説明

肺表面活性物質配合物を凍結乾燥により生成する方法並びにその配合物及び利用

肺表面活性配合物を、溶媒溶解及び凍結乾燥により製造する方法並びにそれにより得られる表面活性配合物を記載する。呼吸機能障害を治療する方法も又、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、35USC§119(e)に基づき、2004年11月15日出願の米国特許出願第60/628,365号の優先権を主張するものであり、該出願の開示をそっくりそのまま本明細書中に援用する。
【0002】
この発明は、肺の表面活性物質の配合物を、溶媒溶解及び凍結乾燥によって生成する方法に向けられている。この発明は又、それに由来する表面活性物質の配合物及び呼吸機能不全を治療する方法にも向けられている。
【背景技術】
【0003】
肺の表面活性物質(「肺表面活性物質」とも呼ばれる)は、肺胞の空気−水界面での単層の形成を促進し、表面張力を低減させることにより呼息中に肺胞がつぶれるのを防止する脂質とタンパク質の複雑な混合物である。天然の肺表面活性物質は、肺の気液界面で表面張力を下げるように相互作用するリン脂質とアポタンパク質の両方を含むので、「リポタンパク質複合体」として記載されている。4種類のタンパク質(即ち、SP−A、SP−B、SP−C及びSP−D)が、肺表面活性物質と関連することが見出されている。特に、SP−Bは、肺表面活性物質の生物物理的作用に必須であるようである。肺表面活性物質を患者の肺に投与することは、様々な呼吸障害を処置するために受け入れられた治療である。
【0004】
薬理学的観点から、この処置で用いるための最適の外因性肺表面活性物質は、完全に実験室で合成されよう。この点において、有用であることが見出されているSP−Bの模倣物は、21アミノ酸のカチオン性ポリペプチドであるKL4である。
【0005】
医療用に商業規模で肺表面活性物質を製造する一つの方法は、薄膜蒸発(TFE)ユニット操作を利用する工程によるものである。この工程は、KL4肺表面活性物質の製造に適用する場合は、次の工程よりなる:1)4つの主要配合物成分のジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)及びパルミチン酸(PA)及びKL4をエタノールに溶解させ;2)エタノールをTFEを用いて除去し;そして3)最終的分散液を瓶詰めする。このTFEユニット操作は、それ自体複雑であり且つ規模に限界がある。特に、1ft2のTFEは、40リットルのバッチを生成し、最大の匹敵する利用可能なユニットは、10ft2TFEである。これは、バッチサイズを制限し、それは、常に増大する量の表面活性物質を必要する更なる兆しがKL4表面活性物質について認められるので望ましくない。その上、この工程は、無菌条件下で行われ、これは、有意に、製品のコスト、計画の柔軟性、及び複雑さに寄与する。
【0006】
TFEを利用するコスト及び複雑さに加えて、この組成物が液体状態で保存されるために、更なる紛糾が存在する。この組成物のポリペプチド及び脂質成分は分解の対象であるので、溶液は、如何なる分解をも遅らせて長期間の安定性を達成するように冷却して維持しなければならない。
【0007】
水溶液中で比較的不安定な製品例えば注射用医薬を凍結乾燥することが、一層安定で、それ故一層棚持ちが良い固相生成物を生じることは、当分野で周知である。凍結乾燥される医薬の例には、アルプロスタジル、アルプリジン、ベータ−インターフェロン、アモキシシリンナトリウム、硫酸トブラマイシン、硫酸ゲンタマイシン、強心性ホスホジエステラーゼインヒビター、シクロヘキサン−1,2−ジアミンPt(II)錯塩、アナマイシン、フルクトース−1,6−二リン酸などが含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
改善された室温での安定性を有する肺表面活性物質KL4を与えるために、該表面活性物質を凍結乾燥する試みが、米国特許第5,952,303号に記載されたようになされてきた。しかしながら、肺表面活性組成物を生成する改良された方法及び改良された肺表面活性物質に対する要求がある。本発明は、これ及び他の重要な目的に向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本願発明者は、表面活性組成物を有機溶媒からの凍結乾燥によって製造することができることを発見した。如何なる理論にも制限はされないが、有機溶媒が肺表面活性物質の成分と相互作用して、それらを一層徹底的に可溶化し、それにより一層完全な混合物を与えるものと考えられる。ある具体例において、凍結乾燥された表面活性組成物は、再構成又は再水和された際に、凍結乾燥前の状態と比較して減少した粘性及び表面張力を有する。ある具体例において、凍結乾燥した表面活性組成物は、室温で保存された場合に、凍結乾燥前の状態と比較して改善された安定性を有し、該凍結乾燥した表面活性物質は、水性緩衝液又は媒質を加えると容易に良く分散されたコロイド状態を再構成する。加えて、本発明のある面において、ここに記載した方法は、これらの界面活性組成物は有意に低いコストで商業規模で製造することができるので、有利である。本発明のある面において、この製造工程のコストは、肺表面活性組成物が薄膜蒸発器及び/又は無菌環境を利用せずに製造されるので低下される。
【0010】
従って、この発明は、部分的に、肺表面活性組成物を生成するための簡素化された製造工程、改善された粘度及び表面張力特性を有する肺表面活性組成物、並びに該肺表面活性組成物を用いて呼吸障害を治療する方法に向けられている。これらの改善された肺表面活性組成物は、ここに記載したように、この発明のある方法によって得ることができる。
【0011】
本発明のある具体例において、肺表面活性組成物を生成する方法は、肺表面活性ポリペプチドと一種以上の脂質を有機溶媒系を用いて結合させて実質的に均質な液体混合物を形成し、その液体混合物を凍結乾燥させて凍結乾燥された肺表面活性ポリペプチド組成物を得る工程を含む。この有機溶媒系は、肺表面活性ポリペプチドと一種以上の脂質を可溶化して実質的に均質な液体混合物を形成するのに十分な量の有機溶媒を含む。本発明のある面において、実質的に均質な液体混合物は、凍結乾燥前に濾過される。ある面において、この実質的に均質な液体混合物は、凍結乾燥前に、フィルター殺菌される。幾つかの他の面において、この肺表面活性ポリペプチド組成物は、凍結乾燥後に殺菌される。
【0012】
本発明は又、ここに記載した方法によって生成される乾燥肺表面活性組成物をも提供する。
【0013】
ある具体例において、本発明の方法は、ここに記載したある方法によって生成された凍結乾燥された肺表面活性物質を得て、該凍結乾燥された肺表面活性物質を十分量の製薬上許容しうる分散剤を用いて再構成して液体の肺表面活性組成物を生成する工程を含む。
【0014】
ある具体例において、本発明の方法は、ここに記載した方法により生成した凍結乾燥した肺表面活性組成物を患者に投与することを含む、患者において呼吸障害を処置するステップを含む。
図面の簡単な説明
図1は、この発明の典型的組成物中に存在する脂質の測定された濃度を、無菌濾過のフィルター通過数と比較して示している。
図2は、この発明の典型的組成物中に存在するKL4ポリペプチドの測定された濃度を、無菌濾過のフィルター通過数と比較して示している。これは、KL4の、脂質からの抽出後の測定値である。
図3は、典型的な再構成された凍結乾燥KL4配合物の、塩を伴うか又は伴わない表面活性データを示している。TBAは、t−ブタノールである。
図4は、塩を伴うか又は伴わない、典型的な凍結乾燥KL4配合物についての残留水分データを示している。TBAは、t−ブタノールである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
詳細な説明
A.序論
本発明は、とりわけ、液体の肺表面活性組成物を提供する。この発明は又、とりわけ、肺表面活性物質の製造方法及び利用方法をも提供する。本願発明者によって、肺表面活性物質を有効量の有機溶媒系に分散させてその後凍結乾燥すれば、所望の肺表面活性物質が形成されることが発見されている。
【0016】
この発明は、呼吸障害の治療に利用することのできる幾つかの方法、試薬及び化合物を提供する。この発明は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、又は生物系(当然、変化しうる)に制限されないということは、理解されるべきである。ここで用いられる用語は、特定の具体例を説明することを目的とするだけであって、制限を意図するものではないということも又、理解されるべきである。この明細書及び添付の請求の範囲で用いる場合、内容的に明らかに違う場合を除いて、単数形の用語でも複数形の意味をも包含する。従って、例えば、「表面活性物質」に言及する場合、2以上の表面活性物質の組合せなどを包含する。
【0017】
「約」は、量、一時的遅延などの測定可能な値に言及する場合には、規定値から±20%又は±10%の、一層好ましくは±5%の、尚一層好ましくは±1%の変動を包含する(かかる変動は、開示した方法を実施するのに適している)。
【0018】
別途規定しないかぎり、ここで用いるすべての技術的及び科学的用語は、当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。ここに記載したものと類似の又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の試験のための実施において用いることができるが、好適な材料及び方法は、ここに記載されている。本発明の説明及び請求の範囲においては、下記の術語を用いる。
【0019】
ここで同定されたすべての「アミノ酸」残基は、天然のL−コンフィギュレーションである。標準的なポリペプチド命名法、J.Biol.Chem. 243:3557-59, 1968と一致して、アミノ酸残基の略号は、下記の表に示した通りである。
【表1】

【0020】
すべてのアミノ酸残基の配列は、ここでは、左から右への向きが慣用のアミノ末端からカルボキシ末端への向きである式によって表されているということは注意すべきである。
【0021】
以下で一層詳細に記載するように、有機溶媒系は、低級オキシ炭化水素、低級ハロ炭化水素、低級ハロオキシ炭化水素、低級スルホキシ炭化水素、低級環状炭化水素、及びこれらの組合せよりなる群から選択する有機溶媒を含む。
【0022】
「低級オキシ炭化水素」は、ここで言及する場合、ヒドロカルビル基及び酸素原子を有して、1〜8炭素原子及び1〜4酸素原子を有する化合物を意味する。典型的な低級オキシ炭化水素には、低級アルカノール、低級ケトン、低級カルボン酸、低級カルボン酸エステル、低級カルボン酸塩などが含まれるが、これらに限られない。
【0023】
「低級」は、本明細書中に記載された化学化合物に言及する場合、1〜8炭素原子を有する化合物を指す。
【0024】
「低級アルカノール」は、飽和C1〜C8アルキル基を指し、これは、1〜4水酸基を有していて、分枝鎖であっても直鎖であってもよい。一つの水酸基を有する典型的な低級アルカノールには、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、イソ−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、t−ペンタノールなどが含まれるが、これらに限られない。
【0025】
典型的な「低級ケトン」には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソ−ブチルケトン、メチル2−ブチルケトン、メチルt−ブチルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチルブチルケトン、エチルイソ−ブチルケトン、エチルt−ブチルケトンなどが含まれるが、これらに限られない。
【0026】
典型的な「低級カルボン酸」には、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸などが含まれるが、これらに限られない。
【0027】
典型的な「低級カルボン酸エステル」には、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、2−ブチルアセテート、t−ブチルアセテートなどが含まれるが、これらに限られない。
【0028】
典型的な「低級カーボネート」には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、メチルイソ−ブチルカーボネート、メチル2−ブチルカーボネート、メチルt−ブチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチルイソプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、エチルイソ−ブチルカーボネート、エチルt−ブチルカーボネートなどが含まれるが、これらに限られない。
【0029】
「低級ハロ炭化水素」は、ここで言及する場合、炭化水素基とハロゲン原子を有して、1〜8炭素原子及び1〜4ハロゲン原子を有する化合物を意味する。好ましくは、これらのハロゲン原子は、塩素、フッ素及び臭素である。最も好ましくは、これらのハロゲン原子は、塩素原子である。典型的な低級ハロ炭化水素には、メチルクロリド、メチレンクロリド、クロロホルム、カーボンテトラクロリドなどが含まれるが、これらに限られない。
【0030】
「低級ハロキシ炭化水素」は、ここで規定する場合、オキシ炭化水素であって、更に1〜4個のハロゲン原子を有するオキシ炭化水素を意味する。典型的なハロキシ炭化水素には、ヘキサフルオロアセトンが含まれるが、これらに限られない。
【0031】
「低級スルホキシ炭化水素」は、ここで規定する場合、オキシ炭化水素であって、硫黄原子をも含むオキシ炭化水素を意味する。典型的な低級スルホキシ炭化水素には、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びジメチルスルホンが含まれるが、これらに限られない。
【0032】
「低級環状炭化水素」は、環化された炭化水素基例えば3〜8員の炭化水素環を指す。典型的な環状炭化水素には、シクロヘキサンが含まれるが、これに限られない。
【0033】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、ここでは、アミノ酸残基のポリマーを指すために交換可能に用いられる。これらの用語は、一つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然のアミノ酸の人工的な化学的模倣物であるアミノ酸ポリマーに適用され、並びに天然のアミノ酸ポリマー及び非天然のアミノ酸ポリマーに適用される。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的化学構造と異なる構造を有するが、天然のアミノ酸と類似した様式で機能する化学化合物を指す。非天然残基は、科学文献及び特許文献によく記載されている。天然アミノ酸残基の模倣物として有用な幾つかの典型的組成物及び指針を以下に記載する。芳香族アミノ酸の模倣物は、例えば、D−又はL−ナフィルアラニン;D−又はL−フェニルグリシン;D−又はL−2チエニルアラニン;D−又はL−1,−2,3−,又は4−ピレニルアラニン;D−又はL−3チエニルアラニン;D−又はL−(2−ピリジニル)−アラニン;D−又はL−(3−ピリジニル)−アラニン;D−又はL−(2−ピラジニル)−アラニン;D−又はL−(4−イソプロピル)−フェニルグリシン;D−(トリフルオロメチル)−フェニルグリシン;D−(トリフルオロメチル)−フェニルアラニン;D−p−フルオロ−フェニルアラニン;D−又はL−p−ビフェニルフェニルアラニン;K−又はL−p−メトキシ−ビフェニルフェニルアラニン;D−又はL−2−インドール(アルキル)アラニン;及びD−又はL−アルキルアラニンを置き換えることにより生成することができ、ここに、アルキルは、置換された又はされてないメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ブチル、ペンチル、イソプロピル、イソブチル、sec−イソチル、イソ−ペンチル、又は非酸性アミノ酸であってよい。非天然アミノ酸の芳香族環には、例えば、チアゾリル、チオフェニル、ピラゾリル、ベンズイミダゾリル、ナフチル、フラニル、ピロリル、及びピリジル芳香族環が含まれる。
【0034】
「ペプチド」は、ここで用いる場合、ここで特に例示したペプチドの保存的変異体であるペプチドを包含する。「保存的変異」は、ここで用いる場合、アミノ酸残基の、他の生物学的に類似した残基による置換を指す。保存的変異の例には、一つの疎水性残基例えばイソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、システイン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、ノルロイシン又はメチオニンによる他の残基の置換、又は一つの極性残基による他の残基の置換、例えばアルギニンによるリジンの置換、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置換、又はグルタミンによるアスパラギンの置換などが含まれるが、これらに限られない。他のアミノ酸を置換することのできる中性の親水性アミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、セリン及びスレオニンが含まれる。「保存的変異」は又、置換されたポリペプチドに対して高められた抗体が未置換ポリペプチドとも免疫反応する場合の、未置換の親アミノ酸の代わりの置換されたアミノ酸の利用をも包含する。かかる保存的置換は、この発明のペプチドのクラスの定義内にある。「カチオン性」は、ここで用いる場合、pH7.4で、正味の正電荷を有する任意のペプチドを指す。それらのペプチドの生物学的活性は、当業者に公知で且つ本明細書に記載された標準的方法によって測定することができる。
【0035】
この発明のペプチドは、当業者に公知の方法によって合成することができる。例えば、ある具体例においては、一般的に用いられる方法例えばアルファ−アミノ基のt−BOC又はFMOC保護を利用することができる。両方法は、ペプチドのC末端から開始して、各ステップで単一のアミノ酸を加える段階式合成を含む(Coligan等、Current Protocols in Immunology, Wiley Interscience, 1991, Unit 9 参照)。この発明のペプチドは、例えば、Merrifield, J.Am.Chem.Soc. 85:2149, 1962, 及びStewart及びYoung, 1969, Solid Phase Peptides Synthesis, 27-62頁に記載された公知の固相ペプチド合成法によって、ポリマー1g当たり0.1〜1.0mモルアミンを含むコポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)を用いて合成することができる。化学合成の完了時に、これらのペプチドを脱保護してポリマーから開裂させることができる(液体HF−10%アニソールでの、約1/4〜1時間の、0℃での処理による)。試薬の蒸発後、これらのペプチドをポリマーから、1%酢酸溶液を用いて抽出し、次いで、凍結乾燥することにより粗生成物を生成する。これは、普通、セファデックスG−15上での5%酢酸を溶媒として用いるゲル濾過などの技術によって精製することができる。このカラムの適当な画分の凍結乾燥は、均質なペプチド又はペプチド誘導体を生じ、次いで、それを、アミノ酸分析、薄層クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー、紫外吸収分光法、モル旋光度、溶解度などの標準的技術によって特性決定し、固相エドマン分解法によって定量することができる。
【0036】
「組換え」は、タンパク質を参照して用いる場合、そのタンパク質が、異質の核酸若しくはタンパク質の導入又はネイティブな核酸若しくはタンパク質の変化により改変されていることを示す。
B.組成物及び方法
【0037】
ここに記載の凍結乾燥した肺表面活性ポリペプチド組成物は、典型的には、肺表面活性ポリペプチドと一種以上の脂質を有機溶媒系を用いて合せることにより実質的に均質な液体混合物を形成してから該混合物を凍結乾燥することによって製造される。凍結乾燥前又は後で、この混合物を殺菌することができる。ある具体例においては、この実質的に均質な液体混合物を、凍結乾燥前に殺菌濾過して無菌の液体混合物を得、続いて、その無菌混合物を凍結乾燥する。ある別の具体例においては、この肺表面活性組成物を、例えば凍結乾燥した後で、最後に殺菌する。
【0038】
天然の肺表面活性物質は、肺で自然に生成されるタンパク質/脂質組成物であって、肺の酸素を吸着する能力に臨界的である。それらは、肺の全肺胞表面及び末端の肺胞へと導く誘導気道を覆っている。表面活性物質は、肺胞内に通常存在する液体の表面張力を継続的に緩和することにより呼吸を容易にする。表面活性物質が存在しないか低下するならば、肺胞は潰れる傾向があり、肺は十分な酸素を吸収しない。末端誘導気道の表面張力を低下させることにより、表面活性物質は、開通性を維持する(即ち、気道を開いた状態に維持する)。開通性の喪失は、気道の開通障害及び危機的肺機能の喪失へと導く。ヒトの表面活性物質は、主として、リン脂質{主なものは、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)}及び4種類の表面活性ポリペプチドA、B、C及びD{表面活性タンパク質B(SP−B)が呼吸機能に必須}である。
【0039】
好適な面において、本発明の肺表面活性ポリペプチドは、動物起源から得ることができ又は合成により得ることのできるカチオン性ペプチドである。ここでの使用のための典型的な肺表面活性ポリペプチドには、天然の及び非天然の肺表面活性ポリペプチド例えば動物由来のSP−A、SP−B、SP−C又はSP−Dポリペプチド;組換えSP−A、SP−B、SP−C又はSP−Dポリペプチド;合成により得られるSP−A、SP−B、SP−C又はSP−Dポリペプチド;SP−A、SP−B、SP−C及びSP−D類似体;SP−A、SP−B、SP−C及びSP−Dポリペプチド模倣物;活性を保持したそれらの保存的改変変異体;及び活性を保持したこれらの断片が含まれる。肺表面活性物質の模倣物は、ヒトの肺タンパク質の本質的属性を正確に真似るように巧みに処理されたポリペプチドである。ある好適な具体例において、この肺表面活性ペプチドは、少なくとも約10好ましくは少なくとも11アミノ酸残基よりなり、且つ約80アミノ酸残基以下の通常は約35アミノ酸残基より、好ましくは約25アミノ酸残基より少ないアミノ酸残基よりなるカチオン性ペプチドである。
【0040】
ここでの使用のための肺表面活性ポリペプチドの典型的なアミノ酸配列、それらを単離する方法、及びそれらを遺伝子工学的技術によって生成する方法は、当分野で公知である。例えば、米国特許第5,874,406号;5,840,527号;4,918,161号;5,827,825号;6,660,833号;5,006,343号;5,455,227号;5,223,481号;5,753,621号;5,891,844号;4,861,756号;5,272,252号;5,024,95号;5,238,920号;5,302,481号;6,022,955号;5,874,406号;5,840,527号;5,827,825号;6,660,833号;及び国際公開No.WO8603408及びWO8904326を参照されたい(これらの各々の開示を本明細書中にそっくりそのまま参考として援用する)。ここでの使用のための好適な肺表面活性ペプチドは、SP−B若しくはSP−Cポリペプチド又はポリペプチド模倣物である。
【0041】
ここでの使用に特に好適な肺表面活性ペプチドは、SP−Bポリペプチド又はポリペプチド模倣物である。SP−Bは、表面張力の低下と酸素交換の促進に最も重要な表面活性タンパク質であることが知られている天然の肺表面活性物質中のタンパク質である。SP−Bポリペプチド模倣物は、約80アミノ酸の大きさより遥かに小さい疎水性ポリペプチドである。多くのSP−Bポリペプチド模倣物は、反復する疎水性のカチオン性モチーフを有する。天然のSP−Bポリペプチドと同様に、SP−B模倣物は、好ましくは、末端誘導気道の表面張力を低下させて酸素交換を促進する。
【0042】
本発明における利用に好適なSP−B模倣物は、KL4ペプチドであり、これは、反復するリジン及びロイシン残基を含むカチオン性ペプチドである。KL4は、肺表面活性模倣ペプチドのファミリーの代表的なものであって、例えば、米国特許第5,260,273号、5,164,369号、5,407,914号及び6,613,734号に記載されている(その各々を、そっくりそのまま、すべての目的のために、本明細書中に参考として援用する)。KL4ペプチドを製造する方法は、米国特許第5,164,369号中に見出すことができる。
【0043】
ある具体例において、肺表面活性ポリペプチド模倣物は、ゼロ未満の、好ましくは−1以下の、一層好ましくは−2以下の複合疎水性を有するアミノ酸残基配列を有するポリペプチドを指す。ペプチドの複合疎水性値は、ペプチド中の各アミノ酸残基に、Hopp等、Proc.Natl.Acad.Sci., 78:3824-3829, 1981(その開示を参考として参考として本明細書中に援用する)に記載された対応する疎水性値を割り当てることにより決定される。所与のペプチドについて、疎水性値を合計し、その合計が複合疎水性値を表している。
【0044】
ある具体例において、肺表面活性ポリペプチド模倣物のアミノ酸配列は、SP18の疎水性及び親水性残基のパターンを真似ていて、SP18の疎水性領域の機能を達成する。SP18は、公知の肺表面活性アポタンパク質であり、Glasser等、Proc.Natl.Acad.Sci., 84:4007-4001 1987(参考として、本明細書中に、そっくりそのまま、すべての目的のために援用する)に更に徹底的に記載されている。
【0045】
ある具体例において、ここで用いるためのSP−B模倣物には、交互の疎水性及び親水性アミノ酸残基領域を有するポリペプチドが含まれ、該模倣物は、下記式により表される少なくとも10アミノ酸残基を有するとして特性表示される:
(Zab)cd
Z及びUは、アミノ酸残基であり、各出現につき、Z及びUは、独立に、選択される。Zは、親水性アミノ酸残基であり、好ましくは、R、D、E及びKよりなる群から選択される。Uは、疎水性アミノ酸残基であり、好ましくは、V、I、L、C、Y及びFよりなる群から選択される。文字「a」、「b」、「c」及び「d」は、親水性又は疎水性残基の数を示す数字である。文字「a」は、約1〜5の、好ましくは約1〜3の平均値を有する。文字「b」は、約3〜20の、好ましくは約3〜12の、一層好ましくは約3〜10の平均値を有する。文字「c」は、1〜10、好ましくは2〜10、最も好ましくは3〜6である。文字「d」は、1〜3、好ましくは1〜2である。
【0046】
Z及びUにより表されるアミノ酸残基が独立に選択されるということは、各出現につき、特定された群からの残基が選択されることを意味する。即ち、「a」が例えば2であるならば、Zにより表される親水性残基の各々は、独立に選択され、そうして、RR、RD、RE、RK、DR、DD、DE、DKなどを含みうる。「a」及び「b」が平均値を有するということは、反復する配列(ZaUb)内の残基の数がペプチド配列内で幾分変化しえても、「a」及び「b」の平均値は、それぞれ、約1〜5及び約3〜20であることを意味する。
【0047】
ある具体例において、本発明で用いることのできる典型的なSP−Bポリペプチド模倣物には、下記の肺表面活性模倣ペプチドの表に示されたものが含まれるが、これらに限られない。
【表2】

【0048】
本発明の好適な方法において、肺表面活性ペプチド及び一種以上の脂質を、有機溶媒系を用いて合わせる。用語「脂質」は、ここで用いる場合、天然の、合成の又は半合成の(即ち、改変した天然の)一般に両親媒性の化合物を指す。これらの脂質は、典型的には、親水性成分及び疎水性成分を含む。典型的脂質には、リン脂質、脂肪酸、脂肪アルコール、中性脂肪、ホスファチド、油、糖脂質、表面活性化剤(表面活性物質)、脂肪族アルコール、ワックス、テルペン及びステロイドが含まれるが、これらに限られない。語句半合成の(即ち、改変された天然の)は、何らかの仕方で化学的に改変された天然の化合物を示す。好ましくは、この発明の脂質は、それらの脂肪酸、アルコール、エステル及びエーテル及び脂肪アミンである。
【0049】
この発明により送達される組成物において有用なリン脂質の例には、ネイティブな及び/又は合成のリン脂質が含まれる。用いることのできるリン脂質には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチド酸、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴ脂質、ジアシルグリセリド、カージオリピン、セラミド、セレブロシドなどが含まれるが、これらに限られない。典型的なリン脂質には、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジラウリルホスファチジルコリン(DLPC)(C12:0)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)(C14:0)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジフィタノイルホスファチジルコリン、ノナデカノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)(C18:1)、ジパルミトオレオイルホスファチジルコリン(C16:1)、リノレオイルホスファチジルコリン(C18:2)、ミリストイルパルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)、ステロイルミリストイルホスファチジルコリン(SMPC)、ステロイルパルミトイルホスファチジルコリン(SPPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルパルミトオレオイルホスファチジルコリン(PPoPC)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、パルミトイルオレオイルホスファチジルセリン(POPS)、大豆レシチン、卵黄レシチン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、及び卵ホスファチジルコリン(EPC)が含まれるが、これらに限られない。
【0050】
これらの混合物において有用な脂肪酸及び脂肪アルコールの例には、ステロール、パルミチン酸、セチルアルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、フィタン酸、ジパルミチン酸などが含まれるが、これらに限られない。好ましくは、脂肪酸は、パルミチン酸であり、好ましくは、脂肪アルコールは、セチルアルコールである。
【0051】
これらの混合物において有用な脂肪酸エステルの例には、メチルパルミテート、エチルパルミテート、イソプロピルパルミテート、コレステリルパルミテート、パルミチルパルミテートナトリウムパルミテート、カリウムパルミテート、トリパルミチンなどが含まれるが、これらに限られない。
【0052】
半合成の即ち改変された天然脂質の例は、化学的に改変された上に記載した脂質の何れかである。この化学的改変は、幾つかの改変を包含することができるが、好適な改変は、脂質の所望の部位へ少なくとも一つのポリエチレングリコール(PEG)を結合することである。ポリエチレングリコール(PEG)は、生体適合性で、非毒性で、非免疫原性で且つ水溶性ポリマーであるので、生体材料、生体工学及び医薬において広く利用されてきている。Zhao及びHarris, ACS Symposium Series 680:458-72, 1997。薬物送達の領域において、PEG誘導体は、免疫原性、タンパク質分解及び腎臓クリアランスを減じ、溶解度を増すためのタンパク質への共有結合物(即ち「PEG化」)として広く用いられてきた。Zalipsky, Adv.Drug.Del.Rev. 16:157-82, 1995。
【0053】
PEGと結合した脂質は、ここでは、「PEG−脂質」と呼ぶ。好ましくは、PEG−脂質がこの発明の方法及び組成物で用いられる場合には、それらは、アルコール及び/又はアルデヒド中に存在する。
【0054】
様々な糖類例えばデキストロース、フルクトース、ラクトース、マルトース、マンニトール、スクロース、ソルビトール、トレハロースなど、界面活性剤例えばポリソルベート80、ポリソルベート20、ソルビタントリオレエート、チロキサポールなど、ポリマー例えばPEG、デキストランなど、塩例えばNaCl、CaCl2など、アルコール例えばセチルアルコール、及び緩衝剤を含む(これらに限られない)他の賦形剤をこの肺表面活性ポリペプチド、一種以上の脂質、及び有機溶媒系と、凍結乾燥前に合わせることができる。
【0055】
好ましくは、肺表面活性ペプチドは、リン脂質及び遊離の脂肪酸又は脂肪アルコール例えばDPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン)、POPG(パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール)及びパルミチン酸(PA)と合わせる。例えば、米国特許第5,789,381号を参照されたい(その開示を、本明細書中に、参考として、そっくりそのまま、すべての目的のために援用する)。
【0056】
ある好適具体例において、この肺表面活性組成物は、ルシナクタントであり、又は他の合成表面活性タンパク質KLLLLKLLLLKLLLLKLLLL(KL4;SEQ ID NO:1)を含む肺表面活性配合物である。ルシナクタントは、DPPC、POPG、パルミチン酸(PA)とKL4ペプチドの結合物(重量比約7.5:2.5:1.35:0.267)である。ある具体例において、この薬物生成物は、例えば10、20及び30mg/mlのリン脂質含有量の濃度で配合される。ある別の具体例においては、この薬物生成物は、一層高濃度例えば60、90、120mg/ml以上のリン脂質含有量で配合される(KL4濃度の増大を伴う)。
【0057】
呼吸困難系及び他の肺の症状における使用のための現在使用されているか又は将来開発される任意の肺表面活性ペプチドは、本発明における利用に適している。現在の肺表面活性生成物には、ルシナクタント(Surfaxin(登録商標)、Discovery Laboratories, Inc., Warrington, PA)、ポラクタントアルファ(Curosurf(登録商標)、Chiesi Farmaceutici SpA, Parma, イタリア国)、及びベラクタント(Survanta(登録商標)、Abbott Laboratories, Inc., Abbott Park, IL)が含まれるが、これらに限られない。
1.凍結乾燥前の組成物
【0058】
この発明のある方法における第一のステップは、有機溶媒系中の肺表面活性ペプチド、一種以上の脂質の実質的に均質な液体混合物を得ることである。用語「実質的に均質」とは、これらの成分が、例えば溶液中に、互いに一様に分散していることを意味する。典型的具体例において、実質的に均質な混合物は、溶液であり、時には−10〜50℃の範囲にある。
【0059】
この肺表面活性ペプチドは、好ましくは、一種以上の脂質中に分散している。この肺表面活性ペプチドと一種以上の脂質を含む組成物は、本明細書中では、時に、「コロイド分散体」と呼ばれる。このコロイド分散体を得るために、これらの脂質を、典型的には、このペプチドと混合する。適宜、これらの脂質及びペプチドは、有機溶媒系と合わせる前に、緩衝水性媒質中で混合される。
【0060】
ある好適具体例において、肺表面活性ペプチド、リン脂質及び遊離の脂肪酸又は脂肪アルコール例えばDPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン)及びPOPG(パルミトイル−オレイルホスファチジルグリセロール)及びパルミチン酸(PA)の混合物を、有機溶媒系と合わせて実質的に均質な液体混合物を形成する。個々の成分は、この混合物中で、任意の濃度で存在しうる。この分散体中のリン脂質の全濃度は、例えば、1ml当たり約1〜80mg以上のリン脂質含有量に及びうる。適当な緩衝剤には、トリスアセテート、トリスヒドロクロリド、ナトリウムホスフェート、カリウムホスフェートなどが含まれるが、これらに限られない。これらの緩衝剤は、典型的には、市販品として入手可能である。
【0061】
本発明の方法における使用に特に好適なコロイド分散体には、生理的に許容しうる水性緩衝液中のDPPC、POPG、PA及びKL4(約7.5:2.5:1.35:0.267の重量比)の分散体が含まれる。
【0062】
本発明の典型的な方法は、肺表面活性組成物及び一種以上の脂質を有機溶媒系と合わせるステップを含む。この有機溶媒系は、一種類の有機溶媒を含む。この有機溶媒系は、肺表面活性ペプチド及び脂質を可溶化させて実質的に均質な液体混合物を形成するのに十分な量の有機溶媒を含む。ある典型的な具体例において、有機溶媒は、有機溶媒系の約20〜100体積%である。幾つかの他の具体例において、有機溶媒は、有機溶媒系の約20〜70体積%である。幾つかの他の具体例においては、この有機溶媒は、有機溶媒系の約40〜60体積%である。ある好適な具体例において、この有機溶媒は、有機溶媒系の約40、50、60又は70体積%である。典型的具体例において、この有機溶媒系は、水性媒質例えば水を更に含む。この有機溶媒系が2種以上の成分を含む場合には、それは、一般に、エマルジョン又は混和性溶液の形態である。「エマルジョン」が意味するものは、両相が液体であって典型的には互いに不混和性であるコロイドである。「混和性溶液」は、混合することのできる2つの液体を意味する。ある具体例において、この有機溶媒系は、更に、追加の賦形剤を含み、それには、様々な糖類例えばデキストロース、フルクトース、ラクトース、マルトース、マンニトール、スクロース、ソルビトール、トレハロースなど、界面活性剤例えばポリソルベート80、ポリソルベート20、ソルビタントリオレエート、チロキサポールなど、ポリマー例えばPEG、デキストランなど、塩例えばNaCl、CaCl2など、アルコール例えばセチルアルコールなど、及び緩衝剤が含まれるが、これらに限られない。ある好適具体例において、有機溶媒系は、実質的に塩を含まない。ある好適具体例においては、この有機溶媒系は、実質的に、NaClを含まない。
【0063】
ある具体例において、この有機溶媒系は、系のすべての成分を合わせることによって調製することができる。例えば、有機溶媒が室温の有機溶媒及び水性媒質からなる、ある具体例において、その水性媒質と有機溶媒を合わせて有機溶媒系を作成することができる。好ましくは、この有機溶媒系は、エマルジョン又は混和性溶液である。
【0064】
選択した有機溶媒は、好ましくは、殺菌濾過及び凍結乾燥に適合性である。この発明で用いた溶媒は、好ましくは、凍結乾燥コンデンサーで集めることができるように、望ましい凍結及び分圧測定値を有する。ある典型的具体例において、選択した溶媒は、約−60〜40℃の凍結温度を有する。好ましくは、この発明の溶媒は、低級オキシ炭化水素、低級炭化水素、低級ハロオキシ炭化水素、低級スルホキシ炭化水素、低級環式炭化水素及びこれらの組合せよりなる群から選択される。
【0065】
この発明で用いるのに適した溶媒には、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、シクロヘキサン、クロロブタノール、ジメチルスルホキシド、t−ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、酢酸、ペンタノール(1−ペンタノール)、n−ブタノール、n−プロパノール、メチルアセテート、ジメチルカーボネート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、四塩化炭素、ヘキサフルオロアセトン、クロロブタノール、ジメチルスルホン、シクロヘキサン、及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限られない。好ましい溶媒には、低級アルカノール例えばt−ブタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが含まれる。
【0066】
この発明の特に好適な溶媒は、t−ブタノールである。t−ブタノールは、様々な用途に利用される、広く用いられている溶媒である。それは、しばしば、リポソーム及び他のコロイド分散体の製造において代替溶媒として用いられてきたものであり、凍結乾燥法で用いるのに向いた物理化学的特性を示す。t−ブタノールは、23〜26℃の融点と83℃の沸点を有する。従って、幾つかの面において、それは、水と類似の特性を有し、揮発性であるので、典型的凍結乾燥中に容易に除去される。
【0067】
ある具体例においては、この有機溶媒及び肺表面活性ペプチド及び一種以上の脂質を含むコロイド分散体を、室温で合わせてから、ボルテックスミキサーにより混合して、実質的に均質な液体混合物を形成する。典型的には、この混合は、約1〜5分間を要する。適宜、これは、その後、超音波処理、静的ミキサー、ブレードミキサー、ホモジェナイザーなどを用いることができる。この有機溶媒とコロイド分散体を混合して実質的に均質な液体混合物を形成する別の方法を、本発明において利用することができる。
【0068】
本発明のある典型的具体例において、肺表面活性ペプチド、リン脂質及び遊離脂肪酸又は脂肪アルコールの相対的量は、肺表面活性ペプチド約1重量部;肺表面活性ペプチドの重量部に対して約20〜150重量部のリン脂質;肺表面活性ペプチドの重量部に対して約0〜25重量部の遊離脂肪酸又は脂肪アルコールである。ある具体例において、有機溶媒系の相対的量は、肺表面活性ペプチドの重量部に対して少なくとも約500重量部である。ある具体例において、この有機溶媒系は、肺表面活性ペプチドの重量部に対して約500〜50,000重量部で存在する。ある典型的具体例において、肺表面活性ペプチド、リン脂質、及び遊離脂肪酸又は脂肪アルコールの相対的量は、肺表面活性ペプチド例えばKL4約1重量部;DPPC約20〜100重量部;POPG約0〜50重量部;及びパルミチン酸約0〜25重量部である。
2.濾過
【0069】
本発明のある具体例においては、肺表面活性ペプチド、一種以上の脂質、及び有機溶媒系を合わせて液体混合物を形成した後で、この混合物を殺菌する。幾つかの具体例においては、この実質的に均質な液体混合物を、凍結乾燥前にフィルター殺菌する。このステップは、液体混合物中の任意の夾雑物を除いて比較的無菌の混合物を与えるために行われる。「殺菌された」又は「比較的無菌の」が意味するのは、生成物の完全性及び/又は一様性を危機にさらさないような少ない量で、任意の夾雑物が存在するということである。
【0070】
凍結乾燥前のこの随意のフィルター殺菌のステップは、無菌処理に含まれるステップを減じるということが企図され、それは、現在、現行の商業的製造方法によって求められている。更に、このステップは、高価な薄膜蒸発器の必要性をも排除するということが企図される。
【0071】
適当なフィルターには、有機溶媒に適合性の無菌フィルターが含まれる。熟練した実務家は、用いる特定のフィルターが本発明にとって臨界的ではないということを理解するであろう。適当なフィルターには、例えば、セルロースフィルターが含まれる。特に好適なフィルターは、アルコール及び関連有機又は有機水性媒質に適合性であるので、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)から作られたものである。他の好適なフィルターは、ポリ(エーテル-スルホン)から構成される。有機水性混合物に適合性の他のフィルターには、ポリビニリデンフルオリド、ポリプロピレン及びナイロンが含まれるが、これらに限られない。
【0072】
ある典型的具体例において、フィルターの多孔度は、約0.2〜0.45ミクロンとなろう。このフィルターのサイズは、そのフィルターを通過しうる液体混合物の体積を決定する。
【0073】
濾過後に、これらの組成物を、適当な凍結乾燥バイアル中に置くことができる。これらのバイアルは、再構成後に単一投与量配合物であってよい。
【0074】
これらのバイアルは、一般に、無菌的であり、満杯容積がバイアル当たり約5〜75mlである約5〜100ミリリットルのバイアルであってよい。
【0075】
本発明のある具体例においては、この肺表面活性ペプチド組成物は、最後に、例えば凍結乾燥後に殺菌される。ある具体例においては、最後の殺菌は、オートクレーブ、ガンマー線照射、又はe−ビーム殺菌によるものである。
3.凍結乾燥
【0076】
本発明の典型的方法は、肺表面活性混合物を凍結乾燥するステップを含む。凍結乾燥は、殺菌の前又は後に生じうる。
【0077】
凍結乾燥は、しばしば「フリーズドライ」と呼ばれる工程の技術名である。この工程において、水性混合物又は懸濁液は、固体に凍結され、次いで、それは、一般に、かなりの時間にわたって真空にさらされる。この真空は、水分子の「昇華」を引き起こし、即ち、水は、液体状態を通らずに気体となって固体が残る。
【0078】
好適具体例において、凍結乾燥工程中に、有機溶媒系例えば水と低級アルカノールは、昇華によって相当除去される。好適具体例においては、凍結乾燥後に、5%未満の、好ましくは3%未満の、一層好ましくは2%未満の、尚一層好ましくは1%未満の又は0.1%未満の残留溶媒が残る。
【0079】
本発明においては、任意の凍結乾燥法を用いることができる。凍結乾燥法は、当分野において公知であり、従って、ここでは詳細には述べない。
【0080】
典型的な凍結乾燥法は、次のステップを含む:(1)試料を凍結乾燥チャンバー中に置き、棚温度を、凡そ大気圧で、約−40〜−20℃に下げ;(2)棚温度を、試料温度が−40〜約−20℃に達するまでその温度範囲に維持し;(3)その後、圧力を約50〜600mトルまで下げて且つ棚温度を、約−20〜20℃まで上げて、有機溶媒系の昇華が実質的に完了するまで維持し;そして(4)試料を約−20〜20℃にし、その時点でバイアルを無菌的に密閉する。
【0081】
この凍結乾燥ステップは、肺表面活性ペプチド組成物例えばKL4肺表面活性ペプチド組成物を生成し、それは、室温で長期間にわたって貯蔵することができる。残留水及び潜在的な残留有機溶媒が、貯蔵性に対する悪影響を最少にするようにデザインされた量で存在するということは注目される。例えば、ある好適具体例において、乾燥させた肺表面活性ペプチド組成物の最終的な水分含量は、約5重量%未満、好ましくは2.5重量%未満、一層好ましくは約3重量%未満であり、最も好ましくは約1.5重量%未満である。
【0082】
この凍結乾燥した肺表面活性ペプチド組成物は、乾燥組成物となる。ある具体例において、この凍結乾燥した肺表面活性ペプチド組成物は、ケーキ形態又は易流動性粉末の形態である。好適具体例において、この凍結乾燥した肺表面活性ペプチド組成物は、ケーキ形態である。
4.再構成
【0083】
ある典型的具体例において、凍結乾燥した肺表面活性組成物は、一度十分量の製薬上許容しうる分散剤と接触されれば、容易に再構成される。例えば、ある具体例において、凍結乾燥した肺表面活性組成物は、例えば約1〜10分間にわたって、分散剤と混合されて、液体の肺表面活性組成物を与える。この分散剤は、好ましくは、無菌水である。この液体の肺表面活性組成物は、更に、等張塩溶液又は他の賦形剤によって希釈して、投与前に、所望の濃度を生成することができる。
【0084】
本発明の典型的具体例において、生成された液体の肺表面活性組成物は、所望の特性例えば望ましい粘度及び表面張力特性を示す。
【0085】
肺表面活性組成物は、理想的には、それらが容易に流れ又は肺の表面を横切って拡散することができるような低い表面張力値を有する。
【0086】
用語「表面張力」は、表面/空気界面にあるものの表面の下の分子により発揮される引力を指し、これは、気体の低い分子濃度と比べて高い分子濃度の液体から生じる。低い値の表面張力を有する液体例えば非極性液体は、水より一層容易に流れる。典型的には、表面張力の値は、ニュートン/メートル又はダイン/センチメートルで表される。
【0087】
「動的表面張力」は、ここで言及する場合、表面/空気界面及び表面/表面界面に対する動的表面張力である。動的表面張力を測定するための多くの代替方法、例えば、拘束泡表面張力測定又は脈動泡表面張力測定がある。動的表面張力を測定する一つの好適な方法は、以下に与える脈動泡表面張力測定である。
【0088】
一つの典型的具体例において、肺表面活性組成物の動的表面張力は、パルセーティングバブルサーファクトメーター(PBS、Electronetics Corp, フロリダ、Seminole)を用いて、3〜10mg総リン脂質含量(TPL)/mlで測定される。その試料は、130mM NaClを含む20mM トリス−Ac緩衝液(pH7.6)中で希釈される。希釈に際して、この試料を、10秒間ボルテックスミキサーにかけ、37℃水浴にて10分間加熱する。水浴から取り出した後、その試料を10秒間同ミキサーにかける。約50μLの試料を37℃で、PBSにて分析する。泡は、ユーザーが形成して、1分間平衡化される。この泡を、次いで、20サイクル/分の振動数で6分間脈動させ、その間、泡は、0.4mmの最小半径から0.55mmの最大半径に循環する。PBS機器中の圧力変換器は、圧力を測定し、これは、ラプラス方程式を用いて表面張力を計算するのに用いられる。100サイクル後の表面張力を測定して、試料の最小動的表面張力として報告する。
【0089】
本発明の好適な肺表面活性組成物は、低い表面張力を示す。ある具体例において、本発明は、130mM NaClを含むトリス−Ac緩衝液(pH7.6)中の10mg−TPL/mlの濃度で、37℃で20サイクル/分振動数において、約10mN/m未満の低い動的表面張力を示す(泡半径は、Electronetics Corporationのパルセーティングバブルサーファクトメーター(PBS)を用いて、5分間のサイクリングの後に測定して0.4〜0.55mmで変化する)肺表面活性組成物を提供する。ある具体例において、これらの肺表面活性組成物は、10mg−TPL/mlの濃度で約5mN/m未満の又は、3mg−TPL/mlの濃度で約5mN/m未満の動的表面張力を示す。
【0090】
加えて、肺表面活性物質は又、肺中に効果的に分布する組成物を与えるような低い粘度をも有する。加えて、一層低い粘度は、取扱い及び投与が一層容易である。
【0091】
用語「粘度」は、特定の温度において流体により示される流れに対する内部抵抗;剪断応力の剪断速度に対する比を指す。液体は、1ダイン/平方センチメートルの力が、1平方センチメートル離れた面積1平方センチメートルの2つの平行な液体表面に、相互に1cm/秒の速度で去るように動きを引き起こすならば、1ポアズの粘度を有する。
【0092】
見かけ粘度に言及する場合には、粘度の値が測定を行なう条件例えば採用した温度、剪断速度及び剪断応力に依存するものと理解される。見かけ粘度は、剪断応力の適用した剪断速度に対する比として定義される。見かけ粘度を測定するための多くの代替方法がある。例えば、粘度は、適当な錐体とプレート、平行なプレート又は他の種類の粘度計又はレオメーターによって試験することができる。見かけ粘度を測定する一つの好適な方法は、以下に与えるように、レオメーターを用いることである。
【0093】
一つの典型的具体例において、表面活性配合物の見かけ粘度は、25℃の温度で、レオメーター(例えば、40mm/1°アクリル錐体を取り付けたTA AR1000レオメーター、TA Instruments, デラウェア、New Castle)を用いて測定される。約350μLの未希釈の表面活性物質をレオメーター中に置き、25℃で熱平衡化させる。ステップフロー手順を利用して、試料を、時間と共に剪断速度を直線的に増大させ(0〜200秒-1)、その後剪断速度を直線的に減少させる(200〜0秒-1)ことにより分析する。各上り及び下り勾配中に、15ポイントを集める(約6分の全ラン時間を生じる)。上り及び下り勾配中に、157秒-1の剪断速度で測定された粘度を平均して、各試料の見かけ粘度として報告する。
【0094】
ここに記載した方法により製造された典型的な液体肺表面活性組成物は、40mm/1°アクリル錐体を取り付けたレオメーター及び、経時的な剪断速度の0〜200秒-1に至る約3分間の直線的な増大とその後の経時的な剪断速度の200〜0秒-1に至る約3分間の直線的な減少を用いるステップフロー手順を用いて、温度25℃で剪断速度157秒-1で測定した場合に、30mg−TPL/mlの濃度で約50cP未満の見かけ粘度を示す。ある具体例においては、ここに記載した方法により製造した典型的な液体の肺表面活性組成物は、30mg−TPL/mlの濃度で約30cP未満の見かけ粘度を示し又は30mg−TPL/mlの濃度で約15cP未満の見かけ粘度さえ示す。
5.投与
【0095】
ここに記載した肺表面活性組成物は、様々な呼吸障害の治療又は置換療法において用いることができ、RDS(呼吸障害症候群)の幼児及びARDS(成人型呼吸窮迫症候群)の成人の救済及び予防処置において特に有用である。この発明の方法により製造した乾燥及び液体表面活性物質の両方は、呼吸治療の必要な患者に投与することができる。特に、乾燥肺表面活性組成物は、更に処理して、例えば、エアゾルの乾燥粉末として投与することができ、液体肺表面活性物質は、例えば、液体ボーラス又は湿潤エアゾルとして投与することができる。
【0096】
エアゾル製剤として用いる場合には、この表面活性組成物は、微粉末形態で、適宜適当な噴射剤と組み合わせて供給することができる。有用な噴射剤は、典型的には、周囲条件で気体であり、圧力下で濃縮され、例えば、低級アルカン及びフッ素化アルカン例えばフレオンが含まれる。この表面活性組成物がエアゾルとして送達されるある具体例において、そのエアゾルは、圧力下で適当な容器にパッケージ化することができる。ある別の具体例においては、これらの凍結乾燥された粉末を、乾燥粉末吸入システム内でのユニット又は多投与パケットとしての取込みのために、微粉砕又は他の手段によって更に処理することができる。この表面活性物質の適当な投薬量は、エアゾル化しても液体ボーラスとして送達しても、患者の年齢及び障害の重さに依存し、所属臨床医によって容易に確認することができる。肺表面活性物質の実際の投薬量は、当然、曝露の程度及び患者の特定の状態(例えば、患者の年齢、大きさ、適合性、症状の程度、感受性因子など)などの因子によって変化する。「有効な投与量」とは、ここでは、投与により効果を生じる投与量を意味する。
【0097】
肺表面活性物質は、臨床状況において、特に、肺表面活性物質の未熟児への供給だけでなく、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、胎便吸引症候群などの患者にも特別の用途を見出す。
【0098】
この表面活性物質を未熟児に与えた場合には、その表面活性組成物のアリコートを、好ましくは気管内点滴注入法によって、送達して、治療された患者の肺における表面活性物質の効果的な投与量を与える。好ましくは、単一の表面活性物質投与量は、例えば、約20〜300mg−TPL/kg、一層好ましくは、約60〜175mg−TPL/kgに及ぶ。表面活性物質の正確な投与量は、患者の年齢及び病状、治療する病気の重さ、及び所属臨床医に周知の他の因子などの因子に依存するということは、当然、理解される。この表面活性組成物がエアゾルとして送達される同時係属中の米国出願第11/130,783号(2005年5月17日出願)(参考としてそっくりそのまま本明細書中に援用する)に開示されたようなある具体例において、肺表面活性物質の有効な投与量は、例えば、約2〜175mg−TPL/kgの表面活性物質である。他の送達方法には、洗浄、肺洗浄などが含まれる。そうならば、用いられる投与量範囲は、当業者の技量内にある。
【0099】
加えて、これらの方法及びシステムは又、幼児及び他の小児科の患者集団に見られる他の臨床的障害例えば嚢胞性繊維症、感染過程への介入、細気管支炎などの治療にも有用である。
【0100】
ここに記載の肺表面活性組成物からの恩恵を受けることのできる患者は、妊娠期間が24週ほどの未熟な新生児から成人にまで及ぶというこが企図される。
【0101】
他の呼吸障害に悩まされている患者は、この発明の方法及びシステムによって恩恵を受けることができる。これらの呼吸障害には、新生児肺高血圧症、新生児気管支肺形成異常、慢性閉塞性肺疾患、急性及び慢性気管支炎、肺気腫、細気管支炎、気管支拡張症、放射線肺炎、過敏性肺炎、急性炎症性喘息、急性煙吸入、熱性肺傷害、喘息例えばアレルギー喘息及び医原性喘息、珪肺症、気道閉塞、嚢胞性繊維症、肺胞タンパク症、アルファ−1−プロテアーゼ欠乏症、肺炎症性疾患、肺炎、急性呼吸窮迫症候群、急性肺傷害、特発性呼吸窮迫症候群、特発性肺繊維症、副鼻腔炎、鼻炎、気管炎、耳炎などが含まれるが、これらに限られない。従って、本発明は、患者におけるこれらの疾患を治療するための方法、システム及び装置を提供する。
【0102】
ある具体例において、本発明の肺表面活性組成物を製造する方法は、表面活性物質生産規模変更可能性、均質な製品の再生産性及び現行の商業的製品を超える製造容易さへの改良である。
【0103】
下記の実施例は、請求項記載の発明を説明するために与えるものであり、それらの制限と解釈すべきではない。
【実施例】
【0104】
別途示さないかぎり、すべての温度は、摂氏温度である。これらの実施例及び他所においても、下記の略号は、下記の意味を有する:
ml = ミリリットル
v/v = 体積/体積
mg = ミリグラム
HPLC= 高性能液体クロマトグラフィー
TPL = 総リン脂質
μl又はum=マイクロリットル
mN/m= ミリニュートン/メートル
m = メートル
cP = センチポアズ
PSA = 粒径分析
PBS = 脈動泡表面張力測定
μm又はum=マイクロメートル又はミクロン
RT =室温
min =分
TBA =t−ブタノール
実施例1
有機溶媒系及び融点
【0105】
溶媒混合物が液体でいるための温度範囲を決定するために、100、95、90、80及び50%v/v(体積/体積)のt−ブタノールの水性緩衝液中の溶液を調製して、室温(例えば、25℃)、2〜8℃及び−20℃で平衡化させた。これらの溶液が固体か液体かに関して観察を行なった。生のt−ブタノールは、典型的には、25.4℃で凍結する。t−ブタノールへの水の添加は、表1に示したように融点を下げた。即ち、95、90、80及び50%v/vのt−ブタノール溶液は、すべて、室温並びに2〜8℃で貯蔵した場合の両方において液体のままであった。これらのデータは、t−ブタノール/水混合物の冷却又は加温環境中での貯蔵及び/又は利用は、相変化(即ち、凍結)により阻害されないことを示している。
【表3】

実施例2
溶解度測定
i.個々の成分の溶解度
【0106】
各脂質及びペプチドのアリコートを、正確に重量測定して、1.5mlエッペンドルフチューブに入れる。標的の重量は、DPPC、POPG及びパルミチン酸(PA)については約25mg、セチルアルコール(CA)については50mg、KL4については10mgであった。各チューブに0.2mlの溶媒を加えた。各チューブをボルテックスミキサーにかけてから数分間超音波処理して溶解を促進した。次いで、試料を37℃の浴中に約30分間置き、その後、取り出してカウンター上に30分間置いた。それ故、サンプリング時の温度は、25〜37℃であった。3つの独立のエッペンドルフチューブを用意して各溶質−溶媒の組合わせについて試験した。各チューブの視覚的観察を、a)透明(即ち、見かけ上、完全に溶解している)か、b)溶解しない物質を含むか、又はc)不確定に見えるかについて行なった。次いで、各チューブの少量のアリコートを採って、HPLCランニング緩衝液中に希釈して、HPLCにより分析した。HPLCを、CISカラムを用いて、確立された方法により行なった。
【0107】
個々の脂質及びKL4の、t−ブタノール/水溶液中への、37℃での溶解度測定の結果を、表2に示す。これらの試験条件の多くは、脂質及び/又はペプチドの37℃での完全な溶解を生じた。これは、各試料/チューブの視覚的観察、並びにHPLCで測定された濃度と溶媒容積で除した試料重量との比較(データは示してない)の両方によって証明された。この溶媒溶解度の最小値を、表2に見出すことができる。POPGは、100%及び99%t−ブタノールに多いに不溶性で、このアッセイの検出限界より低濃度(約5mg/ml)であった。こうして、溶解度の上限を表2に見出すことができる。
【表4】

【0108】
表2は、脂質及びKL4が一般に、標的濃度と比較してt−ブタノール−水溶液に非常に溶解性であることを示しており、これは、製造方法につき実行可能である(標的濃度は、充填/凍結乾燥につき30mg/mlのTPLが想定されている)。標的が適さない唯一の状況は、100%及び99%のt−ブタノールのPOPGについてであった。
ii.脂質/KL4を合せた溶解度
【0109】
個々の成分についての溶解度の測定に加えて、脂質とKL4を合わせて、t−ブタノール−水溶液中での溶解についても、30mg/mlの総リン脂質含量(TPL)及び僅かなKL4表面活性組成物で試験した。
【0110】
即ち、DPPC、POPG、PA及びKL4の重量を測定して20mlのシンチレーションバイアルに、重量比3:1:0.54:0.107で合わせて入れた。適当な容量の溶媒(即ち、12mlが30mg/mlのTPLを達成した)を加えて、95、90、80、70、60、50、40及び30%v/v t−ブタノールを得た。バイアルを、浴中で約50℃で超音波処理して、溶液が透明になるまで1〜3分間穏やかに攪拌した。最終的溶液において溶解度につき視覚的観察(すべて完全に透明であった)並びにHPLC測定を行なった。
【0111】
すべての溶液は、50℃での1〜3分間の浴中超音波処理後に、脂質とKL4を、30mg/mlで完全に溶解した(視覚的観察)。これらの溶液における脂質及びKL4含量についてのHPLC分析は、完全に溶解した視覚的観察を確認した。
実施例3
濾過回収率
【0112】
ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)は、一般にアルコールと適合性であり、特にt−ブタノールと適合性の物質である。その上、Sartoriusは、無菌的製造方法のための殺菌フィルターのラインを、PTFESartofluor(登録商標)を利用して製造する。Sartofluor(登録商標)注射器は、フィルターシステム上の脂質及びペプチド保持のレベルを同定するために得られた。ポリ(エチレン−スルホン)(PES)よりなる注射器フィルターも又、評価された。
i.90%v/v t−ブタノール溶液の濾過
【0113】
脂質及びペプチドの重量を測定して、乾燥した20mlシンチレーションバイアル中にて合わせた(450mg DPPC、150mg POPG、81mg PA及び15.9mg KL4(純度調節))。このバイアルに10mlの90%v/vのt−ブタノールを加えた。90%v/vのt−ブタノール溶媒組成物は、溶解度に基づいて選択されたということに留意されたい。この溶液を37℃に加温して、数分間浴中超音波処理してこれらの成分を溶解させた。これらの90%v/vのt−ブタノール脂質溶液を、同PTFE及びPESフィルターを順次的に10回続けて通過させた(フィルター当たり約5ml)。アリコート(200ul)を、0、1、5、7及び10回フィルターを通過させた後に、HPLC試験のために採った。溶媒のみの対照用群を、このフィルターを通過させて、HPLCにて試験して、浸出がないことを確実にした。
【0114】
溶媒単独又は溶媒プラス脂質/KL4の、PTFE又はPESフィルター通過の際に、有意の圧力差は認められなかった。即ち、すべての溶液は、PTFE及びPESフィルターを容易に通過するようであった。
【0115】
90%v/vのt−ブタノールを用いた殺菌濾過研究からのHPLCの結果は図1及び2に示してある。脂質又はKL4の濃度の有意の変化は、0〜10回のPTFE及びPESフィルター通過について認められなかった。
ii.40〜70%v/vのt−ブタノール溶液の濾過
【0116】
濾過研究を、70、60、50及び40%v/vのt−ブタノールの30mg/ml TPL溶液を、上記のSartoriusPTFE注射器フィルターを通過させることにより行なった。これらのTPL溶液は、270mg DPPC、90mg POPG、48.6mg PA、及び9.5mg KL4(純度調節)を、12mlの溶媒に溶解して含んだ。各脂質/KL4溶液の試料を採って、一回のフィルター通過の前後に、HPLCにより分析した。
【0117】
脂質及びKL4を30mg/mlTPLで含む70、60、50及び40%v/vのt−ブタノールの濾過研究からの結果を、表3に示す。即ち、各成分の、濾過後に測定された濃度は、濾過前に測定された濃度と比較して、回収率として記録され言及される。表3は、70、60、50及び40%のt−ブタノールを用いた濾過中に脂質の有意の損失がないことを示しており、これは上記の90%v/vのt−ブタノールについての観察と一致する。回収率は、出発濃度の95〜102%であり、平均で、PA、DPPC及びPOPGについて、それぞれ、99、99、及び98%であった。
【表5】

実施例4
凍結乾燥
下記よりなる、利用した最初の凍結乾燥サイクル:
1.大気圧で−30℃に下げた棚温度。
2.試料温度が−30℃に達するまで−30℃に維持した棚温度。
3.500mトルに減じた圧力及び0℃まで高めた棚温度。
4.サイクルは、一度試料が0℃に達したならば完了する。
A部
【0118】
凍結乾燥用バイアル(20ml)に、2mlの30mg/mlのKL4肺表面活性物質(DPPC(45mg)、POPG(15mg)、PA(8.1mg)及びKL4(1.6mg)を、95、90、80及び50%v/vのt−ブタノールに溶解して含む)を充填した(条件当たり3つのバイアル)。試料を、上記のサイクルにより凍結乾燥した。凍結乾燥されたケーキを、室温でのトリス−NaClによる水和時間、脈動泡表面張力測定(PBS)、粘度、及び粒径分析(PSA)により分析した。
【0119】
これらの脂質−KL4固体は、すべて、選択した溶媒に、30mg/mlTPLで溶解した。すべての溶媒組成物は、軽い衝撃(即ち、通常の取扱い)に対して安定な円筒状の白色ケーキを生成した。
【0120】
手の動きによるシェーカーを用いた水和時間は、最初の溶媒の組成によって変化した。50%v/vのt−ブタノールから形成されたケーキは、手動作のタイマーを使用して最短の5分未満で水和したが、95%v/vのt−ブタノールから形成されたケーキは、35分以内にこれらの脂質を完全には水和しなかった。すべての再構成された配合物は、3mg/mlTPLで測定して約0mN/mの良好な表面活性の読みを示した。これらの水和した配合物の粘度は、かなり変化した。最低粘度は、「50%t−ブタノール」配合物から測定された17cPであったが、「95%t−ブタノール」配合物からの最高粘度の読みは、ほぼ1log大きい165cPであった。
B部
【0121】
各20mlの凍結乾燥バイアルに、2mlの、30mg/mlの肺表面活性物質(95、90、80、70、60、50、40及び30%v/vのt−ブタノールに溶解させたDPPC、POPG、PA及びKL4よりなる)を充填した。各成分の量は、A部と同じであった。5つのバイアルを、各条件につき用意した。
【0122】
すべての溶媒組成物は、これらの脂質/KL4を完全に溶解した。すべての溶媒からの凍結乾燥後のケーキは、円筒状の、白い、通常の取扱いに対して安定なものであった。これらのケーキの水分含量は、すべてまったく低く、カールフィッシャー滴定により測定して1.0〜2.3%であり、明確な傾向を示さなかった。見かけ粘度は、t−ブタノール含量が減少するにつれて減少したが、表面活性は、試験したすべての組成物について、PBSにより測定して優秀であった。
実施例5
i.溶媒の調製
【0123】
溶媒混合物(40,50,60,70及び80% TBA)の各々をDI水中で重量測定することにより調製した。
ii.合わせた固体液体成分調製物
【0124】
製剤の場合につき及び溶媒混合物中のすべての4種類の成分の溶解度の測定に必要とされる重量測定する量を減じるために、乾燥脂質組成物を、ポストTFE法により調製した脂質の30mg/ml水溶液を凍結乾燥することにより調製した。2つのかかる配合物を調製した。これらの配合物の一つをDI水により水和して、第二の配合部をトリス−A(pH7.6)緩衝液で水和した。水和を、低粘度を確実にし、それ故に取り扱いを容易にするために、バイアルの充填の日と同じ日に行なった。次いで、10mLのバイアルに、標的配合物を充填して、30、45,60,90及び120mg/mlの濃度を、NaClを伴う及び伴わない両配合物につき達成した。すべてのバイアルは、半栓をして熱電対を各濃度につき一つの代表するバイアルに付けた。
【0125】
試料バイアルを凍結乾燥して、一次乾燥を最大4000分まで延長して、それらの試料の完全な乾燥を確実にした(熱電対とTCVG読みの両方で表示)。これらの乾燥したケーキの視覚的観察に加えて、凍結乾燥後残留水分を、熱電対バイアルの各々につきカールフィッシャー法により測定して、低い水分が達成されたことを確認した。
【0126】
補助溶媒混合物を実験室で室温に熱平衡化させた後に、規定の量を重量測定することにより各倍あるに正確に添加した。溶媒添加後に、倍あるの内容物を穏やかに混合した。初めに、溶解度を、視覚的観察により記録した(即ち、次を表示する:透明な溶液、濁った、相分離した、大きい凝集物、小さい凝集物、ゲル)。穏やかな混合によっては完全に溶解しなかった試料を30℃で、透明になるまで又は5分間の最大持続時間にわたって浴中超音波処理した。30℃で超音波処理にかけた試料を、2時間の最少時間にわたって室温に再平衡化させた。成分の溶解度(DPPC、POPG,PA及びKL4の定量)を、各バイアルからの1mlの試料の22℃での遠心分離により得られた透明な上清のHPLCによって測定した。
【0127】
配合物を、NaClを伴って及び伴わずに、試験すべき各溶媒組成物にて調製した。この研究のために、9.1ml充填についての標的重量を測定して、各配合物の組成物を重量測定して20mlバイアルに入れた。すべてのバイアルにセミストッパーを付けて、凍結乾燥棚に配列した。
【0128】
試料バイアルを、単一のリオサイクルを用いて、一層詳細には、−40℃に凍結し、チャンバー内を真空吸引して200mTにし、棚温度を5℃にすることにより凍結乾燥した。一次乾燥を、最大4000分まで延長して、試料の完全な乾燥を、製品熱電対(これらは、図2に示したように、中央及び2つの極めて端のバイアルに置かれた)及びTCVG読みの両方により示されるように、確実にした。
iii.生成物の特性
A.ケーキの外観及び再構成時間
【0129】
円筒状の特性を示し、崩壊又は溶融の証拠を示さない、一様なケーキが、すべての配合物について認められた。ケーキは、色においてオフホワイトであり、丈夫でもあって、ゆるい粉末に崩壊する傾向を有しなかった。すべてのケーキについての再構成時間を表4にまとめてある。ここで、特に注意すべきは、この研究の観察は、各事例において一つのバイアルの再構成に基くものであったということである。
【表6】

表4.凍結乾燥したTBA補助溶媒配合物の範囲についての、塩を伴う場合と伴わない場合の再構成時間のまとめ
【0130】
表4の結果から、再構成時間は、塩の存在下で僅かに減少するようであるが、多少、補助溶媒の組成に依存することが見出された。
B.見かけ粘度
【0131】
各試料について25℃で行なった見かけ粘度の測定は、7〜15cPの範囲内の値を生成し、表5にまとめたように、粘度は、NaClを含む配合物について全体的に一層高かった。その上、NaClを含む配合物の粘度測定は、補助溶媒組成物によって影響されなかったが、塩を含まない配合物は、補助溶媒組成物の関数であることが見出され、補助溶媒組成物の減少と共に粘度の減少を示した。
【表7】

表5.NaClを含む又は含まない再構成TBA配合物の見かけ粘度の測定。
C.表面活性
【0132】
すべての再構成された配合物のイン・ビトロ表面活性(3mg−TPL/mlでPBSにより測定)を図3に示した。最小表面張力の生成放出基準は、10mN/m以下であり、まとめた結果は、すべての塩を含まない配合物が、低い表面活性を示したことを示していて、種々の補助溶媒組成物にて測定された値が区別しえず、即ち、表面活性は、補助溶媒組成の関数であることが見出されなかった。塩を含む配合物について測定された値は、僅かに高かったし又、溶媒組成は、測定に悪影響を与えるようには見えなかった。
【0133】
塩を含む場合と含まない場合の代表的バイアルについての測定された残留水分含量(3つの測定値の平均)を図4にグラフにより与えた。試験したすべての試料について、残留水分は低く、平均水分含量は、0.2%であり、配合物中の塩含有量又はTBA%に依存することは見出されなかった。
【0134】
表6は、塩のある場合とない場合の、変化する組成のTBA補助溶媒(50、60及び70%を試験)を含む予備凍結乾燥した配合物についてのイン・ビボ活性の結果をまとめてある。すべての試料は、イン・ビボアッセイを容易に通過することが見出され、対照群に対して150%を超えてp<0.05の、コンプライアンスの平均増加として規定された。コンプライアンスの増加がこれらの実験を行なうUCSDグループにより認められた最強のものの幾つかであると報告されても、このアッセイが配合物を互いに比較するためにデザインされている/されたということに注意しなければならない。
【表8】

表6.変化する組成のTBA補助溶媒を含む予備凍結乾燥した配合物のイン・ビボ活性の結果のまとめ。
【0135】
上記の発見は、NaClを含まない60%TBAが最適補助溶媒であることを示している。それ故、追跡の溶解度研究を行なって、この溶解度データが個々の成分並びに混合した系の両方について丈夫であることを確認した。表7は、この溶解度研究の結果をまとめてある。
【表9】

表7.NaClを含まない60%TBA補助溶媒における個々の成分についての達成しうる溶解濃度のまとめ。
【0136】
60%TBAにおける個々の成分の溶解度(表7)の、混合した成分系における同成分との比較において、PAの溶解度は、他の成分により有意に影響を受けてそれらの存在下で増大していることがわかる。即ち、PA単独では、室温で60%TBA中で42.5mg/mlの溶解度を有するが、混合成分溶液では、10mg/mlでPAは、完全には溶解しないようである。
【0137】
前述の記載から、組成物及び方法における様々な改変及び変更が当業者には想起するであろう。添付の請求の範囲に入るかかる改変はすべて、その中に含まれるものである。列記した各々の範囲は、範囲のすべてのコンビネーション及びサブコンビネーション並びにそれらに含まれる特定の数字を含む。
【0138】
上で引用したすべての刊行物及び特許文献は、すべての目的のために、個別に示したのと同程度に、参考としてそっくりそのまま、本明細書中に援用する。
【0139】
前述の発明が、明快な理解のために実施例によって詳述されていても、ある種の変更及び改変が、この開示により理解され、過度の実験なしで、添付の請求の範囲内で実施しうるということは明らかであり、それらは、説明のために与えたものであり、制限ではない。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】この発明の典型的組成物中に存在する脂質の測定された濃度を、無菌濾過のフィルター通過数と比較して示している図である。
【図2】この発明の典型的組成物中に存在するKL4ポリペプチドの測定された濃度を、無菌濾過のフィルター通過数と比較して示している図である。
【図3】典型的な再構成された凍結乾燥KL4配合物の、塩を伴うか又は伴わない表面活性データを示している図である。
【図4】塩を伴うか又は伴わない、典型的な凍結乾燥KL4配合物についての残留水分データを示している図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺表面活性組成物を製造する方法であって、下記を含む当該方法:
肺表面活性ポリペプチド及び一種以上の脂質を、有機溶媒系を用いて合わせ、該系は、該肺表面活性ポリペプチドと脂質を可溶化して実質的に均質な液体混合物を形成するのに十分な量の有機溶媒を含み;そして
該液体混合物を凍結乾燥して凍結乾燥された肺表面活性ポリペプチド組成物を得る。
【請求項2】
実質的に均質な液体混合物を、凍結乾燥前に濾過する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
実質的に均質な液体混合物を、凍結乾燥前にフィルター殺菌する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
肺表面活性ポリペプチド組成物を、凍結乾燥後に殺菌する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
肺表面活性ポリペプチドが、動物由来のポリペプチドである、請求項1〜4の何れか一つに記載の方法。
【請求項6】
肺表面活性ポリペプチドが、合成ポリペプチドである、請求項1〜3の何れか一つに記載の方法。
【請求項7】
肺表面活性ポリペプチドが、組換えポリペプチドである、請求項1〜6の何れか一つに記載の方法。
【請求項8】
合成表面活性ポリペプチドが、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、又はSEQ ID NO:13を含む、請求項1〜4の何れか一つに記載の方法。
【請求項9】
肺表面活性ポリペプチドが、SEQ ID NO:1(KL4)を含む、請求項1〜4の何れか一つに記載の方法。
【請求項10】
一種以上の脂質を、一種以上のポリエチレングリコール(PEG)基と結合させる、請求項1〜9の何れか一つに記載の方法。
【請求項11】
一種以上の脂質を、リン脂質、脂肪酸、脂肪アルコール、中性脂肪、ホスファチド、油、糖脂質、表面活性剤(表面活性物質)、脂肪族アルコール、ワックス、テルペン、ステロイド及びこれらの組合せよりなる群から選択する、請求項1〜10の何れか一つに記載の方法。
【請求項12】
一種以上の脂質を、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ジアシルグリセリド、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴ脂質、ステロール、カージオリピン、脂肪酸、セラミド、セレブロシド及びこれらの組合せよりなる群から選択する、請求項1〜10の何れか一つに記載の方法。
【請求項13】
一種以上の脂質を、リン脂質及び遊離脂肪酸又は脂肪アルコールよりなる群から選択する、請求項1〜10の何れか一つに記載の方法。
【請求項14】
一種以上の脂質を、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)及びパルミチン酸よりなる群から選択する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
有機溶媒系が、約20〜70体積%の有機溶媒を含み、残りが水性溶媒である、請求項1〜14の何れか一つに記載の方法。
【請求項16】
有機溶媒系が、約40〜60体積%の有機溶媒を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
有機溶媒系が、約50体積%の有機溶媒を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
有機溶媒が、低級オキシ炭化水素、低級ハロ炭化水素、低級ハロオキシ炭化水素、低級スルホキシ炭化水素、低級環式炭化水素又はこれらの組合せを含む、請求項1〜17の何れか一つに記載の方法。
【請求項19】
有機溶媒が、低級オキシ炭化水素を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
オキシ炭化水素が、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、イソ−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、t−ペンタノール、メチルエチルケトン、ベンジルアルコール、酢酸、メチルエチルケトン、又はこれらの組合せである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
オキシ炭化水素が、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、又はこれらの組合せである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
オキシ炭化水素が、t−ブタノールである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
有機溶媒が、低級ハロ炭化水素を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
ハロ炭化水素が、四塩化炭素である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
有機溶媒が、低級ハロオキシ炭化水素を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
ハロオキシ炭化水素が、ヘキサフルオロアセトンである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
有機溶媒が、低級スルホキシ炭化水素を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
スルホキシ炭化水素が、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン又はこれらの組合せである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1〜28の何れか一つに記載の方法により製造された乾燥肺表面活性組成物。
【請求項30】
SEQ ID NO:1(KL4)を含む、請求項29に記載の肺表面活性組成物。
【請求項31】
液体肺表面活性組成物を製造する方法であって、下記を含む当該方法:
請求項1〜28の何れか一つに記載の方法により製造された凍結乾燥した肺表面活性物質を得、そして
該凍結乾燥した肺表面活性物質を十分量の製薬上許容しうる分散剤により再構成して、液体肺表面活性組成物を生成する。
【請求項32】
肺表面活性物質が、SEQ ID NO:1(KL4)を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項31に記載の方法により製造された液体肺表面活性組成物。
【請求項34】
請求項32に記載の方法により製造された液体肺表面活性組成物。
【請求項35】
130mM NaClを含むトリス−Ac緩衝液(pH7.6)中で、37℃で、エレクトロニクスコーポレーションパルセーティングバブルサーファクトメーター(PBS)を用いて、5分のサイクルの後に測定して、泡半径が0.4〜0.55mmで変化する20サイクル/分の振動数で、10mg−TPL/mlの濃度で約10mN/m未満の動的表面張力を示す、請求項33に記載の液体肺表面活性組成物。
【請求項36】
130mM NaClを含むトリス−Ac緩衝液(pH7.6)中で、37℃で、エレクトロニクスコーポレーションパルセーティングバブルサーファクトメーター(PBS)を用いて、5分のサイクルの後に測定して、泡半径が0.4〜0.55mmで変化する20サイクル/分の振動数で、10mg−TPL/mlの濃度で約5mN/m未満の動的表面張力を示す、請求項35に記載の液体肺表面活性組成物。
【請求項37】
130mM NaClを含むトリス−Ac緩衝液(pH7.6)中で、37℃で、エレクトロニクスコーポレーションパルセーティングバブルサーファクトメーター(PBS)を用いて、5分のサイクルの後に測定して、泡半径が0.4〜0.55mmで変化する20サイクル/分の振動数で、3mg−TPL/mlの濃度で約5mN/m未満の動的表面張力を示す、請求項33に記載の液体肺表面活性組成物。
【請求項38】
SEQ ID NO:1(KL4ポリペプチド)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)及びパルミチン酸を、十分量の製薬上許容しうる分散剤に分散させて含む、請求項35に記載の液体肺表面活性組成物。
【請求項39】
130mM NaClを含むトリス−Ac緩衝液(pH7.6)中で、40mm/1°アクリル錐体を取り付けたレオメーター及び、経時的な剪断速度の0〜200秒-1に至る約3分間の直線的な増大とその後の経時的な剪断速度の200〜0秒-1に至る約3分間の直線的な減少を用いるステップフロー手順を用いて、温度25℃で剪断速度157秒-1で測定した場合に、30mg−TPL/mlの濃度で約50cPより小さい見かけ粘度を示す、請求項33に記載の液体肺表面活性組成物。
【請求項40】
130mM NaClを含むトリス−Ac緩衝液(pH7.6)中で、40mm/1°アクリル錐体を取り付けたレオメーター及び、経時的な剪断速度の0〜200秒-1に至る約3分間の直線的な増大とその後の経時的な剪断速度の200〜0秒-1に至る約3分間の直線的な減少を用いるステップフロー手順を用いて、温度25℃で剪断速度157秒-1で測定した場合に、30mg−TPL/mlの濃度で約30cPより小さい見かけ粘度を示す、請求項39に記載の液体肺表面活性組成物。
【請求項41】
130mM NaClを含むトリス−Ac緩衝液(pH7.6)中で、40mm/1°アクリル錐体を取り付けたレオメーター及び、経時的な剪断速度の0〜200秒-1に至る約3分間の直線的な増大とその後の経時的な剪断速度の200〜0秒-1に至る約3分間の直線的な減少を用いるステップフロー手順を用いて、温度25℃で剪断速度157秒-1で測定した場合に、30mg−TPL/mlの濃度で約15cPより小さい見かけ粘度を示す、請求項39に記載の液体肺表面活性組成物。
【請求項42】
SEQ ID NO:1(KL4ポリペプチド)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)及びパルミチン酸を、十分量の製薬上許容しうる分散剤に分散させて含む、請求項39に記載の液体肺表面活性組成物。
【請求項43】
患者における呼吸障害を治療する方法であって、請求項1〜28の何れか一つに記載の方法により製造した凍結乾燥した肺表面活性組成物を該患者に投与することを含む当該方法。
【請求項44】
患者における呼吸障害を治療する方法であって、請求項35に記載の凍結乾燥した肺表面活性組成物を該患者に投与することを含む当該方法。
【請求項45】
患者における呼吸障害を治療する方法であって、請求項39に記載の凍結乾燥した肺表面活性組成物を該患者に投与することを含む当該方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−520577(P2008−520577A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541427(P2007−541427)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/041281
【国際公開番号】WO2006/055532
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(506387627)ディスカバリー ラボラトリーズ,インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】