合基と重合反応を起こし、これによって、本発明に係る化合物の残基を含むポリマーが生成可能なことも理解されるべきである。また、開示する環状シロキサンモノマーの化合物の残基を1個以上含むポリマーも開示される。
【0178】
更なる局面では、前記重合可能な重合基は、化学反応により重合可能な基に変換可能な官能基を有する化合物で置換されていてもよい。例えば、アリルグリシジルエーテルを用いた場合、得られる環状シロキサンエポキシドをメタクリル酸と反応させてC4-SiMAAを得ることができる。
【0179】
b.結合基
ある局面では、本発明に係る純度が向上した耐加水分解性シリコーン化合物は、、本明細書に開示する結合基Lを1個以上含んでいてもよい。更なる局面では、Lは、以下の構造を有する2価の結合基である:
【0180】
-(CH2)q-
【0181】
(式中、qは、1、3、4、5又は6である。更なる局面では、qは3である)。
【0182】
更なる局面では、結合基Lは、1又は2個以上の官能基で置換されていてもよい。例えば、Lは、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アミノ基、アミノアルキル基、アミド基、アルキルアミド基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基又はこれらの官能基の組合せで置換されていてもよい。また更なる局面では、Lは、ヒドロキシ基又はヒドロキシアルキル基で置換されていてもよい。特に、ある局面では、Lは、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0183】
更なる局面では、結合基Lの1又は2個以上のCH2基は、1又は2個以上のヘテロ原子で置換されていてもよい。例えば、Lの1又は2個以上のCH2基は、O、S、N-RL、P-RL又はこれらのヘテロ原子の組合せで置換されていてもよい(RLは、炭素数1〜20の置換若しくは非置換アルキル基又は炭素数6〜20の置換若しくは非置換アリール基であり、RLは、1又は2個以上の官能基で置換されていてもよく、そして、RLのCH2基は、1又は2個以上のヘテロ原子で置換されていてもよい)。また更なる局面では、Lの1又は2個以上のCH2基は、0又はN-RLで置換されていてもよい。
【0184】
更なる局面では、Lは、以下の構造を有する:
【0185】
【化30】

【0186】
(式中、Gは、水素又は加水分解性基であり;kは、0〜6の整数を表し、;そして、mは、kが0の場合に、1〜3の整数を表し、kが0でない場合に、1〜20の整数を表すが、但し、1 ≦ 3k + m ≦ 20である)。
【0187】
4.製造方法
ある局面では、本発明は、環状シロキサンモノマーの製造方法に関する。即ち、種々の局面において、ジハロシリル化合物をシロキサニルジオール化合物と反応させる工程を含む方法が開示される。
【0188】
a.ジハロシリル化合物とシロキサニルジオールの反応
ある局面では、本発明は、以下の構造を有するジハロシリル化合物:
【0189】
【化31】

【0190】
(式中、Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表し;そして、R1は、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す)
を、以下の構造を有するシロキサニルジオール化合物
【0191】
【化32】

【0192】
(式中、pは、1、2又は3であり;そして、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a及びR4bは、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す)
と反応させる工程を含む、環状シロキサンモノマーの製造方法に関する。
【0193】
更なる局面では、前記工程は、以下の反応により表される場合がある:
【0194】
【化33】

【0195】
更なる局面では、前記環状シロキサンモノマーは、以下の構造を有する:
【0196】
【化34】

【0197】
更なる局面では、前記方法は、更に、前記モノマーを重合させる工程を含む。
【0198】
また、前記方法の生成物も開示される。
【0199】
b.環状シロキサニルシラン化合物による不飽和化合物のヒドロシリル化
ある局面では、本発明は、遷移金属触媒の存在下で、以下の構造を有する不飽和化合物
【0200】
【化35】

【0201】
(式中、Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;そして、
Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す)
を、以下の構造を有する環状シロキサニルシラン化合物
【0202】
【化36】

【0203】
(式中、pは、1、2又は3であり;そして、R1、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a及びR4bは、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す)
でヒドロシリル化させる工程を含む、環状シロキサンモノマーの製造方法に関する。出発物質である環状シロキサンは、典型的には、市販品が用いられる。
【0204】
前期遷移金属は、例えば、パラジウム又は白金であってもよい。
【0205】
更なる局面では、前記工程は、以下の反応によって表される場合がある:
【0206】
【化37】

【0207】
更なる局面では、前記環状シロキサンモノマーは、以下の構造を有する:
【0208】
【化38】

【0209】
更なる局面では、前記方法は、更に、前記モノマーを重合させる工程を含む。
【0210】
また、前記方法の生成物も開示される。
【0211】
E.耐加水分解性ポリマー
ある局面では、本発明は、本発明に係る化合物の残基を1個以上又は本発明に係る方法で調製した生成物の残基を1個以上含むポリマーに関する。即ち、耐加水分解性ポリマーの1又は2個以上のサブユニットは、耐加水分解性化合物の残基を含む。
【0212】
1.共重合
更なる局面では、本発明のポリマー組成物は、共重合体として提供されてもよい。即ち、前記ポリマーは、耐加水分解性化合物の残基及び1又は2種類の更なるモノマーの残基を含む。例えば、本発明の化合物は、1種類以上のコモノマー、例えば、親水性コモノマーと共重合させてもよい。適切な親水性コモノマーとしては、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられる。
【0213】
共重合に使用可能な重合可能な原料としては、重合可能な炭素-炭素不飽和結合を有するモノマー、例えば、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、アリル基又はビニル基を用いることができる。
【0214】
このようなモノマーの好ましい例としては、以下が挙げられる:アルキル(メタ)アクリレート、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸, ビニル安息香酸, メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレート;多官能性(メタ)アクリレート、例えば、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールビス(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(メタ)アクリレート、両末端に(メタ)アクリルオキシプロピル基を有するポリジメチルシロキサン、一端に(メタ)アクリルオキシプロピル基を有するポリジメチルシロキサン及び側鎖に複数の(メタ)アクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン;ハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート及びヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート;ヒドロキシル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピルアクリルアミド、N,N-ジイソプロピルアクリルアミド、N,N-ジ-n-ブチルアクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピぺリジン、N-アクリロイルピロリジン及びN-メチル(メタ)アクリルアミド;N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、芳香族ビニルモノマー、例えば、スチレン、α-メチルスチレン及びビニルピリジン;マレイミド;複素環式ビニルポリマー、例えば、N-ビニルピロリドン;3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[ビス(トリメチルシロキシ) メチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル] プロピル(メタ)アクリレート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、3-[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、3-[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]メチル(メタ)アクリレート、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]メチル(メタ)アクリレート、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]メチル(メタ)アクリレート、[トリス(トリメチルシロキシ) シリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]スチレン、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]スチレン、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]スチレン及び一端に(メタ)アクリルオキシプロピル基を有するポリジメチルシロキサン。
【0215】
このようなモノマーの更なる好ましい例としては、以下が挙げられる:2-プロペン酸、2-メチル-2-ヒドロキシ-3-[3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル(SiGMA);末端にモノメタクリルオキシプロピルとモノ-n-ブチルを有するポリジメチルシロキサン(mPDMS;分子量(MW)800-1000(数平均分子量(Mn)));ビス-3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(acPDMS)(MW 1000及び2000, それぞれ、Gelest製及びDegussa製のアクリル化ポリジメチルシロキサン);Gelest製の末端にメタクリルオキシプロピルを有するポリジメチルシロキサン(MW 550-700)(maPDMS);並びに末端にモノ-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルとモノ-ブチルを有するポリジメチルシロキサン(mPDMS-OH)。
【0216】
本発明での使用に適した他のシリコン含有成分としては、ポリシロキサン基、ポリアルキレンエーテル基、ジイソシアネート基、ポリフッ素化炭化水素基、ポリフッ素化エーテル基及び多糖基を含有するマクロマーといった、国際公開公報第WO 96/31792号に記載される成分が挙げられる。米国特許第5,321,108号;同第5,387,662号及び同第5,539,016号には、極性を有するフッ素化グラフト又は2つのフッ素で置換された末端炭素原子に結合した水素原子を有する側鎖を有するポリシロキサンが記載されている。米国特許出願第2002/0016383号には、エーテル及びシロキサン結合を含有する親水性のシロキサニルメタクリレート並びにポリエーテル基及びポリシロキサニル基を含有する架橋性モノマーが記載されている。
【0217】
2.ポリマー修飾
ある局面では、前記ポリマーは、ホモポリマーである。即ち、前記モノマー残基の実質的に全てが、耐加水分解性化合物の残基で構成される。
【0218】
更なる局面では、モノマー残基の全部ではなく一部分が、耐加水分解性化合物の残基を含む。更なる局面では、前記ポリマーの少なくとも5%が、本発明の化合物の残基又は本発明の方法により調製される生成物の残基を含む。例えば、前記ポリマーの少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%又は少なくとも50%が、本発明の化合物の残基又は本発明の方法により調製される生成物の残基を含む場合がある。
【0219】
更なる局面では、前記ポリマーの質量の全部ではなく一部分が、耐加水分解性化合物の残基により構成される。別の更なる局面では、前記ポリマーの質量の少なくとも5%が、本発明の化合物の残基又は本発明の方法により調製される生成物の残基により構成される。例えば、前記ポリマーの質量の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%又は少なくとも50%が、本発明の化合物の残基又は本発明の方法により調製される生成物の残基により構成される。
【0220】
F.耐加水分解性組成物
本発明の化合物及び本発明の方法により調製される生成物を、耐加水分解性の化合物及び/又は組成物に適した当業者に公知のあらゆる用途に用いることが可能なことが理解されるべきであるが、本発明の化合物、組成物及び本発明の方法による生成物は、眼用レンズ、例えば、コンタクトレンズの製造用の原料として用いることができる。
【0221】
ある局面では、本発明は、本発明の化合物の残基又は本発明の方法による生成物の残基を1個以上含有するポリマーを含む眼用レンズに関する。更なる局面では、本発明は、本発明の化合物の残基又は本発明の方法による生成物の残基を1個以上含有するポリマーを含むコンタクトレンズに関する。
【0222】
G.加水分解耐性
理論への束縛を願うものではないが、立体障害性末端ケイ素基を含む化合物は、立体障害性末端ケイ素基を含まない化合物と比べて、加水分解条件(例えば、酸加水分解)に対してより耐性が高いと考えられている。
【0223】
ある局面では、本発明の化合物、本発明の組成物及び本発明の方法による生成物は、加水分解耐性を有する。即ち、本発明の化合物は、従来型の化合物(即ち、立体障害性末端ケイ素基を含まない化合物)と比べて、より加水分解耐性が高い。また、本発明の組成物は、本発明の化合物の残基又は本発明の方法による生成物の残基を含む場合に、該化合物又は方法による組成物の残基を含まない同様の組成物と比べて、より加水分解耐性が高い。
【0224】
化合物又は方法の生成物の加水分解耐性は、例えば、アルコール、水、酸(例えば、酢酸などのカルボン酸)及び重合阻害剤(例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)の存在下で加熱することにより測定することができる。この混合物を加水分解温度(例えば、80℃又は90℃)で加水分解時間(例えば、136時間又は168時間)に渡って加熱し、そして粗生成物のガスクロマトグラフィー(GC)によって分解率を測定できる。加水分解条件に付する前に試験した前記化合物又は生成物に相当すると考えられるピークの面積を加水分解条件に付した後に試験した該化合物又は生成物に相当すると考えられるピークの面積と比較することにより、試験した前記化合物又は生成物の加水分解条件下での存続率(パーセンテージ)を測定することができる。
【0225】
種々の局面において、本発明の化合物、本発明の方法による生成物及び本発明の組成物は、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%又は少なくとも約98%の加水分解耐性(H2O/2-プロパノール中に約5重量%の酢酸;80℃;136時間)を示す。対照的に、従来型の非耐加水分解性化合物を用いた比較例は、僅かに約46%の加水分解耐性(H2O/2-プロパノール中に約5重量%の酢酸;80℃;136時間)を示すことができるに過ぎない。
【0226】
更なる種々の局面では、本発明の化合物、本発明の方法による生成物及び本発明の組成物は、少なくとも約90%、少なくとも約92%又は少なくとも約94%の加水分解耐性(H2O/n-ブタノール中に約5重量%の酢酸;90℃;136時間)を示す。対照的に、従来型の非耐加水分解性化合物を用いた比較例は、典型的には、約78%、約61%、又は僅かに約35%の加水分解耐性(H2O/n-ブタノール中に約5重量%の酢酸;90℃;136時間)を示すに過ぎない。
【0227】
種々の局面において、本発明の化合物の重合により得られるポリマーは、50%以下の伸び率の減少、45%以下の伸び率の減少又は40%以下の伸び率の減少といった加水分解耐性(約1.6重量%の(メタ)アクリル酸共重合体、55℃で8週間又は95℃で1週間)を示すことが可能である。対照的に、従来型の非耐加水分解性化合物を用いた比較例は、典型的には、約55.6%、更には約69.7%もの加水分解耐性(約1.6重量%の(メタ)アクリル酸共重合体、55℃で8週間又は95℃で1週間)を示す。
【0228】
H.同様の機能を有する組成物
本明細書に開示する組成物は、一定の機能を有することが理解される。本明細書には、開示される機能を実行するための特定の構造上の要件が開示されており、開示される構造に関する機能と同一の機能を実行可能な種々の構造が存在すること、そしてこれらの構造が、最終的には同一の結果を達成するであろうことが理解される。
【0229】
I.プラスチック成型体の調製
本発明に係るプラスチック成型体製造用の原料を単体で、又は1又は2種類以上の他の原料と共に重合させることにより、本発明の原料からプラスチック成型体を調製できる。
【0230】
プラスチック成型体、特に眼用レンズの調製には、良好な力学的特性並びに消毒液及び洗浄液に対する良好な耐久性が得られることから、分子内に複数の重合性炭素-炭素不飽和結合を有する1又は2種類以上の共重合性原料を用いることが好ましい場合がある。共重合に用いられる全モノマー量に対する分子内に複数の共重合性炭素-炭素不飽和結合を有する重合性原料の共重合に用いられる量の比率は、好ましくは、約0.01重量%以上であり、より好ましくは、0.05重量%以上であり、更により好ましくは、0.1重量%以上である。
【0231】
1.開始剤
プラスチック成型体の調製のための(共)重合においては、容易に重合を行うために、過酸化物及びアゾ化合物に代表される熱重合開始剤又は光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合、好適な反応温度で最適な分解特性を示す熱重合開始剤を選択する。一般的に、アゾ開始剤及び過酸化物開始剤は、約40℃ないし約120℃の温度で、10時間の半減期を有するものが好ましい。光開始剤の例としては、カルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化化合物及び金属塩が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で又は組み合わせで用いることができる。重合開始剤の量は、重合混合物に対して約1重量%以下となるであろう。
【0232】
2.溶媒
本発明のプラスチック成型体の調製のための(共)重合においては、重合溶媒を用いることができる。この溶媒としては、種々の有機溶媒及び無機溶媒を用いることができる。この溶媒の例としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、直鎖プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、直鎖ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びポリエチレングリコールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル及びポリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル及び安息香酸メチル等のエステル系溶媒;直鎖ヘキサン、直鎖ヘプタン及び直鎖オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン及びエチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶媒;並びに石油系溶媒。これらの溶媒は、個別に用いてもよく、又はこれらの溶媒の複数を組み合わせて用いてもよい。
【0233】
3.添加剤
前記プラスチック成型体は、更なる成分を含んでいてもよく、これらに限定されないが、UV吸収剤、着色剤、色素剤、湿潤剤、スリップ剤、医薬成分及び栄養補助成分、相溶化成分(compatibilizing component)、抗菌化合物、離型剤及びこれらの組み合せ等を含んでいてもよい。前述のいずれも、非反応性の形態、重合可能な形態、そして/又は共重合された形態で組み込むことができる。
【0234】
4.重合
本発明のプラスチック成体製造用の原料の重合方法、及びプラスチックの成形方法については、既知の方法を用いることができる。例えば、原料を一度重合させて、丸い棒又はプレートの形状に成形し、次いで、得られた丸い棒又はプレートを切削などにより所望の形状へ加工する方法、モールド重合法及びスピンキャスト重合法を用いることができる。
【0235】
例として、本発明のプラスチック成型体を製造するための原料を含有する原料組成物をモールド重合法により重合させることで眼用レンズを作製する方法について説明する。
【0236】
最初に、2つのモールドパーツ間の所定の形状を有する空隙を原料組成物で満たし、光重合又は熱重合を行って、前記組成物を、モールド間の空隙の形状へ成形する。モールドは、樹脂製、ガラス製、セラミック製、金属製等である。光重合の場合、光透過性の原料が用いられ、通常は樹脂又はガラスが用いられる。眼用レンズを作製する場合、相互に向かい合う2つのモールドパーツの間に空隙が形成され、この空隙が、原料組成物で充填される。空隙の形状と原料組成物の特性にもよるが、眼用レンズに所定の厚さを与えて、空隙間に充填された原料組成物の漏出を防ぐため、ガスケットを用いてもよい。次いで、空隙に充填された原料組成物を含むモールドに、紫外線、可視光線又はこれらの組合せ等の化学線を照射するか、又は前記モールドをオーブン若しくは恒温槽内に静置して原料組成物を加熱することで重合を行う。前記の2種類の重合方法は、組み合わせで用いてもよい。即ち、光重合の後に熱重合を行ってもよく、熱重合の後に光重合を行ってもよい。光重合の態様では、水銀ランプ又は捕虫灯から発せられる光線等の紫外線を含む光線を短時間(通常は1時間以内)照射する。熱重合を行う場合、眼用レンズの光学的均一性、高い品質及び高い再現性の観点から、前記組成物が、数時間ないし数十時間の時間をかけて、ゆっくりと室温から約60℃ないし約200℃の温度へと加熱される条件を用いることが好ましい。
【0237】
本発明の原料から作製されたプラスチック成型体は、好ましくは、約130°以下、より好ましくは、約120°以下、更により好ましくは、約100°以下の動的接触角(前進時、浸漬速度:約0.1 mm/秒)を有していてもよい。含水率は約3%ないし約0%が好ましく、約5%ないし約50%がより好ましく、約7%ないし約50%が更により好ましい。前記眼用レンズがコンタクトレンズとして使用される場合の着用者の負担を軽減する観点から、酸素透過性が高い程好ましい。酸素透過性については、酸素透過係数[×10-11 (cm2/秒) mLO2 / (mL・hPa)]が約50以上であることが好ましく、約60以上がより好ましく、約65以上が更により好ましい。引張弾性率は、約0.01ないし約30 MPaが好ましく、約0.1ないし約7 MPaがより好ましい。引張伸びは約50%以上が好ましく、約100%以上がより好ましい。引張伸びが大きいとプラスチック成型体が破れにくくなるため、プラスチック成型体は、高い引張伸びを有していることが好ましい。
【0238】
5.例示的用途
ある局面では、本発明の化合物、本発明の組成物及び本発明の方法による生成物は、加水分解耐性が向上したプラスチック成型体を製造可能にする原料を提供する。このプラスチック成型体は、ドラッグデリバリーに用いられる薬物吸着剤や、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜及び眼鏡レンズ等の眼用レンズとして好適に用いることができる。これらのうち、前記プラスチック成型体は、特にコンタクトレンズに適している。
【0239】
ある局面では、本発明の化合物及び組成物を用いることで、本発明の組成物を1種類以上含む成形品が提供される。更なる局面では、本発明の化合物及び組成物を用いることで、本発明の組成物を1種類以上含む眼用レンズが提供される。また更なる局面では、本発明の化合物及び組成物を用いることで、本発明の組成物を1種類以上含むコンタクトレンズが提供される。
【実施例】
【0240】
J. 実験
下記の実施例は、当業者に、本出願の請求項に係る化合物、組成物、製品、装置及び/又は方法を作製して評価する方法について完全な開示と記載を提供するために示されるものであり、単に本発明の例示として意図されているに過ぎず、本発明者らが彼らの発明と見なす範囲を制限することを意図するものではない。数値(例えば、量、温度等)については、正確を期するために尽力したが、誤差や偏差も考慮すべきである。特に他に表示のない限り、部(parts)は重量部であり、温度は℃であるか又は周囲温度であり、圧力は、大気圧であるか又はその前後である。
【0241】
1.分析方法
a.ガスクロマトグラフィー
【0242】
ガスクロマトグラフィー(GC)分析では、分離ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)により、式(A1)(n = 0〜12)で表されるシロキサニル化合物のピークを同定する。
【0243】
i.装置とパラメータ
装置:HEWLETT-PACKARD製GC6890型又はこの同等物。検出器:水素炎イオン化検出器(FID)。カラム:Restek DB-1HT (30 m x 0.25 mm x 0.1 μm又はこの同等物)。キャリアガス:ヘリウム。一定流量:1.0 mL/分。サンプル注入量:2.0 μL。スプリット比:30:1。注入口温度:300℃。検出器温度:350℃。オートサンプラー洗浄溶媒:2-プロパノール。注入口セプタム:Alltech 7/16" HT-X-11又はこの同等物。
【0244】
ii.温度プログラム
開始温度100℃。開始時間:2分間。勾配:15℃/分;終了時温度:200℃(保持時間:0分間)。勾配:5℃/分;終了時温度:350℃(保持時間:0分)。勾配:15℃/分;終了時温度:400℃(保持時間:15分)。
【0245】
iii.データ解析条件
Slope Sensitivity:50。Peak Width:0.04。Area Reject:1。Height Reject:1。Integration Off:0〜4分間。
【0246】
iv.サンプル調製
約50μL のサンプルを 1.0 mL の2-プロパノールに溶解する。サンプルと2-プロパノールはGC用バイアル瓶に直接入れて混合する。
【0247】
b.ガスクロマトグラフィー‐質量分析(GC-MS)
ガスクロマトグラフィー‐質量分析(GC-MS)分析は、GC分析を上記の「ガスクロマトグラフィー分析条件」に記載する条件で行い、JEOL製の質量分析器JMS-DX303を用いて行った。
【0248】
c.ゲル浸透クロマトグラフィー
以下の条件でGPCを行った:カラム:昭光通商社製のShodex GPC K-801及びShodex GPC K-802(各カラムは、8.0 mmの内径と30 cmの長さを有する)。これら2つのカラムを連結させた。溶媒:クロロホルム。カラム温度:40℃。流速:1.0 mL/分。装置:東ソー社製のHLC-8022GPC(UV検出器と示差屈折計を組み合わせた一体型装置)。
【0249】
d.マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析
マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)には、島津製作所製のAXIMA-CFRプラスを用いた。
【0250】
e.酸素透過係数試験
理化精機工業社製の製科研式フィルム酸素透過率計を用いて、サンプルの酸素透過係数を測定した。フィルム状のサンプルの酸素透過係数は、35℃にて水中で測定した。厚さの異なる4種類のフィルムサンプルを調製した(0.1 mm、0.2 mm、0.3 mm及び0.4 mm;直径16 mm)。これらの厚さの異なる4種類のサンプルを測定して、各例におけるPmを決定した(図1参照)このサンプルの一つを、電極に接続した。0.5 NのKCl(水溶液)を、電解液として電極に注入した(図2ないし4参照)。電極を、蒸留水中に設置した(pH = 7、体積 = 800ml)。最初に、零点補正を行うため、窒素バブリング下での電流(流速 = 100mL/分;平衡に達した後に電流iを測定する)を測定した。次いで、酸素バブリング下での電流を測定した。以下の式により、Rを計算した:
【0251】
【数1】

(ここで、Ps = 760 mmHg(大気圧)、N = 4(電極での反応に関与する電子数)、F = 96500クーロン/mol(ファラデー係数)、A = 電極の面積(cm2)、i = 測定電流(uA))。Rは、定常(非比例)部分を伴うので、Pmの決定には、複数回の測定とプロッティングが必要である(図1参照)。R対サンプルの厚さをプロットした。傾きの逆数が、酸素透過係数(Pm)である。
【0252】
f.含水率
約10 mm x 10 mm x 0.2 mmのサイズのフィルム状のサンプルを用いた。サンプルを、真空乾燥機中で40℃にて16時間かけて乾燥させ、このサンプルの重量(Wd)を測定した。その後、得られたサンプルをサーモスタット恒温槽中の40℃の純水に一晩以上浸漬させ、表面の水分をキムワイプで拭き取って、重量(Ww)を測定した。含水率は、以下の式により計算した:
【0253】
【数2】

【0254】
g.引張弾性率
引張試験:約19.5 mm x 15 mm x 0.2 mmのサイズのフィルム状のサンプルを用いた。引張弾性率は、ORIENTEC社製のTensilon RTM-100型を用いて測定した。引張速度は、100 mm/分で、グリップ間の距離は、5 mmであった。
【0255】
h.光学的不均一性
コンタクトレンズの形状に成形したサンプルに、写真フィルム用プロジェクターを用いて光を照射し、スクリーン上にその像を投影させ、スクリーン上に投影された像を肉眼で観察して、光学的不均一度を評価した。評価は、以下の3段階に分類することで行った:
A: 歪み又は濁りは、全く観察されない。
B: 歪み又は濁りは、殆ど観察されない。
C: 歪み又は濁りが、観察される。
【0256】
2.実施例4-1
50 mLのナスフラスコに、水5 mL、メタノール2.5 mL 、ヘキサン2.5 mLを添加し、得られた混合物を氷上で撹拌しながら2〜3℃に冷却し、その後、メタクリル酸3-トリメトキシシリルプロピル2.48 g(10 mmol)とエチルジメチルクロロシラン7.36 g(60 mmol)との混合物を、滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応液を室温で3時間撹拌し、ガスクロマトグラフィー(GC)で出発物質の消失を確認して反応終了とした。 反応終了後に撹拌を停止して水層を捨てた。有機層を分液漏斗に移して飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。得られた混合物を濾過して溶媒をエバポレーターで蒸発させた。得られた粗生成物を、40 gのシリカゲルを用い、溶出液としてヘキサン/酢酸エチル = 20/1、15/1、10/1、7/1、4/1及び4/1の比率で80 mLずつ使用してカラムクロマトグラフィーにより精製すると、以下の式(4p1)で表されるシリコーン化合物が得られた。
【0257】
【化39】

【0258】
3.実施例4-2
エチルジメチルクロロシランの代わりにn-プロピルジメチルクロロシランを用いた以外は、実施例4-1と同様の合成と精製を行うと、以下の式(4p2)で表されるシリコーン化合物が得られた。
【0259】
【化40】

【0260】
4.実施例4-3
エチルジメチルクロロシランの代わりにn-ブチルジメチルクロロシランを用いた以外は、実施例4-1と同様の合成と精製を行うと、以下の式(4p3)で表されるシリコーン化合物が得られた。
【0261】
【化41】

【0262】
5.実施例4-4
100 mLの回収用フラスコにメタノール(10.3 g)、n-ヘキサン(10.1 g)及び蒸留水(20.0 g)を添加して、氷槽で0℃に冷却した。3-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン(15.06 g、0.068 mol)とジメチルエチルシリルクロリド(33.7 g、0.27 mol)の混合物を滴下により1時間かけて添加した。添加終了後、反応混合物を0℃で2時間撹拌した。有機層を飽和NaHCO3水溶液(50 mL)と飽和NaCl水溶液(50 mL)で洗浄し、同一の溶液を用いて再度洗浄を行った。この混合物に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。硫酸ナトリウムをろ過した後、溶媒を蒸発させた。粗生成物を減圧蒸留(115-118℃/0.2 mmHg)で精製すると、以下の式で表されるシリコーン化合物が得られた。
【0263】
【化42】

【0264】
50重量%のメタノール水溶液(12.6 mL)に水酸化カリウム(6.19 g、0.11 mol)を溶解させ、0℃に冷却した。上記で得られた3-(3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(ジメチルエチルシロキシ)メチルシラン(25.0 g、0.062 mol)を一度に加えた。混合物を室温に戻し、室温で18時間撹拌した。この反応混合物に蒸留水(60 mL)を添加し、有機層を分取した。水層は、ジエチルエーテル(60 mL)で2回抽出した。この抽出物と前記有機層を一つにまとめて蒸留水(100 mL)で3回洗浄し、無水Na2SO4を加えて乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を蒸留精製(108 - 113℃/0.2 mmHg)すると、以下の式で表されるシリコーン化合物が得られた。
【0265】
【化43】

【0266】
p-メトキシフェノール(13.5 mg、0.12 mmol)、メタクリル酸ナトリウム(0.4 g、3.70 mmol)、上記で得た3-グリシドキシプロピルビス(ジメチルエチルシロキシ)メチルシラン(4.5 g、12.3 mmol)及びメタクリル酸(4.2 mL、49.4 mmol)の混合物を100℃で8時間撹拌した。ここに、ジエチルエーテル(40mL)を加えた。この混合物を1Nの水酸化ナトリウム水溶液(5 x 20 mL)と飽和NaCl水溶液(2 x 20 mL)で洗浄し、無水Na2SO4を加えて乾燥させた。硫酸ナトリウムをろ過した後、その混合物を濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル22 g、ヘキサン/酢酸エチル = 1/0、19/1、15/1、9/1、4/1、3/1、3/1(各40 mL))で精製すると、式(4p4)で表されるシリコーン化合物が得られた。
【0267】
【化44】

【0268】
6.実施例4-5
3-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシランの代わりに3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いた以外は、実施例4-4と同様の合成と精製を行うと、以下の式(4p5)で表されるシリコーン化合物が得られた。
【0269】
【化45】

【0270】
7.比較例4-1
エチルジメチルクロロシランの代わりにトリエチルクロロシランを用いた以外は、実施例4-1と同様の合成と精製を行うと、以下の式(4r1)で表されるシリコーン化合物が得られた。
【0271】
【化46】

【0272】
8.比較例4-2
日本国特許公開公報第56-22325号に記載される方法で以下の式(4r2)で表されるシリコーン化合物を合成した。得られた液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0273】
【化47】

【0274】
9.実施例4-6:80℃での加水分解耐性試験
上記実施例4-1、実施例4-2及び実施例4-3並びに比較例4-1及び4-2で得られたシリコーン化合物、並びに以下の式(4r3)で表される市販のシリコーン化合物(比較例4-3)について、カルボン酸存在下での加水分解耐性を試験した。
【0275】
【化48】

【0276】
シリコーン化合物0.1 g、2-プロパノール3.90 g、酢酸0.24 g、水0.90 g、そして重合禁止剤として2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール2 mgを含む溶液を調製した。得られた溶液をオーブンで80℃にて168時間加熱し、分解度をガスクロマトグラフィー(GC)で測定した。開始時点(0時間)でのシリコーン化合物ピークのGC面積%を100と定めた場合の、開始時点から136時間後の個々のシリコーン化合物ピークのGC面積%の比率を表1の「80℃」の列に示す。
【0277】
10.実施例4-7:90℃での加水分解耐性試験
2-プロパノールの代わりに2-プロパノールよりも沸点の高いn-ブタノールを用いた以外は、上記の実施例4-6と同様の試験を行った。結果を表1の「90℃」の列に示す。
【0278】
【表1】

【0279】
11.実施例4-8:レンズの調製
実施例4-1で得た式(p1)で表されるシリコーン化合物(30重量部)、N,N-ジメチルアクリルアミド(40重量部)、末端がメタクリル化されたポリジメチルシロキサン(分子量:約1000、30重量部)、トリエチレングリコールジメタクリレート(1重量部)、メタクリル酸(1重量部)及びDarocure 1173(CIBA社、0.2重量部)を混合して撹拌すると、均一で透明なモノマー混合物が得られた。このモノマー混合物をアルゴン雰囲気下で脱気した。このモノマー混合物を、窒素雰囲気下のグローブボックス中で透明樹脂(ポリ(4-メチルペント-1-エン))製のコンタクトレンズ用モールドに注入し、蛍光灯(例えば、昆虫制御用の種類)を用いて光照射(1 mW/cm2、10分間)してモノマーを重合させると、コンタクトレンズ状サンプルが得たられた。
【0280】
得られたレンズ状サンプルを水和処理した後、5重量%ポリアクリル酸(分子量:約150,000)水溶液に浸漬し、40℃で8時間サンプルの改質処理を行った。改質処理後、サンプルを精製水で十分に洗浄し、バイアル瓶中のホウ酸バッファー(pH 7.1〜7.3)に浸漬した。バイアル瓶を密封し、120℃で30分間該バイアル瓶をオートクレーブ処理した。放冷後、レンズ状サンプルをバイアル瓶から取り出し、ホウ酸バッファー(pH 7.1〜7.3)に浸漬した。得られたサンプルは透明で濁りがなく、コンタクトレンズとしての用途に好適であった。
【0281】
12.実施例4-9:95℃でのレンズの加水分解耐性試験
実施例4-1、実施例4-2、実施例4-3、実施例4-4、実施例4-5、比較例4-1及び比較例4-2で得られたシリコーン化合物、並びに市販のシリコーン化合物(比較例4-3)を重合し、レンズの加水分解耐性試験を以下のように行った;
【0282】
上記シリコーン化合物のいずれか1種類(17.5重量部)、N,N-ジメチルアクリルアミド(15重量部)、ヒドロキシエチルメタクリレート(12.58重量部)、エチレングリコールジメタクリレート(1.5重量部)、メタクリル酸(0.8重量部)、Irgacure 819(CIBA Specialty Chemicals社、0.13重量部)、PVP-K90(2.5重量部)及び3,7-ジメチル-3-オクタノール(50重量部)を混合して撹拌すると、均一で透明なモノマー混合物が得られた。このモノマー混合物をアルゴン雰囲気下で脱気した。このモノマー混合物を、窒素雰囲気下のグローブボックス中で透明樹脂(ポリ(4-メチルペント-1-エン))製のコンタクトレンズ用モールドに注入し、蛍光灯(20ワット)を用いて光照射(1.6 mW /cm2、30分間)してモノマーを55℃で重合させると、コンタクトレンズ状サンプルが得たられた。このサンプルを、バイアル瓶中のホウ酸バッファー(pH 7.1〜7.3)に浸漬した。バイアル瓶を密封し、120℃で30分間該バイアル瓶をオートクレーブ処理した。放冷後、レンズ状サンプルをバイアル瓶から取り出し、ホウ酸バッファー(pH 7.1〜7.3)に浸漬した。このサンプルの物理的特性を表2に示す。
【0283】
【表2】

【0284】
サンプルを95℃のオーブンに1週間置いた。次いでサンプルを取り出して、23℃で16時間以上放置し、その後に測定を行った。伸び率測定の結果を表3に示す。
【0285】
【表3】

【0286】
本発明の範囲と趣旨を逸脱することなく、本発明に種々の修飾及び変更を施すことが可能なことは、当業者にとって自明であろう。本明細書及び本明細書に開示する本発明の実施態様を検討することにより、本発明のその他の態様も当業者に明らかとなるであろう。本明細書と実施例は、単に例示的なものとしてのみ解釈されることが意図されており、本発明の真の範囲と趣旨は、これに続く各請求項に示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有する化合物
【化1】

(式中、Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;
Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表し;
Z1〜Z11は、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表すが、但し、
Z3、Z4及びZ9の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ3、Z4及びZ9の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり、
Z5、Z6及びZ10の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり、そして、
Z7、Z8及びZ11の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり;
nは、0〜200の整数を表し;そして、
a、b及びcは、独立して、0〜20の整数を表すが、但し、a、b及びcは、同時に0になることはない)。
【請求項2】
Mが、アクリロイル基又はメタクリロイル基を含む基である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Lが、以下の構造を有する、請求項1記載の化合物
【化2】

(式中、Gは、水素又は加水分解性基であり;
kは、0〜6の整数を表し;そして
mは、kが0の場合に、1〜3の整数を表し、kが0でない場合に、1〜20の整数を表すが、但し、1 ≦ 3k + m ≦ 20である)。
【請求項4】
nが0であり、かつa、b及びcの全てが1である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
aが0であり;b及びcが1であり;そして、Z9が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はフェニル基を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
kが0であり、かつmが1〜3である、請求項3記載の化合物。
【請求項7】
kが1であり、かつmが1〜7である、請求項3記載の化合物。
【請求項8】
Z3、Z4及びZ9のうち2つがメチル基であり、かつZ3、Z4及びZ9のうち1つがエチル基、プロピル基又はブチル基であり;Z5、Z6及びZ10のうち2つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10のうち1つがエチル基、プロピル基又はブチル基であり;そして、Z7、Z8及びZ11のうち2つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10のうち1つがエチル基、プロピル基又はブチル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
Z3、Z4、Z5、Z6、Z7及びZ8がメチル基であり、かつZ9、Z10及びZ11が、独立して、エチル基、プロピル基又はブチル基である、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
以下の構造を有し、約90℃において少なくとも約90%の耐加水分解性を示す化合物
【化3】

(式中、Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;
Lは、以下の構造を有し;
【化4】

(ここで、Gは、水素又は加水分解性基であり、
kは、0〜6の整数を表し、そして
mは、kが0の場合に、1〜3の整数を表し、kが0でない場合に、1〜20の整数を表すが、但し、1 ≦ 3k + m ≦ 20である)
Z1〜Z11は、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表すが、但し、
Z3、Z4及びZ9の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ3、Z4及びZ9の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり、
Z5、Z6及びZ10の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり、そして、
Z7、Z8及びZ11の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり;
nは、0〜200の整数を表し;
a、b及びcは、独立して、0〜20の整数を表すが、但し、a、b及びcは、同時に0になることはない)。
【請求項11】
請求項1記載の化合物の残基を1個以上含むポリマー。
【請求項12】
前記ポリマーの25%以上が、請求項1記載の化合物の残基を含む、請求項11記載のポリマー。
【請求項13】
請求項11記載のポリマーを含む眼用レンズ。
【請求項14】
請求項11記載のポリマーを含むコンタクトレンズ。
【請求項15】
立体障害性末端ケイ素基を有する耐加水分解性シリコーン化合物の製造方法であって、以下の構造を有するアルコキシシリル化合物
【化5】

を、以下の構造を有する1又は2個種類以上のハロゲン化シリル化合物と反応させる工程を含む方法
【化6】

(式中、X1、X2及びX3は、独立して、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択されるハロゲンを表し;
Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;
Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表し;
nは、0〜200の整数を表し;
Q1、Q2及びQ3は、独立して、水素又は加水分解性基を表し;
Z1〜Z11は、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表すが、但し、
Z3、Z4及びZ9の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ3、Z4及びZ9の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり、
Z5、Z6及びZ10の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり、そして、
Z7、Z8及びZ11の少なくとも1つがメチル基であり、かつZ5、Z6及びZ10の少なくとも1つが炭素数2以上の有機基であり;
a、a'、b、b'、c及びc'は、独立して、0〜20の整数を表し;そして
(a + a')、(b + b')及び(c + c')は、独立して、0〜20の整数であるが、
但し、(a + a')、(b + b')及び(c + c')は、同時に0になることはない)。
【請求項16】
Lが、以下の構造を有する、請求項15記載の方法
【化7】

(式中、Gは、水素又は加水分解性基であり;
kは、0〜6の整数を表し;そして
mは、kが0の場合に、1〜3の整数を表し、kが0でない場合に、1〜20の整数を表すが、但し、1 ≦ 3k + m ≦ 20である)。
【請求項17】
Q1、Q2及びQ3が、独立して、アルキルを表す、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記アルコキシシリル化合物が、以下の構造を有する、請求項15記載の方法。
【化8】

【請求項19】
前記ハロゲン化シリル化合物が、以下の構造を有する、請求項15記載の方法。
【化9】

【請求項20】
前記耐加水分解性シリコーン化合物が、以下の構造を有する、請求項15記載の方法。
【化10】

【請求項21】
請求項15記載の方法の生成物。
【請求項22】
以下の構造を有する化合物
【化11】

(式中、pは、1、2又は3であり;
Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;
Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表し;そして、
R1、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a及びR4bは、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す)。
【請求項23】
請求項22記載の化合物の残基を1個以上含むポリマー。
【請求項24】
以下の構造を有するジハロシリル化合物
【化12】

(式中、Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;
Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表し;そして、
R1は、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す)
を、以下の構造を有するシロキサニルジオール化合物
【化13】

(式中、pは、1、2又は3であり;そして、
R2a、R2b、R3a、R3b、R4a及びR4bは、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す)
と反応させる工程を含む、環状シロキサンモノマーの製造方法。
【請求項25】
請求項24記載の方法の生成物。
【請求項26】
遷移金属触媒の存在下で、以下の構造を有する不飽和化合物
【化14】

(式中、Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;そして、
Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す)
を、以下の構造を有する環状シロキサニルシラン化合物
【化15】

(式中、pは、1、2又は3であり;そして、
R1、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a及びR4bは、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す)
でヒドロシリル化させる工程を含む、環状シロキサンモノマーの製造方法。
【請求項27】
請求項26記載の方法の生成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−503242(P2011−503242A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530395(P2009−530395)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/020683
【国際公開番号】WO2008/042163
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(500092561)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (153)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【Fターム(参考)】