説明

脂溶性ビタミン含有可溶化組成物

【課題】食品用乳化剤を使用することなく、飲料に添加した際の澄明性に優れた脂溶性ビタミン含有可溶化組成物を提供する。
【解決手段】(1)組成物100質量部中、(a)脂溶性ビタミンを1〜20質量部、(b)オクテニルコハク酸澱粉を5〜20質量部、(c)アラビアガムを5〜20質量部、および(d)多価アルコールを15〜63質量部含有することを特徴とする脂溶性ビタミン含有可溶化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂溶性ビタミンを含有する可溶化組成物及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品業界において脂溶性ビタミン類を水に分散、溶解し可溶化する方法としては、キラヤ抽出物やポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの食品用乳化剤を使用する方法が行われてきた。しかし食品用乳化剤は、消費者意識の高まりや、風味の観点などから近年使用が好まれない傾向にある。
一方、食品用乳化剤を使用しないで脂溶性ビタミンを水に乳化する方法としては、例えば、可食性油脂材料を、約200〜約1000cps(30重量%水溶液、25℃)の粘度を有するデンプンカルボン酸エステル分解物及び多価アルコール類の存在下に、水中に乳化せしめて得られる乳化組成物(特許文献1参照)、脂溶性物質、加工澱粉および糖類に水を加えて乳化し、該乳化液を乾燥した乳化粉末の製造方法(特許文献2参照)、油溶性物質、加工澱粉および植物ガムを水に加えて乳化し、乳化液を乾燥することを特徴とする医薬又は健康食品用乳化粉末の製造方法(特許文献3参照)などが開示されている。
しかし、上記方法により得られた乳化組成物または乳化粉末は、水に溶解した際の澄明性に問題があり、必ずしも満足できるものではない。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−3748号公報
【特許文献2】特開平11−196785号公報
【特許文献3】特開平11−193229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、食品用乳化剤を使用することなく、飲料に添加した際の澄明性に優れた脂溶性ビタミン含有可溶化組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、脂溶性ビタミンを含有する油相部と、オクテニルコハク酸澱粉、アラビアガム、および多価アルコールを含有する水相部とを混合し油滴粒子の平均粒子径を0.1μm以下に均質化した組成物が上記課題を解決すること見出した。本発明者らは、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)組成物100質量部中、(a)脂溶性ビタミンを1〜20質量部、(b)オクテニルコハク酸澱粉を5〜20質量部、(c)アラビアガムを5〜20質量部、および(d)多価アルコールを15〜63質量部含有することを特徴とする脂溶性ビタミン含有可溶化組成物、
(2)脂溶性ビタミンを含有する油相部と、オクテニルコハク酸澱粉、アラビアガム、および多価アルコールを含有する水相部とを混合し油滴粒子の平均粒子径を0.1μm以下に均質化することを特徴とする脂溶性ビタミン含有可溶化組成物の製造方法、
からなっている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の脂溶性ビタミン含有可溶化組成物は、水に添加した際の澄明性に優れ、とりわけ酸性飲料や食物繊維を含む飲料に添加してもネックリングや沈殿を生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で用いられる脂溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD及びビタミンK、またはその誘導体などが挙げられる。これらの脂溶性ビタミンは、単独で用いても良く、または2種以上を組み合わせて用いても良い。脂溶性ビタミンは、賦形剤として食用油脂を含むものであっても良く、また、組成物中の脂溶性ビタミンの含有量調整のため食用油脂を併用することもできる。
【0008】
上記食用油脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、サフラワー油、ぶどう油、大豆油、ひまわり油、小麦はい芽油、とうもろこし油、綿実油、ごま油、なたね油、こめ油、落花生油、オリーブ油等の液状油が挙げられる。上記食用油脂は、単独で用いても良く、または2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0009】
本発明に用いられる脂溶性ビタミンの配合量は、脂溶性ビタミン含有可溶化組成物100質量部中約1〜20質量部であり、好ましくは約1〜15質量部である。1質量部より少ないと組成中の有効成分が少な過ぎ好ましくなく、20質量部より多いと均一な分散状態の可溶液が得られにくくなり好ましくない。
【0010】
本発明に用いられるオクテニルコハク酸澱粉は、澱粉に無水オクテニルコハク酸を作用させて得られる加工澱粉である。エステル化の程度は米国のFDA(Food and Drug Administration)で食品用として規定されているもの、即ち澱粉に対して無水オクテニルコハク酸が3質量%を越えない量を使用してエステル化するものである。オクテニルコハク酸澱粉は、製造方法の違いにより熱水可溶タイプと冷水可溶タイプが存在しいずれも本発明に使用できる。熱水可溶タイプのオクテニルコハク酸澱粉は、例えば天然澱粉を水に縣濁させ、無水コハク酸によるエステル化と酸又は酸化剤による粘度調整を行った後、中和、水洗、脱水、乾燥して製造される。冷水可溶タイプのオクテニルコハク酸澱粉は、前記熱水可溶タイプオクテニルコハク酸澱粉を糊化乾燥することにより得られるα化澱粉、あるいはオクテニルコハク酸化した澱粉をそのまま糊化することにより得られる糊化物を、酵素又は酸で加水分解した後、粘度調整、精製、乾燥することによって製造される。具体的には、例えばエマルスターEMS−10(松谷化学工業社製)、エマルスター30A(松谷化学工業社製)、エヌクリーマー46(日本エヌエスシー社製)、カプシュールST(日本エヌエスシー社製)、ハイキャップ100(日本エヌエスシー社製)、ピュリティーガムBE(日本エヌエスシー社製)等を挙げることができる。
【0011】
本発明に用いられるオクテニルコハク酸澱粉の配合量は、脂溶性ビタミン含有可溶化組成物100質量部中約5〜20質量部 であり、好ましくは約7〜15質量部である。5質量部より少ないと均一な分散状態の可溶化液が得られにくく、20質量部以上では粘度が高くなり過ぎて可溶化液の調整が困難となり好ましくない。
【0012】
本発明に用いられるアラビアガムは、マメ科アラビアゴムノキ(Acacia Senegal Willdenow)又は他同属植物の分泌物を乾燥して得られたもの又はこれを脱塩して得られたものであり、多糖類を主成分とするものである。いずれも市販されているものを使用することができる。
【0013】
本発明に用いられるアラビアガムの配合量は、脂溶性ビタミン含有可溶化組成物100質量部中約5〜20質量部 であり、好ましくは約7〜15質量部である。5質量部より少ないと均一な分散状態の可溶化液が得られにくく、20質量部以上では粘度が高くなり過ぎて可溶化液の調整が困難となり好ましくない。
【0014】
本発明に用いられる多価アルコールは、1分子中に2つ以上のヒドロキシ基をもつ化合物であれば特に制限はなく、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、還元水飴、マルチトール、エリスリトール、パラチニット、ラクチトール、マンニトール等を挙げることができる。上記多価アルコールは、単独で用いても良く、または2種以上を組み合わせて用いても良い。上記多価アルコールは、水を含むものであっても良く、また組成物の粘度調整のため適量の水を併用することもできる。
【0015】
本発明に用いられる多価アルコールの配合量は、脂溶性ビタミン含有可溶化組成物100質量部中約15〜63質量部であり、好ましくは約18〜55質量部である。多価アルコールの配合量が約15質量部より少ないと均一な分散状態の可溶化液が得られにくく、63質量部以上では粘度が高くなり過ぎて可溶化液の調整が困難となり好ましくない。
【0016】
本発明の可溶化組成物は、脂溶性ビタミンと必要であれば油脂を含む油相部と、オクテニルコハク酸澱粉、アラビアガムおよび多価アルコールと必要であれば水とを含む水相部とを混合して均質化することによって得られる。
【0017】
本発明の脂溶性ビタミン含有可溶化組成物の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いて行うことができる。以下に好ましい可溶化組成物の製造方法を例示する。
オクテニルコハク酸澱粉約5〜20質量部、アラビアガム約5〜20質量部、および多価アルコール約15〜63質量部と必要であれば水約1〜30質量部とを混合し約40〜90℃、好ましくは約60〜80℃に加熱しながら溶解して水相部とする。一方、脂溶性ビタミンと必要であれば食用油脂を添加した約1〜20質量部を約100℃以下、好ましくは約60〜80℃に加熱し混合溶解して油相部とする。上記水相部を撹拌しながら、約100℃以下、好ましくは約60〜80℃に保温された脂溶性ビタミンを含有する油相部約1〜20重量%をゆっくり加えて混合し、さらに均質化することにより本発明に係る脂溶性ビタミン含有可溶化組成物を製造することができる。
【0018】
上記の水相部と油相部とを均質化する方法としては、例えば、攪拌羽の周速が750m/分以上の強い剪断力を持つ高速撹拌乳化機である、TKホモミクサー(プライミクス社製)またはクレアミキサー(エムテクニック社製)等の高速回転式分散・乳化機の使用が挙げられる。また例えば、均質化圧力49MPa以上の高圧式均質化処理機として、APVゴーリンホモジナイザー(APV社製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス社製)、アルティマイザー(スギノマシン社製)またはナノマイザー(大和製罐社製)等を使用することができる。例えば高圧式均質化処理機を用いる均質化工程を2回以上行うこともできる。
上記均質化処理機に代えて、例えば超音波乳化機等の均質化処理機を用いても良い。
【0019】
本発明の脂溶性ビタミン含有可溶化組成物の油滴粒子の平均粒子径は、約0.1μm以下であり、好ましくは約0.005〜0.09μmである。該平均粒子径が約0.1μmより大きいと、脂溶性ビタミン含有可溶化組成物自身の安定性が不安定となる恐れがある。平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(形式:LA−950;堀場製作所社製)などで測定することができる。
【0020】
本発明の脂溶性ビタミン含有可溶化組成物を水で0.1質量%に希釈した水溶液の透過率(T%)は、水に対し約70%以上である。透過率は、分光光度計(形式:U−3310;日立社製)などで、セル幅1cmを使用し波長660nmで測定することができる。
【0021】
本発明の脂溶性ビタミン含有可溶化組成物を添加する飲料としては外観上澄明性が必要な飲料が好ましく、例えばスポーツ飲料、食物繊維入り飲料、サプリメント飲料、炭酸飲料、果実飲料(果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果汁入り炭酸飲料、果肉飲料を含む)、紅茶飲料、緑茶、ブレンド茶、リキュール類等のアルコール飲料などが挙げられる。
【0022】
本発明の脂溶性ビタミン含有可溶化組成物は、目的とする飲料に任意の量を添加することができ、その添加量は脂溶性ビタミンの必要量に合わせて決めれば良い。添加の方法についても特に限定した方法はなく、任意の方法にて添加することが可能である。
【0023】
以下に実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0024】
<脂溶性ビタミン含有可溶性組成物の作成>
(1)原材料
1)ビタミンE(商品名:理研Eオイル600;理研ビタミン社製 総ビタミンE含量約51質量%以上)
2)ビタミンD(商品名:理研D3オイル20;理研ビタミン社製 ビタミンD3含量0.05質量%以上)
3)ビタミンAパルミテート(商品名:ビタミンAパルミテート;DSMニュートリションジャパン社製 170万I.U./mg)
4)こめ油(商品名:NR米油;カネカ社製)
5)オクテニルコハク酸澱粉1(商品名:エヌクリーマー46;日本エヌエスシー社製)
6)オクテニルコハク酸澱粉2(商品名:カプシュールST;日本エヌエスシー社製)
7)アラビアガム(商品名:クイックガム#8029;クレオ・インターナショナル社製)
8)グリセリン(ミヨシ油脂社製)
9)D−ソルビトール液(商品名:ソルビットAO;サンエイ糖化社製 濃度70%)
10)グリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエムJ−0081V;理研ビタミン社製)
【0025】
(2)脂溶性ビタミン含有可溶化組成物の作製
[実施例1]
2L容ステンレス製ジョッキにグリセリン(630g)を加え約70℃まで加熱して、TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社)で回転数3000rpmで攪拌しながら、アラビアガム(120g)とオクテニルコハク酸澱粉1(50g)とを加えTKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)で回転数4000rpmにして、そのまま10分間攪拌して均一に分散して水相部とした。
次いで、ビタミンE(180g)とこめ油(20g)とを合わせて約70℃まで加熱して油相部とした。TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)で回転数3000rpmにて撹拌しながら水相部に油相部を加えた後、TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)を用いて70℃にて回転数8000rpmで15分間攪拌・均質化し、得られた均質化液を更にAPVゴーリンホモジナイザー(型式:LAB1000;APV社製)にて150MPaで1回処理し、脂溶性ビタミン含有可溶化組成物(実施例品1)1000gを得た。
【0026】
[実施例2]
2L容ステンレス製ジョッキにD−ソルビトール液(350g)と水(300g)とを加え約70℃まで加熱して、TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社)で回転数3000rpmで攪拌しながら、アラビアガム(50g)とオクテニルコハク酸澱粉2(200g)とを加えTKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)で回転数4000rpmにして、そのまま10分間攪拌して均一に分散して水相部とした。
次いで、ビタミンE(50g)とこめ油(50g)とを合わせて約70℃まで加熱して油相部とした。TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)で回転数3000rpmにて撹拌しながら水相部に油相部を加えた後、TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)を用いて70℃にて回転数8000rpmで15分間攪拌・均質化し、得られた均質化液を更にAPVゴーリンホモジナイザー(型式:LAB1000;APV社製)にて150MPaで1回処理し、脂溶性ビタミン含有可溶化組成物(実施例品2)1000gを得た。
【0027】
[実施例3]
2L容ステンレス製ジョッキにグリセリン(250g)と水(150g)とを加え約70℃まで加熱して、TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社)で回転数3000rpmで攪拌しながら、アラビアガム(200g)とオクテニルコハク酸澱粉1(50g)とオクテニルコハク酸澱粉2(150g)とを加えTKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)で回転数4000rpmにして、そのまま10分間攪拌して均一に分散して水相部とした。
次いで、ビタミンD(200g)を約70℃まで加熱して油相部とした。TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)で回転数3000rpmにて撹拌しながら水相部に油相部を加えた後、TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)を用いて70℃にて回転数8000rpmで15分間攪拌・均質化し、得られた均質化液を更にAPVゴーリンホモジナイザー(型式:LAB1000;APV社製)にて150MPaで1回処理し、脂溶性ビタミン含有可溶化組成物(実施例品3)1000gを得た。
【0028】
[実施例4]
2L容ステンレス製ジョッキにグリセリン(200g)とD−ソルビトール液(300g)と水(150g)とを加え約70℃まで加熱して、TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社)で回転数3000rpmで攪拌しながら、アラビアガム(100g)とオクテニルコハク酸澱粉1(100g)とを加えTKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)で回転数4000rpmにして、そのまま10分間攪拌して均一に分散して水相部とした。
次いで、ビタミンAパルテート(150g)を約70℃まで加熱して油相部とした。TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)で回転数3000rpmにて撹拌しながら水相部に油相部を加えた後、TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)を用いて70℃にて回転数8000rpmで15分間攪拌・均質化し、得られた均質化液を更にAPVゴーリンホモジナイザー(型式:LAB1000;APV社製)にて150MPaで1回処理し、脂溶性ビタミン含有可溶化組成物(実施例品4)1000gを得た。
【0029】
[実施例5]
2L容ステンレス製ジョッキにグリセリン(150g)とD−ソルビトール液(390g)と水(200g)とを加え約70℃まで加熱して、TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社)で回転数3000rpmで攪拌しながら、アラビアガム(50g)とオクテニルコハク酸澱粉1(100g)とオクテニルコハク酸澱粉2(100g)とを加えTKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)で回転数4000rpmにして、そのまま10分間攪拌して均一に分散して水相部とした。
次いで、ビタミンD(10g)を約70℃まで加熱して油相部とした。TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)で回転数3000rpmにて撹拌しながら水相部に油相部を加えた後、TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)を用いて70℃にて回転数8000rpmで15分間攪拌・均質化し、得られた均質化液を更にAPVゴーリンホモジナイザー(型式:LAB1000;APV社製)にて150MPaで1回処理し、脂溶性ビタミン含有可溶化組成物(実施例品5)1000gを得た。
【0030】
[比較例1]
実施例1の作製方法において、アラビアガム(120g)を加えず、水(120g)を加えた以外は、実施例1と同様に実施し脂溶性ビタミン含有可溶化組成物(比較例品1)1000gを得た。
【0031】
[比較例2]
実施例1の作製方法において、オクテニルコハク酸澱粉1(50g)を加えず、水(50g)を加えた以外は、実施例1と同様に実施し脂溶性ビタミン含有可溶化組成物(比較例品2)1000gを得た。
【0032】
[比較例3]
実施例1の作製方法において、グリセリン(630g)を加えず、水(630g)を加えた以外は、実施例1と同様に実施し脂溶性ビタミン含有可溶化組成物(比較例品3)1000gを得た。
【0033】
[比較例4]
実施例2の作製方法において、アラビアガム(50g)を加えず、水(300g)を水(350g)に代えた以外は、実施例2と同様に実施し脂溶性ビタミン含有可溶化組成物(比較例品4)1000gを得た。
【0034】
[比較例5]
実施例2の作製方法において、オクテニルコハク酸澱粉2(200g)を加えず、水(300g)を水(500g)に代えた以外は、実施例2と同様に実施し脂溶性ビタミン含有可溶化組成物(比較例品5)1000gを得た。
【0035】
[比較例6]
実施例2の作製方法において、D−ソルビトール液(350g)を加えず、水(300g)を水(650g)に代えた以外は、実施例2と同様に実施し脂溶性ビタミン含有可溶化組成物(比較例品6)1000gを得た。
【0036】
[参考例1]
2L容ステンレス製ジョッキにグリセリン(150g)とD−ソルビトール液(200g)と水(350g)とを加え約70℃まで加熱して、TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社)で回転数3000rpmで攪拌しながら、グリセリン脂肪酸エステル(100g)を加えTKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)で回転数4000rpmにして、そのまま10分間攪拌して均一に分散して水相部とした。
次いで、ビタミンE(150g)とこめ油(50g)とを合わせて約70℃まで加熱して油相部とした。TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)で回転数3000rpmにて撹拌しながら水相部に油相部を加えた後、TKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)を用いて70℃にて回転数8000rpmで15分間攪拌・均質化し、得られた均質化液を更にAPVゴーリンホモジナイザー(型式:LAB1000;APV社製)にて150MPaで1回処理し、脂溶性ビタミン含有可溶化組成物(参考例品1)1000gを得た。
実施例1〜5、比較例1〜6および参考例1の配合をまとめ表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
<脂溶性ビタミン含有可溶化組成物の評価>
(1)平均粒子径
実施例1〜5、比較例1〜6および参考例1で作製した脂溶性ビタミン含有可溶化組成物(実施例品1〜5、比較例品1〜6、参考例1)を、作製直後のものと常温にて3ヶ月間保管したものを使用して平均粒径を測定した。
[測定方法]
脂溶性ビタミン含有可溶化組成物2gを量り水50mlに溶解したものを検液とし、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(形式:LA−950;堀場製作所社製)を使用して油滴粒子の平均粒子径を測定した。測定結果を表2に示す。
(2)透過率(T%)
実施例1〜5、比較例1〜6および参考例1で作製した脂溶性ビタミン含有可溶化組成物(実施例品1〜5、比較例品1〜6、参考例品1)を、作製直後のものと常温にて3ヶ月間保管したものを使用して透過率を測定した。
[測定方法]
脂溶性ビタミン含有可溶化組成物0.10gを正確に量り水にて溶解して正確に100mlとしたものを検液とし、分光光度計(形式:U−3310;日立社製)にて水を対照液として660nmにおける透過率(T%)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

結果より、実施例1〜5で得られた脂溶性ビタミン含有可溶化組成物は、製造直後と保管後の平均粒子径は0.1μm以下であり、且つ脂溶性ビタミン含有可溶化組成物の透過率(T%)は70%以上であった。一方、比較例1〜6で得られた脂溶性ビタミン含有可溶化組成物は、平均粒径が0.1μmより大きく、透過率(T%)は70%より小さかった。
【0040】
飲料モデルとして、酸性水溶液と食物繊維含有水溶液を作製し、実施例1〜5、比較例1〜6および参考例1で作製した脂溶性ビタミン含有可溶化組成物(実施例品1〜5、比較例品1〜6、参考例品1)を添加した。
(1)酸性水溶液(0.1Mクエン酸溶液:pH2.0)への添加テスト
[飲料モデル試料の作製]
1)クエン酸(和光純薬工業社製)1.92gを水100mlに溶解し酸性水溶液(0.1Mクエン酸溶液:pH2.0)を作製した。
2)得られた酸性水溶液100mlに実施例1〜5、比較例1〜6、参考例1で得た脂溶性ビタミン含有可溶化組成物(実施例品1〜5、比較例品1〜6、参考例品1)を0.1gとり溶解して飲料モデル試料1〜12を得た。
[評価方法]
得られた飲料モデル試料1〜12を、作製直後と透明ガラス瓶(100ml容キャップ付き透明マヨネーズ瓶)に封入して室温にて1ヶ月間保存した後の状態を下記評価基準で目視にて評価した。結果を表3に示す。
評価基準:
+++:ネックリングや沈殿を多量認め、液は濁りを生じ澄明でない。
++ :ネックリングや沈殿を少量認め、液は濁りを生じ澄明でない。
+ :ネックリングや沈殿を極少量認め、液はやや濁りを生じ澄明でない。
− :ネックリングや沈殿を認めず、液は澄明である。
【0041】
【表3】

結果より、実施例品1〜5を使用した飲料モデル試料1〜5はネックリングや沈殿が生じることはなく、液は澄明な状態であった。一方、比較例品1〜6を使用した飲料モデル試料6〜11は、作成直後又は保管後にネックリングや沈殿が生じ、液は澄明でなく実施例品より悪い結果であった。
【0042】
(2)食物繊維含有水溶液(5質量%食物繊維含有水溶液)への添加テスト
[飲料モデル試料の作製]
1)食物繊維(商品名:パインファイバー;松谷化学工業社製)5gを水100mlに溶解し食物繊維含有水溶液(5質量%食物繊維含有水溶液)を作製した。
2)作製した食物繊維含有溶液100mlに実施例1〜5、比較例1〜6、参考例1で得た脂溶性ビタミン含有可溶化組成物(実施例品1〜5、比較例品1〜6、参考例品1)を0.1gとり溶解して飲料モデル試料13〜24を得た。
[評価方法]
得られた飲料モデル試料13〜24を、作製直後と透明ガラス瓶(100ml容キャップ付き透明マヨネーズ瓶)に封入して室温にて1ヶ月間保存した後の状態を酸性水溶液を使用した飲料モデルと同様な評価方法と評価基準で評価した。結果を表4に示す。
【0043】
【表4】

結果より、実施例品1〜5を使用した飲料モデル試料13〜17はネックリングや沈殿が生じることはなく、液は澄明な状態であった。一方、比較例品1〜6を使用した飲料モデル試料18〜23は、作成直後又は保管後にネックリングや沈殿が生じ、液は澄明でなく実施例品より悪い結果であった。また、参考例品1を使用した飲料モデル試料24は、作成直後と保管後にネックリングや沈殿が生じ、液は澄明でなく実施例品より悪い結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の脂溶性ビタミン含有可溶化組成物は、従来の食品用乳化剤を含む脂溶性ビタミン含有可溶化組成物に替えて澄明性を必要とする飲料に使用することができる。また、食物繊維を含有する飲料のネックリング発生抑制や沈殿抑制の特性を生かし各種飲料への使用も可能であり、さらに可溶化する機能を生かし脂溶性ビタミンを水溶性食品、例えばドレッシングタイプ調味料、たれ・ソースなどの液体調味料などに使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物100質量部中、(a)脂溶性ビタミンを1〜20質量部、(b)オクテニルコハク酸澱粉を5〜20質量部、(c)アラビアガムを5〜20質量部、および(d)多価アルコールを15〜63質量部含有することを特徴とする脂溶性ビタミン含有可溶化組成物。
【請求項2】
脂溶性ビタミンを含有する油相部と、オクテニルコハク酸澱粉、アラビアガム、および多価アルコールを含有する水相部とを混合し油滴粒子の平均粒子径を0.1μm以下に均質化することを特徴とする脂溶性ビタミン含有可溶化組成物の製造方法。

【公開番号】特開2009−240219(P2009−240219A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90637(P2008−90637)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(390010674)理研ビタミン株式会社 (236)
【Fターム(参考)】