説明

耐火物被覆排水管における耐火物目地の被覆方法及び被覆テープ

【課題】耐火物被覆をした合成樹脂製垂直排水管に耐火物被覆をした合成樹脂製水平排水管を合流させる箇所において、各排水管及び合流継手における耐火物被覆層相互間に生ずる目地に耐火性の目地被覆をする。
【解決手段】耐火物被覆層の目地を覆って粘着性テープ1を貼付ける。このテープ1は、アルミニウム箔2の裏面に粘着剤層4を介してポリエチレン布3が貼合わされ、更にその裏面に粘着剤層5がもうけられ、アルミニウム箔2の表面には無機質の塗膜6が設けられている。ポリエチレン布3は幅方向に裂け易い組織を有するので、刃物を用いずにテープ1を切断して、目地上に貼付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高層建築では、或る階で火災が発生した場合に、排水管を伝わって他の階へ延焼し、或いは有毒ガスが他の階へ拡散するのを防ぐために、耐火物被覆を有する排水管路が採用されることが多い。このような配管路の多くは、耐火物被覆した合成樹脂管を、耐火物被覆した合成樹脂管継手によって連結している結果、双方の耐火物被覆層の間に目地を生ずる。本発明は、このような目地から燃焼ガスや有毒ガスが拡散するのを防ぐために、この目地を被覆するテープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高層建築における排水管は建築物内の各階を縦貫する垂直配水管と、各階内で炊事場、洗面所、便所、浴室などの排水源からの水を上記垂直排水管へ導く水平排水管とで出来ていて、水平配水管が垂直排水管に合流する箇所には合流継手が使用されている。これらの水平排水管、垂直排水管及び合流継手は、通常合成樹脂で作られ、その外面をセメント層のような耐火物層で被覆することが多い。
【0003】
その結果、水平排水管と合流継手との間及び垂直排水管と合流継手との間には、耐火物層が連結していない目地を生ずる。そして上の階層や下の階層で火災が起きて、そこの階層の排水用配管が燃焼した際は、その燃焼ガスが耐火物層の目地から他の階層内へ拡散される。
【0004】
従来は、この耐火物層の目地から燃焼ガスの漏洩を防ぐために、セメント系や水ガラス系の泥状の目地材を塗布したり、鉛筆状に伸ばした粘土状パテを巻き付けたりしていた。しかし、通常は水平排水管と垂直排水管との合流は、上方の階の床と下方の階の天井との間の狭い空間内で行われ、しかも垂直排水管に接近して垂直方向の防火壁が存在する場合も多いので、上述のような耐火物層の目地の加工作業は極めて困難かつ非能率的で、しかも工事の確実性に問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐火物層で被覆した排水配管において、耐火物被覆の目地の加工を迅速かつ容易に、しかも確実に実行できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては、耐火物層間の目地を覆って目地被覆テープを貼付ける。この目地被覆テープは、アルミニウム箔と、その裏面に粘着剤層によって貼合わされ、テープの長手方向引裂強度が幅方向の引裂強度よりも大きい布と、この布の裏面に形成され耐火物層の表面に粘着する粘着剤層とを有する。必要に応じ上記アルミニウム箔の表面に透明または着色された無機質の塗膜が被着され、最外層には離型剤層が被着される。
【0007】
上述の目地被覆テープは巻回された状態で提供される。施工に際しては、巻回物から必要な長さだけテープを解き、引っ張ることにより容易に引き千切ることが出来る。これを耐火物層上に目地を覆うように圧着することにより、目地の被覆が完了する。
【発明の効果】
【0008】
本発明による目地被覆テープは、アルミニウム箔を有するために熱による焼失がなく、かつこのアルミニウム箔は布で裏打されているので、作業中に皺ができて使用不能になる等の事態が起こらない。しかも裏打布は、テープの幅方向の引裂強度が低いので、刃物等を用いずに容易に手で切断できる。従って狭い空間内でも、容易かつ確実に耐火物層を有する排水配管の耐火物層の目地を被覆することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において使用する目地被覆テープは、アルミニウム箔と、その裏面に粘着剤層で貼合わされた布と、更にその裏面に形成された粘着剤層とを有する。アルミニウム箔は厚さが10〜40μm程度のものが適当で、これより薄いものは破損し易く、厚いものは目地の両側に段差がある場合に耐火物層に馴染み難い。これに裏布を貼合わせる粘着剤層としては、アクリル樹脂系が−30〜150℃の広い範囲で良好な粘着力を維持できるので望ましく、ゴム系粘着剤は高温では物性が変化し易いので不適当である。
【0010】
アルミニウム箔の裏打布としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂繊維の職布が望ましく、温度上昇によって粘着剤の粘度が低下した際にもこれに順応して粘着剤から分離することがない。しかし、鉱物性繊維や熱硬化性樹脂繊維は、温度上昇による粘着剤の粘度低下に順応できない。横方向に裂け易いテープは、経糸よりもフィラメント数が多い緯糸を使用することによって実施できる。
【0011】
上述のテープは、アルミニウム箔の耐食性を増すために表面に無機質の塗膜を設けることが望ましく、必要に応じこの塗膜に無機質の着色剤を加えて、その色彩を配管の耐火物被覆層に合わせることもできる。上述のテープは通常のガムテープなどと同様に巻回した状態で提供することが望ましいので、解き易いように上記塗膜の上に離型剤層を設ける。
【実施例】
【0012】
図1において、11は合成樹脂製の合流継手で、上下に比較的大径の合成樹脂製垂直排水管12及び13をそれぞれ挿入するためのソケット部14及び15と、側面に比較的小径の合成樹脂製水平排水管16を挿入するためのソケット部17とを有する。合流継手11は、ソケット部14、15及び17を含む全外表面が薄い繊維質の緩衝層18と厚いセメント質の耐火物層19とによって被覆されている。また、垂直排水管12及び13は端部20及び21を除いて外表面が繊維質の薄い緩衝層22及び23とセメント質の厚い耐火物層24及び25によって覆われ、露出している端部20及び21は接着剤を塗布した上でソケット部14及び15内へそれぞれ挿入される。同様に水平排水管16も、端部26を除いて外表面が繊維質の薄い緩衝層27とセメント質の厚い耐火物層28とで覆われ、露出している端部26は接着剤を塗布した上でソケット部17内へ挿入される。
【0013】
30は、下方の階の天井で、耐火材で作られ、垂直排水管13を通すための貫通孔31の内面と垂直排水管耐火物層25との間にはセメントモルタル32が充填されている。また、水平排水管16も、しばしば合流継手11の附近で耐火物壁33を貫通している。
【0014】
垂直排水管12、13及び水平排水管16の耐火物被覆層24、25及び28と合流継手11の耐火物被覆層19との間には、耐火物被覆層同士が繋がっていない目地が存在しているので、ここに目地被覆テープ1、1、1をそれぞれ巻回して粘着させる。目地テープ1は、図2に示すようにアルミニウム箔2の裏面にアクリル系粘着剤層4によってポリエチレン布3が貼られ、更にその裏面にアクリル系粘着剤層5が塗布されている。また、アルミニウム箔2の表面にはシリカゾル質の塗膜6が塗装され、更にその上に離型剤層7が設けられている。
【0015】
テープ1の具体例を示せば次の通りである。
アルミニウム箔2は厚さが0.02mmであり、ポリエチレン布3は厚さが0.02〜0.03mmで経糸に350デニールのフィラメントを11本、緯糸に350デニールのフィラメント23本を使用している。粘着剤層4及び5は厚さがそれぞれ0.04mm及び0.07mmで、ポリエチレン布3に表裏から浸透して、これと一体になっている。アルミニウム箔2の塗膜6は厚さが0.005mmで、シリカゾル系塗料(例えば日産化学株式会社製スノーテックス)の塗装で形成され、その表面に離型剤層7が設けられている。
【0016】
このテープは最上層に離型剤層7が存在するので、巻回されていても層間剥離を起こさずに円滑に解くことができ、塗膜6は鉱物質であるために燃焼による発熱が殆ど無いことに加えて200℃以上の耐熱性があり、アルミニウム箔2を燃焼から保護する。また、アルミニウム箔2はポリエチレン布3で裏打されているので、みだりに皺にならず取扱いが容易であり、ポリエチレン布3はテープの幅方向に容易に裂けるので、刃物等を使用せずに手で切断することができる。
【0017】
一般に水平排水管の垂直排水管との合流は、上の階の床下と下の階の天井との間の狭い隙間でおこなわれ、垂直排水管の脇にはしばしば耐火物壁33などが存在しているので、耐火物被覆層の目地の加工は極めて困難でかつ確実に行い難いが、上述のテープを用いるときは、施工が極めて簡単で、かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を実施した排水管の水平排水管と垂直排水管の合流部の断面図である。
【図2】本発明の実施例の目地被覆テープの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 目地被覆テープ
2 アルミニウム箔2
3 ポリエチレン布
4、5 粘着剤層
6 塗料層
7 離型剤層
11 合流継手
12、13 垂直排水管
14、15 ソケット部
16 水平排水管
17 ソケット部
18 緩衝層
19 耐火物層
22、23 緩衝層
24、25 耐火物層
27 緩衝層
28 対物層
30 天井
31 貫通孔
32 セメントモルタル
33 耐火物壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火物層で、外面が被覆されている合成樹脂管よりなる水平排水管を、耐火物層で外面が被覆されている合成樹脂製合流継手を介して耐火物層で外面が被覆されている合成樹脂管よりなる垂直排水管に合流させ、双方の排水管と上記合流継手との間に生ずる耐火物被覆層の目地を覆って目地被覆テープを巻回する目地被覆方法において、上記粘着テープはアルミニウム箔と、その裏面に粘着剤層によって貼合わされテープの長手方向の引裂強度が幅方向の引裂強度よりも低い布と、この布の裏面に設けられている粘着剤層とを有することを特徴とする耐火物被覆排水管における目地被覆方法。
【請求項2】
請求項1において、上記アルミニウム箔の表面に無機質塗膜が設けられていることを特徴とする耐火物被覆排水管における目地被覆方法。
【請求項3】
請求項1において、上記目地被覆テープの巻回物より必要な長さを解いて切断し、これを耐火物被覆層の目地に貼着することを特徴とする耐火物被覆排水管における目地被覆方法。
【請求項4】
テープ状のアルミニウム箔と、その裏面に粘着剤層によって貼合わされテープの長手方向の引裂強度が幅方向の引裂強度より低い布と、この布の裏面に設けられている粘着剤層とを有することを特徴とする耐火物被覆排水管における目地被覆テープ。
【請求項5】
請求項4において、上記アルミニウム箔は厚さが0.01〜0.04mmであることを特徴とする耐火物被覆排水管における目地被覆テープ。
【請求項6】
請求項4において、上記布は熱可塑性樹脂繊維布であることを特徴とする耐火物被覆排水管における目地被覆テープ。
【請求項7】
請求項4において、上記布はテープの長手方向の経糸とテープの幅方向の緯糸とで織られ経糸の繊維本数が緯糸の繊維本数よりも少ないことを特徴とする耐火物被覆排水管における目地被覆テープ。
【請求項8】
請求項4において、上記布はポリエチレン織布であり、上記粘着剤はアクリル樹脂系粘着剤であることを耐火物被覆排水管における目地被覆テープ。
【請求項9】
上記アルミニウム箔は、上記布とは反対側の面に無機質塗膜を有することを特徴とする耐火物被覆排水管における目地被覆テープ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−214856(P2008−214856A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49305(P2007−49305)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(392031549)神戸樹脂工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】