説明

背面投射型表示装置および背面投射型表示装置の制御方法およびプログラム

【課題】ユーザの鑑賞に影響を与えることなく表示全画面の光の変化の検出を可能とし高画質な表示装置を提供する。
【解決手段】光源部からの照射光をライトバルブを介してフレネルスクリーンに投射する背面投射形表示装置において、フレネルスクリーンからの反射光が集光する位置に設けられた光測定手段と、光測定手段による測定結果に基づいてライトバルブを制御する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背面投射型表示装置の表示制御技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高精細テレビジョン(HDTV)放送などの映像ソースを始めとした高画質の映像ソースが豊富になってきている。また、会議室でのプレゼンテーションなどでもコンピュータの映像を用いることが一般的になってきている。そのため、これらの用途に用いる映像装置への高画質化、大画面化の要求がますます強くなっている。このような高画質、大画面の表示装置を安価に実現する有力な技術として背面投射型表示装置がある。
【0003】
背面投射方式(リアプロジェクション方式)の映像装置は、当初、高輝度CRT(Cathode-Ray Tube)により映像を投影するものが主流であった。しかし、近年では、透過型液晶や反射型液晶、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)などのライトバルブを利用した背面投射方式の映像装置が主流になっている。これらの装置では、ライトバルブに光を照射し、当該ライトバルブの像面からの映像光を投射光学系によってスクリーンに拡大投射する。ライトバルブとしては、画素間の継ぎ目が目立たず、光制御効率の高いという特性を有するLCOS(Liquid Crystal On Silicon)パネルが多く用いられるようになってきている。なお、LCOSパネルとは、半導体基板上に液晶層を構成した反射形液晶パネルのことである。また、光源としては、その発光効率の高さから、超高圧水銀ランプや、メタルハライドランプなどの放電ランプが用いられている。
【0004】
ところで、上記光源としての放電ランプは、使用時間が長くなるにつれ一般的に輝度レベルが下がってくる。これは、ランプ電極の金属が蒸発しランプのガラス内面部分に蒸着し黒くなる黒化と呼ばれる現象や、ガラスが紫外線などにより結晶化し白濁する失透とよばれる現象によるものである。また、点灯開始時から一定の時間までは、ランプ内部の水銀の蒸気量が刻一刻と変化する。そのため、この期間においてはランプの発光スペクトルが変化し、輝度、および白点(ホワイトバランス)などが変化する。また、液晶パネルにおいても、温度変化などにより液晶の透過特性などが変化し、ホワイトバランスがずれるなどの問題があった。
【0005】
これらの問題に対して、投射光を検出して輝度やホワイトバランスなどを補正する方法がいくつか提案されている。たとえば特許文献1では、透過型液晶パネルからの光を集光し、その焦点部分に設けられた絞りの開口部分の外周にセンサを設ける技術が開示されている。開口部分の外周にセンサを設けることにより、スクリーンへの表示に影響を与えることなく液晶パネルの散乱特性の変化を把握可能としている。また、特許文献2では、背面投射型の表示装置において、予め投射範囲をスクリーンより広い範囲に設定し、スクリーンホルダー(外周部)の各辺に表示部分に突出しないようセンサを配置する構成が開示されている。また、特許文献3においては、反射ミラー越しに微弱な光を検出する構成が開示されている。
【特許文献1】特開平08−292407号公報
【特許文献2】特開平11−242293号公報
【特許文献3】特開2003−174651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ライトバルブにおいては、温度などによる透過率の変化のほか、その液晶セル内のセルギャップのばらつきなどにより、同じ駆動電圧を印加しても、画面上の表示位置によって透過率に変動が生じることがある。その結果スクリーンに投影される映像に輝度のムラが生じ得る。また、高精細な画像表示を行う装置の場合は、赤(R)、緑(G)、青(B)各色にそれぞれ、液晶パネルを用意し、それぞれの色毎に独立して制御を行う構成をとることが多い。このような三板構成の場合、それぞれのパネルが上述した輝度のムラを有していると、画面上の表示位置によって色のムラが発生してしまうことになる。
【0007】
しかしながら、上述した背景技術においては、表示部には表示されない部分の光、つまり、光の一部分しか検出してい。そのため、画面上の全体的なムラなどを測定し補正する事は出来ない。また、スクリーン周辺にセンサを設けるには、拡大表示などを行い表示部には表示されない部分が存在することが前提となる。つまり、いわゆるオーバースキャンを行う必要が生じる。しかし、PC画面等を表示する場合には、全画面をスクリーン内に表示する必要がある。つまり、オーバースキャンは出来ず、検出そのものが出来なくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑みなされたものであり、ユーザの鑑賞に影響を与えることなく表示全画面の光の変化の検出を可能とし高画質な表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明による投射型表示装置は以下の構成を備える。即ち、
光源部からの照射光をライトバルブを介してフレネルスクリーンに投射する背面投射形表示装置において、フレネルスクリーンからの反射光が集光する位置に設けられた光測定手段と、光測定手段による測定結果に基づいてライトバルブを制御する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザの鑑賞に影響を与えることなく表示全画面の光の変化の検出を可能とし高画質な表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
(第1実施形態)
本発明に係る投射型表示装置の第1実施形態として、LCOSパネルを用いた背面投射型表示装置を例に挙げて以下に説明する。
【0013】
<背面投射型表示装置の構造>
図1は、背面投射型表示装置を投射面背面から見た時の概略構造図である。つまり、装置の内側から見た構成を示している。
【0014】
背面投射型表示装置の筐体101内において、光学系はおおまかに、投射ユニット104、全反射フレネルスクリーン102、天井ミラー103から構成されている。
【0015】
投射ユニット104から投射された光aは天井ミラー3で反射され、光bとしてスクリーン102に投射される。スクリーン102の四隅に対応する光も、それぞれ天井ミラーで反射されて、スクリーンに投射する。スクリーン102に投射した光は、後述のように、スクリーン102面を構成するプリズム内の全反射によって、ユーザの位置する方向に射出される。
【0016】
図2は、投射ユニット内部の概略構成を示した図である。
【0017】
投射ユニット104は、光源である放電ランプ105を備えている。また、ダイクロックミラー201、ミラー202、PBS(偏光ビームスプリッタ)203、LCOSパネル207〜209、クロスダイクロプリズム204、レンズ205を備えている。そして、これらの光学系において、オフアキシャル光学系206を備えている。
【0018】
投射型表示装置に用いられる光源としては、その効率、短アーク長などの理由から、高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどの放電ランプ105が多く用いられている。これら放電ランプ105に対し電圧を印加することにより、水銀蒸気などによる高輝度な光が得られる。
【0019】
光源105からの光は、ダイクロイックミラー201にて、RGB各色に分離される。図では、201aによってR+Gの光とBの光を分離し、201bによってRの光とGの光を分離している。分離されたRGBそれぞれの光は、PBS(偏光ビームスプリッタ)203を介してLCOSパネル207,208,209に入射される。
【0020】
LCOSパネル207〜209は、RGB各色毎の映像信号に応じて駆動されており、映像信号に応じた反射光が再びPBS203を通過し、クロスダイクロプリズム204に入射される。クロスダイクロプリズム204に入射したRGBそれぞれの光(映像)は、当該クロスダイクロプリズム204により合成され、レンズ205やオフアキシャル光学系206を経由して、天井ミラー103に向けて投射される。なお、ここで、光軸をずらしたオフアキシャル光学系206を採用することで、先の全反射フレネルスクリーン102と組み合わせた際の、スクリーン102上での中心部と周辺部との輝度差を低減可能としつつ装置の薄型を達成することが出来る。
【0021】
図3は、投射ユニットからの光がスクリーンに投射される様子を模式的に示した図である。図3の白抜き矢印が、スクリーン102に投射される映像光の光路を示している。そして、後述するように、この映像光の大部分はスクリーン102の前面(図面の左方向)、つまりユーザの位置する方向に向かうことになる。
【0022】
ただし、微小ながら図3の黒色の矢印で示されるような反射光が微量に存在する。この反射光は、フレネルスクリーン102の装置内部側の表面で反射する光である。スクリーンの材質、表面処理などにもよるが、入射光のうちの1〜5%の光が、反射光としてスクリーンと反対側に出てくることになる。
【0023】
図4は、全反射フレネルスクリーン102の中心から動径方向に切断した際の断面の一部を拡大した図である。スクリーン102の装置内部側の表面はプリズム状になっている。なお、図4において断面左側はアクリル樹脂などで構成されるスクリーン102であり、断面右側は装置内部の空間(空気)となっている。
【0024】
プリズムは、天井ミラー103からの光bを、鑑賞方向であるcに向けて全反射するようその頂点角度が決定されている。プリズムの入射面401がスクリーン面となす角をθs、プリズムの頂角をθt、光線bのスクリーン面に対する入射角をαとすると、光線bのプリズム面401に対する入射角θiは、
θi=α−θs (式1)
と表すことが出来る。
【0025】
また、入射面401で屈折されて出射する光線b’の出射角θrは、プリズムの材料の屈折率をnとすると、
SIN(θr)=SIN(θi)/n (式2)
と表すことができる。したがって、光線b’の全反射面402への入射角θzは、
θz=θt−θr (式3)
となり、全反射させるための臨界角(n=1.49のとき42.16°)以上となるようにθtを選ぶ必要がある。全反射された出射光線cの方向がスクリーン面に垂直になる条件は、
θz=180°−θt−θs (式4)
と表すことが出来る。そのため、(式1)、(式2)、(式3)を用いて整理すると
TANθs=(SINα+nSIN2θt)/(COSα−nCOS2θt) (式5)
と表される。
【0026】
すなわち、プリズム(フレネルスクリーン)の材料としてアクリル樹脂(n=1.49)を用い、θt=58°として、α=72.97°とした場合、θs=67.60°、θz=54.40°となる。
【0027】
また、上記の式は画面内の任意の位置で成り立つことから、αの最小値と最大値についても同様に、n=1.49、θt=58°としてθs、θzを求めると、
αmin=65.22°のときθs=64.49°、θz=57.51°。また、αmax=78.19°のときθs=69.69°、θz=52.31°となる。
【0028】
したがって、θtを一定にしたまま、α=65.22°から78.19°に対して(式5)によって求まるθsとなるよう、θsを64.49°から69.69°まで徐々に変化させる。このようにして求められる角度となるよう、スクリーン102表面に形成される同心円状のプリズム群を構成することで、全画面範囲にわたって出射光線の方向をスクリーンに対して垂直とすることができる。
【0029】
ところで、前述したように、プリズムの入射面401においては、透過光線b’だけでなく、反射光線dが微量ながら生じる。この反射光線dの光量はプリズムの屈折率1.49の場合、反射率は約4%程度である。なお、仮に、この光線が天井ミラー103に反射して再びスクリーン102方向に戻ってしまうと表示画面上のゴーストとして観察されてしまう。そのため、スクリーン102の方向に反射されないよう、θtの値を選択する必要がある。
【0030】
図5は、フレネルスクリーン102の背面、つまり装置内側から観察したフレネルスクリーンの同心円の状態を例示的に示す図である。
【0031】
上述したように、スクリーン102の表面に形成されるプリズム群は、スクリーン102の全域で入射光bが全反射するように、同心円状に構成されている。ただし、その同心円の中心は本体の光軸からずれた位置に設定されている。これは、天井ミラー103からの光をユーザの鑑賞位置の中央方向に向けるためである。
【0032】
ところで、スクリーン102上に形成されるプリズム群が同心円状に構成されているため、図4で示したスクリーン102からの反射光dは、結果的に特定の集光領域300に集光されることになる。プリズム角度にも依存するが、本実施形態の構成においては、おおむねスクリーン102裏面位置に、スクリーン102全体からの反射光が集光されることになる。
【0033】
<映像信号処理>
図6は、映像信号の処理の流れを示すブロック図である。おおまかに、映像入力回路601、ランプ制御回路602、パネル駆動回路603、補正回路607、制御部608、および、センサ609から構成される。
【0034】
映像入力回路601は、外部から映像信号を入力し、解像度変換や、IP(インタレース−プログレッシブ)変換、色処理等の各種画像処理を行う回路である。
【0035】
ランプ制御回路602は、放電ランプ105の点灯を制御する回路であり、高圧水銀ランプなどにおいてはバラスト電源などと呼ばれるものである。なお、放電ランプ105の替わりに、LEDを用いる場合は、この部分はLED駆動回路となる。
【0036】
パネル駆動回路603は、前述したRGB各色に対応するLCOSパネル207〜209を駆動するための駆動回路である。
【0037】
補正回路607は、パネル駆動回路603への映像信号供給にさいし、各色映像信号のガンマ特性などを補正する補正回路である。例えば、入力信号を、指定された補正量(補正係数)により決定されるマトリックス演算などを介して補正後の出力信号を得るよう構成される。なお、補正量は補正回路607内に配置される書き換え可能な記憶領域に記憶されている。
【0038】
制御部608は、上記それぞれの回路を制御する制御部であり、CPU、RAMおよびROMなどから構成される。そして、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより各種制御が実現される。なお、ROMには各種制御プログラムのほか、各種パラメータが予め記憶されている。パラメータとしては、例えば、前述した補正回路607のマトリックス演算に用いられる補正値の初期値や、後述するホワイトバランスの基準パラメータが記憶されている。なお、ホワイトバランスの基準パラメータとして複数の色温度(例えば、5000K、6500K、9300Kの3つ)に対応した複数のパラメ−タを記憶するよう構成しても良い。また、制御部608をASICとして構成しても良い。
【0039】
検出回路609は、図5において説明した、スクリーン102からの反射光dの集光領域300に配置された光センサ610からの信号を検出する検出回路であり、アナログ/デジタル(A/D)コンバータなどから構成されている。なお、A/Dコンバータなどが内蔵されたタイプのセンサを用いる場合などでは、制御部608と直接インタフェースすることも可能である。
【0040】
次に、本発明での特徴的な部分である光センサ610について詳細に説明する。背景技術において説明したように、従来光センサを利用する場合は、スクリーン押さえ部分などにセンサを配し、拡大投影(オーバースキャン)した光の一部分を測定するように構成されていた。本発明においては、スクリーン102からの反射光dの集光領域300に光センサ610を配置する。そのようにすることで、スクリーン102の全面に対する映像光の状態を常時検出することが可能になる。
【0041】
スクリーン102からの反射光を検出するため、光の状態としては、光源自体のホワイトバランスずれ、LCOSの温度などによる透過率の変化、また、領域ごとのばらつきによる色むらなどによる影響を含むことができる。つまり、光センサ610による光の状態の検出結果に基づいて各種補正を施すことで、より高画質な表示装置を提供可能となる。
【0042】
なお、設置するセンサとしては、単一のフォトダイオードなどの点状のポイントセンサの他、CCDなどの線状のラインセンサ、または、CCD、CMOSなど平面のエリアセンサなどを用いることが出来る。そして、目的とする精度などに応じて適宜選択が可能である。
【0043】
図7は、放電ランプ105の平均輝度レベルを測定する場合の光センサ610周辺の構成例を示す図である。ポイントセンサである光センサ610、スクリーン102からの反射光を拡散する拡散フィルタ701、拡散フィルタ701からの光をセンサ610に集光させるためのレンズ702である。また、拡散フィルタ701に対しスクリーン102全面からの反射光が入射するように構成している。このように構成することで、スクリーン102全体からの反射光は拡散され平均的な輝度として測定可能となる。なお、ここでセンサ610は、RGBを含む可視光域全域に感度を有している。
【0044】
また、RGBすべてが合成された映像光に対する反射光を測定する他、RGB各色を時間をずらして順次表示することによりそれぞれの色の映像光に対する反射光を測定することが出来る。たとえば、RGBそれぞれの色における輝度レベルを測定することで、各色の輝度レベルを独立して検出することが出来る。そして、その輝度レベルに基づいて、各色それぞれに対応するLCOSの駆動条件を補正して制御する構成とすることにより、ホワイトバランスの補正が可能となる。駆動条件の補正方法としては、例えば、輝度レベルが高い色に対してはLCOSパネルによる反射光が少なくなるよう制御を行い、輝度レベルが低い色に対してはLCOSパネルによる反射光が多くなるように制御を行う方法がある。
【0045】
上述のような可視光域全域に感度を有する単一の光センサによる構成の他、RGBそれぞれのフィルタ特性を持たせたセンサによる構成としても良い。なお、光センサ610がフィルタ無し、つまり、可視光域全域に感度を有する単一の光センサの場合には、R,G,Bそれぞれの映像光について切り替え表示を行い検出することとなる。一方、センサがR、G、B成分の輝度をそれぞれ独立して測定可能な複数のセンサから構成されている場合には、白色光、つまり、RGBすべてが合成された映像光について検出すればよい。なお、同一の色に対し、複数の異なる輝度の映像信号について輝度を検出することにより、各色の立ち上がり(γ曲線)についても補正を行うことが可能となる。
【0046】
・外来光の影響
一般的な鑑賞環境では、それほど強力な室内光の下で鑑賞されることは少ない。しかし、室内光、つまり、装置外部からの光がスクリーン102で散乱し、プリズムからの反射経路により入射することが考えられる。このような外来光の影響による上述の光センサによる検出への影響を軽減するために、測定に先立って、映像光がOFFの状態でのセンサへの入射光の測定を行っておくとよい。例えば、映像光OFF時の輝度レベルを基準として、上述の検出動作による検出輝度レベルとの差分を利用することで外来光の影響を軽減できることになる。
【0047】
・輝度むら・色むら
LCOSパネルなどの液晶パネルでは、セルギャップなどのばらつきにより、各色のパネルごとに、部分的に輝度のムラが発生する場合がある。この輝度ムラによって、合成された映像光には色むらが発生することになる。
【0048】
図8は、色むらを測定する様子を説明する図である。つまり、スクリーン102の一部領域に対して矩形などの所定のパターンを表示し輝度レベルを検出するよう構成する。そして、スクリーン102上でのパターンの表示領域を順次移動させ、領域毎に補正量を決定するのである。なお、パターン(領域の大きさ)は小さいほど、より空間解像度の高い検出が可能となるが、一般的にはスクリーン全領域に対する検出に時間がかかってしまうため、必要な空間解像度に応じて決定すると良い。なお、パターンが表示される領域毎に、光センサ610がフィルタ無し、つまり、可視光域全域に感度を有する単一の光センサの場合には、R,G,Bそれぞれの映像光について切り替え表示を行い検出することとなる。一方、センサがR、G、B成分の輝度をそれぞれ独立して測定可能な複数のセンサから構成されている場合には、白色光、つまり、RGBすべてが合成された映像光について検出すればよい。
【0049】
スクリーン全領域の検出が終了したら、それぞれに領域毎に補正量を決定し、RAMやフラッシュメモリ等の記憶部に記憶する。そして、以後の画像表示の際に、この記憶部に記憶された補正量を基に領域毎に補正を行うようにすれば、輝度むら・色むらの補正が可能になる。
【0050】
<色むら補正の補正値導出の動作フロー>
図9は、色むら補正の補正量導出のフローチャートである。なお、以下の動作は、装置立ち上げ時に実行するよう構成しても良いし、ユーザによる任意の時点で実行するよう構成しても良い。なお、以下のフローにおいて、補正回路607は例えばROM等に記憶されたキャリブレーション用の補正量を用いて補正処理を行う。
【0051】
ステップS901では、外部光の検出を行う。つまり前述したように、制御部608は、映像光がOFFの状態となるようにパネル駆動回路603に制御を行う。そして、制御部608は、その状態における光センサ610への入射光の測定を行う。なお、光センサ610による検出値は検出回路609を介してRAMなどに一時記憶される。
【0052】
ステップS902では、制御部608は、輝度レベルの検出対象となる領域にパターン画像が表示されるようパネル駆動回路603を制御する。そして、制御部608は、その状態における光センサ610への入射光の測定を行う。なお、前述したように、可視光域全域に感度を有する単一の光センサの場合には、R,G,Bそれぞれの映像光について切り替え表示を行い検出する。一方、センサがR、G、B成分の輝度をそれぞれ独立して測定可能な複数のセンサから構成されている場合には、白色光、つまり、RGBすべてが合成された映像光について検出すればよい。
【0053】
ステップS903では、制御部608は、光センサ610による検出値を検出回路609を介して取得し、ステップS902でパターンを表示した領域の情報と関連付けてRAMなどに一時記憶する。
【0054】
ステップS904では、制御部608は、スクリーン102の全領域に対して検出処理(S902およびS903)が終了したか否かを判断する。終了していないと判断した場合はステップS905に進む。一方、全領域について終了していると判断した場合はステップS906に進む。
【0055】
ステップS905では、制御部608は、次の検出動作の対象となる領域を選択する。例えば、前回の領域と隣接し、まだ検出を行っていない部分を選択する。領域を選択後、ステップS902に戻る。
【0056】
ステップS906では、制御部608は、ステップS901で記憶した外部光の検出値とステップS903で記憶した各領域の検出値との差分を計算する。そして、ROMに記憶されたホワイトバランスの基準パラメータからのずれに対し、ずれが補償されるよう新たな補正量を決定する。なお、前述したように、補正量とは補正回路607で利用される例えばマトリックス演算における係数である。
【0057】
ステップS907では、制御部608は、ステップS906で決定された新たな補正量を補正回路607内の記憶領域に記憶する。
【0058】
このようなステップを経て、補正回路607内の記憶領域に新たなパラメータを記憶し当該パラメータを利用しマトリクス演算を行う。そうすることにより、スクリーン102に投影した映像光の状態を、スクリーン102全面に渡ってほぼ一定の状態に保つことが可能となる。つまり、補正回路607によるスクリーン102全面に渡る出力値は、制御部608内のROMに記憶したホワイトバランスの基準パラメータに対応した色温度に保たれることとなる。
【0059】
なお、ここでは、補正回路607においてはマトリクス演算によるRGBの出力値の導出として説明を行った。しかし、3次元ルックアップテーブル(3D−LUT)、6軸補正、ガンマテーブル書き換えなどを用いた補正方法を利用して実現しても良い。また、出力値の導出にはソフトウェアによる演算の他、ハードウェア構成による導出を行っても良い。特に、補正量(補正係数)のみを制御部608から受け付け、演算部分はハードウェアにより構成することにより高速に補正処理を行うことが可能になる。
【0060】
また、上述の説明においては、スクリーン102からの反射光dの集光領域300に拡散フィルタ701を配置し、拡散フィルタ701により拡散された映像光をレンズ702で集光しポイントセンサにより輝度を検出するよう構成した。しかし、前述したようにセンサの構成はこれに限られるものではない。たとえば、集光領域300をカバーする2次元のエリアセンサを用い、直接領域毎の輝度の測定を行ってもよい。また、図10に示すように、集光領域300を横切るようラインセンサを走査し輝度を検出しても良い。エリアセンサやラインセンサを用いる構成とすることにより、ステップS905で説明したスクリーン102内の領域毎の輝度検出動作が不要となるというメリットがある。
【0061】
また、上述の説明においては、通常の表示動作とは独立したキャリブレーション動作として説明を行った。しかし、通常の動画や静止画の表示動作中に、映像信号から導出される全画面の平均輝度・ホワイトバランスと光センサ610で測定された平均輝度・ホワイトバランスとを比較し、ずれを検出しても良い。そして、平均輝度・ホワイトバランスずれが発生しているようであれば、ユーザに報知したり、上述したキャリブレーション動作に自動的に移行するよう構成しても良い。また、ずれ量から補正係数を導出して、その都度補正するように構成しても良い。この場合、ずれ量に対する補正値のテーブルなどをあらかじめ設定し、ずれ量から補正値を決定して、上述補正回路のマトリクスの補正係数を書き換えるなどして、補正することが可能である。
【0062】
さらに、上述の説明においては、背面投射装置の背面部分に集光領域300が存在するとした。しかし、もちろん、集光領域300が装置背面部分となる場合に限るものでない。例えば、天井ミラー103を用いず下方からスクリーン102に対して直接投射する場合、装置下部にスクリーン102からの反射光が集光する場合がある。その場合には、装置下部の集光領域300に光センサ610を設けるよう構成しても良い。つまり、スクリーン102からの反射光が集光する位置において測定を行うことで、鑑賞の邪魔にならず効率的な測定が可能となる。
【0063】
また、ここでは補正量導出の際の外光の影響を低減する方法について一部述べた。しかし、外光のホワイトバランス(色温度)を測定し、外光色をキャンセルするような色補正(色温度補正など)の補正量を導出するよう構成してもよい。そのように構成することで、外光に左右されない表示を行うことが可能になる。
【0064】
以上説明したとおり本実施形態によれば、スクリーン102からの反射光の集光領域300に光センサ610を設置する。そのような構成とすることにより、ユーザの鑑賞に影響を与えることなく表示全画面の光の変化の検出を可能となる。そして、その検出結果を元に補正回路607の動作を制御することで、より高画質な表示装置を提供することができる。
【0065】
(変形例)
上述した第1実施形態においては、スクリーン102からの反射光の集光領域に配置したセンサによる測定結果に基づいて、補正回路607の動作を制御するよう説明を行った。つまり、補正回路607の動作を制御することにより、LCOSパネル207〜209の駆動条件を制御しホワイトバランス補正を実現する構成として説明した。しかし、スクリーン102全面に対し同一の補正を行う時はLCOSパネル207〜209を制御する替わりに光源の駆動条件を制御するよう構成しても良い。つまり、検出回路609による出力に基づいて制御部608はランプ制御回路602へ制御を行うよう構成しても良い。
【0066】
近年では、光源として、放電ランプの変わりに、LEDランプを用いた各種装置が提案されている。そのため、今後LEDの高輝度化の進展によって、LEDを光源とした背面投射型表示装置が市場に出てくることは想像に難くない。しかしながら、LEDの輝度は駆動電流にしたがって変化するが、その値は素子毎にばらついている。そのため、LEDを光源として用いた場合には、LEDの輝度特性のばらつきが大きな問題となりうる。この場合には、ランプ制御回路602へ制御を行いRGB各色LEDの順方向電流をそれぞれ補正することで、ばらつきを補正することが可能となる。このように、スクリーン102全面に同一のバラツキが発生するずれを補正する場合には、ランプ制御回路602へ制御を行う構成が適している。
【0067】
なお、上述したランプ制御回路602への制御による補正は経時変化にも対応することが可能である。このときには、LCOSパネルに代表されるライトバルブの駆動補正を行うよう構成してもよいし、ランプの駆動補正を行うよう構成しても良い。あるいは、これら双方を組み合わせて補正してもよい。
【0068】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0069】
なお、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するプログラムを、システム或いは装置に直接或いは遠隔から供給し、そのシステム或いは装置が、供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0070】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。
【0071】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどがある。
【0072】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続し、ホームページから本発明のコンピュータプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明のクレームに含まれるものである。
【0073】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせ、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0074】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される他、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0075】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】背面投射型表示装置を投射面背面から見た時の概略構造図である。
【図2】投射ユニット内部の概略構成を示した図である。
【図3】投射ユニットからの光がスクリーンに投射される様子を模式的に示した図である。
【図4】全反射フレネルスクリーンの断面の一部を拡大した図である。
【図5】装置内側から観察したフレネルスクリーンの同心円の状態を例示的に示す図である。
【図6】映像信号の処理の流れを示すブロック図である。
【図7】光センサ周辺の具体的な構成例を示す図である。
【図8】色むらを測定する様子を説明する図である。
【図9】色むら補正の補正量導出のフローチャートである。
【図10】ラインセンサを用いた構成を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部からの照射光をライトバルブを介してフレネルスクリーンに投射する背面投射形表示装置であって、
前記フレネルスクリーンからの反射光が集光する位置に設けられた光測定手段と、
前記光測定手段による測定結果に基づいて、前記ライトバルブを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする背面投射型表示装置。
【請求項2】
光源部からの光をライトバルブを介して全反射フレネルスクリーンに投射する背面投射形表示装置において、
前記全反射フレネルスクリーンからの反射光が集光する位置に設けられた光測定手段と、
前記光測定手段による測定結果に基づいて、前記光源部の駆動を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする背面投射型表示装置。
【請求項3】
全反射フレネルスクリーンの一部分に対し選択的に光が投射されるよう前記ライトバルブを制御する位置選択手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の背面投射型表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は前記ライトバルブを制御しホワイトバランスを制御することを特徴とする請求項1に記載の背面投射型表示装置。
【請求項5】
前記ライトバルブはRGBの三色の光それぞれに対応したライトバルブ群から構成されており、
前記制御手段は前記ライトバルブ群をそれぞれ独立して制御し色むらの補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の背面投射型表示装置。
【請求項6】
光源部からの照射光をライトバルブを介して全反射フレネルスクリーンに投射する背面投射形表示装置の制御方法であって、
前記全反射フレネルスクリーンからの反射光が集光する位置に設けられた光センサにより光量を測定する測定工程と、
前記測定工程による光量の測定結果に基づいて、前記ライトバルブを制御する制御工程と、
を備えることを特徴とする制御方法。
【請求項7】
光源部からの照射光をライトバルブを介して全反射フレネルスクリーンに投射する背面投射形表示装置の制御プログラムであって、
前記全反射フレネルスクリーンからの反射光が集光する位置に設けられた光センサにより光量を測定する測定工程を実行するためのプログラムコードと、
前記測定工程による光量の測定結果に基づいて、前記ライトバルブを制御する制御工程を実行するためのプログラムコードと、
を備えることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−292890(P2007−292890A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118442(P2006−118442)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】