説明

脂環式アミン又は飽和複素環式アミンの製造方法

【課題】脂環式アミン又は飽和複素環式アミンを高収率で容易に製造し得る有用な方法を提供する。
【解決手段】芳香族ニトリル又は不飽和複素環式ニトリルを、パラジウムとロジウム及び/又はルテニウムを含有する貴金属系触媒、及びアミノアルコールの存在下で水素化反応を行うことにより、医薬品原料などに用いられる高純度の脂環式アミン又は飽和複素環式アミンが、収率よく且つ工業的に有利に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度の脂環式アミン又は飽和複素環式アミンの製造方法に関する。詳しくは、芳香族ニトリル又は不飽和複素環式ニトリルを少なくとも2種の貴金属を含有する触媒及びアミノアルコール溶媒の存在下で水素化反応を行うことにより、医薬品原料などに用いられる高純度の脂環式アミン又は飽和複素環式アミンを、収率よく且つ工業的に有利に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脂環式アミン又は飽和複素環式アミンを得る製造方法としては、様々な公知の方法があるがその一つとして
(1)芳香族ニトリル又は複素環式ニトリルを原料とし、ニトリル基の水素化反応により芳香族アミン又は不飽和複素環式アミンを製造する工程
(2)芳香族アミン又は不飽和複素環式アミンの、環内の二重結合の水素化を行う工程
上記、公知の(1)の方法で得ることができる芳香族アミン又は不飽和複素環式アミンを(2)の工程で芳香環又は複素環内の核水素化を行う方法が考えられる。
【0003】
上記、(1)及び(2)の水素化反応において、ニトリル化合物から目的とするアミンを得るために効率よく反応を行おうとした時、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウムなどの貴金属触媒を使用して接触水素化する方法が知られている。
【0004】
上記、水素化反応を用いてニトリル化合物からアミン化合物を得る(1)の工程では、1級アミンの生成に伴って2級および3級アミンも同時に生成する場合がある。水素化反応によって得られるアミンの生成割合は触媒、温度、圧力、溶媒などの反応条件により異なり、1級アミンを主として得たいときは触媒及び反応条件の選択が必要となる(非特許文献1、特許文献4)。
また、芳香族アミン又は不飽和複素環式アミンの環内の二重結合の水素化反応においても好ましくない副反応を抑制するためには適切な反応条件の選定が必要となる(特許文献5)。
【0005】
水素化反応溶媒としてアンモニアを使用する水素化反応(特許文献1及び特許文献3)は、臭気や毒性の観点から工業的に好まれない場合がある。
またアンモニアの代わりに酢酸又は塩酸などの酸性溶媒、無水酢酸などのアセチル化溶媒を使用する方法 (非特許文献1及び特許文献6) も知られているが、装置の腐食の問題から対応した設備が必要となり、コストの面で不利になる場合がある。
【0006】
アンモニア、酸性溶媒、アセチル化溶媒を使用せずに、上記水素化反応を実施した場合、これらの溶媒を使用することにより抑制されていたアミノ基の脱アンモニア縮合反応により副生する2級アミン又は3級アミンの生成が著しく、目的とする1級アミンの収率や純度が低下の原因となる。
【0007】
上記(1)及び(2)の工程をそれぞれ行い、ニトリル化合物から目的とするアミンを得ようとした時、(1)の工程で生成する中間体のアミン類の純度によっては精製工程を要する。中間体のアミンを得る段階で精製を行う事は、工程が煩雑になり、収率低下の原因にもなり工業的に不利である。また、中間体のアミン類は、臭気の発生原因となったり、化合物によっては有害であったりするため芳香族ニトリル又は不飽和複素環式ニトリルから、中間体を単離することなく1バッチで水素化反応を行い脂環式アミン又は飽和複素環式アミンを得ることができれば工業的に有利である。
中間体を単離せず直接芳香族ニトリルから脂環式アミンを得る方法(特許文献2)も知られているが、特殊な貴金属ラネー触媒を用いる必要があり、経済性の面で不利な場合がある。また、複素環式ニトリルを酸の存在下で水素化反応を行い、飽和複素環式アミンを得る方法(特許文献6)は、その実施例において得られる目的生成物の収率が60%程度であり充分なものであるとは言い難い。
【0008】
【特許文献1】特開平5−97776号公報
【特許文献2】特開平9−66236号公報
【特許文献3】特開平6−279368号公報
【特許文献4】特開2003−286261号公報
【特許文献5】特開昭61−251659号公報
【特許文献6】特開平10−273482号公報
【非特許文献1】接触水素化反応(有機合成への応用) 東京化学同人
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc., 82, 2386 (1960)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の問題点を解消し、脂環式アミン又は飽和複素環式アミンを、高純度、高収率で、かつ工業的に有利に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を見いだした。
(1)芳香族ニトリル又は不飽和複素環式ニトリルの水素化反応において、アンモニア、酸性溶媒、アセチル化溶媒を用いず、アミノアルコール類を溶媒として使用することにより、水素化反応時の2級アミン又は3級アミンの副生が抑制され高収率で目的の脂環式アミン又は飽和複素環式アミンを得ることができる。
(2) 水素化反応触媒として、パラジウムを必須の成分とし、更にロジウム及び/又はルテニウムを含有する貴金属系触媒を使用し、芳香族ニトリル又は不飽和複素環式ニトリルの水素化反応を行うことにより、中間体であるアミン類を単離することなく1バッチで水素化反応が進行し、目的とする脂環式アミン又は飽和複素環式アミンを効率よく得ることができる。
【0011】
本発明は係る知見に基づき完成されたものであり、以下の発明を提供するものである。
【0012】
確定した請求項を最後に記載します。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は芳香族ニトリル又は不飽和複素環式ニトリルを、特定の貴金属系触媒及びアミノアルコールの存在下で水素化反応を行い脂環式アミン又は飽和複素環式アミンを製造する方法に関する。該飽和複素環式アミンとは、複素環内に二重結合を有しない複素環式アミンである。以下に本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明に係る脂環式アミン又は飽和複素環式アミンの製造方法における、原料のニトリル化合物としては、芳香環又は複素環上に、少なくとも1つのニトリル基が導入された化合物である。
【0015】
<芳香族ニトリル>
本発明に係る芳香族ニトリルは、一般式(1)
−(CN)n (1)
[式中、nは1又は2の整数を表す。式中Rは、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族基を表す。]で表される。
【0016】
上記一般式(1)におけるニトリル基の個数nは、1〜2である。 また、上記芳香族ニトリルは、水酸基、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基(炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜4)及び直鎖状若しくは分岐鎖状のアセトキシ基からなる群から選択される1個若しくは2個以上の置換基を有していてもよい。
【0017】
本発明に係る芳香族ニトリルとしては、具体的には2−シアノトルエン、3−シアノトルエン、4−シアノトルエン、1,2−ジシアノベンゼン、1,3−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、1,2−ジシアノ−3,4,5,6−テトラフルオロベンゼン、4−トリフルオロメチルシアノベンゼン、4−シアノ−フェニルアセトニトリル、N−(2−シアノ−エチル)−N−メチルアニリン、N−(2−シアノ−エチル)−N−エチルアニリン、2−シアノフェノール、3−シアノフェノール、4−シアノフェノール、2−シアノベンズアルデヒド、3−シアノベンジルアルコール、4−シアノベンズアミド、4−シアノ安息香酸、4−シアノ安息香酸メチル、4−シアノビフェニル、2−シアノナフタレン、2,3−ジシアノナフタレン、6−シアノ−2−ナフトール、α―シアノ−3−ヒドロキシ桂皮酸、4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル、4−シアノ−4’−ニトロビフェニル、4−シアノ−2’−ニトロビフェニル、2,3−ジシアノ−ハイドロキノン、9−シアノアントラセン、9−シアノフェナントレン 等の芳香族ニトリルが例示される。
【0018】
上記、芳香族ニトリルの中でも2−シアノトルエン、3−シアノトルエン、4−シアノトルエン、1,2−ジシアノベンゼン、1,3−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、1,2−ジシアノ−3,4,5,6−テトラフルオロベンゼン、4−トリフルオロメチル−1−シアノベンゼン、4−シアノ−フェニルアセトニトリル、N−(2−シアノ−エチル)−N−メチルアニリン、2−シアノフェノール、2−シアノナフタレン、2,3−ジシアノナフタレン、6−シアノ−2−ナフトール、4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル、4−シアノ−4’−ニトロビフェニル、2,3−ジシアノ−ハイドロキノン及び9−シアノフェナントレンが好ましい。
【0019】
<不飽和複素環式ニトリル>
本発明に係る不飽和複素環式ニトリルは、一般式(2)、
【化3】

[式中、jは1又は2の整数を表す。Xは、−O−又は−NH−のいずれかを表す。式中、Y及びZは、同一又は異なって、それぞれ炭素原子又は窒素原子を表す。]
で表される複素環式ニトリル、
一般式(3)
【化4】

[式中、kは1又は2の整数を表す。X、Y及びZは、同一又は異なって、それぞれ炭素原子又は窒素原子を表す。]
で表される複素環式ニトリル、
又は、不飽和縮合二環系複素環式ニトリルである。
【0020】
上記、一般式(2)及び(3)におけるシアノ基の個数であるj及びkは、1又は2の整数を表す。 また、複素環式ニトリルは、水酸基、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基(炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜4)及び直鎖状若しくは分岐鎖状のアセトキシ基からなる群から選択される1個若しくは2個以上の置換基を有していてもよい。
【0021】
上記、不飽和縮合二環系複素環式ニトリルとは、インドール、イソインドール、ピロリジン、ピリンジン、インドリジン、インダゾール、プリン、キノリジン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、ベンゾフラン、クロメン、イソクロメン、クマリン又はクロモン等の不飽和縮合二環系複素環化合物に置換器としてシアノ基が1個若しくは2個以上有するものである。
【0022】
本発明に係る不飽和複素環式ニトリルとしては具体的には、シアノピラジン、2,3−ジシアノピラジン、2−シアノピリミジン、3−シアノピラゾール、3−シアノピリダジン、4,5−ジシアノイミダゾール、2−シアノピロール、3−シアノピロール、1−(2−シアノエチル)ピロール、2−シアノピリジン、3−シアノピリジン、4−シアノピリジン、2−シアノ−3−ヒドロキシピリジン、2−シアノ−3−メチルピリジン、3−シアノ−4,6−ジメチル−2−ヒドロキシピリジン、2−シアノ−1−エチルピリジン、2,3−ジシアノピリジン、2−ピリジンアセトニトリル、3−ピリジンアセトニトリルなどが例示される。
【0023】
本発明に係る不飽和縮合二環系複素環式ニトリルとしては具体的には、3−シアノインドール、5−シアノインドール、2−シアノインドール、3−シアノイソインドール、5−シアノイソインドール、2−シアノイソインドール、3−シアノキノリン、6−シアノプリン、3−シアノ−4−メチルクマリン、3−シアノ−7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン、3−シアノクロモン、3−シアノ−6−イソプロピルクロモン、3−シアノ−6−エチルクロモン等が例示される。

【0024】
上記不飽和複素環式ニトリルの中でも、2−シアノフラン、2,5−ジシアノフラン、3−シアノインドール、5−シアノインドール、、2−シアノインドール、3−シアノインドール、5−シアノインドール、3−シアノキノリン、2,3−ジシアノピリジン、シアノピラジン、2,3−ジシアノピラジン、2−シアノピリミジン、3−ヒドロキシ−2−シアノピリジン、3−シアノ−4−メチルクマリン及び4,5−ジシアノイミダゾールが好ましい。
【0025】
<原料の入手方法>
本発明の原料に用いる芳香族ニトリル又は不飽和複素環式ニトリルは工業用に入手できるもの又は試薬で入手できるもの、いずれのものも使用することができる。
原料としては、高純度品かつ水素化反応における触媒被毒物が少ないものが好ましく、触媒被毒物としては硫黄、リン、ハロゲン化合物などが例示される。また、純度が低いもの又は触媒被毒物を有するものを、例えば蒸留、再結晶、吸着処理、カラム分離、溶媒抽出などの公知の方法で精製して使用してもよい。

【0026】
<アミノアルコール>
本発明の水素化反応は、溶媒としてアミノアルコールを用いることで、水素化反応時における副生物の発生が抑制され、目的とするアミン類を高収率で得ることができる。本発明に使用されるアミノアルコールとしては、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−(ジエチルアミノ)エタノール、2−(ジブチルアミノ)エタノール、2−(ジエチルアミノ)プロパノール、3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、ジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが例示され、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−(ジエチルアミノ)エタノール、2−(ジブチルアミノ)エタノールが好ましい。上記溶媒は2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0027】
本発明に係るアミノアルコール溶媒の使用量は、原料ニトリル化合物100重量%に対して100〜950重量%が例示され、300〜900重量%であることが好ましい。溶媒の使用量が多いほど副反応が抑制され収率が向上するが、所定量以上溶媒を用いても使用量に見合った効果が得られない。

【0028】
<触媒>
本発明の水素化反応に用いる触媒は、下記(一)〜(三)で表される貴金属の組み合わせで、パラジウムと、ロジウム及び/又はルテニウムを含有する触媒である。
(一)パラジウム及びロジウム
(二)パラジウム及びルテニウム
(三)パラジウム、ロジウム及びルテニウム
該触媒は、上記貴金属成分(パラジウム、ロジウム又はルテニウム)が担体に担持してなる触媒である。該担体としてはカーボン、或いはカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、チタン又はこれらの酸化物が例示される。これら担体は1種で又は2種以上使用することができる。
【0029】
本発明の水素化反応に用いる触媒の担体への貴金属の担持量は、触媒全量に対して0.1〜20重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましい。
【0030】
本発明の水素化反応における触媒量は、使用する触媒の種類や触媒性能によって異なるので一律に定めることはできないが、回分式反応の場合、通常の触媒量は、反応器内の全液量に対して、0.1〜10重量%であり、0.1〜3重量%程度がより好ましい。触媒量が0.1重量%未満では実用的な反応速度が得られにくく、一方、その触媒量が10重量%を越えると触媒を十分に拡散できなくなることと、濾過工程に負荷がかかり好ましくない場合がある。
【0031】
本発明の水素化反応に用いる触媒は、パラジウムとロジウム及び/又はルテニウムを任意の割合で含有した触媒であって、これを上記使用量の範囲内で用いることで、効率的にニトリル還元反応及び核水素化反応が進行する。
【0032】
本発明の水素化反応にパラジウムとロジウム及び/又はルテニウムの組み合わせて用いる場合、触媒の全貴金属中含有量に対してパラジウム含有量が30重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましい。
【0033】
該触媒の形態は、特に限定されず、選択される形態に応じて粉末状、スポンジ状、タブレット状(円筒状)、ペレット状、ヌードル状(三つ葉クローバー状、四つ葉クローバー状、円柱状)等適宜選択して使用される。具体的には、回分或は連続の懸濁反応には粉末状の触媒が、又、固定床反応にはタブレット触媒等が用いられる。
粉末状の触媒を用いる場合、2種以上の粉末状貴金属系触媒を上記の貴金属の組み合わせ及び割合で併用して使用することができる。
【0034】
上記、粉末状の触媒の平均粒径としては、特に限定されないが、反応性及び濾過性を考えた場合1μm〜200μmが好ましく、3μm〜80μmがより好ましい。
【0035】
上記、タブレット状の触媒は、その表面積としては10m/g〜200m/gが例示され、20m/g〜100m/gが好ましい。表面積が10m/g未満では反応速度が遅く、200m/gを越えると反応速度の促進効果少なくなり、また圧壊強度が低下し、反応中における強度の保持率が低下しやすい。
【0036】
上記、タブレット状の触媒のサイズは、使用する反応塔の内径により決定される。サイズは直径2〜10mm、高さ2〜10mm、好ましくは直径2〜6mm、高さ2〜6mmの範囲である。ヌードル状の触媒のサイズは直径1〜10mm、好ましくは2〜6mmである。

【0037】
<反応条件>
反応温度及び反応時間
本発明の水素化反応は、副生物の発生を抑制し且つ効率よく反応を進行させるため、反応工程での温度制御が重要である。本発明における反応装置は、充分な冷却性能を有し反応熱の制御が容易であるものが推奨される。また本発明の水素化反応においては、反応時に必要に応じて水素の供給量を制御することで反応速度と反応温度を制御する事が可能である。
本発明の水素化反応は、原料である芳香族ニトリル又は複素不飽和複素環式ニトリルが反応系内に多く存在し、中間体である芳香族アミン又は不飽和複素環式アミンが生成する段階で特に副反応が起こりやすい。
芳香族ニトリル又は複素不飽和複素環式ニトリルが反応系内に多く存在する時は、反応温度を比較的低い温度で行うことにより、2級アミン又は3級アミンの発生を抑制できる。その反応温度としては具体的には40〜90℃が例示され、50〜70℃が好ましい。上記、比較的低い反応温度で水素化反応を行う段階の反応時間は通常0.5〜10時間である。生産性の観点から、低温度での反応は、反応時間が短いほうが好ましいが、製品品質の観点から原料転化率90%以上、好ましくは95%以上を達成する反応時間まで、上記温度で反応を行うことが好ましい。
【0038】
上記、比較的低い反応温度で所定の反応時間反応を行った後、反応温度を上げることで、未反応の原料である芳香族ニトリル又は複素不飽和複素環式ニトリルが実質的に消失し、更に中間体である芳香族アミン又は不飽和複素環式アミンの環内の二重結合が水素化される反応が進行する。該反応温度としては、100〜250℃が好ましく、100〜140℃がより好ましい。反応温度が100℃より低いと原料又は反応中間体から反応の進行が遅くなり、反応時間が長くなることで生産性が悪くなる。昇温後の水素化反応の反応時間は通常0.5〜10時間である。反応時間が長いほど、原料である芳香族又は複素環式ニトリル、及び中間体である芳香族又は不飽和複素環式アミン残存量が低減する。製品品質の観点から未反応原料及び中間体の残存量がGC測定において0.5%以下であることが好ましく、0.1%以下がより好ましく、0.05%以下が特に好ましい。製品品質の観点からは可能な限り未反応原料及び中間体の残存量が少なくなるまで反応を行うことが好ましいが、生産性の観点から反応時間は2〜10時間であることが好ましい。
【0039】
反応圧力
本発明の水素化反応は、常圧〜30MPaの反応圧力で行うことができる。反応圧力は高圧であるほど反応性が高く望ましいが、設備コストの点からは2〜10MPaが好ましい。
【0040】
生産方式
本発明に使用する水素化反応装置としては、回分反応方式又は連続反応方式の装置を使用することができる。回分反応方式の場合、2段階の昇温により1バッチで前段工程、後段工程の水素化を行う方法が例示される。連続反応方式の場合、例えば懸濁床式又は固定床式が例示される。固定床式で連続反応を行う場合、直列に反応条件(触媒、温度、圧力)が異なる2本以上の反応塔を備えた反応装置を用い水素化反応を行う方法が例示される。
【0041】
水素流量
本発明の水素化反応は、水素流通系でも実施することができる。懸濁床式の場合、水素ガスの空塔線速度としては、0.1〜10cm/秒が好ましく、より好ましくは0.3〜3cm/秒である。固定床式の場合、水素ガスの空塔線速度としては、2〜40cm/秒が好ましく、より好ましくは8〜25cm/秒である。懸濁床式の場合、水素ガスの空塔線速度としては、2〜20cm/秒が好ましく、より好ましくは3〜6cm/秒である。空塔線速度が小さい場合反応率が低く、一方、大きい場合は触媒が高濃度になりすぎる傾向が見られる。
【0042】
<精製方法>
水素化反応後得られた反応粗物は、例えば濾過、蒸留、再結晶、カラム分離、吸着処理、溶媒抽出のような公知の方法で触媒を分離し、濾液を精製することにより目的とする脂環式アミン又は飽和複素環式アミンを得ることができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。尚、水素化転化率及び純度はガスクロマトグラフィー分析で測定した。
【0044】
<GC純度(%):ガスクロマトグラフィー(GC)分析>
以下の条件で、目的物のGC分析を行った。
装置:SHIMADZU GC−2010
カラム:DB-1701(GLサイエンス社製) 0.25mm×30m 0.25μm
カラム温度:100℃→250℃(5℃/min)
流量:1ml/min.
スプリット:1/50
インジェクション温度:300℃
ディテクション温度:300℃
【0045】
<転化率:GC分析>
下記計算式に基づき、水素化反応の転化率を算出した。
転化率(%)=100−(原料GC面積%)
【0046】
貴金属系触媒として、市販の5%パラジウムアルミナ粉末触媒(エヌイーケムキャット製)及び5%ルテニウムアルミナ粉末触媒(エヌイーケムキャット製)及び5%ロジウムアルミナ粉末触媒(エヌイーケムキャット製)を使用した。
【0047】
溶媒として、2−(ジメチルアミノ)エタノール(ナカライテスク社製)を使用した。
【0048】
芳香族ニトリル又は複素環式ニトリルは、試薬として入手したものを使用した。
【0049】
[実施例1]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに2−シアノトルエン30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%ロジウム−アルミナ粉末触媒を0.3g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離した。触媒を濾過分離した粗液(GC分析:転化率100%、純度96.7%)を蒸留精製し、2−アミノメチル−1−メチルシクロヘキサン32.4g(収率96.5%、純度99.9%)を得た。

【0050】
[実施例2]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに2−シアノトルエン30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%ルテニウム−アルミナ粉末触媒を0.9g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで2−アミノメチル−1−メチルシクロヘキサンを得た(GC分析:転化率99.9%、純度94.8%)。
【0051】
[実施例3]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに2−シアノトルエン30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%ルテニウム−アルミナ粉末触媒を0.45g、5重量%ロジウム−アルミナ粉末触媒を0.15g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで2−アミノメチル−1−メチルシクロヘキサンを得た(GC分析:転化率99.9%、純度95.1%)。
【0052】
[実施例4]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに1,4−ジシアノベンゼン30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%ロジウム−アルミナ粉末触媒を0.3g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを得た(GC分析:転化率100%、純度94.1%)。
【0053】
[実施例5]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに1,4−ジシアノベンゼン30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%ルテニウム−アルミナ粉末触媒を0.9g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを得た(GC分析:転化率100%、純度93.0%)。
【0054】
[実施例6]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに1,3−ジシアノベンゼン30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%ロジウム−アルミナ粉末触媒を0.3g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを得た(GC分析:転化率100%、純度93.8%)。
【0055】
[実施例7]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに2−シアノフラン30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%ロジウム−アルミナ粉末触媒を0.3g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで2−アミノメチルテトラヒロドフランを得た(GC分析: 転化率100%、純度92.0%)。
【0056】
[実施例8]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに2,5−ジシアノフラン30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%ロジウム−アルミナ粉末触媒を0.3g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで2、5−ビス(アミノメチル)テトラヒロドフラン(転化率95%、純度91.8%)を得た。
【0057】
[実施例9]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに1,4−ジシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%ロジウム−アルミナ粉末触媒を0.3g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで1,4−ビス(アミノメチル)−2,3,5,6−テトラフルオロシクロヘキサン(転化率99.9%、純度91.6%)を得た。
【0058】
[実施例10]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに2,3−ジシアノナフタレン30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%ロジウム−アルミナ粉末触媒を0.3g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで2,3−ビス(アミノメチル)デカヒドロナフタレンを得た(GC分析:転化率100%、純度94.0%)。
【0059】
[実施例11]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに2−シアノフェノール30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%ロジウム−アルミナ粉末触媒を0.3g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで2−アミノメチルシクロヘキサノールを得た(GC分析:転化率100%、純度96.5%)。
【0060】
[実施例12]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに2,3−ジシアノピラジン30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%ロジウム−アルミナ粉末触媒を0.3g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで2,3−ビス(アミノメチル)ピペラジン(転化率100%、純度95.7%)を得た。
【0061】
[実施例13]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに6−シアノ−2−ナフトール30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%ロジウム−アルミナ粉末触媒を0.3g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで6−アミノメチル−2−ヒドロキシデカヒドロナフタレン(転化率100%、純度96.4%)を得た。
【0062】
[実施例14]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに2−シアノピリジン30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%ロジウム−アルミナ粉末触媒を0.3g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで2−アミノメチルピペリジン(転化率100%、純度87.6%)を得た。
【0063】
[実施例15]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに3−シアノピリジン30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%ロジウム−アルミナ粉末触媒を0.3g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで3−アミノメチルピペリジン(転化率100%、純度87.6%)を得た。
【0064】
[比較例1]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに1,3−ジシアノベンゼン30g、エタノ−ル120g、5重量%ロジウム−アルミナ粉末触媒を0.3g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで1,3−ジアミノメチルシクロヘキサン(転化率100%、純度77.5%)を得た。
【0065】
[比較例2]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに1,3−ジシアノベンゼン30g、ジオキサン120g、5重量%ロジウム−アルミナ粉末触媒を0.3g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで1,3−ジアミノメチルシクロヘキサン(転化率100%、純度75.5%)を得た。
【0066】
[比較例3]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに1,3−ジシアノベンゼン30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%ロジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで1,3−ジアミノメチルシクロヘキサン(転化率15.6%、純度8.1%)を得た。
【0067】
[比較例4]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに1,3−ジシアノベンゼン30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%Pd−アルミナ粉末触媒3.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MPa下で、9時間攪拌を行った。続いて、反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPaとし5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離し、更に溶媒を留去することで1,3−ジアミノメチルシクロヘキサン(転化率99.9%、純度2.3%)を得た。
【0068】
[比較例5]
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに2−シアノトルエン30g、2−(ジメチルアミノ)エタノール120g、5重量%パラジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、反応温度60℃、水素圧4MP下で、9時間攪拌を行った。反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離した(GC分析:転化率99.5%、純度85.5%)。触媒を濾過分離した粗液を蒸留精製し、2−アミノメチルトルエン25.6g(GC面積比99.5%、収率82.6%)を得た。
500mlの電磁攪拌式ステンレス製オートクレーブに上記工程によって得られた2−アミノメチルトルエン25.0g、水100g、を5重量%ロジウム−アルミナ粉末触媒1.5gを仕込み、系内窒素で置換した後、水素圧2MPaまで水素を導入し、攪拌しながら反応温度を110℃に昇温し、水素圧5MPまで昇圧し5時間攪拌を実施した。反応後60℃に冷却した後、反応粗物をオートクレーブから抜出し、触媒を減圧濾過装置(フィルタ−はNo5C濾紙)で濾過分離した。触媒を濾過分離した粗液(GC分析:純度99.0%)を蒸留精製し、2−アミノメチルシクロヘキサン24.6gを得た (蒸留収率95.0%、GC分析:純度99.5%) 。
原料の芳香族ニトリルで2−シアノトルエンから、最終生成物の2−アミノメチルシクロヘキサンまでの全収率は78.5%であった。
【0069】
実施例1〜15において明らかなように、本発明によれば芳香族ニトリル又は複素環式ニトリルから、高収率で目的とする1級アミンが得られ、得られた1級アミンの純度も良好であった。
比較例1及び2からも明らかなように、溶媒としてアミノアルコールを用いない反応は副生成物が多く生成物の純度が低いという結果を得た。また、貴金属系触媒を単独で用いた比較例3及び4は、貴金属系触媒を併用して用いた実施例1〜15と比べて最終生成物の純度及び収率が低い結果であった。また、芳香族ニトリルから公知の方法で水素化反応を行い、一度中間体である、芳香族アミンを単離して核水素化を行った比較例5は実施例と比べて収率が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
工業的に有利な方法である本発明によって得られる脂環式アミン又は飽和複素環式アミンは、特に医薬品原料又は医薬品として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ニトリル又は不飽和複素環式ニトリルを、パラジウムと、ロジウム及びルテニウムから選ばれる少なくとも1種とを触媒として、アミノアルコールの存在下で水素化反応を行うことを特徴とする、脂環式アミン又は飽和複素環式アミンの製造方法。
【請求項2】
アミノアルコールが炭素数1〜30のアミノアルコールである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
アミノアルコールが2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−(ジエチルアミノ)エタノール、2−(ジブチルアミノ)エタノール、2−(ジエチルアミノ)プロパノール、3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、ジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン又はトリエタノールアミンである請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
芳香族ニトリルが、下記一般式(1)
−(CN)n (1)
[式中、nは1又は2の整数を表す。式中Rは、水酸基、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、及び直鎖状若しくは分岐鎖状分岐鎖状のアセトキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有していてもよい、炭素数6〜30の芳香族基を表す。]
である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
芳香族ニトリルが、2−シアノトルエン、3−シアノトルエン、4−シアノトルエン、1,2−ジシアノベンゼン、1,3−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、1,2−ジシアノ−3,4,5,6−テトラフルオロベンゼン、4−トリフルオロメチル−1−シアノベンゼン、4−シアノ−フェニルアセトニトリル、N−(2−シアノ−エチル)−N−メチルアニリン、2−シアノフェノール、2−シアノナフタレン、2,3−ジシアノナフタレン、6−シアノ−2−ナフトール、4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル、4−シアノ−4’−ニトロビフェニル、2,3−ジシアノ−ハイドロキノン又は9−シアノフェナントレンである請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
不飽和複素環式ニトリルが、一般式(2)
【化1】

[式中、jは1又は2の整数を表す。Xは、−O−又は−NH−のいずれかを表す。式中、Y及びZは、同一又は異なって、それぞれ炭素原子又は窒素原子を表す。]
で表される複素環式ニトリル、
一般式(3)、
【化2】

[式中、kは1又は2の整数を表す。X、Y及びZは、同一又は異なって、それぞれ炭素原子又は窒素原子を表す。]
で表される複素環式ニトリル
又は不飽和縮合二環系複素環式ニトリルのいずれかである、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
不飽和複素環式ニトリルが、2−シアノフラン、2,5−ジシアノフラン、3−シアノインドール、5−シアノインドール、、2−シアノインドール、3−シアノインドール、5−シアノインドール、3−シアノキノリン、2,3−ジシアノピリジン、シアノピラジン、2,3−ジシアノピラジン、2−シアノピリミジン、3−ヒドロキシ−2−シアノピリジン、3−シアノ−4−メチルクマリン又は4,5−ジシアノイミダゾールである請求項6に記載の製造方法。


【公開番号】特開2008−143832(P2008−143832A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332628(P2006−332628)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000191250)新日本理化株式会社 (90)
【Fターム(参考)】