説明

肺炎連鎖球菌血清型6D

ストレプトコッカス・ニューモニアエ指定血清型6Dの新規かつ新出の血清型、ならびに、それを同定するのに有用なアッセイおよびモノクローナル抗体を開示する。繰返し単位{→2)グルコース1(1→3)グルコース2(1→3)ラムノース(1→4)リビトール(5→リン酸}を有する新規 肺炎連鎖球菌多糖類も開示する。この新規血清型は肺炎連鎖球菌ワクチンに含まれるであろう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、国立衛生研究所 (the National Institutes of Health)によって委託されたコントラクト番号AI−30021およびAI−031473の下、米国政府支援でなされた。
【0002】
この出願は、20008年5月28日に出願されたPCT出願番号US08/064951ならびに、双方とも2007年5月29日に出願された米国仮出願番号第60/924,703号および第60/924,704号に関連し、それらの利益を主張する。
【0003】
本発明は、細菌学、免疫学および疫学に関する。より詳しくは、本発明は、ストレプトコッカス・ニューモニアエ (Streptococcus pneumoniae)の新たに明らかになった血清型ならびに、それらの血清型を同定するのに有用なアッセイおよびモノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0004】
ストレプトコッカス・ニューモニアエはよく知られたヒト病原体であり、主に幼児および老齢者において、肺炎、髄膜炎、中耳炎ならびに敗血症の主たる病因物質である。エス・ニューモニアエ (S. pneumoniae)は、血清学的に明確な炭化水素莢膜の発現に基づき90の血清型に分類されてきた。莢膜多糖類(PS)に対する抗体は、同一の莢膜血清型を発現する肺炎連鎖球菌に対抗する保護を提供する。現在入手可能な肺炎連鎖球菌ワクチンは、複数の血清型の莢膜PCの混合物を含有する。例えば、ひとつの肺炎連鎖球菌ワクチン(PSワクチンという。)は、23種の共通して見出される血清型由来の莢膜PSを含有する。ごく最近開発されたタイプのワクチン(コンジュゲートワクチンという。)は、タンパク分子にコンジュゲートされた7から13種の血清型由来の莢膜PSを含有する。7価コンジュゲートワクチンは、2000年に米国で臨床用に導入され、子供および成人における侵襲性肺炎連鎖球菌感染症の発症を減少させてきた。
【0005】
肺炎連鎖球菌血清型の区分はワクチン効果を評価するのに有用である。理想的には、効果的な肺炎連鎖球菌ワクチンは、ワクチンに含まれる血清型を発現する肺炎連鎖球菌の有病率を減じ、かつ、非ワクチン血清型を発現する肺炎連鎖球菌の有病率はそのままにする。現実には、非ワクチン型の有病率はワクチン血清型を発現するそれらを置き換える程に増加する。さらに、特定の血清型の有病率は未知の理由により経時変化するかもしれない。結果的に、正確かつ効率的な肺炎連鎖球菌単離の血清型分類が肺炎連鎖球菌ワクチンの有効性をモニターするのに重要である。実際に、明らかになった肺炎連鎖球球菌血清型を同定すること、および、より有効な肺炎連鎖球菌ワクチンを製造することには、公衆健康における重大な目的が残っている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の具体例は、新規かつ新出の肺炎連鎖球菌血清型の同定およびその同定手段を提供する。より詳しくは、本発明は、血清型6A、6Bおよび6Cに密に関連する新規肺炎連鎖球菌血清型を提供し、ここでは、それを血清型6Dと定義する。
【0007】
さらなる特徴は、細菌指定 (bacterium designated)ストレプトコッカス・ニューモニアエ6Dの単離培養物を提供する。
【0008】
もうひとつの具体例は、繰返し単位{→2)グルコース1(1→3)グルコース2(1→3)ラムノース(1→4)リビトール(5→リン酸}を持つ新規肺炎連鎖球菌莢膜多糖類を提供し、それはエス・ニューモニアエ血清型6Dに対応する。関連する具体例は、新規6D多糖類を含む抗原性組成物を提供する。もうひとつの具体例は、抗体のごとき、血清型6Dまたは血清型6D多糖類に特異的な抗原結合タンパク質に関する。
【0009】
もうひとつの特徴は、新出肺炎連鎖球菌血清型を同定するのに有用なモノクローナル抗体(mAb)、特に、血清型6Dを識別し、ここでは、mAb Hyp6BM6、mAb Hyp6BM7、およびmAb Hyp6BM8と定義されるモノクローナル抗体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、インヒビションELISAの結果を図示する。肺炎連鎖球菌ライゼートの希釈(X軸)に対する肺炎連鎖球菌血清型6A-被覆ELISAプレートに結合する抗体(Y軸)。ライゼートは、3つの6C単離物(連続線が付された黒塗り記号)、3つの6A単離物(点線が付された白抜き記号)、および2つの6B単離物(破線)を含む。このアッセイに用いた抗体は、Hyp6AG1(パネルA)、Hyp6AM3(パネルB)、ウサギ・プール血清Q(パネルC)およびウサギ「因子6b」血清(パネルD)であった。
【図2】図2は、様々な肺炎連鎖球菌のオプソニン作用アッセイデータを図示する。測定した生存細菌数を、オプソニン作用アッセイ反応の非常に初期に反応物に添加した細菌の割合として(Y軸)として、オプソノファーゴサイトシス・キリング・アッセイ (an opsonophagocytosis killing assay)に用いるヒト血清の希釈(X軸)に対してプロットした。このアッセイは、ひとつの6B単離物(白抜き丸)、2つの6A単離物(白抜き四角、白抜き三角)、および7つの6C単離物(破線で結ぶデータポイント)を含む様々な肺炎連鎖球菌を用いた。前記7つの6C単離物は、ブラジル、韓国および米国からのものを含む。
【図3】図3は、オプソニン作用力価比較を例示する。6A亜型についてのオプソニン作用力価(Y軸)対6B血清型についてのオプソニン作用力価(X軸)。丸および三角は、それぞれ、6A(6Aαと表示)または6C(6Aβと表示)についてのオプソニン作用力価を示す。この実験は、ワクチン接種していない20人の成人(左パネル)またはコンジュゲートワクチン(黒塗り記号)若しくは23価多糖類ワクチン(白抜き記号)でワクチン接種した20人の成人(右パネル)からの血清を用いた。各ワクチン群の対象者は10人であった。このアッセイの検出限界は4であり、検出不能のオプソニン作用力価のサンプルは力価2を有するものとした。一箇所に複数のデータポイントがある場合、データポイント数が分かるように意図的にずらしている。
【図4】図4は、様々な肺炎連鎖球菌単離物由来のwciP遺伝子の部分のDNA配列を表示する(血清型6Cは6Aβと表示)。
【図5】図5は、6A単離物(レーン1〜9)および6つの6C(6Aβと表示)単離物(レーン10〜15)で得られたPCR産物を示すアガロースゲルの写真である。2つの「M]レーンはDNAサイズマーカーを示す。これら2つのレーンは、ゲルの右側の分子が左側の分子よりも速く移動したことを示す。肺炎連鎖球菌PCR産物の上下の2つのマーカーバンドは、それぞれ、2.036Kbおよび1.636Kb長である。6Aおよび6Cは、それぞれ、約2Kbおよび1.8Kb長のPCR産物を生じた。
【図6】図6は、単離物AAU9(中央バー)およびST745(2つの部分からなる下部バー)の肺炎連鎖球菌莢膜遺伝子座のwchA、wciN、wciO領域のダイアグラムを示す。比較のため、CR931638(GenBankエントリー)に基づく肺炎連鎖球菌莢膜遺伝子座のwchA、wciN、wciO領域のダイアグラムを上部バーに示す。遺伝子wchA、wciN、およびwciOは、その長さに沿って上部バーの上に表示している。ヌクレオチド配列位置は上部バーの下に示し、ここに示す配列位置1は、CR931638の配列位置4902に対応する。ST745株配列は193塩基対という短さで、この短さは、位置2398と2591との間のギャップで示されている。
【図7】図7は、過ヨウ素酸塩処理前後の6A(上部2つのパネル)および6C(6Aβ、下部2つのパネル)由来の莢膜PSの炭化水素比較(パネルA)を示す。こららの単糖類は上部クロマトグラムで同定されている。このGLC分析において、単糖類は特徴的な保持時間および相対比率を持つ複数のピークを生じ得る。例えば、ガラクトースは3つのピーク:第1ピーク(低)第2ピーク(最高)、および第3ピーク(中)を有しているはずである。パネルBは、6A(灰色バー)および6C(6Aβ、黒色バー)に対する各単糖類の規格化ピーク面積を示す。各PS由来のすべての単糖類のピーク面積は、関連するラムノースのピーク面積に対して規格化する。6Cはガラクトースピークを示さないが、6Aが示す2倍のグルコースを示す。
【図8】図8は、6A(パネルA)および6C(パネルB、6Aβと表示)の繰返し単位ならびに娘イオン(それぞれ、パネルCおよびD)の質量スペクトルを図示する。質量電荷比(m/z)は小数点二桁に四捨五入した。
【図9】図9は、酸化還元後の6C PSの繰返し単位(パネルA)およびそれらの娘イオン(パネルBおよびC)の質量スペクトルを示す。パネルBに用いたサンプルはNaBH4で還元し、パネルCに用いたサンプルはNaBD4で還元した。質量電荷比(m/z)は小数点2桁で四捨五入した。(パネルBおよびC中の)R1およびR2は、それらのピークが逆方向フラグメンテーションによって誘導されたイオンに対応することを示している。デルタ記号の後の数字は、ピーク間のm/z単位差を示し、それらのフラグメントの名前に関連している。パネルC中の全ピークはパネルB中のピークに対応するが、例外は136.98のピークであり、それはパネルBには再現されないので、おそらく不純物であろう。
【図10】図10は、6C莢膜多糖類の提唱化学構造およびその開裂生成物の構造を示す。6C繰返し単位の提唱構造はパネルCに示す。パネルAおよびBは、リン酸基がリビトールに結合しているときの、および、リン酸ジエステルがグルコース1の第2炭素に連結しているときの可能性のある分子イオンを示す。パネルD、E、およびFは、リン酸ジエステルがグルコース1の第2炭素(パネルD)、第4炭素(パネルE)、または第6炭素(パネルF)に連結しているときの、繰返し単位の可能性のある開裂パターンを示す。水和物を示し、水和に関与する残基を括弧で示す。過ヨウ素酸塩感受性部位を太字で示し、開裂生成物をパネルAおよびF中に示す。可能性のある分子イオンを、原子量単位とともに矢印付き点線で示す。GxおよびGyは可能性のあるグルコース1フラグメントであり、Rxは、酸化還元反応後の残ったリボースフラグメントである。それらの原子量単位を括弧で示す。
【図11】図11は、wciN領域交換実験ダイアグラムを示す:ステップAにおいて、TIGR6A4のwchA/wciNα/wciO-P領域をカセット1で置換した。カセット1は、3つの部分(中心コアと2つのフランキング領域)を有し、各部分は約1kb長である。中心コアは抗菌剤感受性遺伝子、kanRおよびrpsL+を有する。これら2つのフランキング領域は、AAU33株由来のwchAおよびwciO-P領域からなる。ステップBにおいて、TIGR6AXのカセット1をカセット2で置換した。カセット2は、6C株由来のwciNβ遺伝子、wchAおよびwciO-P領域(CHPA388、Aβで表示する領域)を有する。TIGR6C4はカセット2が挿入された後で得られる最終産物を示す。PCRプライマーにおけるXbaIおよびBamHI部位は、遺伝子操作を簡単にするために導入され、それらが示されている。
【図12】図12は、6Aおよび6C単離物のwciN領域のPCR産物の電気泳動パターンを示す。このPCRに用いたプライマーは5106および3101であり、それらは、それぞれ、wchAおよびwciO遺伝子中に位置する。Mと記されたレーンはDNAラダーを有する。2000および650bpの標準マーカーは左に示された。レーン1〜13は6C単離物のPCR産物を含有し、それらは、CHPA37(レーン1)、CHPA388(レーン2)、BG2197(レーン3)、BZ17(レーン4)、BZ39(レーン5)、BZ86(レーン6)、BZ650(レーン7)、KK177(レーン8)、CH66(レーン9)、CH158(レーン10)、CH199(レーン11)、MX-67(レーン12)、およびACA-C21(レーン13)である。レーン14〜18は6A単離物のPCR産物を含有し、それらは、CHPA67(レーン14)、CHPA78(レーン15)、BZ652(レーン16)、KK58(レーン17)およびAAU33(レーン18)である。
【図13】図13は、wciNβ(時には、wciN6Cという。)ORFのヌクレオチド配列を、wchAの3'末端およびwciO遺伝子の5'末端のヌクレオチド配列と共に示す。wciNβ ORFの可能性のあるアミノ酸配列をそのヌクレオチド配列の下に示す。wchAおよびwciNβの推定終止部位ならびにwciNβおよびwciO遺伝子の推定開始部位も示す。このwciO遺伝子はふたつの可能性のある開始部位を有する。
【図14】図14は、6A株(GenBank CR931638)および6C株(CHPA388)のwciNαおよびwciNβ領域のDNA配列を示す。wciNの配列の非相同的中央領域(約900〜1110塩基)は示していない。PCRプライマー(5106、3101、5114、および3113)の部位を示す。wchAおよびwciNβの可能性のある終止部位;ならびにwciNβおよびwciOの可能性のある開始部位も示す。
【図15】図15は、6Aおよび6C単離物のwciN遺伝子を取り巻く莢膜遺伝子座の遺伝子マップを示す。このマップは、wchA(斜線)、wciN(横縞または黒色)、wciO(チェック)、およびwciP(波線)遺伝子を示す。6A座は、2つの予期せぬDNAフラグメント(矢印で示す。)を、wciNα(時には、wciN6Aという。)遺伝子に対して上流(95塩基長)または下流(312塩基長)に有する。wciO遺伝子の代替的な開始部位は、示された開始部位(6Aについて位置2721)に対して32塩基上流にある。6C単離物に関して、wciNα領域における旧DNA(1222塩基、横縞の領域)を新DNA(1029塩基、黒色領域)で置換する。この置換により、1125塩基を有する新ORF(wciNβと称する)が生じる。
【図16】図16(パネルA〜D)は、6C血清型(単離物CHPA388)莢膜遺伝子座のDNA配列を示す。
【図17】図17は、肺炎連鎖球菌血清型6A、6B、6C、および6Dの多糖類繰返し単位の化学構造を示す。
【図18】図18は、6A(GenBank CR931638)および6C血清型(株CHPA388)の莢膜遺伝子座を図示する。莢膜合成に関与する全オープンリーディングフレーム(ORF)を横矢印で示し、それらの方向は転写方向を示す。6Aおよび6C座の双方に関して、推定転写部位(屈曲矢印)および推定終止部位(黒塗り丸付き垂直線)を、モルクエスト (molquest)のウェブサイトで入手可能なfgenesB、BPROMおよびFindTerm (Softberry Inc.)を用いて同定した。トランスポゼース配列(「tnp」と表示するブラックボックス)が莢膜遺伝子座の両末端に見られる。2つの莢膜遺伝子座は全く異なるwciN遺伝子(丸で示す)を有する。6A(および6B)血清型のwciN遺伝子はwciNαと表示され、6CのwciNはwciNβと表示される。
【図19】図19は、wciNβ遺伝子交換を用いる6D株の生成を示す概略図である。カセット3のターゲットDNAは、ヤヌスカセットのカナマイシン耐性(kanAR)(時には、kanRという。)かつストレプトマイシン感受性(rpsL+)遺伝子を含有する。カセット3の2つのフランキング領域は6B株(株DS2212-94)由来のwchAおよびwciO-P遺伝子を有し、それは、この図に示されるプライマー対を用いるPCRによって得られた。ついで、カセット3の3つのDNAフラグメントを、制限酵素での消化に引き続きT4 DNAリガーゼ(New England BioLabs, Beverly, MA)でのライゲーションによって連結した。ついで、ライゲーション産物を、プライマー5113および3102を用いるPCRによって増幅した。カセット2は、プラマー5113および3102を用いる、CHPA388 (6C株、GenBank登録番号EF538714: 6522.7646)DNAのPCRによって調製した。
【図20】図20は、異なる莢膜PSを含有する細菌上清の種々の希釈物(X軸)の存在下、6B PS−被覆ELISAプレートへのモノクローナル抗体の結合(Y軸)を示す。各実験に用いたモノクローナル抗体の名称を各パネルの上部に示している。TIGR6A、TIGR6B(またはTIGR6B4)、TGR6C、およびTIGR6Dは、それぞれ、6A、6B、6C、および6D莢膜PSを産生する。これらの株は、TIGR4の莢膜座を、それぞれ、血清型6A、6B、6C、および6Dの莢膜座で置換することによって調製した。TIGR6BX(または「TIGR6B-JS」)は、wciN遺伝子のないTIGR6Bの変異体を示す。
【図21】図21。パネルAは、6D莢膜PSの繰返し単位の水和物の構造を示す。理論分子量は701AMUである。パネルBは、繰返し単位の質量分子量を示す。683.3m/zおよび701.3m/zのピークは、それぞれ、繰返し単位の無水物および水和物に対応する。パネルCは、パネルBで示される683.3AMUのイオンの娘イオンである。娘イオンはパネルCの株で同定される。270.825、574.758、および632.756AMUのピークならびにそれらのサテライトピーク(塩化物同素体のため2AMU離れている)は塩化ナトリウムクラスターを表す。270.825のピークは(NaCl)4Cl-.を表す。574.758AMUのピークは、おそらく、別の塩クラスター、有機溶媒分子が付いた塩クラスターのように、水分子が付いた(NaCl)9Cl-を表す。632.7のピークは、574.758AMUのピーク以外のもうひとつのNaCl(すなわち、58AMU)を有する。
【図22】図22は、PSを様々な時間(X軸)で加水分解した後、ELISAプレートへのmAbの結合を阻害する種々の莢膜PS(2mg/ml)の能力(Y軸)を図示する。「力価」は、結合を50%阻害するのに必要なサンプルの希釈を意味する。6Aおよび6C PSに関して、ELISAプレートを6A PSで被覆し、mAb Hyp6AG1を用いる。6Bおよび6D PSに関して、ELISAプレートを6B PSで被覆し、mAb Hyp6BM8を用いる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ここに記載された特定の方法、プロトコル、および試薬に限定されず、変化することを理解すべきである。ここで用いる用語は特定の具体例を説明するための目的であり、本発明の範囲を限定する意図はなく、本発明は特許請求の範囲によってのみ規定される。
【0012】
ここにおよび特許請求の範囲において用いられるとき、単数形の「a」、「an」、および「the」は、内容が明確に異ならない限りにおいて、複数形を含むものとする。かくして、例えば、抗体についての言及は、1以上のそうような抗体についての言及であり、当業者に知られているそれらの等価物を含む。具体例において、または異なるように指示がある場合を除き、ここで用いられる成分は反応条件を表すすべての数値は、すべての場合において、「約」なる用語によって修正されると理解されるべきである。示されたすべての特許その他の刊行物は、例えば、本発明と結びついて用いられるであろうそのような刊行物に記載された方法論を記載し開示する目的で、出典明示して明確に本明細書に含まれる。これらの刊行物は、単に、本出願の出願日以前の開示のために提供される。この観点において、発明者らが、先行発明のためまたはその他のいずれかの理由によって、当該開示に対して先の日付を享受しないことを自認したと、理解されるべきではない。その日付についてのすべての言明またはそれらの書類の内容についての表現は、出願人に入手可能な情報に基づくものであり、その日付やそれらの書類の内容の正確さについていかなる自認をするものでもない。
【0013】
異なって定義しない限り、ここで用いるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野において通常の技術を有する者が共通して理解する内容と同一の意味を有する。本発明の実施または試験において、いかなる公知の方法、装置および材料を用いることができるが、この観点において、方法、装置および材料をここに記載する。
【0014】
本発明は、新規多糖類莢膜層を持つストレプトコッカス・ニューモニアエを提供する。簡単には、エス・ニューモニアエの血清群6は2つの血清型を含み、それらは、高度に相同的な莢膜遺伝子座を持つ6Aおよび6Bと名付けられる。近年およびここに記載するように、血清型6Cが同定された。6Aおよび6B莢膜遺伝子座は、一貫して、wciP遺伝子における1つのヌクレオチドで互いに異なる。さらに、6A莢膜遺伝子座はガラクトシルトランスフェラーゼを有するが、6C莢膜遺伝子座はグルコシルトランスフェラーゼを有する。本発明は「6D」と称された新たな血清型を提供し、そこでは、6B莢膜遺伝子座のガラクトシルトランスフェラーゼが6Cのグルコシルトランスフェラーゼで置換されている。遺伝子導入は生存能力のある肺炎連鎖球菌株を生じ、この株からの莢膜多糖類は予測した化学構造および6B血清型の莢膜多糖類に血清学的な類似性を有する。この新たな株(すなわち、血清型6D)は、膨張反応(quellung reaction)によって6Bに分類されるが、6B多糖類に対するモノクローナル抗体を持つ6B株から区別され得る。古典的な型分類法で以前6Bと分類された264個の肺炎連鎖球菌単離物を再調査したところ、血清型6Dを発現する単離物がないことが明らかになった。
【0015】
ここで提供される新規6D単離物は、化学的に明確な莢膜多糖類(PS)構造を有する。より詳しくは、6D PSの繰返し単位は、見かけ上、ひとつのリビトール、ひとつのラムノースおよびふたつのグルコース部分を含有する。これは、血清型6Cと同一の内容であるが、炭化水素部分の科学的リンケージがこれらの血清型とは異なる。さらに、PSの明確な化学構造は抗原学的に明確である。血清型6Dは、かくして、すでに認識されている90種の肺炎連鎖球菌血清型[Henrichsen, 33 J. Clin. Microbiol. 2759-62 (1995)]および91番目の血清型を表す6C血清型と併せて、92番目の肺炎連鎖球菌血清型を表す。
【0016】
重要なことは、ここで提供される新規6D血清型は、ワクチン開発にとって、重要な代替PCを提供することである。より詳しくは、現行の肺炎連鎖球菌ワクチンは、6A PSではなく、むしろ6B PSを含有する。なぜならば、ある意味、6A PSはワクチン製剤中ではあまり安定でなかったからである。この化学的な不安定さは、6A PS中のラムノースとリビトールとの間の1→3リンケージによる。6B PSの1→4リンケージは6A PSの1→3リンケージよりも安定なので、6B PSは6A PSよりも安定である。ここで提供される6Cリンケージはより不安定な1→3リンケージを有し、6D PSはより安定な1→4リンケージを有する。かくして、6D PSは6C PSよりも、ワクチンにおいてより一層有用であることが証明されたといえる。
【0017】
ワクチンの重要性に関して、エス・ニューモニアエはよく知られたヒト病原体であり、主に幼児や老齢者における肺炎、髄膜炎、中耳炎ならびに敗血症の主たる病因物質である。[Fedson, VACCINES, 271-99 (Plotkin & Mortimer eds., W.B. Saunders Co., Philadelphia, PA, 1988)]。肺炎連鎖球菌の最も顕著な病原性因子は莢膜多糖類(PS)であり、それは細菌の表面を被覆して、表面部分への結合からの抗体および補体ならびに貪食細胞に認識されることを阻害する。[Avery & Dubos, 54 J. Exp. Med. 73-89 (1931)]。より詳しくは、この莢膜は、細菌細胞のC3bオプソニン作用を防止することによって、食作用に干渉する。抗−肺炎連鎖球菌ワクチンは、高度に有病率な株から誘導された種々の莢膜(多糖類)抗原の調製物を基礎とする。
【0018】
エス・ニューモニアエは、PS莢膜の血清学的に明確な化学の発現に基づいて、91種の血清型に分けられてきた。[Henrichsen, 1995; Park et al., 45 J. Clin. Microbiol. 1225-33 (2007)]。PSに対する抗体は注射からの血清型-特異的保護を提供し、肺炎連鎖球菌に対する現行のワクチンは最も蔓延している株の莢膜PSを包含する。[Cole, 61 JAMA, 663-66 (1913)]。血清群6株は、侵襲性肺炎連鎖球菌症において最もありふれたものであり、現行のワクチンは血清群6感染に対する保護のための調製物である。[Hausdorff et al., 30 Clin. Infect. Dis. 100-21 (2000)]。
【0019】
肺炎連鎖球菌単離物の正確に効率的に血清型分類することは、肺炎連鎖球菌ワクチンの有効性を測定するのに重要である。新たな肺炎連鎖球菌ワクチンの導入後、そのワクチンに含まれ、その血清型を発現する肺炎連鎖球菌はあまり一般的ではなくなり、一方、非ワクチン型を発現する肺炎連鎖球菌の有病率は同じままである。いくつかの場合、非ワクチン型を発現する肺炎連鎖球菌はワクチン血清型を発現するそれに置き換わり、非ワクチン型の有病率はより高くなる。[Pelton, 19(1) Vaccine S96-S99 (2000)]。さらに、血清型の有病率は、理由は不明だが、経時変化する。[Finland & Barnes, 5 J. Clin. Microbiol. 154-66 (1977)]。これらの変化はワクチンの臨床学的有効性に影響するので、多数の肺炎連鎖球菌単離物の血清型分類は肺炎連鎖球菌ワクチンをモニターする重要な部分である。
【0020】
その上、エス・ニューモニアエ血清型6Aに関して、現行のワクチン製剤は6A PSを持たないが、6B PSを持ち、6Bに対して生起した抗体は6Aに対して交差反応すると考えられる。この現象は100%ではないが、6B PSを含むいくつかのワクチンは6Aに対して抗体を生起しない。[Yu et al., 180(5) J. Infect. Dis. 1569-76 (1999)]。実際に、6Aのごとき非ワクチン血清型は、依然として、ワクチン接種した子供において病気を引き起こしているようだ。[Clover & Klein, Strategies for Prevention & Treatment of Pneumococcal Disease, 44th Ann. ICAAC Meeting (Washington, DC, 2004)]。ゆえに、さらなる6群血清型の新出は一層重要になるであろう。
【0021】
さらに、6Aおよび6B血清型は、それぞれ、侵襲性肺炎連鎖球菌症の4.7%および7%を占める。[Robbins et al., 148 J. Infect. Dis. 1136-59 (1983)]。生物化学的研究により、血清型6Aおよび6B PSは、4つの単糖類:ラムノース、リビトール、ガラクトース、およびグルコースを含有する繰り返し単位の線状ポリマーであることが分かった。[Kamerling, in S. PNEUMONIAE: MOLECULAR BIO. & MECHANISMS OF DIS. 81-114 (Tomasz, ed., Mary Ann Liebert, Inc., Larchmont, NY, 2000)]。上記のごとく、6A PSは、ラムノースからリビトールへの1→3リンケージを有し、6B PSはラムノースからリビトールへの1→4リンケージを有する。[前出]。
【0022】
当該技術分野において、様々な血清型分類法が周知であるが、それらは、大抵、手動であり、遅く、しかも、実施するのが退屈である。改良された血清型分類「マルチビーズアッセイ」はすでに記載され、フローサイトメーターが付随して半自動的に実行できる多重型イムノアッセイに基づく。[Park et al., 7 Clin. Diagn. Lab. Immunol. 486-89 (2000)]。このマルチビーズアッセイの特異性は、90の既知の血清型の全てを代表する肺炎連鎖球菌株を用いて、すでに、十分に確立されている。[Yu et al., 43(1) J. Clin. Microbiol. 156-62 (2005)]。このアッセイは、優れた特異性を提供し、肺炎連鎖球菌莢膜PSに特異的な多くのmAbを用い、大いに自動化され、さらに、高いスループットを提供し得る。結果として、このアッセイは多くの疫学研究において有用であろう。
【0023】
このマルチビーズアッセイは特に有利である。なぜならば、モノクローナル抗体はポリクローナル試薬よりも特異的だからである。6A血清型に関して、ほとんどの「6A」単離物(膨張反応およびポリクローナル試薬によって定義される)は、6A-特異的モノクローナル抗体(Hyp6AG1、Hyp6AM6、およびHyp6AM3)と反応し、いくつかの「6A」単離物はひとつのmAb (Hyp6AG1)と反応するが、それ以外(Hyp6AM6またはHyp6AM3)とは反応しない。ここに記載される他の試験により、Hyp6AM6またはHyp6AM3と反応しない6A単離物は、依然同定されていなかった6A亜型であることが確認された。換言すれば、そのモノクローナル抗体は、6A血清型の中の亜型を認識した。[Lin et al., 44(2) J. Clin. Microbiol. 383-88 (2006)]を参照。最初、双方のmAbに反応する単離物は6Aαと同定され、Hyp6AG1にのみ反応するものは6Aβと表示されたが、その後、6Aαは6Aのままとして、新たな血清型を6Aβではなく、6Cと同定することが提案された。[前出、Park et al., 45 J. Clin. Microbiol. 1225-33 (2007)]。かくして、6Aβおよび6Cの双方をここで用いることがあり、それらは等価である。6Dを同定するのに有用なモノクローナル抗体はAb Hyp6BM6、mAb Hyp6BM7、およびmAb Hyp6BM8と称されるものを含む。
【0024】
さらに、6Cに関して、新たな血清型を同定する上での考慮は、ヒト抗体との結合特性である。様々な6A、6C、および6B単離物は、オプソニン作用アッセイおよび高レベルの抗−6B抗体を持つヒト血清を用いて比較された。ヒト血清は6Bおよび6Aをオプソニン化するが(図2)、ブラジル、韓国、および米国からの7つの異なる6C単離物をオプソニン化しなかった(図2)。このことは、6C単離物は明確であるが均一な血清型特徴を示すことを示唆している。
【0025】
遺伝子研究は、6Aまたは6B血清型のいずれかを発現する肺炎連鎖球菌は、サイズが約17.5Kbのほぼ同一の莢膜遺伝子座(CGL)を有することを報告する。配列情報は、オンライン、例えば、ザ・サンガー・インスティチューツ・シーケンシング・ゲノミック・プロジェクツ (the Sanger Institute's Sequencing Genomics Projects)のサイトから入手可能である。ラムノシルトランスフェラーゼをコードするwciP遺伝子には一貫した差異がある。[Mavroidi et al., 186 J. Bacteriol. 8181-92 (2004)]。血清型6A wciP遺伝子は、残基195にセリンをコードするが、血清型6B遺伝子はその残基にアスパラギンをコードする。[前出]。
【0026】
遺伝子研究によって、6C単離物が、実際には、6A血清型(密接に関連する6B血清型でもいくかのその他の非関連の血清型でもない。)のメンバーであることも確認された。ブラジル、韓国、および米国から収集した10個の単離物の研究において、6Cと同定された10個すべての単離物は、残基195にセリンを有し、血清型6AにおけるwciP遺伝子と一致した。いくつかの肺炎連鎖球菌単離物のwciP遺伝子のDNA配列を、図4に図示する。トランスフェラーゼ遺伝子wciNおよびwciOの遺伝子配列も比較した。プライマー5016および3101を用いるPCRによってwciN領域を調査したら、調査した9つすべての6A単離物は、調査した6つすべての(韓国、米国、およびブラジルからの)6C単離物がもたらすものよりも、約200塩基対(bp)長い生成物を生じる(図5)。
【0027】
ひとつの6A単離物(AAU9)およびひとつの6C単離物(ST745)由来のPCR産物のヌクレオチド配列を比較した(図14)。AAU9 PCR産物中の位置1203から2959までのすべての塩基(1757塩基)を配列決定し、GenBankデータベースにおいて6A単離物の莢膜座配列であると報告されているCR931638に相同的であることが分かった。対照的に、ST745(6C)配列は、位置1368までと、そして、位置2591から再び始まる6Aのものとほぼ同一であることが分かった。介在する1029bp配列(1369から2397まで)は、6Aのものと全く異なる。この介在配列は、エス・サーモフィラス (S thermophilu)による多糖類合成に用いられるトラスフェラーゼ(EpsG)に類似する約98bpを含有する。
【0028】
6Cの莢膜遺伝子座は、wciN遺伝子を除き、6A座と非常に類似することに留意すべきである:6A株はwciNα遺伝子を有するが、6C株はwciNβ遺伝子を有する。これら2つの遺伝子は、サイズが異なり、かくして、6Aおよび6C血清型はPCRによって容易に区別できる。wciNα遺伝子は、314個のアミノ酸のWCINαをコードし、wciNβ遺伝子は1125塩基長のORFを産生し、その産物WCINβは374個のアミノ酸を有する。さらに、これら2つのタンパク質はアミノ酸レベルではたいして相同性を有しない。
【0029】
推定wciN遺伝子産物の配列は、それらのグリコシルトランスフェラーゼ機能を示唆する。WCINβは、ブドウ球菌capH遺伝子産物に対して類似性を有し、グリコシルトランスフェラーゼ群1ファミリーに属する160アミノ酸長トランスフェラーゼドメインを有する。対照的に、WCINαは、グリコシルトランスフェラーゼファミリー8(ex)に属し、それは、多くのガラクトシルトランスフェラーゼを含む。[Campbell et al., 326 Biochem. J. 929-39 (1997)]。本研究は、wciNが6Aおよび6C細菌の間の差異の要因であることを示した。相同組換えによるwciN6A(6AのwciN)のwciN6C(6CのwciN)への置換が血清型を6Aから6Cに変更したように見えるからである。[Park et al., 75 Infect. Immun. 4482-89 (2007)]。実際に、wciNα遺伝子をwciNβ遺伝子に置換することによって、6A株を6C株に転換できる。
【0030】
興味深いことに、6Aおよび6Cに関して観察されるガラクトース/グルコース交換は、他の肺炎連鎖球菌血清型に見出される。肺炎連鎖球菌の9L血清型PSはガラクトース分子を有するが、9N PSはグルコース分子を有する。9Lおよび9N血清型の莢膜遺伝子座は互いに類似するが、ひとつの遺伝子遺伝子wcjAにおいて相違し、それは、9Lについてガラクトシルトランスフェラーゼをコードし、9Nについてグルコシルトランスフェラーゼをコードする。9Lおよび9N血清型のwcjA遺伝子は非常に類似し;ひとつのものが別のものから突然変異によって生じるようである。
【0031】
対照的に、wciNαおよびwciNβ遺伝子は非常に異なり、wciNβ遺伝子はデータベースから入手可能ないずれの他の肺炎連鎖球菌遺伝子とも相同的ではない。おそらく、wciNβ遺伝子は、肺炎連鎖球菌以外の有機物を起源としたのであろう。相同組換えに参与し、肺炎連鎖球菌における相同組換えに重要であることが知られているwciNβ遺伝子のふたつのフランキング領域によって支持される見解である。[Prudhomme et al., 99 P.N.A.S. USA 2100-05 (2002)]。さらに、抗菌耐性遺伝子の研究により、エス・ニューモニアエと細菌種との間に水平遺伝子トランスフェラーゼが示された。例えば、[Feil et al., 151(6) Res. Microbiol. 465-69 (2000); Muller-Graf et al., 145(11) Microbiol. 3283-93 (1999); Coffey et al., 5(9) Mol. 2255-60 (1991)]を参照。
【0032】
さらに、wciNβ遺伝子の一部が、エス・サーモフィラスによる菌体外多糖類の合成に関与する遺伝子であるEpsG遺伝子に類似する(81%相同性)。相同性は非常に短いDNAの断片でのみ見出されたが、かくして、エス・サーモフィラスはwciNβの起源ではないであろう。WCINβのタンパク配列はイー・コリ(E. coli) K-12株のwaaG (rfaG)遺伝子産物に類似し、いくつかの肺炎連鎖球菌遺伝子は、グラム陰性有機物からきたのであろう。かくして、wciNβ遺伝子はグラム陰性種からきたという可能性がある。それにも関わらず、エス・サリバリウス (S. salivarius)、エス・ミティス (S. mitis)、およびエス・オラリス (S. oralis)は、リーディング候補である。なぜならば、それらは、肺炎連鎖球菌とともに口腔内に共存し、多くの抗菌耐性遺伝子がエス・オラリスに連結しているからである。
【0033】
複数の6C単離物についてwciNβ領域を調査したところ、それらのクロスオーバーポイントおよびフランキング領域配列は同等であることが分かった。また、それらの莢膜遺伝子座プロファイルは、多くの異なる莢膜遺伝子座プロファイルを有する6A単離物とは対象的に、9−10−1に高度に制限されている。[Mavroidi et al., 2004]。さらに、この9−10−1莢膜遺伝子プロファイルは、6Aおよび6B単離物の莢膜遺伝子プロファイルのなかでは普通ではなく、かつ、それらから大きく分離され、発見は、wciNβ遺伝子の捕捉が起こらなければならないこと、および、すべての6C単離物が世界中で発見されることを示し、元来6Cになった単一の細菌に由来する莢膜遺伝子座を有する多くのタイプの病気を引き起こす。6Cは外来遺伝子捕捉の独特かつ明確な例を提供することができるで、それは細菌遺伝子進化を研究するにはいいモデルでああろう。これは、抗菌耐性遺伝子とは異なり、安定した変化も構築する。
【0034】
6C血清型は1または2の莢膜遺伝子座プロファイルのみを有するが、6Aおよび6B血清型は、多様な莢膜遺伝子座プロファイルを有する。[Mavroidi et al., 2004]。かくして、6C莢膜遺伝子座は、近年、6Aまたは6B莢膜遺伝子座と比較して、より一層多く出現している6Cは27年前と比較してより一層多く出現しているが、これらの発見は、6C血清型莢膜遺伝子座が、「近年」、一箇所で出現し、かつ、世界中に迅速に広がったことを示している。遺伝子が強力な生存優位性を与えるとき、その遺伝子は世界中に迅速に広がる。例えば、抗菌耐性遺伝子はたったの一年で世界中に広がるであろう。おそらく、天然のヒト抗体は、6Aまたは6Bに対するよりも6Cに対してはあまり有効でない。6C莢膜遺伝子座が、6Aまたは6Bよりもより高い生存優位性を与えるかどうが調査されるであろう。
【0035】
MLS研究は、6C多重依存性がSTを発現することを示し、かくして、6C莢膜遺伝子座は様々な肺炎連鎖球菌単離物の間で交換されてきたに違いない。6C莢膜遺伝子座が、さらなる生存優位性を与えるSTと結合するか否かが調査されるであろう。6Cの広がりおよび多重抵抗性遺伝子を有する国際株の中での6C莢膜座の新出はモニターされるべきである。
【0036】
上記したように、6C肺炎連鎖球菌単離物は化学的に明確な構造を有する。より詳しくは、単糖類分析は6A莢膜PSに見出されるガラクトースが6C PSに存在せず、その代わり、グルコースを含有することを示した。6C PSの繰返し単位は、見かけ上、ひとつのリビトール、ひとつのラムノース、およびふたつのグルコース部分を含有する。血清型6Cは、血清型6Aに対する血清学的および構造学的関係から、血清群6の第3のメンバーであり、91番目の肺炎連鎖球菌血清型である。
【0037】
ガラクトースおよびグルコース分子は、それらの第4炭素に結合するヒドロキシル基の向きのみにおいて異なり、6Aおよび6C PSの繰返し単位は、ひとつのヒドロキシル基の向きのみにおいて異なる。この小さな構造的差異は、なぜ6Cが以前ポリクローナル抗血清で同定されなかったかを説明する。化学構造の調査で、6Cは、炭化水素組成分析によって、または、アノマープロトンの単一プロトンNMRによって、6Aから生化学的に識別され得る。[Abeygunawardana et al., 279 Anal. Biochem. 226-40 (2000)]。6A NMRと6C NMRとはパターンが異なるが、6CのアノマープロトンのNMRパターンは、6Aのそれに非常に類似する。化学的および遺伝子学的試験を用いることができるが、血清学的方法は、吸収によって特異的に作成されたモノクローナル抗体またはポリクローナル抗血清のいずれかをを用いて6Cを同定するのに最も有用な手法である。
【0038】
血清群6は3つのエピトープ:6a、6bおよび6cを含有することが知られている。[Henrichsen, 1995]。エピトープ6aは、血清型6Aおよび6Bの双方に存在し、、一方、エピトープ6bおよび6cは、それぞれ、血清型6Aまたは6Bのいずれにしか存在しないことが知られている。6C血清型の発見は、血清群6のなかにさらなるエピトープが存在することを示唆している。6Aおよび6Bを認識するが、6Cを認識しないmAb Hyp6AM3は、エピトープ6bを認識すべきである。mAb Hyp6AG1は6Aおよび6Cを認識するので、新たなエピトープ「6d」を認識すると規定されるであろう。3つすべての血清型(6A、6B、および6C)に結合するもうひとつのmAbおよび共有エピトープは、「6e」と規定されるであろう。血清型6Aおよび6Bに対する高次構造依存性エピトープもすでに記載されている。[Sun et al., 69 Infect. Immun. 336-44 (2001)]。血清群6に対するとても多くのエピトープの観察は、シアル酸の単純線状ホモポリマーでさえ少なくとも3つのエピトープを有し得るという以前の観察と一致する。[Rubenstein & Stein, 141 J. Immunol. 4357-62 (1988)]。実際に、肺炎連鎖球菌PSは、以前規定されたよりも多くのエピトープを有し[Henrichsen, 1995]、多くのエピトープの存在が、肺炎連鎖球菌コンジュゲートワクチンの製造中にエピトープを変化させる機会を増大する。
【0039】
血清型6Cの発見は全く予期されていなかった。なぜならば、血清群6は、1929年に発見されて以降、広範な研究がなされてきたからである。[Heidelberger & Rebers, 1960]。したがって、十分に確立されかつ広範に特徴付けられた血清型のなかでさえもさらなる亜型(すなわち血清型)が存在する可能性を考慮しなければならない。例えば、血清型19Aの中に亜型が存在する可能性を考慮する必要がある。なぜならば、19A莢膜PSに対してふたつの化学構造が報告されているからである。[Kamerling, Pneumococcal polysaccharides: a chemical view, in MOL. BIOL. & MECHANISMS OF DISEASE 81-114 (Mary Ann Liebert, Larchmont, 2000)]。19Aの亜型が見つかれば、それらの存在は、肺炎連鎖球菌コンジュゲートワクチンの導入後に見られる血清型「19A」の有病率の急速な増大を説明するであろう。[Pai et al., 192 J. Infect. Dis. 1988-95 (2005)]。さらに、6Cが最近発生したであろう可能性を考慮すべきである。この可能性と一致して、これらの遺伝子研究は、6C血清型莢膜遺伝子座は、6A座[Mavroidi et al., 2004]ほど発散しないことを示す[Lin et al., 44 J. Clin. Micro. 383- (1988)]。遠い昔(おそらく、50〜100年前)に採取した肺炎連鎖球菌単離物を研究することによって、6C株の起源および広がりを調査することは興味深いことである。
【0040】
6Cの発見は、血清群6の新たなメンバーについての理論的可能性によって、血清群6莢膜遺伝子座の進化可能性を増大する。ここで提供される新たなメンバーは、「6D」と表示され、6BのwciPおよびwciN6Cを含む。化学的に、6D PSはガラクトースのかわりにグルコースを有し、かつ、1→4ラムノース−リビトールリンケージを有する。本発明以前は、この新規血清型が天然に存在するか新出するかもしれないかどうかは不明であった。したがって、血清型6D株を用いて、6D株についての肺炎連鎖球菌単離物研究所コレクションを調査した。
【0041】
6C血清型もワクチン有効性をモニターするのに有用である。6Aおよび6C血清型は、肺炎連鎖球菌ワクチンを要件とする疫学的研究および肺炎連鎖球菌ワクチン有効性の研究において、識別されるべきである。例えば、肺炎連鎖球菌ワクチンが6Aに対して有効であるが、6Cに対しては有効でないならば、そのワクチンは6C血清型が有病率な領域では有効でないであろう。これは事実であろう。なぜならば、肺炎連鎖球菌ワクチンは6Cをオプソニン化する抗体を偶然誘発するだけだからである。また、従来の肺炎連鎖球菌ワクチンを使用することは、6Cの有病率を十分に変化させることができ:6Cの有病率を増大させるが6Aのは減少させる。下記の予備データは、6C有病率は不変だが、6A有病率は、2000年以降コンジュゲートワクチンの使用で減少したことを示す。これらの血清型を識別せずに、ワクチンを上手く使用するか、または、その有効性を評価することは困難であろう。現時点で、この新たな血清型は、ここに開示するように、抗体によって同定できるが、本発明によって、さらなる遺伝子学的および生化学的試験が工夫され、想定される。
【0042】
その上、6C血清型の有病率または6D血清型の新出を地球規模でモニターするべきであり、肺炎連鎖球菌ワクチン配布されおよび配布されない領域における新たな肺炎連鎖球菌の新出についての価値ある情報を提供する。6C血清型も、ブラジル、カナダ、中国、韓国、メキシコ、ヨーロッパ[Hermans et al., 26 ワクチン 449-50 (2008)]、および米国で同定されている。
【0043】
この目的のため、本発明のモノクローナル抗体は6C血清型を同定するのに有用である。すなわち、6Aおよび6CはどちらもmAb Hyp6AG1によって同定されるが、6C血清型はmAb Hyp6AM6またはmAb Hyp6AM3と反応しない。それゆえ、Hyp6AM6またはHyp6AM3をネガティブコントロールとして用いることができ、そこから6Aおよび6Cを同定できる。これらのモノクローナル抗体を用いて、CDCに提出された米国肺炎連鎖球菌単離物のなかでの6Aおよび6Cの有病率を分析した。おおよそ同数の肺炎連鎖球菌単離物が1999年から2006年までにCDCに提出された。旧式の方法で「6A」と分類された標本を、ここに記載するモノクローナル抗体をい用いて再分析した。1999年、2003年および2004年に受領したほぼすべての「6A」ひょうほんを再分析した。CDCが2005年および2006年に受領したサンプルはフラクションのみ再分析した。表から分かるように、6Aの有病率は減少したが、6Cの有病率は同じままであった。このことは、現在入手可能な肺炎連鎖球菌ワクチンは6Cに対しては有効でないかもしれないことを示している。
【0044】
【表1】

【0045】
血清型6Cは、ブダペスト条約により、ジ・アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(the American Type Culture Collection)に寄託されている。
【0046】
肺炎連鎖球菌莢膜多糖類の実際の合成は、多数の異なる遺伝子産物間の協働を必要とする。例えば、新たなグリコシルトランスフェラーゼにより作成されたあらたな繰返し単位は、新たな莢膜として発現される前に、現在あるフリッパーゼならびにポリメラーゼと適合しなければならない。かくして、血清型6Dを発現する新たな株(TIGR6Dと称する)を、6B莢膜遺伝子座にwciN6Cを挿入することによって、生成した。この新規株は、予想した構造の莢膜多糖類を生じ、6Bに対して血清学的類似性を提示し血清群6の他のメンバーと同じく、様々な成長条件で成長できる。かくして、血清型6Dは論理的だけではなく生物学的にも可能であり、天然に存在し得る。
【0047】
丁度、6Cが古典的な型分類法[Lin et al., 2006; Park et al., 2007]によって「6A」と以前分類されたように、膨張反応法は、新たな6D株を血清型6Bと分類していた。かくして、血清型6Dを発現する天然単離物を同定するために、古典的には6Bと規定された単離物を、mAbを用いて再調査した。以前6Bと分類された250を超える単離物を試験したにもかかわらず、6D単離物が天然に存在することは見出されなかった。さらに、古典的な型分類法で「6B」と血清型分類されたCDC単離物の中にwciN6Cは検出されなかった。かくして、血清型6Dを発現する肺炎連鎖球菌単離物は転々に存在することは見出されていない。あるいは、血清型6Dが天然に存在するならば、その有病率は非常に低い(6B有病率の<1%)。
【0048】
天然に明らかに存在しないにもかかわらず、6D血清型はふたつの可能性のあるメカニズムのうちのひとつによって天然に新出し得る。一方のメカニズムは6CのwciP遺伝子の突然変異を要件とする。なぜならば、6Aおよび6B血清型間の唯一の差異はwciP遺伝子における1つのヌクレオチドのようだからである。肺炎連鎖球菌についての突然変異率は〜1×10−8であり[del Campo et al., 43 J. Clin. Microbiol. 2207-14 (200); Fedson, 1988; Morosini et al., 47 Antimicrob. Agents. Chemother. 1464-67 (2003)]、安定肺炎のCOPD患者は、痰1mLあたり2.6 x 108 CFUの肺炎連鎖球菌を有しているであろう。[Sethi et al., 176 Am. J. Respir. Crit. Care Med. 356-61 (2007)]。かくして、正しい突然変異は6C肺炎のほぼすべての場合に生じ、細菌負荷の少ない他の6C感染で頻繁である。代替的なメカニズムは、ここで提供したように、6C株から6B株へのwciNの水平遺伝子伝達を要件とする。この状況は、実際に天然で発生する。なぜならば、複数の肺炎連鎖球菌血清型の輸送は子供の間で比較的高く[Gratten et al., 50 Biol. Neonate 114-20 (1986); Hill et al., 46 Clin. Infect. Dis. 807-14 (2008)]、血清型6Bおよび6Cは、世界のいくつかの地域(例えば、ブラジル)ではかなりありふれている[Lin et al., 2006; Park et al., 2007]。さらに、相同組換えは容易に発生する。なぜならば、6Bおよび6Cの17kbの莢膜遺伝子座は、wciN遺伝子を除き、ほぼ同一だからである。これらの考察は、天然に、6D血清型を創出する環境があることを強く示唆している。
【0049】
6Dを創出する環境が天然にあると考えると、それがないことの理由を検討することは興味深い。6Dに対する天然免疫バリアがある可能性があるが、明らかに、免疫前ヒト血清はTIGR6Dを殺しもしないし、オプソニン化もしない。あるいは、6Dが現れるのに十分な時間がなかったので、6Cが最近現れたのであろう。6Dが現れる物理的な時間を見積もるのは困難であるが、6Cは数十年存在し、いくつかの大陸で見出されている。もっともそれらしい説明は、6A、6B、または6Cを乗り越えて6Dを選択するための十分な生物学的圧力がなかったということである。生存優位性の不存在下、(上記したように、6C感染のほぼすべての場合において)6D血清型は天然に出現したが、6A、6B、または6C血清型との競合のため、繁殖しなかった。同様に、抗菌剤を臨床使用され、抗菌剤を中止したときに消滅する場合、抗菌耐性株は生存し、繁殖する。例えば、[Katsunuma et al., 102 J. Appl. Microbiol. 1159-66 (2007)]を参照せよ。
【0050】
6A PSは元の14価PSワクチンに含まれていたが、1983年に23価ワクチンが利用可能になると、6B PSに取って代わられた。なぜならば、とりわけ、6B PSは、6A PSと比べて、加水分解による破壊に対して非常に抵抗性があるからである。[Zon et al., 37 Infect. & Immun. 89-103 (1982)]。ここに提供される研究は、6D PSは6B PSと同じくらいに化学的に安定であり、6C PSと比べて、加水分解に対してより一層抵抗性である。6D PSは6C PSと交差反応する抗体を誘発しそうなので、6Dはワクチンとして6C PSよりも有用であろう。
【0051】
肺炎連鎖球菌の最も重要な病原性因子をコードする莢膜遺伝子剤の進化を理解することは興味深い。たったふたつの血清型が知られているだけで、血清群6の進化は広範に研究されている[Mavroidi et al., 2004; Robinson et al., 2002]。血清型6Cの発見後、血清群6はより興味深いものになった:今や、この血清群は血清型6Dでの進化研究がより一層興味深い。
【0052】
しかも、現在利用可能な23価肺炎連鎖球菌ワクチンは6B PSを含有するが、旧式の14価肺炎連鎖球菌ワクチンは6A PSを含有する。PSは23価肺炎連鎖球菌ワクチンにおいて置き換えられている。なぜならば、6A PSはワクチン製剤中で安定ではなく、6B PSは、しばしば、6A PSと交差反応する抗体を誘発するからである。[Robbins et al., 1983]。調査により、6AのPS化学的不安定性はラムノースおよびリビトール間の1→3リンケージによることが分かった。[Zon et al., 1982]。6B PSに見出された1→4リンケージは6A PSの1→3リンケージよりも安定である。6D PSの推定構造は、6C PSが不安定な1→3リンケージを有し、6D PSがより安定な1→4リンケージを有することを除き、6C PSのものと同一である。かくして、この安定性のため、6D PSは、ワクチンにおいて6C PSよりもかなり有用であることが証明された。
【0053】
重要なことは、ここに提供されるこれらの新規血清型6Cおよび6Dは、ワクチンに、または肺炎連鎖球菌ワクチン開発に有用であろう。例えば、6D PS、そのPSの一部、またはそのPSの模倣体を肺炎連鎖球菌ワクチンに包含させることができる。連鎖球菌および肺炎連鎖球菌PSを含むコンジュゲートワクチンが当該分野においてよく知られている例えば、[米国特許第6,248,570号;第5,866,135号;第5,773,007号]を参照せよ。多糖類分子のタンパク質またはペプチド模倣体のごときPSミモトープも代替的な抗原または免疫原として可能である。例えば、[Pincus et al., 160. J. Immunol. 293-98 (1998); Shin et al., 168 J. Immunol. 6273-78 (2002)]を参照せよ。さらに、6Cおよび/または6Dのタンパク質または核酸は、ワクチンまたは当該分野で知られているいずれかの数の技術を用いるワクチン開発において抗原または免疫原として機能することができる。例えば、[米国特許第6,936,252号]を参照せよ。1以上の補助剤をそのようなワクチンに含ませることができる。非経口、経粘膜その他の投与のいずれかによる肺炎連鎖球菌ワクチンのデリバリーおよびそのようなワクチンの設計、モニタリングおよび投薬計画が当該分野でよく知られている。
【0054】
さらに、6Cおよび6D血清型はワクチン開発において有用である。なぜならば、当該細菌を、試験ワクチンで生起した血清または抗体を用いるオプソニン作用またはELISAアッセイにおける標的として用いるからである。6Cおよび6D血清型の抗原を能動的保護に用いることができる抗体を生起するのに用いることもできる。そのような方法は当該分野でよく知られている。
【0055】
さらに、6Cおよび6Dの同定は、抗6C抗体sおよび抗6D抗体の生成および単離を提供する。これらは、この明細書に照らし、当該分野でよく知られている従来手段によって調製し得る。この点において、抗体なる用語は、無傷イムノグロブリン分子ならびに部分、フラグメント、ペプチドおよび、例えば、Fab, Fab', F(ab')2, Fv, CDR領域、または6C抗遺伝子エピトープ、もしくはミモトープに結合することができるイムノグロブリン分子のいずれかの部分もしくはペプチド配列のごときそれらの誘導体の双方を含み、それらのすべてを「抗原結合分子」ともいう。抗体または抗原結合分子は、抗原と特異的に反応し、それによって、その抗原を抗体または抗原結合分子に結合させることができるならば、「抗原に結合することができる」といえる。例えば、[WO/US2006/014720; WO/US2006/015373]を参照せよ。
【0056】
本発明の具体例を、ここからは、非限定的な実施例によって、さらに説明する。
【0057】
実施例1 肺炎連鎖球菌血清型の同定
肺炎連鎖球菌ライゼートのコレクション:肺炎連鎖球菌血清型6Aβ([Lin et al., 44 J. Clin. Micro. 383-88 (2006)]を参照せよ。)を、495の臨床単離物を用いる盲試験において単離した:50の単離物はメキシコから、100はデンマークから、そして345はブラジル由来のものであった。22の単離物は上咽頭における肺炎連鎖球菌の無症状保菌者からのものであり、475の単離物は、髄膜炎および敗血症のごとき、侵襲性肺炎連鎖球菌感染した患者由来のものであった。さらに、血清型11A、11B、11C、11D、および11Fを発現するコントロール肺炎連鎖球菌株は、スタテンス・セールム・インスティトゥート (Statens Serum Institut) (Copenhagen, Denmark)から購入した。
【0058】
臨床単離物のライゼートを起源の国で調製した。0.5%酵母抽出物を含む300マイクロリットルのTodd-Hewitt培地(THY培地)を肺炎連鎖球菌の単一コロニーで接種した。37℃で一晩インキュベーションした後、50μlの溶解溶液(0.2%デオキシコール酸ナトリウム、0.02%SDS、0.1%アジ化ナトリウム、0.3Mクエン酸ナトリウム、pH7.8)で細胞を溶解した。ブラジルにおいて、400μlのTHY培地を細菌成長に用い、100μlを取り出して細菌を凍結保存し、その後、残りの300μlと50μlの溶解溶液と混合した。デンマークにおいて、325μlのTHY培地および25μlの溶解溶液を用いた。細菌は、37℃にて混合物をインキュベートすることによって溶解した。ライゼートをコード化し、血清学試験用に、アラバマ大学バーミンガム校(University of Alabama at Birmingham;UAB)研究所に通常のメールで外気温度にて発送した。
【0059】
マルチビーズアッセイ用に細菌ライゼートの遠方からUABへの発送を簡略するために、室温(RT)または37℃で保存下後、細菌ライゼートの安定性を比較した。この実験により、細菌ライゼートは、RTにて一ヶ月間まで、37℃にて数日間、マルチビーズアッセイに影響することなく保存できることを明らかになった。かくして、この研究において、通常の郵便メールシステムを用いて、いかなる熱的保護をすることなく、外気温度にてすべてのライゼートを発送した。
【0060】
血清学試薬:すべてのポリクローナル血清型分類血清はウサギで作成し、スタテンス・セールム・インスティトゥートから入手した。それらは、血清群分類用に12の血清プールおよび様々な型または因子特異的抗血清を含む。[Sorensen, 31 J. Clin. Microbiol. 2097-2100 (1993)]。すべてのmAbsは記載するように作成し、ハイブリドーマ培養上清を用いた。[Yu et al., 2005]。
【0061】
マルチビーズアッセイ:このアッセイは、記載するように、2つの異なるラテックスビーズを用いて行った。[Yu et al., 2005]。一方のビーズセット(セット1)は14種の異なるラテックスビーズの混合物であり、各々がひとつの肺炎連鎖球菌PS抗原でコートされていた。これらの14種の肺炎連鎖球菌PS抗原は、血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9N、9V、14、18C、19A、9F、および23Fであった。ビーズセット2は、10種のビーズタイプの各々を10種の異なる肺炎連鎖球菌PS(血清型2、8、10A、11A、12F、15B、17F、20、22F、および33F)のうちのひとつでコートすることによって作成された。
【0062】
セット1ビーズは、5倍または20倍希釈の細菌ライゼートのいずれか一方および前記ビーズ上に含有される肺炎連鎖球菌莢膜PSに特異的な複数のmAbの混合物と混合された。インキュベーションおよび洗浄後、このビーズ混合物をフルオレッセイン−コンジュゲーティド抗マウスイムノグロブリン抗体と反応させた。ポリクローナルウサギ抗血清(スタテンス・セールム・インスティトゥート)およびフルオレッセイン−コンジュゲーティド抗ウサギイムノグロブリン抗体の混合物を用いた以外は、セット1ビーズと同じ様に、セット2ビーズを用いた。インキュベーション後、各ビーズタイプの蛍光量をフローサイトメーター(FACSCalibur, Beckton Dickinson, San Jose CA)で定量した。そして、各ビーズタイプの蛍光を用いて、その血清型を決定した。67%よりも大きな蛍光阻害をもって陽性とした。
【0063】
ノイフェルト試験 (Neufeld's test):このアッセイを、デンマーク、ブラジル、およびメキシコの参照研究所によって、標準血清群分類[Sorensen, 1993]およびスタテンス・セールム・インスティトゥートからの血清型分類用ウサギ抗血清を用いて、記載[Henrichsen, 33 J. Clin. Microbiol. 2759-62 (1995); Konradsen, 23 Vaccine 1368-73 (2005); Lund, 23 Bull.Wld Hlth Org. 5-13. (1960)]されるように行った。
【0064】
ドットブロットアッセイ:一致しない結果を調査するために、このアッセイを、以下の血清群/血清型:1、4、5、6、7、8、9、11、12、14、18、および23に対する、スタテンス・セールム・インスティトゥートからの肺炎連鎖球菌抗血清を用いて、記載[Fenoll et al., 35 J. Clin. Micro. 764-76 (1997)]するように行った。6A(Hyp6AM3)および18C(Hyp18CM1)に特異的なモノクローナル抗体も同じケースに用いた。簡単に言うと、THY培地中で成長させた熱死肺炎連鎖球菌をニトロセルロース膜のストリップにスポットした。乾燥後、これらのストリップをブロックし、洗浄した。ついて、ストリップを希釈抗血清またはmAb溶液中で1時間インキュベートし、洗浄し、ついで、希釈ヤギ抗−ウサギまたはマウスイムノグロブリン−ペルオキシダーゼコンジュゲートに暴露した。室温にて1時間インキュベートした後、これらのストリップを洗浄し、3−アミノ−9エチルカルバゾール溶液に暴露した。スポットが現れたら、これらのストリップを洗浄し、評価した。
【0065】
PCR反応:肺炎連鎖球菌をTHY培地中で、650nmにて0.8のODにまるまで成長させた。Invitrogen EASY-DNAキットを用いて、所定のインストラクションに従い、THY−成長肺炎連鎖球菌の4mlサンプルを1mlにまで濃縮することから始めて(Invitrogen, Carlsbad, CA)、染色体DNAを調製した。血清群6決定について、テンプレートとして染色体DNAを、ならびにプライマーwciP-アップ、5'-ATG GTG AGA GAT ATT TGT CAC-3'およびwciP-ダウン、5'-AGC ATG ATG GTA TAT AAG CC-3'を用いて、PCRを行った。PCR熱サイクル条件は、[Mavroidi et al., 2004]に記載する通りであった。Qiagen PCRクリーンアップカラム(Qiagen, Valencia, CA)を用いて、過剰なプライマーをPCR反応から除去し、PCRをDNAテンプレートとして、wciP-アッププライマーを用いる自動化DNA配列決定に付した。Sequencher(GeneCodes, Inc., Ann Arbor, MI)およびthe MacVector Sequence Analysis (Accelyrs, San Diego, CA)の援助により、結果を解析した。
【0066】
血清型11A決定について、莢膜遺伝子座の部分のPCRを、テンプレートとして染色体DNA、1μlの順方向プライマー(50pmol)および1μlの逆方向プライマー(5pmol)を用いて、記載[Mavroidi et al., 2004]されるように行った。プライマーは、11A順方向5'-GGA CAT GTT CAG GTG ATT TCC CAA TAT AGT G-3'および11A逆方向5'-GAT TAT GAG TGT AAT TTA TTC CAA CTT CTC CC-3'であった。PCRサイクルは、94℃にて5分間から開始し、94℃にて1分間、50℃にて1分間および72℃にて2分間の30サイクル、引き続き、72℃にて10分間の最終伸張であった。これらのPCR反応生成物をアガロースゲル電気泳動(トリス酢酸塩バッファー0.8%アガロース)によって解析して、アンプリコンサイズを決定した。
【0067】
メキシコからの50の単離物の研究:メキシコからの50の単離物をTHY培地中で成長させ、溶解し、型分類のためUABに送付した。マルチビーズアッセイの結果をノイフェルト試験結果と比較すると、10サンプルの結果が一致しなかった。8つの不一致サンプルの新たなライゼートを入手し、盲検で再調査すると、すべての結果が合致し、これらの不一致は表示ミスが大きな要因であったことを示している。ノイフェルト試験により血清型3および10Aと分類されたふたつの単離物(MX24およびMX37)は、元々、マルチビーズアッセイによって分類不可(NT)と分類された。これらふたつの血清型はマルチビーズアッセイによっ同定されているはずなので、さらなる研究用に、これらのふたつの細菌単離物をUABに送付した。そこで、それらは、THY培地中で十分に成長することが分かり、新たなライゼートはノイフェルト試験結果と合致する結果を生じた。かくして、これらふたつの単離物は、おそらく、肺炎連鎖球菌の不十分な成長のため、当初、マルチビーズアッセイによって陰性であると誤って同定された。
【0068】
デンマークからの100の単離物の研究:100のデンマーク単離物のマルチビーズアッセイ結果を、ノイフェルト試験結果と比較すると、ノイフェルト試験結果の表記において4つのエラーが見つかり、ひとつの株(DK94)は、ノイフェルト試験では血清型20と分類され、マルチビーズアッセイではNTと分類された(テーブル1)。
【0069】
【表2】

【0070】
DK94単離物をTHYで再成長させ、再調査したところ、1:5希釈にてほとんど阻害を生じなかった(9%)が、より高い希釈ではより大きな阻害を生じた(1:20希釈にて35%および1:320希釈にて50%)。この予期せぬ挙動は、この特異的単離物のライゼート中に非特異的結合物質が存在することを示唆する。このライゼート中のPSを70%エタノールで沈殿させ、エタノール沈殿物をマルチビーズアッセイで調査すると、この沈殿物は、血清型20に対して明らかな阻害を生じた(1:5希釈にて86%および1:20希釈にて81%)。かくして、初期の不一致は非特異的結合によるものであり、それはポリクローナル血清で行うアッセイにときおり観察され、アッセイ感度および臨床単離物との特異性において本質的な問題はない。
【0071】
ブラジルからの345のサンプルの研究:ふたつのアッセイ方法で得られた345のブラジル単離物を比較し、38のミスマッチがあった。これらの38のサンプルを試験記録を調査することによって再調査し、ブラジルでノイフェルト試験によって再試験すると、17のミスマッチは型分類間違いまたはサンプルの同定間違いであると説明がつく。17のミスマッチのうちのひとつは株BZ652であった。これは、当初、18Bと分類されていたが、6Aと決定された。なぜならば、ノイフェルト試験で弱く6Aであると分類され、ポリクローナル抗血清およびmAb Hyp6AM3を用いるドットブロットアッセイによって血清群6であると分類されたからである。残り21のミスマッチサンプルをTHY培地中で再成長させ、マルチビーズアッセイによって再試験すると、13の単離物の新たな結果はノイフェルト試験結果と合致した。これら13の単離物の元々のマルチビーズアッセイ結果を再調査すると、元々のマルチビーズで適当な血清型について、3つの単離物が弱く不完全な阻害(阻害は67%未満であった)を生じた。12の単離物が当初NTと分類されたが、ひとつの単離物(BZ52)は、当初、型3に分類された。2番目のサンプルはNTと再分類され、結果はノイフェルト試験結果と一致した(テーブル1、上掲)。
【0072】
これらの再調査の後、8つの不一致が再現され、いまだに説明がついていない(テーブル2およびテーブル3):5つの単離物がノイフェルト試験で6Aと分類されたが、マルチビーズアッセイではNTと分類され、ふたつの単離物(BZ435およびBZ705)がノイフェルト試験で11Aと分類されたが、マルチビールアッセイではNTと分類され、ひとつの単離物(BZ438)はノイフェルト試験でNTと分類されたが、マルチビーズアッセイでは18Cと分類された。ノイフェルト試験では、BZ438は血清群分類用Poolsera AおよびQ[Sorensen, 1993]のいくつかのロットと反応せず、それらは血清群18肺炎連鎖球菌と反応すべきであった。それは、また、血清群18に特異的な、または因子18c、18d、18e、および18fに特異的な抗血清のいくつかの異なるロットにも反応しなかった。BZ438は、しかしながら、血清群18−特異的ポリクローナル血清に対して、または、mAb Hyp18CM1に対して、陽性のドットブロット結果を生じなかった[Yu et al., 2005]。かくして、BZ438単離物は18Cと考えられた。
【0073】
株BZ435およびBZ705は、ノイフェルト試験で11Aと考えられたが、マルチビーズアッセイでは11A、11Dまたは11Fと考えられなかった。標準マルチビーズアッセイは血清群11に対するポリクローナル抗血清を用いるので[Yu et al., 2005]、これらふたつの株は、血清型11A、11Dおよび11Fに特異的であって、UAB研究所で最近生じたふたつのmAbs (Hyp11AM1およびHyp11AM2)で調査した(テーブル2)。興味深いことに、Hyp11AM1はBZ435を認識するがBZ705を認識しない。興味深いことに、Hyp11AM2はいずれの株も認識せず、11A血清型を発現する株の間の異質性を示す。PCR試験は、11A、11D、および11Fについての株で463塩基対のアンプリマーを生じるが、11Bおよび11Cについては生じない(テーブル2)。両方の株をこのPCRで試験すると、BZ435は陽性であったが、BZ705は違った。ノイフェルト試験は、両方の株が因子11cに特異的な抗血清と反応することを示したが、ノイフェルト試験はそれらの間の違い:Poolserum T [Sorensen, 1993]と、血清群11抗血清と、または11f因子血清と反応するのはBZ435であってBZ705ではないことも明らかにした。BZ705は11b発現について不明りょうな結果を生じ、それは血清型11Dであろうことが示唆された。ウサギ型分類用血清を用いた血清群11についてのドットブロット試験においては、しかしながら、BZ435は陽性であったが、BZ705は陰性であった。これらの結果すべてを考慮すると、BZ435は11A株であり、BZ705は11A、11D、または11Fではないようである。BZ705は、11C血清型に属するのであろう。なぜならば、BZ705は、11B株には発現されない11cエピトープを発現(および11c抗血清と反応)するからである。
【0074】
【表3】

【0075】
6Aであった残りの不一致株を調査するために、wciP遺伝子のDNA配列を調べた。最近の研究は、6Aおよび6Bの莢膜PSはリビトールに連結されたラムノースの繰返し単位を有することを報告する。そのリンケージは、6Aについては1−3であり、6Bについては1−4である。この研究は、ラムノシルトランスフェラーゼが、おそらく、莢膜座におけるwciP遺伝子によってコードされること、6Aについて、wciPが残基195にてセリンをコードすること、および6Bについて、wciPが残基195にてアスパラギンをコードすることを見出した[Mavroidi et al., 2004]。また、wciP対立遺伝子1、2、7、9および11は、専ら、血清型6Aに関連し、対立遺伝子3、4、5、6、8、および12は血清型6Bに関連する。[Mavroidi et al., 2004]。
【0076】
6AならびにBZ652と表示する5つの単離物から細菌DNAを得た。それはノイフェルト試験でほんのわずかに6Aと考えられた。このDNAをPCRによってwciP遺伝子の一部に増幅し、アンプリコンを配列決定し、その配列(645塩基対)を調査した。5つのサンプルの増幅が成功し、それらの配列は、6A血清型と一致した。なぜならば、それらは6A血清型と関連する対立遺伝子を発現し(テーブル3)、アミノ酸残基195にてセリンを発現したからである。対立遺伝子2 wciPのプロトタイプ配列と比較すると、BZ652のwciP配列は、3つの潜在的なアミノ酸置換を生じる5つの塩基対変化を有していた。3つの単離物(BZ17、BZ39、およびBZ86)は、対立遺伝子#9のプロトタイプ配列からひとつの同一ヌクレオチド変化を持つ同一wciP遺伝子配列を発現し、それゆえ、クローン上関連するであろう(テーブル3)。
【0077】
【表4】

【0078】
DNA研究はこれらの単離物が6A血清型に属するであろうことを示唆したので、ポリクローナル抗血清を用いるマルチビーズアッセイで、これらの単離物を調査した。6つの単離物すべてが6Aと分類された(テーブル3)。それらを、Hyp6AM3に加えて、19の異なる6A特異的mAbに分類すると、1つのmAb(Hyp6AG1)が6つの単離物を6Aと同定した(テーブル3)。Hyp6AG1を用いて、46の6A単離物を再試験すると(21はこの研究から、24はアラバマ大学バーミンガム校研究所コレクションから)、このmAbはこれらすべてを6Aと同定したこと、および、6B血清型を発現する43の単離物を含む89の非−6A血清型のいずれをも認識しなかったことが分かった。かくして、これら6つの単離物すべてが6Aであること、およびHyp6AG1はすべての6A単離物を認識することは明確である。また、mAb Hyp6AM3は6A単離物のサブセットを認識するが、そのサブセットは非常に大きい
【0079】
実施例2.様々な国からの肺炎連鎖球菌血清型6C単離物は、6Aに関連する分子的特徴を有する。
上記したように、以前は血清型6Aに関連した両方のmAbと反応しなかったブラジル単離物は、wciP対立遺伝子を調査することによって6A血清型に属することが示された。かくして、発明者らは、地理的に離れた地域からの10の6C単離物のwciP遺伝子を調査した。2003年および2004年に収集したブラジル単離物および米国単離物および韓国からのひとつの単離物を調査した。それらの配列は、10の単離物すべてが6A血清型に関連する遺伝子的特徴を有することを、明確に示した。
【0080】
実施例3.様々な領域からの6C単離物は均一な血清学的特徴を有する。
定量的なやり方で6C単離物の血清学的特徴を調査するために、インヒビションアッセイを用いて単離物を調査した。このアッセイは、6A PS−被覆ELISAプレートに結合する様々な抗6A抗体の細菌ライゼートによる阻害を測定する。簡単に言えば、ELISAプレート(Corning Costar Corp., Acton, MA)のウェルを、PBS中で一晩、37℃にて5μg/mLの6あ莢膜PS(G. Schiffman, Brooklyn, NYの贈呈)で被覆した。プレートを0.05%のTween 20を含有するPBSで洗浄した後、予め希釈した細菌培養上清(すなわち、ライゼート)を抗6A抗体とともにウェルに添加した。肺炎連鎖球菌ライゼートを、0.5%酵母抽出物で補給したTodd-Hewlett(THY)10mL中で、振盪することなく、管が濁るまで、肺炎連鎖球菌を成長させ、ついで、それらの管を溶解バッファー(脱イオン水中の0.1%デオキシコール酸ナトリウム、0.01%SDS、および0.15Mクエン酸ナトリウム)で37℃にて15分間インキュベートすることによって調製した。Hyp6AG1 mAbは1:250希釈にて用い、Hyp6AM3 mAbは1:100希釈にて用いた。スタテンス・セールム・インスティトゥート(Copenhagen, DK)からのPool Qおよび因子「6b」ウサギ抗血清は1:500希釈にて用いた。37℃にて加湿インキュベータでの30分間インキュベーションの後、プレートを洗浄し、アルカリホスファターゼ−コンジュゲーティドヤギ抗マウスIg(Sigma, St. Louis, MO)またはアルカリホスファターゼ−コンジュゲーティド−ヤギ抗−ウサギIg(Biosource, Camarillo, CA)で2時間インキュベートした。ウェルに固定化した酵素量は、ジエタノールアミンバッファー中のリン酸パラニトロフェニル基質(Sigma)で定量した。405nmにての光学濃度はマイクロプレートリーダー(BioTek Instruments Inc. Winooski, VT)で読み取った。
【0081】
膨張反応の定量特質は6A亜型を防止したのであろうから、それらの亜型が膨張反応の用いるウサギ血清を用いた定量アッセイで識別可能かどうかが決定された。これは、そのウサギ血清をインヒビションアッセイに適用することによって決定した。そのインヒビションアッセイにおいて、肺炎連鎖球菌ライゼートは、ELISAプレートに固定化された6A PSに対するウサギ抗血清の結合を阻害することが許容された(図1)。対照として、肺炎連鎖球菌ライゼートをふたつのmAbs:Hyp6AG1およびHyp6AM3の阻害につき試験した(図1Aおよび1B)。3つの6Aα単離物(米国からのCHPA378、韓国からのKK58、およびブラジルからのST558)のライゼートが、両方のmAbを阻害し、2つの6B単離物(株ST400およびブラジルからのST518)はいずれのmAbも阻害しなかった(図1Aおよび1B)。6C単離物(ブラジルからの株BZ17およびBZ650を含む)の3つのライゼートは、1:1000希釈にてさえも、Hyp6AG1の結合を明らかに阻害した(図1A)。それらは、しかしながら、1:10希釈にてさえも、Hyp6AM3の阻害はほとんどなかった(図1B)。
【0082】
Pool Q(しばしば、血清型分類に用いられるウサギ抗血清[Sorensen, 31 J. Clin. Microbiol. 2097-2100 (1993)])の阻害について肺炎連鎖球菌ライゼートを調査すると、6Aおよび6Cの双方ライゼートは等しく十分に阻害するが、6Bライゼートは阻害できなかった(図1C)。「6b」−因子−特異的ウサギ血清を試験すると、6A、6C、および6B単離物はすべて因子血清を等しく十分に阻害した(図1D)。6b−因子血清は6A特異的に設計されているので、これは予期されなかった。その因子血清は膨張反応において特異的に設計されているが、このインヒビションアッセイにおいては特異的ではない。それにもかかわらず、この実験は、肺炎連鎖球菌型分類に普通に用いられるウサギ抗血清が6Aおよび6C亜型を識別しないことを示す。
【0083】
オプソニン作用アッセイおよび高いレベルの抗6B抗体を持つヒト血清を用いて、様々な6A、6C、および6B単離物を比較した。ヒト血清は、6Bならびに6Aをオプソニン化したが(図2)、それは、ブラジル、韓国、および米国からの7つの異なる6C単離物をオプソニン化しなかった(図2)。
【0084】
実施例4:ヒト抗血清は、6Aおよび6Cに対して等しく保護的ではない。
ヒト抗血清は、6Aおよび6Bをオプソニン化できるが、6Cをオプソニン化できないので、6A、6B、および6C血清型をオプソニン化することについて、20人の成人からの血清サンプルを調査した(図3A)。どの血清提供者も、少なくとも5年間は、肺炎連鎖球菌ワクチンでワクチン接種されていない。ほとんどの個人が低いオプソニン作用力価を有するが、4人の個人が血清型6Bに対して100を超えるオプソニン作用力価を有していた。その4人の個人からの血清は6Aに対して顕著なオプソニン作用力価を有していたが、たった一人だけ6Cに対して顕著な力価を有していた。この観察は、この成人母集団は6Aに対してよりも6Cに対して、低い天然免疫を有することを示唆する。
【0085】
6Bでの免疫化が6Cと交差反応する抗体を誘発するかどうかを調査するために、肺炎連鎖球菌ワクチンで免疫化された20人の成人からの血清を研究した(図3B)。10人の成人を9価肺炎連鎖球菌コンジュゲートワクチン(PCV)で免疫化し、10人を23価PSワクチン(PPV)で免疫化した。PCVで免疫化した10人のうち8人が、6Bについて高いオプソニン作用力価(>100)を有していた。これらの8人のうち、7人が、6B力価と等しい6Aに対するオプソニン作用力価を有していたが、ただ一人だけ6B力価と等しい6C力価を有していた。この人の血清はほとんど6Bと同じ様に6Aをオプソニン化したので、誘発された抗6B抗体は6Cと交差反応していたのであろう。PPVワクチンを調査すると、5人が、6Bに対して高いオプソニン作用力価(>100)を有し、2人が6Aに対して高い力価を有していたが、6Cに対して高い力価を有するものはいなかった(図3B)。まとめると、これらの発見は、現在入手可能な肺炎連鎖球菌ワクチンは、6C感染に対してよりも6Aに対して保護を提供することができる。
【0086】
実施例5.肺炎連鎖球菌を同定するのに有用なモノクローナル抗体の開発
マウスハイブリドーマをすでに記載されているように作成した。[Sun et al., 69 Infect. Immun. 336-44 (2001)を引用するYu et al., 2005]。簡単に言えば、BALB/cマウスを、PS-タンパク質コンジュゲートで2回皮下免疫化し(0日目および21日目)、59日目に腹腔内的に1回免疫化した。7つの血清型(4、6B、9V、14、18C、19F、および23F)の免疫原はPrevnar (Wyeth Lederle Vaccines, Pearl River, NY)であった。血清型5および7Fに用いるコンジュゲートは米国食品医薬品局 (the U.S. Food and Drug Administration) (Bethesda, MD)で調製し、6AコンジュゲートはPorter Anderson (Rochester, NY)の贈呈であり、オブアルブミンに対する血清型1、3、および9Nのコンジュゲートは次のように調製した。臭化シアン−活性化PSを一晩インキュベーションの間にオブアルブミンに結合した。このPS-タンパク質コンジュゲートを分子量サイズ分別カラムで反応混合物から精製した。各用量は、血清型4、9V、18C、19F、および23Fについて1μgのPS;血清型3および6Bについて2μg;および血清型1、5、6A、7F、および9Nについて10μg含有した。一次および二次免疫源は1μgのQuil A (Sigma Chemical, St. Louis, MO)を含有した。
【0087】
最後の免疫化から3日後、マウスを犠牲にし、それらの脾臓を収獲し、ついで、すでに記載されているように、SP2/0 Ag-14でその脾細胞を融合した。[Nahm et al., 129 J. Immunol. 1513-18 (1982)]。一次培養ウェルを所望の抗体の生成についてスクリーニングし、そのような抗体を生成するウェルを限界希釈によって2回クローン化した。ヒト−マウスハイブリドーマ、Dob9を、すでに記載されているように、23価PBワクチンで免疫化した人からの末梢血リンパ球をハイブリダイズすることによって生成した。[Sun et al., 67 Infect. Immun. 1172-79 (1999)]。
【0088】
ヒト−マウスハイブリドーマは肺炎連鎖球菌血清型19Aおよび19Fに対して特異的である。すべてのハイブリドーマはIgMまたはIgG抗体のいずれかを生成するが、ひとつのIgAプロデューサーだけは例外である。Hyp6AG1はIgGであり、Hyp6AM6はIgMである。
【0089】
6A血清型に対して特異的な21のハイブリドーマの全体を単離した。多くは、同様の血清学的挙動を有し、いくつかは娘クローン(すなわち、いくつかは同一の可変領域構造を有する)。生成した6A−特異的ハイブリドーマの名称は、Hyp6A1, Hyp6AM1, Hyp6AM2, Hyp6AM3, Hyp6AM4, Hyp6AM5, Hyp6AM6, Hyp6AM7, Hyp6AM8, Hyp6AM9, Hyp6AM10, Hyp6AM11, Hyp6AM12, Hyp6AM13, Hyp6AG1, Hyp6AG2, Hyp6AG3, Hyp6AG4, Hyp6AG5, Hyp6AG6, Hyp6AG7である。
【0090】
実施例6.6Cの遺伝子学的研究
非莢膜肺炎連鎖球菌株は、6C単離物からの遺伝子で形質転換することができる。この発見は、6C莢膜合成が(複数ではなく)ひとつの遺伝子フラグメント、おそらくは莢膜遺伝子座を必要とすること、を示唆する。6Aβ発現を担う遺伝子を同定するために、3つのトランスフェラーゼ(wciN、wciO、およびwciP)を調査した。このwciP遺伝子は、6Aおよび6C単離物の間に等しい(上記)。プライマー5016および3101(5106: 5'-TAC CAT GCA GGG TGG AAT GT および3101: 5'-CCA TCC TTC GAG TAT TGC)を用いるPCRによってwciN領域を調査すると、調査した9つすべての6Aα単離物が、調査した6つすべての6C単離物が産生するよりも200塩基対(bp)長い産物を生じた。これら6つの単離物は、韓国、米国、およびブラジルからの6C単離物を含む。かくして、このPCRは6A亜型についての遺伝子学的試験として使用できる。
【0091】
ひとつの6A単離物(AAU9)からおよびひとつの6C単離物(ST745)からのPCR産物のヌクレオチド配列を次に決定した(図6)。AAU9 PCR産物における位置1203から2959(1757塩基)の間のすべての塩基を配列決定し、その配列は、GenBankデータベースで報告されている6A単離物の莢膜座配列であるCR931638に相同的であることが分かった。対照的に、ST745配列は、位置1368まで、および位置2591から再び始まる6Aαの配列とほぼ同一であることが分かった。介在する1029bp配列(1369から2397まで)は6Aのものと全く異なる。この介在配列は、ストレプトコッカス・サーモフィリスによる多糖類合成に用いられるトランスフェラーゼに類似する約98bpを含有する。
【0092】
実施例7.6C単離物は化学的に明確な莢膜を有する。ふたつの6C単離物(BZ17およびBZ650)、4つの6A株(SP85、ST558、およびCHPA378)、およびふたつの6B種(ST400およびST518)を比較した。すべての肺炎連鎖球菌単離物は肺炎連鎖球菌に典型的なコロニーモルホロジーを有し、オプトヒン感受性かつ胆汁溶解性であった。亜型分類アッセイを上記の実施例3に記載するように実行した。
【0093】
多糖類単離および精製:肺炎連鎖球菌株(SP85またはBZ17)を、JRH Biosciences (Lenexa, KS)からの2リットルの化学的に規定された培地[van de Rijn et al., 27 Infect. Immun. 444-49 (1980)]であって、塩化コリン、炭酸水素ナトリウムおよびシステイン−HClで補給されたものの中で成長させ、ついで、0.05%デオキシコリン酸塩で溶解した。遠心により細胞デブリを除去した後、PSを70%エタノールで沈殿させ、それを120mLの0.2M NaClに溶解することによって回収した。そのPSを10mMトリス−HCl(pH7.4)中に透析した後、そのPSをDEAE−セファロース(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)カラムに充填し(50ml)、NaCl濃度勾配で溶出させた。得られたフラクションを上記のインヒビションアッセイで6Aαまたは6Aβ PSにつき試験した。PS含有フラクションをプールし、エタノール沈殿(70%)によって濃縮し、透析し、ついで、凍結乾燥した。凍結乾燥したPSを3mlの水に溶解し、120mlのセファクリルS-300 HR (Amersham Biosciences)を含有するゲル濾過カラムに充填した。このPSを水でカラムから溶出させ、すべてのフラクションをインヒビションアッセイで6Aβ PSにつき試験した。最初の6Aαまたは6Aβ PS ピークを含有するフラクションをプールし、凍結乾燥した。
【0094】
単糖類分析:凍結乾燥した莢膜PSを80℃にて16時間、1.5M HCl中で化メタノール分解に付した。メタノール性HClをエバポレートした後、室温にて20分間、Tri-Sil試薬(Pierce Biotech. Inc. Rockford, IL)で残渣を処理した。反応生成物を、30m(直径0.25mm)のVF-5キャピラリーカラムを取り付けたGLC/MS(Varian 4000, Varian Inc. Palo Alto, CA)で分析した。カラム温度は、5分間100℃に維持し、ついで、20℃/分にて275℃まで昇温し、最終的に5分間275℃に保った。溶出物をエレクトロン衝撃イオン化モードを用いる質量分析によって分析した。
【0095】
酸化、還元、および加水分解:莢膜PS(1mg/mL)を、暗闇中4℃にて4日間、80mM酢酸ナトリウムバッファー(pH=4)中の40mM過ヨウ素酸ナトリウムで処理した。過剰な過ヨウ素酸塩をエチレングリコールで中和した後、サンプルを透析し、凍結乾燥した。[Stroop et al., 337 Carbohydr. Res. 335-44 (2002)]。そのPSを、室温にて3時間、200mg/mLの水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)またはその重水素体(NaBD4)で還元した。酸化/還元された6C PSを85℃にて30分間0.01M NaOH中で加水分解し、0.01M HClの添加により中和し、ついで、脱塩せずに、質量分析に直接用いた。
【0096】
タンデム型質量分析:未処理および酸化/還元した6Cのタンデム型質量スペクトル分析を、アラバマ大学バーミンガム校の質量分析共有設備において、エレクトロスプレイイオン源を備えたMicromass Q-TOF2質量分析計(Micromass Ltd. Manchester, UK)で行った。それらのサンプルを蒸留水に溶解し、ハーバードシリンジポンプを用いて1μL/分の速度にて、ランニングバッファー(0.1%ギ酸を含有する50/50のアセトニトリル/水)に沿って質量分析計に注入した。注入したサンプルはエレクトロスプレイ(針電圧=2.8kV)で負にイオン化し、TOF質量分析計で検出した。MS/MSについて、親イオンは、アルゴンガスと衝突する前に、40eVでエネルギーを与えて娘イオンに断片化した。娘イオンをTOF質量分析計で分析した。MS/MSスペクトルをMassLynx 3.5のMax-Ent3モジュールを用いて処理した。
【0097】
スミス分解およびグリセロール検出:6Aおよび6Cで処理した過ヨウ素酸塩を、1M水酸化アンモニウム中の10mg/ml重水素化ホウ素ナトリウムで16時間還元した。過剰な重水素化ホウ素ナトリウムを表酢酸の添加によって除去し、0.5mlのメタノール:酢酸(9:1)を添加した。サンプルを窒素流下で乾燥させ、0.25mlのメタノールで2回洗浄した。乾燥したサンプルを0.5mlの1.5Mメタノール性HClに懸濁し、80℃にて16時間インキュベートした。サンプルを窒素流下で乾燥させ、0.25mlのメタノールで2回洗浄した。乾燥したサンプルを0.1mlのTri-Sil (Pierce)に懸濁し、80℃にて20分間インキュベートした。1μlのサンプルを60m VF-1カラムを備えたVarian 4000ガスクロマトグラフ質量分析計(Varian Inc., Palo Alto, CA)に注入した。ヘリウムをキャリアガスとして1.2ml/分の定常流速にて用いた。オーブン条件は、50℃の初期温度を2分間保ち、150℃まで30℃/分にて昇温し、さらに220℃まで3℃/分にて昇温し、その温度を2分間保った。インジェクター温度は250℃に維持し、MSトランスファーラインを280℃に維持した。MSデータ獲得パラメータは、エレクトロン衝撃(EI)モードで、または、アセトニトリルを用いる化学イオン化(CI)モードで、m/z40から1000までスキャンすることを含んだ。
【0098】
6A PSのクロマトグラフィーは、リビトール、ラムノース、グルコース、およびガラクトースを特徴付けるすべてのピークを示し(図7)、以前の刊行物と一致した。[Kim et al., 347 Anal. Biochem. 262-74 (2005)]。例えば、ガラクトースは11.2および11.6分の保持時間に現れる3つの主要ピークと最も高い第2ピークを生じる。[Kim et al. (2005)]。6C PSクロマトグラムを調査すると、リビトール、ラムノース、およびグルコースの特徴ピークは見出されるが、ガラクトースピークはなかった。各炭化水素ピークの面積をラムノースピーク面積に対して規格化し、6Aおよび6C(図7B)と比較すると、6Aおよび6Cはリビトールピークと同等の面積を有する。6Cのグルコースピーク面積は、しかしながら、6Aの面積の2倍であった(図7B)。この発見は、6Cの繰返し単位は、6Aと同じく、ひとつのリビトールおよびひとつのラムノースを有するが、グルコースおよびガラクトース分子ひとつずつのかわりにふたつのグルコース分子を有することを示した。かくして、6Cは、ガラクトースの代わりにグルコースを用いることによて6Aにより産生されたPSとは化学的に異なる莢膜PSを産生する。
【0099】
6C PSに存在すると仮定されたふたつのグルコース分子をさらに調査するために、6Aおよび6C PSを隣接するグリコールを選択的に破壊する過ヨウ素酸で処理した。6A PSの公開された構造から期待されるように、6A PSのガラクトースおよびリビトールピークは検出されなくなったが、グルコースおよびラムノースピークは影響されなかった。[Kamerling, Pneumococcal polysaccharides: a chemical view, in Mol. Biol. & Mechanisms of Disease 81-114 (Mary Ann Liebert, Larchmont, 2000); Kim et al., 347 Anal. Biochem. 262-74 (2005); Rebers & Heidelberger, 83 J. Am. Chem. 3056-59 (1961)]。6C PSを過ヨウ素酸塩処理すると、そのリビトールは検出されなくなり、そのグルコースピークは約半分に減少したが、そのラムノースピークは影響されなかった(図7B)。この発見は、6A PS構造が、文献で公開された6A PS構造と同一であることを強く示している。また、6C PSは6A PSと化学的に異なること、および、6C PSはふたつのグルコース分子を有し、そのうちの一方は過ヨウ素酸塩に感受性があり、他方は感受性がないことが示唆される。
【0100】
実施例8.繰返し単位内の単糖類/リビトール配列の決定
6A PSの穏和なアルカリ分解は各繰返し単位中のリン酸ジエステル結合を切断し、負電荷の繰返し単位を生じ、ついで、それをタンデム型質量分析で調査できる。(株SP85からの)6A PSの加水分解生成物は、3つのよく分裂した負電荷のピーク:683.21、701.21、および759.19質量電荷比(m/z)単位のピークを示した(図8A)。683.21m/z単位のピークは、701.21m/z単位のピークの無水物形態を表し、759.19のピークはNaCl塩のついた701.21m/z単位の分子を表す。これは、繰返し単位の質量が、記載されるように683.21質量単位であることを示す。[Kamerling, 2000; Kim, 2005]。701.21ピークの娘イオン(生成物イオン)を調査すると、539.13、377.08、および212.99m/z単位の質量を持つ娘イオンを生じていた。それらは、それぞれ、グルコース−ラムノース−リビトール−P、ラムノース−リビトール−P、およびリビトール−Pのフラグメントの質量に相当する(図8C)。また、それらの無水物対応物は、701.21、539.14、377.08、および212.99m/z単位にある。96.94m/zおよび78.93m/z単位に観察されたさらなるピークは、H2PO4-およびPO3-のイオンを表す(図8C)。
【0101】
6A PSに用いたのと同じ手順を用いる6C PSの分析は、683.24、701.25、および759.22m/z単位に3つの主要ピークを示し、6A PSで見出された3つの主要ピークに相当する(図8B)。また、6C切断生成物は6Aのものと同一の質量スペクトルを有していた(図8D).この発見は、6C PSの繰返し単位の質量は683.2m/z単位であること、および6C繰返し単位の炭化水素配列がグルコース1−グルコース2−ラムノース−リビトール−Pであることを示した。ふたつのグルコースを区別するために、それらをグルコース1およびグルコース2と表示する。グルコース1は6Aのガラクトースに対応する。かくして。6Cの単糖類配列は、ガラクトースがグルコース1と置換されていることを除き、6Aのものと同一である。
【0102】
実施例9.6C繰返し単位の炭化水素およびリビトール間のリンケージの決定
過ヨウ素酸塩感受性である6Cグルコースを同定するために、穏和なアルカリ分解によって繰返し単位にまで酸化還元し、6C PSをタンデム型質量分析で研究した。それらの質量スペクトルは650および700m/z単位の間にいくつかの主要(かつ優勢な)ピークを示した(図9A)。これらの優勢ピークは、655.23、659.73、661.24、664.25、673.25、および675.24m/z単位にあった。天然同素体のため、各優勢ピークは、さらに1または2の質量単位が付いたサテライトピークを有し、これらのサテライトピークを用いて、家電状態および主要ピークの質量を決定できる。[Cole, ELECTROSPRAY IONIZATION MASS SPECTROMETRY: FUNDAMENTALS, INSTRUMENTATION, & APPLICATIONS (Wiley, New York, 2000)]。例えば、661.24m/z単位の優勢ピークは661.57m/z単位のサテライトピークを有する。これらふたつのピークは0.33m/z単位離れているので、661.24ピークは、3つの負電荷および1983.72質量単位(すなわち、ひとつの水分子を持つ3つの繰返し単位;655.23*2 + 673.76= 1983.72)を持つ分子イオンを表す。同様に、664.25および675.24ピークは、ふたつの負電荷を持つ2つの繰返し単位を表すが、675.24ピークはプロトンと置き換わったナトリウムイオンを有する。673.25および655.23ピークは、ひとつの負電荷をもち、かつ、水分子を持ったまたは持たないひとつの繰返し単位を表す。酸化/還元前の無水物繰返し単位の質量は683.26であったので、この繰返し単位は酸化還元により28質量単位を喪失した。リビトールおよびグルコースの過ヨウ素酸塩反応生成物を同定するために、リビトールフラグメントをRxフラグメントと命名し、ふたつのグルコースフラグメントをGxおよびGyフラグメントと命名した(図10A)。
【0103】
娘イオンは、親イオンを673.25m/z単位でフラグメント化することによって得た(図9B)。フラグメント化の間、ひとつのフラグメントを別のフラグメントと1原子質量単位(AMU)分交換することができる。[Grossert et al., 20 Rapid Commun. Mass. Spectrom. 1511-16 (2006); McLafferty 31 Anal. Chem. 82-87 (1959)]。また、分子イオンはアルゴン衝突セル内で可変的に水和状態になった。[Sun et al., 69 Infect. Immun. 336-44 (2001)]。実際に、これらの娘イオンは18m/z単位の差異に基づき、水和物および無水物ピークの分類できた(図9B)。673.25、581.16、509.13、347.07、および200.99m/z単位に見出されたピークは、水和物ピークであり、それらの各々は18AMU分少ない対応無水物ピークを有する。また、200.99、347.07および509.13m/z単位のピークは、200、346、および508AMUならびにフラグメント化の間にフラグメント部位に付着したひとつの水素原子を持つフラグメントに対応する(図10B)。200.99m/z単位のピークは、過ヨウ素酸塩処理の間にリビトールがCH2OHを喪失したことを確認する。347.07および509.13のピークは、ラムノースおよびグルコース2が過ヨウ素酸塩耐性であることを示す。581.16のピークの存在は、グルコース1が開裂されたことを示す。
【0104】
過ヨウ素酸塩開裂はグルコース1をふたつの部分(それらは、図10AにおいてGxおよびGyと命名された。)に分割する。これらふたつの部分の合わせた質量は162(無傷グルコースの質量)ではなく164である。なぜならば、グルコース1は炭素を喪失しないが、酸化および還元反応の間に切断部位にふたつの水素原子を獲得したからである。図9に示す質量スペクトルは、それぞれ、91および74AMUを有するGxおよびGyと一致する。581.16m/z単位のピークは繰返し単位がGxおよびひとつの余分のプロトンを喪失したことを示す(図10)。GxおよびGy双方の中性的な喪失(74AMU)は、72m/z単位のさらなる喪失をもたらす。なぜならば、GyはすでにGxに対してひとつの水素を喪失し、グルコース2とともにひとつの水素を放出するからである。同一のパターンが無水物ピーク:すなわち、655.22、563.16、および491.12m/z単位に見出された。さらに、6Aβ PSをNaBD4,で還元すると、2だけ多い質量単位はグルコース1に関連した:Gxフラグメントの中性的喪失は92ではなく93であり、Gyのそれは72ではなく73であった(図4C)。これらの発見は、グルコース1が図10Aに示すサイズでGxおよびGyに開裂したことを明確に示した。
【0105】
娘イオンの質量スペクトルも6Aβ PSのグルコースリンケージについての情報を提供する。グルコースおよびラムノースはそれらの第1炭素に先行する炭化水素に連結されなければならない。[Rebers & Heidelberger, 1961]。また、それらは、過ヨウ素酸塩に耐性があるためには、第3炭素に後続する炭化水素に連結されなければならない。[Rebers & Heidelberger, 1961]。かくして、6C PSは、グルコース1(1→3)グルコース2(1→3)ラムノース(1→)を有しなければならない。これらの娘イオンのさらなる調査は、それらのグルコース1がその第2炭素にリン酸ジエステル結合を有することを示す。過ヨウ素酸塩感受性であるためには、グルコース1はそのリン酸ジエステルリンクを2位、4位または6位にのみ有しなければならない。リン酸ジエステル結合リンケージは6位にはない。なぜならば、6位のリンケージはグルコース1の炭素原子の喪失をもたらすからである(図10F)。リン酸ジエステルリンケージが4位にあれば、切断は第2および第3炭素の間で発生する。GxxおよびGyは、それで、120および42AMUを有し、581m/z単位のピークではなく552m/z単位のピークが検出されなければならない(図10E)。
【0106】
加水分解はグルコース1とのリン酸ジエステル結合を開裂するが、時折、それは、代わりに、リビトールとのリン酸ジエステルを切断する。この逆開裂生成物の調査は、リン酸ジエステルリンケージがグルコース1の第2炭素になければならないことをさらに確認した。150.95および243.00m/z単位のピークはグルコース1の逆開裂生成物である(図9B)。なぜならば、これらのm/z単位の生成物は第2炭素にあるリン酸ジエステル結合を持つグルコースから生成され得(図10D)、かつ、これらのピークは、NaBH4ではなく、NaBD4で還元したならば、1(150.95→151.97)または2(243.00→245.02)だけ多いm/z単位を有するからである(図9C)。150m/z単位のイオンが末端メタノール基を喪失するならば、120.95m/z単位のイオンも得られる。これらのピークは、リン酸ジエステル結合が第4または第6炭素にあるならば、説明が付かない(図10Eおよび10F)。かくして、逆開裂生成物のデータもリン酸ジエステル結合がグルコース1の第2炭素の連結していることを示す。
【0107】
質量スペクトルのさらなる調査は、ラムノース−リビトールリンケージが(1→3)でなければならないことを示した。肺炎連鎖球菌は、それらの莢膜合成に関するテイコ酸合成について生成されるCDP−5−リビトールを用いるので[Pereira & Brown 43 Biochem. 11802-12 (2004)]、リビトールおよびグルコース1の間のリンケージはリビトール(5→P→2)グルコース1でなければならない。78.94および96.94のピークはPO3-およびH2PO4-に対応し、182.98および200.99のピークは(図9B)、PO3-およびH2PO4-に付着したRxフラグメントに対応する(図10A)。かくして、リビトールは、酸化および還元反応の間に、ヒドロキシメチル基を喪失しなければならず、ラムノースおよびリビトールの間のリンケージはラムノース(1→3)リビトールでなければならない。上記をすべて考慮すると、6Aβ繰返し単位は、{P→2)グルコース1(1→3)グルコース2(1→3)ラムノース(1→3)リビトール(5→}でなければならない(図10C)。
【0108】
6A PSを分析すると、6C PSピークと同一のピークが見出され、それは、ガラクトースおよびリビトールが過ヨウ素酸塩によって破壊されたが、グルコース2およびラムノースは無傷で保たれたことを示す。かくして、6A PSの構造は、{→2)ガラクトース(1→3)グルコース2(1→3)ラムノース(1→3)リビトール(5→P)でなければならず、それは文献に公開された6A PS構造と同一である。[Kamerling, 2000; Rebers & Heidelberger, 1961]。まとめると、6Aおよび6C PSの間の構造的差異はグルコース1(またはガラクトース)の第4炭素のヒドロキシル基の向きである。
【0109】
典型的に、酸化および還元された6A PSのスミス分解後にグリセロールが放出されることを実証することによって、6A PSのリン酸ジエステル結合はガラクトースの第2炭素にあることが決定された。[Rebers & Heidelberger, 1961]。この古典的手法を用いて6Cリン酸ジエステル結合の位置を確認するために、酸化および還元後に6Aおよび6C PSのスミス分解を上記のように行った。6Aおよび6C PSの反応生成物はふたつのPSからのグリセロールを示した。かくして、グルコース1はグルコース1の第2炭素にリン酸ジエステル結合を有する。
【0110】
実施例10.血清型6Cの遺伝子起源
細菌株および培養:6C研究に用いられた肺炎連鎖球菌株をテーブル4に列記する:
【0111】
【表5−1】

【0112】
【表5−2】

a CSF、脳脊髄液。
b TIGR4は、元来、血液から単離された。[Tettelin al., 293 Science, 498-506 (2001)]。
【0113】
以前に報告したブラジルからの6C単離物[Lin et al., 2006]に加えて、「6A」血清型として当該研究所に届いた前から存在する肺炎連鎖球菌単離物を再度型分類することによって、さらなる6C株を同定した。コレクションは、[Robinson et al., 184 J. Bacteriol. 6367-75 (2002)]および[Mavroidi, 2004]による研究に用いられた6A単離物を含む。ひとつの株(BGO-2197)は、1979年に米国アラバマ州バーミンガムで単離された。TIGR4JS4株は、TIGR4株の非莢膜化変異体であり[Tettelin et al., 293 Science 498-506 (2001)]、4型莢膜遺伝子座をヤヌスカセット(kanR-rpsL+)で置換し、3回野生型TIGR4に戻し交配することによって生成した[Trzcinski et al., 69 Micorbiol. 7364-70 (2003); Hollingshead(未公開)]。TIGR6AX、TIGR6A4、およびTIGR6C4は、それぞれ、莢膜型を発現しない、6A、または6C莢膜型を発現するTIGR4JS4変異体である。これらの変異体は以下のようにして生成した。
【0114】
PCRおよびDNA配列決定:この研究に用いたすべてのPCRプライマーをテーブル5に列記した。多座配列型分類(MLST)に用いるプライマーは[Enright & Spratt, 144(11) Microbiol. 3049-60 (1998)]によって記載され、wciN、wciO、およびwciP遺伝子を増幅するのに用いたプライマーは[Mavroidi et al., 2004]によって記載された。さらなるプライマーは、GenBankにおける6Aおよび6B莢膜遺伝子座のDNA配列(それぞれ、登録番号CR931638およびCR931639)を用いて設計した。
【0115】
【表6−1】

【表6−2】

【0116】
莢膜遺伝子座PCRに関して、反応混合物は、10ngから30ngの染色体DNA、100pmolストックからの1μlの各プライマー、2μlの10mM dNTP、5μlの10×バッファー溶液、0.5μl(2.5U)のTaqポリメラーゼ(Takara Biomedical, Shiga, Japan)、および39.5μlの滅菌水(Sigma, St Louis, MI)を有した。多座配列型分類用の反応混合物は、10ngないし30ngの染色体DNA、50pmolストックからの1μlの各プライマー、2μlのMgCl2、5μlのQ-液(Qiagen, Chatsworth, CA)、12.5μlのMaster Mix(Qiagen)、および4μl滅菌水(Sigma)を有した。Wizard Genomic DNA Purification Kit(Promega, Madison, WI)を用いて、製造業者のインストラクションにしたがって、染色体DNAを単離した。熱サイクル条件は:95℃にて3分間の初期変性、95℃にて1分間の変性、52℃から58℃にて1分間のアニーリング、72℃にて2分間の伸張を30サイクル、および72℃にて10分間の最終伸張であった。多座配列型分類は30サイクルを用い、莢膜座遺伝子PCRは35サイクルを用いた。これらのPCR産物のサイズを1%〜1.5%アガロースゲル中の電気泳動によって決定した。
【0117】
これらのPCR産物のDNA配列は、自動化DNAシーケンサーを用いて、アラバマ大学のゲノミック・コア・ファシリティーによって決定し、それらのPCR産物はWizard PCR Cleanup Kit (Promega)で精製した。DNA配列は、Lasergene v. 5.1ソフトウェア(DNASTAR, Madison, WI)およびNCBI NLM NIHウェブサイトにオンラインで位置するBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)で分析した。
【0118】
莢膜遺伝子座からの配列を以前報告された配列[Mavroidi et al., 2004]と比較した。各配列型の対立遺伝子を、オンライン肺炎連鎖球菌多座配列型分類(MLST)ウェブサイトを用いて割り当てた。配列が異なれば、新たな対立遺伝子番号を割り当てた。すべてのwciNβ配列を、ついで、肺炎連鎖球菌MLSTに寄託した。肺炎連鎖球菌単離物CHPA388の完全な莢膜遺伝子座はGenBankに寄託されている。
【0119】
世界的出典の6C株の遺伝子プロファイルをテーブル6に提示する。
【0120】
【表7】

【0121】
6Aおよび6C莢膜遺伝子座でのTIGR4変異体の生成:6C莢膜発現におけるの役割を調査するために、所望する遺伝子または遺伝子フラグメントを、TIGR4から誘導されるが、莢膜遺伝視座を喪失していないTIGR4JS4株に挿入した(図11)。凍結した形質転換能力のあるTIGR4JS4のアリコートは、それをTHYブロス中で、37℃にて、600nmにての光学濃度が約0.4〜0.5になるまで成長させ;それを0.5%酵母抽出物、0.2%ウシ血清アルブミン、0.01%CaCl2、および13%グリセロールで補給したTodd-Hewittブロス(pH7.2)で1:100まで希釈し;ついで、250μlのアリコート中でそれを−80℃にて凍結することによって、作成した。
【0122】
TIGR4JS4を形質転換するために、凍結した細菌アリコートを解凍し、50ngの能力刺激ペプチド変異体2 (competence-stimulating peptide variant 2)と混合した。[Trzcinski et al., 2003]。37℃にて14分間のインキュベーション後、100μlのTIGR4JS4を10μlの細菌ライゼート(AAU33株)または100ngのDNAカセットと混合した。37℃にて2時間のインキュベーション後、それらの細菌を200μg/mlカナマイシンまたは300μg/mlストレプトマイシンを含有するヒツジ血寒天プレート上に塗布し、キャンドルジャー内で37℃にてインキュベートした。抗菌性培地で成長している形質転換体のコロニーを収穫し、DNA受容能細菌で3回戻し交配した。
【0123】
形質転換用のAAU33の細菌ライゼートを調製するために、10mlのTHYブロスをAAU33株で接種し、600nmにての光学濃度が〜0.4−0.5になるまで、37℃にて約5時間培養した。このTHYブロスを遠心して、細菌ペレットを得、このペレット0.1%デオキシコール酸ナトリウムおよび0.01%硫酸ドデシルナトリウムを含有する0.1mlのクエン酸ナトリウムバッファー(0.15M, pH 7.5)に再懸濁することによって、それを溶解し、ついで、37℃にて10分間それをインキュベートした。このライゼート(0.1ml)は、ついで、0.015Mクエン酸ナトリウム入りの0.9mlの規格化サリンバッファー(pH7.0)と混合し、65℃にて15分間熱不活性化した。
【0124】
TIGR6A4のwciNα遺伝子領域をCHPA388由来のwciNβ遺伝子領域で置換するために、図11でカセット1およびカセット2と表示するふたつの異なるDNAカセットを調製した。各カセットは3つの部分:標的DNAを含有する中央コアおよびふたつのフランキングDNAを有する。これらふたつのフランキングDNAが相同組み換え用であり、各々約1Kbであって、wchAまたはwciO-P遺伝子のいずれかから得た。カセット1の中央コアはカナマイシン抵抗性(kanAR)かつストレプトマイシン感受性(rpsL+)遺伝子であり、TIGR4JS4株DNAをテンプレートとして用いるPCRによって得る。これらのフランキングDNAフラグメントはAAU33の染色体DNAをテンプレートとして用いるPCRによって得た。図11およびテーブル5に示すすべてのプライマーは、制限酵素部位を有し、3つのDNAフラグメントを連結させるのが容易である。これら3つのDNAフラグメントは適当な制限酵素にで消化し、T4 DNAリガーゼ(New England BioLabs, Beverly, MA)でライゲーションすることによって互いに連結させた。このライゲーション産物をプライマー5113および3102を用いるPCRによって増幅した。PCR産物をWizard PCR Cleanup Kit (Promega)で精製し、ヌクレオチド配列決定に付した。ついで、このPCR産物を形質転換においてドナーDNAとして用いた
【0125】
カセット2を用いて、抗菌セレクション遺伝子をwciNβ遺伝子で置換した。中央コアはCHPA388からのwciNβ遺伝子を有する。wchAおよびwciO-P DNAフラグメントは、カセット1について記載するように、AAU33からPCRによって得た(図11)。
【0126】
「6A」コレクション中のさらなる6C株の同定:様々な地域からの6C血清型の代表コレクションを得るために、「6A」のすでに存在するコレクションを膨張反応[Mavroidi et al., 2004; Robinson et al., 2002]により再試験し、3つの異なる大陸の5つの国々から9つのさらなる6C単離物を同定した(テーブル4)。これらの単離物は、髄液、血液、および上咽頭サンプルから得、6Cは、侵襲性肺炎連鎖球菌感染ならびに無症状保菌者に関連し得ることを示した。ひとつの単離物(BGO2197)はアラバマ州バーミンガムで1979年に得た。この発見は、ここに記載するように
初めて同定され単離された6C血清型は、27年以上前から存在し、いまや、世界中で見出されることを示している。
【0127】
多くの6C株は同一の莢膜遺伝子座プロファイルを有するが、異なる配列型を有する:血清型6Cについての遺伝子ベースの調査を開始するために、12の単離物の莢膜遺伝子座プロファイルおよび配列型(ST)を調査した。ブラジル6C単離物について以前観察されたものと同様に[Lin et al., 2006]、すべての6C単離物は、ヌクレオチドの違いがないかまたはひとつの違いを持つwciP遺伝子の対立遺伝子9を有する。同様に、すべての6C単離物は、ヌクレオチドの違いがないかまたはひとつの違いを持つwzx遺伝子の対立遺伝子1を有する。すべての6C単離物の制限的莢膜遺伝子座プロファイルと対照的に、多座配列型分類は6C単離物が多様なSTを発現することを示す。6Cが(ひとつの単離物を除き)複数のSTに関連するがひとつの単一莢膜遺伝子座プロファイルとは関連しないという発見は、6C血清型を担う遺伝子は、おそらく、莢膜遺伝子座あることを示唆する。
【0128】
6Aおよび6Cの莢膜遺伝子座は、wchAおよびwciO遺伝子の間の領域において異なる:血清型6Aおよび6Cの間の遺伝子学的差異が、血清型6Aおよび6Bの間の差異を担う同一の遺伝子であるグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子であるというのは仮説であった。PCRを用いてそれらのグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子を比較すると、それらのwciN遺伝子のサイズが異なることが分かった。すべての6C単離物のwciN PCR産物は約1.8kb長であり、一方、すべての6A単離物のwciN PCR産物は約2kb長であった(図12)。6Aおよび6C血清型からのふたつのwciN遺伝子を区別するために、それらを、それぞれ、wciNαおよびwciNβと命名した。
【0129】
wciNβ遺伝子をさらに調査するために、5つの6C株(BZ17、BZ86、CHPA388、KK177、およびST 260)由来のwchAおよびwciO遺伝子を含むwciNβ遺伝子領域のDNA配列を比較した。それらの配列はほぼ同一であったので、CHPA388についてのみ実際のDNA配列を示し(図13)、他の単離物の配列はGenBankに寄託した。ついで、CHPA388からのwciNβ遺伝子の配列を、GenBankで入手可能な対応する領域の6A配列(No. CR931638)と比較した(図13)。比較のまとめを図14に示す。
【0130】
配列比較により、wciNαおよびwciNβ遺伝子における明確な差異が明らかになった:6C血清型は、6Aにおける1222bp長DNAのかわりに1029bp長DNAを有する(図14および図15)。これらふたつのwciN遺伝子は完全に異なり、配列相同性はたった約50%である。DNA差異は、wchA遺伝子(位置1368)の終端の直後から始まり、wciO遺伝子の開始(6Cについて位置2398および6Aについて位置2631)の上流130塩基で終了する(図14および図15)。置換遺伝子に隣接するDNA配列を6Aおよび6Cの間で比較すると、そのフランキング領域に、ふたつのフランキング領域外部よりも著しく多くのDNA多型が見出された。例えば、置換遺伝子お上流300塩基は25の異なるヌクレオチドを有するが、その300塩基の上流すぐに位置する150塩基はたった1つの異なる塩基しか有さない(フィッシャー抽出試験により、p<0.001)(図15)。同様に、3'方向において、近位の110塩基には20塩基の差異があるが、つぎの300塩基にはたったの1塩基の差異しかない(フィッシャー抽出試験により、p<0.001)(図15)。これらの発見は、この特定の6A配列(CR931638)に特有ではない。なぜならば、同様の結果が7つの異なる6A株AAU33、D020-1B、HS3050、CHPA78、KK65、ST19、およびST558の配列で得られたからである。これらの発見は、これらふたつのフランキング領域が6Aに挿入されて6Cを創出した新たな遺伝子の部分であることを示唆する。
【0131】
これらのフランキング領域は6A莢膜座へのwciNβ遺伝子の相同組換えに関与していたのであろう。さらに、すべての6C単離物は同一のフランキング領域配列を有する。これは、遺伝子置換がたったの1回だけ発生すること、および、すべての6C単離物は、この単一創始細菌の子孫でなければならないことを示唆する。
【0132】
この遺伝子置換で、wciNβは、1125塩基長であって、374アミノ酸のペプチドをコードする新たなオープンリーディングフレーム(ORF)を有し、それはWCINβタンパク質と命名された(図13)。新たなORFの終止コドンは、wciO遺伝子についてふたつの可能性のある開始コドンの間にあり、それらは6Cの位置2497および2528に位置する。wciNβ遺伝子の配列をデータベースにある配列と比較すると、6Cの110塩基(6Cの1627から1736まで)は、ストレプト・サーモフィラス株CNRZ1066[Bolotin et al., 22 Nat. Biochem. 1554-58 (2004)]の菌体外多糖類合成遺伝子の90塩基と81%相同性を示した(図13)。また、wciNβ遺伝子の翻訳配列は、スタフィロコッカス・アウレウスのcapH遺伝子の翻訳配列に対して22%アミノ酸同一性および44%類似性を有する。[Lin et al., 176 J. Bacteriol. 7005 16 (1994)]。wciNβ遺伝子産物はwaaGファミリーのメンバーである。偶然にも、イー・コリ (E. coli) K-12のwaaG遺伝子産物は、LPS合成に関与するα1,3-グルコシルトランスフェラーゼである。[Heinrichs et al., 30 Mol. Microbiol. 221-32 (1998)]。
【0133】
6Aおよび6C血清型の莢膜遺伝子座の配列は、wciN遺伝子以外の領域においてほんのわずかに異なるだけである:6Aおよび6C莢膜遺伝子座がwciN領域においてのみ異なるのかを決定するために、6C単離物(CHPA388)の莢膜座全体を、6つの重複dnaフラグメントにおけるdexBおよびaliA座間の莢膜遺伝子座全体を増幅するPCRによって分析した。図16は莢膜遺伝子座の遺伝子マップを示す。CHPA388座全体を図16に提示する。14のORFに含有される6c莢膜遺伝子座は莢膜PS合成に関与した。これらのORFは転写方向であり、6A莢膜遺伝子座に見出されたものと正確に対応した。6CのORFは5'末端にてcpsA遺伝子で開始し、3'末端にてrmlD遺伝子で終止する。図17に示すように、6C莢膜遺伝子座の仮定プロモーター結合領域および転写開始部位はcpsA遺伝子に対する5'であることが分かり、仮定転写ターミネーター部位はrmlD遺伝子に対する3'であることが分かった。さらに、多くの肺炎連鎖球菌莢膜遺伝子に共通して見られるように、座莢膜遺伝子座の両末端の挿入エレメント(または、「tnp」もしくは「トランスポゼース」)配列がある。[Bentley et al., PLoS 遺伝子t 2:e31 (2006)]。座全体のヌクレオチド配列はGenBankに寄託されている。
【0134】
その配列を6A株の莢膜遺伝子座(GenBank登録番号CR31638)と比較すると、上記wciN領域を除き、6Cの莢膜遺伝子座は6Aのそれに対して非常に相同的(〜98%)であった。また、相同性は、cpsA ORFの中央で約60bpと著しく低く(約78%)、莢膜遺伝子座のいずれかの末端に見出される「tnp」は6Aおよび6C莢膜遺伝子座の間で異なる。6C莢膜遺伝子座は、いくつかの6Aまたは6B莢膜遺伝子座においてwciO遺伝子の上流に存在するINDELを有しない。[Mavroidi et al., 2004]。これらの差異にかかわらず、6Aおよび6C莢膜遺伝子座の間の最も優勢な差異はwciN領域に見出される。
【0135】
wciN遺伝子領域は、6Aから6Cへの血清型の転換を担う。莢膜遺伝子座の上記比較は、主たる差異がwciN領域にあることを示したが、些細な差異は莢膜遺伝子領域(例えば、cpsA ORF)全体に存在する。莢膜座の外部のいくつかの他の小さな遺伝子的差異は6C発現に関与し得る。wciN領域のみが関与することを示すために、wciNα領域とwciNβ領域との交換が6A血清型を6C血清型(図11)に転換するかどうかを調査した。TIGR6Aは、TIGR4の莢膜座を株AAU33由来の6A莢膜遺伝子座で置換することによって生成した。このwciNα遺伝子を、ついで、カセット1でそれを形質転換することによってTIGR6Aから取り出した。得られた株は、TIGR6AXと命名され、莢膜化されず、PCRで、位置1325および2518の間でwciNα遺伝子を喪失していることが分かった。このwciNβ領域を、ついで、カセット2を用いてTIGR6AXに挿入し、それは、CHPA388由来のwciNβ遺伝子を含有していた。PCRにより、得られた株TIGR6Cは予想した場所にwciNβを有することが確認された。TIGR6Cは、血清型6Cを発現することが分かり、これは、wciNβ遺伝子領域は血清型転換に十分であることが確認された。
【0136】
実施例11.新規肺炎連鎖球菌血清型6D
血清型6Aおよび6B莢膜多糖類(PS)の化学構造についての以前の研究は、それらが、ガラクトース、グルコース、ラムノースおよびリビトールのリン酸塩を含有する繰返し単位のポリマーであることを示した(図17)。6Aおよび6B PSの化学的差異は、ラムノースおよびリビトールの間のリンケージにある:6A PSは1→3リンケージを有するが、6B PSは1→4リンケージを有する。6A PSの形成を担う遺伝子の研究を図18にまとめた。6A PSの合成に関与するすべての遺伝子はひとつの遺伝子座(「莢膜遺伝子座」という。)にあり、それは約17kb長であって、14の遺伝子を含有する。6Aおよび6B莢膜遺伝子座の間に一貫する遺伝子的差異は、wciP遺伝子の位置584の単一のヌクレオチドのようである(584G←→A; S195N [Ser←→Asn])。[Mavroidi et al., 2004]。この遺伝子変化は、wciPによりコードされるラムノシルトランスフェラーゼを、6A PSについて1→3リンケージを形成する能力を有することから、6B PSについて1→4リンケージを形成する能力を有することへと転換することにあると考えられる。
【0137】
ここで議論したように、6C PSは、6A PSのガラクトース残基の代わりに、グルコース残基を有し(図17)、6C莢膜遺伝子座は、異なるwciN遺伝子を除き、莢膜遺伝子座とほぼ同一である(図18)。6AのwciNをwciNαと再命名し、6CのwciNをwciNβと再命名した。上記のように、この研究は、6A莢膜遺伝子座が、wciNα遺伝子をwciNβ遺伝子で置換することによって、6C莢膜遺伝子座になっていたことを示唆する。
【0138】
6Aおよび6B莢膜遺伝子座も、wciP遺伝子におけるひとつのヌクレオチド差異を除き、ほぼ同一であるので、6B莢膜遺伝子座は、丁度6Aのように、wciNαを有する。6B莢膜遺伝子座はwciNβ遺伝子を捕捉することができ、新たな莢膜PSを形成することができ、6Dと命名された。6D血清型が天然に存在するかどうかを知られていなかった。なぜならば、天然単離物のなかの6Dの調査はされていなかったからである。
【0139】
現在入手可能な23価肺炎連鎖球菌ワクチンは6B PSを含有するが、旧式の14価肺炎連鎖球菌ワクチンは6A PSを含有する。このPSは23価肺炎連鎖球菌ワクチンにおいて置換されていた。なぜならば、6A PSはワクチン製剤中ではあまり安定ではなく、6B PSは6A PSへと交差反応する抗体を誘発するからである。[Robbins et al., 1983]。調査により、この構造的不安定は、ラムノースおよびリビトールの間の1→3リンケージのせいであることが分かった。[Zon et al., 1982]。6B PSに見出される1→4リンケージは6A PSの1→3リンケージよりも安定なので、6B PSは6A PSよりも安定である。6D PSの仮定構造は、6C PSが不安定な1→3リンケージを有するところ、6D PSがより安定な1→4リンケージを有していることを除き、6C PSのものと同一であるべきである。かくして、6D PSは、おそらく、6C PSよりもワクチン中でより有用であろう。
【0140】
PCRおよびDNA配列決定:
PCR反応混合物は、38.8μlの滅菌水、2μlの各5-pmolプライマー、2μlの10mM dNTP、5μlの10Xバッファー溶液、および0.μlのLA Taqポリメラーゼ(2.5U/μl, Takara Biomedical, Shiga, Japan)を含有していた。テンプレートについて、WizardゲノムDNA精製キット(Promega, Madison, WI)で単離された染色体DNAまたは血液寒天プレート上で成長させたコロニーのいずれかを用いた。熱サイクル条件は用いたプライマーセットに応じて変化させた。PCR産物を1%アガロースゲル中の電気泳動により分析した。用いたプライマーをテーブル7に列記する。PCR産物はWizard PCR Clean-up System (Promega)を用いて精製し、DNA配列決定はアラバマ大学バーミンガム校(UAB)のゲノミック・コア・ファシリティーによって行った。DNA配列はLasergene v. 5.1ソフトウェア(DNASTAR, Madison, WI)で解析し、GenBankの6Bおよび6C cps座の以前に報告された配列(それぞれ、登録番号CR931639, EF538714)と比較した。[Mavroidi et al., 2004]。
【0141】
遺伝子操作による6Dの創出:莢膜合成は多くの遺伝子の協働を要件とする。例えば、6D PSの繰返し単位を細菌の外部に輸出して莢膜PSの長鎖に組み込まれなければ、その繰返し単位は細菌中に蓄積し、6D血清型についての莢膜遺伝子座を持つ細菌に対する致命的な条件を作り出す。そうであれば、おそらく、6D血清型は天然には存在しないであろう。かくして、6D血清型が生物学的に可能であることを実証することが重要である。
【0142】
TIGR6Dを創出するストラテジーを図19に図示する。最初に、すでに詳細に記載されたようにヤヌスカセットシステムを用いて6B莢膜遺伝子座領域をTIGR4遺伝子バックグラウンドに挿入することによって、まず、血清型6Bを発現するTIGR6Bを調製する。[Park et al., 45 J. Clin. Microbiol. 1225-33 (2007)]。次に、wciN遺伝子を、カセット1でそれを形質転換し、カナマイシン耐性単離物を選択することによって、TIGR6Bから取り出す。カセット1はヤヌスカセットを有し、それは、カナマイシン耐性遺伝子(kanAR)およびストレプトマイシン感受性遺伝子(rpsL+)、および、6B莢膜遺伝子座に対する相同組換え用に設計されたふたつのフランキング領域を含有する。カナマイシン耐性株を得、TIGR6Bに3回戻し交配させた。得られた株は、TIGR6BXと表示し、wciNを喪失し、莢膜PSを生成しなかった。wciN6Cを挿入するために、TIGR6BXをカセット2で形質転換した。カセット1およびカセット2の双方をTIGR6AXのゲノムDNAおよびCHPA388から、それぞれ、プライマーセット5113および3102を用いて調製した。カセット2は、wciN6Cに加えて、wciPの部分を含有するが、6Aおよび6B血清型の区別を担うwciPコドンを含有しなかった(図19)。ストレプトマイシン耐性の選択およびTIGR6Bに対する3回戻し交配の後、ストレプトマイシン耐性株をTIGR6Dと表示した。TIGR6Dの莢膜遺伝子座をwchAからwciPまで配列決定すると、その配列は、意図した通り、wciN6BがwciN6C遺伝子で置換されたことを示した。この配列決定について、プライマーセット5114〜141、5138〜3104、および5106〜3105を用いて、アンプリコンを作成し、プライマー5103、5108、および5129を配列決定に用いた。
【0143】
【表8】

【0144】
TIGR6D配列をGenbankに寄託した(登録番号EU714777)。TIGR6Dは、血液寒天プレート上で成長させたとき、モルホロジー上、TIGR6Bと識別不可能であった。また、TIGR6Dは、他の肺炎連鎖球菌株と同様にTHYブロス中で成長した。
【0145】
膨張反応:血液寒天プレートからの細菌コロニーを少量のリン酸バッファードサリン(PBS)中に懸濁させ、2μlのこのブロスを、2μlの血清および2μlのメチレンブルー染色溶液(滅菌水中の3mg/mLメチレンブルーおよび1.5mg/mL NaCl)と、ガラス顕微鏡スライド上で合わせた。カバーガラスを載せたあと、混合物を100倍の油浸レンズを用いて明視野顕微鏡法で調査した。血清型6Aおよび6Bに特異的なウサギ抗血清をCDCによって調製した。
【0146】
実施例12.血清型6Bおよび6Dを区別するのに用いたインヒビションELISA
これらふたつの血清型は、インヒビション型ELISAを用いて区別した。簡単に言えば、ELISAプレート(Corning Costar Corp., Acton, MA)のウェルを、5μg/mLの6B莢膜PS(ATCC, Manassas, VA)で、37℃にて一晩、PBS中で被覆した。プレートを、0.05% Tween 20を含有するPBSで3回洗浄した後、50μlの予め希釈した細菌培養上清(すなわち、ライゼート)を50μlの抗6B mAbと一緒にウェルに添加した。肺炎連鎖球菌を1mlのTHYブロス中で一晩振盪することなく成長させ、ついで、チューブを15分間37℃にて溶解バッファー(脱イオン水中の0.1%デオキシコール酸ナトリウム、0.01%硫酸ドデシルナトリウム、および0.15Mクエン酸ナトリウム)と共にインキュベートすることによって、肺炎連鎖球菌ライゼートを調製した。6B-特異的ハイブリドーマHyp6BM7およびHyp6BM8の培養上清を、それぞれ、1:50および1:100の希釈にて用いた。37℃にて湿式インキュベーター中で30分間インキュベートした後、プレートを3回洗浄し、アルカリホスファターゼ−コンジュゲーティドヤギ抗マウスイムノグロブリン(Sigma, St. Louis, MO)と共に30分間インキュベートした。プレートを3回洗浄し、ついで、ジエタノールアミンバッファー中、1mg/mlの濃度の100μlのリン酸パラニトロフェニル基質(Sigma)を添加し、室温にて1〜2時間インキュベートさせた。405nmにての光学濃度をマイクロプレートリーダー(BioTek Instruments Inc, Winooski, VT)で読み取った。
【0147】
実施例13.6D莢膜PSの精製およびキャラクタリゼーション
血清型6Dを発現する莢膜PSを2つの異なるやり方で精製した。ひとつの方法(エタノール沈殿法)は、すでに記載されたように、そのPSをエタノール沈殿、イオン交換クロマトグラフィーおよび分子量サイズ分類クロマトグラフィーによって精製することである。[Park et al., 45 J. Clin. Microbiol. 1225-33 (2007)]。もうひとつの方法は、一番目の方法よりも速く、プロトプラストを除去した後に莢膜PSを精製することであり、以下に記載する。TIGR6Dを、1リッターのTHYブロス中で振盪することなく、培養が〜0.4のOD600に達するまで、成長させた。この培養を、ついで、15,000gにて10分間遠心した。細胞ペレットを1L PBSで2回洗浄し、20U/mLの濃度のムタノリシン(Sigma)と共に、30mLのプロトプラストバッファー{脱イオン水中の20%スクロース、5mMトリス-HCl(pH7.4)中に懸濁させ、室温にて一晩インキュベートさせた。翌日、細菌細胞を位相差顕微鏡で調査して、「プロトプラスト」が発生したことを確認し、ついで、プロトプラストを27,000gにて15分間遠心することによって除去した。上清を0.22ミクロンフィルターを通して滅菌し、脱イオン水中に1:1希釈し、2ml総容積のDEAE-セファロースカラム(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)に充填した。カラムを4mlの50mM酢酸アンモニウムで洗浄し、PSを4mlの500mM酢酸アンモニウムで溶出した。凍結乾燥後、溶出したPSを130mLの総容積のセファクリルS-300 HRカラム(Amersham Biosciences)に充填し、PSを10mMトリス-HCl(pH7.4)で溶出した。Hyp6BM8を用いるインヒビションアッセイによって、PSの存在につき、フラクションを試験した。最初の1mLのフラクションは、大部分のPSを含有し、それらをプールして凍結乾燥した。
【0148】
PSの単糖類組成分析:プロトプラスト法で調製した1mgの凍結乾燥した莢膜PSを500μlの1M HClに溶解し、80℃にて16時間インキュベートした。サンプルを窒素流下で乾燥した後、残りのPSを250μlのメタノールで2回洗浄した。そのサンプルを、次いで、200μlのTri-Sil Reagent(Pierce Biotech Inc., Rockford, IL)と共にインキュベートしてすべての単糖類をトリメチルシリル化した。反応生成物を、30-m(0.25-mm-diameter)VF-5キャピラリーカラムを取り付けたガス−液体クロマトグラフ/質量分析計(GLC/MS)(Varian 4000; Varian Inc., Palo Alto, CA)で分析した。カラム温度は100℃にて5分間維持し、ついで20℃/分にて275℃まで昇温し、最終的に、275℃にて5分間保持した。エレクトロン衝撃イオン化モードを用いる質量分析法(MS)で溶出物を分析した。GLC/MS中の各単糖類ピークの面積はVarian MS Workstation v6.5ソフトウェアを用いて決定した。
【0149】
タンデム型質量分析によるPSの分析:エタノール沈殿法によって調製した無傷莢膜PSを、質量分析による分析前にそれらの繰返し単位にまで加水分解した。PSの2mgアリコートを1mLの10mM NaOH中、85℃にて120時間加水分解し、その後、50mM NaOHで85℃にて120時間さらに加水分解した。加水分解の終わりに、すべてのサンプルを0.1M HClで中和した。
【0150】
タンデム型質量分析(MS/MS)は、UABの質量分析共有施設でエレクトロスプレイイオン源を備えたMicromass Q-TOF2質量分析計(Micromass Ltd., Manchester, United Kingdom)で行った。蒸留水に溶解させたサンプルを、ハーバードシリンジポンプを用いて、1μl/分の速度のランニングバッファー(50/50アセトニトリル−0.1%ギ酸含有水)で質量分析系に注入した。注入したサンプルをエレクトロスプレイで負にイオン化し、飛行時間質量分析計で検出した。MS/MSについて、親イオンは、アルゴンガスと衝突する前に、35eVまたは40eVのいずれかでエネルギーを与えて娘イオンに断片化した。娘イオンを飛行時間質量分析系で分析した。MS/MSスペクトルをMassLynx 2.5のMax-Ent3モジュールを用いて処理した。この研究により、リビトールおよびグルコース1は過ヨウ素酸塩で開裂されるが、グルコース2およびラムノース2はされないことが示された。娘イオンの質量は、リン酸ジエステル結合がグルコース1の2番目の位置に形成され、すべての他のグリコシル結合が6B PSと同じであるとことを示した。このMS/MS研究は、図21Aに示した提案構造を支持した。
【0151】
より詳しくは、6D PSの単糖類配列が図21Aで提案されているものであるかどうかを決定するために、リン酸ジエステル結合を切断し、繰返し単位を生成する穏和なアルカリ分解を用いた。6C PSについて観察されるように、この加水分解は、同一の質量を有するふたつのタイプの繰返し単位を生じ、ひとつはリン酸イオンがリビトールに連結したものであり(正方向フラグメンテーションと表示)、もうひとつはグルコースに連結したものである(逆方向フラグメンテーションと表示)。リン酸イオンは、負電荷の繰返し単位を与える。アルカリ分解生成物をMS/MSによって負イオンにつき分析すると、結果は683および701AMUのふたつの主要ピークを示し(図21B)、それらは、それぞれ、6D PSの予測した繰返し単位の無水物および水和物の質量と同一である(図21A)。260.902AMUのピークは、他のMS/MS試験にはなく、不純物を表しているのであろう。
【0152】
さらに、683AMUのイオン(すなわち、無傷繰返し単位)をアルゴン衝突に付し、その娘イオンをMS/MS分析で同定した。娘イオンは、521、359、および213AMUに観察され、それらは、それぞれ、第1グルコース、第2グルコースおよびラムノースを喪失した娘イオンを表している(図21C)。ピークは、549、403、および241AMUにも観察され、それらも、それぞれ、リビトール、リビトール−ラムノース、およびリビトール−ラムノース−グルコース2を喪失することによる逆方向フラグメンテーション後に形成された娘イオンに対応する(図21C)。113、127、および145AMUの3つのピークは、他のMS/MS試験にはなく、不純物を表しているのであろう(図21C)。かくして、6D PS繰返し単位の単糖類配列は、図21Aで提案するように、グルコース1−グルコース2−ラムノース−リビトールである。これらふたつのグルコース残基を明確にするために1および2と表示した。
【0153】
PSの酸化還元:莢膜PSを、1mg/mLの濃度にて、80mMナトリウムバッファー(pH4)に溶解した。過ヨウ素酸ナトリウムをこのPS溶液に添加して最終濃度を40mMにし、反応混合物を暗闇中4℃にて72時間インキュベートした。エチレングリコールを添加して、過剰な過ヨウ素酸塩を破壊した。酸化された莢膜PSの無傷単糖類を決定するために、PSを凍結乾燥し、ついで、上記したように、GLC/MSを用いて分析した。グリコシド結合を調査するために、サンプルは、すでに記載されているように[Park et al., 45 J. Clin. Microbiol. 1225-33 (2007)]、水素化ホウ素ナトリウムまたは重水素化ホウ素ナトリウムで還元し、その後、上記したように、MS/MSに付した。6D PSをプロトプラスト法で調製し、6B PSをATCCから入手した。
【0154】
加水分解安定性アッセイ:0.9mLの水中2mg/mL PSを0.1mLの0.1M NaOHと混合し、この溶液をふたつのエッペンドルフ管に分け、85℃にてインキュベートした。表記する時刻に、これらのサンプルから0.1mLを取り出し、0.1M HClで中和し、ついで、インヒビションELISAに用いるまで4℃にて保存した。上記のインヒビションアッセイについて記載したものと同一のバッファーおよびインキュベーション条件を用いて、プレートを100μlの5μg/mL 6A、6B、6C、または6D PSで被覆した。ELISAは、それら各々のPSで被覆したプレート上、加水分解サンプルについて行った。6Aおよび6C PSについて、Hyp6AG1を一次抗体として用い([Park et al., 2007]で行われたように)、6Bおよび6Dについて、Hyp6BM8を(上記するように)用いた。示されたデータは、重複して行ったサンプルの平均である(図22)。
【0155】
質量分析のためのアルカリ分解実験の間、6D PSはアルカリ分解に対して非常に抵抗性であった。加水分解に対する抵抗性を測定するために、6A、6B、6Cおよび6D PSが、様々な時間のアルカリ分解の後の(6Bおよび6D PSについて)Hyp6BM8、(6Aおよび6C PSについて)Hyp6AG1の標的PSに対する結合を阻害す能力を比較した。6Aおよび6C PSは、たった一時間の加水分解の後、阻害する能力を完全に喪失した。対照的に、6B PSは8時間後にその阻害脳の90%を喪失し、6D PSがその阻害能力を90%喪失するのに、100時間以上の加水分解が必要であった(図22)。かくして、6D PSはアルカリ分解に対して、6Aおよび6C PSよりもかなり抵抗性である。
【0156】
実施例14.単離物中の血清型6Dの存在についてのスクリーニング
6Dが天然に存在するかどうかを決定するために、古典的な手段によって以前「6B」と血清型分類された264の肺炎連鎖球菌単離物を、mAbを用いて、血清型6Bまたは6Dにつき、再度血清型分類した。これらの単離物は、アラバマ大学バーミンガム校の6B単離物の研究用コレクションの一部であり、それらは、アフリカ、アジア、オーストラリア、南アメリカ、およびヨーロッパを起源とするものである。これらに加えて、6A型莢膜、無莢膜、および6C型莢膜を発現するTIGR4の同質遺伝子株である、TIGR6A、TIGR6AX、およびTIGR6C[Park et al., 75. Infect. Immun. 4482-89 (2007)]を、アッセイ対照またはDNA源として用いた。さらなるTIGR4変異体、TIGR6B、TIGR6BX、およびTIGR6Dを下記するように調製した。すべての細菌を、0.5%酵母抽出物で補給したTodd-Hewittブロス(BD Biosciences, San Jose, CA)(THY)中で成長させ、使用するまで−80℃にて保存した。
【0157】
【表9】

【0158】
ポリクローナルウサギ抗血清を用いる膨張反応によって、TIGR6Dの血清学的特性を調査すると、6B型と分類された。インヒビションELISAを用いて6Aおよび6Bに対する様々なmAbを結合させることについてTIGR6D PSを調査すると、それは6B PSに対する多くのmAbと反応性であった。例えば、TIGR6Dは、Hyp6BM8が6B PSに結合することを阻害した。これらの観察により、6D PSは血清学的に6B PSに非常に近いことが明確に実証された。対照的に、6B PSに特異的なmAb(Hyp6BM7)は、6D PSと反応性ではなかった(図20)。かくして、6D PSは血清学的に6B PSと区別される。
【0159】
上記の血清学的研究は、6D PSを発現する肺炎連鎖球菌単離物が天然に存在するならば、それらは6B血清型と分類されてきたであろうことを示した。天然の血清型6D単離物の存在を探すために、6Dおよび6D血清型を区別できるインヒビションELISAを用いて、以前血清型6Bと分類された264の肺炎連鎖球菌単離物を調査した(図20)。これらの6B単離物は六大陸(北アメリカ、南アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、およびオーストラリア)から来たものであり、菌血症、髄膜炎、肺炎、および中耳炎の患者ならびに健康保菌者から単離した。264の6B株のいずれも6Dの抗体結合プロファイルを示さなかった(図8)。かくして、血清型6Dの有病率は、存在するならば、6Bの有病率よりも相当少ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌指定ストレプトコッカス・ニューモニアエ6Dの単離培養物。
【請求項2】
細菌指定ストレプトコッカス・ニューモニアエ6Dから誘導された多糖類または多糖類の部分を含むワクチン。
【請求項3】
繰返し単位{→2)グルコース1(1→3)グルコース2(1→3)ラムノース(1→4)リビトール(5→リン酸}を含む精製された多糖類。
【請求項4】
繰返し単位{→2)グルコース1(1→3)グルコース2(1→3)ラムノース(1→4)リビトール(5→リン酸}を有する多糖類を含むワクチン。
【請求項5】
ストレプトコッカス・ニューモニアエ 6Dに結合する分子に結合する抗原。
【請求項6】
ストレプトコッカス・ニューモニアエ 6Dを識別する化学的、物理的または遺伝子学的試験。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2010−528612(P2010−528612A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510462(P2010−510462)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/064951
【国際公開番号】WO2008/148120
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(301044015)ザ ユーエイビー リサーチ ファウンデイション (4)
【Fターム(参考)】