説明

耐衝撃性プロピレンポリマー組成物の製造方法

(a)15〜80μmの範囲の平均粒径を有していて、ハロゲン化マグネシウム;少なくともTi−ハロゲン結合を有するチタン化合物;および、一方がコハク酸エステルから選択されて、供与体の総量を基準として50〜90モル%の量にて存在し、他方が1,3−ジエーテルから選択される、少なくとも2種の電子供与体化合物;を含む固体触媒成分、(b)アルキルアルミニウム、および(c)必要に応じて外部の電子供与体化合物、を含む触媒システムの存在下で行われ、(i)触媒成分(a)、(b)、および必要に応じて(c)を接触させる工程;(ii)固体触媒成分(a)の1グラム当たり約0.1gから最大で約1000gまでのポリマー量が形成されるまで予備重合させる工程;(iii)プロピレンを重合させて、少なくとも85重量%が25℃にてキシレンに不溶であるプロピレン(コ)ポリマーを得る工程;および(iv)気相で行われる後続の工程において、エチレンとα−オレフィンCH=CHR(式中、Rは1〜10個の炭素原子を有する炭化水素基である)との混合物を重合させて、該エチレンコポリマーを得る工程;を含む、プロピレンポリマー組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレンポリマー組成物を製造するための重合法に関する。この製造方法を使用して得られる組成物は、優れた耐衝撃性/剛性バランスをもたらすことを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
耐衝撃性プロピレンポリマー組成物は、当業界においてよく知られている。耐衝撃性プロピレンポリマー組成物は一般に、25℃にてキシレンに不溶性である比較的高結晶質のプロピレンポリマーフラクションと、25℃にてキシレンに可溶性である比較的低結晶質のコポリマーフラクションを含む。比較的高結晶質のフラクションは一般に、プロピレンホモポリマー、または比較的少量のオレフィンコモノマーとのランダムプロピレンコポリマーであって、アイソタクティシティが高いことを特徴とする。比較的低結晶質のフラクションは一般に、プロピレンコポリマー、および特に、15〜75重量%の範囲のエチレン含量を有するプロピレン−エチレンコポリマーである。前記組成物は、2種の成分の機械的ブレンドを含む幾つかの方法によって製造することができる。しかしながら、好ましい方法は、1つ又は2つの反応器中にて行われる一連の重合工程による反応器中での製造である。一般には、高結晶質フラクションを得るべく、第1の段階においてプロピレンと少量の他のオレフィンとの共重合が行われるが、第2の段階では、異なる重合条件下にて、特に、多量のオレフィンコモノマーを含む反応混合物中にて共重合が行われ、これによりキシレン可溶性フラクションが得られる。
【0003】
この方法は、工業的に広く使用されており、同じ重合技術であっても、あるいは異なる重合技術であってもよい2つの異なる反応器にて操作して行うのが好ましい。特に、第1の段階は、液相反応器でも、あるいは気相反応器でも行うことができるが、第2の段階は通常、反応浴中への低結晶質フラクションの溶解を避けるために気相中にて行われる。
【0004】
この種の製造方法においては、触媒の性能が極めて重要である。触媒システムは、第1の段階においては、極めてアイソタクチックなプロピレン(コ)ポリマーをもたらさなければならないが、第2の段階においては、組成物に耐衝撃性を付与する低結晶質(すなわち、キシレンに対する高い溶解性)を有するよう、オレフィンコモノマー単位が、ポリマー鎖に沿って、およびポリマー鎖間に充分に分散されているコポリマーをもたらさなければならない。当然ながら、プラント生産性の受け入れ可能なレベルを保持するために、触媒には、
高い重合活性が同時に要求される。複数の重合工程があることから、そして2つのポリマーフラクション間で特定の重量バランスを保持しなければならないという事実から、触媒は、時が経過しても受け入れ可能な重合活性レベルを維持する必要があり、特に、気相中での必要な反応性レベルを保持できるものでなければならない。
【0005】
触媒はさらに、結晶質ポリマーが、後続の工程において、可溶性ポリマーフラクションがポリマー/触媒成長グラニュールを去って反応器に付着する、ということを防止する能力を同時に保持しつつ、結晶質ポリマーが生成される、という初期の重合段階に耐えるのに必要な形態融通性(morphology versatility)を有していなければならない。
【0006】
したがって、触媒システムには、単一の触媒として見なされるような極めて厳しい融通性が要求される、ということが明らかである。実際、国際特許出願第WO03/054035号は、可溶性ポリマーフラクションを製造する上で、高い生産性と十分な多孔性を同時に有するよう、2種の異なる触媒の組み合わせ物を使用することを開示している。しかしながら、触媒混合物を使用すると、プラントの触媒ハンドリングセクションに幾らかの複雑さが入り込み、このため触媒混合物を正確に使用するのにさらなる装置が必要となる。さらに、混合物の各単一触媒が別々のバッチ・ラン(batch run)によって得られるので、最終触媒に関して変動の起こる可能性が2倍になり、したがって規格外のポリマー組成物が得られる可能性が2倍になる。
【0007】
さらに、異なる条件下にて異なる重合段階が存在することから、触媒(特に触媒混合物)の挙動はほとんど予測することができない。実際、それぞれの触媒が、ある特定の重合条件に対して異なる挙動を示すことがあり、特異的な結果については確認する必要があると思われる。例えば、ある触媒(または触媒混合物)は、優れた活性を有するが、キシレン可溶性ポリマー材料の組み込みに関しては良くない。したがって、耐衝撃性プロピレンコポリマーを製造する上での触媒(もしくは触媒混合物)の適合性を極めて一般的にしか開示していない文献は、実施例がなければ、実際には何ら具体的な説明がなされていないことになる。例えば、国際特許出願第WO2007/147864号と国際特許出願第WO2007/147865号のケースがこれである。国際特許出願第WO2007/147864号は、それぞれコハク酸エステルとジエーテルを含有する2種のチーグラー・ナッタ触媒のブレンドを使用することを開示している。国際特許出願第WO2007/147865号は、2種の供与体のブレンドを含有する1種の触媒を使用することを開示している。どちらのケースも、目的は、単一触媒の使用によって得られる生成物の中で中間的な特徴を有するプロピレンポリマー生成物を得ることである。該特許文献は、プロピレン異相コポリマーの製造するのに提唱されている解決策が適している、ということを具体的な実施例を挙げることなく極めて一般的に述べている。しかしながら該特許文献は、形態安定性とキシレン可溶性相を組み込む能力に関して良好な性能を有するよう、特定の触媒をどのように選択するのか、そしてその特定の触媒をどのように取り扱うのかについての明確な説明を与えていない。
【0008】
したがって、最終組成物が良好な耐衝撃性/剛性バランスを有するよう、高い重合活性、良好な形態安定性、キシレン可溶性相の最適な組み込み、および高いアイソタクティシティ、を同時にもたらすことができる触媒システムを使用する耐衝撃性ポリプロピレン組成物の製造方法が依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許出願第WO03/054035号
【特許文献2】国際特許出願第WO2007/147864号
【特許文献3】国際特許出願第WO2007/147865号
【発明の概要】
【0010】
したがって本発明の目的は、25℃にてキシレンに不溶性のプロピレンポリマーフラクションを50〜90重量%、および25℃にてキシレンに可溶性のエチレンコポリマーフラクションを10〜50重量%含むプロピレンポリマー組成物の製造方法を提供することであり、ここで該製造方法は、(a)15〜80μmの範囲の平均粒径を有していて、塩化マグネシウム;少なくともTi−ハロゲン結合を有するチタン化合物;および、一方がコハク酸エステルから選択されて、供与体の総量を基準として50〜90モル%の量にて存在し、他方が1,3−ジエーテルから選択される少なくとも2種の電子供与体化合物;を含む固体触媒成分、(b)アルキルアルミニウム、および(c)必要に応じて外部の電子供与体化合物、を含む触媒システムの存在下で行われ、(i)触媒成分(a)、(b)、および必要に応じて(c)を、0〜90℃の範囲の温度にて0.1〜120分の範囲の時間にわたって接触させる工程;(ii)固体触媒成分(a)の1グラム当たり約0.1gから最大で約1000gまでのポリマー量が形成されるまで、式CH=CHR(式中、RはHまたはC−C10炭化水素である)の1種以上のオレフィンを使用して予備重合させる工程;(iii)エチレン及び/又はC−C10−α−オレフィンの任意の存在下でプロピレンを重合させて、少なくとも85重量%が25℃にてキシレンに不溶であるプロピレン(コ)ポリマーを得る工程;および(iv)(iii)からもたらされる生成物の存在下にて気相で行われる後続の工程において、エチレンとα−オレフィンCH=CHR(式中、Rは1〜10個の炭素原子を有する炭化水素基である)との混合物を重合させて、エチレンコポリマーを得る工程;を含む。
【0011】
固体触媒成分(a)中に存在するコハク酸エステルは、下記の式(I)
【0012】
【化1】

【0013】
〔式中、基RとRは、互いに同一であっても、異なっていてもよく、C−C20の線状もしくは分岐状アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、またはアルキルアリール基であって、ヘテロ原子を含有してもよく;そして基RとRは、互いに同一であっても、異なっていてもよく、C−C20アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20アリール基、アリールアルキル基、またはアルキルアリール基であって、但し、これらの少なくとも1つが分岐状アルキルである〕で示されるコハク酸エステルから選択されるのが好ましく、該化合物は、式(I)の構造において識別されている2つの不斉炭素原子に関して、タイプ(S,R)またはタイプ(R,S)の立体異性体である。
【0014】
とRは、C−Cアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、およびアルキルアリール基であるのが好ましい。特に好ましいのは、RとRが第一アルキル(特に分岐第一アルキル)から選択される化合物である。適切なR基とR基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、ネオペンチル、および2−エチルヘキシルなどがある。特に好ましいのは、エチル、イソブチル、およびネオペンチルである。
【0015】
特に好ましいのは、R基及び/又はR基が、イソプロピル、sec−ブチル、2−ペンチル、または3−ペンチル等の第二アルキル、あるいはシクロヘキシル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルメチル等のシクロアルキルである化合物である。上記化合物の例としては、2,3−ビス(トリメチルシリル)コハク酸ジエチル、2,3−ビス(2−エチルブチル)コハク酸ジエチル、2,3−ジベンジルコハク酸ジエチル、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチル、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジイソブチル、2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)コハク酸ジエチル、2,3−ジイソブチルコハク酸ジエチル、2,3−ジネオペンチルコハク酸ジエチル、2,3−ジシクロペンチルコハク酸ジエチル、および2,3−ジシクロヘキシルコハク酸ジエチルの純粋形もしくは混合物形(必要に応じてラセミ形)である(S,R)(S,R)形がある。
【0016】
上記の1,3−ジエーテルの中で、特に好ましいのは、式(I)
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、RとRIIは、同一または異なっていて、水素または1つ以上の環状構造をさらに形成してもよい線状もしくは分岐状のC−C18炭化水素基であり;RIII基は、互いに同一または異なっていて、水素またはC−C18炭化水素基であり;RIV基は、互いに同一または異なっていて、水素であってはならないという点以外はRIIIと同じ意味を有し;R〜RIV基のそれぞれが、ハロゲン、N、O、S、およびSiから選択されるヘテロ原子を含有してよい)で示される化合物である。
【0019】
IV基はC−Cアルキル基(より具体的にはメチル)であるのが好ましく、RIII基は水素であるのが好ましい。さらに、Rが、メチル、エチル、プロピル、またはイソプロピルであるとき、RIIは、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソペンチル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、フェニル、またはベンジルであってよく;Rが水素であるとき、RIIは、エチル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシルエチル、ジフェニルメチル、p−クロロフェニル、1−ナフチル、または1−デカヒドロナフチルであってよく;RとRIIはさらに、同一であってもよく、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、フェニル、ベンジル、シクロヘキシル、またはシクロペンチルであってよい。
【0020】
有利に使用できるエーテルの特定の例としては、2−(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−sec−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−tert−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−クミル−1,3−ジメトキシプロパン、2−(2−フェニルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(2−シクロヘキシルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p−クロロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(ジフェニルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(1−ナフチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p−フルオロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(1−デカヒドロナフチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−メチル−2−エチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−プロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−ベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−メチルシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(p−クロロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−フェニルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−シクロヘキシルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(p−メチルフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジブトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−sec−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−tert−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジネオペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−フェニル−2−ベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、および2−シクロヘキシル−2−シクロヘキルメチル−1,3−ジメトキシプロパンなどがある。
【0021】
さらに、特に好ましいのは、式(II)
【0022】
【化3】

【0023】
〔式中、基RIVは、上記したのと同じ意味を有し;基RIIIとRは、互いに同一または異なっていて、水素、ハロゲン(好ましくはClとF)、線状もしくは分岐状のC−C20アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20アリール基、C−C20アルカリール基、およびC−C20アラルキル基からなる群から選択され;R基の2つ以上が、互いに結合して飽和もしくは不飽和の縮合環構造を形成してよく、縮合環は、ハロゲン(好ましくはClとF)、線状もしくは分岐状のC−C20アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20アリール基、C−C20アルカリール基、およびC−C20アラルキル基からなる群から選択されるRVI基で置換されていてもよく;基RとRVIは、炭素原子、水素原子、またはその両方の代わりに、1つ以上のヘテロ原子を含有してもよい〕で示される1,3−ジエーテルである。
【0024】
式(I)と(II)の1,3−ジエーテルにおいて、RIII基が全て水素であって、RIV基が全てメチルであるのが好ましい。さらに、特に好ましいのは、R基の2つ以上が、互いに結合して1つ以上の縮合環構造(好ましくは、RVI基で置換されてもよいベンゼン環)を形成している場合の式(II)の1,3−ジエーテルである。特に好ましいのは、式(III)
【0025】
【化4】

【0026】
〔式中、RVI基は、同一または異なっていて、水素、ハロゲン(好ましくはClとF)、線状もしくは分岐状のC−C20アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20アリール基、C−C20アルカリール基、およびC−C20アラルキル基からなる群から選択され、炭素原子、水素原子、またはその両方の代わりに、N、O、S、P、Si、およびハロゲン(特にClとF)からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含有含有してもよく;基RIIIとRIVは、式(II)に関して上記にて定義したとおりである〕で示される化合物である。
【0027】
式(II)と(III)に含まれる化合物の特定の例としては、1,1−ビス(メトキシメチル)−シクロペンタジエン、1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエン、1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3,4,5−テトラフェニルシクロペンタジエン、1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3,4,5−テトラフルオロシクロペンタジエン、1,1−ビス(メトキシメチル)−3,4−ジシクロペンチルシクロペンタジエン、1,1−ビス(メトキシメチル)インデン、
1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3−ジメチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−4,5,6,7−テトラヒドロインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3,6,7−テトラフルオロインデン、
1,1−ビス(メトキシメチル)−4,7−ジメチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−3,6−ジメチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−4−フェニルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−4−フェニル−2−メチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−4−シクロヘキシルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−(3,3,3−トリフルオロプロピル)インデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−トリメチルシリルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−トリフルオロメチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−4,7−ジメチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−メチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−シクロペンチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−イソプロピルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−シクロヘキシルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−tert−ブチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−tert−ブチル−2−メチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−フェニルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−2−フェニルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−1H−ベンズ[e]インデン(benz[e]indene)、1,1−ビス(メトキシメチル)−1H−2−メチルベンズ[e]インデン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,3,6,7−テトラメチルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,3,4,5,6,7−ヘキサフルオロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,3−ベンゾフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,3,6,7−ジベンゾフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジイソプロピルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,8−ジクロロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジシクロペンチルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,8−ジフルオロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロフルオレン、および9,9−ビス(メトキシメチル)−4−tert−ブチルフルオレンなどがある。
【0028】
前述したように、触媒成分(a)は、上記電子供与体のほかに、少なくともTi−ハロゲン結合を有するチタン化合物とハロゲン化マグネシウムを含む。ハロゲン化マグネシウムは、活性形のMgClであるのが好ましく、これは特許文献によりチーグラー・ナッタ触媒用の担体として広く知られている。米国特許第4,298,718号と米国特許第4,495,338号が、これらの化合物をチーグラー・ナッタ触媒中に使用することを開示した最初の特許である。これらの特許からわかるように、オレフィン重合用触媒の成分中に担体もしくは共担体として使用される活性形の二ハロゲン化マグネシウムは、非活性ハロゲン化物のスペクトルにおいて現われる最も強い回折線の強度が減少し、そしてこの最も強い回折線が、最大強度がより強い回折線の角度に対してより小さな角度のほうに移動されるハローに取って代わられる、というX線スペクトルを有することを特徴とする。
【0029】
本発明の触媒成分中に使用される好ましいチタン化合物はTiClとTiClである。さらに、式Ti(OR)n−yのTi−ハロアルコラートも使用することができ、ここでnはチタンの原子価であり、yは1とn−1との間の数であり、Xはハロゲンであり、Rは、1〜10個の炭素原子を有する炭化水素基である。
【0030】
触媒成分(a)は、20〜70μmの範囲の平均粒径を有するのが好ましく、25〜65μmの範囲の平均粒径を有するのがさらに好ましい。前述したように、コハク酸エステルは、供与体の総重量を基準として50〜90重量%の範囲の量にて存在する。60〜85重量%の範囲であるのが好ましく、65〜85重量%の範囲であるのがさらに好ましい。1,3−ジエーテルが、供与体の総重量を基準とした残部の量を構成するのが好ましい。
【0031】
アルキル−Al化合物(b)は、トリアルキルアルミニウム化合物(例えば、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム)の中から選択するのが好ましい。トリアルキルアルミニウムとハロゲン化アルキルアルミニウムとの混合物、トリアルキルアルミニウムと水素化アルキルアルミニウムとの混合物、およびトリアルキルアルミニウムとセスキ塩化アルキルアルミニウム(例えば、AlEtClやAlEtCl)との混合物も使用することができる。
【0032】
好ましい外部電子供与体化合物としては、ケイ素化合物、エーテル、エステル(例えば4−エトキシ安息香酸エチル)、アミン、複素環化合物(特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)、ケトン、および1,3−ジエーテルなどがある。好ましい外部供与体化合物の他の種類は式RSi(OR〔式中、aとbは0〜2の整数であり;cは1〜3の整数であり;合計である(a+b+c)は4であり;RとRとRは、1〜18個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基であって、ヘテロ原子を含有してもよい〕のケイ素化合物である。特に好ましいのは、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチル−t−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、2−エチルピペリジニル−2−t−ブチルジメトキシシラン、1,1,1−トリフルオロプロピル−2−エチルピペリジニル−ジメトキシシラン、および1,1,1−トリフロオロプロピル−メチル−ジメトキシシランである。外部電子供与体化合物は、有機アルミニウム化合物対該電子供与体化合物のモル比が5〜500のモル比を、好ましくは7〜400のモル比を、そしてさらに好ましくは10〜200のモル比をもたらすような量にて使用される。
【0033】
工程(i)においては、触媒形成成分と不活性の液体炭化水素溶媒(例えば、プロパン、n−ヘキサン、またはn−ヘプタン)とを、約60℃未満(好ましくは約0〜30℃)の温度にて約6秒〜60分にわたって接触させるのが好ましい。
【0034】
上記の触媒成分(a)、(b)、および必要に応じて(c)は、重量比(b)/(a)が01−10の範囲であるような量にて、そして化合物(c)が存在する場合は、重量比(b)/(c)が好ましくは上記の範囲であるような量にて予備接触容器に供給される。該成分は、10〜20℃の温度にて1〜30分にわたって予備接触させるのが好ましい。予備接触容器は、撹拌タンクであっても、あるいはループ型反応器であってもよい。
【0035】
次いで、予備接触させた触媒を、工程(ii)が行われる予備重合反応器に供給する。予備重合工程は、ループ型反応器と連続撹拌タンク反応器から選択される第1の反応器において行われる。予備重合は、気相でも液相でも行うことができるが、液相で行うのが好ましい。液体媒体は、液体α−オレフィンモノマーを含み、必要に応じて不活性炭化水素溶媒を加えてもよい。このような炭化水素溶媒は、芳香族炭化水素(例えばトルエン)であっても、あるいは脂肪族炭化水素(例えば、プロパン、ヘキサン、ヘプタン、イソブタン、シクロヘキサン、および2,2,4−トリメチルペンタン)であってもよい。炭化水素溶媒(使用する場合)の量は、α−オレフィンの総量を基準として40重量%未満、好ましくは20重量%未満である。工程(ii)は、不活性炭化水素溶媒の非存在下で行うのが好ましい。
【0036】
この反応器中の平均滞留時間は、一般には2〜40分であり、好ましくは10〜25分である。温度は10℃〜50℃であり、好ましくは20℃〜40℃である。これらの条件を採用することにより、固体触媒成分1グラム当たり60〜800gの範囲の、好ましくは固体触媒成分1グラム当たり150〜500gの範囲の予備重合度を得ることができる。工程(ii)はさらに、スラリー中の固体の濃度が低い(一般には、スラリー1リットル当たり固体が50g〜300g)ことを特徴とする。
【0037】
予備重合触媒を含有するスラリーを予備重合反応器から排出し、工程(iii)が行われる反応器に供給する。工程(iii)は、気相でも液相でも行うことができる。気相プロセスは、流動床反応器、撹拌床反応器、もしくは固定床反応器において行うこともできるし、あるいは相互に連結された2つの重合ゾーン(一方のゾーンは、速やかな流動条件下で機能し、他方のゾーンでは、ポリマーが重力の作用にて流れる)を含む気相反応器において行うこともできる。液相プロセスは、スラリーであっても、溶液であっても、あるいはバルク(液体モノマー)であってもよい。この後者の技術が最も好ましく、種々のタイプの反応器(例えば、連続撹拌タンク反応器、ループ型反応器、または栓流反応器)にて行うことができる。重合は、一般には20〜120℃の温度で行われ、好ましくは40〜85℃の温度で行われる。重合が気相で行われるとき、操作圧力は、一般には0.5〜10Mpaであり、好ましくは1〜5Mpaである。バルク重合では、操作圧力は、一般には1〜6Mpaであり、好ましくは1.5〜4Mpaである。工程(iii)は、好ましくはループ型反応器中にて、液状モノマー(プロピレン)の形で、必要に応じてエチレン及び/又はC−C10α−オレフィンとの混合物の形で重合させて、必要なキシレン不溶性を有するプロピレンポリマーを得ることによって行うのが好ましい。
【0038】
この段階において、及び/又は、後続の段階において、水素を分子量調整剤として使用することができる。この段階で得られるプロピレンポリマーは、好ましくは90%より高い(さらに好ましくは95%より高い)キシレン不溶性、およびアイソタクチックpentads(13C−NMRをポリマー全体に対して使用して測定)に関して93%より高い(好ましくは95%より高い)アイソタクチック指数を有する。ISO1133(230℃、2.16Kg)による溶融流量値は、0.01〜300g/10分(特に0.1〜250g/分)の広い範囲内で変わることがある。
【0039】
特に好ましい重合プロセスの第2の段階では、ポリマー材料と先行重合工程からの触媒システムの存在下にて、従来の流動床気相反応器中にてプロピレン/エチレンコポリマー(B)が得られる。重合混合物を、下降管から気体−固体分離器へと排出し、引き続き従来の温度・圧力条件下で作動する流動床気相反応器に供給する。
【0040】
(iv)において得られるポリマーは、15〜75重量%のC−C10α−オレフィンを含有する(少量のジエンを含有してもよい)、少なくとも60%が室温にてキシレンに可溶であるエチレンコポリマーであるのが好ましい。α−オレフィンは、プロピレンまたはブテン−1から選択するのが好ましく、その含量は20〜70重量%の範囲であるのが好ましい。
【0041】
本発明のプロセスによって得られる最終的なポリマー組成物は、25℃にてキシレンに不溶の(A)プロピレンポリマー(少量のエチレン及び/又はC−C10αオレフィンを含有してもよい)を30〜90重量部(好ましくは40〜80重量部)、およびキシレンに可溶の(B)エチレンコポリマー(好ましくは20〜70%のC−C10αオレフィンを含有する)を10〜70重量部(好ましくは20〜60重量部)含むのが好ましい。該プロピレンポリマー組成物に対し、室温にてキシレンに可溶の部分と室温にてキシレンに不溶の部分に関して、(iii)において得られるポリマーのテトラヒドロナフタレン中135℃での固有粘度と、(iV)において得られるポリマーのテトラヒドロナフタレン中135℃での固有粘度との間の比は0.3〜5である。
【0042】
全エチレン含量は9%より多く、10%より多いのが好ましく、10〜50重量%の範囲であるのがさらに好ましい。
反応器グレードのポリマー組成物に対して測定されたキシレン可溶フラクションの固有粘度の値は0.5dl/g〜6.0dl/gの範囲である。
【0043】
本発明のプロセスにしたがって得られる組成物は、0.01〜100g/分(好ましくは0.1〜70g/10分、さらに好ましくは0.2〜60g/10分)の溶融流量値〔ISO1133(230℃、2.16kg)による〕を有する反応器グレードとして得ることができる。必要であれば、選択された用途に適した最終MFR値に達するよう、公知の方法に従って組成物をビスブレークすることができる(can be visbroken)。ポリマーの化学分解〔ビスブレーキング(visbreaking)〕は、フリーラジカル開始剤(例えば過酸化物)の存在下で行われる。この目的のために使用できるラジカル開始剤は、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシド)−ヘキサンとジクミル−ペルオキシドである。分解処理は、適切な量のフリーラジカル開始剤を使用することによって行われ、不活性雰囲気(例えば窒素)中にて行われるのが好ましい。当業界に公知の方法、装置、および操作条件を使用してこのプロセスを実施することができる。
【0044】
このようにして得られるプロピレンコポリマーは、耐衝撃性と剛性との優れたバランスを有することを特徴とする。ISO178に従って測定される曲げ弾性率は900Mpaより高く、好ましくは1200Mpaより高く、さらに好ましくは1400Mpaより高い。0℃にて試験した組成物の衝撃強さは1〜30KJ/mであるが、−20℃で試験した組成物の衝撃強さは5〜10KJ/mである。本発明のプロセスによって得られる組成物の他の好ましい特徴は、GPCによって測定される成分(A)中の分子量分布(平均Mw/平均Mn比で表示)が6〜10以上であり、一般には6〜9である;GPCによって測定される成分(A)における平均Mz/平均Mw比が2.5以り上であり、特に、2.5〜4.5であり、一般には3〜4である;および曲げ弾性率が700〜1500Mpaであり、さらに好ましくは900〜1300Mpaである。
【0045】
本発明の組成物はさらに、当業界において一般的に使用されている添加剤(例えば、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、核形成剤、着色剤、および充填剤)を含有してよい。
特に、核形成剤を添加すると、重要な物理的−機械的特性〔例えば、曲げ弾性率、加熱撓み温度(HDT)、降伏点引張強さ、および透明性)の大幅な改良がもたらされる。
【0046】
核形成剤の代表的な例は、安息香酸p−tert−ブチル、1,3−ジベンジリデンソルビトール、および2,4−ジベンジリデンソルビトールである。
核形成剤は、本発明の組成物に、総重量を基準として0.05〜2重量%の量にて添加するが好ましく、0.1〜1重量%の量にて添加するのがさらに好ましい。
【0047】
無機充填剤(例えば、タルク、炭酸カルシウム、および鉱物繊維)の添加も、幾つかの機械的特性(例えば、曲げ弾性率やHDT)に対して改良をもたらす。タルクはさらに、核形成効果を有することがある。
【実施例】
【0048】
プロピレンポリマー材料のデータを、下記の方法に従って得た。
キシレン可溶性フラクション
2.5gのポリマーと250mlのo−キシレンを、冷却装置と磁気攪拌機を装備したガラスフラスコ中に装入する。温度を30分で溶媒の沸点まで上昇させる。得られた溶液を還流状態に保持し、さらに30分撹拌する。次いで、密閉したフラスコを、氷水浴中に30分保持し、そして恒温水槽中に25℃にて30分保持する。このようにして得られる固体を迅速濾紙により濾過し、濾液を2つの100mlアリコートに分ける。濾液の1つの100mlアリコートを計量済みの容器中に注ぎ、これを窒素気流下にて加熱プレートで加熱して、蒸発により溶媒を除去する。次いで、一定の重量が得られるまで、容器を、オーブン中に減圧にて80℃で保持する。残留物を計量して、キシレン可溶性ポリマーのパーセント値を求める。
【0049】
コモノマー(C2)の含量
IR分光分析法による
成分Bのコモノマー含量を、ポリマーの沈殿した“非晶質”フラクションに対して測定する。沈殿した“非晶質”フラクションは次のようにして得る:上記のように得られる濾液の1つの100mlアリコートに、200mlのアセトンを、激しく撹拌しながら加える。沈殿は、明白な固体−溶液分離によって示されるように完全でなければならない。このようにして得られる固体を金属スクリーンにより濾過し、一定の重量に達するまで、減圧オーブン中にて70℃で乾燥する。
【0050】
供給ガスのモル比
ガスクロマトグラフィーにより測定
溶融流量(MFR)
ISO1133(230℃、2.16kg)に従って測定
固有粘度
テトラヒドロナフタレン中にて135℃で測定
曲げ弾性率
ISO178に従って測定
降伏応力と破断応力
ISO527に従って測定
降伏点伸びと破断点伸び
ISO527に従って測定
アイゾッド衝撃強さ
ISO180/1Aに従って測定
延性/脆性転移温度(D/B)
この方法によれば、二軸耐衝撃性は、コンピュータ制御の自動打撃ハンマーによる衝撃により測定する。
【0051】
円形の試験片は、円形ハンドパンチ(直径38mm)を使用してカットすることによって得られる。試験片を、23℃および50%RHにて少なくとも12時間状態調節し、次いで試験温度での恒温槽中に1時間静置する。力−時間曲線は、環状支持体の上に載っている円形試験片への打撃ハンマー(5.3kg、直径0.5インチの半球形パンチ)による衝撃時に検知される。使用する装置は、CEAST6758/000タイプモデルNo.2である。
【0052】
D/B転移温度は、サンプルの50%が、上記衝撃試験にかけたときに、脆弱のために破壊を起こす温度である。
127×127×1.5mmの寸法を有する、D/B測定用のプラークは、以下の方法にしたがって作製される。
【0053】
射出成型機は、90トンのクランプ力を有するNegri Bossi(商標)タイプ(NB90)である。金型、矩形のプラーク(127×127×1.5mm)である。
主要なプロセスパラメーターは次の通りである:背圧:20バール;射出時間:3秒;最大射出圧力:14Mpa;油圧射出圧力:6〜3Mpa;第1の保持油圧:4±2Mpa;第1の保持時間:3秒;第2の保持油圧:3±2MPa;第2の保持時間:7秒;冷却時間:20秒;金型温度:60℃。
【0054】
溶融温度は220〜280℃である。
融解温度、融解エンタルピー、および結晶化温度
20℃/分の温度変化にてDSCにより測定。
【0055】
付加物と触媒の平均粒径
単色レーザー光線の光回折の原理に基づいた方法により測定。
実施例1〜5
実施例1
固体触媒成分の調製
窒素でパージした500mlの四つ口丸底フラスコに、250mlのTiClを0℃にて装入した。撹拌しながら、47μmの平均粒径を有するマイクロ球状MgCl・2.1COH(ヨーロッパ特許第728769号の実施例1に記載の方法に従って製造)の10.0gと、ラセミ形の2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルのある量とを、Mg/コハク酸エステルのモル比が12となるように加えた。温度を100℃に上げ、この温度で60分保持した。その後、撹拌を停止し、液体を吸い上げ、TiClによる処理を110℃で30分繰り返した。吸い上げ後、フレッシュなTiClとある量の9,9−ビス(メトキシメチル)フッ素とを、Mg/コハク酸エステルのモル比が12となるように加えた。次いで温度を30分で90℃に上げた。85℃での沈殿と吸い上げの後、固体を無水ヘキサン(6×100ml)で60℃にて6回洗浄した。
【0056】
触媒システムと予備重合処理
上記の固体触媒成分を重合反応器中に導入する前に、該触媒成分を、表1に記載の条件下にてトリエチルアルミニウム(TEAL)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)と接触させる。
【0057】
次いで、触媒システムを、表1に記載の条件下にて液体プロピレン中に懸濁状態にて保持することによって予備重合に付してから、第1の重合反応器中に導入する。
重合
重合は、生成物をある1つの反応器からそのすぐ次の反応器に移すための装置を備えた、一連の2つの反応器中にて連続モードで行われる。第1の反応器は液相ループ型反応器であり、第2の反応器は気相流動床反応器である。プロピレンホモポリマーは、液相ループ型反応器において製造され、エチレンコポリマーは、第1の段階からもたらされるプロピレンホモポリマーの存在下にて気相反応器において製造される。水素が分子量調整剤として使用される。
【0058】
ガスクロマトグラフィーによって気相(プロピレン、エチレン、および水素)を連続的に分析する。
重合が終了したら、粉末を取り出し、窒素気流下にて乾燥する。
【0059】
主たる重合条件および3つの反応器において得られるポリマーに関する分析データを表1に示す。
比較例1
同じ触媒を使用して、そして工程(ii)を行わないということ以外は実施例1に関して記載した条件下で重合を行った。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃にてキシレンに不溶性のプロピレンポリマーフラクションを50〜90重量%、および25℃にてキシレンに可溶性のエチレンコポリマーフラクションを10〜50重量%含むプロピレンポリマー組成物の製造方法であって、ここで該製造方法が、(a)15〜80μmの範囲の平均粒径を有していて、ハロゲン化マグネシウム;少なくともTi−ハロゲン結合を有するチタン化合物;および、一方がコハク酸エステルから選択されて、供与体の総量を基準として50〜90モル%の量にて存在し、他方が1,3−ジエーテルから選択される、少なくとも2種の電子供与体化合物;を含む固体触媒成分、(b)アルキルアルミニウム、および(c)必要に応じて外部の電子供与体化合物、を含む触媒システムの存在下で行われ、(i)触媒成分(a)、(b)、および必要に応じて(c)を、0〜90℃の範囲の温度にて0.1〜120分の範囲の時間にわたって接触させる工程;(ii)固体触媒成分(a)の1グラム当たり約0.1gから最大で約1000gまでのポリマー量が形成されるまで、式CH=CHR(式中、RはHまたはC−C10炭化水素である)の1種以上のオレフィンを使用して予備重合させる工程;(iii)エチレン及び/又はC−C10α−オレフィンの任意の存在下でプロピレンを重合させて、少なくとも85重量%が25℃にてキシレンに不溶であるプロピレン(コ)ポリマーを得る工程;および(iv)(iii)からもたらされる生成物の存在下にて気相で行われる後続の工程において、エチレンとα−オレフィンCH=CHR(式中、Rは1〜10個の炭素原子を有する炭化水素基である)との混合物を重合させて、該エチレンコポリマーを得る工程;を含む上記製造方法。
【請求項2】
固体触媒成分(a)中に存在するコハク酸エステルが、下記の式(I)
【化1】

〔式中、基RとRは、互いに同一であっても、異なっていてもよく、C−C20の線状もしくは分岐状アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、またはアルキルアリール基であって、ヘテロ原子を含有してもよく;そして基RとRは、互いに同一であっても、異なっていてもよく、C−C20アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20アリール基、アリールアルキル基、またはアルキルアリール基であって、但し、これらの少なくとも1つが分岐状アルキルである〕で示されるコハク酸エステルから選択され、該化合物が、式(I)の構造において識別されている2つの不斉炭素原子に関して、タイプ(S,R)またはタイプ(R,S)の立体異性体であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記1,3−ジエーテルの中で、特に好ましい1,3−ジエーテルが式(I)
【化2】

(式中、RとRIIは、同一または異なっていて、水素または1つ以上の環状構造をさらに形成してもよい線状もしくは分岐状のC−C18炭化水素基であり;RIII基は、互いに同一または異なっていて、水素またはC−C18炭化水素基であり;RIV基は、互いに同一または異なっていて、水素であってはならないという点以外はRIIIと同じ意味を有し;R〜RIV基のそれぞれが、ハロゲン、N、O、S、およびSiから選択されるヘテロ原子を含有してよい)で示される化合物である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
触媒成分(a)が、少なくともTi−ハロゲン結合を有するチタン化合物とハロゲン化マグネシウムとを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
触媒成分(a)が20〜70μmの範囲の平均粒径を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
コハク酸エステルが、供与体の総量を基準として50〜90重量%存在し、1,3−ジエーテルが、供与体の総量を基準として残りの量を構成するのが好ましい、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
工程a)において、触媒形成成分と液状不活性炭化水素溶媒とを、約60℃未満の温度にて約6秒〜60分にわたって接触させる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
工程(i)において、触媒成分(a)、(b)、及び必要に応じて(c)を、重量比(b)/(a)が0.1〜10の範囲であるような量にて、そして化合物(c)が存在する場合は、重量比(b)/(c)が10〜200の範囲であるような量にて予備接触容器に供給する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
工程(ii)が液相中にて行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
工程(ii)が液体プロピレン中にて行われる、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
予備重合度が、固体触媒成分1グラム当たり60〜800gの範囲である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
工程(iii)が液体モノマー中にて行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
(iv)において得られるポリマーが、15〜75重量%のC−C10α−オレフィンを含有する、請求項1に記載の製造方法。

【公表番号】特表2012−530170(P2012−530170A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515473(P2012−515473)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058437
【国際公開番号】WO2010/146074
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】