説明

肥満の治療において有用である、シーナラ・スコリムスおよびフェセオラス・ブルガリスの抽出物を含む組成物

本発明は、カフェオイルキナ酸の含量が高いシーナラ・スコリムス抽出物、およびそのシーナラ・スコリムス抽出物をフェセオラス・ブルガリス抽出物と共に含む組成物に関する。前記組成物は、細胞をインスリン感受性にすることによりコレステロール、トリグリセリドおよび血糖を低下させるので肥満の減少に有用する。この組み合わせは、食事前に摂取すると、食欲を低下させ、体重の低下につながる。この抽出物は、好ましくは、オエノセラ・ビエニス油、魚油、または不飽和ω−3脂肪酸に富む油中に調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーナラ・スコリムスの抽出物、好ましくはカフェオイルキナ酸含量の高い抽出物と、フェセオラス・ブルガリスの抽出物とを、1:0.25〜1:1の比で含む組成物に関する。
【0002】
この組成物は、コレステロール、トリグリセリド、血糖および食欲を低下させるので肥満の減少に有用である。
【背景技術】
【0003】
肥満は、特に先進工業国において、最近では主要な健康問題の一つであり、心臓血管および骨格系に深刻な結果をもたらす。
【0004】
炭水化物は、カロリーの重要な供給源であり、肥満またはII型糖尿病の素因のある個人における脂肪の合成に貢献する。高血糖はエネルギー蓄積の増加につながるので、生物学的に利用可能なグルコースを減少させる物質の入手が非常に重要である。澱粉はグルコースの主要な供給源であるので、植物材料から得られるまたは合成により得られる特定のα−グルコシダーゼおよびα−アミラーゼ阻害剤が研究されてきた。一部の種子および豆類は、完全に調理される前に食べると食事に対して悪影響を与え得る物質を含むことが以前から知られていた。多くの豆類は、プロテアーゼ阻害剤、アミラーゼ阻害剤、および、食欲を低下させることにより肉食動物が食べ続ける気を失わせる物質を含む。フィトヘマグルチニンと呼ばれるこられの物質は、高投与量においては膵臓の異常増殖を引き起こし得るが、低投与量においては食欲の制御において有用であり得る。
【0005】
高投与量においては、これらのレクチンは、腸内移動を切り抜け、腸細胞に結合して、そこで、膵臓による分泌を刺激する栄養ホルモンであるコレシストキニンの分泌を引き起こし、結果として膵臓を肥大させる。コレシストキニンは、胃運動性を低下させることにより食欲を低下させるので、好ましい効果も有する。
【0006】
シーナラ・スコリムスの水性または水アルコール性抽出物が、コレステロール低下、胆汁分泌促進および消化不良改善活性を有することが文献から知られている。長年報告されてきているコレステロール低下活性は、2種類の物質、すなわち、ジカフェオイルキナ酸であるシナリン、およびルテオリンから誘導されるフラボノイドに関係し、これらは、試験管内で、肝臓中のコレステロール合成を抑制することが示されている。活性の一部は、シーナラ・スコリムス抽出物に特異的である胆汁分泌促進活性に関係している。シーナラ・スコリムスの抽出のプロセスが、WO 2007/006391に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2007/006391
【発明の概要】
【0008】
シーナラ・スコリムス抽出物とフェセオラス・ブルガリス抽出物とを組み合わせることにより、投与量と比例する体重減少への驚くべき効果が得られることが今回発見され、ラットにおけるデータは、体重減少への効果が、単に血中グルコース値の低下に関係するのみならず、食料消費の明確な低下にも関係することを示唆した。種々の薬理学的実験は、食事制限されていないにも拘わらずこのように食料摂取が低下することは、単なる毒性効果に関係するのではなく、食事の願望を変化させることに関係していることを示している。
【0009】
腸および肝臓におけるグルコース移動を変化させることによる脂肪およびグルコースの除去の増加に役立つアーティチョーク抽出物と、澱粉の代謝を低下させる物質との組み合わせは、体重の維持において特に重要であり、その進行を阻止する。
【0010】
本発明により用いることができる抽出物は、WO 2007/006391による抽出物である市販のアーティチョーク抽出物、または、C1〜C3アルコールまたはそれらと水との混合物を用いて未乾燥食用頭部から抽出することにより得ることができる、カフェオイルキナ酸およびルテオリン・グリコシドの含量が高いアーティチョーク抽出物である。
【0011】
シーナラ・スコリムスの未乾燥食用頭部からの抽出は、好ましくは、エタノールまたはエタノール/水混合物、特にエタノール/水の体積比7:3の混合物を用いて行われる。精製後、カフェオイルキナ酸および、ルテオリン・グリコシドとして表わされるフラボノイドの含量が高いことにより既知の抽出物と相違する抽出物が得られる。この抽出物は、血糖低下活性も有する。この抽出物は、種々のグローブ・アーティチョーク品種から、好ましくは有刺種から、より好ましくはサルジニア有刺種から調製することができる。
【0012】
好ましいアーティチョーク抽出物は、カフェオイルキナ酸含量が30〜60%、好ましくは約45%であり、ルテオリングリコシドとして表わされるフラボノイドの含量が2〜5%、好ましくは約2.5%である。
【0013】
市販の抽出物をフェセオラス・ブルガリス抽出物として用いることができるが、PCT/EP2006/012012に記載のフェセオラス・ブルガリス抽出物が好ましい。前記抽出物は、エタノールと水との混合物を用いてフェセオラス種から抽出することにより得られ、α−アミラーゼ阻害剤含量が1200〜1600USP/mg(HPLC滴定量7〜14重量%)であり、フィトヘマグルチニン含量が12000〜30000HAU/gであることを特徴とする。前記抽出物は、以下の工程を含むプロセスにより得ることができる。
【0014】
a)pH範囲が3〜6.5である水性緩衝液を用いてフェセオラス種を抽出し、続いて、バイオマスから抽出物を分離する:これは、場合により、α−アミラーゼおよびフィトヘマグルチニン阻害剤が無くなるまで緩衝液でさらに抽出することができる;
b)合わせた抽出物を濾過または遠心分離し、遠心分離後の出発抽出物のバイオマスの重量の約10%に相当する体積まで濃縮する;
c)濃縮された水性抽出物を、希エタノールを用いて、60〜70体積%の最終濃度となるまで、分別沈殿させる;
d)沈殿を分離し、60%エタノールを用いて脱塩水から再沈殿させる、または10000Daカットオフの膜上でダイアフィルトレーションし、沈殿残渣を乾燥する。
【0015】
1:0.25〜1:1の比の2つの抽出物の組み合わせは、シーナラ・スコリムス抽出物については投与当たり50〜500mgの範囲、好ましくは200mg、およびフェセオラス・ブルガリス抽出物については投与当たり50〜200mgの範囲、好ましくは100mgを含み、食事前または炭水化物に富む食事を食べる時に摂取すべきである。
【0016】
本発明による組成物の血糖低下活性は、2つの成分単独での血糖低下活性よりも驚くほど優れている。Tormo MA et al., Br. J. Nutr. 96, 539, 2006に記載の方法により得られる結果を、表に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
本発明による組成物は、錠剤、糖衣錠、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、およびセルロースカプセルのような薬物製剤に組み込むのに適している。この抽出物は、好ましくは、オエノセラ・ビエニス(待宵草)油のような多不飽和ω3/ω6酸に富む油中で調製される。
【0019】
実験室動物において観察されたものと同様の結果が、ヒトにおいて、1日当たり50〜1000mgの範囲の投与量で確認された。
【0020】
以下の実施例により、本発明を詳細に説明する。
【0021】
(実施例1)
シーナラ・スコリムス有刺種の抽出物の調製
収穫時に刻み凍結したシーナラ・スコリムス頭部(サルジニア有刺種)2kgを、加熱ジャケットを備えたパーコレーターに仕込み、95℃のEtOHの4760mlで覆い、アルコール含量を約70%とした(植物中の水含量は85%と推定される)。70℃で3時間接触させ、次に、取り出した。その後の抽出において、70℃でEtOH70体積%で抽出し、植物を覆い、最短接触時間3時間とした。溶媒約15リッターを用いて、合計5回抽出した。
【0022】
浸透物(percolate)を併せ35℃で減圧下に乾燥残渣約15%まで濃縮した。
【0023】
周囲温度で放冷し、不溶性フラクションを分離し、XAD-7 HP樹脂530mlを充填したカラムに、透明水溶液を仕込んだ。
【0024】
最初に水530mlでカラムを洗い(溶離物を除去)、次に90%EtOHの1325mlで洗った。水エタノール性溶離物を濃縮し、減圧下に50℃で24時間乾燥した。精製抽出物18.59gが得られる。HPLC滴定:カフェオイルキナ酸 49.13%、フラボノイド2.68%
(実施例2)
シーナラ・スコリムスおよびフェセオラス・ブルガリス抽出物をソフトゼラチンカプセル用の油性懸濁液として調製
(単位組成):
シーナラ・スコリムス抽出物 100mg
フェセオラス・ブルガリス抽出物 100mg
モノステアリン酸グリセリル 30mg
大豆レクチン 10mg
オエノセラ・ビエニス油適量 700mg
(製造プロセス)
・オエノセラ・ビエニス油を約70℃に加熱し、撹拌下にモノステアリン酸グリセリルをその中に溶融する;
・得られた溶液に大豆レシチンを加える;
・得られた溶液にシーナラ・スコリムスおよびフェセオラス・ブルガリス抽出物を分散させて、均一分布を確保する;
・得られた溶液を、撹拌しつつ、徐々に冷却する。
【0025】
(実施例3)
シーナラ・スコリムスおよびフェセオラス・ブルガリス抽出物をハードゼラチンカプセルとして調製
(単位組成):
シーナラ・スコリムス抽出物 150mg
フェセオラス・ブルガリス抽出物 50mg
微結晶性セルロース 200mg
ラクトース 95mg
二酸化ケイ素 5mg
(製造プロセス)
・抽出物、微結晶性セルロース、ラクトースおよび二酸化ケイ素を混合する;
・得られた混合物を、ハードゼラチンカプセル間に分ける;
(実施例4)
シーナラ・スコリムスおよびフェセオラス・ブルガリス抽出物を放出調節顆粒として調製
(単位組成):
シーナラ・スコリムス抽出物 100mg
フェセオラス・ブルガリス抽出物 50mg
微結晶性セルロース 100mg
ポビドン 10mg
カルボキシメチルセルロースナトリウム 8mg
メタクリル酸コポリマー 50mg
クエン酸トリエチル 3.2mg
タルク 8mg
シメチコン 0.3mg
(製造プロセス)
・抽出物、微結晶性セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムを、ポビドンの水溶液を用いて顆粒化する;
・得られた顆粒を乾燥し、測定する;
・メタクリル酸コポリマー、クエン酸トリエチル、タルクおよびシメチコンの水性懸濁液を用いて、顆粒を被覆する。
【0026】
(実施例5)
シーナラ・スコリムスおよびフェセオラス・ブルガリス抽出物を即効型顆粒として調製
(単位組成):
シーナラ・スコリムス抽出物 100mg
フェセオラス・ブルガリス抽出物 50mg
微結晶性セルロース 100mg
ポビドン 10mg
カルボキシメチルセルロースナトリウム 8mg
(製造プロセス)
・抽出物、微結晶性セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムを、ポビドンの水溶液を用いて顆粒化する;
・得られた顆粒を乾燥し、測定する;
(実施例6)
異なる放出プロフィールを有するシーナラ・スコリムスおよびフェセオラス・ブルガリス抽出物顆粒の混合物
(製造プロセス)
・実施例4に記載の顆粒の50%と、実施例5に記載の顆粒の50%とを混合する;
・得られた混合物を、ハードゼラチンカプセル間に分ける。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーナラ・スコリムス(Cynara scolymus)の抽出物と、ファセオラス・ブルガリス(Phaseolus vulgaris)の抽出物とを1:0.25〜1:1の比で含む組成物。
【請求項2】
前記シーナラ・スコリムス抽出物は、カフェオイルキナ酸含量が30〜60%であり、ルテオリングリコシド含量が2〜5%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記フェセオラス・ブルガリス抽出物は、α−アミラーゼ阻害剤含量が1200〜1600USP/mg(HPLC滴定量7〜14重量%)であり、フィトヘマグルチニン含量が12000〜30000HAU/gであることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
さらにオエノセラ・ビエニス油を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
血糖低下および抗肥満作用を有する医薬の調製のための、請求項1〜4に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2010−520246(P2010−520246A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552122(P2009−552122)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001787
【国際公開番号】WO2008/107184
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(591092198)インデナ エッセ ピ ア (52)
【Fターム(参考)】