説明

脱毛治療組成物

活性成分として強心配糖体を含む、脱毛をもたらす障害の治療または予防のための組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱毛状態および障害の治療および予防に使用するための強心配糖体を含む組成物または強心配糖体に関する。
【背景技術】
【0002】
脱毛は、極めて高頻度の状態で、人口の約20〜25%が脱毛障害の何らかの型を患っていると推定される。脱毛は成人男性においてより一般的であるが、脱毛障害は女性および子供にも影響する。殆どの脱毛障害は個体の健康に対してそれ自身有害でないが、多数の患者は不安および抑うつを含む関連した心理的問題を報告している。
【0003】
しかし、脱毛障害が高頻度にもかかわらず、利用できる有効な治療は少ない。外科治療は毛髪の回復、特に頭皮に利用できる。しかし、これらの技術は、痛みがあり、高価であり、いずれかの侵襲性手術に関連する先天的危険に苦しむ。更に、毛髪回復手術は通常、体の他の領域への移植または移転のために患者の上で利用できる密度の高い毛髪の成長の少なくともいくつかの領域を要する。それにもかかわらず、外科治療が毛髪の自然再生(これはついで再度脱落する。)がしばしば起きる円形脱毛症の患者に適用されることは稀である。
【0004】
脱毛組成物は、従って脱毛状態を患っている患者に魅力的な提案である。脱毛症の治療において、部分的成功が請求されている治療の範囲が利用できる。利用できる各種治療は、コルチコステロイドまたはUVA治療などの非特異的免疫抑制剤、接触皮膚炎誘発剤、シクロスポリンなどの特異的免疫抑制剤、非特異的刺激物および代替および実験的治療などの他の治療を含むいくつかの群に分け得る。
【0005】
コルチコステロイドなどの非特異的免疫抑制剤は、副腎で産生されるステロイドホルモンを模擬して炎症を抑制する作用をする。コルチコステロイドは、状態の重症度に応じて、病変内注射によって患部に局所的にまたは注射または経口によって全身的に投与され得る。局所コルチコステロイドが一般的に円形脱毛症の治療に用いられるが、それが毛髪再生を促進するという証拠は少ない。コルチコステロイドの病変内投与が、11名の患者においてトリアムシノロンヘキサセトニドが注射された34部位の内の33部位および17名の患者においてトリアムシノロンアセトニドが注射された25部位の内の16部位で毛髪再生が達成された(効果は約9ヶ月間持続した。)ことを示したPorterおよびBurton(Br.J.Dermatol.1971:85,272−273)によって報告された試験によって円形脱毛症の治療におけるさらなる有効性を示した。しかし、病変内コルチコステロイド投与は、限られた程度の斑状脱毛の治療および眉などの化粧的に敏感な部位(注射部位に、一貫した副作用である皮膚萎縮を伴う。)の治療に最も適している。全身のコルチコステロイド投与は、脱毛症患者においていくらかの毛髪再生を達成した。しかし、試験は、患者のわずかに30−47%が顕著な毛髪再生を示したことを示し、従って大多数の患者において達成された応答は、長期治療に関連した危険性を正当化するのに不十分である。
【0006】
UVA放射線療法と8−メトキシプソラレン(刺激剤であり免疫調節剤)との組み合わせも、脱毛症の治療に用いられている。しかし、通常PUVAと呼ばれるこの治療方法は、要求される治療の頻度、潜在的に危険な副作用および低い成功率のために評判がよくない。更に、治療後の再発率が高く、通常高い累積UVA用量に到る継続治療が要求される。
【0007】
接触皮膚炎誘発剤は感作免疫系を感作することにより作用する。低用量の薬物が最初に適用され、反応が確立されるまで調整される。円形脱毛症の治療に用いられる接触皮膚炎誘発剤は、ジニトロクロロベンンゼンン(DNCB)、ジフェニルシクロプロペノン(DPCP)およびスクアリン酸ジブチルエステル(SADBE)を含む。これらの治療のレビューは、応答率の範囲は報告された9から87%(Rokhsar et al.J Am Acad Dermatol 1998:39:751−761)において広いと結論した。重度の皮膚炎および後頭部および/または頸部リンパ節症を含む副作用がしばしば一般的である。
【0008】
脱毛症の治療のための特異的免疫抑制剤は、シクロスポリンおよびタクロリムス(FK506)を含む。これらの薬物はT−細胞の活性化を阻害することによって作用する。結果はシクロスポリンに対して、いくつかの有効性を示したが、副作用が主な検討事項であり、結果は関連した危険性をしばしば正当化し得ない。
【0009】
非特異的刺激物は、損傷による刺激免疫細胞活性を有する皮膚の中の細胞分化を妨害することによって機能する。円形脱毛症の治療に用いられる刺激物は、アントラリン、イオジン、クリサロビン、クロトン油、カプシカムおよびジスラノールを含む。しかし、アントラリンの試験の結果は、患者のわずか18%における有意の再生を示している1つのオープン試験による低レベルの有効性を示す。更に、毛髪の着色が綺麗な髪の患者での使用を制限する。
【0010】
精油および鍼治療などの代替治療並びにサイトカイン、生物製剤、脱感作、経口免疫寛容および遺伝子治療などの実験的および理論的治療が脱毛症の治療に様々に用いられ、様々な程度の成功が得られた。
【0011】
最近の研究は、濾胞上皮細胞移植と呼ばれる技術(この技術において、皮膚乳頭細胞が患者から取られ、研究室で増殖され、ついで患部に注射される。)が脱毛障害の治療に有効であり得ることを示し、19名の患者中11名が毛髪再生を報告している。しかし、この技術は開発の初期段階にあり、これまでの結果は非常に少ない数の患者によるもので、この治療の有効性を評価することを困難にしている。
【0012】
現在周知のすべての脱毛治療は、達成されるなんらかの有効な効果を維持するために長期間の規則的な使用を要する。上記の治療の内、多くはヘルスケアの専門家による投与を要し、潜在的に危険な副作用を含む。現在、自己投与され得る2、3の脱毛組成物が脱毛の治療または予防における臨床的有効性を示している。ミノキシジルすなわち3−ヒドロキシ−2−イミノ−6−(1−ピペリジル)ピリミジン−4−アミンは高血圧の治療に用いられた時に毛髪成長を促進する副作用を有することが発見された血管拡張剤である。毛包への血液供給の増加による可能性が仮定されているものの、ミノキシジルが毛髪成長を促進する機構は十分理解されていない。ミノキシジルは毛髪成長を促進するいくらかの有効性を示したが、患者の60%未満に有効であると考えられ、今のところ、どの患者が最も応答しやすいかに関する適応症はない。
【0013】
フィナステライドも脱毛の治療におけるいくらかの有効性を示した。フィナステライドは、5α−還元酵素阻害剤であり、テストステロンの活性5α−ジヒドロテステロン(DHT)形態(このレベルの上昇が脱毛と関連する。)への変換を遮断することにより機能する。研究は患者の約50%における有効性を示し、勃起障害および女性化乳房を含む副作用が報告されている。更に、フィナステライドは、胎児に出生異常を生じ得るので出産年齢の女性での使用の適応症はない。
【0014】
シュウ酸塩も脱毛障害の治療おける有効性を示したことが報告されている。国際特許出願WO94/15574は、IaまたはIIa族の金属のシュウ酸塩が脱毛を予防し、成長を促進するために使用され得ることを開示し、カナダ特許第888689号は、脱毛に対する頭皮の治療のための組成物の使用を開示し、それはベルガモット油、水およびシュウ酸鉄を含むシュウ酸塩(すなわち、VIII族金属塩)を含むエマルジョンの使用を要する。しかし、先行技術に記載されたシュウ酸カルシウムなどのシュウ酸塩は、皮膚を貫通し、激しく刺激し得る結晶として出現し、シュウ酸塩をいくらかの患者に対して不適切にする。
【0015】
従って、この領域における活発な研究と提案された多くの数の活性成分にもかかわらず、副作用が最小で、広い人口での有効性を証明する脱毛組成物に対するニーズが残っている。更に、上記の組成物のそれぞれに対して、通常、連続治療の約4ヶ月後に証明される結果が得られる長期の治療が要求される。その後、得られたいずれかの有益な効果の維持は組成物の連続使用に依存し、達成されたいずれかの毛髪成長は治療の中止で脱落する。これらの脱毛組成物は、したがって、継続的使用を要し、治療の高価な手法を示している。加えて、現在の用いられるすべてのモダリティーは、より軽度の状態を発症している患者により有効であるが、既に広範な脱毛を患っている患者においてより有効でない。したがって、要約すると、周知の脱毛組成物は、高価であり、効果が限定的であり、潜在的に有害な副作用を示す。その結果として、脱毛障害の治療と予防のための有効な組成物の研究が進行中である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
出願人は、今や強心配糖体が、脱毛の治療と予防のための組成物中における非常に有効な活性成分であることを発見した。
【0017】
従って、本発明の第一の態様は、脱毛をもたらす状態または障害の治療または予防における使用のための強心配糖体を活性成分として含む組成物を提供する。
【0018】
該組成物は好適には脱毛状態の治療または予防のための強心配糖体の有効量を含む。強心配糖体は、天然資源から単離され得、好適には該組成物が実質的に純粋な形態の強心配糖体を含むように組成物に含める前に精製される。
【0019】
脱毛をもたらし得る障害および状態は遺伝性および先天性脱毛症、貧毛症、抜毛癖、頭部白癬、休止期脱毛、活動期脱毛、連珠毛、結節性裂毛(trichonodosis)、真菌感染などの毛髪または頭皮を含む感染、毛髪または頭皮を含む感染、甲状腺機能亢進症などの内分泌物状態{ないぶんぴつ ぶつ}、甲状腺機能低下および糖尿病、紅斑性狼瘡、ホルモン不均衡(例えば、多嚢胞性卵巣症候群の結果としての)および皮下嚢胞を含む。{にゅうぼう のうほう}
【0020】
好適には、組成物は、脱毛症または貧毛症の治療または予防における使用のためであり、より好適には、円形脱毛症の治療における使用のためである。
【0021】
本明細書において用いられる用語「脱毛症」は、毛髪が脱落する疾患を意味するために採用され、円形脱毛症、男性および女性型脱毛症、アンドロゲン脱毛症、完全脱毛症、全身性脱毛症、部分脱毛症、白癬性脱毛症、瘢痕性脱毛症、蛇行状円形脱毛症、びまん性円形脱毛症、網様円形脱毛症、シサイフォ(sisaipho)円形脱毛症、先天性脱毛症、薬物誘発脱毛症、ムチン沈着性脱毛症、悪性脱毛症、アンドロゲン性脱毛症、けん引性脱毛症および梅毒性脱毛症を含むがこれらに限定されない。
【0022】
円形脱毛症はそれ自身、多数の形態で現れる瘢痕のない炎症性脱毛疾患で、通常脱毛および薄毛の斑状領域をもたらす。円形脱毛症は、通常、滑らかな、丸いまたは楕円形の禿げた領域もたらす。疾患が進行にしたがって、最初の1つまたは2つの斑点の大きさが広がりおよび/または脱毛の他の斑点が続いて発症する。円形脱毛症は頭皮上に最も頻繁に生じるが、体の皮膚のいずれかの毛髪領域が影響され得る。円形脱毛症の病理生理学は未知のままであるが、最も許容されている仮説は、円形脱毛症は遺伝的な傾向がある個体に生じやすいT細胞が介在する自己免疫状態であるということである。感情的ストレス、身体的トラウマまたは病原体などの未知の環境の引き金が遺伝性因子と組み合わさってその状態を起こすと考えられる。円形脱毛症は、自然消退{しぜん しょうたい}し、慢性化し、または瀰漫性に広がる。慢性化の危険因子は広範な関与、思春期前の発症、アトピーおよび周辺頭皮(ophiasis)の関与を含む。今のところ、円形脱毛症の永久の治療はなく、寛解{かんかい}を誘導する臨床的に証明された治療はない。これまでの研究は殆どの患者において疾患の悪化および引き金機構を説明できない。円形脱毛症のすべての患者は潜在的に長年の脱毛後でさえ、毛髪の再生が可能であり、自然再生が起き得る。しかし、この再生は永久であり得ない。
【0023】
具体的に、該組成物は、X連鎖優性疾患、常染色体優性疾患または常染色体劣性障害に関連した円形脱毛症の治療または予防において使用され得る。
【0024】
強心配糖体は、心筋に変力作用を有する配糖体の群で、C−17位で結合したα、β不飽和ラクトン環を有するステロイド核からなるアグリコンによって特徴づけられる。200以上の天然の強心配糖体が同定されている。強心配糖体は、通常、キツネノテブクロ(Digitalis purpurea)または谷間のゆり(Convallariamajalis)などの植物源から得られるが、それらはオオヒキガエル(Bufo marinus)の毒腺にも大量に存在する。
【0025】
強心配糖体は、C−17位におけるラクトン環によって特徴づけられる2つの主な型に分けられる。ブファジェノリドは、二重に不飽和の6員のラクトン環(α−ピロン)を含むC24の化合物であり、カルデノリドは不飽和ブチロラクトン環を含むC23の化合物である。図1は、通常のブファジェノリドおよびカルデノリドの構造を示す。
【0026】
【化1】


図1は、カルデノリドの主な種類:(a)ブファジェノリドおよび(b)カルデノリドを示す。
【0027】
強心配糖体は筋組織の収縮性に影響することによって変力剤として働き、心筋の収縮力を増加し、心拍を調節するために医学的に第一に用いられる。それらの作用機構は、十分確立されており、血漿膜のNa/K−ATPaseの阻害を含み、細胞内のKおよびCa2+レベルの変化を招く。
【0028】
医学のプラクティスにおいて、ジギタリス配糖体は、心筋において約30%の中等度の酵素阻害を生じる用量で投与される。心筋細胞膜が強心配糖体の作用で脱分極する時、筋の収縮後のNa/Kバランスの回復のために利用できる未阻害のNa/K−ATPase酵素はより少ない。強心配糖体によって阻害されない残りのNa/K−ATPase酵素は高い[Na]iのためにイオン輸送速度が増加するであろう。心筋細胞が次の引き金の神経インパルスに正しく応答するために、Na/Kイオン勾配は回復されなければならない(すべてのNa/K−ATPaseが利用できる場合に比べ、勾配の回復に時間がかかる。)。
【0029】
この遅れは一時的な[Na]iの増加を起こす。この一時的な[Na]iの増加は、Na/Ca2+イオンチャンネルを通る細胞内へのCa2+の動きを生じる。Na/Ca2+イオンチャンネルは、支配的なNaおよびCa2+の電気化学的勾配に依存して、Ca2+と交換にNaが細胞から出ることまたはNaと交換にCa2+が細胞から出ることを許す(Blaustein 1974)。このように、強心配糖体によるNa/K−ATPaseの阻害は、Na/Ca2+交換を部分的に逆にし、細胞内Ca2+の増加をもたらし、これが順に筋収縮の増加を生じる。
【0030】
ジギタリス配糖体の濃度が毒性レベルに到達すると、酵素阻害は60%に近づき、このようにして拡張中の正常なイオンの膜貫通勾配の回復が次の脱分極および収縮サイクルまで不可能である程度にNaおよびK輸送を低下する。ついで、[Na]iの持続的な増加および[Ca2+]iの持続的な増加がこれらの分子の心毒性作用、すなわち、不整脈を引き起こす。
【0031】
ジギタリス配糖体は、心不全の治療のための薬物の非常に重要な群を表すが、治療インデックスが狭い不利益があり、血漿の薬物レベルの連続モニタリングによる厳密な監督下で投与されなければならない。治療用量におけるNa/K−ATPaseの阻害は、それらの陽性変力作用の機構である。何故ならば、[Na]iの単に小さな変化が収縮力の大きな変化を招くからである(Lee 1985)。
【0032】
本明細書で用いられる用語「強心配糖体」は天然起源の強心配糖体およびそれらの類縁体の両方を包含するために採用される。本発明の組成物における使用のための強心配糖体は、US薬局方標準に従ってdigitalis purpureaなどの天然資源から抽出および精製され得、または例えばSimbiおよびvan Heerden(J.Chem.Soc,Perkin Trans.1,1997)によって記載された周知の方法によって合成され得る。好適には、強心配糖体は組成物中に実質的に純粋な形態で含まれる。好適には、強心配糖体は少なくとも95重量%の純度であり、好適には少なくとも96重量%の純度であり、好適には少なくとも97重量%の純度であり、好適には少なくとも98重量%の純度であり、好適には少なくとも99重量%の純度である。
【0033】
本発明の組成物における使用のための適した強心配糖体は、ジギトキシン、ジゴキシン、ジギトニン、プロスシラリジンA、プロスシラリジンB、メチルプロスシラリジンA、オレアンドリン、オドロシド−A、オドロシド−H、ネリイホリンおよびウアバインを含むが、これらに限定されない。
【0034】
好適には、強心配糖体は植物抽出物に由来する。天然資源から抽出される場合、強心配糖体が実質的に粘液がないことが好適である。何故ならば、植物製品からの粗抽出物は、抽出物中に存在する活性成分の正確な量の評価を困難にするからである。更に、植物資源からの粗抽出物は、不活性組成物成分の大きな容量を要し、生産コストの増加をもたらす。
【0035】
好適な強心配糖体は、ジギタリス(foxglove)属、すなわち、ジギトキシン、ジゴキシンおよびジギトニンから誘導されるものである。ジギプラタム(digipuratum)(これは、均一な力価の標準化された抽出物である。)も用い得る。
【0036】
好適には、組成物は実質的にシュウ酸塩を含まない。シュウ酸塩(これは強心配糖体がそこから抽出される植物中に存在する可能性がある。)は、皮膚を貫通し、激しく悪化および刺激し得、従って、それらを好ましくない組成物の成分にする。
【0037】
代わりに、強心配糖体は合成品であり得る。合成強心配糖体は、いずれかの適した経路で合成され得る。
【0038】
強心配糖体は、組成物中に存在する唯一の活性成分であり得る。活性成分は、好適には1つまたはそれ以上の活性化合物を含む、半固体または半液体形態である。一般に、活性成分は、ローションまたは軟膏中に重量で0.001mg/gから25mg/g含まれるが、好適には重量で0.04mg/gから2mg/gのオーダーである。しかし、活性成分の量は、それぞれの目的、すなわち、始めのまたは更なる脱毛を予防するかまたは再生を刺激するかに従って変化し得る。
【0039】
場合によって、強心配糖体は、少なくとも1つの活性成分と併用して投与され得、すなわち、組成物は、脱毛障害またはそれに関連した症状の治療で効果を示す併用化合物を更に含み得る。好適には、組成物は、ステロイド、インドール系化合物、抗真菌薬、抗炎症薬および冷却剤または抗掻痒薬からなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含み得る。
【0040】
アンドロゲン、エストロゲンおよび表皮成長因子(EDG)の減少した産生が脱毛の治療および予防に有用であり得ることが報告されている。従って、脱毛に関連したホルモンまたは因子を遮断または阻害するステロイドは場合により組成物に加えられ得る。例として、5α−還元酵素阻害剤は、テストステロンの活性5α−ジヒドロテステロン(DHT)形態への変換を遮断し、脱毛障害の治療に用いられている。これらの化合物および因子の減少した産生および阻害のために適したステロイドは、テストラクトン、プレグネノロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)ジオスゲニン、スピロノラクトン、フィナステライドおよびタモキシフェンを含む。
【0041】
インドール、メラトニン、N−[2−(5−メトキシ−1H−インドール−3−イル)エチル]アセトアミド、スカトールおよびインドール−3−カルビノールなどのインドール系の化合物;ケルセチンメチルカルコンなどのあるビオフラベノイドおよびTES TRIOLATEまたはPX−13などの抗炎症脂肪酸も脱毛障害の治療における有用性を示し、従って、これらの化合物は本発明の組成物に加えられ得る。
【0042】
抗真菌物質も脱毛の治療における有用性を示した。従って組成物は抗真菌物質を含み得る。適した抗真菌物質は、ケトコナゾール、ミコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ビホナゾール、ブトコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、イサブコナゾール、ラブコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾールおよびテルコナゾールポリエンなどのアゾール抗真菌剤;ナタマイシン、リモシジン、フィリピン、ニスタチン、アンフォテリシンBおよびカンジシンなどのポリエン抗真菌剤;テルビナフィン、アモロルフィン、ナフチフィンおよびブテナフィンなどのアリルアミン;アニデュラフンギン、カスポフンギンおよびミカフンギンなどのエキノカンジン抗真菌剤および角質溶解薬{かくしつ ようかいやく}と組み合わせた安息香酸、シクロピロックス、フルシトシン、グリセオフルビン、ゲンチアナ・バイオレット ハロプロギントルナフテート、ウンデシレニック酸およびティーツリーオイルなどの他の周知の抗真菌剤を含む。アゾール抗真菌剤は、テストステロンの合成も阻害するので特に有用性があり、その機能は上記の脱毛状態および障害の治療または予防において有用であり得る。
【0043】
抗炎症剤は炎症および疼痛を低減するのにおいて有効であり、脱毛障害に二次的な効果を有し得る。本発明の組成物における使用のために適した抗炎症剤は2−アリールプロピオン酸(profens)、サリチル酸塩、アリールアルカン酸、N−アリールアントラニック酸(fenamic acids)、ピラゾリジン誘導体、オキシカム、COX−2阻害剤、スルホンアニリドおよびリコフェロンおよびオメガー3脂肪酸などの他の周知の抗炎症剤を含むがこれらに限定されない。最も好適には、抗炎症剤としてイブプロフェンが含まれる。
【0044】
軽度の鎮痛を与える鎮痒薬または構成要素を、刺激または掻痒などの関連する副作用を低減するために組成物に加え得る。このような組成物は、酸化亜鉛(カラミン)、メトール、フェノールおよびカンファーを含むが、これらに限定されない。
【0045】
強心配糖体は、隔離された形態で組成物中に含まれ得る。すなわち、組成物は、活性成分の送達を制御するために強心配糖体と包接化合物を形成し得る分子を含み得る。例えば、該組成物は、シクロデキストリンを含み得る。
【0046】
好適には、組成物は、患者への局所投与に適している。本発明によって熟慮された組成物は、ヒトの頭皮および/または皮膚への局所適用のために採用された組成物を含む。この目的のための従来の組成物の形態は、軟膏、ローション、ペースト、ゼリー、ゲル、ムース、スプレー、泡、エアゾール、粉末および類似の周知の組成物形態である。
【0047】
従って、組成物は適した担体または希釈剤も含み得る。適した担体または希釈剤は、水性および/またはアルコール性であり、使用においてその場に組成物を保持するための粘性のベースを含み得る。ローションを形成するために担体としての使用に適した希釈剤は、水およびメタノール、エタノール、イソプロパノール、グリセロールまたはプロピレングリコールなどの低級アルコールまたはポリオールを含む。クリームまたは軟膏を形成するためにパラフィン画分およびエマルジョンベースが用いられ得る。担体は、例えば、グルコース、ラクトース、コーンスターチ、デンプンペースト、アラビアゴム、ゼラチン、マニトール、マグネシウムトリシリケート、ポテトデンプン、尿素、ケラチンまたはコロイダルシリカなどの他の従来の担体または希釈剤も含み得る。
【0048】
用語「軟膏」は、例えばラノリン、ペトロラタム、グリコール、グリセリンなどの油性の水可溶性エマルジョンベースを有するクリームを含む。
【0049】
化合物は、リポソーム製剤または液体エマルジョンであり得、またはアセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、プロパノールなどのアルコールなどの従来の溶媒にされ得る。
【0050】
場合により、組成物は、患者に経口投与のために適合され得る。この目的のための従来の組成物形態は錠剤、コーティングされた錠剤、カプセル型錠剤、トローチ、薬用{やくよう}キャンディー、分散物、懸濁物、カプセルおよび類似の周知の形態である。
【0051】
代わりに、組成物は、非経口投与のために適合され得る。非経口の従来の投与経路は、静脈内、筋肉内、病変内、動脈内、皮下、皮内、経皮、経粘膜および吸入および類似の周知の経路を含む。好適には、組成物は、筋肉内または病変内経路で投与される。
【0052】
組成物は更にミネラルサプリメント、ビタミンサプリメント、精油、香料、着色剤、防腐剤および皮膚吸収促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含み得る。
【0053】
組成物における使用に適したミネラルサプリメントは、鉄、亜鉛、銅、マグネシウムおよびカルシウムおよびその組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0054】
組成物における使用に適した適したビタミンサプリメンは、ビタミンA(レチノール)、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン、ピリドキサールまたはピリドキサミン)、B7(ビオチン)、B9(葉酸)およびB12(コバラミン)などのB群ビタミン、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD(カルシフェロール)、ビタミンE(トコフェロール)およびビタミンK(フィロキノン)およびその組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0055】
組成物における使用に適した精油は、ジャスミン油、ティーツリーオイルおよび柑橘油を含むが、これらに限定されない。
【0056】
組成物における使用に適した香料は、メントール、ベンジルアルコール、オイゲノール、フェノキシエタノール、イソプロピルパルミテート、イソプロピルミリステート、ベンジルサリチル酸エステル、フェニルサリチル酸エステル、チモール、イソアミルサリチル酸エステル、トリトンX−100界面活性剤、安息香酸、ベンジル安息香酸エステル、メチルサリチル酸エステル、フェノール、オレイン酸、カプロン酸またはカルバリルを含む。
【0057】
組成物における使用に適した従来の着色剤はタートラジン、キノリンイエロー、サンセットイエロー、アマランス、ポンソー(ponceau)4R、エリスロシン、レッド2G、アルラレッドAC、パテントブルーV、インジゴカルミン、ブリリアントブルーFCF、ファストグリーンFCF、グリーンSおよび酸化鉄を含むが、これらに限定されない。
【0058】
組成物における使用に適した防腐剤は、メチルおよびプロピルパラベンなどのパラベン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、クオターニウム−15、メチルクロロイソチアゾリノンおよびヨードプロピニルブチルカルバメート(IPBC)および柑橘油などの天然防腐剤を含むが、これらに限定されない。
【0059】
組成物は、更に患者の皮膚を通して組成物の吸収を容易にするための皮膚吸収促進剤を含み得る。この目的のために適した皮膚吸収促進剤は、ペンタン1,5−ジオール、N−ドデシル−2−ピロリドンおよびその酢酸エステル類縁体、オレイン酸などの脂肪酸、テルペン、イソプロピルミリステートなどのエステル、ケリン(khellin)およびケリン類縁体、メチルニコチン酸エステル、MSM−デシルメチルスルホキシド、ジエチレングリコール、クエン酸、ピルビン酸、フェノキシエタノール、トランスクトール、ホスファチジルコリン、中鎖トリグリセリド油(MCT油)および水を含む。
【0060】
患者の患部への組成物の投与は、組成物の有効量が患者の幹部へ送達されるいずれかの方法で行い得る。好適には、組成物は、患者の患部(それは頭皮または他の体表面であり得る。)に局所的に適用される。好適には、組成物は、患部または複数の患部に局所的に1日1回から3回の間、および最も好適には1日2回投与される。場合により、シャンプーの形態の組成物を単独でまたは局所投与と組み合わせて、状態の治療のために毎日使用し得る。
【0061】
適用の頻度および適用時間は、個々の患者によって異なる。例えば、脱毛組成物は、直ちに洗浄されるシャンプーとして適用され得、または患部に適用され、一定期間に亘って皮膚に浸透するために放置されるローション、シャンプー、軟膏またはゲルとして適用され得る。軟膏製剤は眉または顎髭などの顔の領域上での使用に特に適し、他方スプレー製剤は男性または女性型脱毛または休止期脱毛などの広範型脱毛に好適である。ゲルおよびローション製剤は、あらゆる型の脱毛に適している。リポソーム製剤は、あらゆる型の脱毛に使用し得るが、患者が例えば円形脱毛症、完全脱毛症および全身性脱毛症の重症例など、存在する毛髪を欠いている場合に特に適している。
【0062】
それぞれの場合において、毛髪治療組成物が規則的におよび脱毛の予防および/または再生の刺激の具体的な目的に合う期間に亘って使用されることが推奨される。
【0063】
本発明を以下の実施例において、例証としてのみ記述する。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0064】
ローションまたはスプレーとして投与するための本発明による組成物を下記のように調製した:
ジゴキシン 0.025%w/w
イブプロフェン 2%w/w
アルコール 30%w/w
プロピレングリコール 10%w/w
グリセリン 5%w/w
精製水 100%まで
【実施例2】
【0065】
ローションまたはスプレーとして投与するための本発明による組成物を下記のように調製した:
ジギプラタム(digipuratum)標準化抽出物 22%w/w
イブプロフェン 5%w/w
アルコール 30%w/w
プロピレングリコール 10%w/w
グリセリン 5%w/w
ポリソルベート 1%w/w
精製水 100%まで
【実施例3】
【0066】
ローションまたはスプレーとして投与するための本発明による組成物を下記のように調製した:
ジギタリス液体抽出物(5%w/v) 5%w/w
エタノール95° 25%w/w
防腐剤 0.3%w/w
香料 0.05%w/w
バーチタール 5%w/w
ポリソルベート80 1%w/w
クエン酸 10% qs
適量脱イオン水 100%まで
十分量のクエン酸(ここで、qsは[適量]を意味する)を用いて組成物のpHをpH5.5に調整した。
【実施例4】
【0067】
スプレー処方としての投与のための基本組成物を、精製水、アロエベラゲル、加水分解ダイズ蛋白質、グリセリン、プロピレングリコール、ポリソルベート−20、アラントイン、(ビタミンB複合体)、パンテノール、B5、B6、B12、ジアゾリニジニル尿素、メチルパラベン、プロピルパラベン、オリゴ糖、多糖類および香料を用いて調製した。強心配糖体ジゴキシンの活性成分を組成物に0.04%w/v加え、本発明による脱毛組成物を調製した。上記組成物は、活性成分としてプロシラリジン−Aを用いても調製し得る。
【実施例5】
【0068】
本発明にしたがって、冷却剤(抗掻痒薬)またはスプレーとしての投与のための本発明による基本組成物を下記のように調製した:
メントール 75gm
サリチル酸 75gm
タルク 7.5kg
酸化亜鉛 7.5kg
グリセリン 5L
アルコール 20L
水 20L
本発明による脱毛組成物を調製するために、強心配糖体活性成分ジゴキシン(0.04%w/v)を基礎組成物に加えた。
【実施例6】
【0069】
本発明による水中油エマルジョン組成物を下記のように調製した:
ジゴキシン 0.025%w/w
イブプロフェン 3%w/w
シクロデキストリン 2%w/w
乳化ワックス 9%w/w
白色軟パラフィン 15%w/w
液状パラフィン 6%w/w
フェノキシエタノール 1%w/w
脱イオン水 100%まで
【実施例7】
【0070】
冷却ローションとして投与するための本発明による組成物を下記のように調製した。:
ジゴキシン 0.04%w/w
カラミン 15%w/w
酸化亜鉛 5%w/w
ベントナイト 3%w/w
クエン酸ナトリウム 0.5%w/w
液状フェノール 0.5%w/w
グリセリン 5%w/w
精製水 100%まで
【実施例8】
【0071】
ローションまたはスプレーとして投与するための本発明による組成物を下記のように調製した:
強心配糖体(Digipuratum) 1.4%w/v
イブプロフェン 2%w/w
アルコール 30%w/w
プロピレングリコール 10%w/w
グリセリン 5%w/w
ポリソルベート 1%w/w
精製水 100%まで
【実施例9】
【0072】
本発明によるシャンプーとして投与するための組成物を、2%w/vの量のジギタリスの液体抽出物と脱イオン水、ラウレス硫酸ナトリウム、コカミドプロピルベタイン、コカミドDEA、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸グリコール、小麦オリゴ糖、加水分解小麦蛋白質、絹アミノ酸、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解毛髪ケラチン、パンテノール、毛髪ケラチンアミノ酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アロエ抽出物、サルサ根、センナ、ヒメスイバ、ホップ抽出物、カバノキ、ポリソルベート20、オクチルメトキシシナメート、DMDM ヒダントイン、ヨードプロピニルブチルカルバメート、クエン酸、香料およびEDTA四ナトリウムとを組み合わせて調製した。
【実施例10】
【0073】
本発明によるシャンプーとして投与するための組成物を、2%w/vの量のジギタリスの液体抽出物と脱イオン水、ラウレス硫酸ナトリウム、コカミドプロピルベタイン、コカミドDEA、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸グリコール、小麦オリゴ糖、加水分解小麦蛋白質、絹アミノ酸、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解毛髪ケラチン、パンテノール、毛髪ケラチンアミノ酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アロエ抽出物、サルサ根、センナ、ヒメスイバ、ホップ抽出物、カバノキおよび白ショウガ、ポリソルベート20、オクチルメトキシシナメート、DMDMヒダントイン、ヨードプロピニルブチルカルバメート、クエン酸、香料およびEDTA四ナトリウムとを組み合わせて調製した。
【実施例11】
【0074】
本発明による乳化軟膏を下記のように調製した:
強心配糖体(Digipuratum) 2.75%w/v
強心配糖体(ジゴキシン) 0.025 %w/w
サリチル酸 2%w/w
白色軟パラフィン 46%w/w
液状パラフィン 20%w/w
乳化ワックス 100%まで
【実施例12】
【0075】
本発明による乳化軟膏を下記のように調製した:
強心配糖体(ジゴキシン) 0.04%w/w
リン脂質 2%w/w
酸化亜鉛 15%w/w
水酸化カルシウム 0.045%w/w
オレイン酸 0.5%w/w
アーモンド油 32%w/w
羊毛脂 8%w/w
精製水 100%まで
【0076】
症例研究1
抜毛癖
抜毛癖を患っている19歳の女性の頭皮に,実施例の組成物1を1日2回ローションとして適用した。研究中の患者において、頭皮毛髪の自己摘採の繰り返しは変形毛幹(trichomalacia)して知られる状態をもたらし、影響を受けた毛包は詰り、柔らかい、変形し、膨潤した毛髪を含んだ。
【0077】
治療が開始されて10−12週間以内に、「産毛」と呼ばれる細い綿毛が頭皮上に成長しているのが観察された。1日2回の局所投与を頭皮領域の全体に再生が十分確立されるまで続けた。最も注目すべきは、毛髪の再生が、ローションが適用されておらず、組成物の適用領域と隣接する領域にも確立されたことである。
【0078】
症例研究2
女性型脱毛
実施例3のスプレー組成物を実施例10のシャンプー組成物と組み合わせて、Ludwig scale IIの女性型脱毛を患っている39歳の白人女性の治療に使用した。頭頂および頭皮の中央で薄毛は明らかであった。既存の脱毛組成物による以前の治療は、顔および頭皮上に現れた重度の発疹を伴う有害な副作用をもたらした。
【0079】
女性型脱毛の早期段階において、毛包は小型化し、小さな産毛が生えた。これらの小型化した毛包は十分な末端の毛髪を産生するために潜在的に再活性化され得る。
【0080】
実施例3の組成物は、シャンプー組成物として毎日用いられている実施例10の組成物とともに患部に1日2回スプレーとして直接適用した。該組成物は患者に十分忍容され、アレルギー反応の明らかな兆候はなく、刺激の報告はなかった。
【0081】
10週間の治療後、脱毛の減少が認められた。24週間の治療後、再生が認められ、既存の小型化した毛髪は復活し、頭皮の毛髪の残りは毛髪の密度が増加し、より健康的になった。再生のパターンは遅く、着実であった。
【0082】
症例研究3
外傷性脱毛症
ローションの形態の実施例1の組成物を、毎日、黒人毛髪の38歳の女性の頭皮に適用した。この女性はヘアスタイリングおよび特に直毛剤の頻用に由来する外傷性脱毛症を発症した。5〜10cmの間の患部は毛髪の前方の線に沿って顕著に見えた。該組成物を1日2回連続して12ヶ月間適用した。
【0083】
毎日の治療開始後14−18週間の間に、最初の再生の兆候が観察された。達成された再生は、遅いが、連続的であった。
【0084】
症例研究4
アンドロゲン性脱毛症
実施例3のスプレー組成物を、頭頂および頭皮の中央で薄毛が明らかなNorwood/Hamilton grades III− IVのアンドロゲン性脱毛症を発症している34歳の男性の頭皮に1日3回適用した。加えて、実施例9のシャンプーを毎日使用した。高いレベルで組成物を適用したが、該組成物は患者によって良好に忍容され、刺激の兆候はなかった。治療を12ケ月間続け、16週間後に最初の無色素の産毛の毛髪の再生が観察され、毛髪密度と再生の顕著な改善が、12ケ月目の段階で明らかであった。
【0085】
症例研究5
円形脱毛症(65%重症度)
実施例1の組成物を、重症の円形脱毛症(65%重症度)を患っている約45歳の女性の治療に用いた。脱毛症は患者に最初単一の限局した禿および完全な禿として発症し、脱毛の更なる斑点を有する頭皮上の滑らかな斑点が、すぐに明らかであった。6ヶ月以内に、禿の斑点は多数になり、大きさと数が増え続けた。処方された医薬組成物は、この状態の進行を変えることができず、3年後、円形脱毛症は着実に進行して頭皮領域上に認められる75%までの脱毛および眉上に見られる脱毛症の兆候を有する完全脱毛症に向かった。
【0086】
実施例1の強心配糖体組成物を1日3回患部にローションとして局所適用した。組成物は、患者によって良好に忍容され、高いレベルの適用でさえも、刺激または反応の兆候はなかった。
【0087】
治療を32週間続けた。治療の4週目に患者に2つの新しい脱毛症の斑点を発症したが、最初の無色素の産毛の再生は治療の9週間後に観察された。眉上の完全な再生は約26週目において達成され、100%頭皮毛髪の再生は治療期間の終わりに得られた。
【0088】
症例研究6
円形脱毛症(90%重症度)
実施例1のローション組成物を、円形脱毛症の重症症例(90%重症度)の52歳の女性の治療に使用した。最初の状態の発症の2年後、円形脱毛症は、頭皮領域上の重症度が約95%および両眉上に明らかな脱毛症斑点の兆候を有する完全脱毛症に着実に進行した。顔、体および陰毛も顕著に少なかった。
【0089】
強心配糖体組成物を1日2回患部にローションとして局所的に適用し、実施例10のシャンプーを毎日使用した。治療は60週間に亘って続けられ、40週間後から2週間のそのローションの使用を中止した。組成物は患者によって良好に忍容され、高いレベルの適用を続けても刺激または反応の兆候はなかった。
【0090】
最初の再生は、治療の9週目において無色素の産毛の成長で観察された。顔、体、陰毛が始めて再生の兆候を示した。進行は約24週で止まり、ローションの適用を1日3回に増加した。約4週間後、高いレベルの適用で、毛髪の成長が加速されたようで、適用を60週まで続け、その時までに完全な頭皮の毛髪の成長が達成された。
【0091】
症例研究7
白癬性脱毛症
実施例12の乳化軟膏組成物を白癬性脱毛症を発症している27歳の白人男性に使用した。患者は顎髭領域上に、約4x4cmの2つの対称性の脱毛の斑点を発症した。患者の口ひげ領域は、冒されていなかった。該組成物を患部に1日2−3回局所的に適用し、連続治療の16週後に脱毛症斑点の完全な回復が達成された。
【0092】
症例研究8
円形脱毛症および白癬性脱毛症
実施例1および12の組成物を円形脱毛症および白癬性脱毛症の44歳の白人男性の治療に用いた。患者は外周が8x5cmから3x3cmの範囲の頭皮上の5つの斑点を発症した。患者は顎髭上に、それぞれ約5x4cmの2つの脱毛の斑点および脱毛症の兆候も有した。
【0093】
組成物をそれぞれ1日2回適用した。実施例12の乳化軟膏組成物を顎髭の患部に適用し、他方実施例1のローションは頭皮の患部に起用した。約7−8週間後、新しい産毛の形の最初の再生が顎髭上に観察され、顎髭および口髭上の完全な再生が16週間後に達成された。頭皮領域上の完全な再生は連続した毎日の28週間の治療後に達成された。
【0094】
症例研究9
円形脱毛症
実施例1および9の組成物を、1年の経過内に急速に全身性脱毛症に進行し、体毛が顕著にない円形脱毛症の45歳の白人女性の治療に使用した。以前に処方された薬物は、この状態の進行を止めることに失敗した。
【0095】
実施例1の強心配糖体組成物を、1日1回頭皮を洗浄するために用いられている実施例9のシャンプー組成物と共に、患者の頭皮および眉領域にローションとして1日3回適用した。
【0096】
毛髪再生の最初の兆候が開始3ヶ月以内に観察され、顔および体の毛髪が最初の再生を示した。その後、頭皮上に小さな無色素の産毛型の毛髪が観察され、これは短い産毛のサイクル後に最終的に末端型毛髪に成長した。
【0097】
患者は、約18ヶ月後に完全な頭皮毛髪再生が達成(30週および60週においてそれぞれ2週間に亘って組成物の使用を中止)されるまで、局所投与を続けた。
【0098】
ローションおよびシャンプー製剤は、患者によって良好に忍容され、アレルギー反応または皮膚刺激の兆候は認められなかった。
【0099】
症例研究10
連珠毛
実施例8および10の強心配糖体組成物を、18歳の白人女性の−連珠毛の治療に使用した。患者は、広範な脱毛および一連のビーズの外観を有する残りの弱った毛髪繊維を有する連珠毛の古典的な兆候を示した。連珠毛は、数インチの長さ以上に達する前にしばしば壊れる薄い、乾燥したおよび/または脆い毛髪で特徴づけられる常染色体優性形質として最も通常に遺伝される稀な障害である。毛髪は光沢を欠き得、脱毛の斑状領域があり得る。他の共通の症状は、褐色のかさぶたまたは鱗屑(毛包周囲角化症)で覆われた毛包を取り囲む隆起した領域(丘疹)の外観であり得る。顕微鏡下で見ると、毛幹は、均一に置かれたビーズの一連に似ている。連珠毛において、脱毛は頭皮および頚部の後部で最も頻繁に観察され頭部の前部は比較的冒されない。この場合、患者は、続いて脱落するであろう毛髪の自然の部分再生を周期的に示すであろうことに気づいた。以前処方された医薬品は脱毛を止め、または顕著な再生を達成することに失敗した。
【0100】
実施例8の強心配糖体ローション組成物を、頭皮および眉の領域に1日2回適用し、実施例10のシャンプーを、2日に一度毛髪の洗浄に使用した。
【0101】
最初の再生は治療の12週目に、小さな無色素の産毛の成長で観察された。34週間後に、完全な再生が達成されるまで治療を続けた。治療中止後12ケ月でも、新しく再生した毛髪は脱落しなかった。
【0102】
数インチの以上の長さに達する前にしばしば損傷した薄い、乾燥したおよび/または脆い毛髪で特徴づけられた頭皮毛髪の条件および外観は、大きく改善され、全般的頭皮毛髪の質、長さおよび密度は大きく改善された。
【0103】
強心配糖体を含む組成物が、さまざまな状態および障害による脱毛の処理に有効であることは明らかである。他方、本明細書に記述した強心配糖体組成物の作用様式は十分に理解されていないが、強心配糖体は冒された毛包への血流を増加することにより毛髪再生に積極的効果を有すると考えられる。しかし、本発明者は、上記の組成物による治療の中止後でさえ、血流を増加することにより作用する通常の治療と異なり、多くの症例で毛髪の成長が維持されることを観察した。更に、症例研究1に記載したように、組成物が直接適用されなかった領域において再生が確立された。従って、本強心配糖体は、恐らく炎症過程に含まれる受容体または酵素への天然基質の結合を阻害することによって、正常な免疫機能を取り戻す全身的に作用し得る二次的免疫調節作用を有し得ると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱毛の原因となる状態または疾患の治療または予防における使用のための強心配糖体を活性主体として含む組成物。
【請求項2】
脱毛症または貧毛症の治療または予防における使用のための請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
円形脱毛症の治療または予防における使用のための請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
X連鎖優性障害、常染色体優性または常染色体劣性原因論に関連する円形脱毛症の治療または予防における使用のための請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
心配糖体が合成品である、請求項1から4のいずれかの請求項に記載の組成物。
【請求項6】
強心配糖体が天然資源から単離される、請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
強心配糖体がジギタリス属から抽出される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
強心配糖体が組成物中に含まれるに前に実質的に純粋な形である、請求項1から請求項7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
強心配糖体が全組成物の0.001mg/gから25mg/gの量で含まれる、請求項1から請求項8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
強心配糖体が全組成物の0.04mg/gから2mg/gの量で含まれる、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
強心配糖体が組成物中に存在する唯一の活性成分である、請求項1から請求項10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
強心配糖体が少なくとも1つの他の活性成分と併用して投与される、請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
組成物が更にステロイド、インドール系化合物、抗真菌剤、抗炎症剤および冷却剤または抗掻痒薬からなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
強心配糖体が組成物中に隔離された形で含まれる請求項1から13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
組成物が更にシクロデキストリンを含む、請求項1から14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
組成物が患者への局所投与に適している、請求項1から15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
組成物が軟膏、ローション、ペースト、ゼリー、ゲル、ムース、スプレー、泡、エアゾールまたは粉末の形態である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
組成物が患者への経口投与に適している、請求項1から15のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
組成物が錠剤、コーティングされた錠剤、カプセル型錠剤、トローチ、薬用{やくよう}キャンディー、分散物、懸濁物またはカプセルの形態である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
組成物が患者に1日2回投与される、請求項1から19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
組成物が更にミネラルサプリメント、ビタミンサプリメント、精油、香料、着色剤、防腐剤および皮膚吸収促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含む、請求項1から20のいずれかに記載の組成物。

【公表番号】特表2011−524412(P2011−524412A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514129(P2011−514129)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050687
【国際公開番号】WO2010/004303
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(510297026)
【Fターム(参考)】