説明

耐衝撃性ポリオレフィン組成物

すべて重量%で表して、
A)50〜85%の、室温でのキシレンへの溶解度が20重量%より小さいポリプロピレン成分と、
B)3〜20%の、室温でのキシレンへの溶解度が50重量%より大きい、エチレンとC−C10−α−オレフィンのコポリマーと、
C)10〜35%の、エチレン含量が60重量%以上で、室温でのキシレンへの溶解度が50重量%より大きい一種以上のエチレンとプロピレンのコポリマーからなるコポリマー成分と
からなるポリオレフィン組成物であって、
A)とB)とC)の量が、A)+B)+C)の総重量に対する値であり、B)中のエチレン含量BとC)中のエチレン含量Cの重量比B/Cが1.4以下で、その下限が好ましくは0.8であるポリオレフィン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性熱可塑性ポリオレフィン組成物に関する。特に本発明は、1種のプロピレンポリマー成分と2種以上のエチレンとC−C10−α−オレフィンのコポリマーとからなる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリマー組成物の技術において、剛性(高曲げ弾性率)と耐衝撃性の優れたバランスを達成するために、プロピレンポリマー、一般的にはプロピレンポリマーのホモポリマーまたは少量のコモノマーとのコポリマーにエラストマー系エチレンコポリマーを組み合わせることは公知である。特定の用途には熱収縮率を達成することも望ましい。事実、これらの性質は、これらの組成物から得られる最終製品に高い形態安定性を与える。
【0003】
特に、WO03/076511とWO2005/121240には、プロピレンポリマー成分とエチレンと一種以上の以上C−C10−α−オレフィンとのコポリマーと他のエラストマー系またはプラストマー系のポリオレフィンと鉱物系充填材とからなる、低熱収縮率で優れた機械的性質をもつポリオレフィン組成物が記載されている。これらの文書の実施例中に示されているように、そこに開示された技術的解決法を用いると、約20重量%の鉱物系充填材を添加した場合にのみ1000MPaよりかなり大きな曲げ弾性率値が得られる。また、これらの高曲げ弾性率の組成物のメルトフローレート(MFR)は比較的小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO03/076511
【特許文献2】WO2005/121240
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特定のプロピレンポリマーとエチレン/α−オレフィンコポリマーを選択し、その組成物の他の特徴やいろいろな成分の比率を組み合わせることで、望ましいバランスの機械的性質(特に曲げ弾性率とアイゾッド衝撃強度)や低光沢度、溶融状態での好ましい流動性、低い熱収縮を達成できることが明らかとなった。
【0006】
その機械的物理的性質のため、本発明のポリオレフィン組成物は、とりわけ自動車分野で、特にドアトリムの製造に使用される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、すべて重量%で表して、
A)50〜85%の、好ましくは60〜80%の、プロピレンホモポリマー、他のα−オレフィンとのプロピレンコポリマー、またはこれらの組み合わせからなるポリプロピレン成分であって、
該ポリプロピレン成分が、少なくとも85重量%のプロピレンを含み、MFR−L値が110g/10分以上、好ましくは120g/10分以上で、最大でも好ましくは2500g/10分であり、室温でのキシレンへの溶解度が20重量%未満であるものと;
B)3〜20%の、好ましくは2〜15%の、15〜35%のC−C10−α−オレフィンを含むエチレンと一種以上のC−C10−α−オレフィンのコポリマーであって、室温でのキシレンへの溶解度が50重量%より大きく、キシレン可溶性の画分の固有粘度が好ましくは2.5〜4dl/gであるものと;
C)10〜35%の、好ましくは10〜25%の、一種以上のエチレンとプロピレンコポリマーと必要なら0.5〜5重量%のジエンを含むコポリマー成分であって、エチレン含量が60重量%以上であり、室温でのキシレンへの溶解度が50重量%より大きく、キシレン可溶性の画分の固有粘度が好ましくは2〜4dl/gであるものと;からなるポリオレフィン組成物であって、
A)とB)とC)の量が、A)+B)+C)の総重量に対する値であり、
B)中のエチレン含量BとC)中のエチレン含量Cの重量比B/Cが1.4以下、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下であり、その下限が好ましくは0.8であるポリオレフィン組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記の定義より、「コポリマー」には複数種のコモノマーを含むポリマーが含まれることは明らかである。
【0009】
必要なら本発明の組成物は鉱物系充填材D)を含むことができる。
【0010】
しかしながら、多量の充填材を添加する必要はない。逆に、このような充填材を非常に少量添加すること、即ちA)+B)+C)の100重量部に対して0.3〜5重量部の鉱物系充填材D)を添加することが好ましい。
【0011】
本発明の組成物は、また必要なら核剤E)を、好ましくはA)とB)とC)と必要ならD)の100重量部に対して0.01〜0.5重量部の量で含むことができる。
【0012】
本発明の組成物のMFR値は好ましくは20g/10分以上であり、あるいは25g/10分以上、例えば20〜60g/10分の範囲、特に25〜60g/10分の範囲である。
【0013】
したがって、本発明の組成物は、その比較的高いMFR値と上記のバランスのとれた性質のため、特に射出成型法によりいろいろな種類の最終製品や半製品に容易に変換可能である。
【0014】
異なるMFR−L値をもついろいろなプロピレンホモポリマー及び/又はコポリマーの混合により、成分A)のMFR−L値が決まる。
【0015】
このような場合には、A)のMFR−L値は、それぞれ単一のポリマーの量とMFR−L値を基礎として、既知のポリオレフィン組成物のMFRとそれぞれの成分のMFRとの間の相関関係から容易に決定可能であり、例えば、二ポリマー成分AとAの場合、この相関は、次のように表される。

ln MFR=[WA/WA+WA)]×ln MFR+[WA/(WA+WA)]×ln MFR

式中、WAとWAは、それぞれ成分A)とA)の重量を表し、MFRは、A)のMFRの計算値を、MFRとMFRは、それぞれ成分A)とA)のMFRを表わす。
【0016】
したがって、単一ポリマーのMFR−L値は100g/10分より小さくなる。したがって、成分A)のMFR−L値の定義には上記の計算値が含まれる。成分B)の室温でキシレンに不溶な画分(XI)の量は以下の計算式を満足することが好ましい:

(XI)<1.14×B−34

式中、Bは成分B)中のエチレンの量で、B)の重量に対する重量%で表したものである。
【0017】
室温でキシレンに可溶な成分(A)の量は、上述のように20%以下であり、好ましくは10重量%以下である。通常成分(A)は、(i)好ましくは室温でのキシレンへの溶解度が10重量%未満、より好ましくは5%未満、さらに好ましくは3%未満であるプロピレンホモポリマー、(ii)プロピレンと少なくとも一種の式HCH=CHRのα−オレフィン(式中、RはHまたはC2−8の直鎖又は分岐アルキル基である)とのコポリマー、または(i)と(ii)の組合せから選ばれる。
【0018】
好ましくはプロピレン(ii)のコポリマーは、少なくとも90%のプロピレンを含み、その室温でのキシレンへの溶解度が、好ましくは15重量%より小さく、より好ましくは10%より、さらに好ましくは8%より小さい。上記のα−オレフィンは、好ましくはエチレン、ブテン−1、ペンテン−1,4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、またはこれらの組み合わせのいずれかであり、さらに好ましくは、プロピレン(ii)のコポリマーがプロピレンとエチレンのコポリマーである。
【0019】
上述のように、成分(B)と(C)は室温でキシレンに部分的に可溶である。成分(B)または(C)の室温でキシレンに可溶な画分の含量は、好ましくは約50〜95重量%であり、より好ましくは55〜95重量%である。
【0020】
成分(B)中のC−C10−α−オレフィンは、一般的には式HCH=CHRのオレフィン(式中、RはC2−8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である)から選ばれる。 成分(B)のC−C10−α−オレフィンの代表例には、1−ブテンや1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンが含まれ、1−ブテンが特に好ましい。
【0021】
本発明の組成物は、成分(A)と(B)と(C)、および必要なら成分(D)及び/又は(E)をメルトブレンドして製造できる。
【0022】
本発明の組成物は、すべて重量%で表して、
)60から85%の、プロピレンホモポリマー、他のα−オレフィンとのプロピレンコポリマー、またはこれらの組み合わせからなるポリプロピレン成分であって、少なくとも85重量%のプロピレンを含み、MFR−L値が20g/10分以上であり、室温でのキシレンへの溶解度が20重量%未満であるものと;
)15〜40%のエチレンと一種以上のC−C10−α−オレフィンのコポリマーで、15〜35重量%のC−C10−α−オレフィンを含み、室温でのキシレンへの溶解度が50重量%を越え、キシレン可溶性画分の固有粘度が2.5〜4dl/gであるものと
からなるマスターバッチ組成物(I)を、他のポリオレフィン成分と、また必要なら成分(D)及び/又は(E)とメルトブレンドして製造できる。
【0023】
マスターバッチ成分(A)用の好ましいポリマーの種類やコモノマーの種類と量、室温でキシレンに可溶な画分の量は、成分(A)に対して上に述べたものと同じである。
【0024】
マスターバッチ成分(B)用のコモノマーの種類と量と室温でキシレンに可溶な画分の量は、成分(B)に対して上に述べたものと同じである。
【0025】
マスターバッチ組成物(I)の100〜130℃の間の温度で検出できるDSC溶融ピークの溶融エンタルピーの値ΔHmは、1J/g以上であることが好ましい。
【0026】
一般に、成分(A)と(B)と(C)は、既知の重合方法で別々に製造可能である。
【0027】
上記のマスターバッチ組成物(I)は、逐次重合で製造することが好ましく、具体的には成分(A)と(B)が連続する別の工程で製造され、第一の工程が前工程で形成されたポリマーと使用された触媒の存在下で行われることを除いて独立した工程で行われる少なくとも2つの逐次工程からなる逐次重合で製造することが好ましい。この触媒は第一の工程にのみで添加されるが、その活性は、続くすべての工程でそれが維持される程高い。
【0028】
この重合は、連続的であっても回分的であってもよいが、既知の方法で、不活性な希釈剤の存在下または非存在化での液相で、または気相、あるいは気液混合法で行われる。
【0029】
しかし、これらの重合工程の反応時間と圧力と温度はあまり重要ではないが、温度が50〜100℃なら最高である。圧力は大気圧であっても、これより高くてもよい。
【0030】
分子量の調整は、既知の調整剤で、特に水素で行われる。
上記の重合は、立体選択性チーグラー・ナッタ触媒の存在下で行うことが好ましい。 この触媒は公知である。
【0031】
公知の従来の分子量自動調整剤、例えば連鎖移動剤(例えば、水素またはZnEt)を使用できる。好ましいチーグラー・ナッタ触媒の例としては、トリアルキルアルミニウム化合物と必要なら電子供与体とを含む担持触媒システムや、無水塩化マグネシウムに担持されたTiのハライドまたはハロゲン−アルコラートと必要なら電子供与体化合物を含む固体触媒成分があげられる。上述の特徴を持つ触媒やこのような触媒を用いる重合法は、特許文献中によく知られている。特に好ましいのは、USP4,399,054とEP−A−45977に記載の触媒と重合プロセスである。他の例が、USP4,472,524に見出される。
【0032】
これらの触媒を、前もって少量のオレフィンに接触させることもできる(前重合)。必要なら本発明の組成物中に加えられる鉱物系充填材(D)には、タルクやCaCO、シリカ、マイカ、珪灰石(CaSiO)、粘土、珪藻土、酸化チタン、ゼオライトが含まれる。タルクが好ましい。通常この鉱物系充填材は、平均径が0.1〜5マイクロメータの範囲の粒子状である。
【0033】
有用な核剤(E)には、例えばカルボン酸の金属塩、ジベンジルソルビトール誘導体、リン酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。具体的な核剤の例としては、安息香酸ナトリウム、アジピン酸アルミニウム、p−t−ブチル安息香酸アルミニウム、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ビス(p−メチル−ベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3−p−クロロベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデン)ソルビトール、ナトリウムビス(4−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウムビス(4−t−メチルフェニル)ホスフェート、カリウムビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェートがあげられる。
【0034】
本発明の組成物はまた、酸化防止剤や光安定剤、熱安定化剤、着色剤などの従来から使用されている添加物を含むことができる。
【0035】
上述のように、本発明の組成物は、成分(A)と(B)と(C)、必要なら成分(D)及び/又は(E)をメルトブレンドして、あるいはマスターバッチ組成物(I)を他のポリオレフィン成分と必要なら成分(D)及び/又は(E)とメルトブレンドして製造できる。密閉型混合機またはエクストルーダーなどの混合機を備えたいずれの公知の混合装置も使用可能である。例えば、バンバリーミキサーまたは一軸バス・エクストルーダーまたは二軸マリス型またはウェルナー型式エクストルーダーを使用できる。
【0036】
本発明はまた、最終製品を、特に上記ポリオレフィン組成物からなるドアトリムを提供する。
【0037】
本発明の実施方法と利点を、以下の実施例に示す。これらの実施例は、説明のみを目的とするものであって、決して本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0038】
ポリマー組成物の特性を評価するのに以下の分析方法を用いる。
メルトフローレート(MFR):ASTM−D1238、条件L(即ち、230℃、2.16kgの荷重)
[η]固有粘度:テトラヒドロナフタレン中で135℃で測定
エチレンとブテンの含量:I.R.スペクトロスコピー
曲げ弾性率:ISO178
破断点引張強度:ISO527
破断伸度:ISO527
ノッチ付きアイゾット衝撃試験:ISO180/1A
光沢度
【0039】
試験する各ポリマーの長方形の試験片(55×60×1mm)を10個、射出プレス・バッテエンフェルドBA500CDを用い、以下の条件で射出成型して作製した。
スクリュー速度:120rpm
背圧:10bar
金型温度:40℃
溶融温度:260℃
射出時間:3秒
第一滞留時間:5秒
第二滞留時間:5秒
冷却時間(第二滞留時間後):10秒
射出圧力の値は、上記時間内に金型が完全に充填されるのに充分である必要がある。
【0040】
光沢度計で、測定試験片表面から反射される光線の比率を、60°の入射角で測定した。表IIIに示す値は、それぞれの試験ポリマーの10試験片の平均光沢度に相当する。
【0041】
用いる光沢度計は、入射角を60°に設定した光度計ゼーントナーZGM1020型または1022型である。測定原理は、ASTM−D2457に記載されている。装置の校正は、既知の光沢度を持つ試料を用いて行う。
【0042】
キシレン可溶性画分と不溶性画分
2.5gのポリマーと250cmのキシレンを、冷凍器とマグネチックスターラーを備えたガラスフラスコに入れる。30分かけて温度を溶媒の沸点にまで上げる。次いで、このようにして得られる透明溶液を還流下におき、さらに30分間攪拌する。この閉鎖されたフラスコを30分間氷水浴中に置き、さらに30分間25℃の恒温水槽中に置く。このようにして生成する固体を、急速濾紙で濾過する。100cmの濾液をあらかじめ評量したアルミニウム容器に入れ、これを熱板上で窒素流下で加熱して、溶媒を蒸発させて除く。次いで、この容器を80℃真空ので炉に入れて一定の重量となるまで待つ。次いで、室温でキシレンに可溶なポリマーの重量%を計算する。
【0043】
室温でキシレンに不溶のポリマーの重量%は、このポリマーの結晶可能な部分と考える。この値はまた、実質的に、沸騰n−ヘプタンでの抽出により求めたアイソタクチシティ指数に相当し、これは定義上ポリプロピレンのアイソタクチシティ指数となる。
【0044】
縦方向と横方向の熱収縮
100×200×2.5mmの板を、射出成型機「サンドレット・シリーズ7−190」(190は、締付力が190トンであることを示す)を用いて成型する。
射出条件は次のとおりである。
溶融温度=250℃;
金型温度=40℃;
射出時間=8秒間;
滞留時間=22秒間;
スクリュー径=55mm
【0045】
成型48時間後にこの板をノギスで測定する。収縮率は次式で与えられる。
縦方向の収縮=(200−測定値)/200×100
横方向の収縮率=(100−測定値)/100×100
式中、200は、成型直後に測定される板の縦方向の長さ(mm)である。
100は、成型直後に測定される板の横方向の長さ(mm)である。
測定値は、関係する方向の板の長さである。
【0046】
示差走査熱量分析(DSC)による溶融ピークと溶融エンタルピー(ΔHm)の測定
用いる装置は、パーキンエルマーダイヤモンドDSCである。ポリマー試料を230℃まで10℃/分の速度で加熱し、230℃で5分間窒素流中で維持し、その後、10℃/分の速度で20℃に冷却し、この温度で5分間維持して試料を結晶化させる。次いで、試料をもう一度、加熱速度10℃/分で230℃にまで上げて溶融させる。この溶融スキャンを記録してサーモグラムを得る、これから、100〜130℃の間の最も強いピークの温度と溶融エンタルピーを読み取る。
【0047】
マスターバッチ組成物(I)の調整
3種のマスターバッチ組成物を調整する。重合に用いる固体触媒成分は、欧州特許EP728769の実施例5、48〜55行に記載の、塩化マグネシウムに担持された高立体選択性チーグラー・ナッタ触媒成分である。トリエチルアルミニウム(TEAL)を共触媒として用い、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を外部供与体として用いる。
【0048】
この固体触媒成分を、12℃で24分間、TEALとDCPMSに接触させる。TEALと固体触媒成分の間の重量比とTEALとDCPMSの間の重量比は、それぞれ20と10である。
【0049】
次いで、この触媒系を液体プロピレン中の懸濁液中に20℃で約5分間入れて
前重合させ、次いで第一の重合反応器に投入する。
【0050】
重合
重合は、生成物を一つの反応器から直後の反応器に移動させる手段をもつ連結した二機の反応器中で連続的に行う。第一の反応器は液相反応器であり、第二の反応器は流動床気相反応器である。第一の反応器で成分(A)を製造し、第二の反応器で成分(B)を製造する。
【0051】
成分(A)はプロピレンホモポリマーである、成分(B)はエチレン/ブテン−1コポリマーである。
【0052】
反応期間中は、ずっと温度と圧力を一定に維持する。
【0053】
水素を分子量自動調整剤として用いる。
【0054】
気相(プロピレンとエチレンとブテンと水素)を、ガスクロマトグラフィーで連続的に分析する。
【0055】
重合条件と反応物のモル比、得られるコポリマーの組成を表Iに示す。
【0056】
第二の反応器から出るポリマー粒子を水蒸気処理にかけて、反応性モノマーと揮発性物質を除き、次いで乾燥させる。
【0057】
次いで、このポリマー粒子を回転ドラムに入れ、ここで0.05重量%のパラフィン油ROL/OB30(ASTM−D1298による密度:0.842kg/l(20℃)、ASTM−D97の流動点:−10℃)と、0.15重量%のイルガノックス(R)B215(約34%のイルガノックス(R)1010と66%のイルガフォス(R)168からなる)と、0.04重量%のDHT−4A(ハイドロタルサイト)と混合する。
【0058】
上記のイルガノックス1010は、2,2−ビス[3−[,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)−1−オキソプロポキシ]メチル]−1,3−プロパンジイル−3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパノエートであり、イルガフォス168は、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィットである。
【0059】
次いで、このポリマー粒子を窒素下でスクリューエクストルーダーから200〜250℃の溶融温度で押し出す。
【0060】
表IIに示すポリマー組成物の特徴は、このように押し出されたポリマーを測定して得られたものである。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】

実施例1〜3
上述のようにして調整したマスターバッチ組成物1〜3を、上記条件下で押出して、他の成分と機械的に混合する。これらの例で用いるポリオレフィン成分の比率を、上記ポリオレフィン成分の寄与分を集めて得られる最終組成物の成分A)、B)、C)の量、また上述のMFR対数値の相関関係から計算されたA)のMFR−Lの計算値とともに表IIIに示す。
【0064】
以下のポリオレフィン成分を用いる。
PP−1:MFR−L値が2000g/10分であり、室温でのキシレンへの溶解度が2.3重量%のプロピレンホモポリマー;
PP−2:MFR−L値が2g/10分であり、室温でのキシレンへの溶解度が2.2重量%のプロピレンホモポリマー;
Heco:47.4重量%の、MFR−L値が100g/10分で、室温でのキシレンへの溶解度が3.5重量%であるプロピレンホモポリマーと、
46.9重量%の、70重量%のエチレンを含み、室温でのキシレンへの溶解度が66重量%で、キシレン可溶性の画分の固有粘度が2.5dl/gであるエチレン/プロピレンコポリマーと、5.7重量%の、34重量%のエチレンを含み、室温でのキシレンへの溶解度が90重量%で、キシレン可溶性の画分の固有粘度が2.6dl/gであるエチレン/プロピレンコポリマーとを含むポリオレフィン組成物(異相ブレンド)。
【0065】
上記Heco成分の二つのエチレン/プロピレンコポリマーは、一緒となって本発明の組成物(最終的な組成物)の成分C)を構成する。従って、C)のエチレン含量は66.2重量%であり、C)の室温でのキシレンへの溶解度は69重量%であり、キシレン可溶性の画分の固有粘度は約2.5dl/gである。
【0066】
上記のポリオレフィン成分に加えて、それぞれ成分D)とE)に対応するタルクと核剤が加えられる。
【0067】
用いるタルクD)はネオタルク・インダストリーズ社のネオタルクUN105である。すべての実施例の組成物中のD)の量は、A)+B)+C)の100重量部に対して1重量部である。
【0068】
ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)−ホスフェート(商品名NA11、旭電化工業製)を核剤E)として用いる。すべての実施例の組成物中のE)の量は、A)+B)+C)+D)の100重量部に対して0.2重量部である。
【0069】
このようにして得られた最終組成物の性質を表IIIに示す。
【0070】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
すべて重量%で表して、
A)50から85%の、プロピレンホモポリマー、他のα−オレフィンとのプロピレンコポリマー、またはこれらの組み合わせを含むポリプロピレン成分であって、少なくとも85重量%のプロピレンを含み、MFR−L値が100g/10分以上で、室温でのキシレンへの溶解度が20重量%未満であるものと;
B)3〜20%の、エチレンと一種以上のC−C10−α−オレフィンとのコポリマーであって、
15〜35重量%のC−C10−α−オレフィンを含み、室温でのキシレンへの溶解度が50重量%より大きく、キシレン可溶性の画分の固有粘度が好ましくは2.5〜4dl/gであるものと;
C)10〜35%の、エチレンのプロピレンとの一種以上のコポリマーからなり、必要なら0.5〜5重量%のジエンを含むコポリマー成分であって、エチレン含量が60重量%以上であり、室温でのキシレンへの溶解度が50重量%より大きく、キシレン可溶性の画分の固有粘度が好ましくは2〜4dl/gであるものと;を含むポリオレフィン組成物であって、
A)とB)とC)の量が、A)+B)+C)の総重量に対する値であり、B)中のエチレン含量BとC)中のエチレン含量Cの重量比B/Cが1.4以下で、その下限が好ましくは0.8であるポリオレフィン組成物。
【請求項2】
さらにA)+B)+C)の100重量部に対して0.3〜5重量部の鉱物系充填材D)を、好ましくはタルクを含む請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項3】
さらにA)+B)+C)と必要ならD)の100重量部に対して0.01〜0.5重量部の核剤E)を含む請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項4】
MFR−L値が10g/10分以上、好ましくは15g/10分以上、より好ましくは20g/10分以上である請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項5】
成分B)の室温でキシレン不溶性の画分(XI)の比率が、以下の式:

(XI)<1.14×B−34

(式中、Bは成分B)中の、Bの重量に対する重量%で表したエチレンの量である)を満たす請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項6】
すべて重量%で表して、
)60から85%の、プロピレンホモポリマー、他のα−オレフィンとのプロピレンコポリマー、またはこれらの組み合わせを含むポリプロピレン成分であって、少なくとも85重量%のプロピレンを含み、MFR−L値が20g/10分以上であり、室温でのキシレンへの溶解度が20重量%未満であるものと;
)15〜40%の、エチレンと一種以上のC−C10−α−オレフィンのコポリマーであって、15−35重量%のC−C10−α−オレフィンを含み、室温でのキシレンへの溶解度が50重量%を超え、キシレン可溶性画分の固有粘度が2.5〜4dl/gであるものとからなる組成物。
【請求項7】
MFR−L値が2g/10分以上である請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
100〜130℃の間の温度で検出できるDSC溶融ピークのΔHmが1J/g以上である請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
MgClに担持されたチーグラー・ナッタ触媒の存在化での重合で得られる請求項5〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のポリオレフィン組成物の製造方法であって、すべて重量%で表して、A)60から85%の、プロピレンホモポリマー、他のα−オレフィンとのプロピレンコポリマー、またはこれらの組み合わせを含むポリプロピレン成分であって、少なくとも85重量%のプロピレンを含み、MFR−L値が20g/10分以上であり、室温でのキシレンへの溶解度が20重量%未満であるものと;
)15〜40%の、エチレンと一種以上のC−C10−α−オレフィンのコポリマーであって、15−35重量%のC−C10−α−オレフィンを含み、室温でのキシレンへの溶解度が50重量%を超え、キシレン可溶性画分の固有粘度が2.5〜4dl/gであるものと、
を含むマスターバッチ組成物を他のポリオレフィン成分とメルトブレンドすることからなる製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載のポリオレフィン組成物を含む製造物。
【請求項12】
ドアトリムの形の請求項9に記載の製造物。

【公表番号】特表2013−515086(P2013−515086A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543596(P2012−543596)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069017
【国際公開番号】WO2011/076553
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【出願人】(312014719)サンアロマー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】