説明

肥満または高脂血症の予防及び治療用の組成物、ならびに、肥満、高脂血症、または心循環系疾患の予防及び改善用の健康機能性食品

血中脂質改善効果と抗肥満効果を有するダルマギクの地上部抽出物の製造方法及びこれから得られる抽出物を含有する組成物を提供する。本発明によるダルマギクの地上部抽出物は、血中脂質改善効果と抗肥満効果を有するゲルマクロン、α−スピナステロール配糖体などのテルペン系化合物の含量を大幅に増やし、ダルマギクに本来多量含有されている塩、不安定して空気の酸化を受け易いフェノ−ル性化合物、粘液性物質をほとんど除去することにより血中脂質改善効果と抗肥満効果を高めると共に、高脂血、肥満による動脈硬化症、心循環系疾患、脳血栓疾患、肝疾患、血栓症、高脂血症、糖尿病などを予防または治療することを補助する機能性食品として使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、血中脂質改善効果と抗肥満効果を有する新規なダルマギクの地上部抽出物(Extract of Aster Spathulifolius Aerial Part:EASAまたはAE−B)の製造方法及びダルマギクの地上部抽出物を有効成分として含有する組成物に係り、さらに詳しくは、血中脂質改善と抗肥満の作用を有するダルマギクの地上部抽出物を有効成分として含有することにより、動脈硬化症、心循環系疾患、脳血栓疾患、肝疾患、血栓症、高脂血などの疾患を予防し、または、治療を補助するための組成物または機能性食品に関する。
【0002】
〔背景技術〕
肥満とは、エネルギーの摂取がエネルギーの消費よりも多くて過剰になったカロリーが脂肪組織に蓄積されて代謝性不均衡が長期間続くことをいい、高脂血症、高血圧、関節炎、膽石症、糖尿病、心筋梗塞症、乳房ガン、脂肪肝などの成人病発生の危険因子として働く。
【0003】
韓国の場合、1970年には総熱量の7.3%に過ぎなかった脂肪摂取量が、1995年には18.8%へと急増し、2005年には25%に至ることが予測されている。このような脂肪の摂取量の増大に起因する疾病の様相は、肥満、脳卒中、動脈硬化、高血圧、糖尿病などの各種の慢性疾患の増大として現われ、特に、心臓循環系疾患の増大は主な死因の一つとなっている。
【0004】
2001年の韓国の統計庁の資料によれば、死亡者の死亡原因は、ガン、脳血管、心臓、糖尿及び肝疾患の順である。特に、心血管系疾患、脳血管疾患、動脈硬化症、血栓症などの循環器系疾患が主な死亡原因として挙げられており、循環器系疾患による死亡者の42%が肥満であることが報告されており、肥満は成人病の発生に深く関連していると知られている。
【0005】
このような視点から、現代人の高カロリー、高脂肪の摂取は血中のコレステロール含量を増やすことにより、動脈のプラグの形成を促して心血管系疾患の発生を増大させると言える。このため、血液中のこれらの脂質レベルを下げるための医薬品や自然食品に関する研究が盛んになされている。近年、生理活性を持った機能性食品への関心が高まる一方で、抗肥満効果を示す食品素材を探るための研究が国内外において盛んになされている。
【0006】
ダルマギク(Aster spathulifolius)は、葉は対生するキキョウ目キク科の多年草であり、海菊とも呼ばれる。茎は多少木質化が進んで枝分かれが多く、斜めに生長して草丈30〜60cmとなる。葉は互生するが、倒卵状楕円形で枝の先に根生状に多くつけ、厚目の多肉質である。両面に軟毛が密生して白く見え、葉の周辺は平べったいか多少の鋸があり、へら状である。花は、7〜11月に咲き、淡紫色であり、枝の先に頭花がつく。総苞は半球状であり、苞片には毛があり、3列に並ぶ。果実は11月に成熟し、冠毛は薄い褐色であり、強毛である。
【0007】
ダルマギクは薬用としての使用経験があるという研究結果が未だ報告されてはいないものの、民間においては幼葉を食用に、全草を糖尿病、膀胱炎などに使用しており、冬にも枯れない強靭な生命力と木質化する特性を活かして観賞用の盆栽にすることもある(例えば、下記の非特許文献1参照)。
【0008】
ダルマギクの成分に関する研究は、全草のラブダ−7、14−ジエン−13(R)−オル−4−O−アセチル−α−L−6−デオキシイドピラノシド(labda-7、14-dien-13(R)-ol-4-O-acetyl-α-L-6-deoxyidopyranoside)やラブダ−7、14−ジエン−13(R)−オル−α−L−6−デオキシイドピラノシド(labda-7、14-dien-13(R)-ol-α-L-6-deoxyidopyranoside)などのテルペン配糖体、花の色素などに留まっており、その他のダルマギクの成分に関する研究は皆無であるのが現状である。
【0009】
〔非特許文献1〕デゥサン世界大百科Encyber
〔発明の開示〕
〔発明が解決しようとする課題〕
ダルマギクの地上部(全草)を民間において糖尿病に活用していることに着目し、本発明者は、ダルマギクの成分分離と並行して高脂肪食餌により誘導した肥満白ねずみにおいてダルマギクのエキス及び精製された成分が血中脂質改善効果と共に抗肥満効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、血中脂質改善効果と抗肥満効果を有する新規なダルマギクの地上部抽出物の製造方法及びこれから得られるダルマギクの地上部抽出物を有効成分として含有する心血管系疾患、高脂血症の予防及び治療用の組成物または機能性食品を提供することを目的とする。
【0011】
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、ダルマギクの地上部の乾燥粉末を水を使って室温下で洗浄して脱水する第1の段階と、前記第1の段階において得られたダルマギクの地上部の乾燥粉末を溶媒に溶かして抽出液を得る第2の段階とを含むダルマギクの地上部抽出物の製造方法を提供する。
前記製造方法に加えて、本発明は、ダルマギクの地上部から抽出されたテルペン系化合物を含む抗肥満及び脂質状態改善用の組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、ダルマギクの地上部抽出物と、機能性食品学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤をさらに含み、抗肥満及び脂質状態を改善して心循環系疾患の予防及び治療を補助する健康機能性食品を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、抗肥満及び脂質状態を改善させ、心循環系疾患を予防すると共に、治療を補助するテルペン系化合物を含むダルマギクの地上部抽出物の用途を提供する。
【0014】
本発明のダルマギクの地上部抽出物は、ゲルマクロン、α−スピナステロール及びその配糖体、α−及びβ−アミリン、ラブダジエノール系配糖体などのテルペン系化合物を80%以上含有していると分析され、このようなテルペン系化合物を含んでいるダルマギクの地上部抽出物は、血中脂質改善及び抗肥満という作用を通じて高脂血と肥満を予防または治療するのに役立つものであることが確認された。また、本発明は、高脂血及び肥満と関連する動脈硬化症、心循環系疾患、脳血栓疾患、肝疾患、血栓症、糖尿病などの予防及び治療を補助する食品として使用可能である。
【0015】
以下、本発明のダルマギクの地上部の抽出精製物の製造方法、これを含有する抗肥満及び脂質状態改善用の組成物及びその用途について詳述する。
【0016】
本発明のダルマギクの地上部の抽出精製物の製造方法は、ダルマギクの地上部の乾燥粉末を水を使って室温下で洗浄して脱水する第1の段階と、前記洗浄済みのダルマギク地上部の乾燥粉末を溶媒に溶かして抽出液を得る第2の段階と、を含む。
【0017】
さらに詳しくは、前記第1の段階における洗浄は、室温下で乾燥されたダルマギクの地上部の乾燥粉末をその重量の約5〜20倍、好ましくは、約10〜15倍の重量の水を使って室温〜100℃、好ましくは、室温下で約1時間〜12時間、好ましくは、2時間〜3時間かけて循環洗浄、超音波洗浄、またはパーコレイション洗浄することにより行われる。特に、循環洗浄を1回〜5回、好ましくは、2回〜4回繰り返し行うことが好ましい。
【0018】
また、前記第1の段階において洗浄されて脱水されたダルマギクの地上部の乾燥粉末100重量部に対して5〜20重量部のアルコール、約3:7〜1:20の混合比(v/v)を有する水とアルコールとの混合溶媒、または、約1:1の混合比を有するn−ヘキサンとアルコールとの混合溶媒を第2の段階における溶媒として使用することができる。前記アルコールは、90%エタノールであることが好ましい。
【0019】
第2の段階においては、前記溶媒を使って室温〜100℃、好ましくは、約85〜100℃下、1時間〜12時間、好ましくは、2時間〜5時間かけて還流冷却抽出を行うか、または、1日〜7日間パーコレイション抽出を行うことによりダルマギクの地上部抽出物を得ることが好ましい。前記抽出工程は1回〜5回繰り返し行うことが好ましく、特に、3回〜4回繰り返し行うことが好ましい。
【0020】
さらに、前記第2の段階に続いて、抽出液をろ過、減圧濃縮及び乾燥して精製物を得るように処理(第3の段階)することが好ましい。
【0021】
前記第1の段階において血中脂質改善効果及び抗肥満効果を示さないカフェオイルキナ酸及びその誘導体、タンニン、塩などが前記第2、第3の段階を経てほとんど除去され、前記第2の段階において得られる精製物を血中脂質改善効果及び抗肥満活性成分として使用することができる。
【0022】
前記抽出方法により得られる抽出精製物は、血中脂質改善効果及び抗肥満効果を示す成分の含量が増大され、変化し易い化合物と本来ダルマギクに多量含有されている塩など副作用を引き起こし、または、血中脂質改善効果及び抗肥満効果を示さない成分が除去されていることを特徴とする。特に、前記方法により得られるダルマギクの抽出精製物は、血中脂質改善効果及び抗肥満効果を示すが、これは、ダルマギクから最初に分離されたテルペン系成分のためであると見られる。
【0023】
ここで、テルペン系成分とは、ゲルマクロン(germacron, 本願においては、AE−1と略称する。)、α−スピナステロール配糖体(α-spinasterol-O-β-D-glucopyranoside、本願においては、ABPと略称する。)、α−スピナステロール、α−及びβ−アミリン(α−,β−amyrin)、ラブダン系テルペンとしてのラブダ−7、14−ジエン−13(R)−オル−β−フコピラノシド(labda-7,14-dien-13(R)-ol-β-fucopyranoside; 新規化合物)などを意味するものであり、これらのテルペン系化合物は、ダルマギク抽出精製物の80.0〜99.6重量%を占める。
【0024】
前記テルペン系化合物の他にも、カフェオイルキナ酸系成分としての4、5−ジカフェオイルキナ酸(4,5-dicaffeoylquinic acid)とメチル4、5−ジカフェオイルキナート(methyl 4,5-dicaffeoylquinate)が0.3%以下含有されており、また、副作用を引き起こしうる成分としての塩は0.1%以下しか含有されていない。
【0025】
詳しくは後述するが、ダルマギクの地上部抽出物は、抗肥満及び脂質状態改善用の組成物の有効成分として使用して好適なものであり、この場合、ダルマギクの地上部から抽出されたゲルマクロンと、α−スピナステロール及びその配糖体と、α−またはβ−アミリンと、ラブダジエノール系配糖体とからなる群より選ばれるいずれか1種以上のテルペン系化合物を含む限り、その効能を得ることができる。
【0026】
本発明の他の態様として、本発明は、上記の抽出方法により精製されたダルマギクの地上部抽出物を有効成分として含有し、食品学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤または芳香剤を含むと共に、血中脂質及び肥満を予防する健康機能性食品を提供する。
【0027】
本発明の抽出方法により精製されたダルマギクの地上部抽出物を高脂肪食餌により誘導した肥満実験動物に対して投与した結果、血中脂質改善効果及び抗肥満効果があることが確認された。これは、ダルマギクの地上部抽出物が、エネルギー摂取がエネルギー消費よりも多くて過剰になったカロリーが脂肪組織に蓄積されて代謝性不均衡が長期間続くことに起因する高脂血症、高血圧、関節炎、膽石症、糖尿病、心筋梗塞症、脂肪肝などの成人病の予防及び治療のための機能性食品として利用可能であることを示唆する。
【0028】
また、前記ダルマギクの地上部抽出物は毒性及び副作用がないため、予防の目的で長期間服用するときにも安心して使用することができる。
【0029】
本発明の抗肥満及び脂質状態改善用の機能性食品において、ダルマギクの地上部抽出物の含量は、合計の組成物重量の0.1〜60重量%であることが好ましい。というのは、ダルマギクの地上部抽出物の含量が低すぎると、肥満及び脂質状態を改善する効果があまり発現できず、その一方、ダルマギクの地上部抽出物の含量が高すぎると、溶解度の問題が発生する可能性があり、抽出物のさらなる投与による効果の向上があまり得られないためである。
【0030】
本発明の機能性食品に使用可能な担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ジェラチン、カルシウムフォスファート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニールピロリドン、水、メチヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク及びマグネシウムステアレートが挙げられる。
【0031】
機能性食品の剤形は、それぞれ通常の方法に従い、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップなどの経口形に製剤化して使用することができ、特に、錠剤であることが好ましい。
【0032】
製剤化に際しては、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製することができる。経口投与のための固形製剤には錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、これらの固形製剤は、前記ダルマギクの地上部抽出物に少なくとも1以上の賦形剤、例えば、澱粉、カルシウムカーボネート、スクロース、ラクトース、ジェラチンなどを混ぜて調製することができる。
【0033】
また、単純な賦形剤に加えて、マグネシウムステアレート、タルクなどの潤滑剤も使用することができる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが挙げられるが、頻繁に使用する単純希釈剤としての水に加えて、種々の賦形剤、例えば、湿潤剤、感味剤、芳香剤、保存剤などを使用することもできる。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水生溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤及び座剤が含まれる。
【0034】
本発明のダルマギクの地上部抽出物は、服用者の年齢、性別、体重によるが、通常、0.01〜500mg/kgの量、好ましくは、0.1〜100mg/kgの量を一日につき1回〜数回に分けて投与することができる。また、そのダルマギクの地上部抽出物の投与量は、投与経路、疾病の重軽、性別、体重、年齢などに応じて増減可能である。すなわち、前記投与量は、本発明の範囲に限定されるものではない。
【0035】
本発明の機能性食品は、ラット、マウス、家畜、人間などの哺乳動物に投与可能である。本発明のダルマギク抽出物は毒性及び副作用がないため、予防の目的で長期間服用するときに安心して使用することができる。
【0036】
〔発明の効果〕
本発明によるダルマギクの地上部抽出物は、高脂肪食餌を給与したねずみの重量、体脂肪重量、血中脂質と肝脂質の数値、総コレステロール、遊離脂肪酸の含量、血中レプチン、インスリンなどを有意的に低減させ、かつ、PPARγとUCP遺伝子のmRNA発現を増大させるなどの作用を通じて血中脂質状態を改善し、且つ、肥満を抑制するといった効果がある。また、本発明の新規なダルマギクの地上部抽出物の製造方法は、工程が極めて簡単であり、製造コストが安価である他、ダルマギクに本来多量含有されている塩、不安定して酸化を受け易いフェノ−ル性化合物、粘液性物質などをほとんど除去して有効成分としてのテルペンの含量を大幅に高めることができる。本発明の新規なダルマギクの地上部抽出物を有効成分として含有する組成物は、高脂血、肥満により発病する心循環系疾患、動脈硬化症、脳血栓疾患、肝疾患、血栓症、高脂血症、糖尿病などの予防及び治療を補助する機能性食品の原料として利用可能である。
【0037】
〔発明を実施するための最良の態様〕
以下、本発明を下記の実施例及び実験例を挙げて詳しく説明する。但し、下記の実施例及び実験例は単に本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例及び実験例により限定されるものではない。
【0038】
[実施例1.ダルマギク抽出物の製造]
水を用いたダルマギク地上部の洗浄
ダルマギクは、韓国の済州道において10月〜12月頃に採取したものであり、ダルマギクの地上部を室温において乾燥して粉末にした後、4寸の篩を通過した粉末を使用した。ダルマギクの地上部の乾燥粉末10kgに精製水100Lを加えて室温下で循環洗浄、脱水し、洗浄液を捨てた。次いで、前記洗浄、脱水過程を2回さらに繰り返し行った。このとき、最後の洗浄液中の塩素イオンの濃度は10ppm以下にした。
【0039】
ダルマギクの地上部抽出物の製造
前記洗浄済みのダルマギクの地上部の乾燥粉末に1:10の混合比(v/v)を有する水とアルコールとの混合溶媒100Lを加え、約85〜100℃下、2〜5時間かけて還流冷却法により抽出し、抽出液をろ紙に通させてろ過した。前記抽出過程をさらに2回繰り返した後、ろ液を減圧濃縮して乾燥させ、油状のダルマギクの地上部抽出物(AE−B)503gを得た。
【0040】
[実施例2.剤形による製造例]
散剤の製造
実施例1のダルマギクの地上部の抽出物の乾燥粉末20mg、乳糖100mg、タルク10mgを混合し、気密布に充填して散剤を製造した。
錠剤の製造
実施例1のダルマギクの地上部の抽出物の乾燥粉末20mg、トウモロコシ澱粉100mg、乳糖10mg、ステアリン酸マグネシウム2mgを混合した後、通常の錠剤の製造方法により打錠して錠剤を製造した。
【0041】
カプセル剤の製造
実施例1のダルマギクの地上部の抽出物の乾燥粉末20mg、トウモロコシ澱粉100mg、乳糖100mg、ステアリン酸マグネシウム2mgを通常のカプセル剤の製造方法に従い混合し、これをジェラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0042】
液剤の製造
実施例1のダルマギクの地上部の抽出物の乾燥粉末200mg、ソルビトール20mg、CMC10mg、レモン香り残部、精製水を入れて全量1000mlにした。通常の液剤の製造方法に従い上記の成分を混合した後、褐色瓶に充填して滅菌させて液剤を製造した。
【0043】
[実験例1.実施例1の洗浄液からの成分同定]
前記実施例1の1次洗浄液から10Lを取り、これを60℃以下において約0.5Lになるまで減圧濃縮し、濃縮液を凍結乾燥して褐色の粉末95gを得た。得られた粉末にメタノール1Lを加えてメタノール可溶性物質とメタノール不溶性物質をそれぞれ17gと76g得た。メタノール不溶性物質はほとんどが塩と粘液性物質であった。メタノール可溶性物質17gをクロロホルム、メタノール、水混合溶媒(5:1:0.1)を使ってシリカゲルにおいてカラムクロマトグラフィを行い、化合物1と2をそれぞれ0.98gと0.06g得、化学構造を同定した結果、化合物1は、メチル4、5−ジカフェオイルキナート、化合物2は4、5−ジカフェオイルキナ酸であった。
【0044】
化合物1(メチル4、5−ジカフェオイルキナート)
EI-MS m/z: 530(C26H26O12) ; [α]25D=-213; IR(KBr)υmax(cm-1) : 3368, 1701; 1H-NMR(CDCl3): 2.08(1H, dd, J=13.8, 6.6 Hz, 2-CH2e), 2.32 (1H, dd, J=13.8, 3.6 Hz, 2-CH2a), 4.34(1H, ddd, J=6.6, 3.6, 3.3 Hz, 3-CH), 5.01 (1H, dd, J=8.1, 3.3 Hz, 4-CH), 5.53(1H, dt, J=8.1, 5.4 Hz, 5-CH), 2.18~2.32 (2H, m, 6-CH2), 3.71(3H, s, 7-OCH3), 7.02(1H, d, J=2.1 Hz, 2'-CH), 7.00(1H, d, J=2.1 Hz, 2''-CH), 6.75(2H, d, J=8.4 Hz, 5'-,5''-CH), 6.92(1H, dd, J=8.4, 2.1 Hz, 6'-CH), 6.91(1H, dd, J=8.4, 2.1 Hz, 6''-CH), 7.60(1H, d. J=15.9 Hz, 7'-CH), 7.50(1H, d, J=15.9 Hz, 7''-CH), 6.29(1H, d, J=15.9 Hz, 8'-CH), 6.16(1H, d, J=15.9 Hz, 8''-CH).。
【0045】
化合物2(4、5−O−ジカフェオイルキナ酸)
EI-MS m/z: 516(C25H24O12); mp 192-194℃; [α]25D=-170; IR(KBr)υmax(cm-1) : 3400, 1700, 1610, 1530, 1290, 990, 820; 1H-NMR (CDCl3): 2.10(1H, dd, J=14.4, 4.2 Hz, 2-CH2e), 2.29(1H, dd, J=14.4, 3.0 Hz, 2- CH2a), 4.36 (1H, ddd, J=4.2, 3.3, 3.0 Hz, 3-CH), 5.11(1H, dd, J=9.0, 3.3 Hz, 4-CH), 5.61(1H, dt, J=9.0, 5.1 Hz. 5-CH), 2.18~2.23(2H, m, 6-CH2), 7.02(1H, d, J=2.1 Hz, 2'-CH), 7.00(1H, d, J=2.1 Hz, 2''-CH), 6.73(1H, d, J=8.4 Hz, 5'-CH), 6.74(1H, d, J=8.4 Hz, 5''-CH), 6.90(1H, d, J=8.4, 2.1 Hz, 6'-CH), 6.91(1H, dd, J=8.4, 2.1 Hz, 6'-CH), 6.91(1H, dd, J=8.4, 2.1 Hz, 6''-CH), 7.59(1H, d, J=15.9 Hz, 7'-CH), 7.51(1H, d, J=15.9 Hz, 7''-CH), 6.28(1H, d, J=15.9 Hz, 8'-CH), 6.18(1H, d, J=15.9 Hz, 8''-CH).。
【0046】
[実験例2.新規なダルマギクの地上部抽出物の有効成分分離]
前記実施例1に従い製造された新規なダルマギク地上部抽出物(AE−B)の有効成分の分離を図1の方法と同様にして行った。図1に示すように、新規なダルマギクの地上部抽出物100gにクロロホルム1Lを加えて懸濁させ、室温に一晩放置してろ過した。クロロホルム難溶性分画をクロロホルムにより少量ずつ3回洗浄して乾燥させた後、難溶性分画物(ABP)と可溶性分画物(AE−C)を得た。次いで、クロロホルムろ液及び洗浄液を合わせてシリカゲル200gのカラムに加え、クロロホルムを溶媒としてクロマトグラフィを繰り返し行い、AE−1(1.8g)、AE−2(20mg)、AE−3(200mg)、AE−4(10mg)、AE−5(350mg)の順に溶出物を得た。次いで、クロロホルムとメタノールとの混合溶媒(50:1)により溶出して、さらにABP(1.25g)を得た。
【0047】
2−1.ABPの化学構造(α−スピナステロール3−O−β−D−グルコピラノイド)
Mp: 292-294℃; EI-MS m/z: 574(M+-C35H58O6), 395(M+-C6H11O6) ; IR(KBr)υmax(cm-1):3389, 1074, 1032, 970, 829; 1H-NMR(CDCl3+CD3OD)δ: 0.57(3H, s, 18-CH3), 0.71(3H, s, 19-CH3), 0.84(3H, d, J=6.3 Hz, 29-CH3), 0.88(3H, d, J=7.2 Hz, 26-CH3), 0.89(3H, d, J=6.6 Hz), 1.06(3H, d, J=6.6 Hz, 21-CH3), 5.02(1H, d, J=7.5 Hz, anomeric H).。
【0048】
2−2.AE−1(ゲルマクロン)
Mp: 51-52℃; [α]25D-24 (c=1, methanol); EI-MS m/z: 218(M+,C15 H12O); IR(KBr)υmax(cm-1):1672, 1443, 1385, 1289, 1178, 1134, 858, 812; UV(MeOH)λmax nm(logε): 217.5(4.03); 1H-NMR(CDCl3)δ: 4.97(1H, dd, J=10.5, 10 Hz, 2-CH), 2.35(1H, m, 3-CH2), 2.08(1H, m, 3-CH2), 2.10 (2H, m, 4-CH2), 4.70(1H, ddd, J=10.5, 3.0, 1.0Hz, 6-CH) ,2.90(2H, m, 7-CH2), 2.95(1H, d, 10-CH2O), 3.40(1H, d, J=10.5 Hz, 10-CH2O), 1.76(3H, s, 12-CH3), 1.71(3H, s, 13-CH3), 1.61(3H, t-like, 14-CH3), 1.42(3H, t-like, 15-CH3).。
【0049】
2−3.AE−2(α−及びβ−アミリン)
Mp: 168℃; [α]20D, 8.8(c=0.2, methanol); EI-MS m/z: 426(M+, C30H50O); IR(KBr)υmax(cm-1):3293, 1650, 1385, 1359, 1036; 1H-NMR (CDCl3)δ: 3.20(2H, m, 3-CH), 5.13(1H, t, J=3.3 Hz, α-amyrinの12-CH), 5.18(1H, t, J=3.6 Hz, β-amyrinの12-CH).。
【0050】
2−4.AE−3(α−スピナステロール)
Mp: 169-170℃; [α]20D, 15.2(c=1, methanol); EI-MS m/z: 412(M+, C29H48O); IR(KBr)υmax(cm-1):3418, 1664, 1041, 970;1 H-NMR(CDCl3)δ: 0.54(3H, s, 18-CH3), 0.79(3H, s, 19-CH3), 1.02(3H, d, J=6.9 Hz, 21- CH3), 0.81(3H, d, J=7.2 Hz, 26- CH3), 0.84(3H, d, J=6.3 Hz, 27-CH3), 0.80(3H, t, J=6.8 Hz, 29-CH3).。
【0051】
2−5.AE−4(ラブダ−7、14−ジエン−13(R)−オル−β−L−デオキシイドピラノシド)
油状; [α]20D,-61.0(c=1, methanol); EI-MS m/z: 436(M+, C26H44O5); 1H-NMR(CD3OD)δ: 4.79(1H, d, J=3.6 Hz, 1'-CH), 3.35 (1H, dd, J=6.0, 3.6 Hz, 2'-CH), 3.66(1H, J=6.0 Hz, 3'-CH), 3.46(1H, dd, J=6.0, 3.6 Hz, 4'-CH), 4.23(1H, dq, J=6.9, 3.6 Hz, 5'-CH), 1.18(3H, d, J=6.9 Hz, 6'-CH3).。
【0052】
2−6.AE−5(ラブダ−7、14−ジエン−13(R)−オル−β−L−フコピラノシド、新規)
[α]25D,8(c=0.1, methanol); EI-MS m/z: 436(M+,C26H44O5); 1H-NMR(CD3OD)δ: 0.75(3H, s, 20-CH3), 0.85(3H, s, 18-CH3), 0.88(3H, s, 19-CH3) 1.21(3H, d, J=6.6Hz, 6'-CH3), 1.32(3H, s, 16-CH3), 1.66(3H, s, 17-CH3), 3.42(1H, d, J=3.3 Hz. 2'-CH), 3.43(1H, d, J=1.8 Hz, 3'-CH), 3.50(1H, dq, J=1.2, 6.6 Hz, 5'-CH), 3.56(1H, dt, J=1.8, 1.2 Hz, 4'-CH), 4.23(1H, d, J=7.8 Hz, 1'-CH), 5.16(1H, dd, J=10.8, 1.2 Hz, 15-CH2), 5.17(1H, dd, J=17.7, 1.2 Hz, 15-CH2), 5.35(1H, m, 7-CH), 6.04(1H, dd, J=10.8, 1.2 Hz, 14-CH); 13C-NMR(CD3OD)δ: 39.1(1-CH2), 18.5(2-CH2), 42.1(3-CH2), 32.7(4-C), 50.3(5-CH), 23.5 (6-CH2), 121.6(7-CH), 135.3(8-C), 55.5(9-CH), 37.2(10-C), 21.2 (11- CH2), 43.5(12-CH2), 80.4(13-C), 143.0(14-CH), 113.5(15-CH2), 21.7 (16-CH3), 21.4(17-CH3), 32.4(18-CH3), 20.9(19-CH3), 12.7(20-CH3), 98.1(1'-CH), 71.0(2'-CH), 73.9(3'-CH), 71.5(4'-CH), 70.2(5'-CH), 15.5 (6'-CH3).。
【0053】
[実験例3.新規なダルマギクの地上部抽出物中のテルペンの定量]
前記実施例1に従い得られたダルマギクの地上部抽出物(AE−B)検体及びα−スピナステロールグルコピナノシド(ABP)標準品それぞれ30mgを正確に秤量してジメチルスルホキシド(DMSO)40mlにそれぞれ溶かし、40%(v/v)のエタノールを加えて100mlにした後、これをそれぞれ検液及び標準液にした。バニリン80mgをエタノール10mlに溶かし(使用時調製)、72%(w/w)硫黄酸溶液を調製した。
【0054】
総テルペンの含量分析:検液及び標準液をそれぞれ1mlずつ正確に取って大きな試験管(直径15mm×長さ180mm)に入れ、0.8%バニリンエタノール溶液0.4mlを加えて混合し、あらかじめ氷浴中において冷却させた72%硫黄酸溶液5mlを試験管にゆっくりと加えた後、急激に震とうして混合した。この混合液を60℃下、60分かけて加熱して発色させ、室温まで冷却させた後、540nmにおける吸光度を測定した。α−スピナステロールグルコピラノシド標準液の検量線に従って検液の含量を求めた。対照液は、検液1mlに0.8%バニリンエタノール溶液0.4mlを加えて混合し、あらかじめ氷浴中において冷却させた72%硫黄酸溶液5mlを試験管にゆっくりと加えた後に急激に震とうして混合した液を対照液にし、その吸光度を540nmにおいて測定した。総テルペンの含量を下記式により計算した。
【0055】
【数1】

【0056】
実験の結果、前記実施例1の方法により調製された新規なダルマギクの地上部抽出物には、ダルマギクに本来含有されている塩がほとんど除去されてその含有量が0.1%以下となり、血中脂質改善効果及び抗肥満効果を示さないフェノ−ル性化合物としての4、5−ジカフェオイルキナートとそのメチルエステル化合物を0.3%以下に含有し、粘液性物質がほとんど存在していなかった。なお、有効成分としてのテルペン化合物を分析した結果、ゲルマクロン、α−及びβ−アミリン、α−スピナステロール及びその配糖体、ラブダジエノール系配糖体などの化合物は合計で80.0%以上含有していることが確認できた。
【0057】
[実験例4]
実験動物の飼育、食餌、体重増加量及び食餌効率
実験動物としては、スプラーグ-ダーレイ(Sprague-Dawley)種の雄性白ねずみ(170〜180g、6週齢)を韓国のサムタコ社から入手して1週間適応させた後、乱壊法により正常食餌群(ND、n=10匹)と高脂肪食餌群(HFD、n=50匹)の2群に分けた。6週間飼育して肥満を誘導した後、HFD群を5群に分け、これらに対して、6週間にわたってダルマギクの地上部の抽出物を経口投与した。
HFD群:高脂肪食餌+0.5%カルボキシメチルセルロース
HFD+AE−B群:高脂肪食餌+AE−B125mg/kg
HFD+AE−C群:高脂肪食餌+AE−C100mg/kg
HFD+AE−1群:高脂肪食餌+AE−110mg/kg
HFD+ABP群:高脂肪食餌+ABP1.5mg/kg
実験食餌は、下記表1に示すように、正常食餌群に対してはAIN−76A diet #100000(Dyets Inc., Bethlehem, PA, USA)の食餌総熱量の11.7%を脂肪として供給し、高脂肪食餌群に対しては、脂肪供給源として牛脂を用い、AIN−76high fat diet #100496(Dyets Inc., Bethlehem, PA, USA)の総熱量の40%を脂肪として供給して飼育し、水と食餌は無制限に供給した。実験期間中に食餌摂取量と体重は、一週間に2回測定した。食餌効率は、実験食餌の供給日から犠牲日までを総実験期間にして実験期間中の体重増加量を実験期間中の食餌摂取量で割って算出し、その結果を下記表2に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
高脂肪食餌による6週間の肥満誘導後における正常食餌群と高脂肪食餌群の体重は、422.40±15.32gと458.40±19.32を示し、有意差を示している。その後、6週間それぞれの当該物質を経口投与した結果、ほとんどのダルマギクの投与群が、高脂肪食餌を供給されたHFD群に比べて、有意的に体重増加量が少ないことが分かる。前記表2において、異なるアルファベット文字はダンカンの多重検定テストによる場合、p<0.05において有意に異なることを意味する。
【0061】
白色脂肪の顕微鏡写真と脂肪細胞重量の観察
図2は、白色脂肪細胞の組織様子と白色脂肪細胞のサイズを示す。AはND群であり、BはHFD+C群であり、CはHFD+AE−B群であり、DはHFD+AE−C群であり、EはHFD+AE−1群であり、FはHFD+ABP群である。実験の結果、ND群における脂肪細胞のサイズはHFD群におけるそれよりも小さく、ダルマギク抽出物を摂取した群の場合、脂肪細胞のサイズはHDF+C群に比べてなお一層小さかった。
【0062】
食餌脂肪のレベルと物質投与による脂肪組織の重量を比較するために、飼育の終わった実験動物を14時間切食させ、エーテルで軽く麻酔した後、肝門脈から採血した後に臓器を採取した。副睾丸脂肪、腹部脂肪は摘出して重量を測定し、採血した血液は室温下、約1時間放置後に3000rpmにて10分間遠心分離して血清を分離し、これらの試料は分析前まで−70℃において保管し、その結果を下記表3に示す。ND群とHFD+AE−C群との間には副睾丸脂肪の重量差はなく、ダルマギク抽出物投与群(ASE)の場合、脂肪細胞のサイズと重量が顕著に低減されていることが分かる。
【0063】
【表3】

【0064】
磁気共鳴映像(MRI)測定による体脂肪測定
12週間の実験後に、ペントバルビタルソジウム(sodium pentobarbital)(30mg/kg)により腹腔内注射して麻酔させた後、MRIにより体脂肪を測定して図3に示す。ND群のねずみの場合、若干の脂肪が存在し、ダルマギク投与群(ASE)の場合、HFD群よりも蓄積された腹部脂肪の量が少ないことが確認できた。
【0065】
血中脂質濃度と肝脂質濃度
血清総中性脂肪(TG)、総コレステロール(TC)及び高密度コレステロール(HDL−C)の濃度と、HDL−C/TCレベルをキット(Asan Diagnostics, Seoul, Korea)を用いて測定した。図4を参照すると、血清中のTGレベルは、全群においてほとんど同様であり、HFD+C群のTCレベルは、ND群と比較するとき、144.1%値に達し、ダルマギク投与群(ASE)の場合、かなり低減していることが分かる。血清中のHDL−Cレベルは、各群においてほとんど同様であったが、HDL−C/TC値は、ダルマギク投与群の方がHDF群に比べてより高かった。
【0066】
肝は、Folch法に従い脂質を抽出した後、血清と同法により測定した。ダルマギクの成分物質による肝の脂質濃度は、下記表4に示す。肝の中性脂肪(TG)は、高脂肪食餌群の方が正常食餌群に比べて2倍程度増大しており、ダルマギクの成分を投与した群においては格段の減少が見られ、コレステロールの場合にもこれとほとんど同じ結果が得られた。肝の遊離脂肪酸(FFA)は有意差が見られなかった。
【0067】
【表4】

【0068】
血中レプチン、グルコース及びインスリンの含量分析
血清中のレプチン含量はリンコレプチン分析キット(Linco research Immuno-assay, St. Louis, MO)を用いた放射線免疫分析により測定し、インスリン含量は白ねずみインスリン標準品キット(Linco St. Louis, MO)を用いた放射線免疫分析により測定し、その結果を下記表5に示す。
【0069】
【表5】

【0070】
レプチンは、脂肪組織において生成されて血液に分泌されるため、脂肪を大量貯蔵可能な脂肪細胞は多量のレプチンを作り出し、レプチン受容体を介して脳に伝わって食品摂取、食欲及びエネルギー平衡などを調節する神経系に働くことにより、体重を減らすことが知られている。最近の研究によれば、高脂肪食餌の摂取の際にマウスの血中レプチンの濃度が有意的に増大し、これは、増大された体脂肪のサイズを反映することができると報告されている。この研究結果によれば、高脂肪食餌群においては、レプチン濃度が正常食餌群のそれに比べて2倍以上高くなっていたものの、ダルマギクの成分を投与した群においては正常食餌群とほぼ同様に維持されていた。
【0071】
血糖の場合には、高脂肪食餌群の方が正常食餌群に比べて高く、ダルマギク抽出物投与群はHFD群に比べて顕著に低い傾向にあった。特に、投与群のうちAE−C、AE−B投与群は正常値を示し、卓越した効能が確認できた。このとき、インスリンの血中濃度は葡萄糖の濃度が低くなった程度に比例して低い傾向にあった。
【0072】
この結果は、肥満の解消によるインスリン感受性の増大により分泌されるインスリン量と血糖値が正常値に戻っていることに起因すると推察できる。
【0073】
急性毒性実験−経口投与
ICR系マウス(体重25±5g)とスプラーグ-ダーレイ系ラット(体重230±10g)をそれぞれ10匹ずつに分けて本発明の実施例1の新規ダルマギクの地上部の抽出精製物(AE−B)をそれぞれ100、500、1000及び2000mg/kgの容量で1%CMC水溶液に懸濁させて経口投与した後、2週間毒性有無を観察した結果、4群ともにおいて死亡した例が一匹もなく、見掛け上、対照群とも別に相違する症状が見られず、体重増加、飼料摂取量などにおいても有意な異常がまったく見られないことから、本発明の組成物は急性毒性がほとんどないことが確認できた。
【0074】
[実験例5]
実験動物の飼育、食餌、体重増加量及び食餌効率
実験動物は、スプラーグ-ダーレイ種の雄性白ねずみ(170〜180g、6週齢)を韓国のサムタコ社から入手して1週間適応させた後、乱壊法により正常食餌群(ND、n=8匹)と高脂肪食餌群(HFD、n=88匹)との両群に分けた。6週間飼育して肥満を誘導した後、HFD群を11群(n=8匹)に分け、これらに対して、6週間にわたってダルマギクの地上部の抽出物を経口投与した。
HFD群:高脂肪食餌
AE−B250群:高脂肪食餌+AE−B250mg/kg
AE−B125群:高脂肪食餌+AE−B125mg/kg
AE−B62.5群:高脂肪食餌+AE−B62.5mg/kg
AE−C200群:高脂肪食餌+AE−C200mg/kg
AE−C100群:高脂肪食餌+AE−C100mg/kg
AE−C50群:高脂肪食餌+AE−C50mg/kg
AE−120群:高脂肪食餌+AE−1(ゲルマクローン)20mg/kg
AE−110群:高脂肪食餌+AE−1(ゲルマクローン)10mg/kg
AE−15群:高脂肪食餌+AE−1(ゲルマクローン)5mg/kg
陽性対照群:高脂肪食餌+シブトラミン(陽性対照群)7.5mg/kg
実験食餌は実験例4の表1に示す通りであり、食餌摂取量、体重増加量、食餌効率は下記表6に示す通りである。
【0075】
【表6】

【0076】
前記表6から明らかなように、12週後にHFD群の体重はND群に比べてさらに高く、ダルマギク抽出物投与群(ASE)の場合、HDF群に比べて体重が低かった。FERは、ND群とASE群に比べて、HDF群の方が有意に大きな値を示し、ASE群とND群との有意差はなかった。ダルマギク投与のねずみにおいて、脂肪の蓄積は抑えられていると認められる。
【0077】
脂肪細胞重量の変化
脂肪組織の重量は、前記実験例4の方法と同様にして測定し、その結果は、下記表7に示す。ダルマギク抽出物投与群(ASE)の場合、HFD群に比べて相対的に白色脂肪組織を低減させ、ダルマギク抽出物の投与量が増えるにつれて脂肪組織の重量が減少することが確認できた。
【0078】
【表7】

【0079】
MRI測定による体脂肪測定
前記実験例4の方式により腹部皮下脂肪と内臓脂肪を測定し、その結果を図5に示す。白抜きは脂肪が存在する個所のイメージであり、ダルマギク抽出物投与群(ASE)の場合、HDF群よりも腹部脂肪の蓄積が少ないことが分かる。図5中、AはND群であり、BはHFD群であり、Cはシブトラミン群であり、DはAE−B250群であり、EはAE−C200群であり、FはAE−110群である。
【0080】
血中脂質濃度と肝脂質濃度
血清総中性脂肪(TG)、総コレステロール(TC)及び高密度コレステロール(HDL−C)の濃度を実験例4の方法と同様にして測定し、その結果を下記表8に示す。TGレベルは、高脂肪食餌群と正常食餌群との間に大差はなく、ダルマギク抽出物投与群(ASE)は、高脂肪食餌群に比べてTG値が低かった。総コレステロールレベルは、正常食餌群に比べて、高脂肪食餌群の方が遥かに高かった。このようなコレステロールの増加はダルマギク抽出物の投与により抑制され、さらには、正常食餌群に比べて総コレステロール濃度をさらに低くできることが確認できた。
【0081】
【表8】

【0082】
肝脂質濃度は、前記実験例4の方法と同様にして測定し、その結果を下記表9に示す。高脂肪食餌群の肝TGとTC濃度は正常食餌群に比べて高かったものの、ダルマギク抽出物を投与した場合、肝脂質の蓄積量を低減させることが確認できた。なお、ダルマギク抽出物投与群の場合、高脂肪食餌群(HFD)よりもFFAの増加が抑えられていることが確認できた。
【0083】
【表9】

【0084】
血中レプチン、インスリンの含量分析
血清中のレプチンとインスリンの含量は前記実験例4の方法と同様にして測定し、その実験結果を下記表10に示す。レプチンは脂肪組織において生成されるホルモンであり、体脂肪に比例することが知られている。レプチンとインスリンは、エネルギー向上性と深く関連している。レプチンの増加は高インスリン血症を引き起こし、高インスリン血症は脂肪細胞にあるレプチンmRNAを直接的に刺激する。この理由から、HFD群における血中レプチンとインスリンレベルは正常食餌群よりも遥かに高かったものの、ダルマギク抽出物投与群(ASE)の場合、投与量に比例してHFD群よりも低い値を示している。
【0085】
【表10】

【0086】
白色脂肪組織のUCP2、PPARγ発現
白色脂肪組織におけるエネルギー新陳代謝の調節に関与する幾つかのたんぱく質に対するmRNAレベルを分析した。ダルマギク抽出物投与群は、白色パッド質量を低減したため、遺伝子発現を測定するための十分な程度のRNAを得ることは容易ではなかった。PPARγ mRNAに及ぶダルマギク抽出物の効能は、RT−PCRを用いて定量的に脂肪組織を測定し、その結果を図6、7に示す。WAT UCP2 mRNAの発現は高脂肪食餌に影響され、ダルマギク抽出物及びその投与量にも影響された。WAT PPARγのmRNAの発現は高脂肪食餌群の場合に低く現われ、ダルマギク抽出物投与群の場合に増大する傾向にある。
【0087】
PPARγは、脂肪組織において脂肪代謝、脂肪細胞分化、インスリン作用、UCPの活性を調節する役割を果たし、またUCPは熱発生を通じて体内のエネルギーを消耗する役割を果たすことに照らしたとき、ダルマギク抽出物は、PPARγとUCP遺伝子のmRNA発現を増大することにより肥満治療に有効であることが確認できる。
【0088】
〔産業上の利用可能性〕
本発明によるダルマギクの地上部抽出物は、高脂肪食餌を給与したねずみの重量、体脂肪重量、血中脂質と肝脂質の数値、総コレステロール、遊離脂肪酸の含量、血中レプチン、インスリンなどを有意的に減少させ、且つ、PPARγとUCP遺伝子のmRNA発現を増大させるなどの作用を通じて血中脂質状態を改善し、肥満を抑制し、心循環系疾患、動脈硬化症、脳血栓疾患、肝疾患、血栓症、高脂血症、糖尿病などの疾病を予防し、または治療を補助する機能性食品として利用可能である。また、本発明の製造方法によりダルマギクに本来多量含有されている塩、不安定して酸化させるためのフェノ−ル性化合物、粘液性物質などを簡単な方法によりほとんど除去して有効成分としてのテルペンの含量を大幅に高めることができ、しかも、製造コストも安価であるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】新規なダルマギクの地上部抽出物から有効成分を分離する工程を示す図である。
【図2】実験例4における白色脂肪細胞組織の様子と白色脂肪細胞のサイズを示す図である。
【図3】実験例4において、磁気共鳴映像(MRI)を通じて腹部皮下脂肪と内臓脂肪を測定した写真である。
【図4】実験例4における血清総中性脂肪(TG)、総コレステロール(TC)、高密度コレステロール(HDL−C)の濃度と、HDL−C/TCレベルを示す図である。
【図5】実験例5において、磁気共鳴映像(MRI)を通じて腹部皮下脂肪と内臓脂肪を測定した写真である。
【図6】実験例5において、肝UCP2 mRNAの発現レベルを示す図である。
【図7】実験例5において、肝PPARγ mRNAの発現レベルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダルマギクの地上部の乾燥粉末を水を使って室温下で洗浄して脱水する第1の段階と、
前記第1の段階において得られるダルマギクの地上部の乾燥粉末をアルコール、アルコールと水との混合溶媒、またはn−ヘキサンとアルコールとの混合溶媒に溶かして抽出液を得る第2の段階と、
を含むダルマギクの地上部抽出物の製造方法。
【請求項2】
前記第1の段階における洗浄は、1時間〜12時間かけて循環洗浄または超音波洗浄することにより行われ、前記第2の段階は、洗浄済みのダルマギクの地上部の乾燥粉末にアルコール、アルコールと水との混合溶媒、またはn−ヘキサンとアルコールとの混合溶媒により85〜100℃、1時間〜12時間かけて還流抽出することにより、あるいは、1日〜7日間パーコレイション抽出を行うことにより抽出液を得る段階であることを特徴とする請求項1に記載のダルマギクの地上部抽出物の製造方法。
【請求項3】
第1の段階における洗浄は、室温下で乾燥されたダルマギクの地上部の乾燥粉末100重量部に対して5〜20重量部の水を使って20℃〜100℃の温度下で循環洗浄、超音波洗浄、またはパーコレイション洗浄することにより行われ、前記洗浄工程は、1回〜5回繰り返し行われることを特徴とする請求項2に記載のダルマギクの地上部抽出物の製造方法。
【請求項4】
前記第2の段階においては、前記第1の段階において洗浄されたダルマギクの地上部の乾燥粉末100重量部に対して5〜20重量部のアルコールを溶媒として使用するか、3:7〜1:20の混合比(v/v)を有する水とアルコールとの混合物を溶媒として使用するか、または、1:0.5〜1.5の混合比(v/v)を有するn−ヘキサンとアルコールとの混合溶媒を使用することを特徴とする請求項2に記載のダルマギクの地上部抽出物の製造方法。
【請求項5】
第2の段階において得られた抽出液をろ過し、ろ液を減圧濃縮した後に乾燥させる第3の段階をさらに含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のダルマギクの地上部抽出物の製造方法。
【請求項6】
ダルマギクの地上部抽出物を含む抗肥満及び脂質状態改善用の組成物であって、
前記ダルマギクの地上部抽出物には天然テルペン系化合物が含まれていることを特徴とする抗肥満及び脂質状態改善用の組成物。
【請求項7】
前記テルペン系化合物は、ゲルマクロンと、α−スピナステロール及びその配糖体と、α−またはβ−アミリンと、ラブダジエノール系配糖体とからなる群より選ばれるいずれか1種以上であることを特徴とする請求項6に記載の抗肥満及び脂質状態改善用の組成物。
【請求項8】
前記ダルマギクの地上部抽出物は、ダルマギクの地上部の乾燥粉末を水を使って室温下で洗浄及び脱水し、アルコール、アルコールと水との混合溶媒、またはn−ヘキサンとアルコールとの混合溶媒に溶かすことにより得られる抽出物であることを特徴とする請求項6に記載の抗肥満及び脂質状態改善用の組成物。
【請求項9】
前記ダルマギクの地上部抽出物は、カフェオイルキナ酸系成分をさらに含むが、前記カフェオイルキナ酸の含量は、ダルマギクの地上部抽出物の0.3重量%以下であることを特徴とする請求項6に記載の抗肥満及び脂質状態改善用の組成物。
【請求項10】
前記テルペン系化合物の含量は、ダルマギクの地上部抽出物の80重量%〜99.6重量%であることを特徴とする請求項7に記載の抗肥満及び脂質状態改善用の組成物。
【請求項11】
ダルマギクの地上部抽出物と、機能性食品学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤をさらに含み、抗肥満及び脂質状態を改善して心循環系疾患の予防及び治療を補助する健康機能性食品。
【請求項12】
前記健康機能性食品は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョンまたはシロップの剤形を有し、ダルマギクの地上部抽出物の含量は、全体の0.1〜60重量%であることを特徴とする請求項11に記載の健康機能性食品。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−533196(P2008−533196A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502898(P2008−502898)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【国際出願番号】PCT/KR2006/001003
【国際公開番号】WO2006/101325
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507313249)
【Fターム(参考)】