説明

胆道ジスキネジーおよび/または胆道痛/不快の治療のためのGLP−1分子の使用

本発明は、胆道樹枝に由来する胆道ジスキネジーおよび/または疼痛および/または不快の治療または予防に適した分子、組成物および方法に関する。ペプチドホルモンであるグルカゴン様ペプチド−1(GLP-1)は、胃腸管において抗分泌作用と平滑筋弛緩特性との両者を有する。GLP-1は幾つかの形態で存在し、天然に存在するGLP-1分子は、GLP-1(1-37)、GLP-1(7-37)、およびアミド化形態であるGLP-1(1-36)アミド、GLP-1(7-36)アミドである。GLP-1レセプターに結合し活性化することのできる他の分子も、本明細書においてGLP-1分子なる語に包含される。GLP-1分子は、天然に存在するものであるか、または1またはそれ以上のアミノ酸置換または修飾を有するGLP-1のホモログであってよい。GLP-1分子は、胆道樹枝に由来する胆道ジスキネジーおよび/または疼痛および/または不快の治療または予防用医薬の製造に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胆道樹枝(biliary tree)に由来する胆道ジスキネジーおよび/または疼痛および/または不快の治療または予防に適した分子、組成物および方法を提供する。本願において引用されたすべての特許文献および非特許文献はまた、参照のためその全体を本明細書に引用する。
【背景技術】
【0002】
GLP−1
多くの胃腸管ペプチドホルモンが、胃腸管において抗分泌作用と平滑筋弛緩特性との両者を有する。このカテゴリーで特に強力でそれゆえ興味深いペプチドホルモンは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP-1)である。GLP-1の組織分布が検討され、GLP-1 mRNAはラットの肺、膵小島、胃、腎臓、視床下部および心臓で検出されているが、脂肪組織、肝臓および骨格筋では検出されていない(Bullockら、“ラットグルカゴン様ペプチド-1レセプターをコードするメッセンジャーリボ核酸の組織分布”, Endocrinology. 1996 Jul;137(7):2968-78)。
【0003】
ヒトGLP-1(1-37)は、配列:His Asp Glu Phe Glu Arg His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Gly(配列番号1)を有する。GLP-1(1-37)は翻訳後にアミド化されてGLP-1(1-37)NH2(配列:His Asp Glu Phe Glu Arg His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg (NH2)(配列番号2)を有する)を生成し、あるいは酵素によるプロセシングを受けてGLP-1(7-37)(配列:His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Gly(配列番号3))を生成する。GLP-1(7-37)もまたアミド化されて、GLP-1(7-37)アミド(このものは、GLP-1(7-37)とともにGLP-1分子の天然の形態を構成し、配列:His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg (NH2)(配列番号4)を有する)を生成することができる。同様に、GLP-1(1-36)(NH2)はGLP-1(7-36)(NH2)にプロセシングされることができる。
【0004】
循環している生物学的に活性なGLP-1の大部分はGLP-1(7-36)アミドの形態で見出されるが、より少ない量の生物学的に活性なGLP-1(7-37)の形態もまた検出できる(Diabetes. 1994 Apr;43(4):535-9)。両ペプチドは、今日まで研究されている全ての生物学的パラダイムにおいて等しい効力を有すると思われる(Diabetes. 1993 May;42(5):658-61)。GLP-1は、栄養摂取に応答して消化管内分泌細胞から分泌され、栄養摂取後の代謝ホメオスタシスにおいて多くの役割を果たしている。GLP-1の生物学的活性の制御のために重要な位置は、2位アラニンにおけるジペプチジルペプチダーゼ(DPP-IV)媒体開裂による該ペプチドのN末端分解である。GLP-1のDPP-IV媒体不活化を回避すべくデザインした戦略としては、DPP-IV耐性を示すよう操作した修飾GLP-1分子の生成が挙げられる。幾つかの報告が、正常および糖尿病の両齧歯類におけるそのような分子の増大した生物学的活性を詳細に記録している。トカゲGLP-1関連ペプチドであるエクセンジン−4(exendin-4)は2位にグリシンを有し、該ペプチドをDPP-IV媒体分解に対して耐性にしている。このことは、同様にインビボでのエクセンジン−4の増大した効力および安定性に有意に貢献している(Diabetes. 1999 May;48(5):1026-34)。
【0005】
GLP-1の生物学的活性としては、グルコース依存性インスリン分泌およびインスリン生合成の刺激、グルカゴン分泌および胃排出能(gastric emptying)の抑制、食物摂取の抑制が挙げられる。GLP-1は、胃腸管および中枢神経系において多くの別の作用を有していると思われる(Diabetes 1998 47(2):159-69, Endocrinology. 2001 Feb;142(2):521-7, Curr Pharm Des. 2001 Sep;7(14):1399-412, Gastroenterology. 2002 Feb;122(2):531-44)。GLP-1の一つの作用は、平滑筋を弛緩させて、例えばヒトにおける胃排出能の50%の遅延(Wettergrenら、1993; Gutniakら、1996)および腸管の運動性の抑制(Naslundら、“Glucagon-like peptide-1 analogue LY315902: effect on intestinal motility and release of insulin and somatostatin”, Regul Pept. 2002 Jun 15;106(1-3):89-95)を惹き起こすことである。GLP-1の薬理学的レベルは、ヒトにおいて胃排出能および胃酸分泌の両者を抑制すると思われる(Dig Dis Sci. 1993 Apr;38(4):665-73)。
【0006】
ラット壁細胞調製物を用いた研究において、エクセンジン−4およびGLP-1の両者はH+およびcAMP産生の観点において類似の特性を示し、これらペプチドの作用はGLP-1レセプターアンタゴニストであるエクセンジン(9-39)(exendin(9-39))により妨げられる(Eur J Pharmacol. 1994 Oct 14;269(2):183-91)。
【0007】
胆管系
胆管系(「胆管」または「胆道樹枝」ともいう)は、胆汁の産生および輸送に関与する器官および管(胆管、胆嚢、胆嚢管およびおよび「オッディ括約筋」(SO)(総胆管が十二指腸中に開口する部位に位置する)を含む)からなり、該括約筋は、総胆管と膵管との末端部、総管(common channel)およびファーター大十二指腸乳頭(the major duodenal papilla of Vater)によって形成される。オッディ括約筋は、長さが約1cmの平滑筋構造であり、胆管、膵管および十二指腸の結合部に位置する。胆管系で最も運動性のある領域は、胆嚢およびオッディ括約筋である。さらに、胆管壁は線維性筋性で平滑筋が一般に壁全体に分散しており、緊張性の圧力(tonic pressure)を惹き起こす。胆嚢管はさらに、流れに対する抵抗を変えることによって括約筋としても機能することができ、胆道樹枝の幾つかの運動機能疾患に関与していることが提唱されている(Toouliら、“Biliary tract motor dysfunction”, Bailliere’s Clinical Gastroenterology, Vol. 5, No. 2, June 1991)。
【0008】
胆管系の疾患
多くの疾患が、胆管系における疼痛および/または不快および/またはジスキネジー(または「胆道ジスキネジー」)と関係している。胆管系における「ジスキネジー」は、本明細書において胆管のいずれかの部位の異常な運動性、例えば、胆嚢、胆管壁、胆嚢管、SOまたは胆嚢中の括約筋における異常な運動性と定義される。
【0009】
胆嚢運動性における欠陥
胆嚢運動性障害は胆嚢ジスキネジーと呼ばれ、この状態を罹患する患者は胆石を連想させる症状を有する。しかしながら、調べてみても結石の証拠は認められない。腹部の疼痛および/または不快が、胆嚢の運動性障害に関連する最も一般的な症状である。疼痛は、上腹部または右上四分円にある。それはエピソードで(in episode)起こり、激しく、しばしば2〜3時間の間または鎮痛剤により和らげられるまで続く。それは背中までまたは右肩胛骨の先の下まで拡がることがある。疼痛は脂肪の多い食事に続くことがあり、吐き気および嘔吐を伴うことがある。
【0010】
胆嚢ジスキネジーの客観的な診断は、標準的な刺激の後に胆嚢が空にすることのできる能力を評価することにより行う。胆嚢を調べるには、99mTc-標識したイミノジ酢酸を用い、ガンマカメラおよびコンピューター分析を用いる。胆嚢排出画分(gallbladder ejection fraction;GBEF)は、以下の式の使用により評価することができる:GBEF(%)=胆嚢活性/ベースライン胆嚢活性の変化×100。正常な胆嚢は、標準的な食事またはコレシストキニンオクタペプチドの45-分静脈内注入(CCK-OP;20ng/kg/h)に応答して、その容積の50%を超えて空にすることが示されている。胆道型の疼痛のある患者では、GBEFが40%よりも低ければ、これは異常であると考えられる。一旦、胆嚢ジスキネジーと診断されたら、胆嚢切除または内視鏡による括約筋切開以外の処置の選択肢はわずかしかない、なぜなら現行の薬物療法は軽減を提供しないからである。
【0011】
胆嚢運動性の欠陥は、コレステロール胆石の形成における重要な因子である(Portincasa, Pら、“In vitro studies of gall-bladder smooth muscle function: relevance in cholesterol gallstone disease”, Aliment Pharmacol Ther 2000, 14(補遺2):19-26)。
【0012】
データは、消化間(interdigestive)(すなわち、絶食状態)状態での胆嚢運動性が胆石の病因において重要な役割を果たしているかもしれないことを示唆している(van Erpecum KJら、“Gallstones: an intestinal disease?”)。損なわれた胆嚢の動きは、胆嚢中での胆汁の滞在を引き延ばし、それゆえ過飽和状態の胆汁からのコレステロール結晶の核形成のためのより多くの時間を可能とする。胆嚢運動性はまた、炎症性腸疾患とも関連している(Mascleeら、Dig Liver DIs. 2003 Jul; 25 Suppl 3:S35-8)。
【0013】
胆石疾患のハイリスク患者、および胆嚢運動抑制剤で慢性的に処置されている患者は、本明細書に開示する薬剤のような運動性促進剤(prokinetic agent)を用いた改善された胆嚢運動性から利益を受けるであろう。
【0014】
さらに、異常な胆嚢運動性と関連する疼痛の存在は、慢性非結石(acalculous)胆嚢炎、胆道ジスキネジー、胆嚢管症候群(cystic duct syndrome)、非結石胆嚢疾患(胆嚢排出の欠陥(defective gallbladder emptying)を特徴とする)および胆嚢摘出後症候群などの異なる臨床場面で報告されている。
【0015】
非結石胆嚢疾患と関連する疼痛は、胆嚢運動性の障害によると考えられる。長期の静注栄養を受けている患者は、のろい収縮(sluggish contraction)を示す大きな容量の胆嚢を有することが示されている。これらの患者の胆嚢にはスラッジ(sludge)がしばしば形成され、これが胆石の形成に導くことがある。
【0016】
胆嚢運動性はまた、肥満、糖尿病または小児脂肪便症によって有害な影響を受ける(Fraquelliら、Dig Liver Dis. 2003 Jul;補遺3:S12-6)。さらなる研究は、糖尿病性ニューロパシーと胆嚢収縮性とのとの間の関連を示した(Gellerら、Probl Endokrinol (Mosk.) 1991 May-Jun;37(3):8-10)。
【0017】
胆嚢の低運動性はまたダウン症候群とも関連しており、おそらく、この患者群での胆石の高い発症頻度を引き起こしている(Tasdemirら、J Pediatr Gastronterol Nutr. 2004 Aug;39(2):187-91)。
【0018】
ベータ−サラセミア患者は、胆嚢運動性障害を有し、これが色素胆石/スラッジ(pigment gallstones/sludge)の病因に寄与する(Portincasaら、World J Gastroenterol 2004; 10(16):2383-2390)。
【0019】
胆嚢運動性はしばしば、胆石形成のハイリスク状況、例えば、妊娠、肥満、糖尿病、胃の外科手術、極低カロリーのダイエットおよび完全な非経口栄養並びに体外衝撃波砕石術において損なわれる(Pauletzki Jら、“Gallbladder emptying and gallstone formation: a propective study on gallstone recurrence” Gastroenterology 1996; 111:765-71)。甲状腺機能亢進症は、胆道運動性の低下を惹き起こすため、胆石の発生頻度の増大を伴う。これはおそらく甲状腺機能亢進症がオッディ括約筋の緊張の増大を引き起こし、正常な胆汁流を妨害して総胆管結石の確率を増大させることによる(Inkinen jら、“Direct effect of thyroxine on pig sphincter of Oddi contractility”, Dig Dis Sci 2001, 46:182-186)。ソマトスタチン産生腫瘍もまた、損なわれた胆嚢運動性を惹き起こす。
【0020】
SO機能不全
「オッディ括約筋の機能不全」なる語は、「オッディ括約筋の狭窄」かまたは「オッディ括約筋のジスキネジー」のいずれかによって引き起こされた運動性の異常を記載するのに用いる。いずれの状態もオッディ括約筋を通る胆汁流への妨害と関係しており、胆道樹枝中での胆汁および膵管中での膵液の停留を惹き起こす。オッディ括約筋の障害は、(1)腺過形成、筋肉過形成/肥大または線維症による狭窄;または(2)筋肉の協調不能または筋肉の高調(muscular hypertonicity)(痙攣)によるジスキネジーのいずれかの形態をとる。
【0021】
しばしば、SO機能不全の患者は、結石性かまたは非結石性の胆嚢疾患のいずれかのための胆嚢切除術後に現れる(Bar-Meir, 1984, “Frequency of papillary dysfunction among cholecystectomized patients”, Hepatology 4:328-330)。
【0022】
SO狭窄は、可能な平滑筋機能不全を表すSOジスキネジーとは対照的に、マノメトリによって基礎SO圧の上昇(40mmHgを超える)として特徴付けられる構造変化と関係している。SO狭窄は、括約筋の線維症変化または平滑筋の過形成によっても起こる。急性相収縮(rapid phasic contraction)および過度の逆行性収縮(excessive retrograde contractions)を含む、SOジスキネジーを惹き起こす様々なタイプの平滑筋機能不全が特徴付けられている。高頻度の収縮は、胆汁流に対する一過性の妨害を生成し、全体の胆汁流速を低下させる:1分当たり7回を超える収縮の頻度は異常と考えられる。
【0023】
括約筋に対する二次障害は、小さな結石の通過により、または胆管かまたは膵臓のいずれかでの炎症後に生じる。これら事象は線維症による修復という結果となり、これはマノメトリにより高い基礎圧によって反映される固定された(fixed)狭窄に導く。
【0024】
胆道様疼痛およびSO機能不全には、胆道括約筋、膵臓括約筋、またはその両者における異常が関与している。
【0025】
SO機能不全のための現行の治療法は、SOによって引き起こされる胆汁または膵液の流れに対する抵抗性を低減させることに向けられている:ニフェジピン、イソソルビドジナイトレート、ボツリヌス毒素の括約筋への注射(例えば、Botox; Allergan, Inc., Irvine, CAから)、内視鏡による括約筋切開または静水バルーン拡張術(hydrostatic balloon dilation)が考えられる。
【0026】
胆管運動性を抑制する因子
胆管系の基礎緊張(basal tone)を低下させる抑制因子はよく知られており、胆石の形成リスクの増大を含む胆管運動性障害のリスクの増大を惹き起こす。
【0027】
ソマトスタチン、オクトレオチド、サンドスタチンLAR、抗コリン薬、一酸化窒素、L-アルギニン、一酸化窒素のドナー、例えば、グリセリルトリナイトレート、ニトロプルシド、カルシウムチャネル拮抗薬、例えば、ニフェジピンおよびベラパミル、ロペラミド、ニフェジピン、プロゲステロン、マレイン酸トリメブチン、ロペラミド、オンダンセトロンを含む様々な医薬が、たいていは胆嚢排出を抑制することによって胆汁の通過を損なうことが知られている(van Erpecumら、“Review article: agents affecting gall-bladder motility role in treatment and prevention of gallstones”, Aliment Pharmacol ther 2000: 14 (補遺2): 66-70をも参照)。
【0028】
胆石の形成は損なわれた胆嚢収縮と関係しているので、これら薬剤の慢性的な使用は胆道スラッジまたは胆石の発生に導くことがある。
【0029】
胆汁流を惹き起こす因子
胆汁流を誘発することのできる既知の刺激因子をも用いて運動性障害を治療することができ、以下のものを含む:コレシストキニン(CCK)、カエルレイン(caerulein)、アセチルコリン、モチリン(motilin)、コリン作動薬、例えば、ベタネコールまたはプロスチグミン、ウルソデオキシコール酸、食物脂肪、NSAIDS、エリスロマイシン、シザプリド(cisapride)、コレスチラミン、アミノ酸の静脈内投与、および非ステロイド抗炎症剤(van Erpecumら、“Review article: agents affecting gall-bladder motility role in treatment and prevention of gallstones”, Aliment Pharmacol ther 2000: 14 (補遺2): 66-70をも参照)。
【0030】
有害な胆管運動性の変化という結果となる他の胆管障害
胆道閉塞
肝臓外胆道閉塞の最も一般的な原因の一つは、総胆管または総肝管中に1またはそれ以上の結石を有し胆道閉塞を引き起こす総胆管結石症である。10%までの胆石患者が総胆管結石を有する。総胆管結石は、胆嚢切除術を受けた5%もの患者のにおいて術後何年かの後に発見されている(Am J Surg. 1989;158:171-173)。これら結石は、停留された結石かまたは術後にデノボで形成された結石かのいずれかを表すと思われる。胆管中の結石は、胆道閉塞および胆汁うっ滞を引き起こしうる。
【0031】
胆管癌
胆管癌は、肝臓内または肝臓外胆管の腺癌である。原発性硬化性胆管炎(PSC)は、胆管癌発症の主たるリスク因子である。いずれも部分的なまたは完全な胆管閉塞を引き起こしうる。
【0032】
他の腫瘍タイプ
胆管癌の大部分は悪性であるが、幾つかの良性の胆管病変が胆道閉塞および胆汁うっ滞という結果となる。これらには、乳頭腫、腺腫および嚢胞腺腫が含まれる(Anthony PP. Tumors of the hepatobiliary system. In: Diagnostic Histopathology of Tumors. Fletcher CDM編、ロンドン、チャーチルリビングストン; 2000;411-460)。
【0033】
ファーター膨大部の腫瘍は、良性(腺腫)または悪性(膨大部の癌)でありうる。いずれも部分的なまたは完全な胆管閉塞を引き起こしうる。
【0034】
ミリッシ症候群
ミリッシ症候群は、胆嚢の膨満およびその後の肝臓外胆道樹枝の圧搾に導く埋伏(impacted)胆嚢管結石によって引き起こされる。場合により、胆石は総肝管中に侵食していって胆嚢総胆管フィステル(cholecystocholedochal fistula)を生成する。ミリッシ症候群のもともとの分類は拡張されて、胆嚢管と肝管との結合部での結石によりまたは閉塞性の胆嚢管結石が存在しなくても胆嚢炎の結果として引き起こされる肝管狭窄を包含するものとなっている(Hepatogastroenterology. 1997;44:63-67)。
【0035】
AIDS胆管病(cholangiopathy)
胆汁うっ滞は、AIDSにおいても、胆管造影において原発性硬化性胆管炎に類似して認められる胆管変化の結果として認めることができる。胆管狭窄は、クリプトスポリジウム、サイトメガロウイルス、微胞子虫(microsporidium)およびシクロスポラ属を含む感染によって引き起こされると考えられている(Semin Liver Dis. 1997;17:335-344)。患者は、右上四分円の疼痛を訴える。
【0036】
寄生虫
肝臓外の部分的または完全な胆道閉塞はまた、ストロンギロイデス属(Strongyloides)、回虫属(Ascaris)、および肝臓の吸虫類、例えば、肝吸虫(Clonorchis sinensis)および肝蛭(Fasciola hepatica)などの種々の寄生虫感染でも認められる。
【0037】
他の障害
胆管系の障害の他の原因としては、以下のものが挙げられるが、これらに限られるものではない:
・肝臓の外側の胆道樹枝の大管(large ducts)における閉塞性の病変
・原発性胆汁性肝硬変
・原発性硬化性胆管炎
・乳児の閉塞性胆管病、例えば、肝臓外胆道閉鎖
・ベノキサプロフェン、クロルプロマジン、ハロペリドール、イミプラミンなどの薬剤による肝臓内小胆管に対する障害
・胆道スラッジ
・胆汁うっ滞
【0038】
胆管系運動性の測定
胆管系の様々な部分の運動性は、標準プロトコール、例えばPortincasaら(“Standards for diagnosis of gastrointestinal motility disorders”; Dig Liver Dis 2000; 32: 160-172)によって記載されているプロトコールを用い、個人で測定できる。
【0039】
動物モデル、例えばRomanskiら(Pol J Pharmacol. 2004 Mar-Apr;56(2):247-56)によって記載されているようなヒツジモデルもまた、胆管系に及ぼす薬剤の影響を調べるのに適している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題および課題を解決するための手段】
【0040】
本発明の一つの側面は、胆道ジスキネジーの治療用医薬を製造するためのGLP-1分子の使用に関する。
【0041】
第二の側面において、本発明による方法および組成物は、胆管系に由来するあらゆるタイプの疼痛または不快の治療に用いることができる。
【0042】
理論に拘束されるものではないが、GLP-1分子は胆管の運動性に対して作用することにより機能する。
【0043】
それゆえ、本発明の一つの側面に従い、胆管系の疼痛および/またはジスキネジーの治療用医薬組成物の製造のためのグルカゴン様ペプチド-1分子の使用が提供される。
【0044】
さらに、本発明によれば、補完的な効果を達成するために、医薬組成物において該GLP-1分子を1またはそれ以上の他の胃腸ペプチドホルモンまたはその誘導体とともに併用するのが好ましい。特に好ましい態様において、PYY1-36、PYY3-36またはその誘導体/アナログを医薬組成物においてGLP-1分子と併用する。さらに、GLP-1分子は、膵臓ポリペプチド(PP)と併用できる。
【0045】
本発明の他の側面によれば、少なくとも1のGLP-1分子と以下の1またはそれ以上との組合せを含むことを特徴とする、胆管系の疼痛および/またはジスキネジーの治療に用いることのできる併用医薬(combination)(任意に医薬組成物の形態であってよい)が提供される:鎮痛剤、例えば、麻薬、NSAID、サリチル酸誘導体、パラセタモール、または胆道ジスキネジーに影響を及ぼす医薬、例えば、硝酸塩またはカルシウムチャネルアンタゴニスト。
【0046】
発明の詳細な説明
定義
親和性:レセプターとそのリガンドとの間、例えば、抗体とその抗原との間の結合の強さ。
【0047】
アミノ酸残基:ポリペプチドのペプチド結合部位での化学的消化(加水分解)により生成するアミノ酸。本明細書において記載するアミノ酸残基は、好ましくは「L」異性体のものである。しかしながら、アミノ酸は、所望の機能的特性がそのポリペプチドによって保持されている限り、L-アミノ酸、D-アミノ酸、アルファ-アミノ酸、ベータ-アミノ酸、ガンマ-アミノ酸、天然アミノ酸および合成アミノ酸などのあらゆるアミノ酸を包含する。さらに包含されるのは、修飾された天然アミノ酸および合成アミノ酸である。NH2は、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離のアミノ基をいう。COOHは、ポリペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離のカルボキシ基をいう。本明細書においてアミノ酸残基の標準ポリペプチド略号が使用される。
【0048】
本明細書において式により示すアミノ酸残基の配列はすべて、左から右に向かってアミノ末端からカルボキシ末端への通常の方向であることに注意すべきである。さらに、アミノ酸残基配列の最初または終わりのダッシュは、1またはそれ以上のアミノ酸残基のさらなる配列へのペプチド結合またはアミノ末端基、例えばNH2またはアセチルまたはカルボキシ末端基、例えばCOOHへの共有結合を示す。
【0049】
濃度等価(Concentration equivalent):濃度等価は、例えば、野生型GLP-1の用量−応答曲線から評価されるものと同じ応答をインビトロおよび/またはインビボで有するGLP-1様化合物の投与量として定義される等価投与量(Equivalents dosage)である。
【0050】
解離定数、Kd:レセプターとそのリガンドとの間、例えば、GLP-1分子とGLP-1レセプターとの間の結合(または親和性または親和力)の強さを記載する測定値。Kdが小さいほど結合は強い。
【0051】
胆道ジスキネジー:患者に疼痛および/または不快を惹き起こす胆道樹枝中の運動性異常。これには、これらに限られるものではないが、胆嚢機能不全、胆管の機能不全およびオッディ括約筋の機能不全が含まれる。胆道機能不全は、例えば、胆管のいずれかの領域の増大した運動性、胆管のいずれかの領域の低減した運動性、または例えば胆管での痙攣などの運動性の乱れた制御であってよい。
【0052】
胆嚢機能不全:胆道タイプの疼痛または不快を惹き起こす異常な胆嚢排出を含む、胆嚢の運動性異常。
【0053】
SO機能不全は、オッディ括約筋の運動性異常を定義するのに用いられる術語である(Rome II: The functional Gastrointestinal Disorders、第2版を参照)。
【0054】
個体:生きた動物。好ましい態様では、対象者(the subject)は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ブタ、牛、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラット、およびマウスなどを含む哺乳動物である。最も好ましい態様では、対象者はヒトである。
【0055】
単離した:その天然の環境またはその生成プロセスの成分から単離および分離および/または回収した、種々のGLP-1分子、ポリペプチドおよびヌクレオチドを記載するのに用いる。その天然の環境の混入成分は、典型的に該ポリペプチドの診断的または治療的使用を妨害し、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質を含む。好ましい態様では、該ポリペプチドは精製されるであろう。
【0056】
修飾アミノ酸:その任意の基が化学的に修飾されたアミノ酸。1、2、3またはそれ以上の修飾アミノ酸が、本明細書に開示するGLP-1分子に用いられてよい。とりわけ、アルファアミノ酸中のアルファ炭素原子で化学的に修飾されたアミノ酸が好ましい。
【0057】
ポリペプチド:ポリペプチドなる語は、アミノ酸残基を含む分子であって、隣接するアミノ酸残基間にアミド結合以外の結合を含まないものをいう。
【0058】
界面活性剤分子:疎水性の部分および親水性の部分を含む分子、すなわち、油相と水相との界面に存在することのできる分子。
【0059】
適応症
本発明の一つの側面は、胆管での疼痛または不快および/またはジスキネジー(すなわち、「胆道ジスキネジー」)を罹患するか罹患するリスクのある個体の治療のための医薬の製造におけるGLP-1分子の使用に関する。それゆえ、本発明は、以下の病的状態のいずれかと関連する胆管由来の胆道ジスキネジーおよび/または疼痛または不快を罹患するかまたは罹患するリスクのある個体の治療に関する:
・炎症性腸疾患
・慢性非結石性胆嚢炎
・非結石性胆嚢疾患
・胆嚢管症候群
・非結石性胆嚢疾患
・胆嚢摘出後症候群
・胆嚢運動性抑制薬剤による治療
・非経口栄養摂取
・肥満
・糖尿病
・小児脂肪便症
・糖尿病性ニューロパシー
・ダウン症候群
・ベータ−サラセミア
・妊娠
・胃の外科手術
・極低カロリーダイエット
・体外衝撃波砕石術
・ソマトスタチン産生腫瘍
・「オッディ括約筋の狭窄」
・「オッディ括約筋のジスキネジー」
・腺過形成、筋肉過形成/肥大または線維症
・SO筋肉の協調不能または筋肉の高調(痙攣)
・甲状腺機能亢進症
・ソマトスタチン、オクトレオチド、サンドスタチンLAR、抗コリン薬、一酸化窒素、L-アルギニン、一酸化窒素のドナー、例えば、グリセリルトリナイトレート、ニトロプルシド、カルシウムチャネル拮抗薬、例えば、ニフェジピンおよびベラパミル、ロペラミド、ニフェジピン、プロゲステロン、マレイン酸トリメブチン、ロペラミド、オンダンセトロンなどの、胆汁の通過を損なうことが知られている医薬による治療
・総胆管結石症によって引き起こされるものなどの胆道閉塞(部分的または完全)
・胆管癌
・原発性硬化性胆管炎(PSC)
・ファーター膨大部の腫瘍
・乳頭腫、腺腫および嚢胞腺腫を含む他のタイプの胆管癌
・ミリッシ症候群
・AIDS胆管病
・クリプトスポリジウム、サイトメガロウイルス、微胞子虫およびシクロスポラ属を含む感染
・ストロンギロイデス属、回虫属、および肝臓の吸虫類、例えば、肝吸虫および肝蛭などの種々の寄生虫感染
・肝臓の外側の胆道樹枝の大管における閉塞性の病変
・原発性胆汁性肝硬変
・原発性硬化性胆管炎
・乳児の閉塞性胆管病、例えば、肝臓外胆道閉鎖
・ベノキサプロフェン、クロルプロマジン、ハロペリドール、イミプラミンなどの薬剤による肝臓内小胆管に対する障害
・胆道スラッジ
・胆汁うっ滞
【0060】
他の態様において、本発明は、胆石と関連する胆管由来の胆道ジスキネジーおよび/または疼痛または不快を罹患するかまたは罹患するリスクのある個体の治療に関する。
【0061】
本発明の方法を用いて治療することのできる疼痛または不快は該個体の胆管のいずれの部位にあってもよく、それゆえ本発明は、例えば、以下の1またはそれ以上の疼痛および/または不快および/またはジスキネジーを治療するのに用いることができる:
・胆嚢および/または
・オッディ括約筋および/または
・胆管壁および/または
・胆嚢管
【0062】
それゆえ、一つの好ましい態様において、該個体は、胆嚢のジスキネジーおよび/または疼痛および/または不快を惹き起こす病的状態を罹患しているかまたは罹患するリスクがある。該個体は、例えば、以下のいずれかの病的状態を罹患しているかまたは罹患するリスクがあってよい:
・胆道ジスキネジー
・胆石
・炎症性腸疾患
・慢性非結石性胆嚢炎
・非結石性胆嚢疾患
・胆嚢管症候群
・非結石性胆嚢疾患
・胆嚢摘出後症候群
【0063】
他の態様において、該個体は、胆嚢のジスキネジーおよび/または疼痛および/または不快と関連する病的状態を罹患している。それゆえ、例えば、該個体は、以下のいずれかの病的状態を罹患しているかまたは罹患するリスクがあってよい:
・胆嚢運動性抑制薬剤による治療
・非経口栄養摂取
・肥満
・糖尿病
・小児脂肪便症
・糖尿病性ニューロパシー
・ダウン症候群
・ベータ−サラセミア
・妊娠
・胃の外科手術
・極低カロリーダイエット
・体外衝撃波砕石術
・ソマトスタチン産生腫瘍
【0064】
他の態様において、本発明に従って治療すべき個体は、SOのジスキネジーおよび/または疼痛および/または不快を惹き起こす病的状態を罹患している。それゆえ、例えば、該個体は、「オッディ括約筋の狭窄」(例えば、腺過形成、筋肉過形成/肥大または線維症により引き起こされる)、および/または「オッディ括約筋のジスキネジー」(例えば、筋肉の協調不能または筋肉の高調(痙攣)により引き起こされる)を罹患しているかまたは罹患するリスクがあってよい。該SOのジスキネジーの一つの好ましい態様において、個体は、1分当たり7回またはそれを超える異常なSO収縮を有する。さらに、SOのジスキネジーおよび/または疼痛および/または不快には、例えば、胆道括約筋、膵臓括約筋、またはその両者における異常が関与している。一つの好ましい態様において、SOのジスキネジーは甲状腺機能亢進症と関係しており、それゆえ、本発明の一つの態様において、治療すべき個体は甲状腺機能亢進症を罹患しているかまたは罹患するリスクがある。
【0065】
本発明の他の態様において、治療すべき個体は、胆管運動性を抑制するかおよび/または胆管系の基礎緊張を低下させることが知られている抑制因子(薬剤など)で治療されているかまたは治療される予定である。該抑制因子は、これらに限られるものではないが、以下の因子のいずれかであってよい:ソマトスタチン、オクトレオチド、サンドスタチンLAR、抗コリン薬、一酸化窒素、L-アルギニン、一酸化窒素のドナー、例えば、グリセリルトリナイトレート、ニトロプルシド、カルシウムチャネル拮抗薬、例えば、ニフェジピンおよびベラパミル、ロペラミド、ニフェジピン、プロゲステロン、マレイン酸トリメブチン、ロペラミド、オンダンセトロン。
【0066】
本発明の方法および組成物を用いて治療することのできる、胆道ジスキネジーおよび/または疼痛および/または不快を惹き起こす他の胆管疾患としては、これらに限られるものではないが、以下のものが挙げられる:
・総胆管結石症によって引き起こされるものなどの胆道閉塞(部分的または完全)
・胆管癌
・原発性硬化性胆管炎(PSC)
・ファーター膨大部の腫瘍
・乳頭腫、腺腫および嚢胞腺腫を含む他のタイプの胆管癌
・ミリッシ症候群
・AIDS胆管病
・クリプトスポリジウム、サイトメガロウイルス、微胞子虫およびシクロスポラ属を含む感染
・ストロンギロイデス属、回虫属、および肝臓の吸虫類、例えば、肝吸虫および肝蛭などの種々の寄生虫感染
・肝臓の外側の胆道樹枝の大管における閉塞性の病変
・原発性胆汁性肝硬変
・原発性硬化性胆管炎
・乳児の閉塞性胆管病、例えば、肝臓外胆道閉鎖
・ベノキサプロフェン、クロルプロマジン、ハロペリドール、イミプラミンなどの薬剤による肝臓内小胆管に対する障害
・胆道スラッジ
・胆汁うっ滞
【0067】
GLP-1分子
GLP-1アナログなる語によって意味するところは、GLP-1レセプターに結合し活性化することのできるあらゆる分子、例えば、下記「GLP-1分子」の標題にて開示するいずれかの分子である。「GLP-1分子」および「GLP-1アナログ」なる語は、好ましくは互換的に用いられる、すなわち、「GLP-1分子」とは、例えば、天然の形態のGLP-1、GLP-1アナログまたはGLP-1誘導体を意味する。
【0068】
GLP-1分子
本発明は、GLP-1分子の使用に関する。本明細書において使用する「GLP-1分子」なる語は、GLP-1レセプターに結合し活性化することのできるあらゆる分子をいう。本発明において使用するためのGLP-1分子の機能的活性のアッセイ方法は、以下に「GLP-1分子の機能的活性」の標題のセクションで記載する。本発明において使用するためのGLP-1分子の活性は、天然のGLP-1(7-36)アミドよりも効力が小さいかまたは大きくてよいことが理解されなければならない。
【0069】
好ましくは、本発明において使用するためのGLP-1分子はポリペプチドである。この活性を有する化合物の一つの好ましいグループは、もともと天然の採取源から配列決定したGLP-1ポリペプチドである。それゆえ、本発明において使用するための好ましい分子は、以下よりなる群から選ばれてよい:GLP-1(7-36)アミドおよびGLP-1(7-37)。
【0070】
本発明はさらに、組換えによりまたは合成により生成したヒトGLP-1ポリペプチド、並びに組換えによると合成によるとに拘わらず他の種に由来するGLP-1ポリペプチドの使用を包含する。それゆえ、一つの態様において、GLP-1分子はGLP-1のホモログである。
【0071】
本発明の一つの好ましい態様において、GLP-1分子は、GLP-1(7-37)と比較して1またはそれ以上の(例えば、15またはそれより少ない、例えば、13またはそれより少ない、例えば、11またはそれより少ない、例えば、9またはそれより少ない、例えば、7またはそれより少ない、例えば、5またはそれより少ない、例えば、3またはそれより少ない、例えば、2またはそれより少ない、例えば、1またはそれより少ない)アミノ酸置換、欠失、逆位(inversions)、または付加を有するGLP-1分子であり、D-アミノ酸の形態を含んでいてよい。多数のGLP-1アナログが当該技術分野で知られており、GLP-1(7-34)、GLP-1(7-35)、GLP-1(7-36)NH2、Gln9-GLP-1(7-37)、d-Gln9-GLP1(7-37)、Thrl6-Lysl8-GLP-1(7-37)、およびLysl8-GLP-1(7-37)、Gly'-GLP-1(7-36)NH2、Gly'-GLP1(7-37)OH、Val'-GLP-1(7-37)OH、Met8-GLP-1(7-37)OH、アセチル-Lys9-GLP-1(7-37)、Thr9GLP-1(7-37)、D-Thr9-GLP-1(7-37)、Asn9-GLP-1(7-37)、D-Asn9-GLP-1(7-37)、Ser22-Arg23Arg24-Gln26-GLP-1(7-37)、Arg23-GLP-1(7-37)、Arg24-GLP-1(7-37)、a-メチル-Ala8-GLP-1(736)NH2、およびGly'-Gln2'-GLP-1(7-37)OHなどが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0072】
本発明と一致する他のGLP-1アナログは、式:
R1-X-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp15-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu20-Y-Gly-Gln-Ala-Ala25
Lys-Z-Phe-Ile-Ala3-Trp-Leu-Val-Lys-Gly35-Arg-R2(配列番号7)
(式中、R1は、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、デスアミノヒスチジン(desaminohistidine)、2-アミノ-ヒスチジン、ベータ-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン(homohistidine)、アルファ-フルオロメチルヒスチジン、およびアルファ-メチル-ヒスチジンよりなる群から選ばれる;
Xは、Ala、Gly、Val、Thr、Ile、およびアルファ-メチル-Alaよりなる群から選ばれる;
Yは、Glu、Gln、Ala、Thr、Ser、およびGlyよりなる群から選ばれる;
Zは、Glu、Gln、Ala、Thr、Ser、およびGlyよりなる群から選ばれる;および
R2は、NH2、およびGly-OHよりなる群から選ばれる)
によって記載される。
【0073】
GLP-1アナログはまたWO91/11457に記載されており、以下よりなる群から選ばれた少なくとも一つの修飾を有する、GLP-1(7-34)、GLP-1(7-35)、GLP-1(7-36)、またはGLP-1(7-37)、またはそれらのアミド形、および薬理学的に許容しうるその塩を含む:
(a)26位および/または34位のリシンのグリシン、セリン、システイン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、アルギニン、またはD-リシンへの置換;または36位のアルギニンのグリシン、セリン、システイン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、リシン、またはD-アルギニンへの置換;
(b)31位のトリプトファンの抗酸化アミノ酸への置換;
(c)16位のバリンのチロシンへの置換;18位のセリンのリシンへの置換;21位のグルタミン酸のアスパラギン酸への置換;22位のグリシンのセリンへの置換;23位のグルタミンのアルギニンへの置換;24位のアラニンのアルギニンへの置換;および26位のリシンのグルタミンへの置換の少なくとも1の置換、および
(d)8位のアラニンのグリシン、セリン、またはシステインへの置換;9位のグルタミン酸のアスパラギン酸、グリシン、セリン、システイン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、またはフェニルアラニンの置換;10位のグリシンのセリン、システイン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、またはフェニルアラニンへの置換;および15位のアスパラギン酸のグルタミン酸への置換の少なくとも1の置換、および
(e)7位のヒスチジンのグリシン、セリン、システイン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、またはフェニルアラニン、またはヒスチジンのD-形またはN-アシル化またはアルキル化形への置換ここで、(a)、(b)、(d)、および(e)において、置換アミノ酸は任意にD-形であってよく、7位で置換されたアミノ酸は任意にN-アシル化またはN-アルキル化された形態であってよい。
【0074】
本発明において使用する好ましいGLP-1分子はまた、もともとの配列には存在しない1またはそれ以上のアミノ酸が付加または欠失された、GLP-1(7-37)NH2およびGLP-1(7-37)のアナログ、およびそれらの誘導体をも含む。
【0075】
とりわけ、Hisおよびデスアミノ-ヒスチジンがRには好ましくは、および/またはAla、GlyおよびValが「X」位に好ましい。また、GluおよびGlnが「Y」位に好ましい。GluおよびGlnが「Z」位に好ましく、Gly-OHがR2に好ましい。
【0076】
特に好ましいGLP-1アナログはVal(8)GLP-1(V8GLP-1)として知られ、配列番号7(これまでの頁を参照)による式(式中、R1はL-ヒスチジン、XはVal、YはGlu、ZはGlu、およびR2はGly-OHである)を有する。
【0077】
本発明の他の好ましい態様において、GLP-1分子はGLP-1誘導体である。「GLP-1誘導体」は、GLP-1(7-37)またはGLP-1アナログのアミノ酸配列を有するが、そのアミノ酸側鎖基、a-炭素原子、末端アミノ基、または末端カルボン酸基の1またはそれ以上の化学的修飾をさらに含む分子として定義される。化学的修飾としては、これらに限られるものではないが、化学残基の付加、新たな結合の生成、および化学残基の除去が挙げられる。アミノ酸側鎖基の修飾としては、これらに限られるものではないが、リシンs-アミノ基のアシル化、アルギニン、ヒスチジン、またはリシンのNアルキル化、グルタミン酸またはアスパラギン酸のカルボン酸基のアルキル化、およびグルタミンまたはアスパラギンの脱アミド化が挙げられる。末端アミノの修飾としては、これらに限られるものではないが、des-アミノ、N-低級アルキル、N-ジ-低級アルキル、およびN-アシル修飾が挙げられる。末端カルボキシ基の修飾としては、これらに限られるものではないが、アミド、低級アルキルアミド、ジアルキルアミド、および低級アルキルエステル修飾が挙げられる。低級アルキルはCl-C4アルキルである。さらに、1またはそれ以上の側鎖基、または末端基が、通常の知識を有するタンパク質化学者に知られた保護基で保護されていてよい。アミノ酸のa-炭素は、モノ-またはジメチル化されていてよい。
【0078】
他のGLP-1誘導体としては、アミノ酸配列:
NH2-His'-Ala-Glu-Glyl-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp'5-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu2-Glu-Gly
Gln-Ala-Ala25-Lys-Glu-Phe-Ile-Ala30-Trp-Leu-Val-X(配列番号8)
(式中、Xは-LysおよびLys-Glyよりなる群から選ばれる)を有するペプチドおよびその薬理学的に許容しうる塩、および該ペプチドの誘導体(ここで、該ペプチドは、該ペプチドの薬理学的に許容しうる低級アルキルエステル、および該ペプチドの薬理学的に許容しうるアミド(アミド、低級アルキルアミド、および低級ジアルキルアミドよりなる群から選ばれる)よりなる群から選ばれる)よりなる群から選ばれた分子が挙げられる。
【0079】
本発明において使用するのに適したさらに他のGLP-1誘導体としては、米国特許第5,512,549号において特許請求され、式:
R1-Ala-Glu-Glyl-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp15-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu20-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-Xaa-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Lys-Gly-Arg-R3

(R2)
(式中、R1は、4-イミダプロピオニル、4-イミダゾアセチル、または4-イミダゾ-a,aジメチル-アセチルよりなる群から選ばれる;R2は、C6 Clo非分枝鎖アシルまたは不在よりなる群から選ばれる;R3は、Gly-OHまたはNH2よりなる群から選ばれる;およびXaaはLysまたはArgである)により記載される化合物が挙げられる。
【0080】
GLP-1レセプターを活性化することができ、本発明において使用するのに適したさらなる好ましいGLP-1分子としては、これらに限られるものではないが、以下の分子が挙げられ、これらは以前にGLP-1レセプターを活性化することができることが示されているものである:
・GLP-1(7-36)アミド
・GLP-1(7-37)
・エクセンジン−4
・GLP-1(7-34)
・GLP-1(7-35)
・GLP-1(7-36)
・Gln9-GLP-1(7-37)
・D-Gln9-GLP-1(7-37)
・Thrl6-Lysl8-GLP-1(7-37)
・Lys18-GLP-1(7-37)
・GLP-1(7-34)
・GLP-1(7-35)
・GLP-1(7-36)
・GLP-1(7-36)NH2
・Gly8-GLP-1(7-36)NH2
・Gln9-GLP-1(7-37)
・D-Gln9-GLP-1(7-37)
・アセチル-Lys9-GLP-1(7-37)
・Thr9-GLP-1(7-37)
・D-Thr9-GLP-1(7-37)
・Asn9-GLP-1(7-37)
・D-Asn9-GLP-1(7-37)
・Ser22-Arg23-Arg24-Gln26-GLP-1(7-37)
・Thrl6-Lysl8-GLP-l(7-37)
・Lys18-GLP-l(7-37)
・Arg23-GLP-1(7-37)
・Arg24-GLP-1(7-37)
・GLP-1(7-34)
・GLP-1(7-35)
・GLP-1(7-36)NH2
・Gln9-GLP-1(7-37)
・d-Gln9-GLP1(7-37)
・Thrl6-Lysl8-GLP-1(7-37)
・Lysl8-GLP-1(7-37)
・Gly'-GLP-1(7-36)NH2
・Gly'-GLP1(7-37)OH、Val'-GLP-1(7-37)OH、Met8-GLP-1(7-37)OH、アセチルl-Lys9-GLP-1(7-37)
・Thr9GLP-1(7-37)
・D-Thr9-GLP-1(7-37)
・Asn9-GLP-1(7-37)
・D-Asn9-GLP-1(7-37)
・Ser22-Arg23Arg24-Gln26-GLP-1(7-37)
・Arg23-GLP-1(7-37)
・Arg24-GLP-1(7-37)
・a-メチル-Ala8-GLP-1(736)NH2
・Gly'-Gln2'-GLP-1(7-37)OH
・LY315902(その活性は、Naslundら、“Glucagon-like peptide-1 analogue LY315902: effect on intestinal motility and release of insulin and somatostatin”, Regul Pept. 2002 Jun 15;106(1-3):89-95に記載されている)
【0081】
本発明の他の好ましい態様において、該GLP-1分子は以下の分子から選ばれ、これらは以前にGLP-1レセプターを活性化することができることが示されているものであり、Xiaoら、“Biological Activities of Glucagon-Like Peptide-1 Analogues in Vitro and in Vivo, Biochemistry, 2001, Vol. 40, No. 9, p2860-2869に記載されているものである:
・アセチル-GLP-1
・ヘキサン酸-GLP-1
・(dAla2)GLP-1
・(Gly2)GLP-1
・(Ala4)GLP-1
・ヘキサン酸-(dAla2)GLP-1
・グルカゴン(1-5)GLP-1
・グルカゴン(1-10)GLP-1
・PACAP(1-5)GLP-1
・PACAP(1-10)GLP-1
・PHI(1-5)GLP-1
・PHI(1-10)GLP-1
・セクレチン(1-10)GLP-1
・VIP(1-5)GLP-1
・VIP(1-10)GLP-1
・(Ala12/16)GLP-1
・(Ala8/11/16)GLP-1
・(Ala8/12/16)GLP-1
・(dHis1)GLP-1
・デスアミノHis1 GLP-1
・N-me-His1-GLP-1
・アルファ-me-His1-GLP-1
・Imi-His1-Glp-1
・(Ser2)GLP1
【0082】
さらなる適したGLP-1分子は、以下の特許出願(参照のため本明細書に引用する)に記載されたものである:
・WO91/11457
米国特許第5,118,666号
・WO2004/094461(“Human glucagons-like peptide-1 mimics and their use in the treatment of diabetes and related conditions”)
・WO98/08873、“Use of Glucagon-like peptide-1 (GLP-1) or analogs to abolish catabolic changes after surgery”
・米国特許第5,545,618号
米国特許第5,188,666号
・米国特許第5,512,549号
・WO03/018516(“Glucagon-like peptide-1 analogs”)
・米国特許第5,120,712号
【0083】
GLP-1分子のホモログ
本明細書において特定する配列の1またはそれ以上のホモログは、特定した該配列と比較して1またはそれ以上のアミノ酸が異なっていてよいが、同じ機能を奏することができるものである、すなわち、ホモログは前もって決定した配列の機能的等価物として考えることができる。
【0084】
それゆえ、本発明の一つの好ましい態様において、GLP-1分子は、以下よりなる群から選ばれた分子のホモログなどの本明細書に記載した分子のいずれかのホモログである:
・GLP-1(7-36)アミド
・GLP-1(7-37)
・リラグルチド
・エクセナチド(Byetta)
・アルブゴン(Albugon)
・CJC-1131
・zp-10-AVE0010
・BIM51077(Ipsen)
・LY315902
・LY307161
・S23521
【0085】
それゆえ、本発明の一つの好ましい態様において、GLP-1分子は、以下よりなる群から選ばれた分子と比較して1またはそれ以上のアミノ酸の置換、逆位、付加または欠失を含むペプチドである:
・GLP-1(7-36)アミド
・GLP-1(7-37)
・リラグルチド
・エクセナチド(Byetta)
・アルブゴン(Albugon)
・CJC-1131
・zp-10-AVE0010
・BIM51077(Ipsen)
・LY315902
・LY307161
・S23521
【0086】
一つの態様において、置換、欠失、または付加の数は、20アミノ酸またはそれ以下、例えば、15アミノ酸またはそれ以下、例えば、10アミノ酸またはそれ以下、例えば、9アミノ酸またはそれ以下、例えば、8アミノ酸またはそれ以下、例えば、7アミノ酸またはそれ以下、例えば、6アミノ酸またはそれ以下、例えば、5アミノ酸またはそれ以下、例えば、4アミノ酸またはそれ以下、例えば、3アミノ酸またはそれ以下、例えば、2アミノ酸またはそれ以下(例えば、1)、またはこれら量の間のいずれかの数字である。本発明の一つの側面において、置換は、1またはそれ以上の保存的置換、例えば、20またはそれ以下の保存的置換、例えば、18またはそれ以下、例えば、16またはそれ以下、例えば、14またはそれ以下、例えば、12またはそれ以下、例えば、10またはそれ以下、例えば、8またはそれ以下、例えば、6またはそれ以下、例えば、4またはそれ以下、例えば、3またはそれ以下、例えば、2またはそれ以下の保存的置換を含む。「保存的」置換は、他の生物学的に活性な類似の残基によるアミノ酸残基の置換を意味する。保存的置換の例としては、疎水性残基(イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなど)の他の疎水性残基による置換、または極性残基の他の極性残基による置換、例えば、アルギニンのリシンによる置換、グルタミン酸のアスパラギン酸による置換、またはグルタミンのアスパラギンによる置換などが挙げられる。下記表は、例示としてだが非限定的な保存的アミノ酸置換を列記したものである。
【0087】
【表1】

【0088】
本発明の使用および方法に適した他のGLP-1ホモログは、以下よりなる群から選ばれた分子に対して、50パーセントを超える配列同一性、好ましくは90パーセントを超える配列同一性(例えば、91%を超える配列同一性、例えば、92%を超える配列同一性、例えば、93%を超える配列同一性、例えば、94%を超える配列同一性、例えば、95%を超える配列同一性、例えば、96%を超える配列同一性、例えば、97%を超える配列同一性、例えば、98%を超える配列同一性、例えば、99%を超える配列同一性、例えば、99.5%を超える配列同一性)を有するペプチド配列である:
・GLP-1(7-36)アミド
・GLP-1(7-37)
・リラグルチド
・エクセナチド(Byetta)
・アルブゴン(Albugon)
・CJC-1131
・zp-10-AVE0010
・BIM51077(Ipsen)
・LY315902
・LY307161
・S23521
【0089】
本明細書において、配列同一性は、当該技術分野でよく知られた標準アルゴリズムを用いて2分子間で行う比較をいう。本発明のために配列同一性を計算するのに好ましいアルゴリズムは、Smith-Watermanアルゴリズムであり、該アルゴリズムでは、参照配列を用いてポリペプチドホモログのパーセント同一性がその長さにわたって定められる。マッチ、ミスマッチ、および挿入または欠失のためのパラメーター値の選択は任意であるが、幾つかのパラメーター値は他のパラメーター値に比べて生物学的により実際的な結果を与えることがわかっている。Smith-Watermanアルゴリズムのパラメーター値の一つの好ましいセットは、「最大類似性セグメント(maximum similarity segments)」法に示されており、これはマッチングした残基に1、ミスマッチした残基に-1/3の値を用いるものである(残基は単一のヌクレオチドか単一のアミノ酸のいずれかである)(Waterman, Bull. Math. Biol. 46, 473-500 (1984))。挿入および欠失(indels)(x)は、
xk=1+k/3
(式中、kは所定の挿入または欠失における残基の数である(同上))としてウエートを与えられる(weighted)。
【0090】
例えば、18のアミノ酸置換と3アミノ酸の挿入を除いて42アミノ酸残基の配列と同一である配列は、下記式によって与えられるパーセント同一性を有するであろう:
[(1X42マッチ)-(1/3X18ミスマッチ)-(1+3/3挿入および欠失)]/42=81%同一性
【0091】
本発明の一つの好ましい態様において、分子の末端の切断は配列同一性を計算する際に考慮に入れない(すなわち、一つの分子が他の分子よりも長いなら、これら分子の重複している長さのみを配列同一性の分析に用いる);本発明の他の好ましい態様において、切断は欠失として数える。
【0092】
GLP-1ホモログはD-アミノ酸の形態を含んでいてよく、以下よりなる群から選ばれた分子と比較して、1またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失、逆位、または付加を有する分子であってよい:
・GLP-1(7-36)アミド
・GLP-1(7-37)
・リラグルチド
・エクセナチド(Byetta)
・アルブゴン(Albugon)
・CJC-1131
・zp-10-AVE0010
・BIM51077(Ipsen)
・LY315902
・LY307161
・S23521
【0093】
本発明の一つの好ましい態様において、GLP-1分子は、GLP-1(7-36)アミドと比較して、1またはそれ以上のアミノ酸の置換、逆位、付加または欠失を含むペプチドである。一つの態様において、置換、欠失、または付加の数は、20アミノ酸またはそれ以下、例えば、15アミノ酸またはそれ以下、例えば、10アミノ酸またはそれ以下、例えば、9アミノ酸またはそれ以下、例えば、8アミノ酸またはそれ以下、例えば、7アミノ酸またはそれ以下、例えば、6アミノ酸またはそれ以下、例えば、5アミノ酸またはそれ以下、例えば、4アミノ酸またはそれ以下、例えば、3アミノ酸またはそれ以下、例えば、2アミノ酸またはそれ以下(例えば、1)、またはこれら量の間のいずれかの数字である。本発明の一つの側面において、置換は、1またはそれ以上の保存的置換を含む。適当な保存的置換の例は上記に記載してある。
【0094】
本発明の使用および方法に適した他のGLP-1ホモログは、(1)配列番号1、2、3、4;および/または(2)それらの切断された配列に対して、50パーセントを超える配列同一性、好ましくは90パーセントを超える配列同一性(例えば、91%を超える配列同一性、例えば、92%を超える配列同一性、例えば、93%を超える配列同一性、例えば、94%を超える配列同一性、例えば、95%を超える配列同一性、例えば、96%を超える配列同一性、例えば、97%を超える配列同一性、例えば、98%を超える配列同一性、例えば、99%を超える配列同一性、例えば、99.5%を超える配列同一性)を有するペプチド配列である。本明細書において、配列同一性は、当該技術分野でよく知られた標準アルゴリズムを用いて2分子間で行う比較をいう。本発明のために配列同一性を計算するのに好ましいアルゴリズムは、上記に記載したSmith-Watermanアルゴリズムである。
【0095】
GLP-1ホモログはまた、ヒトGLP-1(7-37)と比較して1またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失、逆位、または付加を有する分子であってよく、D-アミノ酸の形態を含んでいてよい。
【0096】
本発明の他の態様において、配列番号1〜4などの本明細書において前もって決定した配列の該ホモログは、以下のように定義することができる:
i)ヒトGLP-1レセプターに選択的に結合することのできるアミノ酸配列を含むホモログ、および/または
ii)ヒトGLP-1に比べてGLP-1レセプターに対して実質的に同様または一層高い結合親和性を有するホモログ。
【0097】
他の好ましい態様において、GLP-1分子は、GLP-1レセプターに対して産生した抗体である。
【0098】
化学的に誘導体化したGLP-1分子
本発明において使用するのに適したGLP-1分子は、例えば、非天然アミノ酸残基(例えば、タウリン残基、ベータ-およびガンマ-アミノ酸残基およびD-アミノ酸残基)、C末端官能基の修飾、例えば、アミド、エステル、およびC末端ケトン修飾、およびN末端官能基の修飾、例えば、アシル化アミン、シッフ塩基、または例えばアミノ酸のピログルタミン酸に認められるような環化を有する、化学的に誘導体化または変化させたペプチドであってよいことが理解される。誘導体化分子の一つの例はリラグルチドである。
【0099】
保護したGLP-1分子
さらに、酵素のジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)が投与したGLP-1で観察される速やかなインビボ不活化の原因であるので[例えば、Mentlein, R.ら、Eur. J. Biochem., 214:829-835(1993)を参照]、DPPIVの活性から保護されたGLP-1分子の投与が幾つかの態様において好ましい。それゆえ、本発明の一つの好ましい態様において、DPP-IV保護したGLP-1分子を用いることができる。「DPP-IV保護したGLPs」とは、DPP-IVの作用に対して耐性であるGLP-1アナログをいう。これらには、8位に修飾したまたはDアミノ酸を有するアナログが含まれ、8位にGly、Val、Thr、Met、Ser、Cys、またはAspを有する生合成GLP-1アナログが含まれる。他のDPP-IV保護GLPsは、デスアミノHis誘導体を含む。好ましい態様は、以下のいずれかを含む:Gly8-GLP-1(7-36)NH2、Val8-GLP-1(7-37)OH、a-メチル-Ala8-GL1(7-36)NH2、およびGly8-Gln21-GLP-1(7-37)OH、またはそれらの薬理学的に許容しうる塩。
【0100】
GLP-1分子コンジュゲート
本発明のGLP-1分子はまた、血液成分にコンジュゲートしてGLP-1分子を安定化できるGLP-1化合物を生成すべく、共有結合を形成しうる反応性の基で修飾することもできる。適当な例は、WO03/103572(「修飾グルカゴン様ペプチド-1アナログ」)および米国特許出願第2004/0138100号(長期持続合成グルカゴン様ペプチド(GLP-1))に記載されている。
【0101】
それゆえ、本発明の一つの態様において、使用するGLP-1分子は、活性化ジスルフィド結合基またはS-スルホネートで修飾したGLP-1ペプチドである。
【0102】
本発明において使用するのに適した他のGLP-1分子としては、WO00/34331(「GLP-1のアナログ」)、およびWO01/98331(「グルカゴン様ペプチド-1アナログ」)に記載されているものが挙げられる(参照のため本明細書に引用する)。
【0103】
本発明において使用するのに適したさらなるGLP-分子は、WO00/37098(「グルカゴン様ペプチド-1の貯蔵安定製剤)に記載されている(参照のため本明細書に引用する)。
【0104】
本発明において使用するのに特に好ましいGLP-1分子:
本発明において使用するのに特に好ましいGLP-1分子は、以下のいずれかから選択される:
リラグルチド
リラグルチド(Arg(34)Lys(26)-(N-イプシロン-(ガンマ-Glu(N-アルファ-ヘキサデカノイル))-GLP-1(7-37)の化学構造を有する)。好ましくは、リラグルチドは皮下投与する。リラグルチドの好ましい投与量は、0.045mg、0.225mg、0.45mg、0.60mg、または0.75mg、例えば、0.6mgである。他の好ましい態様において、200μg/kgまでの投与量を、例えば、1日に2回、例えば、1.25-20μg/kg*d投与することができる。
【0105】
エクセナチド
エクセナチド(Amylin Corporation、J Biol Chem 1990;265:20259-62を参照)。エクセナチドは天然のGLP-1と同様の特性を示し、胃排出能、インスリン分泌、食物摂取、およびグルカゴン分泌を制御する。エクセナチドは、主としてそのDPP-IV-媒体不活化に対する耐性ゆえに天然のGLP-1よりも遙かに高い効力を有する。2位にアラニンを含むGLP-1とは対照的に、エクセンジン−4は2位にグリシンを有し、それゆえ、DPIVの基質ではなく、インビボで遙かに長いt1/2(半減期)を有する。本発明の方法において、エクセナチドは5μgまたは10μgの投与量で、好ましくは毎日投与するのが好ましい。
【0106】
アルブゴンおよびCJC-1131
アルブゴン(GlaxoSmithKline/Human Genome Sciences)およびCJC-1131(Conjuchem Inc.)は、アルブミンの長い循環半減期を利用して天然GLP-1の作用の短い持続時間を伸長した、GLP-1-アルブミンタンパク質である。CJC-1131は遊離CJC-1131ペプチドの皮下注射後にインビボでヒト血清アルブミンと共有結合を形成するヒトGLP-1アナログであるが、アルブゴンは、遙かに多量の単一組換えタンパク質のインビボ投与の前にイクスビボで生成される組換えGLP-1-アルブミンタンパク質である。
【0107】
アルブゴンは、icvおよび末梢の両投与後にマウスにおいて胃排出能を抑制し、食物摂取を抑制することが示されている(Diabetes. 2004 Sep;53(9):2492-500)。本発明の一つの好ましい態様において、アルブゴンは(好ましくは毎日)150-350μg/kgの投与量で投与する。
【0108】
CJC-1131は、分子のカルボキシ末端に反応性の化学リンカー(インビボ投与後にアルブミン(Cys34残基)への共有結合を可能にする)を有する、DPP-IVに耐性となるよう修飾したヒトGLP-1アナログである。アルブミンは、インビボで長い循環半減期を示すので、アルブミン-コンジュゲート医薬は、ヒト対象者におけるアルブミンの既知の代謝回転(約15-19日のt1/2を示すと評価されている)と一致して、持続した作用、および遅延したクリアランスを示すに違いない。
【0109】
CJC-1131は、インビトロおよびインビボのいずれにおいてもGLP-1レセプターに結合、活性化する能力を有し、正常なおよび糖尿病の齧歯類での研究は、CJC-1131がGLP-1-依存性の活性を示すことを示している(Diabetes. 2003 Mar;52(3):751-9)。本発明の一つの態様において、CJC-1131は1日当たり2.1-2.6μg/kgの投与量で投与するのが好ましい。本発明の他の好ましい態様において、CJC-1131は(好ましくは毎日)150-350μg/kgの投与量で投与するのが好ましい。
【0110】
本発明において使用するのに特に好ましい他のGLP-1分子としては、これらに限られるものではないが、以下のものが挙げられる:zp-10(例えば、J Pharmacol Exp Ther. 2003 Nov;307(2):490-6を参照)、BIM51077(Ipsen)、LY315902(Regul Pept. 2002 Jun 15;106(1-3):89-95)、LY307161(Eli Lilly)、S23521(J Endocrinol. 2005 Mar;184(3):505-13)。
【0111】
GLP-1分子の機能的活性
本明細書に記載する本発明の方法および使用において有用なGLP-1分子は、GLP-1レセプターにおいて活性である。GLP-1分子は該レセプターに結合することができ、好ましくは、レセプター活性を刺激することができる。
【0112】
レセプター活性は、レセプターの細胞内コンホメーションにおける、G-タンパク質結合活性における、および/または細胞内メッセンジャーにおける変化を検出するなどの種々の技術を用いて測定することができる。
【0113】
GLP-1分子がGLP-1レセプターを活性化する能力の一つの簡単な測定法は、そのEC50、すなわち、化合物の最大作用の半分まで該化合物がレセプターのシグナル伝達を活性化することができる投与量を測定することである。レセプターは、一次細胞培養、例えば下垂体細胞上で内生的に発現することもできるし、またはGLP-1レセプターでトランスフェクションした細胞上で異種的に発現することもできる。アッセイのタイプに応じて、全細胞アッセイまたはこれら細胞型のいずれかから調製した膜を用いたアッセイを用いることができる。
【0114】
GLP-1の生物学的活性は、標準法により、一般にレセプター-結合活性スクリーニング法(その表面にGLP-1レセプターを発現する適当な細胞、例えば、RINmSF細胞やINS-1細胞などのインスリノーマ細胞株を用意することを含む)により決定することができる。例えば、Mojsov, Int J Pept Protein Res 40, 333-43 (1992)およびEPO708170A2をも参照のこと。GLP-1レセプターを発現するように操作した細胞を用いることもできる。ラジオイムノアッセイ法を用いて膜へのトレーサーの特異的結合を測定することに加えて、cAMP活性またはグルコース依存性のインスリン産生を測定することもできる。一つの方法において、GLP-1レセプターをコードするポリヌクレオチドを用いて細胞をトランスフェクションし、それによりGLP-1レセプタータンパク質を発現させる。それゆえ、例えば、これら方法は、そのような細胞をスクリーニングすべき化合物に接触させ、ついで、そのような化合物がシグナルを生成するか否か、すなわち、レセプターを活性化するか否かを決定することによって、レセプターアゴニストをスクリーニングするのに用いることができる。
【0115】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を利用して、本明細書に記載の方法に使用するためのGLP-1様分子を検出、精製および同定することができる。ABGA1178などの抗体は、完全なプロセシングされていないGLP-1(1-37)またはN-末端を切断されたGLP-1(7-37)または(7-36)アミドを検出する。他の抗体は、前駆体分子のC-末端の最末端(the very end)を検出し、生物学的に活性な切断されたペプチド、すなわち、GLP-1(7-37)アミドの量を引き算により計算することを可能にする手順となる(Orskovら、Diabetes, 42, 658-661 (1993); Orskovら、J. Clin. Invest. 87, 415-423 (1991))。
【0116】
他のスクリーニング法は、レセプター活性化によって引き起こされた細胞外のpHやイオンの変化を測定するシステムにおいて、GLP-1レセプターを発現する細胞、例えば、トランスフェクションしたCHO細胞の使用を含む。例えば、潜在的アゴニストをGLP-1タンパク質を発現する細胞と接触させ、第二メッセンジャー応答、例えば、シグナル伝達またはイオンもしくはpHの変化を測定して該潜在的アゴニストが有効であるか否かを決定することができる。
【0117】
一つの態様において、GLP-1レセプターへのGLP-1分子の結合を上記で記載したアッセイを使用することで測定することができる。
【0118】
本発明によるGLP-1分子は、上記で記載したアッセイを用いた決定により、ヒトGLP-1と比較して少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%機能的に活性であるか、および/または約1,000よりも大きな、約100よりも大きな、または約50よりも大きな、または約10よりも大きなEC50を有するのが好ましい。「より大きな」とは効力をさし、それゆえ、結合抑制を達成するのにより少ない量が必要とされることを示している。
【0119】
本発明の一つの態様において、化合物は500nM未満のGLP-1レセプターに対する効力(EC50)を有する。他の態様において、化合物は100nM未満、例えば、80nM未満、例えば、60nM未満、例えば、40nM未満、例えば、20nM未満、例えば、10nM未満、例えば、5nM未満、例えば、1nM未満、例えば、0.5nM未満、例えば、0.1nM未満、例えば、0.05nM未満、例えば、0.01nM未満のGLP-1レセプターに対する効力(EC50)を有する。
【0120】
さらなる態様において、化合物の解離定数(Kd)は、500nM未満である。さらに別の態様において、リガンドの解離定数(Kd)は、100nM未満、例えば、80nM未満、例えば、60nM未満、例えば、40nM未満、例えば、20nM未満、例えば、10nM未満、例えば、5nM未満、例えば、1nM未満、例えば、0.5nM未満、例えば、0.1nM未満、例えば、0.05nM未満、例えば、0.01nM未満である。
【0121】
結合アッセイは、種々の環境に存在する組換えにより製造したレセプターポリペプチドを用いて行うことができる。そのような環境は、例えば、組換え核酸または天然に存在する核酸から発現したレセプターポリペプチドを含む細胞抽出物および精製した細胞抽出物を含み、また、例えば、組換え手段によりまたは種々の環境に導入した天然に存在する核酸から製造した精製GLP-1レセプターの使用をも含む。
【0122】
組換え発現したGLP-1レセプターを使用することは、定められた細胞系で該レセプターを発現させることができることにより、該レセプターでの化合物の応答を他のレセプターでの応答から一層容易に識別できるようにすることなどの幾つかの利点を提供する。例えば、通常は該レセプターを発現することのないHEK293、COS7、およびCHOなどの細胞株で該レセプターを発現させることができ、その際、発現ベクターを有しない同細胞株は、対照として働きうる。
【0123】
薬理学的に許容しうるGLP-1塩
本明細書に記載するいずれのGLP-1分子の薬理学的に許容しうる塩の形態を、本発明の使用および方法に用いることができる。酸付加塩を形成するのに通常用いられる酸は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸など、および有機酸、例えば、pトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、pブロモフェニルスルホン酸、カルボン酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸などである。
【0124】
そのような塩の例としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、クロライド、ブロマイド、ヨーダイド、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマール酸塩、リンゴ酸塩、ブチン-1,4-ジオン酸塩、ヘキシン-1,6-ジオン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ガンマ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩などが挙げられる。好ましい酸付加塩は、無機酸、例えば、塩酸や臭化水素酸など、とりわけ塩酸で形成されるものである。
【0125】
塩基付加塩としては、無機塩基から形成されるもの、例えば、アンモニウムまたはアルカリまたはアルカリ土類金属の水素化物、炭酸塩、重炭酸塩などが挙げられる。それゆえ、本発明の塩を調製するうえで有用なそのような塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。塩の形態が特に好ましい。
【0126】
本発明において使用するのに適したGLP-1分子は、本発明において使用する前に1またはそれ以上の賦形剤とともに製剤化することができる。例えば、本発明において使用する活性化合物は、よく知られた方法により二価の金属カチオンとの錯体を形成させることができる。そのような金属カチオンとしては、例えば、Zn++、Mn++、Fe++、Co++、Cd++、Ni++などが挙げられる。
【0127】
任意に、本発明に使用する活性化合物は、薬理学的に許容しうる緩衝液と混合することができ、pHを調節して許容しうる安定性および非経口投与に許容しうるpHを提供することができる。
【0128】
任意に、1またはそれ以上の薬理学的に許容しうる抗菌剤を添加することができる。メタ-クレゾールおよびフェノールは好ましい薬理学的に許容しうる抗菌剤である。1またはそれ以上の薬理学的に許容しうる塩を添加してイオン強度または浸透圧を調節することができる。1またはそれ以上の賦形剤を添加して製剤の等張性をさらに調節することができる。グリセリンは等張調節賦形剤の一例である。
【0129】
本発明において使用するGLP-1分子の製造
本発明での使用に適したGLP-1分子は、当業者に知られたいずれの適当な方法を用いても製造することができる。
【0130】
例えば、ペプチドである本発明のGLP-1分子は、固相化学ペプチド合成により製造できる。そのようなペプチドはまた、例えばSambrook & Maniatisに記載されている標準法を用いた通常の組換え法によっても製造することができる。本明細書において使用する「組換え」とは、遺伝子が、本明細書に記載するGLP-1分子をコードするポリヌクレオチドを含むように遺伝的に改変した組換え(例えば、微生物または哺乳動物)発現系に由来することを意味する。GLP-1様ペプチドは、組換え細胞培養から、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む方法(これらに限られるものではない)により回収および精製することができる。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を最終的な精製工程に用いることができる。本発明のGLP-1分子ペプチドは、天然の精製した生成物または化学合成法の生成物であってよいし、あるいは原核生物または真核生物宿主(例えば、培養またはインビボにて、細菌、酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物細胞によって)から遺伝子組換えにより製造したものであってもよい。組換え製造法に用いた宿主に依存して、本発明のポリペプチドは一般にグリコシル化されていないが、グリコシル化されていてもよい。
【0131】
GLP-1分子の製造の他の適当な方法は、WO03/046158(「組換えヒトグルカゴン様ペプチド-1(7-37)の製造方法」)に記載された組換え法を含む(その内容を参照のため本明細書に引用する)。
【0132】
GLP-1分子はまた、例えば、WO01/55213(「グルカゴン様ペプチド1化合物の可溶化法」)に記載された方法のいずれかを用いて可溶化することもできる(その内容を参照のため本明細書に引用する)。
【0133】
医薬製剤
本発明の化合物または塩は未処理の化学物質として投与することも可能ではあるが、本明細書に記載の使用または方法のいずれかに使用するため、医薬組成物の形態で提供すれるのが好ましい。
【0134】
それゆえ、本発明の一つの態様において、GLP-1分子は、治療学的有効量のGLP-1分子、薬理学的に許容しうる保存剤、および浸透調節剤(tonicity modifier)を含む貯蔵安定な医薬製剤に製剤化する。他の好ましい態様において、製剤はBrij-35などの界面活性剤を含む。
【0135】
一つの態様において、本発明は、少なくとも2つの異なるGLP-1分子の混合物、例えば、即時的作用と持続的作用との両者を得るために短期作用のGLP-1分子タイプと長期作用のGLP-1分子タイプとの混合物を含む医薬組成物に関する。理論に拘束されるわけではないが、そのような混合物は血漿中で一層長い半減期を有するであろうと思われる。
【0136】
医薬組成物は、GLP-1分子または薬理学的に許容しうるその塩および薬理学的に許容しうる担体、ビヒクルおよび/または賦形剤を含んでいてよく、該組成物はさらに任意に輸送分子を含んでいてよい。
【0137】
輸送分子
輸送分子は、GLP-1分子の半減期を増大させるために加える。輸送分子は、本発明による化合物中に導入するか固定させる(anchored)ことで作用する。当業者に知られた適当ないかなる輸送分子をも用いることができる。好ましい例は、リポソーム、ミセル、および/またはミクロスフェアである。
【0138】
通常のリポソームは、典型的にリン脂質(中性または負に荷電)および/またはコレステロールからなる。リポソームは、水性の区画を囲む脂質二重層に基づく小胞構造である。リポソームは、サイズ、脂質組成、表面電荷およびリン脂質二重層の数および流動性などの物理化学的性質が異なっていてよい。リポソーム形成に最も頻繁に使用される脂質は以下のものである:1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DMPE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-リン酸(一ナトリウム塩)(DMPA)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-リン酸(一ナトリウム塩)(DPPA)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-リン酸(一ナトリウム塩)(DOPA)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)](ナトリウム塩)(DMPG)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)](ナトリウム塩)(DPPG)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)](ナトリウム塩)(DOPG)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-L-セリン](ナトリウム塩)(DMPS)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-L-セリン)(ナトリウム塩)(DPPS)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-L-セリン](ナトリウム塩)(DOPS)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(グルタリル)(ナトリウム塩)および1,1',2,2'-テトラミリストイルカルジオリピン(アンモニウム塩)。他の脂質と組み合わせた、例えば、コレステロールおよび/またはホスファチジルコリンと組み合わせたDPPCからなる調合物が好ましい。
【0139】
長期循環リポソームは、小胞壁の透過性が増大する体内部位で管外遊出できることを特徴とする。長期循環リポソームを生成するための最も普通の方法は、親水性ポリマーであるポリエチレングリコール(PEG)をリポソームの外表面に共有結合させることである。幾つかの好ましい脂質は、以下のものである:1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-5000](アンモニウム塩)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(塩酸塩)(DOTAP)。
【0140】
リポソームに応用可能な脂質は、Avanti, Polar lipids, Inc, Alabaster, ALによって提供される。さらに、リポソーム懸濁液は、フリーラジカルおよび貯蔵時の脂質過酸化ダメージに対して脂質を保護する脂質保護剤を含んでいてよい。親油性のフリーラジカルクエンチ剤(quenchers)、例えば、アルファ-トコフェロール、および水溶性の鉄特異的キレート化剤、例えば、フェリオキシアニン(ferrioxianine)が好ましい。
【0141】
例えば、Szokaら、Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:467 (1980)、米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号および同第4,837,028号(これらすべてを参照のため本明細書に引用する)に記載されているように、様々な方法をリポソームの調製に利用することができる。他の方法は、不均一なサイズの多重ラメラ小胞を生成する。この方法では、小胞形成脂質を適当な有機溶媒または溶媒系に溶解し、真空下または不活性ガス下で乾燥させて薄い脂質フィルムを生成させる。所望ならフィルムを第三級ブタノールなどの適当な溶媒に再溶解し、ついで凍結乾燥してより均一な液体混合物(より容易に水和した粉末様形状である)を生成することができる。このフィルムを標的医薬(targeted drug)または標的成分(targeting component)で覆い、典型的に15-60分間攪拌して水和させる。得られる多重ラメラ小胞のサイズ分布は、脂質をより激しい攪拌条件で水和することにより、またはデオキシコール酸などの可溶化界面活性剤を添加することにより、より小さいサイズの方へシフトさせることができる。
【0142】
ミセルは、水溶液中の界面活性剤(疎水性の部分および1またはそれ以上のイオン性その他の強い親水性基を含む分子)により生成される。
【0143】
当業者によく知られた通常の界面活性剤を本発明のミセルに使用することができる。適当な界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オクタオキシエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクトキシノール9およびPLURONIC F-127(Wyandotte Chemicals Corp.)が挙げられる。好ましい界面活性剤は、TWEEN-80、PLURONIC F-68、n-オクチル-ベータ-D-グルコピラノシドなどの静脈内注射に適合した非イオン性のポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレン界面活性剤である。さらに、リポソーム生成での使用に際して記載したものなどのリン脂質もミセル生成に使用することができる。
【0144】
緩衝液および他の賦形剤
GLP-1分子は、それ自体、緩衝能を示す。しかしながら、長期にわたる組成物のpHおよび安定性を維持するには、TRISなどの緩衝液を加えるのが好ましい。一つの態様において、製剤は、約8.2〜約8.8、例えば、約8.3〜約8.6、例えば、約8.4〜約8.5のpHを有する。pHに関して本明細書で用いる際に「約」なる語は、±0.1のpH単位を意味する。それゆえ、「約8.5」のpHは、8.4〜8.6のpHを示す。使用する緩衝液は、例えば、トロメタン(tromethane)(TRIS)、およびリシンやヒドロキシリシンなどのアミノ酸ベースの緩衝液である。「TRIS」の語は、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(当該技術分野でトロメタン、トリメチロールアミノメタンまたはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとしても知られる)、および薬理学的に許容しうるその塩をいう。遊離の塩基および塩酸塩の形態は、TRISの2つの一般的な形態である。
【0145】
本発明の製剤において使用するGLP-1分子の濃度は、一つの好ましい態様において、約0.30〜約0.65mg/mlのGLP-1分子、例えば、約0.5mg/mlのGLP-1分子である。
【0146】
GLP-1分子はまた、例えば、m-クレゾール、フェノール、ベンジルアルコール、またはメチルパラベンなどのフェノール性保存剤などの保存剤とともに製剤化することもできる。保存剤の一つの好ましい量は、約2mg/ml〜約6mg/mlである。しかしながら、当業者であれば、有効な保存に必要な保存剤の濃度が、使用した保存剤、製剤のpH、および保存剤に結合または封鎖する物質もまた存在しているか否かに依存することを知っている。好ましくは、m-クレゾールを製剤中に保存剤として用いる。
【0147】
緩衝液および保存剤が製剤中に含まれるのが最も好ましいが、浸透調節剤および/または界面活性剤並びに注射用蒸留水などの他のさらなる賦形剤も含まれていてよい。浸透調節剤は、投与経路に依存して製剤と体液とをほぼ等張にするために含まれる。浸透調節剤の濃度は、ペプチド製剤中の浸透調節剤の既知の濃度にしたがう。本発明に使用する好ましい浸透調節剤はグリセリンである。
【0148】
投与計画
本発明の様々な化合物および方法に適した投与計画は、投与する患者のタイプ;患者の年齢、体重、性別および健康状態;投与経路;患者の腎臓および肝臓の機能;所望の効果;および使用した特定の医薬を含む、当該技術分野でよく知られた因子を考慮に入れて決定するのが好ましい。
【0149】
毒性なしに効力を生じる範囲内の医薬の濃度を達成するうえでの最適の正確さには、標的部位への医薬のアベイラビリティーの動力学に基づく投与計画が必要である。これには、医薬の分布、平衡、および排除の考慮が含まれる。
【0150】
本発明に従って用いられる化合物の典型的な用量は、体重当たり1kg当たり10ng〜10mgのGLP-1分子に等価な濃度である。本明細書において濃度および量は、ヒトGLP-1の等価量(equivalents of amount)として与えられる。等価は、上記「Functionality」に記載したのと同様にして試験することができる。
【0151】
好ましい態様において、医薬は、体重当たり1kg当たり0.1μg〜1mgのヒトGLP-1、例えば、体重当たり1kg当たり0.5μg〜0.5mgのヒトGLP-1、例えば、体重当たり1kg当たり1.0μg〜0.1mgのヒトGLP-1、例えば、体重当たり1kg当たり1.0μg〜50μgのヒトGLP-1、例えば、体重当たり1kg当たり1.0μg〜10μgのヒトGLP-1に等価な濃度で投与する。
【0152】
本発明の一つの態様において、患者において胆道ジスキネジーおよび/または胆道疼痛を治療するのに用いる単位剤形は、本明細書に記載したGLP-1分子のいずれかおよび薬理学的に適した賦形剤を含む。好ましくは、投与量単位は、約0.4〜2.4ピコモルkg-1-1の範囲である。さらに好ましくは、投与量単位は、約0.8〜1.2ピコモルkg-1-1の範囲である。本発明の目的のためには、「約」の語は±10%として定義される。例えば、約0.4〜2.4ピコモルkg-1-1は、0.196〜2.64ピコモルkg-1-1を意味する。
【0153】
本発明の組成物は、経口または非経口投与により全身または局所投与として用いることができる。あるいは、組成物は静脈内または皮下注射として適用してよい。好ましくは、投与量単位は、約0.4〜2.4ピコモルkg-1-1の範囲である。さらに好ましくは、投与量単位は、約0.8〜1.2ピコモルkg-1-1の範囲である。
【0154】
固形製剤
GLP-1分子は、錠剤、製剤、顆粒剤などを含む、経口投与のための固形組成物として調製することができる。そのような固形組成物では、1またはそれ以上の活性成分を少なくとも1の不活性な希釈剤、例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム(magnesium aluminate metasilicate)などと混合してよい。通常の操作に従えば、組成物は、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;繊維状グルコン酸カルシウムなどの崩壊剤;シクロデキストリン、例えば、アルファ、ベータまたはガンマ−シクロデキストリンなどの安定化剤;エーテル化したシクロデキストリン、例えば、ジメチル−アルファ−、ジメチル−ベータ−、トリメチル−ベータ−、またはヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン;分枝鎖シクロデキストリン、例えば、グルコシル−、マルトシル−シクロデキストリン;ホルミル化シクロデキストリン、例えば、硫黄を含むシクロデキストリン;リン脂質などを含んでいてよい。上記シクロデキストリンを用いると、シクロデキストリンによる包接化合物が形成されて安定性を促進させる。別法として、リン脂質を用いてリポソームを形成させ、安定性の促進という結果となる。
【0155】
錠剤または丸剤は、必要に応じて胃または腸に可溶なフィルム、例えば、糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどでコーティングしてよい。さらに、錠剤または丸剤は、ゼラチンなどの吸収性の物質でカプセルとして形成してもよい。
【0156】
経口投与用医薬組成物は、薬理学的許容しうるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシル並びに一般に用いられる不活性な希釈剤を含んでいてよい。そのような組成物は、不活性な希釈剤に加えて、滑沢剤や懸濁化剤などのアジュバント、甘味剤、香味剤、保存剤、可溶化剤、抗酸化剤などを含んでいてよい。添加剤の詳細は、製薬分野のいずれの一般教科書に記載のものから選択してよい。そのような液体組成物は、ソフトカプセル内に直接収容してよい。
【0157】
本発明による例えば、座剤、浣腸剤などの非経口投与用の液剤は、滅菌した水性および非水性溶液、懸濁液、エマルジョン、界面活性剤などを含んでいてよい。水性溶液および懸濁液は、例えば、蒸留水、生理食塩水およびリンゲル液を含んでいてよい。
【0158】
非水性溶液および懸濁液は、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、脂肪酸トリグリセリド、オリーブ油などの植物油、エタノールなどのアルコール、ポリソルベートなどを含んでいる。そのような組成物は、例えば、保存剤、湿潤剤、懸濁化剤、分散剤、抗酸化剤などを含んでいてよい。
【0159】
投与方法
投与は、通常の医師によって有効であることが知られているいかなる経路によるものであってもよい。非経口投与が好ましい。非経口投与は、一般に医学文献において、滅菌注射器または注入ポンプなどの他のメカニカルデバイスによる剤型の体内への注射として理解されている。非経口投与としては、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、髄腔内、鞘内(intrathecal)、鼻内、肺内、口腔内、動脈内、脳室内、動脈内、くも膜下、および硬膜外が挙げられる。本発明において使用する化合物の静脈内、筋肉内および皮下の投与経路がさらに好ましい。本発明において使用する化合物の静脈内および皮下の投与経路がさらに一層好ましい。非経口投与では、本発明において使用する化合物を適当なpHで蒸留水と混合するのが好ましい。
【0160】
作用時間を調節すべく、別の製薬法を用いてもよい。徐放製剤は、本発明において使用する活性な化合物と複合体を形成しまたは該化合物を吸収するポリマーの使用によって達成できる。
【0161】
作用持続時間の伸長は、放出を長引かせるために、適当な巨大分子、例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレンビニルアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはプロタミンサルフェートを選択することによって、および巨大分子の濃度並びに導入法を選択することによって、得ることができる。徐放製剤による作用持続時間を伸長するための他の可能な方法は、本発明において使用する活性な化合物をポリマー性の物質、例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)またはエチレンビニルアセテートコポリマーの粒子中に導入することである。あるいは、化合物をこれらポリマー性粒子中に導入する代わりに、例えば、コアセルベーション法によりまたは界面重合法によって調製したマイクロカプセル(それぞれ、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル)中に、またはコロイド状のドラッグデリバリーシステム、例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル中に、またはマクロエマルジョン中に、本発明において使用する化合物を閉じこめることも可能である。そのような教示は、Remington's Pharmaceutical Sciences (1980)に開示されている。
【0162】
一つの好ましい投与経路は、ペン注射システムであり、その場合、例えば、1.5mlのカートリッジまたは3.0mlのカートリッジを用いる。
【0163】
鼻内/エアゾル投与
本発明の化合物は、鼻内投与用にも製剤化することができる。水剤または懸濁剤を、通常の手段、例えば、スポイト、ピペットまたは噴霧器を用いて鼻腔内に直接投与する。組成物は、単回または多回投与の形態で提供されてよい。スポイトまたはピペットでの後者の場合は、このことは患者が適当な前もって決定した容量の水剤または懸濁剤を投与することにより達成できる。噴霧器の場合、このことは、例えば、計量噴霧ポンプ(metering atomizing spray pump)により達成できる。
【0164】
本発明の化合物は、とりわけ呼吸器管への、そして鼻内投与を含むエアゾル投与に製剤化することができる。化合物は一般に、例えば、5ミクロンまたはそれ以下のオーダーの小さな粒径を有するであろう。そのような粒径は、当該技術分野で知られた手段により、例えば、微粉化処理(micronization)により得ることができる。活性成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、またはジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適当なガスなどの適当な高圧ガスで加圧パックして提供される。エアゾル剤はまた、レシチンなどの界面活性剤を含んでいるのが都合がよい。薬剤の用量は、計量バルブ(metered valve)で調節する。あるいは、活性成分は、乾燥粉末、例えば、ラクトース、デンプン、デンプン誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドン(PVP)などの適当な粉末基剤中の化合物の粉末混合物の形態で提供されてよい。粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成するであろう。粉末組成物は、単位投与剤型、例えば、ゼラチンのカプセルまたはカートリッジまたはブリスターパック(これより粉末を吸入器によって投与する)にて提供されてよい。
【0165】
エアゾル剤により投与する組成物は、例えば、ベンジルアルコールその他の適当な保存剤、バイオアベイラビリティーを増進するための吸収促進剤を用い、フルオロカーボンを用い、および/または他の可溶化剤または分散剤を用い、食塩水中の溶液として調製することができる。
【0166】
経口投与用組成物
経口投与後も個体において生物学的に活性であることのできるGLP-1分子タイプ(例えば、小分子および短いペプチドなど)は、広範囲の経口投与剤型に製剤化することができる。医薬組成物および剤型は、活性成分として、本発明の化合物またはその薬理学的に許容しうる塩またはその結晶形を含む。薬理学的に許容しうる担体は、固体または液体のいずれであってもよい。固体製剤としては、粉末薬、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、および分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、湿潤剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化物質としても作用する1またはそれ以上の物質であってよい。
【0167】
好ましくは、組成は、約0.5重量%〜75重量%の本発明の化合物を含み、残りが適当な医薬賦形剤であろう。経口投与のためには、そのような賦形剤としては、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、ゼラチン、ショ糖、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0168】
粉末薬では、担体は、細粒(finely divided)活性成分と混合した細粒固体である。錠剤では、活性成分を必要な結合能を有する担体と適当な比率で混合し、所望の形状およびサイズに充填する(compacted)。粉末薬および錠剤は、1-約70%の活性成分を含むのが好ましい。適当な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点蝋、カカオバターなどである。「製剤」なる語は、担体としてのカプセル化物質(encapsulating material)とともに活性な化合物を含み、担体とともにまたは担体なしで活性な成分が担体(活性な成分と結合している)によって囲まれているカプセル剤を提供する組成物を包含する。同様に、カシェ剤およびトローチも含まれる。錠剤、粉末薬、カプセル剤、丸薬、カシェ剤、およびトローチは、固形製剤として経口投与に適している。
【0169】
本発明による滴剤は、滅菌または非滅菌の水性または油性の溶液または懸濁液を含んでいてよく、適当な水性溶液中に活性成分を溶解することによって調製でき、任意に殺菌剤および/または殺真菌剤および/または他の適当な保存剤を含んでいてよく、任意に界面活性剤を含んでいてよい。ついで、得られた溶液を濾過により清澄化し、適当な容器に移し、ついで該容器を密封し、オートクレーブまたは98-100℃で半時間維持することにより滅菌する。あるいは、溶液を濾過し、容器を無菌的に移すことによっても滅菌することによっても滅菌することができる。滴剤中に含めるのに適した殺菌剤および殺真菌剤の例は、硝酸もしくは酢酸フェニル水銀(0.002%)、ベンザルコニウムクロライド(0.01%)および酢酸クロルヘキシジン(chlorhexidine acetate)(0.01%)である。油状溶液の調製に適した溶媒としては、グリセリン、希釈アルコールおよびプロピレングリコールが挙げられる。
【0170】
また、使用の直前に液状形態の製剤に変換することを意図した固形製剤もまた含まれる。そのような液状形態としては、液剤、懸濁液、および乳剤が挙げられる。これら製剤は、活性成分に加えて、着色剤、香味剤、安定化剤、緩衝剤、人造および天然の甘味剤、分散剤、粘稠化剤、可溶化剤などを含んでいてよい。
【0171】
経口投与に適した他の形態としては、乳剤、シロップ、エリキシル水性溶液、水性懸濁液、練り歯磨き(toothpaste)、ゲルデントリフリス(gel dentrifrice)、チューインガム(chewing gum)を含む液状形態の製剤、または使用の直前に液状形態の製剤に変換することを意図した固形製剤が挙げられる。乳剤は、水性プロピレングリコール溶液中、溶液で調製でき、またはレシチン、ソルビタンモノオレエートまたはアラビアゴムなどの乳化剤を含んでいてよい。水性溶液は、活性成分を水中に溶解し、適当な着色剤、香味剤、安定化剤および粘稠化剤を添加することにより調製することができる。水性懸濁液は、粘性の物質、例えば、天然もしくは合成のゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムその他のよく知られた懸濁化剤とともに、細粒活性成分を水中に分散させることにより調製することができる。固形製剤としては、液剤、懸濁液、および乳剤が挙げられ、活性成分に加えて、着色剤、香味剤、安定化剤、緩衝剤、人造および天然の甘味剤、分散剤、粘稠化剤、可溶化剤などを含んでいてよい。
【0172】
非経口投与用組成物
本発明の化合物は、非経口投与用(例えば、注射により、例えば、ボーラス注射や連続注入)に製剤化することができ、アンプル、前もって充填した注射器、小容量浸剤中の単位投与剤型にて、または多回投与密封容器中、保存剤を添加して提供することができる。組成物は、懸濁液、溶液、または油性または水性ビヒクル中の乳剤、例えば、水性ポリエチレングリコール中の溶液などの形態をとってよい。油性または非水性の担体、希釈液、溶媒またはビヒクルの例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、および注射できる有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられ、保存剤、湿潤剤、乳化もしくは懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤用剤を含んでいてよい。あるいは、活性成分は、滅菌固体の無菌的な単離によって、または使用前に適当なビヒクル、例えば、滅菌した発熱性物質不含の水で再構成するための溶液からの凍結乾燥によって得られる、粉末の形状であってよい。水性溶液は必要なら適切に緩衝すべきであり、液体希釈液をまず十分な食塩水またはグルコースと等張にする。水性溶液は、とりわけ、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に適している。使用する滅菌水性媒体はすべて当業者に知られた標準法により容易に利用できる。
【0173】
グレリンまたはグレリン様化合物または薬理学的に許容しうるその塩(例えば、抗原性エピトープおよびプロテアーゼインヒビター)は、水または食塩水中で調製することができ、非毒性の界面活性剤と任意に混合することができる。静脈内または動脈内投与用の組成物はまた、滅菌水性溶液(緩衝液、リポソーム、希釈液および他の適当な添加剤をも含んでいてよい)を含んでいてよい。
【0174】
非経口組成物に有用な油としては、石油、動物油、植物油、または合成油が挙げられる。そのような組成物において有用な油の特別の例としては、落花生油、ダイズ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ワセリン油、および鉱油が挙げられる。非経口組成物に使用するのに適した脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルは、適当な脂肪酸エステルの例である。
【0175】
非経口組成物に使用するのに適した石鹸としては、脂肪酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、およびトリエタノールアミン塩が挙げられ、適当な界面活性剤としては、(a)陽イオン性界面活性剤、例えば、ハロゲン化ジメチルジアルキルアンモニウム、およびハロゲン化アルキルピリジニウム;(b)陰イオン性界面活性剤、例えば、アルキル、アリール、およびオレフィンスルホネート、アルキル、オレフィン、エーテル、およびモノグリセリドサルフェート、およびスルホスクシネート、(c)非イオン性界面活性剤、例えば、脂肪酸アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、およびポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマー、(d)両親媒性界面活性剤、例えば、アルキル-ベータ-アミノプロピオネート、および2-アルキル-イミダゾリン第四級アンモニウム塩、および(e)これらの混合物が挙げられる。
【0176】
非経口組成物は、典型的に、溶液中に約0.5〜約25重量%の活性成分を含むであろう。保存剤および緩衝剤を用いてよい。注射部位での刺激を最小にしまたは除くため、そのような組成物は、約12〜約17の親水親油バランス(HLB)を有する1またはそれ以上の非イオン性界面活性剤を含んでいてよい。そのような組成物中の界面活性剤の量は、典型的に、約5〜約15重量%の範囲であろう。適当な界面活性剤としては、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ソルビタンモノオレエートおよび疎水性塩基とのエチレンオキシドの高分子量付加物(プロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合により生成)が挙げられる。非経口組成物は、アンプルおよびバイアルなどの単回投与または多回投与密封容器中で提供することができ、使用の直前に注射のための滅菌液体賦形剤、例えば、水の添加のみを要する凍結乾燥状態で貯蔵することができる。即座(extemporaneous)注射溶液および懸濁液は、上記で記載した種類の滅菌粉末薬、顆粒剤、および錠剤から調製することができる。
【0177】
注射または注入に適した医薬剤型としては、リポソーム中にカプセル包(encapsulation)することにより投与に適合させた活性成分を含む滅菌水性溶液または分散液を挙げることができる。すべての場合において、最終的な剤型は、製造および貯蔵の条件下で、滅菌され、液体で安定でなくてはならない。
【0178】
滅菌注射液は、濾過滅菌後、必要に応じて上記で列挙した様々な他の成分とともに、適当な溶媒中に必要量のグレリンまたはグレリン様化合物またはその薬理学的に許容しうる塩を配合することにより調製する。
【0179】
局所投与用組成物
本発明の化合物は、局所的に投与することもできる。局所投与用の領域としては、皮膚表面および直腸、鼻、口、および喉の粘膜組織が挙げられる。皮膚または粘膜経由の局所投与用組成物は、腫脹や発赤などの刺激の徴候を与えてはならない。
【0180】
局所組成物は、局所投与用に適合した薬理学的に許容しうる担体を含む。それゆえ、該組成物は、例えば、懸濁剤、液剤、軟膏、ローション剤、クリーム剤、フォーム剤(foam)、エアゾル剤、噴霧剤、坐剤、インプラント、吸入剤、錠剤、カプセル剤、乾燥粉末薬、シロップ、バルム剤(balm)またはトローチの形態をとってよい。そのような組成物を調製する方法は、製薬工業においてよく知られている。
【0181】
本発明の化合物は、表皮への局所投与用に、軟膏、クリーム剤またはローション剤として、または経皮貼付剤として製剤化することができる。軟膏およびクリーム剤は、例えば、水性または油性の基剤を用い、適当な粘稠化剤および/またはゲル化剤を添加して製剤化することができる。ローション剤は、水性または油性の基剤を用いて製剤化することができ、一般に、1またはそれ以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、粘稠化剤、または着色剤をも含んでいるであろう。口中の局所投与に適した組成物としては、香味基剤、通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガント中に活性剤を含むトローチ;ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴムなどの不活性な基剤中に活性成分を含むパステル剤;および適当な液体担体中に活性成分を含む口内洗浄剤が挙げられる。
【0182】
本発明によるクリーム剤、軟膏またはパスタ剤は、外用のための活性成分の半固形組成物である。これらは、細粒または粉末形状の活性成分を、単独かまたは水性もしくは非水性液体中の溶液または懸濁液にて、適当な機械の助けを借りて脂肪性または非脂肪性の基剤と混合することにより調製することができる。基剤は、炭化水素、例えば、ハード、ソフトもしくは液状パラフィン、グリセリン、蜜蝋、金属石鹸;漿剤;天然由来の油、例えば、扁桃油、トウモロコシ油、落花生油、ひまし油またはオリーブ油;羊毛脂またはその誘導体または脂肪酸、例えば、ステアリン酸またはオレイン酸を、アルコール、例えば、プロピレングリコールまたはマクロゴールとともに含んでいてよい。組成物は、陰イオン性、陽イオン性または非イオン性界面活性剤などの界面活性剤、例えば、ソルビタンエステルまたはそのポリオキシエチレン誘導体を配合してよい。懸濁化剤、例えば、天然ゴム(natural gums)、セルロース誘導体または無機材料、例えば、シリカ(silicaceous silicas)、および他の成分、例えば、ラノリンも含まれていてよい。
【0183】
本発明によるローション剤は、皮膚または眼に適用するのに適したものを含む。眼用ローション剤は、任意に殺菌剤を含む滅菌水性溶液を含み、滴剤の調製と同様の方法により調製できる。皮膚に適用するローション剤またはリニメント剤はまた、乾燥を早め皮膚を清涼にする薬剤、例えば、アルコールまたはアセトン、および/または保湿剤、例えば、グリセリンまたはひまし油や落花生油などの油をも含んでいてよい。
【0184】
本明細書に記載する医薬−化学修飾剤複合体(pharmaceutical agent-chemical modifier complexes)は、経皮的に投与することができる。経皮投与は、典型的に、患者の皮膚を通した全身循環への経路のための医薬の送達を含む。皮膚の部位は、医薬を経皮的に投与するための解剖学的領域であり、前腕、腹部、胸部、背中、臀部、乳頭などを含む。
【0185】
経皮送達は、複合体源を患者の皮膚に長期間暴露することにより行う。経皮貼付剤は、医薬−化学修飾剤複合体を生体へ制御送達するという追加の利点を有する。Transdermal Drug Delivery: Developmental Issues and Research Initiatives, HadgraftおよびGuy (編), Marcel Dekker, Inc., (1989); Controlled Drug Delivery: Fundamentals and Applications, RobinsonおよびLee (編), Marcel Dekker Inc., (1987);およびTransdermal Delivery of Drugs, Vols. 1-3, KydonieusおよびBerner (編), CRC Press, (1987)を参照。そのような剤型は、医薬−化学修飾剤複合体を適当な媒体、例えば、エラストマーマトリックス物質中に溶解、分散、または他の仕方で導入することにより製造することができる。化合物が皮膚を通過する流速を増大させるため、吸収促進剤を用いることもできる。そのような流速は、速度調節膜を提供するかまたは化合物をポリマーマトリックスまたはゲル中に分散させるかのいずれかによって調節することができる。
【0186】
様々なタイプの経皮貼付剤が、本明細書に記載する方法において使用を見出すであろう。例えば、簡易な接着貼付剤は、裏打ち材およびアクリル酸接着剤から調製することができる。医薬−化学修飾剤複合体および促進剤を、接着鋳込み溶液(adhesive casting solution)に調合し、十分に混合することができる。この溶液を裏打ち材上に直接鋳込み、鋳込み溶媒(casting solvent)をオーブン中で蒸発させ、接着フィルムを残す。リリースライナー(release liner)を付着してシステムを完成させることができる。
【0187】
あるいは、ポリウレタンマトリックス貼付剤を用いて医薬−化学修飾剤複合体を送達することができる。この貼付剤の層は、裏打ち材、ポリウレタン薬/促進剤マトリックス、膜、接着剤、およびリリースライナーを含む。ポリウレタンマトリックスは、室温硬化性のポリウレタンプレポリマーを用いて調製する。水、アルコール、および複合体のプレポリマーへの添加は粘着性で堅固なエラストマーの生成という結果となり、このエラストマーを裏打ち材に直接鋳込むことができる。
【0188】
本発明のさらなる態様は、ヒドロゲルマトリックス貼付剤を利用するであろう。典型的に、ヒドロゲルマトリックスは、アルコール、水、薬、および幾つかの親水性ポリマーを含むであろう。このヒドロゲルマトリックスを、経皮貼付剤中、裏打ち材層と接着層との間に導入することができる。
【0189】
液体貯蔵(reservoir)貼付剤もまた、本明細書に記載する方法において使用を見出すであろう。この貼付剤は、不浸透性または半浸透性で密封性の(heat sealable)裏打ち材、熱密封性の膜、アクリル酸ベースの感圧皮膚接着剤、およびシリコーン処理した(siliconized)リリースライナーを含む。裏打ち材は膜に熱密封されて貯蔵部を形成し、ついでこの貯蔵部に該複合体、促進剤、ゲル化剤その他の賦形剤を充填することができる。
【0190】
フォームマトリックス貼付剤は、ゲル化された医薬−化学修飾剤溶液が薄い泡の層、典型的にポリウレタンの層に閉じ込められている以外は、デザインおよび成分において液体貯蔵システムと同様である。この泡の層は、貼付剤の縁で熱密封された裏打ち材と膜との間に位置している。
【0191】
受動デリバリーシステムでは、放出速度は、貯蔵部と皮膚との間に置かれた膜によって、モノリシックデバイスからの拡散によって、またはデリバリーシステムにおいて速度制御バリアーとして働く皮膚自体によって、典型的に調節される。米国特許第4,816,258号;同第4,927,408号;同第4,904,475号;同第4,588,580号、同第4,788,062号等を参照。薬物送達の速度は、一部、膜の性質に依存するであろう。例えば、体内で膜を通した薬物送達の速度は、皮膚バリアーよりも一般に高い。複合体がデバイスから膜に送達される速度は、貯蔵部と皮膚との間に置かれた速度制限膜の使用によって最も有利に調節される。皮膚が複合体に対して十分に透過性である(すなわち、皮膚を通した吸収が膜を通した通過速度よりも大きい)と前提すると、膜は患者によって経験される用量速度(dosage rate)を調節する働きをするであろう。
【0192】
適当な透過性膜材料は、所望とされる透過性の程度、複合体の性質、およびデバイス構築に関連しての機構的考慮事項に基づいて選択されてよい。透過性膜材料の例としては、広範囲の天然および合成ポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサン(シリコーンゴム)、エチレンビニルアセテートコポリマー(EVA)、ポリウレタン、ポリウレタン−ポリエーテルコポリマー、ポリエチレン、ポリアミド、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、セルロース性材料、例えば、セルローストリアセテートおよび硝酸/酢酸セルロース、およびヒドロゲル、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)が挙げられる。
【0193】
所望のデバイス特性に応じて、治療用製品の他の通常の成分などの他の品目もデバイスに含まれていてよい。例えば、本発明による組成物はまた、1またはそれ以上の保存剤または殺菌剤、例えば、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、クロロクレゾール、ベンザルコニウムクロライドなどを含んでいてよい。これら医薬組成物はまた、他の活性成分、例えば、抗微生物剤、とりわけ抗生物質、麻酔薬、鎮静薬、および抗掻痒薬を含んでいてよい。
【0194】
坐剤として投与するための組成物
本発明の化合物は、坐剤として投与するために製剤化することができる。低融解蝋、例えば、脂肪酸グリセリドまたはカカオバターの混合物をまず融解し、活性成分を例えば攪拌により均一に分散させる。ついで、融解した均一な混合物を都合のよい大きさの型に注ぎ込み、冷却し、固化させる。
【0195】
活性な化合物は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)担体(PEG1000[96%]およびPEG4000[4%])中に配置した約0.5%〜約50%の本発明の化合物を含む坐剤に製剤化することができる。
【0196】
投与
GLP-1レセプターが十分なレベルの生物活性形態のGLP-1分子に暴露されることを確実にするいかなる投与形態も本発明の一部である。しかしながら、処置すべき個体が長期間にわたって、例えば、数週間や数ヶ月にわたって治療を受けなければならないことを考慮に入れると、投与形態がそれに十分適していることが好ましい。
【0197】
従って、GLP-1分子は、十分なレベルのグレリンの生物活性形態、すなわちアシル化形態がレセプターに到達するのを可能にするのに十分な量で皮下投与するのが好ましい。
【0198】
他の送達法
他の態様において、長期間持続GLP-1送達のための細胞ベースのGLP-1分子送達または遺伝子療法を用いることができる;これら戦略は、GLP-1分泌の制御のため、内生のおよび/または外来の栄養感受性プロモーターを用いるのが好ましい。
【0199】
一つの態様において、標的組織においてGLP-1レセプターシグナル伝達を活性化することができ、および/または内生の腸内分泌(enteroendocrine)L細胞からのGLP-1放出を刺激することのできる分子を投与してよい。
【0200】
医薬パッケージング
本発明において使用する化合物は、単回投与かまたは多回投与のいずれにおいても、単独または薬理学的に許容しうる担体または賦形剤と組み合わせて投与してよい。製剤は、当業者に知られた方法により、単位剤型にて提供するのが都合がよい。
【0201】
本発明による化合物はキットにて提供するのが好ましい。そのようなキットは、投与用の剤型の活性化合物を含む。剤型は、患者に投与したときに所望の作用が得られるように、十分な量の活性化合物を含む。
【0202】
それゆえ、医薬パッケージングは、関連する投与処方に対応する所定量の投与量単位を含む。従って、一つの態様において、医薬パッケージングは、上記で定義した化合物または薬理学的に許容しうるその塩および薬理学的に許容しうる担体、ビヒクルおよび/または賦形剤を含む医薬組成物を含み、該パッケージングは7〜21投与量単位またはその倍数を有し、それによって1週間の投与または数週間の投与用の投与量単位を有する。
【0203】
投与量単位は上記のようにして定めることができる。医薬パッケージングは、非経口投与、とりわけ皮下投与に適したいかなる形態であってもよい。好ましい態様において、パッケージングはカートリッジの形態、例えば、注射ペン(injection pen)用カートリッジの形態であり、該注射ペンはインスリン処置で知られている注射ペンなどのものである。
【0204】
医薬パッケージングが1を超える投与量単位を含む場合は、該医薬パッケージングは、各投与を1の投与量単位にのみ適合させるメカニズムで提供するのが好ましい。
【0205】
好ましくは、キットは、所望の効果を達成するための剤型の使用および所定の期間にわたって服用すべき剤型の量を示す使用説明書を含む。従って、一つの態様において、医薬パッケージングは医薬組成物を投与するための使用説明書を含む。
【0206】
併用処置
本発明のGLP-1分子はまた、他の薬剤と併用して投与することもできる。「併用して」投与するとは、該他の薬剤を、本発明によるGLP-1分子の投与の前、投与と同時(例えば、いっしょに製剤化されている場合など)、または投与後に投与することを意味する。
【0207】
それゆえ、本発明の一つの態様において、GLP-1分子は、胆汁流を誘発することのできるおよび/または胆管運動性障害を治療することのできる1またはそれ以上の他の刺激因子、例えば、以下のいずれかと併用して投与してよい:コレシストキニン(CCK)、カエルレイン、アセチルコリン、モチリン、コリン作動薬、例えば、ベタネコールまたはプロスチグミン、ウルソデオキシコール酸、食物脂肪、NSAIDS、エリスロマイシン、シザプリド、コレスチラミン、アミノ酸の静脈内投与、および非ステロイド抗炎症剤。
【0208】
本発明においてGLP-1分子と併用して投与すべきさらなる適当な薬剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限られるものではない:
・全身鎮痛薬
・ヒヨスチン-N-ブチルブロマイド(Buscopan)
・Pethidine (meperidine)
・ニフェジピン
・イソソルビドジナイトレート
・ボツリヌス毒素(例えば、Botox; Allergan, Inc., Irvine, CAから)
【0209】
本発明の他の態様において、GLP-1分子は、胆汁流を低下させることのできる1またはそれ以上の抑制因子、例えば、以下のいずれかと併用して投与してよい:該抑制因子は以下の因子のいずれかから選択される:ソマトスタチン、オクトレオチド、サンドスタチンLAR、抗コリン薬、一酸化窒素、L-アルギニン、一酸化窒素のドナー、例えば、グリセリルトリナイトレート、ニトロプルシド、カルシウムチャネル拮抗薬、例えば、ニフェジピンおよびベラパミル、ロペラミド、ニフェジピン、プロゲステロン、マレイン酸トリメブチン、ロペラミドまたはオンダンセトロン。
【0210】
本発明の一つの態様において、GLP-1分子は、1またはそれ以上の鎮痛剤、例えば、以下のいずれかと併用して投与してよい:麻薬、NSAID、サリチル酸誘導体、パラセタモール。
【0211】
本発明の他の態様において、GLP-1分子は、1またはそれ以上の胆道ジスキネジーに影響を及ぼす医薬、例えば、硝酸塩またはカルシウムチャネルアンタゴニストと併用して投与してよい。
【0212】
本発明の一つの好ましい態様において、GLP-1分子は、以下の1またはそれ以上と併用して投与してよい:
1) Acarbose
2) Metformin
3) DPP-IV抑制剤Val-Pyr
【0213】
本発明の一つの好ましい態様において、GLP-1分子は、以下の1またはそれ以上と併用して投与してよい:ロペラミド、ヒヨスチンサルフェート、ラクツロース、YM-443、dexloxiglumide、bisacodyl、AZD7371、talnetant (SB223412)、asimadoline、NT3、SLV305、AZD3355、AZD9343、pinaverine、Naピコサルフェート、カルシウムpolycarpohil、trimebutine、ドーパミンD2アンタゴニスト、例えば、itopride、モチリンアゴニスト、例えば、KC11458およびGM-611、NK2アンタゴニスト、例えば、saredutant、NK3/NK2レセプターアンタゴニスト、例えば、SSR241586、5-ヒドロキシトリプタミン4 (5-HT4)レセプター部分アゴニスト、例えば、tegaserod、5-HT4レセプターアゴニスト、例えば、mosaprideおよびprucalopride、セロトニン5-HT3レセプタータイプのアンタゴニスト、例えば、alosetronまたはcilansetron、二重5-HT4アゴニストおよび5-HT3-アンタゴニスト、例えば、renzaprideおよびE-3620、GLP-1またはそのアナログ/ホモログ、例えば、エクセナチド、エクセナチドLAR、リラグルチド、CJC-1131、ZP10/AVE-0010およびGTP-010、DPP-IV阻害薬、例えば、LAF237、PYY(1-36)またはそのアナログ/ホモログ、PYY(3-36)またはそのアナログ/ホモログ、NPY(1-36)またはそのアナログ/ホモログ、NPY(3-36)またはそのアナログ/ホモログおよび抗鬱剤、例えば、選択的セロトニン取込み阻害薬(SSRIs)、セロトニンノルアドレナリン取込み阻害薬(SNRIs)、ノルエピネフリンセロトニン取込み阻害薬(NSRIs)、選択的ノルアドレナリン取込み阻害薬、テトラサイクリン系抗鬱剤、三環系抗鬱剤(TCAs)を含む非選択的モノアミン取込み阻害薬、選択的可逆的(reversible)モノアミン取込み阻害薬および他の作用メカニズムを有する抗鬱剤、例えば、mirtazapin。SSRIsの例は、citalopram、escitalopram、fluoxetine、fluvoxamine、paroxetineおよびsertralineである。SNRIの例は、venlafaxineである。NSRIの例は、milnacipranである。抗鬱剤のさらなる例は、duloxetineである。
【0214】
実施例
実施例1
本発明に使用するためのGLP-1分子の適当な調合
3つの調合物が、以下のようにして調製される:
(A)水中のペプチド溶液の21.5mlアリコートを、21.5mlの0.63%メタクレゾール-3.2%グリセリンと混合し、最終pHを8.48に設定した。この溶液を0.2ミクロンの濾紙に通す。ついで、この溶液のアリコート(0.315%メタクレゾール-1.6%グリセリン中に0.5mg/mlのペプチドをpH8.48にて含む)を非経口バイアル中にピペットにて入れ、栓をする。
【0215】
(B)水中のペプチド溶液の21.5mlアリコートを、21.5mlの0.63%メタクレゾール-3.2%グリセリン-0.02モルL-リシンとpH8.5にて混合し、最終pHを8.48に設定する。
この溶液を0.2ミクロンの濾紙に通す。ついで、この溶液のアリコート(0.315%メタクレゾール-1.6%グリセリン-0.01モルL-リシン中に0.5mg/mlのペプチドをpH8.48にて含む)を非経口バイアル中にピペットにて入れ、栓をする。
【0216】
(C)水中のペプチド溶液の21.5mlアリコートを、21.5mlの0.63%メタクレゾール-3.2%グリセリン-0.02モルトリス緩衝液とpH8.5にて混合し、最終pHを8.50に設定する。
この溶液を0.2ミクロンの濾紙に通す。ついで、この溶液のアリコート(0.315%メタクレゾール-1.6%グリセリン-0.01モルトリス緩衝液中に0.5mg/mlのペプチドをpH8.50にて含む)を非経口バイアル中にピペットにて入れ、栓をする。
【0217】
本発明に使用するためのGLP-1化合物の固相t-Boc化学による調製
約0.5-0.6グラム(0.38-0.45ミリモル)のBoc Gly-PAM樹脂を標準60ml容反応容器に入れ、二重カップリングをApplied Biosytems ABI430Aペプチド合成機で行う。以下の側鎖保護アミノ酸(Bocアミノ酸の2ミリモルカートリッジ)がMidwest Biotech(フィッシャーズ、インディアナ)より得られ、合成に使用される:
Arg-トシル(TOS)、Asp-デルタ-シクロヘキシルエステル(CHXL)、Glu-デルタ-シクロヘキシルエステル(CHXL)、His-ベンジルオキシメチル(BOM)、Lys-2-クロロベンジルオキシカルボニル(2Cl-Z)、Met-スルホキシド(O)、Ser-O-ベンジルエーテル(OBzl)、Thr-O-ベンジルエーテル(OBzl)、Trp-ホルミル(CHO)およびTyr-2-ブロモベンジルオキシカルボニル(2Br-Z)およびBoc Gly PAM樹脂。トリフルオロ酢酸(TFA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、DMF中の0.5Mヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)およびジクロロメタン中の0.5Mジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)は、PE-Applied Biosystems(フォスターシティー、カリフォルニア)から購入した。ジメチルホルムアミド(DMF-Burdick and Jackson)およびジクロロメタン(DCM-Mallinkrodt)は、Mays Chemical Co.(インディアナポリス、インディアナ)から購入した。
【0218】
標準二重カップリングを、対称無水物かまたはHOBtエステル(ともにDCCを用いて生成)のいずれかを用いて行う。第二のセットの二重カップリング(TFA脱保護なしで)を、Trp31、Thr13およびThr11で行う。合成の完了した時点でN-末端Boc基を除去し、ペプチジル樹脂をDMF中の20%ピペリジンで処理してTrp側鎖を脱ホルミル化する。DCMで洗浄後、樹脂をテフロン(TEFLON:登録商標)反応容器に移し、真空乾燥させる。
【0219】
Metを含むアナログについては、樹脂上還元はTFA/10%ジメチルスルフィド(DMS)/2%濃HClを用いて行う。開裂は、反応容器をHF(フッ化水素酸)装置(Penninsula Laboratories)に付着することにより行う。樹脂1グラム当たり1mlのm-クレゾールを加え、10mlのHF(AGA、インディアナポリス、インディアナより購入)を、前もって冷却した容器に濃縮する。樹脂1グラム当たり1mlのDMSをメチオニンが存在するときに加える。反応液を氷浴中で1時間攪拌し、HFを真空除去する。残渣をエチルエーテル中に懸濁し、固形分を濾過し、エーテルで洗浄する。各ペプチドを水性酢酸中に抽出し、凍結乾燥するかまたは逆相カラムに直接負荷する。
【0220】
精製は、緩衝液(A:水中の0.1%トリフルオロ酢酸、B:アセトニトリル中の0.1%TFA)中の2.2x25cm VYDAC C18カラムで行う。20%〜90%Bの勾配をHPLC(Waters)で10ml/分にて120分間行い、その間、UVを280nm(4.0A)にてモニターし、1分のフラクションを回収する。適当なフラクションを混合し、凍結し、凍結乾燥する。乾燥した生成物をHPLC(0.46x15cm METASIL AQ C18)およびMALDIマススペクトロメトリーにより分析する。
【0221】
固相F-Moc化学による本発明のGLP-1化合物の調製
約114mg(50ミリモル)のFMOC Gly WANG樹脂(NovaBiochem、ラジョラ、カリフォルニアより購入)を、96ウエル反応ブロックのプログラムした各ウエルに入れ、二重カップリングをAdvanced ChemTech 396ペプチド合成機で行う。C-末端アミドを有するアナログは、75mg(50μモル)のRink Amide AM樹脂(NovaBiochem、ラジョラ、カリフォルニア)を用いて調製する。
【0222】
以下のFMOCアミノ酸を、Advanced ChemTech(ルイスビル、ケンタッキー)、NovaBiochem(ラジョラ、カリフォルニア)、およびMidwest BioTech(フィッシャーズ、インディアナ):Arg-2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)、Asn-トリチル(Trt)、Asp-ベータ-t-ブチルエステル(tBu)、Glu-デルタ-t-ブチルエステル(tBu)、Gln-トリチル(Trt)、His-トリチル(Trt)、Lys-t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、Ser-t-ブチルエーテル(OtBu)、Thr-t-ブチルエーテル(OtBu)、Trp-t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、Tyr-t-ブチルエーテル(OtBu)。
【0223】
溶媒のジメチルホルムアミド(DMF-Burdick and Jackson)、N-メチルピロリドン(NMP-Burdick and Jackson)、ジクロロメタン(DCM-Mallinkrodt)は、Mays Chemical Co.(インディアナポリス、インディアナ)より購入する。
【0224】
ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ジ-イソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、およびピペリジン(Pip)は、Aldrich Chemical Co(ミルウォーキー、ウイスコンシン)より購入する。
【0225】
アミノ酸はすべてNMP中の0.45M HOBtに溶解し、50分間のDIC/HOBt活性化カップリングを20%Pip/DMFを用いた20分間の脱保護後に行う。各樹脂を脱保護およびカップリング後にDMFで洗浄する。最後のカップリングおよび脱保護後、ペプチド樹脂をDCMで洗浄し、反応ブロック中で真空乾燥する。
【0226】
反応/開裂ブロックアセンブリーの用意ができたら(in place)、2mlの試薬Kを各ウエルに加え、開裂反応液を2時間混合する[試薬K=10mlのトリフルオロ酢酸(TFA)当たり0.75gmのフェノール、0.5mlのチオアニソール、0.25mlのエタンジチオール、0.5mlの水;すべてAldrich Chemical Co.、ミルウォーキー、ウイスコンシンより購入できる]。TFA濾液を40mlの酢酸エチルに加え、沈殿を2000rpmにて2分間遠心する。上澄み液をデカントし、ペレットを40mlのエーテルに再懸濁し、再遠心し、再度デカントし、窒素下ついで真空乾燥させる。
【0227】
0.3-0.6mgの各生成物を1mlの0.1%TFA/アセトニトリル(ACN)に溶解し、20μlをHPLC[0.46x15cm METASIL AQ C18、1ml/分、45℃、214nM(0.2A)、A=0.1%TFA、B=0.1%TFA/50%ACN、勾配=50%B〜90%Bを30分かけて]で分析する。
【0228】
精製は、緩衝液(A:水中の0.1%トリフルオロ酢酸、B:アセトニトリル中の0.1%TFA)中の2.2x25cm VYDAC C18カラムで行う。20%〜90%Bの勾配をHPLC(Waters)で10ml/分にて120分間行い、その間、UVを280nm(4.0A)にてモニターし、1分のフラクションを回収する。適当なフラクションを混合し、凍結し、凍結乾燥する。乾燥した生成物をHPLC(0.46x15cm METASIL AQ C18)およびMALDIマススペクトロメトリーにより分析する。
【0229】
実施例2
胆管の成分の運動性に対する薬剤の作用を評価するためのスクリーニング法
概要:モルモットを屠殺して全胆嚢を取り出す。2ないし3の平滑筋切片(8mm×3mm)を縦方向に沿って切開する。各切片上の粘膜を注意深く取り除く。各縦方向筋肉切片を、5mLのKrebs液(37℃)を入れたティッシューチャンバに懸濁し、950mL/LのO2および50mL/LのCO2で連続して泡立てる。静止張力(g)、平均収縮幅(mm)、および収縮頻度(波数/分)を記録機で同時に記録する。2時間の平衡後、平滑筋の運動性に対する作用を評価すべき薬剤を各2分毎にティッシューチャンバに漸増的に加え、胆嚢に対する作用を観察する。
【0230】
動物の調製:雌雄いずれかのモルモット(グレードI、例えば、Animal Center of Lanzhou Biology Instituteより購入したもの;体重350-450g)を飲水自由にて24時間断食させ、屠殺して全胆嚢を取り出す。2ないし3の平滑筋切片(8mm×3mm)を縦方向に沿って切開する。各切片上の粘膜を注意深く取り除く。
【0231】
実験
筋肉切片を、5mLのKrebs液を入れたティッシューチャンバに懸濁し、37℃で水ジャケットを循環させることにより定常的に温め、950mL/LのO2および50mL/LのCO2で連続して泡立てる。切片の一方の端をチャンバの底のフックに固定する。他端を外部等尺フォーストランスデューサー(external isometric force transducer)(JZ-BK, BK)に接続する。調製物を1-g-負荷張力に供し、5mLのKrebs液で20分毎に洗浄する。ティッシューチャンバ中の胆嚢切片の運動性を、インク記載2チャンネル記録機(ink writing two channel recorders)(LMS_ZB, Chengdu)で同時に記録する。2時間の平衡後、評価すべき薬剤を各2分毎に漸増的に加えて胆嚢に対する作用を観察する。
【0232】
結果は平均±SEとして示され、ANOVAによって統計的に解析され、P<0.05は統計的に有意と認められる。
【0233】
このプロトコールは、胆管系の他の部位の運動性を測定するのに適合させることができることが理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする個体における胆道ジスキネジーおよび/または胆道痛または不快の治療または予防用医薬の製造のためのGLP-1分子の使用。
【請求項2】
該GLP-1分子が以下の1またはそれ以上として定義される、請求項1に記載の使用:
(a)抗体によって認識されることができるアミノ酸配列を含み、該抗体はまたヒトGLP-1をも認識する、および/または
(b)ヒトGLP-1レセプターに選択的に結合することのできるアミノ酸配列を含む、または
(c)ヒトGLP-1レセプターに選択的に結合することのできる小分子。
【請求項3】
該GLP-1分子が、GLP-1(7-36)アミドまたはGLP-1(7-37)、またはその断片、アナログ、誘導体またはホモログである、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
該ホモログが、GLP-1(7-36)アミドまたはGLP-1(7-37)に少なくとも80%相同である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
該ホモログが、GLP-1(7-36)アミドまたはGLP-1(7-37)に少なくとも90%相同である、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
該ホモログが、GLP-1(7-36)アミドまたはGLP-1(7-37)に少なくとも95%相同である、請求項3に記載の使用。
【請求項7】
該GLP-1分子が、20未満の非天然アミノ酸残基またはD-アミノ酸を含む、請求項1ないし6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
該GLP-1分子が、C-末端官能基修飾および/またはN-末端官能基修飾を含む、請求項1ないし7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
該GLP-1分子が、以下よりなる群から選ばれる、請求項1に記載の使用:GLP-1(7-36)アミド、GLP-1(7-37)、エクセンジン−4、GLP-1(7-34)、GLP-1(7-35)、GLP-1(7-36)、Gln9-GLP-1(7-37)、D-Gln9-GLP-1(7-37)、Thrl6-Lysl8-GLP-1(7-37)、Lys18-GLP-1(7-37)、GLP-1(7-34)、GLP-1(7-35)、GLP-1(7-36)、GLP-1(7-36)NH2、Gly8-GLP-1(7-36)NH2、Gln9-GLP-1(7-37)、D-Gln9-GLP-1(7-37)、アセチル-Lys9-GLP-1(7-37)、Thr9-GLP-1(7-37)、D-Thr9-GLP-1(7-37)、Asn9-GLP-1(7-37)、D-Asn9-GLP-1(7-37)、Ser22-Arg23-Arg24-Gln26-GLP-1(7-37)、Thrl6-Lysl8-GLP-l(7-37)、Lys18-GLP-l(7-37)、Arg23-GLP-1(7-37)、Arg24-GLP-1(7-37)、GLP-1(7-34)、GLP-1(7-35)、GLP-1(7-36)NH2、Gln9-GLP-1(7-37)、d-Gln9-GLP1(7-37)、Thrl6-Lysl8-GLP-1(7-37)、Lysl8-GLP-1(7-37)、Gly'-GLP-1(7-36)NH2、Gly'-GLP1(7-37)OH、Val'-GLP-1(7-37)OH、Met8-GLP-1(7-37)OH、アセチル-Lys9-GLP-1(7-37)、Thr9GLP-1(7-37)、D-Thr9-GLP-1(7-37)、Asn9-GLP-1(7-37)、D-Asn9-GLP-1(7-37)、Ser22-Arg23 Arg24-Gln26-GLP-1(7-37)、Arg23-GLP-1(7-37)、Arg24-GLP-1(7-37)、a-メチル-Ala8-GLP-1(736)NH2、Gly'-Gln2'-GLP-1(7-37)OHまたはLY315902。
【請求項10】
該GLP-1分子が、GLP-1(7-36)アミド、GLP-1(7-37)、リラグルチド、エクサナチド、アルブゴン、CJC-1131、zp-10、BIM51077(Ipsen)、LY315902、LY307161(Eli Lilly)、S23521から選ばれる、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
該個体がヒトである、請求項1ないし10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
胆道ジスキネジーおよび/または胆道痛が以下よりなる群から選ばれた状態と関連する、請求項1ないし11のいずれかに記載の使用:胆石、炎症性腸疾患、慢性非結石性胆嚢炎、非結石性胆嚢疾患、胆嚢管症候群、非結石性胆嚢疾患、胆嚢運動性抑制薬剤による治療、非経口栄養摂取、肥満、糖尿病、小児脂肪便症、糖尿病性ニューロパシー、ダウン症候群、ベータ−サラセミア、妊娠、胃の外科手術、極低カロリーダイエット、体外衝撃波砕石術、ソマトスタチン産生腫瘍、オッディ括約筋の狭窄、オッディ括約筋のジスキネジー、腺過形成、SO筋肉の協調不能または筋肉の高調(痙攣)、甲状腺機能亢進症、胆汁の通過を損なうことが知られている医薬(例えば、ソマトスタチン、オクトレオチド、サンドスタチンLAR、抗コリン薬、一酸化窒素、L-アルギニン、一酸化窒素のドナー、例えば、グリセリルトリナイトレート、ニトロプルシド、カルシウムチャネル拮抗薬、例えば、ニフェジピンおよびベラパミル、ロペラミド、ニフェジピン、プロゲステロン、マレイン酸トリメブチン、ロペラミド、オンダンセトロンなど)による治療、胆道閉塞(部分的または完全)(総胆管結石症によって引き起こされるものなど)、胆管癌、原発性硬化性胆管炎(PSC)、ファーター膨大部の腫瘍、ミリッシ症候群、他のタイプの胆管癌(乳頭腫、腺腫および嚢胞腺腫を含む)、AIDS胆管病、クリプトスポリジウム、サイトメガロウイルス、微胞子虫およびシクロスポラ属を含む感染、寄生虫感染、肝臓の外側の胆道樹枝の大管における閉塞性の病変、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、乳児の閉塞性胆管病、ベノキサプロフェン、クロルプロマジン、ハロペリドール、イミプラミンなどの薬剤による肝臓内小胆管に対する障害、胆道スラッジまたは胆汁うっ滞。
【請求項13】
該疼痛および/またはジスキネジーが、胆管の以下の部位の1またはそれ以上で認められる、請求項1ないし11のいずれかに記載の使用:胆嚢、オッディ括約筋、胆管壁および/または胆嚢管。
【請求項14】
該ジスキネジーおよび/または疼痛が胆嚢で認められる、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
該個体が以下の病的状態のいずれかを罹患しているか罹患するリスクがある、請求項14に記載の使用:胆石、炎症性腸疾患、慢性非結石性胆嚢炎、非結石性胆嚢疾患、胆嚢管症候群または非結石性胆嚢疾患。
【請求項16】
該個体が以下の状態のいずれかを罹患しているか罹患するリスクがある、請求項14に記載の使用:胆嚢運動性抑制薬剤による治療、非経口栄養摂取、肥満、糖尿病、小児脂肪便症、糖尿病性ニューロパシー、ダウン症候群、ベータ−サラセミア、妊娠、胃の外科手術、極低カロリーダイエット、体外衝撃波砕石術またはソマトスタチン産生腫瘍。
【請求項17】
該ジスキネジーおよび/または疼痛がオッディ括約筋で認められる、請求項13に記載の使用。
【請求項18】
該個体が以下の病的状態のいずれかを罹患しているか罹患するリスクがある、請求項17に記載の使用:「オッディ括約筋の狭窄」、オッディ括約筋のジスキネジー、または甲状腺機能亢進症。
【請求項19】
該個体が、胆管運動性を抑制するかおよび/または胆管系の基礎緊張を低下させることが知られている抑制因子(薬剤など)で治療されたことがあるか、治療されているかまたは治療される予定である、請求項1ないし19のいずれかに記載の使用。
【請求項20】
該抑制因子が、以下の因子のいずれかから選択される、請求項19に記載の使用:ソマトスタチン、オクトレオチド、サンドスタチンLAR、抗コリン薬、一酸化窒素、L-アルギニン、一酸化窒素のドナー、例えば、グリセリルトリナイトレート、ニトロプルシド、カルシウムチャネル拮抗薬、例えば、ニフェジピンおよびベラパミル、ロペラミド、ニフェジピン、プロゲステロン、マレイン酸トリメブチン、ロペラミドまたはオンダンセトロン。
【請求項21】
該個体が以下の病的状態のいずれかを罹患しているか罹患するリスクがある、請求項1ないし11のいずれかに記載の使用:胆道閉塞(部分的または完全)、胆管癌、原発性硬化性胆管炎(PSC)、ファーター膨大部の腫瘍、他のタイプの胆管癌、ミリッシ症候群、AIDS胆管病、感染(クリプトスポリジウム、サイトメガロウイルス、微胞子虫またはシクロスポラ属など)、寄生虫感染(ストロンギロイデス属、回虫属、および肝臓の吸虫類、例えば、肝吸虫および肝蛭など)、肝臓の外側の胆道樹枝の大管における閉塞性の病変、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、乳児の閉塞性胆管病、肝臓外胆道閉鎖、肝臓内小胆管に対する障害(例えば、ベノキサプロフェン、クロルプロマジン、ハロペリドール、イミプラミンなどの薬剤による)、胆道スラッジ、または胆汁うっ滞。
【請求項22】
GLP-1分子を1μg/kg〜約100mg/kgの量で投与する、請求項1ないし21のいずれかに記載の使用。
【請求項23】
GLP-1分子を0.4〜2.4ピコモルkg-1-1の投与量で投与する、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
GLP-1分子を150〜350μg/kgの投与量で好ましくは毎日投与する、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
GLP-1分子を、経口、非経口、静脈内、皮下、または鼻内、口内または舌下経路により投与する、請求項1ないし24のいずれかに記載の使用。
【請求項26】
ある薬剤が胆管系の少なくとも1の部位の運動性をモデュレートする能力について、それを必要とする哺乳動物において評価するためのインビトロ法であって、以下の工程を含む方法:
(a)該薬剤のGLP-1レセプターへの結合を測定するためのアッセイを提供し、
(b)試験すべき薬剤を該アッセイに加え、および
(c)GLP-1レセプターに結合した該化合物の量を決定し、および
(d)任意に、工程(c)で決定した量を試験すべき薬剤の不在下で測定した量と比較し、その際、これら2つの量の差異は、GLP-1レセプターをモデュレートすることのできる薬剤を同定する。
【請求項27】
請求項26に記載の方法および単離した化合物を精製および/または単離した化合物の毒性を低減するさらなる工程を含む、医薬組成物の製造方法。
【請求項28】
請求項26または27に記載の方法および精製した化合物/毒性を低減した化合物を薬理学的に許容しうる担体または希釈剤とともに製剤化する工程をさらに含む、請求項27に記載の製造方法。
【請求項29】
GLP-1分子と以下よりなる群から選ばれた鎮痛剤との併用医薬:麻薬、NSAID、サリチル酸誘導体またはパラセタモール。
【請求項30】
それを必要とする個体に有効量のGLP-1分子を投与することを含む、胆道ジスキネジーおよび/または胆道痛の治療または予防方法。

【公表番号】特表2009−507050(P2009−507050A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529470(P2008−529470)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000496
【国際公開番号】WO2007/028394
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(506039911)ガストロテック・ファルマ・アクティーゼルスカブ (5)
【氏名又は名称原語表記】Gastrotech Pharma A/S
【Fターム(参考)】