説明

耐摩耗性および耐汚染性に優れたコーティング組成物およびコーティングフィルム

本発明は、a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂;b)フッ素系UV硬化型官能基含有化合物;c)光開始剤;d)ナノ微粒子;およびe)導電性無機粒子を含むことを特徴とするコーティング組成物およびコーティングフィルムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TV、コンピュータ用モニター、ノートパソコン、携帯電話などのディスプレイに適用することができるコーティング組成物およびコーティングフィルムに関する。具体的には、耐摩耗性に優れ、指紋や落書きなどのオイル成分の汚染除去が容易であることによって指紋除去性および耐落書き性のような耐汚染性に優れるだけでなく、特にホコリ除去性に優れたコーティング組成物およびコーティングフィルムに関する。
【0002】
本出願は2009年2月27日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2009−0017229号および韓国特許出願第10−2010−0017432号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
各種ディスプレイの場合、指紋によって、イメージがわい曲されやすく、外観の品質が落ちるという問題がある。これを解決するために、フッ素含有表面処理剤を用いて、耐汚染機能に優れたコーティング組成物およびコーティングフィルムを作ることができる。しかし、フッ素含有表面処理剤の場合、摩耗あるいは摩擦時に静電気が発生しやすいのでホコリ除去性や耐摩耗性が低下する特性がある。
【0004】
従来のハードコーティング膜に導電性を付与する表面処理の実現方法は次のように提案されている。
【0005】
第1の方法として、基材に導電性無機粒子を塗布した帯電防止層とハードコーティング層を順にコーティングする方法がある。この時、塗布する帯電防止層の厚さは0.1〜1.0μmであり、ハードコーティング層の厚さは1〜数十μmに達する。ハードコーティング層は耐スクラッチ性を必要とし、帯電防止層によって光透過性が低下する現象があってはならない。しかし、前記の2層積層方式は、帯電防止および耐スクラッチ性と光透過性を全て満足させるのが容易ではない。
【0006】
第2の方法として、ハードコーティング層に帯電防止特性を同時に付与する方法がある。導電性無機粒子をアクリレートまたはシリコーン樹脂が含まれたハードコーティング液に分散させ、これを1回の塗布方式によって耐スクラッチ性と帯電防止特性を同時に付与する。この時に用いられる導電性無機粒子の場合、光透過性の低下およびヘイズ(haze)の上昇を抑制するためにその粒径を100nm以下に制限しなければならない。また、導電性無機粒子と樹脂の重量比を適正に選択しなければならない。導電性無機粒子の重量比が高い場合にはヘイズ(haze)の上昇や耐スクラッチ性の低下が発生し、重量比が低い場合には帯電防止特性を実現することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許出願第10−2009−0017229号
【特許文献2】韓国特許出願第10−2010−0017432号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、1回のコーティング方式によって耐摩耗性と耐汚染性を同時に付与することができ、フィルムのラビング時にも耐摩耗性と耐汚染性の特性を持続させることができ、ホコリ除去性および帯電防止特性に優れたコーティング組成物およびコーティングフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂;b)フッ素系UV硬化型官能基含有化合物;c)光開始剤;d)ナノ微粒子;およびe)導電性無機粒子を含むことを特徴とするコーティング組成物を提供する。
【0010】
また、本発明によるコーティング組成物を用いて形成し、a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂;b)フッ素系UV硬化型官能基含有化合物;c)光開始剤;d)ナノ微粒子;およびe)導電性無機粒子を含むことを特徴とするコーティングフィルムを提供する。
【0011】
また、本発明によるコーティング組成物を基材上にコーティングするステップ;およびコーティングされたコーティング組成物を乾燥および光硬化するステップを含むことを特徴とするコーティングフィルムの製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明によるコーティングフィルムを含むことを特徴とするディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐摩耗性に優れ、指紋や落書きなどのオイル成分の汚染除去が容易になることによって指紋除去性および耐落書き性のような耐汚染性に優れるだけでなく、特にホコリ除去性に優れたコーティング組成物およびコーティングフィルムが提供される。
【0014】
また、本発明によるコーティング組成物の1回のコーティング方式によってコーティングフィルムに耐摩耗性と耐汚染性を同時に付与することができ、本発明によるコーティングフィルムのラビング時にも耐摩耗性と耐汚染性の特性を持続させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0016】
本発明によるコーティング組成物は、a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂;b)フッ素系UV硬化型官能基含有化合物;c)光開始剤;d)ナノ微粒子;およびe)導電性無機粒子を含む。
【0017】
前記a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂はコーティングフィルムに耐摩耗性を付与することができる主要成分であり、前記b)フッ素系UV硬化型官能基含有化合物は指紋跡などのオイル成分による汚染を減少および除去するのに有用な成分である。
【0018】
前記a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂としては、多官能または単官能のモノマーまたはオリゴマーが含まれる。前記バインダーは、耐摩耗性の向上のために架橋密度が高くなければならないが、コーティングフィルムの硬化収縮によるクラックや付着不良などの問題が伴われるので適切な調節が必要である。
【0019】
前記a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂に含まれる官能基の種類としては、UV硬化型であれば特に限定されず、具体的には、アクリレート類、メタクリレート類、ビニル類などを用いることができる。
【0020】
前記アクリレート類としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチレンプロピルトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、エチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートなどを用いることができる。
【0021】
前記アクリレートオリゴマーとしてはウレタン変性アクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、エーテルアクリレートオリゴマーなどが好適であり、アクリレート官能基は2〜6個が好適である。この時、オリゴマーの分子量は1,000〜10,000程度が好適である。
【0022】
前記メタクリレート類としてはトリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサエチルメタクリレート、ブチルメタクリレートなどが挙げられ、メタクリレート系オリゴマーを用いることができる。
【0023】
前記ビニル類としては、ジビニルベンゼン、スチレン、パラメチルスチレンなどが挙げられる。
【0024】
前記b)フッ素系UV硬化型官能基含有化合物は、指紋除去性を付与する成分であって、指紋跡などのオイル成分による汚染を減少および除去するためにフッ素を含有しているべきであり、これと共にUV硬化型官能基を有しているものであれば、特に限定されない。
【0025】
具体的には、ペルフルオロ基が含まれたアクリレート、メタクリレート、ビニル類などを用いることができる。この時、前記フッ素系UV硬化型官能基含有化合物はUV硬化型官能基を1〜6個有することが好ましい。具体的には、前記フッ素系UV硬化型官能基含有化合物は下記化学式1〜9で示される化合物のうちから選択することができるが、本発明の範囲がこれらだけに限定されるものではなく、UV硬化型官能基を有し、且つフッ素基を含有する物質であれば適用可能である。
【0026】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【0027】
前記化学式1〜9において、XおよびYは各々独立にFまたはCFであり、ZはHまたはCHであり、a、jおよびmは各々1〜16の整数であり、c、kおよびnは各々0〜5の整数であり、b、d、e、fおよびgは各々0〜200の整数であり、hおよびiは各々0〜16の整数であり、PFPEは下記の構造を有する。
【0028】
【化5】

【0029】
前記b)フッ素系UV硬化型官能基含有化合物の含量は、前記a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂100重量部当たり0.5重量部〜20重量部が好適である。0.5重量部未満である場合には、耐汚染性の実現が容易ではなく、20重量部を超過する場合には、耐汚染性がそれ以上向上されず、耐摩耗性が低下する。
【0030】
前記c)光開始剤は紫外線によって分解可能な開始剤であれば、特に限定されない。具体的な例としては、α−ヒドロキシケトン類のイルガキュア127、イルガキュア184、ダロキュア1173、イルガキュア2959、α−アミノケトン類のイルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア907、イルガキュア1300、ベンジルジメチルケタールのイルガキュア651、モノアシルホスフィンのダロキュアTPOなどを用いることができる。前記c)光開始剤の含量は、前記a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂100重量部当たり1〜20重量部が好ましい。前記c)光開始剤の含量が1重量部未満である場合には、硬化速度が低く、耐摩耗性の実現が容易ではなく、20重量部を超過する場合には、架橋密度が低くなって耐摩耗性が低下する。
【0031】
前記d)ナノ微粒子は、本発明によるコーティング組成物の他の成分と共に混合された状態でフィルムに耐落書き性を付与する成分であって、光学的透明性を保障するために、粒径が0.5〜50nmであることが好ましく、5〜50nmであることがより好ましい。
【0032】
前記d)ナノ微粒子の粒径が0.5nm未満である場合には耐落書き性が低下し、50nmを超過する場合には光学的に不透明なコーティング膜が得られる。また、前記d)ナノ微粒子の粒径が0.5nm以上である場合には優れた耐落書き性を提供することができるが、5nm以上である場合が0.5nmである場合よりさらに耐落書き性を向上させることができる。
【0033】
前記d)ナノ微粒子は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアおよびフッ化マグネシウムのうちから選択された物質からなってもよい。
【0034】
また、前記a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂との相溶性および粒子の分散性を向上させるために前記d)ナノ微粒子を表面処理することができる。
【0035】
例えば、前記d)ナノ微粒子は、シランカップリング剤、エポキシ化合物、水酸基含有化合物、イソシアネート化合物、その他の分散剤のうちから選択された物質で表面処理することができる。
【0036】
前記d)ナノ微粒子の含量は、前記a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂100重量部当たり0.5〜50重量部が好ましい。前記d)ナノ微粒子の含量が0.5重量部未満である場合には耐落書き性が低下し、50重量部を超過する場合には耐汚染性が低下する。
【0037】
前記e)導電性無機粒子は、ホコリ除去性および帯電防止特性を実現するために添加される成分であって、光学的に透明性を保障するために粒径が0.5〜100nmであることが好ましい。
【0038】
前記e)導電性無機粒子の粒径が100nmを超過する場合には光学的に不透明なコーティング膜が得られ、0.5nm未満である場合にはホコリ除去性および帯電防止特性が低下する。
【0039】
前記e)導電性無機粒子は、スズがドーピングされた酸化インジウム(Tin−doped indium oxide、ITO)、アンチモンがドーピングされた酸化スズ(Antimony−doped tin oxide、ATO)、アンチモンがドーピングされた酸化亜鉛(Antimony−doped zinc oxide、AZO)、酸化スズ(Tin Oxide、SnO)および酸化亜鉛(zinc oxide、ZnO)のうちから選択された導電性酸化金属フィラーを用いて形成することができる。
【0040】
また、前記a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂との相溶性および粒子の分散性を向上させるために前記e)導電性無機粒子を表面処理することができる。
【0041】
例えば、前記e)導電性無機粒子は、シランカップリング剤、エポキシ化合物、水酸基含有化合物、イソシアネート化合物、その他の分散剤のうちから選択された物質で表面処理することができる。
【0042】
前記e)導電性無機粒子の含量は、前記a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂100重量部当たり0.5超過〜50以下重量部が好ましい。0.5重量部以下である場合にはホコリ除去性の実現が容易ではなく、50重量部を超過する場合には耐汚染性が低下する。
【0043】
本発明によるコーティング組成物は、前述した成分以外にコーティング性のために溶剤をさらに含むことができる。溶剤の種類や含量は特に限定されないが、コーティング性のために、前記a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂100重量部を基準に、10〜1000重量部の溶剤を用いることが好ましい。
【0044】
前記溶剤としてはアルコール、アルカン、エーテル、シクロアルカンやその他に芳香族有機溶剤などが使用可能であり、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、ジアセトンアルコール、2−エトキシエタノール、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセチルアセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルアセテート、エチルアセテート、ブチルアセテート、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなどを用いることができるが、本発明の範囲がこれらの例だけに限定されるものではない。
【0045】
本発明によるコーティング組成物は基材上にコーティングされてもよい。前記基材は特に限定されないが、プラスチックフィルムを用いることができる。前記フィルムの種類としてはポリエステル、トリアセチルセルロース、オレフィン共重合体、ポリメチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0046】
前記コーティング組成物は通常的に知られたコーティング方法により基材上にコーティングすることができ、その種類としては2ロールリバースコーティング、3ロールリバースコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、ダイコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、ディップコーティング、フローコーティングなどが挙げられる。
【0047】
前記方法によってコーティングされたフィルムは、乾燥後、紫外線照射量0.05〜2J/cmで硬化させることが好ましく、特に窒素雰囲気下で硬化する場合に表面硬化度が上昇して指紋除去性が向上される。
【0048】
前記コーティング組成物のコーティング厚さは0.5〜300μmであることが好ましく、10〜300μmであることがより好ましい。コーティング厚さが厚いほど耐摩耗性は向上するが、硬化収縮によるフィルムの曲がり現象やクラックなどが発生し得る。
【0049】
一方、本発明によるコーティングフィルムは、本発明によるコーティング組成物を用いて形成し、a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂;b)フッ素系UV硬化型官能基含有化合物;c)光開始剤;d)ナノ微粒子;およびe)導電性無機粒子を含むことができる。前述した実施状態で説明した内容が全て適用されることは勿論である。
【0050】
本発明によるコーティング組成物によって形成したコーティングフィルムは耐摩耗性に優れ、指紋や落書きなどのオイル成分の汚染除去が容易であることによって指紋除去性および耐落書き性のような耐汚染性に優れるだけでなく、特にホコリ除去性に優れる。
【0051】
本発明によるコーティングフィルムの厚さは0.5〜30μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。
【0052】
また、本発明によるコーティングフィルムの少なくとも一面に基材が備えられてもよい。
【0053】
本発明によるコーティングフィルムは耐摩耗性と耐汚染性が同時に要求される用途であれば、特に制限されることなく適用することができ、例えば、ディスプレイ装置に適用することができる。前記コーティングフィルムはディスプレイ装置などの対象装置の部品に直接コーティングして形成することもでき、基材上に形成した後に基材と共に対象装置に適用することもできる。本発明によるコーティングフィルムは液晶ディスプレイ、有機発光ディスプレイ(OLED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)に適用することができるが、本発明の範囲がこれらの例だけに限定されるものではない。
【0054】
一方、本発明によるコーティングフィルムの製造方法は、本発明によるコーティング組成物を基材上にコーティングするステップ;およびコーティングされたコーティング組成物を乾燥および光硬化するステップを含むことができる。前述した実施状態で説明した内容が全て適用されることは勿論である。
【0055】
一方、本発明によるディスプレイ装置は、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ディスプレイ(OLED)、およびプラズマディスプレイパネル(PDP)のうちから選択されたいずれか1つのディスプレイ素子と;本発明によるコーティングフィルムとを含むことができる。
【0056】
ここで、コーティング組成物を基材にコーティングして形成したコーティングフィルムは前記ディスプレイ素子に付着することもでき、コーティング組成物をディスプレイ素子に直接コーティングすることもできる。
【0057】
具体的に説明すれば、コーティング組成物を基材にコーティングして形成したコーティングフィルムは、耐汚染性と耐摩耗性を付与するために携帯電話ウィンドウやノートパソコンのようなディスプレイに自由に付着・脱着する用途として使用してもよく、偏光板やPDPフィルタなどの各種ディスプレイ装置に合着して使用してもよい。
【0058】
本発明によるディスプレイ装置としては、ディスプレイ素子を含むTV、コンピュータ用モニター、ノートパソコン、携帯電話などを例に挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
具体的に説明すれば、前記TV、コンピュータ用モニターおよび携帯電話は、ディスプレイ素子;前記ディスプレイ素子の表面に備えられた本発明によるコーティングフィルムを含むことができる。また、前記ディスプレイ素子はTV、コンピュータ用モニターおよび携帯電話の外観を形成する本体ケースによって支持されてもよい。
【0060】
前記ノートパソコンは、コンピュータ本体;および前記コンピュータ本体に回動可能に結合されるディスプレイ本体を含み、前記ディスプレイ本体は、画像を形成するディスプレイ素子および前記ディスプレイ素子の表面に備えられた本発明によるコーティングフィルムを含むことができる。前記ディスプレイ素子は前記ディスプレイ本体の外観を形成する本体ケースによって支持されてもよい。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の理解を助けるために下記に実施例を記述するが、本発明の範囲が下記実施例の記載によって限定されるものではない。
【0062】
本実施例においては、後述するようにコーティング組成物およびコーティングフィルムを製造した後、耐摩耗性、指紋除去性、耐落書き性、および表面エネルギの物性を下記のように評価した。
【0063】
コーティングフィルムの耐摩耗性は、鉛筆硬度で、500g荷重において評価した。
【0064】
コーティングフィルムの指紋除去性は次のように評価した。人工指紋液を製造し、ゴム印に指紋液をつけた。次に、前記ゴム印をコーティングフィルムの表面に押して10分間乾燥させた。次に、ガーゼタオルで前記コーティングフィルムから指紋を除去し、残った程度を肉眼で評価した。この時、用いた人工指紋液はJIS K 2246によって準備した。
【0065】
コーティングフィルムの耐落書き性は油性ペンで5cm程度の線を2本引いた後、極細糸のホコリのない布で拭き、ペン跡が残っているか否かを肉眼で確認した。これを、ペン跡が残る時まで繰り返して行い、その回数を記録した。
【0066】
表面エネルギは、Kruss社の表面エネルギ測定機DSA 100で、水とジヨードメタンの接触角を測定して表面エネルギを評価した。
【0067】
(実施例1)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100g、化学式1の構造において、X=F、Y=F、Z=H、h=6、i=1であり、他の成分はないペルフルオロ基含有単官能アクリレートを10g、光開始剤イルガキュア184を5g、表面にメタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理された粒径20nmのシリカ粒子10g、アンチモンがドーピングされた酸化亜鉛(Antimony doped zinc oxide、AZO、Nissan社製の粒径サイズ約20nm)10gを、メチルエチルケトン100gで配合した後、十分に混合されるようにコーティング液を攪拌器で1時間程度攪拌した。前記の方法により製造されたコーティング液は、トリアセチルセルロースフィルム上に、硬化厚さが10μmになるように2ロールリバースコーティングを施した。コーティングされたフィルムは、60℃オーブンで2分間乾燥した後、中圧水銀ランプでUVエネルギが1J/cmになるように照射して、指紋除去性を有する耐摩耗コーティングフィルムを製造した。
【0068】
(実施例2)
実施例1で用いたアンチモンがドーピングされた酸化亜鉛(Antimony doped zinc oxide、AZO、Nissan社製の粒径サイズ約20nm)20gを用いたことを除いては、実施例1と同一にした。
【0069】
(実施例3)
アンチモンがドーピングされた酸化亜鉛(Antimony doped zinc oxide)の代わりに、酸化スズ(Tin oxide、Nissan社製の粒径サイズ約20nm)20gを用いたことを除いては、実施例1と同一にした。
【0070】
(実施例4)
アンチモンがドーピングされた酸化亜鉛(Antimony doped zinc oxide)の代わりに、スズがドーピングされた酸化インジウム(tin−doped indium oxide、ITO、AMP社製の粒径サイズ約100nm)20gを用いたことを除いては、実施例1と同一にした。
【0071】
(比較例1)
実施例1で用いたアンチモンがドーピングされた酸化亜鉛(Antimony doped zinc oxide、AZO)を用いないことを除いては、実施例1と同一にした。
【0072】
(比較例2)
実施例1で用いたアンチモンがドーピングされた酸化亜鉛(Antimony doped zinc oxide、AZO)100gを用いたことを除いては、実施例1と同一にした。
【0073】
(比較例3)
シリカを用いないことを除いては、実施例1と同一にした。
【0074】
(比較例4)
実施例1で用いたアンチモンがドーピングされた酸化亜鉛(Antimony doped zinc oxide、AZO)約0.5gを用いたことを除いては、実施例1と同一にした。
【0075】
前記の方法によって準備したフィルムで表面抵抗、鉛筆硬度、指紋除去性、表面エネルギ、耐落書き性を評価して表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
前記表1に示すように、ナノ微粒子と導電性無機粒子を全て含むものが耐スクラッチ性および帯電防止特性に有利であることが分かった(実施例1〜4、比較例1、および比較例3を参照)。
【0078】
また、導電性無機粒子を含む場合にも、導電性無機粒子が過度に含まれると(比較例2の場合)、耐スクラッチ性が多少低下し、耐汚染性が弱化する問題点があり、導電性無機粒子を含まないか(比較例1の場合)、過小に含む場合(比較例4の場合)には、帯電防止特性が良好ではないことを確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂;
b)フッ素系UV硬化型官能基含有化合物;
c)光開始剤;
d)ナノ微粒子;および
e)導電性無機粒子を含むことを特徴とするコーティング組成物。
【請求項2】
前記a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂100重量部を基準に、前記e)導電性無機粒子の含量は0.5超過〜50以下重量部であることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂100重量部を基準に、前記b)フッ素系UV硬化型官能基含有化合物の含量は0.5〜20重量部であり、前記c)光開始剤の含量は1〜20重量部であり、前記d)ナノ微粒子の含量は0.5〜50重量部であり、前記e)導電性無機粒子の含量は0.5超過〜50以下重量部であることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂は、アクリレート類、メタクリレート類またはビニル類の多官能性または単官能性のモノマーまたはオリゴマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記b)フッ素系UV硬化型官能基含有化合物は、ペルフルオロ基が含まれたアクリレート、メタクリレートおよびビニル類のうちから選択された化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記b)フッ素系UV硬化型官能基含有化合物は、下記化学式1〜9で示される化合物のうちから選択された化合物を含む、請求項1に記載のコーティング組成物:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

前記化学式1〜9において、XおよびYは各々独立にFまたはCFであり、ZはHまたはCHであり、a、jおよびmは各々1〜16の整数であり、c、kおよびnは各々0〜5の整数であり、b、d、e、fおよびgは各々0〜200の整数であり、hおよびiは各々0〜16の整数であり、PFPEは下記の構造を有する。
【化5】

【請求項7】
前記d)ナノ微粒子の粒径は0.5〜50nmであることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記d)ナノ微粒子は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアおよびフッ化マグネシウムのうちから選択されることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記d)ナノ微粒子は、シランカップリング剤、エポキシ化合物、水酸基含有化合物およびイソシアネート化合物のうちから選択された物質で表面処理されることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記e)導電性無機粒子の粒径は0.5〜100nmであることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記e)導電性無機粒子は、スズがドーピングされた酸化インジウム(Tin−doped indium oxide、ITO)、アンチモンがドーピングされた酸化スズ(Antimony−doped tin oxide、ATO)、アンチモンがドーピングされた酸化亜鉛(Antimony−doped zinc oxide、AZO)、酸化スズ(Tin Oxide、SnO)および酸化亜鉛(zinc oxide、ZnO)のうちから選択された物質からなることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記e)導電性無機粒子は、シランカップリング剤、エポキシ化合物、水酸基含有化合物およびイソシアネート化合物のうちから選択された物質で表面処理されることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂100重量部を基準に、10〜1000重量部の溶剤をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のうちのいずれか1項によるコーティング組成物を用いて形成し、a)UV硬化型官能基含有バインダー樹脂;b)フッ素系UV硬化型官能基含有化合物;c)光開始剤;d)ナノ微粒子;およびe)導電性無機粒子を含むことを特徴とするコーティングフィルム。
【請求項15】
厚さが0.5〜300μmであることを特徴とする、請求項14に記載のコーティングフィルム。
【請求項16】
少なくとも一面に基材が備えられることを特徴とする、請求項14に記載のコーティングフィルム。
【請求項17】
前記基材は、ポリエステル、トリアセチルセルロース、オレフィン共重合体およびポリメチルメタクリレートのうちから選択された物質からなることを特徴とする、請求項16に記載のコーティングフィルム。
【請求項18】
請求項1〜13のうちのいずれか1項によるコーティング組成物を基材上にコーティングするステップ;および
コーティングされたコーティング組成物を乾燥および光硬化するステップを含むことを特徴とするコーティングフィルムの製造方法。
【請求項19】
前記基材は、ポリエステル、トリアセチルセルロース、オレフィン共重合体およびポリメチルメタクリレートのうちから選択された物質からなることを特徴とする、請求項18に記載のコーティングフィルムの製造方法。
【請求項20】
前記コーティング組成物のコーティング厚さは0.5〜300μmであることを特徴とする、請求項18に記載のコーティングフィルムの製造方法。
【請求項21】
前記光硬化ステップにおいては、紫外線照射量0.05〜2J/cmを利用して行うことを特徴とする、請求項18に記載のコーティングフィルムの製造方法。
【請求項22】
請求項14によるコーティングフィルムを含むことを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項23】
前記ディスプレイ装置は、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ディスプレイ(OLED)、およびプラズマディスプレイパネル(PDP)のうちのいずれか1つを含むことを特徴とする、請求項22に記載のディスプレイ装置。

【公表番号】特表2012−518713(P2012−518713A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551990(P2011−551990)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001261
【国際公開番号】WO2010/098636
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】