説明

耐焼付性に優れたPbフリー銅合金系複合摺動材

【課題】 銅合金粒子からなるマトリックスにMoS2粒子が分散されてなる銅合金系複合摺動材を焼結で製造する工程でMoS2は酸化されるので、添加量に見合うだけの性能が発揮されない。
【解決手段】 金属系めっき相が、合金粒子及びMoS2粒子間の境界に介在し、銅合金粒子とは焼結接合され、MoS2粒子とは焼結前に予め接合されている。MoS2の酸化部分がMoS2100部に対して10部以下に抑制されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅系焼結摺動材料に関するものであり、さらに詳しく述べるならば、耐焼付性に優れたPbフリー銅合金系複合摺動材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅系摺動材としては、Cu-Pb合金、Cu-Sn合金、Cu-Sn-Pb合金焼結材が一般に使用されている。銅合金中のPbは低融点相を形成し、摺動時の温度上昇により溶け出し、摺動面を冷却する効果と、Pbの自己潤滑作用により、耐焼付性を確保する。Pb以外で銅合金が境界潤滑時に相手材に凝着するのを防ぐ成分として少量のAgが添加されている銅合金系摺動材がある(特許文献1(米国特許第6348114号明細書)参照)。この銅合金系複合摺動材料においては、少量のAgと潤滑油中のSが反応し、境界潤滑下で摩擦熱により摺動面に形成されるAg-S濃縮層が摺動面に薄く伸び、軸−軸受の間の凝着を抑える。
【0003】
Pbを含む銅合金は潤滑油中の成分により腐食し、摺動特性が低下する。また、Pbは環境負荷物質であるために、Pbフリーの要求が高いが、Pbを添加しないCu,Cu-Sn合金では摺動特性、特に境界潤滑下での耐焼付性が劣る。この点を克服するために、Pbを含有せず、MoS2などのトライボ材料の添加により摺動特性を高めた焼結銅合金が後述のように公知である。
さらに、Ag添加銅合金については、ATFやエンジンオイルなどS分の多い潤滑油を使用する環境ではAg-Sが生成するが、燃料噴射ポンプ用ブシュなどS分の少ない環境では硫化物の生成が少なく、効果が十分発揮できない。
【0004】
Sn:5〜16%、MoS2:5〜16%、残部Cuからなる組成の複合合金を、700〜900℃、10〜30分の条件で焼結し、この焼結複合合金を自動車部品のブシュ、ワッシャの摺動層とすることが特許文献2(特許第3013946号明細書)で提案されている。なお、MoS2はNi、Cuめっきされることもある。
【0005】
また、Cu系焼結合金に、1〜10%のグラファイト、MoS2及びWS2の少なくとも1種と1〜30%のFe3P、Fe-Niなどの硬質物とを分散したブシュ材料(特許文献3(特許第3042539号明細書)参照)や、1〜10%のグラファイトと0.05〜1%未満のAlO3を分散したブシュ材料(特許文献4(特許第2974738号明細書)も提案されている。
【0006】
特許文献5(WO96/27685)には、次の組成をもつ耐硫化腐食性に優れた銅合金が開示されている。必須成分:Ni:5% を超え50%以下、Ag:0.1〜2%。任意成分(1) Sn:20%以下、 P:0.5%以下、Al:5%以下、Si:1%以下、Mn:5%以下、Zn:30%以下、Fe:10%以下、Sb:1%以下の一種又は2種以上;(2)総量で30%以下のPb及び/又は Bi;(3)総量で30%以下の MoS2、WS2、BN;(4)総量で20%以下のAl2O3、SiC、SiO2、Fe3P、AlN、Si3N4、TiC、WC、BN、NiB;(5)S:0.001〜1%。
【0007】
固体潤滑剤の黒鉛、MoS2を複合した合金では、これらの添加剤だけでは摺動性能が不十分であり、高面圧、高周速など摺動条件が厳しい部位には使用できないために、特許文献5においてはPbを同時添加している。これらのPb、黒鉛、MoS2はCu中に固溶しないで別の相として存在し、銅合金全体の硬さを下げることで、銅合金全体が変形しやすくなりなじみ性が向上する。但し、固体潤滑剤であるMoS2は銅合金粉末との密着性が悪いため、摺動面の加工時や摺動時に欠けが生じることがあるが、この点はCu、Niでめっきした固体潤滑剤を使用することにより解決できる(特許文献2参照)。
【特許文献1】米国特許第6348114号明細書
【特許文献2】特許第3013946号明細書
【特許文献3】特許第3042539号明細書
【特許文献4】特許第2974738号明細書
【特許文献5】WO96/27685号公報
【特許文献6】特開2002−220631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
黒鉛、MoS2を複合した銅合金を電気炉で焼結する際には還元性雰囲気中で加熱されるが、還元性雰囲気を使用してもMoS2粒子のほとんどが部分的に酸化してMoO3になることが知られている。したがって、MoS2の添加量に見合うだけの固体潤滑性能を発揮することができない。さらに、MoS2の酸化により分解されたSは銅と反応して硫化銅を生成し、この結果銅合金が脆くなる。
本発明は、銅合金の焼結中に酸化して生成するMoO3などの酸化物を制限する焼結法によりMoS2などの硫黄系固体潤滑剤の量を適正に添加し、耐焼付性に優れるPbフリー銅合金系複合焼結材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、銅合金粒子からなるマトリックスに硫黄系固体潤滑剤粒子が分散されてなる銅合金系複合摺動材において、金属系境界相が、前記銅合金粒子及び前記硫黄系固体潤滑剤粒子間の境界の実質的全体に介在するとともに、前記銅合金粒子とは焼結接合され、かつ前記硫黄系固体潤滑剤とは焼結前に予め接合されており、前記硫黄系固体潤滑剤の酸化部分が硫黄系固体潤滑剤100質量部に対して10質量部以下の比率に抑制されていることを特徴とする耐焼付性に優れたPbフリー銅合金系複合摺動材(以下「第1摺動材」という)を提供するものである。
また、本発明は、銅合金粉末と膜厚0.1μm以上のめっきを施した硫黄系固体潤滑剤粉末との混合物を高周波誘導加熱焼結したことを特徴とする耐焼付性に優れたPbフリー銅合金系複合摺動材(以下「第2摺動部材」という)を提供するものである。
以下、本発明を詳しく説明する。なお、本発明において硫黄系固体潤滑剤とは、広義には酸化部分を有するものを指し、狭義には酸化部分がないものを指している。
【0010】
本出願人は特許文献6(特開平2002−220631号公報)などにおいて、銅合金を高周波焼結することにより達成した成果、例えば(1)主として裏金の鋼板がキュリー点以下で誘導加熱されることによる急速昇温及び短時間加熱が実現される、(2)焼結温度での保持時間が短い、(3)焼結合金の結晶粒が微細である、などを発表してきたが、その後さらに開発を進めたところ、硫黄系固体潤滑剤粒子と銅合金粒子の中間に耐硫化性に優れた金属系境界相を介在させるとともに、金属系境界相と硫黄系固体潤滑剤はめっきなどにより予め接合しておくと、焼結中に硫黄系固体潤滑剤が一部酸化されても、遊離硫黄が銅合金粒子へ影響を及ぼすのを抑えることが可能であることを見出し、第1摺動材の発明を完成した。
さらに、MoS2は約380℃から分解が始まるので、焼結条件を制御すると、適当な厚さで金属めっきされた硫黄系固体潤滑剤は酸化されずに銅合金と一体に結合されることを見出した(第2摺動材)。焼結時間までの昇温は2分以内で行い、また焼結温度での保持時間は3分以内であることが好ましい。
【0011】
MoS2などの硫黄系固体潤滑剤に施すめっきの種類はCu、Ni、Ag、Sn、Auなどの金属めっきが挙げられる。本発明においてはめっきの厚さは0.1μm以上とする。めっきの厚さが薄いと、MoS2の酸化が完全には抑えられず、MoO3、CuSが生成する。また、硫黄系固体潤滑剤は銅合金粒子との比重差が大きく、均一に分散できないため、めっきの厚さを1μm以上5μm以下と厚くすると均一分散が可能になる。
すなわちこれは、めっきMoS2粉末と銅合金粒子との比重差が少なくなるために、焼結層中でのMoS2の偏析が抑えられ、MoS2粒子が均一に分散する。また、銅合金粒子とめっき金属との間で成分の拡散が起こるので、銅合金とMoS2との密着性が向上し、材料強度が上がる。
第2摺動材においては、高周波焼結と所定厚さのめっきを施した硫黄系固体潤滑剤を使用することにより、銅合金の焼結中に酸化して生成するMoO3量を制限し、あるいは酸化を全く起こさないようにするものである。
【0012】
本発明の第1摺動材において、銅合金粒子及び硫黄系固体潤滑剤粒子(表面もしくは全体が酸化されていることもある)の間の実質的全体に介在する金属系境界相はCu、Niなどの金属を予め硫黄系固体潤滑剤の粒子に接合したものである。この金属系境界相がない場合、銅合金粒子中にわずかながら含まれている酸素によって硫黄系固体潤滑剤が酸化され、この酸化反応で生じたSが銅合金粒子と結びついて硫化銅を生成する。これに対して本発明においては、金属系境界相を硫黄系固体潤滑剤に予め接合しているために、銅合金粒子と硫黄系固体潤滑剤とが直接接触しないこととなる。これによって硫黄系固体潤滑剤の酸化が抑制され、銅合金粒子の硫化を阻止し、遅らせることができる。また、金属系境界相が介在すると、焼結はこの金属系境界相と銅合金粒子との間で進行することになるので、高い焼結接合強度を得ることができる。
【0013】
本発明請求項1において「実質的全体」とは二つの粒子の境界を、長さ換算して90%以上、好ましくは100%について、金属系境界相が存在することを指す。なお、10%弱の境界についてはめっき不良などによるが、この程度の境界であれば硫黄系固体潤滑剤が直接銅合金と接していても、摺動特性の大幅劣化を避けることができる。本発明によると、硫黄系固体潤滑剤粉末の酸化比率は10/100以下に抑制することができる。
なお、酸化比率は焼結材中の硫黄系固体潤滑剤の質量を100として、酸化物(MoS2の場合はMoO3)の質量の比率を求めたものである。酸化物の存在形態は、上述したところから理解されるように、微細硫化物粒子全体が酸化したものと、硫化物粗粒子表面が酸化膜になったもの二種類がある。
本発明は上述のように酸化比率が少ないために、硫黄系固体潤滑剤を有効利用することができる。また、MoO3は硬質粒子としては硬度が低いので、耐摩耗性向上効果が少なく、専ら焼結銅合金材料との接合強度を下げる方向に作用するので好ましくない。
【0014】
上記したように硫黄系固体潤滑剤の酸化により遊離する硫黄は銅合金を硫化する。すなわち、金属系境界相を介して酸素と硫黄の反対方向拡散が起こっている。この遊離硫黄による銅合金の硫化反応は、めっき金属や金属系境界相により抑えられているが、銅合金にSn、Ni、Znなどの硫化抵抗を高める元素を添加することにより、さらに抑えることができる。硫化された銅合金の耐疲労性及び耐摩耗性は劣化するが、硬度低下によりなじみ性は向上する。後者の効果を狙うためには銅合金の硫化比率を2/100〜5/100にすることが好ましい。
続いて、本発明の摺動材の成分につき説明する。
【0015】
MoS2、WS2などの硫黄系固体潤滑剤(粒子表面もしくは全体が酸化されていることもある)の添加量が銅合金の100質量部に対して0.1質量部以下ではその効果がなく、また10質量部以上では強度が低下する。好ましい硫黄系固体潤滑剤の添加量は0.1〜10質量部であり、より好ましくは1〜5質量部である。なお、硫黄系固体潤滑剤の周囲のCuマトリクスが硫化しやすくなり、耐摩耗性、強度低下が予想されるので、Cuマトリクス中に上記のSn、Ni、Zn等の成分を添加してこれを防止する。これらの硫黄系固体潤滑剤の粒径は平均で10〜30μmであることが好ましい。
【0016】
SnはCuマトリクスの強度を上げ、耐疲労性、耐摩耗性の向上に効果がある。さらに硫黄系固体潤滑剤を添加されたことによる銅合金の硫化を防止する効果もある。銅合金中のSnの含有量が15質量%を超えると銅合金が脆くなる。したがって、Sn含有量は15質量%以下であり、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは3〜10質量%である。
【0017】
Pは銅合金の融点を下げ、焼結性を高める。銅合金中のPの含有量が0.5質量%を超えると銅合金が脆くなる。したがって、P含有量は0.5質量%以下であり、好ましくは0.01〜0.2質量%である。上記成分以外は、Cu及び不可避的不純物である。
【0018】
Ag、Ni、Zn、In、Biなどの銅合金の添加元素:Ag、Ni、Zn、In等はCuマトリクスの強度を上げ、耐疲労性、耐摩耗性の向上に効果がある。また、摺動時の発熱と潤滑油中のSにより銅マトリクスが硫化腐食を起こすのを抑制する。特に、潤滑油中のS量が多い部位での使用や高温になるような部位に使用される摺動材ではZnやNiの添加が望ましい。BiはCu中に固溶せず、二次相粒子として存在する。Biは融点が低いため、摺動時に発生した熱で摺動表面に溶け出して、摺動面の温度を下げて、焼付を防止する。
しかし、Ag:5質量%以上、Ni:10質量%以上、Zn:30質量%以上、In:10質量%以上では銅合金の硬さが上がりすぎて、脆くなるとともに、なじみ性を低下して耐焼付性が低下する。Bi:20質量%以上では銅合金の融点が下がりすぎて強度が低下する。好ましい添加量は、Ag:0.1〜1.2質量%、Ni:1〜5質量%、Zn:5〜30質量%、Bi:1〜10質量%である。
【0019】
黒鉛:黒鉛は自己潤滑性を発揮する公知の固体潤滑剤であるが、本発明において補助的に添加することは支障がない。好ましい添加量は1〜5質量部である。黒鉛の粒径は平均で10〜30μmであることが好ましい。
【0020】
Fe3P、Fe2P、FeB、AlN、Al2O3、SiC、SiO2、Si3N4:さらに本発明においてはこれらの硬質物の1種もしくは2種以上を添加して耐摩耗性を高めることができる。これらの硬質物の添加量は銅合金の100質量部に対して10質量部を超えると摺動材の強度が低下する。好ましい添加量は1〜10質量部である。これらの硬質物の粒径は平均で10〜50μmであることが好ましい。
【0021】
銅合金粉末にめっきを施したMoS2粉末などを混合し、鋼板上に散布した後、水素―窒素ガス系還元雰囲気下で焼結を行う。高周波による加熱焼結後、冷却はガスおよびロール冷却により速やかに冷却する。焼結後圧延し、その後同じように700℃〜1000℃で高周波焼結し、再度圧延することにより本発明の摺動材を製造することができる。
焼結条件としては、硫黄系固体潤滑剤の分解温度以上の温度に保持されている時間、すなわち昇温工程の途中から焼結温度での保持時間を含み、冷却工程の途中までの時間を極力短時間とすることが好ましく、具体的には360秒以内が好ましい。また焼結温度までの昇温時間は100秒以内、焼結温度での保持時間は160秒以内、室温までの冷却時間は100秒以内がそれぞれ好ましい。硫黄系固体潤滑剤をその分解温度以上の温度に長時間さらすと酸化が進行し、添加量に見合うだけの潤滑性能を発揮できなくなるとともに、遊離した硫黄によって銅合金が硫化され、摺動性能が低下する。
なお、めっき層がMoS2粉末を被覆していると、摺動相手材との接触を妨げることになるから、焼結材の表面を研摩してMoS2粉末の一部を表面に露出することが好ましい。
以下、実施例により本発明をより詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
実施例1
Cu-Sn系銅合金アトマイズ粉末(粒径180μm以下)100質量部に対しCuめっきMoS2粉末(平均粒径50μm)を5〜10質量部の割合で混合し、鋼板上に1mmに散布した後、高周波加熱焼結を行った。高周波加熱焼結の焼結条件は、還元雰囲気下において、2分以内で700〜1000℃の焼結温度まで昇温し、その焼結温度での保持時間は3分以内とし、冷却はガス冷却または/およびロール冷却により2〜3分以内で速やかに室温まで冷却した。その後圧延し、同じ条件で再度高周波焼結を行い、得られた材料を試験片とした。MoS2に施したCuめっきの厚さは2μm以下とした。試験片のMoO3、MoS2の量をX線回析、EPMAにより測定して、酸化比率を求めた結果を図1に示す。
図1よりめっき厚さが1μm以上であると酸化比率はゼロになることが分かる。めっき厚さが1μm以上の試料を光学顕微鏡で観察したところ、Cu系境界相がMoS2粒子の全体の周りに観察された。この境界相とCu-Sn系銅合金粒子の間には焼結により生成した拡散相が観察された。
【0023】
実施例2
実施例1と同様の方法で、表1に示す組成につき焼結を行い、焼結後表面を研磨してMoS2粒子を露出させた。なお、比較のために電気炉焼結を行った。電気炉焼結の焼結条件は、還元雰囲気下において、10〜20分で700〜800℃の焼結温度まで昇温し、その焼結温度での保持時間は5〜10分とし、冷却は20〜30分で室温まで冷却した。得られた試験片につき次の方法で試験を行った。
試験機:ピンオンディスク試験機
荷重:4MPa/10min漸増
油種:パラフィン系ベースオイル
油温:室温
相手材:SUJ2
試験の結果を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
表1に示すとおり、本発明によるとPbを含有しなくともかなり高い焼付面圧が達成されている。
【0026】
実施例3
高周波加熱及び冷却条件などを変更して実施例1の方法を行い、実施例2の試験方法により焼付面圧を測定した。試験条件及び結果を表2に示す。
【0027】
【表2】

【0028】
表2より、MoS2分解割合が10%を超える比較例では耐焼付性が低下することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上説明したように、本発明の摺動材料はPbを含有しなくとも、優れた耐焼付性をもっているので、燃料噴射ポンプ用ブシュ、オートマチックトランスミッション用ブシュとして非常に適している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】めっき厚さと酸化比率の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅合金粒子からなるマトリックスに硫黄系固体潤滑剤粒子が分散されてなる銅合金系複合摺動材において、金属系境界相が、前記銅合金粒子及び前記硫黄系固体潤滑剤粒子間の境界の実質的全体に介在するとともに、前記銅合金粒子とは焼結接合され、かつ前記硫黄系固体潤滑剤とは焼結前に予め接合されており、前記硫黄系固体潤滑剤の酸化部分が前記硫黄系固体潤滑剤100質量部に対して10質量部以下の比率に抑制されていることを特徴とする耐焼付性に優れたPbフリー銅合金系複合摺動材。
【請求項2】
前記硫黄系固体潤滑剤が前記銅合金100質量部に対して0.1〜10質量部であることを特徴とする請求項1に記載の耐焼付性に優れたPbフリー銅合金系複合摺動材。
【請求項3】
銅合金粉末と膜厚0.1μm以上のめっきを施した硫黄系固体潤滑剤粉末とからなる混合物を高周波誘導加熱焼結したことを特徴とする耐焼付性に優れたPbフリー銅合金系複合摺動材。
【請求項4】
前記銅合金がSn:20質量%以下及びP:0.5質量%以下を含有し、残部が実質的にCu及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐焼付性に優れたPbフリー銅合金系複合摺動材。
【請求項5】
前記銅合金がAg:5質量%以下、Ni:10質量%以下、In:10質量%以下、Zn:30質量%以下、Bi:10質量%以下のうち1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項4に記載の耐焼付性に優れたPbフリー銅合金系複合摺動材。
【請求項6】
前記銅合金の100質量部に対して10質量部以下の黒鉛をさらに分散したことを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の耐焼付性に優れたPbフリー銅合金系複合摺動材。
【請求項7】
前記銅合金100質量部に対して、10質量部以下のFe3P、Fe2P、FeB、AlN、Al2O3、SiC、SiO2、Si3N4のうち1種又は2種以上をさらに分散したことを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の耐焼付性に優れたPbフリー銅合金系複合摺動材。
【請求項8】
前記硫黄系固体潤滑剤がMoS2であり、酸化部分がMoO3である請求項1から7までの何れか1項に記載の耐焼付性に優れたPbフリー銅合金系複合摺動材。
【請求項9】
裏金鋼板上に焼結されていることを特徴とする請求項1から8までの何れか1項に記載の耐焼付性に優れたPbフリー銅合金系複合摺動材。

【図1】
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【公開番号】特開2006−37179(P2006−37179A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220238(P2004−220238)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000207791)大豊工業株式会社 (152)
【Fターム(参考)】